JP2010168478A - 硬化性組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 酸素による重合阻害が少ないため、酸素遮断下で重合させることの困難な、コンポジットレジン等の歯科用として好適に使用できる、表面未重合量が低減された硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】
(a)ラジカル重合性単量体100質量部、
(b)ラウリン酸等の炭素数6〜20の脂肪酸0.05〜1質量部、及び
(c)有効量のラジカル重合開始剤、
さらに好適には(d)有機溶媒を0.1〜5重量部
含有してなり、酸素を含む雰囲気に開放した状態で硬化させた場合に、表面未重合量が少ない状態で硬化する硬化性組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は硬化性組成物に関する。更に詳しくは、酸素遮断材の塗布などによる酸素遮断層を設けることなく硬化時の酸素の影響を低減させた新規な硬化性組成物に関するものである。
硬化性組成物は、重合性単量体と重合開始剤を基本的に含む材料である。硬化性組成物がラジカル重合性である場合、重合工程を空気中で行うと、硬化した組成物の空気に露出した表面に未重合層が生じる。これは、硬化性組成物の空気に露出した表面では空気中の酸素が硬化性組成物と結合して過酸化物ラジカルとなり、重合の進行を停止するからである。
従来、表面に未重合層を有しない硬化性組成物を提供するためには、窒素雰囲気下や水中での硬化、酸素遮断材を用いて酸素遮断層を設けるなどして、空気との接触を断ち、硬化性組成物をラジカル重合させる方法が行われてきた(例えば、特許文献1、2参照)。
(メタ)アクリレート系重合性単量体をラジカル重合で硬化させる方法は、歯科の分野で広く利用されており、このような方法を使用したものとしては、歯科用セメント、歯科用接着材(ボンディング材)、コンポジットレジン、レジン歯科材料表面の滑沢性付与材、歯牙のマニキュア等が挙げられる。これらの歯科用修復物が硬化体表面に未重合層を有していると、表面硬度や着色性の低下が引き起こされる。また、表面に未重合層があると硬化体の研磨・研削を行う際に未重合層が研磨バーに絡みつくために、その研磨性は低下する。
このような材料を用いた歯科治療は直接口腔内で硬化させて使用することが多く、水中や窒素雰因気下で硬化させることによって、未重合を減少させる方法であると、硬化性組成物を一旦口腔内から取り出すことが必要となり、口腔内で形成した形状が変形してしまう。酸素遮断層を形成するのが困難な症例は多くあり、また、ボンディング材などの粘性の低い材料には酸素遮断材を利用することができない。
このため、酸素遮断層を設けることなく硬化時の酸素の影響を低減させる技術が求められていた。こうした中、界面活性剤および水を配合させた硬化性組成物により、表面未重合を低減する方法が開発された(特許文献3〜5参照)。この方法によれば、ラジカル重合性単量体成分が硬化する際に界面活性剤と水の層が表面に形成され、この界面活性剤と水よりなる層が内部への酸素の侵入を阻害すると推測される作用により、表面の重合性を大きく向上させることができ、その表面未重合量を著しく低減させることができる。
特開2000−128723号公報 特開2004−284969号公報 特開2006−291168号公報 特開2007−008972号公報 特開2007−063332号公報
しかしながら、上記界面活性剤と水を配合させた硬化性組成物では、硬化体の物性が低下する場合があった。
こうした背景にあって本発明は、酸素の存在する環境下で、界面活性剤と水を用いなくても、表面未重合層を高度に抑制できる硬化性組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行なった。その結果、ラジカル重合性単量体に対して、少量の脂肪酸を含有させると重合阻害低減効果が表れることを見出し、さらに検討を進めた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、(a)ラジカル重合性単量体100質量部、(b)炭素数6〜20の脂肪酸0.05〜1質量部、及び(c)有効量のラジカル重合開始剤を含有していることを特徴とする硬化性組成物である。
本発明の硬化性組成物は、酸素が存在する環境下で、酸素遮断材を用いるなどの特別の手段を用いなくても、表面未重合層の形成を抑制する。
本発明の硬化性組成物は、(a)ラジカル重合性単量体、(b)脂肪酸、及び(c)ラジカル重合開始剤を必須成分として含んでなる。
この硬化性組成物では、重合開始剤の作用によりラジカル重合性単量体成分が重合し硬化するが、脂肪酸が配合されているため、硬化に際して脂肪酸の層が表面に形成され、この脂肪酸の層が内部への酸素の侵入を阻害し、表面未重合を低減すると推測される。以下、これらの各成分につき詳述する。
本発明の硬化性組成物に配合される(a)ラジカル重合性単量体は、種々の硬化性組成物において使用されている公知のものが特に制限なく使用できる。硬化性組成物が歯科用途である場合、(メタ)アクリル系の重合性単量体を使用するのが一般的である。
