(A)主たる実施形態
以下、本発明による開閉装置通信システムを、電動シャッター装置の配線に適用した一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
(A−1)実施形態の構成
図1は、この実施形態の開閉装置通信システムの接続関係を示す配線図である。
図1において、シャッター制御装置1から延出されている信号・電源線2には、リモコン受信機3、及び、3個の操作盤4〜6が接続されている。なお、図1とは異なるが、信号・電源線2が、リモコン受信機や操作盤等が接続されていない終端部を有する場合には、ターミネータ(終端抵抗)によって終端するようにしても良い。また、シャッター制御装置1は、シャッターカーテンを駆動制御する電動モータや電磁ブレーキを有する開閉機8と接続されており、図示しない開閉体の動作を制御するものである。開閉装置の制御システムとしては、1個の操作盤4が設けられていれば十分であるが、この実施形態では、操作盤5及び6が増設されている状態を示している。また、図1では、操作盤4及び5が開閉体の動作回数を表示する表示機能を備え、操作盤6が動作回数の表示機能を備えないものを示している。
シャッター制御装置1において、シャッターの開、閉、停止を開閉機8に指示する制御基板9には、マスター通信モジュール11が搭載されている。リモコン受信機3、及び、3個の操作盤4〜6のそれぞれには、スレーブ通信モジュール12−1〜12−4が搭載されている。リモコン受信機3においては、受信処理用の受信基板10にスレーブ通信モジュール12−1が設けられている。
マスター通信モジュール11は、制御基板9の配線端子部分に接続されるものであり、制御基板9からリモコン受信機3や操作盤4〜6への信号を送信したり、リモコン受信機3や操作盤4〜6から制御基板9への信号を受信したりするものであり、また、スレーブ通信モジュール12−1〜12−4側へ電源を供給するものである。マスター通信モジュール11が、制御基板9の配線端子部分に接続されるため、制御基板9本体の構成は従前のものと同様である。なお、マスター通信モジュール11は、シャッター制御装置1の出荷時には、既に搭載されているものである。
一方、スレーブ通信モジュール12(12−1〜12−4)は、当該スレーブ通信モジュール12が設けられているリモコン受信機3の受信基板10又は操作盤4〜6の配線端子部分に接続されるものであり、制御基板9から当該スレーブ通信モジュール12が設けられているリモコン受信機3又は操作盤4〜6への信号を受信したり、当該スレーブ通信モジュール12が設けられているリモコン受信機3又は操作盤4〜6から制御基板9への信号を送信したりするものである。スレーブ通信モジュール12がリモコン受信機3の受信基板10又は操作盤4〜6の配線端子部分に接続されるため、受信基板10又は操作盤4〜6本体の構成は従前のものと同様である。なお、スレーブ通信モジュール12−1〜12−4はそれぞれ、リモコン受信機3、操作盤4〜6の出荷時には、既に搭載されているものである。
図2は、マスター通信モジュール11(MST)及びスレーブ通信モジュール(SLV1、SLV2)12の機能の説明用配線図であって、従来の説明で用いた図6に対応する図面である。図2では、電装品101にマスター通信モジュールMSTが設けられ、電装品102及び103にそれぞれスレーブ通信モジュールSLV1、SLV2が設けられている。
電装品101は、図6に示した既存のものと同一であり、電装品101の配線端子部分101Cにマスター通信モジュールMSTが接続されている。マスター通信モジュールMSTは、信号・電源線2を接続する配線端子部分MSTCを有し、この配線端子部分MSTCに信号・電源線2が接続される。シャッター設置時においては、マスター通信モジュールMSTの配線端子部分MSTCに対し、信号・電源線2を接続する作業が実行される。
