JP3603368B2 - ガラス繊維のねじれ検出方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、光ファイバ等のガラス繊維の製造に際し、ガラス繊維に加わるねじれ量を簡易に効率良く検知する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガラス繊維の一つである光ファイバは、例えば、特開平6−171970の図1に示されるように、光ファイバ用母材を加熱炉内で溶融状態にしてから線引することにより製造される。線引された光ファイバは、樹脂コーティング装置、ガイドローラ等を介してボビンに巻き取られる。
【0003】
同図中、加熱炉直下のガイドローラ191の回転方向と光ファイバが走行する方向とが平行でない場合、製造される光ファイバにねじれが加わる。偏波保持光ファイバとして知られるような特殊な光ファイバの場合、このねじれにより光学特性の劣化が生じてしまう。
【0004】
一方、特開平6−171970に示されるように、光ファイバ内に発生する偏波モード分散を低減するために積極的に光ファイバにねじれを加える場合もある。この場合、所望の値以下の偏波モード分散値を持つ光ファイバを得るためには、ねじれ量の定量的な把握が必要となる。
【0005】
そこで、特開平6−171970に示されるように、従来から、製造された光ファイバを顕微鏡等で詳細に観察し、外径中心からのコア中心のずれ量(コア偏心量と呼ばれる。)やずれ方向等を光ファイバの長手方向に沿って詳細に調査することによって、光ファイバに加わるねじれ量や周期が測定されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の方法は、長手方向に沿ってガラス繊維の構造変化を調査することに多大の時間と労力を要し、また、ガラス繊維の製造設備の調整を行いながらリアルタイムでねじれを検出することができないため効率が悪かった。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、ガラス繊維のねじれ量を簡易かつ迅速に測定することのできるねじれ検出方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の問題点を解決するために、本発明のガラス繊維のねじれ検出方法は、溶融ガラスを線引し、長手方向に沿って略同一形状の断面を有するガラス繊維であって長手方向と略垂直な方向から測定される幅が測定方向に応じて変化するものを製造しながら、長手方向に移動するこのガラス繊維の幅を所定方向から測定し、この測定結果に基づいてガラス繊維のねじれ量を求めることを特徴としている。ここで、上記のガラス繊維の幅の最大値は、最小値の1.01倍以上であると良い。
【0009】
上記のガラス繊維は、軸方向と略垂直な方向から測定される幅が測定方向に応じて変化する柱状のガラス母材を加熱溶融して線引きすることにより製造しても良い。ガラス母材の幅の最大値は、最小値の1.01倍以上であると良い。
【0010】
また、上記のガラス繊維は、略円柱状のガラス体にその中心軸と所定の間隔をあけて中心軸に沿った貫通孔が設けられたガラス母材を加熱溶融して線引きすることにより製造しても良い。
【0011】
【作用】
本発明で幅を測定するガラス繊維は、長手方向と略垂直な方向から測定される幅が測定方向に応じて変化するので、測定方向を一方向に固定すると、長手方向に移動するガラス繊維にねじれが生じている場合には幅の測定値が時間的に変化する。したがって、測定されるガラス繊維の幅の変化を調べることで、ガラス繊維のねじれ量、すなわちガラス繊維の単位長さあたりのねじれ角度を求めることができる。
【0012】
ガラス繊維は同一形状の断面を有するように製造されるが、製造技術の限界から全く同一の断面形状のものが得られるわけではなく、ガラス繊維の幅にも0.5%弱の変動が生じている。ガラス繊維の幅を測定すると、ねじれによる幅の変化とと共に、このような製造上の理由による幅の変化も測定される。したがって、ガラス繊維の幅の最大値が最小値の1.01倍以上であれば、上記のようなガラス繊維の幅の製造上の変化があっても、ねじれによるガラス繊維の幅の測定値の変化を製造上の変化から容易に区別することができる。
