JP2010133380A - 変速制御システムおよび車両 - Google Patents

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Yasunori Murayama
恭規 村山
Katsuhiro Arai
克広 荒井
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Abstract

【課題】変速機の迅速かつ滑らかなシフトチェンジを可能にする変速制御システムおよびそれを備えた車両を提供する。
【解決手段】変速機をシフトチェンジさせる場合には、エンジントルクが0に変化されるとともにクラッチが切断される。クラッチが切断された状態で変速機のギアポジションがシフトされる。ギアポジションのシフト後に、クラッチが接続されるとともに、トルク復帰時間t3−t4において0からアクセル開度に基づいて決定される値まで連続的に変化するエンジントルク目標値に従ってエンジントルクが変化される。トルク復帰時間は、エンジンにより発生されるトルクがエンジントルク目標値の変化に追従可能となるように設定される。
【選択図】図5

Description

本発明は、車両の変速制御システムおよびそれを備えた車両に関する。
従来より、変速機のシフトチェンジを自動的に行う変速制御システムが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
このような変速制御システムにおいては、例えば、運転者によってシフト操作が行われた場合、制御部は、運転者のアクセル操作量には関係なくエンジンのトルクを低下させるとともに、クラッチを切断する。そして、制御部は、その状態で変速機のギアポジションを切り替える。その後、制御部は、エンジンのトルクを復帰させるとともにクラッチを接続する。これにより、変速機のシフトチェンジが完了する。
特許第3743255号公報
ところで、変速機の迅速なシフトチェンジを可能にするためには、エンジンのトルク復帰動作に要する時間を短くする必要がある。エンジンのトルク復帰動作に要する時間は、例えば、スロットルバルブの開度(以下、スロットル開度と称する。)を迅速に大きくすることにより短くすることができる。
しかしながら、短時間でスロットルバルブを大きくしようとした場合、制御部の指令値に対してエンジンにおいて発生されるトルクの過渡応答に遅れ等が発生する場合がある。この場合、エンジンにおいて理想的なトルクを発生させることができず、クラッチの接続時に車両にショックが発生する場合がある。
本発明の目的は、変速機の迅速かつ滑らかなシフトチェンジを可能にする変速制御システムおよびそれを備えた車両を提供することである。
(1)第1の発明に係る変速制御システムは、エンジン、クラッチおよび変速機を有する車両の変速制御システムであって、エンジンにおいて発生されるエンジントルクを調整するエンジントルク調整部と、クラッチを切断および接続するクラッチ作動機構と、変速機のギアポジションをシフトさせるシフト機構と、エンジントルク調整部、クラッチ作動機構およびシフト機構を制御する制御部とを備え、制御部は、変速機をシフトチェンジさせる場合に、エンジントルク調整部によりエンジントルクを第1の値に変化させるとともにクラッチ作動機構によりクラッチを切断し、クラッチを切断した状態でシフト機構により変速機のギアポジションをシフトさせ、ギアポジションのシフト後にクラッチ作動機構によりクラッチを接続するとともに、トルク調整時間において第1の値からアクセル開度に基づいて決定される第2の値まで連続的に変化するエンジントルク目標値に従ってエンジントルク調整部によりエンジントルクを変化させ、トルク調整時間は、エンジントルク調整部により調整されるエンジントルクがエンジントルク目標値の変化に追従可能となるように設定されるものである。
本発明に係る変速制御システムにおいては、エンジンにおいて発生されるエンジントルクがエンジントルク調整部により調整される。また、クラッチ作動機構によりクラッチが切断および接続される。さらに、シフト機構により変速機のギアポジションがシフトされる。エンジントルク調整部、クラッチ作動機構およびシフト機構は、制御部により制御される。
変速機をシフトチェンジさせる場合には、エンジントルク調整部によりエンジントルクが第1の値に変化されるとともにクラッチ作動機構によりクラッチが切断される。クラッチが切断された状態でシフト機構により変速機のギアポジションがシフトされる。ギアポジションのシフト後に、クラッチ作動機構によりクラッチが接続されるとともに、トルク調整時間において第1の値からアクセル開度に基づいて決定される第2の値まで連続的に変化するエンジントルク目標値に従ってエンジントルク調整部によりエンジントルクが変化される。
ここで、トルク調整時間は、エンジントルク調整部により調整されるエンジントルクがエンジントルク目標値の変化に追従可能となるように設定される。それにより、エンジントルクをトルク調整時間で確実に第2の値まで上昇させることができる。したがって、トルク調整時間の終了時にエンジントルクの変動に基づくショックが車両に発生することを防止することができるとともに、エンジントルクの迅速な調整動作が可能になる。その結果、変速機の迅速かつ滑らかなシフトチェンジが可能になる。
(2)トルク調整時間は、エンジントルク目標値に従ってエンジントルクを第1の値から第2の値に変化させた場合にエンジントルク目標値の経時変化とエンジンにおいて発生されるエンジントルクの経時変化との差が所定の範囲内になるように設定されてもよい。
この場合、エンジンにおいて発生させるエンジントルクの経時変化を第1の値から第2の値に変化するエンジントルク目標値に確実に追従させることができる。
(3)トルク調整時間は、エンジントルク目標値に従ってエンジントルクを第1の値から第2の値に変化させた場合にエンジントルク目標値とエンジンにおいて発生されるエンジントルクとの差分の絶対値の経時的変化の積分値または差分の二乗値の経時的変化の積分値が所定のしきい値以下になるように設定されてもよい。
この場合、エンジンにおいて発生させるエンジントルクの経時変化を第1の値から第2の値に変化するエンジントルク目標値に容易にかつ確実に追従させることができる。
