JP2010142934A - ツーリングホルダ振れ検出システム - Google Patents

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Abstract

【課題】ツーリングホルダの取り付け状態を迅速に判別し、加工効率の向上を図ること。
【解決手段】工作機械本体に設けられた回転駆動部に取り付けられ、当該回転駆動部に対する取り付け箇所とは反対側の端部にて工具を保持するツーリングホルダの回転周囲と、当該回転周囲の外側に位置する所定箇所と、の距離を、上記ツーリングホルダの回転時に計測する距離計測手段と、上記距離計測手段にて計測された距離データを蓄積する距離データ蓄積手段と、異なる時期に計測され上記距離データ蓄積手段に蓄積された各上記距離データを比較する距離データ比較手段と、上記距離データ比較手段による比較結果に基づいて、上記回転駆動部に対する上記ツーリングホルダの取り付け状態を判別する取り付け状態判別手段と、を備えた。
【選択図】図4

Description

本発明は、ツーリングホルダ振れ検出システムにかかり、特に、工作機械に装着され先端に工具を保持するツーリングホルダの振れを検出するシステムに関する。
ボール盤、フライス盤、マシニングセンターなどの工作機械では、スピンドルヘッド部に工具を保持したツーリングホルダを取り付け、当該スピンドルヘッドを回転駆動することにより工具を回転し、工作対象物を機械加工する。そして、このようなツーリングホルダは、スピンドルヘッド部に着脱自在であり、工具の交換が容易となっている。
ここで、一般的なツーリングホルダの構造を、図1を参照して説明する。この図に示すように、ツーリングホルダ1は、所定の長さを有する形状に形成されている。そして、ツーリングホルダ1は、一端側に工具を保持する工具保持部11を形成しており、他端側には工作機械本体のスピンドルヘッド部3に固定されるシャンク部13を形成している。また、工具保持部11とシャンク部13との間には、フランジ部が形成されている。
上記シャンク部13は、ツーリングホルダ1の端部に向かって径が小さくなるよう略円錐状に形成されている。つまり、外側面がテーパー状に形成されている。そして、このシャンク部13の形状に対応して、スピンドルヘッド部3には、テーパー状のホルダ保持穴31が形成されている。このホルダ保持穴31にてシャンク部13を保持することで、スピンドルヘッド部3を回転駆動させるとツーリングホルダ1も回転し、その先端部の工具2を回転させることができる。なお、ツーリングホルダの構造は、特許文献1にも開示されている。
特開2002−18614号公報
しかしながら、上述したようなツーリングホルダ1では、当該ツーリングホルダ1を交換した際に、シャンク部13とスピンドルヘッド部3のホルダ保持部31との間に、切削切子などの異物が入ってしまうおそれがある。そして、図2の領域A内に示すように、切削切子aがシャンク部13とホルダ保持部31との間に入ってしまうと、スピンドルヘッド部3の軸に対してツーリングホルダ1の軸がずれてしまうことがある。すると、ツーリングホルダ1の先端に取り付けた工具2が偏心し、加工不良が生じる、という問題があった。一方で、工具3の偏心はわずかであるため、これを検出することは困難である。その結果、工具取り付けの際の異常を早期に発見することが難しく、実際に加工しなければならず、時間及び加工の無駄が生じていた。その結果、工作機械を利用した加工の効率の向上を図ることが困難である、という問題があった。
このため、本発明の目的は、上述した課題である、ツーリングホルダの取り付け状態を迅速に判別し、加工効率の向上を図る、ことにある。
かかる目的を達成するため本発明の一形態であるツーリングホルダ振れ検出システムは、
工作機械本体に設けられた回転駆動部に取り付けられ、当該回転駆動部に対する取り付け箇所とは反対側の端部にて工具を保持するツーリングホルダの回転周囲と、当該回転周囲の外側に位置する所定箇所と、の距離を、上記ツーリングホルダの回転時に計測する距離計測手段と、
上記距離計測手段にて計測された距離データを蓄積する距離データ蓄積手段と、
異なる時期に計測され上記距離データ蓄積手段に蓄積された各上記距離データを比較する距離データ比較手段と、
上記距離データ比較手段による比較結果に基づいて、上記回転駆動部に対する上記ツーリングホルダの取り付け状態を判別する取り付け状態判別手段と、
