JP2010179844A - 車両用操舵制御装置及び車両用操舵制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】車輪の転舵角が、車輪の横力が最大となる転舵角よりも大きくなる過操舵状態であるとき、前輪舵角を中立方向へ戻すための目標前輪舵角補正量Δθtを算出する。そして、目標前輪舵角補正量Δθtに基づいて、前輪転舵アクチュエータ7を駆動制御して前輪の転舵角制御を行う。このとき、目標前輪舵角補正量Δθtに基づいて目標操舵反力Fsを算出し、算出した目標操舵反力Fsをステアリングに付与する。この目標操舵反力Fsは、路面μ推定値Myuに基づいて補正する。
【選択図】 図2
Description
このような転舵角制御装置として、スリップ角が車輪の横力が最大となるスリップ角基準値を超えたとき、その差分だけ車輪の舵角を中立に戻すというものがある(例えば、特許文献1参照)。これにより、車両が大きなオーバステア状態やアンダステア状態となるのを防止している。
そこで、本発明は、運転者に適切な操舵を促すことができる車両用操舵制御装置及び車両用操舵制御方法を提供することを課題としている。
また、上記転舵角制御による前輪の転舵角補正量に基づいて、ステアリングに操舵反力を付与する。そのため、運転者は車両の転舵角制御状態を認知することができ、適切な操舵を行うことができる。さらに、上記操舵反力は路面摩擦係数に基づいて補正するので、必要以上に大きな操舵反力を付与してしまうことがなく、運転者の違和感を低減することができる。
《第1の実施の形態》
《構成》
図1は、本発明に係る車両制御装置の実施形態を示す全体構成図である。
この図1に示すように、コラムシャフト13は、ステアリングホイール10と、前輪11L,11Rを転舵する前輪転舵機構12とを連結する。そして、そのコラムシャフト13に操舵角センサ1と前輪転舵アクチュエータ7と操舵反力アクチュエータ9を設ける。
後輪転舵コントローラ5は、転舵制御コントローラ3で生成した目標後輪舵角と、後輪転舵角センサ17で検出した実際の後輪転舵角との偏差を無くすような舵角指令値を算出し、算出した舵角指令値を後輪転舵アクチュエータ8に出力する。
操舵反力コントローラ6は、転舵制御コントローラ3で生成した目標操舵反力に基づいて操舵反力指令値を算出し、算出した操舵反力指令値を操舵反力アクチュエータ9に出力する。
転舵制御コントローラ3は、操舵角センサ1で検出した操舵角と、車速センサ2で検出した車体速と、横Gセンサ19で検出した横加速度とに応じて、目標前輪舵角と目標後輪舵角とを生成する。そして、転舵制御コントローラ3は、目標前輪舵角を前輪転舵コントローラ4へ出力し、目標後輪舵角を後輪転舵コントローラ5へ出力する。さらに、転舵制御コントローラ3は、操舵角センサ1で検出した操舵角と、車速センサ2で検出した車体速と、横Gセンサ19で検出した横加速度とに応じて、目標操舵反力を生成する。そして、転舵制御コントローラ3は、目標操舵反力を操舵反力コントローラ6へ出力する。
図2は、転舵制御コントローラ3の制御ブロック図である。
転舵制御コントローラ3は、目標値生成部31と、路面μ推定部32と、目標値補正部33と、目標出力値生成部34と、操舵反力指令値生成部35と、を備える。
目標値生成部31は、操舵角センサ1からの操舵角θと車速センサ2からの車体速Vとに基づいて、2輪モデルを用いて車両パラメータを演算し、車両の目標ヨーレートφ´tと目標横速度Vytとを生成する。生成した目標ヨーレートφ´tは、路面μ推定部32及び目標値補正部33へ出力する。また、生成した目標横速度Vytは、目標値補正部33へ出力する。
図3は、目標値生成部31の構成を示す制御ブロック図である。
目標値生成部31は、上記車両パラメータを演算する車両モデル演算部311と、目標ヨーレートφ´t及び目標横速度Vytを演算する目標値演算部312とを備える。
(車両パラメータの算出)
一般に、2輪モデルを仮定すると、車両のヨー角加速度φ″と横加速度Vy´とは、下記(1)式および(2)式で表される。
φ″=a11φ´+a12Vy+bf1θ+br1δ ………(1)
Vy´=a21φ´+a22Vy+bf2θ+br2δ ………(2)
a11=−2(Kf・Lf 2+Kr・Lr 2)/(Iz・Vx),
a12=−2(Kf・Lf−Kr・Lr)/(Iz・Vx),
a21={−M・Vx 2−2(Kf・Lf−Kr・Lr)}/(M・Vx),
a22=−2(Kf+Kr)/(M・Vx) ………(3)
bf1=2Kf・Lf/(Iz・N),
bf2=2Kf/M・N,
br1=−2Kr・Lr/Iz,
br2=2Kr/M ………(4)
φ´:ヨーレート,
Vy:横速度,
Vx:前後速度,
θ:前輪転舵角(運転者操舵角),
δ:後輪転舵角,
Iz:車両慣性モーメント
M:車両重量
Lf:前軸〜重心点距離,
Lr:重心点〜後軸距離,
N:ギア比,
Kf:前輪コーナリングパワー,
Kr:後輪コーナリングパワー
φ´(s)/θ(s)=Hf(s)/G(s)
={bf1・s+(a12・bf2−a22・bf1)}/G(s) ………(5)
Vy(s)/θ(s)={bf2・s+(a21・bf1−a11・bf2)}/G(s) ………(6)
φ´(s)={ωφ´(V)2 ・(Tφ´(V)s+gφ´(V))}・θ(s)
/{s2+2ζφ´(V)・ωφ´(V)・s+ωφ´(V)2} ………(7)
ここで、
gφ´(V)=(a12・bf2−a22・bf1)/(a11・a22−a12・a21),
ωφ´(V)2=a11・a22−a12・a21,
2ζφ´(V)・ωφ´(V)=−a11−a22,
Tφ´(V)=bf1/(a11・a22−a12・a21)
である。
V(s)={ωVy(V)2 ・(TVy(V)s+gVy(V))}・θ(s)
/{s2+2ζVy(V)・ωVy(V)・s+ωVy(V)2} ………(8)
ここで、
gVy(V)=(a21・bf1−a11・bf2)/(a11・a22−a12・a21),
ωVy(V)2=a11・a22−a12・a21,
2ζVy(V)・ωVy(V)=−a11−a22,
TVy(V)=bf2/(a11・a22−a12・a21)
である。
次に、目標値演算部312で実行される目標ヨーレートφ´t及び目標横速度Vytの算出方法について、具体的に説明する。
(目標ヨーレートの算出)
先ず、目標ヨーレートの算出方法について説明する。なお、以下の説明において、「t」の添え字はパラメータが目標値であることを示すものである。
上記(7)式より、目標ヨー角加速度φ″t(s)は次式で表される。
