JP2010189694A - Dlc常温成膜のアルミロール、カーボンロール - Google Patents

Dlc常温成膜のアルミロール、カーボンロール Download PDF

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Abstract

【課題】従来のDLC成膜では高温雰囲気領域で成膜されるため、成膜対象物が樹脂製品やアルミの場合は変形することがある。とくにアルミロールの場合、表面が酸化して、後日の成膜剥離の一因となっていた。
【解決手段】本願発明では、真空チャンバー内にロールをセットし、チャンバー内を常温かつ真空状態とし、ロールの表面をスパッタリングし、ロール表面にミキシング層を形成し、真空チャンバー内にDLCの原料ガスを注入して、それら原料ガスを真空チャンバー内で反応させて、前記ロールにDLCを注入しながらロール表面にDLC層を堆積させることで、DLC膜を常温成膜する方法とした。また、本願発明のDLC常温成膜ロールは、ロールの表面にプラズマイオンが注入されたミキシング層を備え、ロールにDLCが注入され、かつロール表面にDLC層が堆積されたDLC膜を備えたものである。
【選択図】図1

Description

本願発明は、アルミロール、カーボンロール、樹脂ロール、ゴムロール、金属ロール、非鉄金属ロール、非金属ロール、パイプロール、感光ドラム(以下これらをまとめて「ロール」という)へのDLC(Diamond Like Carbon)膜の常温成膜方法とDLC膜を備えたDLC常温成膜ロールに関するものである。
DLCはダイヤモンドとグラファイトの中間的な結晶構造を持ち、高硬度、低摩擦係数、耐磨耗性、電気絶縁性、耐薬品性などの物性を持っていることから、薄膜材料として各種分野で利用されている。従来DLCの成膜は、真空チャンバー内で数150〜350℃の高温雰囲気領域で行なわれている。
従来のDLC成膜では高温雰囲気領域で成膜されるため、成膜対象物(被成膜物:ロール)が樹脂製品やアルミの場合は変形することがある。特にアルミロールの場合、表面が酸化して、後日の成膜剥離の一因となっていた。
本願発明の課題はロールの変形、ロール表面の酸化を防止できる常温成膜方法と、成膜後に成膜剥離しにくく、耐磨耗性、耐薬品性、撥水性等に優れたDLC常温成膜ロールを提供することにある。
本願発明のロールへのDLC膜の常温成膜方法は、真空チャンバー内にアルミロール、カーボンロール、樹脂ロール、ゴムロール、金属ロール、非鉄金属ロール、非金属ロール、パイプロール、感光ドラムといったロールをセットし、前記チャンバー内を常温かつ真空状態とし、前記ロールの周辺にプラズマを発生させ、ロールの表面をスパッタリングし、その後にロールに負の高電圧パルスを印加して所定のイオンガスを前記チャンバー内に注入してロール表面にミキシング層を形成し、前記高電圧パルスの周波数とは異なる周波数の高電圧パルスを印加し、真空チャンバー内にDLCの原料ガスを注入して、その原料ガスを真空チャンバー内で反応させて、前記ロールにDLCを注入しながらロール表面にDLC層を堆積させることで、DLC膜を常温成膜する方法である。この場合、前記ロールが硬質クロームメッキ、カーボンメッキといった表面処理されたものであってもよい。前記原料ガスはCとHと他のガスとの混合ガスであり、それらガスの混合比率を変えることにより、形成されるDLCの物性を制御可能とすることができる。
本願発明のDLC常温成膜ロールは、ロールの表面にプラズマイオンが注入されたミキシング層を備え、ロールにDLCが注入され、かつロール表面にDLC層が堆積されたDLC膜を備えたものである。
本願発明のロールへのDLC膜の常温成膜方法は次のような効果がある。
(1)ロール表面をスパッタリングし、ロール表面にミキシング層を形成してから、ロールにDLCを注入してロール表面にDLC層を堆積させて常温成膜するので、ミキシング層へのDLC膜の密着力が向上し、耐剥離性、耐磨耗性、耐薬品性、撥水性等に優れたDLC膜を常温成膜することが出来る。
(2)常温の真空チャンバー内で、ロール表面をスパッタリングし、ミキシング層の形成、ロールへのDLCの注入、ロール表面へのDLC層の堆積を常温で行うので、ロール変形のおそれがなく、従来、不可能であったアルミロール、樹脂ロール、ゴムロール等への成膜が可能であり、広範な分野での常温成膜が可能になる。ロールが酸化しにくくなり成膜剥離の一因も解消される。
(3)プラズマイオンの注入であるため、硬質クロームメッキ、カーボンメッキといった表面処理済のロールにもDLC膜を常温成膜することができる。
(4)ドライプロセス処理であるため排液がなく、排液による公害発生の心配がなく、環境に優しい常温成膜処理が可能である。
(5)プラズマが全方位(水平及び垂直方法)に飛散するプラズマ成膜であるため、形状の複雑なロール表面への常温成膜も可能である。
(6)真空チャンバー内に注入するDLCの原料ガスの種類、その原料ガスの混合比率、注入圧等を変えることにより、所望特性のDLC膜を常温成膜させることができる。
本願発明のDLC常温成膜ロールは次のような効果がある。