【0013】
軸方向と略垂直な方向から測定される幅が測定方向に応じて変化する柱状のガラス母材を線引して得られるガラス繊維は、このガラス母材の断面形状と略相似の断面形状を有し、長手方向と略垂直な方向から測定される幅が測定方向に応じて変化するので、このガラス繊維の幅を所定方向から測定することにより、ガラス繊維のねじれ検出を好適に行うことができる。
【0014】
上記のガラス母材の幅の最大値が最小値の1.01倍以上であれば、この母材から得られるガラス繊維も幅の最大値が最小値の1.01倍以上となるので、上述したように、ねじれによるガラス繊維の幅の測定値の変化を製造上の変化から容易に区別することができる。
【0015】
略円柱状のガラス体にその中心軸と所定の間隔をあけて長手方向に沿った貫通孔が設けられたガラス母材を加熱溶融して線引すると、貫通孔と中心軸とを結ぶ方向につぶれた断面形状のガラス繊維が得られる。このガラス繊維は、長手方向と略垂直な方向から測定される幅が測定方向に応じて変化するので、このガラス繊維の幅を所定方向から測定することにより、ガラス繊維のねじれ検出を好適に行うことができる。
【0016】
【実施例】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施例を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致していない。
【0017】
実施例1
図1は、本実施例のガラス繊維のねじれ検出方法を説明する図である。本実施例では、光ファイバの線引工程と同様にしてガラス母材10を線引し、ガラス繊維12を製造する。図2(a)〜(d)は、ガラス母材10及びガラス繊維12の断面形状を示す図であり、図2(a)は図1のA−A′線に沿った断面図、図2(b)はB−B′線に沿った断面図、図2(c)はC−C′線に沿った断面図、図2(d)はD−D′線に沿った断面図である。
【0018】
ガラス母材10は、一種類の石英系ガラスからなる柱状ガラス体であり、その断面は図2(a)に示されるような楕円形状となっている。長軸の長さは25mmであり、短軸の長さは16mmである。本実施例では、このガラス母材10を加熱炉20で約2000℃の温度で加熱溶融し、線引速度100m/分で線引して、ガラス繊維12を製造する。このガラス繊維12の断面は、図2(b)に示されるようにガラス母材10の断面とほぼ相似の楕円形状となる。長軸の長さは約163μm、短軸の長さは約105μmである。
【0019】
ガラス繊維12はその長手方向に沿って移動し、外径測定器22により長手方向にほぼ垂直な方向から幅を測定される。この外径測定器22は、光ファイバの線引工程において用いられる一般的なものであり、He−Neレーザを利用した偏光法により長手方向に垂直な一方向から見た光ファイバの幅を測定するものである。ここで測定される幅は、測定方向に垂直な平面に表されるガラス繊維12の射影の幅に等しい。
【0020】
次に、ガラス繊維12にはコーティングダイ24で液体状の紫外線硬化型樹脂(UV樹脂)が被覆される。このUV樹脂は、UVランプ26からの紫外光が照射されることにより固化される。これによって、ガラス繊維12に一次被覆が施され、ガラス繊維12の断面は、図2(c)に示されるようになる。コーティングダイ24でガラス繊維12に被覆される樹脂は液体状であるため、樹脂の表面張力により被覆後のガラス繊維12の断面はほぼ円形になる。
【0021】
続いて、ガラス繊維12には、コーティングダイ28及びUVランプ30によってUV樹脂による二次被覆が施される。これにより、ガラス繊維12の断面は、図2(d)に示されるようになる。二次被覆されたガラス繊維12の断面も、ほぼ円形になる。
【0022】
二次被覆されたガラス繊維12は、ガイドローラ32及びキャプスタン34を介してスプール36によって巻き取られる。
【0023】