φ″t(s)=−2ζφ´t(V)・ωφ´t(V)・φ´t(s)
+ωφ´t(V)2・Tφ´(V)・θ(s)
+(1/s)ωφ´t(V)2・(gφ´t(V)・θ(s)−φ´t(s)) ………(9)
gφ´t(V)=gφ´(V)×yrate_gain_map,
ωφ´t(V)=ωφ´(V)×yrate_omegn_map,
ζφ´t(V)=ζφ´(V)×yrate_zeta_map,
Tφ´t(V)=Tφ´(V)×yrate_zero_map ………(10)
但し、yrate_gain_map,yrate_omegn_map,yrate_zeta_map,yrate_zero_mapは、チューニングパラメータである。
以上の結果から、目標ヨーレートφ´t(s)は、次式で表される。
φ´t(s)=(1/s)・φ″t(s) ………(11)
次に、目標横速度の算出方法について説明する。
上記(8)式より、目標横加速度Vy´t(s)は次式で表される。
Vy´t(s)=−2ζVyt(V)・ωVyt(V)・Vyt(s)
+ωVyt(V)2・TVy(V)・θ(s)
+(1/s)ωVyt(V)2・(gVyt(V)・θ(s)−Vyt(s)) ………(12)
gVyt(V)=gVy(V)×vy_gain_map,
ωVyt(V)=ωVy(V)×vy_omegn_map,
ζVyt(V)=ζVy(V)×vy_zeta_map,
TVyt(V)=TVy(V)×vy_zero_map ………(13)
但し、vy_gain_map,vy_omegn_map,vy_zeta_map,vy_zero_mapは、チューニングパラメータである。
以上の結果から、目標横速度Vyt(s)は、次式で表される。
Vyt(s)=(1/s)・Vy´t(s) ………(14)
図4は、路面μ推定部32で実行する路面μ推定処理手順を示すフローチャートである。
先ず、ステップS1で、路面μ推定部32は、以下の式をもとに目標横加速度YG_comを算出し、ステップS2に移行する。
YG_com=φ´t・Vx ………(15)
ステップS4では、路面μ推定部32は、差|YG_com|−|YG|が所定値ΔYG2(<ΔYG1)以下であるか否かを判定する。そして、|YG_com|−|YG|≦ΔYG2である場合にはステップS5に移行し、|YG_com|−|YG|>ΔYG2である場合には後述するステップS6に移行する。
ステップS6では、路面μ推定部32は、前記ステップS1で算出した目標横加速度YG_comの絶対値が所定値YG0以下であるか否かを判定する。そして、|YG_com|≦YG0である場合には前記ステップS5に移行し、|YG_com|>YG0である場合にはステップS7に移行する。
Myu=YG ………(16)
一方、前記ステップS7でflg_myu=0と判定した場合には、ステップS9に移行して、次式に路面μ推定値Myuを算出してから路面μ推定処理を終了する。
Myu=Myu0 ………(17)
ここで、Myu0はデフォルト値(例えば、10)である。
目標値補正部33は、目標ヨーレート補正演算部331と、後輪舵角補正演算部332と、前輪舵角補正演算部333と、目標横速度補正演算部334とを備える。
目標ヨーレート補正演算部331は、目標ヨーレートφ´tと路面μ推定値Myuとを入力し、補正後目標ヨーレートφ0´tを算出する。
この目標ヨーレート補正演算部331では、先ず、目標ヨーレートの最大値を補正する。最大値補正後の目標ヨーレートφ1´tは、次式で表される。
φ1´t=φ´t・Myu/YG_com ………(18)
これにより、ドライバ操舵角が増加しても目標ヨーレートは制限される。つまり、前輪の転舵角が、前輪の横力が最大となる転舵角より大きくなるとき、過操舵状態であると判断して目標ヨーレートを制限することになる。本実施形態では、目標ヨーレートφ´tは操舵角θに基づいて算出している。よって、上記最大値補正は、操舵角θが、前輪の横力が最大となる基準操舵角より大きくなるときに、過操舵状態であると判断しているのと等価である。
なお、ここでは、路面μ推定値Myu=横加速度YGの値を用いて目標ヨーレートの最大値を補正している。これに代えて、横加速度GY、ヨーレートγおよび車速uを用いて車両のスリップ角βを計算する(β=∫(GY/u−γ)dt)などの方法で横力の限界値を求めることもできる。
低μ路面であるほど、車両がオーバステア状態になった後に操舵角を戻した場合、安定状態に戻るのに時間がかかる。そのため、低μ路面であるほど、限界近傍より手前に目標ヨーレートを制御する。
すなわち、路面μ推定値Myuに基づいて、図6に示す目標ヨーレート低減量算出マップを参照し、目標ヨーレート低減量ΔφT´tを算出する。この目標ヨーレート低減量ΔφT´tは、前記(18)式で算出した横力が最大となる目標ヨーレートφ0´tから更に目標ヨーレート値を低減する量である。
算出した目標ヨーレート低減量ΔφT´tにより低減補正を施した目標ヨーレートφ2´tは、次式により表される。
φ2´t=φ1´t−ΔφT´t ………(19)
上記の目標ヨーレート低減補正により算出した目標ヨーレートφ2´tと、横力が最大となる目標ヨーレートφ1´tとには差が生じる。この間で操舵角に応じて目標ヨーレートを増加させるゲインも、路面μ推定値Myuにより変更する。
すなわち、路面μ推定値Myuに基づいて、図7に示すゲイン補正値算出マップを参照し、目標ヨーレートのゲイン補正値GΔφB´tを算出する。
ここで、ゲイン補正値算出マップは、横軸が路面μ推定値Myu、縦軸が目標ヨーレートのゲイン補正値GΔφB´tである。当該マップは、路面μ推定値Myuが低いほど目標ヨーレートのゲイン補正値GΔφB´tを小さく算出するように設定する。これにより、操舵角の変化に対するヨーレートの変化代が小さくなり、不安定になりやすい低μ路面で安定性を損なうことなくコントロール性を向上することができる。
φ0´t=φ1´t+(φ1´t−φ2´t)・GΔφB´t ………(20)
このように、現在の補正後目標ヨーレートφ2´tと最大値補正後の目標ヨーレートφ1´tとの差分に応じて目標ヨーレート増加ゲイン補正を施す。これにより、操舵角に応じて徐々に補正後目標ヨーレート(≒前輪タイヤ切れ角)が増加し、車両のコントロール性が向上する。
後輪舵角補正演算部332は、路面μ推定値Myuを入力し、目標後輪舵角の補正演算(目標後輪舵角補正量Δδtの算出)を行う。
路面μが低い路面では車両の安定性が低くなる。そのため、後輪舵角を同相側へ増加することにより安定性を向上するようにする。
Δδt=(δMAXt−δt)・GΔδSt・GΔδYGt ………(21)