マスター通信モジュールMSTは、電装品101の出力電源(DC電源)を取り込んで信号・電源線2側に供給したり、電装品101の信号入力部(S2〜S4)の入力信号を取り込んで信号・電源線2にシリアルに送出(電源に重畳出力)したりするものである。また、マスター通信モジュールMSTは、信号・電源線2を介して、スレーブ通信モジュールSLV1、SLV2からの信号がシリアル信号として与えられたときには、電装品101に対し、そのスレーブ通信モジュールSLV1、SLV2が設けられている電装品102、103における信号入力部(S5及びS6、S1)が恰も当該マスター通信モジュールMSTに存在するように振る舞うものである。
電装品102及び103はそれぞれ、図6に示した既存のものと同一であり、電装品102及び103の配線端子部分102C及び103Cにスレーブ通信モジュールSLV1、SLV2が接続されている。スレーブ通信モジュールSLV1及びSLV2はそれぞれ、信号・電源線2を接続する配線端子部分SLV1C、SLV2Cを有し、これら配線端子部分SLV1C、SLV2Cに信号・電源線2が接続される。シャッター設置時においては、スレーブ通信モジュールSLV1、SLV2の配線端子部分SLV1C、SLV2Cに対し、信号・電源線2を接続する作業が実行される。
スレーブ通信モジュールSLV1及びSLV2はそれぞれ、接続されている電装品102、103の信号入力部(S5及びS6、S1)の入力信号を取り込んで信号・電源線2にシリアルに送出するものである。また、スレーブ通信モジュールSLV1及びSLV2はそれぞれ、信号・電源線2を介して、マスター通信モジュールMSTから電源電圧に重畳されている信号がシリアル信号として与えられたときには、接続されている電装品102、103に対し、電源を供給すると共に、そのマスター通信モジュールMSTが設けられている電装品101における信号入力部(S3及びS4、S2)が恰も当該スレーブ通信モジュールSLV1、SLV2に存在するように振る舞うものである。
図3は、図2のマスター通信モジュールMST及びスレーブ通信モジュールSLV1間で授受されるシリアル信号の構成例を示す説明図である。
マスター通信モジュールMSTは、スレーブ通信モジュールSLV1へ送信するシリアル信号(下りシリアル信号)は、最初に、スレーブ通信モジュールSLV1に付与されているアドレスを位置させ、その後、電装品101の信号入力部(S3及びS4)の入力信号をシリアルに位置させる。スレーブ通信モジュールSLV1は、任意のタイミングで送信動作することができず、マスター通信モジュールMSTからの下りシリアル信号が終了した直後で、マスター通信モジュールMSTへの上りシリアル信号を送信する。上りシリアル信号は、例えば、電装品102の信号入力部(S5及びS6)の入力信号をシリアルに配置させたものである。マスター通信モジュールMSTは、スレーブ通信モジュールSLV1への下りシリアル信号の送信後は、そのスレーブ通信モジュールSLV1からの上りシリアル信号の受信状態に移行する。
図4は、図1に示した実施形態におけるマスター通信モジュール11の機能的な内部構成例を示すブロック図である。
図4において、マスター通信モジュール11は、信号取込手段20、アドレス設定手段21、タイミング制御手段22、下り信号発生手段23、信号・電源線ドライバ手段24、上り信号検出手段25、上り信号抽出手段26及び信号出力手段27を有する。
信号取込手段20は、制御基板9からリモコン受信機3や操作盤4〜6への信号を取り込むものである。図3の例であれば、信号取込手段20は、信号入力部S2〜S4の状態を取り込むものである。
アドレス設定手段21は、各スレーブ通信モジュール12−1〜12−4に付与(設定)されているアドレスを記憶していると共に、直前に転送動作したスレーブ通信モジュール(12−1〜12−4のいずれか)をマークしておくものである。
タイミング制御手段22は、転送先のスレーブ通信モジュールを例えば巡回的に決定すると共に、そのスレーブ通信モジュールへの送信タイミングや、そのスレーブ通信モジュールからの受信タイミングを制御するものである。
下り信号発生手段23は、アドレス設定手段21に記憶されているアドレスや信号取込手段20が取り込んだ信号から、タイミング制御手段22が送信先と決定したスレーブ通信モジュールへの下りシリアル信号を形成するものである。
信号・電源線ドライバ手段24には、下り信号発生手段23が形成した下りシリアル信号と、図示しないDC電源からの電源電圧が与えられ、信号・電源線ドライバ手段24は、電源電圧に下りシリアル信号を重畳し、信号・電源線2を駆動するものである。
