JP2010129665A - 永久磁石の製造方法 - Google Patents

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Abstract


【課題】 処理室内に鉄−ホウ素−希土類系の焼結磁石Sと、Dy及びTbの少なくとも一方を含む蒸発材料vとを収納して加熱し、焼結磁石の結晶粒界及び/または結晶粒界相にDyやTbを拡散させて高性能磁石を得る際に、処理温度を低くでき、処理室で使用される治具や処理箱の寿命を延ばすことができる低コストの永久磁石の製造方法を提供する。
【解決手段】 蒸発材料vとして臭化テルビウムまたは臭化ジスプロシウムを用いる。そして、処理室70内に鉄−ホウ素−希土類系の焼結磁石Sを配置して所定温度に加熱すると共に、同一または他の処理室内に配置した前記蒸発材料を蒸発させる。この蒸発した臭化テルビウムまたは臭化ジスプロシウムを焼結磁石表面への供給量を調節して付着させ、焼結磁石の結晶粒界及び/または結晶粒界相に拡散させる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、永久磁石の製造方法に関し、より詳しくは、Nd−Fe−B系の焼結磁石の結晶粒界及び/または結晶粒界相にDyやTbを拡散させてなる高性能磁石の製造方法に関する。
Nd−Fe−B系の焼結磁石(所謂、ネオジム磁石)は、鉄と、安価であって資源的に豊富で安定供給が可能なNd、Bの元素の組み合わせからなることで安価に製造できると共に、高磁気特性(最大エネルギー積はフェライト系磁石の10倍程度)を有することから、電子機器など種々の製品に利用され、ハイブリッドカー用のモーターや発電機などにも採用され、使用量が増えている。
上記焼結磁石のキュリー温度は、約300℃と低いことから、採用する製品の使用状況によっては所定温度を超えて昇温する場合があり、所定温度を超えると、熱により減磁するという問題がある。また、上記焼結磁石を作製後、所望の製品として利用する場合、焼結磁石を所定形状に機械加工する場合があり、この機械加工によって焼結磁石の表面付近に存する結晶粒に欠陥(クラック等)や歪などが生じて加工劣化し(加工劣化層が形成される)、容易に磁化反転するようになる。その結果、保磁力の低下など磁気特性が著しく劣化するという問題がある。
このため、従来では、Yb、Eu、Smの中から選択された希土類金属をNd−Fe−B系の焼結磁石と混合した状態で処理室内に配置し、この処理室を加熱することで希土類金属を蒸発させ、蒸発した希土類金属原子を焼結磁石へ収着させ、さらにはこの金属原子を焼結磁石の結晶粒界相に拡散させることで、焼結磁石表面並びに結晶粒界相に希土類金属を均一かつ所望量導入して、磁化および保磁力を向上または回復させることが知られている(特許文献1)。
ここで、希土類金属のうちDy、Tbは、Ndより大きい4f電子の磁気異方性を有し、Ndと同じく負のスティーブンス因子を持つことで、主相の結晶磁気異方性を大きく向上させることが知られている。但し、焼結磁石作製の際にDyやTbを添加したのでは、Dy、Tbは主相結晶格子中でNdと逆向きのスピン配列をするフェリ磁性構造を取ることから磁界強度、ひいては、磁気特性を示す最大エネルギー積が大きく低下する。
そこで、Dy、Tbを用い、上記方法によって結晶粒界及び/または結晶粒界相にDy、Tbを均一かつ所望量導入することが提案されるが、上記方法を用いて焼結磁石表面にもDyやTbが存するように(つまり、焼結磁石表面にDyやTbの薄膜が形成されるように)、蒸発したDy、Tbの金属原子が供給されると、焼結磁石表面で堆積した金属原子が再結晶し、焼結磁石表面を著しく劣化させる(表面粗さが悪くなる)という問題が生じる。希土類金属と焼結磁石とを混合した状態で配置した上記方法では、蒸発材料を加熱した際に溶けた希土類金属が直接焼結磁石に付着することで薄膜の形成や突起の形成が避けられない。
また、焼結磁石表面にDy、Tbの薄膜が形成されるように焼結磁石表面に過剰に金属原子が供給されると、処理中に加熱されている焼結磁石表面に堆積し、DyやTbの量が増えることで表面付近の融点が下がり、表面に堆積したDy、Tbが溶けて特に焼結磁石表面に近い結晶粒内に過剰に進入する。結晶粒内に過剰に進入した場合、上述したようにDy、Tbは主相結晶格子中でNdと逆向きのスピン配列をするフェリ磁性構造を取ることから、磁化および保磁力を効果的に向上または回復させることができない虞がある。
