JP2012076004A - ハードコート層付き光学部材の製造方法、ハードコート層表面形成用フィルム、及びハードコート層付き光学部材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プラスチック製又はガラス製基材の一方の面に、(X)多官能性(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は(メタ)アクリレート系プレポリマーを含有する無溶剤系の転写層形成用塗工液を塗工して得られた塗膜上に、剥離性の良好なハードコート層表面形成用フィルムを、その転写層が接するようにラミネートして、第1の活性エネルギー線を所定の光量で照射後、前記ハードコート層表面形成用フィルムを剥離したのち、第2の活性エネルギー線を所定の光量で照射することにより、ハードコート層付き光学部材を製造する。
【選択図】なし
Description
このような高平滑、あるいは制御された凹凸表面形状のハードコート層を得るため、従来、ハードコート剤を溶剤で十分希釈することにより、塗工液の均一性を高めかつ粘度を下げて基材に塗布することによるハードコート層の形成方法がとられていた。しかし、このような処方では、耐溶剤性の劣る基材上にハードコート層を設ける場合、溶剤による基材の侵食がしばしば問題となっていた。
このような基材に対しては、ハードコート層を予め別途作製しておき、後から貼り合わせるというハードコート層の形成方法が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。しかし、このような方法では、基材とハードコート層の接合に接着剤層を介することにより光学的性質の低下を招いたり、基材とハードコート層の間での剥がれ等が問題となるうえ、コスト的にも不利である。
該方法であれば、ハードコート層は塗工後に表面形状を整えるため、ハードコート層を形成するための塗工液を無溶剤化することができる。そのため、基材の耐溶剤性を考慮する必要がない。
しかし、特許文献1の方法ではハードコート層の硬化のために280℃という非常に高い温度を必要としており、耐熱性の基材にしか適用できないという問題を有する。また、該方法であれば、鋳型フィルムが樹脂からなる場合には、ハードコート層表面との剥離がスムーズにできないという問題も考えられる。ハードコート層と鋳型フィルムの間の剥離がスムーズではない場合、ハードコート層と基材の間での剥がれの原因となったり、ハードコート層表面を傷つける恐れがある。
(1)無溶剤系のハードコート層形成用塗工液を用いて基材に塗膜を設け、ハードコート層を形成することにより、耐溶剤性能に劣る基材に対しても耐擦傷性のある表面を形成し得ること、(2)上記(1)のハードコート層を形成するに際し、該塗膜上に別途作製したプラスチックフィルムの一方の面に、所望の表面状態(平滑面又は凹凸面)を有する転写層が設けられてなるハードコート層表面形成用フィルムを、その転写層が接するようにラミネートして、第1の活性エネルギー線の照射を特定の照射光量で行ったのち、該ハードコート層表面形成用フィルムを剥離し、さらに第2の活性エネルギー線の照射を特定の照射光量で行うことにより、該ハードコート層表面形成用フィルムの剥離が容易となると共に、前述した平滑タイプや凹凸タイプのハードコート層形成方法における諸問題を解決し、基材表面に耐擦傷性に優れる所望の表面状態(平滑面又は凹凸面)を有する均一な厚みのハードコート層付き光学部材を効率よく作製し得ること、を見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
[1]プラスチック製又はガラス製基材の一方の面に、(X)多官能性(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は(メタ)アクリレート系プレポリマーを含有する無溶剤系の転写層形成用塗工液を塗工して得られた塗膜上に、ハードコート層表面形成用フィルムを、その転写層が接するようにラミネートして、第1の活性エネルギー線照射後、前記ハードコート層表面形成用フィルムを剥離したのち、第2の活性エネルギー線を照射して作製されてなる光学部材の製造方法であって、(1)前記第1の活性エネルギー線照射光量が100〜300mJ/cm2であり、かつ前記第1の活性エネルギー線照射光量と第2の活性エネルギー線照射光量の合計が400〜1000mJ/cm2であること、及び(2)前記ハードコート層表面形成用フィルムが、支持フィルムの一方の面に、(A)多官能性(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は(メタ)アクリレート系プレポリマー、並びに(B)活性エネルギー線感応型のシリコーン化合物及び/又はフッ素化合物を含有する転写層形成用材料を塗工して得られた塗膜に、活性エネルギー線を照射して形成された転写層を有するものであることを特徴とするハードコート層付き光学部材の製造方法、
