JP2010190382A - 無段変速装置 - Google Patents

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メーケル イエルグ
Thenberge Peter
テンベルゲ ペータ
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Abstract

【課題】逆転時(後退時)にトラクション部にサイドスリップ力が加わり続ける構造で、耐久性の確保と小型化とを図る。
【解決手段】押圧装置の発生する押圧力の大きさを決定する為に予め設定される、転がり方向に関するトラクション部のトラクション係数を、正転状態よりも逆転状態で大きくする。この結果、この逆転状態で、前記トラクション部に加わるサイドスリップ力を小さくでき、前記課題を解決できる。
【選択図】図1

Description

この発明は、例えば車両(自動車)用自動変速装置として利用する、トロイダル型無段変速機を組み込んだ無段変速装置の改良に関する。具体的には、逆転時(後退時)に各パワーローラが中立位置に戻らない構造(各パワーローラが中立位置に収束しなくなる構造、各パワーローラのフィードバック制御が発散型になる構造)に関し、耐久性の確保と小型化との両立を図るものである。
自動車用変速装置としてトロイダル型無段変速機を使用する事が、多くの刊行物に記載され、且つ、一部で実施されて周知である。又、動力損失を低く抑え、且つ、優れた耐久性を確保できるトロイダル型無段変速機として、例えば特許文献1に記載された構造が知られている。図21〜32は、この特許文献1に記載されたトロイダル型無段変速機を示している。
このトロイダル型無段変速機は、図21〜22に示す様に、入力回転軸1の両端部に1対の入力側ディスク2a、2bを、それぞれがトロイド曲面であって軸方向片側面である、入力側側面3、3を互いに対向させた状態で、互いに同心に設けている。これら両入力側ディスク2a、2bのうちの一方(図21〜22の左方)の入力側ディスク2aは前記入力回転軸1の一端部に外嵌固定し、他方(図21〜22の右方)の入力側ディスク2bは、前記入力回転軸1の他端部に、軸方向の移動可能に支持している。又、この他方の入力側ディスク2bを前記一方の入力側ディスク2aに向けて、油圧式の押圧装置4により押圧自在としている。更に、前記一方の入力側ディスク2aの外側面に入力歯車5を、この入力側ディスク2aと同心に設けている。トロイダル型無段変速機の運転時には、前記押圧装置4に油圧を導入して、前記両入力側ディスク2a、2bに互いに近付く方向の力を付与しつつ、前記入力歯車5及び前記入力回転軸1を介してこれら両入力側ディスク2a、2bを、互いに同期して回転させる。
又、前記入力回転軸1の中間部周囲に一体型の出力側ディスク6を、この入力回転軸1に対する相対回転を自在に設けている。この出力側ディスク6の軸方向両側面を、それぞれがトロイド曲面であって、それぞれが軸方向片側面でもある、出力側側面7、7としている。又、前記出力側ディスク6の外周縁部には出力歯車8を設けて、この出力側ディスク6から動力を取り出せる様にしている。この出力側ディスク6は、図31にその全体を示す様な支持フレーム9に、回転自在に支持している。又、前記入力回転軸1も前記支持フレーム9に対し、回転自在に支持している。
前記両入力側ディスク2a、2bの入力側側面3、3と、前記出力側ディスク6の出力側側面7、7との間部分(1対のキャビティ部分)には、それぞれ図23〜30に示す様なパワーローラユニット10、10を、各キャビティ毎に複数個ずつ(図示の例では3個ずつ合計6個)配置している。これら各パワーローラユニット10、10は、それぞれ、特許請求の範囲に記載した支持部材に相当するトラニオン11に対してパワーローラ12を、揺動ブロック13と、スラスト転がり軸受14とを介して、揺動変位及び回転を自在に支持して成る。
前記トラニオン11は、両端部に互いに同心に設けられた1対の傾転軸15、15同士の間に、これら両傾転軸15、15に対し平行な支持梁部16を設けて成る。そして、前記揺動ブロック13はこの支持梁部16に、この支持梁部16側に設けた凸円筒面部とこの揺動ブロック13側に設けた凹円筒面部との係合により、揺動変位可能に支持している。前記パワーローラ12は前記揺動ブロック13の内側面に、前記スラスト転がり軸受14により、回転自在に支持している。又、このスラスト転がり軸受14を構成する外輪17を前記揺動ブロック13の内側面に、図30に示す様に、傾斜軸18を中心とする揺動変位を自在に支持する事で、前記パワーローラ12を前記揺動ブロック13の内側面に、揺動及び回転自在に支持している。
前記傾斜軸18は、図27〜30に示す様に、前記外輪17の外側面に、この外輪17の径方向に、且つ、前記両傾転軸15、15の中心軸に対し傾斜した状態で配置している。即ち、前記傾斜軸18は、前記外輪17の外側面に形成した凹部19に嵌合固定している。この傾斜軸18を前記外輪17に結合固定した状態で、この傾斜軸18の中心軸イは、図32に示す様に、前記両傾転軸15、15の中心軸ロに対し、所定角度θ(例えば5〜15度程度)だけ傾斜する。尚、これら両傾転軸15、15の中心軸ロと前記傾斜軸18の中心軸イとは、同一の仮想平面上に位置する(これら両中心軸ロ、イが互いに交差する)。
前記揺動ブロック13の内側面と前記外輪17の外側面との間隔は、この傾斜軸18から離れる程広くなる。又、この傾斜軸18の軸方向両端部と、前記揺動ブロック13の内側面でこの傾斜軸18の軸方向両端部に対向する部分に形成した断面半円弧状の凹部19aとを、ラジアルニードル軸受20、20を介して係合させて、前記外輪17を前記揺動ブロック13対し、前記傾斜軸18を中心として、軽い力での揺動変位を可能に支持している。又、前記傾斜軸18を前記トラニオン11に対し、大きな力が作用した場合に、前記各傾転軸15、15の軸方向の変位を可能に支持している。この為に、前記トラニオン11の折れ曲がり部21、21の互いに対向する内面と前記傾斜軸18の軸方向両端面との間に、それぞれ鋼球22、22と皿板ばね23、23とを、互いに直列に設けている。これら各皿板ばね23、23の弾力は、トロイダル型無段変速機の運転時に、前記各ディスク2a、2b、6の側面3、7から前記パワーローラ12を介して前記トラニオン11に加わる、所謂2Ftと呼ばれる力でも撓み切らない程度に、十分に大きくしている。即ち、前記皿板ばね23、23の存在に基づき、前記各ディスク2a、2b、6の回転方向に関する、前記各パワーローラ12、12の取付位置が多少ずれた場合にも、このずれを或る程度吸収できる様にしている。