次に、ねじれ発生の原理について説明する。ガイドローラ32の回転方向とガラス繊維12の移動方向とが平行でない場合、例えばガイドローラ32の回転軸が図1の紙面と垂直な方向に対して傾いている場合は、ガラス繊維12はガイドローラ32のローラ面上を転がりながらスプール36側に送られることになる。これにより、ガラス繊維12をねじるようなトルクがガラス繊維12に加わる。一次被覆された後のガラス繊維は表面が硬化しているのでねじれは殆ど発生しない。従って、図1に示すように、ガラス母材10から線引されたガラス繊維12が外径測定器22を通過してコーティングダイ24に至るまでの比較的軟らかい状態のときにねじれは発生する。なお、本実施例では、ねじれを顕著に生じさせてねじれ検出をわかりやすくするため、故意にガイドローラ32を傾けてある。
【0024】
本実施例では、ねじれ発生部において外径測定器22によりガラス繊維12の幅を長手方向と略垂直な方向から継続的に測定しており、この測定結果を利用することでガラス繊維12のねじれ量を求める。
【0025】
ねじれ発生部においてガラス繊維12は、図2(b)に示すように楕円形状の断面を有しており、その幅は測定する方向に応じて変化する。ガラス繊維12がねじれるに伴ってガラス繊維12の向きが変化することから、外径測定器22による幅の測定値も徐々に変化する。
【0026】
図3(a)は、ガラス繊維12の向きと外径測定器22の測定方向との関係を示す図であり、図3(b)は、ガラス繊維12の幅の測定値とガラス繊維12のねじれ角度との関係を示すグラフである。図3(a)において、点線の矢印40は、ガラス繊維12の断面である楕円の長軸であり、実線の矢印42は、外径測定器22の測定方向である。図中dで表される長さが、外径測定器22の測定値である。
【0027】
図3(a)に示されるように、ガラス繊維12の向きを矢印40で規定すると、ガラス繊維12の向きと外径測定器22の測定方向との関係は、矢印40と矢印42とがなす角度θで規定することができる。ガラス繊維12のうち所定の基準位置P0と、このP0から長手方向に沿って所定距離だけ離れた位置P1を考えたとき、P0における角度θとP1における角度θとの差が、P0とP1との間におけるガラス繊維12のねじれ角度である。ねじれ角度が360゜のとき、P0とP1との間でガラス繊維12が1回転していることになる。
【0028】
ガラス繊維12にねじれが生じている場合、ガラス繊維12の長手方向に沿った位置に応じてねじれ角度は単調に増加する。このようなガラス繊維12の幅を外径測定器22で測定すると、図3(b)に示されるように、外径測定器22によるガラス繊維12の幅の測定値(図3(b)では「外径出力値」)は、ガラス繊維12のねじれに伴い、楕円の短軸の長さbと長軸の長さaとの間で周期的に変化する。なお、図3(b)は、基準位置P0において上記の角度θが0となっており、この基準位置P0から外形測定器22による測定が開始されているという条件下のグラフである。
【0029】
ねじれによりガラス繊維12が1回転したとき、すなわちねじれ角度が360゜となったとき、幅の測定値は当初の値bに等しい。図3(b)に示される正弦波状のグラフの2周期分が、ガラス繊維12の1回転(360゜のねじれ)に対応するわけである。
【0030】
図4は、ガラス繊維12の基準位置が外径測定器22の測定ラインを通過した時点から、外径測定器22によりガラス繊維12の幅を測定した結果を示すグラフである。縦軸は、ガラス繊維12の幅の測定値(外径出力値)である。横軸は、外径測定器22の測定ラインを通過したガラス繊維12の長さであり、線引速度と測定時間とから算出したものである。
【0031】
上述のように正弦波の2周期分がガラス繊維12の1回転に相当することを考慮すると、図4からガラス繊維12の長さが0.6mでねじれ角度が360゜、すなわちガラス繊維12が1回転することが読み取れる。従って、1mあたりのねじれ角度、すなわちねじれ量は、360゜×(1m/0.6m)=600゜と求まる。また、1mあたりの回転数は、1回転×(1m/0.6m)から約1.67回転と求まる。
【0032】
一般的に、ガラス繊維のねじれ量はガラス繊維の長手方向に沿った位置によらずほぼ一定であるから、上記のようにして求めたねじれ量はガラス繊維12のうち図4に示される領域と異なる領域においても略同一であると推定される。
【0033】
