JP2010159196A - 結晶配向セラミックスの製造方法及び積層型圧電素子の製造方法 - Google Patents

結晶配向セラミックスの製造方法及び積層型圧電素子の製造方法 Download PDF

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宏紀 藤井
Masaya Nakamura
雅也 中村
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洋介 鈴木
Toshiatsu Nagaya
年厚 長屋
Koshi Noda
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Abstract

【課題】優れた絶縁特性を有するの結晶配向セラミックスの製造方法及び積層型圧電素子の製造方法を提供すること。
【解決手段】等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の結晶面{100}面が配向する結晶配向セラミックスの製造方法、及び結晶配向セラミックスを圧電セラミック層とする積層型圧電素子の製造方法である。その製造にあたっては、異方形状粉末1と反応原料粉末2とを混合して原料混合物3を作製し、これを成形して焼成することにより、結晶配向セラミックスを形成させる。このとき、反応原料粉末2としては、擬立方{002}面の半値幅が0.4°〜0.8°の粉末を採用する。
【選択図】図1

Description

本発明は、等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の結晶面{100}面が配向する結晶配向セラミックスに関する。
セラミックスからなる多結晶体は、例えば温度、熱、ガス、及びイオン等の各種センサ等に利用されている。また、コンデンサ、抵抗体、及び集積回路用基板等の電子回路部品や、光学的又は磁器的記録素子等に利用されている。特に、圧電効果を有するセラミックス(以下、適宜「圧電セラミックス」という)からなる多結晶体は、高性能で、形状の自由度が大きく、材料設計が比較的容易なため、広くエレクトロニクスやメカトロニクスの分野で応用されている。
圧電セラミックスは、強誘電体セラミックスに電界を印加し、強誘電体の分域の方向を一定の方向にそろえる、いわゆる分極処理を施したものである。圧電セラミックスにおいて、分極処理により自発分極を一定方向にそろえるためには、自発分極の方向が三次元的に取りうる等方性ペロブスカイト型の結晶構造が有利である。そのため、実用化されている圧電セラミックスの大部分は、等方性ペロブスカイト型強誘電体セラミックスである。
等方性ペロブスカイト型強誘電体セラミックスとしては、例えば、Pb(Zr・Ti)O3(以下、これを「PZT」という。)、PZTに対して鉛系複合ペロブスカイトを第三成分として添加したPZT3成分系、BaTiO3、Bi0.5Na0.5TiO3(以下、これを「BNT」という。)等が知られている。
これらの中で、PZTに代表される鉛系の圧電セラミックスは、他の圧電セラミックスに比較して高い圧電特性を有しており、現在実用化されている圧電セラミックスの大部分を占めている。しかしながら、蒸気圧の高い酸化鉛(PbO)を含んでいるために、環境に対する負荷が大きいという問題がある。そのため、低鉛あるいは無鉛でPZTと同等の圧電特性を有する圧電セラミックスが求められている。
一方、BaTiO3セラミックスは、鉛を含まない圧電材料の中では比較的高い圧電特性を有しており、ソナー等に利用されている。また、BaTiO3と他の非鉛系ペロブスカイト化合物(例えばBNT等)との固溶体の中にも、比較的高い圧電特性を示すものがある。しかしながら、これらの無鉛圧電セラミックスは、PZTに比して、圧電特性が低いという問題があった。
このような問題を解決するために、従来から様々な圧電セラミックスが提案されてきた。例えば、非鉛系の中でも相対的に高い圧電特性を示す等方性ペロブスカイト型ニオブ酸カリウムナトリウムや、その固溶体からなる圧電セラミックスがある(特許文献1〜6参照)。しかし、これらの無鉛圧電セラミックスは、PZT系の圧電セラミックスに比べてまだ充分な圧電特性を発揮できないという問題があった。
このような背景の中、形状異方性を有し、自発分極が1つの平面内に優先配向するセラミック結晶粒を含む結晶配向セラミックスを有する圧電素子が開発されている(特許文献7参照)。
一般に、等方性ペロブスカイト型化合物の圧電特性などは、結晶軸の方向によって異なることが知られている。そのために、圧電特性などの高い結晶軸を一定の方向に配向させることができれば、圧電特性の異方性を最大限に活用することができ、圧電セラミックスの高性能化が期待できる。上記特許文献7に開示されているように、所定の組成を有する板状粉末を反応性テンプレートとし、該板状粉末と原料粉末とを焼結させて特定の結晶面を配向させる方法によれば、特定の結晶面が高い配向度で配向した高性能な結晶配向セラミックスを製造することができる。
結晶配向セラミックスは、例えば次のようにして作製することができる。
即ち、まず所定の組成を有する異方形状の板状粉末を反応性テンプレートとして準備する。また、焼成時にこの板状粉末と反応して等方性ペロブスカイト型化合物を生成する原料粉末を準備する。
次いで、この板状粉末及び原料粉末に、溶媒、バインダー、可塑剤、及び分散材等を加えて混合し、スラリーを作製する。
次に、スラリーを例えばシート状に成形して成形体を作製する。このとき、成形時に加わるせん断応力により、異方形状の板状粉末を成形体内で略同じ方向に整列させることができる。
次いで、成形体を加熱して焼結させる。このとき、焼結中の成形体内では、上記板状粉末が反応性テンプレートとなって周囲の上記原料粉末と反応して上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成しながら板状粉末が成長する。
さらに、焼結を進行させると、板状粉末が原料粉末と反応しながらさらに成長し、特定の結晶面が配向した結晶粒子(配向粒子)からなる結晶配向セラミックスを得ることができる。
特開2000−313664号公報 特開2003−300776号公報 特開2003−306479号公報 特開2003−327472号公報 特開2003−342069号公報 特開2003−342071号公報 特開2004−7406号公報
しかしながら、従来の上記等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなる結晶配向セラミックスを用いて、圧電素子を作製すると、結晶配向セラミックスの電気絶縁抵抗が十分でなく、積層型圧電素子等の電子デバイスとしての使用上に問題があった。
即ち、従来の結晶配向セラミックスの製造方法においては、焼成時に、異方形状粉末と原料粉末との反応性が不十分になりやすい。その結果、結晶配向セラミックスの絶縁特性が低下するという問題があった。
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、優れた絶縁特性を有する結晶配向セラミックスの製造方法及び積層型圧電素子の製造方法を提供しようとするものである。
第1の発明は、等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の結晶面{100}面が配向する結晶配向セラミックスの製造方法であって、
結晶面{100}面が配向する異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末を準備する第1準備工程と、
上記異方形状粉末と反応して上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する反応原料粉末を準備する第2準備工程と、
上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とを混合することにより原料混合物を作製する混合工程と、
上記異方形状粉末の結晶面{100}面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物をシート状に成形して成形体を作製する成形工程と、
上記成形体を加熱することにより、上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とを反応させると共に焼結させて上記結晶配向セラミックスを得る焼成工程とを有し、
上記第2準備工程においては、擬立方{002}面の半値幅が0.4°〜0.8°である上記反応原料粉末を採用することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法にある(請求項1)。
第2の発明は、等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の結晶面{100}面が配向する結晶配向セラミックスよりなる圧電セラミック層と、導電性金属を含有する内部電極とを複数交互に積層してなる積層型圧電素子の製造方法において、
結晶面{100}面が配向する異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末を準備する第1準備工程と、
上記異方形状粉末と反応して上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する反応原料粉末を準備する第2準備工程と、
上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とを混合することにより原料混合物を作製する混合工程と、
上記異方形状粉末の結晶面{100}面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物をシート状に成形して成形体を作製する成形工程と、
上記成形体上に、焼成後に上記内部電極となる上記導電性金属を含有する電極材料を印刷する印刷工程と、
該印刷工程後の上記成形体を積層して積層体を作製する積層工程と、
上記積層体を加熱することにより、上記成形体内で上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とを反応させると共に上記成形体を焼結させて、上記圧電セラミック層と上記内部電極とが複数交互に積層された上記積層型圧電素子を得る焼成工程とを有し、
上記第2準備工程においては、擬立方{002}面の半値幅が0.4°〜0.8°である上記反応原料粉末を採用することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法にある(請求項10)。
上記第1の発明においては、上記第1準備工程と上記第2準備工程と上記混合工程と上記成形工程と上記焼成工程とを行うことにより、上記結晶配向セラミックスを作製する。
本発明において最も注目すべき点は、上記第2準備工程において、擬立方{002}面の半値幅が0.4°〜0.8°である上記反応原料粉末を採用していることである。擬立方{002}面の半値幅0.4°〜0.8°の上記反応原料粉末は、上記焼成工程において、結晶面{100}面が配向する上記異方形状粉末との反応性に優れている。そのため、上記焼成工程において、上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とが充分に反応し、緻密化が進み、電気絶縁抵抗の低下を抑制することができる。
