JP2007146943A - トロイダル型無段変速機 - Google Patents

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Abstract

【課題】運転時の動力伝達に伴う各パワーローラ8a、8aの変位に拘らず、転がり接触部(トラクション部)で発生する有害なサイドスリップの程度を低減する。
【解決手段】 入力側、出力側各ディスク同士の間で動力の伝達を行なわない無負荷状態で、上記各パワーローラ8a、8aの位置を、これら各パワーローラ8a、8aの中心軸α、αの延長線と上記両ディスクの中心軸βとが交差する位置からずらしておく。この結果、運転時(動力伝達時)に、これら各パワーローラ8a、8aの中心軸α、αの延長線と上記両ディスクの中心軸βとを交差させる事ができ、上記課題を解決できる。
【選択図】図1

Description

この発明は、自動車用の自動変速機として利用するトロイダル型無段変速機の改良に関する。具体的には、大きな動力を伝達可能でしかも比較的小型にできる構造で、転がり接触部で発生する有害なサイドスリップの低減を図り、耐久性と伝達効率とを確保できる構造の実現を図るものである。
自動車用変速装置としてトロイダル型無段変速機を使用する事が、例えば非特許文献1、2等の多くの刊行物に記載され、且つ、一部で実施されて周知である。図10は、現在実施されているトロイダル型無段変速機の基本構成を示している。先ず、この従来構造に就いて、簡単に説明する。1対の入力側ディスク1a、1bを入力回転軸2に対し、それぞれがトロイド曲面(断面円弧形の凹面)であって特許請求の範囲に記載した軸方向片側面に相当する入力側内側面3、3同士を互いに対向させた状態で、互いに同心に、且つ、同期した回転を自在に支持している。
又、上記入力回転軸2の中間部周囲に、中間部外周面に出力歯車4を固設した出力筒5を、この入力回転軸2に対する回転を自在に支持している。又、この出力筒5の両端部に出力側ディスク6、6を、スプライン係合により、上記出力筒5と同期した回転自在に支持している。この状態で、それぞれがトロイド曲面であって特許請求の範囲に記載した軸方向片側面に相当する、上記両出力側ディスク6、6の出力側内側面7、7が、上記両入力側内側面3、3に対向する。
又、上記入力回転軸2の周囲で上記入力側、出力側両内側面3、7同士の間部分(キャビティ)に、それぞれの周面を球状凸面としたパワーローラ8、8を、2個ずつ配置している。これら各パワーローラ8、8は、それぞれトラニオン9、9の内側面に、基半部と先半部とが偏心した支持軸10、10と複数の転がり軸受とを介して、これら各支持軸10、10の先半部回りの回転、及び、これら各支持軸10、10の基半部を中心とする若干の揺動変位自在に支持されている。
又、上記各トラニオン9、9は、それぞれの長さ方向(図10の表裏方向)両端部にこれら各トラニオン9、9毎に互いに同心に設けられた枢軸を中心として揺動変位自在である。これら各トラニオン9、9を揺動(傾斜)させる動作は、油圧式のアクチュエータにより、これら各トラニオン9、9を上記各枢軸の軸方向に変位させる事により行なう。変速時には、上記各アクチュエータへの圧油の給排により、上記各トラニオン9、9を上記各枢軸の軸方向に変位させる。この結果、上記各パワーローラ8、8の周面と上記入力側、出力側各内側面3、7との接触部(トラクション部)の接線方向に作用する力の方向が変化する(サイドスリップが発生する)ので、上記各トラニオン9、9が上記各枢軸を中心として揺動変位する。
上述の様なトロイダル型無段変速機の運転時には、駆動軸11により一方(図10の左方)の入力側ディスク1aを、ローディングカム式の押圧装置12を介して回転駆動する。この結果、前記入力回転軸2の両端部に支持された1対の入力側ディスク1a、1bが、互いに近づく方向に押圧されつつ同期して回転する。そして、この回転が、上記各パワーローラ8、8を介して前記両出力側ディスク6、6に伝わり、前記出力歯車4から取り出される。
上記入力回転軸2と上記出力歯車4との回転速度の比を変える場合で、先ず入力回転軸2と出力歯車4との間で減速を行なう場合には、上記各トラニオン9、9を図10に示す位置に揺動させ、上記各パワーローラ8、8の周面を、上記各入力側ディスク1a、1bの入力側内側面3、3の中心寄り部分と上記両出力側ディスク6、6の出力側内側面7、7の外周寄り部分とにそれぞれ当接させる。反対に、増速を行なう場合には、上記各トラニオン9、9を図10と反対方向に揺動させ、上記各パワーローラ8、8の周面を、上記両入力側ディスク1a、1bの入力側内側面3、3の外周寄り部分と上記両出力側ディスク6、6の出力側内側面7、7の中心寄り部分とにそれぞれ当接させる。上記各トラニオン9、9の揺動角度を中間にすれば、上記入力回転軸2と出力歯車4との間で、中間の速度比(変速比)を得られる。
上述の図10に示した従来構造の場合、各キャビティ毎にパワーローラ8、8を2個ずつ、合計4個設けている。これら4個のパワーローラ4、4は、動力の伝達方向に対し並列に設けられている為、上記入力回転軸2と上記出力歯車4との間で動力を伝達する際には、上記4個のパワーローラ8、8が、この動力を1/4ずつ伝達する。従って、伝達可能な動力を大きくする為には、上記各キャビティ毎に設けるパワーローラの数をより多くし、これら各パワーローラが伝達する動力を低く抑える事が考えられる。
この様な事情に鑑みて特許文献1には、各キャビティ毎に設けるパワーローラの数を3個とした、トロイダル型無段変速機に関する発明が記載されている。この様な特許文献1に記載された発明は、変速の為の機構は、上述の図10に記載した従来構造と同じである。この為、各トラニオンを枢軸の軸方向に変位させる為のアクチュエータが嵩張り、トロイダル型無段変速機全体としての小型・軽量化を図りにくい。この様な事情に鑑みて、特許文献2には、各キャビティ毎に3個ずつ、合計6個設けられたトラニオンを、それぞれ揺動フレームに対し揺動自在に支持すると共に、この揺動フレームの揺動に基づいて上記各トラニオンに変速の為の変位をさせる構造が記載されている。この様な特許文献2に記載された発明の構造によれば、上記特許文献1に記載された発明に比べれば、小型・軽量化を図り易い。但し、高出力のエンジンを搭載した小型自動車用の自動変速機として実施する場合の様に、条件によっては、十分な小型・軽量化を図れない可能性がある。
