JP2010173156A - 硬化樹脂フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】硬化性樹脂組成物から形成される硬化性樹脂膜3の少なくとも一方の表面に、転写により表面凹凸形状を形成し、硬化性樹脂膜3を硬化させて硬化樹脂フィルムを製造する方法であって、該製造方法は、表面凹凸形状を形成するための鋳型フィルム4を用い、硬化性樹脂膜3と鋳型フィルム4とを積層した状態で加圧及び加熱をする工程を有する硬化樹脂フィルムの製造方法である。
【選択図】図1
Description
ところで、光学部材等においては、デジタルカメラモジュールが携帯電話に搭載される等、近年急激に小型化が進み、光学部材の小型化、薄型化、軽量化が一層求められ、高機能化、高付加価値化が急速に進められている。それにともなって、デジタルカメラモジュール等に用いられる遮光性フィルムや、レンズ等を有するレンズユニットも同様に小型化、薄型化、軽量化が望まれ、また、それだけではなく、低コスト化も求められている。
更に、表面凹凸形状を形成するために光硬化性転写シートを用いる技術においても、光硬化性のものに制約されてしまうことから、耐熱性等の性能が要求される種々の用途に好適に適用できるようにするための工夫の余地があった。また、この技術においては、表面凹凸を形成するために、凹凸を有する金属製のスタンパが用いられているが、微細で且つ大きさが均一に制御された表面凹凸を形成することは、経済的に困難であり、工業的生産工程においては、できないといってよい。光拡散フィルム等の(半)透明な光散乱性フィルムや遮光フィルム、特に撮像用レンズユニットに用いる等、光学素子用として使用されるものにおいては、可視光に対する光散乱性能(透明体でも遮光体でも)に優れることが要求されるが、微細で且つ大きさが均一に制御された表面凹凸を形成することができなければ、そのような用途のフィルムを作製することはできないといえる。また、このようなスタンパを用いて表面凹凸を形成することは、いわゆるバッチ生産しかできず、連続的に効率よく生産することはできない。更に、スタンパ自体も高価であり、工業的に有利な方法といえるものではなかった。
これらのことから、鋳型フィルムを用いる技術において光学部材等の用途における高い品質の樹脂フィルムを経済的に安価に製造することが求められるところであった。すなわち、鋳型フィルムを用いると、種々の態様の凹凸形状を硬化樹脂フィルム表面に連続的に形成することが可能となり、この点が工業的な生産工程において有用であるが、後述するような鋳型フィルムを用いる際の不具合を抑制するための工夫の余地があった。更に、鋳型フィルムからの表面凹凸の転写が充分に行われるようにすることによって、凹凸形状の付与による光沢低下性能を有するフィルムを高い品質で提供することができる技術が期待されるところであった。
しかしながら、このような製法によっては、製造された樹脂フィルムに反り(カール)が発生する等の不具合が生じる。樹脂フィルムがカールしてしまえば、高い光学性能等が要求される光学部材等に好適に適用することはできない。例えば、転写処理した後に硬化させて得られた樹脂フィルムを鋳型フィルムから剥離するときにカールが発生することになる。したがって、表面凹凸形状による光沢低下効果を良好に保ったうえで、種々の用途に好適に適用できる、安定的で高い品質の樹脂フィルムを得ることは困難であった。
例えば、以下の方法によれば、カールした樹脂フィルムが得られることとなる。
すなわち、マットフィルムに硬化性樹脂組成物を塗布し、乾燥させて成膜し、剥離した表面凹凸が形成された硬化性樹脂フィルムを加熱によって硬化させる方法、基材フィルムに硬化性樹脂組成物を塗布し、乾燥させて成膜し、マットロール処理を行った表面凹凸が形成された硬化性樹脂フィルムを剥離し、加熱によって硬化させる方法、基材フィルムに硬化性樹脂組成物を塗布し、乾燥させて成膜し、剥離し、マットロール処理を行った表面凹凸が形成された硬化性樹脂膜を加熱によって硬化させる方法によっては、カールすることを充分に抑制して樹脂フィルムを製造することはできなかった。
また本発明の好ましい形態としては、硬化性樹脂膜に揮発分がある状態で加圧及び加熱をする形態、表面温度が特定された加熱媒体を用い、硬化性樹脂膜側の加熱媒体の温度が鋳型フィルム側の加熱媒体の温度よりも高くする形態、ロールを加圧及び加熱媒体として用いる形態、少なくとも2本のロールを用い、表面層を弾性体としたロールを必須とし、硬化性樹脂膜側が弾性体ロールの表面層と接する形態、ロール間の線圧を特定する形態、樹脂組成物が黒色材料を含有するようにした形態等が好適であることも見いだしたものである。
本発明はまた、上記製造方法により製造される硬化樹脂フィルムでもあり、上記硬化樹脂フィルムを備える光散乱性フィルムでもある。更に、上記光散乱性フィルムからなる遮光性フィルムであって、上記遮光性フィルムは、波長550nmの光に対する透過率が1%未満である遮光性フィルムでもある。
本発明はそして、上記遮光性フィルムとレンズとを備えるレンズユニットであって、上記レンズユニットは、撮像素子用レンズユニットであるレンズユニットでもある。
以下に本発明を詳述する。
上記加圧及び加熱工程において、加圧及び/又は加熱を行う好ましい実施形態は、加熱媒体を硬化性樹脂膜と鋳型フィルムとに接触させることによって加熱する形態である。より好ましくは、ロールを加圧及び加熱媒体として用いて加圧及び加熱をする形態、更に好ましくは、硬化性樹脂膜と鋳型フィルムとを積層した状態で少なくとも2本のロール間を通過させることによって加圧及び加熱する形態である。
上記工程において、樹脂膜と鋳型フィルムとを積層した状態とするのは、少なくとも転写処理を行うまでに、すなわち、加圧及び加熱をするまでにそのような状態とすればよい。例えば、加熱媒体を硬化性樹脂膜と鋳型フィルムとに接触させるときに、ロールによって加圧及び加熱をするときにそのような状態となっていればよい。少なくとも2本のロールを用いて転写処理する形態においては、少なくとも2本のロール間を通過させるときにそのような状態とすればよく、例えば、あらかじめ硬化性樹脂膜と鋳型フィルムとを積層したフィルムを2本のロール間に供給してもよく、硬化性樹脂膜と鋳型フィルムとを2本のロール間に別々に供給しロール間を通過するときに積層と転写とが同時に起こるようにしてもよい。通常は、凹凸形状を付与する硬化性樹脂膜表面に鋳型フィルムが積層されるようにすればよく、硬化性樹脂膜の片面に凹凸形状を付与する場合には、凹凸形状を付与する硬化性樹脂膜の片面表面に鋳型フィルムが積層された状態とし、硬化性樹脂膜の両面に凹凸形状を付与する場合には、硬化性樹脂膜の両面に同一又は異なった鋳型フィルムが積層された状態とすることになる。
上記積層フィルムは、上記のとおり、硬化性樹脂膜(硬化性樹脂膜Aともいう)及び鋳型フィルム(表面凹凸フィルムBともいう)を必須として積層されてなるものであり、それ以外のフィルム(他のフィルムCともいう)が積層されていてもよい。ここで、図2に示されるように、硬化性樹脂膜Aがある積層フィルムの片側、すなわち、硬化性樹脂膜Aが積層フィルムの片側にくる場合は「硬化性樹脂膜A側」(図2(a))、又は、他のフィルムCが硬化性樹脂膜Aの上(積層フィルムの表層側)にある場合は硬化性樹脂膜Aの上にある他のフィルムC側(図2(b))を「硬化性樹脂膜A側」とし、表面凹凸フィルムBがある積層フィルムの片側、すなわち、表面凹凸フィルムBが積層フィルムの片側にくる場合は「表面凹凸フィルムB側」(図2(c))、又は、他のフィルムCが表面凹凸フィルムBの上(積層フィルムの表層側)にある場合は表面凹凸フィルムBの上にある他のフィルムC側(図2(d))を「表面凹凸フィルムB側」とする。
上記加圧及び加熱処理の方法としては、加圧及び/又は加熱媒体が用いられることになる。
例えば、硬化性樹脂膜と鋳型フィルムとの積層フィルム又はその他のフィルムも含む積層フィルムの片面又は両面に加圧及び/又は加熱媒体を接触させることになる。好ましくは、硬化性樹脂膜A側及び表面凹凸フィルムB側の両側から加圧及び/又は加熱媒体を挟むようにして加圧及び加熱処理を行う。
上記片側から加圧及び/又は加熱媒体を用いて加圧及び加熱処理を行う形態としては、上記積層フィルム固定し、片側からローラー等の押圧機器を用いて行う形態が挙げられ、上記両側から加圧及び/又は加熱媒体を用いて加圧及び加熱処理を行う形態としては、少なくとも2本のロール間を通過させることによって行う形態が挙げられる。
上記揮発分の含有割合としては、硬化性樹脂膜を100質量%とすると、1〜40質量%であることが好ましい。好ましくは、上記揮発分の下限に関しては、5質量%以上であり、より好ましくは、10質量%以上である。また、上限に関しては、35質量%以下であり、より好ましく、30質量%以下である。これによって、塗布によって硬化性樹脂膜を調製する場合にも本発明を好適に適用することができる。また、硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥して硬化性樹脂膜を得る場合、適度な乾燥状態とすることができる。