[2]ハードコート層表面形成用フィルムにおける転写層が、さらに(C)フィラーを含有し、該ハードコート層表面形成用フィルムの外部ヘーズ値が1〜20%である、上記[1]項に記載のハードコート層付き光学部材の製造方法、
[3]上記[1]又は[2]項に記載のハードコート層付き光学部材の製造方法において用いられることを特徴とするハードコート層表面形成用フィルム、及び
[4]上記[1]又は[2]項に記載のハードコート層付き光学部材の製造方法により作製されたことを特徴とするハードコート層付き光学部材、
を提供するものである。
[ハードコート層付き光学部材の製造方法]
本発明のハードコート層付き光学部材の製造方法(以下、単に光学部材の製造方法と称することがある。)は、プラスチック製又はガラス製基材の一方の面に、(X)多官能性(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は(メタ)アクリレート系プレポリマーを含有する無溶剤系のハードコート層形成用塗工液を塗工して得られた塗膜上に、ハードコート層表面形成用フィルムを、その転写層が接するようにラミネートして、第1の活性エネルギー線照射後、前記ハードコート層表面形成用フィルムを剥離したのち、第2の活性エネルギー線を照射して作製されてなる光学部材の製造方法であって、(1)前記第1の活性エネルギー線照射光量が100〜300mJ/cm2であり、かつ前記第1の活性エネルギー線照射光量と第2の活性エネルギー線照射光量の合計が400〜1000mJ/cm2であること、及び(2)前記ハードコート層表面形成用フィルムが、支持フィルムの一方の面に、(A)多官能性(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は(メタ)アクリレート系プレポリマー、並びに(B)活性エネルギー線感応型のシリコーン化合物及び/又はフッ素化合物を含有する転写層形成用材料を塗工して得られた塗膜に、活性エネルギー線を照射して形成された転写層を有するものであること、を特徴とする。
なお、本発明において、活性エネルギー線とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線や電子線などを指す。
本発明の光学部材の製造方法においては、基材としてプラスチック製又はガラス製基材が用いられる。
<プラスチック製基材>
プラスチック製基材については特に制限はなく、従来光学用ハードコートフィルムの基材として公知のプラスチックフィルムの中から適宜選択して用いることができる。このようなプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルムを挙げることができる。特に本実施形態にかかる製造方法であれば、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロース、アクリル樹脂フィルム等の耐溶剤性に劣る基材においても自由度の高いハードコート層表面形状の設計が可能になるという特徴を有する。
これらのプラスチックフィルムの厚さは特に制限はなく、状況に応じて適宜選定されるが、通常20〜2000μm、好ましくは40〜200μmの範囲である。また、このプラスチックフィルムは、その表面に設けられるハードコート層との密着性を向上させる目的で、所望によりハードコート層が設けられる表面に、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法はプラスチックフィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。また、プライマー層を設けることもできる。
一方、ガラス製基材としては特に制限はなく、例えばソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英などからなるガラス板を用いることができる。
このガラス製基材の厚さは、用途に応じて適宜選定されるが、通常0.2〜2mm程度、好ましくは0.5〜1mmである。
本発明の光学部材の製造方法においては、まず前述したプラスチック製又はガラス製基材の一方の面に、ハードコート層形成用塗工液を塗工して、厚さが好ましくは3〜50μm、より好ましくは5〜30μm、さらに好ましくは6〜20μmの無溶剤塗膜層を形成させる。
当該ハードコート層形成用塗工液は、(X)成分として多官能性(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は(メタ)アクリレート系プレポリマーを含有する。
当該ハードコート層形成用塗工液は無溶剤系であり、耐溶剤性に劣る基材に対しても、耐擦傷性のある表面を形成することができる。なお、無溶剤系とは、ハードコート層形成用塗工液中に希釈を目的として積極的に溶剤を配合することを除くものであり、ハードコート層形成用塗工液の各配合成分を準備する際に微量副生等する揮発成分の存在までをも除くことを意味するものではない。
