JP2010155817A - 水和物結晶 - Google Patents

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Abstract

【課題】
本発明の課題は、安定な新規(2R,4R)モナティンのナトリウム塩結晶を提供することである。そして、これらの立体異性体の甘味剤としての実用性、諸物性を明らかにすることである。そして、汎用安定かつ安全な新規(2R,4R)モナティンのナトリウム塩結晶を含有する、飲料、食品、医薬品、医薬部外品、飼料等の経口製品を提供することである。
【解決手段】
特定の固有X線回折ピークを有することを特徴とする新規(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶によって、上記課題が解決されることを見出した。
【選択図】図1

Description

本発明は、特定の固有X線回折ピークを有することを特徴とする新規(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶に関する。更に、当該結晶を含有するモナティン結晶に関する。更に結晶を含有する経口製品に関する。
モナティンは、南アフリカの北部トランスバール(northern Transvaal)地方に自生する植物シュレロチトンイリシホリアス(Schlerochiton ilicifolius)の根皮から単離された天然由来のアミノ酸誘導体であり、R. Vleggaar等により、その構造に関し、(2S,4S)-2-amino-4-carboxy-4-hydroxy-5-(3-indolyl)-pentanoic acid((2S,4S)-4-hydroxy-4-(3-indolylmethyl)-glutamic acid)と報告されている(非特許文献1)。また、この天然植物由来の(2S,4S)体(天然型モナティン)の甘味強度は、同文献等によると、ショ糖の800倍〜1400倍と報告されている。モナティンの合成法については、幾つかの方法が報告されているものの、それらの多くは立体異性体混合物の合成法に関するものであり、天然型モナティンと同一化学構造式を有する4種の立体異性体それぞれを純品として合成、単離し、それらの諸性質を詳細に調べ、報告した例は古くは殆ど無かった。(特許文献1〜3、非特許文献2〜3)
近年、モナティンの製法について、いくつかの研究がなされ(特許文献4〜5)、また、モナティン結晶については、いくつかの知見が報告されているが、カリウム塩に関するものが多く、最も汎用性の高いナトリウム塩に関する報告は限られていた(特許文献6〜9)。唯一存在する(2R,4R)モナティンナトリウム塩は、結晶が細かく取り扱いも困難であり、必ずしも熱安定性も良いとは言い難かった(特許文献6)。
ZA 87/4288 ZA 88/4220 US 5,994,559 WO2003-056026 WO2003-059865 WO2003-045914 US2005-272939 特開2005-154291 特開2006-052213
R. Vleggaar et. Al., J. Chem. Soc. Perkin Trans., 3095-3098, (1992) Holzapfel et. al., Synthetic Communications, 24(22), 3197-3211 (1994) K. Nakamura et. al., Organic Letters, 2, 2967-2970 (2000)
本発明の課題は、安定な新規(2R,4R)モナティンのナトリウム塩結晶を提供することである。そして、これらの立体異性体の甘味剤としての実用性、諸物性を明らかにすることである。そして、汎用安定かつ安全な新規(2R,4R)モナティンのナトリウム塩結晶を含有する、飲料、食品、医薬品、医薬部外品、飼料等の経口製品を提供することである。
本発明者等は鋭意検討を行った結果、特定の固有X線回折ピークを有することを特徴とする新規(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶を得ることに成功し、この結晶によって、上記課題が解決されることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
〔1〕回折角度(2θ±0.2°、CuKα)として、(A)7.7°、10.9°、16.7°、17.0°あるいは(B)4.7°、12.4°、18.8°、22.6°のいずれかの群に固有X線回折ピークを有することを特徴とする(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶。
〔2〕回折角度(2θ±0.2°、CuKα)として、(A)7.7°、10.9°、16.7°、17.0°あるいは(B)4.7°、12.4°、18.8°、22.6°のいずれかの群に固有X線回折ピークを有することを特徴とするモナティン結晶。
〔3〕〔1〕に記載の(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶を含有することを特徴とする、モナティン結晶。
〔4〕(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶の鏡像体過剰率が10〜100%eeであることを特徴とする、〔2〕または〔3〕のいずれかに記載のモナティン結晶。
〔5〕(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶のジアステレオマー過剰率が10〜100%deであることを特徴とする、〔2〕または〔3〕のいずれかに記載のモナティン結晶。
〔6〕5%ショ糖水溶液に対して甘味倍率が200倍以上であることを特徴とする、〔2〕または〔3〕のいずれかに記載のモナティン結晶。
〔7〕化学純度が50〜100重量%であることを特徴とする、〔2〕または〔3〕のいずれかに記載のモナティン結晶。
