JP2010158738A - 被加工物への円弧溝加工方法 - Google Patents

被加工物への円弧溝加工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】被加工物の表面に直角に円弧溝を加工することができる被加工物への円弧溝加工方法を提供する。
【解決手段】工作機を構成するテーブル10に被加工物11を固定し、前記工作機を構成するコラム1に装設したカッタホルダ6に、前記円弧溝12の溝幅より小さい厚みを有するサイドカッタ7を装着し、数値制御装置13からの指令信号に基づいて、前記サイドカッタ7を前記被加工物11の側方に位置決めした後、前記サイドカッタ7を回転させ、前記サイドカッタ7又は前記テーブル10を相対的に回転させて、前記被加工物の表面に沿って円弧溝を加工し、次に、前記サイドカッタ7を、前記被加工物11の側方において、深さ方向に位置決めした後、前記サイドカッタ7又は前記テーブル10を相対的に回転させる動作を、繰り返して、前記被加工物11の表面に所定幅及び深さの円弧溝12を加工する。
【選択図】図1

Description

本発明は、工作物の円弧溝加工方法に係り、更に詳しくは、工作物の表面に一定幅及び深さの円弧溝を加工するための被加工物への円弧溝加工方法に関するものである。
被加工物の表面に曲線溝を機械加工するために、工作物を載置する回転テーブルとこの回転テーブルの近傍に配置されフライス盤の本体とこの本体に上下動可能に設けた摺動子とこの摺動子の側部に上下方向に傾動可能に設けたスピンドルとこのスピンドルの軸に装着したフライス削りカッタとを備えるフライス盤の加工設備を用いて、回転テーブル上に載置した被加工物の表面に、フライス削りカッタにより、曲線溝を機械加工するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
特開昭48−74694号公報
前述した特許文献1に記載された円弧溝の加工方法は、具体的には、フライス削りカッタを用いて、回転子工作物の表面に、側部密封具を嵌め込むための曲線状の側部密封溝(例えば、溝深さ:約0.43cm。溝幅:0.10cm)を機械加工するものであるが、フライス削りカッタを用いているため、溝の半径方向内側壁がアンダーカットされてしまい、溝の半径方向内側壁を回転子工作物の表面に対して直角に機械加工することができないという問題がある。
更に、曲線状の溝の幅を、例えば5mm程度にしたい場合には、溝の半径方向内側壁が更にアンダーカットされてしまい、溝の半径方向内側壁を回転子工作物の表面に対して直角に機械加工することができないため、加工した溝内に、例えば、シール等の金属製の部材の端面がこの端面に当接する部材の表面と平行となるように、金属製の部材を組付ける場合、金属製の部材が被加工物の表面に直角に設けることができないため、金属製の部材の端面を工作物の表面と平行となるような追加工が必要となるという問題を生じる。
本発明は、上述の事柄に鑑みなされたもので、被加工物の表面にこの表面に対して直角に円弧溝を加工することができる被加工物への円弧溝加工方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、第1の発明は、被加工物の表面に円弧溝を加工する被加工物への円弧溝加工方法において、工作機を構成するテーブルに、被加工物を固定し、前記工作機を構成するコラムに装設したモータ軸に、前記円弧溝の溝幅より小さい厚みを有するサイドカッタを装着し、数値制御装置からの指令信号に基づいて、前記サイドカッタを前記被加工物の側方に位置決めした後、前記サイドカッタを回転させ、前記サイドカッタ又は前記テーブルを相対的に回転させて、前記被加工物の表面に沿って円弧溝を加工し、次に、前記サイドカッタを、前記被加工物の側方において、深さ方向に位置決めした後、前記サイドカッタ又は前記テーブルを相対的に回転させる動作を、繰り返して、前記被加工物の表面に所定幅及び深さの円弧溝を加工するものである。
