JP2010130924A - 歯周病診断試験紙 - Google Patents
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Abstract
【課題】 専門的な歯科医療技術、実験技術および測定機器を必要とせず、非侵襲で簡便かつ迅速に歯周病の罹患状態を診断する方法を開発する。
【解決手段】 歯周病診断試験紙をLDH基質、LDH補酵素、ジアホラーゼ、テトラゾリウム塩、酵素安定化剤およびpH緩衝剤を含むpH7〜11の水溶液、またはジアホラーゼの代わりにPhenazinium methylsulfate誘導体を用いて調製したpH7〜11の水溶液を吸水性基材に浸透させた後、乾燥させることによって製造する。得られた試験紙を用いて唾液のLDH活性を呈色反応により検出することで歯周病罹患状態を診断する。
【選択図】 図1
【解決手段】 歯周病診断試験紙をLDH基質、LDH補酵素、ジアホラーゼ、テトラゾリウム塩、酵素安定化剤およびpH緩衝剤を含むpH7〜11の水溶液、またはジアホラーゼの代わりにPhenazinium methylsulfate誘導体を用いて調製したpH7〜11の水溶液を吸水性基材に浸透させた後、乾燥させることによって製造する。得られた試験紙を用いて唾液のLDH活性を呈色反応により検出することで歯周病罹患状態を診断する。
【選択図】 図1
Description
本発明は歯周病診断試験紙に関し、特に歯周病の罹患状態を呈色によって非侵襲(生体を傷つけない)で簡便かつ迅速に診断できる試験紙に関する。
現在、我が国において歯周病は生活習慣病として位置づけられ、その罹患率は生活習慣の欧米化や精神的ストレスの増加等により高まっている。歯周病は痛み等の自覚症状が現れないうちに進行し、放置すると歯牙喪失に至る。さらには歯周病と肺炎、骨粗鬆症、糖尿病、心筋梗塞、早産、メタボリックシンドローム等との関連性も近年報告されており、歯周病の予防や治療への関心が急速に高まっている。
従来、歯周病罹患状態は歯周ポケットの深さを測定する、CPI(Community
Periodontal Index)により診断されている。しかしながら、その診断には熟練した専門技術が求められること、診断に時間がかかること、歯周ポケットへのプローブ挿入時の不快感などの問題が指摘されている。
Periodontal Index)により診断されている。しかしながら、その診断には熟練した専門技術が求められること、診断に時間がかかること、歯周ポケットへのプローブ挿入時の不快感などの問題が指摘されている。
唾液中には歯周病の有用なマーカーとなりうる物質が多く含まれており、近年、歯周病の早期発見や診断に唾液検査を用いることが提唱されている。これまでに、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、ジペプチジルペプチダーゼ、乳酸脱水素酵素(以下、LDHという)、アルカリフォスファターゼ、酸性フォスファターゼ、γグルタミルトランスフェラーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ、クレアチニン、尿素、遊離ヘモグロビン等と歯周病との関連性が指摘されている。
特に、LDHは歯周病疾患のマーカーとして有用であることが古くから報告されている。LDHはヒトのほぼ全ての細胞の細胞質中に存在する酵素であるが、細胞の損傷や壊死により細胞外に漏出する。歯周病患者においても唾液のLDH活性が有意に高いことが知られており、唾液LDH活性を歯周病の罹患状態の指標とすることができる。
しかしながら、従来のLDH活性の測定法は分注器等の実験器具や分光光度計等の測定
機器を必要とし、特に技術及び設備の面で、歯周病患者自身が測定することは実際には困難である。
機器を必要とし、特に技術及び設備の面で、歯周病患者自身が測定することは実際には困難である。
本発明はかかる状況を鑑み、歯周病の罹患状態を呈色によって非侵襲で簡便かつ迅速に診断できる歯周病診断試験紙を提供することを課題とする。
本発明に係る歯周病診断試験紙は、LDH基質、LDH補酵素、ジアホラーゼ、テトラゾリウム塩、酵素安定化剤およびpH緩衝剤を含むpH7〜11の水溶液が吸水性基材に浸透され乾燥してなることを特徴とする。
本発明に係る歯周病診断試験紙は、LDH基質、LDH補酵素、Phenazinium methylsulfate誘導体、テトラゾリウム塩、酵素安定化剤およびpH緩衝剤を含むpH7〜11の水溶液が吸水性基材に浸透され乾燥されてなることを特徴とする。
また、本発明に係る歯周病診断方法は、請求項1又は2記載の歯周病診断試験紙を用いて唾液のLDH活性を検出することにより歯周病の罹患状態を診断することを特徴とする。