つまり、焼結磁石表面にDyやTbの薄膜が一度形成されると、その薄膜に隣接した焼結磁石表面の平均組成がDyやTbの希土類リッチ組成となり、希土類リッチ組成になると、液相温度が下がり、焼結磁石表面が溶けるようになる(即ち、主相が溶けて液相の量が増加する)。その結果、焼結磁石表面付近が溶けて崩れ、凹凸が増加することになる。その上、Dyが多量の液相と共に結晶粒内に過剰に侵入し、磁気特性を示す最大エネルギー積及び残留磁束密度がさらに低下する。
このような問題を解決策として、処理箱内で鉄−ホウ素−希土類系の焼結磁石と、Dy、Tbの少なくとも一方を含む蒸発材料とを相互に離間させて収納し、この処理箱を真空雰囲気にて加熱して蒸発材料を蒸発させ、この蒸発した金属原子の焼結磁石表面への供給量を調節してこの金属原子を付着させ、この付着した金属原子を、焼結磁石表面に蒸発材料からなる薄膜が形成される前に焼結磁石の結晶粒界及び/または結晶粒界相に拡散させる処理(真空蒸気処理)を施すことが、本出願人により提案されている(国際出願PCT/JP2007/066272)。
このような真空蒸気処理においては、Dy、Tbの蒸気圧や焼結磁石の結晶粒界及び/または結晶粒界相へのDyやTb原子の拡散速度等から、1000℃近傍の温度で処理が行われる。他方で、処理箱やこの処理箱内で焼結磁石と蒸発材料とを相互に離間して配置するための治具としては、蒸発材料と反応しないMo等の耐熱金属製のものが用いられる。然し、耐熱性金属を用いたとしても、1000℃付近の温度で上記真空蒸気処理を行うと、治具や処理箱を構成する材料が結晶化してその寿命が短くなることが判明した。これらの処理箱や治具は高価であるため、寿命が短いと、ランニングコストが高騰する。
特開2004−296973号公報(例えば、特許請求の範囲の記載参照)
本発明は、以上の点に鑑み、高性能磁石を得るための処理を行う際に用いる治具や処理箱の寿命を延ばすことができる低コストの永久磁石の製造方法を提供することにその課題とするものである。
上記課題を解決するために、本発明の永久磁石の製造方法は、処理室内に鉄−ホウ素−希土類系の焼結磁石を配置して所定温度に加熱し、蒸発材料として臭化テルビウムまたは臭化ジスプロシウムを用い、この蒸発材料を同一または他の処理室内に配置して蒸発させる工程と、この蒸発した臭化テルビウムまたは臭化ジスプロシウムを焼結磁石表面への供給量を調節して付着させ、焼結磁石の結晶粒界及び/または結晶粒界相に拡散させる工程とを含むことを特徴とする。
本発明によれば、蒸発材料として臭化テルビウムまたは臭化ジスプロシウムを用いることで、その蒸気圧がテルビウムまたはジスプロシウム単体より高くなり、800℃前後の低い温度で蒸発材料を加熱して蒸発できる。そして、臭化テルビウムまたは臭化ジスプロシウムを蒸発させることで、蒸発した臭化テルビウムまたは臭化ジスプロシウムが、略同温まで加熱されている焼結磁石表面に付着し、焼結磁石の結晶粒界及び/または結晶粒界相に拡散される。これにより、処理温度が低くなって治具や処理箱を構成する材料の結晶化が防止でき、その寿命を長くできる。その結果、ランニングコストを抑制することが可能となる。
本発明においては、前記蒸発材料が蒸発している間で焼結磁石が配置された処理室内に不活性ガスを導入すれば、蒸発した臭化テルビウムまたは臭化ジスプロシウムは、その平均自由行程が短いことから、不活性ガスにより処理室内で拡散され、直接焼結磁石表面に付着する臭化テルビウムまたは臭化ジスプロシウムの量が減少すると共に、複数の方向から焼結磁石表面に供給されるようになる。このため、当該焼結磁石と蒸発材料との間の間隔が狭い場合でも、線材の影となる部分まで蒸発した臭化テルビウムまたは臭化ジスプロシウムが回り込んで付着する。その結果、DyやTbが結晶粒内に過剰に拡散し、最大エネルギー積及び残留磁束密度を低下させることや局所的に保磁力の高い部分と低い部分とが存在することを抑制でき、減磁曲線の角型性が損なわれることを防止できる。その上、処理室内で焼結磁石と蒸発材料との間の間隔を狭くして、上下左右方向に近接配置できるため、一個の処理室での焼結磁石の積載量を増加でき、高い量産性が達成できる。
この場合、前記処理室内の不活性ガスの分圧を1kPa〜30kPaの範囲で変化させ、蒸発した臭化テルビウムまたは臭化ジスプロシウムの焼結磁石表面への供給量を調節すればよい。