ここで、GΔδStは、路面μ推定値Myuに基づいて算出する目標後輪舵角補正ゲインである。また、GΔδYGtは、横G偏差(=YG_com−Myu)に基づいて算出する目標後輪舵角補正ゲインである。また、差分(δMAXt−δt)は、後輪舵角を増加させることができる余裕量(転舵角補正量限界値)である。
目標後輪舵角補正ゲインGΔδYGtは、図9に示す目標後輪舵角補正ゲイン算出マップを参照して算出する。ここで、目標後輪舵角補正ゲインGΔδYGtの算出マップは、横G偏差が小さいほど目標後輪舵角補正ゲインGΔδYGtを大きく算出するように設定する。
上記(21)式により算出した目標後輪舵角補正量Δδtは、目標横速度補正演算部334及び操舵反力指令値生成部35に出力する。
先ず、車両パラメータを用いて、目標後輪舵角補正量Δδtによって変化するヨーレート変化量φ´Rtを算出する。次に、算出したヨーレート変化量φ´Rtと補正後目標ヨーレートφ0´tとから、前輪舵角補正演算用目標ヨーレートφ3´tを算出する。
φ3´t=φ0´t−φ´Rt ………(22)
φ3´t=a11φ3´t+a12Vy+bf1θ´t,
θ´t=(φ3´t−a11φ3´t−a12Vy)/bf1 ………(23)
また、操舵角θと車速Vとから求めた定常の目標前輪舵角θtと、前記目標前輪舵角補正値θ´tとの差分を、目標前輪舵角補正量Δθtとして算出する。
Δθt=θt−θ´t ………(24)
上記(23)式により算出した目標前輪舵角補正値θ´tは、目標横速度補正演算部334に出力する。また、上記(24)式により算出した目標前輪舵角補正量Δθtは、操舵反力指令値生成部35に出力する。
図2の目標出力値生成部34は、目標値補正部33で補正した補正後目標ヨーレートφ0´tと補正後目標横速度Vy0tとに基づいて、目標前輪舵角θt及び目標後輪舵角δtを算出する。
φ0″t=a11φ0´t+a12Vy0t+bf1θt+br1δt ………(25)
Vy0´t=a21φ0´t+a22Vy0t+bf2θt+br2δt ………(26)
θt=(br2(φ0″t−(a11φ0´t+a12Vy0t))−br1(Vy0´t−(a21φ0´t+a22Vy0t)))/(bf1・br2−bf2・br1) ………(27)
δt=(bf2(φ0″t−(a11φ0´t+a12Vy0t))−bf1(Vy0´t−(a21φ0´t+a22Vy0t)))/(bf1・br2−bf2・br1) ………(28)
操舵反力指令値生成部35は、目標前後輪舵角補正量Δθt,Δδtと、路面μ推定値Myuとを入力し、目標操舵反力Fsを算出する。
図10は、操舵反力指令値生成部35の構成を示す制御ブロック図である。
操舵反力指令値生成部35は、操舵反力指令値演算部351と、操舵反力補正部352とを備える。
操舵反力指令値演算部351は、目標前後輪舵角補正量Δθt,Δδtに基づいて、操舵反力(定常値)Fs0及び操舵反力(過渡値)Fs1を算出する。
先ずステップS11で、操舵反力指令値演算部351は、操舵角センサ1で検出した操舵角θを微分処理することにより、操舵角速度dθを算出する。
次に、ステップS12では、操舵反力指令値演算部351は、図12に示す前輪補正分定常反力算出マップを参照し、前輪補正分の定常反力Fsf0を算出する。
ここで、過渡反力基準値算出マップは、横軸が目標前輪舵角補正量Δθt、縦軸が過渡反力基準値Fsf1_bである。当該マップは、目標前輪舵角補正量Δθtが所定値ΔθTH1までの範囲では過渡反力基準値Fsf1_bを“0”に算出し、目標前輪舵角補正量Δθtが所定値ΔθTH2より大きい範囲では過渡反力基準値Fsf1_bを最大値Fsf1maxに算出するように設定する。さらに、当該マップは、目標前輪舵角補正量Δθtが所定値ΔθTH1以上ΔθTH2以下の範囲では、目標前輪舵角補正量Δθtが大きいほど過渡反力基準値Fsf1_bを“0”から最大値Fsf1maxまで比例的に大きく算出するように設定する。
ここで、操舵反力ゲイン算出マップは、横軸が操舵角速度|dθ|、縦軸が操舵反力ゲインGain_θfである。当該マップは、操舵角速度|dθ|が所定値dθTH1までの範囲では操舵反力ゲインGain_θfを“0”に算出し、操舵角速度|dθ|が所定値dθTH2より大きい範囲では操舵反力ゲインGain_θfを“1”に算出するように設定する。さらに、当該マップは、操舵角速度|dθ|が所定値dθTH1以上dθTH2以下の範囲では、操舵角速度|dθ|が大きいほど操舵反力ゲインGain_θfを“0”から“1”まで比例的に大きく算出するように設定する。
Fsf1=Fsf1_b・Gain_θf ………(29)
次に、ステップS16では、操舵反力指令値演算部351は、図15に示す後輪補正分定常反力算出マップを参照し、後輪補正分の定常反力Fsr0を算出する。
ここで、過渡反力基準値算出マップは、横軸が目標後輪舵角補正量Δδt、縦軸が過渡反力基準値Fsr1_bである。当該マップは、目標後輪舵角補正量Δδtが所定値ΔδTH1までの範囲では過渡反力基準値Fsr1_bを“0”に算出し、目標後輪舵角補正量Δδtが所定値ΔδTH2より大きい範囲では過渡反力基準値Fsr1_bを最大値Fsr1maxに算出するように設定する。さらに、当該マップは、目標後輪舵角補正量Δδtが所定値ΔδTH1以上ΔδTH2以下の範囲では、目標後輪舵角補正量Δδtが大きいほど過渡反力基準値Fsr1_bを“0”から最大値Fsr1maxまで比例的に大きく算出するように設定する。
ここで、操舵反力ゲイン算出マップは、横軸が操舵角速度|dθ|、縦軸が操舵反力ゲインGain_θrである。当該マップは、操舵角速度|dθ|が所定値dθTH1までの範囲では操舵反力ゲインGain_θrを“0”に算出し、操舵角速度|dθ|が所定値dθTH2より大きい範囲では操舵反力ゲインGain_θrを“1”に算出するように設定する。さらに、当該マップは、操舵角速度|dθ|が所定値dθTH1以上dθTH2以下の範囲では、操舵角速度|dθ|が大きいほど操舵反力ゲインGain_θrを“0”から“1”まで比例的に大きく算出するように設定する。
Fsr1=Fsr1_b・Gain_θr ………(30)
次に、ステップS20では、操舵反力指令値演算部351は、後輪飽和補正操舵反力Fsr0´を算出する。
ここでは、後輪補正分の定常反力Fsr0を、後輪飽和補正ゲインGΔδMtを用いて補正し、その結果を後輪飽和補正操舵反力Fsr0´とする。
ここで、後輪飽和補正ゲイン算出マップは、横軸が後輪飽和補正割合、縦軸が後輪飽和補正ゲインGΔδMtである。後輪飽和補正割合は、前述した後輪舵角補正演算部332で用いた目標後輪舵角補正ゲインGΔδStとGΔδYGtとの乗算値(GΔδSt・GΔδYGt)である。