それぞれが以上に述べた様に構成する、複数組(図示の例では6組)の前記パワーローラユニット10、10は、図31に示す様な支持フレーム9の支持環部24、24に、それぞれの両端部に設けた前記傾転軸15、15を中心とする揺動変位のみ自在に、ラジアル転がり軸受25、25により支持する。前記各パワーローラユニット10、10は、前記支持フレーム9に揺動変位のみ自在に支持した状態で、次述する同期手段26により前記各トラニオン11、11の揺動角度を機械的に同期させつつ、次述する変位駆動手段27により所望角度揺動変位させられる様に構成している。
前記同期手段26は、前記各トラニオン11、11の端部に設けた前記各傾転軸15、15にそれぞれ固定した、セクター歯車28、28同士を、互いに噛合させて成る。又、前記変位駆動手段27は、互いに異なるキャビティ内に存在する3個ずつのトラニオン11、11のうち、前記各ディスク2a、2b、6の回転方向に関する位相が互いに一致する部分に存在する1個ずつ、合計2個のトラニオン11、11を、逆方向(変速比の変化方向に関して互いに同方向)に、同じ角度ずつ、互いに同期して揺動変位させる様に構成している。この為に、前記各ディスク2a、2b、6の側方に、軸方向片半部と軸方向他半部とで螺旋方向を互いに逆にした送りねじ杆29を、前記各ディスク2a、2b、6の中心軸と平行に、回転のみ自在に支持した状態で、配置している。そして、図示しない電動モータ等の回転駆動手段により前記送りねじ杆29を、所望の方向に所望角度(360度以上を含む)だけ、回転駆動自在としている。
又、前記送りねじ杆29の軸方向片半部と同他半部とに、それぞれ送りナット30、30を螺合させ、これら両送りナット30、30と、両キャビティ毎に1個ずつのセクター歯車28、28とを、係止切り欠き31、31と係止ピン32、32との係合に基づき、動力の伝達自在に組み合わせている。この構成により、前記送りねじ杆29の軸方向に関する、前記両送りナット30、30の動きを、それぞれのトラニオン11、11に伝達自在としている。
上述の様に構成する従来構造のトロイダル型無段変速機の変速比を変更する際には、前記変位駆動手段27により、互いに異なるキャビティに設置した前記2個のトラニオン11、11を逆方向(変速比の変化方向に関して互いに同方向)に、同じ角度ずつ、互いに同期して揺動変位させる。同時に、前記同期手段26により、前記両キャビティ毎に残り2個ずつ、合計残り4個のトラニオン11、11も、これら両キャビティ同士の間で逆方向(変速比の変化方向に関して互いに同方向)に、同じ角度ずつ、互いに同期して揺動変位させる。この様にして、合計6個のトラニオン11、11の傾斜角度を、目標とする変速比に見合う角度とする。
この様にして行う変速動作の開始時に、前記6個のトラニオン11、11の傾斜角度は、直ちに目標とする変速比に見合う角度に変更される。同時に、前記各揺動ブロック13の傾斜角度も、前記各トラニオン11、11と同期して、前記目標とする変速比に見合う角度に変更される。これに対して、前記外輪17を含むスラスト転がり軸受14及び前記各パワーローラ12、12は、前記傾斜軸18を中心として、前記各揺動ブロック13に対し傾斜する。そして、この傾斜に伴って、これら各パワーローラ12、12が、前記各傾転軸15、15の方向に変位する。この変位の結果、前記トラクション部にサイドスリップ(サイドスリップ力)が発生して、前記各パワーローラ12、12が、前記外輪17を含むスラスト転がり軸受14と共に、目標とする変速比に見合う角度に向けて揺動変位する。
この際の各部の挙動に就いて、図32を参照しつつ、更に詳しく説明する。変速動作を行う際には、先ずトラニオン11及び揺動ブロック13を、その両端部に設けた傾転軸15、15を中心として、図32の矢印α方向に、所望角度(変化させるべき変速比の大きさに見合う角度)だけ揺動変位させる。各部の揺動変位に対する抵抗の相違に基づき、この様なトラニオン11及び揺動ブロック13の揺動変位の直後には、前記外輪17及びパワーローラ12は揺動変位せずにそのままの位置に留まる傾向になる。この為、このパワーローラ12は前記揺動ブロック13に対し、傾斜軸18を中心として、図32の矢印β方向に揺動変位する。尚、実際には、パワーローラ12が揺動変位せずに、前記揺動ブロック13がこのパワーローラ12に対し揺動変位するが、このパワーローラ12の動きを説明する面からは、同様に考えられる。
そして、前記パワーローラ12が前記矢印β方向に揺動変位する結果、このパワーローラ12の中心が、各ディスク2a(2b)、6の回転方向に関して変位する。即ち、前記矢印β方向の揺動変位に伴って前記パワーローラ12の中心が、図32に矢印γで示す様に変位する。この矢印γの方向は、前記傾斜軸18の中心軸に対し直角方向であり、前記各ディスク2a(2b)、6の中心軸の方向に対し傾斜している。従って、前記図32に矢印γ方向の変位に伴って前記パワーローラ12の中心が、前記各ディスク2a(2b)、6の回転方向に関して(例えば図32のδ分)変位する。
この結果、従来から実施されている一般的なトロイダル型無段変速機と同様に、前記各パワーローラ12の周面と前記各ディスク2a、2b、6の側面3、7との接触部(トラクション部)の接線方向に作用する力の方向が変化し(サイドスリップが発生し)、前記各パワーローラ12が前記各傾斜軸18を中心として揺動変位する。この様なサイドスリップに基づく揺動変位の方向は、変速動作の開始時に於ける前記矢印β、γ方向の変位を打ち消す方向(変速動作の開始時に於ける矢印β、γ方向とは逆方向で同じ変位量)になる。そして、この様な前記傾斜軸18を中心とする、前記パワーローラ12の変速動作の開始時に於ける矢印β、γ方向とは逆方向の揺動変位は、このパワーローラ12の傾斜角度が、前記目標とする変速比に見合う角度になるまで行われる。言い換えれば、前記パワーローラ12が目標とする変速比に見合う角度まで揺動した状態で、このパワーローラ12及び前記外輪17を含むスラスト転がり軸受14の揺動が停止する。この様に、このパワーローラ12及びスラスト転がり軸受14の揺動が停止した状態で、このパワーローラ12と前記トラニオン11との位置関係が、変速動作開始以前と同じ、中立状態になる(中立位置に戻る)。
