JP2010188696A - インクジェット記録用インクセット及び画像記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】経時のインクを用いて、白抜け及び耐擦性に優れた高解像度の画像形成を実現し得るインクジェット記録用インクセット及びこれを用いた画像形成方法を提供する。
【解決手段】酸性基を有する繰り返し単位を含む共重合体であって中和度が70%〜95%である水不溶性樹脂によって被覆された顔料、有機溶媒及び水を含有する水性インク組成物と、前記水性インク組成物と混合したときに該水性インク組成物中の前記顔料を凝集させる酸を含む水性液体組成物と、を含むことを特徴とするインクジェット記録用インクセット。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録用インクセット及びこれを用いた画像記録方法に関する。
インクジェット記録用の記録媒体としては、様々な記録媒体が検討されており、高品位の画像を形成し得る技術が求められている。また、インクにおいても、耐水性や耐光性などを与えるインク材料として、顔料などの色材の検討が行なわれている。
ところが、普通紙に記録を行なうにあたって、発色濃度、定着性、解像度などにおいて、充分な性能が得られていない場合がある。特に、インクジェット記録を高速化する場合が挙げられ、シャトルスキャン方式ではなく、1回のヘッド操作で記録可能なシングルパス方式で高速記録する場合の記録適性が求められるようになってきている。
様々な記録媒体に画像形成した場合において、高い定着性、2次色の色再現域拡大、高速印字における光学濃度の確保、滲み防止といった課題を解決する方法として、顔料粒子を含有する第一の液体と、プリント性を向上させる液体組成物を含有する第二の液体との2種の液体を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法においては、第一の液体に含有される顔料の粒子径、具体的には粒径150nm以上の顔料粒子の占有比率を適切にコントロールすることにより、かかる課題を解決できるとされている。
特開2007−261206号公報
しかし、上記の方法においては、経時後のインクを用いて形成された画像の白抜けおよび耐擦性が十分でないという課題がある。
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、インク経時後に記録した場合に、白抜け発生の抑制及び耐擦性に優れた高解像度の画像形成を実現し得るインクジェット記録用インクセット及びこれを用いた画像形成方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
<1>
酸性基を有する繰り返し単位を含む共重合体であって中和度が70%〜95%である水不溶性樹脂によって被覆された顔料、有機溶媒及び水を含有する水性インク組成物と、前記水性インク組成物と混合したときに該水性インク組成物中の前記顔料を凝集させる酸を含む水性液体組成物と、を含むことを特徴とするインクジェット記録用インクセット。
<2>
前記水不溶性樹脂は、酸価が30mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることを特徴とする上記<1>に記載のインクジェット記録用インクセット。
<3>
前記水不溶性樹脂は、親水性構造単位(A)と疎水性構造単位(B)とを含み、前記疎水性構造単位(B)の少なくとも1種が芳香環を含有する構造単位であって、前記親水性構造単位(A)が少なくとも(メタ)アクリル酸に由来の構造単位を含むことを特徴とする上記<1>または<2>に記載のインクジェット記録用インクセット。
<4>
前記水性インク組成物が、更に樹脂粒子を含むことを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
<5>
前記水性インク組成物の25℃でのpHが7.5以上であり、前記水性液体組成物の25℃でのpHが4以下であることを特徴とする上記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
<6>
前記水性液体組成物は、前記顔料を凝集させる酸として有機カルボン酸を含有することを特徴とする上記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
<7>
酸性基を有する繰り返し単位を含む共重合体であって中和度が70%〜95%である水不溶性樹脂によって被覆された顔料、有機溶媒及び水を含有する水性インク組成物を記録媒体上に、インクジェット法により付与するインク付与工程と、前記水性インク組成物と混合したときに該水性インク組成物中の前記顔料を凝集させる酸を含む水性液体組成物を記録媒体上に付与する凝集成分付与工程と、を有し、前記水性インク組成物と前記水性液体組成物とを接触させて画像を形成する画像記録方法。
<8>
前記凝集成分付与工程により水性液体組成物を付与した後、前記インク付与工程により、被記録媒体上に付与された水性液体組成物と接触させて前記水性インク組成物を付与することにより画像を形成することを特徴とする上記<7>に記載の画像記録方法。
本発明によれば、インク経時後に記録した場合に、白抜け発生の抑制及び耐擦性に優れた高解像度の画像形成を実現し得るインクジェット記録用インクセット及びこれを用いた画像形成方法を提供することができる。
以下、本発明のインクジェット記録用インクセット及びこれを用いた画像記録方法について詳細に説明する。
<インクジェット記録用インクセット>
本発明のインクジェット記録用インクセットは、水性インク組成物と水性液体組成物とを備え、水性インク組成物と水性液体組成物との接触時に凝集を起こして画像化するものであり、水性インク組成物及び水性液体組成物をそれぞれ1種含む形態であってもよいし、少なくとも一方を複数種含む形態であってもよい。
(水性インク組成物)
本発明のインクジェット記録用インクセットにおける水性インク組成物は酸性基を有する繰り返し単位を含む共重合体であって中和度が70%〜95%である水不溶性樹脂によって被覆された顔料(以下、「樹脂被覆顔料」ということがある。)、有機溶媒及び水を含んでなり、好ましくは樹脂粒子を更に含み、必要に応じて、界面活性剤などの他の成分を用いて構成することができる。
本発明においては、着色剤として含有される顔料を、後述の水不溶性樹脂で被覆した状態でインク液中に存在させることで、記録時に水性インク組成物及び水性液体組成物が飛散してこれら2液が接触して凝集してできる凝集物の液体吐出部への付着又は堆積を緩和することができ、また、液体吐出部に凝集物が付着した場合の凝集物の除去を容易化することができる。これにより、吐出装置側のメンテナンス頻度の軽減とメンテナンス性の向上が図れると共に、インク吐出時のインク吐出方向性不良を抑制し、白抜け等の発生を抑制し、更に耐擦性に優れた画像の高解像度化を実現することができる。
<水不溶性樹脂によって被覆された顔料>
本発明のインク組成物は、酸性基を有する繰り返し単位を含む共重合体であり、その中和度が70%〜95%である水不溶性樹脂(以下、本発明における水不溶性樹脂ともいう。)によって被覆された顔料を少なくとも1種含有する。このため、本発明のインク組成物は分散安定性に優れる。
本発明における顔料の具体的形態としては、本発明における水不溶性樹脂によって顔料の全部又は一部が被覆された形態である限り特に限定はない。
また、本発明における水不溶性樹脂は中和度が70%〜95%であり、その中和度が70%未満であると画像の白抜けが発生し、95%を超えると耐擦性が悪化する。
前記中和度を前記範囲とすることにより、画像の白抜けの発生を効果的に抑制し、また、耐擦性が効果的に向上する。
前記中和度は前記範囲の中でも、70%〜90%が好ましく、75%〜90%が特に好ましい。
本発明における水不溶性樹脂の中和度とは、酸性基1当量に対する中和剤の当量の割合(%)をいう。即ち、前記水不溶性樹脂の中和度とは、水不溶性樹脂の酸性基合計当量数に対する中和剤の合計当量数の割合をいい、下記式により求めることができる。
水不溶性樹脂の中和度=(中和剤の合計当量数/水不溶性樹脂の酸性基合計当量数)×100(%)
本発明における水不溶性樹脂は酸性基を有する繰り返し単位を含有するが、該酸性基を有する繰り返し単位は下記の親水性構造単位(A)に含まれることが好ましい。
本発明における水不溶性樹脂は、水性インク中で安定的に存在することができ、凝集物の付着又は堆積を緩和し、付着した凝集物の除去の容易化の観点から、親水性構造単位(A)と疎水性構造単位(B)とからなる樹脂であることが好ましい。
<親水性構造単位(A)>
親水性構造単位(A)としては、酸性基含有モノマーに由来する酸性基を有する繰り返し単位を少なくとも1種含有する。酸性基を有する繰り返し単位は、酸性基含有モノマーに由来するものでも、また、酸性基を有さない繰り返し単位(重合後のポリマー鎖)に後から酸性基を付与してもよい。
前記酸性基としては、特に制限無く、乳化又は分散状態の安定性の観点からカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などが挙げられ、中でも、インク組成物を構成した場合の分散安定性の観点から、カルボキシル基が好ましい。
前記酸性基含有モノマーとしては、酸性基とエチレン性不飽和結合とを有する酸性基含有モノマーが好ましい。酸性基モノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
前記不飽和カルボン酸モノマーとしては、例えば、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。前記不飽和スルホン酸モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。前記不飽和リン酸モノマーとしては、例えば、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
酸性基含有モノマーの中では、分散安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
即ち、前記酸性基を有する繰り返し単位は、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位であることが好ましい。
水不溶性樹脂中にはアクリル酸に由来の構造単位もしくはメタクリル酸に由来の構造単位のいずれか又は両方を含むことが好ましい。
このほかの親水性構造単位(A)としては、非イオン性の親水性基を有するモノマーに由来の構造単位が挙げられ、例えば、親水性の官能基を有する(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、及びビニルエステル類等の、親水性の官能基を有するビニルモノマー類を挙げることができる。
「親水性の官能基」としては、水酸基、アミノ基、(窒素原子が無置換の)アミド基、及び後述のポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドが挙げられる。
非イオン性の親水性基を有する親水性構造単位を形成するモノマーとしては、エチレン性不飽和結合等の重合体を形成しうる官能基と非イオン性の親水性の官能基とを有していれば、特に制限はなく、公知のモノマーから選択することができる。具体的な例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、アミノプロピルアクリレート、アルキレンオキシド重合体を含有する(メタ)アクリレートを好適に挙げることができる。
非イオン性の親水性基を有する親水性構造単位(A)は、対応するモノマーの重合により形成することができるが、重合後のポリマー鎖に親水性の官能基を導入してもよい。