より高精度のねじれ検出として、ガラス繊維12の各箇所におけるねじれ量を測定するには、図4から各ねじれ角度に対応するガラス繊維12の長さを求め、横軸が外径測定器22の測定ラインを通過したガラス繊維12の長さ、縦軸がねじれ角度というグラフを作成すれば良い。ガラス繊維12の所望の箇所におけるねじれ量は、その箇所に対応するガラス繊維12の長さにおけるねじれ角度の微係数に等しい。
【0034】
上記のようにして求められたねじれ量は、同じ製造設備を使用する限り、ガラス繊維12と異なるガラス繊維、例えば断面略円形のガラス繊維を製造する際にも略同一である。すなわち、ガラス繊維の製造の際に生じるガラス繊維のねじれは、製造設備を構成するガイドローラ32等の幾何学的配置のずれが主要因であり、他の条件、例えば、製造条件(線引速度やガラス母材の溶融温度)等にはほとんど依存しない。従って、同一の製造設備を用いる限り、製造すべきガラス繊維がガラス繊維12のような断面形状のものでなくとも、上記のようにして求めたものと略同一のねじり量でねじれが生じることになる。
【0035】
さらに、確認のため、ガラス繊維12と同じ製造設備を用いて断面が円形のガラス繊維を製造し、生じたねじれを従来のように顕微鏡観察により測定したところ、上記の同様のねじれ量でねじれていることが判明した。しかし、この方法でねじれ量を求めるには、ガラス繊維の製造に要した時間に加えて顕微鏡観察に要する約2時間が必要となるのに対し、本実施例の方法によれば、ガラス繊維の製造とほぼ同時にその結果を知ることができ、大幅な時間短縮が可能である。
【0036】
なお、ねじれ検出に用いるガラス繊維の製造条件やガラス繊維の構造、材質を、実際に製造するガラス繊維に近付ければ、ねじれ検出をより高精度に行うことができるものと思われる。
【0037】
以上のようにして求めたねじれ量に基づいて、ガイドローラ32等の幾何学的配置を調整すれば、ねじれ量を低減させることができる。また、積極的にねじれを加える場合にも、実際のねじれ量を把握しながら必要に応じて製造設備を調整して、ねじれ量を増減させることが可能である。製造設備の調整、すなわちガイドローラ32等の幾何学的配置の調整は、上記のねじれ検出を実行しながら行うこともできる。従って、リアルタイムでねじれ量を測定しながら製造設備の調整を行うことも可能である。
【0038】
以上のように、本実施例のねじれ検出方法によれば、ねじれ検出用のガラス繊維12を製造しながらその幅を測定することで、簡易かつ迅速にねじれ量を求めることができ、顕微鏡で調べるような手間の掛かる作業は不要である。
【0039】
なお、製造技術の限界からガラス繊維は全く同一の断面形状を有するわけではなく、同一方向から測定される幅にもねじれと関係なく0.5%弱の変動が生じている。このような変動は、ねじれによる幅の測定値の変化と異なり周期的ではないので識別は容易であるが、ガラス繊維12の幅の最大値が最小値の1.01倍であれば、ねじれによるガラス繊維の幅の測定値の変化を製造上の変化から一層容易に区別することができる。
【0040】
ガラス母材10の加熱溶融温度が高すぎると、表面張力により得られるガラス繊維12の断面形状が円に近付いてしまうので、ガラス繊維12の幅の最大値が最小値の1.01倍以上になるように加熱温度を調整するのが好ましい。
【0041】
本実施例では、ねじれ検出用に製造するガラス繊維12の幅の最大値は約163μm、最小値は約105μmであり、最大値は最小値の約1.54倍となっている。最大値が最小値の1.01倍以上となっており、ねじれにより生じるガラス繊維12の幅の測定値の変化は、製造技術の限界から生じるガラス繊維12の幅の変化から容易に区別することができる。
【0042】
また、製造上の観点からは、ねじれ検出用のガラス繊維12は、幅の最大値が最小値の5倍以下のものとするのが適当と思われる。
【0043】
実施例2
本実施例では、ガラス繊維として光ファイバを製造する際のねじれ量を測定する。本実施例で製造するのはコア及びクラッドの断面が略長方形状の光ファイバである。偏波面保存光ファイバの中には、このような断面を有するものが実際に製造されている。
【0044】