また、第2の発明は、第1の発明において、前記被加工物を加工状態における前記サイドカッタの軸線が、前記被加工物に加工形成される前記円弧溝の円弧中心方向でかつ前記円弧溝の底面に対して直角方向に前記サイドカッタの半径分だけシフトした位置に位置させるとともに、前記コラム及び前記水平テーブルの前記軸線方向及び該軸線に対して直交する方向の変位、並びに前記回転テーブルの回転変位をそれぞれ、(R+r)cosθ−R及び(R+r)sinθ並びにθ(ただし、Rは前記被加工物の円弧溝の半径、rは前記サイドカッタの軸線が前記回転テーブルの回転中心を通る場合の前記サイドカッタの中心位置と前記回転テーブルの回転中心との距離、θは前記回転テーブルの回転角)となるように、前記数値制御装置を介して制御するものである。
更に、第3の発明は、第1の発明において、前記サイドカッタは、垂直軸回りに回転可能である。
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明のいずれかにおいて、前記サイドカッタは、前記円弧溝の底面まで挿入しても、円弧溝の側面に干渉しない厚みである。
また、第5の発明は、第1乃至第3の発明のいずれかにおいて、前記サイドカッタの中心軸は、前記サイドカッタが前記円弧溝と干渉しない曲率をもって傾動機構により傾動されるものである。
更に、第6の発明は、第1乃至第5の発明のいずれかにおいて、前記円弧溝の加工後に生じる前記円弧溝内の底部の削り残し部を、エンドミルによって切削するものである。
本発明によれば、被加工物の表面に、所望の幅及び深さの円弧溝をサイドカッタにより機械加工することができるので、加工された円弧溝への部品の組付精度が向上し、その生産性を高めることができる。
以下、本発明の被加工物への円弧溝加工方法の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1乃至図4は、本発明の被加工物への円弧溝加工方法の実施の形態に使用する工作機の一例を示すもので、図1は本発明の被加工物への円弧溝加工方法の実施の形態に使用する工作機の一例を示す斜視図、図2は図1に示す工作機におけるコラム及び回転テーブル部分を示す正面図、図3は図1に示す工作機における回転テーブル及び水平テーブルを示す平面図、図4は図1に示す工作機におけるコラム側に設けたサイドカッタの斜視図である。
図1において、工作機はコラム1を備えている。コラム1の前面側には、図1及び図2に示すように、カッタ保持体2が上下(Y軸)方向に移動可能に設けられている。カッタ保持体2には、カッタ軸駆動用のモータを内蔵した工作機主軸3がブラケット4を介して上下方向に傾動可能に設けられている。工作機主軸3は傾動機構5によって上下方向に傾動可能である。工作機主軸3に挿入されるカッタホルダ6には、後述する円弧溝を加工するためのサイドカッタ7が装着されている。
コラム1の近傍には、ベッド8が設置されている。ベッド8上には、水平テーブル9が図1に示すX軸方向及びにZ軸方向に移動可能に設置されている。水平テーブル9上には回転テーブル10が垂直軸(C軸)回りに回転可能に設置されている。回転テーブル10上には、被加工物11が図1及び図3に示すように設置固定されている。被加工物11の側面には、サイドカッタ7によって円弧溝12が機械加工される。
この工作機には、図1に示すように、各移動体の移動方向を制御する数値制御装置13が接続されている。数値制御装置13は、図1に示すように、コラム1に取り付けたサイドカッタ7を、矢印で示す上下(Y軸)方向に移動を制御し、また、被加工物11を固定している回転テーブル10を、水平テーブル9上において矢印Bの如く水平方向に回動を制御し、また、水平テーブル9をベッド8上において矢印で示すX軸方向及び矢印で示すZ軸方向の水平方向に移動制御するようになっている。また、回転テーブル10が矢印B方向に回動駆動されることにより、回転テーブル10上に固定された被加工物11の回転も制御する。
