JP2010140061A - 定着装置および画像形成装置 - Google Patents

定着装置および画像形成装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2010140061A
JP2010140061A JP2010064480A JP2010064480A JP2010140061A JP 2010140061 A JP2010140061 A JP 2010140061A JP 2010064480 A JP2010064480 A JP 2010064480A JP 2010064480 A JP2010064480 A JP 2010064480A JP 2010140061 A JP2010140061 A JP 2010140061A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
endless belt
peripheral surface
lubricant
inner peripheral
fixing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2010064480A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4548548B2 (ja
Inventor
Masayuki Kono
将行 河野
Eiichiro Tokuhiro
英一郎 徳弘
Atsumi Kurita
篤実 栗田
Yosuke Tsutsumi
洋介 堤
Hiroshi Tamemasa
博史 為政
Junpei Amano
淳平 天野
Hideaki Sekiguchi
英明 関口
Atsushi Shikibe
厚 色部
Kazuo Fujiwara
一生 藤原
Yasuhiro Uehara
康博 上原
Tetsuo Yamada
哲夫 山田
Atsuhito Tokuyama
篤人 徳山
Yasutaka Naito
康隆 内藤
Hideaki Ohara
秀明 大原
Jun Kimura
潤 木村
Kenji Nakatogawa
健司 中戸川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Business Innovation Corp
Original Assignee
Fuji Xerox Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fuji Xerox Co Ltd filed Critical Fuji Xerox Co Ltd
Priority to JP2010064480A priority Critical patent/JP4548548B2/ja
Publication of JP2010140061A publication Critical patent/JP2010140061A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4548548B2 publication Critical patent/JP4548548B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Fixing For Electrophotography (AREA)

Abstract

【課題】定着装置における記録紙の搬送能力の安定を図ることにより、長期に亘り紙しわや画像ずれ等の発生を抑えて高品質な画像を形成する。
【解決手段】回動可能な定着ロール61と、定着ロール61に接触しながら移動可能なエンドレスベルト62と、エンドレスベルト62の内側に配置され、エンドレスベルト62を定着ロール61に圧接させて定着ロール61とエンドレスベルト62との間にニップ部Nを形成する圧力パッド64と、エンドレスベルト62の内周面に接触するように配置され、潤滑剤をエンドレスベルト62の内周面に対し供給する潤滑剤塗布部材67とを備え、エンドレスベルト62は、内周面にエンドレスベルト62の移動方向に沿って溝部を有するとともに、溝部を含む内周面に不規則な凹凸を有し、凹凸によりニップ部Nにて潤滑剤の供給及び回収を行うことにより潤滑剤を入れ替える
【選択図】図2