当該ハードコート層形成用塗工液においては、(X)成分として、多官能性(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は(メタ)アクリレート系プレポリマーが用いられる。
前記多官能性(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのモノマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシアクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。ウレタンアクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。さらに、ポリオールアクリレート系プレポリマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。これらのプレポリマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、前記多官能性(メタ)アクリレート系モノマーと併用してもよい。
なお、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの両方を指し、他の類似用語も同様である。
当該ハードコート層形成用材料には、所望により光重合開始剤を含有させることができる。この光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸エステルなどが挙げられる。
これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その含有量は、前記(X)成分100質量部に対して、通常0.2〜10質量部の範囲で選ばれる。
当該ハードコート層形成用塗工液は無溶剤系であって、前記の(X)成分、及び必要に応じて用いられる光重合開始剤、さらには各種添加成分、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、(近)赤外線吸収剤、帯電防止剤、屈折率調整剤、シラン系カップリング剤、光安定剤、レベリング剤などを、それぞれ所定の割合で混合することにより調製することができる。
本発明の光学部材の製造方法において用いられるハードコート層表面形成用フィルムは、支持フィルムの一方の面に、(A)多官能性(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は(メタ)アクリレート系プレポリマー、並びに(B)活性エネルギー線感応型のシリコーン化合物及び/又はフッ素化合物を含有する転写層形成用材料を塗工して得られた塗膜に、活性エネルギー線を照射して形成された転写層を有するものである。
支持フィルムについては活性エネルギー線透過性であること以外特に制限はなく、前述のプラスチック製基材の説明において例示した各種のプラスチックフィルムを挙げることができる。
この支持フィルムの厚さは特に制限はなく、状況に応じて適宜選定されるが、通常15〜300μm、好ましくは30〜200μmの範囲である。また、この支持フィルムは、その表面に設けられるハードコート層との密着性を向上させる目的で、所望によりハードコート層が設けられる表面に、前記プラスチック製基材の場合と同様に、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。
前記表面処理法は支持フィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。また、プライマー層を設けることもできる。
当該ハードコート層表面形成用フィルムにおいては、前述した支持フィルムの一方の面に、転写層形成用材料を塗工して塗膜を形成する。
当該転写層形成用材料としては、(A)多官能性(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は(メタ)アクリレート系プレポリマー、並びに(B)活性エネルギー線感応型のシリコーン化合物及び/又はフッ素化合物を含有する。
当該転写層形成用材料においては、(A)成分として、多官能性(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は(メタ)アクリレート系プレポリマーが用いられる。
この多官能性(メタ)アクリレート系モノマー及び多官能性(メタ)アクリレート系プレポリマーについては、前述したハードコート層形成用塗工液における(X)成分の説明において例示したものの中から、適宜選択して用いることができる。
当該転写層形成用材料においては、(B)成分として、活性エネルギー線感応型のシリコーン化合物及び/又はフッ素化合物が用いられる。