上記加圧及び/又は加熱媒体としては、積層フィルムを加圧及び/又は加熱媒体で挟む場合、挟むように配置された加圧及び/又は加熱媒体のいずれかが回転ロール(単に「ロール」ともいう)であることが好ましい。より好ましくは、加圧及び/又は加熱媒体のいずれもが回転ロールであることである。ロールの曲率半径としては、0.05m以上であることが好ましい。このように設定することによって、鋳型フィルムを用いる本発明の製造方法を工業的生産工程に好適なものとし、本発明の効果が充分に発揮されることになる。
なお、以下では、「加圧媒体」、「加熱媒体」という用語を用いる場合があるが、これらは、加圧を行う媒体、加熱を行う媒体であってもよく、加圧及び加熱を行う媒体であってもよい。回転ロールの表面は平坦であることが好ましい。
したがって、一方の加圧及び/又は加熱媒体の表面層が弾性体であり、他方の加圧及び/又は加熱媒体が非弾性体である場合は、加圧及び/又は加熱媒体A、加圧及び/又は加熱媒体Bのいずれを弾性体としてもよいが、硬化性樹脂膜A側が接する加圧及び/又は加熱媒体Aを弾性体とすること、言い換えれば、硬化性樹脂膜が弾性体である加圧及び/又は加熱媒体の表面層と接するようにすることが好ましい。加圧及び/又は加熱媒体A、加圧及び/又は加熱媒体Bのいずれもが弾性体によって構成され、弾性率が高い加圧及び/又は加熱媒体と低い加圧及び/又は加熱媒体とがある場合は、加圧及び/又は加熱媒体Aを弾性率が低い加圧及び/又は加熱媒体とし、加圧及び/又は加熱媒体Bを弾性率が高い加圧及び/又は加熱媒体とすることが好ましい。
上記加圧及び/又は加熱媒体の構成、弾性率、材料等の好ましい形態は、下記硬化性樹脂膜と鋳型フィルムとを積層した状態で少なくとも2本のロール間を通過させることによって加圧及び加熱する形態において説明されるのと同様である。
次に、硬化性樹脂膜A側と接する加熱媒体を「加熱媒体A」とし、表面凹凸フィルムB側と接する加熱媒体を「加熱媒体B」とすると、硬化性樹脂膜A側と接する加熱媒体Aの表面温度(以下、Taと表す)は、加熱媒体Bの表面温度(以下、Tbと表す)より高いことが好ましい。加熱媒体Aの表面温度Taを加熱媒体Bの表面温度Tbよりも高くすることで、凹凸形状の転写が行われることになる硬化性樹脂膜A側に効率よく伝熱することができる。これによって、転写性が向上し、得られる樹脂フィルムの表面の光沢度をさらに低くすることができる。なお、表面凹凸フィルムB側と接する加熱媒体Bの表面温度Tbを更に高温にすると、鋳型フィルムに耐熱性の高いものを使用することが必要となることから、製造コストを考慮すれば、上記のようにTa>Tbとすることが好ましい。より好ましい形態としては、TaがTbよりも20℃以上高い状態とすることであり、更に好ましくは、TaがTbよりも40℃以上高い状態とすることであり、更に好ましくは、TaがTbよりも60℃以上高い状態とすることである。また、Taの上限に関しては、Tbよりも200℃高い温度以下とすることが好ましい。より好ましくは、Tbより150℃高い温度以下とすることである。また、上記表面凹凸フィルムB側と接する加熱媒体Bの表面温度Tbは、鋳型フィルムを構成する材料のガラス転移点以下とすることが好ましい。より好ましくは、110℃以下である。
なお、上記加熱媒体の加熱は、少なくとも1つの加熱媒体を加熱することによって、それが積層フィルムを介して他の加熱媒体に伝熱されるようにすることにより行ってもよい。例えば、加熱媒体A側のみから熱を付与し、その表面温度を50℃以上とするような形態であってもよいが、このような場合も加熱媒体Bの表面温度が50℃以上となるようにすることが好ましい。
Tbは、通常、50℃以上が好ましく、100℃以下が好ましい。
また加熱媒体が曲面形状をもつものである場合、好ましくは、ロール形状である場合には、通常、線圧で表わされることになる。線圧は、ロール形状の場合、2本のロールが接するところにかかる圧力、すなわち、2本のロールが接しているロールの横方向(ロールの回転方向に対して垂直方向)の線上にかかる圧力である。このような形態においては、ロール間の線圧を1〜200N/mmの間で調整することが好適である。安定的に均一性を有する転写を行うためには、線圧を1〜200N/mmの間で実質的に一定となるように調整して行うことが好ましい。
上記圧力が上記範囲を超えると、転写材である鋳型フィルムの表面凹凸形状が損なわれ、転写性が充分とはならなくなるおそれがあり、上記範囲未満であると、硬化後のカール抑制効果及び転写性が充分とはならなくなるおそれがある。更に好ましくは、上記線圧の上限に関しては、100N/mm以下であり、また、下限に関しては、5N/mm以上である。
上記線圧は、ロールとロールにかける荷重より計算することができる。
具体的には、ロール有効幅(ロール同士の接触長さ)にかかる荷重より計算できる。
例えば、1000kg重の荷重(かけた荷重は装置の設定次第)がロール有効幅350mmにかかっていれば、以下のようになる。
1000kg重をNに換算すると、9800Nである。9800N÷350mm=28N/mmとなる。
なお、薄いフィルムの場合、例えば今回のような50μmほどのフィルムでは、ロールとロールの間に挟んでもロール同士が接触すればフィルム幅ではなくなる。そのため、ロールの有効幅より計算する。
上記加圧加熱工程で用いるロールは、少なくとも2本のロールを有し、その2本のロールによって樹脂膜と鋳型フィルムとが積層されたフィルムに対して凹凸形状の転写を行うことができるものであることが好ましい。更に、本発明においては、2本のロールのうち少なくとも一方のロールの表面層が弾性体であり、両方のロールの表面を加熱された状態とすることができるものを用いることが好ましい。加熱及び又は加圧媒体としてのロール(転写ロール)は、少なくとも2本必要となり、これを1対とするが、更にロール本数が多いものを用いてもよい。例えば、転写ロールの本数が更に多くてもよく、また、樹脂膜、鋳型フィルム、積層フィルム、その他のフィルムを転写ロールに導いたり、凹凸形状の転写が行われたフィルムを転写ロールから引っ張り出したり等するロールが組み合わされていてもよい。
なお、少なくとも2本のロールによって構成される転写ロールを1対だけとし、凹凸形状の転写を実質的に1回だけ行うようにしてもよく、転写ロールを複数対とし、凹凸形状の転写を実質的に複数回行うようにしてもよい。このように、転写回数が制限されるものではない。
上記弾性体は、弾力性があると評価され得るものであり、樹脂膜及び鋳型フィルムの積層フィルムを加圧したときに該積層フィルムとロール間にかかる圧力を緩衝することができるものであればよい。なお、ロールの表面層に弾性が発現するようにすればよく、例えば、弾性ロール自体が弾性体によって構成された形態、弾性ロールの表面層だけが弾性体によって構成された形態であることが好ましいが、弾性ロールの表面層が非弾性体であっても弾性ロールの表面層が極薄い金属層によって構成され、表面層の内側に弾性体が配置されることによって積層フィルムとロール間にかかる圧力を緩衝することができると評価される形態であってもよい。
また上記非弾性体は、弾性体とは逆に弾力性がないと評価され得るものであり、樹脂膜及び鋳型フィルムの積層フィルムを加圧したときに該積層フィルムとロール間にかかる圧力を緩衝することができないものである。
ゴムなどのように弾性率が小さく(例えば102MPa未満)、上記方法で精度の高い弾性率の値を求め難い場合は、JIS規格 JIS K 6254:2003(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−低変形における応力・ひずみ特性の求め方)に従って、20%圧縮ひずみを与えたときの力の値より圧縮弾性率を求め、これを弾性率とすることができる。試験片は同規格推奨の円柱状とすることが好ましい。
なお、弾性率の測定方法は材質によりJIS規格が異なるが、精度の問題はあるとしても方法による値の相違は大きくなく、弾性体であるか、非弾性体であるかは、硬化性樹脂、熱可塑性樹脂に適用されるJIS K 7171で判定することとし(本発明で通常、対象とする、ゴムや樹脂、金属、セラミックが5×104MPa未満か、それ以上かは判定できる)、ゴムのように同法では5×104MPa未満であることは確認できても正確な値が測定し難い場合は、ゴムに適した測定法で求めることとすればよい。
上記弾性体は、エラストマーや高分子化合物として称される樹脂材料が好適であるが、非弾性体が含まれていても全体として弾性体であればよい。なお、弾性ロール表面の実質的に全部が弾性体であるとされることが好ましいが、本発明に効果を奏する限り、弾性ロール表面の一部が非弾性体であってもよい。
