以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
(第1実施形態)
本発明にかかる磁気記録媒体の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態にかかる磁気記録媒体としてのディスクリート型垂直磁気記録媒体100の構成を説明する図である。ディスクリート型垂直磁気記録媒体(ディスクリートトラックメディアとも称される。以下、単に垂直磁気記録媒体100と称する。)は、線状に形成した磁性記録部と非記録部とを半径方向に交互に配置している。これにより、当該垂直磁気記録媒体100の熱揺らぎ耐性を向上し、高記録密度化を促進することが可能となる。
図1に示す垂直磁気記録媒体100は、ディスク基体110、付着層112、第1軟磁性層114a、スペーサ層114b、第2軟磁性層114c、前下地層116、第1下地層118a、第2下地層118b、非磁性グラニュラー層120、第1磁気記録層122a、介在層122b、第2磁気記録層122c、補助記録層124、媒体保護層126、潤滑層128で構成されている。なお第1軟磁性層114a、スペーサ層114b、第2軟磁性層114cは、あわせて軟磁性層114を構成する。第1下地層118aと第2下地層118bはあわせて下地層118を構成する。第1磁気記録層122aと介在層122b、第2磁気記録層122cとはあわせて磁気記録層122を構成する。
ディスク基体110は、アモルファス(非晶質)のアルミノシリケートガラスをダイレクトプレスで円板状に成型したガラスディスクを用いることができる。なおガラスディスクの種類、サイズ、厚さ等は特に制限されない。ガラスディスクの材質としては、例えば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ソーダアルミノケイ酸ガラス、アルミノボロシリケートガラス、ボロシリケートガラス、石英ガラス、チェーンシリケートガラス、又は、結晶化ガラス等のガラスセラミックなどが挙げられる。このガラスディスクに研削、研磨、化学強化を順次施し、化学強化ガラスディスクからなる平滑な非磁性のディスク基体110を得ることができる。
ディスク基体110上に、DCマグネトロンスパッタリング法にて付着層112から補助記録層124まで順次成膜を行い、媒体保護層126はCVD法により成膜することができる。この後、潤滑層128をディップコート法により形成することができる。なお、生産性が高いという点で、インライン型成膜方法を用いることも好ましい。以下、各層の構成および第1実施形態の特徴である、レジスト層成膜、パターニング、イオン注入、レジスト除去を行う磁気トラックパターン形成について説明する。
付着層112はディスク基体110に接して形成され、この上に成膜される軟磁性層114とディスク基体110との剥離強度を高める機能と、この上に成膜される各層の結晶グレインを微細化及び均一化させる機能を備えている。付着層112は、ディスク基体110がアモルファスガラスからなる場合、そのアモルファスガラス表面に対応させる為にアモルファスの合金膜とすることが好ましい。
付着層112としては、例えばCrTi系非晶質層、CoW系非晶質層、CrW系非晶質層、CrTa系非晶質層、CrNb系非晶質層から選択することができる。中でもCoW系合金膜は、微結晶を含むアモルファス金属膜を形成するので特に好ましい。付着層112は単一材料からなる単層でも良いが、複数層を積層して形成してもよい。例えばCrTi層の上にCoW層またはCrW層を形成してもよい。またこれらの付着層112は、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、又は酸素を含む材料によってスパッタを行うか、もしくは表面層をこれらのガスで暴露したものであることが好ましい。
軟磁性層114は、垂直磁気記録方式において記録層に垂直方向に磁束を通過させるために、記録時に一時的に磁路を形成する層である。軟磁性層114は第1軟磁性層114aと第2軟磁性層114cの間に非磁性のスペーサ層114bを介在させることによって、AFCカップリングを備えるように構成することができる。これにより軟磁性層114の磁化方向を高い精度で磁路(磁気回路)に沿って整列させることができ、磁化方向の垂直成分が極めて少なくなるため、軟磁性層114から生じるノイズを低減することができる。第1軟磁性層114a、第2軟磁性層114cの組成としては、CoTaZrなどのコバルト系合金、CoCrFeB、CoFeTaZrなどのCo−Fe系合金などを用いることができる。
前下地層116は非磁性の合金層であり、軟磁性層114を防護する作用と、この上に成膜される下地層118に含まれる六方最密充填構造(hcp構造)の磁化容易軸をディスク垂直方向に配向させる機能を備える。前下地層116は面心立方構造(fcc構造)の(111)面がディスク基体110の主表面と平行となっていることが好ましい。また前下地層116は、これらの結晶構造とアモルファスとが混在した構成としてもよい。前下地層116の材質としては、Ni、Cu、Pt、Pd、Zr、Hf、Nb、Taから選択することができる。さらにこれらの金属を主成分とし、Ti、V、Cr、Mo、Wのいずれか1つ以上の添加元素を含む合金としてもよい。例えばfcc構造を取る合金としてはNiW、CuW、CuCrを好適に選択することができる。