(1)耐薬品性、耐熱性、耐摩耗性などが向上し、ロール表面が高硬度化し、トライボロジー特性、ガスバリヤ特性をはじめとして各種機能が付与されるため利用分野が制約されにくく、広範囲の分野での利用が可能となる。
(2)DLCがロールに注入され、かつロール表面にDLC層が堆積されるのでロール表面が改質され、耐磨耗性、耐剥離性、帯電防止(10810Ω)、撥水性に優れ、寿命の長いロールとなる。
ロールへのDLC膜の常温成膜方法の一例を示す説明図。 フッ素化DLC中のフッ素含有量と水接触角の関係を表すグラフ。 フッ素化DLC中のフッ素含有量と、硬度及び水接触角の関係を表すグラフ。
(DLC膜の成膜方法の実施形態1)
本願発明のロールへのDLC膜の常温成膜方法の一例を以下に示す。この常温成膜方法では、ロール表面のスパッタリング、ロール表面へのミキシング層の形成、ロールへのDLC注入及びロール表面へのDLC堆積による成膜を行う。これらの作業は真空チャンバー内を真空かつ常温状態にして行う。常温状態とは、0℃以上100℃以下であるが、より望ましくは10℃以上50℃以下である。
ロールがアルミロールといった導電性である場合を図1に基づいて説明する。
1.真空チャンバー1内へのセット:表面処理したいロールを真空チャンバー1内にセットする。ロールは硬質クロームメッキ、カーボンメッキといった表面処理されたものであっても、されていないものであってもよい。
2.ロール表面のスパッタリング:真空チャンバー1内に、RF高周波電源2とICPプラズマ源3により高周波電圧を印加して、真空チャンバー1内にプラズマを発生させ、スパッタリングによりロール表面を洗浄(クリーニング)する。このとき、スパッタリングのためのArガスを真空チャンバー1内に注入してもよい。
3.ロール表面へのミキシング層の形成:高電圧パルス電源4によりロールに負の高電圧パルスを印加し、電圧を制御して、ガス注入口5からイオンガス(例えば、C、Siイオン)を真空チャンバー1内に注入し、Cラジカルを生成してロール表面にミキシング層を形成して密着性を高める。なお、ここでイオンガスとしてSiイオンを注入すると、Siがプライマーの役割を担うことができる。また、イオンガスとして、DLCの原料ガス(N2、Ar、CH4、C22、CF4、C、H、B等の混合ガス)を注入することもできる。
4.DLC成膜:高電圧パルス電源4により、前記高電圧パルスの周波数とは異なる周波数の高電圧パルスを印加し、真空チャンバー1内にガス注入口5からDLCの原料ガス(N2、Ar、CH4、C22、CF4、C、H、B等の混合ガス)を注入し、真空チャンバー1内でそれらガスを反応(C−Cの再結合)させながら、ロールへのDLC注入及びロール表面へのDLC堆積によってDLC膜を常温成膜する。
前記原料ガスとしてはN2、Ar、CH4、C22、CF4、C、H、B等の混合ガスを使用することができる。それらの混合比率を変えることでDLCの物性を変えることができる。DLCの物性はSP2/SP3比、水素含有量、密度、自由空間割合等の因子により左右され、真空チャンバーに注入するガスの種類のみならず、ガス圧、注入量、プラズマエネルギー、極性基、注入条件を変えることにより、親水性、接着性付与等を変えることもできる。例えば、前記原料ガスにフッ素Fを混合させると、ロール表面は撥水性に富み、ホウ素Bを混合させると、ロール表面は導電性に富んだものとすることができる。
(DLC膜の成膜方法の実施形態2)
本願発明のロールへのDLC膜の常温成膜方法において、ロールが絶縁性の場合を図1に基づいて説明する。
1.電極の形成:表面処理したいロールの背面に電極を設ける。電極は貼り付け、印刷、吹付けなどの方法で行うことができる。
2.真空チャンバー1内へのセット:電極を設けたロール(前記1のロール)を真空チャンバー1内にセットする。ロールは硬質クロームメッキ、カーボンメッキといった表面処理されたものであっても、されていないものであってもよい。
3.ロール表面のスパッタリング:前記電極をアンテナにして真空チャンバー1内に、RF高周波電源2とICPプラズマ源3により高周波電圧を印加して、真空チャンバー1内の電極付近にプラズマを発生させ、スパッタリングによりロール表面を洗浄(クリーニング)する。このとき、スパッタリングのためのArガスを真空チャンバー1内に注入してもよい。
4.ロール表面へのミキシング層の形成:高電圧パルス電源4により、前記電極に負の高電圧パルスを印加する。これによりマイナスの電子は電極周辺から追い出され、プラズマシースがロールから数cmのところにでき、シースと電極間に電圧がかかり、絶縁物であるロールも電極に近い電位になる。ガス注入口5からイオンガス(例えば、C、Siイオン)を真空チャンバー1内に注入し、Cラジカルを生成してロール表面にミキシング層を形成して密着性を高める。なお、ここでイオンガスとしてSiイオンを注入すると、Siがプライマーの役割を担うことができる。また、イオンガスとして、DLCの原料ガス(N2、Ar、CH4、C22、CF4、C、H、B等の混合ガス)を注入することもできる。
