上記のように、2個のメイン刃と、2個のサブ刃とを備えた電気かみそりによれば、切断刃の数が多い分だけ、髭と切断刃との接触機会を増やすことができる。しかし、4個の切断刃をかみそりヘッドに設けるので、かみそりヘッドの前後寸法が大きくなるのを避けられない。また、振動子の往復動力を振動ホルダーと可動刃台を介して可動刃に伝動するので、モーターから各可動刃に至る動力伝動構造が複雑になるのを避けられない。
スリット刃で構成したサブ刃を2個のメイン刃の前後に配置し、しかも両メイン刃をサブ刃の上端より突出させるので、両メイン刃が沈み込み、しかも電気かみそりを前後いずれかへ大きく傾けた状態でないとサブ刃を肌面に接触させることができない。そのため、くせ髭の切断は専ら粗剃り用のメイン刃で行なわれることが多く、サブ刃が活用されにくい構造になっていた。
本発明の目的は、モーターから各可動刃に至る動力伝動構造を簡素化し、組み立てに要する手間を削減できる電気かみそりを提供することにある。本発明の目的は、粗剃り用の切断刃と仕上げ剃り用の切断刃の配置と、各切断刃の突出関係を好適化して、くせ髭の切断と仕上げ剃りとを効果的に行なえる電気かみそりを提供することにある。本発明の目的は、くせ髭をより確実に切断して深剃りでき、とくにあご部におけるくせ髭を繰り返し的確に切断できる電気かみそりを提供することにある。
本発明に係る電気かみそりは、かみそりヘッド6が、複数個の切断刃11〜14と固定刃ホルダー15とを含み、モーター動力を往復動力に変換して前記切断刃11〜14の可動刃19・21・23・25に伝動する駆動構造を備えている往復動式の電気かみそりからなる。駆動構造は、モーター27の出力軸に固定される偏心カム31と、偏心カム31で互いに逆向きに駆動される2個の振動子32・33と、各振動子32・33の往復動力を各切断刃11〜14の可動刃19・21・23・25に伝動する駆動体34〜37と、両振動子32・33を固定支持するヘッドベース16とを含む。前記振動子32・33は、モーター27の中心軸を対称中心軸にして前後対称に配置される振動子本体41と、振動子本体41の上部に設けられる前記駆動体35・37とを含む。前記駆動体34〜37は、切断刃11〜14のうちメイン刃12・14の可動刃21・25を駆動する主駆動体35・37と、サブ刃11・13の可動刃19・23を駆動する副駆動体34・36とで構成する。前記主駆動体35・37の中心軸線M1・M2のそれぞれを、振動子本体41の上下方向の中心軸線R1・R2より前方へ偏寄配置する。さらに、副駆動体34・36の中心軸線S1・S2のそれぞれを、前記中心軸線R1・R2より後方へ偏寄配置する。
かみそりヘッド6の前側に位置する主駆動体37の中心軸線M2と、前側の振動子本体41の中心軸線R2との偏寄寸法E2が、かみそりヘッド6の後側に位置する主駆動体35の中心軸線M1と、後側の振動子本体41の中心軸線R1との偏寄寸法E1より大きく設定する。
少なくとも偏心カム31および振動子32・33を、ヘッドベース16に収容し、その上部にヘッド支持体10を配置する。主駆動体35・37は、ヘッド支持体10に開口した出力開口66を介してかみそりヘッドの内部に突設している。主駆動体35・37の基部側に、出力開口66を上下に横切るシール軸46を設ける。シール軸46と出力開口66との間の隙間を振動子パッキン67で封止する。
主駆動体35・37の基部のそれぞれに連結座47を設ける。主駆動体35・37に係合装着した副駆動体34・36を連結座47で受け止めて、副駆動体34・36を主駆動体35・37に対して傾動不能に連結する。
主駆動体35・37および連結座47と副駆動体34・36との間に、副駆動体34・36が主駆動体35・37の回りに回動するのを規制する第1係合構造を設ける。
かみそりヘッド6の後側に、切断刃11〜14とは別のサブ刃5を設ける。かみそりヘッド6の後側に配置される副駆動体34に、後向きに連出される駆動アーム56と、駆動アーム56に連続して設けられる連結片57とを備えたサブ刃駆動体55を設ける。連結座47と副駆動体34との間に、互いに係合して副駆動体34が主駆動体35の回りに回動するのを規制する第2係合構造を設ける。
かみそりヘッド6に、粗剃り用の第1切断刃11と、仕上げ剃り用の第2切断刃12と、粗剃り用の第3切断刃13とを記載順に配置する。第2切断刃12の上端は、第1切断刃11の上端より上方へ突出させる。第3切断刃13の上端は、第2切断刃12の上端と同じか、これより上方へ突出させる。
第3切断刃13の上端を、第1切断刃11の外周面と第2切断刃12の外周面を結ぶ接線Lより下方に位置させ、かつ、第3切断刃13の上端を、第2切断刃12の上端より上方へ突出させる。
第2切断刃12の上端と第1切断刃11の上端との突出寸法差H1を、第3切断刃13の上端と第2切断刃12の上端との突出寸法差H2より大きく設定する。
第1切断刃11の左右幅寸法をB1とし、第2切断刃12の左右幅寸法をB2とし、第3切断刃13の左右幅寸法をB3とするとき、B1<B2<=B3の関係を満足できるようにする。第1ないし第3の各切断刃11〜13の固定刃18・20・22を、それぞれ固定刃支持体89・95・111で支持する。各固定刃支持体89・95・111の左右両端に、各固定刃18・20・22の突端と同じか、これより僅かに突出する肌押圧体89a・95a・111aを設ける。
少なくとも、第1および第2の各切断刃11・12の固定刃支持体89・95に設けた肌押圧体89a・95aを、かみそりヘッド6の前面側へ向かって末広がり状に配置する。
第1切断刃11の固定刃18の上面に平坦な上壁70を設ける。上壁70は、第1切断刃11の固定刃18の周面と第2切断刃12の周面を結ぶ接線Lに沿って、第2切断刃12の固定刃20へ向かって上り傾斜する状態で形成する。
第1切断刃11の固定刃支持体89に設けた肌押圧体89aを、第1切断刃11の固定刃18の上壁70と同じ向きに傾斜させる。
第1切断刃11の固定刃18は、第2切断刃12に隣接する縦壁69と、縦壁69に連続して後向きに鋭角に折り曲げられる上壁70とで逆L字状に形成する。上壁70の後端に髭導入用の刃穴74と小刃75とを形成して第1切刃部71を形成する。さらに、縦壁69から上壁70にわたって髭導入用の刃穴76と小刃77を形成して第2切刃部72を形成する。