下地層118はhcp構造であって、磁気記録層122のCoのhcp構造の結晶をグラニュラー構造として成長させる作用を有している。したがって、下地層118の結晶配向性が高いほど、すなわち下地層118の結晶の(0001)面がディスク基体110の主表面と平行になっているほど、磁気記録層122の配向性を向上させることができる。下地層118の材質としてはRuが代表的であるが、その他に、RuCr、RuCoから選択することができる。Ruはhcp構造をとり、また結晶の格子間隔がCoと近いため、Coを主成分とする磁気記録層122を良好に配向させることができる。
下地層118をRuとした場合において、スパッタ時のガス圧を変更することによりRuからなる2層構造とすることができる。具体的には、下層側の第1下地層118aを形成する際にはArのガス圧を所定圧力、すなわち低圧にし、上層側の第2下地層118bを形成する際には、下層側の第1下地層118aを形成するときよりもArのガス圧を高くする、すなわち高圧にする。これにより、第1下地層118aによる磁気記録層122の結晶配向性の向上、および第2下地層118bによる磁気記録層122の磁性粒子の粒径の微細化が可能となる。
また、ガス圧を高くするとスパッタリングされるプラズマイオンの平均自由行程が短くなるため、成膜速度が遅くなり、皮膜が粗になるため、Ruの結晶粒子の分離微細化を促進することができ、Coの結晶粒子の微細化も可能となる。
さらに、下地層118のRuに酸素を微少量含有させてもよい。これによりさらにRuの結晶粒子の分離微細化を促進することができ、磁気記録層122の磁性粒のさらなる孤立化と微細化を図ることができる。なお酸素はリアクティブスパッタによって含有させてもよいが、スパッタリング成膜する際に酸素を含有するターゲットを用いることが好ましい。
非磁性グラニュラー層120はグラニュラー構造を有する非磁性の層である。下地層118のhcp結晶構造の上に非磁性グラニュラー層120を形成し、この上に第1磁気記録層122a(または磁気記録層122)のグラニュラー層を成長させることにより、磁性のグラニュラー層を初期成長の段階(立ち上がり)から分離させる作用を有している。これにより、磁気記録層122の磁性粒子の孤立化を促進することができる。非磁性グラニュラー層120の組成は、Co系合金からなる非磁性の結晶粒子の間に、非磁性物質を偏析させて粒界を形成することにより、グラニュラー構造とすることができる。
本実施形態においては、かかる非磁性グラニュラー層120にCoCr−SiO2を用いる。これにより、Co系合金(非磁性の結晶粒子)の間にSiO2(非磁性物質)が偏析して粒界を形成し、非磁性グラニュラー層120がグラニュラー構造となる。なお、CoCr−SiO2は一例であり、これに限定されるものではない。他には、CoCrRu−SiO2を好適に用いることができ、さらにRuに代えてRh(ロジウム)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Au(金)も利用することができる。また非磁性物質とは、磁性粒(磁性グレイン)間の交換相互作用が抑制、または、遮断されるように、磁性粒の周囲に粒界部を形成しうる物質であって、コバルト(Co)と固溶しない非磁性物質であればよい。例えば酸化珪素(SiOx)、クロム(Cr)、酸化クロム(CrO2、Cr2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコン(ZrO2)、酸化タンタル(Ta2O5)を例示できる。
なお本実施形態では、下地層118(第2下地層118b)の上に非磁性グラニュラー層120を設けているが、これに限定されるものではなく、非磁性グラニュラー層120を設けずに当該垂直磁気記録媒体100を構成することも可能である。
磁気記録層122は、Co系合金、Fe系合金、Ni系合金から選択される硬磁性体の磁性粒の周囲に非磁性物質を偏析させて粒界を形成した柱状のグラニュラー構造を有した強磁性の層である。この磁性粒は、非磁性グラニュラー層120を設けることにより、そのグラニュラー構造から継続してエピタキシャル成長することができる。本実施形態にかかる垂直磁気記録媒体100はディスクリート型であるため、磁気記録層122がグラニュラー構造をとる構成によりSNRを向上させることが可能となる。
磁気記録層122は、本実施形態では組成および膜厚の異なる第1磁気記録層122aと、第2磁気記録層122c、およびこれらの間に設けられた介在層122bとから構成されている。これにより、第1磁気記録層122aの結晶粒子から継続して第2磁気記録層122cの小さな結晶粒子が成長し、主記録層たる第2磁気記録層122cの微細化を図ることができ、SNRの向上が可能となる。