本件発明者らは簡便な歯周病診断方法を鋭意検討した結果、LDH活性試験紙を開発した。本試験紙はLDHの基質である乳酸または乳酸塩、LDHの補酵素である酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下、NADという)またはその塩、発色酵素であるジアホラーゼ、ジアホラーゼ基質であるテトラゾリウム塩、酵素安定化剤およびpH緩衝剤を溶解したpH7〜11の水溶液、またはジアホラーゼの代わりに電子キャリアであるPhenazinium methylsulfate(以下、PMSという)誘導体を用いた上記水溶液を吸水性基材に浸透した後、乾燥することにより製造できる。
以下、本発明について詳細に説明する。
LDHの基質としては、乳酸、乳酸リチウム、乳酸ナトリウム、乳酸アンモニウム、乳酸マグネシウム、乳酸カリウム等が好適に用いられる。LDH基質はLDH活性試験紙用発色液中の最終濃度が1.0〜50mg/mLとなるように添加することが望ましい。
LDHの補酵素はNADまたはそのナトリウム塩またはリチウム塩が好適に用いられる。LDH補酵素はLDH活性試験紙用発色液中の最終濃度が0.05〜5.0mg/mLとなるように添加することが望ましい。
酵素安定化剤としては、ウシ血清アルブミン等が好適に用いられる。酵素安定化剤はLDH活性試験紙用発色液中の最終濃度が0.05〜20mg/mLとなるように添加することが望ましい。
pH緩衝剤としてはpH7〜11において緩衝作用を示す、トリス塩酸、リン酸、ホウ酸、グリシン、ジエタノールアミン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、またはHEPES、HEPPS、Tricine、Bicine、Glycylglycine、TAPS、CAPS等のGoodの緩衝液が好適に用いられる。pH緩衝剤はLDH活性試験紙用発色液中の最終濃度が0.05〜50mg/mLとなるように添加することが望ましい。
テトラゾリウム塩としては、3,3’−[3,3’−Dimethoxy−(1,1’−biphenyl)−4,4’−diyl]−bis(2,5−diphenyl−2H−tetrazoluim chloride)、3,3’−[3,3’−Dimethoxy−(1,1’−biphenyl)−4,4’−diyl]−bis[2−(4−nitrophenyl)−5−phenyl−2H−tetrazoluim chloride](以下、NBTという)、2−(4−Iodophenyl)−3−(4
−nitrophenyl)−5−phenyl−2H−tetrazolium chloride(以下、INTという)、3−(4,5−Dimethyl−2−thiazolyl)−2,5−diphenyl−2H−tetrazolium bromide、2−(4−Iodophenyl)−3−(4−nitrophenyl)−5−(2,4−disulfophenyl)−2H−tetrazolium, monosodiumsalt(以下、WST−1という)、2−(4−Iodophenyl)−3−(2,4−dinitrophenyl)−5−(2,4−disulfophenyl)−2H−tetrazolium,monosodium salt等が好適に用いられる。テトラゾリウム塩はLDH活性試験紙用発色液中の最終濃度が0.05〜20mg/mLとなるように添加することが望ましい。
PMS誘導体は1−Methoxy−5−methylphenazinium methylsulfate(以下、1−Methoxy PMSという)が特に好適に用いられる。PMS誘導体はLDH活性試験紙用発色液中の最終濃度が1.0〜100mg/mLとなるように添加することが望ましい。
また、吸水性基材には通常の濾紙、書道用吸い取り紙、高分子吸収体、不織布などが用いられる。
LDHの基質としては、乳酸、乳酸リチウム、乳酸ナトリウム、乳酸アンモニウム、乳酸マグネシウム、乳酸カリウム等が好適に用いられる。LDH基質はLDH活性試験紙用発色液中の最終濃度が1.0〜50mg/mLとなるように添加することが望ましい。
LDHの補酵素はNADまたはそのナトリウム塩またはリチウム塩が好適に用いられる。LDH補酵素はLDH活性試験紙用発色液中の最終濃度が0.05〜5.0mg/mLとなるように添加することが望ましい。
酵素安定化剤としては、ウシ血清アルブミン等が好適に用いられる。酵素安定化剤はLDH活性試験紙用発色液中の最終濃度が0.05〜20mg/mLとなるように添加することが望ましい。