例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、アラミド樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性、熱硬化性樹脂;天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ホスファゼンゴム等を原料とする、ゴム架橋体、熱可塑性エラストマー、未架橋ゴム等のゴム等によって構成されたものが好適である。また上記の樹脂、又は、ゴムに、各種充填剤を含有させてなるものであってもよい。各種充填剤としては、カーボンブラック、グラファイト等の炭素粉末、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム等の金属塩粉末、クレー、タルク、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、フェライト等の金属酸化物粉末、金属粉末;樹脂粉末、加硫ゴム粉末等の粒子やフレーク;ガラス繊維、セラミックス繊維、炭素繊維、金属繊維、セルロース、ナイロン、ポリエステル等の樹脂繊維等の単繊維等が挙げられる。
上記加圧加熱工程の好ましい形態においては、転写ロール間には圧力がかかり、これによって転写が行われることになるが、この転写ロール間にかかる圧力、すなわち、線圧は、少なくとも2本のロールのそれぞれを加熱媒体A、加熱媒体Bとし、上述した加熱媒体間の圧力の好ましい形態をあてはめればよい。また転写ロールに樹脂膜及び鋳型フィルムを必須として積層されてなる積層フィルムを供給することになるが、これについても、上述した加熱媒体の圧力の好ましい形態をあてはめればよい。
上記加圧加熱工程における樹脂膜及び/又は鋳型フィルムの転写ロールへの供給速度、積層フィルムの転写ロールへの供給速度としては、0.3〜10m/min.(分)であることが好ましい。この範囲内で実質的に一定となるように調整することが好ましい。好ましい形態としては、樹脂膜及び鋳型フィルムに対して実質的に同じ速度となり、上記範囲内で実質的に一定となるようにすることである。10m/min.を超えると、速度が速過ぎて転写が充分に行なえず、転写性が悪く、きれいに転写しないおそれがある。0.3m/min.未満であると、生産性に劣るおそれがある。より好ましくは、上記速度の上限に関しては、8m/分以下であり、また、下限に関しては、0.5m/分である。
なお、上記好ましい形態においては、2本のロールの両方の表面温度を50℃以上とし、樹脂膜と接するロールの表面温度が鋳型フィルムと接するロールの表面温度よりも高くなるようにすることが好適である。転写ロールが2本のロールによって構成される場合には、該2本のロールの両方がそのように設定されることが好ましく、また、複数のロールによって構成される場合には、少なくとも2本のロールの表面温度を上記のように設定することが好ましい。転写するのに最も重要な複数の転写ロール又はすべての転写ロールの表面温度を上記のように設定すればよい。
なお、ここでのロールの表面温度は、表面温度を表面温度計等で実際に測定した温度である。上記表面温度の測定方法としては、例えば、接触式表面温度計である。
このような本発明の樹脂フィルムの製造方法の一例を図1に示す。図1においては、ロールの表面層が弾性体であるロールとして、ゴムロール1を用い、2本のロールのうちもう一方のロールとしてSUSロール2を用いている。硬化性樹脂膜3がゴムロールと接し、鋳型フィルムとして用いるマットフィルム4がSUSロールと接する状態とし、硬化性樹脂膜3とマットフィルム4とが2本のロール間を積層した状態で通過している。このとき、図1に示したように、硬化性樹脂膜3とマットフィルム4とが2本のロール間を通過する時点で積層されるようにしてもよく、ロール間を通過する前にあらかじめ積層された状態としてもよい。
また2本のロール間を通過後、図1のように硬化性樹脂膜3とマットフィルム4とがすぐに剥離される形態であってもよい。
この形態において、転写ロール間にかかる圧力である線圧、硬化性樹脂膜及び鋳型フィルムにかかる張力、硬化性樹脂膜及び鋳型フィルムの転写ロールへの供給速度、転写ロールの表面温度を上記好ましい形態のように設定すれば、本発明の効果を格段なものとすることができる。
本発明の製造方法において製造される硬化樹脂フィルムを構成する樹脂は、硬化性樹脂硬化物である。本発明によって製造される硬化樹脂フィルムの技術分野においては、特に光学部材等においては、小型化、薄型化、軽量化による高機能化、高付加価値化の要求が高まる中で、製造工程における一層の低コスト化等を図るため、リフロー工程によってデジタルカメラモジュールやレンズユニット等の光学・電子部材を組み立てることが検討されている。上述したように、リフロー工程は、部材を組み立てた後に部材全体に熱を加えることによってハンダ付けが行われるようにする工程であり、これによって自動実装化が可能となり、製造コストをより低く抑えることができる。この場合、耐熱性に優れ、耐リフロー性を有する(リフローアブル仕様に耐える)複数の微小な表面凹凸を有する遮光性フィルム等の光学部材が求められることになる。
このようにリフローアブル仕様に耐える硬化樹脂フィルムを得るためには、耐熱性等の高い性能を有する硬化性樹脂組成物から形成された硬化樹脂フィルムとすることが有効である。本明細書中で、硬化性樹脂硬化物は、硬化性樹脂が硬化又は半硬化したものであり、例えば、硬化性樹脂を架橋させることによって形成された架橋構造を有する形態が好ましい形態の一つである。
上記硬化性樹脂膜は、例えば、通常の塗布方法により基材に硬化性樹脂組成物を塗布した後、又は、溶融押出成形等の膜(フィルム)の形成方法によりフィルム状に成形した後、乾燥、固化、硬化、又は反応(前駆体若しくは単量体から樹脂の状態にする反応)させることによって得ることができる。例えば、ポリアミック酸溶液、エポキシ化合物等の硬化性樹脂溶液を基材に塗布、乾燥した後基材から剥離し、未硬化・半硬化の硬化性樹脂からなる単層フィルムとしたものを硬化性樹脂膜として用いることができる。
上記硬化性樹脂膜A(硬化性樹脂フィルムAともいう)としては、また、硬化性樹脂組成物(硬化性樹脂溶液ともいう)を基材に成膜して得られたものを用いることができる。具体的には、硬化性樹脂組成物を、基材に塗布して乾燥させ、基材から剥離して未硬化、半硬化の硬化性樹脂からなる単層フィルムとしたもの、又は、基材と剥離せずに、未硬化、半硬化の硬化性樹脂と基材フィルムとの積層フィルムとしたものが挙げられる。
上記硬化性樹脂組成物としては、例えば、ポリアミック酸溶液や、多官能エポキシ化合物とカチオン硬化剤とを含有する組成物等が挙げられる。これらの硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、得られる硬化樹脂フィルムが、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又は、カチオン硬化樹脂を含有することとなる。
上記転写法1、及び、2のいずれにおいても、液状組成物も好適に用いることができる。すなわち、転写法1で行われるように、表面凹凸形成工程が、鋳型フィルムに硬化性樹脂組成物からなる被膜を形成する工程を含むものであることが好ましい形態の一つである。
上記転写法1における凹凸形状形成に際し、並びに、転写法2における転写に供するフィルムの形成における膜形成方法としては、溶剤キャスト法、スピンコーティング法、バーコーター法、ロールコーター法、グラビアコーター法、ナイフコーティング法等の従来公知の塗布方法を採用し得る。
上記転写法2では、あらかじめ半乾燥、半硬化させる際に、上述した基材上に硬化性樹脂組成物を塗布して半乾燥、半硬化させてもよい。
上記転写法1及び上記転写法2を組み合わせた形態(転写法3ともいう。)も好ましく、これによってフィルム両面に凹凸形状を形成することができる。例えば、転写法1によって鋳型フィルムに硬化性樹脂組成物を塗布して硬化性樹脂膜を調製した後、転写法2によって該硬化性樹脂膜のもう一方の片面を鋳型フィルムに接触させて硬化樹脂フィルムの両面を凹凸化することができる。また、転写法2によって硬化性樹脂膜を調製して鋳型フィルムに接触させた後、更に転写法2によって該硬化性樹脂膜のもう一方の片面を鋳型フィルムに接触させて行うこともできる。このような両面凹凸形成法においては、硬化性樹脂膜の片側の面が鋳型フィルムと積層した状態で、好ましくは、硬化性樹脂膜の両側の面が鋳型フィルムと積層した状態で加圧及び加熱が施されることになる。
上記転写法1と2とを連続して行う場合、転写法1を行った後に転写法2を行う形態が好ましい。例えば、転写法1により、硬化樹脂フィルムの一方の表面に凹凸を形成するとともに硬化性樹脂組成物を半乾燥、半硬化した状態、又は、乾燥・固化若しくは硬化が完了した状態とし、続いて転写法2により、他方の表面に凹凸形状を形成することができる。このように、上記表面凹凸形成工程が、転写法3によるものである形態もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