従来用いられていた反応原料粉末は、結晶成長が進行し、擬立方{002}面の半値幅が非常に低いものであった。かかる反応原料粉末は、焼成時に{100}面が配向する異方形状粉末との反応性が悪く、緻密化が阻害され、電気絶縁抵抗が低下する。本発明のように擬立方{002}面の半値幅が0.4°以上の上記反応原料粉末は、結晶成長があまり進行しておらず、上記のごとく、異方形状粉末との反応性に優れている。そのため、優れた電気絶縁抵抗を示す結晶配向セラミックスを得ることができる。
また、本発明においては、上記結晶粒の結晶面{100}面が配向する上記結晶配向セラミックスを製造することができる。そのため、配向面がペロブスカイト型化合物の分極軸と垂直になり、配向した上記結晶粒の変位方向と同方向になり、上記結晶配向セラミックスは、高い変位性能を示すことができる。
上記第2の発明においては、上記第1準備工程と上記第2準備工程と上記混合工程と上記成形工程と上記印刷工程と上記積層工程と上記焼成工程とを行うことにより、上記積層型圧電素子を作製する。
本発明において最も注目すべき点は、上記第1の発明と同様に、上記第2準備工程において、擬立方{002}面の半値幅が0.4°〜0.8°である上記反応原料粉末を採用していることである。そのため、上記焼成工程において、上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とが充分に反応し、緻密化が進み、上記圧電セラミック層の電気絶縁抵抗の低下を抑制することができる。
特に、上記第2の発明のごとく、上記圧電セラミック層と上記内部電極とを一体焼成により形成する場合には、上記焼成工程中に、上記内部電極から導電性金属が上記圧電セラミック層中に拡散し、該圧電セラミック層の電気絶縁抵抗の低下が顕著に起こる傾向にある。上記第2の発明においては、かかる場合においても、電気絶縁抵抗の低下を充分に抑制することができ、電子デバイスとして好適な上記積層型圧電素子を製造することができる。
また、本発明においては、上記結晶粒の結晶面{100}面が配向する上記結晶配向セラミックスからなる上記圧電セラミック層を形成することができる。そのため、配向面がペロブスカイト型化合物の分極軸と垂直になり、配向した上記結晶粒の変位方向と同方向になる。そのため、上記積層型圧電素子は、高い変位性能を示すことができる。
実施例1にかかる、異方形状粉末と反応原料粉末とを混合してなる原料混合物の構成を示す説明図。 実施例1にかかる、異方形状粉末が略同一方向に配向して配置された成形体の内部構成を示す説明図。 実施例1にかかる、焼成中の成形体内で異方形状粉末が結晶成長する様子を示す説明図。 実施例1にかかる、結晶配向セラミックスを示す説明図。 実施例1にかかる、原料源を示す説明図(a)、仮焼後の反応原料粉末を示す説明図(b)。 実施例2にかかる、積層型圧電素子の全体構成を示す説明図(a)、積層型圧電素子の積層方向の断面を示す説明図(b)。
次に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
本発明においては、上記第1準備工程と上記第2準備工程と上記混合工程と上記成形工程と上記焼成工程とを行うことにより、等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の結晶面{100}面が配向する上記結晶配向セラミックスを作製する。
好ましくは、上記混合工程においては、上記焼成工程後に上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とから一般式(1){Lix(K1-yNay)1-x}a(Nb1-z-wTazSbw)O3(但し、0≦x≦0.2、0≦y≦1、0≦z≦0.4、0≦w≦0.2、x+z+w>0、0.95≦a≦1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物が生成する化学量論比にて上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とを混合することが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記一般式(1)で表される上記上記等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなる上記結晶配向セラミックスを製造することができる。該結晶配向セラミックスは、上記等方性ペロブスカイト型化合物の特性を生かして、優れた圧電特性を示すことができる。
上述の「等方性」とは、擬立方基本格子でペロブスカイト型構造ABO3を表現したとき、軸長a、b、cの相対比が0.8〜1.2であり、軸角α、β、γが80〜100°の範囲にあることを示す。
上記一般式(1)で表される化合物は、これをペロブスカイト構造の組成式ABO3にあてはめたときに、Aサイト原子とBサイト原子の構成比が1:1である組成に対して、Aサイト原子の構成比を5%減らした組成とすることができる。すなわち、上記一般式において0.95≦a≦1であり、好ましくは、0.97≦a≦1である。
上記一般式(1)において、「x+z+w>0」は、置換元素として、Li、Ta及びSbの内の少なくとも1つが含まれていればよいことを示す。
また、一般式(1)において、「y」は、等方性ペロブスカイト型化合物に含まれるKとNaの比を表す。上記等方性ペロブスカイト型化合物は、Aサイト元素として、K又はNaの少なくとも一方が含まれていればよい。
上記一般式(1)におけるyの範囲は、0<y≦1であることがより好ましい。
この場合には、上記一般式(1)で表される化合物において、Naが必須成分となる。そのため、この場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電g31定数をさらに向上させることができる。
また、上記一般式(1)におけるyの範囲は、0≦y<1とすることができる。
この場合には、上記一般式(1)で表される化合物において、Kが必須成分となる。そのため、この場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電d31定数等の圧電特性をさらに向上させることができる。また、この場合には、K添加量の増加に伴い、より低温での焼結が可能になるため、省エネルギーかつ低コストで上記結晶配向セラミックスを作製することができる。
また、上記一般式(1)において、yは、0.05≦y≦0.75であることがより好ましく、0.20≦y≦0.70であることがさらに好ましい。これらの場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電d31定数及び電気解決合計数Kpを一層向上させることができる。さらに一層好ましくは、0.20≦y<0.70がよく、さらには0.35≦y≦0.65がよく、さらには0.35≦y<0.65がより好ましい。また、最も好ましくは、0.42≦y≦0.60がよい。
「x」は、Aサイト元素であるK及び/又はNaを置換するLiの置換量を表す。K及び/又はNaの一部をLiで置換すると、圧電特性等の向上、キュリー温度の上昇、及び/又は緻密化の促進という効果が得られる。
上記一般式(1)におけるxの範囲は、0<x≦0.2であることが好ましい。
この場合には、上記一般式(1)で表される化合物において、Liが必須成分となるので、上記結晶配向セラミックスは、その作製時の焼成を一層容易に行うことができると共に、圧電特性がより向上し、キュリー温度(Tc)を一層高くすることができる。これは、Liを上記のxの範囲内において必須成分とすることにより、焼成温度が低下すると共に、Liが焼成助剤としての役割を果たし、空孔の少ない焼成を可能にするからである。
xの値が0.2を越えると、圧電特性(圧電d31定数、電気機械結合係数kp、圧電g31定数等)が低下するおそれがある。
また、上記一般式(1)におけるxの値は、x=0とすることができる。
この場合には、上記一般式(1)は、(K1-yNay)a(Nb1-z-wTazSbw)O3で表される。そしてこの場合には、上記結晶配向セラミックスを作製する際に、その原料中に例えばLiCO3のように、最も軽量なLiを含有してなる化合物を含まないので、原料を混合し上記結晶配向セラミックスを作製するときに原料粉の偏析による特性のばらつきを小さくすることができる。また、この場合には、高い比誘電率と比較的大きな圧電g定数を実現できる。上記一般式(1)において、xの値は、0≦x≦0.15がより好ましく、0≦x≦0.10がさらに好ましい。
「z」は、Bサイト元素であるNbを置換するTaの置換量を表す。Nbの一部をTaで置換すると、圧電特性等の向上という効果が得られる。上記一般式(1)において、zの値が0.4を越えると、キュリー温度が低下し、家電や自動車用の圧電材料としての利用が困難になるおそれがある。
上記一般式(1)におけるzの範囲は、0<z≦0.4であることが好ましい。
この場合には、上記一般式(1)で表される化合物において、Taが必須成分となる。そのため、この場合には、焼結温度が低下すると共に、Taが焼結助剤の役割を果たし、上記結晶配向セラミックス中の空孔を少なくすることができる。
上記一般式(1)におけるzの値は、z=0とすることができる。
この場合には、上記一般式(1)は、{Lix(K1-yNay)1-x}a(Nb1-wSbw)O3で表される。そして、この場合には、上記一般式(1)で表される化合物はTaを含まない。そのためこの場合には、上記一般式(1)で表される化合物は、その作製時に高価なTa成分を使用することなく、優れた圧電特性を示すことができる。
上記一般式(1)において、zの値は、0≦z≦0.35がより好ましく、0≦z≦0.30がさらに好ましい。
さらに、「w」は、Bサイト元素であるNbを置換するSbの置換量を表す。Nbの一部をSbで置換すると、圧電特性等の向上という効果が得られる。wの値が0.2を越えると、圧電特性、及び/又はキュリー温度が低下するので好ましくない。
また、上記一般式(1)におけるwの値は、0<w≦0.2であることが好ましい。
この場合には、上記一般式(1)で表される化合物において、Sbが必須成分となる。そのため、この場合には、焼結温度が低下し、焼結性を向上させることができると共に、誘電損失tanδの安定性を向上させることができる。
また、上記一般式(1)におけるwの値は、w=0とすることができる。この場合には、上記一般式(1)は、{Lix(K1-yNay)1-x}a(Nb1-zTaz)O3で表される。そして、この場合には、上記一般式(1)で表される化合物は、Sbを含まず、比較的高いキュリー温度を示すことができる。上記一般式(1)において、wの値は、0≦w≦0.15であることがより好ましく、、0≦w≦0.10であることがさらに好ましい。
また、上記結晶配向セラミックスは、高温から低温になるにつれて、結晶相が立方晶→正方晶(第1の結晶相転移温度=キュリー温度)、正方晶→斜方晶(第2の結晶相転移温度)、斜方結晶→菱面体晶(第3の結晶相転移温度)と変化する。第1の結晶相転移温度より高い温度領域では立方晶となるため変位特性が消滅し、また、第2の結晶相転移温度より低い温度領域では斜方結晶となり、変位ならびに見かけの動的静電容量の温度依存性が大きくなる。従って、第1の結晶相転移温度は使用温度範囲より高く、第2の結晶相転移温度は使用温度範囲より低くすることで使用温度範囲全域にわたって正方晶であることが望ましい。