pH緩衝剤としてはpH7〜11において緩衝作用を示す、トリス塩酸、リン酸、ホウ酸、グリシン、ジエタノールアミン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、またはHEPES、HEPPS、Tricine、Bicine、Glycylglycine、TAPS、CAPS等のGoodの緩衝液が好適に用いられる。pH緩衝剤はLDH活性試験紙用発色液中の最終濃度が0.05〜50mg/mLとなるように添加することが望ましい。
テトラゾリウム塩としては、3,3’−[3,3’−Dimethoxy−(1,1’−biphenyl)−4,4’−diyl]−bis(2,5−diphenyl−2H−tetrazoluim chloride)、3,3’−[3,3’−Dimethoxy−(1,1’−biphenyl)−4,4’−diyl]−bis[2−(4−nitrophenyl)−5−phenyl−2H−tetrazoluim chloride](以下、NBTという)、2−(4−Iodophenyl)−3−(4
−nitrophenyl)−5−phenyl−2H−tetrazolium chloride(以下、INTという)、3−(4,5−Dimethyl−2−thiazolyl)−2,5−diphenyl−2H−tetrazolium bromide、2−(4−Iodophenyl)−3−(4−nitrophenyl)−5−(2,4−disulfophenyl)−2H−tetrazolium, monosodiumsalt(以下、WST−1という)、2−(4−Iodophenyl)−3−(2,4−dinitrophenyl)−5−(2,4−disulfophenyl)−2H−tetrazolium,monosodium salt等が好適に用いられる。テトラゾリウム塩はLDH活性試験紙用発色液中の最終濃度が0.05〜20mg/mLとなるように添加することが望ましい。
PMS誘導体は1−Methoxy−5−methylphenazinium methylsulfate(以下、1−Methoxy PMSという)が特に好適に用いられる。PMS誘導体はLDH活性試験紙用発色液中の最終濃度が1.0〜100mg/mLとなるように添加することが望ましい。
また、吸水性基材には通常の濾紙、書道用吸い取り紙、高分子吸収体、不織布などが用いられる。
本発明により製造された試験紙は、唾液を浸した後、通常室温で10秒から10分間、好ましくは1分から5分間放置後の呈色を色調見本の色と比較してLDH活性、すなわち歯周病罹患状態を判定するものである。
試験紙の呈色は製造に用いるテトラゾリウム塩により異なる。例えば、NBTを用いる場合は紫色に、INTを用いる場合は赤色に、WST−1を用いる場合は黄色に呈色する。呈色の機構の例を図1及び図2に示す。
試験紙の呈色は製造に用いるテトラゾリウム塩により異なる。例えば、NBTを用いる場合は紫色に、INTを用いる場合は赤色に、WST−1を用いる場合は黄色に呈色する。呈色の機構の例を図1及び図2に示す。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
40mg/mL 乳酸リチウムおよび10mg/mL ウシ血清アルブミンを含む12mg/mL トリス塩酸緩衝液(pH9.0、25℃)を調製した(以下、緩衝液という)。NBTを5.0mg/mLとなるように蒸留水に添加して熱水中で加温した後、超音波処理により完全に溶解した(以下、NBT溶液という)。NAD(リチウム塩)(Nicotinamide adenine dinucleotide,Lithium salt;Calbiochem社製)を3.347mg/mLとなるように緩衝液に溶解した(以下、NAD溶液という)。ジアホラーゼ(Diaphorase;オリエンタル酵母社製)を500U/mLとなるように蒸留水に懸濁したのち、12,000rpm×5分間の遠心分離により得られた上清をジアホラーゼ溶液とした。緩衝液、NBT溶液、NAD溶液およびジアホラーゼ溶液をそれぞれ4:4:1:1(ml)の割合で混合し、再度12,000rpm×5分間の遠心分離を行い、得られた上清をLDH活性試験紙用発色液とした。以上の溶液はすべて褐色瓶中で調製した。得られた発色液を吸い取り紙(墨運堂社製、40mm×5mm)に浸透したのち、遮光下で凍結乾燥して紫発色LDH試験紙を得た。
NBTの代わりにINT(同仁化学研究所製)を使用する以外は実施例1と同様にして赤発色LDH試験紙を得た。
NBTの代わりにWST−1(同仁化学研究所製)を使用する以外は実施例1と同様に
して黄発色LDH試験紙を得た。
して黄発色LDH試験紙を得た。
ジアホラーゼ溶液の代わりに67mg/L 1−Methoxy PMS(同仁化学研究所製)水溶液を使用する以外は実施例1と同様にして紫発色LDH試験紙を得た。
