JP2010167849A - ランフラットタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】転がり抵抗を低減したランフラットタイヤを提供する。
【解決手段】一対のビード部間にトロイダル状に跨るカーカスを骨格として、前記カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に、少なくとも1層の傾斜ベルト層を有するベルトおよびトレッドを順に配置し、タイヤのサイド部における前記カーカスのタイヤ幅方向内側に補強ゴムを配置したランフラットタイヤであって、該タイヤを適用リムに装着した状態のタイヤ幅方向断面において、前記傾斜ベルト層の最外側層の幅BWに対する、当該最外側層の幅方向中心部と幅方向端部との径差BDの比BD/BWが0.01以上0.05以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、転がり抵抗を低減したランフラットタイヤに関するものである。
ランフラットタイヤは、パンク等によりタイヤの内圧が低下した状態にあっても、タイヤが荷重支持能力を失うことなく、ある程度の距離を安全に走行することを可能としたタイヤである。一般的には、タイヤのサイド部におけるカーカスのタイヤ幅方向内側に比較的モジュラスが高い三日月状断面をなす補強ゴムを配置してサイド部の剛性を向上させる構成を採用しており、これにより内圧低下時にサイド部の撓み変形が極端に増加するのを回避している(例えば、特許文献1)。
上述した一般的なサイド補強式のランフラットタイヤでは、タイヤが重く硬くなるため、乗り心地やクルマの諸性能に悪影響を与えるという問題が知られている。そこで、タイヤ幅方向断面において、独特の丸みを持つインボリュート曲線を採用し、トレッドを丸くすることでサイドウォールを短く強靭に設計し、ランフラット性能の発揮と同時に軽量化も実現させたランフラットタイヤが提案されている(例えば、特許文献2)。
また、サイド部に補強ゴムを有するランフラットタイヤの転がり抵抗を低減する従来技術としては、補強ゴムの損失正接(tanδ)を低減する手法も一般的に知られている。
特開2000−264012号公報 特開2000−108618号公報
しかし、上述した従来技術では、転がり抵抗に対して寄与の大きいトレッドの歪を低減することができないため、タイヤの負荷転動時の転がり抵抗を十分に低減することができないという問題があった。
そこで、本発明の目的は、転がり抵抗を低減したランフラットタイヤを提供することにある。
本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)一対のビード部間にトロイダル状に跨るカーカスを骨格として、前記カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に、少なくとも1層の傾斜ベルト層を有するベルトおよびトレッドを順に配置し、タイヤのサイド部における前記カーカスのタイヤ幅方向内側に補強ゴムを配置したランフラットタイヤであって、
該タイヤを適用リムに装着した状態のタイヤ幅方向断面において、前記傾斜ベルト層の最外側層の幅BWに対する、当該最外側層の幅方向中心部と幅方向端部との径差BDの比BD/BWが0.01以上0.05以下であることを特徴とするランフラットタイヤ。
ここで、前記タイヤを適用リムに装着した状態とは、日本自動車タイヤ協会規格(JATMA)に規定の標準リムに組み込んだ状態にて、内圧を負荷せずに若しくは、30kPa程度までの極低内圧を負荷した状態を意味する。
(2)前記カーカスのタイヤ径方向最外側とビードトゥとの間のタイヤ径方向の距離CSHに対する、前記カーカスの最大幅位置にタイヤの回転軸と平行に引いた線分とビードトゥにタイヤの回転軸と平行に引いた線分との最短距離CSWhの比CSWh/CSHが0.6以上0.9以下であることを特徴とする上記(1)に記載のランフラットタイヤ。
(3)前記カーカスの最大幅CSWに対する、前記最外側層の幅BWの比BW/CSWが0.8以上0.94以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のランフラットタイヤ。