〔8〕〔1〕に記載の(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶を含有することを特徴とする、経口製品。
〔9〕〔2〕〜〔7〕のいずれかに記載のモナティン結晶を含有することを特徴とする、経口製品。
特定の固有X線回折ピークを有することを特徴とする新規(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶により、安定なモナティンのナトリウム塩結晶を提供することが可能になった。そして、これらの立体異性体の甘味剤としての実用性、諸物性を明らかにすることも可能になった。そして、汎用安定かつ安全なモナティンのナトリウム塩結晶を含有する、飲料、食品、医薬品、医薬部外品、飼料等の経口製品を提供することも可能になった。本発明は(2S,4S)モナティンにも当然ながら応用可能である。
は(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶(A)の乾燥後の粉末X線回折図である。(実施例1) は(2R、4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶(A)の晶析液分離直前の光学顕微鏡写真を図示したものである。(倍率200倍)(実施例1) は(2R、4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶(A)の乾燥した後乳鉢で粉砕した時の光学顕微鏡写真を図示したものである。(倍率200倍)(実施例1) は(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶(A)の再乾燥試験後の粉末X線回折図である。(実施例2) は(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶(A)の水蒸気吸着脱着(吸脱着)曲線を示した図である。(実施例3) は(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩1水和物結晶(B)の乾燥後の粉末X線回折図である。(実施例4) は(2R、4R)モナティン1ナトリウム塩1水和物結晶(B)の晶析液分離直前の光学顕微鏡写真を図示したものである。(倍率200倍)(実施例4) は実施例4および比較例1の分解物X(ラクトン体)への経時分解率をプロットしたものである。 は実施例4および比較例1の分解物Y(ラクタム体)への経時分解率をプロットしたものである。
本発明は、特定の固有X線回折ピークを有することを特徴とする新規(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶に関するものである。
本発明において、天然型モナティンはその立体構造において(2S,4S)体を示すが、それと同一の化学構造式を有する化合物を全て「モナティン」と総称し、従って、モナティンの非天然型立体異性体を、「天然型モナティンの立体異性体」、「非天然型モナティン」、「(2S,4R)モナティン」、「(2R,4S)モナティン」、或いは「(2R,4R)モナティン」等と称する。また、これらの立体異性体に、モナティン((2S,4S)体)を加えて、これらを「4種の立体異性体」と称したり、特に天然型モナティンを、「(2S,4S)モナティン」或いは「(2S,4S)モナティン」等と称したりする。
本発明で使用される(2R,4R)モナティンは、公知の方法により調製することができ、その製法は限定されない。例えば、トリプトファンから、インドールピルビン酸を経て、酵素法により得ることもできるし(特許文献4;WO2003-056026号公報)、トリプトファンから、インドールピルビン酸を経て、オキシム体、還元により得ることもできる(特許文献5;WO2003-059865号公報)。製造段階において、(2R,4R)モナティンの他に、天然型モナティン(2S,4S)体や、その非天然型立体異性体(2S,4R)体、(2R,4S)体は含まれていても構わない。
このようにして得られた(2R,4R)モナティンは、モナティンの4つの異性体を含有する混合物を使用することもできるし、吸着樹脂、イオン交換樹脂、その他公知の方法を駆使して分離精製したものを使用してもよい。一端フリー体、アンモニウム塩、カリウム塩、塩基性アミノ酸塩等の公知の塩として取上げることもできる。モナティン1ナトリウム塩の高濃度に含有する水溶液を得る方法としては、特に制限はないが、モナティンのフリー体または塩に対して、中和または塩交換をすることによりナトリウム塩としたものや、イオン交換樹脂により塩交換したものを使用することができる。更に高濃度を求める場合には、減圧下の溶媒留去等の公知の方法を利用しても良い。
本発明で使用されるナトリウムは、特に制限されないが、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、等の無機ナトリウム化合物や、酢酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、等の有機ナトリウム化合物により、中和、塩交換等各種方法により導入することができる。これらは単独使用しても構わないし、2種以上を併用しても構わない。
本発明の(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶のうち(A)7.7°、10.9°、16.7°、17.0°に固有X線ピークを有するもの(以下、(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶(A)あるいは(2R,4R)モナティン1ナトリウム水和物結晶(A)と略す場合あり)について晶析方法を説明する。