この(B)成分である活性エネルギー線感応型のシリコーン化合物及び/又はフッ素化合物は、活性エネルギー線の照射により、前述した(A)成分と共に架橋硬化して、剥離性の良好な転写層を有するハードコート層表面形成用フィルムを与え、後述のハードコート層付き光学部材の製造において、最終段階でのハードコート層表面形成用フィルムの剥離が容易となる。
(B−1)活性エネルギー線感応型シリコーン化合物
活性エネルギー線感応型シリコーン化合物としては、例えば分子内に、アルケニル基とメルカプト基を有するラジカル付加型、アルケニル基と水素原子を有するヒドロシリル化反応型、エポキシ基を有するカチオン重合型、(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合型のシリコーン化合物が挙げられる。これらの中でも(A)成分の(メタ)アクリレート系モノマー等と共重合し(B)成分のブリードアウトを効果的に抑制する観点から、(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合型のシリコーン化合物が好ましい。
該ラジカル重合型のシリコーン化合物としては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物を挙げることができる。
一般式(1)
さらに、メチル基の少なくとも1つ以上が(メタ)アクリロイル基を含有するアルキル基で置換されている。(メタ)アクリロイル基を含有するアルキル基としては、−(CH2)y−O−CO−C(R')=CH2で表される基(yは2〜8の整数を表し、3又は4が好ましい。R'は水素原子又はメチル基を表す。)が好ましい。
なお、(メタ)アクリロイル基を含有するアルキル基で置換されていないメチル基の残り一部は、本発明の効果を損なわない範囲で(ポリ)エーテルアルキル、アラルキル、長鎖脂肪酸エステル、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド等により置換されていても良い。
ここで、活性エネルギー線感応型シリコーン化合物の市販品としては、例えばUMS−182、UMS−992、RMS−044、もしくはRMS−083[チッソ(株)製]、X−22もしくはX−24[信越化学工業(株)製]、GS1015[東亜合成化学(株)製]、又は紫光UV−AF100[日本合成化学工業(株)製]などが挙げられる。
これらの活性エネルギー線感応型シリコーン化合物は、1種を単独で用いても良いし2種以上を組合わせて用いてもよい。
一方、活性エネルギー線感応型フッ素化合物としては、フッ素原子を有する(メタ)アクリレートを挙げることができる。このフッ素原子を有する(メタ)アクリレートとしては、特に制限はなく、従来公知のフッ素原子を有する(メタ)アクリレートを使用することができる。
フッ素原子を有する(メタ)アクリレートとしては、剥離性の良好なハードコート層を形成し得る観点から、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基を有するウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
パーフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基を有するウレタン(メタ)アクリレートの中で、下記一般式(2)で示されるパーフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基を有するウレタンアクリレートが特に好適である。
(式中、Rfはパーフルオロアルキル基又はパーフルオルポリエーテル基を表す。)
CH2=CH−COO−C2H4−OH …(5)
当該転写層形成用材料においては、この(B)成分の含有量は、剥離性の良好な転写層を形成する観点から、前記(A)成分100質量部(固形分換算)に対して、好ましくは0.01〜30質量部、より好ましくは0.1〜20質量部、さらに好ましくは0.5〜10質量部である。
ハードコート層付き光学部材として防眩性を有するものを望む場合、当該転写層形成用材料においては、前述した(A)成分及び(B)成分と共に、さらに(C)成分としてフィラーを含有させることができる。(C)成分のフィラーを転写層形成用材料に含有させることによりハードコート層表面形成用フィルムの転写層表面に凹凸形状を付与する。この凹凸形状がハードコート層付き光学部材のハードコート面に反転した凹凸形状として転写され、これによりハードコート層付き光学部材に防眩性を付与することができる。
さらに、ハードコート層付き光学部材の防眩性と高精細性を両立するものとする観点から、このフィラーは、形成される転写層の表面状態を凹凸面として、得られるハードコート層表面形成用フィルムの外部ヘーズ値を、好ましくは1〜20%、より好ましくは、1.5〜18%、さらに好ましくは3〜15%に調整するために用いられる。