を備えた、という構成を採る。
また、本発明の他の形態であるツーリングホルダ振れ検出方法は、
工作機械本体に設けられた回転駆動部に取り付けられ、当該回転駆動部に対する取り付け箇所とは反対側の端部にて工具を保持するツーリングホルダの回転周囲と、当該回転周囲の外側に位置する所定箇所と、の距離を、上記ツーリングホルダの回転時に計測する距離計測工程と、
上記距離計測工程にて計測された距離データを蓄積する距離データ蓄積工程と、
異なる時期に計測され蓄積された各上記距離データを比較する距離データ比較工程と、
上記距離データ比較工程による比較結果に基づいて、上記回転駆動部に対する上記ツーリングホルダの取り付け状態を判別する取り付け状態判別工程と、
を有する、という構成を採る。
本発明は、以上のように構成されることにより、迅速かつ適切に、ツーリングホルダの取り付け時の異常を検出することができ、工作機械を利用した加工効率の向上を図ることができる。
<実施形態1>
本発明の第1の実施形態を説明する。本実施形態では、ツーリングホルダ振れ検出システムの概略を説明する。
本実施形態におけるツーリングホルダ振れ検出システムは、
工作機械本体に設けられた回転駆動部に取り付けられ、当該回転駆動部に対する取り付け箇所とは反対側の端部にて工具を保持するツーリングホルダの回転周囲と、当該回転周囲の外側に位置する所定箇所と、の距離を、上記ツーリングホルダの回転時に計測する距離計測手段と、
上記距離計測手段にて計測された距離データを蓄積する距離データ蓄積手段と、
異なる時期に計測され上記距離データ蓄積手段に蓄積された各上記距離データを比較する距離データ比較手段と、
上記距離データ比較手段による比較結果に基づいて、上記回転駆動部に対する上記ツーリングホルダの取り付け状態を判別する取り付け状態判別手段と、
を備えた、という構成を有する。
上記構成によると、まず、異なる時期に、ツーリングホルダの回転周囲に対する距離を計測して蓄積する。例えば、スピンドルヘッド部とツーリングホルダとが清掃された状態である正常状態時と、工具を使用して加工を行いツーリングホルダを交換した直後である使用状態時と、に距離を計測して蓄積する。その後、上述したように異なる時期に取得した距離データ同士を比較して、この比較結果に基づいてツーリングホルダの取り付け状態を判別する。例えば、正常状態時と使用状態時とにおける各距離データの差が、閾値と比較して大きいか否かに応じて、使用状態時のツーリングホルダが正常であるか否かを判別する。
これにより、ツーリングホルダとスピンドルヘッド部との間に切削切子などの異物が入った場合には、スピンドルヘッド部の軸とツーリングホルダの軸とにずれが生じ、当該ツーリングホルダが偏心した状態で回転する。すると、上述した計測により、ツーリングホルダの回転周囲に対する距離が一定とならず、また、事前に取得した正常状態時の距離データと比較して、差が生じる。従って、ツーリングホルダの回転周囲の距離を計測することで、迅速かつ適切に取り付け時の異常を検出することができ、工作機械を利用した加工効率の向上を図ることができる。
また、上記ツーリングホルダ振れ検出システムでは、上記距離計測手段は、上記ツーリングホルダが1回転する間に、上記距離を複数回計測する、という構成を採る。また、上記距離計測手段は、上記ツーリングホルダの最も径の大きい回転周囲箇所にて上記距離を計測する、という構成を採る。
また、上記ツーリングホルダ振れ検出システムでは、上記距離データ比較手段は、上記各距離データから、当該各距離データの一部をそれぞれ各比較対象データとして抜き出して、当該各比較対象データを比較する、という構成を採る。特に、上記距離データ比較手段は、上記各距離データから、上記ツーリングホルダの回転周囲に形成された凹部箇所に対する距離を計測した凹部箇所データ部分をそれぞれ特定し、当該各凹部箇所データ部分を基準として上記各距離データから上記各比較対象部分データをそれぞれ抜き出して比較する、という構成を採る。さらに、上記距離データ比較手段は、上記各距離データから、上記ツーリングホルダの回転周囲に形成された凹部箇所の中心に対する距離を計測した凹部箇所中心データ部分をそれぞれ特定し、当該各凹部箇所中心データ部分を上記各凹部箇所データ部分として特定する、という構成を採る。また、上記距離データ比較手段は、上記各距離データから、それぞれ上記各凹部箇所データ部分を除いた他のデータ部分を上記各比較対象部分データとしてそれぞれ抜き出して比較する、という構成を採る。