上述の方法により(2R,4R)モナティンとナトリウム源を高濃度に含有する水溶液を静置または攪拌晶析に付することにより、結晶析出を得ることができる。(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物の種結晶を接種することにより、効率的かつ安定な析出を促すことが好ましい。溶媒中の(2R,4R)モナティン結晶濃度としては、過飽和が掛かっており結晶が析出しさえすれば特に制限は無いが20wt%〜60wt%が好ましい。製造に適した溶解液の粘度が得られるという観点から30wt%〜50wt%がより好ましく、35wt%〜45wt%が更に好ましく。溶解させる温度は結晶が溶解し続けさえすれば特に制限はないが、40〜100℃が好ましい。
析出してきた結晶は、ろ過工程等の分離工程に付すことにより、容易に湿結晶を得ることができる。結晶洗浄に際しては、結晶溶媒交換を起しさえしなければ特に制限はないが、水を使用することができる。また、結晶溶媒交換を起こしさえしなければ、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール、プロピレングリコール、アセトニトリル、THF、等の水と混和しうる溶媒や無機塩等も含んでいても構わない。結晶溶媒交換を起こさず、晶析収率が高いという観点で、水のみの洗浄が好ましく、冷水による洗浄がより好ましく、0〜20℃冷水が更に好ましく、0〜15℃冷水が更に一層好ましく、0〜10℃冷水が殊更好ましく、0〜5℃冷水が特に好ましい。
こうして得られた湿結晶は、公知の乾燥工程に付することにより、乾燥結晶に導くことができる。乾燥工程に使用される乾燥設備は特に制限はなく、(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩が溶解しない程度の温度域が使用でき、減圧乾燥または気流乾燥、温風乾燥、等を使用できる。
こうして得られた(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶は、針状晶を呈し、回折角度(2θ±0.2°、CuKα)として、7.7°、10.9°、16.7°、17.0°に固有X線回折ピークを有する。
WO2003-045914号公報(特許文献6)の〔実施例17〕に記載の(2R,4R)モナティン1カリウム塩1水和物結晶と比較すると、結晶形状が固い(2R,4R)モナティン1カリウム塩1水和物結晶の場合は、更に粉砕工程無しでは賦形剤と良好な粉体混合することができないのに対して、本願発明の(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶(A)は、そのまま賦形剤と粉体混合しても、舌先にざらざら感の無い良好な食感と、良好な口解けと、良好な先甘味を有する、砂糖同様の良好な甘味組成物が得られるという特徴を有する。
(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶(A)の水蒸気吸着脱着試験によれば、最も安定形は3水和物を呈するが、結晶構造をそのままに結晶水を徐々に失いうるという特異的な性質を有すると考える。(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩と3水和物とで形成される結晶格子自体はリジッドながらも、その中に存在する結晶水の水素結合が比較的緩やかなためか、40℃で真空ポンプ程度でも、結晶格子そのままに結晶水を徐々に失いうるという性質を有するためと考えられる。したがって、固有X線回折ピークを同一でも、(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩n水和物結晶(n=0.1〜3.0)と表記しうるものである。すなわち、(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶(A)と称する場合、狭義には、(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩3水和物結晶のことであり、広義には、2R,4R)モナティン1ナトリウム塩n水和物結晶(n=0.1〜4.0)のことである。
ここに本発明の(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶(A)と従来技術である特許文献6(WO2003-045914号公報)の実施例14、及び実施例20の(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩結晶との差異について考察する。実施例14に記載の結晶は、(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩0.2エタノール和物であり、「4.4°、15.3°、17.5°、19.1°及び24.6°の回折角度(2θ、CuKα)に特徴的な固有X線回折ピークを示した」と記載されている。一方、実施例20に記載の結晶は、トレースしたところ、(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩の水和物を呈しており、2.5水和物相当であった。本結晶は、「4.4°、15.2°、17.8°、20.6°及び24.1°の回折角度(2θ、CuKα)に特徴的な回折X線のピークを示した」と記載されている。これらを考察するに、一度結晶が構築されると、結晶溶媒が抜けても結晶転移を起し難いというのが、モナティン類、特に(2R,4R)モナティン、あるいは、(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩に特有の性質であると考えられる。したがって、本発明の回折角度(2θ±0.2°、CuKα)として、7.7°、10.9°、16.7°、17.0°に固有X線回折ピークを有する新規(2R,4R)モナティン1ナトリウム水和物結晶(A)を得る際には、エタノールといった溶媒和物を形成しうるような有機溶媒を不用意に多量に晶析段階に共存させてはならない。すなわち、晶析段階で水のみを使用することが好ましく、晶析段階と結晶洗浄段階において水のみを使用することが更に好ましい。