また、磁気記録層122を構成する第1磁気記録層122aおよび第2磁気記録層122cには、後述する磁気トラックパターン形成を施すことにより、磁性記録部と非記録部とが面内方向に所定のパターンで形成される。そして、非記録部に存在する第1磁気記録層122aおよび第2磁気記録層122cは比透磁率が2〜100程度となり、その磁性は、硬磁性ではなく、硬磁性と軟磁性との間程度の磁性、すなわち非硬磁性となる。これにより、後述するように、非硬磁性(非記録部)となった第1磁気記録層122aおよび第2磁気記録層122cにおいて、磁化方向が反平行に交換結合したAFCカップリングを形成することが可能となる。なお、以下の説明において、非記録部に存在する第1磁気記録層122aおよび第2磁気記録層122cを非硬磁性層と称する。
上記の非硬磁性層の比透磁率は2〜100であることが好ましく、更に好ましくは3〜50であるとよい。これにより、良好なSNRを確保しつつ、磁性記録部の書き込み特性および読み出し特性(リードライト:Read Write特性)を向上させることが可能となる。
本実施形態では、第1磁気記録層122aにCoCrPt−Cr2O3を用いる。CoCrPt−Cr2O3は、CoCrPtからなる磁性粒(グレイン)の周囲に、非磁性物質であるCrおよびCr2O3(酸化物)が偏析して粒界を形成し、磁性粒が柱状に成長したグラニュラー構造を形成した。この磁性粒は、非磁性グラニュラー層のグラニュラー構造から継続してエピタキシャル成長した。
介在層122bは、Ruからなる非磁性の薄膜、すなわち非磁性層である。かかる介在層122bを第1磁気記録層122aと第2磁気記録層122cの間に介在させることにより、後述する磁気トラックパターン形成により第1磁気記録層122aおよび第2磁気記録層122cに磁性記録部と非記録部とが面内方向に所定のパターンで形成された際に、非硬磁性層(非記録部に存在する第1磁気記録層122aおよび第2磁気記録層122c)においてAFCカップリングが形成される。
上記のAFCカップリングにより、非記録部における非硬磁性層、すなわち非硬磁性層となった第1磁気記録層122aおよび第2磁気記録層122cでは、第1磁気記録層122a(介在層122bの下に存在する非硬磁性層)の磁界と、第2磁気記録層122c(介在層122bの上に存在する非硬磁性層)の磁界とが互いに引き合うため、磁化容易軸の磁化方向が互いに反平行(平行かつ互いに逆向き)となり、且つ基体主表面と平行になった状態で固定される。したがって、非硬磁性層(非記録部)の磁化方向が制御され、垂直方向の磁束を極めて低減することができ、ノイズを減らすことが可能となる。その結果、当該垂直磁気記録媒体100のSNRが向上する。
本実施形態において介在層122bはRuにより構成されている。Ruは、第1磁気記録層122aおよび第2磁気記録層122cの磁性粒子を構成するCoと同様の結晶形態(hcp)を有するため、介在層122bを第1磁気記録層122aと第2磁気記録層122cとの間に介在させても、第1磁気記録層122aおよび第2磁気記録層122cのCo結晶粒子のエピタキシャル成長を阻害しにくい。なお、介在層122bを構成する物質は、Ru以外にも、Ru化合物を用いることができる。かかるRu化合物は、RuO、Ru−Co、Ru−Cr、Ru−SiO2、Ru−TiO2、Ru−Cr2O3、Ru−WO3、Ru−Ta2O5の群から選択してもよい。これらのRu化合物も、高保磁力Hcの確保およびSNRの向上に効果的である。
また、介在層122bには、Pt、Cr、Ta、Pd、Irの群から選択された1または複数の元素を更に含んでもよい。
更に、介在層122bは膜厚が約0.3nm、または約0.7nm、もしくは約1.3nmであるとよい。これにより、非硬磁性層(非記録部となった第1磁気記録層122aおよび第2磁気記録層122c)の間にAFCカップリングを確実に形成することが可能となる。
ここで、上記の膜厚はAFCカップリングがピークを示す際の値であり、AFCカップリングの強度は、上記の介在層122bの膜厚において複数のピークを示しながら低下していく。したがって、AFCカップリングの強度は、介在層122bの膜厚が、約0.3nm、約0.7nm、約1.3nmの順に低下することとなるため、介在層122bの膜厚は約0.3nmが最も好ましく、次に約0.7nmが好ましい。
なお、本実施形態においては介在層122bを第1磁気記録層122aと第2磁気記録層122cとの間に設けたが、これに限定するものではなく、本実施形態のように磁気記録層122上に後述する補助記録層124が設けられている場合、磁気記録層122と補助記録層124との間に介在層122bを設けることも可能である。
第2磁気記録層122cには、CoCrPt−SiO2−TiO2を用いる。第2磁気記録層122cにおいても、CoCrPtからなる磁性粒(グレイン)の周囲に非磁性物質であるCrおよびSiO2、TiO2(複合酸化物)が偏析して粒界を形成し、磁性粒が柱状に成長したグラニュラー構造を形成した。