前述したサイドカッタ7は、図4に示すように、ディスク状の円板体7aの外周に間隔をもって複数の切削刃7bが取り付けられており、外周側の切削速度を早くでき、切削力に耐える剛性を持つため、幅の狭い溝を加工するために最適な切削工具としている。本発明では、従来直線加工しか適用できなかったサイドカッタ7を、被加工物11の側面への円弧溝12の加工に適用できるようにして、切削能率の向上と加工時間短縮を図ることを目的としている。
図5は、本発明に係る被加工物への円弧溝の加工方法原理を説明する説明図である。この図5において、図1乃至図4に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図5において、回転テーブル10の回転中心位置をWとし、中心位置Wで回る軸をC軸とする。サイドカッタ7の中心軸方向をZ軸、Z軸と直交方向をX軸と定める。被加工物11の表面の加工する円弧溝12の内周側半径をRi、円弧溝12の内周側とC軸の旋回中心との距離をrとする。円弧溝12の円弧中心と工具中心軸とC軸の中心とがZ軸で並ぶ状態を初期状態とする。
このときのサイドカッタ7中心位置7AのX座標はO、Z座標はrとなり、この座標で円弧溝12の円弧中心方向とサイドカッタ7の回転軸は一致している。この状態からC軸中心に時計方向に角度θだけ回転したときの被加工物11は符号11Aで示す位置に移動する。この位置で、円弧溝12の円弧中心方向とサイドカッタ7の回転軸とが一致し干渉を起こさないためには、サイドカッタ7の中心位置は位置7Aから位置7Bへ移動する必要がある。
このときのサイドカッタ7の中心位置7BのX座標は、(Ri+r)sinθ、Z軸座標は(Ri+r)cosθ−Rとなる。
ただし、θは反時計方向を正方向とする。以上の原理から関係式(1)(2)を次に示すように導くことができる。
回転テーブル10の反時計方向のC軸回転角度をθ、C軸旋回中心Wを座標原点、X軸上の移動量をX’、Z軸上の移動量をZ’、C軸の回転変位量をθとする座標系において、
X’=(Ri+r)sinθ・・・・(1)
Z’=(Ri+r)cosθ−R・・・・(2)
従って、θの変化に伴ってX、Z方向に同時に変位されて所定の位置で回転駆動されるサイドカッタ7によって、被加工物11の表面に円弧溝12を加工形成することができる。
図6は、本発明に用いるサイドカッタ7の幅Wtと半径Rtの関係を示す説明図で、(イ)は平面図、(ロ)は側面図、(ハ)はカッタの中心軸方向から見た側面図である。この図6にいて、図5に示す符号と同符号のものは同一部分である。
図6において、本発明では、サイドカッタ7を被加工物11の表面の上方から下方に向けて移動して、被加工物11の表面からその内部に円弧溝12を加工形成するため、円弧溝12の溝幅Wdとサイドカッタ7の幅Wtが同じ値であると、円弧の曲がりによる干渉が発生する。サイドカッタ7の半径をRt、円弧溝12の内径をRi、深さをDとすると、サイドカッタ7の傾動支点からサイドカッタ7の内側面との距離L1、サイドカッタ7の被加工物11への切り込み長さの距離L2、及びサイドカッタ7の幅Wtは、次の式(11)(12)(13)により求めることができる。
L1={Rt−(Rt−D)1/2・・・・(11)
L2={(Ri+Wd)−L11/2・・・・(12)
Wt=L2−Ri・・・・(13)
従って、Wt≦0ならば、加工不可能である。通常の切削ではWt≧1.0程度が限界である。式(11)(12)(13)の関係を利用して、加工すべき円弧溝12に対する最適なサイドカッタ7の半径Rtと幅Wtを見つけることができる。
図7は、本発明の加工方法における回転テーブルの角度を計算する原理を説明するもので、図7の(イ)は平面図、(ロ)は(イ)に示す被加工物11の断面図、(ハ)は回転テーブルの角度を計算するフローチャート図である。この図7において、図5及び図6に示す符号と同符号のものは同一部分である。
