JP2002276541A - アクチュエータ及びその製造方法 - Google Patents

アクチュエータ及びその製造方法

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JP2002276541A JP2001082862A JP2001082862A JP2002276541A JP 2002276541 A JP2002276541 A JP 2002276541A JP 2001082862 A JP2001082862 A JP 2001082862A JP 2001082862 A JP2001082862 A JP 2001082862A JP 2002276541 A JP2002276541 A JP 2002276541A
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茂 堂埜
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 長期に亘って線材を保護することができると
共に電気絶縁性を確保することができ、しかも伸縮特性
が向上するアクチュエータを提供する。 【解決手段】 形状記憶合金の線材1をメッシュ状に編
組して形成されるアクチュエータに関する。形状記憶合
金の線材1の外周に、耐摩耗性が高く、電気絶縁性が高
く、摩擦係数が小さいDLC皮膜2を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、通電加熱によって
作動させることができる形状記憶合金を用いたメッシュ
状のアクチュエータ及びその製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】形状記憶合金の線材を編組して作製した
メッシュ状のアクチュエータが特開平6−102933
号公報などで提供されている。このものは、形状記憶合
金の線材を編組してメッシュ状に形成したものであり、
形状記憶合金の変態温度にまで加熱されると、記憶され
た形状に網目が伸縮して変形するようになっている。従
って、この形状記憶合金の線材に通電して加熱すること
によって、メッシュ状のアクチュエータに伸縮の変形動
作をさせることができ、各種の機器の制御などに用いる
ことができるのである。
【0003】上記のようなメッシュ状のアクチュエータ
にあって、形状記憶合金の線材は交差したり、狭い隙間
で近接したりして重なり合っているので、アクチュエー
タが伸縮の変形動作をする際に、線材の重なり合ってい
る部分同士が擦れ合い、線材が摩耗して破損するおそれ
がある。また、線材に通電して発熱させる場合、線材が
重なって接触していると、線材に直列通電をすることが
できなくなる。
【0004】このために、形状記憶合金の線材の外周に
樹脂を被覆し、線材を保護すると共に線材同士の接触部
分での電気絶縁性を確保するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし樹脂の被覆で
は、アクチュエータの伸縮の変形動作が繰り返して多数
回行なわれると、線材同士が重なる部分の多数回に及ぶ
擦れ合いによって、樹脂の膜が容易に摩耗して剥がれが
生じるおそれがあり、線材の保護や電気絶縁性を確保す
ることができなくなるものであった。
【0006】本発明は上記の点に鑑みてなされたもので
あり、長期に亘って線材を保護することができると共に
電気絶縁性を確保することができ、しかも伸縮特性が向
上するアクチュエータ及びその製造方法を提供すること
を目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に係る
アクチュエータは、形状記憶合金の線材1をメッシュ状
に編組して形成されるアクチュエータにおいて、形状記
憶合金の線材1の外周にDLCの皮膜2を形成して成る
ことを特徴とするものである。
【0008】また請求項2の発明は、請求項1におい
て、形状記憶合金の線材1の表面にプレコートされたW
Cの皮膜3を介してDLC皮膜2を形成して成ることを
特徴とするものである。
【0009】また請求項3の発明は、請求項1におい
て、形状記憶合金の線材1の表面にプレコートされたS
iO2の皮膜4を介してDLC皮膜2を形成して成るこ
とを特徴とするものである。
【0010】また請求項4の発明は、請求項1におい
て、形状記憶合金の線材1の表面にプレコートされた樹
脂の皮膜5を介してDLC皮膜2を形成して成ることを
特徴とするものである。
【0011】また請求項5の発明は、請求項4におい
て、樹脂の皮膜5とDLC皮膜2の境界部を樹脂とDL
Cとが混在する層6で形成して成ることを特徴とするも
のである。
【0012】また請求項6の発明は、請求項1乃至5の
いずれかにおいて、DLCは30質量%以上の水素を含
有するものであることを特徴とするものである。
【0013】本発明の請求項7に係るアクチュエータの
製造方法は、形状記憶合金の長尺の線材1を長手方向に
送りながらCVD法で線材1の外周にDLC皮膜2を形
成し、この後、このDLC皮膜2を形成した線材1をメ
ッシュ状に編組することを特徴とするものである。
【0014】本発明の請求項8に係るアクチュエータの
製造方法は、形状記憶合金の長尺の線材1を長手方向に
送りながらPVD法で線材1の外周にDLC皮膜2を形
成し、この後、このDLC皮膜2を形成した線材1をメ
ッシュ状に編組することを特徴とするものである。
【0015】また請求項9の発明は、請求項7又は8に
おいて、プラズマ中で形状記憶合金の線材1の外周にD