Description

本発明は、定着装置等に関し、より詳しくは例えば電子写真方式を利用した画像形成装置に用いられる定着装置等に関する。
電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置では、例えばドラム状に形成された感光体を一様に帯電し、この感光体を画像情報に基づいて制御された光で露光して感光体上に静電潜像を形成する。そして、この静電潜像をトナーによって可視像(トナー像)とし、さらにこのトナー像を記録紙に転写し、これを定着装置によって定着して画像形成している。
かかる画像形成装置に用いられる定着装置においては、図10に示したように、円筒状の芯金111の内部に加熱源113を備え、その芯金111の外周面に離型層112が形成された定着ロール110と、この定着ロール110に対して圧接配置され、芯金121の外周面に耐熱性弾性体層122、および耐熱性樹脂被膜あるいは耐熱性ゴム被膜による離型層123が形成された加圧ロール120とで構成されている。そして、定着ロール110と加圧ロール120との間に、未定着トナー像を担持した記録紙を通過させて、未定着トナー像に対して加熱と加圧とを行うことによって、記録紙にトナー像を定着している。このような定着装置は、加熱ロール方式と呼ばれて、一般に広く利用されている。
ところで、加熱ロール方式の定着装置において高速化を図ろうとする場合には、トナーと記録紙に充分な熱量を供給するために、ニップ幅を定着速度に比例して広くすることが必要となる。ニップ幅を広くする方法として、定着ロールと加圧ロールとの間の荷重を大きくする方法や、弾性体の厚さを厚くする方法、さらにはロール径を大きくする方法がある。
しかし、荷重を大きくする方法や、弾性体の厚さを厚くする方法では、ロールの撓みに起因するニップ幅の形状がロール軸に沿って不均一になることから、定着むらや紙しわが発生する等といった画像品質上の問題が生じる。また、ロール径を大きくする方法では、装置の大型化を招くとともに、ロールを室温から定着可能温度に上昇させるまでの時間(ウォームアップタイム)が長くなるという問題がある。
そこで、これらの問題を解消して、画像形成装置の高速化に対応した定着装置を実現するべく、本出願人は、表面が弾性変形する回転可能な定着ロールと、この定着ロールに接触したまま走行可能なエンドレスベルトと、このエンドレスベルトの内側に非回転状態で配置された圧力パッドとを具備し、圧力パッドによって、定着ロールとの接触面が形成されるようにエンドレスベルトを定着ロールに圧接させ、エンドレスベルトと定着ロールとの間にシートを通過させることができるようにベルトニップを設けるとともに、定着ロールの表面のうち、シートの出口側を局部的に弾性変形させるように構成した定着装置に関する技術を提案している(例えば、特許文献1参照)。
かかる特許文献1に記載した技術では、従来の加熱ロール方式の定着装置における加圧ロールに代え、圧力パッドを用いてエンドレスベルトを定着ロールに圧接させている。このような構成を採用することにより、定着ロールとエンドレスベルトとによって形成されるベルトニップの幅が従来の定着ロールと加圧ロールとのロールニップの幅よりも容易に大きくすることができるので、高速化対応が可能となり、しかも装置の小型化を図ることも容易である。
特に、定着ロールに圧接させるエンドレスベルトの熱容量が小さく、さらに圧力パッドが非回転状態で配置されているために定着ロールから伝達される熱も発散され難い。そのため、定着ロールの回転が開始されても、定着ロールからエンドレスベルト側に奪われる熱量は少なく、熱をトナーの溶融に利用する効率を高めるとともに、ベルトニップでの温度低下量も小さいことから、トナーの定着性の向上を図ることができるという利点を有している。
特許第3298354号公報(第4−7頁)
ところで、圧力パッドを用いてエンドレスベルトをロールに圧接させる方式の定着装置においては、圧力パッドによりエンドレスベルトをロールに圧接させるに際し、圧力パッドとエンドレスベルトとの間の滑り性を確保するために、両者の間に潤滑剤を塗布したり、さらには圧力パッド上に低摩擦部材を配置し、この低摩擦部材とエンドレスベルトとの摺擦面に潤滑剤を塗布して摺動させている。
しかしながら、圧力パッドとエンドレスベルトとの間の摺動部に潤滑剤を供給するに際しては、一旦エンドレスベルトの内周面に潤滑剤を塗布して、エンドレスベルトの回動に伴って摺動部まで搬送する方法が採られるが、エンドレスベルトの内周面に潤滑剤を安定的に塗布することが難しいため、摺動部に対して充分な潤滑剤を長期に亘って安定して供給することが困難であった。
また、圧力パッドとエンドレスベルトとの間は加圧されているために、圧力パッド上に低摩擦部材を配置した場合においても、エンドレスベルトと低摩擦部材との摺動部では、エンドレスベルトが移動するのに伴って、塗布された潤滑剤を摺動部から押し出す力が作用し、この摺動部において潤滑剤を安定して保持しておくことが難しい。また、定着ロールからの熱により潤滑剤の劣化が生じ、そのために潤滑剤の粘度が上昇し易い。さらには、潤滑剤量の低下により低摩擦部材におけるエンドレスベルトとの摺擦面に摩耗が生じて、低摩擦部材とエンドレスベルトとの滑り性がさらに低下することもある。
そのために、圧力パッドとエンドレスベルトとの接触抵抗(摺動抵抗)の増加が生じてエンドレスベルトの動きが定着ロールに対応し難くなることから、記録紙の搬送が良好でなくなり、紙しわや画像ずれ等の画像不良を生じさせる可能性があった。
そこで本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、定着装置における記録紙の搬送能力の安定を図ることにより、長期に亘り紙しわや画像ずれ等の発生を抑えて高品質な画像を形成することにある。
請求項1に記載の発明は、記録材に担持されたトナー像を定着する定着装置であって、回動可能な回動部材と、前記回動部材に接触しながら移動可能なエンドレスベルトと、前記エンドレスベルトの内側に配置され、当該エンドレスベルトを前記回動部材に圧接させて当該回動部材と当該エンドレスベルトとの間に前記記録材が通過するニップ部を形成する圧力部材と、前記エンドレスベルトの内周面に接触するように配置され、潤滑剤をエンドレスベルトの内周面に対し供給する潤滑剤塗布部材とを備え、前記エンドレスベルトは、当該内周面に当該エンドレスベルトの移動方向に沿って溝部を有するとともに、当該溝部を含む当該内周面に不規則な凹凸を有し、当該凹凸により前記ニップ部にて前記潤滑剤の供給及び回収を行うことにより当該潤滑剤を入れ替えることを特徴とする定着装置である。
請求項2に記載の発明は、前記エンドレスベルトは少なくとも内周面がポリイミドで構成され、当該内周面にアミン変性シリコーンオイルが塗布されることを特徴とする請求項1記載の定着装置である。
請求項3に記載の発明は、前記回動部材を加熱する加熱部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の定着装置である。
請求項4に記載の発明は、前記エンドレスベルトを加熱する加熱部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の定着装置である。
請求項5に記載の発明は、トナー像を形成するトナー像形成手段と、前記トナー像形成手段によって形成されたトナー像を記録材上に転写する転写手段と、前記記録材上に転写されたトナー像を当該記録材に定着する定着手段とを含み、前記定着手段は、回動可能な回動部材と、前記回動部材に接触しながら移動可能であり、内周面に自らの移動方向に沿って溝部を有するとともに、当該溝部を含む当該内周面に不規則な凹凸が形成されたエンドレスベルトと、前記エンドレスベルトの内側に配置され、当該エンドレスベルトを前記回動部材に圧接させて当該回動部材と当該エンドレスベルトとの間に前記記録材が通過するニップ部を形成する圧力部材と、前記エンドレスベルトの内周面に接触するように配置され、潤滑剤を当該エンドレスベルトの内周面に対し供給する潤滑剤塗布部材とを備え、前記エンドレスベルトは、前記凹凸により前記ニップ部にて前記潤滑剤の供給及び回収を行うことにより当該潤滑剤を入れ替えることを特徴とする画像形成装置である。
本発明の効果として、定着装置における記録紙の搬送能力の安定を図ることにより、長期に亘り紙しわや画像ずれ等の発生を抑えて高品質な画像を形成することができる画像形成装置を提供することが可能となった。
本発明の画像形成装置を示した概略構成図である。 実施の形態1に係る定着装置の構成を示す側断面図である。 エンドレスベルトの内周面の表面形状を示した図である。 エンドレスベルトの内周面の表面形状を示した図である。 エンドレスベルトの内周面の潤滑剤の保持能力を比較した図である。 定着ロールの駆動トルクの経時変化を示した図である。 定着ロールの駆動トルクの経時変化を示した図である。 エンドレスベルトから発生する異音のレベルを示した図である。 実施の形態2に係る定着装置の構成を示す側断面図である。 従来の定着装置の構成を示す側断面図である。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[実施の形態1]
図1は本実施の形態が適用される画像形成装置を示した概略構成図である。図1に示す画像形成装置は、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1K、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー画像を記録材(記録紙)である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写部20、二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着装置60を備えている。また、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。
本実施の形態において、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、矢印A方向に回転する感光体ドラム11の周囲に、これらの感光体ドラム11を帯電する帯電器12、感光体ドラム11上に静電潜像を書込むレーザ露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)、各色成分トナーが収容されて感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14、感光体ドラム11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16、感光体ドラム11上の残留トナーが除去されるドラムクリーナ17、などの電子写真用デバイスが順次配設されている。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に、略直線状に配置されている。
中間転写体である中間転写ベルト15は、ポリイミドあるいはポリアミド等の樹脂にカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させたフィルム状の無端ベルトで構成されている。そして、その体積抵抗率は10〜1014Ωcmとなるように形成されており、その厚みは例えば0.1mm程度に構成されている。中間転写ベルト15は、各種ロールによって図1に示すB方向に所定の速度で循環駆動(回動)されている。この各種ロールとして、定速性に優れたモータ(図示せず)により駆動されて中間転写ベルト15を回動させる駆動ロール31、各感光体ドラム11の配列方向に沿って略直線状に延びる中間転写ベルト15を支持する支持ロール32、中間転写ベルト15に対して一定の張力を与えると共に中間転写ベルト15の蛇行を防止する補正ロールとして機能するテンションロール33、二次転写部20に設けられるバックアップロール25、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニングバックアップロール34を有している。