ところが、上記結晶配向セラミクスの基本組成であるニオブ酸カリウムナトリウム(K1-yNayNbO3)は、「ジャーナル・オブ・アメリカン・セラミック・ソサイエティ“Journal of American Ceramic Society ”」、米国、1959年、第42巻[9]p.438−442、ならびに米国特許2976246号明細書によれば、高温から低温になるにつれて、結晶相が立方晶→正方晶(第1の結晶相転移温度=キュリー温度)、正方晶→斜方晶(第2の結晶相転移温度)、斜方結晶→菱面体晶(第3の結晶相転移温度)と変化する。また、「y=0.5」における第1の結晶相転移温度は約420℃、第2の結晶相転移温度は約190℃、第3の結晶相転移温度は約−150℃である。従って、正方晶である温度領域は190〜420℃の範囲であり、一般的な工業製品の使用温度範囲である−40〜160℃と一致しない。
一方、上記結晶配向セラミックスは、基本組成であるニオブ酸カリウムナトリウム(K1-yNayNbO3)に対して、Li、Ta、Sb等の置換元素の量を変化させることにより、第1の結晶相転移温度ならびに第2の結晶相転移温度を自由に変えることができる。
圧電特性が最も大きくなるy=0.4〜0.6において、Li,Ta,Sbの置換量と
結晶相転移温度実測値の重回帰分析を行った結果を下記の式B1、式B2に示す。
式B1及び式B2から、Li置換量は第1の結晶相転移温度を上昇させ、かつ、第2の
結晶相転移温度を低下させる作用を有することがわかる。また、TaならびにSbは第1
の結晶相転移温度を低下させ、かつ、第2の結晶相転移温度を低下させる作用を有するこ
とがわかる。
第1の結晶相転移温度=(388+9x−5z−17w)±50[℃]・・・(式B1)
第2の結晶相転移温度=(190−18.9x−3.9z−5.8w)±50[℃]・・・(式B2)
第1の結晶相転移温度は圧電性が完全に消失する温度であり、かつその近傍で動的容量急激に大きくなることから、(製品の使用環境上限温度+60℃)以上が望ましい。第2の結晶相転移温度は単に結晶相転移する温度であり、圧電性は消失しないため変位、あるいは動的容量の温度依存性に悪影響が出ない範囲に設定すればよいため、(製品の使用環境下限温度+40℃)以下が望ましい。
一方、製品の使用環境上限温度は、用途により異なり、60℃、80℃、100℃、120℃、140℃、160℃などである。製品の使用環境下限温度は−30℃、−40℃などである。
従って、上記式B1に示す第1の結晶相転移温度は120℃以上が望ましいため、「x」、「z」、「w」は(388+9x−5z−17w)+50≧120を満足することが望ましい。
また、式B2に示す第2の結晶相転移温度は、10℃以下が望ましいため、「x」、「z」、「w」は(190−18.9x−3.9z−5.8w)−50≦10を満足することが望ましい。
即ち、上記一般式(1)は、9x−5z−17w≧−318、及び−18.9x−3.9z−5.8w≦−130という関係を満足することが好ましい。
なお、上記結晶配向セラミックスは、上記一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物のみからなることが望ましいが、等方性ペロブスカイト型の結晶構造を維持でき、かつ、焼結特性、圧電特性等の諸特性に悪影響を及ぼさないものである限り、他の元素又は他の相が含まれていても良い。
上記結晶配向セラミックスにおいては、該結晶配向セラミックスの多結晶体を構成する結晶粒の結晶面{100}面が配向する。
「特定の結晶面{100}が配向する」とは、上記等方性ペロブスカイト型化合物の擬立方{100}面が互いに平行になるように、各結晶粒が配列していること(以下、このような状態を「面配向」という。)を意味する。
「擬立方{HKL}」とは、一般に等方性ペロブスカイト型化合物は、正方晶、斜方晶、三方晶等、立方晶からわずかにゆがんだ構造をとるが、その歪みはわずかであるので、立方晶とみなしてミラー指数表示することを意味する。
また、特定の結晶面Aが面配向している場合において、面配向の程度は、次の数1の式で表されるロットゲーリング(Lotgering)法による平均配向度F(HKL)で表すことができる。
Figure 2010159196
数1の式において、ΣI(hkl)は、結晶配向セラミックスについて測定されたすべて
の結晶面(hkl)のX線回折強度の総和であり、ΣI0(hkl)は、結晶配向セラミッ
クスと同一組成を有する無配向の圧電セラミックスについて測定されたすべての結晶面(
hkl)のX線回折強度の総和である。また、Σ’I(HKL)は、結晶配向セラミックス
について測定された結晶学的に等価な特定の結晶面(HKL)のX線回折強度の総和であ
り、Σ’I0(HKL)は、結晶配向セラミックスと同一組成を有する無配向の圧電セラミ
ックスについて測定された結晶学的に等価な特定の結晶面(HKL)のX線回折強度の総
和である。
したがって、多結晶体を構成する各結晶粒が無配向である場合には、平均配向度F(H
KL)は0%となる。また、多結晶体を構成するすべての結晶粒の(HKL)面が測定面
に対して平行に配向している場合には、平均配向度F(HKL)は100%となる。
上記結晶配向セラミックスにおいて、配向している結晶粒の割合が多くなるほど、高い
特性が得られる。
上記結晶配向セラミックスは、上記等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなるので、非鉛系の圧電セラミックスの中でも高い圧電特性等を示すことができる。また、上記結晶配向セラミックスは、多結晶体を構成する各結晶粒の特定の結晶面が一方向に配向しているので、同一組成を有する無配向焼結体(無配向体)に比して、高い圧電特性等を示すことができる。
次に、上記結晶配向セラミックスを作製するための各工程について説明する。
上記第1準備工程においては、結晶面{100}面が配向する異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末を準備する。
「異方形状」とは、幅方向又は厚さ方向の寸法に比して、長手方向の寸法が大きいことをいう。具体的には、板状、柱状、鱗片状、針状等の形状が好適な例として挙げられる。また、上記配向面を構成する結晶面の種類は、種々の結晶面の中から目的に応じて選択することができる。
上記配向粒子としては、成形工程の際に一定の方向に配向させることが容易な形状を有しているものを用いることが好ましい。そのため、上記配向粒子の平均アスペクト比は3以上であることが好ましい。平均アスペクト比が3未満の場合には、後述の成形工程において、上記異方形状粉末を一方向に配向させることが困難になる。より高い配向度の上記結晶配向セラミックスを得るためには、上記配向粒子のアスペクト比は5以上であることがより好ましい。なお、平均アスペクト比は、上記配向粒子の最大寸法/最小寸法の平均値である。
また、上記配向粒子の平均アスペクト比が大きくなるほど、成形工程において上記配向粒子を配向させることがより容易になる傾向がある。しかし、平均アスペクト比が過大になると、上記混合工程において、上記配向粒子が破壊されてしまうおそれがある。その結果、成形工程において、上記配向粒子が配向した成形体が得られなくなるおそれがある。したがって、上記配向粒子の平均アスペクト比は、100以下であることが好ましい。より好ましくは50以下、さらには30以下が良い。
また、上記配向粒子は、例えばペロブスカイト型化合物からなる。
具体的には、上記配向粒子としては、例えば上記一般式(1)で表される化合物等のように目的の上記結晶配向セラミックスの上記ペロブスカイト型化合物と同一組成を有するもの等を用いることができる。
また、上記配向粒子は、必ずしも上記一般式(1)で表される化合物等のように目的の化合物と同一組成を有するものである必要はなく、後述の反応原料粉末と焼結することにより、目的とする上記一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物を主成分として生成するものであればよい。したがって、上記配向粒子としては、作製しようとする等方性ペロブスカイト型化合物に含まれる陽イオン元素のうちいずれか1種以上の元素を含む化合物あるいは固溶体等から選ぶことができる。
上述のような条件を満たす配向粒子としては、例えば等方性ペロブスカイト型化合物の一種であるNaNbO3(以下、これを「NN」という。)、KNbO3(以下、これを「KN」という。)、(K1-yNay)NbO3(0<y<1)、又はこれらに所定量のLi、Ta及び/又はSbが置換・固溶したものであって、次の一般式(3)で表される化合物からなるもの等を用いることができる。
{Lix(K1-yNay)1-x}(Nb1-z-wTazSbw)O3 ・・・(3)
(但し、x、y、z、wがそれぞれ0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦w≦1)
上記一般式(3)で表される化合物は、当然に上記一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物と良好な格子整合性を有している。そのため、上記一般式(3)で表され、{100}面を上記配向面とする上記配向粒子からなる異方形状粉末(以下、これを特に「異方形状粉末A」という)は、上記結晶配向セラミックスを製造するための反応性テンプレートとして機能する。また、上記異方形状粉末Aは、実質的に上記一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物に含まれる陽イオン元素から構成されているので、不純物元素の極めて少ない結晶配向セラミックスを製造することができる。
また、上記異方形状粉末としては、例えば層状ペロブスカイト型化合物からなり、かつ表面エネルギーの小さい結晶面が{100}面となっているものを用いることができる。層状ペロブスカイト型化合物は、結晶格子の異方性が大きいので、層状ペロブスカイト型化合物からなり、表面エネルギーの小さい結晶面を配向面とする異方形状粉末(以下、これを特に「異方形状粉末B」という。)を比較的容易に合成することができる。
上記異方形状粉末Bの材料として好適な層状ペロブスカイト型化合物の第1の例としては、例えば次の一般式(4)で表されるビスマス層状ペロブスカイト型化合物がある。
(Bi22)2+(Bi0.5Mem-1.5Nbm3m+1)2- ・・・(4)
(但し、mは2以上の整数、MeはLi、K及びNaから選ばれる1種以上)
上記一般式(4)で表される化合物は{001}面の表面エネルギーが他の結晶面の表面エネルギーより小さい。そのため、上記一般式(4)で表される化合物を用いることにより、{001}面を配向面とする上記異方形状粉末Bを容易に合成できる。ここで、{001}面は、上記一般式(4)で表されるビスマス層状ペロブスカイト型化合物の(Bi22)2+層に平行な面である。しかも、上記一般式(4)で表される化合物の{001}面は、一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物の擬立方{100}面との間に極めて良好な格子整合性がある。
そのため、上記一般式(4)で表される化合物からなり、かつ{001}面を配向面とする異方形状粉末Bは、擬立方{100}面を配向面とする結晶配向セラミックスを作製するための反応性テンプレート、即ち上記異方形状粉末として好適である。
また、上記一般式(4)で表される化合物を用いるときに、後述の反応原料粉末の組成を最適化することによって、Aサイト元素として実質的にBiを含まないように調整することができる。
このような異方形状粉末Bを用いても、上記一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする結晶配向セラミックスを製造することができる。