LC皮膜2を形成するにあたって、線材1に負のバイア
ス電圧を印加することを特徴とするものである。
【0016】また請求項10の発明は、請求項7乃至9
のいずれかにおいて、プラズマ中で形状記憶合金の線材
1の外周にDLC皮膜2を形成するにあたって、線材1
を囲むように複数枚の電極7を配置することを特徴とす
るものである。
【0017】また請求項11の発明は、請求項7乃至1
0のいずれかにおいて、プラズマ中で形状記憶合金の線
材1の外周にDLC皮膜2を形成するにあたって、プラ
ズマ生成用のガスを導入するガス導入口8を線材1の外
周を囲むように配置することを特徴とするものである。
【0018】また請求項12の発明は、請求項7乃至1
1のいずれかにおいて、形状記憶合金の長尺の線材1を
長手方向に送りながら、プラズマで線材1の表面を洗浄
した後、線材1の外周にDLC皮膜2を形成することを
特徴とするものである。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。
【0020】線材1はNiTi合金やCu−Zn系合金
などの形状記憶合金(SMA)で形成されるφ0.50
mm以下の細線であり、図1(a)に示すように、この
線材1の外周には全面に亘ってDLCの皮膜2が最外層
となるように被覆して設けてある。DLC(Diamond Li
ke Carbon;ダイヤモンド状炭素)はダイヤモンドに近
い性質を示すアモルファス構造のカーボンであり、樹脂
よりもはるかに、耐摩耗性が高く、電気絶縁性が高く、
また摩擦係数が小さいなどの特性を有する。
【0021】そしてこの線材1をメッシュ状に交差させ
ながら編組することによって、図1(b)のような多数
の網目を有するメッシュ状のアクチュエータAを作製す
ることができるものである。このアクチュエータAの線
材1には直流電源を有する温度制御部12が接続してあ
り、線材1に直流電流を通電することができるようにし
てある。
【0022】このように形成されるメッシュ状のアクチ
ュエータAにあって、温度制御部12の電源から直流電
流を線材1に通電すると、線材1に電流が流れる際に発
生するジュール熱で線材1が加熱される。そして形状記
憶合金の変態温度にまで加熱されると、記憶された形状
に線材1が変形し、アクチュエータAはその網目が伸縮
して変形する。アクチュエータAはこのようにメッシュ
形状であるために、網目の伸縮による可撓性が高く、容
易に大きく変形すると共に、しかも線材1は細いために
ジュール熱の発生で急速に発熱するものであり、低電流
の通電によって迅速な応答性でアクチュエータAを大き
く変形動作させることができるものである。
【0023】また、このアクチュエータAを変形動作さ
せる際に、線材1同士が交差したり、狭い隙間で近接し
たりして重なり合っている部分では、線材1間で擦れ合
いが発生するが、線材1の表面は耐摩耗性の高いDLC
皮膜2で被覆されているので、DLC皮膜2は擦れ合い
によって容易に摩耗せず剥離しないものであり、長期に
亘って線材1を保護することができるものである。しか
もこのDLC皮膜2は電気絶縁性が高く、線材1同士が
接触する部分で電流の短絡が起こらないものであり、線
材1に直列通電を行なうことができ、通電電流値を大幅
に下げても発熱させることができるものである。またD
LC皮膜2は摩擦係数が小さいので、アクチュエータA
が伸縮変形する際に線材1間に生じる摩擦抵抗を低減す
ることができ、アクチュエータAの伸縮特性が向上する
ものである。
【0024】上記のようなアクチュエータAを製造する
にあたっては、まず、形状記憶合金の線材1の外周にD
LC皮膜2を形成し、このDLC皮膜2を形成した線材
1をメッシュ編みし、この後、例えば線材1がNiTi
合金の場合は450℃程度の温度で加熱処理することに
よって、形状を記憶させることによって、行なうことが
できる。ここで、形状記憶合金の線材1をメッシュ編み
した後にDLC皮膜2の形成を行なうと、成膜工程中に
温度が例えば120℃程度以上に温度が上がったとき
に、形状記憶が失われてしまうことがあるが、上記のよ
うに形状記憶合金の線材1にDLC皮膜2を形成した後
にメッシュ編みしてアクチュエータAを作製するように
すれば、このような問題はなくなるものである。
【0025】また、線材1の外周へのDLC皮膜2の形
成は、プラズマCVDなどのCVD法(化学蒸着法)
や、スパッタリング、イオンプレーティングなどのPV
D法(物理蒸着法)で行なうことができる。
【0026】図2は線材1の外周にプラズマCVD法で
DLC皮膜2を形成する工程を示すものであり、蒸着チ
ャンバー14内で線材1にDLC皮膜2を蒸着するよう
にしてある。すなわち、電気的に接地された蒸着チャン
バー14内は一対の防着板15a,15bで仕切って、
中央の成膜室16と一側部の送り出し室17と他側部の
巻取り室18が形成してある。また形状記憶合金の線材
1としては長尺のものが用いられるものであり、送り出
しリール19に巻いた状態で送り出し室17内にセット
してある。この長尺の線材1は送り出しリール19から
繰り出して、一方の防着板15aの通過孔20aから成
膜室16に通し、他方の防着板15bの通過孔20bか
ら巻取り室18に送り、巻取りリール22に巻き取るよ
うになっている。送り出し室17内と巻取り室18内に
はそれぞれ線材1に接触しながら回転するロール24が
配設してあり、線材1を押さえると共に電気的に線材1
をアースするようにしてある。さらに蒸着チャンバー1
4には送り出し室17においてガス導入口23が設けて
ある。