第1切断刃11を構成する固定刃18の第1切刃部71の後端縁を、平面視において外突湾曲線状に形成する。
第1切刃部71に形成される刃穴74と小刃75のそれぞれを、かみそりヘッド6の後ろ側へ向かって拡がる向きに放射配置する。
第1切刃部71と第2切刃部72とを、両切刃部71・72の間に配置した左右方向に連続する補強リブ73で前後に区分する。第2切刃部72の前端縁を平面視において直線状に形成し、後端縁を平面視において外突湾曲線状に形成する。
第2切断刃12の固定刃20を逆U字状に保形する。第3切断刃13の固定刃22の湾曲半径を、第2切断刃12の固定刃20の湾曲半径より大きく設定する。
第3切断刃13の固定刃22の前後中央に補強リブ106を形成し、同リブ106の前後に沿って髭導入用の刃穴104と小刃105を形成する。
第3切断刃13の固定刃18の小刃105の内周面に沿って、刃穴105に導入した髭を保持する微小波形の髭保持部109を形成する。
第3切断刃13の前側に仕上げ剃り用の第4切断刃14を配置する。第4切断刃14の上端は第3切断刃13の上端より下方に位置させてある。
第1切断刃11から第4切断刃14のそれぞれを、単独で上下フロート自在に支持する。第3切断刃13が、第2切断刃12および第4切断刃14の沈み込み動作に連動して沈み込み可能に構成する。
本発明では、複数個の切断刃11〜14を備えている電気かみそりにおいて、2個の振動子32・33の往復動力を、振動子本体41の上部に設けた主駆動体35・37、および副駆動体34・36を介して各切断刃11〜14の可動刃19・21・23・25に伝動するようにした。さらに、主駆動体35・37を、その中心軸線M1・M2が振動子本体41の上下方向の中心軸線R1・R2より前方へ偏寄する状態で配置し、副駆動体34・36を、その中心軸線S1・S2が前記中心軸線R1・R2より後方へ偏寄する状態で配置した。
上記のように構成した電気かみそりによれば、モーター27から各可動刃19・21・23・25に至る動力伝動構造を、偏心カム31と、振動子32・33と、主駆動体35・37および副駆動体34・36に限って、従来の電気かみそりに比べて動力伝動構造を簡素化し、組み立てに要する手間と製造に要するコストを削減できる。また、振動子本体41の中心軸線R1・R2を位置基準にして、主駆動体35・37の中心軸線M1・M2を前方に偏寄配置し、副駆動体34・36の中心軸線S1・S2を後方へ偏寄配置するので、かみそりヘッド6が本体ケース1に対して前後いずれかへ大きく出っ張るのを解消しながら、各切断刃11〜14をバランスよく配置し、モーター27を本体ケース1のほぼ中心に配置できる。したがって、モーターが本体ケースの前後いずれかに偏る状態で配置してある場合に比べて、電気かみそりを肌面の変化に沿って姿勢変更させるときの動作を、円滑にしかも自在に行なうことができる。
前側の主駆動体37の偏寄寸法E2を、後側の主駆動体35の偏寄寸法E1より大きく設定すると、隣接配置される振動子32・33の前後間隔を最小限化して、両振動子32・33が占める空間両を小さくできる。したがって、かみそりヘッド6の下半側の前後寸法をより小さくして、かみそりヘッド6の全体をコンパクトにまとめることができる。因みに、先の偏寄寸法E1を、前側の主駆動体37の偏寄寸法E2と同じに設定する場合には、両振動子32・33の隣接間隔が大きくなるのを避けられず、その分だけかみそりヘッド6の前後寸法が大きくなり大形化してしまう。
主駆動体35・37を、ヘッド支持体10の出力開口66を介してかみそりヘッドの内部に突設し、主駆動体35・37に設けたシール軸46と出力開口66との間の隙間を振動子パッキン67で封止すると、振動子32・33の前後間隔を最小限化できるのと同様に、シール軸46の前後方向の隣接間隔も同時に小さくできる。したがって、振動子パッキン67の外形寸法をより小さくして全体のシール面積を小さくでき、その分だけシール破壊の可能性を低下できる。
主駆動体35・37に係合装着される副駆動体34・36を、主駆動体35・37の基部に設けた連結座47で受け止めて、副駆動体34・36を主駆動体35・37に対して傾動不能に連結すると、使用時あるいは組み立ての過程で副駆動体34・36が傾動するのを規制し、あるいは副駆動体34・36を上下方向に位置決めして、常に適正な組み付け姿勢を維持できる。したがって、副駆動体34・36と伝動対象の可動刃19・23との係合状態を常に適正な状態に維持して、可動刃19・23を効率よく駆動できる。
主駆動体35・37および連結座47と副駆動体34・36との間に第1係合構造を設け、副駆動体34・36が主駆動体35・37の回りに回動するのを第1係合構造で規制すると、副駆動体34・36を前後、および左右方向に位置決めして、その組み付け姿勢を適正な状態に維持できる。したがって、副駆動体34・36と伝動対象の可動刃19・23との係合状態をさらに適正な状態に維持して、可動刃19・23をさらに効率よく駆動できる。
後側の副駆動体34にサブ刃駆動体55を設け、連結座47と副駆動体34との間に第2係合構造を設けると、副駆動体34を主駆動体35に対してさらに正確に位置決めした状態で組み付けて、サブ刃駆動体55の先端に設けた連結片57の位置精度を充分に確保できる。したがって、かみそりヘッド6の後側に設けたサブ刃5に対する動力伝動効率を向上して、モーター27の動力損を削減できる。サブ刃5による髭切断を効果的に行なえる利点もある。
請求項7の発明においては、かみそりヘッド6に粗剃り用の第1切断刃11と、仕上げ剃り用の第2切断刃12と、粗剃り用の第3切断刃13とを記載順に配置した。また、第2切断刃12の上端を、第1切断刃11の上端より上方へ突出させ、第3切断刃13の上端を、第2切断刃12の上端と同じかこれより上方へ突出させて、粗剃り用の第3切断刃13を他に先行して、あるいは第2切断刃12とともに肌面に対して接触させるようにした。加えて、第1〜第3切断刃11〜13をアーチ状に隣接させて、電気かみそりを前後いずれかへ大きく傾ける必要もなく、通常の電気かみそりの使用形態において第3切断刃13を肌面に対して接触させるようにした。