また、上記異方形状粉末Bの材料として好適な層状ペロブスカイト型化合物の第2の例としては、例えばSr2Nb27がある。Sr2Nb27の{010}面は、その表面エネルギーが他の結晶面の表面エネルギーより小さく、しかも、上記一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物の擬立方{110}面との間に極めて良好な格子整合性がある。そのため、Sr2Nb27からなり、かつ{010}面を配向面とする異方形状粉末は、{110}面を配向面とする結晶配向セラミックスを作製するための反応性テンプレートとして好適である。
異方形状粉末Bの材料として好適な層状ペロブスカイト型化合物の第3の例としては、例えばNa1.5Bi2.5Nb312、Na2.5Bi2.5Nb415、Bi3TiNbO9、Bi3TiTaO9、K0.5Bi2.5Nb29、CaBi2Nb29、SrBi2Nb29、BaBi2Nb29、BaBi3Ti2NbO12、CaBi2Ta29、SrBi2Ta29、BaBi2Ta29、Na0.5Bi2.5Ta29、Bi7Ti4NbO21、Bi5Nb315等がある。これらの化合物の{001}面は、上記一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物の擬立方{100}面と良好な格子整合性を有している。そのため、これらの化合物からなり、かつ{001}面を配向面とする異方形状粉末は、擬立方{100}面を配向面とする結晶配向セラミックスを作製するための反応性テンプレートとして好適である。
異方形状粉末Bの材料として好適な層状ペロブスカイト型化合物の第4の例としては、例えばCa2Nb27、Sr2Ta27等がある。これらの化合物の{010}面は、上記一般式(3)で表される等方性ペロブスカイト型化合物の擬立方{110}面と良好な格子整合性を有している。そのため、これらの化合物からなり、かつ{010}面を配向面とする異方形状粉末は、擬立方{110}面を配向面とする結晶配向セラミックスを作製するための反応性テンプレートとして好適である。
次に、上記異方形状粉末の製造方法について説明する。
所定の組成、平均粒径及び/又はアスペクト比を備えた層状ペロブスカイト型化合物からなる異方形状粉末(即ち、上記異方形状粉末B)は、その成分元素を含む酸化物、炭酸塩、硝酸塩等を原料(以下、これを「異方形状粉末生成原料」という。)とし、この異方形状粉末生成原料を液体又は加熱により液体となる物質と共に加熱することにより容易に製造することができる。
上記異方形状粉末生成原料を原子の拡散が容易な液相中で加熱すると、表面エネルギーの小さい面(例えば上記一般式(4)で表される化合物の場合は{001}面)が優先的に発達した異方形状粉末Bを容易に合成することができる。この場合、異方形状粉末Bの平均アスペクト比及び平均粒径は、合成条件を適宜選択することにより、制御することができる。
異方形状粉末Bの製造方法としては、例えば上記異方形状粉末生成原料に適当なフラックス(例えば、NaCl、KCl、NaClとKClとの混合物、BaCl2、KF等)
を加えて所定の温度で加熱する方法(フラックス法)や、作製しようとする異方形状粉末Bと同一組成を有する不定形粉末をアルカリ水溶液と共にオートクレーブ中で加熱する方法(水熱合成法)等が好適な例としてあげられる。
一方、上記一般式(3)で表される化合物は、結晶格子の異方性が極めて小さいので、一般式(3)で表される化合物からなり、かつ特定の結晶面を配向面とする上記異方形状粉末(即ち、上記異方形状粉末A)を直接合成するのは困難である。しかしながら、上記異方形状粉末Aは、上述の異方形状粉末Bを反応性テンプレートとして用いて、これと所定の条件を満たす後述の反応原料Bとを、フラックス中で加熱することにより製造することができる。
なお、異方形状粉末Bを反応性テンプレートとして用いて異方形状粉末Aを合成する場合には、反応条件を最適化すれば、結晶構造の変化のみが起こり、粉末形状の変化はほとんど生じない。
成形時に一方向に配向させることが容易な異方形状粉末Aを容易に合成するためには、その合成に使用する異方形状粉末Bもまた、成形時に一方向に配向させることが容易な形状を有していることが好ましい。
すなわち、上記異方形状粉末Bを反応性テンプレートとして用いて、異方形状粉末Aを合成する場合においても、異方形状粉末Aの平均アスペクト比は、少なくとも3以上が好ましく、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上がよい。また、後工程における粉砕を抑制するためには、平均アスペクト比は、100以下であることが好ましい。
上記の「反応原料B」とは、上記異方形状粉末Bと反応して、少なくとも上記一般式(3)で表される化合物からなる異方形状粉末Aを生成するものをいう。この場合、反応原料Bは、上記異方形状粉末Bとの反応によって、上記一般式(3)で表される化合物のみを生成するものであってもよく、また、上記一般式(3)で表される化合物と余剰成分の双方を生成するものであってもよい。ここで、「余剰成分」とは、目的とする上記一般式(3)で表される化合物以外の物質をいう。また、異方形状粉末Bと反応原料Bによって余剰成分が生成する場合、余剰成分は、熱的又は化学的に除去することが容易なものからなることが好ましい。
上記反応原料Bの形態としては、例えば酸化物粉末、複合酸化物粉末、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩等の塩、アルコキシド等を用いることができる。また、反応原料Bの組成は、作製しようとする上記一般式(3)で表される化合物の組成、及び上記異方形状粉末Bの組成によって決定することができる。
例えば、上記一般式(4)で表されるビスマス層状ペロブスカイト型化合物の1種であるBi2.5Na0.5Nb29(以下、これを「BINN2」という。)からなる異方形状粉末Bを用いて、上記一般式(3)で表される化合物の一種であるNaNbO3(NN)からなる異方形状粉末Aを合成する場合、上記反応原料Bとしては、Naを含む化合物(酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等)を用いることができる。
このような組成を有する異方形状粉末B及び反応原料Bに対して、適当なフラックス(例えば、NaCl、KCl、NaClとKClとの混合物、BaCl2、KF等)を1重量%〜500重量%加えて、共晶点・融点に加熱すると、NNとBi23とを主成分とする余剰成分が生成する。Bi23は、融点が低く、酸にも弱いので、得られた反応物から湯洗等によりフラックスを取り除いた後、これを高温で加熱するか、あるいは、酸洗浄を行えば、{100}面を配向面とするNNからなる上記異方形状粉末Aを得ることができる。
また、例えば、BINN2からなる上記異方形状粉末Bを用いて、上記一般式(3)で表される化合物の一種である(K0.5Na0.5)NbO3(以下、これを「KNN」という。)からなる異方形状粉末Aを合成する場合には、上記反応原料Bとして、Naを含む化合物(酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等)及びKを含む化合物(酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等)、又はNa及びKの双方を含む化合物を用いればよい。
このような組成を有する異方形状粉末B及び反応原料Bに対して、適当なフラックスを1重量%〜500重量%加えて、共晶点・融点に加熱すると、KNNとBi23とを主成分とする余剰成分が生成するので、得られた反応物からフラックス及びBi23を除去すれば、{100}面を配向面とするKNNからなる異方形状粉末Aを得ることができる。
上記異方形状粉末Bと上記反応原料Bとの反応によって、上記一般式(3)で表される化合物のみを生成させる場合も同様であり、所定の組成を有する異方形状粉末Bと所定の組成を有する反応原料Bとを適当なフラックス中で加熱すればよい。これにより、フラックス中において、目的とする組成を有する上記一般式(3)で表される化合物を生成することができる。また、得られた反応物からフラックスを取り除けば、上記一般式(3)からなり、かつ特定の結晶面を配向面とする異方形状粉末Aを得ることができる。
上記一般式(3)で表される化合物は、上述のごとく、結晶格子の異方性が小さいので、異方形状粉末Aを直接合成することは困難である。また、任意の結晶面を配向面とする異方形状粉末Aを直接合成することも困難である。
これに対し、層状ペロブスカイト型化合物は、結晶格子の異方性が大きいので、異方形状粉末を直接合成することが容易にできる。また、層状ペロブスカイト型化合物からなる異方形状粉末の配向面は、上記一般式(3)で表される化合物の特定の結晶面との間に格子整合性を有しているものが多い。さらに、上記一般式(3)で表される化合物は、層状ペロブスカイト型化合物に比べて熱力学的に安定である。
そのため、層状ペロブスカイト型化合物からなり、かつその配向面が上記一般式(3)で表される化合物の特定の結晶面と格子整合性を有する異方形状粉末Bと上記反応原料Bとを、適当なフラックス中で反応させると、上記異方形状粉末Bが反応性テンプレートとして機能することができる。その結果、上記異方形状粉末Bの配向方位を継承した、上記一般式(3)で表される化合物からなる異方形状粉末Aを容易に合成することができる。
また、上記異方形状粉末B及び上記反応原料Bの組成を最適化すると、上記異方形状粉末Bに含まれていたAサイト元素(以下、これを「余剰Aサイト元素」という。)が余剰成分として排出されると共に、余剰Aサイト元素を含まない、上記一般式(3)で表される化合物からなる異方形状粉末Aが生成する。
特に、上記異方形状粉末Bが上記一般式(4)に示すビスマス層状ペロブスカイト型化合物からなる場合には、Biが余剰Aサイト元素として排出され、Bi23を主成分とする余剰成分が生成する。そのため、この余剰成分を熱的又は化学的に除去すれば、実質的にBiを含まず、上記一般式(3)で表される化合物からなり、かつ特定の結晶面を配向面とする異方形状粉末Aを得ることができる。
上記配向粒子は、ABO3で表される等方性ペロブスカイト型化合物からなり、該等方性ペロブスカイト型化合物におけるAサイト元素はK、Na、Liから選ばれる1種以上を主成分とし、Bサイト元素は、Nb、Sb、Taから選ばれる1種以上を主成分とすることが好ましい。
この場合には、上記配向粒子を用いることにより、非鉛系の中でも相対的に高い圧電特性を示す等方性ペロブスカイト型ニオブ酸カリウムナトリウム系の結晶配向セラミックスを作製できる。
より好ましくは、上記配向粒子は、上記一般式(3)で表される化合物からなることがよい。
この場合には、より配向度の高い結晶配向セラミックスを作製することができる。
即ち、上述のごとく、上記一般式(3)で表される化合物は、上記一般式(1)で表される化合物と良好な格子整合性を有している。そのため、上記一般式(3)で表され、かつ特定の結晶面を上記配向面とする上記配向粒子からなる上記異方形状粉末は、上記結晶配向セラミックスを製造するための良好な反応性テンプレートとして機能することができる。
次に、上記第2準備工程においては、上記異方形状粉末と反応して上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する反応原料粉末を準備する。上記第2準備工程においては、擬立方{002}面の半値幅が0.4°〜0.8°である上記反応原料粉末を採用する。
上記反応原料粉末の上記半値幅が0.4°未満の場合には、焼成工程において上記異方形状粉末との反応性が低下するおそれがある。その結果、緻密化し難くなり、電気絶縁抵抗が低下してしまうおそれがある。一方、0.8°を越える場合には、上記焼成工程後に得られる上記結晶配向セラミックスの組成及び緻密性が不均一になってしまうおそれがある。