非イオン性の親水性基を有する親水性構造単位は、アルキレンオキシド構造を有する親水性の構造単位がより好ましい。アルキレンオキシド構造のアルキレン部位としては、親水性の観点から、炭素数1〜6のアルキレン部位が好ましく、炭素数2〜6のアルキレン部位がより好ましく、炭素数2〜4のアルキレン部位が特に好ましい。また、アルキレンオキシド構造の重合度としては、1〜120が好ましく、1〜60がより好ましく、1〜30が特に好ましい。
また、非イオン性の親水性基を有する親水性構造単位は、水酸基を含む親水性の構造単位であることも好ましい態様である。構造単位中の水酸基数としては、特に制限はなく、水不溶性樹脂の親水性、重合時の溶媒や他のモノマーとの相溶性の観点から、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2が特に好ましい。
上記において、例えば、親水性構造単位の含有割合は、後述する疎水性構造単位(B)の割合で異なる。例えば、水不溶性樹脂がアクリル酸及び/又はメタクリル酸〔親水性構造単位(A)〕と後述の疎水性構造単位(B)とのみから構成される場合、アクリル酸及び/又はメタクリル酸の含有割合は、「100−(疎水性構造単位の質量%)」で求められる。
親水性構造単位(A)は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
<疎水性構造単位(B)>
本発明における水不溶性樹脂は酸性基を有する繰り返し単位を有する共重合体であるが、疎水性構造単位(B)はその少なくとも1種が芳香環を有する構造単位であることが好ましい。更に、疎水性構造単位(B)は下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有することも好ましい。
<(a)一般式(1)で表される繰り返し単位>
Figure 2010188696
一般式(1)中、Rは水素原子、メチル基を表し、Lは置換もしくは無置換のフェニレン基を表す。Lは単結合、又は2価の連結基を表す。Arは炭素数8以上の縮環型芳香環、芳香環が縮環したヘテロ環、または二個以上連結したベンゼン環から誘導される1価の基を表す。
前記一般式(1)において、Rは水素原子又はメチル基を表し、好ましくはメチル基を表す。
は置換もしくは無置換のフェニレン基を表す。Lとしては、無置換が好ましい。
は単結合、又は2価の連結基を表す。前記2価の連結基としては、好ましくは炭素数1〜30の連結基であり、より好ましくは炭素数1〜25の連結基であり、更に好ましくは炭素数1〜20の連結基であり、特に好ましくは炭素数1〜15の連結基である。
中でも、最も好ましくは、炭素数1〜25(より好ましくは1〜10)のアルキレンオキシ基、イミノ基(−NH−)、スルファモイル基、及び、炭素数1〜20(より好ましくは1〜15)のアルキレン基やエチレンオキシド基[−(CHCHO)−,n=1〜6]などの、アルキレン基を含む2価の連結基等、並びにこれらの2種以上を組み合わせた基などである。
Arは、炭素数8以上の縮環型芳香環、芳香環が縮環したヘテロ環、または二個以上連結したベンゼン環から誘導される1価の基を表す。
前記「炭素数8以上の縮環型芳香環」は、少なくとも2以上のベンゼン環が縮環した芳香環、少なくとも1種の芳香環と該芳香環に縮環して脂環式炭化水素で環が構成された炭素数8以上の芳香族化合物である。
具体的な例としては、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アセナフテンなどが挙げられる。
前記「芳香環が縮環したヘテロ環」とは、ヘテロ原子を含まない芳香族化合物(好ましくはベンゼン環)と、ヘテロ原子を有する環状化合物とが縮環した化合物である。ここで、ヘテロ原子を有する環状化合物は、5員環又は6員環であることが好ましい。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子が好ましい。ヘテロ原子を有する環状化合物は、複数のヘテロ原子を有していてもよい。この場合、ヘテロ原子は互いに同じでも異なっていてもよい。
芳香環が縮環したヘテロ環の具体例としては、フタルイミド、アクリドン、カルバゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾールなどが挙げられる。
前記一般式(1)で表される繰り返し単位を形成するモノマーの具体例としては、下記のモノマーなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
Figure 2010188696
上記(a)一般式(1)で表される繰り返し単位中のArとしては、アクリドン又はフタルイミドから誘導される1価の基であることが、被覆された顔料の安定性の観点から好ましく、更に、アクリドンから誘導される1価の基であることが好ましい。
前記一般式(1)で表される繰り返し単位のうち、顔料の分散安定性の点で、Rはメチル基であって、Lは無置換のフェニレン基であって、Lは2価の連結基(好ましくはメチレン)であって、Arはアクリドンから誘導される1価の基であることが好ましい。
前記一般式(1)で表される繰り返し単位の共重合体中における含有割合は、共重合体の全質量に対して、5〜25質量%の範囲が好ましく、より好ましくは10〜18質量%の範囲である。
この含有割合は、5質量%以上であると白抜け等の画像故障の発生を顕著に抑制できる傾向となり、また、25質量%以下とすると共重合体の重合反応溶液(例えば、メチルエチルケトン)中での溶解性低下による製造適性上の問題が生じない傾向となり好ましい。
本発明における水不溶性樹脂は、前記一般式(1)で表される構造単位以外の下記の一般式(I)で表される構造単位を有することも好ましい態様である。
<一般式(I)で表される構造単位>
Figure 2010188696
前記一般式(I)において、Rは、水素原子又はメチル基を表し、好ましくはメチル基である。
Arは、無置換又は置換の芳香族環を表す。芳香族環が置換されている場合の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基などを挙げることができ、縮環を形成していてもよい。縮環を形成している場合、例えば、炭素数8以上の縮環型芳香環、ヘテロ環が縮環した芳香環、又は2以上連結した芳香環が挙げられる。
前記「炭素数8以上の縮環型芳香環」は、少なくとも2以上のベンゼン環が縮環した芳香環、少なくとも1種の芳香環と該芳香環に縮環して脂環式炭化水素で環が構成された炭素数8以上の芳香族化合物である。具体的な例としては、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アセナフテンなどが挙げられる。
前記「ヘテロ環が縮環した芳香環」とは、ヘテロ原子を含まない芳香族化合物(好ましくはベンゼン環)と、ヘテロ原子を有する環状化合物とが縮環した化合物である。ここで、ヘテロ原子を有する環状化合物は、5員環又は6員環であることが好ましい。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子が好ましい。ヘテロ原子を有する環状化合物は、複数のヘテロ原子を有していてもよい。この場合、ヘテロ原子は互いに同じでも異なっていてもよい。ヘテロ環が縮環した芳香環の具体例としては、フタルイミド、アクリドン、カルバゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾールなどが挙げられる。
Arで表される芳香族環は、エステル基とエチレンオキシド鎖とを介して水不溶性樹脂の主鎖に結合し、芳香族環が主鎖に直接結合しないので、疎水性の芳香族環と親水性構造単位との間に適切な距離が維持され、水不溶性樹脂は顔料との間で相互作用しやすく、強固に吸着して分散性が高められる。
中でも、Arとしては、無置換のベンゼン環、無置換のナフタレン環が好ましく、無置換のベンゼン環が特に好ましい。
nは、水性インク組成物に含まれる樹脂被覆顔料の水不溶性樹脂におけるエチレンオキシ鎖を平均した繰り返し数を表す。nの範囲は、1〜6であり、好ましくは1〜2である。
前記一般式(I)で表される構造単位を形成するモノマーの具体例としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等、及び下記のモノマーなどを挙げることができる。
Figure 2010188696
前記一般式(I)で表される構造単位のうち、分散安定性の点で、Rがメチル基であって、Arが無置換のベンゼン環であって、nが1〜2である場合が特に好ましい。
前記一般式(I)で表される構造単位の水不溶性樹脂中における含有割合は、水不溶性樹脂の全質量に対して、30〜70質量%の範囲が好ましく、より好ましくは40〜50質量%の範囲である。この含有割合は、30質量%以上であると分散性に優れ、70質量%以下であると凝集体の付着・堆積を抑えると共に付着した凝集物の除去性(メンテナンス性)に優れ、白抜け等の画像故障の発生を抑制することができる。
本発明における水不溶性樹脂は、水性インク中で安定的に存在することができ、凝集物の付着又は堆積を緩和し、付着した凝集物の除去の容易化の観点から、親水性構造単位(A)と疎水性構造単位(B)とからなる樹脂であることが好ましい。ここで、前記疎水性構造単位(B)には、前記一般式(I)で表される構造単位が含まれる。
本発明における水不溶性樹脂は、前記一般式(1)で表される構造単位及び一般式(I)で表される構造単位以外の他の疎水性構造単位(B)を更に有してもよい。該疎水性構造単位(B)としては、親水性構造単位(A)に属しない(例えば親水性の官能基を有しない)、例えば(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、及びビニルエステル類などのビニルモノマー類、主鎖をなす原子に連結基を介して芳香環を有する疎水性構造単位、等に由来の構造単位を挙げることができる。これらの構造単位は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
前記(メタ)アクリレート類としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、中でも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートが好ましく、特にメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートが好ましい。
前記(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミド、N−アリル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
前記スチレン類としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、n−ブチルスチレン、tert−ブチルスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばt−Bocなど)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、及びα−メチルスチレン、ビニルナフタレン等などが挙げられ、中でも、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
前記ビニルエステル類としては、例えば、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、及び安息香酸ビニルなどのビニルエステル類が挙げられる。中でも、ビニルアセテートが好ましい。