したがって、上記構成の電気かみそりによれば、第3切断刃13で長毛やくせ髭を切断したのち、第2切断刃12で仕上げ剃りして、くせ髭などの切断と仕上げ剃りとを効果的に行なえる電気かみそりが得られる。とくに、あご部に生えた髭を切断する場合には、電気かみそりを喉もとからあごの側へ滑らせる場合と、逆向きに滑らせる場合とのいずれの場合にも、第2切断刃12を間に挟む粗剃り用の第1切断刃11と第3切断刃13とで長毛やくせ髭を繰り返し効果的に切断できる。
第1切断刃11の外周面と第2切断刃12の外周面を結ぶ接線Lより下方に第3切断刃13の上端を位置させると、図15に示すように電気かみそりを横臥姿勢にして下あごに生えた髭を切断するとき、第3切断刃13が肌面に強く当るのを防いで、肌当りを柔軟にできる。さらに、先の配置条件に加えて、第3切断刃13の上端を第2切断刃12の上端より上方へ突出させることにより、電気かみそりを下あごに沿って横臥姿勢から起立姿勢に操作するときに、最後に第3切断刃13を肌面に押し付けて、第1切断刃11および第2切断刃12が剃り残したくせ髭や長毛を切断できる。
第2切断刃12の上端と第1切断刃11の上端との突出寸法差H1が、第3切断刃13の上端と第2切断刃12の上端との突出寸法差H2より大きく設定してあると、髭を剃るべき個所に応じて粗剃り用の第1切断刃11および第3切断刃13を有効に活用して、効果的に髭切断を行なえる。例えば口の周囲の髭を剃る時には、他の切断刃に先行して第3切断刃13を肌面に接触させて粗剃りを行ない、第3切断刃13が突出寸法差H1の分だけ沈み込んだ状態になって始めて、第2切断刃12を肌面に接触させて仕上げ剃りを行なえる。また、電気かみそりを横臥姿勢にしてあごの下の髭を剃る場合には、他の切断刃に先行して第3切断刃13と第2切断刃12を同時に肌面に接触させて、粗剃りと仕上げ剃りとを連続して行なえる。したがって、従来の電気かみそりに比べて、第1切断刃11と第2切断刃12、あるいは第2切断刃12と第3切断刃13、さらには第1切断刃11と第2切断刃12と第3切断刃13との三者が協同する状態で、髭切断を効果的に行なうことができる。
第1〜第3の各切断刃11・12・13の左右幅寸法の関係がB1<B2<=B3となるようにし、さらに、各固定刃支持体89・95・111の左右両端に肌押圧体89a・95a・111aを設けると、肌押圧体89a・95a・111aの前後方向の配列形状を逆ハ字状にできる。これにより電気かみそりを下あごに沿って横臥姿勢から起立姿勢に操作するときに、各肌押圧体89a・95a・111aを次々と肌面に接触させて、肌面を徐々に拡げることができ、肌面に倒れこんだくせ髭や長毛の根元を起立させながら効果的に切断できる。
また、少なくとも第1および第2の各切断刃11・12の固定刃支持体89・95に設けた肌押圧体89a・95aが、かみそりヘッド6の前面側へ向かって末広がり状に配置してあると、肌面をさらに効果的に拡げて肌面に倒れこんだくせ髭や長毛の根元を確実に起立させて切断できる。
第1切断刃11の固定刃18の上面に設けられる平坦な上壁70を接線Lに沿って、第2切断刃12の固定刃20へ向かって上り傾斜させると、図15に示すように横臥姿勢にした電気かみそりを下あごにあてがった状態において、第1切断刃11の固定刃18と肌面との接触面積を大きくできる。したがって、肌面に倒れこんだ髭と固定刃18との接触機会を増やして、髭の粗剃り切断をさらに効果的に行なうことができる。電気かみそりを下あごに沿って起立操作し、あるいは逆に電気かみそりを起立位置から横臥姿勢にするとき、上壁70の上端および第3切断刃13を肌面に食い込ませて肌面に倒れこんだ髭を掬い起こすようにして効率よく切断できる。
第1切断刃11の固定刃支持体89に設けた肌押圧体89aが、第1切断刃11の固定刃18の上壁70と同じ向きに傾斜させてあると、下あごの肌面を肌押圧体89aで拡げながら肌面に倒れこんだ髭を固定刃18で切断できる。また、肌押圧体89aが肌面に対して必要以上に強く押し付けられるのを避けながら下あごの肌面を拡げることができる。
第1切断刃11の固定刃18を、縦壁69と、縦壁69に連続して後向きに鋭角に折り曲げられる上壁70とで逆L字状に形成し、その後部および前部のそれぞれにスリット刃からなる第1・第2の切刃部71・72を形成すると、肌面に倒れこんだ髭を前後の両切刃部71・72に誘い込んで切断することができる。つまり、固定刃18を肌面に沿って往復操作するとき、往動時と復動時のいずれの場合にも髭を誘い込んで切断できる。
第1切断刃11の固定刃18の第1切刃部71の後端縁を平面視において外突湾曲線状に形成すると、下あごなどの凹んだ肌面の髭を切断する際に、第1切断刃11の第1切刃部71を肌面にフィットさせて髭切断を的確に行なえる。
第1切刃部71に形成される刃穴74と小刃75のそれぞれを、かみそりヘッド6の後ろ側へ向かって拡がる向きに放射配置すると、横臥姿勢の電気かみそりを下あごに沿って起立させながら髭切断を行なうとき、肌面に倒れこんだ髭を放射配置された刃穴74で効果的に捕捉して切断できる。また、刃穴74に誘い込んだ髭を小刃75の基端側へ案内して、捕捉した髭を確実に切断できる。
電気かみそりの各切断刃11〜14における左右幅方向の切断状況を観察すると、各切断刃11〜14の左右両端で髭が切断される状況に比べて、左右中央部で髭が切断される状況のほうが圧倒的に多い。したがって、第1切刃部71と第2切刃部72とを補強リブ73で前後に区分し、第2切刃部72の前端縁を平面視において直線状に形成し、後端縁を平面視において外突湾曲線状に形成すると、左右中央部付近における切刃の前後長さを充分に確保して、髭の切断機会を向上しながら、左右両端付近の切刃の前後長さを短くして切刃の構造強度を向上できる。
第3切断刃13の固定刃22の湾曲半径を、第2切断刃12の固定刃20の湾曲半径より大きく設定すると、第2切断刃12の固定刃20と肌面との接触面積に比べて、第3切断刃13の固定刃22と肌面との接触面積を大きくすることができる。そのため、かみそりヘッド8の全体が肌面に強く押し付けられるような場合であっても、第3切断刃13の固定刃22が肌面に食い込むのを避けて、肌当りをソフトなものとすることができ、ひりひり感を伴なうことなく髭剃りを行なえる。