この様な事情に鑑みて考えられた構造に関する発明として、特許文献3に記載されたものが知られている。この特許文献3に記載されたトロイダル型無段変速機は、図11〜12に示す様な変速機構を備える。この図11〜12に示した従来構造の場合、入力回転軸2の周囲で入力側、出力側両ディスク1、6同士の間部分に揺動フレーム13を、この入力回転軸2を中心とする揺動を可能に設けている。そして、この揺動フレーム13の径方向外端部に設けた支持板部14、14同士の間に、それぞれの内側面にパワーローラ8a、8aを回転自在に支持した3個のトラニオン9a、9aを、それぞれの両端部に設けた枢軸15、15を中心とする揺動のみ可能として支持している。これら各トラニオン9a、9aは、先に述べた図10に示した構造とは異なり、上記揺動フレーム13に対し枢軸15、15の軸方向に変位する事はない(この軸方向に積極的に変位させて、転がり接触部に変速の為のサイドスリップを発生させる事はしない)。この状態で上記各パワーローラ8a、8aの中心軸の延長線α、αは、上記両ディスク1、6の中心軸(の延長線)β上で交差する。
又、上記各枢軸15、15のうち、図11〜12の上端部に位置する2本の枢軸15、15を除く残りの枢軸15、15には、セクター歯車16、16aを固定している。そして、円周方向に隣り合うトラニオン9a、9aに関するセクター歯車16、16a同士を噛合させている。この構成により、総てのトラニオン9a、9aが、変速比を変える方向に関して同じ方向に、同じ角度だけ傾斜する様にしている。更に、上記各セクター歯車16、16aのうちの何れか1個(図11〜12の右下部)のセクター歯車16aを、カム装置17及びアクチュエータ18により、当該セクター歯車16aを固定した枢軸15を中心として揺動させる様にしている。
上記カム装置17は、上記1個のセクター歯車16aに支持したカムフォロア19と、トロイダル型無段変速機を収納したハウジング20の内面に固定したカム部材21とから成る。そして、このカム部材21に設けたカム溝22と上記カムフォロア19とを係合させている。又、上記アクチュエータ18は、油圧複動型のもので、ピストン23に設けた長孔に係合したピン24の動きを、結合ブラケット25を介して前記揺動フレーム13に伝達し、この揺動フレーム13を、前記入力回転軸2を中心として揺動させる。この揺動フレーム13の揺動に伴って、上記1個のセクター歯車16aに支持したカムフォロア19と上記カム溝22との位置関係が変化し、このセクター歯車16aが上記枢軸15を中心として揺動する。更に、このセクター歯車16aの動きが、残りのセクター歯車16、16を介して総てのトラニオン9a、9aに伝わる。この結果、これら各トラニオン9a、9aの内側面に支持された、前記各パワーローラ8a、8aが、前記入力側、出力側両ディスク1、6同士の間の変速比を変える方向に関して、同じ方向に同じ角度だけ揺動し、この変速比が所望値に調整される。
上述の様な特許文献3に記載された構造では、変速時に上記各パワーローラ8a、8aは、前記揺動フレーム13との相対位置関係に関しては、図12の表裏方向に揺動するのみである。言い換えれば、変速動作の為にこれら各パワーローラ8a、8aが上記揺動フレーム13に対して、(この揺動フレーム13と共に上記入力回転軸2の回転方向又は反回転方向に変位する事はあっても)上記各枢軸15、15の軸方向(延長線α、αに対し直角方向)に変位する事はない。又、上記揺動フレーム13は、上記入力側、出力側両ディスク1、6同士の間位置に、変速の為に必要な角度だけ揺動変位可能に支持されているのみであり、上記両ディスク1、6の軸方向(図12の表裏方向)に変位する事はない。従って、上記各トラニオン9a、9aも、上記両ディスク1、6の軸方向に変位する事はない。
一方、トロイダル型無段変速機の運転時には、上記両ディスク1、6の内側面3、7と上記各パワーローラ8a、8aの周面との転がり接触部(トラクション部)の面圧を確保する為に加える力により、上記各部材1、6、8aが弾性変形する。そして、このうちの各パワーローラ8a、8aは、図12の表裏方向に変位する。前述の図10に示した構造の場合には、各パワーローラ8、8を各トラニオン9、9に対し、基半部と先半部とを互いに偏心した支持軸(偏心軸)10、10により揺動変位可能に支持する事により、構成各部材の弾性変形に伴う上記各パワーローラ8、8の変位を可能にしていた。但し、図11〜12に示した構造の場合には、単に偏心軸により上記各パワーローラ8a、8aの揺動変位を許容するだけの構造は、採用できない。
この理由は、単に偏心軸によりこれら各パワーローラ8a、8aを揺動させただけの構造では、偏心量を回転半径とする円弧運動に基づいてこれら各パワーローラ8a、8aが、上記各枢軸15、15の軸方向(延長線α、αに対し直角な、表裏方向)に、僅かとは言え変位する為である。前述の図10に示した構造部分で説明した通り、上記各パワーローラ8a、8aが上記各枢軸15、15の軸方向に変位すると、上記各トラクション部にサイドスリップが発生し、上記各パワーローラ8a、8aを介して前記各トラニオン9a、9aに、上記各枢軸15、15を中心に揺動させる方向(変速比を変える方向)の力が加わる。この様な力は、上記変位が0.1〜0.2mm程度の場合でも発生する。上述の様なサイドスリップが発生し、上述の様な力が加わったままの状態でトロイダル型無段変速機の運転を継続する事は好ましくない。具体的には、上記サイドスリップは伝達効率及び耐久性の低下に、上記力は実際に変速比を変更する際に必要とされる力の増大に、それぞれ結び付く。