上記反応原料粉末の{002}面の半値幅は、例えば次のようにして測定することができる。
即ち、上記反応原料粉末のX線回折パターン(山形波形)を各結晶面に由来するピークごとに分離し、{002}面に由来するピーク(θ=約45°の位置)の最大強度が半分になる強度におけるピーク幅を求め、これを半値幅(全半値幅)とすることができる。
また、上記反応原料粉末は、上記異方形状粉末の1/3以下の粒径を有することが好ましい。
上記反応原料粉末の粒径が上記異方形状粉末の粒径の1/3を超える場合には、上記成形工程において、上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物を成形することが困難になるおそれがある。より好ましくは、上記反応原料粉末の粒径は、上記異方形状粉末の粒径の1/4以下がよく、さらには1/5以下がよい。
上記反応原料粉末と上記異方形状粉末との粒径の比較は、上記反応原料粉末の平均粒径と上記異方形状粉末の平均粒径とを比較することによって行うことができる。なお、上記異方形状粉末の粒径及び上記反応原料粉末の粒径は、いずれも最も長尺の径のことをいう。
上記反応原料粉末の組成は、上記異方形状粉末の組成、及び作製しようとする例えば一般式(1)で表される化合物等の等方性ペロブスカイト型化合物の組成に応じて決定できる。
即ち、上記一般式(1)で表される目的の組成、及び上記異方形状粉末の組成を決定し、該異方形状粉末と上記反応原料粉末とから上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物が生成するように、上記反応原料粉末の組成を決定することができる。
上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とは異なる組成からなり、上記焼成工程においては、上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とが化学反応を起こすことにより上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成することが好ましい。
この場合には、上述のごとく、複雑な組成の結晶配向セラミックスを簡単に作製することができる。
上記反応原料粉末としては、一般式(2){Lip(K1-qNaq)1-p}c(Nb1-r-sTarSbs)O3(但し、0≦p≦1、0≦q≦1、0≦r≦1、0≦s≦1、0.95≦c≦1.05)で表される等方性ペロブスカイト型化合物からなる粉末を採用することが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記焼成工程における上記異方形状粉末との反応性が向上し、組成及び緻密性が均一な上記結晶配向セラミックスを容易に得ることができる。
上記第2準備工程においては、原料源を混合して反応原料混合物を作製する準備混合工程と、上記反応原料混合物を仮焼して上記反応原料粉末を得る仮焼工程とを行うことが好ましい(請求項4)。
この場合には、例えば上記一般式(2)で表される化合物からなり、上記異方形状粉末との反応性に優れた上記反応原料粉末を容易に得ることができる。
上記仮焼工程後には、必要に応じて上記反応原料粉末を粉砕することができる。
上記原料源としては、Li源、K源、Na源、Nb源、Ta源、及びSb源から選ばれるいずれか1種以上を用いることができる(請求項5)。
上記原料源としては、酸化物粉末、複合酸化物粉末、水酸化物粉末、アルコキシド、あるいは塩を用いることができる(請求項6)。塩としては、炭酸塩、炭酸水素塩、又は硝酸塩等を用いることができる。
上記反応原料混合物は、焼成工程において上記異方形状粉末との反応により目的の上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する配合比にて上記原料源を配合して作製することができる。
上記仮焼工程においては、上記反応原料混合物の仮焼を温度700℃以下で行うことが好ましい(請求項7)。
仮焼温度が700℃を越える場合には、上記第2準備工程において擬立方{002}面の半値幅が0.4°〜0.8°である上記反応原料粉末を得ることが困難になるおそれがある。
即ち、上記反応原料粉末の擬立方{002}面の半値幅は、上記仮焼工程において制御することができる。上記仮焼工程においては、上記反応原料混合物が反応してペロブスカイト化合物を生成すると共に結晶成長が起こるが、温度700℃を越える温度で仮焼を行うと仮焼が過剰になりやすくなる。そのため、上記反応原料粉末の結晶成長が過剰に進行し、上記反応原料粉末の多くが結晶整合性の高いペロブスカイト化合物となるおそれがある。その結果、上記反応原料粉末の結晶の整合性が整い、擬立方{002}面の半値幅が0.4未満にまで低下し易くなる。さらに、仮焼が過剰に進行した反応原料粉末は、平均一次粒径が大きくなる。半値幅が0.4未満で、平均1次粒径が過剰に大きくなった反応原料粉末は、焼成工程における上記異方形状粉末との反応性が低く、緻密化し難くなり、上記結晶配向セラミックスの電気絶縁抵抗を低下させるおそれがある。
よって、上記仮焼工程においては、上記反応原料粉末の平均1次粒子径を2.5μm以下にすることが好ましい(請求項8)。
より好ましくは、仮焼温度は、650°以下がよい。
また、仮焼に要する時間が長くなりすぎてしまうという観点、及び仮焼が不十分になりすぎて焼成工程後に得られる上記結晶配向セラミックスの組成及び緻密性にばらつきを生じ易くなるという観点から、仮焼温度は600℃以上がよい。
また、上記反応原料粉末は、上記異方形状粉末との反応によって、目的の等方性ペロブスカイト型化合物のみを生成するものであってもよく、あるいは目的の等方性ペロブスカイト型化合物と余剰成分との双方を生成するものであってもよい。上記異方形状粉末と上記反応原料粉末との反応によって余剰成分が生成する場合には、該余剰成分は熱的又は化学的に除去することが容易なものであることが好ましい。
次に、上記混合工程においては、上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とを混合することにより原料混合物を作製する。
上記混合工程においては、所定の比率で配合された上記異方形状粉末、及び上記反応原料粉末に対して、さらにこれらの物質の反応によって得られる等方性ペロブスカイト型化合物と同一組成の化合物からなる不定形の微粉(以下、これを「化合物微粉」という。)を添加することができる。また、例えばCuO等の焼結助剤を添加することもできる。上記化合物微粉や上記焼結助剤を添加すると、焼結体の緻密化がさらに容易になるという利点がある。
また、上記化合物微粉を配合する場合には、該化合物微粉の配合比率が過大になると、必然的に原料全体に占める上記異方形状粉末の配合比率が小さくなり、結晶配向セラミックスの配向度が低下するおそれがある。したがって、上記化合物微粉の配合比率は、要求される焼結体密度及び配向度に応じて最適な配合比率を選択することが好ましい。
上記混合工程においては、上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とを、異方形状粉末:反応原料粉末=0.02〜0.10:0.98〜0.90(ただし、異方形状粉末と反応原料粉末との合計を1モルとする)という配合割合(モル比)で混合することが好ましい。
上記配合割合(モル比)において、異方形状粉末が0.02未満の場合又は反応原料粉末が0.98を越える場合には、実用上充分なレベルまで上記結晶配向セラミックスの配向度を高くすることが困難になるおそれがある。
一方、異方形状粉末が0.10を越える場合又は第1反応原料粉末が0.90未満の場合には密度の高い結晶配向セラミックスを得るるとができなくなるおそれがある。
上記一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物を作製する場合には、上記異方形状粉末の配合比率は、上記異方形状粉末中の1つ乃至複数の成分元素により、上記一般式(1)のAサイトが占有される比率が、0.01〜70at%となるようにすることが好ましく、より好ましくは、0.1〜50at%がよい。さらに好ましくは、1〜10at%がよい。ここで、「at%」とは、原子の数の割合を100分率で示したものである。
上記混合工程において、上記異方形状粉末、上記反応原料粉末、並びに必要に応じて配合される化合物微粉及び焼結助剤の混合は、乾式で行ってもよく、あるいは、水、アルコール、有機溶剤等の適当な分散媒を加えて湿式で行ってもよい。さらにこのとき、必要に応じてバインダ、可塑剤、及び分散材等から選ばれる1種以上を加えることもできる。
次に、上記成形工程においては、上記異方形状粉末の結晶面{100}面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物をシート状に成形して成形体を作製する。
成形方法については、上記異方形状粉末を配向させることが可能な方法であればよい。上記異方形状粉末を面配向させる成形方法としては、具体的にはドクターブレード法、プレス成形法、圧延法等が好適な例としてあげられる。これらの成形方法によれば、異方形状粉末に作用するせん断応力等によって、異方形状粉末を成形体内で略同一の方向に配向させることができる。
上記成形工程においては、上記原料混合物を30μm〜200μmの厚みのシート状に成形することが好ましい。
厚みが30μm未満の場合には、上記成形体の取り扱いが非常に困難になるおそれがある。一方、200μmを越える場合には、上記成形体中で上記異方形状粉末を略同一方向に配向させることが困難になるおそれがある。
また、上記異方形状粉末が面配向した成形体(以下、これを適宜「面配向成形体」という。)の厚さを増したり、配向度を上げるために、面配向成形体に対し、さらに積層圧着、プレス、圧延等の処理(以下、これを適宜「面配向処理」という。)を行うことができる。上記面配向成形体に対して、いずれか1種類の面配向処理を行うこともできるが、2種以上の面配向処理を行うこともできる。また、上記面配向成形体に対して、1種類の面配向処理を繰り返し行うこともでき、また、2種以上の面配向処理をそれぞれ複数回繰り返し行うこともできる。
上記成形工程において得られる上記成形体は、焼成の前に、脱脂を主目的とする熱処理を行うことができる。この場合、脱脂の温度は、少なくとも上記成形助剤(バインダ)を熱分解させるのに充分な温度に設定することができる。但し、上記成形体に揮発しやすい物質(例えばNa化合物等)が含まれる場合には、脱脂は500℃以下で行うことが好ましい。
また、上記成形体の脱脂を行うと、該成形体中の上記異方形状粉末の配向度が低下したり、あるいは、上記成形体に体積膨張が発生したりする場合がある。このような場合には、脱脂を行った後、焼成を行う前に、上記成形体に対して、さらに静水圧(CIP)処理を行うことが好ましい。この場合には、脱脂に伴う配向度の低下、あるいは、上記成形体の体積膨張に起因する焼結体密度の低下を抑制することができる。
次に、上記焼成工程においては、上記成形体を加熱することにより、上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とを反応させると共に焼結させて上記結晶配向セラミックスを得る。
上記焼成工程は、上記成形体を加熱することにより、該成形体中の上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とを焼結させることができる。そして、上記等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなる上記結晶配向セラミックスを作製することができる。