ジアホラーゼ溶液の代わりに67mg/L 1−Methoxy PMS水溶液を使用する以外は実施例2と同様にして赤発色LDH試験紙を得た。
ジアホラーゼ溶液の代わりに67mg/L 1−Methoxy PMS水溶液を使用する以外は実施例3と同様にして黄発色LDH試験紙を得た。
実施例1により得られたLDH試験紙の評価を行った。
〔唾液検査の方法〕
46人の成人被験者に水でうがいをさせた後、1分間後に安静時唾液を約100μL、アルミホイル上に吐出させた。試験紙を唾液に浸した後に遮光し、1分間後の色の濃さを10種類の濃度の色見本の中で最も近いものから選んだ。なお、色の濃さは10が最も濃く、1が最も薄いものとした。
〔唾液検査の方法〕
46人の成人被験者に水でうがいをさせた後、1分間後に安静時唾液を約100μL、アルミホイル上に吐出させた。試験紙を唾液に浸した後に遮光し、1分間後の色の濃さを10種類の濃度の色見本の中で最も近いものから選んだ。なお、色の濃さは10が最も濃く、1が最も薄いものとした。
〔歯周組織の検査〕
各被験者の全ての歯を対象に、歯周ポケットプローブを用いて、1歯に対して6ヶ所を検査し、プロービング後の出血の有無を評価した。
各被験者の全ての歯を対象に、歯周ポケットプローブを用いて、1歯に対して6ヶ所を検査し、プロービング後の出血の有無を評価した。
〔歯周病ありの定義〕
全歯の全ての測定箇所のうち、20%以上に出血の見られた者を「歯周病あり」と定義した。
全歯の全ての測定箇所のうち、20%以上に出血の見られた者を「歯周病あり」と定義した。
〔判定結果〕
46人の被験者のうち、12人が「歯周病あり」と判定された。
46人の被験者のうち、12人が「歯周病あり」と判定された。
〔カットオフ値の決定と検査特性〕
唾液検査のカットオフ値を求めるために統計ソフトウェア(SPSS 15.0J for Windows(登録商標))を用いて、receiver operating
characteristic curve (ROC曲線)を作成して検討したところ、色見本の7と8の間がカットオフ値となった。
唾液検査のカットオフ値を求めるために統計ソフトウェア(SPSS 15.0J for Windows(登録商標))を用いて、receiver operating
characteristic curve (ROC曲線)を作成して検討したところ、色見本の7と8の間がカットオフ値となった。
〔唾液検査の結果〕
表1の結果により、本発明に係るLDH試験紙は歯周病の程度に応じて呈色度合いが変化し、罹患状態の判別が可能であることが確認された。このときの敏感度は0.92、特異度は0.82となり、ROC曲線下の面積は0.94であった。LDH試験紙の呈色と歯周病罹患状態には高い相関性がみられ、唾液を検体として歯周病罹患状態を診断することが可能となった。
表1の結果により、本発明に係るLDH試験紙は歯周病の程度に応じて呈色度合いが変化し、罹患状態の判別が可能であることが確認された。このときの敏感度は0.92、特異度は0.82となり、ROC曲線下の面積は0.94であった。LDH試験紙の呈色と歯周病罹患状態には高い相関性がみられ、唾液を検体として歯周病罹患状態を診断することが可能となった。
本発明により、従来のCPIによる歯周病診断で課題であった、歯科医師の診断技術、診断時間、受診者の不快感等の問題が解消され、特殊な実験器具や測定機器等を必要とせず、受診者自身でも簡便かつ迅速に歯周病罹患状態を診断することが可能となり、その社会的な有用性は非常に大である。
Claims (3)
- 乳酸脱水素酵素基質、乳酸脱水素酵素補酵素、ジアホラーゼ、テトラゾリウム塩、酵素安定化剤およびpH緩衝剤を含むpH7〜11の水溶液が吸水性基材に浸透され乾燥されてなることを特徴とする歯周病診断試験紙。
- 乳酸脱水素酵素基質、乳酸脱水素酵素補酵素、Phenazinium methylsulfate誘導体、テトラゾリウム塩、酵素安定化剤およびpH緩衝剤を含むpH7〜11の水溶液が吸水性基材に浸透され乾燥されてなることを特徴とする歯周病診断試験紙。
- 請求項1又は2記載の歯周病診断試験紙を用いて唾液の乳酸脱水素酵素活性を検出することにより歯周病の罹患状態を診断することを特徴とする歯周病診断方法。
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- 2008-12-03 JP JP2008308519A patent/JP2010130924A/ja active Pending
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