JP2010184807A - 搬送ローラー、搬送ユニット、及び印刷装置 - Google Patents

搬送ローラー、搬送ユニット、及び印刷装置 Download PDF

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Abstract

【課題】コストダウンや軽量化を可能にし、しかも搬送ムラも防止した優れた搬送ローラーと、この搬送ローラーを用いた搬送ユニット、印刷装置を提供する。
【解決手段】プレス加工により一対の端面を対向させ、円筒状に形成されたローラー本体16と、ローラー本体16の表面に設けられ、無機粒子95を含有した高摩擦層50と、を備えてなる搬送ローラーである。ローラー本体16は、一対の端面が離間した繋ぎ目80が形成されており、無機粒子95の平均粒径は、ローラー本体16の外周面側における一対の端面間の距離d1以下である。
【選択図】図10

Description

本発明は、搬送ローラー、搬送ユニット、及び印刷装置に関する。
従来、印刷装置として種々のプリンターが提供されている。このようなプリンターでは、用紙等の記録媒体を搬送ローラー(紙送りローラー)及び従動ローラーで印刷部に搬送し、ここで印刷した後、排紙ローラー(駆動ローラー)及びその従動ローラー(ギザローラー)で記録媒体を排出するように構成されている。
このようなプリンターにおいて搬送ローラーは、従動ローラーとの間に用紙を挟持し、その状態で回転駆動することにより、用紙をキャリッジの移動方向と直交する副走査方向に移動させるようになっている。したがって、用紙を記録位置まで精度良く搬送し、さらに印刷速度に合わせて順次送り込むことから、高い搬送力が要求されている。
そこで、搬送ローラーに高い摩擦力を保持させるため、特許文献1には金属製丸棒の周面に、目打ち加工によって多数の突起を形成する技術が開示されている。
ところが、この技術では、軸状(円柱状)の表面に周方向に沿って突起を形成するため、作業性が悪いといった課題がある。また、中実の材料を用いるため、コストが嵩むといった課題もある。
このような背景のもとに特許文献2には、コストダウンを目的として、金属板を曲げ加工して円筒状(中空状)の軸(円筒軸)に成形し、この円筒軸を中実の金属製丸棒材に替えて用いることが提案されている。
特許第3271048号公報 特開2006−289496号公報
しかしながら、特にコストダウンや軽量化を図るべく、前記特許文献2に提案されているような円筒状の軸を搬送ローラーに適用しようとした場合、これに高い摩擦力を付与するのが困難になっている。
例えば、プレス加工によって表面を叩き、前記特許文献1のように突起を形成することが考えられるが、その場合には、中空であるため変形が生じ易く、特に曲げ加工を行った際に形成された繋ぎ目に力が集中し、変形が生じ易くなる。
また、このような繋ぎ目を形成した円筒状の軸は、加工時だけでなく使用時(駆動時)においても、外力が加わった際に変形を起こし易くなっている。すなわち、駆動時などにおいて外力が加わると、この外力が例えば繋ぎ目に形成された隙間を狭める方向に働き、これによってローラー本体が変形してしまう。すると、このような変形によって搬送ムラが生じるようになり、その結果、印刷ムラを引き起こしてしまう。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、コストダウンや軽量化を可能にし、しかも搬送ムラも防止した優れた搬送ローラーと、この搬送ローラーを用いた搬送ユニット、印刷装置を提供することにある。
本発明の搬送ローラーは、プレス加工により一対の端面を対向させ、円筒状に形成されたローラー本体と、
前記ローラー本体の表面に設けられ、無機粒子を含有した高摩擦層と、を備え、
前記ローラー本体は、前記一対の端面が離間した繋ぎ目が形成されており、
前記無機粒子の平均粒径は、前記ローラー本体の外周面側における前記一対の端面間の距離以下であることを特徴としている。
この搬送ローラーによれば、プレス加工により円筒状に形成されてなるローラー本体を用いることにより、中実の丸棒材を用いた場合に比べてコストダウン及び軽量化が可能になる。また、ローラー本体の表面に、無機粒子を含有してなる高摩擦層を設けているので、この高摩擦層によって良好な搬送力が発揮される。
さらに、前記無機粒子の平均粒径が、ローラー本体の繋ぎ目の、外周面側における前記一対の端面間の距離(すなわち、外周面側の隙間の幅)以下の大きさになっているので、ローラー本体の表面に無機粒子を配して高摩擦層を形成した際、無機粒子の半分以上が、前記繋ぎ目に形成された隙間に入り込み、さらにその一部がこの隙間内に留まるようになる。したがって、繋ぎ目に無機粒子が充填されることにより、使用時等において外力が加わり、この外力が繋ぎ目の隙間を狭める方向に働いても、無機粒子がこの力に抗するため、ローラー本体の変形が抑えられる。よって、このような変形に起因する搬送ムラが防止される。
また、高摩擦層を形成した際、ローラー本体の繋ぎ目に形成された隙間が無機粒子によって塞がれるので、その後さらに繋ぎ目上に配された無機粒子は、繋ぎ目の隙間に入り込むことなく、その上に積み重なるようになる。したがって、前記繋ぎ目に形成された隙間によってローラー本体に溝が形成されてしまうことがなく、これによっても、搬送ムラが防止される。すなわち、ローラー本体に前記繋ぎ目の隙間による溝が形成されてしまうと、紙送りの際にこの溝が用紙に当たった際、他の面が当たるときと異なる接触抵抗を生じ、その結果、搬送速度が異なることで搬送ムラを生じてしまうが、本発明によれば、前述したように溝が形成されないことで、搬送ムラも防止される。
また、前記搬送ローラーにおいて、前記繋ぎ目における前記一対の端面間の距離は、前記ローラー本体の外周面側に対して内周面側が狭く形成されており、前記無機粒子の平均粒径は、前記ローラー本体の内周面側における前記一対の端面間の距離より大きいのが好ましい。
このようにすれば、ローラー本体の表面に無機粒子を配して高摩擦層を形成した際、無機粒子の一部が、前記繋ぎ目に形成された隙間内に確実に留まるようになる。したがって、前述したように使用時等において繋ぎ目の隙間を狭める方向に働く外力が加わっても、無機粒子がこの力に抗することにより、ローラー本体の変形が確実に抑えられ、搬送ムラも良好に防止される。
また、前記搬送ローラーにおいて、前記無機粒子は酸化アルミニウムであるのが好ましい。
酸化アルミニウム(Al)は、比較的硬度が高いため、摩擦抵抗を高める機能を良好に発揮する。また、比較的安価であるため、コストダウンを妨げることもない。
また、前記搬送ローラーにおいて、前記高摩擦層は、前記無機粒子が樹脂中に分散して形成されているのが好ましい。
このようにすれば、長期の使用においても無機粒子がローラー本体の表面に安定して保持され、したがって、長期に亘って搬送性能の信頼性が確保される。また、ローラー本体の表面に無機粒子を配して高摩擦層を形成した際、予め前記繋ぎ目に形成された隙間内に樹脂の一部が充填されることにより、無機粒子がこの隙間内により良好に充填されるようになる。
また、前記搬送ローラーにおいて、前記高摩擦層は、前記ローラー本体の両端部を除く中央部に設けられているのが好ましい。
ローラー本体の両端部は、通常は歯車などの駆動系の連結部品を取り付けるための部位となり、紙等の記録媒体に直接接触するのは、ローラー本体の中央部となる。したがって、記録媒体に直接接触する中央部のみに高摩擦層を設けることにより、高摩擦層の材料コストが最小限に抑えられる。
本発明の搬送ユニットは、前記搬送ローラーを備えたことを特徴としている。
この搬送ユニットによれば、前述したようにコストダウン及び軽量化が可能であり、良好な搬送力を発揮し、さらにはローラー本体の繋ぎ目に起因する変形が防止され、これによって搬送ムラも防止された搬送ローラーを備えているので、この搬送ユニット自体のコストダウン及び軽量化が可能になり、さらには搬送ローラーによる記録媒体の搬送性にも優れたものとなる。
また、前記搬送ユニットにおいては、前記搬送ローラーに従動する従動ローラーを備え、前記従動ローラーの表面に低摩耗処理が施されているのが好ましい。