【0027】また、成膜室16内には、成膜室16に通
される線材1を挟んで対向するように、一対の電極7,
7が配設してある。一方の電極7aは蒸着チャンバー1
4に接続してアースしてあり、他方の電極7bにはDC
あるいはRFの電源26が接続してある。
【0028】そしてプラズマCVD法でDLC皮膜2の
蒸着を行なうにあたっては、まず、蒸着チャンバー14
内を例えば1×10-4Paになるまで真空引きする。次
に、蒸着チャンバー14内が例えば10Paになるまで
ガス導入口23から反応ガスとして炭化水素系のガスを
導入する。この炭化水素系ガスとしてはエチレンガスを
用いることができる。次にRF電源26をオンにし、例
えば500Wを電極7a,7b間に印加すると、電極7
a,7b間でのグロー放電による気体放電現象によって
エチレンガスが励起され、エチレンプラズマPが発生す
る。このように成膜室16内にエチレンプラズマPが生
じた後、線材1を送り出しリール19から送り出すと共
に巻取りリール22に巻き取ることによって、線材1を
連続的に成膜室16に通過させると、線材1の外周にエ
チレンプラズマP中のCイオンが吸着されて蒸着される
ものであり、線材1の外周にDLC皮膜2を形成するこ
とができるものである。
【0029】このように、長尺の線材1を送りながら成
膜室16内でプラズマCVDすることによって、線材1
の外周に連続的にDLC皮膜2を形成することができる
ものであり、バッチ工法ではない連続工法で処理を行な
うことができて、生産性を高めることができるものであ
り、また線材1の外周にその周方向及び長手方向ともに
均一な膜厚でDLC皮膜2を形成することができるもの
である。線材1の外周に形成するDLC皮膜2の膜厚
は、DLC皮膜2の膜厚が厚いと、メッシュ形状のアク
チュエータAを伸縮変形させる際に、DLC皮膜2が線
材1の表面から剥がれるおそれがあるので、1μm以下
であることが望ましい。また、DLC皮膜2で線材1を
保護すると共に電気絶縁性を確保するためには、DLC
皮膜2の厚みは0.2μm以上であることが望ましい。
【0030】上記のようにしてプラズマCVDによって
線材1の外周にDLC皮膜2を形成した後、このDLC
皮膜2を形成した線材1をメッシュ編みすることによっ
て、アクチュエータAを作製することができるものであ
る。尚、プラズマCVD法は成膜による付き回り性がよ
いので、形状記憶合金の変態温度以下の低温で成膜をす
ることができるものであり、線材1をメッシュ編みして
メッシュ状のアクチュエータAを作製した後に、線材1
にDLC皮膜2を形成するようにすることも可能であ
る。
【0031】ここで、DLC皮膜2のDLCにはエチレ
ンプラズマP中のCイオンの他にHイオンも含有されて
いるが、DLC皮膜2には30質量%以上、より望まし
くは40質量%以上の水素を含有しているのが好まし
い。DLCに水素を多く含むと、カーボンはSP2混成
軌道による結合がSP3混成軌道による結合よりも多く
なり、DLC皮膜2はポリマーライクな柔らかい膜にな
るので、アクチュエータAが伸縮する際の線材1の変形
にDLC皮膜2が追随し易くなり、DLC皮膜2の剥離
を防ぐことができるものである。水素含有率の上限は、
ポリエチレンの水素含有率である約70質量%である。
【0032】上記の図2の実施の形態では、線材1を挟
んで対向する一対の電極7,7を設けるようにしたが、
図3の実施の形態では、線材1の外周を囲むように3枚
以上の複数枚の電極7,7…が配置してある。このよう
に線材1の外周を囲むように複数枚の電極7,7…を配
置することによって、電極7,7…で囲まれる空間内に
おいて線材1の外周にプラズマPを均一に形成すること
ができるものであり、線材1の外周に全周に亘って均一
なDLC皮膜2を形成することができるものである。
【0033】また図4の実施の形態では、ガス配管31
を成膜室16内に配設すると共に、線材1をこのガス配
管31内に通すようにしてある。このガス配管31は外
管32と内管33の二重管に形成してあり、内管33に
その周方向に等間隔で複数個のガス導入口8が形成して
ある。線材1はこの内管33内を通されるようにしてあ
り、内管33に設けたガス導入口8は線材1の外周を囲
むように配置されている。そしてプラズマ生成用のエチ
レンガスはガス配管31の外管32と内管33の間を送
られるものであり、エチレンガスがガス導入口8から内
管33の内方に放出されると、線材1の外周はエチレン
ガスで均一に包まれるようになる。従って、線材1の外
周にエチレンガスプラズマPを均一に形成することがで
きるものであり、線材1の外周に全周に亘って均一なD
LC皮膜2を形成することができるものである。
【0034】図5はスパッタリング法でDLC皮膜2を
形成する工程を示すものであり、蒸着チャンバー14の
成膜室16内には、成膜室16に通される線材1を挟ん
で対向するように、一対のターゲット28が配設してあ
る。このターゲット28としてはグラファイトなどの炭
素材料が用いられるものであり、各ターゲット28には
DCあるいはRFの電源26が接続してある。蒸発チャ
ンバー14のその他の構成は図2のものと同じである。
【0035】そしてスパッタリング法でDLC皮膜2の
蒸着を行なうにあたっては、まず、蒸着チャンバー14
内を例えば1×10-4Paになるまで真空引きする。次
に、蒸着チャンバー14内が例えば10Paになるまで
ガス導入口23から希ガスを導入する。この希ガスとし
てはArガスを用いることができる。次にDC電源26
をオンにし、例えば2kWをターゲット28に印加する
