JP2010145288A - 空孔付き光ファイバの空孔径の測定方法および装置、ならびに空孔付き光ファイバの製造方法および装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】空孔付き光ファイバ母材を加熱し溶融させて線引きして得られた空孔付き光ファイバ22を、対向配置された一対の電極板14A、14B間に通過させる際に静電容量を測定し、この測定値に基づいて、予め実測により得られた静電容量と空孔径との相関関係を用いて空孔付き光ファイバ22の空孔径を算出する。
【選択図】図1
Description
図7および図8は、空孔付き光ファイバの例を示す断面図である。図7に示す空孔付き光ファイバ31は、コア33の周囲に複数の空孔34を有する。図8に示す空孔付き光ファイバ32は、複数の空孔34が多層に配列されている。この種の空孔付き光ファイバにおいて空孔の数は通常4以上である。
空孔径は光学特性上、重要なパラメータであり、例えば空孔径の大きさによって曲げ損失が大きく変化することが知られている。このため、線引き工程において空孔径を適正範囲に維持することは重要である。
しかしながら、線引き工程においては、空孔内圧力、炉内温度、線引き速度などのさまざまな要因によって空孔径が変動する可能性があるため、製造工程においてインラインで空孔径を把握することが要望されている。
製造工程においてインラインで空孔径を測定する技術としては、特許文献1に記載された方法がある。この方法は、光ファイバの側方から光を照射し、前方散乱光の干渉パターンに基づいて測定を行う。
特許文献2には、光ファイバに曲げを加えることによる後方散乱光の変化に基づいて空孔径を測定する技術が開示されている。
特許文献2に記載の方法では、光ファイバに曲げを加える必要があるが、この曲げにより光ファイバが損傷を受けるのを防ぐ必要がある。また、曲げを加えることが必要となるため生産性も低下する。さらに、曲げ損失の空孔径依存度が大きい空孔付き光ファイバにしか適用できないという問題もある。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、光ファイバに損傷を与えず、かつ生産性を高くでき、しかも適用範囲が広く、光ファイバの空孔径を精度よく測定できる空孔付き光ファイバの空孔径の測定方法および装置、ならびにこれらを用いた空孔付き光ファイバの製造方法および装置を提供することを目的とする。
本発明の請求項2にかかる発明は、請求項1において、前記空孔付き光ファイバの外径を測定し、測定値に基づいて前記静電容量の測定値に補正を加える、空孔付き光ファイバの空孔径の測定方法である。
本発明の請求項3にかかる発明は、請求項1または2において、前記静電容量の測定は、被覆が形成されていない空孔付き光ファイバについて行う、空孔付き光ファイバの空孔径の測定方法である。
本発明の請求項4にかかる発明は、 空孔付き光ファイバ母材を加熱し溶融させて線引きして空孔付き光ファイバを製造するにあたって前記空孔径を測定する装置であって、前記線引きにより得られた空孔付き光ファイバについて静電容量を測定する静電容量測定部と、この測定値に基づいて、予め実測により得られた静電容量と空孔径との相関関係を用いて前記空孔付き光ファイバの空孔径を演算する演算部とを有する空孔付き光ファイバの空孔径の測定装置である。
本発明の請求項5にかかる発明は、空孔付き光ファイバ母材を加熱し溶融させて線引きして空孔付き光ファイバを製造する方法であって、前記線引きにより得られた空孔付き光ファイバを、対向配置された一対の電極板間に通過させる際に静電容量を測定し、この測定値に基づいて、予め実測により得られた静電容量と空孔径との相関関係を用いて算出された前記空孔付き光ファイバの空孔径に応じて、前記空孔付き光ファイバ母材の空孔に供給されるガス流量を制御することで前記空孔内の圧力を調整する、空孔付き光ファイバの製造方法。
本発明の請求項6にかかる発明は、空孔付き光ファイバ母材を加熱し溶融させて線引きして空孔付き光ファイバを製造する装置であって、前記線引きにより得られた空孔付き光ファイバについて空孔径を測定する空孔径測定部と、測定値に基づいて前記光ファイバ母材の空孔内の圧力を調整する圧力制御部とを備え、前記空孔径測定部は、前記線引きにより得られた空孔付き光ファイバについて静電容量を測定する静電容量測定部と、この測定値に基づいて、予め実測により得られた静電容量と空孔径との相関関係を用いて前記空孔付き光ファイバの空孔径を演算する演算部とを有し、前記圧力制御部は、前記演算部で得られた空孔径の測定値に基づいて、前記光ファイバ母材の空孔に供給するガス流量を制御することによって、前記空孔内の圧力を調整可能である、空孔付き光ファイバの製造装置である。