前記「主鎖をなす原子に連結基を介して芳香環を有する疎水性構造単位」は、共重合体の主鎖を形成している原子に連結基を介して連結する芳香環の共重合体中における割合が15〜27質量%である構造単位が好ましく、15〜25質量%である構造単位がより好ましく、15〜20質量%である構造単位が更に好ましい。
芳香環は、連結基を介して共重合体の主鎖をなす原子と結合され、共重合体の主鎖をなす原子に直接結合しない構造を有するので、疎水性の芳香環と親水性構造単位との間に適切な距離が維持されるため、共重合体と顔料との間で相互作用が生じやすく、強固に吸着して分散性がさらに向上する。
前記「主鎖をなす原子に連結基を介して芳香環を有する疎水性構造単位」としては、下記一般式(2)で表される構造単位(前記一般式(1)で表される繰り返し単位を除く)が好適に挙げられる。
Figure 2010188696
前記一般式(2)において、R11は、水素原子、メチル基、又はハロゲン原子を表す。
また、L11は、−COO−、−OCO−、−CONR12−又は−O−、を表し、R12は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基を表す。なお、L11で表される基中の*印は、主鎖に連結する結合手を表す。
12は、単結合、又は炭素数1〜30の2価の連結基を表し、2価の連結基である場合は、好ましくは炭素数1〜25の連結基であり、より好ましくは炭素数1〜20の連結基であり、更に好ましくは炭素数1〜15の連結基である。
中でも、特に好ましくは、炭素数1〜25(より好ましくは1〜10)のアルキレンオキシ基、イミノ基(−NH−)、スルファモイル基、及び、炭素数1〜20(より好ましくは1〜15)のアルキレン基やエチレンオキシド基[−(CHCHO)−,n=1〜6]などの、アルキレン基を含む2価の連結基等、並びにこれらの2種以上を組み合わせた基などである。
前記一般式(2)において、Ar11は、芳香環から誘導される1価の基を表す。
Ar11で表される芳香環としては、特に限定されないが、ベンゼン環、炭素数8以上の縮環型芳香環、ヘテロ環が縮環した芳香環、又は2個以上連結したベンゼン環が挙げられる。炭素数8以上の縮環型芳香環、及びヘテロ環が縮環した芳香環の詳細については既述の通りである。
以下、その他の疎水性構造単位を形成し得るモノマーの具体例を挙げる。但し、本発明においては、下記具体例に制限されるものではない。
Figure 2010188696
本発明における水不溶性樹脂は、上記の中でも、親水性構造単位(A)が(メタ)アクリル酸であって、疎水性構造単位(B)が(i)一般式(1)で表される構造単位(好ましくは前述のM−25/M−27、M−28/M−29由来の構造単位)、(ii)一般式(I)で表される構造単位(好ましくはフェノキシエチル(メタ)アクリレート由来の構造単位)、及び(iii)前記以外の疎水性構造単位(B)(好ましくはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、又はベンジルメタクリレート由来の構造単位)から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
更に、本発明における水不溶性樹脂は、親水性構造単位(A)が(メタ)アクリル酸であって、疎水性構造単位(B)が上記(i)及び(ii)の少なくとも1種を含むことが好ましい。
特に、本発明における水不溶性樹脂は、親水性構造単位(A)が(メタ)アクリル酸であって、疎水性構造単位(B)が上記(i)及び(ii)の少なくとも1種を含み、かつ(iii)を更に含むことが好ましい。
本発明における水不溶性樹脂としては、親水性構造単位(A)と疎水性構造単位(B)(前記一般式(I)で表される構造単位、前記一般式(1)で表される構造単位、前記その他の疎水性構造単位(B)を含む)との組成は各々の親水性、疎水性の程度にも影響するが、親水性構造単位(A)の割合が15質量%以下であることが好ましい。このとき、疎水性構造単位(B)は、水不溶性樹脂の質量全体に対して、80質量%を超える割合であるのが好ましく、85質量%以上であるのがより好ましい。
親水性構造単位(A)の含有量が15質量%以下であると、単独で水性媒体中に溶解する成分量が抑えられ、顔料の分散などの諸性能が良好になり、インクジェット記録時には良好なインク吐出性が得られる。
親水性構造単位(A)の好ましい含有割合は、水不溶性樹脂の全質量に対して、0質量%を超え15質量%以下の範囲であり、より好ましくは2〜15質量%の範囲であり、更に好ましくは5〜15質量%の範囲であり、特に好ましくは8〜12質量%の範囲である。
本発明における水不溶性樹脂の酸価としては、顔料分散性、保存安定性の観点から、30mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましく、30mgKOH/g以上85mgKOH/g以下であることがより好ましく、50mgKOH/g以上85mgKOH/g以下であることが特に好ましい。
なお、酸価とは、水不溶性樹脂の1gを完全に中和するのに要するKOHの質量(mg)で定義され、JIS規格(JISK0070、1992)記載の方法により測定されるものである。
本発明における水不溶性樹脂の分子量としては、重量平均分子量(Mw)で3万以上が好ましく、3万〜15万がより好ましく、更に好ましくは3万〜10万であり、特に好ましくは3万〜8万である。分子量が3万以上であると、分散剤としての立体反発効果が良好になる傾向があり、立体効果により顔料へ吸着し易くなる。
また、数平均分子量(Mn)では1,000〜100,000の範囲程度のものが好ましく、3,000〜50,000の範囲程度のものが特に好ましい。数平均分子量が前記範囲内であると、顔料における被覆膜としての機能又はインク組成物の塗膜としての機能を発揮することができる。本発明における水不溶性樹脂は、アルカリ金属や有機アミンの塩の形で使用されることが好ましい。
また、本発明における水不溶性樹脂の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)としては、1〜6の範囲が好ましく、1〜4の範囲がより好ましい。分子量分布が前記範囲内であると、インクの分散安定性、吐出安定性を高められる。
数平均分子量及び重量平均分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(いずれも東ソー(株)製)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THFにて示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算することにより表される分子量である。
本発明における水不溶性樹脂は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、沈殿重合、塊状重合、乳化重合により合成することができる。重合反応は、回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で行なうことができる。重合の開始方法は、ラジカル開始剤を用いる方法、光又は放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば、鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。
前記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶剤は、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等の種々の有機溶剤が挙げられる。溶剤は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。また、水との混合溶媒として用いてもよい。重合温度は、生成するポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり、通常は0℃〜100℃程度であるが、50〜100℃の範囲で重合を行なうことが好ましい。反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は1〜100kg/cmであり、特に1〜30kg/cm程度が好ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。得られた樹脂は、再沈殿などの精製を行なってもよい。
以下、本発明における水不溶性樹脂として好ましい具体例を示す。但し、本発明においては、下記に限定されるものではない。
Figure 2010188696
Figure 2010188696
(顔料)
本発明における顔料としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、有機顔料、無機顔料が含まれる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。
前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などが挙げられる。
前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料などが挙げられる。
前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなどが挙げられる。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラックなどが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが特に好ましい。なお、カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
本発明において顔料は、1種単独で用いてもよいし、上記の各群内もしくは各群間より複数種選択してこれらを組み合わせて使用してもよい。
顔料(p)と本発明における水不溶性樹脂(r)との比率(p:r)は、重量比で100:25〜100:140が好ましく、より好ましくは100:25〜100:50である。比率(p:r)は、水不溶性樹脂が100:25の割合以上であると分散安定性と耐擦性が良化する傾向にあり、水不溶性樹脂が100:140の割合以下であると分散安定性が良化する傾向がある。
本発明における樹脂被覆顔料(カプセル化顔料)は、水不溶性樹脂及び顔料等を用いて従来の物理的、化学的方法によって製造することができる。例えば、特開平9−151342号、特開平10−140065号、特開平11−209672号、特開平11−172180号、特開平10−25440号、又は特開平11−43636号の各公報に記載の方法により製造することができる。具体的には、特開平9−151342号及び特開平10−140065号の各公報に記載の転相法と酸析法等が挙げられ、中でも、分散安定性の点で転相法が好ましい。
転相法は、基本的には、自己分散能又は溶解能を有する樹脂と顔料との混合溶融物を水に分散させる自己分散(転相乳化)方法である。また、この混合溶融物には、上記の硬化剤又は高分子化合物を含んでなるものであってもよい。ここで、混合溶融物とは、溶解せず混合した状態、溶解して混合した状態、又はこれら両者の状態のいずれの状態を含むものをいう。「転相法」のより具体的な製造方法は、特開平10−140065号に記載の方法が挙げられる。
本発明における水性インク組成物において、本発明における樹脂被覆顔料は、前記水不溶性樹脂を用い、例えば、下記の工程(1)及び工程(2)を含む方法により樹脂被覆顔料の分散物を調製する調製工程を設けて得ることができる。また、本発明の水性インク組成物は、この調製工程を設け、得られた樹脂被覆顔料の分散物を水及び有機溶媒と共に用いて水性インクとする方法により調製することができる。