(A)7.7°、10.9°、16.7°、17.0°に固有X線回折ピークを有することを特徴とする新規(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶(A)により、有機溶媒が結晶中に取り込まれていない汎用安定かつ安全なモナティンのナトリウム塩結晶を提供することが可能になった。また、結晶化、分離、乾燥工程において有機溶剤を要しない製法を提供することも可能になった。
次に本発明の(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶のうち(B)4.7°、12.4°、18.8°、22.6°に固有X線ピークを有するもの(以下、(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶(B)あるいは(2R,4R)モナティン1ナトリウム1水和物結晶(B)と略す場合あり)について晶析方法を説明する。
上述の方法により(2R,4R)モナティンとナトリウム源を高濃度に含有する水溶液を濃縮して、水と混和しうる溶媒を入れ、静置または攪拌晶析に付することにより、結晶析出を得ることができる。水と混和しうる溶媒としては、具体的にはメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等の低級1価アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、等種々使用できる。また一部水が残存していても構わない。溶媒中の(2R,4R)モナティン結晶濃度としては、過飽和が掛かっており結晶が析出しさえすれば特に制限は無いが20wt%〜60wt%が好ましい。製造に適した溶解液の粘度が得られるという観点から30wt%〜50wt%がより好ましく、35wt%〜45wt%が更に好ましく。溶解させる温度は結晶が溶解し続けさえすれば特に制限はないが、40〜100℃が好ましい。
高い起晶温度で(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩1水和物の種結晶を接種することにより、安定した目的結晶を得ることができる。種結晶が溶解せず目的結晶が生成するという観点で、起晶温度はその溶媒の溶解度を示す温度未満である必要があり、一方、結晶成長を促進させ大きな結晶を獲得できるという観点で、起晶温度下限値は35℃が好ましく、40℃がより好ましく、43℃が更に好ましく、45℃が更に一層好ましく、48℃が殊更好ましく、50℃が特に好ましい。一方種結晶が溶解せず目的結晶が生成するという観点で、起晶温度はその溶媒の溶解度を示す温度未満である必要があり、一方、結晶成長を促進させ大きな結晶を獲得できるという観点で、起晶温度上限値は、80℃が好ましく、70℃がより好ましく、60℃が更に好ましい。
析出してきた結晶は、ろ過工程等の分離工程に付すことにより、容易に湿結晶を得ることができる。結晶洗浄に際しては、結晶溶媒交換を起しさえしなければ特に制限はない。結晶溶媒交換を起こしさえしなければ使用可能な溶媒としては、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール、プロピレングリコール、アセトニトリル、THF、等の水と混和しうる溶媒や無機塩等も含んでいても構わない。
こうして得られた湿結晶は、公知の乾燥工程に付することにより、乾燥結晶に導くことができる。乾燥工程に使用される乾燥設備は特に制限はなく、(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩(B)が溶解しない程度の温度域が使用でき、減圧乾燥または気流乾燥、温風乾燥、等を使用できる。
こうして得られた(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩1水和物結晶(B)は、針状晶を呈し、回折角度(2θ±0.2°、CuKα)として、4.7°、12.4°、18.8°、22.6°に固有X線回折ピークを有する。
ここに本発明の(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩1水和物結晶(B)と従来技術である特許文献6(WO2003-045914号公報)の実施例14、及び実施例20の(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩結晶との差異について考察する。実施例14に記載の結晶は、(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩0.2エタノール和物であり、トレースしたところ、20℃以下で起晶した結晶であり、「4.4°、15.3°、17.5°、19.1°及び24.6°の回折角度(2θ、CuKα)に特徴的な固有X線回折ピークを示した」と記載されている。一方、実施例20に記載の結晶は、トレースしたところ、(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩の水和物を呈しており、2.5水和物相当であった。本結晶は、「4.4°、15.2°、17.8°、20.6°及び24.1°の回折角度(2θ、CuKα)に特徴的な回折X線のピークを示した」と記載されている。これらを考察するに、一度結晶が構築されると、結晶溶媒が抜けても結晶転移を起し難いというのが、モナティン類、特に(2R,4R)モナティン、あるいは、(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩に特有の性質であると考えられる。したがって、本発明の回折角度(2θ±0.2°、CuKα)として、4.7°、12.4°、18.8°、22.6°に固有X線回折ピークを有する新規(2R,4R)モナティン1ナトリウム1水和物結晶(B)を得る際には、上述の高い起晶温度領域が極めて重要であり、特許文献6のナトリウム塩の起晶温度(20℃)とは明確に異なっていることが特徴である。結果として、異なる結晶形が得られ、その結晶は従来に較べて大きく、その安定性は20倍以上と極めて高いということは、驚くべき知見であった。