このようにすれば、搬送ローラーとの接触、特に高摩擦層との接触により、従動ローラーにダメージが加わることが抑制される。
また、前記搬送ユニットにおいて、前記従動ローラーは、前記搬送ローラーの前記高摩擦層に当接する位置に配置されているのが好ましい。
このようにすれば、搬送ローラーと従動ローラーとの間で紙等の記録媒体を挟持する力が大きくなり、記録媒体の搬送性がより良好になる。
本発明の印刷装置は、前記搬送ユニットと、該搬送ローラーにより搬送された記録媒体に印刷処理を行う印刷部と、を備えたことを特徴としている。
この印刷装置によれば、前記搬送ユニットを備えているため、コストダウン及び軽量化が可能であり、さらに記録媒体を良好に搬送することができる優れたものとなる。
本発明に係るインクジェットプリンターの側断面図である。 (A)は搬送ユニット部分の平面図、(B)は駆動系の側面図である。 搬送ローラー機構の概略構成図である。 (a)、(b)はローラー本体の基材としての金属板を示す平面図である。 (a)〜(c)は金属板のプレス加工を説明するための工程図である。 (a)〜(c)は金属板のプレス加工を説明するための工程図である。 (a)はローラー本体の斜視図、(b)は繋ぎ目の側断面図である。 (a)〜(c)はローラー本体への高摩擦層の形成工程を示す図である。 高摩擦層を形成するための塗装ブースの概略構成図である。 ローラー本体の繋ぎ目とその近傍の要部拡大図である。 (a)はローラー本体の要部斜視図、(b)は要部側断面図である。 (a)はローラー本体の要部斜視図、(b)は側面図である。 (a)はローラー本体の要部斜視図、(b)は側面図である。 (a)はローラー本体の要部斜視図、(b)は側面図である。 (a)〜(c)は展開係合部を示す金属板の要部平面図である。 (a)、(c)は繋ぎ目を示す図、(b)は金属板の平面図である。 (a)はローラー本体の繋ぎ目を示す図、(b)は金属板の平面図である。 (a)はローラー本体の繋ぎ目を示す図、(b)は金属板の平面図である。 紙送りの際の搬送ローラーと用紙との関係を示す斜視図である。 (a)〜(c)は繋ぎ目の形状を説明するための図である。 (a)は繋ぎ目の形状説明図、(b)は作用説明図である。 繋ぎ目の形状を説明するための図である。 (a)〜(c)は繋ぎ目の形状を説明するための図である。
以下、図面を参照して本発明を詳しく説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
まず、図1、図2を参照して、本発明の搬送ローラーを備えた印刷装置について説明する。なお、図1は本発明に係る搬送ユニットを備えた印刷装置(インクジェットプリンター)の側断面図、図2(A)は同印刷装置の搬送ユニット部分の平面図、図2(B)は同印刷装置の駆動系の側面図である。
図1において符号1は、本発明の印刷装置の一実施形態となるインクジェットプリンターである。このインクジェットプリンター1は、プリンター本体3と、該プリンター本体3の後側上部に設けられた給紙部5と、プリンター本体3の前側に形成された排紙部7と、を備えて構成されたものである。
給紙部5には給紙トレイ11が設けられており、給紙トレイ11には複数枚の用紙(記録媒体)Pが積載されるようになっている。ここで、用紙Pとしては、普通紙、コート紙、OHP(オーバーヘッドプロジェクタ)用シート、光沢紙、光沢フィルム等が用いられる。給紙トレイ11の下流側には給紙ローラー13が設けられている。給紙ローラー13は、対向する分離パッド(図示せず)との間で給紙トレイ11の最上部に位置する用紙Pを挟圧し、前方へ送り出すように構成されている。
送り出された用紙Pは、下側に配置された搬送ローラー15と、上側に配置された従動ローラー17と、からなる搬送ローラー機構19に至る。搬送ローラー15は、後述するように本発明の搬送ローラーの一実施形態となるものである。また、この搬送ローラー15と前記従動ローラー17と、さらに搬送ローラー15を回転駆動する駆動装置とにより、本発明の搬送ユニットの一実施形態が構成される。
そして、搬送ローラー機構19に至った用紙Pは、搬送ローラー15の回転駆動によって印刷処理に伴う精密で正確な搬送(紙送り)動作を受けつつ、搬送ローラー機構19の下流側に位置する印字ヘッド(印刷部)21へ搬送されるようになっている。
印字ヘッド21は、キャリッジ23に保持されており、キャリッジ23は、給紙方向(用紙Pの搬送方向)と直交する方向に往復移動するよう構成されている。印字ヘッド21と対向する位置には、プラテン24が配設されており、プラテン24は、キャリッジ23の移動方向に沿って間隔をあけて配置された、複数のダイヤモンドリブ25によって構成されている。ダイヤモンドリブ25は、印字ヘッド21によって用紙Pに印刷を行う際に、用紙Pを下側から支持するものであり、詳しくは、ダイヤモンドリブ25の頂面が支持面として機能するようになっている。
なお、前記印字ヘッド21による印字処理(印刷処理)は、制御部CONTによって制御されるようになっている。
印字ヘッド21とダイヤモンドリブ25との距離は、用紙Pの厚さに応じて調節可能になっており、これによって用紙Pは、ダイヤモンドリブ25の頂面上を滑らかに通過しつつ、高品質に印刷されるようになっている。印字ヘッド21で印刷された用紙Pは、排紙部7に設けられる排紙ローラー27によって順次排出されるようになっている。
排紙ローラー機構27は、下側に配置された排紙ローラー29と上側に配置された排紙ギザローラー31とを備えて構成されたもので、排紙ローラー29の回転駆動によって用紙Pを引き出し、排出するようになっている。
ここで、搬送ローラー機構19及び排紙ローラー機構27における、搬送ローラー15、排紙ローラー29の駆動系、及び両ローラー15、29の駆動速度の関係について説明する。
プリンター本体3には、図2(A)、(B)に示すように、前記制御部CONTの制御下で駆動される搬送モーター(駆動装置)32が設けられている。この搬送モーター32の駆動軸にはピニオン33が設けられており、ピニオン33には搬送駆動ギア35が歯合しており、搬送駆動ギア35には前記の搬送ローラー15が内挿されて連結されている。このような構成のもとに搬送モーター32は、搬送ローラー15を回転駆動する駆動装置となっている。
また、搬送ローラー15には、搬送駆動ギア35と同軸にインナーギア39が設けられており、このインナーギア39には中間ギア41が歯合しており、中間ギア41には排紙駆動ギア43が歯合している。排紙駆動ギア43の回転軸は、図2(A)に示すように排紙ローラー29の軸体45となっている。このような構成のもとに、搬送ローラー機構19の搬送ローラー15と排紙ローラー機構27の排紙ローラー29とは、同一の駆動源である搬送モーター32からの回転駆動力を受け、駆動されるようになっている。
なお、排紙ローラー29の回転速度は、前記各ギアのギア比を調整することにより、搬送ローラー15の回転速度より速くなるように設定されている。したがって、排紙ローラー機構27の排紙速度は、搬送ローラー機構19の搬送速度より増速率sだけ速くなっている。
また、搬送ローラー機構19による用紙Pの挟持力(押圧力)は、排紙ローラー機構27による挟持力(押圧力)よりも大きく設定されている。したがって、搬送ローラー機構19と排紙ローラー機構27とが共に用紙Pを挟持しているとき、その用紙搬送速度は、排紙ローラー機構27の排紙速度とは関係なく、搬送ローラー機構19の搬送速度で規定されるようになっている。
次に、本発明に係る搬送ローラー15を備えてなる、搬送ローラー機構19について説明する。
図3は、搬送ローラー15及び従動ローラー17からなる搬送ローラー機構19の概略構成を示す図である。
搬送ローラー15は、亜鉛メッキ鋼板やステンレス板等の金属板がプレス加工されて円筒状に形成されたローラー本体16と、このローラー本体16の表面に設けられた高摩擦層50とを備えてなるものである。