工程(1):一般式(I)で表される構造単位を含む水不溶性樹脂、有機溶媒、中和剤、顔料、及び水を含有する混合物を攪拌等により分散して分散物を得る工程
工程(2):前記分散物から前記有機溶媒を除去する工程
攪拌方法には特に制限はなく、一般に用いられる混合攪拌装置や、必要に応じて超音波分散機や高圧ホモジナイザー、ビーズミル等の分散機を用いることができる。
ここで用いる有機溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、及びエーテル系溶媒が好ましく挙げられる。前記アルコール系溶媒としては、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、エタノール等が挙げられる。前記ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。前記エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒とイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒が好ましく、メチルエチルケトンがさらに好ましい。
中和剤は、前記工程(1)に用いられることが好ましく、前記水不溶性樹脂の酸性基の一部又は全部が中和されて、前記水不溶性樹脂が水中で安定した乳化又は分散状態を形成するために用いられる。中和剤の詳細については、後述する。
前記工程(2)では、前記工程(1)で得られた分散物から、減圧蒸留等の常法により有機溶媒を留去して水系へと転相することで、顔料の粒子表面が水不溶性樹脂で被覆された樹脂被覆顔料粒子の分散物を得ることができる。得られた分散物中の有機溶媒は実質的に除去されており、ここでの有機溶媒の量は、好ましくは0.2質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以下である。
より具体的には、例えば、(1)酸性基を有する水不溶性樹脂又はそれを有機溶媒に溶解した溶液と塩基性化合物(中和剤)とを混合して中和する工程と、(2)得られた混合液に顔料を混合して懸濁液とした後に、分散機等で顔料を分散して顔料分散液を得る工程と、(3)有機溶媒を例えば蒸留して除くことによって、顔料を、酸性基を有する特定水不溶性樹脂で被覆し、水性媒体中に分散させて水性分散体とする工程とを含む方法である。
なお、より具体的には、特開平11−209672号公報及び特開平11−172180号の記載を参照することができる。
本発明において、分散処理は、例えば、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、高速攪拌型分散機、超音波ホモジナイザ−などを用いて行なうことができる。
本発明における水不溶性樹脂によって被覆された顔料の含有量としては、水性インク組成物の分散安定性、濃度の観点から、1〜10質量%が好ましく、2〜8質量%がより好ましく、2〜6質量%が特に好ましい。
−有機溶媒−
本発明における水性インク組成物は、有機溶媒の少なくとも1種を含有する。有機溶媒は、乾燥防止剤、湿潤剤あるいは浸透促進剤の目的で用いられる。乾燥防止剤としては、噴射ノズルのインク吐出口においてインクが付着乾燥して凝集体ができ、目詰まりするのを防止する目的で用いられ、乾燥防止剤や湿潤剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶媒が好ましい。また、浸透促進剤としては、紙へのインク浸透性を高める目的で用いられる。
本発明における水性インク組成物に含有する有機溶媒としては、乾燥防止剤、湿潤剤又は浸透促進剤としての機能を考慮して公知の有機溶媒の中から適宜選択することができるが、水との相溶性の観点から、水溶性の有機溶媒が好ましい。
水溶性有機溶媒の例としては、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、4−メチル−1,2−ペンタンジオール等のアルカンジオール(多価アルコール類);エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテルなどのグリコールエーテル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
また、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の糖類;糖アルコール類;ヒアルロン酸類;尿素類等のいわゆる固体湿潤剤を併用することも好ましい。
乾燥防止剤や湿潤剤の目的としては、多価アルコール類が有用であり、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、テトラエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
浸透剤の目的としては、ポリオール化合物が好ましく、脂肪族ジオールとして例えば、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールが好ましい例として挙げることができる。
前記有機溶媒は、1種単独で又は2種類以上を混合して使用することができる。
有機溶媒の水性インク組成物中における含有量としては、安定性及び吐出信頼性確保の観点から、水性インク組成物中、1〜60質量%が好ましく、より好ましくは5〜40質量%であり、特に好ましくは10〜30質量%である。
−水−
本発明における水性インク組成物は、水を含有するものであるが、水の量には特に制限はない。中でも、水の好ましい含有量は、10〜99質量%であり、より好ましくは30〜80質量%であり、更に好ましくは50〜70質量%である。
−中和剤−
本発明における水性インク組成物は、中和剤の少なくとも1種を含有することが好ましい。中和剤は、水不溶性樹脂で被覆された顔料粒子を作製する際に、水不溶性樹脂に含まれる酸性基を中和するために用いられ、水不溶性樹脂の酸価に対して0.5〜1.5当量となる量を用いることが好ましく、1〜1.5当量の範囲内であることが好ましい。
中和剤としては、例えば、アルコールアミン類(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3プロパンジオールなど)、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アンモニウム水酸化物(例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物)、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などが挙げられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好適に用いられる。
−樹脂粒子−
本発明における水性インク組成物は、定着性、耐擦性、打滴干渉回避のための凝集性付与の観点から、少なくとも1種の樹脂粒子を含むことが好ましい。
樹脂粒子は、既述の水性処理液又はこれを乾燥させた紙領域と接触した際に凝集、又は分散不安定化してインクを増粘させることにより、水性インク、すなわち画像を固定化させる機能を有する。このような樹脂粒子は、水及び有機溶剤に分散されているものが好ましい。
樹脂粒子としては、例えば、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、パラフィン系樹脂、フッ素系樹脂等を用いることができる。アクリル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂など、種々の樹脂粒子を用いることができる。特に、アクリル系樹脂粒子が好ましい。
アクリル系樹脂は、例えば、アニオン性基を有するアクリルモノマー(アニオン性基含有アクリルモノマー)及び必要に応じて該アニオン性基含有アクリルモノマーと共重合可能な他のモノマーを溶剤中で重合して得られる。前記アニオン性基含有アクリルモノマーとしては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、及びホスホン基からなる群より選ばれる1以上を有するアクリルモノマーが挙げられ、中でもカルボキシル基を有するアクリルモノマー(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマル酸等)が好ましく、特にはアクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。
樹脂粒子としては、具体的にはラテックスを好適に用いることができ、例えば、アクリル系ラテックス、酢酸ビニル系ラテックス、スチレン系ラテックス、ポリエステル系ラテックス等、種々のラテックスを好適に用いることができる。特に、アクリル系ラテックスが好ましい。
本発明における樹脂粒子としては、吐出安定性及び色材(特に顔料)を用いた場合の液安定性(特に分散安定性)の観点から、自己分散性ポリマー粒子が好ましく、カルボキシル基を有する自己分散性ポリマー粒子がより好ましい。自己分散性ポリマー粒子とは、他の界面活性剤の不存在下に、ポリマー自身が有する官能基(特に酸性基又はその塩)によって、水性媒体中で分散状態となり得る水不溶性ポリマーであって、遊離の乳化剤を含有しない水不溶性ポリマーの粒子を意味する。
ここで分散状態とは、水性媒体中に水不溶性ポリマーが液体状態で分散された乳化状態(エマルション)、及び、水性媒体中に水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態(サスペンジョン)の両方の状態を含むものである。
本発明における水不溶性ポリマーにおいては、液体組成物としたときの凝集速度と定着性の観点から、水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態となりうる水不溶性ポリマーであることが好ましい。
自己分散性ポリマー粒子の分散状態とは、水不溶性ポリマー30gを70gの有機溶剤(例えば、メチルエチルケトン)に溶解した溶液、該水不溶性ポリマーの塩生成基を100%中和できる中和剤(塩生成基がアニオン性であれば水酸化ナトリウム、カチオン性であれば酢酸)、及び水200gを混合、攪拌(装置:攪拌羽根付き攪拌装置、回転数200rpm、30分間、25℃)した後、該混合液から該有機溶剤を除去した後でも、分散状態が25℃で少なくとも1週間安定に存在することを目視で確認することができる状態をいう。
また、水不溶性ポリマーとは、ポリマーを105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100g中に溶解させたときに、その溶解量が10g以下であるポリマーをいい、その溶解量が好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下である。前記溶解量は、水不溶性ポリマーの塩生成基の種類に応じて、水酸化ナトリウム又は酢酸で100%中和した時の溶解量である。
前記水性媒体は、水を含んで構成され、必要に応じて親水性有機溶剤を含んでいてもよい。本発明においては、水と水に対して0.2質量%以下の親水性有機溶剤とから構成されることが好ましく、水から構成されることがより好ましい。
前記水不溶性ポリマーの主鎖骨格としては、特に制限は無く、例えば、ビニルポリマー、縮合系ポリマー(エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、セルロース、ポリエーテル、ポリウレア、ポリイミド、ポリカーボネート等)を用いることができる。その中で、特にビニルポリマーが好ましい。