そして、算出した後輪飽和補正ゲインGΔδMtを用いて、次式をもとに後輪飽和補正操舵反力Fsr0´を算出する。
Fsr0´=Fsr0・GΔδMt ………(31)
そして、ステップS21では、操舵反力指令値演算部351は、前後輪補正分の操舵反力を合算し、最終的な定常反力Fs0及び過渡反力Fs1を算出する。
Fs0=Fsf0+Fsr0´ ………(32)
また、過渡反力Fs1は、前記ステップS15で算出した前輪補正分の過渡反力Fsf1と、前記ステップS19で算出した後輪補正分の過渡反力Fsr1との加算値となる。
Fs1=Fsf1+Fsr1 ………(33)
図19は、操舵反力補正部352で実行する目標操舵反力演算処理手順を示すフローチャートである。
先ずステップS31で、操舵反力補正部352は、図20に示す路面μ依存ゲイン算出マップを参照し、路面μ依存ゲインGain_myuを算出する。
ステップS33では、操舵反力補正部352は、操舵角θを微分処理して求めた操舵角速度dθが正値であるか否かを判定する。そして、dθ>0であるときにはステップS34に移行し、dθ≦0であるときには後述するステップS35に移行する。
Fs=(Fs0+Fs1)・Gain_myu ………(34)
また、ステップS35では、操舵反力補正部352は、次式をもとに目標操舵反力Fsを算出してから目標操舵反力演算処理を終了する。
Fs=Fs0・Gain_myu ………(35)
ステップS37では、操舵反力補正部352は、次式をもとに目標操舵反力Fsを算出してから目標操舵反力演算処理を終了する。
Fs=−(Fs0+Fs1)・Gain_myu ………(36)
Fs=−Fs0・Gain_myu ………(37)
このように、運転者がステアリングホイール10を切り増し操作した場合、ステアリングホイール10を切り戻し操作した場合と比較して、過渡反力Fs1の分だけ目標操舵反力Fsを大きく算出する。
次に、本発明における第1の実施形態の動作について説明する。
今、運転者がステアリング操作を行って、車両がカーブを旋回走行しているものとする。このとき、操舵角センサ1で検出した操舵角θおよび車速センサ2で検出した車体速Vを図2の目標値生成部31に入力する。また、横Gセンサ19で検出した横加速度YGを路面μ推定部32に入力する。
これにより、実際のヨーレートやヨー角が過大となるのを防止し、車両がスピン状態に陥るのを防止することができる。
本実施形態では、上記転舵角制御による前後輪の舵角補正量に対応した操舵反力をステアリングホイール10に付与する。すなわち、操舵反力指令値生成部35は、目標前後輪舵角補正量Δθt,Δδtに基づいて、目標操舵反力Fsを算出する。
したがって、この過渡反力Fsf1に相当する操舵反力の大きさにより、運転者は前輪転舵角制御による制御状態を認知することができる。さらに、運転者が急な操舵を行っている場合には、運転者がさらに大きく操舵してしまうのを防止することができる。また、運転者が緩やかな操舵を行っている場合には、必要以上に大きな操舵反力を付与することなく、運転者の違和感を抑制することができる。
したがって、この定常反力Fsr0´に相当する操舵反力の大きさにより、運転者は後輪転舵角制御を行っていることを認知することができる。つまり、車両の不安定度合いを認知することができる。
さらに、過渡反力Fsr1に相当する操舵反力の大きさにより、運転者は後輪転舵角制御による制御状態を認知することができると共に、運転者がさらに大きく操舵してしまうのを防止することができる。
また、このとき付与する目標操舵反力Fsの大きさは、路面μ推定値Myuが低いほど大きく設定する。このように、路面μ推定値Myuに基づいて操舵反力を設定するので、運転者に違和感のない適切な操舵反力を付与することができる。
また、運転者がステアリングホイール10を切り戻し操作しており、θ>0且つdθ≦0であるものとする。この場合には、操舵反力補正部352は、図19のステップS32でYes、ステップS33でNoと判定する。そのため、ステップS35で前記(35)式をもとに目標操舵反力Fsを算出する。
また、図5の目標ヨーレート補正演算部331が過操舵判定手段を構成し、後輪舵角補正演算部332が後輪転舵角補正量算出手段を構成し、前輪舵角補正演算部333が前輪転舵角補正量算出手段を構成している。
さらに、図10の操舵反力指令値演算部351が操舵反力算出手段を構成し、操舵反力補正部352が操舵反力補正手段を構成している。
また、前輪転舵コントローラ4が前輪転舵制御手段を構成し、後輪転舵コントローラ5が後輪転舵制御手段を構成し、操舵反力コントローラ6が操舵反力制御手段を構成している。
(1)過操舵判定手段は、車輪の転舵角が、車輪の横力が最大となる転舵角よりも大きくなる過操舵状態であるか否かを判定する。前輪転舵角補正量算出手段は、過操舵判定手段で過操舵状態であると判定したとき、前輪の転舵角を中立方向へ戻すための転舵角補正量を算出する。前輪転舵制御手段は、前輪転舵角補正量算出手段で算出した前輪の転舵角補正量に基づいて、前輪操舵アクチュエータを駆動制御する。
また、転舵角制御による前輪の転舵角補正量に基づいて、ステアリングに操舵反力を付与する。そのため、運転者は車両の転舵角制御状態を認知することができ、適切な操舵を行うことができる。さらに、上記操舵反力を路面摩擦係数に基づいて補正するので、必要以上に大きな操舵反力を付与することがなく、運転者の違和感を低減することができる。
これにより、車輪の転舵角が、車輪の横力が最大となる転舵角よりも大きくなる状態を適正に検出することができる。
(3)前輪の転舵角に基づいて過操舵状態であるか否かを判定する。したがって、適正に前輪舵角を中立方向に戻すための転舵角制御を作動することができる。
これにより、前輪の転舵角補正量に加えて後輪の転舵角補正量に基づいて操舵反力を決定するので、運転者は後輪転舵角制御を含めた制御状態を認知することができる。
したがって、運転者が切り増し操舵を行っている場合には、運転者がさらに大きく操舵してしまうのを防止することができる。また、運転者が切り戻し操舵を行っている場合に操舵反力が大きくなるのを防止し、運転者の違和感を低減することができる。
(6)操舵反力算出手段は、前記転舵角補正量が大きいほど操舵反力を大きく算出する。したがって、運転者は操舵反力の大きさによって転舵角補正量を知ることができる。そのため、運転者は適切な操舵を行うことができる。