(4)エンジントルク目標値は、エンジントルク調整部により調整されるエンジントルクがそのエンジントルク目標値の変化に追従可能でかつそのエンジントルク目標値のn階微分値(nは自然数)がトルク調整時間において連続的に変化するように設定されてもよい。
それにより、n次の特性を持つ補償を行った場合に、エンジントルクを円滑に上昇または低下させることができるので、変速機のより円滑なシフトチェンジが可能になる。
(5)トルク調整時間は、さらにエンジンの回転速度に基づいて設定されてもよい。この場合、トルク調整時間をより適切に設定することができる。
(6)制御部は、トルク調整時間においてアクセル開度が変化した場合に、その変化後のアクセル開度に基づいて決定される第2の値に基づいてトルク調整時間を補正してもよい。
この場合、運転者がトルク調整時間内にアクセルを操作した場合でも、トルク調整時間の終了時にエンジントルクの変動に基づくショックが車両に発生することを防止することができる。
(7)第2の発明に係る車両は、駆動輪と、エンジンと、エンジンにより発生されるトルクを駆動輪に伝達する変速機と、エンジンと変速機との間に設けられるクラッチと、第1の発明に係る変速制御システムとを備えたものである。
この車両においては、エンジンにより発生されたトルクがクラッチおよび変速機を介して駆動輪に伝達される。
ここで、この車両には、第1の発明に係る変速制御システムが設けられている。したがって、変速機をシフトチェンジさせる場合には、エンジントルク調整部によりエンジントルクが第1の値に変化されるとともにクラッチ作動機構によりクラッチが切断される。クラッチが切断された状態でシフト機構により変速機のギアポジションがシフトされる。ギアポジションのシフト後に、クラッチ作動機構によりクラッチが接続されるとともに、トルク調整時間において第1の値からアクセル開度に基づいて決定される第2の値まで連続的に変化するエンジントルク目標値に従ってエンジントルク調整部によりエンジントルクが変化される。
ここで、トルク調整時間は、エンジントルク調整部により調整されるエンジントルクがエンジントルク目標値の変化に追従可能となるように設定される。それにより、エンジントルクをトルク調整時間内に確実に第2の値まで上昇させることができる。したがって、トルク調整時間の終了時にエンジントルクの変動に基づくショックが車両に発生することを防止することができるとともに、エンジントルクの迅速な調整動作が可能になる。その結果、変速機の迅速かつ滑らかなシフトチェンジが可能になる。
本発明によれば、エンジントルクをトルク調整時間内に確実に第2の値まで上昇させることができる。したがって、トルク調整時間の終了時にエンジントルクの変動に基づくショックが車両に発生することを防止することができるとともに、エンジントルクの迅速な調整動作が可能になる。その結果、変速機の迅速かつ滑らかなシフトチェンジが可能になる。
以下、本発明の一実施の形態に係る変速制御システムを備える車両について図面を用いて説明する。なお、以下においては、車両の一例として自動二輪車について説明する。
(1)自動二輪車の概略構成
図1は、本実施の形態に係る自動二輪車を示す概略側面図である。
図1の自動二輪車100においては、本体フレーム101の前端にヘッドパイプ102が設けられる。ヘッドパイプ102にフロントフォーク103が回転可能に設けられる。フロントフォーク103の下端に前輪104が回転可能に支持される。ヘッドパイプ102の上端にはハンドル105が設けられる。
ハンドル105には、アクセルグリップ106が設けられる。本体フレーム101の中央部には、エンジン107が設けられる。エンジン107の吸気ポートにはスロットルボディ108が取り付けられ、エンジン107の排気ポートには排気管109が取り付けられる。スロットルボディ108には、電子制御式のスロットルバルブ81が設けられる。
エンジン107の下部には、クランクケース110が取り付けられる。クランクケース110内には、エンジン107のクランク2(図2参照)が収容される。
本体フレーム101の下部には、ミッションケース111が設けられる。ミッションケース111内には、後述する変速機5(図2参照)およびシフト機構6(図2参照)が設けられる。ミッションケース111には、シフトペダル112が設けられる。
なお、本実施の形態においては、変速機5のギアポジションを切り替える際に運転者によるクラッチ3(図2参照)の切断動作は不要である。すなわち、本実施の形態に係る自動二輪車100には、運転者のシフト操作に基づいて変速機5のギアポジションを自動的に切り替える半自動の変速制御システムが搭載されている。変速制御システムの詳細は後述する。
エンジン107の上部には燃料タンク113が設けられ、燃料タンク113の後方にはシート114が設けられる。シート114の下部には、ECU50(Electronic Control Unit;電子制御ユニット)が設けられる。エンジン107の後方に延びるように、本体フレーム101にリアアーム115が接続される。リアアーム115は、後輪116および後輪ドリブンスプロケット117を回転可能に保持する。後輪ドリブンスプロケット117には、チェーン118が取り付けられる。
(2)変速機およびシフト機構の構成
次に、図1のミッションケース111に設けられる変速機およびシフト機構について説明する。
図2は、変速機およびシフト機構の構成を示す図である。
図2に示すように、変速機5は、メイン軸5aおよびドライブ軸5bを備える。メイン軸5aには多段(例えば5段)の変速ギア5cが装着され、ドライブ軸5bには多段の変速ギア5dが装着される。
メイン軸5aは、クラッチ3を介してエンジン107(図1)のクランク2に連結される。クラッチ3はプレッシャープレート3a、複数のクラッチディスク3bおよび複数のフリクションディスク3cを備える。クラッチディスク3bは、クランク2から伝達されるトルクにより回転する。また、フリクションディスク3cは、メイン軸5aに連結され、メイン軸5aを回転軸として回転する。