さらに、上記ツーリングホルダ振れ検出システムでは、上記距離計測手段を、上記工作機械本体に設けられた加工テーブルに固定して設けた、という構成を採る。
<実施形態2>
次に、本発明の第2の実施形態を、図3乃至図8を参照して説明する。図3は、ツーリングホルダの構成を示す図である。図4は、ツーリングホルダ振れ検出システムの構成を示す図である。図5乃至図7は、距離データの処理の様子を示す説明図である。図8は、ツーリングホルダ振れ検出システムの動作を示すフローチャートである。
なお、本実施形態では、上記実施形態1で説明したツーリングホルダ振れ検出システムの具体的な構成の一例を説明する。但し、本発明のツーリングホルダ振れ検出システムは、以下で説明する構成に限定されるものではない。
[構成]
本実施形態におけるツーリングホルダ触れ検出システムは、ボール盤、フライス盤、マシニングセンターなどの工作機械に装備するものである。そして、ツーリングホルダ触れ検出システムは、工作機械本体に設けられた回転駆動するスピンドルヘッド部3(回転駆動部)に取り付けられたツーリングホルダ1の振れ、つまり、スピンドルヘッド部3と軸がずれていることを検出するためのシステムである。
ここで、本実施形態にて計測対象となるツーリングホルダ1について説明する。まず、図3(A)に示すように、ツーリングホルダ1は、所定の長さを有する形状に形成されており、一端側(図3(A)の下側部分)には、先端部(図3(A)で下側端部)でドリルなどの工具2を保持する略円筒状の工具保持部11を有している。また、ツーリングホルダ1の他端側(図3(A)の上側部分)には、工作機械本体のスピンドルヘッド部3に固定されるシャンク部13を形成している。このシャンク部13は、端部(図3(A)の上側端部)に向かうにつれて径が小さくなるよう略円錐状に形成されている。つまり、外側面がテーパー状に形成されている。なお、このシャンク部13は、上述したように、スピンドルヘッド部3に形成されたテーパー状のホルダ保持穴31に保持されることで、工作機械本体に装着することができる。そして、スピンドルヘッド部3を回転駆動することで、ツーリングホルダ1も回転し、その先端部に取り付けられた工具2を回転させ、加工を行うことができる。なお、スピンドルヘッド部3つまりツーリングホルダ1の回転速度は、例えば、600rpmである。
また、ツーリングホルダ1は、上述した工具保持部11とシャンク部13との間、つまり、ツーリングホルダ1の長手方向におけるほぼ中央部分に、最も径の大きいフランジ部12を有する。なお、図3(B)に、図3(A)に示すフランジ部12のB−B線断面図を示すが、当該フランジ部12は断面がほぼ真円形状である。但し、図3(A)及び図3(B)に示すように、フランジ部12の外周部分には、2か所に所定の深さの凹部14が形成されている。
そして、上述したように、スピンドルヘッド部3に装着されたツーリングホルダ1の下方、つまり、装着された工具2の先端側には、図4に示すように、工作機械本体に設けられた加工テーブルTが位置する。この加工テーブルTは、工具2にて加工する加工物を載置するものである。
また、上記加工テーブルTには、距離センサ4(距離計測手段)が固定して設けられている。この距離センサ4は、加工テーブルTに固定され上方に延びる支柱の上端側に装備されており、ツーリングホルダ1のフランジ部12に近接して位置している。なお、距離センサ4を加工テーブルTに固定装備することで、工作機械に対して距離センサ4を後から装備することが容易となる。
そして、距離センサ4は、例えば、計測対象物にレーザ光を照射し、その反射光を利用して計測対象物までの距離を計測するセンサである。但し、距離センサ4は、いかなる方法にて距離を計測するセンサであってもよく、また、必ずしも加工テーブルTに固定されていることに限定されない。
そして、上記距離センサ4は、当該距離センサ4が位置する箇所(所定箇所)から、ツーリングホルダ1の最も径の大きいフランジ部12の回転周囲までの距離を、当該ツーリングホルダ1の回転時に計測する。特に、本実施形態では、図4の矢印Lにて示した位置におけるツーリングホルダ1の外周面までの距離を計測する。
