JP2010182473A - 電気光学装置、光書き込みヘッド、画像形成装置、電子機器 - Google Patents

電気光学装置、光書き込みヘッド、画像形成装置、電子機器 Download PDF

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Abstract

【課題】安定した電気光学特性が得られる複数の電気光学素子を備えた電気光学装置、この電気光学装置を備えた光書き込みヘッド、画像形成装置、電子機器を提供すること。
【解決手段】本適用例の電気光学装置としての発光装置30は、基板上において第1の方向(X方向)に千鳥状に配列した電気光学素子としての発光素子10と、2つの発光素子10を含む膜形成領域Eを1つの単位として区画すると共に、複数の発光素子10を複数の単位に区画する隔壁部11とを備え、発光素子10を構成する少なくとも1つの膜が液体プロセスを用いて膜形成領域Eに形成され、膜形成領域Eは、発光素子10が設けられた素子区画部13と、素子区画部13よりも大きな平面積を有し素子区画部13に繋がる液溜り部12とを有し、素子区画部13は、X方向において一定の幅bを有し、X方向における液溜り部の幅aよりも上記一定の幅bの方が小さい。
【選択図】図3

Description

本発明は、液体プロセスにより形成される電気光学素子を有する電気光学装置、光書き込みヘッド、画像形成装置、電子機器に関する。
上記電気光学装置としては、電気光学素子としての複数の発光素子と、複数の発光素子を囲む隔壁部とを備えた発光装置が知られている(特許文献1〜特許文献3)。
上記特許文献1〜特許文献3の発光装置は、いずれも隔壁部に囲まれた領域において、発光素子の発光層を液体プロセスで形成するものである。
また、特許文献1および特許文献2では、液体プロセスを考慮して、隔壁部と発光素子との距離関係を規定している。
特許文献3では、隔壁部により囲まれた領域が矩形状であり、短手方向における隔壁部の間隔は、長手方向の中央部における間隔よりも長手方向の端部における間隔の方が広いことを特徴としている。さらに、上記長手方向の端部における隔壁部の間隔が広い部分を液溜部とすることが開示されている。
これらの発光装置における特徴は、発光素子が設けられる領域において、ほぼ均一な膜厚の発光層を液体プロセスで得ることを目的として構成されている。
また、液体プロセスを用いた他のデバイスの形成方法としては、基板上においてバンクにより縁取られたパターン形成領域に、液状の導電性材料の液滴を吐出して、導電性材料層を形成する配線パターン形成方法が知られている(特許文献4)。
上記配線パターン形成方法では、上記パターン形成領域が、第1の幅を有する第1領域と、第1領域と接すると共に第1の幅以下の第2の幅を有する第2領域とを有している。そして、第1の幅以下かつ第2の幅以上の直径の液滴を第1領域に吐出することにより、第1領域と第2領域に亘る導電性材料層を形成している。すなわち、第1領域に吐出された液滴が第2領域に濡れ広がることを利用して成膜している。
特開2007−87693号公報 特開2007−87694号公報 特開2007−87695号公報 特開2006−66673号公報
上記特許文献1〜特許文献3の発光装置では、複数の発光素子が設けられる領域を1つの隔壁部で囲み、その中に吐出ヘッドから発光材料を含む液状組成物を液滴として吐出し、これを乾燥することにより、発光層を形成している。このような液体プロセスとしての液滴吐出法においては、液状組成物を吐出ヘッドから液滴として吐出可能な低粘度状態とする必要がある。その代表的な方法の1つとして液状組成物における発光材料の濃度を低く抑える方法が挙げられる。
しかしながら、発光材料の濃度を低く抑えると、乾燥工程における溶媒の乾燥状態の影響を受け易くなり、発光層の膜厚が安定し難いという課題があった。
また、液状組成物を吐出して得られる発光層の膜厚が小さくなるので、所望の膜厚の発光層を得るには、液状組成物の吐出工程と乾燥工程とを繰り返す必要が生ずる。すなわち、生産性が低下するという課題があった。
このような技術的な課題は、上記特許文献4の配線パターン形成方法においても、同様に生ずることが考えられる。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]本適用例の電気光学装置は、基板上において少なくとも第1の方向に配列した複数の電気光学素子と、前記複数の電気光学素子のうちの少なくとも1つの前記電気光学素子を含む膜形成領域を1つの単位として区画すると共に、前記複数の電気光学素子を複数の前記単位に区画する隔壁部とを備え、前記電気光学素子を構成する少なくとも1つの膜が液体プロセスを用いて前記膜形成領域に形成され、前記膜形成領域は、前記電気光学素子が設けられた素子区画部と、前記素子区画部よりも大きな平面積を有し前記素子区画部に繋がる液溜り部とを有し、前記素子区画部は、前記第1の方向において一定の幅を有し、前記第1の方向における前記液溜り部の幅よりも前記一定の幅が小さいことを特徴とする。
この構成によれば、液体プロセスを用いて電気光学素子を構成する少なくとも1つの膜を形成する際に、膜形成領域に塗布された液状組成物は、素子区画部と液溜り部とに濡れ広がる。第1の方向における素子区画部の幅は液溜り部の幅よりも小さいため、所定量の液状組成物を膜形成領域に塗布したとしても、素子区画部に塗布された液状組成物は、その表面張力や界面張力に起因して液溜り部に比べて盛り上がらない。そのため、素子区画部では乾燥にともなう曲率の低下が液溜り部に比べて大きく、素子区画部における液状組成物の内圧は、液溜り部に比べて低くなる。それゆえ、素子区画部と液溜り部との間で内圧に差が生ずる。
したがって、塗布された液状組成物の乾燥が進行するに連れて液状組成物の溶媒が液溜り部から素子区画部へと移動する。溶媒の移動に伴って溶質も移動するため、乾燥後に得られる膜は、素子区画部側が液溜り部側に比べて厚くなり易い。
ゆえに、膜形成領域において、液溜り部は液溜りとして機能するだけでなく、液状組成物を素子区画部側に供給する機能を有し、液状組成物が低濃度であっても、素子区画部において所望の膜厚を有する膜を得ることができる。
個々の膜形成領域において所望の膜厚を有する膜が実現されているため、全体として安定した電気光学特性を有する電気光学素子を備えた電気光学装置を提供できる。
[適用例2]上記適用例の電気光学装置において、1つの前記液溜り部に対して複数の前記素子区画部が繋がっているとしてもよい。