また、光ファイバに曲げ等を加える必要がないため、光ファイバに損傷を与えるおそれはなく、生産性に悪影響が及ぶこともない。しかも曲げ損失の空孔径依存度が小さい空孔付き光ファイバにも適用できるため、適用範囲は広い。
この製造装置1は、空孔21aを有する空孔付きプリフォーム21(空孔付き光ファイバ母材)を加熱し溶融させる溶融炉2と、プリフォーム21の線引きで得られた光ファイバ裸線22の外径を測定する外径測定部3と、冷却筒4と、光ファイバ22の空孔径を測定する空孔径測定部5と、測定値に基づいてプリフォーム21の空孔21aに供給するガス流量を制御する圧力制御部6と、第1被覆コーティング部7と、第1被覆硬化部8と、第2被覆コーティング部9と、第2被覆硬化部10と、巻き取り部11とを備えている。
空孔径測定部5は、空孔付きの光ファイバ裸線22の静電容量が空孔径に応じた値となることに着目して作製されたもので、その測定原理は次の通りである。
コンデンサの静電容量は、電極間に存在する誘電体の体積の影響を受ける。光ファイバの空孔は誘電体として機能するため、2枚の電極板の間に空孔付き光ファイバを配置すれば、静電容量は空孔の体積に応じた値となる。空孔の体積は空孔径に応じた値となるため、予め空孔径と静電容量との関係がわかっていれば、静電容量に基づいて空孔径を算出できる。
静電容量測定部12は、互いに離間して対向配置された一対の平板状の電極板14A、14Bと、その間に設けられた円筒形の測定部15とを備えている。
電極板14A、14Bは、金属などの導電性材料で構成することができる。測定部15は、光ファイバ裸線22が挿通可能に構成され、好ましくは非導電性の材料からなる。測定部15の内径は、小さすぎれば光ファイバ裸線22が振動を起こした場合に接触しやすくなり、大きすぎれば静電容量測定の感度が低下するため、例えば3〜10mmとするのが好ましい。
電極板14A、14Bは、光ファイバ裸線22の長さ方向に長いほど静電容量測定の感度を高めることができるため、電極板14A、14Bの長さは50mm以上とするのが好ましい。
図3に示すように、空孔付きプリフォーム21を溶融炉2で加熱し溶融させ、線引きして空孔付きの光ファイバ裸線22を得る。
プリフォーム21は、必要に応じてガス供給経路6aを通して不活性ガス等のガスが供給され、空孔21a内の圧力が調整された状態で線引きされる。
光ファイバ裸線22は、外径測定部3での外径測定の後、冷却筒4にて冷却される。
この静電容量の測定値に基づいて、演算部13において、予め実測された光ファイバ裸線22の空孔径と静電容量との相関関係を用いて、光ファイバ裸線22の空孔径を算出する。
また、光ファイバに曲げ等を加える必要がないため、光ファイバに損傷を与えるおそれはなく、生産性に悪影響が及ぶこともない。しかも曲げ損失の空孔径依存度が小さい空孔付き光ファイバにも適用できるため、適用範囲は広い。
静電容量の測定は、光ファイバ裸線22に被覆を形成した後でも可能であるが、被覆を形成していない状態、すなわち光ファイバ裸線22の状態で測定を行えば、被覆部分の影響を受けないため、より正確な測定値が得られる。
例えば、外径測定部3により得られた光ファイバ裸線22の外径をDとし、前記静電容量の測定値に基づいて前記相関関係を用いて算出した光ファイバ裸線22の断面積をSとし、光ファイバ裸線22の空孔の数をNとすると、空孔径dは次の式で表すことができる。
d=2×(((D/2)2×π−S))/π/N)1/2
具体的には、例えば空孔径の測定値が所定の値を下回った場合にガス流量を増加させて空孔21a内の圧力を高め、空孔径の測定値が所定の値を上回った場合にガス流量を減少させて空孔21a内の圧力を低くする、フィードバック制御を採用することができる。
これによって、光ファイバ裸線22の空孔径を所定の範囲に維持することができる。
次いで、光ファイバ裸線22は、第2被覆コーティング部9で第2被覆層(図示略)が形成され、第2被覆硬化部10で紫外線照射などにより第2被覆層の硬化が行われる。
静電容量測定部16では、電極板17A、17Bは、測定部15の外周に沿う螺旋状に形成されて対向配置されている。この構成によれば、測定部15内の光ファイバ裸線22の位置にかかわらず、正確な静電容量の測定が可能となる。
図1に示す製造装置1を用いて、図5に示す空孔付き光ファイバ35を作製した。
空孔付き光ファイバ35は、コア36の周囲に周方向に沿って配列された8つの空孔34が長さ方向に沿って形成されている。