フリクションディスク3cは、プレッシャープレート3aによりクラッチディスク3bに密着する方向に付勢されている。以下においては、複数のクラッチディスク3bと複数のフリクションディスク3cとが互いに密着している状態をクラッチ3の接続(係合)状態とし、複数のクラッチディスク3bと複数のフリクションディスク3cとが互いに離間している状態をクラッチ3の切断状態とする。クラッチ3の接続状態では、クランク2のトルクがクラッチディスク3bおよびフリクションディスク3cを介してメイン軸5aに伝達されるが、クラッチ3の切断状態では、クランク2のトルクがメイン軸5aに伝達されない。
メイン軸5aには、プッシュロッド5eが挿入される。プッシュロッド5eの一端はプレッシャープレート3aに連結され、他端は電動式または油圧式のクラッチアクチュエータ4に連結される。
本実施の形態においては、ECU50の制御によりクラッチアクチュエータ4が駆動された場合に、プッシュロッド5eがクラッチ3側に押し出される。それにより、プレッシャープレート3aが押され、クラッチディスク3bとフリクションディスク3cとが離間する。その結果、クラッチ3が切断状態になる。ECU50の制御動作の詳細は後述する。
クラッチ3が接続状態である場合にクランク2からメイン軸5aに伝達されたトルクは、変速ギア5cおよび変速ギア5dを介してドライブ軸5bに伝達される。ドライブ軸5bには、図1のチェーン118が取り付けられる。ドライブ軸5bのトルクは、チェーン118および後輪ドリブンスプロケット117(図1)を介して後輪116(図1)に伝達される。それにより、自動二輪車100が走行する。
メイン軸5aとドライブ軸5bとの減速比は、変速ギア5cと変速ギア5dとの組み合わせにより決定される。また、メイン軸5aとドライブ軸5bとの減速比は、複数の変速ギア5c,5dのうちのいずれかの変速ギア5c,5dが移動されることにより変更される。
変速ギア5c,5dは、シフト機構6により移動される。シフト機構6は、シフトカム6aを有する。シフトカム6aには、複数のカム溝6b(図2においては3本)が形成される。この各カム溝6bにシフトフォーク6cがそれぞれ装着される。シフトカム6aは、図示しないリンク機構を介して電動式または油圧式のシフトアクチュエータ7に接続される。
本実施の形態においては、ECU50の制御によりシフトアクチュエータ7が駆動された場合に、シフトカム6aが回転される。それにより、各シフトフォーク6cが各カム溝6bに沿って移動する。その結果、いずれかの変速ギア5c,5dが移動され、変速機5のギアポジションが変更される。
(3)変速制御システム
次に、自動二輪車100の変速制御システムについて説明する。
図3は、本実施の形態に係る変速制御システムの構成を示すブロック図である。
図3に示すように、本実施の形態に係る変速制御システム200は、アクセル開度センサSE1、スロットルセンサSE2、エンジン回転速度センサSE3、シフトカム回転角センサSE4、シフト操作検出センサSE5、ECU50、クラッチアクチュエータ4、シフトアクチュエータ7、スロットルアクチュエータ8、複数の燃料噴射装置9および複数の点火プラグ10を備える。
アクセル開度センサSE1は、運転者によるアクセルグリップ106(図1)の操作量(以下、アクセル開度と称する。)を検出するとともに検出したアクセル開度をECU50に与える。スロットルセンサSE2は、スロットルバルブ81(図1)の開度(以下、スロットル開度と称する。)を検出するとともに検出したスロットル開度をECU50に与える。
エンジン回転速度センサSE3は、エンジン107(図1)の回転速度を検出するとともに検出した回転速度をECU50に与える。なお、本実施の形態においては、エンジン回転速度センサSE3は、クランク2(図2)の角速度を検出することによりエンジン107の回転速度を検出する。シフトカム回転角センサSE4は、シフトカム6a(図2)の回転角度を検出するとともに検出した回転角度をECU50に与える。
シフト操作検出センサSE5は、運転者によるシフトペダル112(図1)の操作方向を検出するとともに検出した操作方向を示す信号(シフトアップを示す信号またはシフトダウンを示す信号)をECU50に与える。シフト操作検出センサSE5は、例えば、ポテンショメータ、荷重センサまたは磁歪センサ等からなる。
なお、シフト操作検出センサSE5は、例えば、シフトアップ操作を検出した場合には正の値の信号を出力し、シフトダウン操作を検出した場合には負の値の信号を出力する。
ECU50は、インターフェース回路51、CPU(中央演算処理装置)52、ROM(リードオンリメモリ)53およびRAM(ランダムアクセスメモリ)54を含む。
上記のセンサSE1〜SE5の出力信号は、インターフェース回路51を介してCPU52に与えられる。CPU52は、後述するように、各センサSE1〜SE5の検出結果に基づいてエンジン107の出力を調整する。ROM53は、CPU52の制御プログラム等を記憶する。RAM54は、種々のデータを記憶するとともにCPU52の作業領域として機能する。
クラッチアクチュエータ4は、例えば、電動式または油圧式で構成され、CPU52の制御によりプッシュロッド5e(図2)を進退させる。それにより、クラッチ3が切断および接続される。シフトアクチュエータ7は、例えば、電動式または油圧式で構成され、CPU52の制御によりシフトカム6a(図2)を回転させる。それにより、変速機5のギアポジションが切り替えられる。
スロットルアクチュエータ8は、例えば、電動式のモータを含み、CPU52の制御によりスロットルバルブ81の開度を調整する。燃料噴射装置9は、エンジン107の気筒ごとに設けられる。点火プラグ10は、エンジン107の各気筒に設けられる。
(4)CPUの制御動作
以下、自動二輪車100の通常走行時および変速機5のシフトチェンジ時のCPU52の制御動作について説明する。
(a)通常走行時の制御
自動二輪車100の通常の走行時には、CPU52は、アクセル開度センサSE1により検出されるアクセル開度に基づいてスロットルアクチュエータ8、燃料噴射装置9および点火プラグ10を制御する。それにより、スロット開度、燃料噴射量および混合気の点火時期が調整され、エンジン107において発生されるトルク(以下、エンジントルクと称する。)が調整される。