上り信号検出手段25は、信号・電源線2の状態(例えば、電圧や電流)を監視し、上りシリアル信号を検出するものである。
上り信号抽出手段26は、タイミング制御手段22の制御下で、受信対象のスレーブ通信モジュールからの下りシリアル信号を抽出し、下りシリアル信号に含まれている個別の信号を分離するものである。
信号出力手段27は、リモコン受信機3や操作盤4〜6から制御基板9への信号を制御基板9へ出力するものである。図3の例であれば、信号出力手段27は、信号出力部L1、L5、L6へ出力するものである。
図5は、図1に示した実施形態におけるスレーブ通信モジュール12(12−1〜12−4)の機能的な内部構成例を示すブロック図である。
図5において、スレーブ通信モジュール12は、接続極性判定・制御手段30、下り信号検出手段31、DC電源取出手段32、アドレス保持手段33、下り信号抽出手段34、信号出力手段35、信号取込手段36、タイミング制御手段37、上り信号発生手段38及び信号・電源線ドライバ手段39を有する。
接続極性判定・制御手段30は、信号・電源線2が当該スレーブ通信モジュール12にどのように接続されたかを判定し、信号・電源線2と当該スレーブ通信モジュール12の内部との接続を制御するものである。例えば、信号・電源線2の+極性の電線が当該スレーブ通信モジュール12の+極性の端子と接続され、信号・電源線2の−極性の電線が当該スレーブ通信モジュール12の−極性の端子と接続されている場合であれば、接続極性判定・制御手段30は、信号・電源線2と当該スレーブ通信モジュール12の内部とをそのまま接続させる。一方、信号・電源線2の+極性の電線が当該スレーブ通信モジュール12の−極性の端子と接続され、信号・電源線2の−極性の電線が当該スレーブ通信モジュール12の+極性の端子と接続されている場合であれば、接続極性判定・制御手段30は、内蔵する極性切替部を介して、信号・電源線2と当該スレーブ通信モジュール12の内部とを接続させる。この接続極性判定・制御手段30により、信号・電源線2と当該スレーブ通信モジュール12とが極性が整合しないように接続されても、スレーブ通信モジュール12の内部を正常に動作させることができる。接続極性判定・制御手段30は、例えば、信号・電源線2の2電線のうちいずれが高電位であるかに基づいて極性を判定する。
下り信号検出手段31は、信号・電源線2の状態(例えば、電圧や電流)を監視し、下りシリアル信号を検出するものである。
DC電源取出手段32は、信号・電源線2から、スレーブ通信モジュール12が接続されている周辺電装品(リモコン受信機3や操作盤4〜6)が必要とするDC電源を得るものである。なお、電装品の種類によっては、このDC電源取出手段32を機能させないようにしても良い。
アドレス保持手段33は、当該スレーブ通信モジュール12に付与されているアドレスを保持しているものである。
下り信号抽出手段34は、下り信号検出手段31が検出した下りシリアル信号におけるアドレスが、アドレス保持手段33が保持しているアドレスと一致したときに、下りシリアル信号を取り出し、下りシリアル信号に含まれている個別の信号を分離するものである。
信号出力手段35は、制御基板9から、当該スレーブ通信モジュール12が設けられている周辺電装品(リモコン受信機3や操作盤4〜6)への信号を周辺電装品へ出力するものである。図3の例であれば、電装品102の信号出力手段35は、信号出力部L3、L4へ出力するものである。
信号取込手段36は、当該スレーブ通信モジュール12が設けられている周辺電装品(リモコン受信機3や操作盤4〜6)から制御基板9への信号を取り込むものである。図3の例であれば、電装品102の信号取込手段36は、信号入力部S5、S6の状態を取り込むものである。
タイミング制御手段37は、下り信号抽出手段34が当該スレーブ通信モジュール12への下りシリアル信号を検出したときを起点とした所定時間後から、当該スレーブ通信モジュール12からの送信タイミングを制御するものである。