5.DLC成膜:高電圧パルス電源4により、前記高電圧パルスの周波数とは異なる周波数の高電圧パルスを印加し、真空チャンバー1内にガス注入口5から原料ガス(N2、Ar、CH4、C22、CF4、C、H、B等の混合ガス)を注入し、それらガスを真空チャンバー1内で反応(C−Cの再結合)させながら、ロールへのDLC注入及びロール表面へのDLC堆積によってDLC膜を常温成膜する。このとき、前記プラズマシースとロール間に存在するイオンが前記電極に引き寄せられように加速して、高エネルギーで注入され、低エネルギーでDLCがロール表面のミキシング層にデポジションしてDLC膜が常温成膜される。
この実施形態においても、真空チャンバーに注入するガスの種類のみならず、ガス圧、注入量、プラズマエネルギー、極性基、注入条件を変えることにより、親水性、接着性付与等を変えることができる。
(DLC常温成膜ロールの実施形態)
本願発明のDLC常温成膜ロールは、スパッタリングされたロール表面にプラズマイオンが注入されたミキシング層を備え、ロールにDLCが注入され、かつロール表面にDLC層が堆積されたDLC膜を備えたものである。
DLCの物性はSP2/SP3比、水素含有量、密度、自由空間割合等の因子により左右され、DLC膜の物性は真空チャンバーに注入するガスの種類のみならず、ガス圧、注入量、プラズマエネルギー、極性基、注入条件を変えることにより、摩擦係数、親水性、密着性等を変えることもできる。
また、DLCの膜厚によってもロール表面の物性に与える影響は異なる。
例えば、常温成膜の対象となるロールがゴムロール(例えば、NBRなど)の場合、DLC膜厚が厚いほど摩擦係数μを軽減させることができるが、反対に密着性は劣化する。逆に、DLC膜厚が薄いほど密着性は優れるが、摩擦係数μはあまり軽減させることができない。
真空チャンバーに注入するDLCの原料ガスの種類によってもロール表面の物性に与える影響は異なる。
例えば、ゴムロールに、4種類の注入ガス(DLCオリジナル、Ti+DLC0.4μm、Si+DLC1.2μm、F+DLC0.8μm)で夫々の摩擦係数μを比較すると以下のとおりとなる。
DLCオリジナルの場合:μ≒0.4(成膜時間t=80sec)
Ti+DLC0.4μmの場合:μ≒0.12(成膜時間t=80sec)
Si+DLC1.2μmの場合:μ≒0.09(成膜時間t=80sec)
F+DLC0.8μmの場合:μ≒0.07(成膜時間t=80sec)
このように、DLCオリジナルにくらべ、他のガスを混入させた方が顕著に摩擦係数μを軽減させることができる。
DLC成厚の際に注入するDLCの原料ガスをフッ素Fの混合物とした場合、そのフッ素Fの混合比率によってロールの撥水性に与える影響も異なる。撥水性に富んだロールは、剥離性や離型性に優れたロールとなる。
図2のグラフに示すように、DLC膜厚が厚いほどロール表面の水接触角が大きくなって、撥水性は向上する。なお、このグラフからもわかるようにフッ素の混合比率を0〜10%まで増加させると、急激に水接触角が大きくなって撥水性が向上するが、10%を超えるとその増加率は鈍化する。すなわち、DLCの常温成膜の際に注入するDLC原料ガスをフッ素Fの混合物とした場合、撥水性を向上させるためにはそのフッ素の混合比率を0〜10%とすることが望ましいといえる。
なお、DLC成厚の際に注入するDLCの原料ガスをフッ素Fの混合物とした場合、そのフッ素Fの混合比率によってロール表面の撥水性とともに硬度に与える影響も異なる。
図3のグラフに示すように、DLC膜厚が厚いほどロールの水接触角は大きくなって撥水性は向上するが、逆に、ロール表面の硬度は低下する。このグラフからもわかるように撥水性を向上させつつ硬度も保つためには、フッ素Fの混合比率を10〜20%とするのが望ましく、さらに両者グラフが交差する15%前後がより望ましい。
本願発明のロールへのDLC膜の常温成膜方法及びDLC常温成膜ロールは、アルミロール、カーボンロール、樹脂ロール、ゴムロール、金属ロール、非鉄金属ロール、非金属ロール、パイプロール、感光ドラムといったロールに限らず、プラスチック製品、ゴム製品、PETフィルム製品など他の製品にも応用することができる。
1 真空チャンバー
2 RF高周波電源
3 ICPプラズマ源
4 高電圧パルス電源
5 ガス注入口
本願発明はDLC(Diamond Like Carbon)膜が常温成膜されたアルミロール、カーボンロール、ゴムロール(パイプロール、感光ドラムを含む)に関するものである。
DLCはダイヤモンドとグラファイトの中間的な結晶構造を持ち、高硬度、低摩擦係数、耐磨耗性、電気絶縁性、耐薬品性などの物性を持っていることから、薄膜材料として各種分野で利用されている。従来DLCの成膜は、真空チャンバー内で数150〜350℃の高温雰囲気領域で行なわれている。
従来のDLC成膜では高温雰囲気領域で成膜されるため、成膜対象物(被成膜物:ロール)が樹脂製品やアルミの場合は変形することがある。特にアルミロールの場合、表面が酸化して、後日の成膜剥離の一因となっていた。
本願発明の課題はロールの変形、ロール表面に酸化を防止でき、成膜後に成膜剥離しにくく、耐磨耗性、耐薬品性、撥水性等に優れたDLC常温成膜を備えたアルミロール、ゴムロール、カーボンロールを提供することにある。