なお、本実施の形態においては、アクセル開度とエンジントルクの目標値との関係を示すマップが、ECU50のROM53(またはRAM54)に予め記憶されている。CPU52は、アクセル開度センサSE1により検出されるアクセル開度に基づいてそのマップからエンジントルクの目標値を算出する。そして、その算出された目標値に等しいエンジントルクがエンジン107において発生されるように、スロットルアクチュエータ8、燃料噴射装置9および点火プラグ10を制御する。
また、CPU52は、スロットルセンサSE2により検出されるスロットル開度に基づいてスロットルアクチュエータ8のフィードバック制御を行う。それにより、スロットル開度をより適切に調整することができる。
(b)シフトチェンジ時の制御
次に、運転者がシフトチェンジを行うためにシフトペダル112を操作した場合におけるCPU52の制御動作について説明する。
図4は、シフトチェンジ時のCPU52の制御動作の一例を示すフローチャートである。
図4に示すように、CPU52は、まず、シフト操作検出センサSE5(図3)の出力信号に基づいて運転者がシフト操作を行った否かを判別する(ステップS1)。運転者によりシフト操作が行われていない場合には、CPU52はシフト操作が行われるまで待機する。
運転者によりシフト操作が行われている場合、CPU52は、クラッチアクチュエータ4(図2)を制御することによりクラッチ3(図2)を切断するとともに、スロットルアクチュエータ8、燃料噴射装置9または点火プラグ10を制御してエンジントルクを上昇または低下させる(ステップS2)。
なお、ステップS2においては、例えば、運転者によりシフトアップ操作が行われた場合には、CPU52は、スロットルアクチュエータ8を制御してスロットル開度をアクセル開度に基づいて決定される値よりも一時的に小さくする。それにより、エンジントルクが一時的に低下する。
また、例えば、運転者によりシフトダウン操作が行われた場合には、CPU52は、スロットルアクチュエータ8を制御してスロットル開度をアクセル開度に基づいて決定される値よりも一時的に大きくする。それにより、エンジントルクが一時的に上昇する。
なお、このステップS2の処理により、後述するステップS4においてクラッチ3を接続する際に、メイン軸5a(フリクションディスク3c(図2))の回転速度とクラッチディスク3b(図2)の回転速度とを容易に近づけることができる。それにより、自動二輪車100に変速ショックが発生することが防止される。
次に、CPU52は、変速機5のギアチェンジを行う(ステップS3)。具体的には、CPU52は、シフトアクチュエータ7(図3)を制御することによりシフトカム6a(図2)を回転させる。それにより、シフトフォーク6c(図2)が移動され、変速ギア5c(図2)または変速ギア5d(図2)が移動される。その結果、変速機5のギアポジションが変更される。
その後、CPU52は、クラッチアクチュエータ4を制御することにより、クラッチ3を接続するとともに、エンジン107のトルクを上昇させる(ステップS4)。これにより、変速機5のシフトチェンジが終了する。
図5は、CPU52の上記の制御動作をより詳細に説明するための図である。図5において、(a)は、変速機5のギアポジションの経時変化を示すグラフであり、(b)は、エンジントルクの経時変化およびクラッチ3の係合(摩擦)トルク(以下、クラッチトルクと称する。)の経時変化を示す図である。なお、図5には、アクセル開度が一定の値に保持された状態で変速機5がシフトアップされる場合のエンジントルクおよびクラッチトルクの経時変化の一例が示されている。
図5の例では、運転者がシフトアップ操作を行った時点t1において、クラッチトルクおよびエンジントルクの低下が開始されている。具体的には、クラッチトルクおよびエンジントルクは、時点t2において0になるようにそれぞれ低下している。
ここで、本実施の形態においては、時点t1−t2間においてエンジントルクを低下させるために、例えば、時点t1−t2間の任意の時間とエンジントルクの目標値との関係を示すマップが用いられる。
図6は、時点t1−t2間において用いられるマップの一例を示す図である。なお、図6に示すマップは、ECU50のROM53(またはRAM54)に予め記憶されている。
図6に示すマップにおいては、時点t1−t2間の任意の時間とエンジントルクの目標値とが対応付けられている。なお、図6のマップにおいて値aは変数であり、時点t1におけるクラッチトルク(図5)の値が値aとなる。
本実施の形態においては、CPU52は、時点t1におけるクラッチトルクの値aに基づいて図6に示すマップからエンジントルクの目標値の経時変化を算出する。そして、CPU52は、時点t1−t2間においてエンジントルクの経時変化がその算出した目標値の経時変化に等しくなるように、スロットルアクチュエータ8、燃料噴射装置9および点火プラグ10を制御する。それにより、所定の波形を描くようにエンジントルクを低下させることができる。
なお、時点t1−t2間の長さは、予め設定されていてもよく、時点t1におけるエンジントルクの値aに基づいて調整されてもよい。具体的には、例えば、時点t1におけるエンジントルクの値aの大きさに従って時点t1−t2間の長さを長くしてもよい。この場合、時点t1におけるエンジントルクの値aが大きい場合でも、エンジントルクを円滑に低下させることができる。
また、本実施の形態においては、エンジントルクの目標値は、時点t1−t2間において正弦波形を描くように変化する値として設定される。この場合、エンジントルクを緩やかに変化させることができるので、スロットルアクチュエータ8、燃料噴射装置9および点火プラグ10の制御が容易になる。また、トルク変動に基づくショックが自動二輪車100に発生することを防止することができる。それにより、自動二輪車100の走行フィーリングが向上する。
また、本実施の形態においては、時点t2においてクラッチトルクが0になるように、すなわち時点t2においてクラッチ3が切断されるように、CPU52によりクラッチアクチュエータ4が制御される。この場合、エンジントルク容量がクラッチトルク容量を超えないので、エンジン回転速度の意図しない上昇が発生しない。それにより、違和感のあるエンジン音が生じず、走行フィーリングが向上する。また、時点t2においてエンジン107のトルク調整およびクラッチ3の切断動作を同時に完了することができる。それにより、エンジン107のトルク調整終了後、迅速に変速機5のギアポジションを切り替えることができる。その結果、変速機5の迅速なシフトチェンジが可能になる。