代表的な(メタ)アクリル系重合性単量体を例示すれば、下記(I)〜(IV)に示されるものが挙げられる。
(I)単官能性単量体
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、プロピオニルオキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;あるいはアクリル酸、メタクリル酸、p−メタクリロイルオキシ安息香酸、N−2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル−N−フェニルグリシン、4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸、及びその無水物、6−メタクリロイルオキシヘキサメチレンマロン酸、10−メタクリロイルオキシデカメチレンマロン酸、2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート、10−メタクリロイルオキシデカメチレンジハイドロジェンフォスフェート、2−ヒドロキシエチルハイドロジェンフェニルフォスフォネート等の酸性基含有重合性単量体。
(II)二官能性単量体
(i)芳香族化合物系のもの
2,2−ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン)、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシジトリエトキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパンおよびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらのメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族基を有するジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等。
(ii)脂肪族化合物系のもの
モノエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、平均分子量400のポリエチレングリコールのジメタクリレート、平均分子量600のポリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ノナメチレンジオールメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらのメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト;無水アクリル酸、無水メタクリル酸、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エチル、ジ(2−メタクリロイルオキシプロピル)フォスフェート等の酸性基含有重合性単量体。
(III)三官能性単量体
トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート等のメタクリレートおよびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等。
(IV)四官能性単量体
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートとの付加から得られるジアダクト等。
これらのラジカル重合性単量体は単独で用いることもあるが、2種類以上を混合して使用することもできる。なお、硬化性組成物が歯科用途である場合、前記(メタ)アクリル系重合性単量体に加えて、しばしば重合の容易さ、粘度の調節、あるいはその他の物性の調節のために、上記(メタ)アクリル系重合性単量体以外の他の重合性単量体を混合して重合することも可能である。他の重合性単量体を例示すると、フマル酸モノメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル類;スチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレンあるいはα−メチルスチレン誘導体;ジアリルテレフタレート、ジアリルフタレート、ジアリルジグリコールカーボネート等のアリル化合物等を挙げることができる。これら他の重合性単量体は単独でまたは二種以上を一緒に使用することができる。
本発明の硬化性組成物に配合される(b)炭素数6〜20の脂肪酸は公知のものが特に制限なく使用できる。該脂肪酸の炭素数が上記6〜20の範囲を外れる場合、表面における重合阻害低減効果が十分でなくなる。なお、上記脂肪酸の炭素数は、カルボキシル基に結合する炭化水素鎖部分の炭素数(分岐するものにおいては側鎖部分も含む)に該カルボキシル基の炭素数1を足した数である。