また、この搬送ローラー15は、その両端部が軸受け70に回転可能に保持されている。そして、特に前記インナーギア39や前記搬送駆動ギア35に連結された側の端部には、これらインナーギア39や搬送駆動ギア35に回転不能に係合し連結するための係合部(図示せず)が形成されている。なお、搬送ローラー15には、種々の連結部品に連結するため、後述するように種々の形態の係合部が形成可能になっている。また、高摩擦層50は、この例ではローラー本体16の両端部を除く中央部に選択的に形成されている。
従動ローラー17は、複数(例えば6個)のローラー17aが同軸に配列されて構成されたもので、搬送ローラー15の高摩擦層50に対向して該高摩擦層50に当接する位置に配置されたものである。これらローラー17aからなる従動ローラー17には、付勢バネ(図示せず)が取り付けられており、これによって従動ローラー17は、搬送ローラー15側に付勢されている。したがって、従動ローラー17は、搬送ローラー15の高摩擦層50に所定の押圧力(用紙Pに対する挟持力)で接し、搬送ローラー15の回転動作に従動して回転するようになっている。また、搬送ローラー15と従動ローラー17との間で用紙Pを挟持する力が大きくなり、用紙Pの搬送性がより良好になっている。なお、この従動ローラー17の各ローラー17aの表面には、高摩擦層50との摺接による損傷を緩和するため、例えばフッ素樹脂塗装等の低摩耗処理が施されている。
また、前記ローラー本体16は、金属板がプレス加工され、対向する一対の端面が互いに近接させられて円筒状に形成されたものである。したがって、このローラー本体16は、前記一対の端面が僅かながら離間しており、これによって該端面間には繋ぎ目が形成されている。
ここで、搬送ローラー15についての詳細な説明として、その製造方法について説明する。
搬送ローラー15を製造するには、まず、図4(a)に示すように矩形板状または帯状の大型金属板(第1金属板)65を用意する。この大型金属板65としては、例えば厚さ1mm程度の亜鉛メッキ鋼板が用いられる。続いて、この大型金属板65をプレス加工することにより、図4(b)に示すように前記ローラー本体16に対応する大きさの細長い矩形板状の金属板(第2金属板)60、すなわちローラー本体16の基材となる金属板60を形成する。
次いで、金属板60を図5(a)〜(c)、図6(a)〜(c)のプレス加工工程図に示すように円筒状(パイプ状)にプレス加工し、その両側(長辺側)の端面61a、61bを近接させる。
すなわち、まず、図5(a)に示す雄型101と雌型102とで金属板60をプレス加工し、金属板60の両側部62a、62bを円弧状(望ましくは略1/4円弧)に曲げる。なお、図5(a)においては、各部材を分かりやすくするため、金属板60と雄型101と雌型102との間にそれぞれ間隔を開けてこれらの部材を記しているが、この間隔は実際には存在せず、金属板60と雄型101、雌型102とはそれぞれの接触部においてほぼ密着している。これは、後述する図5(b)、(c)、図6(a)〜(c)においても同様である。
続いて、図5(a)で得られた金属板60の幅方向(曲げ方向)における中央部を、図5(b)に示す雄型103と雌型104とでプレス加工し、円弧状(望ましくは略1/4円弧)に曲げる。
次いで、図5(c)に示すように、図5(b)で得られた金属板60の内部に芯型105を配置し、図5(c)に示す上型106と下型107とを用いて、図6(a)〜(c)に示すようにして金属板60の両側部62a、62bの各端面61a、61bを近接させる。
ここで、図5(c)および図6(a)〜(c)に示す芯型105の外径は、形成する円筒状の中空パイプの内径と等しくしてある。また、上型106のプレス面106cの半径と下型107のプレス面107aの半径は、それぞれ、形成する中空パイプの外径の半径と等しくしてある。また、図6(a)〜(c)に示すように上型106は左右一対の割型であり、これら割型106a、106bは、それぞれ独立して昇降可能に構成されている。
すなわち、図5(c)に示す状態から、図6(a)に示すように右側の上型106aを下型107に対して相対的に下降させ(以下、同様に型の移動は相対的移動を意味する)、金属板60の一方の側をプレス加工し、略半円形状に曲げる。なお、下型107も上型106と同様左右一対の割型とし(割面107b参照)、この図6(a)に示す工程の際に、同じ側の下型を上昇させてもよい。
次いで、図6(b)に示すように、芯型106を少し(一方の側の端面61aと他方の側の端面61bとを近接させることができる程度に)下降させるとともに、他方の側の上型106bを下降させ、金属板60の他方の側をプレス加工し、略半円形状に曲げる。
その後、図6(c)に示すように、芯型105および一対の上型106a、106bをともに下降させ、円筒状の中空パイプ(ローラー本体16)を形成する。この状態で左右両側の端面61a、61bは、僅かな隙間を介して十分に近接した状態となる。すなわち、この円筒状の中空パイプにあっては、基材である金属板60の両端面61a、61bが互いに近接してなることでこれら両端面61a、61b間に繋ぎ目が形成され、したがってこの繋ぎ目は、両端面61a、61bが離間していることによって隙間を有したものとなっている。
次いで、本実施形態では、形成した中空パイプ(ローラー本体16)の真円度を高め、振れを少なくするべく、従来公知のセンターレス研磨加工を行い、前記中空パイプ(ローラー本体16)の外周面を研磨する。
すると、この中空パイプは、センターレス研磨加工前に比べその真円度がより良好になり、また、振れ量も小さいローラー本体16となる。また、このローラー本体16にあっては、前記の両端面61a、61b間がより狭まることで、図7(a)に示すようにこれら両端面61a、61b間の隙間がより狭くされた繋ぎ目80が形成される。
なお、前記のプレス加工やセンターレス研磨加工では、金属板60の両端面61a、61b間の隙間が無くなるように、すなわち、両端面61a、61bが互いに当接するようにするのが好ましい。しかしながら、得られる中空パイプ(ローラー本体16)の真円度や振れ量を良好にしつつ、この隙間を完全に無くすのは非常に困難であり、したがって、現状ではある程度の隙間が形成されるようになる。
この繋ぎ目80は、前記金属板60の外周面と内周面とが同じ寸法(幅)であることにより、図7(b)に示すように、一対の端面61a、61b間の距離が、ローラー本体16の外周面側で相対的に広く、内周面側で相対的に狭くなっている。すなわち、これら一対の端面61a、61b間の、ローラー本体16の外周面側での距離d1は、内周面側での距離d2に比べて大になっている。具体的には、本実施形態では外周面側での距離d1は80μmとなり、内周面側での距離d2は20μmとなっている。
このようにしてローラー本体16を形成したら、図3に示したようにこのローラー本体16の表面に高摩擦層50を形成する。
この高摩擦層50の形成方法としては、乾式法及び湿式法(またはこれらを併用した方法)が採用可能であるが、本実施形態では乾式法が好適に採用される。
具体的には、まず、高摩擦層50の形成材料として、樹脂粒子と無機粒子とを用意する。樹脂粒子としては、エポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂等からなる、直径10〜20μm程度の微粒子が好適に用いられる。
また、無機粒子としては、酸化アルミニウム(アルミナ;Al)や炭化珪素(SiC)、二酸化珪素(SiO)等のセラミックス粒子が好適に用いられる。中でもアルミナは、比較的硬度が高く摩擦抵抗を高める機能が良好に発揮され、また、比較的安価であってコストダウンを妨げることもないため、より好適に用いられる。したがって、本実施形態では無機粒子としてアルミナ粒子を用いるものとする。このアルミナ粒子としては、破砕処理によって所定の粒径分布に調整されたものが用いられる。破砕処理によって製造されることにより、このアルミナ粒子は端部が比較的鋭く尖ったものとなり、この鋭く尖った端部によって高い摩擦力を発揮するようになる。