次に、図5に示すように、クラッチ3が切断される時点t2後に、変速機5のギアポジションが1段シフトアップされる。その後、時点t3においてエンジントルクおよびクラッチトルクの復帰動作が開始される。具体的には、エンジントルクおよびクラッチトルクは、時点t4において値aに復帰するように上昇されている。なお、本実施の形態においては、時点t4においてクラッチ3が完全に接続されることにより、エンジントルクの値とクラッチトルクの値とが略一致する。
また、本実施の形態においては、時点t3−t4間においてエンジントルクを上昇させるために、例えば、時点t3−t4間の任意の時間とエンジントルクの目標値との関係を示すマップが用いられる。
図7は、時点t3−t4間において用いられるマップの一例を示す図である。なお、図7に示すマップは、ECU50のROM53(またはRAM54)に予め記憶されている。
図7に示すマップにおいては、時点t3−t4間の任意の時間とエンジントルクの目標値とが対応付けられている。なお、図7のマップにおいて値bはCPU52により算出される値である。具体的には、CPU52は、アクセル開度センサSE1により検出されるアクセル開度に基づいて、上述した通常走行時に用いられるアクセル開度とエンジントルクとの関係を示すマップから値b(以下、目標復帰トルクと称する。)を算出する。
本実施の形態においては、CPU52は、上記のようにして算出した目標復帰トルク(値b)に基づいて、図7に示すマップからエンジントルクの目標値の経時変化を算出する。そして、CPU52は、時点t3−t4間においてエンジントルクの経時変化がその算出した目標値の経時変化に等しくなるように、スロットルアクチュエータ8、燃料噴射装置9および点火プラグ10を制御する。
なお、上述したように、目標復帰トルク(値b)は通常走行時に用いられるマップから算出されるので、時点t4においてCPU52の制御動作が通常走行時の制御動作に切り替わる際に、エンジントルクの目標値が変化することを防止することができる。それにより、時点t4においてエンジントルクが変動することが防止されるので、自動二輪車100にショックが発生することを防止することができる。
なお、図5の例においては、時点t4でのエンジントルクの値が時点t1におけるエンジントルクの値aよりも低い値bに復帰されている。
また、本実施の形態においては、時点t4においてクラッチ3が完全に接続されるので、時点4においてエンジントルクの復帰動作およびクラッチ3の接続動作を同時に完了することができる。それにより、変速機5の迅速なシフトチェンジが可能になる。
また、本実施の形態においては、エンジントルクの目標値は、時点t3−t4間において正弦波形を描くように変化する値として設定される。この場合、エンジントルクを緩やかに変化させることができるので、スロットルアクチュエータ8、燃料噴射装置9および点火プラグ10の制御が容易になる。また、トルク変動に基づくショックが自動二輪車100に発生することを防止することができる。それにより、自動二輪車100の走行フィーリングが向上する。
また、本実施の形態においては、時点t3−t4間の長さ(以下、トルク復帰時間と称する。)は、CPU52により設定される。トルク復帰時間が短すぎると、スロットルアクチュエータ8、燃料噴射装置9および点火プラグ10の制御により実際に発生されるエンジントルクがCPU52による目標値に追従することができない。ここで、実際に発生されるエンジントルクが目標値に追従可能となるトルク復帰時間の下限値を目標復帰時間下限値と称する。トルク復帰時間は、目標復帰時間下限値を初期値として、ドライバビリティが悪化しない範囲で最短の値に実験的に設定される。設定されたトルク復帰時間が目標復帰時間下限値よりも短くなる場合には、トルク復帰時間は目標復帰時間下限値に再設定される。以下、詳細に説明する。
(c)トルク復帰時間の設定方法
本実施の形態においては、トルク復帰時間におけるトルクの復帰量(図7においては値b)、エンジン107の回転速度および目標復帰時間下限値の関係を示すマップ(以下、目標復帰時間下限値マップと称する。)が予めROM53(またはRAM54)に記憶されている。
目標復帰時間下限値マップは、例えば、自動二輪車100の製造時に作成される。以下、目標復帰時間下限値マップの作成方法について詳細に説明する。
図8は、目標復帰時間下限値マップを作成する際に用いられるエンジントルクの目標値を示すマップである。また、図9は、エンジン107の所定の回転速度に対応する目標復帰時間下限値マップの一例である。
図8に示すマップにおいては、任意の時間とエンジントルクの目標値とが対応付けられている。また、図8に示すマップでは、エンジントルクの目標値は、正弦波形を描くように時間Tで0から値Aまで上昇する。
本実施の形態においては、まず、図8に示すマップの値Aおよび時間Tとして種々の値および種々の時間を設定し、種々のエンジントルクの目標値の経時変化を算出する。そして、その算出された種々の目標値の経時変化に従ってスロットルアクチュエータ8、燃料噴射装置9および点火プラグ10を制御した場合に、エンジン107において適切なエンジントルクが発生されるか否か判定し、その判定結果に基づいて目標復帰時間下限値マップを作成する。なお、本実施の形態においてはエンジントルクの目標値の経時変化とエンジン107において発生されるエンジントルクの経時変化とが略等しい場合にエンジン107において適切なエンジントルクが発生されていると判定される。詳細は、後述する。
図9に示す目標復帰時間下限値マップには、図8の値Aとして値A1〜A6を設定し、時間Tとして時間T1〜T6を設定した場合の判定結果が示されている。なお、図9において「○」および「◎」は、エンジン107において適切なエンジントルクが発生したことを示し、「×」は、エンジン107において適切なエンジントルクが発生しなかったことを示す。特に、「◎」に対応するトルク復帰時間が目標復帰時間下限値となる。