このような脂肪酸を具体的に例示すると、飽和脂肪酸としては、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸等のモノカルボン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸等のジカルボン酸などを挙げることができる。
不飽和脂肪酸としては、ヘキセノン酸、トウハク酸、デセン酸、ドデセン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィセトレン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、バクセン酸、エライジン酸、ガドレイン酸の炭素二重結合1個を含むモノエン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、イワシ酸、ドコサヘキサエン酸等の炭素二重結合を2個以上含むポリエン酸などを挙げることができる。
上記化合物の中でも特に、硬化時の酸素の影響をより低減させる観点から炭素数8〜18の長さの脂肪酸が好ましい。これら脂肪酸は単独または二種以上を一緒に使用することができる。
なお、これらの脂肪酸は、効果に大きく影響しない範囲であれば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基等の置換基を有していても良いが、(メタ)アクリロイルオキシ基のようなラジカル重合性基は有しない非ラジカル重合性のものであることが必要である。ラジカル重合性基を有すると、硬化に際して(a)ラジカル重合性単量体と重合してしまい、表面で重合阻害低減効果を発揮することができなくなる。ただし、このようなラジカル重合性基を有する脂肪酸(例えば、11−メタクリロイルオキシ−1−ウンデカンカルボン酸や11−メタクリロイルオキシ−1−ウンデカンジカルボン酸等)も、該(b)ラジカル重合性基を有しない脂肪酸とは別に、前記(a)ラジカル重合性単量体成分として配合することは、本発明において何ら除外されるものではなく許容される。
本発明において、(b)脂肪酸の配合量は、(a)ラジカル重合性単量体100質量部に対して0.05〜1質量部である。配合量が多いほど、表面未重合の抑制効果は高くなるが、一方で配合量が少ない方が機械的強度や硬化性等の物性に与える影響は小さい。これらを勘案すると、長鎖脂肪酸の配合量は、ラジカル重合性単量体成分100質量部に対して0.08〜0.5質量部であるのがより好ましい。
本発明の硬化性組成物には、前記(a)ラジカル重合性単量体成分を重合させるための(c)ラジカル重合開始剤が配合される。当該重合開始剤としては、用いるラジカル重合性単量体を重合、硬化させることができるものであれば何ら制限なく使用可能であり、公知の重合開始剤が使用可能である。歯科分野で用いられる重合開始剤としては、化学重合開始剤(常温レドックス開始剤)、光重合開始剤、熱重合開始剤等があるが、口腔内で硬化させることを考慮すると、化学重合開始剤及び/又は光重合開始剤が好ましい。
化学重合開始剤は、2成分以上からなり、使用直前に全成分が混合されることにより室温近辺で重合活性種を生じる重合開始剤である。このような化学重合開始剤としては、アミン化合物/有機過酸化物系のものが代表的である。
該アミン化合物を具体的に例示すると、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエタノール−p−トルイジンなどの芳香族アミン化合物が例示される。
代表的な有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、ジアリールパーオキサイドなどが挙げられる。
有機過酸化物を具体的に例示すると、ケトンパーオキサイド類としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等が挙げられる。
パーオキシケタール類としては、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。
ハイドロパーオキサイド類としては、P−メタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t―ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
ジアルキルパーオキサイドとしては、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3等が挙げられる。
ジアシルパーオキサイド類としては、イソブチリルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアリルパーオキサイド、スクシニックアシッドパーオキサイド、m−トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド類が挙げられる。
パーオキシカーボネート類としては、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