本発明によれば、転がり抵抗を低減したランフラットタイヤを提供することができる。
本発明のタイヤの幅方向断面である。 本発明のタイヤのトレッドに発生する歪エネルギーについて、有限要素法を用いて解析した結果を示す図である。 本発明のタイヤのトレッドショルダー部に発生する歪エネルギーについて、有限要素法を用いて詳細に解析した結果を示す図である。 幅方向断面内のせん断歪を説明するための図である。 トレッドショルダー部におけるせん断歪の発生要因を説明するための図である。 ベルト張力を与える式を説明するための図である。 本発明の実施形態に係るタイヤの幅方向断面である。 従来のタイヤの幅方向断面である。
以下、図面を参照して、本発明を具体的に説明する。
図1に、本発明のランフラットタイヤ(以下、タイヤともいう)の幅方向断面を示す。タイヤ6は、ビードコア1を埋設した一対のビード部間にトロイダル状に跨るカーカス2を骨格として、このカーカス2のクラウン部のタイヤ径方向外側に、少なくとも1層、図示例で2層の傾斜ベルト層3a、3bと1層の周方向ベルト層3cを有するベルト3およびトレッド5を順に配置するとともに、タイヤのサイド部におけるカーカス2のタイヤ幅方向内側に三日月状断面を有する補強ゴム4を配置してなる。傾斜ベルト層3a、3bは、タイヤ赤道面CLに対して傾斜して延びるコードの多数本をゴムで被覆した層を層間でコードが交差する向きに配置してなり、周方向ベルト層3cは、タイヤ赤道面CLに沿って延びるコードの多数本をゴムで被覆してなる。
かようなタイヤ6は、適用リム7に装着されて使用に供される。ここで、タイヤ6を適用リム7に装着した状態のタイヤ幅方向断面において、図1に示すように、傾斜ベルト層の最外側層である最外側傾斜ベルト層3bの幅BWに対する、最外側傾斜ベルト層3bの幅方向中心部(タイヤ赤道面CL)と幅方向端部との径差BDの比BD/BWが0.01以上0.05以下であることが肝要である。この規定は、最外側傾斜ベルト層3bのタイヤ幅方向における径差が少ないこと、つまり、ベルトがフラットに近い状態であることを示す。
ここで、タイヤ6を適用リム7に装着した状態とは、日本自動車タイヤ協会規格(JATMA)に規定の標準リムに組み込んだ状態にて、内圧を負荷せずに若しくは、30kPa程度までの極低内圧を負荷した状態を意味する。
以下、本発明者らが、サイド補強ランフラットタイヤにおいて、転がり抵抗の低減に関して鋭意検討し、本発明に想到した過程を説明する。
タイヤの転がり抵抗(RR)は、歪エネルギー(SE)にトレッドゴムの損失正接(tanδ)とトレッドゴムの体積(Vol)をかけたものと考えられる。すなわち、
RR=SE×tanδ×Vol
で与えられる。
そこで、図1に示すタイヤの負荷転動時にトレッド5に発生する歪エネルギーについて、有限要素法を用いて詳細に解析したところ、トレッド5における歪エネルギーの比率は図2に示す通りであった。
図2より、トレッド5に発生する歪エネルギーは、トレッドセンター部が40%、トレッドショルダー部が60%であり、トレッドショルダー部における歪エネルギーを更に低減させることが、転がり抵抗の低減に有効であることが分かった。
なお、トレッドセンター部は、タイヤ赤道面CLを中心として、最外側傾斜ベルト層3bの幅BWの1/2の幅を有する領域にあり、トレッドショルダー部は、トレッドセンター部の幅方向両外側の領域にあるものとする。
さらに、図1に示すタイヤのトレッドショルダー部に発生する歪エネルギーについて、有限要素法を用いて詳細に解析した結果を図3に示す。
図3において、トレッドショルダー部の歪を、半径方向の垂直歪R、周方向の垂直歪C、幅方向の垂直歪Z、周方向断面内のせん断歪RC、幅方向断面内のせん断歪RZおよび半径方向断面内のせん断歪CZの割合で表している。
図3より、幅方向断面内のせん断歪RZが50%であり、トレッドショルダー部に発生する歪エネルギーの中で支配的であることが分かる。なお、幅方向断面内のせん断歪RZとは、図4に示すように、タイヤ幅方向断面内において、破線の四角形が実線の平行四辺形に変形する際のせん断歪のことである。