図9の目標復帰時間下限値マップは、トルク復帰量(図8の値A)が値A1,A2に設定された場合には、トルク復帰時間(図8の時間T)が時間T1に設定されるとエンジン107において適切なエンジントルクが発生せず、トルク復帰時間がT2以上に設定されるとエンジン107において適切なエンジントルクが発生したことを示している。したがって、トルク復帰量が値A1,A2に設定された場合の目標復帰時間下限値は時間T2である。なお、図7の例においては、トルク復帰量は値bになる。
また、図9のマップは、トルク復帰量が値A3,A4に設定された場合には、トルク復帰時間が時間T1,T2に設定されるとエンジン107において適切なエンジントルクが発生せず、トルク復帰時間がT3以上に設定されるとエンジン107において適切なエンジントルクが発生したことを示している。したがって、トルク復帰量が値A3,A4に設定された場合の目標復帰時間下限値は時間T3である。
また、図9のマップは、トルク復帰量が値A5に設定された場合には、トルク復帰時間が時間T1〜T3に設定されるとエンジン107において適切なエンジントルクが発生せず、トルク復帰時間がT4以上に設定されるとエンジン107において適切なエンジントルクが発生したことを示している。したがって、トルク復帰量が値A5に設定された場合の目標復帰時間下限値は時間T4である。
また、図9のマップは、トルク復帰量が値A6に設定された場合には、トルク復帰時間が時間T1〜T5に設定されるとエンジン107において適切なエンジントルクが発生せず、トルク復帰時間がT6に設定されるとエンジン107において適切なエンジントルクが発生したことを示している。したがって、トルク復帰量が値A5に設定された場合の目標復帰時間下限値は時間T6である。
このように、本実施の形態においては、エンジン107において適切なエンジントルクを発生させることができるトルク復帰時間(時点t3−t4間の時間)および目標復帰時間下限値が目標復帰時間下限値マップに予め設定される。
したがって、トルク復帰時間(時点t3−t4間)を目標復帰時間下限値マップに設定される目標復帰時間下限値以上に設定することにより、トルク復帰時間内にエンジントルクを確実に目標復帰トルク(図7の値b)まで上昇させることができる。また、トルク復帰時間を目標復帰時間下限値以上でかつドライバビリティが悪化しない範囲で最短の値に設定することが好ましい。それにより、エンジントルクの迅速な復帰動作が可能になる。また、エンジントルクの制御とクラッチトルクの制御との連携の精度が向上し、自動二輪車100のドライバビリティが向上する。
なお、本実施の形態においては、図9に示す目標復帰時間下限値マップが、エンジン107の異なる複数の回転速度の各々について作成される。したがって、CPU52は、エンジン107の回転速度に応じて適切なトルク復帰時間を設定することができる。
なお、上記の例では、図8の時間Tおよび値Aとして時間T1〜T6および値A1〜A6が設定されているが、実際には、さらに詳細に複数の時間および値が設定される。
次に、目標復帰時間下限値マップの作成手順について図面を用いて詳細に説明する。
図10は、目標復帰時間下限値マップの作成手順を示すフローチャートである。
図10に示すように、目標復帰時間下限値マップが作成される際には、まず、図8に示したマップから所定のトルク復帰量および所定のトルク復帰時間に対応するエンジントルク目標値の経時変化が算出される(ステップS11)。
次に、そのエンジントルク目標値の経時変化の位相進み補償が行われる(ステップS12)。ここでは、エンジントルクがn次遅れ要素(nは自然数)を有する場合に、エンジントルク目標値に基づいてCPU52からスロットルアクチュエータ8に与えられる指令値に対するエンジントルクの立ち上がり(または立ち下り)のn次遅れ要素が打ち消されるようにn次位相進み補償が行われる。なお、エンジントルクがn次進み要素(nは自然数)を有する場合には、エンジントルク目標値に基づいてCPU52からスロットルアクチュエータ8に与えられる指令値に対するエンジントルクの立ち上がり(または立ち下り)のn次進み要素が打ち消されるようにn次位相遅れ補償が行われる。
具体的には、例えば、エンジントルク目標値に基づいてCPU52からスロットルアクチュエータ8に与えられる指令値に対するエンジントルクの立ち上がり(または立ち下り)の1次遅れ要素が打ち消されるように1次位相進み補償が行われる。あるいは、エンジントルク目標値に基づいてCPU52からスロットルアクチュエータ8に与えられる指令値に対するエンジントルクの立ち上がり(または立ち下り)の1次進み要素が打ち消されるように1次位相遅れ補償が行われる。なお、2次以上のエンジンの特性が打ち消されるように2次以上の特性を持つ補償が行われてもよい。
次に、位相進み補償が行われたエンジントルク目標値および定常トルクマップ(定常状態のエンジン107において発生されるエンジントルクとスロットル開度との関係を示すマップ)に基づいてスロットルアクチュエータ8に対する指令値が算出される(ステップS13)。
次に、ステップS13において算出された指令値に基づいてスロットルアクチュエータ8が駆動されることにより、スロットル開度が調整される(ステップS14)。
次に、エンジン107において実際に発生されているエンジントルクが測定される(ステップS15)。なお、ステップS15においては、例えば、クランク2に動力計を設けることによりエンジントルクが測定される。
次に、ステップS11において算出されたエンジントルク目標値の経時変化とステップS15において測定されたエンジントルクの経時変化とを比較し、エンジン107において適切なエンジントルクが発生しているか否かが判定される(ステップS16)。具体的には、例えば、ステップS11において算出されたエンジントルク目標値とステップS15において測定されたエンジントルクとの差分の絶対値の経時変化の積分値がしきい値以下である場合には、エンジン107において適切なエンジントルクが発生していると判定される。また、例えば、ステップS11において算出されたエンジントルク目標値とステップS15において測定されたエンジントルクとの差分の絶対値の経時変化の積分値がしきい値よりも大きい場合には、エンジン107において適切なエンジントルクが発生していないと判定される。