この構成によれば、塗布された液状組成物を液溜り部から複数の素子区画部側に供給することができる。言い換えれば、液溜り部に繋がった複数の素子区画部の間において、電気光学素子を構成する膜の膜厚の平準化が可能となる。よって、電気光学素子間の電気特性が安定した電気光学装置を提供できる。
[適用例3]上記適用例の電気光学装置において、前記隔壁部は、前記複数の前記素子区画部の間を仕切る仕切り部を有し、前記仕切り部の少なくとも前記液溜り部側の端部の幅が、前記端部を除く前記仕切り部の幅よりも広いことが好ましい。
この構成によれば、液溜り部と素子区画部との接続部における上記第1の方向の幅が、素子区画部の他の部分の幅よりも狭くなる。したがって、塗布された液状組成物の乾燥における溶媒の移動が助長される。
[適用例4]上記適用例の電気光学装置において、前記素子区画部の前記第1の方向と交差する方向における両側に前記液溜り部が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、素子区画部へより多くの液状組成物を流入させ、所望の膜厚を有する膜が効率よく成膜される。
[適用例5]上記適用例の電気光学装置において、前記第1の方向に隣り合う少なくとも2つの前記膜形成領域は、前記素子区画部の前記両側に設けられた前記液溜り部のうちの一方を共有し、共有する前記液溜り部を介して前記素子区画部同士が繋がっているとしてもよい。
この構成によれば、隣り合う少なくとも2つの膜形成領域間の素子区画部における膜の膜厚の平準化が可能となる。したがって、電気光学素子間の電気光学特性がより安定する。
[適用例6]上記適用例の電気光学装置において、前記第1の方向に隣り合うすべての前記膜形成領域は、前記素子区画部の前記両側に設けられた前記液溜り部のうちの一方を互いに共有しているとしてもよい。
この構成によれば、隣り合うすべての膜形成領域間の素子区画部における膜の膜厚の平準化が可能となる。したがって、複数の電気光学素子の電気光学特性がより安定する。
[適用例7]上記適用例の電気光学装置において、前記素子区画部は、前記電気光学素子が前記第1の方向と交差する方向に配列した素子列を1列または2列有することを特徴とする。
この構成によれば、素子列内の電気光学素子における電気光学特性が安定する。また、素子列が2列の場合には、素子列間の電気光学特性が対称性を有することになり、電気光学装置の電気光学特性のばらつきが抑制される。
[適用例8]上記適用例の電気光学装置において、前記素子列は、前記電気光学素子の配列方向に沿って設けられた前記隔壁部または前記仕切り部に対して一定の距離をおいて設けられていることが好ましい。
この構成によれば、素子区画部の隔壁部の間、あるいは隔壁部と仕切り部との間において、膜の膜厚に偏りを有していても、隔壁部または仕切り部から一定の距離をおいて電気光学素子が設けられるため、電気光学素子間における膜の膜厚の偏りをほぼ一定とすることができる。
[適用例9]上記適用例の電気光学装置において、前記電気光学素子が発光素子であることを特徴とする。
この構成によれば、安定した電気光学特性すなわち発光特性を有する発光素子を備えた電気光学装置を提供することができる。
[適用例10]本適用例の光書き込みヘッドは、上記適用例の電気光学装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、発光特性のばらつきに起因する光書き込みのむらが抑制された光書き込みヘッドを供給することができる。
[適用例11]本適用例の画像形成装置は、上記適用例の光書き込みヘッドを備えたことを特徴とする。
この構成によれば、形成される画像のコントラストや色調などのむらが少ない安定した品質を有する画像形成装置を提供できる。
[適用例12]本適用例の電子機器は、上記適用例の電気光学装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、安定した電気光学特性を有する電気光学装置を備えた電子機器を提供することができる。
発光画素の配置を示す概略平面図。 (a)は発光装置の電気的な構成を示す概略図、(b)は発光素子の構成を示す模式図。 (a)は実施例1の発光装置の構成を示す概略平面図、(b)は(a)のA−A’線で切った断面図。 実施例1の発光装置の製造方法を示すフローチャート。 (a)〜(d)は発光装置の製造方法を示す概略図。 (e)〜(h)は発光装置の製造方法を示す概略図。 実施例2の発光装置の構成を示す概略平面図。 実施例3の発光装置の構成を示す概略平面図。 実施例4の発光装置の構成を示す概略平面図。 実施例5の発光装置の構成を示す概略平面図。 光書き込みヘッドの構成を示す概略斜視図。 画像形成装置の構成を示す概略断面図。 変形例の発光装置の構成を示す概略平面図。
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
(実施形態1)
<電気光学装置>
本実施形態は、電気光学素子を有する電気光学装置として、発光素子を有する発光装置を例に説明する。図1は発光画素の配置を示す概略平面図、図2(a)は発光装置の電気的な構成を示す概略図、同図(b)は発光素子の構成を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態の発光装置30は、後述する素子基板の長手方向である第1の方向に配列した略円形の発光画素を有する。以降、第1の方向をX方向とし、これに直交する方向をY方向として説明する。発光画素は、X方向に所定の配置ピッチPxで2列に配置されている。該2列の発光画素はX方向において互いにずれて配置されており、所謂千鳥状となっている。このような発光画素の列を総称して以降「画素列」と呼ぶ。画素列の両端側に位置する複数の発光画素は、ダミー画素となっている。ここで本実施形態においてダミー画素とは、画素において発光素子から出射された発光光が、表示装置の表示またはプリンターヘッドの光源または照明装置の光源等に利用されない画素、または光を発しない画素を指す。
ダミー画素を除く有効な発光画素の数は、例えば、122880個である。後述する素子基板の長手方向に直交する短手方向であるY方向から見ると発光画素はおおよそ等間隔に配置されている。この場合、発光画素の径はおよそ25μmである。また、配置ピッチPxは、42.25μmであり、Y方向から見た実質的な発光画素の密度は、所謂1200dpi相当となっている。
Y方向における発光画素の配置ピッチPyは、発光装置30の製造条件を考慮して適宜決められるものである。したがって、2列に跨る発光画素の配置角度θは、互いに等間隔で配置されたときの60°に限定されない。この場合は、およそ63°である。