本願発明のDLC常温成膜のアルミロール、ゴムロール、カーボンロール(以下これらをまとめて「ロール」という。)は、真空チャンバー内にロールをセットし、前記チャンバー内を常温かつ真空状態とし、RF高周波電源とICPプラズマ源により高周波電圧を印加し、前記常温かつ真空状態のチャンバー内のロール周辺にプラズマを発生させてロール表面をスパッタリングして洗浄し、その後に、前記常温かつ真空状態のチャンバー内のロールに負の高電圧パルスを印加し、CイオンガスとSiイオンガスを前記チャンバー内に注入してロール表面にミキシング層を形成し、前記高電圧パルスの周波数とは異なる周波数の高電圧パルスを前記常温かつ真空状態のチャンバー内のロールに印加し、その真空チャンバー内にCとHとフッ素又は/及びホウ素を含むDLC原料ガスを注入して前記ロール表面のミキシング層にDLCを堆積させてDLC膜常温成膜されたものである。
本願発明のDLC常温成膜のアルミロール、ゴムロール、カーボンロールは、請求項1記載のDLC常温成膜のアルミロール、ゴムロール、カーボンロールにおいて、それらロール表面が硬質クロームメッキ又はカーボンメッキされ、その表面にミキシング層が形成され、ミキシング層にDLCを堆積させたものである。
本願発明のDLC常温成膜のアルミロール、ゴムロール、カーボンロールは次のような効果がある。
(1)ロール表面をスパッタリングし、ロール表面にミキシング層を形成してから、ロールにDLCを注入してロール表面にDLC層を堆積させて常温成膜するので、DLC膜がミキシング層へのDLC膜の密着力が向上し、耐剥離性、耐磨耗性、耐薬品性、撥水性等に優れたものとなる。
(2)常温の真空チャンバー内で、ロール表面をスパッタリングし、ミキシング層の形成、ロールへのDLCの注入、ロール表面へのDLC層の堆積を常温で行うので、変形しにくいロールとなり、従来とは違ったDLC膜を備えたアルミロール、ゴムロール、カーボンロールとなる。
(3)酸化しにくく、成膜剥離しにくいアルミロール、ゴムロール、カーボンロールである。
(4)ドライプロセス処理であるため排液がなく、排液による公害発生の心配がなく、環境に優しい常温成膜処理が可能である。
(5)プラズマが全方位(水平及び垂直方法)に飛散するプラズマ成膜により形成されるため、形状の複雑なロールでも表面に常温成膜を備えたロールとなる。
(6)真空チャンバー内に注入するDLCの原料ガスの種類、その原料ガスの混合比率、注入圧等を変えることにより、所望特性のDLC膜を常温成膜させることができる。
本願発明のDLC常温成膜のアルミロール、ゴムロール、カーボンロールは次のような効果ある。
(1)耐薬品性、耐熱性、耐摩耗性などが向上し、ロール表面が高硬度化し、トライボロジー特性、ガスバリヤ特性をはじめとして各種機能が付与されるため利用分野が制約されにくく、広範囲の分野での利用が可能となる。
(2)DLCがロールに注入され、かつロール表面にDLC層が堆積されるのでロール表面が改質され、耐磨耗性、耐剥離性、帯電防止(108〜10Ω)、撥水性に優れ、寿命の長いロールとなる。
ロールへのDLC膜の常温成膜方法の一例を示す説明図。 フッ素化DLC中のフッ素含有量と水接触角の関係を表すグラフ。 フッ素化DLC中のフッ素含有量と、硬度及び水接触角の関係を表すグラフ。
(DLC膜の成膜方法の実施形態1)
本願発明の、DLC常温成膜のアルミロール、ゴムロール、カーボンロールのDLC膜の常温成膜方法の一例を以下に示す。この常温成膜方法では、ロール表面のスパッタリング、ロール表面へのミキシング層の形成、ロールへのDLC注入及びロール表面へのDLC堆積による成膜を行う。これらの作業は真空チャンバー内を真空かつ常温状態にして行う。常温状態とは、0℃以上100℃以下であるが、より望ましくは10℃以上50℃以下である。
ロールがアルミロールといった導電性である場合を図1に基づいて説明する。
1.真空チャンバー1内へのセット:表面処理したいロールを真空チャンバー1内にセットする。ロールは硬質クロームメッキ、カーボンメッキといった表面処理されたものであっても、されていないものであってもよい。
2.ロール表面のスパッタリング:真空チャンバー1内に、RF高周波電源2とICPプラズマ源3により高周波電圧を印加して、真空チャンバー1内にプラズマを発生させ、スパッタリングによりロール表面を洗浄(クリーニング)する。このとき、スパッタリングのためのArガスを真空チャンバー1内に注入してもよい。
3.ロール表面へのミキシング層の形成:高電圧パルス電源4によりロールに負の高電圧パルスを印加し、電圧を制御して、ガス注入口5からイオンガス(例えば、C、Siイオン)を真空チャンバー1内に注入し、Cラジカルを生成してロール表面にミキシング層を形成して密着性を高める。なお、ここでイオンガスとしてSiイオンを注入すると、Siがプライマーの役割を担うことができる。また、イオンガスとして、DLCの原料ガス(N、Ar、CH、C、CF、C、H、B等の混合ガス)を注入することもできる。
4.DLC成膜:高電圧パルス電源4により、前記高電圧パルスの周波数とは異なる周波数の高電圧パルスを印加し、真空チャンバー1内にガス注入口5からDLCの原料ガス(N、Ar、CH、C、CF、C、H、B等の混合ガス)を注入し、真空チャンバー1内でそれらガスを反応(C−Cの再結合)させながら、ロールへのDLC注入及びロール表面へのDLC堆積によってDLC膜を常温成膜する。