なお、ステップS11において算出されたエンジントルク目標値とステップS15において測定されたエンジントルクとの差分の二乗値の経時変化の積分値がしきい値以下である場合にエンジン107において適切なエンジントルクが発生していると判定し、ステップS11において算出されたエンジントルク目標値とステップS15において測定されたエンジントルクとの差分の二乗値の経時変化の積分値がしきい値よりも大きい場合にエンジン107において適切なエンジントルクが発生していないと判定してもよい。
次に、ステップS16における判定結果が目標復帰時間下限値マップに設定される(ステップS17)。
次に、予め設定された全ての測定条件においてエンジントルクの測定が終了したか否かが判別される(ステップS18)。全ての測定条件での測定が終了していない場合、エンジン107の回転速度、トルク復帰量およびトルク復帰時間のうちいずれかの条件が変更される(ステップS19)。その後、全ての測定条件での測定が終了するまでステップS11〜S19の処理が繰り返される。
ステップS18において全ての条件での測定が終了している場合、目標復帰時間下限値マップの作成は終了される。目標復帰時間下限値マップにおいて、エンジン107の回転速度ごとおよびトルク復帰量ごとに適切なエンジントルクが発生していると判定されたトルク復帰時間のうち最短のトルク復帰時間が目標復帰時間下限値となる。
なお、上記においては、スロットルバルブ81およびエンジン107を用いて実験的にエンジン107において発生されるエンジントルクが測定されているが、スロットルバルブ81およびエンジン107の物理モデルに基づいてシミュレーションによりエンジン107において発生されるエンジントルクを算出してもよい。
(d)トルク復帰時の制御動作
次に、エンジン107のトルク復帰動作時(図5の時点t3−t4間)のCPU52の制御動作について詳細に説明する。
図11に示すように、まず、CPU52は、アクセル開度センサSE1からアクセル開度を取得する(ステップS21)。次に、CPU52は、そのアクセル開度に基づいて目標復帰トルク(図7の値b)を算出する(ステップS22)。
次に、CPU52は、ステップS22において算出された目標復帰トルクに基づいて適切なドライバビリティが得られるようにトルク復帰時間(図5の時点t3−t4間)を設定するとともに、図7のマップからエンジントルクの目標値の経時変化を算出する(ステップS23)。
次に、CPU52は、エンジン回転速度センサSE3によって検出されるエンジン107の回転速度およびステップS22において算出された目標復帰トルクに基づいて目標復帰時間下限値マップ(図9)から、ステップS23で設定されたトルク復帰時間が目標復帰時間下限値以上であるか否かを判別する(ステップS24)。
トルク復帰時間が目標復帰時間下限値以上でない場合、CPU52は、トルク復帰時間を目標復帰時間下限値以上の値に補正する(ステップS25)。次に、CPU52は、図10のステップS12と同様に位相進み補償を行う(ステップS26)。なお、ステップS24においてトルク復帰時間が目標復帰時間下限値以上であると判別された場合には、CPU52は、トルク復帰時間を補正することなくステップS26の処理に進む。
次に、CPU52は、ステップS26において位相進み補償が行われたエンジントルク目標値およびROM53(またはRAM54)に予め記憶される定常トルクマップに基づいてスロットルアクチュエータ8に対する指令値を算出する(ステップS27)。
次に、CPU52は、ステップS27において算出された指令値に基づいてスロットルアクチュエータ8を駆動することにより、スロットル開度を調整する(ステップS27)。
本実施の形態においては、CPU52は、エンジントルクの復帰動作中は、例えば、5msecの周期でステップS21〜S28の処理を繰り返す。したがって、エンジントルクの復帰動作中に運転者がアクセル開度を変更した場合でも、そのアクセル開度に応じてトルク復帰時間を補正することができる。それにより、トルク復帰時間内においてエンジントルクを確実に目標復帰トルク(図7の値b)に調整することができる。
なお、ステップS25においては、例えば、トルク復帰時間は、目標復帰時間下限値マップに設定されている目標復帰時間下限値に補正される。それにより、変速機5の迅速なシフトチェンジが可能になる。
(5)本実施の形態の効果
本実施の形態においては、トルク復帰時間(時点t3−t4間)が目標復帰時間下限値以上に設定されるので、エンジントルクをトルク復帰時間内に確実に目標復帰トルク(図7の値b)まで上昇させることができる。それにより、トルク復帰時間の終了時にエンジントルクの変動に基づくショックが自動二輪車100に発生することを防止することができるとともに、エンジントルクの迅速な復帰動作が可能になる。その結果、変速機5の迅速かつ滑らかなシフトチェンジが可能になる。
また、本実施の形態においては、エンジントルクの目標値が正弦波形を描くように変化する。この場合、エンジントルクを円滑に上昇または低下させることができるので、変速機5のより円滑なシフトチェンジが可能になる。
(6)他の実施の形態
(a)エンジントルク目標値の他の例
上記実施の形態においては、エンジントルクの目標値が正弦波形を描くように変化しているが、エンジントルクの目標値は上記の例に限定されず、他の波形を描くように変化してもよい。この場合、エンジントルクの目標値は、そのエンジントルク目標値のn階微分値(nは自然数)が連続的に変化するように設定されることが好ましい。それにより、n次の特性を持つ補償を行った場合に、エンジントルクを円滑に上昇または低下させることができる。
また、上記実施の形態においては、エンジントルクの目標値として一つの基本波形(図7)が用いられていたが、複数の基本波形を用いて同一条件において複数のエンジントルクの目標値を生成してもよい。この場合、例えば、運転者が走行状況によってその複数のエンジントルクの目標値から一の目標値を選択することができる。それにより、自動二輪車100のドライバビリティがさらに向上する。
(b)自動二輪車の他の例