第3切断刃13の固定刃22の前後中央に補強リブ106を形成し、同リブ106の前後に沿って髭導入用の刃穴104と小刃105を形成すると、肌面に密着する髭を補強リブ106で掬い起こして起毛し切断できる。また、かみそりヘッド8の全体が肌面に強く押し付けられる場合に、肌面が固定刃22の内面に入り込むのを補強リブ106で確実に防いで、肌面が髭と共に削がれるのを防止できる。
第3切断刃13の固定刃18の小刃105の内周面に沿って微小波形の髭保持部109を形成すると、刃穴104に導入した髭を髭保持部109で受け止めて、髭が小刃105に沿って滑り動くのをよく防止できる。したがって、刃穴104に入り込んだ髭をより効果的に切断して、髭剃りに要する時間を短縮できる。
第1切断刃11〜第3切断刃13に加えて、第3切断刃13の前側に仕上げ剃り用の第4切断刃14を配置し、第4切断刃14の上端を第3切断刃13の上端より下方に位置させると、第3切断刃13が肌面に押し付けられて沈み込んだ状態でのみ、第2切断刃12と第4切断刃14を肌面に接触させることができる。したがって、粗剃り用の第1・第3の各切断刃11・13で切断された長毛やくせ髭を、第2・第4の切断刃12・14で繰り返し仕上げ剃りすることができ、とくにあご部におけるくせ髭を繰り返し的確に切断するのに好適な電気かみそりが得られる。
第1切断刃11から第4切断刃14のそれぞれを、単独で上下フロート自在に支持したうえで、第2切断刃12および第4切断刃14の沈み込み動作に連動して第3切断刃13を沈み込み可能に構成すると、第2切断刃12および第4切断刃14で仕上げ剃りを行なう場合に、第3切断刃13が肌面に強く押し付けられるのを防止できる。換言すると、第3切断刃13が肌面に対して過剰に押し付けられて、その固定刃22の刃面が変形しあるいは刃面の一部が折損するのをよく防止できる。
(実施例) 図1ないし図15は本発明に係る電気かみそりの実施例を示す。図2において、電気かみそりは、グリップを兼ねる本体ケース1と、本体ケース1に組み付けられる作動ユニットとを有する。本体ケース1の前面にはスイッチパネル2が設けてあり、その上下にモーター起動用のスイッチノブ3と、電気かみそりの運転状態を表示する表示部4が設けてある。本体ケース1の後面には、きわ剃り刃ユニット5(サブ刃)が設けてある。
作動ユニットは、その下半側を占める電装品ユニットと、電装品ユニットの上部に設けられるかみそりヘッド6とで構成してある。電装品ユニットは、内ケースに回路基板と2次電池7などを組み込んで構成してあり、回路基板には、先のスイッチノブ3で切り換え操作されるスイッチや、制御回路を構成する電子部品、および表示部4の光源となるLEDなどが実装してある。
図4に示すようにかみそりヘッド6は、ヘッド支持体10と、4個の切断刃11〜14と、ヘッド支持体10に対して着脱される固定刃ホルダー15などで構成してある。ヘッド支持体10は、振動子ケースを兼ねるヘッドベース16で左右傾動可能に支持されており、ヘッドベース16は、その下面に固定したモーター27およびモーターホルダー28と共に、先の内ケースで上下フロート自在に支持してある。モーター27および回路基板を含む電装品ユニットは、かみそりヘッド6と内ケースとの間に設けたシール体29で密封してある(図3参照)。なお、この実施例では、かみそりヘッド6を左右傾動可能に支持する関係で、ヘッド支持体10をかみそりヘッド6に含んだが、かみそりヘッド6を前後、左右、上下にフロート支持する必要がない場合、つまりヘッド支持体10が本体ケース1と一体に形成してあるような場合には、ヘッド支持体10を除く先の部材でかみそりヘッド6を構成するとよい。
各切断刃11〜14は、粗剃り用の第1切断刃(サブ刃)11と、仕上げ剃り用の第2切断刃(メイン刃)12と、粗剃り用の第3切断刃(サブ刃)13と、仕上げ剃り用の第4切断刃(メイン刃)14とからなり、かみそりヘッド6の後側から前側へ向かって記載順に配置してある。粗剃り用の第1切断刃11と第3切断刃13は、主に長毛やくせ髭を切断するために設けられており、いずれも固定刃18・22および可動刃19・23のそれぞれがスリット刃で形成してある。仕上げ剃り用の第2切断刃12と第4切断刃14は、短毛を仕上げ切断するために設けられており、いずれも固定刃20・24が網刃で形成され、可動刃21・25がスリット刃で形成してある。
かみそりヘッド6に設けた各切断刃11〜14の可動刃19・21・23・25を駆動するために、モーター27と各可動刃19・21・23・25との間に、モーター動力を往復動力に変換して各可動刃19・21・23・25に伝動する駆動構造を設けている。図1および図2に示すように駆動構造は、モーター27の出力軸に固定される偏心カム31と、偏心カム31で互いに逆向きに駆動される2個の振動子32・33と、各振動子32・33の往復動力を各可動刃19・21・23・25に伝動する4個の駆動体34・35・36・37などで構成する。これらの駆動体34・35・36・37は、第2切断刃12の可動刃21と第4切断刃14の可動刃25とを駆動する主駆動体35・37と、第1切断刃11の可動刃19と第3切断刃14の可動刃23とを駆動する副駆動体34・36とからなり、各駆動体34・35・36・37は左右方向に往復駆動される。
図3に示すように振動子32・33は、左右一対の締結座39と、両締結座39の間に振動吸収腕40を介して支持されるコ字状の振動子本体41と、振動子本体41の上部に突設される主駆動体35・37と、振動子本体41から張出し形成される受動爪42を一体に備えたプラスチック成形品からなる。図5に示すように前後の振動子32・33は、偏心カム31の偏心ピン44が受動爪42の受動溝43と係合する状態で隣接配置してあり、この状態の前後の振動子本体41・41は、モーター27の中心軸を対称中心軸にして前後で対称に配置してある。