上り信号発生手段38は、タイミング制御手段37によるタイミング制御を受けながら、信号取込手段36が取り込んだ信号から、マスター通信モジュール11への上りシリアル信号を形成するものである。
信号・電源線ドライバ手段39には、電源電圧に上りシリアル信号を重畳し、信号・電源線2を駆動するものである。
(A−2)実施形態の動作
次に、実施形態の開閉装置通信システム1の動作などを説明する。
新たに、電動シャッター装置を設置する際には、シャッター制御装置1、リモコン受信機3、操作盤4〜6、開閉機8などが運び込まれ、所定位置に取り付けられる。ここで、シャッター制御装置1は、マスター通信モジュール11が搭載されている状態で運び込まれて設置され、リモコン受信機3、及び、3個の操作盤4〜6のそれぞれは、スレーブ通信モジュール12−1〜12−4が搭載されている状態で運び込まれて設置される。
その後、信号・電源線2の敷設や、信号・電源線2と、シャッター制御装置1、リモコン受信機3、操作盤4〜6、開閉機8などとの接続などが実行される。
信号・電源線2とシャッター制御装置1との接続は、シャッター制御装置1にマスター通信モジュール11が搭載されているため、信号・電源線2を構成する2電線についての接続で済む。同様に、信号・電源線2と周辺電装品(リモコン受信機3、操作盤4〜6)との接続は、周辺電装品にスレーブ通信モジュール12(12−1〜12−4)が搭載されているため、信号・電源線2を構成する2電線についての接続で済む。
仮に、新たに、電動シャッター装置を設置する際には、周辺電装品として、リモコン受信機3及び操作盤4を設置し、後日、操作盤5や6を増設する場合であっても、操作盤5や6にスレーブ通信モジュール12−3、12−4が搭載されているため、操作盤5や6を信号・電源線2に接続するには、信号・電源線2を構成する2電線についての接続で済む。なお、マスター通信モジュール11として、当初から増設を考慮した構成としておくことにより、マスター通信モジュール11を交換することなく、増設に対応することが好ましい。
電動シャッター装置としての配線が完成した状態において、シャッター制御装置1に設けられているマスター通信モジュール11は、所定周期でしかも巡回的に、リモコン受信機3、操作盤4〜6との通信期間を設定し、通信期間の前半側で、設定された周辺電装品(リモコン受信機3、操作盤4〜6)に対する、その周辺電装品に係るアドレスを有する下りシリアル信号を送信し、通信期間の後半側で、設定された周辺電装品(リモコン受信機3、操作盤4〜6)からの上りシリアル信号を受信する。
各スレーブ通信モジュール12−1〜12−4はそれぞれ、下りシリアル信号のアドレスを監視し、自己宛の下りシリアル信号を受信すると共に、この受信を契機として、上りシリアル信号を形成して送信する。
マスター通信モジュール11は、下りシリアル信号の形成、送信時においては、送信先のスレーブ通信モジュール12(12−1〜12−4)が設けられている周辺電装品(リモコン受信機3や操作盤4〜6)へ制御基板9が送信しようとする信号を、制御基板9から取り込んで下りシリアル信号を形成して送信する。また、マスター通信モジュール11は、周辺電装品(リモコン受信機3や操作盤4〜6)からの上りシリアル信号が与えられた際には、上りシリアル信号を分解し、スレーブ通信モジュール12(12−1〜12−4)が周辺電装品(リモコン受信機3や操作盤4〜6)から取り込んだ信号を得て、制御基板9に対して、恰もマスター通信モジュール11及びスレーブ通信モジュール12が存在しないで、周辺電装品(リモコン受信機3や操作盤4〜6)が直接接続されているように振る舞う。
スレーブ通信モジュール12(12−1〜12−4)は、制御基板9からの自己への下りシリアル信号が与えられた際には、下りシリアル信号を分解し、マスター通信モジュール11が制御基板9から取り込んだ信号を得て、当該スレーブ通信モジュール12が設けられている周辺電装品(リモコン受信機3や操作盤4〜6)に対して、恰もスレーブ通信モジュール12及びマスター通信モジュール11が存在しないで、制御基板9が直接接続されているように振る舞う。また、スレーブ通信モジュール12(12−1〜12−4)は、上りシリアル信号の形成、送信時においては、送信先のマスター通信モジュール11が設けられている制御基板9へ周辺電装品(リモコン受信機3や操作盤4〜6)が送信しようとする信号を、周辺電装品9から取り込んで上りシリアル信号を形成して送信する。