また、前記焼結磁石と蒸発材料とを同一の処理室内に配置する場合、焼結磁石及び蒸発材料を相互に接触しないように配置することが好ましい。
さらに、前記結晶粒界及び/または結晶粒界相に拡散させる工程後に、前記温度より低い所定温度で熱処理を施せば、更に高性能な永久磁石が得られる。
図1を参照して説明すれば、本実施の形態において、永久磁石Mは、所定形状に作製されたNd−Fe−B系の焼結磁石Sを所定温度に加熱することと、蒸発材料vを蒸発させ、その蒸発させたものを焼結磁石Sの付着させ、その結晶粒界及び/または結晶粒界相に拡散させることとを同時に行って作製される(真空蒸気処理)。
出発材料であるNd−Fe−B系の焼結磁石Sは、次のように作製される。即ち、Fe、Nd、Bが所定の組成比となるように、工業用純鉄、金属ネオジウム、低炭素フェロボロンを配合して真空誘導炉を用いて溶解し、急冷法、例えばストリップキャスト法により0.05mm〜0.5mmの合金原料を先ず作製する。あるいは、遠心鋳造法で5〜10mm程度の厚さの合金原料を作製してもよく、配合の際に、Dy、Tb、Co、Cu、Nb、Zr、Al、Ga等を添加しても良い。希土類元素の合計含有量を28.5%より多くし、α鉄が生成しないインゴットとする。
次いで、作製した合金原料を、公知の水素粉砕工程により粗粉砕し、引き続き、ジェットミル微粉砕工程により窒素ガス雰囲気中で微粉砕し、平均粒径3〜10μmの合金原料粉末を得る。この合金原料粉末を、公知の圧縮成形機を用いて磁界中で所定形状に圧縮成形する。そして、圧縮成形機から取出した成形体を、図示省略した焼結炉内に収納し、真空中で所定温度(例えば、1050℃)で所定時間焼結(焼結工程)し、一次焼結体を得る。
次いで、作製した一次焼結体を、図示省略した真空熱処理炉内に収納し、真空雰囲気にて所定温度に加熱する。加熱温度は900℃以上で、焼結温度未満の温度に設定する。900℃より低い温度では、希土類元素の蒸発速度が遅く、また、焼結温度を超えると、異常粒成長が起こり、磁気特性が大きく低下する。また、炉内の圧力を10−3Pa以下の圧力に設定する。10−3Paより高い圧力では、希土類元素を効率よく蒸発させることができない。
これにより、一定温度下での蒸気圧の相違により(例えば、1000℃において、Ndの蒸気圧は10−3Pa、Feの蒸気圧は10−5Pa、Bの蒸気圧は10−13Pa)、一次焼結体の希土類リッチ相中の希土類元素のみが蒸発する。その結果、Ndリッチ相の割合が減少して、磁気特性を示す最大エネルギー積((BH)max)及び残留磁束密度(Br)が向上した焼結磁石Sが作製される。この場合、高性能な永久磁石Mを得るには、永久磁石の希土類元素Rの含有量を28.5wt%未満、または、希土類元素Rの平均濃度の減少量を0.5重量%以上となるまで加熱処理する。尚、焼結磁石Sとしては、酸素含有量が少ない程、DyやTbの結晶粒界及び/または結晶粒界相への拡散速度が早くなるため、焼結磁石S自体の酸素含有量が3000ppm以下、好ましくは2000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下であればよい。そして、このようにして得た焼結磁石Sに対し真空蒸気処理を施す。この真空蒸気処理を施す真空蒸気処理装置を図2を用いて以下に説明する。
真空蒸気処理装置1は、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ、拡散ポンプなどの真空排気手段2を介して所定圧力(例えば1×10−5Pa)まで減圧して保持できる真空チャンバ3を有する。真空チャンバ3内には、後述する処理箱の周囲を囲う断熱材41とその内側に配置した発熱体42とから構成される加熱手段4が設けられる。断熱材41は、例えばMo製であり、また、発熱体42としては、Mo製のフィラメント(図示せず)を有する電気ヒータであり、図示省略した電源からフィラメントに通電し、抵抗加熱式で断熱材41により囲繞され、後述の処理箱が設置される空間5を加熱できる。この空間5には、例えばMo製の載置テーブル6が設けられ、少なくとも1個の処理箱7が載置できるようになっている。