この為に前記特許文献3に記載された構造では、図13〜15に示した様な構造により、上記各部材1、6、8aの弾性変形に伴って、このうちの各パワーローラ8a、8aを、入力側、出力側両ディスク1、6の軸方向(図12の表裏方向)にのみ変位させる様にしている。この構造に使用する、トラニオン9aに対し上記パワーローラ8aを回転自在に支持する為の支持軸10aは、互いに偏心した基部26と支持軸部27とを備える。これら基部26の中心軸X26と支持軸部27の中心軸X27との偏心量は、δ1 である。このうちの基部26は、この支持軸10aを上記トラニオン9aに対し揺動自在に支持する部分である。又、上記支持軸部27は、周囲に上記パワーローラ8aを、ラジアルニードル軸受28を介して回転自在に支持する部分である。尚、図示の例では、上記基部26と上記支持軸部27との間部分に、スラスト軸受用外輪29を、一体に設けている。このスラスト軸受用外輪29は、保持器30に保持された玉31、31と組み合わされて、上記パワーローラ8aに加わるスラスト荷重を支承しつつこのパワーローラ8aを回転自在に支持する、スラスト玉軸受32を構成する。
一方、上記トラニオン9aの内側面中間部に、円形凹部33を形成している。そして、この円形凹部33に円形の(厚肉円盤状の)クランク部材34を、回転可能に内嵌している。又、このクランク部材34の一部で、このクランク部材34の中心から外れた位置に、円孔35を形成している。これらクランク部材34の外周面の中心軸X34と円孔35の中心軸X35との偏心量δ2 は、上記基部26の中心軸X26と支持軸部27の中心軸X27との偏心量δ1 と等しい(δ2 =δ1 )。そして、上記基部26を、上記円孔35に、がたつきなく、且つ、揺動可能に内嵌している。従って、上記基部26の中心軸X26と上記円孔35の中心軸X35とは互いに一致する。又、好ましくは、中立状態、即ち、上記トラニオン9aの幅方向{図14の(A)の左右方向}に関して、上記パワーローラ8aが中央位置に存在する状態で、上記支持軸部27の中心軸X27と上記クランク部材34の外周面の中心軸X34とを、ほぼ一致させる(但し、必ずしも一致させる必要はない)。
更に、上記トラニオン9aの一部で、上記円形凹部33の底部片隅部に整合する部分に、前記枢軸15、15の軸方向に長い長孔36を、この円形凹部33の底面と上記トラニオン9aの外側面とを連通する状態で形成している。そして、前記支持軸10aのうちで上記基部26の基端面{図14の(B)の右端面}の片隅部に突設したガイドロッド37を上記長孔36に、この長孔36の長さ方向(前記各枢軸15、15の軸方向、図14の上下方向)の変位を可能に支持している。上記ガイドロッド37の外径は、上記長孔36の内寸(幅)よりも僅かに小さいだけである。従って、実質的には、このガイドロッド37がこの長孔36の幅方向に変位する事はない。
前記特許文献3に記載された構造の場合、上述の様な構成により、前記入力側、出力側両ディスク1、6の軸方向片側面である、入力側、出力側両内側面3、7の軸方向変位に伴って、上記パワーローラ8aを、図15の(A)に矢印aで示す様に、この軸方向にのみ変位させる。このパワーローラ8aがこの矢印a方向に変位する際、上記ガイドロッド37は、図15の(B)に示す様に、上記長孔36の内側で、上記各枢軸15、15の軸方向に変位する。この際、上記支持軸10aと上記円形凹部33と上記クランク部材34とは、図16に示したリンク機構の如く作用して、上記パワーローラ8aの中心軸X8 (前記支持軸部27の中心軸X27)を、上記軸方向にのみ変位させる。図16は、機構学上単純なリンク機構であるから、図13〜15の構造に対応する部分に、この図13〜15に記載した符号を付して、詳しい説明は省略する。要するに、図17に示す様に、クランク部材34の外周面の中心軸X34を中心とする円孔35の中心軸X35の偏心量δ2 に基づく、同図に鎖線で示す円弧運動と、基部26の中心軸X26と支持軸部27の中心軸X27との偏心量δ1 に基づく、同図に破線で示す円弧運動とを相殺して、同図に実線で示す様に、上記支持軸部27に直線運動させるものである。
上述の様に、上記特許文献3に記載された構造によれば、構成各部材の弾性変形時に上記各パワーローラ8aを、上記入力側、出力側両ディスク1、6の軸方向にのみ変位させる事ができる。この為、上記特許文献3に記載された構造の場合は、上記入力側、出力側両ディスク1、6同士の間で動力の伝達を行なわない無負荷状態(中立状態)、即ち、初期状態で、上記各パワーローラ8a、8aの中心軸の延長線α、αを、上記両ディスク1、6の中心軸β上で交差させている。そして、上述の様に運転時に各パワーローラ8a、8aを上記軸方向にのみ変位させる事で、上記各延長線α、αを上記中心軸β上で交差させたままにして、各トラクション部に有害なサイドスリップが発生する事を防止している。
ところが、上記各パワーローラ8a、8aは、図18に模式的に示す様に、各トラニオン9aに、支持軸10aにより片持ち式に支持されている。この為、これら各パワーローラ8aは、上記入力側、出力側両ディスク1、6同士の間で動力の伝達が行なわれると、構成各部材同士の不可避的な隙間並びに弾性変形等に基づいて、図18(A)に示す様な中立状態から、同図(B)に示す様に、この動力が伝達される方向に変位すると考えられる。尚、図19は、この動力の大きさ及び方向と、上記各パワーローラ8aの変位量との関係を表している。この図19中イで示す部分は、上記構成部材同士の隙間の積算に基づく変位と考えられる。又、同図ロで示す部分は、上記構成部材同士の弾性変形の積算に基づく変位と考えられる。そして、この様に動力の伝達に伴い各パワーローラ8a、8aが変位すると、これら各パワーローラ8a、8aの各延長線α、αが上記中心軸β上で交差した状態からずれる可能性がある。この結果、上記各トラクション部でサイドスリップが発生し、これら各パワーローラ8a、8aを介して前記各トラニオン9a、9aに、各枢軸15、15を中心に揺動させる方向(変速比を変える方向)の力が加わる。具体的には、上記各トラニオン9a、9aに、変速比を小さくする(減速させる)方向の力が加わる。前述した様に、この様なサイドスリップは、伝達効率及び耐久性を低下させると共に、上記力は実際に変速比を変更(増速)する際に必要とされる力の増大に結び付く為、好ましくない。