前記原料ガスとしてはN、Ar、CH、C、CF、C、H、B等の混合ガスを使用することができる。それらの混合比率を変えることでDLCの物性を変えることができる。DLCの物性はSP/SP比、水素含有量、密度、自由空間割合等の因子により左右され、真空チャンバーに注入するガスの種類のみならず、ガス圧、注入量、プラズマエネルギー、極性基、注入条件を変えることにより、親水性、接着性付与等を変えることもできる。例えば、前記原料ガスにフッ素Fを混合させると、ロール表面は撥水性に富み、ホウ素Bを混合させると、ロール表面は導電性に富んだものとすることができる。
(DLC膜の成膜方法の実施形態2)
本願発明のDLC常温成膜のアルミロール、ゴムロール、カーボンロールへのDLC膜の常温成膜方法において、ロールが絶縁性の場合を図1に基づいて説明する。
1.電極の形成:表面処理したいロールの背面に電極を設ける。電極は貼り付け、印刷、吹付けなどの方法で行うことができる。
2.真空チャンバー1内へのセット:電極を設けたロール(前記1のロール)を真空チャンバー1内にセットする。ロールは硬質クロームメッキ、カーボンメッキといった表面処理されたものであっても、されていないものであってもよい。
3.ロール表面のスパッタリング:前記電極をアンテナにして真空チャンバー1内に、RF高周波電源2とICPプラズマ源3により高周波電圧を印加して、真空チャンバー1内の電極付近にプラズマを発生させ、スパッタリングによりロール表面を洗浄(クリーニング)する。このとき、スパッタリングのためのArガスを真空チャンバー1内に注入してもよい。
4.ロール表面へのミキシング層の形成:高電圧パルス電源4により、前記電極に負の高電圧パルスを印加する。これによりマイナスの電子は電極周辺から追い出され、プラズマシースがロールから数cmのところにでき、シースと電極間に電圧がかかり、絶縁物であるロールも電極に近い電位になる。ガス注入口5からイオンガス(例えば、C、Siイオン)を真空チャンバー1内に注入し、Cラジカルを生成してロール表面にミキシング層を形成して密着性を高める。なお、ここでイオンガスとしてSiイオンを注入すると、Siがプライマーの役割を担うことができる。また、イオンガスとして、DLCの原料ガス(N、Ar、CH、C、CF、C、H、B等の混合ガス)を注入することもできる。
5.DLC成膜:高電圧パルス電源4により、前記高電圧パルスの周波数とは異なる周波数の高電圧パルスを印加し、真空チャンバー1内にガス注入口5から原料ガス(N、Ar、CH、C、CF、C、H、B等の混合ガス)を注入し、それらガスを真空チャンバー1内で反応(C−Cの再結合)させながら、ロールへのDLC注入及びロール表面へのDLC堆積によってDLC膜を常温成膜する。このとき、前記プラズマシースとロール間に存在するイオンが前記電極に引き寄せられように加速して、高エネルギーで注入され、低エネルギーでDLCがロール表面のミキシング層にデポジションしてDLC膜が常温成膜される。
この実施形態においても、真空チャンバーに注入するガスの種類のみならず、ガス圧、注入量、プラズマエネルギー、極性基、注入条件を変えることにより、親水性、接着性付与等を変えることができる。
(DLC常温成膜のアルミロール、ゴムロール、カーボンロールの実施形態)
本願発明のDLC常温成膜のアルミロール、ゴムロール、カーボンロールは、スパッタリングされたロール表面にプラズマイオンが注入されたミキシング層を備え、ロールにDLCが注入され、かつロール表面にDLC層が堆積されたDLC膜を備えたものである。
DLCの物性はSP/SP比、水素含有量、密度、自由空間割合等の因子により左右され、DLC膜の物性は真空チャンバーに注入するガスの種類のみならず、ガス圧、注入量、プラズマエネルギー、極性基、注入条件を変えることにより、摩擦係数、親水性、密着性等を変えることもできる。
また、DLCの膜厚によってもロール表面の物性に与える影響は異なる。
例えば、常温成膜の対象となるロールがゴムロール(例えば、NBRなど)の場合、DLC膜厚が厚いほど摩擦係数μを軽減させることができるが、反対に密着性は劣化する。逆に、DLC膜厚が薄いほど密着性は優れるが、摩擦係数μはあまり軽減させることができない。
真空チャンバーに注入するDLCの原料ガスの種類によってもロール表面の物性に与える影響は異なる。
例えば、ゴムロールに、4種類の注入ガス(DLCオリジナル、Ti+DLC0.4μm、Si+DLC1.2μm、F+DLC0.8μm)で夫々の摩擦係数μを比較すると以下のとおりとなる。
DLCオリジナルの場合:μ≒0.4(成膜時間t=80sec)
Ti+DLC0.4μmの場合:μ≒0.12(成膜時間t=80sec)
Si+DLC1.2μmの場合:μ≒0.09(成膜時間t=80sec)
F+DLC0.8μmの場合:μ≒0.07(成膜時間t=80sec)
このように、DLCオリジナルにくらべ、他のガスを混入させた方が顕著に摩擦係数μを軽減させることができる。
DLC成の際に注入するDLCの原料ガスをフッ素Fの混合物とした場合、そのフッ素Fの混合比率によってロールの撥水性に与える影響も異なる。撥水性に富んだロールは、剥離性や離型性に優れたロールとなる。