このフィラーとしては、無機微粒子及び有機微粒子のいずれであってもよい。無機微粒子としては、例えばシリカ微粒子などが挙げられる。一方、有機微粒子としては、例えばシリコーン系微粒子、メラミン系樹脂微粒子、アクリル系樹脂微粒子、アクリル−スチレン系共重合体微粒子、ポリカーボネート系微粒子、ポリエチレン系微粒子、ポリスチレン系微粒子、ベンゾグアナミン系樹脂微粒子などが挙げられる。なお、(C)成分として有機微粒子を選択することは、(A)成分等他の転写層形成材料との材料組成が近似し、転写層形成材料中への分散性に優れるため、より整った凹凸形状の転写層表面を得やすいという観点から特に好ましい。
これらフィラーは、球状であって粒度分布の狭いものが好ましい。このフィラーの平均粒径は、転写層の外部ヘーズ値を上記範囲に調整する観点から、1〜10μmであることが好ましく、3〜8μmであることがより好ましい。
なお、フィラーの平均粒径は、コールター・カウンター法で測定した値である。
当該転写層形成材料は、必要に応じ、適当な溶媒中に前述した前記の(A)成分、(B)成分、及び所望により用いられる(C)成分のフィラーや光重合開始剤、さらには各種添加成分、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、シラン系カップリング剤、光安定剤、界面活性剤、帯電防止剤、レベリング剤、消泡剤などを、それぞれ所定の割合で加え、溶解又は分散させることにより、調製することができる。なお、光重合開始剤としては、前述したハードコート層形成用塗工液における光重合開始剤として例示したものを適宜用いることができる。
この際用いる溶媒としては、例えばヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤などが挙げられる。
このようにして調製された転写層形成用材料の濃度、粘度としては、コーティング可能なものであればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。
前記支持フィルムの一方の面に、前記転写層形成用材料を、従来公知の方法、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを用いて、コーティングして塗膜を形成させ、乾燥後、これに活性エネルギー線を照射して該塗膜を硬化させることにより、転写層が形成される。
活性エネルギー線としては、例えば紫外線や電子線などが挙げられる。上記紫外線は、高圧水銀ランプ、無電極ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプなどで得られ、照射量は、通常100〜500mJ/cm2であり、一方電子線は、電子線加速器などによって得られ、照射量は、通常150〜350kVである。この活性エネルギー線の中では、特に紫外線が好適である。なお、電子線を使用する場合は、光重合開始剤を添加することなく、硬化膜を得ることができる。
なお、活性エネルギー線の照射は、通常、空気環境下で行うが、酸素による硬化阻害を考慮して、酸素濃度が1%以下、好ましくは0.5%以下の環境下で活性エネルギー線を照射することも好ましい。
このようにして、支持フィルムの一方の面に、転写層を有するハードコート層表面形成用フィルムが得られる。
上述の方法に従い、支持フィルム上に転写層形成用材料を塗布し、乾燥、及び活性エネルギー線照射を行うことにより転写層を形成する。ここで、転写層形成用材料として、(C)成分を添加しない場合、得られる転写層は、高平滑な表面を有するものとなる。一方、前述の条件に従い(C)成分を添加した場合は、表面に前述の凹凸形状を有する転写層が得られる。
ここで、形成される転写層の膜厚は、通常1〜20μmであり、好ましくは4〜10μmである。該膜厚が1μm未満であると、後述のハードコート層形成材料の塗膜とラミネートさせた際に、精度の高い転写ができない恐れがある。一方、該膜厚が20μmを超えると、得られるハードコート層表面形成用フィルムがカールしてしまう恐れがある。
本発明の光学部材の製造方法においては、前述したように、まず、プラスチック製又はガラス製基材の一方の面に、無溶剤系のハードコート層形成用塗工液を、従来公知の方法、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを用いて、硬化膜厚が3〜50μm程度、好ましくは6〜20μm程度になるように塗工して未硬化塗膜を形成させる。
次に、この未硬化塗膜上に、ハードコート層表面形成用フィルムを、その転写層が接するようにラミネートして積層体を作製する。この積層体は、ラミネートと同時又はラミネート後に、所望により、60〜120℃程度で1秒〜10分間程度加熱処理を行う。その後、第1の活性エネルギー線(好ましくは紫外線)を照射し、前記ハードコート層表面形成用フィルムを剥離する。この第1の活性エネルギー線の照射光量は100〜300mJ/cm2の範囲である。照射光量が上記の範囲にあれば、転写されたハードコート層の表面形状を維持しながらハードコート層表面形成用フィルムの剥離が容易となる。このようにして、ハードコート層表面形成用フィルムを剥離したのち、さらに第2の活性エネルギー線(好ましくは紫外線)を照射する。この第2の活性エネルギー線の照射光量は、前記第1の活性エネルギー線照射光量と第2の活性エネルギー線照射光量の合計が400〜1000mJ/cm2となる光量であり、好ましくは500〜800mJ/cm2である。全照射光量が上記の範囲にあれば、形成されるハードコート層は耐擦傷性に優れたものとなる。