図2(a)に示すように、本実施形態の発光装置30は、長細い矩形の素子基板1と、素子基板1上において第1の方向(長手方向)に配列した複数の発光素子10と、発光素子10ごとに設けられ、これを駆動させる駆動素子6と、これら駆動素子6の駆動を制御する制御回路9とを一体形成したものである。発光素子10は、前述した発光画素に対応して千鳥状に配置されている。
図2(b)に示すように、発光素子10は、素子基板1上に設けられた一方の電極としての陽極2と、陽極2上に順に積層された正孔注入輸送層3と、発光層4と、他方の電極としての陰極5とを有する。陽極2と陰極5とに挟まれた正孔注入輸送層3および発光層4を機能層と呼ぶこともある。
発光素子10は、陽極2と陰極5との間に電流を流すことにより、発光層4が励起され発光するようになっている。発光素子10の陰極5には共通配線8が接続され、陽極2には駆動素子6を介して電源線7が接続されている。この駆動素子6は、薄膜トランジスター(TFT)等のスイッチング素子で構成されている。そして、制御回路9により駆動素子6の動作が制御され、駆動素子6により発光素子10への通電が制御されるようになっている。
素子基板1は、透明あるいは半透明のものが採用される。例えば、ガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等が挙げられ、特にガラス基板が好適に用いられる。素子基板1の上に形成される陽極2は、例えばITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜からなる。
陽極2上に設けられる機能層(正孔注入輸送層3および発光層4)は、液体プロセスにより形成されたものである。この場合の液体プロセスとは、膜形成材料を溶媒に溶解あるいは分散させた溶液(液状組成物)を塗布して乾燥させ、溶媒を除去して膜形成材料からなる膜を形成する方法である。
正孔注入輸送層3の液状組成物としては、特に3,4−ポリエチレンジオシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の分散液、すなわち、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水に分散させた分散液が好適に用いられる。なお、正孔注入輸送層3の液状組成物は、上記に限定されず、例えば、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやその誘導体などを、適宜な分散媒、例えばポリスチレンスルフォン酸に分散させたものなども使用可能である。
発光層4の膜形成材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料が用いられる。例えば、本実施形態では、発光波長帯域が赤色に対応した発光層4が採用されている。もちろん、発光波長帯域が緑色や青色に対応した発光層4を採用するようにしてもよい。
具体的には、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられる。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。
これらの発光材料を溶解させる溶媒としては、例えばキシレンなどが挙げられる。また、インクジェットではノズルの乾燥を防止するために沸点の高い溶媒が望ましく、例えばシクロヘキシルベンゼンなどが利用される。
陰極5は、例えばCaを厚さおよそ20nm程度に形成し、さらにAlを厚さ200nm程度に形成した積層構造の電極とし、Alを反射層として機能させたものである。
このように設けられた複数の発光素子10が、水分や酸素などの影響で発光寿命が阻害されないように、素子基板1は例えば水分や酸素などを吸着するゲッター材を介してガラス等からなる封止基板(図示省略)と接合され封着される。なお、ゲッター材は必須ではない。
本実施形態の発光装置30は、発光層4からの発光を陰極5により反射させ、透明あるいは半透明な素子基板1側から取り出す、所謂ボトムエミッション型である。
発光装置30は、ボトムエミッション型に限定されず、陰極5を透明な導電材料により構成すると共に、封止基板を透明なガラス等を用いることによって、発光層4からの発光を封止基板側から取り出すトップエミッション型とすることも可能である。
なお、この例では、発光素子10を駆動する駆動素子6として、素子基板1上にTFT素子を作り込んだが、駆動素子6を素子基板1上に作り込まず、駆動素子6を外付けにしてもよい。具体的には素子基板1の端子領域に駆動素子6としてのドライバーICをCOG実装する。またはドライバーICを実装したフレキシブル回路基板を素子基板1に実装する方法が挙げられる。
また、画素列におけるダミー画素の構成は、ダミーでない発光画素と同様に発光素子10やこれに対応する駆動素子6を備えるものであってもよいし、例えば、駆動素子6がない構成としてもよい。言い換えれば、実際に駆動可能なものでも、駆動不可能なものでもよい。
この発光装置30は、例えば、後述する画像形成装置に用いられるものであって、感光体ドラムに発光素子10からの光を照射して、その感光面を感光させるものである。そして、感光体ドラムの感光体は、発光層4の発光波長帯域に感度を持つものが採用される。
発光装置30を感光体を感光させる装置として用いる場合、複数の発光素子10ごとの発光特性(輝度特性など)がほぼ同水準で安定していることが求められる。それを実現するため理想的には、発光素子10を構成する一対の電極(陽極2と陰極5)と一対の電極間の機能層(特に発光層4)が、所望の膜厚で一定していることが望ましい。
無機材料からなる陽極2や陰極5は、真空蒸着等の方法を採用することにより、均質な状態で所望の膜厚を確保可能である。それに比べて、液体プロセスを用いる機能層の形成は、所望の膜厚を複数の発光素子10に亘って確保することが難しいという課題を有している。
そこで、上記課題を解決する発光装置30の構成について、以下実施例を挙げて説明する。
(実施例1)
図3(a)は実施例1の発光装置の構成を示す概略平面図、同図(b)は同図(a)のA−A’線で切った断面図である。
図3(a)に示すように、実施例1の発光装置30は、2つの発光素子10を含む膜形成領域Eを1つの単位として区画すると共に、千鳥状に配置された複数の発光素子10を複数の単位に区画する隔壁部11を備えている。
隔壁部11によって区画された各膜形成領域Eは、2つの発光素子10が設けられた素子区画部13と、素子区画部13よりも大きな平面積を有し素子区画部13に繋がる液溜り部12とを有する。