尚、この変速比を変更する際に必要とされる力は、この変速比を変更する速度、上記入力側、出力側両ディスク1、6同士の間で伝達する動力(伝達トルク)の大きさ{この伝達トルクの大きさに対応する、押圧装置の発生する押圧力(転がり接触部の押し付け力)の大きさ}、上記各ディスク1、6及び各パワーローラ8a、8aの回転速度に応じて変化するが、何れにしても、上記伝達トルクが大きい程大きくなる。この為、上記無負荷状態(初期状態)で、上記各パワーローラ8a、8aの中心軸の延長線α、αを、上記両ディスク1、6の中心軸β上で交差させて、転がり接触部で発生するサイドスリップを0にすると、この無負荷状態で上記必要とされる力は最も小さくなる。但し、上記伝達トルクが大きい状態では、上記必要とされる力は、これら各パワーローラ8a、8aの中心軸の延長線α、αが上記両ディスク1、6の中心軸β上で交差していると仮定した状態で必要とされる力に、上述の様なサイドスリップに基づき上記各トラニオン9a、9aに加わる力が足し合わせされた値となる。この様なサイドスリップに基づく力の増大に拘らず、変速を可能とする為には、変速の為のアクチュエータ18を大型化する必要がある為、この面からも好ましくない。
特開平3−74667号公報 特開2001−165262号公報 独国特許出願公開第10246432号明細書(DE10246432A1) 青山元男著、「別冊ベストカー 赤バッジシリーズ245/クルマの最新メカがわかる本」、株式会社三雄社/株式会社講談社、平成13年12月20日、p.92−93 田中裕久著、「トロイダルCVT」、株式会社コロナ社、2000年7月13日
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、構成各部材同士の不可避的な隙間並びに弾性変形等に起因して、運転時の動力伝達に伴い各パワーローラが、各ディスクの回転方向に変位若しくは変位する傾向になっても、転がり接触部(トラクション部)で発生する有害なサイドスリップの程度を低減できる構造を実現すべく発明したものである。
本発明のトロイダル型無段変速機は、何れも、前述の特許文献3に記載されたトロイダル型無段変速機と同様に、少なくとも1対(例えば2対)のディスクと、複数(例えば各キャビティ毎に3個ずつ、合計6個)のトラニオンと、複数(例えば各キャビティ毎に3個ずつ、合計6個)のパワーローラとを備える。
このうちの各ディスクは、それぞれが断面円弧形のトロイド曲面である互いの軸方向片側面同士を対向させた状態で、互いに同心に、相対回転を自在に支持されている。
又、上記各トラニオンは、軸方向に関して上記各ディスクの軸方向片側面同士の間位置の円周方向に関して複数個所に、これら各ディスクの中心軸に対し捩れの位置にある枢軸を中心とする揺動変位を自在に設けられている。
又、上記各パワーローラは、上記各トラニオンの内側面に回転自在に支持され、球状凸面としたそれぞれの周面を、上記各ディスクの軸方向片側面にそれぞれ当接させている。 そして、上記各トラニオンの両端部に設けた上記各枢軸に対し捩り方向の力を、これら各枢軸の側から加える事により、これら各トラニオンをこれら各枢軸を中心に揺動させて、上記各ディスク同士の間の変速比を変える。
この為に、例えば上記各トラニオンを、これら各トラニオンを支持する部材(例えば揺動フレーム)に対し、それぞれの両端部に設けた枢軸の軸方向の変位を阻止した状態で、これら各枢軸を中心とする揺動のみ可能に支持する。そして、変速比を変える際には、転がり接触部で発生するサイドスリップに基づく力を利用せずに、上記各トラニオンを、上記各枢軸を中心に(強制的に)揺動させる。
特に、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機に於いては、上記各ディスク同士の間で動力の伝達を行なわない無負荷状態で、上記各パワーローラの位置を、これら各パワーローラの中心軸の延長線と上記各ディスクの中心軸の延長線とが交差する位置から、運転時に上記各ディスク同士の間で使用頻度の高い方向(例えば車両に組み込む場合は、この車両を前進させる方向)の動力を伝達する事に伴い、上記各パワーローラが変位する方向と逆方向にずらしている。
又、請求項2に記載したトロイダル型無段変速機に於いては、上記各パワーローラが上記各ディスクを介してこれら各ディスクの軸方向に押圧される事に基づき、これら各パワーローラを、この軸方向だけでなく、運転時に上記各ディスク同士の間で使用頻度の高い方向(例えば車両を前進させる方向)の動力を伝達する事に伴い上記各パワーローラが変位する方向とは、逆方向にも変位させる。
又、必要に応じて、請求項5に記載した様に、上記請求項1と上記請求項2との両方を同時に満たす構造を採用する事もできる。この場合には、例えば、上記各ディスク同士の間で動力の伝達を行なわない無負荷状態での、上記各パワーローラの位置を、構成各部材同士の不可避的な隙間に基づく変位分だけ、上記各パワーローラが変位する方向と逆方向にずらす。又、これと共に、運転時(動力伝達時)に、これら各パワーローラが上記各ディスクの軸方向に押圧される事に基づき、これら各パワーローラを上記軸方向だけでなく上記逆方向にも変位させる事で、構成各部材同士の弾性変形に基づく変位分を相殺(キャンセル)させる。
上述の様に構成する本発明のトロイダル型無段変速機によれば、構成各部材同士の不可避的な隙間並びに弾性変形等に起因して、運転時の動力伝達に伴い各パワーローラが変位しても、転がり接触部(トラクション部)で発生する有害なサイドスリップの程度を低減できる。
即ち、請求項1に記載した本発明のトロイダル型無段変速機の場合は、無負荷状態でパワーローラを、これら各パワーローラの中心軸の延長線と両ディスクの中心軸とが交差する位置からずらしておく。そして、運転時に使用頻度の高い方向(例えば前進方向)の動力を伝達する状態で、この動力伝達に伴う上記各パワーローラの変位に基づき、これら各パワーローラの中心軸の延長線と上記両ディスクの中心軸とを交差させる(ずれをなくす)。この状態で、上記各トラクション部に発生する有害なサイドスリップの程度を最も小さくでき、伝達効率及び耐久性の低下防止と、変速動作の際に必要とされる力の増大防止とを図れる。