また、このアルミナ粒子としては、本実施形態では粒径が15μm以上90μm以下の範囲とされ、かつ、中心径となる加重平均の粒径(平均粒径)が、45μmとなるように調整されたものが用いられている。すなわち、本発明では、アルミナ粒子(無機粒子)としてその平均粒径(中心径)が、前記の繋ぎ目80の前記の繋ぎ目80の外周面側での距離d1(80μm)以下の大きさになっているものが用いられる。また、特にその粒径分布(粒度範囲)については、前記繋ぎ目80における前記一対の端面61a、61b間の最短距離、つまり内周面側における前記一対の端面61a、61b間の距離d2(20μm)より大となる粒子を含んでいるのが好ましい。
このような樹脂粒子と無機粒子とを用意したら、まず、前記ローラー本体16に前記樹脂粒子を塗布する。すなわち、ローラー本体16を塗装ブース(図示せず)内に配置し、さらにこのローラー本体16を単体の状態で例えば−(マイナス)電位にしておく。
そして、前記樹脂粒子を、静電塗装装置(図示せず)のトリボガンを用いてローラー本体16に向けて噴霧(噴出)し吹き付けつつ、この噴霧粒子(樹脂粒子)を+(プラス)高電位に帯電させる。すると、この帯電された樹脂粒子はローラー本体16の外周面に吸着され、樹脂膜を形成する。
ここで、樹脂粒子の吹付による樹脂膜の形成は、図3に示した高摩擦層50の形成領域に対応させて、ローラー本体16の全長に亘って行うことなく、例えばその両端部をテープ等でマスキングしておくことにより、図8(a)に示すようにこの両端部を除いた中央部のみに行う。すなわち、ローラー本体16の中央部にのみ、選択的に樹脂膜51を形成する。この樹脂膜51には、吹付塗装後に+0.5KV程度の微弱な静電気が残存する。なお、この吹付塗装に際しては、ローラー本体16を軸廻りに回転させることにより、その全周に亘って樹脂膜51をほぼ均一な厚さに形成する。この樹脂膜51の膜厚については、前記のアルミナ粒子の粉径を勘案して、例えば10μm〜30μm程度に形成する。このような膜厚については、前記樹脂粒子の噴出量及び噴出時間等によって適宜に調整することができる。
次いで、この樹脂膜51を形成したローラー本体16を前記塗装ブースから取り出し、ハンドリングロボット(図示せず)によって図9に示す別の塗装ブース90に移す。この塗装ブース90には、その下部に一対の回転駆動部材91、91が設けられており、これら回転駆動部材91、91には、前記ローラー本体16を略水平に支持するためのチャック92が設けられている。そして、前記ローラー本体16の両端部をチャック92、92に保持させて固定し、さらに回転駆動部材91によってチャック92、92を回転させる。これにより、ローラー本体16をその軸廻りに、例えば100rpm〜500rpm程度の低速でゆっくり回転駆動させる。なお、ローラー本体16については、若干斜めに支持してもよいのはもちろんである。
また、塗装ブース90には、その上部にコロナガン93が配置されており、このコロナガン93は、シャフト94上を図9中左右方向に移動するようになっている。また、塗装ブース90の底部には排気機構94が設けられており、これによって塗装ブース90内には下方に向かうゆっくりとした気流が形成されるようになっている。なお、この排気機構94の吸引風量は適宜に設定されるようになっている。
このような構成のもとに、ローラー本体16をその軸廻りに回転させつつ、コロナガン93から前記のアルミナ粒子95を噴霧し吹き付けることにより、前記ローラー本体16に形成した樹脂膜51上に、アルミナ粒子95を選択的に静電吸着させる。アルミナ粒子を前記樹脂膜51上に選択的に静電吸着させるには、樹脂膜51の形成と同様に、ローラー本体16の両端部をテープ等でマスキングしておくことで行う。
この静電塗装時には、チャック92及び回転駆動部材91の表面電位が、ローラー本体16の電位とほぼ等しくなり、しかも塗装ブース90の内面電位が、電気的に中立で略零電位となるように設定する。コロナガン93からのアルミナ粒子95が、ローラー本体16以外の部位に吸着されないようにするためである。この塗装ブース90の内表面電位を電気的に中立に保持するためには、塗装ブース90を、内表面電気抵抗が例えば1011Ω程度の鋼板を用いて製造するのが望ましい。
そして、コロナガン93にかける電位を零Vとし、さらにこのコロナガン93に供給するエアーの圧力を0.2Mpa程度に低く設定して、このコロナガン93を図9中の左右方向に移動させつつ、上方より略零電位のアルミナ粒子95を吹き出させ、アルミナ粒子95を自重で鉛直方向に自然落下させる。すると、前記したようにローラー本体16の樹脂膜51には、静電塗装によって形成されたことで微弱な静電気(約+0.5KV)が残存しているため、この静電気によってアルミナ粒子95が樹脂膜51の全周にほぼ均一に静電吸着する。このようにして静電吸着したアルミナ粒子95は、樹脂膜51表面に当接しさらに一部入り込んだ状態で、この樹脂膜51をバインダとしてローラー本体16の外周面に付着する。
ここで、本実施形態では塗装ブース90の内面電位が電気的に中立で略零電位となっており、しかも塗装ブース90内の気流が下向きにゆっくりとした流れに形成されているので、アルミナ粒子95はその自重によって鉛直方向下方に自然落下する。落下方向の下方には、水平支持されたローラー本体16がその軸廻りにゆっくり回転しているので、このローラー本体16の外周面には、アルミナ粒子95がほぼ均一に散布される。
したがって、特にマスキングされていない樹脂膜51の表面にアルミナ粒子95が均一に付着し、これによってローラー本体16には、図8(b)に示すようにその中央部の樹脂膜51中に、アルミナ粒子(無機粒子)95が分散し露出する。すなわち、アルミナ粒子95は、静電吸着力によって樹脂膜51に当接した際、この樹脂膜51中に一部が入り込み、残部が樹脂膜51の表面から突き出た状態になる。その際、アルミナ粒子95はローラー本体16の表面に対して垂直に立った状態になり易いため、アルミナ粒子95は均一に分布され、その殆どが鋭く尖った端部(頂部)を外側に向けて付着する。
したがって、アルミナ粒子95は樹脂膜51の表面から突き出た端部により、高い摩擦力を発揮するようになる。なお、アルミナ粒子95が用紙Pに対して必要かつ十分な摩擦力を発揮するには、樹脂膜51の面積に対して、アルミナ粒子95の占める面積が20%〜80%となるようにするのが好ましい。
なお、このアルミナ粒子95の塗布(散布)については、アルミナ粒子95が鉛直方向下方にゆっくりと散布されるのであれば、静電塗装法による塗布に限定されるものではなく、例えばスプレーガンを用いた塗布(散布)法であってもよい。
このようにしてアルミナ粒子95を樹脂膜51上に散布し付着させたら、このローラー本体16を180℃〜300℃程度の温度で20分〜30分間程度加熱し、樹脂層51を焼成し硬化させることによってアルミナ粒子95をローラー本体16に固着する。これにより、図8(c)に示すように樹脂膜51中にアルミナ粒子(無機粒子)95が分散し露出してなる高摩擦層50が形成され、本発明に係る搬送ローラー15が得られる。
なお、前記実施形態では、樹脂粒子の塗布(吹付)とアルミナ粒子(無機粒子)の塗布(吹付)とを別々の塗装ブースで実施したが、同一の塗装ブース内で行ってもよいのはもちろんである。
このようにして高摩擦層50を形成すると、特に図7(a)、(b)に示した繋ぎ目80には、金属板60の端面61a、61b間の隙間に起因する溝が形成されることなく、端面61a、61b間の隙間が主にアルミナ粒子95によって埋め込まれる。
すなわち、アルミナ粒子95としてその平均粒径が、繋ぎ目80の、外周面側での距離d1(80μm)以下の大きさになっているものを用いているので、図10に示すようにローラー本体16の外周面上に樹脂膜51を介してアルミナ粒子95が付着した際、繋ぎ目80においては、ここに形成された隙間にアルミナ粒子95が入り込み、その一部がこの隙間内に留まるようになる。