(B)4.7°、12.4°、18.8°、22.6°に固有X線回折ピークを有することを特徴とする新規(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩1水和物結晶(B)により、結晶形状の大きく熱安定性に優れたモナティンのナトリウム塩結晶を提供することが可能になった。
本発明の(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶((A)または(B))は、更に他のモナティン異性体として(2S,4S)モナティン1ナトリウム塩と共にモナティン結晶を形成しうる。この場合の、鏡像体過剰率は特に制限はないが、安定結晶を保ち少量で有効な甘味質を呈するという観点で、鏡像体過剰率は10%〜100%eeが好ましく、30%〜100%eeがより好ましく、50%〜100%eeが更に好ましく、70%〜100%eeが更に一層好ましく、90%〜100%eeが殊更好ましく、95%〜100%eeが特に好ましい。
本発明の(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶((A)または(B))は、更に他のモナティン異性体として、(2S,4R)モナティン1ナトリウム塩、(2R,4S)モナティン1ナトリウム塩と共にモナティン結晶を形成しうる。そのジアステレオマー過剰率は特に制限はないが、安定結晶を保ち少量で有効な甘味質を呈するという観点で、ジアステレオマー過剰率は10%〜100%deが好ましく、30%〜100%deがより好ましく、50%〜100%deが更に好ましく、70%〜100%deが更に一層好ましく、90%〜100%deが殊更好ましく、95%〜100%deが特に好ましい。
本発明の(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶((A)または(B))は、更に他の無機・有機不純物と共に、モナティン結晶を形成しうる。本発明の(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶を含有するモナティン結晶の化学純度の下限値は、結晶を形成しさえすれば特に制限はないが、安定結晶を形成しうるという観点で、50重量%が好ましく、60重量%がより好ましく、70重量%が更に好ましく、80重量%が更に一層好ましく、90重量%が殊更好ましく、95重量%が特に好ましい。一方、化学純度の上限値は、より少量の配合でも甘味倍率を達成するという観点で、100重量%が好ましい。ここでいう化学純度とは、モナティン結晶全体重量に対する、「モナティン1ナトリウム塩水和物結晶」重量の割合である。純度低減の原因は、モナティン自体の不純物(他の異性体を含む)、無機塩、ナトリウム以外の金属塩等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
本発明の(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶((A)または(B))は、更に他のモナティン異性体として(2S,4S)モナティン1ナトリウム塩、(2S,4R)モナティン1ナトリウム塩、(2R,4S)モナティン1ナトリウム塩、他の無機・有機不純物と共にモナティン結晶を形成しうる。本発明の(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶を含有するモナティン結晶の甘味倍率は、特に制限はないが、安定結晶を保ちつつ少量で有効な甘味質を呈するという観点で、5%ショ糖水溶液に対して、200倍以上が好ましく、500倍以上がより好ましく、1000倍以上が更に好ましく、1500倍以上が更に一層好ましく、2000倍以上が殊更好ましく、2500倍以上が特に好ましい。
本発明の(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶((A)または(B))を含有するモナティン結晶には、更に甘味剤(モナティンまたはその塩を除く)を組合せて、甘味組成物を得ることができる。他の甘味剤としては、特に制限はないが、具体的には、キシロース・ブドウ糖・果糖などの単糖類、砂糖・乳糖・麦芽糖などの二糖類; フラクトオリゴ糖・マルトオリゴ糖・イソマルトオリゴ糖・ガラクトオリゴ糖などのオリゴ糖類; キシリトール・ラクチトール・ソルビトール・エリスリトール・マンニトール・マルチトール・還元パラチノース・還元でん粉糖化物などの糖アルコール類; アスパルテーム、アセサルファムK、スクラロース、サッカリン、ステビオサイド、ネオテーム、チクロ、ステビア、グリチルリチン、モネリン、ソーマチン、アリテーム、ズルチン、ブラゼイン、ネオクリン、MHPPAPM(N-[N-[3-(3-ヒト゛ロキシ-4-メトキシフェニル)フ゜ロヒ゜ル]-L-α-アスハ゜ルチル]-L-フェニルアラニン 1-メチルエステル1水和物(アドバンテーム、 (CAS No.714229-20-6))、等の高甘味度甘味料(HIS)が挙げられる。これらは、単独に使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても構わない。甘味相乗効果が得られるという観点で、アスパルテーム、アセサルファムK、スクラロース、サッカリン、チクロ、ステビオサイド、ネオテームが好ましく、アスパルテーム、アセサルファムK、スクラロース、サッカリン、ステビオサイド、ネオテームがより好ましく、アスパルテーム、アセサルファムK、スクラロース、ステビオサイド、ネオテームがさらに好ましく、アスパルテーム、アセサルファムK、スクラロース、ネオテームが更に一層好ましく、アスパルテーム、アセサルファムK、スクラロースが殊更好ましく、アスパルテーム、スクラロースが特に好ましい。味質ならびに甘味相乗効果が得られるという観点では、アスパルテームが特に好ましい。