上記転写法1〜3においては、基材及び/又は鋳型フィルムが凹凸形状を形成する工程において硬化性樹脂組成物と一体化する場合があるが、このような基材及び/又は鋳型フィルムは、硬化樹脂フィルムと積層されていてもよく、基材及び/又は鋳型フィルムを除去してもよい。通常、鋳型フィルムは除去する(剥がす)こととなり、基材は必要に応じて除去することとなる。上記転写法1又は3において、基材を除去すると、硬化樹脂フィルム単層で、かつ、表面に凹凸形状を有する硬化樹脂フィルムが得られることとなり、塗布法でありながら単層で凹凸形状の制御された凹凸形状形成フィルムを実現できることとなる。
上述したように、本発明の製造方法によって樹脂フィルムの片面に凹凸形状を形成してもよく、両面に凹凸形状を形成してもよいが、両面に凹凸形状を形成する場合には、樹脂フィルムの両面に対して本発明の製造方法を適用する製造方法、樹脂フィルムの片面に対して本発明の製造方法を適用し、もう片面には他の製造方法によって凹凸形状を形成する製造方法が挙げられる。いずれにしても、樹脂フィルムの少なくとも片面は、本発明の製造方法によって凹凸形状が形成され、本発明における効果を奏することができる。このように、両面に凹凸形状を形成することによって、得られる硬化樹脂フィルムの光散乱性を高め、光沢度をより低くすることができ、遮光性フィルムとした場合に遮光性を高めることができる。
本発明の製造方法に係る表面凹凸形成方法を必須として両面に凹凸形状を形成する具体的な方法としては、(A)本発明の製造方法のみで行う方法(両面凹凸形成方法A)、(B)本発明の製造方法を実施した後に、後工程を行う方法(両面凹凸形成方法B)、(C)本発明とは別法により、一方の表面に任意の方法で凹凸形状を形成した樹脂膜の他方の面に対し、本発明の製造方法を適用する方法(両面凹凸形成方法C)、を挙げることができる。これら両面凹凸形成方法について下記に説明する。
本発明に係る転写法のみで両面凹凸化する場合には、転写法3の形態として、塗布法により鋳型フィルムaに硬化性樹脂膜形成されたもの(鋳型フィルムaが積層されたまま)に反対面に鋳型フィルムbを積層した状態で、加圧加熱媒体に供する形態(転写法1と2とを同時に行う形態、転写法3−1ともいう)が好適な方法である。また、鋳型フィルムaに塗布法により硬化性樹脂膜形成されたもの(鋳型フィルムaが積層されたまま)を、加圧加熱媒体に供し(転写法1)、次に、反対面に鋳型フィルムbを積層した状態で、加圧加熱媒体に供する(転写法2)形態(転写法3−2ともいう)が挙げられる。
また、転写法2を両面に同時に適用する形態として、硬化性樹脂膜を鋳型フィルムでサンドイッチした状態で加圧・加熱媒体に供する形態(転写法2−1ともいう)、が好適な方法である。
更に、転写法2を片面ずつ順次適用する形態として、硬化性樹脂膜を形成した後、鋳型フィルムaを積層した状態で、加圧加熱媒体に供し(転写法2)次に、反対面に鋳型フィルムbを積層した状態で、加圧加熱媒体に供する(転写法2)形態(転写法2−2ともいう)が挙げられる。
一方で、転写法1又は2と別法とを組み合わせる形態としてもよく、別法としては、好ましくはマットロールを用いる形態が挙げられる。
本発明における表面凹凸形成工程においては、凹凸形成に鋳型フィルムを転写層に用いることが必須であるが、上記のようにフィルム両面に凹凸形状を形成する形態においては、一方の面をマットロールによって凹凸形成してもよい。マットロールを用いる形態としては、鋳型フィルムを用いた転写法1又は2と組み合わせる形態が挙げられる。
例えば、鋳型フィルムに塗布により成膜(転写法1)した状態のものを加熱・加圧のロール間に通過させる際に、鋳型フィルム非接触面側のロールをマットロールとする方法、鋳型フィルムに塗布により成膜(転写法1)した状態のものを加熱・加圧のロール間に通過させた後(転写法1)に、次工程として、好ましくは連続的な次工程として、鋳型フィルム非接触面側をマットロール処理する方法、転写法2で得られた硬化性樹脂膜に凹凸形成されていない面をマットロール処理する方法などが具体例として挙げられる。
両面に凹凸形成を行う上記方法の中で、段階的に凹凸形成を行う形態(1段目の表面凹凸形成から2段目の表面凹凸形成、たとえば転写法3−2、2−2、マットロールを組み合わせる方法等)において、2段目の表面凹凸形成に供する硬化性樹脂膜の形態としては、既に鋳型フィルムによる凹凸形成を行った側の鋳型フィルムが積層された状態のままであっても、鋳型フィルムが分離(剥離)された単層の状態であってもよい。
本発明の製造方法を必須とし、両面とも微細な大きさで且つある程度大きさの揃った凹凸形状を付与するのに適しているのは、鋳型フィルムを用いる方法、すなわち、上述した転写法3−1、転写法2−1と考えられる。より好ましくは、転写法2−1よりは、転写法3−1を適用した形態が好ましい。
また転写法1又は2と別法とを組み合わせた形態は、上記の意味でも、また生産性に優れる意味でも好ましい形態である。
これらは、両面凹凸形成方法の実施態様を例示したものであり、両面凹凸形成において本発明の製造方法と組み合わせる好ましい形態である。
なお、両面に凹凸形成がなされることが好ましいとされる技術背景及びそれに起因する好ましい形態については、下記1)〜3)のようである。
すなわち、1)光拡散フィルム等の(半)透明な光散乱性フィルムにおいては、両面に凹凸形成されていることにより、各表面での光の散乱(拡散)効果が相乗的に作用するため、片面のみ凹凸表面となっているフィルムに比べて光散乱(拡散)性能に優れるようになる。
遮光フィルムにおいては、特に撮像用レンズユニットに用いる等、光学素子用として使用されることが求められているが、このような光学素子用においては、両面とも低光沢度であることが必要である。
2)表面凹凸が微細で且つ大きさが均一に制御されていることは、可視光に対する光散乱性能(透明体でも遮光体でも)に優れることになる。
3)上記2)の理由から、両面とも微細な大きさで且つある程度大きさの揃った凹凸形状を付与するのに適しているのは、両面とも鋳型フィルムを用いる方法であり、具体的には、上述した転写法2−1、2−2、3−1、3−2の方法である。
したがって、フィルム表面の両面に凹凸形状を形成する場合も、鋳型フィルムを用いる本発明の製造方法を両面に適用したり、上述した鋳型フィルムを用いる方法と組み合わせたりすることが好ましい。
y=f(x)
で表したときに、次の式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものである。
図3中の複数の斜線で示された領域は、複数の縦線で示された領域の合計面積と等しくなるようにしたものである。このとき、複数の斜線で示された領域は、X=0、X=l、Y=Ra、Y=0の直線で囲まれたものとなっている。
Rz=(|Yp1+Yp2+Yp3+Yp4+Yp5|+|Yv1+Yv2+Yv3+Yv4+Yv5|)/5
で求められる。なお、式中、Yp1+Yp2+Yp3+Yp4+Yp5は、基準長さ(l)に対する抜き取り部分の最も高い山頂から5番目までの山頂の標高の合計を示し、Yv1+Yv2+Yv3+Yv4+Yv5は、基準長さ(l)に対する抜き取り部分の最も低い谷底から5番目までの谷底の標高の合計を示す。
上記硬化樹脂フィルムは、少なくとも片面に凹凸構造を有していることが好ましい。より好ましくは、両面に凹凸構造を有するものである。両面に凹凸構造を有することにより、上述した効果が充分に発揮されることとなる。
このような硬化性樹脂の硬化前における分子量としては、特に限定されず、高分子量からオリゴマー程度の樹脂を使用できる。硬化性樹脂を含有する樹脂原料の形態としては、例えば、(1)液状又は固形の硬化性樹脂からなる形態、(2)液状又は固形の硬化性樹脂と、該硬化性樹脂よりも低分子量の硬化性化合物若しくは溶剤(非硬化性)等とを含有する形態、及び、(3)液状又は固形の非硬化性樹脂と、該非硬化性樹脂よりも低分子量の硬化性化合物とを含有する形態等が挙げられる。上記(3)液状又は固形の非硬化性樹脂と該非硬化性樹脂よりも低分子量の硬化性化合物を含有する形態としては、例えば、PMMA等のアクリル樹脂のオリゴマー成分と(メタ)アクリレートモノマー等を含有する形態を挙げることができる。
なお、上記エポキシ基は、オキシラン環を持つ有機基であり、グリシジル基等のオキシラン環を有する有機基の中にはエポキシ基が含まれている。そのため、エポキシ基を有する化合物の中には、グリシジル基を有する化合物が含まれているものとする。また、エポキシ基を少なくとも一つ有する化合物が、グリシジル基を少なくとも一つ有する化合物であることも好ましい形態の一つである。更に、複数のエポキシ基を有していてもよく、グリシジル基の他に、グリシジル基が有するエポキシ基とは別のエポキシ基が共存していてもよい。
なお、ポリ(アミド)イミド樹脂は、硬化性樹脂硬化物である場合と、熱可塑性樹脂である場合の両方があり、適宜熱可塑性樹脂としても、硬化性樹脂としても用いることができる。ポリ(アミド)イミド樹脂については、後に詳述する。