素子区画部13は、千鳥状に配置された複数の発光素子10をX方向に交差する方向で2つずつの発光素子10を含む領域に区分している。
素子区画部13の閉じた側における端部および液溜り部12の内側角部は、円弧状となっている。円弧状とすることにより膜形成領域Eに塗布される液状組成物の保持性が改善される。また、上記端部において隔壁部11と発光素子10との距離が確保される。
液溜り部12から斜めに突出した素子区画部13を有する膜形成領域Eが、Y方向において上下一対に組み合わされ、組み合わされた一対の膜形成領域EがX方向に連続するように設けられている。
素子区画部13は、X方向において一定の幅bを有し、X方向における液溜り部12の幅aよりも上記一定の幅bの方が小さい。また、素子区画部13の面積(すなわち、図面上ではb×dで近似できる)は、液溜り部12の面積(すなわち、図面上ではa×cで近似できる)よりも小さい。よって、a>b、a×c>b×dの関係となっている。
図3(b)に示すように、膜形成領域Eにおいて、素子基板1の表面に電気的に独立した2つの陽極2が設けられている。それぞれの陽極2の外縁を覆うと共に、素子基板1の表面を覆う絶縁膜1aが設けられている。絶縁膜1aは例えばSiO2膜である。絶縁膜1aで覆われていない陽極2の表面が平面的に略円形になっている。したがって、陽極2が平面的に略円形である必要はない。
絶縁膜1a上において、膜形成領域Eを区画するように隔壁部11が設けられている。
陽極2上には、前述したように液体プロセスによって、正孔注入輸送層3と、発光層4とが形成されている。本実施形態における液体プロセスについては、後述する発光装置30の製造方法において述べるが、隔壁部11によって区画された膜形成領域Eに液状組成物を吐出ヘッドを用いて塗布し、塗布された液状組成物を乾燥させることにより、これら正孔注入輸送層3、発光層4を成膜している。成膜された発光層4と隔壁部11とを覆うように陰極5が形成されている。
図3(a)に示すように、X方向における液溜り部12の幅aよりも素子区画部13の幅bの方が小さいので、液溜り部12に塗布された液状組成物を乾燥時に素子区画部13側に流入させることが可能となっている。これにより、膜形成領域Eに塗布される液状組成物の濃度を低くしても、素子区画部13において初期に充填された液状組成物の固形分よりも多くの固形分を堆積させることができ、結果的に所望の膜厚を有する膜が効率的に形成される。詳しくは、後述する発光装置30の製造方法において説明する。
図4は実施例1の発光装置の製造方法を示すフローチャート、図5(a)〜(d)および図6(e)〜(h)は発光装置の製造方法を示す概略図である。
図4に示すように、実施例1の発光装置30の製造方法は、素子区画部13と液溜り部12とを有する膜形成領域Eを区画するように隔壁部11を形成する隔壁部形成工程(ステップS1)と、隔壁部11で区画された膜形成領域Eを表面処理する表面処理工程(ステップS2)と、膜形成領域Eに正孔注入輸送層3を形成する正孔注入輸送層形成工程(ステップS3)と、正孔注入輸送層3に積層して発光層4を形成する発光層形成工程(ステップS4)と、発光層4および隔壁部11を覆うように陰極5を形成する陰極形成工程(ステップS5)とを備えている。なお、素子基板1上にスイッチング素子としての駆動素子6や駆動素子6を制御する制御回路9、駆動素子6に電気的に接続する陽極2の形成方法は、公知の形成方法を用いることができる。したがって、本実施形態における説明を省くと共に、詳細な図示は省略する。
図4のステップS1は、隔壁部形成工程である。ステップS1では、図5(a)に示すように、陽極2や絶縁膜1aが形成された素子基板1の表面に、例えば感光性樹脂材料をおよそ2μm程度の厚みで塗布し、これを露光・現像することにより、所定のパターン形状を有する隔壁部11を形成する。所定のパターン形状とは、2つの陽極2を含む素子区画部13と、素子区画部13に繋がる液溜り部12とを有する膜形成領域Eを区画する形状である。感光性樹脂材料としては、フェノールまたはポリイミドなどの絶縁性を有する感光性樹脂が挙げられる。なお、隔壁部11の高さ(厚み)は、後述する機能層の厚みよりも高くなるように設定することは言うまでもない。そして、ステップS2へ進む。
図4のステップS2は、表面処理工程である。ステップS2では、隔壁部11が形成された素子基板1を、まずO2ガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより陽極2や絶縁膜1aの表面、および隔壁部11の表面(壁面を含む)を活性化させて親液処理する。次にCF4等のフッ素系ガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより有機材料である感光性樹脂からなる隔壁部11の表面のみにフッ素系ガスが反応して撥液処理される。すなわち、無機材料からなる陽極2や絶縁膜1aの表面に親液性を付与し、有機材料からなる隔壁部11の表面に撥液性を付与する表面処理を行う。なお、隔壁部11自体が撥液性を有するならば、後段のプラズマ処理を不要とすることも可能である。そして、ステップS3へ進む。
図4のステップS3は、正孔注入輸送層形成工程である。ステップS3では、図5(b)に示すように、複数のノズル21からなるノズル列が膜形成領域Eを望むことが可能となるように吐出ヘッド20と素子基板1とを対向配置する。より具体的には、素子基板1上における複数の陽極2の配列方向(X方向)に対して、ノズル列が交差(直交)するように吐出ヘッド20と素子基板1とを対向配置する。
吐出ヘッド20は、例えば、充填された液状組成物をノズル21から液滴として吐出させる駆動素子としての圧電素子を備えたインクジェットヘッドである。また、吐出ヘッド20と素子基板1のX方向に沿った1回の相対移動(走査)により、膜形成領域Eに亘って液状組成物を吐出可能なノズル数を有するものが好ましい。
吐出ヘッド20には、前述した正孔注入輸送層形成材料を含む液状組成物3Lが充填されている。ノズル21から液滴として安定的に吐出するために、液状組成物3Lは粘度が30mPa・s以下の範囲となるように正孔注入輸送層形成材料の濃度が0.5wt%〜1wt%の範囲で調整されている。これにより、図5(c)に示すように、1回の走査で素子区画部13と液溜り部12とにほぼ同時に、所定量の液状組成物3Lを安定的に吐出することができる。吐出された液状組成物3Lは、表面処理された膜形成領域E内に濡れ広がる。また、各膜形成領域Eにおいて、溢れ出ない程度の所定量まで塗布(吐出)される。すると、陽極2が配列するX方向に直交するY方向から見ると、図5(d)に示すように、塗布された液状組成物3Lは、その表面張力と隔壁部11に対する界面張力とにより、膜形成領域Eにおいて盛り上がる。なお、図5(d)は図5(b)のB−B’線で切った断面図である。