空孔径測定部5の静電容量測定部としては、図4に示す静電容量測定部16を用いた。測定部15は内径6mm、長さ60mmとした。
光ファイバ裸線22の外径は125μmとした。空孔34の径は表1に示すとおりとし、静電容量測定部16で得られた電圧に基づいて静電容量の測定を行った。
空孔径を顕微鏡観察により実測し、空孔付き光ファイバ35の断面積を算出するとともに、静電容量測定部16で得られた電圧値との関係を調べた。結果を表1に示す。
この図より、空孔付き光ファイバ35の断面積と、静電容量測定部16で得られた電圧値との間には直線的な相関関係が見られることがわかる。断面積の実測値(x軸)と電圧値(y軸)から得られた近似式は概略y=0.00028x−2.94であり、回帰係数(R2)は約0.977であった。空孔径は断面積に応じた値となるため、空孔径と電圧値にも相関があることがわかる。
図1に示す製造装置1を用いて、試験例1〜4と同条件で、図5に示す空孔付き光ファイバ35を作製した。
空孔径測定部5では、静電容量測定部16(図4参照)で得られた電圧値を用い、図6に示す関係に基づいて演算部13で光ファイバ裸線22の空孔径を算出し、この測定値に基づいてプリフォーム21に送られるガス流量を制御した。
すなわち、空孔径の測定値が所定の値を下回った場合にガス流量を増加させて空孔21a内の圧力を高め、空孔径の測定値が所定の値を上回った場合にガス流量を減少させて空孔21a内の圧力を低くする制御を行った。
得られた空孔付き光ファイバ35の空孔径と曲げ損失の測定結果を表2に示す。サンプル数は22とし、その平均値等を測定結果として示す。
曲げ損失は、IEC60793−1−47に準拠した方法で測定した。測定波長は1550nm、曲げ直径は10mmとした。
Claims (6)
- 空孔付き光ファイバ母材を加熱し溶融させて線引きして空孔付き光ファイバを製造するにあたって、前記空孔径を測定する方法であって、
前記線引きにより得られた空孔付き光ファイバを、対向配置された一対の電極板間に通過させる際に静電容量を測定し、この測定値に基づいて、予め実測により得られた静電容量と空孔径との相関関係を用いて前記空孔付き光ファイバの空孔径を算出することを特徴とする空孔付き光ファイバの空孔径の測定方法。 - 前記空孔付き光ファイバの外径を測定し、測定値に基づいて前記静電容量の測定値に補正を加えることを特徴とする請求項1に記載の空孔付き光ファイバの空孔径の測定方法。
- 前記静電容量の測定は、被覆が形成されていない空孔付き光ファイバについて行うことを特徴とする請求項1または2に記載の空孔付き光ファイバの空孔径の測定方法。
- 空孔付き光ファイバ母材を加熱し溶融させて線引きして空孔付き光ファイバを製造するにあたって前記空孔径を測定する装置であって、
前記線引きにより得られた空孔付き光ファイバについて静電容量を測定する静電容量測定部と、この測定値に基づいて、予め実測により得られた静電容量と空孔径との相関関係を用いて前記空孔付き光ファイバの空孔径を演算する演算部とを有することを特徴とする空孔付き光ファイバの空孔径の測定装置。 - 空孔付き光ファイバ母材を加熱し溶融させて線引きして空孔付き光ファイバを製造する方法であって、
前記線引きにより得られた空孔付き光ファイバを、対向配置された一対の電極板間に通過させる際に静電容量を測定し、この測定値に基づいて、予め実測により得られた静電容量と空孔径との相関関係を用いて算出された前記空孔付き光ファイバの空孔径に応じて、前記空孔付き光ファイバ母材の空孔に供給されるガス流量を制御することで前記空孔内の圧力を調整することを特徴とする空孔付き光ファイバの製造方法。 - 空孔付き光ファイバ母材を加熱し溶融させて線引きして空孔付き光ファイバを製造する装置であって、
前記線引きにより得られた空孔付き光ファイバについて空孔径を測定する空孔径測定部と、測定値に基づいて前記光ファイバ母材の空孔内の圧力を調整する圧力制御部とを備え、
前記空孔径測定部は、前記線引きにより得られた空孔付き光ファイバについて静電容量を測定する静電容量測定部と、この測定値に基づいて、予め実測により得られた静電容量と空孔径との相関関係を用いて前記空孔付き光ファイバの空孔径を演算する演算部とを有し、
前記圧力制御部は、前記演算部で得られた空孔径の測定値に基づいて、前記光ファイバ母材の空孔に供給するガス流量を制御することによって、前記空孔内の圧力を調整可能であることを特徴とする空孔付き光ファイバの製造装置。
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