図7の(イ)において、円弧溝12の半径中心Oと回転テーブル10の回転中心Wは共にZ軸上に位置している。円弧溝12の一方の端点Aの座標(X1、Y0、Z1)、他方の端点Bの座標(X2、Y0、Z2)、円弧溝12の半径をRi、回転テーブル10の回転中心Wから円弧溝12の加工位置までの半径がrである。Y0は回転テーブル10から円弧溝12までの高さである。
初めに、円弧溝12の一方の端点Aにおける円弧の回転角θ1を計算する(図7の(ハ)の手順71)。回転角θ1は、θ1=tan−1{X1/(Ri+r−Z1)}で与えられる。同様に、円弧溝12の他方の端点Bにおける円弧の回転角θ2を計算する(図7の(ハ)の手順72)。回転角θ2は、θ2=tan−1{X2/(Ri+r−Z2)}で与えられる。
次に、回転角θ1に切削のための余裕量を付加し円弧の回転角をθ1’とする(図7の(ハ)の手順73)。同様に回転角θ2に切削のための余裕量を付加し円弧の回転角をθ2’とする(図7の(ハ)の手順74)。
最後に、回転角θ1’を(1)、(2)式に代入し、切削開始点Dの座標(X1’、Y0、Z1’、θ1)を計算する(図7の(ハ)の手順75)。同様に、回転角θ2’を(1)、(2)式に代入し、切削終了点Eの座標(X1’、Y0、Z2’、θ2)を計算する(図7の(ハ)の手順76)。
図8は、本発明に係るサイドカッタ7による円弧溝の加工動作を説明する図で、図8の(イ)は被加工物11に対するサイドカッタ7の移動動作を示す平面図、(ロ)は被加工物11に対するサイドカッタ7の移動動作を示す側面図、(ハ)は被加工物11に対するサイドカッタ7の移動動作を説明するフローチャート図である。この図8において、図5及び図6に示す符号と同符号のものは同一部分である。なお、図8の(イ)の符号の数字が図8の(ロ)、(ハ)の符号の数字と対応するようになっている。
サイドカッタ7の工具半径をRt、機械原点Mから座標原点である回転テーブル10のC軸旋回中心Wを見た時の座標を(XT、YT、ZT)、図7で求めた切削開始点Dの座標を(X1’、Y0、Z1’、θ1’)、切削終了点の座標Eを(X2’、Y0、Z2’、θ2’)とする。
最初に、サイドカッタ7を機械原点Mから符号81でX軸を(XT→X1’)移動、符号82でZ軸を(ZT→Z1’)移動、符号83でC軸を(θ1’)度回転移動、符号84でY軸を(YT→Y0+Rt)移動させることによって切削開始点Dまで移動させる。
その後、符号85でサイドカッタ7をC軸回りに角度θ1’から角度θ2’まで回転させながら、(1)式及び(2)式に従って、X、Z軸方向に移動させて、切削開始点Dから切削終了点Eまで切削する。
最後に、切削終了点Eから、符号86でZ軸を(Y0+Rt→YT)移動、符号87でC軸を(−θ2’)度回転移動、符号88でZ軸を(Z2’→ZT)移動、符号99でX軸を(X2’→XT)移動させ機械原点Mに復帰させて切削を終了する。
上記の手順に基づいて、サイドカッタ7を被加工物の深さ方向に順次繰り返し制御することにより、被加工物12の表面に、所定の半径を持ち、所定の幅及び深さを有する円弧溝を直角に加工することができる。
上述したサイドカッタ7による円弧溝の加工において、サイドカッタ7の幅Wtと円弧溝12の幅Wdは、Wt<Wdの関係にあるため、図9の斜線部分に示すように、円弧溝の12外周側に削り残し90が発生する。円弧溝の12外周側に削り残し90が発生する理由を、図10を用いて説明する。図10の(イ)は、サイドカッタ7と円弧溝12との関係を示す正面図、(ロ)はサイドカッタ7と円弧溝12との接触状態を拡大して示す平面図である。説明の便宜上、図10の(イ)においては、サイドカッタ7の半径と円弧溝12の深さが同一としている。また、図10において、符号Aはサイドカッタ7の外側における円弧溝12の上部位置、符号Bはサイドカッタ7の外側における円弧溝12の中間位置、符号Cはサイドカッタ7の外側における円弧溝12の下部位置、符号Dはサイドカッタ7の内側における円弧溝12の下部位置を示している。