又、請求項2に記載したトロイダル型無段変速機の場合は、運転時に上記各パワーローラを、ディスクの軸方向だけでなく、動力伝達に伴い上記各パワーローラが変位する方向と逆方向にも変位する様にしている。この為、この変位と、上記動力伝達に伴う変位とが互いに相殺(キャンセル)され、これら各パワーローラの中心軸の延長線と上記両ディスクの中心軸の延長線とを交差させたままにできる{実際には常に交差した状態のままとする事は不可能であるが、この交差した状態に近い状態のまま(交差した状態からのずれ量が常に小さいまま)にできる}。この結果、上記各トラクション部に発生する有害なサイドスリップの程度を常に小さくでき、伝達効率及び耐久性の低下防止と、変速動作の際に必要とされる力の増大防止とを図れる。
請求項1に記載した発明を実施する場合に好ましくは、運転時に各ディスク同士の間で使用頻度の高い方向(例えば車両に組み込む場合はこの車両を前進させる方向)の動力の最大値を伝達する状態で、或いは、使用頻度の高い値(例えば前進方向の平均値若しくは高速道路での巡航速度に対応する値)を伝達する状態で、これら各パワーローラの中心軸の延長線と上記両ディスクの中心軸の延長線とが交差する様に、パワーローラの位置のずれ量を設定する。
この様に構成すれば、各トラクション部に発生するサイドスリップの程度を小さくでき、伝達効率及び耐久性の低下防止と、変速動作の際に必要とされる力の増大防止とを図れる。
即ち、上記各パワーローラの位置のずれ量を、動力の最大値を伝達する状態で交差する様に設定すれば、トラクション部に最も大きい力が加わる状態でのサイドスリップの程度を最も小さくできる。この為、その分、伝達効率及び耐久性の低下を防止できると共に、変速動作に必要とされる力の増大防止を図れる。一方、上記各パワーローラの位置のずれ量を、使用頻度の高い値を伝達する状態で交差する様に設定すれば、運転中に占める、この交差した状態の時間を多く確保できる。この為、その分、伝達効率及び耐久性の低下を防止できると共に、変速動作に必要とされる力の増大防止を図れる。
又、請求項2に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項3に記載した様に、各パワーローラを、各トラニオンの内側に支持軸を介して支持する。又、この支持軸を、上記各トラニオンに対し揺動自在に支持される基部と、その周囲に上記各パワーローラを回転自在に支持する支持軸部とを備えたものとする。そして、これら基部と支持軸部とを互いに偏心させる事により、上記各パワーローラを上記トラニオンに対し上記基部を中心に揺動自在(偏心量を回転半径とした円弧運動自在)とし、この揺動に基づきこれら各パワーローラを、各ディスクの軸方向だけでなく、動力の伝達に伴うこれら各パワーローラの変位方向と逆方向にも変位可能とする。
或いは、請求項4に記載した様に、各パワーローラを、各トラニオンの内側に支持軸を介して支持する。そして、この支持軸の基部をこのトラニオンに設けた支持孔内に、各ディスクの軸方向だけでなく、動力の伝達に伴う上記各パワーローラの変位方向と逆方向にも変位可能に内嵌する。この為に、例えば、上記支持孔の断面形状を小判状(長穴)とすると共に、この支持孔の断面の長径を、上記各ディスクの中心軸に対して傾斜させる(角度を持たせる)。
この様に構成すれば、複雑な構造や機構を必要とする事なく、各パワーローラの中心軸の延長線と両ディスクの中心軸の延長線とを交差させたまま{交差した状態に近い状態のまま(交差した状態からのずれ量が常に小さいまま)}にできる。
図1は、請求項1に対応する、本発明の実施例1を示している。尚、本実施例の特徴は、構成各部材同士の不可避的な隙間並びに弾性変形に起因して、運転時の動力伝達に伴い各パワーローラ8a、8aが変位しても、この変位に基づき各トラクション部で発生する有害なサイドスリップの程度を低減すべく、これら各パワーローラ8a、8aの初期位置(無負荷状態での位置)を工夫した点にある。その他の部分の構成及び作用は、前述の図11〜15に示した、特許文献3に記載された従来構造と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本実施例の特徴部分を中心に説明する。
本実施例の場合には、入力側、出力側各ディスク1、6(図11参照)同士の間で動力の伝達を行なわない無負荷状態で、上記各パワーローラ8a、8aの位置を、これら各パワーローラ8a、8aの中心軸α、αの延長線と上記両ディスク1、6の中心軸(の延長線)βとが交差する位置からずらしている。具体的には、運転時にこれら各ディスク1、6同士の間で使用頻度の高い方向(例えば車両に組み込む場合はこの車両を前進させる方向で、入力側ディスク1の回転方向に関して、図1の時計方向)の動力を伝達する事に伴い、上記各パワーローラ8a、8aが変位する方向(図1の時計方向)と逆方向(図1の反時計方向)に、図1のx分、ずらしている。そして、このずれ量xを、運転時に上記各ディスク1、6同士の間で使用頻度の高い方向(例えば前進方向)の動力の最大値を伝達する状態で、或いは、使用頻度の高い値(例えば前進方向の平均値若しくは高速道路での巡航速度に対応する値)を伝達する状態で、これら各パワーローラ8a、8aの中心軸α、αの延長線と上記両ディスク1、6の中心軸βとが交差する様に(ずれ量xが0になる様に)設定している。尚、運転時に上記各パワーローラ8a、8aをトラニオン9a、9aに対し、上記入力側、出力側両ディスク1、6の軸方向(図1の表裏方向)にのみ変位させる為の構造(各パワーローラ8a、8aを各トラニオン9a、9aに支持する部分の構造)に就いては、前述の図11〜15に示した構造と同様である。