その他、各種食品素材の他に、本発明の効果を阻害しない程度に飲料、食品、医薬品、医薬部外品、飼料等の経口製品として使用可能な各種添加剤を使用することができる。具体的には、デキストリン・マルトデキストリン・澱粉分解物・還元澱粉分解物・サイクロデキストリン・難消化性デキストリンなどのデキストリン類、結晶セルロース・ポリデキストロースなどの多糖類等と言った賦形剤;クエン酸、リン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸等及びそれらの塩のようなpH調整剤;L-アスコルビン酸、エリソルビン酸、トコフェロール(ビタミンE)等の酸化防止剤;酢酸ナトリウム、グリシン、グリセリン脂肪酸エステル、リゾチーム等の日持ち向上剤;安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム等の保存料;ペクチン、アラビアガム、カラギーナン、大豆多糖類、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等の安定剤;キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム、カラヤガム等の増粘安定剤;リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化ケイ素、貝殻カルシウム等の固結防止剤;シナモン油、レモン油、ミント油、オレンジ油、バニラ等の天然香料、メントール、シトラール、シンナミックアルコール、テルピネオール、バニリン等の合成香料、それらを調合した調合香料等の香料;クチナシ色素、カラメル色素、コチニール色素、アナトー色素、ベニバナ色素、β−カロチン、及び各種タール系合成色素等の着色料;炭酸水素ナトリウム、デンプン、寒天末、ゼラチン末、結晶セルロース等の崩壊剤、ステアリン酸、シュガーエステル、安息香酸、タルク等の滑沢剤;炭酸水素ナトリウム、グルコノデルタラクトン等の膨張剤;レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤が挙げられる。これらは任意の割合で併用でき、これらは1種または2種以上を混合して使用してもよい。
本発明のモナティン結晶あるいは甘味組成物は、飲料、食品、医薬品、医薬部外品、飼料等の経口製品に使用することができる。その剤型は、特に限定されず、例えば、粉末、顆粒、キューブ、ペースト、液体などが挙げられる。具体的には、果実飲料、野菜飲料、コーラ、炭酸飲料、スポーツドリンク、コーヒー、紅茶、ココア、乳飲料等の液体飲料;粉末ジュース等の粉末飲料;梅酒、薬用酒、果実酒、日本酒等の酒;等に代表される飲料、 チョコレート、クッキー、ケーキ、ドーナツ、チューイングガム、ゼリー、プディング、ムース、和菓子等の菓子;フランスパン、クロワッサン等のパン;コーヒー牛乳、ヨーグルト等の乳製品;アイスクリーム、シャーベット等の氷菓;ベーキングミックス、デザートミックス等の粉末ミックス;液体卓上甘味料、粉末卓上甘味料等の卓上甘味料;魚介乾製品、魚介塩蔵品;佃煮;ハム、ベーコン、ソーセージ等の食肉・水産物加工製品;ドレッシング、たれ、醤油、味噌、みりん、ソース、ケチャップ、麺つゆ等の調味料;カレー粉等の香辛料;即席麺等の穀物加工品;シリアル;等に代表される食品、 錠剤医薬品;散剤医薬品;シロップ剤医薬品;ドロップ剤医薬品;等に代表される医薬品、 口内清涼剤;うがい剤;歯磨き剤;ドリンク剤;等に代表される医薬部外品、 ペットフード;液体飼料;粉末飼料;等に代表される飼料、等が挙げられる。特に、モナティンの甘味質、甘味安定性を保持しうるという観点で、モナティンの結晶形状を保持した飲料、食品、医薬品、医薬部外品、飼料が好ましく、粉末飲料、菓子、粉末ミックス、粉末卓上甘味料、錠剤医薬品、散剤医薬品、粉末飼料がより好ましく、粉末飲料、粉末卓上甘味料、粉末ミックスがより好ましい。
本発明のモナティン結晶あるいは甘味組成物は、メタボリックシンドローム予防・治療剤、肥満予防・治療剤、糖尿病予防・治療剤、虫歯予防剤として極めて有効である。付加的に、甘味相乗効果、風味相乗効果、苦味マスキング、光分解安定化効果も有する。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔測定方法〕
まずは各種測定方法について説明する。
〔粉末X線回折測定方法〕
1)サンプル結晶0.5gを採取し、メノウ乳鉢で60秒間すりつぶした。得られた粉末をガラスプレートにセットし、上から圧力をかけて平らにした。直ちに粉末X線回折装置にセットし、以下の条件で測定した。
2) Cu-Kα線による粉末X線回折の測定は、スペクトリス株式会社製X線回折装置PW3050を用い、管球:Cu、管電流:30mA、管電圧:40kV、サンプリング幅:0.020°、走査速度:3°/min、波長:1.54056Å、測定回折角範囲(2θ):4〜30°の条件で測定した。
測定プログラム:X’PERT DATA COLLECTION
解析プログラム:X'PERT High Score
3)得られたデーターをエクセルにてグラフ化し、4〜18°の範囲の特徴的鋭角極大ピークを読み取った。本方法の回折角の誤差は±0.2°である。
〔モナティン含量測定方法〕
(2R,4R)モナティンとナトリウムのモル比は、以下の条件で所定濃度の(2R,4R)モナティンナトリウム塩結晶溶液中のモナティン含量を下記条件のHPLCで測定し、濃度比にて決定した。
<使用機器>
ポンプ:LC-9A 島津製作所(株)製
カラムオーブン:CTO-10A 島津製作所(株)製
検出器:SPD-10A 島津製作所(株)製
オートサンプラー:SIL-9A 島津製作所(株)製
グラジエンター:LPG-1000 東京理化器機(株)製