一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に対向して配置される一次転写ロール16で構成されている。一次転写ロール16は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が107.5〜1108.5Ωcmのスポンジ状の円筒ロールである。そして、一次転写ロール16は中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に圧接配置され、さらに一次転写ロール16にはトナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体ドラム11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上において重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
二次転写部20は、中間転写ベルト15のトナー像担持面側に配置される二次転写ロール22と、バックアップロール25とによって構成される。バックアップロール25は、表面がカーボンを分散したEPDMとNBRとのブレンドゴムのチューブ、内部がEPDMゴムで構成されている。そして、その表面抵抗率が10〜1010Ω/□となるように形成され、硬度は例えば70°(アスカーC:高分子計器社製、以下同様。)に設定される。このバックアップロール25は、中間転写ベルト15の裏面側に配置されて二次転写ロール22の対向電極をなし、二次転写バイアスが安定的に印加される金属製の給電ロール26が当接配置されている。
一方、二次転写ロール22は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が107.5〜108.5Ωcmのスポンジ状の円筒ロールである。そして、二次転写ロール22は中間転写ベルト15を挟んでバックアップロール25に圧接配置され、さらに二次転写ロール22は接地されてバックアップロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙P上にトナー像を二次転写する。
また、中間転写ベルト15の二次転写部20の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト15の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーナ35が接離自在に設けられている。一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配設されている。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配設されている。この基準センサ42は、中間転写ベルト15の裏側に設けられた所定のマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部40からの指示により、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは画像形成を開始するように構成されている。
さらに、本実施の形態の画像形成装置では、用紙搬送系として、用紙Pを収容する用紙トレイ50、この用紙トレイ50に集積された用紙Pを所定のタイミングで取り出して搬送するピックアップロール51、ピックアップロール51により繰り出された用紙Pを搬送する搬送ロール52、搬送ロール52により搬送された用紙Pを二次転写部20へと送り込む搬送シュート53、二次転写ロール22により二次転写された後に搬送される用紙Pを定着装置60へと搬送する搬送ベルト55、用紙Pを定着装置60に導く定着入口ガイド56を備えている。
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。図1に示すような画像形成装置では、図示しない画像読取装置(IIT)や図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等から出力される画像データは、図示しない画像処理装置(IPS)により所定の画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって作像作業が実行される。IPSでは、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の所定の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器13に出力される。
レーザ露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体ドラム11に照射している。画像形成ユニット1Y,1M,1C、1Kの各感光体ドラム11では、帯電器12によって表面が帯電された後、このレーザ露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの感光体ドラム11上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム11と中間転写ベルト15とが当接する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。より具体的には、一次転写部10において、一次転写ロール16により中間転写ベルト15の基材に対しトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト15の表面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
トナー像が中間転写ベルト15の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト15は移動してトナー像が二次転写部20に搬送される。トナー像が二次転写部20に搬送されると、用紙搬送系では、トナー像が二次転写部20に搬送されるタイミングに合わせてピックアップロール51が回転し、用紙トレイ50から所定サイズの用紙Pが供給される。ピックアップロール51により供給された用紙Pは、搬送ロール52により搬送され、搬送シュート53を経て二次転写部20に到達する。この二次転写部20に到達する前に、用紙Pは一旦停止され、トナー像が担持された中間転写ベルト15の移動タイミングに合わせてレジストロール(図示せず)が回転することで、用紙Pの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
二次転写部20では、中間転写ベルト15を介して、二次転写ロール22がバックアップロール25に押圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Pは、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。その際に、給電ロール26からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール22とバックアップロール25との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト15上に担持された未定着トナー像は、二次転写ロール22とバックアップロール25とによって押圧される二次転写部20において、用紙P上に一括して静電転写される。
その後、トナー像が静電転写された用紙Pは、二次転写ロール22によって中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール22の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。搬送ベルト55では、定着装置60における最適な搬送速度に合わせて、用紙Pを定着装置60まで搬送する。定着装置60に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着装置60によって熱および圧力で定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙載置部に搬送される。
一方、用紙Pへの転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回動に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニングバックアップロール34および中間転写ベルトクリーナ35によって中間転写ベルト15上から除去される。
次に、本実施の形態の画像形成装置に用いられる定着装置60について説明する。図2は本実施の形態の定着装置60の構成を示す側断面図である。定着装置60は、回動部材の一例としての定着ロール61、エンドレスベルト62、エンドレスベルト62を介して定着ロール61から押圧される圧力部材の一例としての圧力パッド64により主要部が構成されている。
定着ロール61は、金属製のコア(円筒状芯金)611の周囲に耐熱性弾性体層612、および離型層613を積層して構成されたものである。
定着ロール61の内部には、発熱源としてのハロゲンランプ66が配設されている。一方、定着ロール61の表面には温度センサ69が接触して配置されている。画像形成装置の制御部40は、この温度センサ69による温度計測値に基づいてハロゲンランプ66の点灯を制御し、定着ロール61の表面温度が所定の設定温度(例えば、170℃)を維持するように調整している。
エンドレスベルト62は、圧力パッド64とベルト走行ガイド63とによって回動自在に支持されている。そして、ニップ部Nにおいて定着ロール61に対して圧接されて配置されている。
圧力パッド64は、エンドレスベルト62の内側において、エンドレスベルト62を介して定着ロール61に押圧される状態で配置され、定着ロール61との間でニップ部Nを形成している。圧力パッド64は、幅の広いニップ部Nを確保するためのプレニップ部材64aをニップ部Nの入口側に配置し、定着ロール61に歪みを与えるための剥離ニップ部材64bをニップ部Nの出口側に配置している。さらに、エンドレスベルト62の内周面と圧力パッド64との摺動抵抗を小さくするために、プレニップ部材64aおよび剥離ニップ部材64bのエンドレスベルト62と接する面に低摩擦シート68が設けられている。そして、圧力パッド64と低摩擦シート68とは、金属製のホルダ65に保持されている。
さらに、ホルダ65には、ベルト走行ガイド63が取り付けられ、エンドレスベルト62がスムーズに回動することができるように構成されている。すなわち、ベルト走行ガイド63は、エンドレスベルト62内周面と摺擦するため、静止摩擦係数の小さな材質で形成されている。また、ベルト走行ガイド63は、エンドレスベルト62から熱を奪い難いように熱伝導率の低い材質で形成されている。
定着ロール61は、図示しない駆動モータにより矢印C方向に回転し、この回転によりエンドレスベルト62も従動回転する。図1に示した画像形成装置の二次転写部20においてトナー像が静電転写された用紙Pは、定着入口ガイド56によって導かれて、ニップ部Nに搬送される。そして、用紙Pがニップ部Nを通過する際に、用紙P上のトナー像はニップ部Nに作用する圧力と、定着ロール61から供給される熱とによって定着される。本実施の形態の定着装置60では、ほぼ定着ロール61の外周面に倣う凹形状のプレニップ部材64aによりニップ部Nを広く構成することができるため、安定した定着性能を確保することができる。
加えて、本実施の形態の定着装置60では、定着ロール61の外周面に対し突出させて剥離ニップ部材64bを配置することにより、ニップ部Nの出口領域(剥離ニップ部)において定着ロール61の歪みが局所的に大きくなるように構成することもできる。このように剥離ニップ部材64bを配置すれば、定着後の用紙Pは、剥離ニップ部を通過する際に、局所的に大きく形成された歪みを通過することになるので、定着ロール61に巻き付くことのない用紙Pの剥離を効果的に行うことができる。
特に、定着ロール61の歪みを局所的に大きくすることによって、小さい歪み量で高い剥離性能を得ることが可能となる。そのため、定着ロール61の離型層613として、薄膜の耐熱性樹脂を用いた場合においても、用紙Pにおける紙しわの発生を抑制できる。また、耐熱性弾性体層612と離型層613との間の剥がれ等も発生し難く、剥離性能の維持と併せて長期に亘る部品性能の信頼性を向上させることができる。