次に、本発明者らは、トレッドショルダー部におけるせん断歪RZがどのように発生するかを詳細に検討した結果、主に2つの要因があることを知見した。
第1は、図5(a)に、内圧を与えた状態のトレッド5を破線で、負荷転動時のトレッド5を実線で模式的に示すように、曲率を有するベルト(図示せず)の径方向外側のトレッド5が、タイヤの負荷転動時に平坦な路面10に強制的に押し付けられるため、丸いクラウン形状がまっすぐに伸ばされる形のせん断変形が生ずる。
特に、サイド補強ランフラットタイヤでは、補強ゴム4がパンク時に車両を支えるため、補強ゴム4の曲げ剛性が高い。それゆえ、タイヤの負荷転動時には、サイド部の補強ゴム4の変形は小さく、サイド部に隣接するトレッドショルダー部のゴムのせん断変形が大きくなる。
第2は、ベルト3において、そのトレッドセンター部とトレッドショルダー部の間に径差があるため、図5(b)に模式的に示すように、トレッドセンター部のベルト部分3CENTより、トレッドショルダー部のベルト部分3SHOの方が接地時により多く周方向に伸ばされる。その結果、タイヤ幅方向断面内に収縮し路面で拘束されているトレッド表面とベルトの間にあるトレッドゴムにせん断歪RZが発生する。
以上の検討結果から、トレッドショルダー部におけるせん断歪RZを低減するためには、トレッド5のクラウン形状をフラットにするためにトレッド5を形作るベルト3をフラットにし、かつ、ベルト3のトレッドセンター部とトレッドショルダー部の径差を小さくすることが有効であることがわかった。そこで、本発明においては、最外側傾斜ベルト層3bの幅BWに対する、最外側傾斜ベルト層3bの幅方向中心部(タイヤ赤道面CL)と幅方向端部との径差BDの比BD/BWを0.01以上0.05以下に規定した。
すなわち、比BD/BWが0.01未満の場合、荷重をかけない状態でもトレッドショルダー部はほぼ接地しており、荷重をかけてトレッドショルダー部を路面に押し付けると、トレッドショルダー部のゴムは圧縮変形する。ランフラットタイヤではサイド部の補強ゴム4によりサイド部の剛性が高いため、トレッドショルダー部のゴムの圧縮変形がより大きくなり、すなわち、ヒステリシスロスが大きくなり転がり抵抗が悪化する。
一方、比BD/BWが0.05超の場合、トレッドショルダー部のゴムのせん断歪RZを低減できず、転がり低減効果が発現できない。
また、トレッドショルダー部におけるせん断歪RZをさらに低減するために、ベルトのトレッドショルダー部の張力を増加させてベルトの剛性を高めることにより、トレッドの接地前後の変形量を小さくすることが有効である。ベルト張力Tは、図6に示すように、タイヤの外径a、タイヤの空気圧P、トレッド幅b、曲率半径R、ベルト端におけるカーカスとベルトのなす角θを用いて、
=1/2×aP(b−2Rsinθ)
で与えられることが知られている(株式会社ブリヂストン、「自動車用タイヤの基礎と実際」、山海堂、2006)。上式からθを小さくすればベルト張力Tを大きくできることがわかる。このθを小さくするためには、図1に示すように、カーカス2の最大幅位置Cをトレッド5の近傍に位置させ、この部分の曲率を大きくすることが有効である。具体的には、カーカス2のタイヤ径方向最外側とビードトゥ9との間のタイヤ径方向の距離CSHに対する、カーカス2の最大幅位置Cにタイヤの回転軸と平行に引いた線分とビードトゥ9にタイヤの回転軸と平行に引いた線分との最短距離CSWhの比CSWh/CSHが0.6以上0.9以下であることが好適である。
なぜなら、この比CSWh/CSHが0.6未満の場合θを小さくすることができず、一方、この比CSWh/CSHが0.9超の場合タイヤの形を成さない。なお、一般のタイヤでは、この比CSWh/CSHは0.4以上0.6以下に設定される。