したがって、定常的にステアリングが重くなるのを防止することができる。また、過渡反力を設定することで定常反力を小さくすることができ、運転者の違和感を低減することができる。さらに、転舵角補正量が大きいほど過渡反力を大きく算出するので、運転者へ素早く反力の変動として伝達することができ、運転者が大きく操舵しすぎるのを防止することができる。
したがって、運転者は操舵反力の大きさによって後輪の転舵角制御量を知ることができる。そのため、車両の安定性向上のために後輪転舵角を同相側へ転舵する転舵角制御を行う場合には、操舵反力の大きさによって車両の不安定度合いを知ることができる。
このように、後輪転舵角が飽和状態に近づくほど大きな操舵反力を付与することで、後輪の転舵角補正量が限界(飽和)に達するのを抑制することができる。また、後輪の転舵角補正量が限界に達した際の運転者の違和感や車両挙動の急変を低減することができる。
したがって、運転者は、操舵反力の大きさによって車両の転舵角制御状態を知ることができる。このとき、路面摩擦係数に基づいてステアリングに付与する操舵反力を補正するので、運転者に違和感のない操舵反力を付与することができる。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
この第2の実施形態は、目標前後輪舵角補正量Δθt,Δδtが大きいほど、過渡反力Fs1を小さく設定するようにしたものである。
《構成》
第2の実施形態における転舵制御コントローラ3は、前述した第1の実施形態における転舵制御コントローラ3と同様の構成を有する。本実施形態では、操舵反力指令値演算部351で実行する操舵反力演算処理(図11)において、ステップS13及びS17の処理が異なる。
ここで、過渡反力基準値算出マップは、横軸が目標前輪舵角補正量Δθt、縦軸が過渡反力基準値Fsf1_bである。当該マップは、目標前輪舵角補正量Δθtが所定値ΔθTH1までの範囲では過渡反力基準値Fsf1_bを最大値Fsf1maxに算出し、目標前輪舵角補正量Δθtが所定値ΔθTH2より大きい範囲では過渡反力基準値Fsf1_bを“0”に算出するように設定する。さらに、当該マップは、目標前輪舵角補正量Δθtが所定値ΔθTH1以上ΔθTH2以下の範囲では、目標前輪舵角補正量Δθtが大きいほど過渡反力基準値Fsf1_bを最大値Fsf1max から“0”まで比例的に小さく算出するように設定する。
このように、操舵反力指令値演算部351は、操舵反力として、舵角補正量が大きいほど大きくなる定常反力Fs0と、舵角補正量が大きいほど小さくなる過渡反力Fs1とを算出する。
図2の目標値補正部33で目標前輪舵角補正量Δθt及び目標後輪舵角補正量Δδtを算出すると、これらに基づいて操舵反力指令値生成部35で目標操舵反力Fsを算出する。
このとき、操舵反力指令値生成部35の操舵反力指令値演算部351は、図11のステップS12で、目標前輪舵角補正量Δθtが大きいほど大きくなる前輪補正分の定常反力Fsf0を算出する。次に、ステップS13〜S15で、目標前輪舵角補正量Δθtが大きいほど小さくなる前輪補正分の過渡反力Fsf1を算出する。
また、ステップS16では、目標後輪舵角補正量Δδtが大きいほど大きくなる後輪補正分の定常反力Fsr0を算出する。また、ステップS17〜S19で、目標後輪舵角補正量Δδtが大きいほど小さくなる後輪補正分の過渡反力Fsr1を算出する。
したがって、操舵反力の定常項Fs0により、運転者に対して転舵角制御状態を適切に認知させることができる。また、操舵反力の過渡項Fs1により、過渡的な反力変動による違和感を低減しつつ、運転者がハンドルを大きく切り過ぎるのを防止することができる。
(12)操舵反力算出手段は、操舵反力として、定常的にステアリングに付与する定常反力と、運転者がステアリングホイールを切り増し操作しているときにステアリングに付与する過渡反力とを算出する。転舵角補正量が大きいほど定常反力を大きく算出すると共に、転舵角補正量が大きいほど過渡反力を小さく算出する。
これにより、運転者が切り増し操舵を行っている場合には、必要以上に大きな操舵反力を付与することなく、適切なドライバ操作を促すことができる。
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
この第3の実施形態は、路面μ推定値Myuが小さいほど目標操舵反力Fsを小さく設定するようにしたものである。
《構成》
第3の実施形態における転舵制御コントローラ3は、前述した第1及び第2の実施形態における転舵制御コントローラ3と同様の構成を有する。本実施形態では、操舵反力補正部352で実行する目標操舵反力演算処理(図19)において、ステップS31の処理が異なる。
ここで、路面μ依存ゲイン算出マップは、横軸が路面μ推定値Myu、縦軸が路面μ依存ゲインGain_myuである。当該マップは、路面μ推定値Myuが所定値μTH1までの範囲では路面μ依存ゲインGain_myuを一定値(<1)に算出し、路面μ推定値Myuが所定値μTH2より大きい範囲では路面μ依存ゲインGain_myuを“1”に算出するように設定する。さらに、当該マップは、路面μ推定値Myuが所定値μTH1以上μTH2以下の範囲では、路面μ推定値Myuが大きいほど路面μ依存ゲインGain_myuを上記一定値から“1”まで比例的に大きく算出するように設定する。
このように、操舵反力補正部352は、路面μ推定値Myuが低いほど目標操舵反力Fsを小さく算出する。
図10の操舵反力指令値演算部351で定常反力Fs0及び過渡反力Fs1を算出すると、これらに基づいて操舵反力補正部352で目標操舵反力Fsを算出する。
このとき、操舵反力補正部352は、図19のステップS31で、路面μ推定値Myuが低いほど小さくなる路面μ依存ゲインGain_myuを算出する。そのため、目標操舵反力Fsは、路面μ推定値Myuが低いほど小さく算出することになる。言い換えると、路面μ推定値Myuが高いほど、目標操舵反力Fsを大きく算出する。
高μ路面では限界が高いため、転舵角制御による補正量が小さくなる。したがって、定常項及び過渡項を大きくしないと運転者に制御状態を適切に伝えることができない。上記のように高μ路面であるほど目標操舵反力Fsを大きく設定することで、運転者に制御状態を適切に伝えることができる。
(13)操舵反力補正手段は、路面摩擦係数推定手段で推定した路面摩擦係数が低いほど、操舵反力算出手段で算出した操舵反力を減少補正する。したがって、高μ路面において、運転者に制御状態を適切に伝えることができる。
《第4の実施形態》
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