上記焼成工程における加熱は、例えば温度900℃以上で、かつ1300℃以下で行うことができる。さらに、加熱時間は、所望の焼結体密度が得られるように、加熱温度に応じて最適な時間を選択することができる。
上記成形工程においては、成形後の上記成形体を複数積層し、上記焼成工程においては、積層された上記成形体を加熱することが好ましい(請求項9)。
この場合には、厚みの大きな結晶配向セラミックスを作製することが可能になる。
次に、上記第2の発明の積層型圧電素子の製造方法について説明する。
上記積層型圧電素子は、圧電セラミック層と、導電性金属を含有する上記内部電極とを複数交互に積層してなる。上記圧電セラミック層は、等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の結晶面{100}面が配向する結晶配向セラミックスよりなる。
上記積層型圧電素子は、上記第1準備工程と上記第2準備工程と上記混合工程と上記成形工程と上記印刷工程と上記積層工程と上記焼成工程とを行うことにより製造することができる。
上記第1準備工程、上記第2準備工程、上記混合工程、及び上記成形工程は、上記第1の発明と同様にして行うことができる。
したがって、上記第1の発明と同様に、上記混合工程においては、上記焼成工程後に上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とから一般式(1){Lix(K1-yNay)1-x}a(Nb1-z-wTazSbw)O3(但し、0≦x≦0.2、0≦y≦1、0≦z≦0.4、0≦w≦0.2、x+z+w>0、0.95≦a≦1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物が生成する化学量論比にて上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とを混合することが好ましい(請求項11)。
また、上記反応原料粉末としては、一般式(2){Lip(K1-qNaq)1-p}c(Nb1-r-sTarSbs)O3(但し、0≦p≦1、0≦q≦1、0≦r≦1、0≦s≦1、0.95≦c≦1.05)で表される等方性ペロブスカイト型化合物からなる粉末を採用することが好ましい(請求項12)。
上記第2準備工程においては、原料源を混合して反応原料混合物を作製する準備混合工程と、上記反応原料混合物を仮焼して上記反応原料粉末を得る仮焼工程とを行うことができる(請求項13)。
また、上記原料源としては、Li源、K源、Na源、Nb源、Ta源、及びSb源から選ばれるいずれか1種以上を用いることが好ましい(請求項14)。
上記原料源としては、酸化物粉末、複合酸化物粉末、水酸化物粉末、アルコキシド、あるいは塩を用いることができる(請求項15)。
上記仮焼工程においては、上記反応原料混合物の仮焼を温度700℃以下で行うことが好ましい(請求項16)。
また、上記仮焼工程においては、上記反応原料粉末の平均1次粒子径を2.5μm以下にすることが好ましい(請求項17)。
次に、上記印刷工程においては、シート状の上記成形体(グリーンシート)上に、焼成後に上記内部電極となる上記導電性金属を含有する電極材料を印刷する。このとき、上記成形工程において得られる例えば厚み30μm〜200μm程度の成形体をそのまま用いて上記電極材料を印刷することもできるが、成形後の上記成形体を複数積層し、上記印刷工程においては、積層された上記成形体上に、上記電極材料を印刷することもできる(請求項18)。
この場合には、圧電セラミック層を構成する結晶配向セラミックスの配向度の低下を抑制しつつ、比較的厚みの大きな結晶配向セラミックスからなる上記圧電セラミック層を形成させることができる。
上記導電性金属は、Ag/Pd合金、Ag、Pd、Cu、Ni等の単体、Cu/Ni等の合金を用いることができる。
好ましくは、上記導電性金属は、AgPd合金であることがよい(請求項19)。
この場合には、電気絶縁抵抗の低下を抑制できるという本発明の作用効果をより顕著に発揮することができる。
即ち、一般に、上記導電性金属としてAg/Pd合金を含有する上記電極材料を用いた場合には、焼成時に、Agが圧電セラミック層中に拡散し、該圧電セラミック層の電気絶縁抵抗が低下し易くなる。本発明においては、上記のごとく、擬立方{002}面の半値幅が0.4°〜0.8°である上記反応原料粉末を採用しているため、緻密化を促進させることができ、上記電極材料からAgが圧電セラミック層中に拡散したとしても上記圧電セラミック層の電気絶縁抵抗の低下を抑制することができる。
上記電極材料は、上記導電性金属の粉末に、上記反応原料粉末、バインダー及び溶剤等を添加して作製することができる。
また、上記電極材料は、上記グリーンシート上において、焼成後に内部電極となる所望の領域に印刷することができる。
具体的には、焼成後の積層型圧電素子の圧電セラミック層間に内部電極として全面電極を形成させるように、電極材料を印刷することもできるし、また、圧電セラミック層間に内部電極として部分電極を形成させるように、電極材料を印刷することもできる。部分電極を形成する場合には、内部電極の一部を積層型圧電素子の側面から後退させて電極非形成部が形成されるように電極材料を上記グリーンシート上の所望の領域に印刷する。
上記積層工程においては、上記印刷工程後の上記成形体(グリーンシート)を積層して積層体を作製する。
上記積層体の積層方向における両端には、必要に応じて電極材料が印刷されていない上記グリーンシートを配設することができる。これにより、焼成後に結晶配向セラミックスからなるダミー層が積層方向の両端に形成された積層型圧電素子を得ることができる。ダミー層形成用のグリーンシートは上記積層体の積層方向の両端にそれぞれ1層又は2層以上形成することができる。
また、上記積層工程後の上記積層体を積層方向に加圧し、グリーンシートと電極材料とを圧着させることができる。この圧着は加熱しながら行う所謂熱圧着により行うことができる。
また、焼成前に上記積層体を脱脂し、バインダ等の有機成分を除去することができる。
次に、上記焼成工程においては、上記積層体を加熱することにより、上記成形体内で上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とを反応させると共に上記成形体を焼結させて、上記圧電セラミック層と上記内部電極とが複数交互に積層された上記積層型圧電素子を得る。
上記焼成工程における加熱は、例えば温度900℃以上で、かつ1300℃以下で行うことができる。さらに、加熱時間は、所望の焼結体密度が得られるように、加熱温度に応じて最適な時間を選択することができる。
また、上記積層型圧電素子の外周側面には、Ag等の導電性金属からなる一対の外部電極を形成することができる。一対の外部電極は、それぞれ、上記積層型圧電素子内に形成された複数の上記電極部に、積層方向に交互に電気的に導通させることができる。
本例は、等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の結晶面{100}面が配向する結晶配向セラミックスを製造する例である。
本例においては、図1〜図4に示すごとく、第1準備工程と第2準備工程と混合工程と成形工程と焼成工程とを行うことにより、結晶配向セラミックスを作製する。
第1準備工程においては、結晶面{100}面が配向する異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末1を準備する(図1参照)。
第2準備工程においては、異方形状粉末1と反応して等方性ペロブスカイト型化合物を生成する反応原料粉末2を準備する(図1参照)。このとき、擬立方{002}面の半値幅が0.4°〜0.8°である反応原料粉末2を採用する。また、第2準備工程においては、図5(a)及び(b)に示すごとく、原料源21を混合して反応原料混合物20を作製する準備混合工程と、反応原料混合物20を仮焼して反応原料粉末2を得る仮焼工程とを行う。
混合工程においては、図1に示すごとく、異方形状粉末1と反応原料粉末2とを混合することにより原料混合物3を作製する。このとき、本例においては、{Li0.08(K0.5Na0.5)0.92}(Nb0.84Ta0.1Sb0.06)O3で表される等方性ペロブスカイト型化合物が生成する化学量論比にて異方形状粉末1と反応原料粉末2とを混合する。
成形工程においては、異方形状粉末の結晶面{100}面が略同一の方向に配向するように、原料混合物3をシート状に成形して成形体35を作製する(図2参照)。
焼成工程においては、成形体を加熱することにより、異方形状粉末1と反応原料粉末2とを反応させると共に焼結させて結晶配向セラミックス4を得る(図3及び図4参照)。
以下、本例の製造方法につき、詳細に説明する。
「第1準備工程」
まず、結晶面{100}面が配向する異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末を以下のようにして作製する。具体的には、本例においては、Bi2.5Na3.5Nb518からなる上記異方形状粉末Bを作製し、この異方形状粉末Bを用いて、NaNbO3からなる板状の異方形状粉末(異方形状粉末A)を作製する。
即ち、まず、Bi2.5Na3.5Nb518(以下、適宜「BINN5」という)という組成となるような化学量論比で、工業的に入手可能な純度99%以上のBi23粉末、NaHCO3粉末及びNb25粉末を秤量し、これらを湿式混合した。次いで、この原料に対し、フラックスとしてNaClを50wt%添加し、1時間乾式混合した。
次に、得られた混合物を白金るつぼに入れ、850℃×1hの条件下で加熱し、フラックスを完全に溶解させた後、さらに1100℃×2hの条件下で加熱することにより、BINN5を合成した。なお、昇温速度は、200℃/hrとし、降温は炉冷とした。冷却後、湯洗により反応物からフラックスを取り除き、BINN5粉末(異方形状粉末B)を得た。得られたBINN5粉末は、{001}面を配向面とする板状粉末であった。
次に、このBINN5からなる板状粉末に対し、NaNbO3(以下、適宜「NN」という)の合成に必要な量のNaHCO3粉末(反応原料)を加えて混合し、NaClをフラックスとして用いて、白金るつぼ中において950℃×8時間の熱処理を行った。
得られた反応物には、NaNbO3粉末に加えてBi23が含まれているので、反応物からフラックスを取り除いた後、これをHNO3水溶液中に入れ、余剰成分として生成したBi23を溶解させた。さらに、この溶液を濾過してNN粉末を分離し、80℃のイオン交換水で洗浄した。このようにして、異方形状粉末1としてのNN粉末(異方形状粉末A)を得た(図1参照)。
得られたNaNbO3粉末は、擬立方{100}面を配向面とし、平均粒径15μmであり、かつアスペクト比が約10〜20程度の板状粉末であった。
「第2準備工程」
次に、以下のようにして、反応原料粉末を作製する。
本例においては、目的のセラミックスの組成{Li0.08(K0.5Na0.5)0.92}(Nb0.84Ta0.1Sb0.06)O3におけるAサイト元素の5mol%がNN粉末(異方形状粉末)の元素から供給されるように、後述の混合工程においてNN粉末を配合する。
したがって、反応原料粉末の作製にあたっては、まず、目的のセラミックスの組成{Li0.08(K0.5Na0.5)0.92}(Nb0.84Ta0.1Sb0.06)O3から、NN粉末の配合分を際し引いた組成となるように、原料源21として、純度99.99%以上のNa2CO3粉末、K2CO3粉末、Li2CO3粉末、Nb25粉末、Ta25粉末、及びSb25粉末を秤量し、有機溶剤を媒体としてZrO2ボールで20時間湿式混合し、反応原料混合物20を得た(準備混合工程;図5(a)参照)。