上述したように、本実施形態にかかる第1磁気記録層122aはCoCrPt−Cr2O3からなり、第2磁気記録層122cはCoCrPt−SiO2−TiO2からなる。このように、磁気記録層122にPtを含む構成により、後述するイオン注入において好適に非硬磁性層の比透磁率を2〜100にすることができる。また本実施形態において、磁気記録層122の磁性粒は、CoCrPtで構成しているが、Fe、Pt、Ru、Co、Cr、Pdからなる群から選択された1または複数の元素を含んで(例えば、CoFeCrPt)構成してもよく、これによっても非硬磁性層の比透磁率を2〜100にすることが可能である。
なお、上記に示した第1磁気記録層122aおよび第2磁気記録層122cに用いた物質は一例であり、これに限定されるものではない。また、本実施形態では、第1磁気記録層122aと第2磁気記録層122cで異なる材料(ターゲット)であるが、これに限定されず組成や種類が同じ材料であってもよい。非磁性領域を形成するための非磁性物質としては、例えば酸化珪素(SiOx)、クロム(Cr)、酸化クロム(CrXOY)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコン(ZrO2)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化ボロン(B2O3)等の酸化物を例示できる。また、BN等の窒化物、B4C3等の炭化物も好適に用いることができる。
さらに本実施形態では、第1磁気記録層122aにおいて1種類の、第2磁気記録層122cにおいて2種類の非磁性物質(酸化物)を用いているが、これに限定されるものではなく、第1磁気記録層122aまたは第2磁気記録層122cのいずれかまたは両方において2種類以上の非磁性物質を複合して用いることも可能である。このとき含有する非磁性物質の種類には限定がないが、本実施形態の如く特にSiO2およびTiO2を含むことが好ましい。したがって、本実施形態とは異なり、磁気記録層122が1層のみで構成される場合、かかる磁気記録層122はCoCrPt−SiO2−TiO2からなることが好ましい。
補助記録層124は基体主表面の面内方向に磁気的にほぼ連続した磁性層である。補助記録層124は磁気記録層122に対して磁気的相互作用を有するように、隣接または近接している必要がある。補助記録層124の材質としては、例えばCoCrPt、CoCrPtB、またはこれらに微少量の酸化物を含有させて構成することができる。補助記録層124は逆磁区核形成磁界Hnの調整、保磁力Hcの調整を行い、これにより耐熱揺らぎ特性、OW特性、およびSNRの改善を図ることを目的としている。この目的を達成するために、補助記録層124は垂直磁気異方性Kuおよび飽和磁化Msが高いことが望ましい。なお本実施形態において補助記録層124は磁気記録層122の上方に設けているが、下方に設けてもよい。また本実施形態において、垂直磁気記録媒体100は、ディスクリート型であるため補助記録層124を備える構成をとっているが、ビットパターン型磁気記録媒体である場合には、補助記録層124を備えなくてもよい。
なお、「磁気的に連続している」とは磁性が連続していることを意味している。「ほぼ連続している」とは、補助記録層124全体で観察すれば一つの磁石ではなく、結晶粒子の粒界などによって磁性が不連続となっていてもよいことを意味している。粒界は結晶の不連続のみではなく、Crが偏析していてもよく、さらに微少量の酸化物を含有させて偏析させても良い。ただし補助記録層124に酸化物を含有する粒界を形成した場合であっても、磁気記録層122の粒界よりも面積が小さい(酸化物の含有量が少ない)ことが好ましい。補助記録層124の機能と作用については必ずしも明確ではないが、磁気記録層122のグラニュラー磁性粒と磁気的相互作用を有する(交換結合を行う)ことによってHnおよびHcを調整することができ、耐熱揺らぎ特性およびSNRを向上させていると考えられる。またグラニュラー磁性粒と接続する結晶粒子(磁気的相互作用を有する結晶粒子)がグラニュラー磁性粒の断面よりも広面積となるため磁気ヘッドから多くの磁束を受けて磁化反転しやすくなり、全体のOW特性を向上させるものと考えられる。
媒体保護層126は、真空を保ったままカーボンをCVD法により成膜して形成することができる。媒体保護層126は、磁気ヘッドの衝撃から垂直磁気記録媒体100を防護するための層である。一般にCVD法によって成膜されたカーボンはスパッタ法によって成膜したものと比べて膜硬度が向上するので、磁気ヘッドからの衝撃に対してより有効に垂直磁気記録媒体100を防護することができる。
(磁気トラックパターン形成)
次に、本実施形態の磁気記録層122に、面内方向に所定のパターンで磁性記録部と非記録部とを形成する磁気トラックパターン形成について詳述する。ここで、磁気トラックパターン形成は、上記磁気記録層122の成膜直後に行ってもよいが、補助記録層124および媒体保護層126を成膜した後に行ってもよい。
本実施形態では、磁気トラックパターン形成を、媒体保護層126を成膜した後に行う。これにより、磁気トラックパターン形成後に媒体保護層126を成膜する必要がなくなり、製造工程が簡便になる。したがって、生産性の向上および垂直磁気記録媒体100の製造工程における汚染の低減を図ることができる。