主駆動体35・37の基部寄りには、断面が長円状のシール軸46が形成してあり、その上部に副駆動体34・36を装着するための連結座47と連結軸48とが形成してある。各シール軸46の軸中心は、後述する前後の振動子本体41の中心軸線R1・R2上にある。主駆動体35・37には、それぞれ可動刃21・25を連結するための連結凹部49が形成してあり、その内部に可動刃21・25を押し上げ付勢する内刃ばね50が収容してある(図3参照)。
前後の副駆動体34・36は、それぞれ連結軸48と係合する抱持爪53と、可動刃19・23に係合する駆動片54とを一体に備えている。後側の副駆動体34には、きわ剃り刃ユニット5に往復動力を伝動する別のきわ剃り刃駆動体(サブ刃駆動体)55が一体に設けてある(図4参照)。きわ剃り刃駆動体55は、後向きに連出される駆動アーム56と、駆動アーム56に連続して下向きに連出される連結片57とを一体に備えている。
主駆動体35・37に係合装着した副駆動体34・36が、主駆動体35・37の縦軸周りに回動するのを規制するために、図5に示すように連結軸48と抱持爪53の係合面の後部に、互いに凹凸係合する突起58と凹部59とからなる第1係合構造を設けている。同様の理由から、後側の副駆動体34の駆動アーム56と連結座47の後面との間に、互いに係合する突起60と凹部61とからなる第2係合構造を設けている(図1参照)。上記のように後側の副駆動体34の抱持爪53の下面を、連結座47で支持することにより、副駆動体34が主駆動体35に対して傾動するのを規制できるようにし、以て、連結片57と後述する受動ピン155との係合を常に適正にできるようにしている。
ヘッド支持体10は、ヘッドベース16の上部周面を囲む枠構造のフレーム本体64と、フレーム本体64の上面に組み付けられるフレームカバー65とで構成してある。フレームカバー65には、先の主駆動体35・37を突出させるための出力開口66が開口してあり(図3参照)、この出力開口66とシール軸46との間を振動子パッキン67で塞いで、毛屑などがヘッドベース16の内部に入り込むのを防止している。フレームカバー65の上面と固定刃ホルダー15とで囲まれる空間が毛屑収容空間になっており、この空間に主駆動体35・37が突出している。
以上のように構成した駆動構造においては、図1に示すように、主駆動体35・37を、その中心軸線M1・M2のそれぞれが、前後の振動子本体41の上下方向の中心軸線R1・R2より前方へ偏寄する状態で配置してある。また、かみそりヘッド6の前側に位置する主駆動体37の中心軸線M2と、前側の振動子本体41の中心軸線R2との偏寄寸法E2が、後側に位置する主駆動体35の中心軸線M1と、後側の振動子本体41の中心軸線R1との偏寄寸法E1より大きく設定してある。このような配置形態を採用することにより、モーター27を本体ケース1の中心軸線上に配置して、前後、左右方向の重量バランスを均等なものとしている。なお、各副駆動体34・36は、その中心軸線S1・S2のそれぞれが中心軸線R1・R2よりより後方へ偏寄する状態で配置してある。
図6に示すように、第1切断刃11の固定刃18は、垂直の縦壁69と、縦壁69に連続して後向きに鋭角に折り曲げられる上壁70とで逆L字状に形成してあり、上壁70の全体が第2切断刃12へ向かって上り傾斜させてある。固定刃18には、第1切刃部71と第2切刃部72とが形成され、両切刃部71・72は、上壁70の前後中途部において左右方向に連続する補強リブ73で前後に区分されている。
第1切刃部71は、上壁70の後端側にスリット状の刃穴74とリブ状の小刃75を交互に形成して構成してある。刃穴74を区分する小刃75で肌面が傷付けられるのを防ぐために、各小刃75の先端は下向きに折り曲げてある。この折り曲げ部分、すなわち第1切刃部71の後端縁と、先に述べた補強リブ73と、第2切刃部72の後縁とは、それぞれ平面視において外突湾曲線状に形成してある。なお、第2切刃部72の前端縁は、平面視において直線状に形成してある(図7参照)。
上記のように、第2切刃部72の前端縁を直線状に形成し、その後端縁を外突湾曲状に形成すると、左右中央部付近における切刃の前後長さを充分に確保して、髭の切断機会を向上しながら、左右両端付近の切刃の前後長さを短くして切刃の構造強度を向上できる。これは、各切断刃11〜14においては、左右両端で髭が切断される状況に比べて、左右中央部で髭が切断される状況のほうが圧倒的に多く、しかも左右中央部付近における小刃77の前後長さが長い分だけ、髭の切断機会を増加できるからである。
第2切刃部72は、縦壁69から上壁70の補強リブ73にわたって髭導入用のスリット状の刃穴76とリブ状の小刃77を交互に形成して構成する。小刃77は、逆L字状に折り曲げられており、縦壁69側の刃面と上壁70側の刃面の両者で髭切断を行なえる。第2切刃部72の刃穴43の隣接ピッチと、先の第1切刃部71の刃穴74の隣接ピッチとは同じであるが、両刃穴74・76と小刃75・77が互い違いになるように配置してある。また、各刃穴74・76と各小刃75・77は、第1切刃部71の後端縁の湾曲中心を通る半径線に沿って放射状に形成してある。つまり、各刃穴74・76と各小刃75・77は、かみそりヘッド6の後ろ側へ向かって拡がる向きに放射配置してある。
第1切断刃11の可動刃19は、垂直の内縦壁79と、内縦壁79に連続して後向きに鋭角に折り曲げられる内上壁80とで逆L字状に形成する。内上壁80の後部には、固定刃18の第1切刃部71に対応する第1切刃部81が形成してあり、内縦壁79と内上壁80との隣接部分には、固定刃18の第2切刃部72に対応する第2切刃部82が形成してある。両切刃部81・82は、内上壁80の前後中途部において左右方向に連続する補強リブ83で前後に区分されている。第1・第2の両切刃部81・82は、固定刃18の第1切刃部71および第2切刃部72と同様に、刃穴84・86と小刃85・87が互い違いになるように、しかも後ろ側へ向かって拡がる向きに放射配置した状態で形成してある。また、第1切刃部81の後端縁と先に述べた補強リブ83とが、平面視において外突湾曲線状に形成してある点も同じである。