その後、反応原料混合物20を温度600℃で5時間仮焼し、仮焼物粉末(反応原料粉末2)を得た(仮焼工程;図5(b)参照)。なお、仮焼は、昇温速度200℃/hで昇温し、次いで仮焼温度(本例では600℃)で5時間保持し、その後降温速度200℃/hで100℃まで冷却する温度制御により行った。
次に、上記のようにして得られた反応原料粉末2の平均1次粒径(D50)を測定した。
具体的には、まず、反応原料粉末をエタノール中に投入した。投入量は0.1〜0.15wt%とした。次いで、超音波分散機((株)島津理化製のSUS−103)を用いて、28kHzで3分間、反応原料粉末を均一に分散させ、分散液を得た。得られた分散液をレーザ回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所のSALD―7000)を用いて、反応原料粉末の平均1次粒径(D50)の測定を行った。その結果を後述の表1に示す。
また、反応原料粉末2の結晶面{002}面について、2θ法による半値幅の測定を行った。具体的には、基板上に配列させた反応原料粉末のX線回折強度を測定した。X線回折強度の測定は、X線回折装置((株)リガク製のRINT−TTR)を用いて、CuKα線、50kV/300mAという条件のX線回折(2θ法)により、任意の角度0〜180°(本例においては5°〜60°)の範囲で行った。次いで、得られたX線回折パターンにおいて、{002}面に由来するピークの位置(θ=約45°の位置)の最大強度が半分になる強度におけるピーク幅(全幅)を求めた。これを半値幅とした。その結果を後述の表1に示す。
次いで、測定後の反応原料粉末について、有機溶剤を媒体としてZrO2ボールで20時間の湿式粉砕をおこない、平均粒径が約0.5μmの反応原料粉末を得た。
「混合工程」
次に、上記のように作製した異方形状粉末1と反応原料粉末2とを、目的のセラミックスの組成{Li0.08(K0.5Na0.5)0.92}(Nb0.84Ta0.1Sb0.06)O3で表される等方性ペロブスカイト型化合物を生成する配合比で配合し、原料混合物3を得た(図1参照)。このとき、目的のセラミックスの組成{Li0.08(K0.5Na0.5)0.92}(Nb0.84Ta0.1Sb0.06)O3におけるAサイト元素の5mol%が異方形状粉末1の元素から供給されるように、配合を行った。
次いで、有機溶剤を媒体としてZrO2ボールで20時間湿式混合を行った。その後、スラリーに対してバインダとしてのポリビニルブチラール樹脂(PVB)及び可塑剤としてのフタル酸ジブチルを加えてさらにインペラミキサーで1時間混合した。なお、バインダ及び可塑剤は、原料混合物(粉末成分)100gに対して、それぞれ8.0g(バインダ)及び4.0g(可塑剤)添加した。
このようにして、図1に示すごとく、有機溶剤、バインダ、可塑剤等の分散媒30に、異方形状粉末1及び反応原料粉末2が分散されたスラリー状の原料混合物3を得た。
「成形工程」
次に、ドクターブレード装置を用いてスラリー状の原料混合物3を、厚さ約80μmのシート状に成形し、さらに得られるシート状の成形体を複数積層し圧着することにより、厚さ1.2mmの成形体35を得た(図1及び図2参照)。このとき、異方形状粉末1に作用するせん断応力等によって、異方形状粉末を成形体35内で略同一方向に配向させることができる。
次いで、成形体35を大気中で温度400℃で加熱することにより脱脂を行った。
「焼成工程」
脱脂後の成形体35を加熱炉内に配置し、酸素雰囲気で、温度1120°で20分間加熱し、次いで1050℃まで降温させ、この温度1050℃で10時間加熱することにより焼成を行った。その後、冷却を行い、目的の結晶配向セラミックスを4得た(図3及び図4参照)。焼成中に、成形体35内の異方形状粉末1は、その周囲に存在する反応原料粉末2と反応して焼結することにより、結晶成長する(図3参照)。これにより、等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒41の結晶面{100}面が配向する結晶配向セラミックス4を得ることができる(図4参照)。
なお、焼成工程においては、温度1120℃までの昇温は昇温速度200℃/hで行い、温度1050℃までの降温は降温速度50℃/hで行った。冷却は、温度1000℃までを降温速度50℃/hで行い、1000℃未満からの冷却を降温速度200℃/hで行った。
このようにして得られた結晶配向セラミックスを試料E1とする。
また、本例においては、反応原料粉末の作製時における仮焼温度を650〜1000℃の間で変えて{002}面の半値幅が異なる反応原料粉末を作製し、これらの反応原料粉末を用いてその他は上記試料E1と同様にしてさらに5種類の結晶配向セラミックス(試料E2、試料E3、試料C1〜試料C3)を作製した。
試料E2は、温度650℃で仮焼を行って作製した、半値幅0.648°(平均一次粒径:2.24μm)の反応原料粉末を用いて作製した結晶配向セラミックスである。
試料E3は、温度700℃で仮焼を行って作製した、半値幅0.419°(平均一次粒径:2.48μm)の反応原料粉末を用いて作製した結晶配向セラミックスである。
試料C1は、温度800℃で仮焼を行って作製した、半値幅0.371°(平均一次粒径:2.77μm)の反応原料粉末を用いて作製した結晶配向セラミックスである。
試料C2は、温度900℃で仮焼を行って作製した、半値幅0.295°(平均一次粒径:6.03μm)の反応原料粉末を用いて作製した結晶配向セラミックスである。
試料C3は、温度1000℃で仮焼を行って作製した、半値幅0.261°(平均一次粒径:8.53μm)の反応原料粉末を用いて作製した結晶配向セラミックスである。
試料E1〜試料E3及び試料C1〜試料C3の結晶配向セラミックスについて、その作製時に用いた反応原料粉末の仮焼温度、{002}面の半値幅、及び平均1次粒径を後述の表1に示す。
次に、上記のようにして作製した各試料(試料E1〜試料E3及び試料C1〜C3)について、その電気絶縁特性を調べた。
具体的には、まず、各試料についてシート面と平行な面を表面から150μmの深さまで研磨した。研磨面に外部電極として樹脂銀ペースト((株)藤倉化成製のドータイトXA−874)を塗布し、温度150°で30分間加熱することにより、樹脂銀中の溶媒を除去し、各試料に外部電極を形成した。次いで、外部電極を形成した各試料の外部電極間に電界強度2.0kV/mmの電圧を印加し、このときの各試料の抵抗値を抵抗測定装置により測定した。測定は、温度20℃の条件下で行った。この測定値から、絶縁抵抗(比抵抗)を算出した。その結果を表1に示す。
Figure 2010159196
表1より知られるごとく、{002}面の半値幅が0.4°〜0.8°の範囲内にある反応原料粉末を用いて作製した結晶配向セラミックス(試料E1〜試料E3)は、比抵抗が高く、電気絶縁抵抗に優れていることがわかる。一方、{002}面の半値幅が0.4未満の反応原料粉末を用いて作製した結晶配向セラミックス(試料C1〜試料C3)は、比抵抗が低く、電気絶縁抵抗が不十分であった。
したがって、{002}面の半値幅が0.4°〜0.8°の範囲内にある反応原料粉末を用いることにより、優れた電気絶縁抵抗を有する結晶配向セラミックスを製造できることがわかる。
また、上記半値幅が0.4°〜0.8°の範囲内にある反応原料粉末は、仮焼温度600℃〜700℃の仮焼により作製できることがわかる(試料E1〜試料E3)。仮焼温度を800℃以上にすると、半値幅が0.4未満にまで小さくなる(試料C1〜試料C3)。よって、反応原料粉末の作製時の仮焼は、温度700℃以下で行うことが好ましく、より好ましくは650℃以下でおこなうことがよい。
また、表1より知られるごとく、仮焼をより高温で行うほど、反応原料粉末の平均一次粒径が大きくなっている。これは、高温で行うほど、仮焼による反応原料粉末2の結晶成長が進行するためであると考えられる(図5(a)及び(b)参照)。
したがって、仮焼温度を上述のごとく700℃以下で行うことにより、反応原料粉末の結晶成長を抑制し、半値幅0.4°〜0.8°の範囲内にある反応原料粉末を容易に作製できることがわかる。そして、かかる反応原料粉末を用いることにより、上述のごとく、電気絶縁特性に優れた結晶配向セラミックスを作製することができる。
本例は、実施例1と同様の結晶配向セラミックスを圧電セラミック層とする積層型圧電素子を作製する例である。
図6(a)及び(b)に示すごとく、本例の積層型圧電素子5は、圧電セラミック層51と、導電性金属を含有する内部電極52とを複数交互に積層してなる。そして、圧電セラミック層51は、等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の結晶面{100}面が配向する結晶配向セラミックスよりなる。本例の積層型圧電素子5は、その積層方向の両端に、内部電極が形成されていないダミー層50を有している。このダミー層50は、圧電セラミック層51と同様の結晶配向セラミックスからなる。
本例においては、第1準備工程と第2準備工程と混合工程と成形工程と印刷工程と積層工程と焼成工程とを行うことにより、積層型圧電素子5を作製する。
以下、本例の積層型圧電素子の製造方法つき、詳細に説明する。
まず、実施例1と同様にして、第1準備工程、第2準備工程、混合工程、成形工程を行うことにより、厚み80μmのシート状の成形体(グリーンシート)を得た。
「印刷工程」
次に、Pdを30mol%含有するAgPd合金粉末を準備した。このAgPd合金粉末と、実施例1の第2準備工程において作製した反応原料粉末とをそれぞれ体積比9:1で混合し、さらにエチルセルロースとテルピネオールとを加え、ペースト状の電極材料を作製した。この電極材料をグリーンシート上における内部電極を形成する領域に印刷した。
本例においては、後述の焼成工程後に得られる積層型圧電素子において、圧電セラミック層51間の全面に電極部(内部電極52)が形成されるように電極材料を印刷した(図6(a)及び(b)参照)。
なお、内部電極の一部を積層型圧電素子の側面から後退させて電極非形成部が形成されるように電極材料を上記グリーンシート上の所望の領域に印刷することもできる。この場合には、所謂部分電極を形成することができる。
「積層工程」
次いで、電極材料を印刷したグリーンシートを積層して圧着することにより、電極材料を印刷した層を6層分含んだ積層体を作製した。また、積層時には、積層体の積層方向の両端部に電極材料が印刷されていないグリーンシートを配置した。このグリーンシートは、焼成後にダミー層50を形成する(図6(a)及び(b)参照)。このようにして、積層方向の厚みが1.2mmの積層体を得た。
次いで、積層体を大気中で温度400℃で加熱することにより脱脂を行った。
「焼成工程」
脱脂後の積層体を加熱炉内に配置し、酸素雰囲気で、温度1120°で20分間加熱し、次いで1050℃まで降温させ、この温度1050℃で10時間加熱することにより焼成を行った。その後、冷却を行い、積層型圧電素子を得た。
なお、焼成においては、温度1120℃までの昇温は昇温速度200℃/hで行い、温度1050℃までの降温は降温速度50℃/hで行った。冷却は、温度1000℃までを降温速度50℃/hで行い、1000℃未満からの冷却を降温速度200℃/hで行った。
次いで、得られた積層型圧電素子に機械加工を施して、円盤形状にした。
このようにして、図6(a)及び(b)に示すごとく、結晶配向セラミックスからなる圧電セラミック層51と、AgPd合金からなる内部電極52(全面電極)とが交互に積層された積層型圧電素子1を得た。