図2は、第1実施形態にかかる磁気トラックパターン形成について説明するための説明図である。なお、図2において、理解を容易にするために磁気記録層122よりディスク基体110側の層の記載を省略する。磁気トラックパターン形成は、レジスト層成膜、パターニング、イオン注入、レジスト層除去の順に行われる。以下、磁気トラックパターン形成の詳細について説明する。
<レジスト層成膜>
図2(a)に示すように、媒体保護層126の上に、スピンコート法を用いてレジスト層130を成膜する。レジスト層130としてシリカを主成分とするSOG(Spin On Glass)、一般的なノボラック系のフォトレジスト等を好適に利用できる。
<パターニング>
図2(b)に示すように、レジスト層130にスタンパ132を押し当てることによって、磁性トラックパターンを転写する(インプリント法)。スタンパ132は、転写しようとする磁性記録部と非記録部との所定のパターンに対応する凹凸パターンを有する。なお、スタンパには、磁性記録部および非記録部の所定パターン以外にも、プリアンブル、アドレス、およびバースト等のサーボ情報を記憶するためのサーボパターンに対応する凹凸パターンを設けることも可能である。
スタンパ132によってレジスト層130に磁性トラックパターンを転写した後、スタンパ132をレジスト層130から取り除くことにより、レジスト層130に凹凸パターンが形成される。本実施形態では、スタンパ132の表面にフッ素系剥離剤を塗布している。これにより、レジスト層130から良好にスタンパ132を剥離することが可能となる。
なお本実施形態では、パターニングにおいてスタンパ132を用いたインプリント法を利用しているが、フォトリソグラフィ法も好適に利用することができる。ただし、フォトリソグラフィ法を利用する場合には、上述したレジスト層成膜の際に、フォトレジストをレジスト層として成膜し、成膜したフォトレジストをマスクを用いて露光・現像し、磁性記録部としての所定のパターンを転写する。
<イオン注入>
図2(c)に示すように、パターニングにより所定のパターンを形成したレジスト層130の凹部から、媒体保護層126を介して、第1磁気記録層122aおよび第2磁気記録層122c(複数の硬磁性層)と、これらの間に配置された介在層122b(非磁性層)とからなる磁気記録層122へ、イオンビーム法を用いてイオンを注入する。これにより、磁気記録層122におけるイオンが注入された部分の結晶が非晶質化されるため、その部分の第1磁気記録層122aおよび第2磁気記録層122cを非硬磁性層(非記録部)とすることができる。したがって、レジスト層130の凸部の下にある部分を磁気的に分離された磁性記録部とすることが可能となる。
特に本実施形態では、以下に示す条件でイオン注入を行うことにより、レジスト層130の凹部の下にある磁気記録層122の領域134(図2中、ハッチングで示す)の比透磁率を2〜100にし、かかる領域に存在する第1磁気記録層122aおよび第2磁気記録層122cを非硬磁性層(非記録部)とする。その結果、非記録部の非硬磁性層により、レジスト層130の凸部の下にある部分、すなわち磁性記録部を磁気的に分離することができ、良好なSNRを維持しつつ、磁性記録部への書き込み特性および読み出し特性を向上させることができる。
本実施形態では、注入するイオンとしてAr、N2、O2の1または複数を用いている。これにより、非硬磁性層の比透磁率を2〜100にすることができる。なお、かかるイオンに限定するものではなく、B、P、Si,F、C、In、Bi、Kr、Ar、Xe、W、As、Ge、Mo、Sn、N2、O2からなる群から選択されたいずれか1または複数のイオンを注入すればよい。
また、イオンを注入するエネルギー量は1〜50keVである。イオンを注入するエネルギー量が1keV未満であると、磁気記録層122における磁性記録部の磁気的な分離が適切に行われず、ヘッドによる読み出しを行う際にノイズが発生原因となる。その結果、当該垂直磁気記録媒体100をパターンドメディアとして構成することができなくなってしまう。また、50keV以上であると、磁気記録層122の非磁性化や非晶質化が促進されすぎてしまい、リードライト特性が低下したり、レジスト層130の凸部の下にある磁性記録部の磁気記録層122までもが非磁性化(非硬磁性化)されてしまう。
さらに、注入されるイオンの総量(ドーズ量)は、1E15〜1E17atom/cm2である。これにより、好適に非硬磁性層の比透磁率を2〜100にすることができる。したがって、良好なSNRを維持しつつ、磁性記録部のリードライト特性を向上させることができる。
<レジスト層除去>
図2(d)に示すように、レジスト層130をフッ素系ガスを用いたRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)により除去する。本実施形態ではエッチングガスにSF6を用いているが、これに限定されず、CF4、CHF3、C2F6からなる群から選択されたいずれか1種または複数の混合ガスも好適に利用することができる。