上述の様に特許文献1に記載されたトロイダル型無段変速機は、前記各トラニオン11、11の傾斜角度を目標とする変速比に見合う角度にする事で、変速動作を開始させるが、これら各トラニオン11、11の傾斜角度を変える動作は、変速比変更の為のきっかけに過ぎない。従って、両キャビティ毎に1個ずつ、合計2個のトラニオン11、11を傾斜させる為の変位駆動手段27を構成する回転駆動手段の出力は小さくて済み、この変位駆動手段27を含むトロイダル型無段変速機の小型・軽量化を図れる。又、この変位駆動手段27により前記2個のトラニオン11、11を介して全部で6個のトラニオン11、11を揺動変位させる為に要するエネルギが少なくて済む為、トロイダル型無段変速機のシステム全体として考えた場合の伝達効率を向上させる事ができる。特に、前記回転駆動手段を電動モータとすれば、変速比変更の為のエネルギによる損失を僅少に抑えられる。
更に、特許文献1に記載されたトロイダル型無段変速機によれば、前記各パワーローラ12を前記各ディスク2a、2b、6の軸方向に変位させて、構成各部材の弾性変形量の変化に拘らず、これら各パワーローラ12、12の周面と前記各ディスク2a、2b、6の側面との接触状態を適正に維持できる。即ち、トロイダル型無段変速機の運転に伴って前記各ディスク2a、2b、6及び前記各パワーローラ12、12等が弾性変形した状態でも、前記各面同士の転がり接触部である各トラクション部の面圧を適正に維持する為には、前記トルクの変動に伴って、前記各パワーローラ12、12を前記各ディスク2a、2b、6の軸方向に変位させる必要がある。前記特許文献1に記載された従来構造の場合には、前記各パワーローラ12、12の変位を、前記揺動ブロック13を前記支持梁部16に対し揺動変位させる事で補償する。そして、前記各トラクション部の接触状態を適正に維持する。
上述の様に構成され作用する従来構造の場合、変速動作を軽い力で円滑に行わせて、動力損失を低く抑え、且つ、優れた耐久性を確保できるが、例えば実際に自動車に組み込む自動変速装置を構成する場合に、次の様な解決しなければならない問題を生じる可能性がある。即ち、自動車用の自動変速装置を構成する場合、自動車を、前進だけでなく、必要に応じて後退させるべく、上述した様なトロイダル型無段変速機の入力部と、エンジンや電動モータ等の駆動源(動力源)との間に、動力(トルク)の回転方向を、正転(前進)、逆転(後退)に切り換える正転逆転切換機構(前後進切換機構)を設ける事が考えられる。ところが、この様に正転逆転切換機構を、動力の伝達方向に関してトロイダル型無段変速機よりも上流側(前側)に設けた場合、正転時(前進時)と逆転時(後退時)とで、このトロイダル型無段変速機を構成する入力側、出力側各ディスク2a、2b、6並びに各パワーローラ12、12の回転方向は逆になる。
例えば前述の図21〜32に示したトロイダル型無段変速機の場合は、前述の図32に示した様に、入力側、出力側各ディスク2a、2b、6並びに各パワーローラ12、12が、この図32の矢印X、Y、Zで示す方向に回転している場合には、前述した様な変速動作が行われる。即ち、トロイダル型無段変速機の変速比を変化させるべく、前記トラニオン11、11を揺動変位(図32の矢印α方向の揺動変位)させると、この揺動変位に基づき前記各パワーローラ12、12が、前記サイドスリップ力が発生しない中立位置(各パワーローラ12、12の回転中心軸の延長線が各ディスク2a、2b、6の中心軸と交差した状態)から、このサイドスリップ力が発生する位置(各パワーローラ12、12の回転中心軸の延長線が各ディスク2a、2b、6の中心軸と交差しなくなる位置)に変位する。そして、この様な変位に基づいて発生する、前記サイドスリップ力に基づき前記各パワーローラ12、12が、前記各スラスト転がり軸受14、14と共に前記各傾斜軸18、18を中心に揺動する。この際、これら各パワーローラ12、12は、前記変速比が所望の値になる方向に変位しつつ、前記中立位置に戻る方向に変位する。
これに対して、前記入力側、出力側各ディスク2a、2b、6並びに各パワーローラ12、12が、前記図32の矢印X、Y、Zで示す回転方向と逆方向に回転した場合、即ち、前記正転逆転切換機構を正転状態から逆転状態(後退状態)に切り換えた場合には、前記各パワーローラ12、12が、前記中立位置に戻らなくなる。この場合には、前記トラニオン11、11の揺動変位に基づき前記各パワーローラ12、12が変位すると、前記サイドスリップ力に基づきこれら各パワーローラ12、12が、前記各傾斜軸18、18を中心に、前記中立位置に近付く方向とは逆方向に揺動する。この様な各パワーローラ12、12の揺動は、前記各スラスト転がり軸受14、14を構成する外輪17、17の外側面が前記各揺動ブロック13、13の内側面に当接し、これら各パワーローラ12、12の変位が阻止される(ストッパ機構が作動する)まで続く。そして、この様に各パワーローラ12、12の変位がストッパ機構により阻止された状態で、これら各パワーローラ12、12に、前記サイドスリップ力が加わり続ける(トラクション部にサイドスリップ力が加わった状態のまま運転される)。
この様に、前述の図21〜32に示したトロイダル型無段変速機の場合には、逆転状態(後退状態)でトラクション部に、前記パワーローラを中立位置に戻す方向とは逆方向のサイドスリップ力が加わり続ける。この為、何ら対策を施さなければ、このトラクション部を構成する、前記各パワーローラ12、12や前記入力側、出力側各ディスク2a、2b、6の耐久性を十分に確保できなくなる可能性がある。又、前記サイドスリップ力を支承する部分(例えば各スラスト転がり軸受14、14の外輪17の外側面と各揺動ブロック13、13の内側面との当接部)に関しても、同じく耐久性を確保しにくくなる他、強度を確保すべくこの部分(を構成する部材)が大型化する可能性もある。
尚、この様な、逆転時(後退時)にパワーローラが中立位置に戻らずに、トラクション部にサイドスリップ力が加わり続ける現象は、例えば特許文献2の図7に記載された構造の場合にも、同様に生じる可能性がある。即ち、この特許文献2に記載されている様に、各ディスクの中心軸に平行な傾転軸を中心とする揺動変位を自在に設けた揺動フレーム(特許請求の範囲に記載した支持部材に相当)に、各パワーローラを回転自在に支持する為のトラニオンを支持した構造で、この特許文献2の図7に記載された様な、前記揺動フレームに対し前記トラニオン(延いては各パワーローラ)を、前記各ディスクの中心軸を含む仮想平面に垂直に交わる仮想線に対し傾斜した方向に存在する傾斜軸(特許文献2の図7で符号34、34が付された枢軸)を中心とする揺動変位を可能に支持した構造を採用した場合にも、正転逆転切換機構と組み合わせた場合に、同様に生じる可能性がある。