この第4の実施形態は、定常反力Fs0と過渡反力Fs1との優先度合を決定し、決定した優先度合に応じて目標操舵反力Fsを算出するようにしたものである。
第4の実施形態における転舵制御コントローラ3は、前述した第1〜第3の実施形態における転舵制御コントローラ3と同様の構成を有する。本実施形態では、操舵反力補正部352で実行する目標操舵反力演算処理が異なる。
図23は、第4の実施形態における操舵反力補正部352で実行する目標操舵反力演算処理手順を示すフローチャートである。
先ずステップS41で、操舵反力補正部352は、図24に示す優先度合算出マップを参照し、定常反力Fs0と過渡反力Fs1との優先度合Kを算出する。
ステップS43では、操舵反力補正部352は、操舵角θを微分処理して求めた操舵角速度dθが正値であるか否かを判定する。そして、dθ>0であるときにはステップS44に移行し、dθ≦0であるときには後述するステップS45に移行する。
Fs=K・Fs0+(1−K)・Fs1 ………(38)
また、ステップS45では、操舵反力補正部352は、次式をもとに目標操舵反力Fsを算出してから目標操舵反力演算処理を終了する。
Fs=K・Fs0 ………(39)
ステップS47では、操舵反力補正部352は、次式をもとに目標操舵反力Fsを算出してから目標操舵反力演算処理を終了する。
Fs=−K・Fs0−(1−K)・Fs1 ………(40)
Fs=−K・Fs0 ………(41)
このように、運転者がステアリングホイール10を切り増し操作した場合、ステアリングホイール10を切り戻し操作した場合と比較して、過渡反力Fs1の分だけ目標操舵反力Fsを大きく算出する。そして、過渡反力Fs1を付加する場合には、路面μ推定値Myuが低いほど過渡反力Fs1を優先して目標操舵反力Fsを算出する。
つまり、過渡反力Fs1は路面μ推定値Myuが低いほど大きく算出することになる。また、定常反力Fs0は、路面μ推定値Myuが低いほど小さく算出することになる。
図10の操舵反力指令値演算部351で定常反力Fs0及び過渡反力Fs1を算出すると、これらに基づいて操舵反力補正部352で目標操舵反力Fsを算出する。
このとき、操舵反力補正部352は、図23のステップS41で、路面μ推定値Myuに基づいて操舵反力の定常項と過渡項との優先度合Kを算出する。このとき、低μ路面(Myu<μTH3)であるものとすると、図24のマップを参照して優先度合K=0.2となる。そして、運転者が切り増し操舵を行っており、θ>0且つdθ>0であるものとすると、ステップS42でYes、ステップS43でYesと判定してステップS44に移行する。そのため、Fs=0.2×Fs0+0.8×Fs1となり、過渡反力Fs1を優先した目標操舵反力Fsを算出する。
一方、高μ路面である場合においては、操舵時の反力が必要以上に大きくなることなく、転舵角補正量を運転者へ伝えることができる。
なお、図23のステップS41が配分設定手段を構成している。
(14)操舵反力算出手段は、操舵反力として、定常的に前記ステアリングに付与する定常反力と、運転者がステアリングホイールを切り増し操作しているときに前記ステアリングに付与する過渡反力とを算出する。配分設定手段は、路面摩擦係数推定手段で推定した路面摩擦係数に基づいて、定常反力と過渡反力との配分を設定する。操舵反力補正手段は、配分設定手段で設定した配分に基づいて操舵反力を補正する。
したがって、路面μに応じて適切な操舵反力を算出することができる。
(15)配分設定手段は、前記路面摩擦係数推定手段で推定した路面摩擦係数が低いほど、前記過渡反力の配分を大きく設定する。
したがって、低μ路面においては、効果的に操舵のしすぎを防止することができる。また、高μ路面においては、操舵時の反力が必要以上に大きくなることなく、転舵角補正量を運転者へ伝えることができる。
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
この第5の実施形態は、前述した第4の実施形態において、路面μ推定値Myuが低いほど定常反力Fs0を優先して目標操舵反力Fsを算出するようにしたものである。
《構成》
第5の実施形態における転舵制御コントローラ3は、前述した第4の実施形態における転舵制御コントローラ3と同様の構成を有する。本実施形態では、操舵反力補正部352で実行する目標操舵反力演算処理(図23)において、ステップS41の処理が異なる。
このように、路面μ推定値Myuが低いほど定常反力Fs0を優先して目標操舵反力Fsを算出する。つまり、定常反力Fs0は、路面μ推定値Myuが低いほど大きく算出する。また、過渡反力Fs1は、路面μ推定路Myuが低いほど小さく算出する。
図10の操舵反力指令値演算部351で定常反力Fs0及び過渡反力Fs1を算出すると、これらに基づいて操舵反力補正部352で目標操舵反力Fsを算出する。
このとき、操舵反力補正部352は、図23のステップS41で、路面μ推定値Myuに基づいて操舵反力の定常項と過渡項との優先度合Kを算出する。このとき、低μ路面(Myu<μTH3)であるものとすると、図25のマップを参照して優先度合K=0.8となる。そして、運転者が切り増し操舵を行っており、θ>0且つdθ>0であるものとすると、ステップS42でYes、ステップS43でYesと判定してステップS44に移行する。そのため、Fs=0.8×Fs0+0.2×Fs1となり、定常反力Fs0を優先した操舵反力Fsを算出する。
これにより、操舵力が小さくなる低μ路面においては、適切な大きさの操舵反力によって運転者へ転舵角制御状態を伝えることができる。一方、高μ路面である場合においては、定常的に操舵反力が大きくなりすぎることなく、運転者の操舵のしすぎを防止することができる。
(16)配分設定手段は、前記路面摩擦係数推定手段で推定した路面摩擦係数が低いほど、前記定常反力の配分を大きく設定する。したがって、低μ路面においては、適切な大きさの操舵反力によって運転者へ転舵角制御状態を伝えることができる。また、高μ路面である場合においては、定常的に操舵反力が大きくなりすぎることなく、運転者の操舵のしすぎを防止することができる。
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。
この第6の実施形態は、目標後輪舵角補正量Δδtが大きいほど、後輪補正分の定常反力Fsr0を小さく算出するようにしたものである。
《構成》
第6の実施形態における転舵制御コントローラ3は、前述した第1〜第5の実施形態における転舵制御コントローラ3と同様の構成を有する。本実施形態では、操舵反力指令値演算部351で実行する操舵反力演算処理(図11)において、ステップS16の処理が異なる。