本実施形態では、レジスト層130としてSOGを用いているため、フッ素系ガスを用いて、エッチングを行っているが、レジスト層130の材質によってガスの種類を適宜変更することはいうまでもない。例えば、レジスト層130としてノボラック系フォトレジストを用いた場合、酸素ガスを用いたRIEが好適である。
また、本実施形態においてRIEのプラズマ源は、低圧で高密度プラズマが生成可能なICP(Inductively Coupled Plasma)を利用しているが、これに限定されず、ECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマや、一般的な平行平板型RIE装置を利用することもできる。
上述したように、レジスト層成膜、パターニング、イオン注入、レジスト層除去を行うことにより、当該垂直磁気記録媒体100に面内方向に所定のパターンの磁性記録部と非記録部、すなわち磁気トラックパターンが形成される。これにより、当該垂直磁気記録媒体100をパターンドメディアであるディスクリートトラックメディアとすることが可能となる。なお、かかるディスクリートトラックメディアに限定するものではなく、上記の磁気トラックパターン形成により当該垂直磁気記録媒体100をビットパターンメディアとすることもできる。
そして、磁気トラックパターンを形成した後に、垂直磁気記録媒体100に潤滑層128を成膜する。潤滑層128は、PFPE(パーフロロポリエーテル)をディップコート法により成膜することができる。PFPEは長い鎖状の分子構造を有し、媒体保護層126表面のN原子と高い親和性をもって結合する。この潤滑層128の作用により、垂直磁気記録媒体100の表面に磁気ヘッドが接触しても、媒体保護層126の損傷や欠損を防止することができる。
図3は、第1実施形態にかかる垂直磁気記録媒体100の断面図である。ディスク基体110上に上述した複数の層を成膜した後に磁気トラックパターンを形成し、その後潤滑層128を成膜することにより製造された垂直磁気記録媒体100の断面は、図3に示すようになる。なお、図3中、理解を容易にするために磁気記録層122以外の層の記載を省略する。
図3に示すように、磁気トラックパターン形成を行うことにより、当該垂直磁気記録媒体に、磁性記録部152と非記録部154とが面内方向に所定のパターンで形成される。そして、磁気トラックパターン形成においてイオンをされた部分、すなわちレジスト層130の凹部の下に存在した第1磁気記録層122aは非硬磁性層156となり、第2磁気記録層122cは非硬磁性層158となる。これらの非硬磁性層156および158の比透磁率を2〜100である。これにより、良好なSNRを維持しつつ、磁性記録部152のリードライト特性を向上させることが可能となる。
また、非硬磁性層156および158との間に介在層122b(非磁性層)が存在し、かかる介在層122bの厚みは、約0.3nm、または約0.7nm、もしくは約1.3nmである。これにより、非硬磁性層156および158間でAFCカップリングが形成される。その結果、非記録部154において、介在層122b(非磁性層)の下に存在する非硬磁性層156の磁界と、介在層122bの上に存在する非硬磁性層158の磁界とが互いに引き合い、非硬磁性層156の磁化容易軸156aおよび非硬磁性層158の磁化容易軸158aは、磁化方向が互いに反平行(平行かつ互いに逆向き)となり、且つディスク基体110の主表面に対して平行になった状態で配向する。したがって、磁化容易軸156aおよび158aの磁化方向が制御され、垂直方向の磁束を低減することができ、非記録部154に起因するノイズを著しく減らすことが可能となり、当該垂直磁気記録媒体100のSNRが向上する。
(第2実施形態)
本発明にかかる磁気記録媒体の第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態では、磁気トラックパターン形成において、レジスト層成膜、パターニング、イオン注入、レジスト除去を行った。第2実施形態においては、磁気トラックパターン形成において、イオン注入に替えて、エッチング(磁気記録層エッチング、充填層成膜、保護層再成膜、レジスト除去、最終保護層成膜、平坦化)を行う。したがって、第2実施形態にかかる磁気記録媒体であるディスクリート型垂直磁気記録媒体における各層の構成については、第1実施形態にかかる垂直磁気記録媒体100と実質的に同一であり、第2実施形態にかかる磁気トラックパターン形成も、パターニングまでは第1実施形態と同一の手法である。したがって、第1実施形態において既に述べた要素についての説明を省略し、以下の説明では、第1実施形態との差分、すなわち、磁気記録層エッチング、充填層成膜、保護層再成膜、レジスト除去、最終保護層成膜、平坦化からなるエッチングについてのみ詳述する。
(磁気トラックパターン形成)
図4は、第2実施形態にかかる磁気トラックパターン形成について説明するための説明図である。なお、図4中、理解を容易にするために非磁性グラニュラー層120よりディスク基体110側の層の記載を省略する。第2実施形態における磁気トラックパターン形成は、レジスト層成膜、パターニング、磁気記録層エッチング、充填層成膜、保護層再成膜、レジスト除去、最終保護層成膜、平坦化の順に行われる。