ビニルポリマー及びビニルポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−181549号公報及び特開2002−88294号公報に記載されているものを挙げることができる。また、解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する連鎖移動剤や重合開始剤、イニファーターを用いたビニルモノマーのラジカル重合や、開始剤或いは停止剤のどちらかに解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する化合物を用いたイオン重合によって高分子鎖の末端に解離性基を導入したビニルポリマーも使用できる。
また、縮合系ポリマーと縮合系ポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−247787号公報に記載されているものを挙げることができる。
自己分散性ポリマー粒子は、自己分散性の観点から、親水性の構成単位と芳香族基含有モノマーに由来する構成単位とを含む水不溶性ポリマーを含むことが好ましい。
前記親水性の構成単位は、親水性基含有モノマーに由来するものであれば特に制限はなく、1種の親水性基含有モノマーに由来するものであっても、2種以上の親水性基含有モノマーに由来するものであってもよい。前記親水性基としては、特に制限はなく、解離性基であってもノニオン性親水性基であってもよい。
本発明において前記親水性基は、自己分散促進の観点、形成された乳化又は分散状態の安定性の観点から、解離性基であることが好ましく、アニオン性の解離基であることがより好ましい。前記解離性基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などが挙げられ、中でも、インク組成物を構成した場合の定着性の観点から、カルボキシル基が好ましい。
本発明における親水性基含有モノマーは、自己分散性と凝集性の観点から、解離性基含有モノマーであることが好ましく、解離性基とエチレン性不飽和結合とを有する解離性基含有モノマーであることが好ましい。
解離性基含有モノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとして具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。不飽和スルホン酸モノマーとして具体的には、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。不飽和リン酸モノマーとして具体的には、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記解離性基含有モノマーの中では、分散安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
本発明における自己分散性ポリマー粒子は、自己分散性と処理液と接触したときの凝集速度の観点から、カルボキシル基を有するポリマーを含むことが好ましく、カルボキシル基を有し、酸価(mgKOH/g)が25〜100であるポリマーを含むことがより好ましい。更に、前記酸価は、自己分散性と処理液と接触したときの凝集速度の観点から、25〜80であることがより好ましく、30〜65であることが特に好ましい。
特に、酸価は、25以上であると自己分散性の安定性が良好になり、100以下であると凝集性が向上する。
前記芳香族基含有モノマーは、芳香族基と重合性基とを含む化合物であれば特に制限はない。前記芳香族基は芳香族炭化水素に由来する基であっても、芳香族複素環に由来する基であってもよい。本発明においては水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、芳香族炭化水素に由来する芳香族基であることが好ましい。
また前記重合性基は、縮重合性の重合性基であっても、付加重合性の重合性基であってもよい。本発明においては水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、付加重合性の重合性基であることが好ましく、エチレン性不飽和結合を含む基であることがより好ましい。
本発明における芳香族基含有モノマーは、芳香族炭化水素に由来する芳香族基とエチレン性不飽和結合とを有するモノマーであることが好ましい。芳香族基含有モノマーは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記芳香族基含有モノマーとしては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー等が挙げられる。中でも、ポリマー鎖の親水性と疎水性のバランスとインク定着性の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びフェニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが更に好ましい。
なお、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
本発明における自己分散性ポリマー粒子は、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を含み、その含有量が10質量%〜95質量%であることが好ましい。芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーの含有量が10質量%〜95質量%であることで、自己乳化又は分散状態の安定性が向上し、更にインク粘度の上昇を抑制することができる。
本発明においては、自己分散状態の安定性、芳香環同士の疎水性相互作用による水性媒体中での粒子形状の安定化、粒子の適度な疎水化による水溶性成分量の低下の観点から、15質量%〜90質量%であることがより好ましく、15質量%〜80質量%であることがより好ましく、25質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
本発明における自己分散性ポリマー粒子は、例えば、芳香族基含有モノマーに由来する構成単位と、解離性基含有モノマーに由来する構成単位とを用いて構成することができる。更に、必要に応じて、その他の構成単位を更に含んでもよい。
前記その他の構成単位を形成するモノマーとしては、前記芳香族基含有モノマーと解離性基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば特に制限はない。中でも、ポリマー骨格の柔軟性やガラス転移温度(Tg)制御の容易さの観点から、アルキル基含有モノマーであることが好ましい。
前記アルキル基含有モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、Nーヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−,イソ)ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−、イソ)ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
本発明における自己分散性ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマーの分子量範囲は、重量平均分子量で、3000〜20万であることが好ましく、5000〜15万であることがより好ましく、10000〜10万であることが更に好ましい。重量平均分子量を3000以上とすることで水溶性成分量を効果的に抑制することができる。また、重量平均分子量を20万以下とすることで、自己分散安定性を高めることができる。
なお、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)で測定される。GPCは、HLC−8020GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、条件としては、試料濃度を0.45質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、IR検出器を用いて行なう。また、検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
本発明における自己分散性ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマーは、ポリマーの親疎水性制御の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構造単位(好ましくは、フェノキシエチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及び/又はベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位)を共重合比率として自己分散性ポリマー粒子の全質量の15〜80質量%を含むことが好ましい。
また、水不溶性ポリマーは、ポリマーの親疎水性制御の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を共重合比率として15〜80質量%と、カルボキシル基含有モノマーに由来する構成単位と、アルキル基含有モノマーに由来する構成単位(好ましくは、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルに由来する構造単位)とを含むことが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及び/又はベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を共重合比率として15〜80質量%と、カルボキシル基含有モノマーに由来する構成単位と、アルキル基含有モノマーに由来する構成単位(好ましくは、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜4のアルキルエステルに由来する構造単位)とを含むことがより好ましく、更には加えて、酸価が25〜100であって重量平均分子量が3000〜20万であることが好ましく、酸価が25〜95であって重量平均分子量が5000〜15万であることがより好ましい。
以下に、自己分散性ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマーの具体例として、例示化合物B−01〜B−19を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、括弧内は共重合成分の質量比を表す。
B−01:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(50/45/5)
B−02:フェノキシエチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(30/35/29/6)
B−03:フェノキシエチルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(50/44/6)
B−04:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸共重合体(30/55/10/5)
B−05:ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(35/59/6)
B−06:スチレン/フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(10/50/35/5)