本発明において、樹脂フィルムの樹脂として好ましいポリ(アミド)イミド樹脂は、400℃以下の温度で加熱しても溶融しないものと、溶融し得るものがある。本願明細書におけるポリ(アミド)イミド樹脂では、前者(400℃以下の温度で加熱しても溶融しないもの)を硬化性樹脂硬化物、後者(400℃以下の温度で加熱して溶融し得るもの)を熱可塑性樹脂と称する。また、ポリ(アミド)イミド樹脂の説明において、硬化性樹脂、硬化性樹脂硬化物の原料といえば、前者の(400℃以下の温度で加熱しても溶融しない)ポリ(アミド)イミド樹脂を得るための原料を意味し、熱可塑性樹脂の原料といえば、後者の熱可塑性ポリ(アミド)イミド樹脂を得るための原料を意味する。
上記黒色材料は、硬化性樹脂組成物に分散又は溶解されて存在することが好ましい。分散又は溶解された状態で存在しない場合、硬化樹脂フィルムが均一に黒色とならず、充分に優れた遮光性を発揮しないおそれがある。すなわち、本発明の硬化樹脂フィルムは、黒色材料を硬化性樹脂原料(樹脂バインダー)に分散又は溶解含有されてなる硬化性樹脂組成物を原料として得られることが好ましい。
上記黒色材料の中でも微粒子状の黒色材料(黒色微粒子)が好ましく、種々の黒色の微粒子を用いることができる。黒色微粒子の中でも、耐熱性に優れる点で、炭素系黒色微粒子、無機系黒色微粒子が好ましい。可視光領域に対する遮光性能に優れる点では、炭素系微粒子等の炭素系材料が好ましく、超微粒子状であり硬化樹脂中での分散性に優れることにより、硬化樹脂フィルムに均質な黒色を付与できる点でカーボンブラックがより好ましい。また、カーボンブラックは、優れた耐熱性に加え、黒色の程度が高く、安価である点においても好ましい。
上記1次粒子径は、透過型電子顕微鏡像により測定することができる。
黒色微粒子は、1次粒子が2次凝集や会合することなく独立して存在する場合も、1次粒子が1次元、2次元又は3次元に凝集した構造を形成して存在する場合もある。上記1次粒子径とは、いずれの場合においても1次粒子の大きさを意味する。例えば、上記黒色微粒子がカーボンブラックの場合、1次粒子がほぼ球状又は粒状(微結晶による輪郭を有し、それ以上、分割が困難である。)の形態である場合の粒子径をいう。
1次粒子の大きさは、通常、透過型電子顕微鏡像により測定することができ、その個数平均値(平均1次粒子径)が上述の範囲であることが更に好ましい。平均1次粒子径を求めるにあたっては、20個以上の1次粒子の大きさを測定しそれらの測定値の平均を求めることが好ましい。
また、透過型電子顕微鏡像により、1次粒子の大きさを測定することが困難である場合は、B.E.T.法により測定される比表面積値により下記式によって算出される比表面積径を平均一次粒子径として代用し得る
比表面積径(μm)=6/(ρ×S)
(式中、ρは、真比重を表す。Sは、比表面積(m2/g)を表す。)
また、硬化樹脂組成物中に分散させた場合の黒色微粒子の粒径は、動的光散乱式粒径分布測定装置、例えば、LB−500(堀場製作所製)等を使用することにより測定することができ、本発明では、体積基準の算術平均値を採用する。
また、上記溶剤としてより好ましくは、メチルエチルケトン(2−ブタノン)、メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノン)、シクロヘキサノン、PGMEA(2−アセトキシ−1−メトキシプロパン)、N,N−ジメチルアセトアミド、酢酸エチル、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられる。
更に、上記硬化性樹脂原料が、ポリ(アミド)イミド樹脂原料であるポリアミック酸等の前駆体ポリマー、若しくは、前駆体ポリマーの原料である、芳香族ジアミン化合物と芳香族テトラカルボン酸二無水物とである場合には、N−メチル−2−ピロリドン、N,N´−ジメチルアセトアミド、芳香族炭化水素類、及び、これらの混合物がより好ましい。上記硬化性樹脂原料が、エポキシ樹脂の原料である多官能エポキシ化合物、若しくは、多官能エポキシ化合物と硬化剤とである場合には、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコール誘導体、又は、これらの混合物であることがより好ましい。
上記溶剤の使用量としては、有機樹脂原料100重量部に対して、150重量部以上が好ましく、また、1900重量部以下が好ましい。より好ましくは、200重量部以上であり、また、1400重量部以下である。
上記寸法変化率の測定条件としては、より厳しい条件で行ってもよく、加熱温度としては、250℃であることが好ましい。また、加熱保持時間としては、2分であることが好ましい。より好ましくは、5分であり、更に好ましくは、10分である。このような厳しい条件で、寸法変化率が上記範囲であるような硬化樹脂フィルムがより好ましい。
また、寸法変化率としてより好ましくは、260℃で2分加熱した際に、加熱前に対する加熱後の各長さの変化率(寸法変化率)が10%以下であることが好ましい。測定条件としては、空気雰囲気下で行うことが好ましい。すなわち、上記硬化樹脂フィルムは、該フィルムを空気雰囲気下で260℃で2分間加熱したときに、加熱前に対する加熱後における縦、横、厚みのそれぞれの寸法変化率が10%以下であることが好ましい。260℃2分間の加熱により、寸法変化が小さい(寸法変化率が10%以下である)ことによって、上記硬化樹脂フィルムをレンズユニットに用いる場合に、半田リフロー工程に充分に耐え得るものとすることができる。この場合における寸法変化率として、より好ましくは、5%以下であり、更に好ましくは、3%以下であり、特に好ましくは、1%以下である。
本発明の硬化樹脂フィルムの製造方法に用いられる硬化性樹脂原料として好適に用いることができるエポキシ基を少なくとも1つ有する化合物について説明する。上記エポキシ基を少なくとも1つ有する化合物としては、好ましくは、分子内にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ化合物である。
上記エポキシ基を少なくとも1つ有する化合物としては、以下のような化合物等が好適である。ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のビスフェノール類とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、及び、これらを上記ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のビスフェノール類と更に付加反応させることにより得られる高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノール、クレゾール、キシレノール、ナフトール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のフェノール類とホルムアルデヒド、アセトアルテヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、ジシクロペンタジエン、テルペン、クマリン、パラキシリレングリコールジメチルエーテル、ジクロロパラキシリレン、ビスヒドロキシメチルビフェニル等を縮合反応させて得られる多価フェノール類を更にエピハロヒドリンと縮合反応することにより得られるノボラック・アラルキルタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;テトラメチルビフェノール、テトラメチルビスフェノールF、ハイドロキノン、ナフタレンジオール等とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる芳香族結晶性エポキシ樹脂、及び、更に上記ビスフェノール類やテトラメチルビフェノール、テトラメチルビスフェノールF、ハイドロキノン、ナフタレンジオール等を付加反応させることにより得られる芳香族結晶性エポキシ樹脂の高分子量体;上記ビスフェノール類やテトラメチルビフェノール、テトラメチルビスフェノールF、ハイドロキノン、ナフタレンジオール等の芳香族骨格を水素化した脂環式グリコール類やエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、PEG600、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、PPG、グリセロール、ジグリセロール、テトラグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン及びその多量体、ペンタエリスリトール及びその多量体、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース等の単/多糖類等とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂;(3,4−エポキシシクロヘキサン)メチル3´,4´−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート等のエポキシシクロへキサン骨格を有するエポキシ樹脂;テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、安息香酸とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ヒンダトインやシアヌール酸、メラミン、ベンゾグアナミンとエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる室温で固形の3級アミン含有グリシジルエーテル型エポキシ樹脂。中でも、上記脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂やエポキシシクロヘキサン骨格を有するエポキシ樹脂が光照射時の外観劣化抑制を目的とした場合はより好適に用いられる。