と、このように電圧を印加することによってグロー放電
による気体放電現象でArガスが励起され、Arプラズ
マPが発生する。このように成膜室16内にArプラズ
マPが生じた後、線材1を送り出しリール19から送り
出すと共に巻取りリール22に巻き取ることによって、
線材1を連続的に成膜室16に通過させる。このとき、
ArプラズマP中のイオンがターゲット28に衝突して
C原子がはじき出され、このはじき出されたC原子が線
材1の外周に吸着されて堆積し、線材1の外周にDLC
皮膜2を形成することができるものである。
【0036】このように、長尺の線材1を送りながら成
膜室16内でスパッタリングすることによって、線材1
の外周に連続的にDLC皮膜2を形成することができる
ものであり、バッチ工法ではない連続工法で処理を行な
うことができて、生産性を高めることができるものであ
る。また、線材1の表面にはターゲット28に向いてい
る側に集中してDLCが付着するが、図5のように線材
1を挟んで一対のターゲット28を対向させて配設する
ことによって、線材1の表面に両側からDLCを付着さ
せることができ、線材1の外周の全周に均一な厚みでD
LC皮膜2を形成することができるものである。
【0037】ちなみに、ターゲット28を一つだけ用い
る場合は、図6に示すように、線材1を反転ロール29
に架け渡して蛇行させた状態で送ることによって、線材
1の両面にDLCを付着させることが可能になる。また
線材1を外周回りに回転させながら送ることによって
も、一つのターゲット28に対して線材1の外周に均一
にDLC皮膜2を形成することが可能であるが、この場
合には装置の構造が複雑化する問題がある。
【0038】DLC皮膜2の厚みは既述のように0.2
μm〜1μmの範囲が好ましい。またターゲット28と
してグラファイトを用いると、水素が殆ど含有されない
硬質なDLC皮膜2を形成することができる。一方、水
素を混入させてスパッタを行なうことによって、DLC
皮膜2を柔らかい膜にすることもできるものである。
尚、スパッタリングなどPVD法で成膜したDLC皮膜
2は、一般に、硬質膜で摩耗に強く、電気絶縁性の高い
ものが得られる。
【0039】ここで、図2のプラズマCVDなどのCV
D法やイオンプレーティングなどのPVD法のように、
電圧を印加してプラズマPを発生させた状態で線材1に
DLC皮膜2を形成するにあたって、線材1に負のバイ
アス電圧を印加しながら処理を行なうことができる。線
材1に接触しているロール24によって線材1に負のバ
イアス電圧を印加することができるものであり、このよ
うに線材1に負のバイアス電圧を印加すると、プラズマ
P中のCイオンを電気的吸引力で強制的に線材1に引き
寄せて堆積させることができ、緻密なDLC皮膜2を形
成することができるものであり、また成膜初期に線材1
の表面にCイオンを高速エネルギーで衝突させることが
でき、DLC皮膜2の密着性を高めることができるもの
である。さらに、このようにCイオンを電気的吸引力で
線材1に引き寄せることができるために付き回り性が良
く、線材1の外周に均一にDLC皮膜2を形成すること
ができると共に、メッシュ状に編んだアクチュエータA
に対しても均一にDLC皮膜2を成膜することができる
ものである。
【0040】線材1への負のバイアスの印加方法は、D
CでもRFでもいずれでもよく(但し、RFの場合は整
合をとるようにするのが望ましい)、印加バイアス電圧
は−50〜−200Vの範囲が好ましい。−50Vより
も正に近い電圧であると、バイアス効果を十分に得るこ
とができず、−200Vよりもさらに負の電圧である
と、Cイオンが線材1に衝突するスパッタ作用が生じ
て、却って成膜効率が低下するおそれがある。尚、線材
1に大きな負のバイアス(特に数十keV以上)をパル
スでかけた場合、線材1の表面近傍にCイオンの注入が
生じ、ミキシング効果によりDLC皮膜2の密着力を高
めることができるものである。
【0041】また、図2のようにプラズマCVD法でD
LC皮膜2を形成する場合、線材1に形成されるDLC
皮膜2の水素含有量を、線材1に印加する負のバイアス
電圧の値によって調整することができる。すなわち、低
いバアイス電圧値のほうが水素含有量は大きくなるもの
であり、この点においても、印加バイアス電圧は−50
〜−200Vの範囲が好ましいのである。尚、水素含有
量は、RFの印加パワーにも影響される。
【0042】図7は本発明の他の実施の形態の一例であ
り、プラズマPで線材1の表面を洗浄した後、線材1の
外周にDLC皮膜2を形成するようにした蒸着チャンバ
ー14を示している。すなわち、電気的に接地された蒸
着チャンバー14内は3枚の防着板15a,15b,1
5cで仕切って、送り出し室17と、洗浄室35と、成
膜室16と、巻取り室18がこの順に形成してある。ま
た形状記憶合金の線材1としては長尺のものが用いられ
るものであり、送り出しリール19に巻いた状態で送り
出し室17内にセットしてある。この長尺の線材1は送
り出しリール19から繰り出して、防着板15aの通過
孔20aから洗浄室35に通した後、防着板15bの通
過孔20bから成膜室16に通し、さらに防着板15c
の通過孔20cから巻取り室18に送り、巻取りリール
22に巻き取るようになっている。送り出し室17内と
巻取り室18内にはそれぞれ線材1に接触しながら回転
するロール24が配設してあり、線材1を押さえると共
に電気的に線材1をアースするようにしてある。さらに
洗浄室35と成膜室16にそれぞれガス導入口36,3
7が設けてある。
【0043】洗浄室35内には、洗浄室35に通される