B−07:ベンジルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(55/40/5)
B−08:フェノキシエチルメタクリレート/ベンジルアクリレート/メタクリル酸共重合体(45/47/8)
B−09:スチレン/フェノキシエチルアクリレート/ブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(5/48/40/7)
B−10:ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(35/30/30/5)
B−11:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メタクリル酸共重合体(12/50/30/8)
B−12:ベンジルアクリレート/イソブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(93/2/5)
B−13:スチレン/フェノキシエチルメタクリレート/ブチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(50/5/20/25)
B−14:スチレン/ブチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(62/35/3)
B−15:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/51/4)
B−16:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/49/6)
B−17:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/48/7)
B−18:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/47/8)
B−19:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/45/10)
本発明における自己分散性ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマーの製造方法としては特に制限はなく、例えば、重合性界面活性剤の存在下に、乳化重合を行い、界面活性剤と水不溶性ポリマーとを共有結合させる方法、上記親水性基含有モノマーと芳香族基含有モノマーとを含むモノマー混合物を溶液重合法、塊状重合法等の公知の重合法により、共重合させる方法を挙げることができる。前記重合法の中でも、凝集速度とインク組成物としたときの打滴安定性の観点から、溶液重合法が好ましく、有機溶剤を用いた溶液重合法がより好ましい。
本発明における自己分散性ポリマー粒子は、凝集速度の観点から、有機溶剤中で合成されたポリマーを含み、該ポリマーはカルボキシル基を有し、(好ましくは酸価が20〜100であって)該ポリマーのカルボキシル基の一部又は全部は中和され、水を連続相とするポリマー分散物として調製されたものであることが好ましい。すなわち、本発明における自己分散性ポリマー粒子の製造は、有機溶剤中でポリマーを合成する工程と、前記ポリマーのカルボキシル基の少なくとも一部が中和された水性分散物とする分散工程とを設けて行なうことが好ましい。
前記分散工程は、次の工程(1)及び工程(2)を含むことが好ましい。
工程(1):ポリマー(水不溶性ポリマー)、有機溶剤、中和剤、及び水性媒体を含有する混合物を、攪拌する工程
工程(2):前記混合物から前記有機溶剤を除去する工程
前記工程(1)は、まずポリマー(水不溶性ポリマー)を有機溶剤に溶解させ、次に中和剤と水性媒体を徐々に加えて混合、攪拌して分散体を得る処理であることが好ましい。このように、有機溶剤中に溶解した水不溶性ポリマー溶液中に中和剤と水性媒体を添加することで、強いせん断力を必要とせずに、より保存安定性の高い粒径の自己分散性ポリマー粒子を得ることができる。
該混合物の攪拌方法に特に制限はなく、一般に用いられる混合攪拌装置や、必要に応じて超音波分散機や高圧ホモジナイザー等の分散機を用いることができる。
有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤及びエーテル系溶剤が好ましく挙げられる。
アルコール系溶剤としては、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、エタノール等が挙げられる。ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶剤としては、ジブチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶剤の中では、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤とイソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤が好ましい。また、油系から水系への転相時への極性変化を穏和にする目的で、イソプロピルアルコールとメチルエチルケトンを併用することも好ましい。該溶剤を併用することで、凝集沈降や粒子同士の融着が無く、分散安定性の高い微粒径の自己分散性ポリマー粒子を得ることができる。
中和剤は、解離性基の一部又は全部が中和され、自己分散性ポリマーが水中で安定した乳化又は分散状態を形成するために用いられる。本発明の自己分散性ポリマーが解離性基としてアニオン性の解離基(例えば、カルボキシル基)を有する場合、用いられる中和剤としては有機アミン化合物、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物等の塩基性化合物が挙げられる。有機アミン化合物の例としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチル−エタノールアミン、N,N−ジエチル−エタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。中でも、本発明の自己分散性ポリマー粒子の水中への分散安定化の観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
これら塩基性化合物は、解離性基100モル%に対して、5〜120モル%使用することが好ましく、10〜110モル%であることがより好ましく、15〜100モル%であることが更に好ましい。15モル%以上とすることで、水中での粒子の分散を安定化する効果が発現し、100モル%以下とすることで、水溶性成分を低下させる効果がある。
前記工程(2)においては、前記工程(1)で得られた分散体から、減圧蒸留等の常法により有機溶剤を留去して水系へと転相することで自己分散性ポリマー粒子の水性分散物を得ることができる。得られた水性分散物中の有機溶剤は実質的に除去されており、有機溶剤の量は、好ましくは0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
樹脂粒子の重量平均分子量は1万以上、20万以下が好ましく、より好ましくは10万以上、20万以下である。
樹脂粒子の平均粒径は、10nm〜1μmの範囲が好ましく、10〜200nmの範囲がより好ましく、20〜100nmの範囲が更に好ましく、20〜50nmの範囲が特に好ましい。
樹脂粒子の含有率はインクに対して、水性インク組成物全体に対して、0.5〜20質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%がさらに好ましい。
樹脂のガラス転移温度Tgは30℃以上であることが好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。
また、樹脂粒子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、単分散の粒径分布を持つ樹脂粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
−界面活性剤−
本発明における水性インク組成物は、界面活性剤の少なくとも1種を含有することが好ましい。界面活性剤は、表面張力調整剤として用いられ、ノニオン系、カチオン系、アニオン系、ベタイン系の界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤は、インクジェット法で良好に打滴するために、水性インク組成物の表面張力を20〜60mN/mに調整できる量を含有するのが好ましい。中でも、界面活性剤の含有量は、表面張力を20〜45mN/mに調整できる量が好ましく、より好ましくは25〜40mN/mに調整できる量である。
界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等が有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれも使用することができる。
界面活性剤の水性インク組成物中における含有量は、特に制限はなく、1質量%以上が好ましく、より好ましくは1〜10質量%であり、更に好ましくは1〜3質量%である。
−その他−
本発明における水性インク組成物は、上記の成分に加え、必要に応じて、例えば、紫外線吸収剤、褪色防止剤、防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、乳化安定剤、防腐剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、キレート剤等の他の成分を含有してもよい。
−水性インク組成物の物性−
本発明における水性インク組成物の表面張力(25℃)としては、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上40mN/m以下である。
表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学株式会社製)を用い、水性インクを25℃の条件下で測定されるものである。
また、本発明における水性インク組成物の20℃での粘度は、1.2mPa・s以上15.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは2mPa・s以上13mPa・s未満であり、更に好ましくは2.5mPa・s以上10mPa・s未満である。
粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用い、水性インクを20℃の条件下で測定されるものである。
本発明における水性インク組成物は、多色のカラー画像(例えばフルカラー画像)の形成に用いることができる。フルカラー画像の形成には、マゼンタ色調のインク組成物、シアン色調のインク組成物、及びイエロー色調のインク組成物を用いることができ、さらに色調を整えるために、ブラック色調のインク組成物を用いることができる。
また、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の色調以外のレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)、白色(W)の色調のインク組成物や、いわゆる印刷分野における特色のインク組成物等を用いることができる。
上記の各色調のインク組成物は、着色剤として用いる顔料の色相を所望により変更することにより調製できる。
(水性液体組成物)
本発明のインクジェット記録用インクセットにおける水性液体組成物は、前記水性インク組成物と混合したときに、水性インク組成物中の顔料を凝集させる凝集成分として酸少なくとも含んでなり、必要に応じて他の成分を用いて構成することができる。