まず、コア及びクラッドからなる円柱状の光ファイバ用ガラス母材を用意する。この光ファイバ用ガラス母材は、円柱状のコアの側周面を円筒状のクラッドが包囲した構造を有しており、CVD法、MCVD法、ロッドインチューブ法などの一般的な製法で形成することができる。コアの屈折率は、クラッドよりも高くなっている。
【0045】
次に、上記の光ファイバ用ガラス母材のクラッドの側面を機械的に研削することにより、長方形状の断面を有する角柱状のガラス母材を作製する。断面の寸法は、長辺が25mm、短辺が21mmである。
【0046】
続いて、図1と同様の製造設備を用い、ガラス母材を加熱炉20によって約2000℃の温度で加熱溶融した後、線引速度100m/分で線引して、光ファイバを製造する。ガラス母材の長方形状の断面形状に対応して光ファイバの断面も略長方形状となる。その寸法は、長辺が約125μm、短辺が約105μmである。
【0047】
この後、光ファイバには、コーティングダイ24及びUVランプ26によりUV樹脂による一次被覆が施され、さらに、コーティングダイ28及びUVランプ30によってUV樹脂による二次被覆が施される。こうして二次被覆された光ファイバの断面は、直径約250μmの円形となる。
【0048】
二次被覆された光ファイバは、ガイドローラ32及びキャプスタン34を介してスプール36によって巻き取られる。
【0049】
本実施例では、製造する光ファイバがねじれ発生部において略長方形状の断面を有するものであるから、製造する光ファイバのねじれ量を直接測定することができる。
【0050】
図5(a)は、光ファイバの向きと外径測定器22の測定方向42との関係を示す図であり、図5(b)は、光ファイバの幅の測定値と光ファイバのねじれ角度との関係を示すグラフである。図5(a)において、点線の矢印44は、光ファイバの断面である長方形の中心を通り長辺に平行な軸であって光ファイバの向きを表すものである。また、実線の矢印42は、外径測定器22の測定方向である。図中dで表される長さが、外径測定器22の測定値である。
【0051】
図5(a)に示されるように、光ファイバの向きを矢印44で規定すると、光ファイバの向きと外径測定器22の測定方向との関係は、矢印44と矢印42とがなす角度θで規定することができる。
【0052】
図5(b)に示されるように、外径測定器22による光ファイバの幅の測定値(図5(b)では「外径出力値」)は、光ファイバのねじれに伴い、長方形の短辺の長さbとほぼ(a2 +b2 )1/2 (aは長方形の長辺の長さ)との間で周期的に変化する。なお、図5(b)は、光ファイバの所定の基準位置において上記の角度θが0となっており、この基準位置から外形測定器22による測定が開始されているという条件下のグラフである。
【0053】
ねじれにより光ファイバが1回転したとき、すなわちねじれ角度が360゜となったとき、幅の測定値は当初の値bに等しい。bから変化した外径出力値が再びbに戻るまでを1周期と考えると、図5(b)に示されるグラフの2周期分が光ファイバの1回転(360゜のねじれ)に対応している。
【0054】
図6は、光ファイバの所定の基準位置が外径測定器22の測定ラインを通過した時点から、外径測定器22により光ファイバの幅を測定した結果を示すグラフである。縦軸は、光ファイバの幅の測定値(外径出力値)である。横軸は、外径測定器22の測定ラインを通過した光ファイバの長さであり、実施例1と同様、線引速度と測定時間から算出したものである。
【0055】
図6からは、光ファイバの長さが約0.58mで光ファイバがねじれにより1回転することが読み取れる。従って、光ファイバのねじれ量(1mあたりのねじれ角度)は、360゜×(1m/0.58m)=約620゜と求まる。また、1mあたりの回転数は、1回転×(1m/0.58m)から約1.72回転と求まる。
【0056】
本実施例では、光ファイバの製造とほぼ同時にそのねじれ量を知ることができ、ねじれ検出の大幅な時間短縮が可能である。また、実施例1と同様に、リアルタイムでねじれ量を測定しながら製造設備の調整を行ってねじれ量の制御を行うことも可能である。
【0057】