ステップS16では、操舵反力指令値演算部351は、図26に示す後輪補正分定常反力算出マップを参照し、後輪補正分の定常反力Fsr0を算出する。
このように、操舵反力指令値演算部351は、目標後輪舵角補正量Δδtが大きいほど小さくなる定常反力Fsr0を算出する。
図2の目標値補正部33で目標前輪舵角補正量Δθt及び目標後輪舵角補正量Δδtを算出すると、これらに基づいて操舵反力指令値生成部35で目標操舵反力Fsを算出する。
このとき、操舵反力指令値生成部35の操舵反力指令値演算部351は、図11のステップS12で、目標前輪舵角補正量Δθtが大きいほど大きくなる前輪補正分の定常反力Fsf0を算出する。次に、ステップS13〜S15で、目標前輪舵角補正量Δθtが大きいほど大きくなる前輪補正分の過渡反力Fsf1を算出する。
また、ステップS16では、目標後輪舵角補正量Δδtが大きいほど小さくなる後輪補正分の定常反力Fsr0を算出する。また、ステップS17〜S19で、目標後輪舵角補正量Δδtが大きいほど大きくなる後輪補正分の過渡反力Fsr1を算出する。
目標後輪舵角補正量Δδtが大きいほど、車両として安定性の向上が必要な状態である。したがって、目標後輪舵角補正量Δδtが大きいほど後輪補正分の定常反力Fsr0を小さく算出することで、運転者に対して早期にハンドルの切り戻しを促すことができる。
(17)操舵反力算出手段は、後輪転舵角補正量算出手段で算出した後輪の転舵角補正量に基づいて、後輪補正分の操舵反力として、定常的にステアリングに付与する後輪補正分定常反力と、運転者がステアリングホイールを切り増し操作しているときにステアリングに付与する後輪補正分過渡反力とを算出する。そして、後輪の転舵角補正量が大きいほど、後輪補正分定常反力を小さく算出する。
したがって、車両として安定性の向上が必要な場合には、操舵反力を小さくして、運転者に対して早期にハンドルの切り戻しを促すことができる。
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。
この第7の実施形態は、本発明を、後輪舵角制御機能を有していない車両制御装置に適用したものである。
《構成》
図27は、第7の実施形態における車両制御装置の全体構成図である。
この車両制御装置は、図1に示す車両制御装置から後輪舵角制御機能を削除したものである。すなわち、後輪転舵コントローラ5及び後輪転舵アクチュエータ8を有していない。
図28は、第7の実施形態における転舵制御コントローラ3の制御ブロック図である。
転舵制御コントローラ3は、図2に示す転舵制御コントローラ3と同様に、目標値生成部31と、路面μ推定部32と、目標値補正部33と、目標出力値生成部34と、操舵反力指令値生成部35と、を備えている。
この第7の実施形態における転舵制御コントローラ3は、目標値生成部31で、目標横速度Vytを算出しない点が前記第1〜第6の実施形態と異なる。また、目標値補正部33では、舵角補正量として目標前輪舵角補正値Δθtのみを算出し、目標後輪舵角補正量Δδtは算出しない。
これにより、前述した第1〜第6の実施形態と同様に、車輪の転舵角が、車輪の横力が最大となる転舵角よりも大きくなるときには、前輪舵角を中立方向へ戻すように転舵角制御を行うことができる。そのため、車両が大きなオーバステア状態やアンダステア状態となるのを防止することができる。
(18)車輪の転舵角が、車輪の横力が最大となる転舵角よりも大きくなる過操舵状態であるとき、前輪の転舵角を中立方向へ戻すための転舵角補正量に基づいて、前輪操舵アクチュエータを駆動制御して前輪操舵機構を駆動する。そして、前記転舵角補正量に対応する操舵反力を路面摩擦係数に基づいて補正し、補正した操舵反力をステアリングに付与するように操舵反力アクチュエータを駆動制御する。
したがって、運転者は、操舵反力の大きさによって車両の前輪転舵角制御状態を知ることができる。このとき、路面摩擦係数に基づいてステアリングに付与する操舵反力を補正するので、運転者に違和感のない操舵反力を付与することができる。
(1)上記第7の実施形態においては、目標前後輪舵角補正量Δθt,Δδtに基づいて目標操舵反力Fsを算出しているが、目標ヨーレートの補正量Δφ´t(=φ´t−φ0´t)に基づいて目標操舵反力Fsを算出することもできる。この場合にも、付与した操舵反力の大きさによって、運転者は車両の前輪転舵角制御状態を認知することができる。
(2)上記各実施形態においては、路面μ推定部32で、図4に示す路面μ推定処理により路面μ推定値Myuを求めている。これに代えて、駆動輪回転数と従動輪の回転数との差に基づいて、車両の駆動力を生じている車輪と従動状態の車輪との路面に対する滑り率の差がどの程度あるかを求め、これにより路面反力(路面摩擦力)を検出することもできる。
2 車速センサ
3 操舵制御コントローラ
4 前輪操舵コントローラ
5 後輪操舵コントローラ
6 操舵反力コントローラ
7 前輪操舵アクチュエータ
8 後輪操舵アクチュエータ
9 操舵反力アクチュエータ
10 ステアリングホイール
11 前輪
12 前輪操舵機構
14 後輪
15 後輪操舵機構
31 目標値生成部
32 路面μ推定部
33 目標値補正部
34 目標出力値生成部
35 操舵反力指令値生成部
331 目標ヨーレート補正演算部
332 後輪舵角補正演算部
333 前輪舵角補正演算部
334 目標横速度補正演算部
351 操舵反力指令値演算部
352 操舵反力補正部
Claims (17)
- 車輪の転舵角が、当該車輪の横力が最大となる転舵角よりも大きくなる過操舵状態であるか否かを判定する過操舵判定手段と、
前記過操舵判定手段で過操舵状態であると判定したとき、前輪の転舵角を中立方向へ戻すための転舵角補正量を算出する前輪転舵角補正量算出手段と、
前輪転舵機構を駆動する前輪転舵アクチュエータと、
前記前輪転舵角補正量算出手段で算出した前輪の転舵角補正量に基づいて、前記前輪転舵アクチュエータを駆動制御する前輪転舵制御手段と、
前記前輪転舵角補正量算出手段で算出した前輪の転舵角補正量に基づいて、ステアリングに付与する操舵反力を算出する操舵反力算出手段と、
路面摩擦係数を推定する路面摩擦係数推定手段と、
前記路面摩擦係数推定手段で推定した路面摩擦係数に基づいて、前記操舵反力算出手段で算出した操舵反力を補正する操舵反力補正手段と、
前記ステアリングに操舵反力を付与する操舵反力アクチュエータと、