パーオキシエステル類としては、α,α−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート等が挙げられる。
また、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等も好適な有機過酸化物として使用できる。
使用する有機過酸化物は、適宜選択して使用すればよく、単独又は2種以上を組み合わせて用いても何等構わないが、中でもハイドロパーオキサイド類、ケトンパーオキサイド類、パーオキシエステル類及びジアシルパーオキサイド類が重合活性の点から特に好ましい。さらにこの中でも、硬化性組成物としたときの保存安定性の点から10時間半減期温度が60℃以上の有機過酸化物を用いるのが好ましい。
該有機過酸化物と該アミン化合物からなる開始剤系にさらに、ベンゼンスルフィン酸やp−トルエンスルフィン酸及びその塩などのスルフィン酸を加えた系、5−ブチルバルビツール酸などのバルビツール酸系開始剤を配合しても何ら問題なく使用できる。
また、アリールボレート化合物が酸により分解してラジカルを生じることを利用した、アリールボレート化合物/酸性化合物系の重合開始剤を用いることもできる。
アリールボレート化合物は、分子中に少なくとも1個のホウ素−アリール結合を有する化合物であれば特に限定されず公知の化合物が使用できるが、その中でも、保存安定性を考慮すると、1分子中に3個または4個のホウ素−アリール結合を有するアリールボレート化合物を用いることが好ましく、さらには取り扱いや合成・入手の容易さから4個のホウ素−アリール結合を有するアリールボレート化合物がより好ましい。
1分子中に3個のホウ素−アリール結合を有するボレート化合物として、モノアルキルトリフェニルホウ素、モノアルキルトリス(p−クロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−フルオロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、モノアルキルトリス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、モノアルキルトリス(p−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(ただし、いずれの化合物においてもアルキルはn−ブチル、n−オクチル又はn−ドデシルのいずれかを示す)の、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、トリブチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩又はブチルキノリニウム塩等を挙げることができる。
1分子中に4個のホウ素−アリール結合を有するボレート化合物として、テトラフェニルホウ素、テトラキス(p−クロロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−フルオロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、テトラキス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、テトラキス(p−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素〔ただし、いずれの化合物においてもアルキルはn−ブチル、n−オクチル又はn−ドデシルのいずれかを示す〕の、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、トリブチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩又はブチルキノリニウム塩等を挙げることができる。
上記で例示した各種のアリールボレート化合物は2種以上を併用しても良い。
また、上記のアリールボレート化合物と併用される酸性化合物としては、酸性基含有ラジカル重合性単量体が好適に使用でき、1分子中に少なくとも1つの酸性基、又は当該酸性基の2つが脱水縮合した酸無水物構造、あるいは酸性基のヒドロキシル基がハロゲンに置換された酸ハロゲン化物基と、少なくとも1つのラジカル重合性不飽和基とを有す化合物であれば特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。ここで酸性基とは、該基を有すラジカル重合性単量体の水溶液又は水懸濁液が酸性を呈す基を示す。当該酸性基としては、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスフィニコ基{=P(=O)OH}、ホスホノ基{−P(=O)(OH)2}等、並びにこれらの基が酸無水物や酸ハロゲン化物等となったものが例示される。このような酸性基含有ラジカル重合性単量体の具体例としては、前記本発明におけるラジカル重合性単量体において例示した通りである。