<カラム>CAPCELL PAK C18 TYPE MGII 5μm 4.6mm×250mm 資生堂(株)製
<カラム温度>40℃
<検出波長>210nm
<移動液組成>A液 20mMKH2PO4/アセトニトリル=100/5
B液 アセトニトリルのみ
<グラジエントパターン>
<リテンションタイム> (2S,4R)モナティン:11.8分
(2R,4R)モナティン:15.1分
<注入量>10μL
<分析サイクル>70分/1検体
<モナティン含量測定標準物質>
(2R,4R)モナティンカリウム塩1水和物 分子量348.4
(2R,4R)モナティンナトリウム塩結晶溶液中のモナティン含量
=(292.3/348.4)*(Wstd*Qs)/(Ws*Qstd)*100(%)
Wstd:標準物質濃度(mg/mL)
Qstd:標準物質のarea値
Ws: (2R,4R)モナティンナトリウム塩濃度(mg/mL)
Qs: (2R,4R)モナティンナトリウム塩のarea値
(2R,4R)モナティンフリー体 分子量292.3
〔ナトリウムイオン測定方法〕
(2R,4R)モナティンとナトリウムのモル比は、以下の条件で所定濃度の(2R,4R)モナティンナトリウム塩結晶溶液中のナトリウムイオン濃度を下記条件のイオンクロマトグラフで測定し、濃度比にて決定した。
<装置名> 東ソー(株)製 イオンクロマトグラフIC-2001
<陽イオン測定カラム>東ソー(株)製 TSKgel SuperIC-Cation、内径4.6mm、長さ150mm
<ガードカラム>東ソー(株)製 TSKguardcolumn SuperIC-C、内径4.6mm、長さ10mm
<溶離液> 2.5mmol/LHNO3 + 0.5mmol/Lヒスチシ゛ン
<カラム温度>40℃
<流速>1ml/min
<標準溶液> 関東化学製 陽イオン標準溶液
〔1H-NMRスペクトル測定方法〕
<装置名> Bruker製 AVANCE400 1H;400MHz
<溶媒> 重水
<温度> 室温
<濃度> 約7重量%
〔MSスペクトル測定方法〕
<装置名> Thermo Quest社製 TSQ700
<測定モード> ESIモード
〔水分測定方法〕
(2R,4R)モナティンと水のモル比は、以下の条件で所定濃度の(2R,4R)モナティンナトリウム塩結晶溶液中の水濃度をカールフィッシャー法により測定し、得られた滴定液量から算出した。
<装置名>平沼産業株式会社製 自動水分測定装置 AQV-2000
<滴定液>Hydranal-composite 5(Riedel-deHaёn製)
<溶媒>メタノール
<温度>室温
〔製造例1〕(2R,4R)モナティン1カリウム塩1水和物の調製
WO2003-045914号公報(特許文献6)記載の〔実施例17〕に則り、(2R,4R)モナティン1アンモニウム塩結晶10gを水に溶解、陽イオン交換樹脂 DIAION PK228(カリウム型、三菱化学製)処理して、溶出液を濃縮、35℃でエタノール滴下、結晶分離、減圧乾燥して、(2R,4R)モナティン1カリウム塩1水和物結晶を得た(9.3g)。
融点:220.0〜222.3℃。
〔実施例1〕(2R、4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶(A)の調製
製造例1の(2R,4R))モナティン1カリウム塩1水和物結晶4g(11.5ミリモル)を水40mlに溶解し、20mlの陽イオン交換樹脂 DIAION UBK550(ナトリウム型、三菱化学製)を充填したカラムに通液してナトリウムに変換した後、溶出液を6.4gまで濃縮した。得られた濃縮液を5℃で6時間静置し、晶析液から結晶を分離した後、冷水2mlで洗浄した後湿結晶を40℃で減圧乾燥機にて一晩乾燥し(2R、4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶(A)2.28g(6.4ミリモル)を得た。
1HNMR(D2O)δ:1.94−2.01(q 1H),2.57−2.61(q 1H),2.99−3.03(d 1H),3.19−3.23(d 1H),3.54−3.57(q 1H),7.05−7.17(m 3H),7.40−7.42(m 1H),7.64−7.66(m 1H)。
ESI−MS:293.1(M+H)、 291.1(M-H)-
水分含量:12.4wt%(2.5水和物相当)
ナトリウム含量:6.3wt%
固有X線回折ピーク(2θ±0.2°、CuKα):7.7°、10.9°、16.7°、17.0°(図1)
ジアステレオマー過剰率:96.4%de
((2R,4R):(2S,4R)=98.2:1.8)
〔実施例2〕水和物結晶再乾燥試験
実施例1で得られた(2R、4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶(A)(2.5水和物相当)をさらに40℃で24時間減圧下乾燥後、シリカゲル存在下でデシケーター中にて室温まで一晩冷却することにより、以下のような(2R、4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶(A)を得た。
水分含量(乾燥直後):6.9wt%(1.3水和物相当)
水分含量(デシケーター保存結晶の粉末X線測定直後):8.0wt%(1.5水和物相当)
固有X線回折ピーク(2θ±0.2°、CuKα):7.8°、10.9°、16.7°、17.1°(図4)
この実験より、水和物が2.5から1.5に変動しても、固有X線回折ピークには殆ど影響を与えないことが判明した。
〔実施例3〕モナティン1ナトリウム塩水和物結晶(A)の水蒸気吸着脱着試験
実施例1により得られた(2R、4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶(A)の水蒸気吸着脱着曲線を求めた。測定条件は以下の通りである。この測定値を図5に示す。
装置:日本ベル株式会社製 自動蒸気吸着量測定装置BELSORP18
測定方式: 定容量式ガス吸着法
測定条件:
吸着ガス: H2O