−凝集成分−
本発明における水性液体組成物は、水性インク組成物中の顔料を凝集させる凝集成分として酸の少なくとも1種を含有する。インクジェット法で吐出された前記水性インク組成物に水性液体組成物が混合することにより、水性インク組成物中で安定的に分散している顔料の凝集が促進される。
水性液体組成物の例としては、水性インク組成物のpHを変化させて凝集物を生じさせることができる液体組成物が挙げられる。このとき、水性液体組成物のpH(25℃)は、6以下が好ましく、より好ましくはpHは4以下である。中でも、pH(25℃)は1〜4の範囲が好ましく、特に好ましくは、pHは1〜3である。この場合、水性インク組成物のpH(25℃)は、7.5以上(より好ましくは8以上)であることが好ましい。
中でも、本発明においては、画像濃度、解像度、及びインクジェット記録の高速化の観点から、前記水性インク組成物のpH(25℃)が7.5以上であって、水性液体組成物のpH(25℃)が4以下である場合が好ましくい。
顔料を凝集させる凝集成分としては、水性液体組成物中に酸を含有することが必要であるが、その他として多価金属塩、ポリアリルアミン及びその誘導体などを挙げることができる。
酸としては、例えば、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、もしくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等の中から好適に選択することができる。
前記多価金属塩としては、周期表の第2属のアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム)、周期表の第3属の遷移金属(例えば、ランタン)、周期表の第13属からのカチオン(例えば、アルミニウム)、ランタニド類(例えば、ネオジム)、の塩を挙げることができる。これら金属の塩としては、硝酸塩、塩化物、及びチオシアン酸塩がある。
前記酸としては、水性インク組成物中の顔料の凝集速度向上の観点から、上記の中でも、有機カルボン酸が好ましく、更に2価又は3価の有機カルボン酸がより好ましく、更に、クエン酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸が特に好ましい。
前記凝集成分は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
顔料を凝集させる凝集成分としての酸の水性液体組成物中における含有量としては、10〜35質量%が好ましく、より好ましくは15〜35質量%であり、更に好ましくは20〜35質量%の範囲である。
<画像記録方法>
本発明の画像記録方法は、本発明における水不溶性樹脂と顔料と有機溶媒と水とを含有する既述の水性インク組成物を記録媒体上にインクジェット法により付与するインク付与工程と、水性インク組成物中の顔料を凝集させる酸を含む既述の水性液体組成物を記録媒体上に付与する凝集成分付与工程とを設け、水性インク組成物と水性液体組成物とを接触させて画像を形成する構成としたものである。
本発明の画像記録方法においては、記録時に水性インク組成物と水性液体組成物の2液を接触させたときに凝集を起こさせて画像を記録する場合に、前記特定水不溶性樹脂で被覆された顔料を着色剤として含む既述の水性インク組成物を用いることで、2液の接触できる凝集物の液体吐出部への付着又は堆積が緩和されると共に、付着した凝集物の除去が容易になるので、インク吐出時のインク吐出方向性不良を抑えて白抜け等の画像故障の発生を防止でき、かつ、耐擦性に優れた高解像度の画像を記録できる。また、吐出装置側のメンテナンス頻度の軽減とメンテナンス性の向上をも図ることができる。
インク付与工程では、水性インク組成物をインクジェット法により付与する。具体的には、所望の記録媒体、すなわち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−337947号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載のインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等に、エネルギーを供与することにより水性インク組成物を吐出し、着色画像を形成する。なお、本発明に好ましいインクジェット法として、特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105に記載の方法が適用できる。
インクジェット法には、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。インクジェット法としては、特に、特開昭54−59936号公報に記載の方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット法を有効に利用することができる。
尚、前記インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
また、インクジェット法で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
尚、前記インクジェット法により記録を行う際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
凝集成分付与工程では、水性インク組成物の付与前又は付与後に、被記録媒体上に水性液体組成物を付与する。水性液体組成物の付与は、塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行なうことができる。塗布法としては、バーコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等を用いた公知の塗布方法によって行なうことができる。インクジェット法の詳細については、既述の通りである。
本発明においては、凝集成分付与工程で水性液体組成物を付与した後にインク付与工程を設ける態様が好ましい。すなわち、記録媒体上に、水性インク組成物を付与する前に、予め水性インク組成物中の顔料を凝集させるための水性液体組成物を付与しておき、記録媒体上に付与された水性液体組成物に接触するように水性インク組成物を付与して画像を形成する態様が好ましい。これにより、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
画像記録の際に、光沢性や耐水性を付与したり、耐候性を改善する目的で、ポリマー又はそのポリマーラテックスを併用してもよい。ポリマー又はポリマーラテックスを付与する時期については、水性インク組成物を付与する前及び後のいずれでもよく、また、同時付与されてもよい。したがって、ポリマー又はポリマーラテックスは、記録媒体に付与する態様で用いてもよいし、を別の液状物とする態様で用いてもよい。
具体的には、特開2002−166638号公報、特開2002−121440号公報、特開2002−154201号公報、特開2002−144696号公報、特開2002−080759号公報に記載の方法を好ましく用いることができる。
本発明の画像形成方法は、水性インク組成物を付与するインク付与工程、及び水性液体組成物を付与する凝集成分付与工程に加えて、さらに他の工程が設けられてもよい。他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、記録媒体に付与された水性インク組成物中の有機溶媒を乾燥除去する乾燥除去工程、水性インク組成物中に含むことができる樹脂粒子を溶融定着する加熱定着工程、等が挙げられる。
本発明の画像形成方法の他の例としては、最初に画像形成する記録媒体として中間転写体を用い、本発明における特定水不溶性樹脂と顔料と有機溶媒と水とを含有する既述の水性インク組成物を中間転写体上にインクジェット法により付与するインク付与工程と、水性インク組成物中の顔料を凝集させる成分として酸を含む水性液体組成物を中間転写体上に付与する凝集成分付与工程とを設け、水性インク組成物と水性液体組成物とを接触させて中間転写体上に画像を形成した後、中間転写体に形成された画像を所望とする最終の記録媒体に転写する転写工程を設けた方法が挙げられる。
この場合も、上記と同様に、例えば、乾燥除去工程、加熱定着工程などの他の工程を更に設けることができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
なお、重量平均分子量は、前述の樹脂粒子の項に記載の方法にてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定した。
(合成例1)
<モノマー(M−25/M−27)混合物の合成>
9(10H)−アクリドン9.76部、t−ブトキシカリウム5.61部をジメチルスルホキシド30部に溶解させ、45℃に加熱する。これにクロロメチルスチレン(セイミケミカル(株)製CMS−P、メタ体/パラ体=50/50(mol/mol)の混合物)15.26部を滴下し、50℃でさらに5時間加熱攪拌を行う。この反応液を蒸留水200部に攪拌しながら注ぎ、得られた析出物を濾別、洗浄することで、モノマー(M−25/M−27)混合物を11.9部得た。
(合成例2)
〜樹脂分散剤P−1の合成〜
攪拌機、冷却管を備えた1000mlの三口フラスコに、メチルエチルケトン88gを加えて窒素雰囲気下で72℃に加熱し、これにメチルエチルケトン50gにジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、モノマー(M−25/M−27)混合物15g、メタクリル酸10g、及びエチルメタクリレート85gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後、メチルエチルケトン2gにジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温して4時間加熱した。得られた反応溶液は過剰量のヘキサンに2回再沈殿させ、析出した樹脂を乾燥させて、モノマー(M−25/M−27)混合物/エチルメタクリレート/メタクリル酸(共重合比[質量%比]=15/75/10)共重合体(樹脂分散剤P−1)96.5gを得た。
得られた樹脂分散剤P−1の組成は、H−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は49400であった。さらに、JIS規格(JIS K 0070:1992)記載の方法により、このポリマーの酸価を求めたところ、65.2mgKOH/gであった。
(合成例3)
〜樹脂分散剤P−2の合成〜
攪拌機、冷却管を備えた1000mlの三口フラスコに、メチルエチルケトン88gを加えて窒素雰囲気下で72℃に加熱し、これにメチルエチルケトン50gにジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、フェノキシエチルメタクリレート50g、メタクリル酸13g、及びメチルメタクリレート37gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後、メチルエチルケトン2gにジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温して4時間加熱した。得られた反応溶液は過剰量のヘキサンに2回再沈殿させ、析出した樹脂を乾燥させて、フェノキシエチルメタクリレート/メチルメタクリレート/メタクリル酸(共重合比[質量%比]=67/20/13)共重合体(樹脂分散剤P−2)96.5gを得た。