上述したアリールボレート化合物/酸性化合物系の重合開始剤に、更に有機過酸化物及び/又は遷移金属化合物を組み合わせて用いることも好適である。有機過酸化物としては前記した通りである。遷移金属化合物としては+IV価及び/又は+V価のバナジウム化合物が好適である。該+IV価及び/又は+V価のバナジウム化合物を具体的に例示すると、四酸化二バナジウム(IV)、酸化バナジウムアセチルアセトナート(IV)、シュウ酸バナジル(IV)、硫酸バナジル(IV)、オキソビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)バナジウム(IV)、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)、五酸化バナジウム(V)、メタバナジン酸ナトリウム(V)、メタバナジン酸アンモン(V)、等のバナジウム化合物が挙げられる。
光重合開始剤としては2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2−メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイドなどのアシルホスフィンオキサイド誘導体、ジアセチル、アセチルベンゾイル、ベンジル、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、4,4'−ジメトキシベンジル、4,4'−オキシベンジル、カンファーキノン、9,10−フェナンスレンキノン、アセナフテンキノン等のα−ジケトン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル;2,4−ジエトキシチオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン等のチオキサンソン誘導体;ベンゾフェノン、p,p'−ジメチルアミノベンゾフェノン、p,p'−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体が挙げられる。
上記光重合開始剤の中でも、重合活性の良さ、生体への為害性の少なさ等の点からα−ジケトン類が好ましい。またα−ジケトンを用いる場合には、第3級アミン化合物と組み合わせて用いることが好ましい。α−ジケトンと組み合わせて用いることのできる第3級アミン化合物としては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミルエステル、N,N−ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチルアミノフェネチルアルコール、p−ジメチルアミノスチルベン、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、2,2’−(n−ブチルイミノ)ジエタノール等が挙げられる。
上記の各重合開始剤はそれぞれ単独で併用されるだけでなく、必要に応じて複数の種類を組み合わせて併用することもできる。
本発明において、上記重合開始剤の配合量は、前記ラジカル重合性単量体を重合し、本発明の硬化性組成物を硬化させる量であれば特に限定されず、用いた重合開始剤の種類やラジカル重合性単量体成分の組成に応じて、公知の配合量を適宜選択すればよい。一般的には、ラジカル重合性単量体成分100質量部に対して、重合開始剤が0.01〜30質量部であり、好ましくは0.1〜5質量部である。但し、前記酸性基含有ラジカル重合性単量体のように、ラジカル重合性の化合物を重合開始剤の一成分として用いる場合には、該化合物以外の重合開始剤を構成する成分の量を上記範囲とすることが好ましい。
また、本発明においては、上述した(a)〜(c)成分に加えて、(d)有機溶媒を配合することができ、これにより硬化時の酸素の影響をより低減することができる。即ち、有機溶媒が揮発する際に、脂肪酸を表面に運搬していくものと考えられ、この効果により、表面未重合の抑制効果が一層に向上するものと推測される。
本発明において有機溶媒は通常は、入手のしやすさ、臭い、環境に対する安全性から、アルコール類、ケトン類が好ましい。また、揮発しやすい有機溶媒が望ましく、20℃における蒸気圧が1mmHg〜500mmHgの有機溶媒が好ましい。具体的には、アルコール類;メタノール、エタノール、n‐プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。ケトン類;アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
これら親水性有機溶媒は単独でまたは二種以上を一緒に使用することができる。
本発明において、上記親水性有機溶媒の配合量はラジカル重合性単量体100質量部当り、0.1〜5質量部、特に好ましくは0.3〜2質量部の範囲とするのがよい。
本発明の硬化性組成物は歯科用途として、そのままで各種レジン系歯科材料表面の滑沢性付与、歯牙のマニキュアおよび変色歯の補修等の目的で使用される表面滑沢材や接着材として用いることが出来る。さらに、フィラーと組み合わることにより、より広範な用途に用いることができる。例えば、有機フィラーと組み合わせた場合には、義歯の補修材料、裏層用の材料、治療経過途中に一旦患者を帰してから治療を再開するまでの数日間、窩洞に充填される仮封材及び暫間的なクラウン、並びにブリッジの作製材料等として用いることが出来る。一方、無機フィラーと組み合わせた場合には、コンポジットレジン、硬質レジン、インレー、アンレー、クラウン等、歯科用修復材料として用いることが出来る。