この様な本実施例の場合は、車両を前進させる方向(図1の時計方向)の動力を伝達する事に伴って、上記各パワーローラ8a、8aが(図1の時計方向に)変位すると、この変位に基づいて上記ずれがなくなり(ずれ量xが0になり)、これら各パワーローラ8a、8aの中心軸α、αの延長線と上記入力側、出力側両ディスク1、6の中心軸βとが交差する。この為、この状態で、各トラクション部に発生する有害なサイドスリップの程度を最も小さく(0に)でき、伝達効率及び耐久性の低下防止と、変速動作の際に必要とされる力の増大防止とを図れる。尚、上記各パワーローラ8a、8aの位置のずれ量xを、動力の最大値を伝達する状態で交差する様に設定した場合には、上記トラクション部に最も大きい力が加わる状態でのサイドスリップを最も小さく(0に)できる。この為、その分、このサイドスリップに基づく伝達効率及び耐久性の低下を防止できると共に、このサイドスリップに基づき変速動作に必要とされる力が増大する事も防止できる。一方、上記各パワーローラ8a、8aの位置のずれ量xを、使用頻度の高い値(平均値若しくは巡航速度に対応する値)を伝達する状態で交差する様に設定すれば、運転中に占める、この交差した状態の時間を多く確保でき、その分、伝達効率及び耐久性の低下を防止できると共に、変速動作に必要とされる力が増大する事も防止できる。
図2〜3は、請求項2、3に対応する、本発明の実施例2を示している。本実施例の場合には、運転時(動力伝達時)に、各パワーローラ8a、8aが入力側、出力側各ディスク1、6(図11参照)を介してこれら各ディスク1、6の軸方向(図2の表裏方向、図3の上下方向)に押圧される事に伴って、これら各パワーローラ8a、8aを、この軸方向だけでなく、所定方向にも変位させる様に構成している。即ち、本実施例の場合は、転がり接触部に必要な押し付け力を付与する為に、上記出力側ディスク6を軸方向の変位不能に支持すると共に、軸方向変位を可能とした上記入力側ディスク1を、押圧装置によりこの出力側ディスクに向けて押圧する。従って、本実施例の場合は、運転時にこの押圧装置の発生する押圧力に基づき、上記各パワーローラ8a、8aが、上記出力側ディスク6に近付く方向(図3の下方)に変位する。そして、この変位と共に、上記各パワーローラ8a、8aを、上記入力側、出力側各ディスク1、6同士の間で使用頻度の高い方向(例えば車両に組み込む場合はこの車両を前進させる方向で、上記入力側ディスク1の回転方向に関して、図2の時計方向)の動力を伝達する事に伴い上記各パワーローラ8a、8aが変位する方向(図2の時計方向、図3の左方)と逆方向(図2の反時計方向、図3の右方)にも変位する様にしている。
この為に、本実施例の場合には、これら各パワーローラ8a、8aを、各トラニオン9b、9bの内側に、支持軸10bを介して支持している。この支持軸10bは、上記各トラニオン9b、9bに対し揺動自在に支持される基部38と、その周囲に上記各パワーローラ8a、8aを回転自在に支持する支持軸部39とを備えたものとしている。そして、これら基部38と支持軸部39とを互いに偏心させる事により、上記各パワーローラ8a、8aを上記各トラニオン9b、9bに対し、上記基部38を中心に揺動を自在(偏心量を回転半径とした円弧運動自在)としている。従って、運転時(動力伝達時)に、上記各パワーローラ8a、8aが上記出力側ディスク6に向けて(軸方向に)押圧されると、これら各パワーローラ8a、8aが、図3の実線で示す位置から同じく鎖線で示す位置に(図3の反時計方向に)揺動する。本実施例の場合は、この様な揺動に基づき、上記各パワーローラ8a、8aを、上記出力側ディスク6に近づく方向(図3の下方)だけでなく、上記動力の伝達に伴うこれら各パワーローラ8a、8aの変位方向と逆方向(図3の右方)にも変位させる。
この様な本実施例の場合も、前述した実施例1と同様に、構成各部材同士の不可避的な隙間並びに弾性変形等に起因して、運転時の動力伝達に伴い各パワーローラ8a、8aが変位しても、転がり接触部(トラクション部)で発生する有害なサイドスリップの程度を低減できる。
即ち、運転時に上記各パワーローラ8a、8aは、上述した様に、図3の下方だけでなく、同図の右方にも変位する。この為、この変位と、上記隙間並びに弾性変形に起因する、上記動力伝達に伴う(図3の左方への)変位とが互いに相殺(キャンセル)され、上記各パワーローラ8a、8aの中心軸α、αの延長線と上記入力側、出力側両ディスク1、6の中心軸βとを交差させたままにできる{実際には常に交差した状態のままとする事は不可能であるが、この交差した状態に近い状態のまま(交差した状態からのずれ量が常に小さいまま)にできる}。この結果、各トラクション部に発生する有害なサイドスリップの程度を常に小さくでき、伝達効率及び耐久性の低下防止と、変速動作の際に必要とされる力の増大防止とを図れる。
尚、本実施例の場合は、前述した実施例1の様な、無負荷状態(初期状態)で、上記各パワーローラ8a、8aの位置を、これら各パワーローラ8a、8aの中心軸α、αの延長線と上記両ディスク1、6の中心軸βとが交差する位置からずらす事は行なっていない。即ち、本実施例の場合には、初期状態で、これら中心軸α、αの延長線と中心軸βとを交差させている。運転時(動力伝達時)には、上記各パワーローラ8a、8aが上述の様に揺動する事により、上記中心軸α、αの延長線と中心軸βとが交差したままの状態{交差した状態に近い状態(交差した状態からのずれ量が小さい状態)}を維持する。
図4〜5は、請求項2、4に対応する、本発明の実施例3を示している。上述の実施例2の場合が、支持軸10bを構成する基部38と支持軸部39とを互いに偏心させていたのに対して、本実施例の場合には、支持軸10cをストレート状のもの(基半部41と先半部42とを偏心させない一直線状もの)としている。そして、この様な支持軸10cの基半部41を、トラニオン9c、9cに設けた支持孔40内で、入力側、出力側両ディスク1、6(図11参照)の軸方向(図4の表裏方向、図5の上下方向)だけでなく、動力の伝達に伴う各パワーローラ8a、8aの変位方向(図4の時計方向、図5の左方)と逆方向(図4の反時計方向、図5の右方)にも変位可能に係合(内嵌)している。この為に、本実施例の場合は、上記支持孔40の断面形状を小判状とすると共に、この小判状の断面の中心を通過する長径γの方向を、上記入力側、出力側各ディスク1、6の中心軸βの方向に対し傾斜させている(角度を持たせている)。