第1切断刃11の固定刃18は、プラスチック成形された固定刃枠(固定刃支持体)89に溶着固定してあり、同様に可動刃19はプラスチック成形されたT字状の可動刃枠(可動刃支持体)90に溶着固定してある。可動刃枠90には、可動刃19に加えて、可動刃19を固定刃18に押し付け付勢する板ばね製の可動刃ばね91が固定してある。組み立ての過程では、可動刃19と可動刃ばね91が組み付けられた可動刃枠90を、固定刃枠89の所定位置に組み付けたのち、固定刃18を固定刃枠89に溶着固定して、第1切断刃11の全体がカセット化してある。組み付け状態における可動刃19は、可動刃ばね91で押し上げ付勢されて固定刃18の内面に密着している。
カセット構造の第1切断刃11は、固定刃ホルダー15に対して上下フロート自在に組み付けられて、両者11・15の間に配置した左右一対の第1フロートばね92で押し上げ付勢してある(図6参照)。第1フロートばね92は圧縮コイルバネで構成してある。可動刃枠90の下端には、駆動片54と係合するコ字状の受動溝93が形成してある。固定刃ホルダー15をヘッド支持体10に装着した状態では、受動溝93が駆動片54の上端に連結されるので、モーター27の起動と同時に可動刃19を往復駆動できる。
図8に示すように、第2切断刃12の固定刃20は電鋳法で形成した網刃からなり、固定刃フレーム(固定刃支持体)95で逆U字状に保形されてカセット化してある。固定刃フレーム95は、固定刃ホルダー15に対して上下フロート自在に組み付けてある。スリット刃構造の可動刃21は、逆U字状に折り曲げて形成してあり、可動刃フレーム(可動刃支持体)96に固定されてカセット化してある。可動刃フレーム96は、中央下部に設けた連結片98を後側の主駆動体35に圧嵌係合することにより、振動子32と連結されている(図3参照)。この連結状態において、可動刃フレーム96は、主駆動体35に対して左右傾動でき、さらに上下フロート可能に支持されて、両者35・96間に配置した内刃ばね50で押し上げ付勢してある。したがって、固定刃ホルダー15をヘッド支持体10に装着した状態では、可動刃21が固定刃20の内面に密着する。
図9において、第3切断刃13の固定刃22は、上突状に湾曲する上壁101と、上壁101の前後縁に連続する前壁102および後壁103を一体に折り曲げて逆樋体状に形成してあり、上壁101の前後縁のそれぞれにスリット状の刃穴104とリブ状の小刃105とが交互に形成してある。上壁101の前後中央には左右方向に連続する補強リブ106が形成してある。補強リブ106で前後に区分されて、同リブ75の前後縁と直交する一群の刃穴104と小刃105とは、互い違いになるように形成してある。上壁101の湾曲半径は、第2切断刃12の固定刃20の湾曲半径より充分に大きく設定してある。
図10に示すように、小刃105の内周面には微小波形の髭保持部109が形成してあり、刃穴104に導入した髭を髭保持部109で受け止めることにより、髭が小刃105に沿ってずれ動くのを防止できるようにしている。固定刃22はその左右両端が一対の刃受ピース(固定刃支持体)111で支持されて、固定刃22の下面に装着される補強枠112と共に刃受ピース111に固定してある。補強枠112は、左右の刃受ピース111を繋ぐ左右横長の枠体からなり、その下面左右には可動刃23を固定刃22に密着させるばね腕113が一体に形成してある。
第3切断刃13の可動刃23は逆U字状に折り曲げて形成してあり、プラスチック成形されたT字状の可動刃枠(可動刃支持体)115に溶着固定してある。組み立ての過程では、左右の刃受ピース111に固定刃22を仮組みして、固定刃22の内部に可動刃23と可動刃枠115を組み付ける。次に、補強枠112を固定刃22の下面前後に外嵌装着し、固定刃22と補強枠112を刃受ピース111に対して溶着固定することにより、第3切断刃13の全体がカセット化してある。この組み付け状態において、可動刃23はばね腕113で押し上げ付勢されて、固定刃22の内面に密着している。
カセット構造の第3切断刃13は、固定刃ホルダー15に対して上下フロート自在に組み付けられて、両者13・15の間に配置した左右一対の第3フロートばね116で押し上げ付勢してある(図9参照)。第3フロートばね116は圧縮コイルバネからなる。可動刃枠115の下端には、副駆動体36の駆動片54と係合するコ字状の受動溝117が形成してある。固定刃ホルダー15をヘッド支持体10に装着した状態では、受動溝117が駆動ピース33の上端に係合連結されるので、モーター27の起動と同時に可動刃23を往復駆動できる。
第4切断刃14は、第2切断刃12と同じ構造であるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
固定刃ホルダー15は、先の第1〜第4の切断刃11〜14が組み付けられる上ケース120と、上ケース120を支持する下ケース121とで構成してある。上ケース120は下ケース121に対して着脱できる。下ケース121はヘッド支持体10に対して着脱でき、ヘッド支持体10に組み付けた左右一対のロック具122で装着状態にロック保持される。図11に示すようにロック具122には、下ケース121の内面の凹部123と係合する前後一対のロック爪124と、ロック解除ボタン125とが一体に形成してあり、全体がロックばね126でロック付勢してある。左右のロック解除ボタン125をロックばね126の付勢力に抗して押し込み操作すると、ロック爪124と凹部123との係合が解除されるので、固定刃ホルダー15をヘッド支持体10から取り外すことができる。この状態では図4に示すように、第2切断刃12の可動刃21と第4切断刃14の可動刃25のみがヘッド支持体10の側に残る。
くせ髭の切断と仕上げ剃りとを効果的に行なうために、第1〜第4の各切断刃11〜14の配置関係と突出関係を次のように設定している。既に説明したように、固定刃ホルダー15をヘッド支持体10に装着した状態において、第1切断刃11と、第2切断刃12と、第3切断刃13と、第4切断刃14とを、かみそりヘッド6の後ろ側から前側へ向かって記載順に配置する。また、図12に示すように第2切断刃12の上端を、第1切断刃11の上端より上方へ突出させ、第3切断刃13の上端を第2切断刃12の上端より上方へ突出させ、さらに、第2切断刃12の上端を第4切断刃14の上端と同じ高さにする。