前記操舵反力補正手段で補正した操舵反力を前記ステアリングに付与するように、前記操舵反力アクチュエータを駆動制御する操舵反力制御手段と、を備えることを特徴とする車両用操舵制御装置。 - 操舵角を検出する操舵角検出手段をさらに備え、
前記過操舵判定手段は、前記操舵角検出手段で検出した操舵角が、車輪の横力が最大となる操舵角より大きいとき、過操舵状態であると判定することを特徴とする請求項1に記載の車両用操舵制御装置。 - 前記車輪は、前輪であることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用操舵制御装置。
- 車両の状態を検出する車両状態検出手段と、
前記車両状態検出手段で検出した車両の状態に基づいて、車両挙動が安定する方向に後輪の転舵角を補正するための転舵角補正量を算出する後輪転舵角補正量算出手段と、
後輪転舵機構を駆動する後輪転舵アクチュエータと、
前記後輪転舵角補正量算出手段で算出した後輪の転舵角補正量に基づいて、前記後輪転舵アクチュエータを駆動制御する後輪転舵制御手段と、をさらに備え、
前記操舵反力算出手段は、前記前輪転舵角補正量算出手段で算出した前輪の転舵角補正量と、前記後輪転舵角補正量算出手段で算出した後輪の転舵角補正量とに基づいて、前記操舵反力を算出することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用操舵制御装置。 - 前記操舵反力算出手段は、運転者がステアリングホイールを切り増し操作しているとき、運転者がステアリングホイールを切り増し操作していないときと比較して、前記操舵反力を大きく算出することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の車両用操舵制御装置。
- 前記操舵反力算出手段は、前記転舵角補正量が大きいほど前記操舵反力を大きく算出することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の車両用操舵制御装置。
- 前記操舵反力算出手段は、前記操舵反力として、定常的に前記ステアリングに付与する定常反力と、運転者がステアリングホイールを切り増し操作しているときに前記ステアリングに付与する過渡反力とを算出するように構成されており、
前記転舵角補正量が大きいほど前記定常反力を大きく算出すると共に、前記転舵角補正量が大きいほど前記過渡反力を大きく算出することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の車両用操舵制御装置。 - 前記操舵反力算出手段は、前記操舵反力として、定常的に前記ステアリングに付与する定常反力と、運転者がステアリングホイールを切り増し操作しているときに前記ステアリングに付与する過渡反力とを算出するように構成されており、
前記転舵角補正量が大きいほど前記定常反力を大きく算出すると共に、前記転舵角補正量が大きいほど前記過渡反力を小さく算出することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の車両用操舵制御装置。 - 前記操舵反力算出手段は、前記後輪転舵角補正量算出手段で算出した後輪の転舵角補正量に基づいて、後輪補正分の前記操舵反力として、定常的に前記ステアリングに付与する後輪補正分定常反力と、運転者がステアリングホイールを切り増し操作しているときに前記ステアリングに付与する後輪補正分過渡反力とを算出するように構成されており、
前記後輪の転舵角補正量が大きいほど、前記後輪補正分定常反力を大きく算出することを特徴とする請求項4に記載の車両用操舵制御装置。 - 前記操舵反力算出手段は、前記後輪転舵角補正量算出手段で算出した後輪の転舵角補正量に基づいて、後輪補正分の前記操舵反力として、定常的に前記ステアリングに付与する後輪補正分定常反力と、運転者がステアリングホイールを切り増し操作しているときに前記ステアリングに付与する後輪補正分過渡反力とを算出するように構成されており、
前記後輪の転舵角補正量が大きいほど、前記後輪補正分定常反力を小さく算出することを特徴とする請求項4に記載の車両用操舵制御装置。 - 前記操舵反力算出手段は、前記後輪転舵角補正量算出手段で算出した後輪の転舵角補正量が、後輪の転舵角が、後輪が転舵可能な転舵角となる転舵角補正量限界値に近いほど、前記後輪補正分定常反力を大きく算出することを特徴とする請求項9又は10に記載の車両用操舵制御装置。
- 前記操舵反力補正手段は、前記路面摩擦係数推定手段で推定した路面摩擦係数が低いほど、前記操舵反力算出手段で算出した操舵反力を増加補正することを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の車両用操舵制御装置。
- 前記操舵反力補正手段は、前記路面摩擦係数推定手段で推定した路面摩擦係数が低いほど、前記操舵反力算出手段で算出した操舵反力を減少補正することを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の車両用操舵制御装置。
- 前記操舵反力算出手段は、前記操舵反力として、定常的に前記ステアリングに付与する定常反力と、運転者がステアリングホイールを切り増し操作しているときに前記ステアリングに付与する過渡反力とを算出するように構成されており、
前記操舵反力補正手段は、前記路面摩擦係数推定手段で推定した路面摩擦係数に基づいて、前記定常反力と前記過渡反力との配分を設定する配分設定手段を有し、前記配分設定手段で設定した配分に基づいて前記操舵反力を補正することを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の車両用操舵制御装置。 - 前記配分設定手段は、前記路面摩擦係数推定手段で推定した路面摩擦係数が低いほど、前記過渡反力の配分を大きく設定することを特徴とする請求項14に記載の車両用操舵制御装置。
- 前記配分設定手段は、前記路面摩擦係数推定手段で推定した路面摩擦係数が低いほど、前記定常反力の配分を大きく設定することを特徴とする請求項14に記載の車両用操舵制御装置。
- 車輪の転舵角が、車輪の横力が最大となる転舵角よりも大きくなる過操舵状態であるとき、前輪の転舵角を中立方向へ戻すための転舵角補正量に基づいて、前輪操舵アクチュエータを駆動制御して前輪操舵機構を駆動すると共に、前記転舵角補正量に対応する操舵反力を路面摩擦係数に基づいて補正し、補正した操舵反力をステアリングに付与するように操舵反力アクチュエータを駆動制御することを特徴とする車両用操舵制御方法。
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