サイドカッタ7が被加工物11に対して、図10の(ロ)に示すように、時計方向に移動した場合、サイドカッタ7の内側の下部位置D、及びサイドカッタ7の外側の上部位置Aは、それぞれ実線の矢印で示すように、円弧溝12の内側面、及び円弧溝12の外側面に対応する軌跡を描く。
一方、サイドカッタ7の外側の中間位置Bは、点線の矢印で示すように、円弧溝12の外側面より内側の位置で軌跡を描く。また、サイドカッタ7の外側の下部位置Cは、2点線の矢印で示すように、円弧溝12の外側面より更に内側の位置で軌跡を描く。その結果、前述の図9の斜線部分に示すように、円弧溝の12外周側に削り残し90が発生する。
削り残し90における円弧溝12の底面から高さDiの位置での削り残し量Rdは、以下の式で求めることができる。
L3={Rt−(Rt−Di)1/2・・・・(14)
L4={(Ri+Wt)+L31/2・・・・(15)
Rd=Ri+Wd−L4・・・・(16)
図9において、円弧溝12の外周側に断面積より遥かに小さい削り残し90(この図9においては、説明の便宜上、削り残し90を誇張して示してある)があり、内周側には削り残しを生じないため、円弧溝12の外周側に生じた削り残し90は、図11の(イ)から(ニ)に示すように、サイドカッタ7の下方への傾き量を順次大きくすることにより、円弧溝12の外周側の遥かに小さい削り残し90を仕上げることが可能である。
なお、図11の(ホ)は、図11の(イ)の平面図である。
図12は、本発明に係るサイドカッタ7の傾動動作と円弧溝との関係を説明する説明図で、図12の(イ)はサイドカッタ7の傾動と円弧溝との関係を示す平面図、(ロ)は側面図、(ハ)はサイドカッタ7と円弧溝12の外周部との接触状態を拡大して示す平面図、(ニ)はサイドカッタ7の傾動と円弧溝との関係を示す横断面図である。この図12において、図5及び図6に示す符号と同符号のものは同一部分である。
図12において、サイドカッタ7の中心軸は、図2に示すように、傾動機構5によって回転テーブル10に対して一定の角度δtに傾動可能となっている。そして、サイドカッタ12を角度δtだけ傾斜させたときの状態を上方からみると、図11の(ロ)に示すように長軸Rt、短軸Rt×sinδtの楕円になる。この楕円の最大曲率関係が、円弧溝12の外周側半径より小さければ、サイドカッタ7は円弧溝12の外周側で干渉しない。
一般に、楕円の最大曲率半径は、長軸a、短軸bとすると、短軸側の頂点において最大になり、その曲率半径Rmax=a2/bで与えられる。
したがって、図9において、最大曲率半径Rmax=Rt/sinδt、Rmax≦(Ri+Wt)なる関係より、角度δtは次の(17)式のような関係になる。
δt≧sin−1{Rt/(Ri+Wt)}・・・(17)
一方、サイドカッタ7が傾斜しても円弧溝12の内周側に干渉しないことが必要である。そのための円弧溝12の溝幅Wdは、次の(18)式のような関係になる。
Wd≧Wt×cosδt+D×tanδt・・・(18)
そして、上記(17)式、(18)式に基づいて、サイドカッタ7が傾斜しても円弧溝12の内周側及び外周側に干渉しないためのサイドカッタ7の傾動角度δtを求めることができる。
上述した(17)式、(18)式における数値を、数値制御装置13に取り込み、数値制御装置13からの指令により、工作機を駆動し、サイドカッタ7の中心軸方向のX,Z軸成分のみを用いて、Y方向座標は傾斜角δtだけ補正して、図5、図7、図8に示す加工方法に従えば、図12の(ニ)に示すように、円弧溝12の外周側底部付近に僅かな削り残し部分91を有することになるが、所定の円弧溝12を加工することができる。