線材1を挟んで対向するように、一対の電極38が配設
してある。一方の電極38aは蒸着チャンバー14に接
続してアースしてあり、他方の電極38bにはDCある
いはRFの電源39が接続してある。また成膜室16内
には、成膜室16に通される線材1を挟んで対向するよ
うに、一対の電極7が配設してある。一方の電極7aは
蒸着チャンバー14に接続してアースしてあり、他方の
電極7bにはDCあるいはRFの電源40が接続してあ
る。
【0044】そしてまず、蒸着チャンバー14内を例え
ば1×10-4Paになるまで真空引きする。次に、蒸着
チャンバー14内が例えば10Paになるまでガス導入
口36から洗浄室35にArガスを、ガス導入口37か
ら成膜室16にエチレンガスをそれぞれ導入する。次に
各RF電源39,40をオンにし、例えば500Wを電
極38a,38b間及び電極7a,7b間に印加する
と、電極38a,38b間でのグロー放電によって洗浄
室35内にArプラズマPが発生すると共に、電極7
a,7b間でのグロー放電によって成膜室16内にエチ
レンプラズマPが発生する。このように洗浄室35内と
成膜室16内にそれぞれプラズマPが生じた後、線材1
を送り出しリール19から送り出すと共に巻取りリール
22に巻き取ることによって、線材1を連続的に洗浄室
35及び成膜室16に通過させる。このように線材1を
洗浄室35に通過させる際に線材1の表面がArプラズ
マPの作用でクリーニングされ、洗浄されるものであ
り、線材1を成膜室16に通過させる際に、エチレンプ
ラズマP中のCイオンが線材1の表面に吸着されて蒸着
されるものであり、線材1の外周にDLC皮膜2を形成
することができるものである。成膜室16で線材1の外
周にDLC皮膜2を形成するに先だって、線材1の表面
は洗浄室35で洗浄されているので、DLC皮膜2の密
着性を向上させることができるものである。
【0045】ここで、洗浄室35と成膜室16の間でガ
スが流通すると、Arガスとエチレンガスが混合し合っ
て洗浄と成膜の各プロセスを分離することが困難にな
る。そこでこの場合には、図8に示すように、洗浄室3
5と成膜室16の間の防着板15bに長い細管42に設
け、線材1は細管42内を通して洗浄室35から成膜室
16へと移動するようにしてある。細管42は線材1が
通過可能な程度に内径を線材1の外径よりわずかに大き
く形成したものであり、しかも長く形成してあるので、
洗浄室35と成膜室16の間でのガスの流通を阻止しつ
つ線材1を洗浄室35から成膜室16へと移動できるよ
うにしてある。このように洗浄室35と成膜室16の間
は防着板15bで完全に区切られているので、洗浄室3
5内と成膜室16内はそれぞれに備えた真空ポンプで個
別に真空引きできるようにしてある。
【0046】尚、洗浄室35に導入するガスとして窒素
ガスを用いて窒素プラズマを生成させるようにすれば、
線材1の表面を窒化させることができ、DLC皮膜2の
密着性をさらに向上させることが可能である。この場
合、洗浄室35と成膜室16の間に表面改質室を設け、
この表面改質室で窒素プラズマを生成させて線材1の表
面を窒化させるようにしてもよい。また、洗浄室35と
成膜室16の間に中間膜形成室を設け、線材1の表面を
洗浄した後、DLC皮膜2を形成する前に、後述のWC
皮膜3、SiO2皮膜4、樹脂皮膜5を中間膜形成室で
線材1の表面に形成するようにしてもよい。
【0047】図9は本発明の実施の形態の他の一例を示
すものであり、このものでは、形状記憶合金の線材1の
外周表面にWC皮膜3を形成し、その上に最外層として
DLC皮膜2が形成してある。このように線材1の表面
にWC皮膜3をプレコートしておくことによって、WC
皮膜3が中間膜となって線材1に対するDLC皮膜2の
密着力を向上することができるものである。WC皮膜3
の膜厚は絶縁性と可撓性を確保するために、0.05〜
0.2μm程度が好ましい。尚、中間膜としてSiCを
形成することによっても、DLC皮膜2の密着力を向上
することができるものであり、また線材1に予めプラズ
マ窒化やプラズマ浸炭等の改質を施しておくことによっ
ても、DLC皮膜2の密着力を向上することができるも
のである。
【0048】図10の実施の形態では、形状記憶合金の
線材1の外周表面にSiO2皮膜4を形成し、その上に
最外層としてDLC皮膜2が形成してある。このように
線材1の表面にSiO2皮膜4をプレコートしておくこ
とによって、SiO2皮膜4が中間膜となって線材1に
対するDLC皮膜2の密着力を向上することができるも
のであり、また電気抵抗の大きいSiO2皮膜4によっ
てDLC皮膜2による電気絶縁性を一層高めることがで
きるものである。SiO2皮膜4の膜厚は0.05〜
0.2μm程度が好ましい。DLC皮膜2は絶縁材料で
あるが、例えばDLC皮膜2がグラファイト的な原子構
造の場合や、摩擦抵抗低減や膜応力低下のためにDLC
皮膜2に金属を添加した場合は、電気抵抗が低下するこ
とがあるので、これらの場合に、SiO2皮膜4を中間
膜として形成することは特に好ましい効果を得ることが
できるものである。
【0049】図11の実施の形態では、形状記憶合金の
線材1の外周表面に樹脂皮膜5を形成し、その上に最外
層としてDLC皮膜2が形成してある。樹脂皮膜5とし
てはポリイミド、パリレン、PTFC等を用いることが
できる。このように線材1の表面に樹脂皮膜5をプレコ
ートしておくことによって、電気抵抗の大きい樹脂皮膜
5でDLC皮膜2による電気絶縁性を一層高めることが
できるものであり、また表面に存在するDLC皮膜2に