図2のグラフに示すように、DLC膜厚が厚いほどロール表面の水接触角が大きくなって、撥水性は向上する。なお、このグラフからもわかるようにフッ素の混合比率を0〜10%まで増加させると、急激に水接触角が大きくなって撥水性が向上するが、10%を超えるとその増加率は鈍化する。すなわち、DLCの常温成膜の際に注入するDLC原料ガスをフッ素Fの混合物とした場合、撥水性を向上させるためにはそのフッ素の混合比率を0〜10%とすることが望ましいといえる。
なお、DLC成の際に注入するDLCの原料ガスをフッ素Fの混合物とした場合、そのフッ素Fの混合比率によってロール表面の撥水性とともに硬度に与える影響も異なる。
図3のグラフに示すように、DLC膜厚が厚いほどロールの水接触角は大きくなって撥水性は向上するが、逆に、ロール表面の硬度は低下する。このグラフからもわかるように撥水性を向上させつつ硬度も保つためには、フッ素Fの混合比率を10〜20%とするのが望ましく、さらに両者グラフが交差する15%前後がより望ましい。
本願発明のDLC常温成膜のアルミロール、ゴムロール、カーボンロールは、アルミロール、カーボンロール、ゴムロールパイプロール、感光ドラムといったロールに限らず、プラスチック製品、ゴム製品、PETフィルム製品など他の製品にも応用することができる。
1 真空チャンバー
2 RF高周波電源
3 ICPプラズマ源
4 高電圧パルス電源
5 ガス注入口
本願発明はDLC(Diamond Like Carbon)膜が常温成膜されたアルミロール、カーボンロール(パイプロールを含む)に関するものである。
DLCはダイヤモンドとグラファイトの中間的な結晶構造を持ち、高硬度、低摩擦係数、耐磨耗性、電気絶縁性、耐薬品性などの物性を持っていることから、薄膜材料として各種分野で利用されている。従来DLCの成膜は、真空チャンバー内で数150〜350℃の高温雰囲気領域で行なわれている。
従来のDLC成膜では高温雰囲気領域で成膜されるため、成膜対象物(被成膜物:ロール)が樹脂製品やアルミの場合は変形することがある。特にアルミロールの場合、表面が酸化して、後日の成膜剥離の一因となっていた。
本願発明の課題はロールの変形、ロール表面に酸化を防止でき、成膜後に成膜剥離しにくく、耐磨耗性、耐薬品性、撥水性等に優れたDLC常温成膜を備えたアルミロール、カーボンロールを提供することにある。
本願発明のDLC常温成膜のアルミロール、カーボンロールは、真空チャンバー内にアルミロール又はカーボンロール(以下これらをまとめて「ロール」という。)をセットし、前記チャンバー内を10℃以上50℃以下の常温状態かつ真空状態とし、RF高周波電源とICPプラズマ源により高周波電圧を印加し、前記常温かつ真空状態のチャンバー内のロール周辺にプラズマを発生させてロール表面をスパッタリングして洗浄し、その後に、前記常温かつ真空状態のチャンバー内のロールに負の高電圧パルスを印加し、CイオンガスとSiイオンガスを前記チャンバー内に注入してロール表面にミキシング層を形成し、前記高電圧パルスの周波数とは異なる周波数の高電圧パルスを前記常温かつ真空状態のチャンバー内のロールに印加し、その真空チャンバー内にCとHとフッ素又は/及びホウ素を含むDLC原料ガスを注入して前記ロール表面のミキシング層にDLCを注入し且つ堆積させてDLC膜が常温成膜されたものである。
本願発明のDLC常温成膜のアルミロール、カーボンロールは、請求項1記載のDLC常温成膜のアルミロール、カーボンロールにおいて、それらロール表面が硬質クロームメッキされ、その表面にミキシング層が形成されたものであり、その表面のミキシング層にDLCを注入し且つ堆積させたものである。
本願発明のDLC常温成膜のアルミロール、カーボンロールは次のような効果がある。
(1)ロール表面をスパッタリングし、ロール表面にミキシング層を形成してから、ロールにDLCを注入してロール表面にDLC層を堆積させて常温成膜するので、DLC膜がミキシング層へのDLC膜の密着力が向上し、耐剥離性、耐磨耗性、耐薬品性、撥水性等に優れたものとなる。
(2)常温の真空チャンバー内で、ロール表面をスパッタリングし、ミキシング層の形成、ロールへのDLCの注入、ロール表面へのDLC層の堆積を常温で行うので、変形しにくいロールとなり、従来とは違ったDLC膜を備えたアルミロール、カーボンロールとなる。
(3)酸化しにくく、成膜剥離しにくいアルミロール、カーボンロールである。
(4)ドライプロセス処理であるため排液がなく、排液による公害発生の心配がなく、環境に優しい常温成膜処理が可能である。
(5)プラズマが全方位(水平及び垂直方法)に飛散するプラズマ成膜により形成されるため、形状の複雑なロールでも表面に常温成膜を備えたロールとなる。
(6)真空チャンバー内に注入するDLCの原料ガスの種類、その原料ガスの混合比率、注入圧等を変えることにより、所望特性のDLC膜を常温成膜させることができる。
本願発明のDLC常温成膜のアルミロール、カーボンロールは次のような効果もある。
(1)耐薬品性、耐熱性、耐摩耗性などが向上し、ロール表面が高硬度化し、トライボロジー特性、ガスバリヤ特性をはじめとして各種機能が付与されるため利用分野が制約されにくく、広範囲の分野での利用が可能となる。