さらには、定着ロール61の歪み量を小さく形成できるので、定着ロール61の耐熱性弾性体層612を薄肉化することができる。そのため、定着ロール61の熱容量を小さく構成できるので、ウォームアップタイムを短くするとともに、消費電力の低減を図ることもできる。また、熱伝導率の低い耐熱性弾性体層612を薄肉化できるため、定着ロール61の内面と外面との間の熱抵抗が小さくなって熱応答性の向上を図れるため、画像形成装置の高速化にも適している。
なお、剥離の補助手段として、定着ロール61のニップ部Nの下流側に、剥離部材70を配設することも可能である。剥離部材70は、剥離バッフル71が定着ロール61の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に定着ロール61と近接する状態でホルダ72によって保持されている。
次に、定着装置60を構成する各部材について詳細に述べる。まず定着ロール61では、コア611は、鉄、アルミニウム、SUS等の熱伝導率の高い金属製の円筒体で構成されている。コア611の外形および肉厚は、本実施の形態の定着装置60では、圧力パッド64の押圧力が小さいため、小径化、薄肉化を図ることができる。
耐熱性弾性体層612としては、耐熱性の高い弾性体であればどのような材料を用いることも可能である。特に、ゴム硬度が25〜40°(JIS−A)程度のゴム、エラストマ等の弾性体を用いるのが好ましく、具体的には、シリコーンゴム、フッ素ゴム等を挙げることができる。
離型層613は、耐熱性の樹脂であればどのような樹脂を用いてもよく、例えばシリコーン樹脂、フッ素樹脂等を用いることができるが、離型層613のトナーに対する離型性や耐摩耗性の観点から、フッ素樹脂が適している。フッ素樹脂としては、PFA、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体)等が使用できる。離型層613の厚みとしては、好ましくは5〜30μm、より好ましくは10〜20μmである。離型層613の厚みが5μm未満であると、定着ロール61の歪みに基づき用紙Pにしわが生じ易くなり、一方、30μmを超えると、離型層613が硬くなり、画像に光沢むら等の欠陥が生じる可能性が増え、ともに好ましくないからである。
エンドレスベルト62は、原形が円筒形状に形成された無端ベルトであり、ベース層と、このベース層の定着ロール61側の面または両面に被覆された離型層とから構成されている。ベース層は、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等のポリマーやSUS、ニッケル、銅等の金属により形成され、その厚みは、30〜200μm、好ましくは50〜125μm、より好ましくは75〜100μm程度である。ベース層の表面に被覆される離型層としては、フッ素樹脂、例えばPFA、PTFE、FEPで形成され、その厚みは5〜100μm、好ましくは10〜30μm程度である。
圧力パッド64は、上述したように、プレニップ部材64a、剥離ニップ部材64bで構成され、ホルダ65に支持されている。プレニップ部材64aには、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性体や板バネ等を用いることができ、定着ロール61側の面は、ほぼ定着ロール61の外周面に倣う凹形状で形成されている。
剥離ニップ部材64bは、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド等の耐熱性を有する樹脂、または鉄、アルミニウム、SUS等の金属で形成されている。剥離ニップ部材64bの形状としては、ニップ部Nにおける外面形状が一定の曲率半径を有する凸曲面状に形成される。
低摩擦シート68は、エンドレスベルト62内周面と圧力パッド64との摺動抵抗(摩擦抵抗)を低減するために設けられ、摩擦係数が小さく、耐摩耗性・耐熱性に優れた材質が適している。具体的には、シンタード成型したPTFE樹脂シート、テフロン(商標名)を含浸させたガラス繊維シート等を用いることができる。なお、低摩擦シート68は、プレニップ部材64aや剥離ニップ部材64bと別体に構成しても、プレニップ部材64aや剥離ニップ部材64bと一体的に構成しても、いずれでもよい。
また、ベルト走行ガイド63は、上述したように、エンドレスベルト62の内周面と摺擦するため、摩擦係数が低く、かつ、エンドレスベルト62から熱を奪い難いように熱伝導率が低い材質が適しており、PFAやPPS等の耐熱性樹脂が用いられる。
ベルト走行ガイド63には、定着装置60の長手方向に亘って、潤滑剤塗布部材67が配設されている。潤滑剤塗布部材67は、エンドレスベルト62内周面に対して接触するように配置され、アミン変性シリコーンオイル等の潤滑剤を適量供給する。これにより、エンドレスベルト62と低摩擦シート68との摺動部に潤滑剤を供給し、低摩擦シート68を介したエンドレスベルト62と圧力パッド64との摺動抵抗をさらに低減して、エンドレスベルト62の円滑な回動を図っている。
ここで、本実施の形態の定着装置60においては、エンドレスベルト62にはその内周面に不規則な微細凹凸が形成されている。このように、エンドレスベルト62の内周面に不規則な微細凹凸を形成することにより、エンドレスベルト62の内周面における潤滑剤の保持能力を向上させることができる。その結果、エンドレスベルト62と低摩擦シート68との摺動部において、潤滑剤を安定して維持することが可能となるので、エンドレスベルト62と圧力パッド64との摺動抵抗を長期に亘って低い状態に保つことが可能となる。
上述したように、トナー像が静電転写された用紙Pが定着装置60のニップ部Nを通過することにより、トナー像が用紙Pに定着されるが、用紙Pがニップ部Nを通過する際の搬送力は、駆動側の定着ロール61から受けている。すなわち、用紙Pは、定着ロール61の回転に伴い、定着ロール61から摩擦力を受けることによって搬送されている。
一方、ニップ部Nに用紙Pが搬送されていない状態では、従動側のエンドレスベルト62も定着ロール61の回転に伴って定着ロール61から摩擦力を受けることによって回動している。しかし、ニップ部Nに用紙Pが搬送され、用紙Pがニップ部Nに挟持されている状態では、エンドレスベルト62は用紙Pを介して定着ロール61から搬送力を受けている。したがって、用紙P側から捉えると、用紙Pがニップ部Nを通過する際には、用紙Pには定着ロール61からの搬送力を受けるとともに、エンドレスベルト62側から搬送方向とは逆方向の力(逆搬送力)が作用することとなる。
ところで、エンドレスベルト62は、ニップ部Nにおいて圧力パッド64が押圧されているために、圧力パッド64からは回動方向とは逆の方向の力が摺動抵抗として作用している。そのため、上述したように、エンドレスベルト62と圧力パッド64との間には低摩擦シート68を介在させるとともに、潤滑剤塗布部材67からエンドレスベルト62の内周面に潤滑剤を塗布して、エンドレスベルト62と圧力パッド64との摺動抵抗を極力低減するように構成している。
したがって、通常状態では、エンドレスベルト62が圧力パッド64から受ける摺動抵抗は極めて小さく、円滑に回動可能であることから、エンドレスベルト62は用紙Pと等速で回動することが可能である。この場合には、用紙Pが受ける逆搬送力は、エンドレスベルト62を介した圧力パッド64からの摺動抵抗であるから、無視できる程度に小さい。そのため、用紙Pは定着ロール61と等速に安定して搬送される。
ところが、エンドレスベルト62の内周面に塗布される潤滑剤量が不安定であると、エンドレスベルト62と低摩擦シート68との間の摺動部に潤滑剤が適量供給できない状態が生じる。特に、エンドレスベルト62と圧力パッド64との間には押圧力が作用しているために、エンドレスベルト62と低摩擦シート68との摺動部では、塗布された潤滑剤を摺動部から押し出す力が作用している。そのため、エンドレスベルト62が回動を重ねるのに伴って、この摺動部からは徐々に潤滑剤量が減少していく傾向があるので、エンドレスベルト62の内周面の潤滑剤量が不安定であると、摺動部において潤滑剤が不充分な状態が発生する。摺動部での潤滑剤量が不十分では、エンドレスベルト62と圧力パッド64との間の摺動抵抗が高くなる。
エンドレスベルト62と圧力パッド64との間の摺動抵抗が増加すると、用紙Pがニップ部Nを搬送される際に、用紙Pがエンドレスベルト62を介して圧力パッド64から受ける逆搬送力が無視できなくなる。さらに増して、エンドレスベルト62と圧力パッド64との間の摺動抵抗が過大になると用紙Pに作用する逆搬送力が大きくなり、用紙Pの搬送が定着ロール61の回動に追随できなくなって、用紙Pと定着ロール61との間でスリップが発生する。そのため、用紙Pの円滑な搬送が妨げられ、画像ずれや用紙Pにおける紙しわの原因となる。
特に、ニップ部Nにおいては、定着ロール61の外径を中央部から両端部にかけて大きく形成した、所謂逆クラウン形状に構成したり、剥離ニップ部材64bと定着ロール61との間の押圧力が中央部から両端部にかけて大きくなるように設定することによって、常に用紙Pには中央部から両端部に向かって幅方向に力が作用するようにして、用紙Pに紙しわが生じるのを防止している。ところが、エンドレスベルト62と圧力パッド64との間の摺動抵抗が増加すると、用紙Pが定着ロール61の搬送に追随できなくなり、このような用紙Pの幅方向に作用する力のバランスが崩れてしまう。そのため、用紙Pに紙しわを生じさせたり、さらには画像ずれを生じさせることとなる。
そこで、本実施の形態の定着装置60では、エンドレスベルト62の内周面に不規則な微細凹凸を形成し、エンドレスベルト62の内周面における潤滑剤の保持能力を向上させている。エンドレスベルト62の内周面における潤滑剤の保持能力を高くすることによって、エンドレスベルト62と低摩擦シート68との摺動部において、適量の潤滑剤量を安定して維持することが可能となるので、エンドレスベルト62と圧力パッド64との間の摺動抵抗の増加を抑制することができる。その結果、用紙Pを定着ロール61と等速に安定して搬送することが可能となり、画像ずれや用紙Pへの紙しわの発生が抑えられる。
ここで、エンドレスベルト62の内周面に形成される不規則な微細凹凸の作用について詳細に述べる。
まず、上述したように、潤滑剤塗布部材67は、エンドレスベルト62内周面に接触するように配置され、アミン変性シリコーンオイル等の潤滑剤をエンドレスベルト62内周面に対し常時供給している。ここで、潤滑剤としては、アミン変性シリコーンオイル等の液体状のものの他、固形物質と液体とを混合させたグリース等を用いることもでき、またこれらを組み合わせて用いることもできる。
エンドレスベルト62の移動に伴う潤滑剤塗布部材67との接触により、潤滑剤塗布部材67からエンドレスベルト62内周面の全面に亘って塗布された潤滑剤は、エンドレスベルト62内周面に形成された微細凹凸のうち、主として凹部に保持される。潤滑剤は表面張力により互いに集まって一つの集合としてまとまろうとするので、凹部においては、潤滑剤がそれぞれ微小な集合となって安定的に保持されることとなる。
また、エンドレスベルト62内周面と潤滑剤塗布部材67との接触に際して、潤滑剤塗布部材67と微細凹凸の凸部との接触によって潤滑剤が均されるので、微細な凹部には確実に潤滑剤が供給できるとともに、余分な潤滑剤は潤滑剤塗布部材67に回収することができる。そのため、凹部における潤滑剤の保持量は略一定量に制御され、エンドレスベルト62内周面の全面に亘って潤滑剤を均一に保持することも可能である。
具体例として、エンドレスベルト62内周面の表面形状と潤滑剤の保持能力とを比較する。エンドレスベルト62内周面の表面形状と潤滑剤の保持能力とを比較するために、次の5種類のエンドレスベルト62を用いた。図3と図4には、これらのエンドレスベルト62の内周面の表面形状をレーザ顕微鏡を用いて観察した状態を示している。
図3において、(a)は、エンドレスベルト62内周面に対して表面粗し等の処理を施さず、エンドレスベルト62内周面の本来の表面そのままの状態を維持したタイプ(平滑タイプ)である。この平滑タイプでは、表面粗さ値Ra(算術平均粗さ)は、いずれの方向にもRa=約0.2μmである。また、(b)は、エンドレスベルト62の回動方向(移動方向)に沿って溝を形成したタイプ(移動方向溝タイプ)である。この場合の表面粗さ値Raは、移動方向に計測した値がRa=約0.2μm、移動方向に直交する方向(エンドレスベルト62の回動軸方向であり、以下、軸方向とも表現する。)に計測した値がRa=約0.8〜0.9μmである。