上述したように、本発明の被加工物への円弧溝の加工方法によれば、サイドカッタ7の厚みが円弧溝12の底面まで挿入しても、円弧溝12の内側面及び外側面に干渉しない厚みと径の関係を保つような条件として、被加工物11への加工時、常にサイドカッタ7の軸線が被加工物11に加工形成される円弧溝12の円周上のサイドカッタ加工位置の法線上に位置され、サイドカッタ7が回転駆動されると共に、被加工物11が、数値制御装置13を介し制御されて、円弧溝12が形成されるように、それぞれ上記軸線方向及び該軸線に対し直角方向に変位され、かつ、該軸線上に回転中心を有して回転変位されて、円弧溝12を加工形成するので、任意半径の円弧溝12の加工が可能となり、サイドカッタ7の軸線が円弧溝12の円周の法線上位置にあるので、サイドカッタ7による干渉がなくなり高精度な加工ができる。その結果、加工した円弧溝12への部材の組付性が向上する。また、サイドカッタ7を揺動半径をもって揺動加工することがないので、装置を小形化できる効果もある。
なお、前述した円弧溝12の外周側底部付近に僅かな削り残し部分91が、部材の組付時に、支障を生じる場合には、エンドミルを用いて、円弧溝12の外周部を複数回に分けて深さ方向にシフトしながら加工すれば、円弧溝12をより高精度に加工することが可能である。
なお、上述の実施の形態においては、被加工物11を回転テーブル10によって、垂直軸(C軸)回りに回転させたが、その代りに、被加工物11を固定状態にし、コラム1側の垂直軸(Y軸)回りにサイドカッタ7を回転させると共に、被加工物11をX、Z軸方向に数値制御装置13により移動を制御しても作用効果は全く同様である。この場合、コラム1全体をY軸回りに回転させても良いし、また、図1に示すサイドカッタ7を備えるブラケット4をカッタ保持体2とは分離し、このブラケット4をモータ等によりY軸回りに回転させることも可能である。
また、上述の実施の形態においては、被加工物11の表面に凹状の円弧溝を加工する場合について説明したが、前述した(1)式、(2)式におけるRの符号を負にすることによって、被加工物11の表面に突出状の円弧溝の加工も可能である。
そして、前述した(1)式、(2)式は、3角関数を含む特殊な関係式であり、本式に従って、X、Z、θを連続的に変化させることが可能な数値制御装置が必要であるが、θを独立変数、X、Zを従属変数とし、θを小さいピッチで変化させて、その都度、X,Zを計算することによって、同時3軸直線補間機能を持つ数値制御装置13でも実現可能である。NURBS補間等によりX、Z、θを連続的に滑らかに変化させる機能を有する数値制御装置13があれば、少ないデータ量で高精度な加工が可能となる。
また、被加工物11のセッティングの状態により、被加工物11に加工する円弧溝12の円弧溝中心とサイドカッタ7の中心軸が並ぶ時に、Z軸上に一致しない場合が発生する。この場合、C軸回転中心を原点とした時の円弧溝12の頂点の座標を(DX、DZ)とすると、前述した(1)式、(2)式は、次の(6)式、(7)式で表すことができる。
X’=R2sin(θ+θ0) …(6)
Z’=R2cos(θ+θ0)−R …(7)
ここで、R2={DX2+(R+DZ)1/2
θ0=tan−1{DX/(R+DZ)}
そして、上記の(6)式、(7)式を用いることにより、被加工物11に加工する円弧溝12の円弧溝中心とサイドカッタ7中心軸が並ぶ時に、Z軸上に一致しない場合でも、円弧溝12の加工が可能になる。
本発明の被加工物への円弧溝加工方法の実施の形態に使用する工作機の一例を示す斜視図である。 図1に示す工作機におけるコラム及び回転テーブル部分を示す正面図である。 図1に示す工作機における回転テーブル及び水平テーブルを示す平面図である。 図1に示す工作機におけるコラム側に設けたサイドカッタの斜視図である。 本発明に係る被加工物への円弧溝の加工方法原理を説明する説明図である。 本発明に用いるサイドカッタの幅Wtと半径Rtの関係を示す説明図である。 本発明の加工方法における回転テーブルの角度を計算する原理を説明する説明図である。 本発明に係るサイドカッタによる円弧溝の加工動作を説明する図である。 本発明の加工方法における円弧溝の外周側に発生する削り残し量の計算方法の説明図である。 本発明の加工方法における円弧溝の外周側に削り残しが発生する理由を説明する説明図である。 本発明の加工方法における円弧溝の外周側に発生する削り残しを切削する動作を説明する説明図である。 本発明に係るサイドカッタの傾動動作と円弧溝との関係を説明する説明図である。