空気恒温槽温度(K): 353
吸着温度(K): 298
飽和蒸気圧(kPa): 3.169
吸着断面積(nm2): 0.125
最大吸着圧(相対圧 P/P0): 脱着;0.90 吸着;0.95
最小吸着圧(相対圧 P/P0): 脱着;0.10 吸着;0.05
平衡時間: 500sec
図5より、最も安定な(2R、4R)モナティン1ナトリウム塩(A)の水和物が、3水和物であることが判明した。また、比較的緩やかな条件において結晶水を徐々に放出しうることも明らかとなった。
〔実施例4〕(2R、4R)モナティン1ナトリウム塩1水和物結晶(B)の調製
製造例1の(2R,4R))モナティン1カリウム塩1水和物結晶40g(115ミリモル)を水に溶解し、150mlの陽イオン交換樹脂 DIAION UBK550(ナトリウム型、三菱化学製)を充填したカラムに通液してナトリウムに変換した後、溶出液を99.2gまで濃縮した。得られた濃縮液を50℃で攪拌しながらエタノール400mlを滴下し、50℃のままで一晩静攪拌し、晶析液から結晶を分離した後、40℃で減圧乾燥機にて一晩乾燥し(2R、4R)モナティン1ナトリウム塩1水和物結晶(B)35.0g(104ミリモル)を得た。
1HNMR(D2O)δ:1.94−2.01(q 1H),2.57−2.61(q 1H),2.99−3.03(d 1H),3.19−3.23(d 1H),3.54−3.57(q 1H),7.05−7.17(m 3H),7.40−7.42(m 1H),7.64−7.66(m 1H)。
ESI−MS:293.1(M+H)、 291.1(M-H)-
水分含量:6.6wt%(1水和物相当)
ナトリウム含量:6.8wt%(1ナトリウム相当)
固有X線回折ピーク(2θ±0.2°、CuKα):4.7°、12.4°、18.8°、22.6°(図6)
甘味倍率:2700倍(5%のショ糖水溶液との比較、7名パネラー平均値)
〔実施例5〕熱安定性評価
実施例4で得られたモナティン結晶(B)と比較例1(特許文献6(WO2003-045914号公報)の実施例14)で得られたモナティン結晶について以下のような方法で熱安定性を評価した。
〔評価方法〕
実施例4、比較例1それぞれの結晶50mgを4mlのバイアル瓶に入れ、温度120℃で保存した。このとき、バイアル瓶は開放した状態とした。保存時間として3時間、7時間、及び24時間後にそれぞれサンプル2mgを抜き取り、HPLC分解率を求めた。具体的には、分解物Xはラクトン体(RT=21分)であり、分解物Yはラクタム体(RT=26分)であり、モナティンの面積に対する各面積比(百分率)を求めた。結果を表1、2に示す。(例えば実施例4の3時間目では、モナティン(6521949)、分解物X(7432)、分解物Y(7201)により、分解物X、Y分解率はそれぞれ、0.11%、0.11%と計算された。)
この実験より、比較例1のモナティン結晶は、実施例4のモナティン結晶に較べて、分解物X(ラクトン体)への分解速度は27倍(24時間時点)、分解物Y(ラクタム体)への分解速度で20倍(24時間時点)であることが分かり、本願発明の(2R、4R)モナティン1ナトリウム塩1水和物結晶(b)の熱安定性がドラスティックに向上していることが判明した。図8、図9は、実施例4および比較例1の分解物X(ラクトン体)、Y(ラクタム体)への経時的分解率をプロットしたものであるが、その違いは一目瞭然である。
〔処方例1〕卓上甘味料
(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶((A)または(B))によって、安定なモナティンのナトリウム塩結晶を提供できるようになった。これらの立体異性体の甘味剤としての実用性、諸物性を明らかとした。そして、汎用安定かつ安全なモナティンのナトリウム塩結晶を含有する、飲料、食品、医薬品、医薬部外品、飼料等の経口製品を提供できるようになったことは、極めて意義深い。

Claims (9)

  1. 回折角度(2θ±0.2°、CuKα)として、(A)7.7°、10.9°、16.7°、17.0°あるいは(B)4.7°、12.4°、18.8°、22.6°のいずれかの群に固有X線回折ピークを有することを特徴とする(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶。
  2. 回折角度(2θ±0.2°、CuKα)として、(A)7.7°、10.9°、16.7°、17.0°あるいは(B)4.7°、12.4°、18.8°、22.6°のいずれかの群に固有X線回折ピークを有することを特徴とするモナティン結晶。
  3. 請求項1に記載の(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶を含有することを特徴とする、モナティン結晶。
  4. (2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶の鏡像体過剰率が10〜100%eeであることを特徴とする、請求項2または3のいずれかに記載のモナティン結晶。
  5. (2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶のジアステレオマー過剰率が10〜100%deであることを特徴とする、請求項2または3のいずれかに記載のモナティン結晶。
  6. 5%ショ糖水溶液に対して甘味倍率が200倍以上であることを特徴とする、請求項2または3のいずれかに記載のモナティン結晶。
  7. 化学純度が50〜100重量%であることを特徴とする、請求項2または3のいずれかに記載のモナティン結晶。
  8. 請求項1に記載の(2R,4R)モナティン1ナトリウム塩水和物結晶を含有することを特徴とする、経口製品。
  9. 請求項2〜7のいずれかに記載のモナティン結晶を含有することを特徴とする、経口製品。
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