尚、本発明に関連する先行技術文献として、上述した特許文献1〜2の他、特許文献3〜4がある。このうちの特許文献3には、押圧装置として、ローディングカム式のものと油圧式のものとを組み合わせた構造が記載されている。又、特許文献4には、油圧式の押圧装置に導入する油圧の調節を、予め記憶装置に記憶した、入力側の回転速度及びトルクと変速比と適正な油圧との関係に基づいて行う技術が記載されている。但し、これら特許文献3〜4に記載された発明の構造を単に採用しただけでは、上述の様な逆転時(後退時)にパワーローラが中立位置に戻らずに、トラクション部にサイドスリップ力が加わり続けると言った構造で、耐久性の確保や装置の小型化を図る事はできない。
特開2008−95874号公報 特開2006−17144号公報 特開平5−39848号公報 特開2004−340180号公報
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、逆転時(後退時)にトラクション部にサイドスリップ力が加わり続ける構造(各パワーローラが中立位置に収束しなくなる構造、各パワーローラのフィードバック制御が発散型になる構造)に関し、耐久性の確保と小型化との両立を図れる構造を実現すべく発明したものである。
本発明の無段変速装置は、トロイダル型無段変速機と、このトロイダル型無段変速機と駆動源(動力源:例えばエンジン、電動モータ等)との間に設けられて、この駆動源からこのトロイダル型無段変速機に伝達される動力(トルク)の回転方向を、正転(前進)、逆転(後退)に切り換える正転逆転切換機構とを備える。
このうちのトロイダル型無段変速機は、例えば前述の特許文献1等に記載されて従来から知られているトロイダル型無段変速機と同様に、それぞれが断面円弧形のトロイド曲面である互いの軸方向片側面同士を対向させた状態で、互いに同心に、相対回転を自在に支持された少なくとも1対のディスクと、これら各ディスク同士の間に、互いに対向する1対のディスク同士の間に複数個ずつ挟持されたパワーローラと、これら各パワーローラを回転自在に支持した、これら各パワーローラと同数の支持部材と、前記各ディスク同士を互いに近付く方向に押圧する押圧装置とを備えたものである。
そして、本発明の無段変速装置の場合は、前記正転逆転切換機構が正転状態(前進状態)では、前記各ディスク同士の間の変速比を変化させるべく、前記各支持部材の揺動変位に基づき前記各パワーローラを、これら各パワーローラの回転中心軸の延長線が前記各ディスクの中心軸の延長線と交差した、これら各パワーローラの周面と前記各ディスクの側面とのトラクション部にサイドスリップ力が発生しない中立位置から、前記各パワーローラの回転中心軸の延長線が前記各ディスクの中心軸の延長線と交差しなくなる方向に変位させると、前記トラクション部に発生する前記サイドスリップ力に基づき前記各パワーローラが、前記変速比を変化させつつ、前記中立位置に戻る方向に変位する。即ち、前記正転状態では、前記トラクション部に前記サイドスリップ力が、前記各パワーローラを、前記変速比を変化させつつ、前記中立位置に戻す方向に発生する。
これに対して、前記正転逆転切換機構が逆転状態(後退状態)では、前記変速比を変化させるべく、前記各支持部材の揺動変位に基づき前記各パワーローラを前記中立位置から変位させると、前記サイドスリップ力に基づき前記各パワーローラが、前記中立位置に戻る方向に変位しなくなる。即ち、前記逆転状態では、前記トラクション部に前記サイドスリップ力が、前記各パワーローラを中立位置に戻す方向に発生しなくなる。
特に本発明の無段変速装置に於いては、前記押圧装置の発生する押圧力の大きさを決定する為に予め設定される、前記各ディスクの接線方向(トルクの伝達方向、転がり方向)に関する、前記トラクション部のトラクション係数を、前記正転状態よりも前記逆転状態で大きくしている。言い換えれば、前記各ディスクの径方向(サイドスリップの方向)に関する、前記トラクション部の限界トラクション係数を、正転状態よりも逆転状態で小さくなる様にしている。
この為に、例えば請求項2に記載した発明の様に、前記押圧装置を、油圧室に導入される油圧に応じた押圧力を発生する油圧式のものとする。そして、予め設定されたトラクション係数となる様に、その時点での正転逆転切換機構の切換状態に応じて前記油圧室に導入する油圧を調節する。
又、請求項3に記載した発明の様に、前記押圧装置を、カム面とローラとの押し付け合いに応じた押圧力を発生するローディングカム式のものとする。そして、予め設定されたトラクション係数となる様に、前記カム面の傾斜を設定する。例えば、正転駆動時に対応するカム面の傾斜を緩やかに(大きな押圧力を発生する様に)すると共に、逆転駆動時に対応するカム面の傾斜を急に(発生する押圧力を小さく)する。
尚、上述の様に逆転状態で前記各パワーローラが中立位置に戻らなくなる(各パワーローラが中立位置に収束しなくなる、各パワーローラのフィードバック制御が発散型になる)と言った現象は、例えば次に述べる様なパワーローラの支持構造を採用したトロイダル型無段変速機と、前記正転逆転切換機構とを組み合わせた場合に生じる。
即ち、請求項4に記載した発明の様に、前記各パワーローラを前記各支持部材に対し、前記各ディスクの中心軸に直交する仮想平面に対し傾斜した方向に存在する傾斜軸を中心とする揺動変位を可能に支持すると言った構成を採用した場合に生じる。言い換えれば、前記各パワーローラを前記各支持部材に対し、キャスター角を持たせた状態で揺動可能に支持する(キャスター角を持たせた傾斜軸を中心に揺動可能に支持する)と言った構成を採用した場合に、上述の様な現象を生じる。
尚、この様なキャスター角を持たせたパワーローラ支持構造のより具体的な構成は、例えば次の様なものが考えられる。
例えば、請求項5に記載された発明の様に、各支持部材を、各ディスクの回転中心をその中心とする単一の仮想円弧の接線方向に配設し、且つ、これら各ディスクの中心軸に直交する仮想平面上に存在する傾転軸を中心とする揺動変位を自在に設ける。そして、これら各支持部材に対し各パワーローラを、前記傾転軸に対し(上記仮想平面に対し)傾斜した方向に存在する傾斜軸を中心とする揺動変位を可能に支持する。尚、この構成は、前述の特許文献1に記載された構造に対応する。又、後述する本発明の実施の形態の第2例の構造(後述の図2〜7に示す構造)にも対応する。