組み合わせるフィラーを具体的に例示すれば、有機フィラーとしてポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられ、これらは一種または二種以上の混合物として用いることができる。
無機フィラーとしては石英、シリカ、アルミナ、シリカチタニア、シリカジルコニア、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス等が挙げられる。さらに無機フィラーの内、カチオン溶出性フィラーとしては、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム等の水酸化物、酸化亜鉛、ケイ酸塩ガラス、フルオロアルミノシリケートガラス等の酸化物が挙げられる。これらもまた、一種または二種以上を混合して用いても何等差し支えない。
これら無機フィラーに重合性単量体を予め添加し、ペースト状にした後、重合させ、粉砕して得られる粒状の有機−無機複合フィラーを用いる場合もある。
上記したフィラーの粒径は特に限定されず、一般的に歯科用材料として使用されている0.01μm〜100μmの平均粒子径のフィラーが目的に応じて適宜使用できる。また、フィラーの屈折率も特に限定されず、一般的な歯科用フィラーが有する1.4〜1.7の範囲のものが制限なく使用できる。
さらに、上記したフィラーの中でもとりわけ球状の無機フィラーを用いると、得られる硬化体の表面滑沢性が増し、優れた修復材料となり得る。
上記した無機フィラーは、シランカップリング剤に代表される表面処理剤で処理することが、重合性単量体とのなじみをよくし、機械的強度や耐水性を向上させる上で望ましい。表面処理の方法は公知の方法で行えばよく、シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が好適に用いられる。
これらのフィラーの割合は、使用目的に応じて、重合性単量体と混合した時の粘度(操作性)や硬化体の機械的物性を考慮して適宜決定すればよいが、一般的には、重合性単量体100質量部に対して50〜1500質量部、好ましくは70〜1000質量部の範囲で用いられる。
本発明の硬化性組成物には、さらに歯牙や歯肉の色調に合わせるため、顔料、蛍光顔料等の着色材料を配合したり、紫外線に対する変色防止のため紫外線吸収剤を添加したりしてもよい。また、保存安定性を向上させるために、重合禁止剤を配合することも好ましい。
本発明の硬化性組成物は、上記(a)ラジカル重合性単量体成分、(b)脂肪酸、(c)重合開始剤、及び必要に応じて配合されるフィラーなどの任意成分が使用時に均一に混合されたものとなる。ここで均一とは、全成分が交互に溶解した状態のみならず、ラジカル重合性単量体成分中に水が乳濁した状態や、フィラーのような不溶性成分が分散した状態であってもよく、肉眼で相分離等が確認できない程度の均一さでよい。また、保存安定性などを考慮して、使用直前まで2つ以上に分割しておいてもよい。
本発明の硬化性組成物は、公知の方法に従って製造されたものでよく、特に制限されるものではない。また、本発明の硬化性組成物は、少なくともその表面の一部を、酸素を含む雰囲気に開放した状態で硬化させることにより、硬化体において、該酸素を含む雰囲気に開放された部分の表面未重合量を大きく低減させることができるものであり、前記歯科用途のみならず一般工業にも有用に利用できる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に示すが、本発明はこれら実施例によって何等制限されるものではない。
尚、実施例および比較例で使用した化合物とその略称、並びに調製された硬化性組成物の評価方法を以下に示す。
[脂肪酸]
(飽和脂肪酸)
C4;酪酸
C6;ヘキサン酸
C8;オクタン酸
C10;デカン酸
C12;ラウリン酸
C14;ミリスチン酸
C18;ステアリン酸
比較脂肪酸A;11−メタクリロイルオキシ−1−ウンデカンカルボン酸
(不飽和脂肪酸)
CC4;クロトン酸
CC10;デセン酸
CC12;ドデセン酸
CC14;ミリストレイン酸
CC18;オレイン酸
[ラジカル重合性単量体]
HD;1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート
HPr;プロピオニルオキシエチルメタクリレート
Bis−GMA;2,2−ビス(4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル)プロパン
3G;トリエチレングリコールジメタクリレート
[重合開始剤]
(有機過酸化物)
BPO;ベンゾイルパーオキサイド
(アミン化合物)
DEPT;N,N−ジエタノール−p−トルイジン
DMBE;ジメチル安息香酸エチル