本例においては、実施例1と同様に、{002}面の半値幅が異なる反応原料粉末を用いて6種類の積層型圧電素子(試料E6〜試料E8及び試料C6〜試料C8)を作製した。そして、各試料(試料E1、試料E2、及び試料C1〜試料C3)における圧電セラミック層の電気絶縁抵抗を比較するために、比抵抗を測定した。
具体的には、まず、各試料の積層型圧電素子について、その側面から内層電極を取り出し、電極間距離に対して2kV/mmになるよう電圧を印加し、抵抗測定装置により比抵抗を測定した。
実施例1と同様にして各試料の作製に用いた反応原料粉末の半値幅、平均1次粒径、反応原料粉末の作製時における仮焼温度、及び比抵抗を表2に示す。
Figure 2010159196
表2より知られるごとく、積層型圧電素子においても、実施例1と同様に{002}面の半値幅が0.4°〜0.8°の範囲内にある反応原料粉末を用いることにより、電気絶縁抵抗に優れた圧電セラミック層を形成できることがわかる。
また、表1と表2とを比較して知られるごとく、同じ条件下では、結晶配向セラミックスよりも、結晶配向セラミックスからなる圧電セラミック層と内部電極とを積層してなる積層型圧電素子の方が、電気絶縁抵抗(比抵抗)が低くなっている。これは、焼成時に内部電極からAg等の導電性金属が圧電セラミック層中に拡散するためであると考えられる。このような条件下においても、表2より知られるごとく、半値幅が0.4°〜0.8°の範囲内にある反応原料粉末を用いることにより、電気絶縁抵抗を向上できることがわかる。
1 異方形状粉末
2 反応原料粉末
3 原料混合物
35 成形体
4 結晶配向セラミックス
5 積層型圧電素子
51 圧電セラミック層
52 内部電極

Claims (19)

  1. 等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の結晶面{100}面が配向する結晶配向セラミックスの製造方法であって、
    結晶面{100}面が配向する異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末を準備する第1準備工程と、
    上記異方形状粉末と反応して上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する反応原料粉末を準備する第2準備工程と、
    上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とを混合することにより原料混合物を作製する混合工程と、
    上記異方形状粉末の結晶面{100}面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物をシート状に成形して成形体を作製する成形工程と、
    上記成形体を加熱することにより、上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とを反応させると共に焼結させて上記結晶配向セラミックスを得る焼成工程とを有し、
    上記第2準備工程においては、擬立方{002}面の半値幅が0.4°〜0.8°である上記反応原料粉末を採用することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  2. 請求項1において、上記混合工程においては、上記焼成工程後に上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とから一般式(1){Lix(K1-yNay)1-x}a(Nb1-z-wTazSbw)O3(但し、0≦x≦0.2、0≦y≦1、0≦z≦0.4、0≦w≦0.2、x+z+w>0、0.95≦a≦1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物が生成する化学量論比にて上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とを混合することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  3. 請求項1又は2において、上記反応原料粉末としては、一般式(2){Lip(K1-qNaq)1-p}c(Nb1-r-sTarSbs)O3(但し、0≦p≦1、0≦q≦1、0≦r≦1、0≦s≦1、0.95≦c≦1.05)で表される等方性ペロブスカイト型化合物からなる粉末を採用することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項において、上記第2準備工程においては、原料源を混合して反応原料混合物を作製する準備混合工程と、上記反応原料混合物を仮焼して上記反応原料粉末を得る仮焼工程とを行うことを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  5. 請求項4において、上記原料源としては、Li源、K源、Na源、Nb源、Ta源、及びSb源から選ばれるいずれか1種以上を用いることを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  6. 請求項4又は5において、上記原料源としては、酸化物粉末、複合酸化物粉末、水酸化物粉末、アルコキシド、あるいは塩を用いることを特徴とする結晶配向セラミクスの製造方法。
  7. 請求項4〜6のいずれか一項において、上記仮焼工程においては、上記反応原料混合物の仮焼を温度700℃以下で行うことを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  8. 請求項4〜7のいずれか一項において、上記仮焼工程においては、上記反応原料粉末の平均1次粒子径を2.5μm以下にすることを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項において、上記成形工程においては、成形後の上記成形体を複数積層し、上記焼成工程においては、積層された上記成形体を加熱することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  10. 等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の結晶面{100}面が配向する結晶配向セラミックスよりなる圧電セラミック層と、導電性金属を含有する内部電極とを複数交互に積層してなる積層型圧電素子の製造方法において、
    結晶面{100}面が配向する異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末を準備する第1準備工程と、
    上記異方形状粉末と反応して上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する反応原料粉末を準備する第2準備工程と、
    上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とを混合することにより原料混合物を作製する混合工程と、
    上記異方形状粉末の結晶面{100}面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物をシート状に成形して成形体を作製する成形工程と、
    上記成形体上に、焼成後に上記内部電極となる上記導電性金属を含有する電極材料を印刷する印刷工程と、
    該印刷工程後の上記成形体を積層して積層体を作製する積層工程と、
    上記積層体を加熱することにより、上記成形体内で上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とを反応させると共に上記成形体を焼結させて、上記圧電セラミック層と上記内部電極とが複数交互に積層された上記積層型圧電素子を得る焼成工程とを有し、
    上記第2準備工程においては、擬立方{002}面の半値幅が0.4°〜0.8°である上記反応原料粉末を採用することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  11. 請求項10において、上記混合工程においては、上記焼成工程後に上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とから一般式(1){Lix(K1-yNay)1-x}a(Nb1-z-wTazSbw)O3(但し、0≦x≦0.2、0≦y≦1、0≦z≦0.4、0≦w≦0.2、x+z+w>0、0.95≦a≦1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物が生成する化学量論比にて上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とを混合することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  12. 請求項10又は11において、上記反応原料粉末としては、一般式(2){Lip(K1-qNaq)1-p}c(Nb1-r-sTarSbs)O3(但し、0≦p≦1、0≦q≦1、0≦r≦1、0≦s≦1、0.95≦c≦1.05)で表される等方性ペロブスカイト型化合物からなる粉末を採用することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  13. 請求項10〜12のいずれか一項において、上記第2準備工程においては、原料源を混合して反応原料混合物を作製する準備混合工程と、上記反応原料混合物を仮焼して上記反応原料粉末を得る仮焼工程とを行うことを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  14. 請求項13において、上記原料源としては、Li源、K源、Na源、Nb源、Ta源、及びSb源から選ばれるいずれか1種以上を用いることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  15. 請求項13又は14において、上記原料源としては、酸化物粉末、複合酸化物粉末、水酸化物粉末、アルコキシド、あるいは塩を用いることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  16. 請求項13〜15のいずれか一項において、上記仮焼工程においては、上記反応原料混合物の仮焼を温度700℃以下で行うことを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  17. 請求項13〜16のいずれか一項において、上記仮焼工程においては、上記反応原料粉末の平均1次粒子径を2.5μm以下にすることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  18. 請求項10〜17のいずれか一項において、上記成形工程においては、成形後の上記成形体を複数積層し、上記印刷工程においては、積層された上記成形体上に、上記電極材料を印刷することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
  19. 請求項10〜18のいずれか一項において、上記導電性金属は、AgPd合金であることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
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