また、図4において、(c)は、エンドレスベルト62の回動方向(移動方向)に沿って溝を形成し、さらにその全面にサンドブラスト処理を施したタイプ(溝サンドブラストタイプ)である。この場合の表面粗さ値Raは、移動方向に計測した値がRa=約0.4μm、軸方向に計測した値がRa=約0.8〜0.9μmである。(d)は、エンドレスベルト62内周面の全面に比較的細かなサンドブラスト処理を施したタイプ(小サンドブラストタイプ)である。この場合の表面粗さ値Raは、移動方向および軸方向に計測した値がともにRa=約0.9μmである。(e)は、エンドレスベルト62内周面の全面に比較的粗いサンドブラスト処理を施したタイプ(大サンドブラストタイプ)である。この場合の表面粗さ値Raは、移動方向および軸方向に計測した値が共にRa=約1.3〜1.6μmである。
図5は、これらの(a)〜(e)のタイプのエンドレスベルト62について、エンドレスベルト62の内周面の潤滑剤の保持能力を比較した図である。図5では、潤滑剤の保持能力はエンドレスベルト62の内周面の単位面積当たりに付着するオイル量(ml/m)、すなわちオイル搬送量として計測した。
図5に示したように、(a)平滑タイプに対し、移動方向に沿って溝を形成した(b)移動方向溝タイプではオイル搬送量が増加している。それにも増して、(c)溝サンドブラストタイプや(d)小サンドブラストタイプ、(e)大サンドブラストタイプにおいてオイル搬送量が増加し、特に(c)溝サンドブラストタイプと(d)小サンドブラストタイプにおいて顕著である。
図5の結果より、(b)移動方向溝タイプのように、移動方向に沿って溝を形成することによっても潤滑剤の保持能力は増加するが、(c)溝サンドブラストタイプや(d)小サンドブラストタイプような、表面に不規則(ランダム)な凹凸が形成されることによって、潤滑剤の保持能力は格段に向上することが理解できる。例えば、(b)移動方向溝タイプと(c)溝サンドブラストタイプとを比較すると、(c)溝サンドブラストタイプではRa=約0.4μmのサンドブラスト処理を加えることで、オイル搬送量が略0.1ml/mだけ増加(1.5倍の増加)することが分かる。また、(b)移動方向溝タイプと(d)小サンドブラストタイプとを比較しても、略同様なRa値(=約0.9μm)であっても、溝形状よりもランダムな凹凸形状の方が、オイル搬送量を0.1ml/m以上増加させることが可能となることが分かる。したがって、エンドレスベルト62の内周面をランダムな凹凸形状に形成すれば、エンドレスベルト62の内周面における潤滑剤の保持能力を格段に向上させることができる。
このようにエンドレスベルト62の内周面がランダムな凹凸形状に形成されると、内周面には充分な潤滑剤が保持される。エンドレスベルト62は圧力パッド64と定着ロール61との間で形成されるニップ部Nまで回動されるが、ニップ部Nにおいては、エンドレスベルト62内周面と低摩擦シート68の摺擦面とが面接触した状態となる。ここで、エンドレスベルト62の内周面には微細凹凸が形成されているため、エンドレスベルト62の内周面のうち微細凹凸の凸部において低摩擦シート68の摺擦面と接触することとなる。一方、エンドレスベルト62と圧力パッド64との間には押圧力が作用していることから、微細凹凸の凹部に保持された潤滑剤はこの押圧力によって一部が押し出され、微細凹凸のうちの凸部に潤滑剤を供給する。したがって、エンドレスベルト62内周面と低摩擦シート68の摺擦面との接触では、微細凹凸の凸部による潤滑剤を介した接触状態が形成される。これにより、ニップ部Nでは、微細凹凸の凸部のみの接触であるため接触面積を減らすことができ、さらにその各接触点においては潤滑剤の被膜を介在させることができる。したがって、エンドレスベルト62と圧力パッド64との間の摺動抵抗は極めて小さいものとすることができる。
特に、エンドレスベルト62の内周面に形成された不規則な微細凹凸に潤滑剤を保持させるように構成することによって、ニップ部Nにおける潤滑剤の維持能力を向上させることができる。すなわち、エンドレスベルト62の内周面での潤滑剤の保持能力が高いので、ニップ部Nに対し、順次充分な潤滑剤を供給することができる。一方、ニップ部Nからの潤滑剤の回収も充分に行われるので、ニップ部Nでの潤滑剤量が過剰となって潤滑剤の漏れが生じることもない。このように、ニップ部Nにおいては、充分な潤滑剤の供給と回収とがスムーズに行われるので、ニップ部Nにおける潤滑剤は絶えず入れ替わりながら十分な量が維持される。そのため、エンドレスベルト62と圧力パッド64との間の摺動抵抗を小さく維持するのに加え、熱による劣化に起因する潤滑剤の粘度上昇を抑え、また、低摩擦シート68の摩耗による摩耗粉が潤滑剤に混入することに起因する潤滑剤の粘度上昇も抑制することができるので、長期に亘って摺動抵抗の低減を図ることができる。
さらに、エンドレスベルト62と圧力パッド64との間には押圧力が作用しているが、潤滑剤は微細凹凸の凹部に保持されており、微細凹凸の凸部によってこの押圧力が直接潤滑剤に作用するのを抑制するので、潤滑剤がエンドレスベルト62内周面と低摩擦シート68の摺擦面との摺動部から押し出されることもない。そのため、この摺動部において潤滑剤が失われず、潤滑剤の安定的な維持が可能である。
なお、エンドレスベルト62内周面と圧力パッド64との間に配設される低摩擦シート68は、表面に孔部がなく浸潤性のない材質で形成されることが望ましい。低摩擦シート68を表面に孔部がなく浸潤性のない材質で形成することで、潤滑剤が低摩擦シート68に滲みこむことを抑制できるので、摺動部において潤滑剤が失われず、潤滑剤の安定的な維持を可能とする。
次に、内周面に不規則な微細凹凸が形成されたエンドレスベルト62を用いた本実施の形態の定着装置60において、エンドレスベルト62と圧力パッド64との間の摺動抵抗の経時変化に関する実験を行った。
この実験では、定着ロール61には、アルミニウム製のコア611に、0.6mm厚のシリコーンゴムの耐熱性弾性体層612と、0.03mm厚のPFA樹脂の離型層613を被覆した外径26mmのものを用い、定着ロール61の表面温度は150℃に設定した。また、エンドレスベルト62には、ベース層として外径30mm、厚さ0.075mmのポリイミド樹脂を用い、定着ロール61側に0.01mmのPFA樹脂からなる離型層613を被覆したものを用いた。さらに、圧力パッド64は、シリコーンゴムからなるプレニップ部材64aと、アルミニウムからなる剥離ニップ部材64bと、エンドレスベルト62側の摺擦面側をシンタード成型したPTFE樹脂で被覆した低摩擦シート68とで構成されたものを用いた。
そして、定着装置60をプロセススピード194mm/sに設定して非通紙で回転(空回転)させ、その際の定着ロール61の駆動トルクの経時変化を測定することで、摺動抵抗の変化を評価した。
図6は、内周面に不規則な微細凹凸が形成されたエンドレスベルト62として、図4に示した(c)溝サンドブラストタイプ、(d)小サンドブラストタイプや(e)大サンドブラストタイプと、これらに加えて、比較例として、図3に示した(a)平滑タイプと(b)移動方向溝タイプについて、定着ロール61の駆動トルクの経時変化を測定した結果を示した。
図6に示すように、比較例のエンドレスベルトでは、初期段階から空回転時間が経過するに連れて駆動トルクが上昇し、特に、従来の(a)平滑タイプでは40時間の経過時点で紙しわ発生の限界駆動トルクである0.6N・m近傍に到達するという結果となった。また、溝形成した(b)移動方向溝タイプでは、従来の(a)平滑タイプよりも改善は認められるが、空回転時間の経過に伴う駆動トルクの上昇傾向があり、比較的高い限界駆動トルクに近い値で推移するという結果となった。
一方、本実施の形態のエンドレスベルト62では、(c)溝サンドブラストタイプ、(d)小サンドブラストタイプおよび(e)大サンドブラストタイプのいずれも、空回転時間が経過しても駆動トルクの経時変化は殆ど認められず、駆動トルクは略初期状態の低い駆動トルク(限界駆動トルクの1/2以下のレベル)が維持されるという結果が得られた。
このように、内周面に不規則な微細凹凸が形成されたエンドレスベルト62は、駆動トルクの低減を図る点において、従来の(a)平滑タイプのエンドレスベルトや、さらには溝形成した(b)移動方向溝タイプのエンドレスベルトに対して、格段の有為性を有していることが確認できる。
次に、エンドレスベルト62内周面に形成する微細凹凸の表面粗さ値Raについて述べる。
図6に示した結果から、(c)溝サンドブラストタイプ、(d)小サンドブラストタイプおよび(e)大サンドブラストタイプのいずれにおいても、駆動トルクの低減を図ることができる。この結果と図5に示したオイル搬送量との比較を行うと、(b)移動方向溝タイプでのオイル搬送量では、駆動トルクの変動において不充分であり、(c)溝サンドブラストタイプでのオイル搬送量において、駆動トルクの変動が充分である。したがって、表面粗さ値Raとしては、(b)移動方向溝タイプと(c)溝サンドブラストタイプとの中間値である0.3μm以上に形成することが必要であることが導き出せる。
一方、図5に示したように、(e)大サンドブラストタイプでは、(c)溝サンドブラストタイプや(d)小サンドブラストタイプと比較して、オイル搬送量は減少している。これは、ランダムな凹凸形状であっても、表面粗さ値Raが大きくなりすぎると、凹部において潤滑剤が流動し易くなり、安定的な潤滑剤の保持を行い難くなるためと考えられる。これを考慮し、エンドレスベルト62内周面に形成する微細凹凸の表面粗さ値Raの上限値としては、(e)大サンドブラストタイプを限界として、表面粗さ値Raは1.6μm以下とすることが必要となる。
このように、潤滑剤の保持能力という観点から、表面粗さ値Raが0.3〜1.6μmの不規則(ランダム)な微細凹凸形状に形成することによって、エンドレスベルト62内周面における潤滑剤の優れた保持能力を実現することができる。
なお、特にポリイミドとアミン変性シリコーンオイルとは親和性に優れているので、エンドレスベルト62のベース層としてポリイミドを用いるとともに、潤滑剤としてアミン変性シリコーンオイルを用い、さらにエンドレスベルト62内周面に表面粗さ値Raが0.3〜1.6μmの不規則(ランダム)な微細凹凸を形成することにより、エンドレスベルト62内周面における潤滑剤の保持能力を極めて安定的にすることができる。
図7は、内周面を(d)小サンドブラストタイプとしたエンドレスベルト62を用いて、定着装置60のプロセススピードと定着温度とをそれぞれ異なる設定とした場合の定着ロール61の駆動トルクの経時変化を測定した結果を示した図である。図7においては、プロセススピード(P/S)を104mm/sと194mm/sに設定し、それぞれのプロセススピードについて定着温度(Temp.)を80℃と170℃に設定した。
図7に示すように、(d)小サンドブラストタイプのエンドレスベルト62を用いた場合には、プロセススピードおよび定着温度のいずれの設定でも、130時間程度の空回転においても定着ロール61の駆動トルクの上昇は発生せず、極めて長時間に亘ってエンドレスベルト62と圧力パッド64との間の良好な摺動が行われることが確認された。
次に、エンドレスベルト62内周面に形成する微細凹凸の表面粗さ値Raについて異音の発生の観点から述べる。
本実施の形態の定着装置60では、ニップ部Nにおいて、圧力パッド64がエンドレスベルト62の内側から定着ロール61を押圧するように構成されているために、エンドレスベルト62が回動してニップ部Nを抜け出し、ニップ部Nにおける押圧力から解放される際に、エンドレスベルト62の内周面に形成された微細凹凸と低摩擦シート68の摺擦面との間に摺擦振動が発生して、これが異音となる場合がある。特に、エンドレスベルト62の移動方向に向けた表面粗さ値Raが振動の大きさに影響を与えることから、これが所定値を超えると異音が許容量以上となる。
したがって、エンドレスベルト62からの異音を許容値以下とするように、微細凹凸のエンドレスベルト62の移動方向に向けて計測される表面粗さ値Raは所定値以下に設定する必要がある。