なお、紫外線は、高圧水銀ランプ、無電極ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプなどで得られる。
このようにして形成されたハードコート層の厚さは、耐擦傷性及びカール防止性などの観点から、好ましくは3〜50μm、より好ましくは5〜30μm、さらに好ましくは6〜20μmである。
前記ハードコート層の表面は、平滑面であってもよいし、凹凸面であってもよい。該ハードコート層の表面状態は、ハードコート層表面形成用フィルムにおける転写層の表面状態によって決まる。
なお、各例における諸特性は、以下に示す方法により求めた。
<ハードコート層表面形成用フィルム>
日本電色工業(株)製ヘーズメーター「NDH−2000」を用い、JIS K 7136に準拠して、ハードコート層表面形成用フィルム、及び該フィルムの構成部材である支持フィルム単独のヘーズ値を測定した。
前記測定により得られたハードコート層表面形成用フィルムのヘーズ値から支持フィルムのヘーズ値を差し引くことによりハードコート層表面形成用フィルムの転写層の全ヘーズ値を算出した。
次に、アクリル系粘着剤[日本カーバイト社製、商品名「PE−121」]100質量部に、イソシアナート架橋剤[東洋インキ社製、商品名「BHS−8515」]2質量部、及びトルエン100質量部を加えて粘着剤溶液を作製した。
次に、厚さ50μmの透明フィルムとしてのポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡績社製、商品名「A4300」]に、乾燥後の粘着層の厚さが20μmになるように粘着剤溶液を塗布し、100℃で3分間乾燥して透明粘着シートを作製した。
作製した透明粘着シートをハードコート層表面形成用フィルムの転写層側に貼付して、内部ヘーズ値算出用試料とした。該透明粘着シートと内部ヘーズ値算出用試料の夫々のヘーズ値を前記同様にJIS K 7136に準拠して測定した。
そして、内部ヘーズ値算出用試料のヘーズ値から、透明粘着シートのヘーズ値及び支持フィルムのヘーズ値を差し引くことによりハードコート層表面形成用フィルムの転写層の内部ヘーズ値を算出した。
最後に、前記全ヘーズ値から内部ヘーズ値を差し引くことによりハードコート層表面形成用フィルムの転写層の外部ヘーズ値を算出した。
(2)耐擦傷性
スチールウール#0000を用いて、ハードコート層表面を10往復擦傷させた(加重250g/cm2(24.5kN/m2))後、目視観察した。ハードコート層表面に傷が見られない場合を○、傷が見られる場合を×と評価した。
(3)剥離力
第1の紫外線照射後、光学部材から表面形成用ハードコートフィルムを引張試験機[オリエンテック社製、「テンシロン」]を用いて、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で剥離力を測定した。この剥離力が3000mN/25mm以下であれば合格である。
(A)成分としてペンタエリスリトールトリアクリレート[東亞合成社製、登録商標「アロニックスM−305」、固形分濃度100質量%]100質量部、(B)成分として活性エネルギー線感応型シリコーン樹脂[日本合成化学社製、「紫光UV−AF100」;メチルエチルケトン希釈品、固形分濃度50質量%]2質量部、光重合開始剤[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア184」]5質量部、希釈溶剤としてトルエン150質量部を均一に混合し、固形分約40質量%の調製液aを作製した。
(B)成分として活性エネルギー線感応型フッ素樹脂[DIC社製、「メガファックEXP.RS−503」;メチルイソブチルケトン希釈品、固形分濃度40質量%]2質量部を用いた他は、調製液aの作製と同様の操作を行い調製液bを作製した。
調製液aにさらに(C)成分としてポリスチレン微粒子[綜研化学社製、「SX−350H」、平均粒径3.5μm]5質量部を加えて調製液cを作製した。
ペンタエリスリトールトリアクリレート[東亞合成社製、登録商標「アロニックスM−305」]100質量部、光重合開始剤[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア184」]5質量部を均一に混合し、固形分100質量%の調製液Aを作製した。
支持フィルムとして厚さ188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの表面に調製液aをマイヤーバーにて硬化膜厚が5μmとなるように塗工し、70℃のオーブンで1分間乾燥させた後、空気雰囲気下にて高圧水銀ランプで300mJ/cm2の紫外線を照射し、ハードコート層表面形成用フィルム1を得た。