(R1 bR2 cR3 dR4 eZ)+m(MXn)−m(1)
(式中、Zは、S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、N及びハロゲン元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を表す。R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、有機基を表す。b、c、d及びeは、0又は正数であり、b、c、d及びeの合計はZの価数に等しい。カチオン(R1 bR2 cR3 dR4 eZ)+mはオニウム塩を表す。Mは、ハロゲン化物錯体の中心原子である金属又は半金属(metalloid)を表し、B、P、As、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Coからなる群より選ばれる少なくとも一つである。Xは、ハロゲン元素を表す。mは、ハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷である。nは、ハロゲン化物錯体イオン中のハロゲン元素の数である。)で表されるものであることが好ましい。
更に一般式MXn(OH)−で表される陰イオンも用いることができる。また、その他の陰イオンとしては、過塩素酸イオン(ClO4 −)、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CF3SO3 −)、フルオロスルホン酸イオン(FSO3 −)、トルエンスルホン酸イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸イオン等が挙げられる。
上記硬化温度としては、70〜200℃が好ましい。より好ましくは、80〜150℃である。硬化時間としては、30秒〜1時間が好ましい。より好ましくは、1〜3分である。
上記ポリ(アミド)イミド樹脂とは、狭義のポリイミド樹脂(イミド結合を含み、アミド結合を含まない樹脂)、及び、ポリアミドイミド樹脂(アミド結合とイミド結合とを含む樹脂)を意味する。このようなポリ(アミド)イミド樹脂には、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の2種類があるが、本発明では、熱硬化性ポリ(アミド)イミド樹脂が好適であり、より好ましくは、芳香族系熱硬化性ポリ(アミド)イミド樹脂である。
上記ポリ(アミド)イミド樹脂は、多価カルボン酸化合物と、多価アミン化合物及び/又は多価イソシアネート化合物との反応により得られるポリ(アミド)イミド樹脂の原料(以下、前駆体ポリマーともいう)を、イミド化反応して得ることができるが、上記硬化性樹脂組成物がこのような前駆体ポリマーを含む形態は、本発明の好適な形態の1つである。より好ましくは、上記前駆体ポリマーが芳香環を有する形態である。
上記多価カルボン酸化合物としては、テトラカルボン酸化合物(その無水物を含む)や、トリカルボン酸化合物(その無水物を含む)が好適である。また、これらをメタノール、エタノール等のアルコール類と反応させてエステル化合物としてもよい。
ピロメリット酸二無水物(PMDA)、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2´,3,3´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3´,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,2´,3,3´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3´,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス[3,4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)、4,4´−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物、チオジフタル酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物及び9,9−ビス[4−(3,4´−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物等。
上記ジイソシアネート化合物としては、例えば、メチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、4,4´−ビス(3−トリレン)ジイソシアネート、3,3´−ジクロロ−4,4´−ジイソシアネートビフェニル、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルエーテルジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
上記有機溶媒としては、有機極性溶媒が好ましく、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム及びトリグライム等が挙げられる。中でも、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が好適である。これらの溶媒は、単独で又は混合物として使用することもできるし、また、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素等の他の溶媒と混合して用いることもできる。
上記触媒としては、例えば、三級アミン類、アルカリ金属、アルカリ土類金属、錫、亜鉛、チタニウム、コバルト等の金属又は半金属化合物等が挙げられる。
上記重合性不飽和結合を有する化合物としては、重合性不飽和結合を有するものであればよいが、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、フマレート基及びマレイミド基からなる群より選択される1種以上の基を有する化合物であることが好ましい。すなわち、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、ビニル基を有する化合物、フマレート基を有する化合物及びマレイミド基を有する化合物よりなる群から選択される1種以上の化合物であることが好ましい。なお、本発明においては、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基とメタクリロイル基とを意味するものであり、アクリロイル基を有する場合、アクリロイル基中にビニル基を有することになるが、この場合には、アクリロイル基とビニル基とを有することとはせず、アクリロイル基を有することとする。また、フマレート基とは、フマレート構造を有する基、すなわちフマル酸エステルの構造を有する基を意味する。
また、上記遮光性フィルムは、本発明の光散乱性フィルムを用いることにより、波長550nmの光に対する透過率が1%未満とすることができる。このように、上記光散乱性フィルムからなる遮光性フィルムであって、該遮光性フィルムは、波長550nmの光に対する透過率が1%未満である遮光性フィルムも本発明の一つである。
上記透過率は、紫外可視分光光度針(Shimadzu UV−3100(島津製作所製))を用いて、380〜780nmにおける透過率を測定することにより得られる値である。以下に、上記遮光性フィルムの形態について説明するが、上述した光散乱性フィルムについても同様の形態をとり得る。
(1)及び(2)の形態においては、基材により遮光性フィルムの強度を得ることができるため、硬化樹脂フィルムを薄くすることができる。硬化樹脂フィルムを薄くすることによって、硬化性樹脂組成物を塗布する際の膜厚制御を行いやすく、乾燥する際に該組成物に含まれる溶剤の蒸発除去を短時間で行うことができ、溶剤蒸発に伴う泡の生成等、遮光性能の低下をもたらす膜中の欠陥生成が抑制された硬化樹脂フィルムが得られやすいという利点を有する。
(1)及び(2)の基材と硬化樹脂フィルムよりなる積層フィルムの形態において、硬化樹脂フィルムの厚みは、5μm以上であることが好ましい。より好ましくは、10μm以上である。また、硬化樹脂フィルムの厚みの上限としては、80μm以下であることが好ましく、より好ましくは、50μm以下であり、更に好ましくは、30μm以下である。また、特に好ましい範囲としては、10〜30μmである。