或は、請求項6に記載した発明の様に、前記各支持部材を、前記各ディスクの回転中心をその中心とする単一の仮想円弧の接線方向に配設し、且つ、これら各ディスクの中心軸に直交する仮想平面上に存在する傾転軸を中心とする揺動変位を自在に設ける。そして、これら各支持部材に対し各パワーローラを、前記仮想平面上に存在する点を中心とする球面に沿った変位のうちで、この仮想平面に対し傾斜した方向に存在する別の仮想平面に平行な方向の変位のみを可能に支持する事により、この別の仮想平面に直交し、且つ、前記球面の中心を通る傾斜軸(=仮想平面に対し傾斜した方向に存在する傾斜軸)を中心とする揺動変位を可能に支持する。尚、この構成は、後述する本発明の実施の形態の第3例の構造(後述の図8〜11に示す構造)に対応する。
或は、請求項7に記載した発明の様に、各支持部材を、各ディスクの回転中心をその中心とする単一の仮想円弧の接線方向に配設し、且つ、これら各ディスクの中心軸に平行な傾転軸(揺動軸、支持軸)を中心とする揺動変位を自在に設ける。そして、これら各支持部材に対し各パワーローラを、前記各ディスクの中心軸に対し直交する仮想平面に対し傾斜した方向に存在する傾斜軸を中心とする揺動変位を可能に支持する。尚、この構成は、前述の特許文献2の図7に記載された構造に対応する。
或は、請求項8に記載した発明の様に、各支持部材を、各ディスクの径方向を中央位置として、且つ、これら各ディスクの中心軸に平行な傾転軸を中心とする揺動変位を自在に設ける。そして、これら各支持部材に対し各パワーローラを、これら各支持部材の中間部に存在する点を中心とする球面に沿った変位のうちで、前記各ディスクの中心軸に対し直交する仮想平面に対し傾斜した方向の変位のみを可能に支持する。尚、この構成は、後述する本発明の実施の形態の第4例の構造(後述の図12〜20に示す構造)に対応する。
尚、何れの構造にしても、サイドスリップによりパワーローラが支持部材に対し揺動変位する量(角度)を制限する為のストッパ機構を設ける。
上述の様に構成する本発明の無段変速装置によれば、逆転時(後退時)にトラクション部にサイドスリップ力が加わり続けても(各パワーローラが中立位置に収束しなくても、各パワーローラのフィードバック制御が発散型になっても)、耐久性の確保と小型化とを図れる。
即ち、運転時に、各ディスクの側面と各パワーローラの周面との当接部であるトラクション部では、これら各ディスクの側面と各パワーローラの周面との間に挟持されて高圧となったトラクション油を介して、動力伝達が行われる。この際、このトラクション部のトラクション係数μは、図33に示す様に、このトラクション油の性能に応じた限界トラクション係数μmax(トラクション油の摩擦円、例えばμmax=1.0)の範囲内となる様に運転している。
即ち、前記トラクション係数μは、前記トラクション部で伝達される力(トラクション力、牽引力、接線力、トルク)をFtとし、このトラクション部に付与される押し付け力(法線力)をFcとした場合に、μ=Ft/Fcで表される。そして、運転時にこのトラクション係数μが、前記限界トラクション係数μmaxを超えない様に、前記トラクション部で伝達される力Ftに応じて、押圧装置の発生する押圧力に対応する、前記押し付け力Fcを調節する。より具体的には、前記各パワーローラと前記各ディスクとの間でトルクの伝達が行われる方向に対応する、前記トラクション部の転がり方向(トルクの伝達方向、各ディスクの接線方向)に関するトラクション係数μtと転がり直角方向(サイドスリップの方向)のトラクション係数μsとを合成した合成トラクション係数(両方向の力の合力に関するトラクション係数)が、前記限界トラクション係数μmaxを超えない様に、或る程度の安全率を確保して、例えば図33のa(例えばμt=0.6)に設定し、この設定されたaとなる様に前記押圧装置の発生する押圧力を調節する。そして、この様に転がり方向に関するトラクション係数μtが、前記aに調節される様に運転する事により、運転時に上記合成トラクション係数が、前記限界トラクション係数μmaxを超え、前記トラクション部でグローススリップ(過大滑り)が生じてしまう事を防止する。
ここで、この様に転がり方向に関するトラクション係数μtを前記aに設定して運転した場合、この転がり方向に対して直角方向である、転がり直角方向(サイドスリップの方向)のトラクション係数μsに関する前記限界値は、図33のbとなる。言い換えれば、前記転がり直角方向(サイドスリップの方向)のトラクション係数μsが、前記bに達するまでの範囲で運転できる。一方、前記転がり方向に関するトラクション係数μtを、前記aよりも大きい、図33のc(例えばμt=0.9)に設定して運転した場合には、前記転がり直角方向(サイドスリップの方向)のトラクション係数μsに関する限界値は、図33のdとなる。即ち、前記転がり方向に関するトラクション係数μtを大きく設定すると(aからcに設定すると)、その分、転がり直角方向(サイドスリップの方向)のトラクション係数μsに関する限界値が小さくなる(bからdとなる)。そして、この様に限界値が小さくなると、図34に示す様に、前記転がり直角方向(サイドスリップの方向)に関するトラクション係数と滑り率(クリープ)との関係を表すトラクションカーブが、この図34のXからYに変化する。即ち、この図34に示す様に、トラクションカーブが緩やかになり、例えば同じトラクション係数μs(例えば図34のμs=e)に対応する前記滑り率が大きくなる。そして、この様に転がり直角方向に関する限界トラクション係数μmaxが小さくなる分(トラクションカーブが図34のXからYに変化する分)、前記滑り率が大きくなり、その分、前記転がり直角方向に加わる力(サイドスリップ力)を小さくできる。
そこで、本発明の場合には、前記押圧装置の発生する押圧力の大きさを決定する為に予め設定される、前記転がり方向に関するトラクション係数μtを、正転状態よりも逆転状態で大きくしている(正転状態に比べ逆転状態で押圧装置が発生する押圧力を小さくしている)。そして、この様に構成する事により、前記逆転状態で前記トラクション部に加わる、転がり直角方向の力(サイドスリップ力)が小さくなる様にしている。本発明によれば、この様に逆転時に加わる転がり直角方向の力(サイドスリップ力)を小さくできる分、この力が加わり続けても、耐久性を確保し易くできると共に、この力を支承する部分の構造の小型化も図れる。