得られた樹脂分散剤P−2の組成は、H−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は49400であった。さらに、JIS規格(JIS K 0070:1992)記載の方法により、このポリマーの酸価を求めたところ、65.2mgKOH/gであった。
(合成例4)
〜樹脂分散剤P−3の合成〜
樹脂分散剤P−1の合成において、モノマー(M−25/M−27)混合物/エチルメタクリレート/メタクリル酸を、下記表1に示すように、ベンジルメタクリレート/メタクリル酸(共重合比[質量%比]=92/8)にそれぞれ代えたこと以外は、樹脂分散剤P−1の合成と同様にして、樹脂分散剤P−3を得た。
得られた樹脂分散剤P−3の組成は、上記と同様にして、分析して、重量平均分子量、酸価を求め、その結果を表1に示す。
(実施例1)
−樹脂被覆顔料粒子の分散物の調製−
ピグメント・レッド122(Cromophtal Jet Magenta DMQ(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;マゼンタ顔料)10部と、上記のモノマー(M−25/M−27)混合物/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(樹脂分散剤P−1)4.5部と、メチルエチルケトン42部と、1規定 NaOH水溶液4.2部と、イオン交換水87.2部とを混合し、ディスパー混合し、更に分散機(マイクロフルイダイザーM−140K、150MPa)で10パス処理した。続いて、得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去することにより、顔料濃度が10.2質量%の樹脂被覆顔料粒子の分散物を得た。
−樹脂被覆顔料粒子の粒子径の測定−
得られた樹脂被覆顔料粒子の分散物について、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用い、動的光散乱法により体積平均粒径を測定した。測定は、樹脂被覆顔料粒子の分散物10μlに対してイオン交換水10mlを加えて測定用サンプル液を調製し、これを25℃に調温して行なった。測定結果は下記表1に示す。
[ラテックスの調製]
(自己分散性ポリマー粒子の調製)
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン360.0gを仕込んで、75℃まで昇温した。反応容器内温度を75℃に保ちながら、フェノキシエチルアクリレート180.0g、メチルメタクリレート162.0g、アクリル酸18.0g、メチルエチルケトン72g、及び「V−601」(和光純薬(株)製)1.44gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、「V−601」0.72g、メチルエチルケトン36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌後、さらに「V−601」0.72g、イソプロパノール36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌した後、85℃に昇温して、さらに2時間攪拌を続けた。得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は64000(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出、使用カラムはTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製))、酸価は38.9(mgKOH/g)であった。
次に、重合溶液668.3gを秤量し、イソプロパノール388.3g、1mol/L NaOH水溶液145.7mlを加え、反応容器内温度を80℃に昇温した。次に蒸留水720.1gを20ml/minの速度で滴下し、水分散化せしめた。その後、大気圧下にて反応容器内温度80℃で2時間、85℃で2時間、90℃で2時間保った後、反応容器内を減圧にし、イソプロパノール、メチルエチルケトン、蒸留水を合計で913.7g留去し、固形分濃度28.0%の自己分散性ポリマー微粒子(B−01)の水分散物(エマルジョン)を得た。
−水性インク組成物の調製−
次に、得られた樹脂被覆顔料粒子の分散物を用い、以下の組成にて水性インク組成物(水性インク)を調製した。この水性インクの25℃でのpHは、8.9であった。さらにこの水性インクを40℃3ヶ月経時させた。
<組成>
・前記樹脂被覆顔料粒子の分散物 38.2部
・自己分散性ポリマー粒子(B−01) 8部
・サンニックスGP−250(三洋化学工業(株)製) 8部
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル 8部
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製) 1部
・イオン交換水 32.8部
−凝集液の調製−
以下の組成の成分を混合して、水性の凝集液(水性液体組成物)を調製した。
<組成>
・マロン酸 ・・・ 23.5g
・アニオン性界面活性剤A ・・・ 1g
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル ・・・ 20g
・イオン交換水 ・・・ 全体で100gとなるように添加
尚、アニオン性界面活性剤Aは下記構造式で表される化合物である。
Figure 2010188696
上記反応液の物性値を測定したところ、粘度4.9mPa・s、表面張力36.0mN/m、pH1.0であった。
以上のようにして、マゼンタ色調の水性インクと水性凝集液とからなるインクセットを作製した。
−インクセットの評価−
インクジェット記録装置として、600dpi、256ノズルの試作プリントヘッドを備えたインクジェット装置を用意し、これに上記より得たインクセットを装填して、以下の方法により耐擦性、白抜けを評価した。
〜白抜けの評価〜
記録媒体として特菱アート両面N(三菱製紙(株)製)を、500mm/秒で所定の直線方向に移動可能なステージ上に固定し、これに上記で得た凝集液をワイヤーバーコーターで約5μmの厚み(クエン酸0.84g/m)となるように塗布し、塗布直後に50℃で2秒間乾燥させた。
その後、上記試作ヘッドにてベタ画像を印字した。印字直後、60℃で3秒間乾燥させ、更に60℃に加熱された一対の定着ローラ間を通過させ、ニップ圧0.25MPa、ニップ幅4mmにて定着処理を実施し、評価サンプルを得た。なお、定着ローラは、内部にハロゲンランプが内装されたSUS製の円筒体の芯金の表面がシリコーン樹脂で被覆された加熱ロールと、該加熱ローラに圧接する対向ロールとで構成されたものである。記録された画像(5cm×5cm)を観察した。そして、観察した画像を下記の評価基準にしたがって目視評価した。
<評価基準>
A:白抜けの発生はみられなかった。
B:白抜けの発生が2箇所以下であった。
C:白抜けの発生が3〜10箇所であった。
D:白抜けの発生が10箇所を超えていた。
〜耐擦性の評価〜
上記で得られたベタ画像を印字面を外側に向けて文鎮(重量470g、サイズ15mm×30mm×120mm)に巻きつけ、評価サンプルを未印字の特菱アート上で3往復擦った(荷重260kg/mに相当)。擦った後の印字面を目視により観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
A:画像のハガレの発生はみられなかった。
B:画像のハガレの発生が2箇所以下であった。
C:画像のハガレの発生が3〜10箇所であった。
D:画像のハガレの発生が10箇所を超えていた。
(実施例2〜13、比較例1〜8)
実施例1において、「樹脂被覆顔料粒子の分散物の調製」に用いたモノマー(M−25/M−27)混合物/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(樹脂分散剤P−1)に対して、下記表1、2に示すように、樹脂分散剤、1規定 NaOH水溶液の量(樹脂分散剤に対する中和度)、凝集液のpH(酸の量を適当に調整した)および自己分散性ポリマーのNaOH添加量を適当に調整することによりインクpHを変えたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂被覆顔料粒子の分散物を得ると共に、粒子径の測定、水性インク及び凝集液の調製及び評価を行なった。測定及び評価の結果は、下記表1、2に示す。
Figure 2010188696
Figure 2010188696
前記表1、2に示すように、比較例のいずれも耐擦性及び白抜けのいずれかが劣っています。一方、本発明の構成を有する実施例では、耐擦性及び白抜けが共に改良されている。
なお、上記の実施例では、水性インク組成物として、マゼンタ色調のインク組成物を調製した場合を中心に説明したが、マゼンタ色調のインク組成物に用いた顔料の種類(色相)を変更することにより、上記と同様にして、ブラックインク組成物、シアンインク組成物、及びイエローインク組成物等の種々の色相の水性インク組成物を得ることができ、また、2色以上の水性インクをインクジェット装置に装填することにより、上記と同様して多色画像の記録が可能であり、上記と同様の結果及び効果を得ることができる。

Claims (8)

  1. 酸性基を有する繰り返し単位を含む共重合体であって中和度が70%〜95%である水不溶性樹脂によって被覆された顔料、有機溶媒及び水を含有する水性インク組成物と、前記水性インク組成物と混合したときに該水性インク組成物中の前記顔料を凝集させる酸を含む水性液体組成物と、を含むことを特徴とするインクジェット記録用インクセット。
  2. 前記水不溶性樹脂は、酸価が30mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用インクセット。
  3. 前記水不溶性樹脂は、親水性構造単位(A)と疎水性構造単位(B)とを含み、前記疎水性構造単位(B)の少なくとも1種が芳香環を含有する構造単位であって、前記親水性構造単位(A)が少なくとも(メタ)アクリル酸に由来の構造単位を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録用インクセット。
  4. 前記水性インク組成物が、更に樹脂粒子を含むことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
  5. 前記水性インク組成物の25℃でのpHが7.5以上であり、前記水性液体組成物の25℃でのpHが4以下であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
  6. 前記水性液体組成物は、前記顔料を凝集させる酸として有機カルボン酸を含有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
  7. 酸性基を有する繰り返し単位を含む共重合体であって中和度が70%〜95%である水不溶性樹脂によって被覆された顔料、有機溶媒及び水を含有する水性インク組成物を記録媒体上に、インクジェット法により付与するインク付与工程と、前記水性インク組成物と混合したときに該水性インク組成物中の前記顔料を凝集させる酸を含む水性液体組成物を記録媒体上に付与する凝集成分付与工程と、を有し、前記水性インク組成物と前記水性液体組成物とを接触させて画像を形成する画像記録方法。
  8. 前記凝集成分付与工程により水性液体組成物を付与した後、前記インク付与工程により、被記録媒体上に付与された水性液体組成物と接触させて前記水性インク組成物を付与することにより画像を形成することを特徴とする請求項7に記載の画像記録方法。
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