(3)の遮光性フィルムが硬化樹脂フィルム単層からなる形態においては、硬化樹脂フィルムの厚みは、硬化樹脂フィルムの硬化樹脂にもよるが、フィルムの後加工が行い易く、機械的強度に優れる点から、20μm以上が好ましく、更に好ましくは、30μm以上である。硬化樹脂フィルムの厚みの上限としては、硬化樹脂フィルムの材質にもよるが、遮光性能が充分となること、薄型化の要求の高いレンズユニットへの適用を踏まえれば200μm以下が好ましく、更に好ましくは100μm以下である。特に好ましい範囲としては、30〜80μmである。
上記遮光性フィルムは、さらに硬化樹脂フィルム、及び、基材以外の層を有する形態であってもよい。遮光性フィルムの厚みは、遮光性フィルムの形態、適用する用途によっても異なるが、1〜1000μmであることが好ましい。上記遮光性フィルムの厚みとしてより好ましくは、10〜200μmであり、更に好ましくは、20〜100μmである。ここで、遮光性フィルムの厚みとは、マイクロメーターで遮光性フィルムを測定した厚みである。上記遮光性フィルムの厚みを1〜1000μmとすることにより、例えば、該遮光性フィルムを光学部材に用いた場合に、光路を短縮することができる。これにより、この光学部材(例えば、カメラモジュール等)を薄型化することができる。
上記遮光性フィルムの形状としては、用途に応じて適宜選択することができ、レンズユニットに装着する場合には、レンズを固定する淵に貼ることにより、効果的に光路以外の光の透過、光の反射を抑え、光学ノイズを低くすることができる。すなわち、レンズユニットにおいては、図7に模式的に示すように、遮光性フィルム(中でも、硬化樹脂フィルム)がレンズを固定する淵に貼られることが好ましい。すなわち、レンズユニットにおけるレンズと硬化樹脂フィルムとの位置関係としては、レンズユニットの断面図として見ると、図8に模式的に示したものであることが好ましい。したがって、遮光性フィルムの硬化樹脂フィルムは、レンズユニット入射光側からみると、図9に模式的に示すような平面形状(輪の形状)であることが好ましい。輪の中心は空洞でもよく、可視光を透過する透明フィルムであってもよく、レンズであってもよい。好ましくは、輪の中心は空洞であることである。
上記レンズユニットにおいて、遮光性フィルムは、カメラモジュールにおいて、レンズユニット内部での光学ノイズの発生及び拡大を抑え、生じた光学ノイズを除去する遮光層を有するフィルムである。上記レンズユニットにおける遮光性フィルムとしては、上述した遮光性フィルムが好ましい。すなわち、遮光性フィルムに必須として含まれる樹脂は、上述したものであることが好ましい。樹脂が上述したものであることにより、遮光性フィルムが耐リフロー性を有するものとなり、耐リフロー性を有するレンズユニットに好適に用いられることとなる。遮光性フィルムのその他の好適な例、好ましい形態等は、上述したとおりである。なお、上記レンズユニットにおいては、遮光性フィルムとレンズとを備えることとなるが、これらの数としては、それぞれ一つ以上備えられていればよく、レンズユニットの用途等に応じて、装着する数を適宜設定することができ、複数備えていてもよい。なお、本明細書中で「耐リフロー性を有するレンズユニット」とは、少なくとも遮光性フィルムの形状保持性が優れるレンズユニットである。好ましい形態としては、上述した遮光性フィルムにおける形状保持性と同様に、200℃で1分加熱した際に、各長さの変化率(寸法変化率)が10%以下、更に好ましくは、260℃で2分加熱した際に、各長さの変化率(寸法変化率)が10%以下となる形態である。いずれの条件下においても、より好ましくは、寸法変化率が5%以下であり、更に好ましくは、3%以下であり、特に好ましくは、1%以下である。
このように、レンズユニットを構成する遮光性フィルム及びレンズが、耐リフロー性を有するものである形態は、本発明の好ましい形態の一つである。遮光性フィルム及びレンズの両方が、充分な耐熱性を有することにより、自動実装化が可能となり、実装コストが充分に低減され、カメラモジュール等の光学用途に好適に用いることができる。このように、本発明の遮光性フィルムは、カメラモジュールに用いられる撮像用レンズユニットに好適であり、特に、半田リフロー工程に供されるカメラモジュールに用いられる撮像用レンズユニットに好適である。すなわち、上記レンズユニットは、カメラモジュールに用いられる撮像用レンズユニットであることが好ましく、特に、半田リフロー工程に供されるカメラモジュールに用いられる撮像用レンズユニットであることが好ましい。
上記材料として、特に好ましくは、エポキシ基含有化合物を主たる樹脂(原料)とする硬化性樹脂組成物を硬化してなる材料である。エポキシ基含有化合物、及び、重合性不飽和結合を有する化合物については、硬化樹脂フィルム用の硬化性樹脂組成物における同種の化合物に関する態様を適用し得る。
上記有機・無機複合材料の有機材料成分としては、上記好ましい有機材料であることが好ましい。
本発明においては、上述したように、レンズは硬化性樹脂組成物を硬化させて得られるものであることが好ましい。このように、本発明の遮光性フィルムとレンズとを備えるレンズユニットであって、該レンズユニットは、耐リフロー性を有するものであり、該レンズは、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られるものであるレンズユニットもまた、本発明の好ましい形態の一つである。中でも、エポキシ基含有化合物を主たる樹脂原料とし、熱硬化性硬化剤等のカチオン硬化触媒を含む硬化性樹脂組成物をカチオン硬化してなるレンズが好ましい。
上記レンズのアッベ数としては、特に限定されないが、例えば、アッベ数を45以上とすることにより、光の波長分散が小さくなり、解像度があがり、光学特性に優れたものとすることができる。45未満であると、例えば、にじみがみられるおそれがあり、充分な光学特性を発揮せず、レンズユニットに好適な材料とはならないおそれがある。上記アッベ数として、より好ましくは、50以上であり、更に好ましくは、55以上であり、特に好ましくは、58以上であり、最も好ましくは、60以上である。
上記レンズユニットの各構成要素の配置としては、レンズユニットとしての特性が発揮される限り特に限定されないが、遮光性フィルムは、上述したように、遮光層がレンズを固定する淵(コバ)に貼られる配置であることが好ましい。遮光性フィルムとレンズとの位置関係としては、レンズが入射光側である形態と、遮光性フィルムが入射光側である形態とがあるが、レンズ表面での反射光を吸収するため、少なくとも1つの遮光性フィルムがレンズより入射光側に配置されていることが好ましい。
上記遮光性フィルムの形状としては、上述したように、遮光層が輪の形状で、輪の中心は空洞であることが好ましい。このような配置・形状とすることで、遮光機能を充分に発揮することができる。具体的には、図10(b)に模式的に示すように、中心部が透明フィルムであると、該遮光性フィルムを有することで光路長が長くなる。一方、中心部が空洞であると、図10(a)に模式的に示すように、光路長が長くなることはない。レンズユニットにおいては、小型化が求められていることから、上記レンズユニットにおいて、遮光層を輪状に有し、中心は空洞とする形態が好ましい。遮光性フィルムの場合、レンズとシーモスセンサーとの間に遮光性フィルムを有すると、レンズとシーモスセンサーとの間に位置する遮光性フィルムの厚みを薄くすることにより、光路長を短くすることができ、レンズユニットを小さく、ユニットの厚みを薄くすることができる。
(光沢度の測定)
得られたフィルム(硬化性樹脂膜としての転写フィルム、および転写硬化フィルム)に関し、転写処理した表面の光沢度を測定した。
光沢度は、日本電色工業社製 光沢度計(VG−2000)を用いて、測定角度(θ)60度における光沢度を測定することにより求めた。
転写に供する前駆体フィルム(硬化性樹脂膜)における固形分含有量は次のようにして求めた。すなわち、フィルム小片を試料とし、TG−DTA(BRUKER AXS社製、TG−DTA 2000SA)を用い、昇温速度10度/分で常温から350度までの重量減少量を測定し、この重量減少量を溶剤含有量とし、残分を固形分含有量とした。
作製した硬化樹脂フィルムを、以下の大きさに切り出し試験片として耐熱性試験を行った。
試験片の大きさは、50mm×10mmである。
上記試験片について、加熱試験を行い、試験前後の試験片の長さ方向の寸法変化を測定し評価した。加熱試験は、260℃で2分間加熱処理(260℃に加熱保持された熱風乾燥機内に試験片を投入し2分後に取り出す)することにより行った。このとき、加熱試験前と加熱試験後の長さ方向における寸法変化率が3%未満をランクA、3%以上をランクBとした。
得られた硬化樹脂フィルムについて、紫外可視分光光度針(Shimadzu UV−3100(島津製作所製))を用いて、380〜780nmにおける透過率を測定した。