特に、アルミナ粒子95として、その平均粒径が前記繋ぎ目80の内周面側での距離d2(20μm)より大となる粒子95を含む粒径分布(粒度範囲)のものを用いているので、このような粒子95が前記繋ぎ目80に形成された隙間に確実に留まることにより、繋ぎ目80による溝が実質的に形成されなくなる。そして、このようにしてアルミナ粒子95が充填された繋ぎ目80を覆って、さらにアルミナ粒子95が付着させられることにより、繋ぎ目80による溝が確実に形成されなくなる。
なお、アルミナ粒子95は、その平均粒径が前記距離d1(80μm)以下の大きさになっているものを用いているので、その粒度分布においては、距離d1より大となる粒子も含むことがある。その場合には、このような大きなアルミナ粒子95が繋ぎ目80における隙間上を覆うことにより、この隙間に起因する溝がより確実に形成されなくなる。
また、アルミナ粒子95の粒径分布については、その最小粒径が、前記繋ぎ目80における前記一対の端面61a、61b間の最短距離、つまり内周面側での距離d2より大となるように調整されたものを用いてもよい。その場合には、アルミナ粒子95を配して高摩擦層50を形成した際、前記繋ぎ目80に形成された隙間を通り抜けてローラー本体16内にアルミナ粒子95が入り込むことが無く、したがって、その後ローラー本体16内を清浄化するなどの処理が軽減され、その分、生産性を向上することができる。
このような高摩擦層50を形成してなる搬送ローラー15は、使用時等において、ローラー本体16(搬送ローラー15)に前記隙間を狭める方向に力が働いても、ここに入り込んだアルミナ粒子95がこの力に抗するため、ローラー本体16(搬送ローラ15)の変形が抑えられる。したがって、この搬送ローラー15を備えた搬送ローラー機構19にあっては、搬送ローラー15の変形に起因する搬送ムラが防止されたものとなる。また、繋ぎ目80による溝がないことにより、この溝に起因する搬送ムラも防止されたものとなる。
また、一般にローラー本体16(搬送ローラー15)の両端部は、歯車などの駆動系の連結部品を取り付けるための部位となり、用紙P(記録媒体)に直接接触するのは、ローラー本体16の中央部となる。したがって、本実施形態では、前記高摩擦層50をローラー本体16の両端部を除く中央部に設けているので、用紙Pの搬送性能を低下させることなく、高摩擦層50の材料コストを最小限に抑えることができる。
ここで、ローラー本体16(搬送ローラー15)の両端部には、その一方あるいは両方に、図2に示した搬送駆動ギア35やインナーギア39など、種々の連結部品に連結するための係合部が形成可能になっている。例えば、図11(a)、(b)に示すように、円筒状のパイプ(中空パイプ)からなるローラー本体16の相対向する位置、すなわちローラー本体16の直径を規定する二点の形成面に、それぞれ貫通孔71a、71aを形成し、これら一対の貫通孔71a、71aを含んでなる係合孔(係合部)71を形成することができる。この係合孔71によれば、歯車等の連結部品72を軸やピン等(図示せず)によって固定することができる。
また、図12(a)、(b)に示すように、ローラー本体16の端部にDカット状の係合部73を形成することもできる。この係合部73は、円筒状の中空パイプ(ローラー本体16)の端部に形成されたもので、図12(a)に示すようにその一部が平面視矩形状に切り欠かれて開口73aを形成し、これによって図12(b)に示すように端部側面の外形が見掛け上D状に形成されたものである。
したがって、歯車等の連結部品(図示せず)を、この見掛け上D状に形成された係合部73に係合させることにより、該連結部品をローラー本体16(搬送ローラー15)に対し空回りさせることなく、取り付けることができる。また、この係合部73については、中空パイプ(ローラー本体16)の内部孔に通じる溝状の開口73aが形成されていることから、この開口73aを利用することによっても、連結部品をローラー本体16に対し空回りさせることなく取り付けることができる。具体的には、連結部品に凸部を形成しておき、この凸部を前記開口73aに嵌合させることにより、空回りを防止することができる。
また、図13(a)、(b)に示すように、ローラー本体16の端部に溝74aとDカット部74bとを有した係合部74を形成することもできる。この係合部74において、Dカット部74bはローラー本体16の外端に形成されており、溝74aはDカット部74bより内側に形成されている。溝74aは、図13(a)に示すように、ローラー本体16がその周方向に略半分切り欠かれて形成されたものである。Dカット部74bは、溝74aの外側において該溝74aと直交する方向に延在する開口74cを有し、この開口74cの両側に、一対の折曲片74d、74dを有したものである。すなわち、図13(b)に示すようにこれら一対の折曲片74d、74dがローラー本体16の中心軸側に折曲させられたことにより、これら折曲片74d、74dに対応する部分が、ローラー本体16の円形の外周面から凹んだ状態となっている。
したがって、歯車等の連結部品(図示せず)を、前記溝74aに係合させまたはDカット部74bに係合させることにより、該連結部品をローラー本体16(搬送ローラー15)に対し空回りさせることなく、取り付けることができる。また、この係合部74では、折曲片74d間に形成された開口74cを利用することによっても、連結部品をローラー本体16に対し空回りさせることなく取り付けることができる。具体的には、連結部品に凸部を形成しておき、この凸部を前記開口74cに嵌合させることにより、空回りを防止することができる。
また、図14(a)、(b)に示すように、ローラー本体16の端部に溝75aと開口75bとを有した係合部75を形成することもできる。この係合部75において、開口75bはローラー本体16の外端に形成されており、溝75aは開口75bより内側に形成されている。溝75aは、図14(a)に示すように、ローラー本体16がその周方向に略半分切り欠かれて形成されたものである。開口75bは、溝75aの外側においてローラー本体16の一部が平面視矩形状に切り欠かれ、これによって図14(b)に示すように端部側面の外形が見掛け上D状に形成されたものである。
したがって、歯車等の連結部品(図示せず)を、前記溝75aに係合させまたは開口75bによって形成された見掛け上D状に形成された部位に係合させることにより、該連結部品をローラー本体16(搬送ローラー15)に対し空回りさせることなく、取り付けることができる。また、この係合部75でも、図12(a)、(b)に示した係合部73と同様に、開口75bを利用することによって、連結部品をローラー本体16に対し空回りさせることなく取り付けることができる。
このような係合孔71や係合部73、74、75を形成するには、金属板60をプレス加工して得られたローラー本体16に対して、さらに切削加工等を施すことで行うことができる。例えば、図12(a)、(b)に示した係合部73については、その端部を切削加工して開口73aを形成することにより、見掛け上D状の係合部73を形成することができる。また、図11(a)、(b)に示した係合孔71についても、ローラー本体16に対して孔開け加工することで、一対の貫通孔71a、71aをより良好に対向させることができる。
しかしながら、このようにローラー本体16に対してさらに加工を施すのでは、係合部の形成だけのために別途加工工程を追加することで、コストや時間についての効率が低下してしまう。そこで、ローラー本体16にプレス加工する前に、別のプレス加工によって係合部となる展開係合部を金属板に形成しておき、この金属板をプレス加工してローラー本体16とする際に、係合部も同時に形成するのが好ましい。
具体的には、図4(a)に示した大型の金属板(第1金属板)65を、図4(b)に示したように基材となる細長い矩形板状の金属板(第2金属板)60にプレス加工する際、この大型金属板65から小型の金属板60への加工と同時に、得られる金属板60の端部に、切欠状、突片状、孔状、あるいは溝状等の展開係合部を形成する。例えば、図15(a)に示すように金属板60の端部の所定位置に一対の貫通孔71a、71aを加工し、これらを展開係合部76aとしておくことにより、この金属板60をプレス加工することで前記一対の貫通孔71a、71aを対向させ、図11(a)、(b)に示した係合孔71を形成することができる。