各切断刃11〜14の突出関係を上記のように設定することにより、第1切断刃11の上壁70の前部周面(外周面)と、逆U字状に湾曲する第2切断刃12の湾曲面(外周面)を結ぶ接線Lを想定するとき、第3切断刃13の上端は先の接線Lより下方に位置しており、しかも第3切断刃13の上端は第2切断刃12の上端より上方へ突出している。上壁70は、先の接線Lに沿って上り傾斜している。第3切断刃13を先の接線Lより下方に位置させることにより、図15に示すようにのど側からあごの下面へ向かって髭を剃るとき、第3切断刃13が肌面に強く当るのを避けて、肌当りをソフトなものとすることができる。なお、上壁70は接線Lと同じ傾斜角度で傾斜することができ、その場合の接線Lは上壁70と同じ平面を通る接線とすることが好ましい。
第2切断刃12の上端と第1切断刃11の上端との突出寸法差H1は、第3切断刃13の上端と第2切断刃12の上端との突出寸法差H2より大きく設定してある。このように、H1>H2とすると、口の周囲などの髭を剃る時には、他の切断刃に先行して第3切断刃13を肌面に接触させて粗剃りを行ない、第3切断刃13が突出寸法差H2の分だけ沈み込んだ状態になって始めて、第2切断刃12を肌面に接触させて仕上げ剃りを行なえることになる。また、電気かみそりを横臥姿勢にしてあごの下の髭を剃る場合には、他の切断刃に先行して第3切断刃13と第2切断刃12を同時に肌面に接触させて、粗剃りと仕上げ剃りとを連続して行なえる。つまり、従来の電気かみそりに比べて、髭を剃るべき個所に応じて粗剃り用の第1切断刃11および第3切断刃13を有効に活用しながら、さらに効果的に髭切断を行なえることになる。
図13に示すように、各切断刃11〜14を平面からみるとき、第1切断刃11の左右幅寸法をB1とし、第2切断刃12の左右幅寸法をB2とし、第3切断刃13の左右幅寸法をB3とし、第4切断刃14の左右幅寸法をB4するとき、B1<B2<=B3<B4の関係を満足するように設定してある。
第1ないし第4の各切断刃11〜14の固定刃18・20・22・24を支持する固定刃支持体、具体的には固定刃枠89、固定刃フレーム95、刃受ピース111、固定刃フレーム95の左右両端の上端には、図12および図13に示すように、それぞれ肌押圧体89a・95a・111a・95aが設けてある。これらの肌押圧体89a・95a・111a・95aは、各固定刃18・20・22・24の上突端より僅かに突出させてあり、さらに各肌押圧体89a・95a・111a・95aは、かみそりヘッド6の前面側へ向かって末広がり状に配置してある。
詳しくは、各肌押圧体89a・95a・111a・95aは全体としてハ字状に配列してある。また、第1切断刃11と第2切断刃12における左右の肌押圧体89a・95aは、それぞれかみそりヘッド6の前面側へ向かって末広がり状(ハ字状)に配置され、第3切断刃13と第4切断刃14における左右の肌押圧体111a・95aは、それぞれ左右平行に配置してある。このように、各肌押圧体89a・95a・111a・95aを全体としてハ字状に配列し、さらに第1切断刃11と第2切断刃12の左右の肌押圧体89a・95aを、それぞれ末広がり状に配置することにより、図15に示す状態で髭剃りを行なう場合に、肌面を左右方向へ徐々に押し拡げながら髭を切断して、深剃りすることができる。
第1切断刃11から第4切断刃14は、それぞれ単独で上下フロート自在に支持されている。詳しくは、第1切断刃11と第3切断刃13は、固定刃ホルダー15でそれぞれ上下フロート自在に支持されており、第2切断刃12と第4切断刃14は、振動子32・33の主駆動体35・37でそれぞれ上下フロート自在に支持されている。加えて、第3切断刃13は、第2切断刃12および第4切断刃14のフロート動作に連動して上下フロートできるように構成してある。
詳しくは、図14に示すように第3切断刃13を構成する刃受ピース111の前後面の左右両側に連動片129を突設し、刃受ピース111の前面あるいは後面と対向する第2・第4切断刃12・14の固定刃フレーム95に、連動片129の上面に接当する鉤状の連動爪130を設けている。第2・第4切断刃12・14が固定刃ホルダー15の上方に突出した定常状態において、連動爪130は連動片129に接当しており、したがって、第2・第4切断刃12・14のいずれか一方が左右傾動し、あるいは全体が下方へ僅かでも沈み込むと、第3切断刃13は連動して左右傾動し、あるいは下方へ沈み込むことになる。但し、第3切断刃13が単独で沈み込んだとしても、第2切断刃12および第4切断刃14が沈み込み変位することはない。
図16において、きわ剃り刃ユニット5は、きわ剃りケース151の内部にバリカン刃構造の固定刃152および可動刃153と、受動アーム154とを組込んで構成してある。きわ剃り刃ユニット5を実線で示す待機位置から、想像線で示す作動位置までスライド操作すると、受動アーム154の下端に設けた受動ピン155が連結片57の係合溝に係合して副駆動体34の往復動力を受け継ぎ、受動アーム154を介して可動刃153に伝動できるようにしてある。
上記構成の電気かみそりによれば、図12に示すように第1〜第4の各切断刃11〜14を、かみそりヘッド6の上部の固定刃ホルダー15の内部に収容した状態で、それぞれの上端が概ねアーチ状に連なる状態で隣接配置するので、手首を中心にして電気かみそりを上下に振りながら髭を剃る際に、各切断刃11〜14の肌面への押圧力をほぼ均一にして肌への負担を軽減できる。
図17ないし図19は第3切断刃13の別実施例を示す。そこでは、第3切断刃13の可動刃23と可動刃枠(可動刃支持体)115との取付構造が先の実施例と異なる。詳しくは図18に示すように、スリット刃構造の可動刃23の下部中央に装着部132を設け、その下縁中央にガイド切欠133を形成し、ガイド切欠133の左右のそれぞれに係合穴134を形成した。装着部132は、前後壁のそれぞれを階段状に折り曲げて他の部分より幅狭に形成してある。係合穴134は、下端に入口部136を有するC字溝状に形成してあり、溝内面の左右には一対の係止突起135が形成してある。各係止突起135より下側の入口部136は、連結ピン141の導入を容易化するために、下拡がりテーパー状に形成してある。なお、可動刃23はステンレス板材にエッチング処理を施して形成してある。