なお、本実施例では、光ファイバの幅の最大値は約163μm、最小値は約105μmであり、最大値は最小値の約1.54倍となっている。本実施例でも最大値が最小値の1.01倍以上となっており、ねじれにより生じる光ファイバの幅の測定値の変化は、製造技術の限界から生じる光ファイバの幅の変化から容易に区別することができる。
【0058】
実施例3
本実施例も、実施例2と同様に、光ファイバを製造する際のねじれ量を測定する。本実施例で製造するのはコア及びクラッドの断面が略楕円形状の光ファイバである。偏波面保存光ファイバの中には、このような断面を有する光ファイバが実際に製造されている。
【0059】
まず、直径25mmの円柱状の光ファイバ用ガラス母材を用意し、超音波開孔機を用いてクラッドに軸方向に沿って内径5mmの貫通孔を2箇所形成する。図7は、この貫通孔50及び52が設けられたガラス母材の断面を示す図である。貫通孔50及び52の中心と母材の外径中心との間隔はそれぞれ6mmである。
【0060】
続いて、図1と同様の製造設備を用い、このガラス母材を加熱炉20によって約2000℃の温度で加熱溶融した後、線引速度100m/分で線引して、光ファイバを製造する。この光ファイバの断面は、母材の外径中心とガラス母材の貫通孔とを結ぶ方向を短軸とする楕円形状となる。その寸法は、長軸の長さが約125μm、短軸の長さが約115μmである。
【0061】
この後、光ファイバには、コーティングダイ24及びUVランプ26によりUV樹脂による一次被覆が施され、さらに、コーティングダイ28及びUVランプ30によってUV樹脂による二次被覆が施される。二次被覆された光ファイバの断面は、直径約250μmの円形となる。
【0062】
二次被覆された光ファイバは、ガイドローラ32及びキャプスタン34を介してスプール36によって巻き取られる。
【0063】
本実施例では、製造する光ファイバがねじれ発生部において楕円形状の断面を有するものであるから、実施例2と同様に、製造する光ファイバのねじれ量を直接測定することができる。
【0064】
図8は、光ファイバの所定の基準位置が外径測定器22の測定ラインを通過した時点から、外径測定器22により光ファイバの幅を測定した結果を示すグラフである。縦軸は、光ファイバの幅の測定値(外径出力値)である。横軸は、外径測定器22の測定ラインを通過した光ファイバの長さであり、実施例1、2と同様、線引速度と測定時間から算出したものである。
【0065】
図8から光ファイバの長さが約0.4mで光ファイバがねじれにより1回転することが読み取れる。従って、光ファイバのねじれ量は、360゜×(1m/0.4m)=約900゜と求まる。また、1mあたりの回転数は、1回転×(1m/0.4m)から約2.5回転と求まる。
【0066】
本実施例でも、光ファイバの製造とほぼ同時にそのねじれ量を知ることができ、ねじれ検出の大幅な時間短縮が可能である。また、実施例1、2と同様に、リアルタイムでねじれ量を測定しながら製造設備の調整を行ってねじれ量の制御を行うことも可能である。
【0067】
なお、本実施例では、光ファイバの幅の最大値は約125μm、最小値は約115μmであり、最大値は最小値の約1.09倍となっている。本実施例でも最大値が最小値の1.01倍以上となっており、ねじれにより生じる光ファイバの幅の測定値の変化は、製造技術の限界から生じる光ファイバの幅の変化から容易に区別することができる。
【0068】
以上、本発明の実施例を詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、実施例のようにねじれ検出用のガラス繊維を加熱溶融したガラス母材から線引する代わりに、二重るつぼ法を用いて溶融ガラスから線引しても良い。この場合、ノズルの形状を調節することで、長手方向に略垂直な方向から測定される幅が測定方向に応じて変化するガラス繊維を線引することができる。このガラス繊維の幅を測定することで、上記と同様のねじれ検出を行うことが可能である。
【0069】
また、被覆材料についても、上記実施例に記載の材料に限定されるものでなく、例えばシリコン樹脂等、光ファイバ被覆材として通常用いられるものであれば良い。
【0070】
また、実施例では単一の外径測定器を用いてガラス繊維の幅を測定したが、複数の外径測定器をガラス繊維の長手方向に沿って複数箇所に配置し、それぞれ異なる測定方向から幅の測定を行うことで、ねじれ量に加えてねじれ方向を求めるなど、より詳細なねじれ検出を行うことが可能である。