また、図15(b)に示すように、金属板60の端部を所定形状に切り欠いて展開係合部76bとしておくことにより、この金属板60をプレス加工することで図13(a)、(b)に示した係合部74を形成することができる。すなわち、展開係合部76bとして、一対の切欠部(凹部)74e、74eと一対の突片74f、74fとを形成しておくことにより、係合部74を形成することができる。ただし、この例では、金属板60をプレス加工した後、一対の突片74f、74fを内側に折り曲げ加工して折曲片74dとする必要があるため、加工工程についてのコストや時間の効率化を十分に高めるにはやや不十分であるとも言える。
そこで、図15(c)に示すように、金属板60の端部を所定形状に切り欠いて展開係合部76cとしておくことにより、この金属板60をプレス加工することで図14(a)、(b)に示した係合部75を形成することができる。すなわち、展開係合部76cとして、一対の切欠部(凹部)75c、75cと一対の突片75d、75dとを形成しておくことにより、係合部75を形成することができる。この例では、金属板60をプレス加工した際に一対の突片75d、75dも円弧状に曲げることにより、これら突片75d、75d間に図14(b)に示した開口75bを形成することができる。したがって、プレス加工によって形成したローラー本体16に対し、さらに加工を追加する必要がなく、これにより加工工程についてのコストや時間の効率化を十分に高めることができる。
また、図7(b)に示したように本実施形態に係る搬送ローラー15(ローラー本体16)では、その繋ぎ目80を、円筒状の中空パイプからなるローラー本体16の中心軸と平行になるように形成したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば基材となる金属板60の一対の端部間に形成される繋ぎ目を、前記円筒状パイプ(ローラー本体)の外周面上における、該円筒状パイプの中心軸に平行な直線上において、該直線に対して線分で重なることなく、一つあるいは複数の点でのみ重なるように形成してもよい。
具体的には、図16(a)に示すように繋ぎ目81として、ローラー本体16の中心軸16aに平行となることなくこれに交差するように、ローラー本体16の外周面をその周方向に延びつつ、ローラー本体16の一端から他端にかけて延在するように形成してもよい。このように繋ぎ目81を形成するには、基材となる金属板として、図4(b)に示したような細長い矩形状の金属板60でなく、図16(b)に示すように細長い平行四辺形の金属板60aを用い、符号16bで示す直線が中心軸となるようにプレス加工する。これにより、図16(a)に示したローラー本体16が得られ、繋ぎ目81が中心軸16aに対して非平行となる。
なお、図16(a)に示したローラー本体16では、その繋ぎ目81が、ローラー本体16の一端から他端にかけて、その周面を一周未満しか回らないように形成している。これは、金属板60aのプレス加工を容易にするためである。ただし、図16(c)に示すように繋ぎ目82が、ローラー本体16の一端から他端にかけて、その周面を一周以上回るように、すなわち螺旋状に回るように形成してもよい。その場合には、基材となる金属板として、図16(b)に示した細長い平行四辺形の金属板60aにおける、角度θをより鋭角にすればよい。
また、図17(a)に示すように繋ぎ目83を、サイン波等の曲線からなる波線状に形成してもよい。このように繋ぎ目83を形成するには、基材となる金属板として、図17(b)に示すように、細長い略矩形状で、その両方の長辺が波線状に形成された金属板60bを用い、符号16bで示す直線が中心軸となるようにプレス加工する。なお、波線状に形成された一対の長辺は、プレス加工によってこれらが近接させられるため、当然ながら互いに対応する箇所間では、一方の長辺が山部となる場合に他方の長辺では谷部となり、逆に、一方の長辺が谷部となる場合に他方の長辺では山部となるように形成する。また、この例では、繋ぎ目83の中心線がローラー本体16の中心軸16aと平行になるように形成したが、この繋ぎ目83の中心線も、ローラー本体16の中心軸と非平行になるように形成してもよい。その場合に、基材となる金属板として、図16(b)に示したような細長い平行四辺形の金属板で、かつ、その両方の長辺が波線状に形成されたものを用いればよい。
また、図18(a)に示すように繋ぎ目84を、鉤状に折れ曲がった波線状に形成してもよい。このように繋ぎ目84を形成するには、基材となる金属板として、図18(b)に示すように、細長い略矩形状で、その両方の長辺が鉤状に折れ曲がった波線状に形成された金属板60cを用い、符号16bで示す直線が中心軸となるようにプレス加工する。この金属板60cにおいても、波線状に形成された一対の長辺において互いに対応する箇所間では、一方の長辺が山部となる場合に他方の長辺では谷部となり、逆に、一方の長辺が谷部となる場合に他方の長辺では山部となるように形成する。なお、この例でも、繋ぎ目84の中心線がローラー本体16の中心軸と平行になるように形成したが、前記繋ぎ目83の場合と同様に、ローラー本体16の中心軸と非平行になるように形成してもよい。
また、繋ぎ目については、図16〜図18に示した例に限定されることなく、種々の形状を採用することができる。例えば、図17(a)に示した曲線からなる波線と、図18(a)に示した折れ曲がった波線とを組み合わせてもよく、これらに、図16に示したような斜めの線を組み合わせてもよい。
このように繋ぎ目81〜84を、円筒状パイプ(ローラー本体16)の中心軸に平行な直線に対して線分で重なることなく、一つあるいは複数の点でのみ重なるように形成すれば、このローラー本体16を有してなる搬送ローラー15は、従動ローラー17と協働して用紙Pを搬送する際、つまり紙送りをする際、用紙Pの搬送速度が一定になり、搬送ムラがより確実に防止されたものとなる。
すなわち、図19に示すように搬送ローラー15が紙送りの際に用紙Pと接する箇所は、基本的にはその外周面上の直線L、つまり中心軸16aと平行な直線Lとなる。したがって、図7(b)に示したように搬送ローラー15(ローラー本体16)の繋ぎ目80がローラー本体16の中心軸16aと平行である場合、この搬送ローラー15はその繋ぎ目80全体が一時的(瞬間的)に用紙Pに接することになる。すると、本実施形態の搬送ローラー15では前述したようにその繋ぎ目80に起因して溝が形成されていないため、問題にはならないものの、仮に繋ぎ目80に起因して溝が形成されていると、この溝が一時的にかつ同時に用紙Pに接し、したがって用紙Pの全幅が一時的に繋ぎ目80に起因する溝に接することになる。その結果、この溝では搬送ローラー15の他の外周面に比べて凹みがあり、用紙Pに対する接触抵抗が小となっているため、用紙Pの搬送速度が一時的に低下し、搬送ムラを生じてしまう。
しかして、図16(a)、(c)、図17(a)、図18(a)に示したように繋ぎ目81〜84を形成すれば、仮にこれら繋ぎ目に起因して溝が形成されたとしても、この溝が紙送りの際に同時に用紙Pに接触する箇所が、一つあるいは複数の点のみとなる。したがって、搬送ローラー15の他の面(線)が当たるときに比べほとんど接触抵抗に変化がなく、これにより、用紙Pの搬送速度が一定になり、搬送ムラが防止されるようになる。
なお、円筒状の中空パイプからなる搬送ローラー15(ローラー本体16)の繋ぎ目については、前記例以外にも、例えば図20(a)に示すように、ローラー本体16の中心軸16aと平行な直線部85aとこれに直交する直線部85bとからなる、矩形波状の折曲部85を有して形成されていてもよい。このような折曲部85を有してなる繋ぎ目にあっても、この繋ぎ目に起因して仮に溝が形成された場合に、この溝が紙送りの際に用紙Pの幅全体に同時に接触することがないため、用紙Pの搬送速度がほぼ一定になり、搬送ムラが防止される。