[実施の形態の第1例]
図1は、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の特徴は、逆転時(後退時)にトラクション部にサイドスリップ力が加わり続ける構造{各パワーローラ12、12(例えば図22等参照)が中立位置に収束しなくなる構造、各パワーローラ12、12のフィードバック制御が発散型になる構造}でも、この逆転時に加わる前記サイドスリップ力の低減を図るべく、前記トラクション部のトラクション係数の値を正転時(前進時)と逆転時とで変化させる点にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図21〜32に示した従来構造と同様であるから、重複する図示並びに説明を省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
本例の場合には、前述の図21〜32に示したトロイダル型無段変速機と、図示しないエンジン、電動モータ等の駆動源(動力源)と、これらトロイダル型無段変速機の入力部と駆動源の出力部との間に設けられて、この駆動源からこのトロイダル型無段変速機に伝達される動力の回転方向を、正転(前進)、逆転(後退)に切り換える、同じく図示しない、遊星歯車装置等の正転逆転切換機構(前後進切換機構)とを備えている。この様な構造の場合、例えば前述の段落[0019]〜[0021]部分等で説明した様に、逆転時(後退時)にはトラクション部にサイドスリップ力が加わり続ける為、何ら対策を施さなければ、耐久性を確保しにくくなると共に、装置が大型化する可能性がある。そこで、本例の場合には、押圧装置4(例えば図22等参照)の発生する押圧力の大きさを決定する為に予め設定される、入力側、出力側各ディスク2a、2b、6(例えば図22等参照)の接線方向(トルクの伝達方向、転がり方向)に関する、前記トラクション部のトラクション係数を、前記正転状態よりも前記逆転状態で大きくしている。
即ち、本例の場合には、図1の(A)に示す、正転状態での転がり方向に関するトラクション係数μtFよりも、同じく(B)に示す、逆転状態での転がり方向に関するトラクション係数μtRを大きく(μtR>μtF)している(例えばμtF=0.6、μtR=0.8としている。尚、転がり方向の力とこの力に対し直角方向の力との合力に関する限界トラクション係数μtmaxは、使用するトラクション油の性能に応じた値となるが、例えば1.0とする)。言い換えれば、この様に転がり方向に関するトラクション係数μtF、μtRを設定する事により、この転がり方向とは直角方向である、転がり直角方向に関するトラクション係数の限界値μsmaxを、正転状態(μsF)よりも逆転状態(μsR)で小さく(μsR<μsF)なる様にしている。そして、上述の様なトラクション係数(逆転時にはμtR、正転時にはμtF)となる様に、その時点での伝達トルク(転がり方向の力トラクション力、牽引力、接線力)に応じて、前記押圧装置4の油圧室に導入する油圧を調節している(正転状態に比べ逆転状態で押圧装置4が発生する押圧力が小さくなるように油圧を調節している)。尚、この様な油圧式の押圧装置4に代えて、カム面とローラとの押し付け合いに応じた押圧力を発生するローディングカム式の押圧装置を採用する事もできる。この場合には、上述の様に設定されたトラクション係数(逆転時にはμtR、正転時にはμtF)となる様に、前記カム面の傾斜を設定する。例えば、正転駆動時に対応するカム面の傾斜を緩やかにすると共に逆転駆動時に対応するカム面の傾斜を急にする。
上述の様に構成する本例の場合には、前記逆転時(後退時)にトラクション部にサイドスリップ力が加わり続けても(各パワーローラ12、12が中立位置に収束しなくても、各パワーローラ12、12のフィードバック制御が発散型になっても)、耐久性の確保と小型化とを図れる。
即ち、本例の場合には、前記逆転時(後退時)に転がり方向に関するトラクション係数μtRを大きくしている為、その分、この逆転時(後退時)の転がり直角方向に関するトラクション係数μsRの限界値を小さくできる。そして、この様に転がり直角方向に関するトラクション係数μsRを限界値を小さくできる分、前述の図34に示す様に、前記転がり直角方向(サイドスリップの方向)に関するトラクション係数と滑り率(クリープ)との関係を表すトラクションカーブを緩やかにできる。そして、この様にトラクションカーブが緩やかになる分、前記滑り率が大きくなり、その分、前記転がり直角方向に加わる力(サイドスリップ力)を小さくできる。そして、この様に逆転時に加わる転がり直角方向の力(サイドスリップ力)を小さくできる分、この力が加わり続けても、耐久性を確保し易くできると共に、この力を支承する部分の構造の小型化も図れる。
尚、上述の様な、逆転状態でトラクション部にサイドスリップ力が加わり続ける(各パワーローラ12、12が中立位置に戻らなくなる、各パワーローラ12、12が中立位置に収束しなくなる、各パワーローラ12、12のフィードバック制御が発散型になる)と言った現象は、次に述べる様なパワーローラの支持構造を採用したトロイダル型無段変速機と、前記正転逆転切換機構とを組み合わせた場合に生じる。即ち、図32を用いて説明すれば、各パワーローラ12、12を、それぞれが支持部材である各トラニオン11、11に対し、入力側、出力側各ディスク2a、2b、6の中心軸(図32で符号1が付された一点鎖線)に直交する仮想平面(図32で一点鎖線ロを含んで表裏方向に存在する面)に対し傾斜した方向に存在する傾斜軸18を中心とする揺動変位を可能に支持すると言った構成を採用した場合に生じる。
言い換えれば、前記各パワーローラ12、12を前記トラニオン11、11に対し、キャスター角θを持たせた状態で揺動可能に支持する(キャスター角θを持たせた傾斜軸18を中心に揺動可能に支持する)と言った構成を採用した場合に、上述の様な現象を生じる。
この様なキャスター角θを持たせたパワーローラ支持構造の別例に関し、以降に更に説明する。但し、以降の説明は、パワーローラを支持する部分の説明を中心に行うと共に、実施の形態の第1例、並びに、前述の図21〜32に示した従来構造と同等部分に関しては同一符号を付し、その他の部分に関する説明は省略する。
[実施の形態の第2例]