即ち、上記支持孔40の断面の長径γの方向を、上記出力側ディスク6に近付く程、動力の伝達に伴い上記各パワーローラ8a、8aが変位する方向と逆方向に、上記中心軸βから遠ざかる様に傾斜させている。従って、運転時(動力伝達時)に、上記各パワーローラ8a、8aが上記入力側、出力側各ディスク1、6の軸方向に押圧され{軸方向の変位を阻止された出力側ディスク6に近付く方向(図4の下方)に押圧され}ると、上記支持軸10cの基半部41が、上記支持孔40の内面に沿って変位する(転がる)。そして、この様な支持軸10cの変位に基づき、上記各パワーローラ8a、8aが、上記入力側、出力側各ディスク1、6の軸方向(図4の下方)に変位しつつ、動力の伝達に伴うこれら各パワーローラ8a、8aの変位方向と逆方向(図5の右方)にも変位する。
尚、上記入力側、出力側各ディスク1、6同士の間で動力の伝達を行なわない無負荷状態(中立状態、初期状態)では、上記支持軸10cは、上記支持孔40内で、(軸方向の変位を阻止された)上記出力側ディスク6から最も離れた位置(図5の上側)に位置する。又、この状態で、上記各パワーローラ8a、8aの中心軸α、αの延長線と上記両ディスク1、6の中心軸βとが交差する様にする。そして、運転時(動力伝達時)に、上記各パワーローラ8a、8aを支持する上記支持軸10cの基半部41が、上記支持孔40の内面に沿って変位する事により、上記中心軸α、αの延長線と中心軸βとが交差した状態{交差した状態に近い状態(交差した状態からのずれ量が小さい状態)}を維持できる様に、これら支持孔40及び支持軸10cの基半部41の形状、寸法、位置関係を規制する。要は、上記入力側、出力側各ディスク1、6の軸方向に関する、上記各パワーローラ8a、8aの位置と、この位置での動力の伝達に基づくこのパワーローラの変位量(枢軸15、15の軸方向に関する変位量)との関係で、上記中心軸α、αの延長線と中心軸βとが交差させた状態を維持できる様に、各部の寸法並びに位置関係を規制する。
この様な本実施例の場合も、前述した実施例1、2と同様に、構成各部材同士の不可避的な隙間並びに弾性変形等に起因して、運転時の動力伝達に伴い各パワーローラ8a、8aが変位しても、転がり接触部(トラクション部)で発生する有害なサイドスリップの程度を低減できる。
尚、本実施例の場合は、上記出力側ディスク6を、軸方向の変位を阻止した状態で支持している。これに対して、上記入力側ディスク1を、軸方向の変位を阻止した状態で支持した場合には、上記支持軸10cの長径γの方向の、上記入力側、出力側各ディスク1、6の中心軸βに対する傾斜方向(角度を持たせる方向)は、図示の例と逆になる。即ち、この場合には、上記長径γの方向を、上記入力側ディスク1に近付く程、動力の伝達に伴い上記各パワーローラ8a、8aが変位する方向と逆方向に、上記中心軸βから遠ざかる様に傾斜させる。又、これに伴って、無負荷状態(中立状態、初期状態)では、上記支持軸10cが、上記支持孔40内で、(軸方向の変位を阻止された)上記入力側ディスク1から最も離れた位置(図5の下側)に位置する。
その他の構成及び作用は、前述した実施例2と同様である為、重複する説明は省略する。
図6〜7は、請求項1、2、3、5に対応する、本発明の実施例4を示している。本実施例の場合は、前述した実施例1と実施例2とを組み合わせた如き構造としている。即ち、前述の図2〜3に示した実施例2の構造で、初期状態を、次の様に設定している。即ち、入力側、出力側両ディスク1、6(図11参照)同士の間で動力の伝達を行なわない無負荷状態で、各パワーローラ8a、8aの位置を、これら各パワーローラ8a、8aの中心軸α、αの延長線と上記両ディスク1、6の中心軸βとが交差する位置からずらしている。具体的には、運転時(動力伝達時)にこれら入力側、出力側両ディスク1、6同士の間で使用頻度の高い方向(例えば車両に組み込む場合はこの車両の前進方向で、上記入力側ディスク1の回転方向に関して、図6の時計方向)の動力を伝達する事に伴い、上記各パワーローラ8a、8aが変位する方向(同図の時計方向)と逆方向(同図の反時計方向)に、x分ずらしている。又、これと共に、運転(動力の伝達)に伴い、上記各パワーローラ8a、8aが支持軸10bの基部38を中心に揺動(図7の反時計方向に揺動)する事により、これら各パワーローラ8a、8aを、上記入力側、出力側各ディスク1、6の軸方向(図6の表裏方向、図7の上下方向)だけでなく、動力の伝達に伴うこれら各パワーローラ8a、8aの変位方向と逆方向(図7の右方)にも変位する様にしている。
本実施例の場合は、上記入力側、出力側各ディスク1、6同士の間で動力の伝達を行なわない無負荷状態で、上記各パワーローラ8a、8aの位置を、構成各部材同士の不可避的な隙間に基づく変位分、これら各パワーローラ8a、8aが変位する方向と逆方向にずらしている。又、これと共に、運転時(動力伝達時)に、上記支持軸10bの揺動に基づき上記各パワーローラ8a、8aを上述の様に変位させる事で、構成各部材同士の弾性変形に基づく変位分を相殺(キャンセル)させる。
その他の構成及び作用は、前述した実施例1、2と同様である為、重複する説明は省略する。
図8〜9は、請求項1、2、4、5に対応する、本発明の実施例5を示している。本実施例の場合は、前述した実施例1と実施例3とを組み合わせた如き構造としている。即ち、前述の図4〜5に示した実施例3の構造で、初期状態を、次の様に設定している。即ち、入力側、出力側両ディスク1、6(図11参照)同士の間で動力の伝達を行なわない無負荷状態で、各パワーローラ8a、8aの位置を、これら各パワーローラ8a、8aの中心軸α、αの延長線と上記両ディスク1、6の中心軸βとが交差する位置からずらしている。具体的には、運転時(動力伝達時)にこれら入力側、出力側両ディスク1、6同士の間で使用頻度の高い方向(例えば車両に組み込む場合はこの車両の前進方向で、上記入力側ディスク1の回転方向に関して、図8の時計方向)の動力を伝達する事に伴い、上記各パワーローラ8a、8aが変位する方向(同図の時計方向)と逆方向(同図の反時計方向)にずらしている。又、これと共に、運転(動力の伝達)に伴い、上記各パワーローラ8a、8aを支持する上記支持軸10cの基半部41が、支持孔40の内面に沿って変位する(転がる)事で、上記各パワーローラ8a、8aを、上記入力側、出力側各ディスク1、6の軸方向(図9の下方)だけでなく、動力の伝達に伴うこれら各パワーローラ8a、8aの変位方向と逆方向(図9の右方)にも変位する様にしている。