また、この折曲部85については、図20(b)に示すようにローラー本体16の長さ全体に亘って形成されていてもよく、図20(c)に示すように、その中央部を除く両端部に選択的に形成されていてもよい。図20(c)に示したように折曲部85を両端部にのみ形成する場合には、これら折曲部85間はローラー本体16の中心軸と平行な中央直線部86となる。ただし、図示しないものの、折曲部85間の中央直線部を、図16(a)に示したように中心軸16aと非平行となる斜め線に形成してもよい。
また、このように折曲部85を両端部にのみ形成し、その間の中央部については中央直線部86とした場合、図8(c)に示した高摩擦層50の形成領域を中央部直線部86に対応させるのが好ましい。
繋ぎ目に折曲部85を形成し、したがってこの折曲部85を凹凸による嵌合部にすると、これら折曲部85(嵌合部)では設計通りに嵌合させ、凸部の先端とこれに対応する凹部との間を隙間なく近接させる(突き合わせる)のが難しくなる。したがって、ローラー本体16の全長に亘って折曲部85を形成すると、ローラー本体16に歪みや捩れ等が生じ易くなる。そこで、図20(c)に示したように折曲部85を両端部にのみ形成すれば、このような歪みや捩れ等が生じるのを抑えることができる。また、特に用紙Pに直接接する領域となる高摩擦層50に対応する中央部を、折曲部85とすることなく中央直線部86とすることにより、用紙Pに直接接する領域に歪みや捩れ等が生じるのを確実に防止することができる。
また、図20(b)に示したように、折曲部85をローラー本体16の長さ全体に亘って形成した場合、図21(a)に示すようにこの折曲部85からなる繋ぎ目87を、前記直線部85bからなる複数の交差部87aと、該交差部87aの一方の側の端部間を結ぶ第1直線部87bと、他方の側の端部間を結ぶ第2直線部87cとからなるように形成してもよい。ここで、第1直線部87bおよび第2直線部87cはローラー本体16の中心軸に略平行となるように形成し、交差部87aはこれら第1直線部87bおよび第2直線部87cと直交するように、つまりローラー本体16の中心軸に直交するように形成する。また、第2直線部87cは第1直線部87bより短く形成する。
このような構成の繋ぎ目87を形成する場合、特に、第2直線部87cにおいて互いに対向する前記一対の端部間の距離d3を、前記第1直線部87bにおいて互いに対向する一対の端部間の距離d4より長く形成するのが好ましい。なお、ここでいう一対の端部間の距離d3、d4は、いずれもローラー本体16における外周面に形成される隙間における端部間の距離とする。
このようにすれば、ローラー本体16の、円筒状中空パイプとしての形状や寸法の精度をより高くすることができ、したがって、ローラー本体16の変形等に起因する搬送ムラを防止することができる。すなわち、このようなローラー本体16を形成するための基材となる金属板では、前記第2直線部87cを構成する一方の端部は、隣り合う一対の交差部87a、87aとこれらの端部間を結ぶ第2直線部87cとを外形とする凸片87dとなる。したがって、金属板をプレス加工してこの凸片87dを対向する端部に近接させようとした際、図21(b)中に二点鎖線で示すように、この凸片87dの先端側が円周面状に十分に曲げられずに、対向する端部に対して寸法t1分浮いた状態になり、結果としてこの第2直線部87cおいて段差を形成してしまう。すると、この段差に起因して、得られるローラー本体16には変形等が生じ易くなり、形状や寸法について良好な精度が得られにくくなってしまう。
そこで、この第2直線部87cにおける端部間の距離d3を、この第2直線部87cより長く形成されている第1直線部87bにおける端部間の距離d4よりも長くすることにより、図21(b)中に実線で示すように、凸片87dの先端側が浮く分の寸法t2が前記のt1に比べて少なく(小さく)なり、これによって第2直線部87cにおいて段差が形成されるのを抑えることができる。なお、図21(b)では、理解を容易にするため寸法t2も大きく記しているが、実際にはこの寸法t2はほとんど零に近くなり、実質的な段差がなくなるようになる。つまり、このように第2直線部87cにおいて段差が形成されるのを抑えることにより、この段差に起因するローラー本体16の変形等を抑え、形状や寸法についての精度を高めることができるのである。
また、図20(c)に示したように、折曲部85をローラー本体16の両端部にのみ形成した場合、図22に示すようにこの折曲部85における交差部87a(直線部85b)において互いに対向する前記一対の端部間の距離d5を、前記中央直線部86において互いに対向する一対の端部間の距離d6より短く形成するのが好ましい。
このようにすれば、距離d5が相対的に短くなって交差部87aにおける端部間の隙間が非常に狭くなるため、ローラー本体16を形成するための基材となる金属板をプレス加工した際、一方の端部と他方の端部との間の長さ方向(軸方向)でのずれが、交差部87aを構成する一対の対向する端部によって規制されるようになる。したがって、得られるローラー本体16(搬送ローラー15)に歪みや捩れ等が生じにくくなり、このような歪みや捩れ等に起因する搬送ムラが防止される。
なお、図20(c)に示したように、折曲部85をローラー本体16の両端部にのみ形成した場合には、図22に示すようにこの折曲部85の前記凸片87dを構成する第2直線部87cにおいて互いに対向する一対の端部間の距離d7を、前記中央直線部86において互いに対向する一対の端部間の距離d6より短く形成してもよく、また、長く形成してもよい。
距離d7を距離d6より短く形成すれば、繋ぎ目の全長を見た場合に、対向する一対の端部間にできる隙間がより均一化し易くなり、これによって得られるローラー本体16の形状や寸法についての精度がより高くなる。すなわち、中央直線部86の長さは折曲部85における第2直線部87cの長さより長くなり、したがって中央直線部86における一対の端部間の方が第2直線部87cに比べて精度良く近接させることができる。よって、相対的に端部間の精度をより良好にすることができる中央直線部86の方の一対の端部間の距離を、第2直線部87cに比べて長くしてその隙間を大きくしても、この隙間を十分均一にすることが可能になり、したがって得られるローラー本体16の歪みや捩れ等に起因する搬送ムラが防止される。
一方、距離d7を距離d6より長く形成すれば、図21(b)に示したように凸片87dの先端側が浮く分の寸法t2が少なく(小さく)なり、これによって第2直線部87cにおいて段差が形成されるのが抑えられる。よって、このように第2直線部87cにおいて段差が形成されるのが抑えられることにより、この段差に起因するローラー本体16の変形等が抑えられ、形状や寸法についての精度が高めることによって搬送ムラが防止される。
なお、円筒状の中空パイプからなる搬送ローラー15(ローラー本体16)の繋ぎ目については、前記例以外にも、例えば図23(a)に示すように折曲部88における交差部88aを、ローラー本体16の中心軸に対して非平行とし、折曲部88における凸片88bの先端側の角度αを鈍角(180°未満)に形成してもよい。このようにすれば、金属板のプレス加工において一対の端面を近接させた際、凸片88bの先端を対応する凹部に嵌合させ易くなり、したがって、ローラー本体16に歪みや捩れ等が生じるのを抑制することができる。
また、図20(c)に示したように折曲部85を両端部のみに形成した構造において、折曲部85を、例えば図23(b)に示すように図17(a)に示した曲線からなる波線89aに代えてもよく、さらに、図23(c)に示すように図18(a)に示した折れ曲がった波線89bに代えてもよい。
また、図20(a)に示した矩形波状の折曲部85と、図23(b)に示した曲線からなる波線89aとを組み合わせて繋ぎ目を形成してもよく、矩形波状の折曲部85と、図23(c)に示した折れ曲がった波線89bとを組み合わせて繋ぎ目を形成してもよい。
次に、前記搬送ローラー機構19を備えてなるインクジェットプリンター(印刷装置)1の動作について、図1、図2を参照して説明する。
給紙ローラー13によって給紙された用紙Pは、搬送ローラー機構19の上流側近傍に至ると、搬送ローラー15と従動ローラー17との間に引き込まれ、両ローラーの駆動によって下流側に位置する印字ヘッド21の下方に向けて定速で搬送される。