図2〜7は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合は、各トラニオン11、11の揺動方向と、これら各トラニオン11、11に対する各パワーローラ12、12の揺動変位の方向とを、上述の実施の形態の第1例の無段変速装置を構成するトロイダル型無段変速機(=前述の図21〜32に示したトロイダル型無段変速機)と同様にしている。即ち、本例の場合も、前記第1例と同様に、各キャビティ毎に複数個ずつ設けたトラニオン11、11を、入力側、出力側各ディスク2a、2b、6の回転中心をその中心とする単一の仮想円弧の接線方向に配設し、且つ、これら各ディスク2a、2b、6の中心軸に対し直交する仮想平面上の直線ロ(図4参照)と同心の傾転軸15、15を中心とする揺動変位を自在に設けている。そして、前記各トラニオン11、11に対し前記各パワーローラ12、12を、前記傾転軸15、15に対し傾斜した方向に存在する傾斜軸18、18を中心とする揺動変位を可能に支持している。
そして、本例の場合も、前記第1例と同様に、押圧装置4の発生する押圧力の大きさを決定する為に予め設定される、入力側、出力側各ディスク2a、2b、6の接線方向(トルクの伝達方向、転がり方向)に関する、トラクション部のトラクション係数を、正転状態よりも逆転状態で大きくしている。
[実施の形態の第3例]
図8〜11は、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合は、各キャビティ毎に複数個ずつ設けた各トラニオン11、11を、入力側、出力側各ディスク2a、2b、6の回転中心をその中心とする(各キャビティ毎に)単一の仮想円弧の接線方向に配設し、且つ、これら各ディスク2a、2b、6の中心軸に対し直交する仮想平面上に存在する傾転軸15、15を中心とする揺動変位を自在に設けている。そして、これら各トラニオン11、11に対し各パワーローラ12、12を、筒部材36、36を介して、前記傾転軸15、15の中心軸上に存在する点t(図10)を中心とする球面(球面ブッシュ33の外周面)に沿った変位のうちで、前記各ディスク2a、2b、6の中心軸に直交する仮想平面に対し傾斜した方向の変位(平坦面34、34に沿った変位)のみを可能に支持している。そして、この様に各パワーローラ12、12を各トラニオン11、11に対し支持する事により、前記各ディスク2a、2b、6の中心軸に対し直交する仮想平面に対し大きく(90度に近く)傾斜した状態で存在する仮想平面上に存在し、且つ、前記球面の中心tを通ると共に、前記傾転軸15、15の中心軸と交差する傾斜軸kを中心とする揺動変位を可能に支持している。
そして、本例の場合も、前述した実施の形態の第1例並びに上述した実施の形態の第2例と同様に、押圧装置4の発生する押圧力の大きさを決定する為に予め設定される、入力側、出力側各ディスク2a、2b、6の接線方向(トルクの伝達方向、転がり方向)に関する、トラクション部のトラクション係数を、正転状態よりも逆転状態で大きくしている。
[実施の形態の第4例]
図12〜20は、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例の場合は、各支持部材35、35を、入力側、出力側各ディスク2a、2b、6の径方向を中央位置として、これら各ディスク2a、2b、6の中心軸に平行な、部分円筒面状の凸面により構成する傾転軸15a(又は球面により構成する傾転軸15b)を中心とする揺動変位を自在に設けている。そして、これら各支持部材35、35に対し各パワーローラ12、12を、前記各支持部材35、35の中間部(の内部中央位置)に存在する点tを中心とする球面(球面部37)に沿った変位のうちで、前記各ディスク2a、2b、6の中心軸に対し直交する仮想平面に対し傾斜した方向の変位(平坦面34a、34aに沿った変位)のみを可能に支持している。そして、この様に各パワーローラ12、12を各支持部材35、35に対し、前記球面の中心tを通る傾斜軸k(=前記各ディスク2a、2b、6の中心軸に対し直交する仮想平面に対し傾斜した方向に存在する傾斜軸k)を中心とする揺動変位を可能に支持している。
そして、本例の場合も、前述した実施の形態の第1〜2例並びに上述した実施の形態の第3例と同様に、押圧装置(図示省略)の発生する押圧力の大きさを決定する為に予め設定される、入力側、出力側各ディスク2a、2b、6の接線方向(トルクの伝達方向、転がり方向)に関する、トラクション部のトラクション係数を、正転状態よりも逆転状態で大きくしている。
本発明の実施の形態の第1例に関して、トラクション部のトラクション係数と限界トラクション係数との関係を表す線図で、(A)は正転時に設定されるトラクション係数を、(B)は逆転時に設定されるトラクション係数を、それぞれ示している。 本発明の実施の形態の第2例の全体構成を示す斜視図。 パワーローラユニットを取り出して示す、図2のA−A断面に相当する図。 パワーローラユニットを取り出して、図3のB−B線で切断した状態で示す斜視図。 パワーローラユニットからトラニオンを取り外して図3の斜め上方から見た斜視図。 トラニオンを図5と同方向から見た斜視図。 一部を省略して示す、図2のC−C断面図。 本発明の実施の形態の第3例の全体構成を示す斜視図。 パワーローラユニットを取り出して示す斜視図。 図8のD−D線で切断した状態で示す斜視図。 パワーローラユニットを構成する筒部材を取り出した状態で示す斜視図。 本発明の実施の形態の第4例の全体構成を示す斜視図。 互いに対向するディスク同士の間部分に存在する、パワーローラユニットの組立体を取り出して示す斜視図。 パワーローラユニットを取り出して示す斜視図。 パワーローラユニットの断面図。 支持部材を取り出して示す斜視図。 各支持部材の外端側を変位させる事により、各パワーローラが中立位置からずれて変速動作を行っている状態を示す、一部を省略して図13と同方向から見た断面図。 同じく、変速動作が完了してパワーローラが中立位置となった状態を示す、図17と同様の図。 各支持部材の内端側を変位させる事により、各パワーローラが中立位置からずれて変速動作を行っている状態を示す、図13と同方向から見た断面図。 同じく変速動作が完了してパワーローラが中立位置となった状態を示す、図19と同様の図 従来構造の1例の全体構成を示す斜視図。 図21のE−E断面図。 変位駆動手段により変位駆動されるパワーローラユニットを取り出して示す斜視図。 同じく側面図。 図24の下方から見た図。 同じく右方から見た図。 パワーローラユニットを、トラニオンの中心軸を含む仮想平面で切断した状態で見た斜視図。 同じくトラニオンの中心軸に対し交叉する仮想平面で切断した状態で示す斜視図。 同じくトラニオンの軸方向中央部で、このトラニオンの中心軸に対し直交する仮想平面で切断した状態で見た斜視図。 同じくトラニオンの軸方向端部寄り部分で、このトラニオンの中心軸に対し直交する仮想平面で切断した状態で見た斜視図。 支持フレームの斜視図。 トラニオンと揺動ブロックとの相対変位に基づいてパワーローラが各ディスクの回転方向に変位する状況を説明する為の模式図。 トラクション部に関する2方向のトラクション係数と限界トラクション係数との関係を示す線図。 (転がり直角方向の)トラクション係数と滑り率との関係を示す線図。