X方向における幅bの素子区画部13に充填された液状組成物3Lの液面曲率半径をR1とし、X方向における幅aの液溜り部12に充填された液状組成物3Lの液面曲率半径をR2とすると、R1とR2とは液状組成物3Lの表面張力による液体圧力(ラプラス圧力)が静的には接続された液体パターン内で一定となることにより決まるため、等しい値となる。この場合、幅aは幅bのおよそ2倍であることからもわかるように、液溜り部12における液状組成物3Lの方が素子区画部13に比べて盛り上がる。図面上で言えば、液溜り部12における液状組成物3Lの隔壁部11から盛り上がった高さHは、素子区画部13における液状組成物3Lの隔壁部11から盛り上がった高さhよりも高い。
塗布された液状組成物3Lの乾燥が始まると,元から液面高さが低い素子区画部13では高さ低下量に対する液面曲率半径R1の増加が液溜り部12の液面曲率半径R2の増加より大きいため、液溜り部12に充填された液状組成物3Lの内圧が素子区画部13に比べて高くなり、内圧の差が生ずる。したがって、分散媒(あるいは溶媒)の蒸発に伴って、図6(e)に示すように、液溜り部12から素子区画部13に向かって、液状組成物3Lの分散媒(あるいは溶媒)の移動が起こる。分散媒(あるいは溶媒)に含まれる正孔注入輸送層形成材料も同時に移動する。少なくとも高さHで盛り上がった部分の液状組成物3Lが液溜り部12から素子区画部13へ移動する。
そして、図6(f)に示すように、乾燥後には、素子区画部13において正孔注入輸送層3が陽極2上に積層形成される。このとき、液溜り部12にも正孔注入輸送層3が成膜されるが、その膜厚は素子区画部13よりも小さい。言い換えれば、素子区画部13において、液溜り部12よりも厚い所望の膜厚を有する正孔注入輸送層3が形成される。この場合の所望の膜厚は、およそ50nm〜100nmの範囲である。
隔壁部11の高さは前述したようにおよそ2μmである。したがって、正孔注入輸送層3の膜厚に比べて十分に高く、乾燥過程で素子区画部13における液状組成物3Lの液面が図5(d)に示す凸状から凹状となっても、素子区画部13への液状組成物3Lの流入を可能としている。そして、ステップS4へ進む。
図4のステップS4は、発光層形成工程である。ステップS4では、ステップS3と同様にして、吐出ヘッド20と素子基板1とを対向配置し、吐出ヘッド20によって素子基板1を走査して、ノズル21から発光層形成材料を含む液状組成物4Lを吐出する。液状組成物4Lも液状組成物3Lと同様に、粘度が30mPa・s以下の範囲となるように発光層形成材料の濃度が0.5wt%〜1wt%の範囲で調整されている。すると、図5(c)および(d)に示すように、吐出された液状組成物4Lは膜形成領域Eおいて濡れ広がり、盛り上がる。塗布された液状組成物4Lを乾燥すると、図6(e)に示すように、液溜り部12から素子区画部13に液状組成物4Lの移動が生ずる。これにより、図6(g)に示すように、素子区画部13において、液溜り部12よりも厚い所望の膜厚を有する発光層4が正孔注入輸送層3を覆って形成される。この場合の発光層4の所望の膜厚は、およそ100nmである。そして、ステップS5へ進む。
図4のステップS5は、陰極形成工程である。ステップS5では、図6(h)に示すように、素子基板1の発光層4と隔壁部11の表面とを覆うように陰極5を形成する。陰極5の材料としては、Ca、Ba、Al等の金属やLiF等のフッ化物を組み合わせて用いるのが好ましい。特に発光層4に近い側に仕事関数が小さいCa、Ba、LiFの膜を形成し、遠い側に仕事関数が大きいAl等の膜を形成するのが好ましい。また、陰極5の上にSiO2、SiN等の保護層を積層してもよい。このようにすれば、陰極5の酸化を防止することができる。陰極5の形成方法としては、蒸着法、スパッタ法、CVD法等が挙げられる。特に発光層4の熱による損傷を防止できるという点では、蒸着法が好ましい。
上記ステップS3およびステップS4では、低粘度で低濃度な液状組成物3L,4Lを膜形成領域Eに吐出して、素子区画部13の陽極2上に所望の膜厚を有する膜を形成している。所望の膜厚を得るには、乾燥過程において液溜り部12が充填された液状組成物3L,4Lを素子区画部13側に供給する機能を果たすことが重要である。
それには、素子区画部13と液溜り部12とにおいて塗布された液状組成物3L,4Lの内圧の差を生じさせる必要がある。したがって、膜形成領域Eの設計上の条件としては、次の関係が挙げられる。図5(d)を参照して説明する。
図5(d)に示したように、素子区画部13の液面曲率半径R1は、数式(1)のように近似できる。
R1≒2h/b2 ・・・・・(1)
同様にして、液溜り部12の液面曲率半径R2は、数式(2)のように近似できる。cは、液溜り部12のY方向の幅である(図3(a)参照)。
R2≒2H/a2+2H/c2 ・・・・・(2)
前述したようにR1=R2であるから、数式(3)が得られる。
2h/b2=2H(1/a2+1/c2) ・・・・・(3)
上記内圧の差が生じる状態、すなわちh<Hとして上記数式(3)を満足させるには、次の数式(4)の関係が導かれる。
1/b2>1/a2+1/c2 ・・・・(4)
したがって、数式(4)を満たす、幅a、幅b、幅cの設定を考慮する必要がある。また、前述したように液溜り部12において隔壁部11から高さHで盛り上がった部分の液状組成物3L,4Lが少なくとも素子区画部13に流入する。それゆえに、素子区画部13において形成される膜が所望の膜厚となるように、素子区画部13の面積に対して液溜り部12の面積の設定を考慮する必要がある。
なお、図5(d)に示すように、フォトリソグラフィ法で形成した隔壁部11のX方向(およびY方向)における断面形状は、傾斜した内壁面を有する。したがって、傾斜した内壁面を考慮して幅a、幅b、幅cの代表的な寸法を特定しているが、液状組成物3L,4Lが隔壁部11から盛り上がり始める部分を起点として寸法を特定することが望ましい。
上記実施例1の発光装置30およびその製造方法によれば、少なくとも122880個の発光素子10が、2個ずつに区分された膜形成領域Eを区画する隔壁部11を有している。そして、吐出ヘッド20から各膜形成領域Eに所定量の液状組成物3L,4Lがそれぞれ安定的に吐出される。膜形成領域Eにおいて発光素子10が設けられていない液溜り部12は、液状組成物3L,4Lを溜める液溜りとして機能するだけでなく、乾燥過程において液状組成物3L,4Lを素子区画部13に供給する機能を有する。