よって樹脂皮膜5が摩耗して剥がれることを防ぐことが
できるものである。樹脂皮膜5の膜厚は絶縁性と可撓性
を確保するため、0.1〜0.2μm程度が好ましい。
【0050】上記のように線材1の外周表面にWC皮膜
3、SiO2皮膜4、樹脂皮膜5をプレコートするにあ
たっては、例えばスパッタリングで行なうことができ
る。図12はその装置を示すものであり、図12の蒸着
チャンバー14にあって、図7のものと符号が同じもの
は図7と同様に形成してある。そして図12の蒸着チャ
ンバー14では、防着板15aと防着板15bとの間の
室は中間膜形成室44として形成されるものであり、中
間膜形成室44内には、中間膜形成室44に通される線
材1を挟んで対向するように、一対のターゲット45が
配設してあり、一方のターゲット45をアースすると共
に他方のターゲット45にはDCあるいはRFの電源4
6が接続してある。このターゲット45としては、WC
皮膜3を形成する場合にはWC材料が、SiO2皮膜4
を形成する場合にはSiO2材料が、樹脂皮膜5を形成
する場合には樹脂材料が用いられるものである。
【0051】そしてまず、蒸着チャンバー14内を例え
ば1×10-4Paになるまで真空引きする。次に、蒸着
チャンバー14内が例えば10Paになるまでガス導入
口36から中間膜形成室44にArガスを、ガス導入口
37から成膜室16にエチレンガスをそれぞれ導入す
る。次に中間膜形成室44のDC電源46をオンにし、
例えば2kWをターゲット45に印加する(樹脂皮膜5
を形成するときはRF電源46をオンにして500Wを
印加する)ことによって中間膜形成室44内でArプラ
ズマPを発生させると共に、成膜室16のRF電源40
をオンにし、例えば500Wを電極7a,7b間に印加
することによって成膜室16内にエチレンプラズマPを
させ発生させる。このように中間膜形成室44内と成膜
室16内にそれぞれプラズマPが生じた後、線材1を送
り出しリール19から送り出すと共に巻取りリール22
に巻き取ることによって、線材1を連続的に中間膜形成
室44及び成膜室16に通過させる。このように線材1
を中間膜形成室44に通過させる際に、ArプラズマP
によるスパッタリング作用でターゲット45の材料が線
材1の外周に吸着されて堆積し、線材1の外周にWC皮
膜3、SiO2皮膜4、樹脂皮膜5を中間膜として形成
することができるものであり、また線材1を成膜室16
に通過させる際に、エチレンプラズマP中のCイオンが
線材1の中間膜の表面に吸着されて堆積し、線材1の外
周に中間膜を介してDLC皮膜2を形成することができ
るものである。尚、中間膜形成室44の前に、既述のよ
うな洗浄室35を設け、線材1の表面をプラズマ洗浄し
た後に、中間膜の形成やDLC皮膜2の形成を行うよう
にするのが好ましい。
【0052】また、線材1の表面にポリイミドの樹脂皮
膜5を形成する場合、ポリアミドの蒸着重合によって行
なうことができる。図13はポリイミド樹脂を蒸着重合
する装置の一例を示すものであり。蒸着チャンバー48
内にロータリーポンプなどの真空ポンプ18が接続して
あり、この蒸着チャンバー48にはさらに原料モノマー
である無水ピロメリト酸(PMDA)とオキシジアニリ
ン(ODA)を供給するモノマータンク50,51が接
続してある。そして蒸着チャンバー48内においてホル
ダー52に線材1をセットし、蒸着チャンバー48内を
10Pa程度に真空引きすると共に300℃程度に加熱
し、この状態でモノマータンク50,51からPMDA
とODAをそれぞれ蒸着チャンバー48内に気化させて
導入し、PMDAとODAを線材1の表面で反応させて
0.1μm厚程度のポリアミック酸膜を成膜したのち、
300℃程度の温度で60分程、加熱を保持して硬化さ
せることによって、「化1」に示す縮重合反応で得られ
るポリイミド樹脂による樹脂皮膜5を線材1の表面に形
成することができるものである。
【0053】
【化1】
【0054】図14は本発明の実施の形態の他の一例を
示すものであり、上記のように形状記憶合金の線材1の
表面に樹脂皮膜5を中間膜として設けると共にその上に
DLC皮膜2を設けるにあたって、樹脂皮膜5とDLC
皮膜2の境界部を樹脂とDLCとが混在する層6で形成
するようにしてある。この場合、混在層6は、樹脂皮膜
5と接する側では樹脂が100%であり、外側にいくに
従って樹脂に対するDLCの混在比率が徐々に高くな
り、DLC皮膜5と接する側ではDLCが100%にな
るように、樹脂とDLCの混在比率が傾斜的に変化する
ようにしてある。このように、樹脂皮膜5とDLC皮膜
2の間に樹脂とDLCとの混在層6を形成することによ
って、混在層6を介してDLC皮膜2の密着強度を高め
ることができるものである。
【0055】図15はこのような樹脂皮膜5、混在層
6、DLC皮膜2を線材1に形成するための装置の一例
を示すものであり、図5に示すものと符号が同じものは
図5と同様に形成してある。そして図15の蒸着チャン
バー14では、成膜室16にエチレンガス用のガス導入
口53、PMDA用のガス導入口54、ODA用のガス
導入口55がそれぞれ接続してあり、ロール24には負
の電圧が印加してある。
【0056】そして、蒸着チャンバー14内を1×10
-4まで真空引きし、まずPMDAとODAを加熱してそ
の蒸発ガスをそれぞれガス導入口54,55から成膜室
16に導入し、次に成膜室16にエチレンガスをエチレ
ンガス圧10Paでガス導入口53から導入すると共
に、RF電源26をオンにして300Wを印加し、エチ
レンガスプラズマPを発生させる。PMDAとODAの