【0071】
【発明の効果】
以上、詳細に説明した通り、本発明のねじれ検出方法によれば、長手方向と略垂直な方向から測定される幅が測定方向に応じて変化するガラス繊維を製造しながら、その幅を測定し、測定されるガラス繊維の幅の変化を調べることでガラス繊維のねじれ量を求めることができる。ガラス繊維を製造しながらその幅を測定することによりリアルタイムでねじれ量を測定できるので、簡易かつ迅速なねじれ検出が可能である。
【0072】
ガラス繊維の幅の最大値が最小値の1.01倍以上であれば、ねじれによるガラス繊維の幅の測定値の変化を製造上の変化から容易に区別することができるので、好適なねじれ検出を行うことが可能である。
【0073】
長手方向と略垂直な方向から測定される幅が測定方向に応じて変化する柱状のガラス母材を線引し、得られるガラス繊維の幅を測定することで、ガラス繊維のねじれ検出を好適に行うことができる。
【0074】
ガラス母材の幅の最大値が最小値の1.01倍以上であれば、ねじれによるガラス繊維の幅の測定値の変化を製造上の変化から容易に区別することができ、より好適なねじれ検出を行うことが可能である。
【0075】
また、略円柱状のガラス体にその中心軸と所定の間隔をあけて長手方向に沿った貫通孔が設けられたガラス母材を加熱溶融して線引し、得られるガラス繊維の幅を測定することによっても、ねじれ検出を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のガラス繊維のねじれ検出方法を説明する図である。
【図2】ガラス母材10及びガラス繊維12の断面形状を示す図である。
【図3】(a)は、ガラス繊維12の向きと外径測定器22の測定方向との関係を示す図であり、(b)は、ガラス繊維12の幅の測定値とガラス繊維12のねじれ角度との関係を示すグラフである。
【図4】外径測定器22によりガラス繊維12の幅を測定した結果を示すグラフである。
【図5】(a)は、光ファイバの向きと外径測定器22の測定方向42との関係を示す図であり、(b)は、光ファイバの幅の測定値と光ファイバのねじれ角度との関係を示すグラフである。
【図6】外径測定器22により光ファイバの幅を測定した結果を示すグラフである。
【図7】実施例3で用いた光ファイバ用ガラス母材の断面図である。
【図8】外径測定器22により光ファイバの幅を測定した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
10…ガラス母材、12…ガラス繊維、20…加熱炉、22…外径測定器、24および28…コーティングダイ、26及び30…UVランプ、32…ガイドローラ、34…キャプスタン、36…スプール。
Claims (4)
- 溶融ガラスを線引し、長手方向に沿って略同一形状の断面を有するガラス繊維であって長手方向と略垂直な方向から測定される幅が測定方向に応じて変化するものを製造しながら、長手方向に移動するこのガラス繊維の幅を所定方向から継続的に測定し、この測定された幅の周期的変化の2周期分に相当する前記ガラス繊維の長さで前記ガラス繊維のねじれ角度が360°となる関係に従って、前記ガラス繊維の単位長さあたりのねじれ角度を算出するガラス繊維のねじれ検出方法であって、
前記ガラス繊維の幅の最大値は、最小値の1.01倍以上である、ガラス繊維のねじれ検出方法。 - 前記ガラス繊維は、軸方向と略垂直な方向から測定される幅が測定方向に応じて変化する柱状のガラス母材を加熱溶融して線引きしたものであることを特徴とする請求項1記載のガラス繊維のねじれ検出方法。
- 前記ガラス母材の幅の最大値は、最小値の1.01倍以上であることを特徴とする請求項2記載のガラス繊維のねじれ検出方法。
- 略円柱状のガラス体にその中心軸と所定の間隔をあけて中心軸に沿った貫通孔が設けられたガラス母材を加熱溶融して線引きすることにより前記ガラス繊維を製造することを特徴とする請求項1記載のガラス繊維のねじれ検出方法。
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