<磁気記録層エッチング>
レジスト層130を成膜し、パターニングを行った後に(図2(b)参照)、所定のパターンにパターニングされたレジスト層130の凹部から、媒体保護層126および補助記録層124を介して、第1磁気記録層122aおよび第2磁気記録層122c(複数の硬磁性層)と、これらの間に配置された介在層122b(非磁性層)とからなる磁気記録層122をイオンミリング(エッチング)し、図4(a)に示すように、パターニングで転写された所定のパターンに基づいて凸部と凹部136を磁気記録層122に形成する。
媒体保護層126は、酸素を用いたRIEにより除去する(酸素アッシング)。本実施形態においてRIEのプラズマ源は、低圧で高密度プラズマが生成可能なICPを利用しているが、これに限定されず、ECRプラズマや、一般的な平行平板型RIE装置を利用することもできる。
補助記録層124および磁気記録層122は、Arを用いたIBE(Ion Beam Etching:イオンビームエッチング)によりイオンミリングを行い除去する。本実施形態において、IBEのプラズマ源は、ECRプラズマを利用しているが、これに限定されず、低圧で高密度プラズマが生成可能なICPや、一般的な平行平板型RIE装置を利用することもできる。ECRイオンガンを用いたイオンミリングでは、静止対向型(イオン入射角90°)でエッチングすることで、磁気記録層122に形成される凹部、凸部にテーパを設けず加工することが可能となる。
本実施形態にかかる磁気記録層エッチングでは、マイクロ波パワー800W、加速電圧400から500V、イオン入射角度は30°から70°まで変化させて磁気記録層122をエッチングする。
上記のイオンミリングを行うことにより、パターニングで転写された凹部の下の部分に存在する、すなわち非記録部154となる部分のレジスト層130、媒体保護層126、補助記録層124および磁気記録層122を除去することができ、凸部の下の部分に存在する、すなわち磁性記録部152となる部分の磁気記録層122を残存させることが可能となる。これにより、凸部の下の部分の磁気記録層122、すなわち磁性記録部152を、凹部136を介して物理的に分離させることができる。
また、本実施形態では、磁気記録層122の直下の層である非磁性グラニュラー層120の表面に到達するまで、イオンミリングを行う。これにより、磁気記録層122の磁性記録部152としての凸部を確実に分離させることができる。
<充填層成膜>
磁気記録層エッチングで形成された凹部136に、図4(b)に示すように、非硬磁性層156を第1磁気記録層122aまでの高さ(介在層122bの底面の高さ)と略等しい高さとなるように成膜する。なお、かかる非磁性層156の比透磁率は2〜100となるようにする。これにより、高SNRを確保しつつ、磁性記録部152のリードライト特性を向上させることが可能となる。
次に、非磁性層156を充填した後の凹部136に、介在層122b(非磁性層)を、凸部における介在層122bまでの高さ(第2磁気記録層122cの底面の高さ)と略等しい高さとなるように再度成膜する。これにより、非記録部154における非磁性層156および158の間にAFCカップリングを形成させることが可能となる。なお、介在層122bを再度成膜する際には、既に成膜してある介在層122bと同様に成膜することができる。
そして、介在層122bを再度成膜した後の凹部136に、非硬磁性層158を第2磁気記録層122cまでの高さ(補助記録層124の底面の高さ)と略等しい高さとなるように成膜する。なお、かかる非磁性層158の比透磁率も、非磁性層156と同様に2〜100となるようにすることで、上述した利点を得ることができる。これらの層を成膜することにより、当該垂直磁気記録媒体100は図4(c)に示す状態となる。
非硬磁性層158を成膜後、凹部136に、図4(d)に示すように、充填層138を補助記録層124までの高さ(媒体保護層126の底面の高さ)と略等しい高さとなるように成膜する。本実施形態において、SiO2、SiOC、TiO2、Cを充填層138として利用することができる。なお、充填層138は、バイアスをかけないスパッタ法で成膜する。ここで、ディスク基体110にバイアスをかけながらスパッタを行うバイアススパッタ法を利用すると、凹部136に容易に充填層138を成膜することができるが、バイアス電圧をかけることによるディスク基体110の温度上昇、およびこれに伴うディスク基体110の溶解が生じたり、スパッタダストが生じることによるディスク基体110表面の平坦化への妨げが発生したりするため、バイアスをかけないスパッタ法が好適である。