図8は、図3および図4に示した(a)〜(e)のタイプのエンドレスベルト62について、異音のレベルを測定した結果を示した図である。図8に示した結果から、(a)平滑タイプと(b)移動方向溝タイプとを比較すると、異音レベルは68.0dBで同レベルである。また、(b)移動方向溝タイプと(c)溝サンドブラストタイプとを比較すると、異音レベルは、(b)移動方向溝タイプが68.0dBであるのに対し、(c)溝サンドブラストタイプが68.07dBと高くなる。ここで、(a)平滑タイプと(b)移動方向溝タイプでは、エンドレスベルト62の軸方向の表面粗さ値Raが、それぞれ0.2μmと0.8〜0.9μmと異なるが、エンドレスベルト62の移動方向に関しては0.2μmと略同じである。また、(b)移動方向溝タイプと(c)溝サンドブラストタイプでは、エンドレスベルト62の軸方向の表面粗さ値Raが、0.8〜0.9μmと略同じであるが、エンドレスベルト62の移動方向に関しては、それぞれ0.2μmと0.4μmであり、異音レベルの高い(c)溝サンドブラストタイプのほうが大きい。
さらに、(c)溝サンドブラストタイプと(d)小サンドブラストタイプとを比較すると、異音レベルは(d)小サンドブラストタイプの方が68.15dBと高いという結果が得られているが、エンドレスベルト62の軸方向の表面粗さ値Raは、0.8〜0.9μmと略同じであり、エンドレスベルト62の移動方向に関しては、それぞれ0.4μmと0.9μmであって(d)小サンドブラストタイプのほうが大きい。さらに、(d)小サンドブラストタイプと(e)大サンドブラストタイプとを比較しても、エンドレスベルト62の移動方向の表面粗さ値Raが大きい(e)大サンドブラストタイプの方が異音レベルは高い。
これらの点を考慮すると、発生する異音のレベルは、エンドレスベルト62の移動方向の表面粗さ値Raに依存し、エンドレスベルト62の軸方向の表面粗さ値Raについての影響は極めて小さいことが理解できる。
また、本発明者の官能試験では、ユーザが不快に感じることがない異音レベルの許容値としては、68.2dB以下であれば充分であることが見出されている。そこで、この異音レベルの許容値を満たすという観点から、エンドレスベルト62の移動方向の表面粗さ値Raは、図8の結果より、1.0μm以下であることが好ましい。なお、かかる異音の観点からは、エンドレスベルト62の軸方向の表面粗さ値Raについては、特段の制限を設ける必要はない。
このように、エンドレスベルト62の内周面について、潤滑剤の保持能力という観点から、表面粗さ値Raを0.3〜1.6μmの不規則(ランダム)な微細凹凸形状に形成することによって、エンドレスベルト62内周面における潤滑剤の優れた保持能力を実現することができる。また、異音レベルを許容値以下に抑えるという観点からは、エンドレスベルト62の移動方向の表面粗さ値Raを、1.0μm以下に設定することが好ましい。
ところで、微細凹凸の粗さ値について、エンドレスベルト62の移動方向に向けて計測した表面粗さ値をRa2とし、エンドレスベルト62の移動方向と直交する方向(軸方向)に向けて計測した表面粗さ値をRa1とした場合に、Ra2≦Ra1に形成するのが好ましい。
上述したように、エンドレスベルト62から発生する異音は、エンドレスベルト62の移動に伴うエンドレスベルト62の内周面に形成された微細凹凸と低摩擦シート68の摺擦面との摺動により生じるため、エンドレスベルト62の移動方向の表面粗さ値Ra2が主要因となる。したがって、エンドレスベルト62の移動方向の表面粗さ値Ra2については、1.0μm以下に設定するのが好ましい。
一方、エンドレスベルト62の移動方向と直交する方向の表面粗さ値Ra1は、エンドレスベルト62からの異音に関する要因としては極めて小さいので、潤滑剤を保持するという観点から表面粗さ値Ra1を設定することができる。すなわち、エンドレスベルト62の移動方向と直交する方向の表面粗さ値Ra1を大きく設定することにより、潤滑剤の保持量を大きくすることができる。また、エンドレスベルト62の移動方向と直交する方向の表面粗さ値Ra1を大きく設定することで、エンドレスベルト62の内周面と低摩擦シート68の摺擦面との接触面積を小さくすることができるので、さらに摺動抵抗を低減することが可能となる。
また、エンドレスベルト62の軸方向の表面粗さ値Ra1を大きく設定する他に、エンドレスベルト62の内周面に、エンドレスベルト62の移動方向に沿って溝を形成し、溝と溝の間の凸部に微細凹凸を形成した、上述した(c)溝サンドブラストタイプの構成とすることもできる。このように構成することによっても、エンドレスベルト62の内周面と低摩擦シート68の摺擦面との接触面積を小さくすることができるので、摺動抵抗のさらなる低減化を図ることが可能となるとともに、異音の発生を許容値以下とすることができる。なお、溝の断面形状としては、矩形状、V字形状、U字形状、サインウェイブ状等を採用することができる。
なお、エンドレスベルト62の製造方法としては、内型と外型との間に、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等のポリマーを流し込むことによって成型するが、その際、内型の外表面に、サンドブラストやガラスビーズブラスト等によってランダムな微細凹凸を形成しておくことによって、エンドレスベルト62の内周面にランダムな微細凹凸を形成することができる。また、エンドレスベルト62の移動方向に沿った溝を形成する際にも、内型の外表面に溝を形成しておき、その上からサンドブラストやガラスビーズブラスト等によってランダムな微細凹凸を形成することによって、エンドレスベルト62の移動方向に沿った溝と、溝と溝の間の凸部にランダムな微細凹凸を形成することができる。
以上説明したように、エンドレスベルト62の内周面に表面粗さ値Raが0.3≦Ra≦1.6(μm)である不規則な微細凹凸を形成することにより、エンドレスベルト62の内周面の全面に亘って潤滑剤の保持能力を向上させることができるので、エンドレスベルト62と圧力パッド64との間の摺動抵抗の変動を抑え、摺動抵抗を常に低いレベルに保つことができる。そのため、エンドレスベルト62は円滑に回動でき、エンドレスベルト62と用紙Pとは長期に亘って等速で回動することが可能となる。その結果、用紙Pは定着ロール61と等速に安定して搬送することができ、紙しわの発生や画像ずれを抑制することができる。
特に、微細凹凸のエンドレスベルト62の移動方向に向けて計測した表面粗さ値RaをRa≦1.0(μm)に設定することで、エンドレスベルト62において発生する異音を許容値以下のレベルに抑えることも可能となる。
また、エンドレスベルト62の内周面に均一な潤滑剤の被覆が形成されることで、エンドレスベルト62の内周面が低摩擦シート68やベルト走行ガイド63等と接触するに際しても、摩耗等の損傷を受けることが少ないので、エンドレスベルト62の耐久性の向上を図ることもできる。
[実施の形態2]
実施の形態1では、加熱手段として発熱源を有する定着ロール61を用い、加圧手段として圧力パッド64が押圧されたエンドレスベルト62を用いた定着装置60が搭載された画像形成装置について説明した。実施の形態2では、図1に示した画像形成装置に搭載する定着装置であって、加熱手段として発熱源が押圧された定着ベルトを用い、加圧手段として加圧ロールを用いた定着装置について説明する。尚、実施の形態1と同様な構成については同様な符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
図9は、本実施の形態における定着装置90の構成を示す側断面図である。図9に示すように、本実施の形態の定着装置90では、定着ベルト92が用紙Pのトナー像担持面側に配置されている。定着ベルト92の内側に発熱源の一例としての抵抗発熱体であるセラミックヒータ82が配設され、セラミックヒータ82からニップ部Nに熱を供給するように構成している。
セラミックヒータ82は、加圧ロール91側の面がほぼフラットに形成されている。そして、定着ベルト92を介して加圧ロール91に押圧される状態で配置され、ニップ部Nを形成している。したがって、セラミックヒータ82は圧力部材としても機能している。ニップ部Nを通過した用紙Pは、ニップ部Nの出口領域(剥離ニップ部)において定着ベルト92の曲率の変化によって定着ベルト92から剥離される。
さらに、定着ベルト92内周面とセラミックヒータ82との間には、定着ベルト92の内周面とセラミックヒータ82との摺動抵抗を小さくするため、摺擦部材の一例としての低摩擦シート68が配設されている。この低摩擦シート68は、セラミックヒータ82と別体に構成しても、セラミックヒータ82と一体的に構成しても、いずれでもよい。
一方、加圧ロール91は定着ベルト92に対向するように配置され、図示しない駆動モータにより矢印D方向に回転し、この回転により定着ベルト92が従動回転するように構成されている。加圧ロール91は、コア (円柱状芯金)911と、コア911の外周面に被覆した耐熱性弾性体層912と、さらに耐熱性樹脂被覆または耐熱性ゴム被覆による離型層913とが積層されて構成されている。また、本実施の形態の定着装置90では、定着ベルト92は、原形が円筒形状に形成された無端ベルトであり、ベース層と、このベース層の加圧ロール91側の面または両面に被覆された離型層とから構成されている。
また、剥離の補助手段として、定着ベルト92のニップ部Nの下流側に、剥離部材70を配設することも可能である。剥離部材70は、剥離バッフル71が定着ベルト92の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に定着ベルト92と近接する状態でホルダ72によって保持されている。
そして、図1に示した画像形成装置の二次転写部20においてトナー像が静電転写された用紙Pは、定着入口ガイド56によって定着装置90のニップ部Nに導かれる。用紙Pがニップ部Nを通過する際には、用紙P上のトナー像は、ニップ部Nに作用する圧力と、定着ベルト92側のセラミックヒータ82から供給される熱とによって定着される。本実施の形態の定着装置90でも、加圧ロール91とセラミックヒータ82との間でニップ部Nを広く構成することができるため、安定した定着性能を確保することができる。
ここで、本実施の形態の定着装置90においては、定着ベルト92の内周面に表面粗さ値が0.3≦Ra≦1.6(μm)である不規則な微細凹凸を形成している。このように、定着ベルト92の内周面を表面粗さ値が0.3≦Ra≦1.6の不規則な微細凹凸で形成することにより、定着ベルト92の内周面における潤滑剤の保持能力を向上させることができる。そのため、定着ベルト92と低摩擦シート68との摺動部において、潤滑剤を安定して維持することが可能となるので、定着ベルト92とセラミックヒータ82との間の摺動抵抗の変動を抑え、摺動抵抗を常に低いレベルに保つことができる。その結果、定着ベルト92は円滑に回動でき、定着ベルト92と用紙Pとは等速で回動することが可能であるので、用紙Pは加圧ロール91と等速に安定して搬送することができ、紙しわの発生や画像ずれを抑制することができる。
特に、微細凹凸のエンドレスベルト62の移動方向に向けて計測した表面粗さ値をRa≦1.0(μm)に設定することで、エンドレスベルト62において発生する異音を許容値以下のレベルに抑えることも可能となる。
本発明の活用例として、電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置への適用、例えば記録紙(用紙)上に担持された未定着トナー像を定着する定着装置への適用がある。また、インクジェト方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置への適用、例えば記録紙(用紙)上に担持された未乾燥インク像を乾燥する定着装置への適用がある。
1Y,1M,1C,1K…画像形成ユニット、11…感光体ドラム、12…帯電器、13…レーザ露光器、14…現像器、15…中間転写ベルト、16…一次転写ロール、17…ドラムクリーナ、20…二次転写部、60,90…定着装置、61…定着ロール、62…エンドレスベルト、63…ベルト走行ガイド、64…圧力パッド、64a…プレニップ部材、64b…剥離ニップ部材、65…ホルダ、66…ハロゲンランプ、67…潤滑剤塗布部材、68…低摩擦シート、69…温度センサ、70…剥離部材、82…セラミックヒータ、91…加圧ロール、92…定着ベルト