また、トレッドショルダー部におけるせん断歪RZをさらに低減するために、トレッドの接地幅を大きくしてタイヤ幅方向断面内での負荷分散を図ることが有効である。このように接地幅を大きくする際、それに応じてベルト幅を大きくしなければ、ベルトの存在しないトレッドショルダー部が接地することになり、当該部分に非常に大きなせん断歪RZが発生してしまう。従って、トレッド幅およびベルト幅の双方を大きくするために、カーカス2の最大幅CSWに対する、最外側傾斜ベルト層3bの幅BWの比BW/CSWが0.8以上0.94以下とすることが好適である。このようにタイヤの幅に対してベルト幅を大きくすることにより、ビードから最大幅、ベルト端までのサイド部の形状全体はより直線的になり、ランフラット走行時の剛性が大きくなり、ランフラット走行時の耐久性能が向上する。
比BW/CSWが0.8未満の場合、タイヤ幅方向断面内での負荷分散が十分に図れず、転がり抵抗低減効果が十分に発揮されないおそれがある。ベルト端外側に被覆ゴムが必要なため、カーカス2の最大幅CSWに対するベルト幅の上限は限られる。
発明例タイヤ、比較例タイヤおよび従来例タイヤを、後述する仕様のもとに試作し、転がり抵抗指数を測定したので以下に説明する。
発明例タイヤおよび比較例タイヤは、図7に示すようなフラットなクラウン部を有し、従来例タイヤは、図8に示すような丸いクラウン部を有する。各供試タイヤはいずれも、タイヤ赤道面CLに対して26°の角度で傾斜して延びるスチールコードの多数本をゴムで被覆してなる2層を層間でコードが交差する向きに配置してなる傾斜ベルト層3a、3bと、タイヤ赤道面CLに沿って延びるナイロンコードの多数本をゴムで被覆してなるキャップ3cと、傾斜ベルト層3a、3bおよびキャップ3cのタイヤ幅方向端部を補強するためのレイヤ3dとからなるベルト構造を有し、タイヤのサイド部におけるカーカス2のタイヤ幅方向内側に三日月状断面の補強ゴム4を有する。
各供試タイヤにおいて、ベルトの落ち率として最外側傾斜ベルト層3bの幅方向中心部と幅方向端部との径差BDの比BD/BWと、カーカス2の形状として比CSWh/CSHと、カーカス幅対比ベルト幅としてカーカス2の最大幅CSWに対する最外側傾斜ベルト層2bの幅BWの比BW/CSWとを測定し、表1に示す。
各供試タイヤ(225/45R17)をリム(7.5J×17)に装着し、内圧を180kPaに調整したのち、転がり抵抗測定(ISO18164に準拠、スムースドラム、フォース式)を実施した。結果は、表1に、従来例タイヤの転がり抵抗を100として指数で表し、数値が小さいほど良化していることを示す。
Figure 2010167849
表1より、発明例タイヤはいずれも、転がり抵抗が良化していることが分かる。
よって、本発明により、転がり抵抗を低減したランフラットタイヤを提供することができる。
1 ビードコア
2 カーカス
3 ベルト
3a 傾斜ベルト層
3b 傾斜ベルト層(最外側傾斜ベルト層)
3c 周方向ベルト層(キャップ)
3d レイヤ
4 補強ゴム
5 トレッド
6 タイヤ
7 適用リム
9 ビードトゥ

Claims (3)

  1. 一対のビード部間にトロイダル状に跨るカーカスを骨格として、前記カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に、少なくとも1層の傾斜ベルト層を有するベルトおよびトレッドを順に配置し、タイヤのサイド部における前記カーカスのタイヤ幅方向内側に補強ゴムを配置したランフラットタイヤであって、
    該タイヤを適用リムに装着した状態のタイヤ幅方向断面において、前記傾斜ベルト層の最外側層の幅BWに対する、当該最外側層の幅方向中心部と幅方向端部との径差BDの比BD/BWが0.01以上0.05以下であることを特徴とするランフラットタイヤ。
  2. 前記カーカスのタイヤ径方向最外側とビードトゥとの間のタイヤ径方向の距離CSHに対する、前記カーカスの最大幅位置にタイヤの回転軸と平行に引いた線分とビードトゥにタイヤの回転軸と平行に引いた線分との最短距離CSWhの比CSWh/CSHが0.6以上0.9以下であることを特徴とする請求項1に記載のランフラットタイヤ。
  3. 前記カーカスの最大幅CSWに対する、前記最外側層の幅BWの比BW/CSWが0.8以上0.94以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のランフラットタイヤ。
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