その際、搬送ローラー15には高摩擦層50が形成されており、従動ローラー17がこの高摩擦層50に当接する位置に配置されているので、これら搬送ローラー15と従動ローラー17との間で用紙Pを挟持する力が大きくなり、用紙Pの搬送性がより良好になっている。また、特に搬送ローラー15は、高摩擦層50の形成の際に所定粒径のアルミナ粒子を用いたことで繋ぎ目80による溝がないため、この溝に起因する搬送ムラも防止されている。よって、この搬送ローラー機構19は、より正確で安定した紙送り(搬送)を行うようになっている。
そして、用紙Pの印刷開始端が、印字ヘッド(印刷部)21の直下の所定の印刷位置に到達すると、印刷が開始される。
その後、用紙Pの始端が排紙ローラー機構27に至ると、排紙動作が開始される。なお、排紙ローラー機構27の搬送速度は搬送ローラー機構19の搬送速度より速く設定されているため、用紙Pにはバックテンションが掛かった状態で搬送される。ただし、搬送ローラー機構19と排紙ローラー機構27とが共に用紙Pを挟持しているときには、前述したようにその用紙搬送速度は搬送ローラー機構19の搬送速度で規定されている。したがって、このように排紙ローラー機構27と搬送ローラー機構19とによって排紙と搬送とを同時に行う際にも、その用紙搬送速度は搬送ローラー機構19の搬送速度で規定されているため、搬送ムラのない正確で安定した紙送り(搬送)がなされるようになる。
以上説明したように、本実施形態の搬送ローラー15にあっては、金属板が円筒状にプレス加工されてなるローラー本体16を用いることにより、中実の丸棒材を用いた場合に比べてコストダウン及び軽量化を図ることができる。また、ローラー本体16の表面に、アルミナ粒子(無機粒子)を含有してなる高摩擦層50を設けているので、この高摩擦層50によって良好な搬送力を発揮することができる。
さらに、図10に示したように前記アルミナ粒子95の平均粒径(中心径)を、ローラー本体16の繋ぎ目80の、外周面側における前記一対の端面間の距離d1より大としているので、ローラー本体16の表面にアルミナ粒子95を配して高摩擦層50を形成した際、前記繋ぎ目80がアルミナ粒子95によって覆われることにより、この搬送ローラー15には前記繋ぎ目80による溝が形成されなくなる。よって、このような繋ぎ目80による溝がないことにより、この溝に起因する搬送ムラが防止されたものとなり、これによって正確で安定した紙送り(搬送)が可能になる。
また、アルミナ粒子95として、前記繋ぎ目80の外周面側での距離d1より小となり、かつ、内周面側での距離d2(10μm)より大となる粒子95aを含む粒径分布(粒度範囲)のものを用いているので、このような粒子95aが前記繋ぎ目80に形成された隙間に入り込んでここに留まることにより、繋ぎ目80による溝が確実に形成されなくなる。また、使用時等において、ローラー本体16(搬送ローラ15)に前記隙間を狭める方向に力が働いても、ここに入り込んだアルミナ粒子95aがこの力に抗するため、ローラー本体16(搬送ローラ15)の変形が抑えられる。したがって、この搬送ローラ15では、変形に起因する搬送ムラも防止されたものとなる。
さらに、アルミナ粒子95として、その粒径分布における最小粒径が、前記繋ぎ目80における前記一対の端面61a、61b間の最短距離、つまり内周面側での距離d2より大であるものを用いているので、ローラー本体16の表面にアルミナ粒子95を配して高摩擦層50を形成した際、前記繋ぎ目80に形成された隙間を通り抜けてローラー本体16内にアルミナ粒子95が入り込むことが無い。したがって、その後ローラー本体16内を清浄化するなどの処理が軽減され、その分、生産性が向上したものとなる。
また、前記実施形態の搬送ローラー15は、ローラー本体16の両端部を除いた中央部、すなわち用紙P(記録媒体)に直接接触する中央部に高摩擦層50を選択的に設けているので、用紙Pの搬送性能を低下させることなく、高摩擦層50の材料コストを最小限に抑えることができる。ただし、本発明の搬送ローラーはこれに限定されることなく、ローラー本体16の全長に亘って高摩擦層50を形成することもできる。
また、本実施形態の搬送ユニットにあっては、前述したようにコストダウン及び軽量化が可能であり、良好な搬送力を発揮し、さらにはローラー本体16の繋ぎ目に起因する搬送ムラが防止された搬送ローラー15を備えているので、この搬送ユニット16自体のコストダウン及び軽量化が可能になり、さらには搬送ローラーによる記録媒体の搬送性にも優れたものとなる。
また、本実施形態のインクジェットプリンター(印刷装置)1は、前記搬送ユニットを備えているため、コストダウン及び軽量化が可能であり、さらに記録媒体を良好に搬送することができる優れたものとなる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
例えば、前記実施形態では本発明に係る搬送ローラーを、搬送ローラー機構19における搬送ローラー15に適用したが、排紙ローラー機構27における排紙ローラー29や排紙ギザローラー31に適用することもでき、さらには、搬送ローラー機構19における従動ローラー17(ローラー17a)に適用することもできる。
1…インクジェットプリンター(印刷装置)、15…搬送ローラー、16…ローラー本体、16a…中心軸、17…従動ローラー、19…搬送ローラー機構、21…印字ヘッド(印刷部)、50…高摩擦層、51…樹脂膜、60…金属板(第2の金属板)、61a、61b…端面、62a、62b…側部、65…大型の金属板(第1の金属板)、71…係合孔(係合部)、72…連結部品、73、74、75…係合部、76a、76b、76c…展開係合部、80、81、82、83、84、87…繋ぎ目、85、88…折曲部、86…中央直線部、87a…交差部、87b…第1直線部、87c…第2直線部、87d、88b…凸片、89a、89b…波線、90…塗装ブース、95…アルミナ粒子(無機粒子)

Claims (9)

  1. プレス加工により一対の端面を対向させ、円筒状に形成されたローラー本体と、
    前記ローラー本体の表面に設けられ、無機粒子を含有した高摩擦層と、を備え、
    前記ローラー本体は、前記一対の端面が離間した繋ぎ目が形成されており、
    前記無機粒子の平均粒径は、前記ローラー本体の外周面側における前記一対の端面間の距離以下である、搬送ローラー。
  2. 前記繋ぎ目における前記一対の端面間の距離は、前記ローラー本体の外周面側に対して内周面側が狭く形成されており、
    前記無機粒子の平均粒径は、前記ローラー本体の内周面側における前記一対の端面間の距離より大きい、請求項1に記載の搬送ローラー。
  3. 前記無機粒子は酸化アルミニウムである、請求項1又は2に記載の搬送ローラー。
  4. 前記高摩擦層は、前記無機粒子が樹脂中に分散して形成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の搬送ローラー。
  5. 前記高摩擦層は、前記ローラー本体の両端部を除く中央部に設けられている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の搬送ローラー。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の搬送ローラーを備えた搬送ユニット。
  7. 前記搬送ローラーに従動する従動ローラーを備え、前記従動ローラーの表面に低摩耗処理が施されている請求項6記載の搬送ユニット。
  8. 前記従動ローラーは、前記搬送ローラーの前記高摩擦層に当接する位置に配置されている請求項6又は7に記載の搬送ユニット。
  9. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の搬送ローラーと、
    前記搬送ローラーにより搬送された記録媒体に印刷処理を行う印刷部と、
    を備えた印刷装置。
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