Claims (5)

  1. 記録材に担持されたトナー像を定着する定着装置であって、
    回動可能な回動部材と、
    前記回動部材に接触しながら移動可能なエンドレスベルトと、
    前記エンドレスベルトの内側に配置され、当該エンドレスベルトを前記回動部材に圧接させて当該回動部材と当該エンドレスベルトとの間に前記記録材が通過するニップ部を形成する圧力部材と、
    前記エンドレスベルトの内周面に接触するように配置され、潤滑剤をエンドレスベルトの内周面に対し供給する潤滑剤塗布部材とを備え、
    前記エンドレスベルトは、当該内周面に当該エンドレスベルトの移動方向に沿って溝部を有するとともに、当該溝部を含む当該内周面に不規則な凹凸を有し、当該凹凸により前記ニップ部にて前記潤滑剤の供給及び回収を行うことにより当該潤滑剤を入れ替えることを特徴とする定着装置。
  2. 前記エンドレスベルトは少なくとも内周面がポリイミドで構成され、当該内周面にアミン変性シリコーンオイルが塗布されることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  3. 前記回動部材を加熱する加熱部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  4. 前記エンドレスベルトを加熱する加熱部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  5. トナー像を形成するトナー像形成手段と、
    前記トナー像形成手段によって形成されたトナー像を記録材上に転写する転写手段と、
    前記記録材上に転写されたトナー像を当該記録材に定着する定着手段とを含み、
    前記定着手段は、
    回動可能な回動部材と、
    前記回動部材に接触しながら移動可能であり、内周面に自らの移動方向に沿って溝部を有するとともに、当該溝部を含む当該内周面に不規則な凹凸が形成されたエンドレスベルトと、
    前記エンドレスベルトの内側に配置され、当該エンドレスベルトを前記回動部材に圧接させて当該回動部材と当該エンドレスベルトとの間に前記記録材が通過するニップ部を形成する圧力部材と、
    前記エンドレスベルトの内周面に接触するように配置され、潤滑剤を当該エンドレスベルトの内周面に対し供給する潤滑剤塗布部材とを備え、
    前記エンドレスベルトは、前記凹凸により前記ニップ部にて前記潤滑剤の供給及び回収を行うことにより当該潤滑剤を入れ替えることを特徴とする画像形成装置。
JP2010064480A 2010-03-19 2010-03-19 定着装置および画像形成装置 Expired - Fee Related JP4548548B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010064480A JP4548548B2 (ja) 2010-03-19 2010-03-19 定着装置および画像形成装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010064480A JP4548548B2 (ja) 2010-03-19 2010-03-19 定着装置および画像形成装置