具体的に、この距離センサ4は、上記ツーリングホルダ1が1回転する間に、当該ツーリングホルダ1までの距離を、2000回計測する。従って、距離センサ4は、上述したツーリングホルダ1の回転速度に応じて、1回転内で2000回の計測が可能な時間間隔にて距離データの計測を行う。そして、距離センサ4は、計測して得られた距離データを、制御装置5に送る。なお、距離センサ4にてツーリングホルダ1が1回転する間に距離を計測する回数は、上述した回数に限定されない。
次に、制御装置5の構成について説明する。まず、制御装置5は、演算装置と記憶装置とを備えた一般的な情報処理装置である。そして、制御装置5は、計測部51と、比較部52と、判定部53と、を備えている。なお、これら各部51〜53は、所定の電子回路にて実現されていたり、あるいは、上記演算装置に所定のプログラムが組み込まれることによって構築されている。また、記憶装置は、計測データ記憶部54と、登録データ記憶部55と、を備えている。以下、詳述する。
上記計測部51は、上述した距離センサ4の動作を制御して距離の計測を行い、当該距離センサ4から取得したアナログ信号から成る距離データをディジタル信号に変換するA/D変換機能を有する。また、計測部51は、上記A/D変換した距離データを、計測データ記憶部54(距離データ蓄積手段)に送り、当該計測データ記憶部54に距離データを一時的に蓄積する。つまり、計測データ記憶部54は、距離データのバッファ機能を有する。
ここで、上述したように計測した距離データの一例を、図5に示す。この図では、縦軸にツーリングホルダ1までの距離に対応する計測値である電圧値を示し、横軸は計測時間に対応するツーリングホルダの外周の計測位置(移動距離)を示している。なお、上記距離センサ4では、距離が長いほど計測値である電圧値が高くなるよう計測しているため、図5では、縦軸の値が高いほど、距離が長いことを示している。
そして、ツーリングホルダ1のフランジ部12は真円形状にて形成されているため、距離データはほぼ一定の値を取るはずであるが、実際には完全な真円ではないため、この図に示すように所定のうねりを有する波形となる。また、上述したように、フランジ部12には凹部14が形成されているため、その凹部14箇所に対応する距離データは、他の部分よりも高い値となり、符号Hに示すように、凸状に現われている。そして、凹部14は2か所に形成されているため、上記凸状部分を2つ含むデータ部分が、ツーリングホルダ1の1回転に対応する2000個の距離データの集合となっている。
また、上記比較部52(距離データ比較手段)は、上述したように計測データ記憶部54に蓄積されている距離データの処理を行う。具体的には、まず、距離データ内から、ツリーリングホルダ1の凹部14箇所に対応する凹部箇所データ部分を特定するために、凹部14箇所の中心位置に対応する凹部中心(凹部箇所中心データ部分)を算出する処理を行う。なお、距離データのうち凹部14に対応する箇所のデータは、図6(A)の符号Hに示すように、頂点付近が平らな山型形状となっているため、この性質を利用して以下のように凹部14の中心を算出する。
まず、所定の時間間隔だけ離れて計測された距離データの間において当該距離データが比例変化したと仮定した場合に、当該距離データ間の中央の計測時間における距離の値と、その計測時間において実施に計測された距離の値と、の差を算出する。例えば、図6(B)の距離データの一部拡大図の例では、n1,n2,n3,n4,n5という計測時間にて計測された距離データdn1,dn2,dn3,dn4,dn5を実線で示している。また、これらの間であるn1とn5という計測時間の間で比例変化したと仮定した場合の距離データを点線で示している。そして、n5を基準とする比例変化時の距離と実際の計測時の距離との差D5、つまり、dn3という計測時間における距離の差D5は、以下の数式(1)で算出することができる。
D5=(((dn5−dn1)/2)+dn1)−dn3 ・・・(1)
同様に、n6を基準とする上述した差D6、つまり、dn4という計測時間における差D6は、以下の数式(2)で算出することができる。
D6=(((dn6−dn2)/2)+dn2)−dn4 ・・・(2)
そして、上述したように算出した差をグラフにすると、図6(C)に示す形状の曲線が得られる。
続いて、上記図6(C)に示すように得られた曲線から、当該曲線上の縦軸の値が、予め設定された閾値と一致する横軸座標a,b,c,dを特定する。なお、座標a,b,c,dは、それぞれ以下の値である。
座標a:データが連続して閾値超