例えば、操作盤4に対して、開操作がなされた場合には、操作盤4に設けられているスレーブ通信モジュール12−2は、マスター通信モジュール11から、当該スレーブ通信モジュール12−2への下りシリアル信号を受信した直後に送信する上りシリアル信号に、開操作に応じた信号を挿入して送信する。ここで、マスター通信モジュール11が、所定周期でしかも巡回的に各スレーブ通信モジュール12−1〜12−4を切り替える周期をごく短時間としておけば、操作盤4に対して開操作がなされた時点から、スレーブ通信モジュール12−2及びマスター通信モジュール11を介して、制御基板9が開操作を認識する時点までの時間をごく短いものとできる。すなわち、ほぼリアルタイムで、操作盤4の操作信号を、制御基板9が取り込むことができる。
(A−3)実施形態の効果
上記実施形態によれば、シャッター制御装置にマスター通信モジュールを搭載し、シャ制御装置の周辺電装品のそれぞれにスレーブ通信モジュールを搭載し、マスター通信モジュール及び全てのスレーブ通信モジュールを共通な信号・電源線に接続し、シャッター制御装置及び周辺電装品の信号授受を、マスター通信モジュール、信号・電源線及びスレーブ通信モジュールでなる経路で行うようにしたので、電動シャッター装置の設置時における、シャッター制御装置及び周辺電装品に対する接続数を抑え、配線作業や配線ミスを減少させることができる。
また、シャッター制御装置の周辺電装品を増廃設する際にも、増廃設する周辺電装品と、信号・電源線との接続、又は、接続解除を行うことで済み、増廃設作業を容易にすることができ、増設時での配線ミスもほぼなくすことができる。
さらに、上記実施形態によれば、各スレーブ通信モジュールが接続極性判定・制御手段を備え、信号・電源線の一対の電線がスレーブ通信モジュールに逆に接続されたとしても、接続極性判定・制御手段が、信号・電源線とスレーブ通信モジュール本体との接続を正常に切り替えるので、スレーブ通信モジュールについて配線ミスがあったとしても悪影響が及ぶことはない。
さらにまた、シャッター制御装置と周辺電装品とで授受する信号の数は限定されているので、この実施形態のように、共通の信号・電源線を利用して双方向にシリアル伝送しても、シャッター制御装置と周辺電装品との信号授受にほぼリアルタイムとみなせる時間しか遅延が生じないようにすることができる。
例えば、操作盤やリモコン受信機は、シャッター制御装置に対して開、閉、停止の指示信号を出力するものである。また、シャッター制御装置は、操作盤やリモコン受信機に対して、動作回数のカウント値のアップを指示する信号を送信したり、動作中を示すLEDの点灯を指示する信号を送信したりする程度である。図1とは異なり、障害物監視センサやリミットスイッチが周辺電装品になっていたとしても、障害物監視センサやリミットスイッチは、シャッター制御装置に対して、オン信号を出力するものである。
因みに、操作盤に対する操作に応じて、シャッター制御装置がシャッターの動作を直ちに制御しなければならず、そのため、伝送遅延が発生する複数の信号をパラレル/シリアル変換してシリアルに伝送するという発想は従来では生じ難いものであった。本願発明者は、信号数が限定されていることに着目し、シリアル伝送でも、リアルタイム性が損なわれないことに気づき、本発明を成したものである。
今日、シャッターの円筒状巻取軸の中空空間に、シャッター制御基板や電動モータを配置した電動シャッター装置も存在する。このような電動シャッター装置において、従来は、シャッター制御基板に接続可能な周辺電装品が少数に限定され、増廃設に容易に応じられないものであった。上記実施形態を適用した場合、円筒状巻取軸の中空空間にシャッター制御基板が配置されたとしても、搭載しているマスター通信モジュールに信号・電源線を接続しておけば、いかなる周辺電装品とも接続可能であるので、周辺電装品の数が少数に限定されることはなく、また、廃設にも容易に応じられる。