可動刃枠115は、左右横長の刃支持部138と、刃支持部138の下部中央の取付部139とを一体に備えたプラスチック成形品からなる。取付部139の前後上部には、先の装着部132を組むための座壁140が凹み形成してあり、その左右に係合穴134に対応する連結ピン141が突設してある。座壁140の下縁中央には、先のガイド切欠133と係合するガイドリブ142が形成してあり、さらに座壁140の左右両側には装着部132の両側面を案内するガイド面143が形成してある。取付部139の下部中央には、副駆動体36の駆動片53と係合する受動溝144が形成してある。
連結ピン141の直径寸法をa、係合穴134の入口幅をb、係止突起135の対向間隔をc、係合穴134の穴幅をdとするとき、a<b、a>c、a=d、b>c、d>c、として、可動刃23を可動刃枠115に対して係合装着するだけで、分離不能に一体化できるようにしている。また、装着部132の内面の前後幅W1を、座壁140の前後幅W2より僅かに小さく設定して、可動刃23を可動刃枠115に装着した状態において、装着部132を座壁140に密着できるようにしている。
可動刃23を可動刃枠115と一体化した状態においては、係合穴134と連結ピン141とが互いに係合して、係合穴134の上部内周面と係止突起135とで固定状態を保持している。また、ガイド切欠133とガイドリブ142とが係合し、さらに左右のガイド面143で装着部132の両側面を受け止めて、可動刃23が可動刃枠115に対してぐらつくのを確実に防止している。以上のように構成した第3切断刃13の内刃構造によれば、可動刃23を可動刃枠115に対してより少ない手間で、しかも正確に組み付けることができる。組立の過程では、可動刃23を可動刃枠115に対して下向きに押し込み装着して一体化され、得られた可動刃ユニットはユニット部品として取り扱うことができる。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。図20の実施例においても同様に取り扱う。
なお、連結ピン141の直径が係合穴134の穴幅と同じか、これより大きい場合(d≦a)には、既に説明したように可動刃23を可動刃枠115に圧嵌係合するだけでよいが、連結ピン141の直径が係合穴134の穴幅より僅かに小さい場合(a<d)には、連結ピン141を熱溶融して押し拡げ、押し拡げられた部分を係合穴134の内面に密着させて、がたつきのない状態で可動刃23を可動刃枠115に固定する。入口部136の入口幅bは、連結ピン141の直径と同じであってもよい。上記の可動刃固定構造は、第3切断刃13以外の各切断刃11・12・14の可動刃19・21・25を、それぞれの内刃支持体90・96・96に装着するための構造として適用することができる。
以上のように構成した可動刃固定構造は、
金属薄板からなる可動刃23と、可動刃23を固定支持する可動刃支持体115とからなり、
可動刃23の前後には、係合穴134を備えた装着部132が設けられており、
可動刃支持体115の前後には、前記係合穴134と係合する連結ピン141を備えた座壁140が形成されており、
係合穴134には、連結ピン141と係合する係止突起135が形成されており、
係合穴134と連結ピン141とを係合連結して、可動刃23が係止突起135で可動刃支持体115に対して分離不能に固定してあることを特徴とする。
上記の可動刃固定構造において、可動刃23の装着部132の左右2個所に係合穴134を設ける。また、可動刃支持体115の座壁140の左右2個所に連結ピン141を設ける。係合穴134に一対の係止突起135を対向形成することができる。
上記の可動刃固定構造において、係合穴134の係止突起135より下側の入口部136を下拡がりテーパー状に形成することができる。
装着部132と座壁140の接合部分に、互いに係合して可動刃23のぐらつきを規制するガイド切欠133とガイドリブ142とを設け、さらに装着部132の両側面を受け止めるガイド面143を設ける。
上記の可動刃固定構造において、装着部132の内面の前後幅W1を、座壁140の前後幅W2より僅かに小さく設定することができる。
上記の可動刃固定構造において、連結ピン141の直径寸法をa、係合穴134の入口幅をb、係止突起135の対向間隔をc、係合穴134の穴幅をdとするとき、a<b、a>c、a=d、b>c、d>cを満足するように、関係寸法を設定することができる。
上記の実施例では、仕上げ剃り用の2個のメイン刃12・14と、粗剃り用の2個のサブ刃11・13とを交互に配置した場合について説明したが、メイン刃およびサブ刃の配置個数、および配置パターンについては一切限定しない。また、サブ刃が仕上げ剃り用の切断刃である場合を含むこととする。
上記の実施例では、第1切断刃11と第3切断刃13をスリット刃で構成したが、その必要はなくバリカン刃で構成してもよい。第3切断刃13の固定刃22は、左右に連続する前後壁102・103を備えている必要はなく、例えば、固定刃22の左右方向一定間隔おきに上壁101に連続して下方に伸びる脚片を備えた固定刃構造であってもよい。上記の実施例では、第3切断刃13の上端を第2切断刃12の上端より突出させたが、その必要はなく、両者の上端位置は同じにすることができる。第1切断刃11の固定刃18の上壁70は平坦壁である必要はなく、上突湾曲面状に形成することができる。本発明は、かみそりヘッド6が浮動支持されていない形態の電気かみそりにも等しく適用できる。その場合には、図20に示すようにヘッド支持体10とヘッドベース16とは、本体ケース1と一体に形成することができ、固定刃ホルダー15は本体ケース1の上端に設けたヘッド支持体10に対して着脱するとよい。この実施例においても、先の実施例と同様に2個の振動子32・33で対を為す駆動体34・35と、対を為す駆動体36・37を互いに逆向きに駆動する。