座標b:データが連続して閾値以下
座標c:データが連続して閾値超
座標d:データが連続して閾値以下
そして、上記座標a,b,c,dから、ツリーリングホルダ1の凹部14の中心位置X0を、下記数式(3)にて算出する。
X0=(((d−c)/2+c)−((b−a)/2+a))/2+((b−a)/2+a) ・・・(3)
これにより、凹部14の中心位置X0(凹部箇所中心データ部分(凹部箇所データ部分))を特定でき、さらに、その前後位置(時間)に計測された距離データを凹部14箇所の距離データとして特定する。そして、当該凹部箇所の距離データを除いた他のデータ部分を、比較対象データとして抽出する。具体的には、図7(A)に示すように、上記凹部14の中心位置X0から、所定の計測時間(位置)だけ離れた3箇所の範囲のデータを、比較対象部分データA,B,Cとして抜き出す。なお、各比較対象部分データA,B,Cの範囲は、それぞれ以下のように抜き出している。
A:(X0+150データ)〜(X0+850データ)の範囲(700データ)
B:(X0+1150データ)〜(X0+1850データ)の範囲(700データ)
C:(X0+2150データ)〜(X0+2850データ)の範囲(700データ)
そして、以上のように取得した比較対象部分データA,B,Cに含まれる各距離データから、全距離データの平均値を減算する。すると、図7(B)に示すように、オフセットを除去することができる。
以上のように、凹部14の中心位置X0つまり凹部14箇所に対する距離データ部分を基準として、凹部14箇所から離れた部分の距離データを比較対象部分データA,B,Cとすることで、変化量が少ない距離データを取得することができる。
そして、比較部52は、上述したように算出した比較対象部分データを用いて、比較処理を行う。そのために、比較部52は、例えば、正常にツーリングホルダ1が取り付けられた状態である正常状態時の距離データを処理した場合には、その比較対象部分データA,Bを、判定基準データA,Bとして、登録データ記憶部55に記憶する。一方、比較部52は、工具2を使用して加工を行いツーリングホルダ1を交換した直後である使用状態時の距離データを処理した場合には、その比較対象部分データA,Bを、上述した登録データ記憶部55に記憶されている判定基準データA,Bと比較する。なお、正常状態時であるか使用状態時であるかは、距離データの計測前にオペレータにより入力されたデータに基づいて判断して上述したように処理する。
そして、比較部52は、使用状態時の距離データを処理した場合に、上述したように、正常状態時の比較対象部分データA,Bであり登録されている判定基準データA,Bと、新たに計測された使用状態時の比較対象部分データA,Bと、を比較する。この比較処理は、例えば、判定基準データA,Bと比較対象部分データA,Bとの各データの差の平均値を求め、予め設定されている許容値と比較する。そして、正常状態時と使用状態時とにおける各距離データの差が、許容値と比較して大きい場合には、使用状態時のツーリングホルダの取り付け状態が正常ではなく異常であると判別する。そして、その比較結果を判定部53に渡す。
なお、図7(C)に示すように、例えば、凹部14に異物が侵入した場合に、判定基準データA,Bと比較対象部分データA,Bとによって表わされる波形の位相が180度ずれた近似波形となった場合には、各データの差の平均値が0となる場合がある。このようなことに対応すべく、比較部52は、上述したように1つの比較対象部分データA,B(判定基準データ)に含まれる700個の距離データのうち、2分割した350データごとに差の平均値を出して判定する。
具体的には、以下の式に示すように、差を算出する。
AF(AVG)=(A前半分(登録データ)−A前半分(判定データ))/350
AB(AVG)=(A後半分(登録データ)−A後半分(判定データ))/350
BF(AVG)=(B前半分(登録データ)−B前半分(判定データ))/350
BB(AVG)=(B後半分(登録データ)−B後半分(判定データ))/350
(F:前半分350データ、B:後半分350データ、AVG:平均の意)
そして、上記AF(AVG)、AB(AVG)、BF(AVG)、BB(AVG)のいずれかが、どれかが許容値を超えている場合に、ツーリングホルダ1の取り付け状態が異常であると判定する。