図1に示すように、操作盤やリモコン受信機の動作指令を発する電装品が複数存在しても、マスター通信モジュールは、いずれか1つのスレーブ通信モジュールと通信を行うことを、巡回的に行うので、マスター通信モジュール及びスレーブ通信モジュール間の通信を通じて、操作盤やリモコン受信機の複数の動作指令を調停することができる。その結果、シャッター制御基板における調停構成を省略することも期待できる。
(B)他の実施形態
上記実施形態の説明でも、変形実施形態について言及したが、さらに、以下に例示するような変形実施形態を挙げることができる。
上記実施形態では、下りシリアル信号は、スレーブ通信モジュール毎に形成するものを示したが、全てのスレーブ通信モジュールに共通の下りシリアル信号をマスター通信モジュールが形成して送信するものであっても良い。この場合、下りシリアル信号の先頭位置から数えた何番目のタイムスロットが、どのスレーブ通信モジュールに関するどの信号に関するものであるかを、各スレーブ通信モジュールに予め設定しておくことを要する。また、この場合、例えば、各スレーブ通信モジュールに、下りシリアル信号が終了した時点から、どの時間が経過するとどの信号を送信するかを設定し、複数のスレーブ通信モジュールからの上り信号が衝突することなく、マスター通信モジュールに到達するようにする。
また、上記実施形態では、マスター通信モジュールとスレーブ通信モジュールとの組が1組のものを示したが、複数組を設けるようにしても良い。例えば、上り信号と下り信号とで、組を変えるようにしても良い。また例えば、操作盤やリモコン受信機等の動作指令を発する電装品で組を構成すると共に、障害物監視センサやリミットスイッチ等の検出構成の電装品で組を構成するようにしても良い。
さらに、上記実施形態では、全ての信号を、マスター通信モジュールとスレーブ通信モジュールとを介して通信するものを示したが、一部の信号については、マスター通信モジュールとスレーブ通信モジュールとの組を介さずに通信し得るようにしても良い。例えば、操作盤の停止信号は、マスター通信モジュールとスレーブ通信モジュールとの組を介さずに、シャッター制御装置に直接与えるようにしても良い。また例えば、障害物監視センサやリミットスイッチの出力信号は、マスター通信モジュールとスレーブ通信モジュールとの組を介さずに、シャッター制御装置に直接与えるようにしても良い。
さらにまた、上記実施形態では、下り信号と上り信号とを時分割で通信するものを示したが、下り信号と上り信号とを同時並行的に通信し得るようにしても良い。例えば、下り信号と上り信号用の信号線を、マスター通信モジュールとスレーブ通信モジュールとの間に別個に敷設して同時並行的な通信を可能としても良い。また、下り信号で用いるDC電位やパルスのデューティ比と、上り信号で用いるDC電位やパルスのデューティ比とを異なるようにさせることで、同一の信号線を用いて同時並行的な通信を可能としても良い。例えば、このような方法は、特開2008−54264号公報に記載されている。
上記実施形態では、信号線と電源線とを共用させたものを示したが、信号線と電源線とを、マスター通信モジュールとスレーブ通信モジュールとの間に別個に敷設するようにしても良い。
また、上記実施形態では、スレーブ通信モジュールを搭載する周辺電装品がリモコン受信機や操作盤であるものを示したが、スレーブ通信モジュールを搭載する周辺電装品はこれに限定されない。例えば、障害物監視センサやリミットスイッチがスレーブ通信モジュールを搭載するものであっても良い。また例えば、複数のシャッターの動作を集中して制御する集中制御盤にスレーブ通信モジュールを設けるようにしても良い。この場合には、シャッター毎のシャッター制御装置にマスター通信モジュールが設けられるので、集中制御盤は、複数のスレーブ通信モジュールを搭載することになる。
さらに、上記実施形態では、スレーブ通信モジュールは下り信号を検知してから、上り信号を送信するものを示したが、スレーブ通信モジュールが自律的に送信を開始できるようにしても良い。例えば、スレーブ通信モジュールは、信号を送信しようとする際には、信号・電源線を介した通信がその時点で実行されていないことを確認し(例えば、所定時間以上、DC電圧が変化しない)、信号送信を開始するようにしても良い。例えば、操作盤に設けられているスレーブ通信モジュールは、開、閉の指示信号は下り信号を検知してから送信し、停止の指示信号は自律的に送信するようにしても良い(但し、下り信号を検知し、自己からの上り信号の送信期間がまもなくであることを認識した場合を除く)。