1 コラム
2 カッタ保持体
3 工作機主軸
4 ブラケット
5 傾動機構
6 カッタホルダ
7 サイドカッタ
8 ベッド
9 水平テーブル
10 回転テーブル
11 被加工物
12 円弧溝
13 数値制御装置

Claims (7)

  1. 被加工物の表面に円弧溝を加工する被加工物への円弧溝加工方法において、
    工作機を構成するテーブルに、被加工物を固定し、
    前記工作機を構成するコラムに装設したモータ軸に、前記円弧溝の溝幅より小さい厚みを有するサイドカッタを装着し、
    数値制御装置からの指令信号に基づいて、前記サイドカッタを前記被加工物の側方に位置決めした後、前記サイドカッタを回転させ、
    前記サイドカッタ又は前記テーブルを相対的に回転させて、前記被加工物の表面に沿って円弧溝を加工し、
    次に、前記サイドカッタを、前記被加工物の側方において、深さ方向に位置決めした後、前記サイドカッタ又は前記テーブルを相対的に回転させる動作を、繰り返して、前記被加工物の表面に所定幅及び深さの円弧溝を加工する
    ことを特徴とする被加工物への円弧溝加工方法。
  2. 請求項1に記載の被加工物への円弧溝加工方法において、
    前記被加工物は、前記工作機を構成する移動可能な水平テーブル上の回転テーブル上に固定される
    ことを特徴とする被加工物への円弧溝加工方法。
  3. 請求項2に記載の被加工物への円弧溝加工方法において、
    前記被加工物を加工状態における前記サイドカッタの軸線が、前記被加工物に加工形成される前記円弧溝の円弧中心方向でかつ前記円弧溝の底面に対して直角方向に前記サイドカッタの半径分だけシフトした位置に位置させるとともに、前記コラム及び前記水平テーブルの前記軸線方向及び該軸線に対して直交する方向の変位、並びに前記回転テーブルの回転変位をそれぞれ、(R+r)cosθ−R及び(R+r)sinθ並びにθ(ただし、Rは前記被加工物の円弧溝の半径、rは前記サイドカッタの軸線が前記回転テーブルの回転中心を通る場合の前記サイドカッタの中心位置と前記回転テーブルの回転中心との距離、θは前記回転テーブルの回転角)となるように、前記数値制御装置を介して制御する
    ことを特徴とする被加工物への円弧溝加工方法。
  4. 請求項1に記載の被加工物への円弧溝加工方法において、
    前記サイドカッタは、垂直軸回りに回転可能である
    ことを特徴とする被加工物への円弧溝加工方法。
  5. 請求項1乃至3のいずれかに記載の被加工物への円弧溝加工方法において、
    前記サイドカッタは、前記円弧溝の底面まで挿入しても、円弧溝の側面に干渉しない厚みである
    ことを特徴とする被加工物への円弧溝加工方法。
  6. 請求項1乃至3のいずれかに記載の被加工物への円弧溝加工方法において、
    前記サイドカッタの中心軸は、前記サイドカッタが前記円弧溝と干渉しない曲率をもって傾動機構により傾動される
    ことを特徴とする被加工物への円弧溝加工方法。
  7. 請求項1乃至5のいずれかに記載の被加工物への円弧溝加工方法において、
    前記円弧溝の加工後に生じる前記円弧溝内の底部の削り残し部を、エンドミルによって切削する
    ことを特徴とする被加工物への円弧溝加工方法。
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