得られたフィルム(硬化性樹脂膜としての転写フィルム、および、硬化樹脂フィルムとしての転写硬化フィルム)における転写面の表面形状は、レーザー顕微鏡(KEYENCE社製 カラー3Dレーザー顕微鏡(VK−9700))を用いての顕微鏡像の観察並びに日本工業規格(JIS)B0601−1994に準じた線粗さ測定により評価した。線粗さの測定条件は以下のとおりである。なお、測定数値は測定点数を3点とし平均化した値である。
対物レンズ:20倍 ズーム:1.0倍
測定ピッチ:RPD
測定モード:表面形状
測定エリア:面
測定品質:超高精細
解析ソフト:VK−9700/VK−8700 形状解析アプリケーション VK−HIAI
解析表面(画像)の傾き補正:2次曲面補正(自動)
解析長さ(基準長さl:500μm
解析線の傾き補正:直線(自動)
実施例、比較例で用いた転写ロールの材質と同じ材質の試験片(長さ80mm、幅10mm、厚さ4mm)を準備し、JIS K 7171 2008記載の方法により曲げ弾性率を測定し、これをロール材質の弾性率とした。
各実施例、比較例で用いたゴムからなるロールのゴムについては、弾性率が5×104MPa未満、SUSからなるロールのSUSについては弾性率が5×104MPa以上であることは確認した。
図11に示すように、幅30cm、長さ30cmの硬化性樹脂膜をテーブルに置き、カールするかどうかを評価した。直径(R)2cm以下の筒状にカールするものをカールありとし、端部の高さ(h)5cm以下のカール状態をカールなしとした。
〔ポリアミック酸溶液の調製〕
温度計、冷却管、ガス導入管、及び、攪拌機を備えた反応器を準備した。この反応器に、ポリアミック酸として、I.S.T社製ポリ(アミド)イミドワニスPyre−ML RC5083(商品名、固形分含有量:18.5%)、黒色材料として、日本触媒社製グラフトカーボンブラック溶液エポトーンLY(商品名、カーボンブラック濃度7.8%)、表面調整剤として、ビックケミー・ジャパン社製BYK−306(商品名、固形分:12.5%)を、表1に示す割合(質量%)で仕込み、2段パドルの攪拌羽根を用いて、窒素雰囲気下で60分間混合した後、加圧濾過器(ADVANTEC社製、KST−293−10−JA、商品名)を用いてSUS製300メッシュにして加圧濾過することにより、熱硬化性樹脂組成物としてのポリアミック酸溶液を得た。
上記調製例1によって得たポリアミック酸溶液を次の作製例1)〜3)に記載した成膜方法により成膜し、それぞれ硬化性樹脂膜を得た。得られた硬化性樹脂膜の揮発分含有量を測定した結果を表1に示す
作製例1)表面が平滑なPETフィルムを基材とし、ポリアミック酸溶液を該基材上に塗布し、130℃の温度で10分間乾燥させて離型し、硬化性樹脂膜を得た。
作製例2)表面が平滑なPETフィルムを基材とし、ポリアミック酸溶液を該基材上に塗布し、120℃の温度で10分間乾燥させて離型し、硬化性樹脂膜を得た。
作製例3)表面に凹凸形状が形成されたマットPETフィルム(鋳型フィルム)を基材とし、ポリアミック酸溶液を該基材上に塗布し、145℃の温度で10分間乾燥させて離型し、硬化性樹脂膜を得た。
作製例1)〜3)で得られたそれぞれの硬化性樹脂膜と鋳型フィルムとを積層させ、加圧及び加熱媒体として2本ロールを用い、該2本ロールの間を通過させることによって、表2に示した転写条件で硬化性樹脂膜の片側表面に表面凹凸形状を形成した。鋳型フィルム(転写材)としては、PET−1(帝人デュポン社製マットペットフィルム、銘柄:PSG〔商品名〕、厚さ100μm)を用いた。加圧及び加熱媒体としての2本ロールの構成としては、硬化性樹脂膜に接する側に表面層がゴム製のロールを用い、鋳型フィルムに接する側にSUSロールを用いた。
表面凹凸形状の転写後に離型し、得られた樹脂フィルムを、280℃で60分間加熱して硬化させた。カールの生成を観察し、表面光沢度を測定した。その結果を表2に示す。
マットフィルムを基材とした以外は作製例1と同様にして、ポリアミック酸溶液を用い、硬化性樹脂膜を成膜し、剥離することにより、表面凹凸形状が形成された硬化性樹脂膜を得た。該硬化性樹脂膜を280℃で1時間加熱して硬化させることにより、硬化樹脂フィルムを得た。その結果、カールが顕著であった。
作製例2で得られた硬化性樹脂膜を、加熱式エンボス機を用いてマットロール処理することにより、表面凹凸形状が形成された硬化性樹脂膜を得た。基材から剥離した後、280℃で1時間加熱して硬化させることにより、硬化樹脂フィルムを得た。その結果、カールが顕著であった。
上記実施例においては、硬化性樹脂膜と鋳型フィルムとを積層した状態で加圧及び加熱をすることによって初めて本発明の有利な効果が奏されることが示されている。少なくとも、鋳型フィルムを硬化性樹脂膜に積層させ、表面凹凸形成処理を行うものであれば、どのような方法であろうと硬化の際の収縮や揮発分に起因する影響を受けるものと考えられるが、本発明の製造方法であれば、硬化性樹脂膜を硬化させることによってもたらされる不具合を抑制することが可能となる。
なお、上記実施例においては、硬化性樹脂膜とマットペットフィルムとを積層し、ロールを用いて加圧及び加熱し、ロール間の線圧が5N/mm以上、ロールの温度を50℃としているが、各種の形態において鋳型フィルムを用い、加圧及び/又は加熱媒体を用いる転写における作用機構は同様であることから、本明細書において開示した種々の形態において本発明の製造方法が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。
2:SUSロール
3:硬化性樹脂膜
4:マットフィルム
5:マットロール
6:基材
7:硬化樹脂フィルム
8:遮光性フィルム
9:レンズ
10:赤外カットフィルター
11:バレル
12:センサーレンズ
13:コバ
14:樹脂膜A
15:表面凹凸フィルムB
16:他のフィルムC
f:粗さ曲線
m:平均線
R:筒状にカールした樹脂膜の直径
h:樹脂膜の端部の高さ
Claims (12)
- 硬化性樹脂組成物から形成される硬化性樹脂膜の少なくとも一方の表面に、転写により表面凹凸形状を形成し、硬化性樹脂膜を硬化させて硬化樹脂フィルムを製造する方法であって、
該製造方法は、表面凹凸形状を形成するための鋳型フィルムを用い、硬化性樹脂膜と鋳型フィルムとを積層した状態で加圧及び加熱をする工程を有することを特徴とする硬化樹脂フィルムの製造方法。 - 前記製造方法は、硬化性樹脂膜に揮発分がある状態で加圧及び加熱をすることを特徴とする請求項1に記載の硬化樹脂フィルムの製造方法。
- 前記製造方法は、表面温度が50℃以上の加熱媒体を硬化性樹脂膜と鋳型フィルムとに接触させることによって加熱し、硬化性樹脂膜と接する加熱媒体の表面温度が鋳型フィルムと接する加熱媒体の表面温度よりも高くなるようにすることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化樹脂フィルムの製造方法。
- 前記製造方法は、ロールを加圧及び加熱媒体として用いて加圧及び加熱をすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硬化樹脂フィルムの製造方法。
- 前記製造方法は、硬化性樹脂膜と鋳型フィルムとを積層した状態で少なくとも2本のロール間を通過させることによって加圧及び加熱し、2本のロールのうち少なくとも一方のロールの表面層を弾性体とし、硬化性樹脂膜が弾性体であるロールの表面層と接するようにすることを特徴とする請求項4に記載の硬化樹脂フィルムの製造方法。
- 前記製造方法は、ロール間の線圧を1〜100N/mmとすることを特徴とする請求項4又は5に記載の硬化樹脂フィルムの製造方法。
- 前記硬化樹脂組成物は、黒色材料を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の硬化樹脂フィルムの製造方法。
- 前記硬化樹脂フィルムは、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及びカチオン硬化樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の硬化樹脂フィルムの製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法により製造されることを特徴とする硬化樹脂フィルム。
- 請求項9に記載の硬化樹脂フィルムを備えることを特徴とする光散乱性フィルム。
- 請求項10に記載の光散乱性フィルムを備える遮光性フィルムであって、
該遮光性フィルムは、波長550nmの光に対する透過率が1%未満であることを特徴とする遮光性フィルム。 - 請求項11記載の遮光性フィルムとレンズとを備えるレンズユニットであって、
該レンズユニットは、撮影素子用レンズユニットであることを特徴とするレンズユニット。
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