(2)DLCがロールに注入され、かつロール表面にDLC層が堆積されるのでロール表面が改質され、耐磨耗性、耐剥離性、帯電防止(108〜10Ω)、撥水性に優れ、寿命の長いロールとなる。
ロールへのDLC膜の常温成膜方法の一例を示す説明図。 フッ素化DLC中のフッ素含有量と水接触角の関係を表すグラフ。 フッ素化DLC中のフッ素含有量と、硬度及び水接触角の関係を表すグラフ。
(DLC膜の成膜方法の実施形態1)
本願発明の、DLC常温成膜のアルミロール、カーボンロールのDLC膜の常温成膜方法の一例を以下に示す。この常温成膜方法では、ロール表面のスパッタリング、ロール表面へのミキシング層の形成、ロールへのDLC注入及びロール表面へのDLC堆積による成膜を行う。これらの作業は真空チャンバー内を真空かつ常温状態にして行う。常温状態とは通常は0℃以上100℃以下であるが、より望ましくは(本発明では)10℃以上50℃以下である。
ロールがアルミロールといった導電性である場合を図1に基づいて説明する。
1.真空チャンバー1内へのセット:表面処理したいロールを真空チャンバー1内にセットする。ロールはアルミロールの表面に硬質クロームメッキといった表面処理されたものであってもよい。
2.ロール表面のスパッタリング:真空チャンバー1内に、RF高周波電源2とICPプラズマ源3により高周波電圧を印加して、真空チャンバー1内にプラズマを発生させ、スパッタリングによりロール表面を洗浄(クリーニング)する。このとき、スパッタリングのためのArガスを真空チャンバー1内に注入してもよい。
3.ロール表面へのミキシング層の形成:高電圧パルス電源4によりロールに負の高電圧パルスを印加し、電圧を制御して、ガス注入口5からイオンガス(例えば、C、Siイオン)を真空チャンバー1内に注入し、Cラジカルを生成してロール表面にミキシング層を形成して密着性を高める。なお、ここでイオンガスとしてSiイオンを注入すると、Siがプライマーの役割を担うことができる。また、イオンガスとして、DLCの原料ガス(N、Ar、CH、C、CF、C、H、B等の混合ガス)を注入することもできる。
4.DLC成膜:高電圧パルス電源4により、前記高電圧パルスの周波数とは異なる周波数の高電圧パルスを印加し、真空チャンバー1内にガス注入口5からDLCの原料ガス(N、Ar、CH、C、CF、C、H、B等の混合ガス)を注入し、真空チャンバー1内でそれらガスを反応(C−Cの再結合)させながら、ロールへのDLC注入及びロール表面へのDLC堆積によってDLC膜を常温成膜する。
前記原料ガスとしてはN、Ar、CH、C、CF、C、H、B等の混合ガスを使用することができる。それらの混合比率を変えることでDLCの物性を変えることができる。DLCの物性はSP/SP比、水素含有量、密度、自由空間割合等の因子により左右され、真空チャンバーに注入するガスの種類のみならず、ガス圧、注入量、プラズマエネルギー、極性基、注入条件を変えることにより、親水性、接着性付与等を変えることもできる。例えば、前記原料ガスにフッ素Fを混合させると、ロール表面は撥水性に富み、ホウ素Bを混合させると、ロール表面は導電性に富んだものとすることができる。
(DLC膜の成膜方法の実施形態2)
DLC常温成膜のアルミロール、ゴムロール、カーボンロールへのDLC膜の常温成膜方法において、ロールが絶縁性の場合を図1に基づいて説明する。
1.電極の形成:表面処理したいロールの背面に電極を設ける。電極は貼り付け、印刷、吹付けなどの方法で行うことができる。
2.真空チャンバー1内へのセット:電極を設けたロールを真空チャンバー1内にセットする。ロールは硬質クロームメッキといった表面処理されたものであっても、されていないものであってもよい。
3.ロール表面のスパッタリング:前記電極をアンテナにして真空チャンバー1内に、RF高周波電源2とICPプラズマ源3により高周波電圧を印加して、真空チャンバー1内の電極付近にプラズマを発生させ、スパッタリングによりロール表面を洗浄(クリーニング)する。このとき、スパッタリングのためのArガスを真空チャンバー1内に注入してもよい。
4.ロール表面へのミキシング層の形成:高電圧パルス電源4により、前記電極に負の高電圧パルスを印加する。これによりマイナスの電子は電極周辺から追い出され、プラズマシースがロールから数cmのところにでき、シースと電極間に電圧がかかり、絶縁物であるロールも電極に近い電位になる。ガス注入口5からイオンガス(例えば、C、Siイオン)を真空チャンバー1内に注入し、Cラジカルを生成してロール表面にミキシング層を形成して密着性を高める。なお、ここでイオンガスとしてSiイオンを注入すると、Siがプライマーの役割を担うことができる。また、イオンガスとして、DLCの原料ガス(N、Ar、CH、C、CF、C、H、B等の混合ガス)を注入することもできる。
5.DLC成膜:高電圧パルス電源4により、前記高電圧パルスの周波数とは異なる周波数の高電圧パルスを印加し、真空チャンバー1内にガス注入口5から原料ガス(N、Ar、CH、C、CF、C、H、B等の混合ガス)を注入し、それらガスを真空チャンバー1内で反応(C−Cの再結合)させながら、ロールへのDLC注入及びロール表面へのDLC堆積によってDLC膜を常温成膜する。このとき、前記プラズマシースとロール間に存在するイオンが前記電極に引き寄せられように加速して、高エネルギーで注入され、低エネルギーでDLCがロール表面のミキシング層にデポジションしてDLC膜が常温成膜される。