1 入力回転軸
2a、2b 入力側ディスク
3 入力側側面
4 押圧装置
5 入力歯車
6 出力側ディスク
7 出力側側面
8 出力歯車
9 支持フレーム
10 パワーローラユニット
11 トラニオン
12 パワーローラ
13 揺動ブロック
14 スラスト転がり軸受
15、15a、15b 傾転軸
16 支持梁部
17 外輪
18 傾斜軸
19、19a 凹部
20 ラジアルニードル軸受
21 折れ曲がり部
22 鋼球
23 皿板ばね
24 支持環部
25 ラジアル転がり軸受
26 同期手段
27 変位駆動手段
28 セクター歯車
29 送りねじ杆
30 送りナット
31 係止切り欠き
32 係止ピン
33 球面ブッシュ
34 平坦面
35 支持部材
36 筒部材
37 球面部

Claims (8)

  1. トロイダル型無段変速機と、このトロイダル型無段変速機と駆動源との間に設けられて、この駆動源からこのトロイダル型無段変速機に伝達される動力の回転方向を、正転、逆転に切り換える正転逆転切換機構とを備え、
    このうちのトロイダル型無段変速機は、それぞれが断面円弧形のトロイド曲面である互いの軸方向片側面同士を対向させた状態で、互いに同心に、相対回転を自在に支持された少なくとも1対のディスクと、これら各ディスク同士の間に、互いに対向する1対のディスク同士の間に複数個ずつ挟持されたパワーローラと、これら各パワーローラを回転自在に支持した、これら各パワーローラと同数の支持部材と、前記各ディスク同士を互いに近付く方向に押圧する押圧装置とを備えたものであり、
    前記正転逆転切換機構が正転状態で、前記各ディスク同士の間の変速比を変化させるべく、前記各支持部材の揺動変位に基づき前記各パワーローラを、これら各パワーローラの回転中心軸の延長線が前記各ディスクの中心軸の延長線と交差した、これら各パワーローラの周面と前記各ディスクの側面とのトラクション部にサイドスリップ力が発生しない中立位置から、前記各パワーローラの回転中心軸の延長線が前記各ディスクの中心軸の延長線と交差しなくなる方向に変位させると、前記トラクション部に発生する前記サイドスリップ力に基づき前記各パワーローラが、前記変速比を変化させつつ、前記中立位置に戻る方向に変位するが、
    前記正転逆転切換機構が逆転状態で、前記変速比を変化させるべく、前記各支持部材の揺動変位に基づき前記各パワーローラを前記中立位置から変位させると、前記サイドスリップ力に基づき前記各パワーローラが、前記中立位置に戻る方向に変位しない
    無段変速装置に於いて、
    前記押圧装置の発生する押圧力の大きさを決定する為に予め設定される、前記各ディスクの接線方向に関する、前記トラクション部のトラクション係数を、前記正転状態よりも前記逆転状態で大きくした事を特徴とする
    無段変速装置。
  2. 押圧装置は、油圧室に導入される油圧に応じた押圧力を発生する油圧式のものであり、予め設定されたトラクション係数となる様に、その時点での正転逆転切換機構の切換状態に応じて前記油圧室に導入する油圧を調節する、
    請求項1に記載した無段変速装置。
  3. 押圧装置は、カム面とローラとの押し付け合いに応じた押圧力を発生するローディングカム式のものであり、予め設定されたトラクション係数となる様に、前記カム面の傾斜を設定した、
    請求項1に記載した無段変速装置。
  4. 各パワーローラを各支持部材に対し、各ディスクの中心軸に直交する仮想平面に対し傾斜した方向に存在する傾斜軸を中心とする揺動変位を可能に支持した、
    請求項1〜3のうちの何れか1項に記載した無段変速装置。
  5. 各支持部材は、各ディスクの回転中心をその中心とする単一の仮想円弧の接線方向に配設され、且つ、これら各ディスクの中心軸に直交する仮想平面上に存在する傾転軸を中心とする揺動変位を自在に設けられており、これら各支持部材に対し各パワーローラを、前記傾転軸に対し傾斜した方向に存在する傾斜軸を中心とする揺動変位を可能に支持した、
    請求項4に記載した無段変速装置。
  6. 各支持部材は、各ディスクの回転中心をその中心とする単一の仮想円弧の接線方向に配設され、且つ、これら各ディスクの中心軸に直交する仮想平面上に存在する傾転軸を中心とする揺動変位を自在に設けられており、これら各支持部材に対し各パワーローラを、前記仮想平面上に存在する点を中心とする球面に沿った変位のうちで、この仮想平面に対し傾斜した方向に存在する別の仮想平面に平行な方向の変位のみを可能に支持する事により、この別の仮想平面に直交し、且つ、前記球面の中心を通る傾斜軸を中心とする方向の揺動変位を可能に支持した
    請求項4に記載した無段変速装置。
  7. 各支持部材は、各ディスクの回転中心をその中心とする単一の仮想円弧の接線方向に配設され、且つ、これら各ディスクの中心軸に平行な傾転軸を中心とする揺動変位を自在に設けられており、これら各支持部材に対し各パワーローラを、前記各ディスクの中心軸に対し直交する仮想平面に対し傾斜した方向に存在する傾斜軸を中心とする揺動変位を可能に支持した、
    請求項4に記載した無段変速装置。
  8. 各支持部材は、各ディスクの径方向を中央位置として、これら各ディスクの中心軸に平行な傾転軸を中心とする揺動変位を自在に設けられており、これら各支持部材に対し各パワーローラを、これら各支持部材の中間部に存在する点を中心とする球面に沿った変位のうちで、前記各ディスクの中心軸に対し直交する仮想平面に対し傾斜した方向の変位のみを可能に支持した
    請求項4に記載した無段変速装置。
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