上記実施の形態においては、運転者がシフト操作を行うためにシフトペダル112が設けられているが、ハンドル105に運転者のシフト操作を検出するためのシフトスイッチを設けてもよい。この場合、運転者は、シフトスイッチを操作することにより、容易に変速機5のシフトチェンジを行うことができる。
また、上記実施の形態においては、車両の一例として自動二輪車100について説明したが、自動三輪車および自動四輪車等の他の車両であってもよい。
(c)変速制御システムの他の例
上記実施の形態においては、運転者のシフト操作に基づいて自動的に変速機5のシフトチェンジを行う半自動の変速制御システム200について説明したが、本発明は完全自動の変速制御システムにも適用することができる。
完全自動の変速制御システムにおいては、例えば、トルクマップから算出されるトルクに基づいてシフトアップ制御およびシフトダウン制御を開始してもよい。
(7)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
上記実施の形態においては、スロットルアクチュエータ8、燃料噴射装置9または点火プラグ10がエンジントルク調整部の例であり、クラッチアクチュエータ4がクラッチ作動機構の例であり、シフト機構6およびシフトアクチュエータ7がシフト機構の例であり、CPU52が制御部の例であり、トルク復帰時間がトルク調整時間の例であり、0が第1の値の例であり、目標復帰トルクの値bが第2の値の例であり、後輪116が駆動輪の例である。
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
本発明は種々の車両の制御システムとして有効に利用することができる。
本実施の形態に係る自動二輪車を示す概略側面図である。 変速機およびシフト機構の構成を示す図である。 本実施の形態に係る変速制御システムの構成を示すブロック図である。 シフトチェンジ時のCPUの制御動作の一例を示すフローチャートである。 CPUの上記の制御動作をより詳細に説明するための図である。 時点t1−t2間において用いられるマップの一例を示す図である。 時点t3−t4間において用いられるマップの一例を示す図である。 目標復帰時間下限値マップを作成する際に用いられるエンジントルクの目標値を示すマップである。 エンジンの所定の回転速度に対応する目標復帰時間下限値マップの一例である。 目標復帰時間下限値マップの作成手順を示すフローチャートである。 エンジンのトルク復帰動作時のCPUの制御動作を示すフローチャートである。
符号の説明
3 クラッチ
3b クラッチディスク
3c フリクションディスク
4 クラッチアクチュエータ
5 変速機
5a メイン軸
5b ドライブ軸
5c,5d 変速ギア
6 シフト機構
7 シフトアクチュエータ
8 スロットルアクチュエータ
9 燃料噴射装置
10 点火プラグ
50 ECU
52 CPU
53 ROM
54 RAM
100 自動二輪車
107 エンジン
116 後輪
200 変速制御システム

Claims (7)

  1. エンジン、クラッチおよび変速機を有する車両の変速制御システムであって、
    前記エンジンにおいて発生されるエンジントルクを調整するエンジントルク調整部と、
    前記クラッチを切断および接続するクラッチ作動機構と、
    前記変速機のギアポジションをシフトさせるシフト機構と、
    前記エンジントルク調整部、前記クラッチ作動機構および前記シフト機構を制御する制御部とを備え、
    前記制御部は、前記変速機をシフトチェンジさせる場合に、前記エンジントルク調整部により前記エンジントルクを第1の値に変化させるとともに前記クラッチ作動機構により前記クラッチを切断し、前記クラッチを切断した状態で前記シフト機構により前記変速機のギアポジションをシフトさせ、前記ギアポジションのシフト後に前記クラッチ作動機構により前記クラッチを接続するとともに、トルク調整時間において前記第1の値からアクセル開度に基づいて決定される第2の値まで連続的に変化するエンジントルク目標値に従って前記エンジントルク調整部により前記エンジントルクを変化させ、
    前記トルク調整時間は、前記エンジントルク調整部により調整されるエンジントルクが前記エンジントルク目標値の変化に追従可能となるように設定される、変速制御システム。
  2. 前記トルク調整時間は、前記エンジントルク目標値に従って前記エンジントルクを前記第1の値から前記第2の値に変化させた場合に前記エンジントルク目標値の経時変化と前記エンジンにおいて発生されるエンジントルクの経時変化との差が所定の範囲内になるように設定される、請求項1記載の変速制御システム。
  3. 前記トルク調整時間は、前記エンジントルク目標値に従って前記エンジントルクを前記第1の値から前記第2の値に変化させた場合に前記エンジントルク目標値と前記エンジンにおいて発生されるエンジントルクとの差分の絶対値の経時的変化の積分値または前記差分の二乗値の経時的変化の積分値が所定のしきい値以下になるように設定される、請求項2記載の変速制御システム。
  4. 前記エンジントルク目標値は、前記エンジントルク調整部により調整されるエンジントルクがそのエンジントルク目標値の変化に追従可能でかつそのエンジントルク目標値のn階微分値(nは自然数)が前記トルク調整時間において連続的に変化するように設定される、請求項1〜3のいずれかに記載の変速制御システム。
  5. 前記トルク調整時間は、さらに前記エンジンの回転速度に基づいて設定される、請求項1〜3のいずれかに記載の変速制御システム。
  6. 前記制御部は、前記トルク調整時間において前記アクセル開度が変化した場合に、その変化後のアクセル開度に基づいて決定される前記第2の値に基づいて前記トルク調整時間を補正する、請求項1〜5のいずれかに記載の変速制御システム。
  7. 駆動輪と、
    エンジンと、
    前記エンジンにより発生されるトルクを前記駆動輪に伝達する変速機と、
    前記エンジンと前記変速機との間に設けられるクラッチと、
    請求項1〜6のいずれかに記載の変速制御システムとを備えた、車両。
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