なお、ツーリングホルダ1には、凹部14が全周に2箇所あり、登録データと判定データの位相が180度ずれることがあるため、上記判定で「異常」と判定された場合でも、以下の再計算を行い再判定を行い、そして、いずれかが許容値を超えた場合には、ツーリングホルダ1の取り付け状態が異常であると判定する。
AFrty(AVG)=(A前半分(登録データ)−B前半分(判定データ))/350
ABrty(AVG)=(A後半分(登録データ)−B後半分(判定データ))/350
BFrty(AVG)=(B前半分(登録データ)−C前半分(判定データ))/350
BBrty(AVG)=(B後半分(登録データ)−C後半分(判定データ))/350
そして、上記比較部52から、定基準データと比較対象部分データとの比較結果を受けた判定部53(取り付け状態判別手段)は、使用状態時のツーリングホルダの取り付け状態が異常であると判別された場合には、その判別結果を表示装置6に出力する。但し、判別結果の出力方法は、表示装置6に表示することに限定されず、警告音などを出力するなど、いかなる方法でもよい。
なお、上述した比較部52に比較方法は一例であって、他の方法にて正常状態時と使用状態時とにおける各距離データの比較を行って、ツーリングホルダの取り付け状態を判別してもよい。
[動作]
次に、上述したツーリングホルダ振れ検出システムの動作を、図8のフローチャートを参照して説明する。まず、スピンドルヘッド部3とツーリングホルダ1とが清掃された状態である正常状態時には、オペレータ1は、ツーリングホルダ1をスピンドルヘッド部3に装着して、動作状態として「登録」を指定する入力をシステムに対して行う(ステップS1)。その後、スピンドルヘッド部3を回転駆動することで、ツーリングホルダ1が回転する。このとき、システムは、ツーリングホルダ1までの距離を計測して(距離計測工程)、この距離データを一時的に記憶保持する(ステップS2、距離データ蓄積工程)。
続いて、システムは、上述したように取得した距離データに対して、上述した処理を行うことで抽出した比較対象部分データを(ステップS3)、判定基準データとして登録しておく(ステップS4で「登録」、ステップS5)。
その後、種々の加工を行って、ツーリングホルダ1を交換した直後である使用状態時には、オペレータ1は、ツーリングホルダ1をスピンドルヘッド部3に装着して、動作状態として「判定」を指定する入力をシステムに対して行う(ステップS1)。その後、スピンドルヘッド部3を回転駆動することで、ツーリングホルダ1が回転する。このとき、システムは、ツーリングホルダ1までの距離を計測して(距離計測工程)、この距離データを一時的に記憶保持する(ステップS2、距離データ蓄積工程)。
続いて、システムは、上述したように取得した距離データに対して、上述した処理を行うことで比較対象部分データを抽出する(ステップS3)。そして、この比較対象部分データと、上述したように登録してある判定基準データと、を比較する(ステップS4で「判定」、ステップS6、距離データ比較工程)。その後、比較結果に基づいて、ツーリングホルダ1の取り付け状態が正常であるか否かを判定し(ステップS7、取り付け状態判別工程)、異常であると判定されると(ステップS7でNo)、表示装置6から異常である旨の出力を行う(ステップS8)。
なお、上記では、正常状態時に計測した距離データから事前に比較対象部分データを算出して、判別基準データとして登録する場合を例示したが、正常状態時の距離データに対する処理を行うことなく、当該距離データを登録しておくだけでもよい。この場合には、判定状態時に距離データを計測した後に、正常状態時の距離データを読み出して、これら各距離データに対する比較対象部分データを算出し、比較してもよい。
以上のように、本発明によると、ツーリングホルダ1の回転周囲の距離を計測することで、迅速かつ適切に取り付け時の異常を検出することができ、工作機械を利用した加工効率の向上を図ることができる。
本発明のツーリングホルダ振れ検出システムは、ボール盤やマシニングセンタなどの工作機械に利用することができ、産業上の利用可能性を有する。
ツーリングホルダの取り付け状態を示す図である。 ツーリングホルダの取り付け状態を示す図である。 ツーリングホルダの構成を示す図である。 ツーリングホルダ振れ検出システムの構成を示す図である。 ツーリングホルダ振れ検出システムによる距離データの処理の様子を示す説明図である。 ツーリングホルダ振れ検出システムによる距離データの処理の様子を示す説明図である。 ツーリングホルダ振れ検出システムによる距離データの処理の様子を示す説明図である。 ツーリングホルダ振れ検出システムの動作を示すフローチャートである。