その他の構成及び作用は、前述した実施例1、3並びに上述した実施例4と同様である為、重複する説明は省略する。
本発明の実施例1を示す、図12と同様の図。 同実施例2を示す、図1と同方向から見た断面図。 トラニオンに対するパワーローラの変位を説明する為の模式図。 本発明の実施例3を示す、図2と同様の断面図。 図4の下から見た図。 本発明の実施例4を示す、図2と同様の断面図。 図6の下から見た図。 本発明の実施例5を示す、図2と同様の断面図。 図8の下から見た図。 従来構造の第1例を示す断面図。 同第2例を示す要部斜視図。 図11の一部を取り出して各ディスクの軸方向から見た図。 トラニオンとパワーローラとを取り出した状態で示す分解斜視図。 組み立てた状態で、(A)はトラニオンの内側面側から見た図、(B)は断面図。 同じ状態で、(A)はトラニオンの内側面側から見た斜視図、(B)は一部を切断した状態で外側面側から見た斜視図。 トラニオンに対するパワーローラの支持部と等価のリンク機構を示す略図。 パワーローラが直線運動する理由を説明する為の模式図。 運転時の動力伝達に伴うパワーローラの変位を説明する為の模式図。 動力の大きさ及び方向とパワーローラの変位量との関係の1例を示す線図。
符号の説明
1、1a、1b 入力側ディスク
2 入力回転軸
3 入力側内側面
4 出力歯車
5 出力筒
6 出力側ディスク
7 出力側内側面
8、8a パワーローラ
9、9a、9b、9c トラニオン
10、10a、10b、10c 支持軸
11 駆動軸
12 押圧装置
13 揺動フレーム
14 支持板部
15 枢軸
16、16a セクター歯車
17 カム装置
18 アクチェータ
19 カムフォロア
20 ハウジング
21 カム部材
22 カム溝
23 ピストン
24 ピン
25 結合ブラケット
26 基部
27 支持軸部
28 ラジアルニードル軸受
29 スラスト軸受用外輪
30 保持器
31 玉
32 スラスト玉軸受
33 円形凹部
34 クランク部材
35 円孔
36 長孔
37 ガイドロッド
38 基部
39 支持軸部
40 支持孔
41 基半部
42 先半部

Claims (5)

  1. それぞれが断面円弧形のトロイド曲面である互いの軸方向片側面同士を対向させた状態で、互いに同心に、相対回転を自在に支持された少なくとも1対のディスクと、軸方向に関してこれら各ディスクの軸方向片側面同士の間位置の円周方向に関して複数個所に、これら各ディスクの中心軸に対し捩れの位置にある枢軸を中心とする揺動変位を自在に設けられた複数のトラニオンと、これら各トラニオンの内側面に回転自在に支持され、球状凸面としたそれぞれの周面を、上記各ディスクの軸方向片側面にそれぞれ当接させた複数のパワーローラとを備え、上記各トラニオンの両端部に設けた上記各枢軸に対し捩り方向の力を、これら各枢軸の側から加える事により、これら各トラニオンをこれら各枢軸を中心に揺動させて、上記各ディスク同士の間の変速比を変えるトロイダル型無段変速機に於いて、上記各ディスク同士の間で動力の伝達を行なわない無負荷状態で、上記各パワーローラの位置を、これら各パワーローラの中心軸の延長線と上記各ディスクの中心軸の延長線とが交差する位置から、運転時に上記各ディスク同士の間で使用頻度の高い方向の動力を伝達する事に伴い、上記各パワーローラが変位する方向と逆方向にずらした事を特徴とするトロイダル型無段変速機。
  2. それぞれが断面円弧形のトロイド曲面である互いの軸方向片側面同士を対向させた状態で、互いに同心に、相対回転を自在に支持された少なくとも1対のディスクと、軸方向に関してこれら各ディスクの軸方向片側面同士の間位置の円周方向に関して複数個所に、これら各ディスクの中心軸に対し捩れの位置にある枢軸を中心とする揺動変位を自在に設けられた複数のトラニオンと、これら各トラニオンの内側面に回転自在に支持され、球状凸面としたそれぞれの周面を、上記各ディスクの軸方向片側面にそれぞれ当接させた複数のパワーローラとを備え、上記各トラニオンの両端部に設けた上記各枢軸に対し捩り方向の力を、これら各枢軸の側から加える事により、これら各トラニオンをこれら各枢軸を中心に揺動させて、上記各ディスク同士の間の変速比を変えるトロイダル型無段変速機に於いて、上記各パワーローラが上記各ディスクを介してこれら各ディスクの軸方向に押圧される事に基づき、これら各パワーローラを、この軸方向だけでなく、運転時に上記各ディスク同士の間で使用頻度の高い方向の動力を伝達する事に伴い上記各パワーローラが変位する方向とは、逆方向にも変位させる事を特徴とするトロイダル型無段変速機。
  3. 各パワーローラは各トラニオンの内側に支持軸を介して支持されており、この支持軸は、上記各トラニオンに対し揺動自在に支持される基部と、その周囲に上記各パワーローラを回転自在に支持する支持軸部とを備え、これら基部と支持軸部とを互いに偏心させる事により、上記各パワーローラを上記トラニオンに対し上記基部を中心に揺動自在とし、この揺動に基づきこれら各パワーローラを、各ディスクの軸方向だけでなく、動力の伝達に伴うこれら各パワーローラの変位方向と逆方向にも変位可能とした、請求項2に記載したトロイダル型無段変速機。
  4. 各パワーローラは各トラニオンの内側に支持軸を介して支持されており、この支持軸の基部を、このトラニオンに設けた支持孔内で、各ディスクの軸方向だけでなく、動力の伝達に伴う上記各パワーローラの変位方向と逆方向にも変位可能に係合させた、請求項2に記載したトロイダル型無段変速機。
  5. 各ディスク同士の間で動力の伝達を行なわない無負荷状態で、各パワーローラの位置を、これら各パワーローラの中心軸の延長線と上記各ディスクの中心軸の延長線とが交差する位置から、運転時に上記各ディスク同士の間で使用頻度の高い方向の動力を伝達する事に伴い、上記各パワーローラが変位する方向と逆方向にずらした、請求項2〜4のうちの何れか1項に記載したトロイダル型無段変速機。
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