この実施形態においても、真空チャンバーに注入するガスの種類のみならず、ガス圧、注入量、プラズマエネルギー、極性基、注入条件を変えることにより、親水性、接着性付与等を変えることができる。
(DLC常温成膜のアルミロール、カーボンロールの実施形態)
本願発明のDLC常温成膜のアルミロール、カーボンロールは、スパッタリングされたロール表面にプラズマイオンが注入されたミキシング層を備え、ロールにDLCが注入され、かつロール表面にDLC層が堆積されたDLC膜を備えたものである。
DLCの物性はSP/SP比、水素含有量、密度、自由空間割合等の因子により左右され、DLC膜の物性は真空チャンバーに注入するガスの種類のみならず、ガス圧、注入量、プラズマエネルギー、極性基、注入条件を変えることにより、摩擦係数、親水性、密着性等を変えることもできる。
また、DLCの膜厚によってもロール表面の物性に与える影響は異なる。
例えば、常温成膜の対象となるロールがゴムロール(例えば、NBRなど)の場合、DLC膜厚が厚いほど摩擦係数μを軽減させることができるが、反対に密着性は劣化する。逆に、DLC膜厚が薄いほど密着性は優れるが、摩擦係数μはあまり軽減させることができない。
真空チャンバーに注入するDLCの原料ガスの種類によってもロール表面の物性に与える影響は異なる。
例えば、ゴムロールに、4種類の注入ガス(DLCオリジナル、Ti+DLC0.4μm、Si+DLC1.2μm、F+DLC0.8μm)で夫々の摩擦係数μを比較すると以下のとおりとなる。
DLCオリジナルの場合:μ≒0.4(成膜時間t=80sec)
Ti+DLC0.4μmの場合:μ≒0.12(成膜時間t=80sec)
Si+DLC1.2μmの場合:μ≒0.09(成膜時間t=80sec)
F+DLC0.8μmの場合:μ≒0.07(成膜時間t=80sec)
このように、DLCオリジナルにくらべ、他のガスを混入させた方が顕著に摩擦係数μを軽減させることができる。
DLC成膜の際に注入するDLCの原料ガスをフッ素Fの混合物とした場合、そのフッ素Fの混合比率によってロールの撥水性に与える影響も異なる。撥水性に富んだロールは、剥離性や離型性に優れたロールとなる。
図2のグラフに示すように、DLC膜厚が厚いほどロール表面の水接触角が大きくなって、撥水性は向上する。なお、このグラフからもわかるようにフッ素の混合比率を0〜10%まで増加させると、急激に水接触角が大きくなって撥水性が向上するが、10%を超えるとその増加率は鈍化する。すなわち、DLCの常温成膜の際に注入するDLC原料ガスをフッ素Fの混合物とした場合、撥水性を向上させるためにはそのフッ素の混合比率を0〜10%とすることが望ましいといえる。
なお、DLC成膜の際に注入するDLCの原料ガスをフッ素Fの混合物とした場合、そのフッ素Fの混合比率によってロール表面の撥水性とともに硬度に与える影響も異なる。
図3のグラフに示すように、DLC膜厚が厚いほどロールの水接触角は大きくなって撥水性は向上するが、逆に、ロール表面の硬度は低下する。このグラフからもわかるように撥水性を向上させつつ硬度も保つためには、フッ素Fの混合比率を10〜20%とするのが望ましく、さらに両者グラフが交差する15%前後がより望ましい。
1 真空チャンバー
2 RF高周波電源
3 ICPプラズマ源
4 高電圧パルス電源
5 ガス注入口

Claims (4)

  1. 真空チャンバー内にアルミロール、カーボンロール、樹脂ロール、ゴムロール、金属ロール、非鉄金属ロール、非金属ロール、パイプロール、感光ドラムといったロールをセットし、前記チャンバー内を常温かつ真空状態とし、
    前記ロールの周辺にプラズマを発生させ、ロールの表面をスパッタリングし、
    その後にロールに負の高電圧パルスを印加して所定のイオンガスを前記チャンバー内に注入してロール表面にミキシング層を形成し、
    前記高電圧パルスの周波数とは異なる周波数の高電圧パルスを印加し、真空チャンバー内にDLCの原料ガスを注入して、その原料ガスを真空チャンバー内で反応させて、前記ロールにDLCを注入しながらロール表面にDLC層を堆積させることで、DLC膜を常温成膜することを特徴とするロールへのDLC膜の常温成膜方法。
  2. 請求項1記載のロールへのDLC膜の常温成膜方法において、ロールが硬質クロームメッキ、カーボンメッキといった表面処理されたものであることを特徴とするロールへのDLC膜の常温成膜方法。
  3. 請求項1又は請求項2記載のロールへのDLC膜の常温成膜方法において、原料ガスがCとHと他のガスとの混合ガスであり、それらガスの混合比率を変えることにより、形成されるDLCの物性を制御可能としたことを特徴とするロールへのDLC膜の常温成膜方法。
  4. ロールの表面にプラズマイオンが注入されたミキシング層を備え、
    ロールにDLCが注入され、かつロール表面にDLC層が堆積されたDLC膜を備えたことを特徴とするDLC常温成膜ロール。
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