それゆえ、所望の膜厚を有する正孔注入輸送層3と発光層4とからなる機能層が素子区画部13において形成される。したがって、面積の小さな膜形成領域Eを単位として、該単位内において所望の膜厚を有する機能層が得られるので、多数の発光素子10の全体を隔壁部で区画して膜形成領域を構成する特許文献1〜特許文献3の従来の発光装置に比べて、安定した発光特性を有する複数(122880個)の発光素子10を備えた発光装置30を実現することができる。
(実施例2)
図7は実施例2の発光装置の構成を示す概略平面図である。以降、同じ構成の部分には同じ符号を付し説明を省略するものとする。図7に示すように、実施例2の発光装置30Aは、実施例1に対して、液溜り部12に2つの素子区画部13a,13bが繋がっている。素子区画部13a,13bにはそれぞれ2個ずつの発光素子10が設けられている。
実施例2の発光装置30Aの製造方法は、基本的に実施例1と同様であって、膜形成領域Eに所定量の液状組成物3L,4Lを吐出することにより、乾燥過程で液溜り部12から2つの素子区画部13a,13bに液状組成物3L,4Lが流入して、所望の膜厚を有する正孔注入輸送層3と発光層4とからなる機能層が素子区画部13a,13bにおいて形成される。よって、4個の発光素子10が1つの単位として形成される。
実施例1のように2個の発光素子10を1つの単位として形成する場合に比べて、実施例2では、発光素子10間の機能層の膜厚がより平準化される。すなわち、発光素子10間のばらつきが少なくなり、より安定した発光特性を有する発光装置30Aを提供できる。なお、液溜り部12に繋がる素子区画部13の数は、2つに限定されない。
(実施例3)
図8は実施例3の発光装置の構成を示す概略平面図である。実施例3の発光装置30Bは、実施例2に対して画素列の列方向(X方向)に交差する方向(Y方向)において、素子区画部13a,13bの両側に液溜り部12が設けられている。すなわち、図8に示すように、膜形成領域Eは、2つの液溜り部12a,12bと、これら液溜り部12a,12bに繋がった2つの素子区画部13a,13bを有している。素子区画部13a,13bにはそれぞれ2個ずつの発光素子10が設けられている。また、2つの素子区画部13a,13bを仕切る隔壁部11の一部である仕切り部11aを有している。
仕切り部11aの両方の端部11bは、他の仕切り部11aに比べてX方向における幅が広くなっている。この場合、上記端部11bが略円形となっているが、これに限定されず、例えば楕円形や多角形の形状としてもよい。
実施例3の構成によれば、乾燥過程で2つの液溜り部12a,12bから2つの素子区画部13a,13bに液状組成物3L,4Lが流入して、正孔注入輸送層3と発光層4とからなる機能層が素子区画部13a,13bにおいて形成される。したがって、液状組成物3L,4Lの濃度が実施例2と同じならば、実施例2に比べて、より厚い膜厚の機能層を形成可能である。言い換えれば、実施例2よりも低い濃度の液状組成物3L,4Lを所定量塗布することにより、所望の膜厚を有する機能層を形成することができる。低い濃度でよければ、液状組成物3L,4Lをより低粘度とすることができ、より安定的に吐出ヘッド20から吐出できる。また、膜形成材料の無駄を省くことが可能である。
また、仕切り部11aは、他の部分に比べて幅の広い端部11bを有しているので、素子区画部13a,13bと液溜り部12a,12bとの接続部分におけるX方向の幅が狭くなる。このような膜形成領域Eに液状組成物3L,4Lを塗布すると、上記接続部分がオリフィスの役目を果たし、液溜り部12a,12bから素子区画部13a,13bへと流入する液状組成物3L,4Lの流入速度を速めることができる。すなわち、より円滑な流入が図られる。なお、幅の広い端部11bを設けることは必須ではない。
(実施例4)
図9は実施例4の発光装置の構成を示す概略平面図である。実施例4の発光装置30Cは、実施例3に対して隣り合う膜形成領域Eにおいて、素子区画部13a,13bの両側に設けられた液溜り部12a,12bのうちの一方を共有する構成としたものである。すなわち、図9に示すように、一方の膜形成領域EがX方向において隣り合う他方の膜形成領域Eと連通した状態となっている。具体的には、素子区画部13a,13bは2つの液溜り部12a,12bに接続している。隣り合う膜形成領域Eの素子区画部13cは、共有した液溜り部12aに繋がっている。素子区画部13a,13b,13cにはそれぞれ2個ずつの発光素子10が設けられている。
実施例4の構成によれば、多数の発光素子10間において、機能層の膜厚の平準化が図られ、その結果、よりばらつきが少なく安定した発光特性を有する発光装置30Cが得られる。なお、隣り合う膜形成領域Eを連通させる上記構成は、すべての膜形成領域Eに亘って適用される必要はなく、画素列の列方向(X方向)において部分的あるいは選択的に適用してもよい。部分的あるいは選択的な機能膜の膜厚の平準化を図ることができる。
上記実施例1〜実施例4において共通する技術的な事項としては、画素列の列方向(X方向)において、各発光素子10は隔壁部11または仕切り部11aからほぼ一定の距離をおいて配置されている。言い換えれば、隔壁部形成工程では、千鳥状に配置された陽極2に対しX方向において一定の距離をおいて隔壁部11や仕切り部11aを形成する。該一定の距離が少なくとも3μm以上必要であることは、すでに特許文献1にも開示されている。これにより、液体プロセスを用いて機能層を形成する際に、所望の膜厚が得られるだけでなく、X方向における機能層の断面形状がほぼ一定となる。すなわち、膜厚の分布に起因する輝度むらを低減することができる。
(実施例5)
図10は実施例5の発光装置の構成を示す概略平面図である。実施例5の発光装置30Dは、実施例3に対して、1つの素子区画部13に設けられる発光素子10の数を増やしたものである。具体的には、図10に示すように、2つの素子区画部13a,13bにはそれぞれ4つの発光素子10が設けられている。素子区画部13aにおいては、千鳥状に配置された複数の発光素子10のうち、X方向と交差する方向に配列した発光素子10aと発光素子10bとからなる発光素子列10Aと、同じくX方向と交差する方向に配列した発光素子10cと発光素子10dとからなる発光素子列10Bとが設けられている。