符号の説明
1 ツーリングホルダ
2 工具
3 スピンドルヘッド部
4 距離センサ
5 制御装置
6 表示装置
11 工具保持部
12 フランジ部
13 シャンク部
14 凹部
31 ホルダ保持穴
51 計測部
52 比較部
53 判定部
54 計測データ記憶部
55 登録データ記憶部
a 切削切子

Claims (9)

  1. 工作機械本体に設けられた回転駆動部に取り付けられ、当該回転駆動部に対する取り付け箇所とは反対側の端部にて工具を保持するツーリングホルダの回転周囲と、当該回転周囲の外側に位置する所定箇所と、の距離を、前記ツーリングホルダの回転時に計測する距離計測手段と、
    前記距離計測手段にて計測された距離データを蓄積する距離データ蓄積手段と、
    異なる時期に計測され前記距離データ蓄積手段に蓄積された各前記距離データを比較する距離データ比較手段と、
    前記距離データ比較手段による比較結果に基づいて、前記回転駆動部に対する前記ツーリングホルダの取り付け状態を判別する取り付け状態判別手段と、
    を備えたツーリングホルダ振れ検出システム。
  2. 請求項1記載のツーリングホルダ振れ検出システムであって、
    前記距離計測手段は、前記ツーリングホルダが1回転する間に、前記距離を複数回計測する、
    ツーリングホルダ振れ検出システム。
  3. 請求項2記載のツーリングホルダ振れ検出システムであって、
    前記距離計測手段は、前記ツーリングホルダの最も径の大きい回転周囲箇所にて前記距離を計測する、
    ツーリングホルダ振れ検出システム。
  4. 請求項2又は3記載のツーリングホルダ振れ検出システムであって、
    前記距離データ比較手段は、前記各距離データから、当該各距離データの一部をそれぞれ各比較対象データとして抜き出して、当該各比較対象データを比較する、
    ツーリングホルダ振れ検出システム。
  5. 請求項4記載のツーリングホルダ振れ検出システムであって、
    前記距離データ比較手段は、前記各距離データから、前記ツーリングホルダの回転周囲に形成された凹部箇所に対する距離を計測した凹部箇所データ部分をそれぞれ特定し、当該各凹部箇所データ部分を基準として前記各距離データから前記各比較対象部分データをそれぞれ抜き出して比較する、
    ツーリングホルダ振れ検出システム。
  6. 請求項5記載のツーリングホルダ振れ検出システムであって、
    前記距離データ比較手段は、前記各距離データから、前記ツーリングホルダの回転周囲に形成された凹部箇所の中心に対する距離を計測した凹部箇所中心データ部分をそれぞれ特定し、当該各凹部箇所中心データ部分を前記各凹部箇所データ部分として特定する、
    ツーリングホルダ振れ検出システム。
  7. 請求項5又は6記載のツーリングホルダ振れ検出システムであって、
    前記距離データ比較手段は、前記各距離データから、それぞれ前記各凹部箇所データ部分を除いた他のデータ部分を前記各比較対象部分データとしてそれぞれ抜き出して比較する、
    ツーリングホルダ振れ検出システム。
  8. 請求項1乃至7のいずれか一項に記載のツーリングホルダ振れ検出システムであって、
    前記距離計測手段を、前記工作機械本体に設けられた加工テーブルに固定して設けた、
    ツーリングホルダ振れ検出システム。
  9. 工作機械本体に設けられた回転駆動部に取り付けられ、当該回転駆動部に対する取り付け箇所とは反対側の端部にて工具を保持するツーリングホルダの回転周囲と、当該回転周囲の外側に位置する所定箇所と、の距離を、前記ツーリングホルダの回転時に計測する距離計測工程と、
    前記距離計測工程にて計測された距離データを蓄積する距離データ蓄積工程と、
    異なる時期に計測され蓄積された各前記距離データを比較する距離データ比較工程と、
    前記距離データ比較工程による比較結果に基づいて、前記回転駆動部に対する前記ツーリングホルダの取り付け状態を判別する取り付け状態判別工程と、
    を有するツーリングホルダ振れ検出方法。
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