上記実施形態では、双方向の通信が可能なものを示したが、一方向の通信だけに応じるように構成するようにしても良い。例えば、電装品が出力機能だけを有するリモコン受信機や操作盤である場合には、上り方向だけ通信し得るようにシステムを構築しても良い。
また、上記実施形態では、マスター通信モジュールやスレーブ通信モジュールは、既存構成に追加して搭載されるように説明したが、搭載対象の構成とマスター通信モジュールやスレーブ通信モジュールを一体的に構成するようにしても良い。例えば、マスター通信モジュールやスレーブ通信モジュールに相当する構成を組み込んで、搭載対象の構成を設計すれば良い。
さらに、上記実施形態では、マスター通信モジュールと通信するスレーブ通信モジュールが複数の場合を示したが、スレーブ通信モジュールは1個であっても良い。1個の場合でも、搭載されている電装品とシャッター制御装置と通信しなければならない信号数が多い場合には、本発明の効果が有効に発揮される。
なお、信号・電源線の敷設長が長い場合には途中にブースターを介在させるようにしても良い。
上記実施形態では、シャッター制御装置がリレーシーケンスで構成されているように説明したが、マイコンを中心に構成されたシャッター制御装置に対しても、本発明を適用することができる。
また、上記実施形態では、マスター通信モジュールが制御基板に搭載されているものを示したが、マスター通信モジュールと制御基板とがケーブルを介して接続されたものであっても良い。
制御基板に搭載されているマスター通信モジュールであっても、ケーブルを介して制御基板に接続されたマスター通信モジュールであっても、マスター通信モジュールの設置位置の自由度は大きいが、開閉体を駆動する開閉機又はその近傍に位置させることが、信号・電源線の敷設効率から好ましい。
例えば、マスター通信モジュールは、開閉装置がシャッター装置であれば、開閉体を例えば巻取軸で巻回して収納するシャッターボックス内に配置され、開閉装置が上吊引戸であれば、吊ローラが転勤するガイドレールが配置されている上枠内等の上部の内部に配置される。また、マスター通信モジュールは、開閉機や電動モータ等の駆動部に取付けられていても良く、その近傍にあっても良い。なお、引戸の場合には、開閉機の電動モータはリニアモータでも良いが、マスター通信モジュールがリニアモータやその制御部に取り付けられても良く、その近傍に配置されても良い。
また、上記実施形態では、スレーブ通信モジュールが電装品に搭載されているものを示したが、スレーブ通信モジュールと電装品とがケーブルを介して接続されたものであっても良い。
スレーブ通信モジュール若しくはそれを有する電装品の設置位置の自由度も大きいが、少なくとも1つのスレーブ通信モジュールは、開閉体を駆動する開閉機から離間し、開閉体を案内若しくは保持する部材や、駆体の近傍に位置させることが、信号・電源線の敷設効率から好ましい。
スレーブ通信モジュールを有する少なくとも1つの操作盤等は、シャッターであれば、シャッターボックス外、例えば、ガイドレール表面に取り付けられ、若しくは、ガイドレール近傍の壁表面に取り付けられる。引戸の場合には、例えば、全閉時に戸先が当接する縦枠の表面やこの近傍の壁表面、引戸を収納する戸袋等の表面に配置されても良い。
さらに、上記実施形態では、上下方向に開閉するシャッター(電動シャッター装置)を対象としたシャッター制御装置及びその周辺電装品について本発明を適用したものを示したが、本発明は、シャッター用としてだけでなく、ドア、引戸、窓、オーバーヘッドドア、門扉、ゲート(駐車場などのゲート)、ロールスクリーン(例えば遮光幕)、ブラインド、オーニング装置などの他の開閉装置にも適用することが可能である。なお、本発明が適用可能な開閉装置は、開と閉のうち、少なくとも一方にのみ動作すれば良く、開閉方向も上下逆であっても、横方向や斜め方向であっても良く、回転や方向の変化などがあっても良いものである。