前述したように、X方向において発光素子列10Aは隔壁部11から一定の距離をおいた位置に設けられている。同様に発光素子列10Bは仕切り部11aから一定の距離をおいた位置に設けられている。したがって、液体プロセスを用いて機能層を形成する際に、所望の膜厚が得られるだけでなく、発光素子列10Aと発光素子列10Bとにおいて、X方向における機能層の断面形状が発光素子列方向を基準としてほぼ線対称となる。よって、機能層の断面形状のばらつきに起因する輝度むらを低減することができる。
すなわち、実施例3や実施例5の構成に見られるように、安定した膜厚と膜の断面形状を得るには、素子区画部13は1列または2列の発光素子列を有する構成とすることが好ましい。
(実施形態2)
次に、実施形態1の電気光学装置としての発光装置を適用した光書き込みヘッド、および光書き込みヘッドを備えた電子機器としての画像形成装置について説明する。図11は光書き込みヘッドの構成を示す概略斜視図、図12は画像形成装置の構成を示す概略断面図である。
(光書き込みヘッド)
図11に示すように、本実施形態の光書き込みヘッド80は、上記実施形態1の発光装置30(あるいは発光装置30A,30B,30C,30Dのいずれか)と、発光装置30を支持する支持体31と、結像レンズユニット32とを備えている。図中のX方向は千鳥状に配列した発光画素の配列方向であり、Y方向はX方向に直交する方向である。光書き込みヘッド80は、その長軸をX方向に一致させると共に感光体ドラム41の母線に沿うように、感光体ドラム41の外周面に対して配設される。支持体31は、感光体ドラム41側が開口されており、感光体ドラム41に向かって光を射出するように発光装置30を支持固定している。
結像レンズユニット32は、内部に例えばセルフォック(登録商標)レンズアレイなどのレンズ群(図示省略)を備えており、発光装置30と感光体ドラム41との間に位置するように支持体31に支持固定されている。結像レンズユニット32は、発光装置30における発光素子10からの発光を一端側で集光し、その他端側から射出して感光体ドラム41の外周面に照射して静電潜像を形成する。
(画像形成装置)
図12に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、上記光書き込みヘッド80(K、C、M、Y)を、対応する同様な構成である4個の感光体ドラム(像担持体)41K,41C,41M,41Yの露光装置にそれぞれ配置したタンデム方式として構成されたものである。
画像形成装置100は、駆動ローラー91と従動ローラー92とテンションローラー93とを備え、これら各ローラーに中間転写ベルト90を、図12中矢印方向(反時計方向)に循環駆動するよう張架したものである。この中間転写ベルト90に対して、感光体ドラム41K,41C,41M,41Yが所定間隔で配置されている。これら感光体ドラム41K,41C,41M,41Yは、その外周面が像担持体としての感光層となっている。
ここで、上記符号中のK、C、M、Yは、それぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローを意味し、それぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエロー用の感光体であることを示している。
なお、これら符号(K、C、M、Y)の意味は、他の部材についても同様である。感光体ドラム41K,41C,41M,41Yは、中間転写ベルト90の駆動と同期して、図12中矢印方向(時計方向)に回転駆動するようになっている。
各感光体ドラム41(K、C、M、Y)の周囲には、それぞれ感光体ドラム41(K、C、M、Y)の外周面を一様に帯電させる帯電手段(コロナ帯電器)42(K、C、M、Y)と、この帯電手段42(K、C、M、Y)によって一様に帯電させられた外周面を感光体ドラム41(K、C、M、Y)の回転に同期して順次ライン走査する光書き込みヘッド80(K、C、M、Y)とが設けられている。
また、光書き込みヘッド80(K、C、M、Y)で形成された静電潜像に現像剤であるトナーを付与して可視像(トナー像)とする現像装置44(K、C、M、Y)と、現像装置44(K、C、M、Y)で現像されたトナー像を一次転写対象である中間転写ベルト90に順次転写する転写手段としての一次転写ローラー45(K、C、M、Y)とが設けられている。また、転写された後に感光体ドラム41(K、C、M、Y)の表面に残留しているトナーを除去するクリーニング手段としてのクリーニング装置46(K、C、M、Y)が設けられている。
各光書き込みヘッド80(K、C、M、Y)は、発光画素(発光素子10)の配列方向(X方向)が感光体ドラム41(K、C、M、Y)の回転軸に平行となるように設置されている。そして、各光書き込みヘッド80(K、C、M、Y)の発光エネルギーピーク波長と、感光体ドラム41(K、C、M、Y)の感度ピーク波長とが略一致するように設定されている。
現像装置44(K、C、M、Y)は、例えば、現像剤として非磁性一成分トナーを用いる。そして、その一成分現像剤を例えば供給ローラーで現像ローラーへ搬送し、現像ローラー表面に付着した現像剤の膜厚を規制ブレードで規制し、その現像ローラを感光体ドラム41(K、C、M、Y)に接触させあるいは押圧せしめることにより、感光体ドラム41(K、C、M、Y)の電位レベルに応じて現像剤を付着させ、トナー像として現像するものである。
このような4色の単色トナー像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼンタ、イエローの各トナー像は、一次転写ローラー45(K、C、M、Y)に印加される一次転写バイアスによって中間転写ベルト90上に順次一次転写される。そして、中間転写ベルト90上で順次重ね合わされてフルカラーとなったトナー像は、二次転写ローラー66において用紙等の記録媒体Pに二次転写され、さらに定着部である定着ローラー対61を通ることで記録媒体P上に定着される。その後、排紙ローラー対62によって装置上部に形成された排紙トレイ68上に排出される。
なお、図12中の符号63は多数枚の記録媒体Pが積層保持されている給紙カセット、符号64は給紙カセット63から記録媒体Pを一枚ずつ給送するピックアップローラー、符号65は二次転写ローラー66の二次転写部への記録媒体Pの供給タイミングを規定するゲートローラー対、符号67は二次転写後に中間転写ベルト90の表面に残留しているトナーを除去するクリーニング手段としてのクリーニングブレードである。