なお、本実施形態にかかる垂直磁気記録媒体100はディスクリート型であるため、補助記録層124が凹部136によって分断されても、トラック方向に連続していることになる。このため補助記録層124はトラック方向に隣接する磁性粒子に亘って磁気的に連続することとなり、補助記録層124としての役割を発揮することができる。これに対しビットパターン型である場合には、記録ビット単位で補助記録層124も分断されてしまう。このため、ビットパターン型である場合には、補助記録層124を設けなくてもよい。さらには、非硬磁性層158成膜後に、隣接する凸部にある補助記録層124を接続するように、凹部136に補助記録層124を再成膜してもよい(補助記録層再成膜)。再成膜する補助記録層124の膜厚は、当然に凸部にある補助記録層124の膜厚と略等しくすることが好ましい。
<保護層再成膜>
凹部136に充填層138を成膜した後に、図4(e)に示すように、充填層138の上にさらに媒体保護層140を成膜する。ここで、凹部136に成膜される媒体保護層140は、媒体保護層126の表面と略等しくなる膜厚で成膜される。なお、媒体保護層140を成膜する際には、媒体保護層126の成膜方法を適用することができる。
本実施形態では、上記説明したように、磁気記録層122のエッチングにおいて媒体保護層126ごと磁気記録層122をイオンミリングすることにより凹部136を形成している。したがって、媒体保護層140の再成膜を行わない場合には、レジスト除去においてレジスト層130を除去する際に、凸部の表面には媒体保護層126が、凹部136の表面には充填層138が存在することとなる。しかし、媒体保護層140を再成膜することにより、凹部136の表面にも保護層140を存在させ、垂直磁気記録媒体100の表面に連続して媒体保護層126を存在させることが可能となる。
<最終保護層成膜>
図3(f)に示すように第1実施形態と同様にレジスト除去を行った後、図3(g)に示すように、当該垂直磁気記録媒体100の表面に媒体保護層126をさらに成膜する。これにより、媒体保護層126をより均一化することが可能となり、且つ膜硬度をさらに向上させることができる。かかる媒体保護層126は、既に成膜してある媒体保護層126および140と同様に成膜することが可能である。
<平坦化工程>
次に、最終保護層成膜後の垂直磁気記録媒体100の表面を、酸素を用いたRIEにより平坦化する(酸素アッシング)。RIEによって突出した部分から優先的にエッチングされるため、その表面を全体的に平坦にすることができる。これにより、垂直磁気記録媒体100の平坦度がさらに向上し、ヘッドクラッシュやサーマルアスペリティ障害をさらに低減させることができる。なお、本実施形態においてRIEのプラズマ源は、低圧で高密度プラズマが生成可能なICPを利用しているが、これに限定されず、ECRプラズマや、一般的な平行平板型RIE装置を利用することもできる。
上記説明した第2実施形態のように、エッチングによっても当該垂直磁気記録媒体100をパターンドメディアであるディスクリートトラックメディアとすることができる。なお、第2実施形態においても、ディスクリートトラックメディアに限定するものではなく、上記の手法を用いて当該垂直磁気記録媒体100をビットパターンメディアとすることも可能である。
上述したように、第1実施形態および第2実施形態にかかる垂直磁気記録媒体100では、磁性記録部152と非記録部154とからなる所定のパターンが面内方向に形成され、非記録部154において、非硬磁性層156となった第1磁気記録層122aと、非硬磁性層158となった第2磁気記録層122cとの間に、介在層122b(非磁性層)を有することにより、非硬磁性層156および158との間でAFCカップリングが形成される。これにより、非記録部154の磁化方向が制御され、かかる磁化方向に含まれる垂直方向の磁束が低減される。したがって、非記録部154に起因するノイズが低減され、垂直磁気記録媒体100のSNRを向上させることが可能となる。
また、磁性記録部152を磁気的に分離する非記録部154における非硬磁性層156および158の比透磁率を2〜100とすることで、高SNRを実現しつつ、磁性記録部152への書き込み特性および読み出し特性を向上させることができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記実施形態では、凹凸パターンが転写されたレジスト層130に別途処理を行わずイオン注入を行っているが、これに限定されず、凹凸パターンが転写されたレジスト層130の凹部底面に残存するレジスト層をエッチング等によって除去してからイオン注入を行ってもよい。
また、上記実施形態では、ディスクリート型磁気記録媒体(ディスクリートトラックメディア)について説明したが、これに限定されず、ビットパターン型磁気記録媒体(ビットパターンドメディア)においても好適に利用することができる。ビットパターン型磁気記録媒体(ビットパターンドメディア)は、磁性記録部を主表面に点在させた磁気記録媒体である。これによっても、当該磁気記録媒体の熱揺らぎ耐性を向上し、高記録密度化が促進することが可能となる。
さらに、上記実施形態では、磁気記録層がグラニュラー構造を有する2層で構成しているが、これに限定されず、1層もしくは複数層で構成されてもよく、グラニュラー構造を有しなくてもよい。また、上述した実施形態において、磁気記録媒体として、垂直磁気記録媒体について説明したが、面内磁気記録媒体においても好適に用いることができる。