次に、プラスチック製基材として別の厚さ188μmのPETフィルムの表面に調製液Aを硬化膜厚が10μmとなるように塗工し、その塗布面に、先に作製したハードコート層表面形成用フィルム1の転写層が接するようにラミネートし、100℃のオーブン中に10分間放置した。その後、1段階目の紫外線照射として、高圧水銀ランプで250mJ/cm2の紫外線を照射し、ハードコート層表面形成用フィルム付き光学部材を得た。この状態でハードコート層表面形成用フィルムを光学部材から剥離し、さらに2段階目の紫外線照射として光学部材のハードコート面に300mJ/cm2の紫外線を照射し、ハードコート層付き光学部材を得た。
1段階目の紫外線照射後の光学部材とハードコート層表面形成用フィルムの剥離力及び得られた光学部材の物性を第1表に示す。
ハードコート層表面形成用フィルムの作製において調製液bを用いた他は、実施例1と同様の操作を行い光学部材を得た。1段階目の紫外線照射後の光学部材とハードコート層表面形成用フィルムの剥離力及び得られた光学部材の物性を第1表に示す。
光学部材の作製工程において、プラスチック基材に換えてガラス製基材としてガラス[日本板硝子社製ソーダガラス「イーグル2000」]を用いた他は、実施例1と同様の操作を行い光学部材を得た。1段階目の紫外線照射後の光学部材とハードコート層表面形成用フィルムの剥離力及び得られた光学部材の物性を第1表に示す。
光学部材の作製工程において、プラスチック製基材としてトリアセチルセルロース(TAC)フィルム[富士フィルム社製、「TD80ULN」]を用いた他は、実施例1と同様の操作を行い光学部材を得た。1段階目の紫外線照射後の光学部材とハードコート層表面形成用フィルムの剥離力及び得られた光学部材の物性を第1表に示す。
ハードコート層表面形成用フィルムの作製において、調製液cを用いた他は、実施例1と同様の操作を行い光学部材を得た。1段階目の紫外線照射後の光学部材とハードコート層表面形成用フィルムの剥離力及び得られた光学部材の物性を第1表に示す。
前記ハードコート層表面形成用フィルムの外部ヘーズ値は15%であった。
光学部材作製プロセスにおいて1段階目の紫外線照射量を550mJ/cm2とし、2段階目の紫外線照射を行わなかった他は、実施例1と同様の操作を行いハードコート層表面形成用フィルムのついた光学部材を得た。この光学部材とハードコート層表面形成用フィルムの剥離力及び得られた光学部材の物性を第1表に示す。
光学部材作製プロセスにおいて2段階目の紫外線照射を行わなかった他は、実施例1と同様の操作を行い光学部材を得た。1段階目の紫外線照射後の光学部材とハードコート層表面形成用フィルムの剥離力及び得られた光学部材の物性を第1表に示す。
なお、前記剥離力は実施例1と同様である。
Claims (4)
- プラスチック製又はガラス製基材の一方の面に、(X)多官能性(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は(メタ)アクリレート系プレポリマーを含有する無溶剤系の転写層形成用塗工液を塗工して得られた塗膜上に、ハードコート層表面形成用フィルムを、その転写層が接するようにラミネートして、第1の活性エネルギー線照射後、前記ハードコート層表面形成用フィルムを剥離したのち、第2の活性エネルギー線を照射して作製されてなる光学部材の製造方法であって、(1)前記第1の活性エネルギー線照射光量が100〜300mJ/cm2であり、かつ前記第1の活性エネルギー線照射光量と第2の活性エネルギー線照射光量の合計が400〜1000mJ/cm2であること、及び(2)前記ハードコート層表面形成用フィルムが、支持フィルムの一方の面に、(A)多官能性(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は(メタ)アクリレート系プレポリマー、並びに(B)活性エネルギー線感応型のシリコーン化合物及び/又はフッ素化合物を含有する転写層形成用材料を塗工して得られた塗膜に、活性エネルギー線を照射して形成された転写層を有するものであることを特徴とするハードコート層付き光学部材の製造方法。
- ハードコート層表面形成用フィルムにおける転写層が、さらに(C)フィラーを含有し、該ハードコート層表面形成用フィルムの外部ヘーズ値が1〜20%である、請求項1に記載のハードコート層付き光学部材の製造方法。
- 請求項1又は2に記載のハードコート層付き光学部材の製造方法において用いられることを特徴とするハードコート層表面形成用フィルム。
- 請求項1又は2に記載のハードコート層付き光学部材の製造方法により作製されたことを特徴とするハードコート層付き光学部材。
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