(α−ジケトン)
CQ;カンファーキノン
[有機溶媒]
EtOH;エタノール
[フィラー]
PEMA;ポリエチルメタクリレート(平均粒径:30μm)
3Si−Zr;不定形シリカ−ジルコニア、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン表面処理物(平均粒径:3μm)
0.3Si−Ti;球状シリカ−チタニア、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン表面処理物(平均粒径:0.3μm)
〔表面未重合量測定方法〕
一辺20mm、厚さ2mmの正方形の孔を有するフッ素樹脂製の型に、歯科用硬化性組成物を填入し、37℃湿潤条件下恒温槽中で15分間放置するか(実施例14及び比較例7以外)、もしくは可視光線照射器(トクヤマ社製、パワーライト)により光照射を30秒間行い(実施例14及び比較例7)硬化させた。その後、硬化体をエタノールに1分間浸漬し、金属スパチュラで硬化体表面の未重合層を除去した。最初の硬化体の厚さから未重合部分を除去した後の硬化体の厚さを引いたものを未重合量として求めた。
<実施例1>
ラジカル重合性単量体として、HDを用い、以下の処方により、2成分をそれぞれ調製した。
第1液の処方:
HD(ラジカル重合性単量体); 100質量部
C12(長鎖脂肪酸); 0.1質量部
BPO(有機過酸化物); 3質量部
第2液の処方:
HD(ラジカル重合性単量体); 100質量部
C12(長鎖脂肪酸); 0.1質量部
DEPT(アミン化合物); 1.5質量部
上記のような組成を有する第1液と第2液とを質量比で103.1:102.5となるように計りとって混合して硬化させ評価を行った。その結果、表面未重合量は12μmであった。
<実施例2〜6>
用いる脂肪酸の種類を、表1に記載するように変化させた以外は、実施例1と同様にして試料を各調製し、表面未重合量の評価を行った。結果を併せて表1に示した。
<比較例1〜3>
表1に示したように、脂肪酸を含まないHD、C4を含むラジカル重合性単量体HD、またはラジカル重合性基を有する脂肪酸(比較脂肪酸A)を含むラジカル重合性単量体HDのそれぞれを、BPOとDEPTからなる重合開始剤を用いて硬化させた。その結果、表面未重合量はそれぞれ90μm、80μm、50μmであった。
Figure 2010168478
<実施例7〜10、比較例4>
表2に示す組成となるよう、用いる脂肪酸の種類を変化させた以外は実施例1と同様にして硬化体を各作製し評価した。表面未重合量の評価結果を、結果を表2に示した。
Figure 2010168478
<実施例11〜13、比較例5、6>
表3に示す組成となるよう、脂肪酸の配合量を変化させた以外は実施例1と同様にして硬化体を各作製し評価した。表面未重合量の評価結果を、前記実施例1の結果と併せて表3に示した。
Figure 2010168478
<実施例14、15>
表4に示す組成となるように、有機溶媒の種類を変化させた以外は実施例1と同様にして硬化体を各作製し評価した。結果を表4に示した。
Figure 2010168478
<実施例16>
ラジカル重合性単量体として、HPrとHDとの50:50(質量比)の混合物を用い、以下の処方により、2部材をそれぞれ調製した。
第1成分(液材)の処方:
HPr/HD(ラジカル重合性単量体); 100質量部
C12(長鎖脂肪酸); 0.1質量部
DEPT(アミン化合物); 1.5質量部
第2成分(粉材)の処方:
PEMA(有機樹脂成分); 150質量部
BPO(有機過酸化物); 3質量部
上記のような組成を有する第1成分と第2成分とを混合し、表5に示す組成の硬化性組成物を調製し作製した硬化体を評価した。その結果、表面未重合量は15μmであった。
<比較例7>
表5に示す組成となるよう、長鎖脂肪酸の配合量を変化させた以外は実施例15と同様にして硬化体を作製し評価した。結果を表5に示した。
<実施例17、比較例8>
遮光下、表5に示す組成の可視光硬化性組成物をそれぞれ調整し、これを可視光照射器により硬化させて硬化体を得、その表面未重合量を評価した。結果を表5に示した。
<実施例18、比較例9>
表5に示す組成となるようにA、Bの二つに分けて組成物をそれぞれ調整し、これらを混合して硬化体を得、その表面未重合量を評価した。結果を表5に示した。
Figure 2010168478

Claims (4)

  1. (a)ラジカル重合性単量体100質量部、(b)炭素数6〜20の脂肪酸0.05〜1質量部、及び(c)有効量のラジカル重合開始剤を含有していることを特徴とする硬化性組成物。
  2. さらに(d)有機溶媒を0.1〜5重量部含有していることを特徴とする請求項1記載の硬化性組成物
  3. 少なくともその表面の一部を、酸素を含む雰囲気に開放した状態で硬化させるものである請求項1又2記載の硬化性組成物。
  4. 歯科用であることを特徴とする請求項1〜3記載の硬化性組成物。
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