このように画像形成装置100には、図11に示した発光装置30を有する光書き込みヘッド80が露光手段として備えられている。したがって、1200dpiの密度で配置された発光素子10の発光特性(輝度特性など)が安定しているため、露光後に高精細でくっきりとした画像を得ることができる。なお、光書き込みヘッド80を備えた画像形成装置100は上記実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
(変形例1)上記実施形態1の発光装置30において、発光素子10の配置および膜形成領域Eの構成は、これに限定されない。図13は変形例の発光装置の構成を示す概略平面図である。例えば、図13に示すように、変形例の発光装置30Eは、X方向において等間隔に配置された複数の発光素子10からなる発光素子列をX方向にずらすことなく、Y方向に複数行(図中では3行)有する。このように配列した発光素子10を選択的に駆動すれば、千鳥状に配列した場合と同様に感光体ドラムを感光させることができる。
膜形成領域Eは、Y方向に沿って配列する3個の発光素子10をそれぞれに含む3つの素子区画部13a,13b,13cと、素子区画部13a,13b,13cに繋がると共に両側に設けられた液溜り部12a,12bとを有する。
すなわち、発光素子10の配列は千鳥状に限定されない。また、前述したように液溜り部12に複数の素子区画部13を繋ぐ構成としてもよい。さらに、素子区画部13に含まれる発光素子10は少なくとも1個でよく、複数とすることが機能層(特に発光層4)の膜厚を平準化する点で好ましい。
(変形例2)上記実施形態1の発光装置30において、発光素子10の構成は、これに限定されない。例えば、機能層は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層などの複数層の有機膜からなる構成としてよい。また、機能層のすべてを液体プロセスで形成せずともよく、少なくとも発光層4を液体プロセスで形成する構成であれば、上記実施形態1の発光装置30(30A,30B,30C,30D)およびその製造方法を適用することができる。
(変形例3)上記実施形態1の発光装置30(30A,30B,30C,30D)を適用する電気光学装置は、光書き込みヘッド80に限定されない。例えば、単色の発光素子10を複数備えた照明装置、表示装置等にも適用することができる。
(変形例4)上記実施形態2の電気光学装置としての発光装置30(30A,30B,30C,30D)を備えた電子機器は、画像形成装置100に限定されない。例えば、単色の発光素子10を複数備えた表示装置を搭載した情報処理端末装置等にも適用することができる。
また、液体プロセスで形成される電気光学素子は発光素子に限定されず、例えば光感応性の半導体素子により構成される受光素子としてもよい。そして、複数の受光素子が一定の方向に多数千鳥状に配列した電気光学装置としての受光ヘッドとする。該受光ヘッドを搭載する電子機器としては、例えば、原稿に照射された光の反射光を該受光ヘッドにより読み取る画像読み取り装置が挙げられる。
1…基板としての素子基板、10…電気光学素子としての発光素子、10A,10B…素子列としての発光素子列、11…隔壁部、11a…仕切り部、11b…仕切り部の端部、12…液溜り部、13…素子区画部、30,30A,30B,30C,30D,30E…電気光学装置としての発光装置、80…光書き込みヘッド、100…電子機器としての画像形成装置、a…液溜り部の幅、b…素子区画部の幅、E…膜形成領域。

Claims (12)

  1. 基板上において少なくとも第1の方向に配列した複数の電気光学素子と、
    前記複数の電気光学素子のうちの少なくとも1つの電気光学素子を含む膜形成領域を1つの単位として区画すると共に、前記複数の電気光学素子を複数の前記単位に区画する隔壁部とを備え、
    前記少なくとも1つの電気光学素子を構成する少なくとも1つの膜が液体プロセスを用いて前記膜形成領域に形成され、
    前記膜形成領域は、前記少なくとも1つの電気光学素子が設けられた素子区画部と、前記素子区画部よりも大きな平面積を有し前記素子区画部に繋がる液溜り部とを有し、
    前記素子区画部は、前記第1の方向において一定の幅を有し、前記第1の方向における前記液溜り部の幅よりも前記一定の幅が小さいことを特徴とする電気光学装置。
  2. 1つの前記液溜り部に対して複数の前記素子区画部が繋がっていることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
  3. 前記隔壁部は、前記複数の前記素子区画部の間を仕切る仕切り部を有し、
    前記仕切り部の少なくとも前記液溜り部側の端部の幅が、前記端部を除く前記仕切り部の幅よりも広いことを特徴とする請求項1または2に記載の電気光学装置。
  4. 前記素子区画部の前記第1の方向と交差する方向における両側に前記液溜り部が設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の電気光学装置。
  5. 前記第1の方向に隣り合う少なくとも2つの前記膜形成領域は、前記素子区画部の前記両側に設けられた前記液溜り部のうちの一方を共有し、共有する前記液溜り部を介して前記素子区画部同士が繋がっていることを特徴とする請求項4に記載の電気光学装置。
  6. 前記第1の方向に隣り合うすべての前記膜形成領域は、前記素子区画部の前記両側に設けられた前記液溜り部のうちの一方を互いに共有していることを特徴とする請求項5に記載の電気光学装置。
  7. 前記素子区画部は、前記電気光学素子が前記第1の方向と交差する方向に配列した素子列を1列または2列有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電気光学装置。
  8. 前記素子列は、前記電気光学素子の配列方向に沿って設けられた前記隔壁部または前記仕切り部に対して一定の距離をおいて設けられていることを特徴とする請求項7に記載の電気光学装置。
  9. 前記電気光学素子が発光素子であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電気光学装置。
  10. 請求項9に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする光書き込みヘッド。
  11. 請求項10の光書き込みヘッドを備えたことを特徴とする画像形成装置。
  12. 請求項1乃至9のいずれか一項に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。
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