モノマーはプラズマPで活性化されて「化1」のように
反応し、線材1の表面にポリイミド樹脂が堆積する。ま
たエチレンガスプラズマPのプラズマCVDによってD
LCも堆積される。このとき、最初は、PMDAとOD
Aのみを導入し、次いでエチレンガスの導入を開始し
て、PMDAとODAの導入を減らしながらエチレンガ
スの導入を増やし、最後にPMDAとODAの導入を停
止してエチレンガスのみを導入するようにすることによ
って、線材1の表面にまずポリイミド樹脂のみからなる
樹脂皮膜5を形成し、次にこの上に、内側では樹脂の比
率が多く外側ではDLCの比率が多くなるように混在比
率が徐々に変化する混在層6を形成し、さらにこの上
に、DLCのみからなるDLC皮膜2を形成することが
できるものである。
【0057】
【発明の効果】上記のように本発明の請求項1に係るア
クチュエータは、形状記憶合金の線材をメッシュ状に編
組して形成されるアクチュエータにおいて、形状記憶合
金の線材の外周にDLCの皮膜を形成するようにしたの
で、線材同士が重なっている部分で擦れ合いが発生して
も、線材の表面は耐摩耗性の高いDLC皮膜で被覆され
ており、摩耗することなくDLC皮膜で線材を長期に亘
って保護することができると共に線材の表面の電気絶縁
性を保持することができるものであり、しかもDLC皮
膜は摩擦係数が小さく、アクチュエータが伸縮変形する
際に線材間に生じる摩擦抵抗を低減することができ、ア
クチュエータの伸縮特性が向上するものである。
【0058】また請求項2の発明は、形状記憶合金の線
材の表面にプレコートされたWCの皮膜を介してDLC
皮膜を形成するようにしたので、WC皮膜によってDL
C皮膜の密着力を向上させることができるものである。
【0059】また請求項3の発明は、形状記憶合金の線
材の表面にプレコートされたSiO 2の皮膜を介してD
LC皮膜を形成するうようにしたので、SiO2皮膜に
よってDLC皮膜の密着力を向上させることができると
共に、電気絶縁性の高いSiO 2皮膜によって線材の表
面の電気絶縁性を高く保持することができるものであ
る。
【0060】また請求項4の発明は、形状記憶合金の線
材の表面にプレコートされた樹脂の皮膜を介してDLC
皮膜を形成するようにしたので、樹脂皮膜によって線材
の表面の電気絶縁性を高く保持することができると共
に、樹脂皮膜の摩耗をDLC皮膜で防ぐことができるも
のである。
【0061】また請求項5の発明は、樹脂皮膜とDLC
皮膜の境界部を樹脂とDLCとが混在する層で形成する
ようにしたので、樹脂皮膜とDLC皮膜の密着力を樹脂
とDLCとが混在する層で高めることができるものであ
る。
【0062】また請求項6の発明は、DLC皮膜に30
質量%以上の水素を含有させるようにしたので、DLC
皮膜を柔らかくすることができ、アクチュエータが伸縮
する際の線材の変形にDLC皮膜を追随させることがで
きるものであり、DLC皮膜が線材から剥離することを
防ぐことができるものである。
【0063】本発明の請求項7に係るアクチュエータの
製造方法は、形状記憶合金の長尺の線材を長手方向に送
りながらCVD法で線材の外周にDLC皮膜を形成し、
この後、このDLC皮膜を形成した線材をメッシュ状に
編組するようにしたので、連続工法で生産性高く線材に
DLC皮膜を形成することができ、またDLC皮膜を形
成する際の熱はメッシュ状のアクチュエータには作用し
ないものであって、アクチュエータの形状記憶が失われ
るようなことがなくなるものである。
【0064】本発明の請求項8に係るアクチュエータの
製造方法は、形状記憶合金の長尺の線材を長手方向に送
りながらPVD法で線材の外周にDLC皮膜を形成し、
この後、このDLC皮膜を形成した線材をメッシュ状に
編組するようにしたので、連続工法で生産性高く線材に
DLC皮膜を形成することができ、またDLC皮膜を形
成する際の熱はメッシュ状のアクチュエータには作用し
ないものであって、アクチュエータの形状記憶が失われ
るようなことがなくなるものである。
【0065】また請求項9の発明は、プラズマ中で形状
記憶合金の線材の外周にDLC皮膜を形成するにあたっ
て、線材に負のバイアス電圧を印加するようにしたの
で、線材にCイオンを強制的に引き寄せてDLC皮膜を
形成することができ、緻密なDLC皮膜を得ることがで
きるものである。
【0066】また請求項10の発明は、プラズマ中で形
状記憶合金の線材の外周にDLC皮膜を形成するにあた
って、線材を囲むように複数枚の電極を配置するように
したので、線材の外周に均一なプラズマを生成させるこ
とができ、線材の外周に全周に亘って均一なDLC皮膜
を形成することができるものである。
【0067】また請求項11の発明は、プラズマ中で形
状記憶合金の線材の外周にDLC皮膜を形成するにあた
って、プラズマ生成用のガスを導入するガス導入口を線
材の外周を囲むように配置したので、線材の外周に均一
なプラズマを生成させることができ、線材の外周に全周
に亘って均一なDLC皮膜を形成することができるもの
である。
【0068】また請求項12の発明は、形状記憶合金の
長尺の線材1を長手方向に送りながら、プラズマで線材
の表面を洗浄した後、線材の外周にDLC皮膜を形成す
るようにしたので、洗浄された線材の外周にDLC皮膜
を形成することができ、DLC皮膜の密着力を高めるこ
とができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すものであり、
(a)は線材の拡大した断面図、(b)はアクチュエー