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003416296A Division JP2005173441A (ja) 2003-12-15 2003-12-15 定着装置および画像形成装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2010140061A true JP2010140061A (ja) 2010-06-24
JP4548548B2 JP4548548B2 (ja) 2010-09-22

Family

ID=42350185

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010064480A Expired - Fee Related JP4548548B2 (ja) 2010-03-19 2010-03-19 定着装置および画像形成装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4548548B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US9897950B2 (en) 2015-10-23 2018-02-20 Ricoh Company, Ltd. Fixing device and image forming apparatus
US10007213B2 (en) 2015-10-08 2018-06-26 Ricoh Company, Ltd. Fixing device, image forming apparatus, and slide member
JP7434959B2 (ja) 2020-02-03 2024-02-21 富士フイルムビジネスイノベーション株式会社 ベルト、定着装置及び画像形成装置

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6119303B2 (ja) * 2013-02-27 2017-04-26 株式会社リコー 定着装置およびこれを備えた画像形成装置

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0325475A (ja) * 1989-06-22 1991-02-04 Canon Inc 定着装置
JPH10198202A (ja) * 1996-12-27 1998-07-31 Canon Inc 加熱用ベルト、加熱装置及び画像形成装置
JP2001341143A (ja) * 2000-06-05 2001-12-11 Ist:Kk 複合管状物及びその製造方法
JP2002225051A (ja) * 2001-02-05 2002-08-14 Nitto Denko Corp シームレスベルト及びその製造方法
JP2003091188A (ja) * 2001-09-19 2003-03-28 Fuji Xerox Co Ltd 定着装置

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0325475A (ja) * 1989-06-22 1991-02-04 Canon Inc 定着装置
JPH10198202A (ja) * 1996-12-27 1998-07-31 Canon Inc 加熱用ベルト、加熱装置及び画像形成装置
JP2001341143A (ja) * 2000-06-05 2001-12-11 Ist:Kk 複合管状物及びその製造方法
JP2002225051A (ja) * 2001-02-05 2002-08-14 Nitto Denko Corp シームレスベルト及びその製造方法
JP2003091188A (ja) * 2001-09-19 2003-03-28 Fuji Xerox Co Ltd 定着装置

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US10007213B2 (en) 2015-10-08 2018-06-26 Ricoh Company, Ltd. Fixing device, image forming apparatus, and slide member
US9897950B2 (en) 2015-10-23 2018-02-20 Ricoh Company, Ltd. Fixing device and image forming apparatus
JP7434959B2 (ja) 2020-02-03 2024-02-21 富士フイルムビジネスイノベーション株式会社 ベルト、定着装置及び画像形成装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP4548548B2 (ja) 2010-09-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2005173441A (ja) 定着装置および画像形成装置
JP4595447B2 (ja) 定着装置、および画像形成装置
JP4534682B2 (ja) 定着装置、および画像形成装置
JP2006243471A (ja) 定着装置および画像形成装置
JP5428402B2 (ja) 定着装置、画像形成装置及び定着用無端ベルト
JP4534679B2 (ja) 定着装置および画像形成装置
JP4548548B2 (ja) 定着装置および画像形成装置
JP2005084484A (ja) 定着装置および画像形成装置
JP4539252B2 (ja) 定着装置、および画像形成装置
JP4449545B2 (ja) 定着装置および画像形成装置
JP6019627B2 (ja) 加熱部材、定着装置及びそれを用いた画像形成装置
JP4428030B2 (ja) 定着装置および画像形成装置
JP2009251311A (ja) 定着装置、及びこれを備えた画像形成装置
JP4244837B2 (ja) 画像形成装置
JP4424010B2 (ja) 定着装置および画像形成装置
JP2006091182A (ja) 定着装置、ベルト管状体および画像形成装置
JP2005077847A (ja) 定着装置および画像形成装置
JP2005300661A (ja) 定着装置および画像形成装置
JP4729853B2 (ja) 定着装置および画像形成装置
JP2005156905A (ja) 定着装置、画像形成装置およびガイド部材
JP2005300732A (ja) 定着装置および画像形成装置
JP2005321462A (ja) 定着装置、低摩擦シートおよび画像形成装置
JP2005249992A (ja) 定着装置および画像形成装置
JP2005148544A (ja) 定着装置および画像形成装置
JP5831064B2 (ja) 定着装置及び画像形成装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100319

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100615

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100628

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Ref document number: 4548548

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130716

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140716

Year of fee payment: 4

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees