JP2010181569A - 中間転写体、転写装置及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】厚み方向に複数の層を有する中間転写体において、弾性層17と、弾性層17の転写面側(トナー担持側)に設けられた表層18とを有し、表層18は、ヤング率が3000Mpa以上であって且つ引張伸び率が10%以上である。このように規定することで、転写効率もよく、かつ耐久性(クラック抑制)を兼ね備えた中間転写体とすることができる。
【選択図】図1
Description
また、クリーニングブレードによるクリーニング性の向上や転写効率の向上を目的として、ゴム層の転写面側に表層(表面層)を設けて硬度を大きくすることが行われている。
表層の硬度を大きくすると、トナーとベルトとの接触面積を小さくすることができ、すなわちトナーとベルトとの付着力(ファンデルワールス力)を小さくすることができ、転写効率を上げることができる。また、クリーニングブレードとのタック性を弱くでき、クリーニング性の向上を図ることができる。
特許文献5では、亀裂発生を防止すべく、表面層のバインダーの破断伸びを150%以上に規定している。
このように、従来においては表面層の亀裂発生の弊害を考慮してその硬度を小さくせざるを得ない現状にある。
微視的に見た場合、どの転写紙においても表面にはある程度の凹凸が存在するが、ここでの「凹凸」はその程度が大きいものを指す。
このため、凹凸のある転写材は使用できず、転写材の使用範囲(自由度)が狭められていた。
特許文献3には2層構造のベルトが開示されているが、弾性層に対応する第1の層が熱可塑性樹脂で形成されており、凹凸に対する基本的な追従性を得ることができない。
本発明者らによる実験・考察の結果、表層の硬度を大きくしても引張り伸び率が大きいものであればクラックが入らず、高転写効率を達成できることが確認された。本発明はこの実験事実に基づいて創案されたものである。
具体的には、請求項1記載の発明では、厚み方向に複数の層を有する中間転写体であって、弾性層と、該弾性層の転写面側に設けられた表層とを有し、前記表層は、ヤング率が3000Mpa以上であって且つ引張伸び率が10%以上であることを特徴とする。
請求項3記載の発明では、請求項2記載の中間転写体において、前記表層の純水接触角が80°〜100°であることを特徴とする。
請求項4記載の発明では、請求項2又は3記載の中間転写体において、前記表層の表面抵抗率が109以上1014以下であることを特徴とする。
請求項6記載の発明では、転写装置において、請求項1乃至5の何れか1に記載の中間転写体を用いて、転写材にトナー像を転写することを特徴とする。
請求項7記載の発明では、画像形成装置において、請求項6記載の転写装置を有することを特徴とする。
ベルト表層の純水に対する接触角を80°〜100°の間に規定することで転写効率を高いところで維持することができ、文字の中抜けを発生させずに画像品質を確保できる。
表層の表面抵抗率を109〜1014にすることで凹凸紙(さざなみ紙)への転写性を確保しつつ、ドット再現性も得ることができる。
表層材料に芳香族ポリイミドを使用することでヤング率3000Mpa、引張伸び10%以上を満たすことができ、かつ、クリーニングブレードとのタック性を弱くできて良好なクリーニング性も確保できる。
まず、図3に基づいて、本実施形態に係る画像形成装置としてのタンデム型のフルカラーレーザプリンタの概要を説明する。
ベルト移動方向(矢印N方向)に沿って、像担持体としての感光体ドラム1K、1Y、1M、1Cが配置されている。Kはブラック、Yはイエロー、Mはマゼンタ、Cはシアンの色に対応している。各感光体ドラム1の周囲にはその回転方向順に、帯電ローラ2、現像手段3、図示しないクリーニング手段等が配置され、これらは図示しない装置本体に対して着脱自在なプロセスカートリッジ4に一体に収容されている。
各感光体ドラム1は帯電ローラ2により帯電され、図示しない露光手段により書き込みがなされて静電潜像が形成される。
静電潜像は現像手段により現像されて可視化され、転写装置5の中間転写ベルト6上にKYMCの順で色重ねされる。
中間転写ベルト6上の重ね合わせトナー画像は、2次転写手段としての2時転写ローラ10により転写材ないし記録媒体としての転写紙11に一括転写される。
給紙トレイ12に収容された転写紙11は、給紙ローラ13により1枚ずつ給紙され、レジストローラ対14により所定のタイミングで2次転写部位へ搬送される。
重ね合わせトナー画像を一括転写された転写紙11は定着手段15へ送られ、加熱・加圧によりトナー像を定着される。その後、図示しない排紙トレイへ排出される。
2次転写部位を通過した中間転写ベルト6の表面は、クリーニングブレード16aを有するクリーニング手段16により転写残トナー等を除去・清掃される。
[実施例A]
(実施例1)
表層18は、膜厚1μmでヤング率3000Mpa、引張伸び率が10%の物性とした。弾性層17はニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴム、ウレタン、エピクロルヒドリンゴム、フッ素ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム等が使用できるが、JISA硬度で10度〜50度が好ましい。また、弾性層17の膜厚は50μm〜500μmが良く、100μm〜200μmがより好ましい。ここでは150μmとした。
表層18に関しては、ポリアミドイミドを使用した。ベルトの作製については、ビーズミル(壽工業社製)でNMP(N−メチルピロリドン)溶媒にカーボンブラックを分散させた。カーボンブラックはケチェンブラックやファーネスブラック、アセチレンブラックなどを適宜用いてよい。
この時の抵抗率は表面抵抗率が8乗台であり、体積抵抗率は6乗台であった。抵抗率は油化電子製のハイレスタを用いプローブにはURSを使用した。表層と弾性層の間により接着性を高めるために、プライマー処理や中間層を設けてもよく、中間層の場合は導電性を付与した方がよく、電子導電剤やイオン伝導剤のどちらでも構わない。また、コロナ処理やプラズマ処理による表面改質でもかまわない。この時、表層の膜厚は1μm、ヤング率は3000Mpaで引張伸び率は10%とした。ヤング率(引張弾性率)および引張伸び率はJIS K7127に沿って行った。
(実施例2)
実施例1のポリアミドイミド前駆体の配合を変更し、ベルトを試作したところ引張伸び率18%であった。ヤング率は3100Mpa
(実施例3)
膜厚5μmでヤング率3000Mpa、引張伸び率が10%の物性とした。
(実施例4)
膜厚10μmでヤング率3000Mpa、引張伸び率が10%の物性とした。
導電処理を施されたポリイミド基材の表面に上記実施例1の弾性層の成形を同様に行った。すなわち、表層は設けていない。
(比較例2)
実施例1のポリイミド表層膜を作製する過程でスプレーコーティングをする際、膜厚11μmとなるように試作した。膜厚が10μmを超えるサンプルである。
(比較例3)
実施例1のポリアミドイミド前駆体にコロイダルシリカ(スノーテックスPS 日産化学)を分散し、同様の工程を経て、引張伸び率を3%とした。引張伸び率が10%未満のサンプルである。
(比較例4)
実施例1のポリアミドイミド前駆体をよりポリアミドの率を多くし、同様の工程でベルトを試作し、引張強度を2500Mpaとした。ヤング率が3000Mpa未満のサンプルである。
上記画像形成装置を用い二層ベタ画像を凹凸性の大きい転写材のさざなみ紙(リコー社製)への転写を試みた結果、実施例1〜4では良好な画像を得ることができた。また、転写効率も良好な結果を得ることができた。転写効率の評価では転写材としてT6200(リコー社製)を用いた。結果を表1に示す。
一方、比較例1では表層がないため、転写効率が低下し、またクリーニング不良も発生したため、総合評価は×である。
比較例2では表層の膜厚が10μmを超えるため、二層ベタの転写性が若干悪くなり、転写効率や耐久性の観点では問題がないが、総合評価は△である。
ここで、表層の厚みについて考察すると、実施例1と比較例2との対比から、表層の厚みが10μmを超えると転写紙の凹凸への追従性が低下し、その結果二層ベタの転写性が低下するものと考えられる。このことから、凹凸に対するベルトの追従性は基本的には弾性層17によって担われるが、追従性の精度は最終的には表層18の厚みに左右され、凹凸に対する高い追従性(転写性)を得るためには表層18の厚みを10μm以下とする必要があることが分かる。
比較例3は引張伸び率が10%を下回るため、クラックが発生して耐久性に問題があり総合評価は×である。
比較例4では引張伸び率は10%よりも大きいが、ヤング率が3000MPaを下回るため、転写効率が低下し、総合評価は×である。
また表層の膜厚を10μm以下とすることで、凹凸紙に対しても転写性が向上することが分かった。
図2に示すように、弾性層17と表層18との2層からなる実施例1のベルトに基層20を加えたベルト構成とした。
基層20を設けることで弾性層17の経時的な張力低下による位置ずれ(色ずれ)を抑制することができ、色重ねが良くなる。
上記3層構成のベルトは、例えば、内型内面に導電剤が付与されたポリアミドイミド前駆体をディスペンサーにて塗布し段階をへて250℃で4時間熱硬化させシームレスポリアミドイミドベルト80μmを得た。
この時の表面抵抗率は、500V印加時で10秒後の値で5.0×1011であった。測定器は三菱油化電子製のハイレスタ(URSプローブ)を用いた。このシームレスポリアミドイミドベルトを基層とし外型に嵌め、ディスペンサーにて導電剤が付与されたシリコーンゴムを塗布し熱硬化して弾性層を形成した。
次に表層の成形であるが、スプレーやディスペンサーにより弾性層表面に塗布し、ポリアミドイミドの表層を得る場合、弾性層が先に存在すると弾性層が熱劣化を起こしやすいので、感光性ポリイミド(東レ社製)や化学的なイミド化をさせることが好ましいが、表層が1μm程度で弾性層が耐熱性のあるゴムの場合であれば、薄膜であるのでそのまま熱硬化しても構わない。ここでは、熱硬化により作製した。硬化に際して、段階制御を行い(120℃30分、180℃30分、250℃60分)、表層の膜厚は1μmを得た。
このベルトを用いて[実施例A]と同様の画像評価を行ったが、基層がある場合は色ずれが良くなるがその他の品質は同様であった。
実施例1の構成において、表層の純水接触角(25℃)を制御した場合の結果を表2に示す。
表層の純水接触角は、硬化性のシリコーン添加剤を導電剤が分散されたポリアミドイミド前駆体に添加して得た。実施例5は0.05%(固形分濃度)添加し、実施例6は0.075%、実施例7は0.1%添加した。
比較例5はコロナ処理にて親水性を増したもので、比較例6はシリコーン添加剤の添加を0.15%にした場合である。純水に対する接触角の測定は協和界面科学社製のDM500を用いた。
表2から、ベルト表層の純水に対する接触角を80°〜100°の間に規定することで転写効率を高いところで維持することができ、文字の中抜けを発生させずに画像品質を確保できることが分かる。
実施例1の構成において、表層の抵抗水準を振っての画像評価結果を表3に示す。転写性は凹部のドット再現性を見た。転写性は600dpiでのハーフトーン画像を顕微鏡(×50倍)で拡大して評価した。
表3から、表層18の表面抵抗率を109〜1014にすることで凹凸紙(さざなみ紙)への転写性を確保しつつ、ドット再現性も得ることができることが分かる。
表層材料に芳香族ポリイミドを有する材料を使用して中間転写ベルトを実施例1と同様に試作した。ここで芳香族ポリイミドはピロメリット酸二無水物と、4,4'−ジアミノジフェニルエーテルを有機溶媒中にて重合したものである。
比較例として、ポリウレタンを表層に用いて試作を試みたがヤング率が3000Mpaを下回り、請求項1の物性を満足するものが得られなかった。
6 中間転写体としての中間転写ベルト
17 弾性層
18 表層
Claims (7)
- 厚み方向に複数の層を有する中間転写体であって、弾性層と、該弾性層の転写面側に設けられた表層とを有し、前記表層は、ヤング率が3000Mpa以上であって且つ引張伸び率が10%以上であることを特徴とする中間転写体。
- 請求項1記載の中間転写体において、
前記表層の膜厚は10μm以下であることを特徴とする中間転写体。 - 請求項2記載の中間転写体において、
前記表層の純水接触角が80°〜100°であることを特徴とする中間転写体。 - 請求項2又は3記載の中間転写体において、
前記表層の表面抵抗率が109以上1014以下であることを特徴とする中間転写体。 - 請求項1乃至4の何れか1に記載の中間転写体において、
前記表層は少なくとも芳香族ポリイミドを含むことを特徴とする中間転写体。 - 請求項1乃至5の何れか1に記載の中間転写体を用いて、転写材にトナー像を転写する転写装置。
- 請求項6記載の転写装置を有する画像形成装置。
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