タの斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態の一例におけるDLC皮膜
を形成する装置の概略図である。
【図3】本発明の実施の形態の一例におけるDLC皮膜
を形成する装置の一部の拡大しした断面図である。
【図4】本発明の実施の形態の一例におけるDLC皮膜
を形成する装置の一部の拡大しした断面図である。
【図5】本発明の実施の形態の一例におけるDLC皮膜
を形成する装置の概略図である。
【図6】本発明の実施の形態の一例におけるDLC皮膜
を形成する装置の一部の概略図である。
【図7】本発明の実施の形態の一例におけるDLC皮膜
を形成する装置の概略図である。
【図8】本発明の実施の形態の一例におけるDLC皮膜
を形成する装置の一部の概略図である。
【図9】本発明の実施の形態の一例を示す線材の拡大し
た断面図である。
【図10】本発明の実施の形態の一例を示す線材の拡大
した断面図である。
【図11】本発明の実施の形態の一例を示す線材の拡大
した断面図である。
【図12】本発明の実施の形態の一例におけるDLC皮
膜を形成する装置の概略図である。
【図13】本発明の実施の形態の一例における樹脂皮膜
を形成する装置の概略図である。
【図14】本発明の実施の形態の一例を示す線材の拡大
した断面図である。
【図15】本発明の実施の形態の一例におけるDLC皮
膜を形成する装置の概略図である。
【符号の説明】
1 線材 2 DLC皮膜 3 WC皮膜 4 SiO2皮膜 5 樹脂皮膜 6 混在層 7 電極 8 ガス導入口
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 正木 康史 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内 Fターム(参考) 4K029 AA02 AA23 BA34 BA46 BC02 BD03 CA05 FA04 FA07 JA10 KA03 4K030 AA09 BA28 CA02 CA13 DA03 FA01 GA14 LA11

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 形状記憶合金の線材をメッシュ状に編組
    して形成されるアクチュエータにおいて、形状記憶合金
    の線材の外周にDLC(Diamond Like Carbon)の皮膜
    を形成して成ることを特徴とするアクチュエータ。
  2. 【請求項2】 形状記憶合金の線材の表面にプレコート
    されたWCの皮膜を介してDLC皮膜を形成して成るこ
    とを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
  3. 【請求項3】 形状記憶合金の線材の表面にプレコート
    されたSiO2の皮膜を介してDLC皮膜を形成して成
    ることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
  4. 【請求項4】 形状記憶合金の線材の表面にプレコート
    された樹脂の皮膜を介してDLC皮膜を形成して成るこ
    とを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
  5. 【請求項5】 樹脂の皮膜とDLC皮膜の境界部を樹脂
    とDLCとが混在する層で形成して成ることを特徴とす
    る請求項4に記載のアクチュエータ。
  6. 【請求項6】 DLCは30質量%以上の水素を含有す
    るものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれ
    かに記載のアクチュエータ。
  7. 【請求項7】 形状記憶合金の長尺の線材を長手方向に
    送りながらCVD法で線材の外周にDLC皮膜を形成
    し、この後、このDLC皮膜を形成した線材をメッシュ
    状に編組することを特徴とするアクチュエータの製造方
    法。
  8. 【請求項8】 形状記憶合金の長尺の線材を長手方向に
    送りながらPVD法で線材の外周にDLC皮膜を形成
    し、この後、このDLC皮膜を形成した線材をメッシュ
    状に編組することを特徴とするアクチュエータの製造方
    法。
  9. 【請求項9】 プラズマ中で形状記憶合金の線材の外周
    にDLC皮膜を形成するにあたって、線材に負のバイア
    ス電圧を印加することを特徴とする請求項7又は8に記
    載のアクチュエータの製造方法。
  10. 【請求項10】 プラズマ中で形状記憶合金の線材の外
    周にDLC皮膜を形成するにあたって、線材を囲むよう
    に複数枚の電極を配置することを特徴とする請求項7乃
    至9のいずれかに記載のアクチュエータの製造方法。
  11. 【請求項11】 プラズマ中で形状記憶合金の線材の外
    周にDLC皮膜を形成するにあたって、プラズマ生成用
    のガスを導入するガス導入口を線材の外周を囲むように
    配置することを特徴とする請求項7乃至10のいずれか
    に記載のアクチュエータの製造方法。
  12. 【請求項12】 形状記憶合金の長尺の線材を長手方向
    に送りながら、プラズマで線材の表面を洗浄した後、線
    材の外周にDLC皮膜を形成することを特徴とする請求
    項7乃至11のいずれかに記載のアクチュエータの製造
    方法。
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