処理箱7は、DyやTbと反応してその表面に反応生成物が形成されることがないMo等の耐火金属製であり、上面を開口した直方体形状の箱部71と、開口した箱部71の上面に着脱自在な蓋部72とから構成されている。蓋部72の外周縁部には下方に屈曲させたフランジ72aがその全周に亘って形成され、箱部71の上面に蓋部72を装着すると、フランジ72aが箱部71の外壁に嵌合して(この場合、メタルシールなどの真空シールは設けていない)、真空チャンバ3と隔絶された処理室70が画成される。そして、真空排気手段2を作動させて真空チャンバ3を所定圧力(例えば、1×10−5Pa)まで減圧すると、処理室70が真空チャンバ3より略半桁高い圧力(例えば、5×10−4Pa)まで減圧される。これにより、付加的な真空排気手段を必要とすることなく、処理室70内を適宜所定の真空圧に減圧できる。
図3に示すように、処理箱7の箱部71には、上記焼結磁石S及び蒸発材料vが相互に接触しないようにスペーサー8を介在させて上下に積み重ねて両者が収納される。スペーサー8は、箱部72の横断面より小さい面積となるように、Mo等の耐火金属製の複数本の線材81(例えばφ0.1〜10mm)を格子状に組付けて構成したものであり、その外周縁部が略直角に上方に屈曲されている。この屈曲した箇所の高さは、真空蒸気処理すべき焼結磁石Sの高さより高く設定されており、本実施の形態においては、この屈曲した外周縁部が、上側に設置される蒸発材料vとの間で空間を確保する支持片9を構成する。そして、このスペーサー8の水平部分に複数個の焼結磁石Sが等間隔で並べて載置される。
ここで、焼結磁石Sと蒸発材料vとの間隔を0.3〜10mmの範囲になるように支持片9の高さを設定することが好ましい。これにより、後述のように蒸発したものが理想的に供給され、磁化および保磁力が一層向上または回復し、かつ、減磁曲線の角型性が損なわれることのない高性能磁石が得られる。なお、支持片9に変えて、Mo製の円筒形状の高さ調節用の治具(図示せず)を蒸発材料vとスペーサーとの間に立設し、上記間隔を調節する構成を採用してもよい。
また、蒸発材料vとしては、主相の結晶磁気異方性を大きく向上させる臭化ジスプロシウム(DyBr)または臭化テルビウム(TbBr)が用いられる。この場合、蒸発材料vは、DyBrまたはTbBrの粉末をプレス成形することで、所定の厚さの板状で、かつ、支持片9の全周で支持されるような面積を有するように形成される。
このような蒸発材料vを用いて蒸発させた場合、臭化ジスプロシウムまたは臭化テルビウムの状態で焼結磁石S表面に供給されて付着し、当該焼結磁石S内部に取り込まれるようになる。このとき、臭化ジスプロシウムや臭化テルビウムの臭素が、焼結磁石Sのネオジウム及び酸素と反応してネオジウム酸臭化物(Nd−O−Br)となって安定化し、また、ジスプロシウムやテルビウムが結晶粒界及び/または結晶粒界相に拡散される。
箱部71の底面に板状の蒸発材料vを設置した後、その上側に、焼結磁石Sを載置したスペーサー8を載置し、さらに、支持片9の上端で支持されるように他の板状の蒸発材料vを設置する。このようにして、処理箱7の上端部まで蒸発材料vと焼結磁石Sの複数個が並置されたスペーサー8とを階層状に交互に積み重ねていく。尚、最上階のスペーサー8の上方においては、蓋部72が近接して位置するため、蒸発材料vを省略することもできる。
これにより、1個の処理箱7内に収納される焼結磁石Sの数を増加させて(積載量が増加する)、量産性を高めることができる。また、スペーサー8(同一平面)に並置した焼結磁石Sの上下を板状の蒸発材料vで挟む所謂サンドイッチ構造としたため、処理室70内で全ての焼結磁石Sの近傍に蒸発材料vが位置し、当該蒸発材料vを蒸発させたときに、この蒸発した臭化ジスプロシウムまたは臭化テルビウムが各焼結磁石S表面に供給されて付着するようになる。その結果、磁化および保磁力を向上または回復させるという真空蒸気処理の効果が損なわれることはない。それに加えて、スペーサー8と板状の蒸発材料vとを重ねて行くだけで、焼結磁石Sの直上に積み重ねられる蒸発材料vとの間に所定の空間が確保されて両者の相互の接触が防止でき、処理箱7に蒸発材料vと焼結磁石Sとを収納していくための作業性がよい。
ここで、処理箱7やスペーサー8は、Mo製の他、例えば、W、V、Nb、Ti、Taまたはこれらの合金(希土類添加型Mo合金、Ti添加型Mo合金などを含む)を用いることができる。他方、CaO、Y
、或いは希土類酸化物から製作してもよい。
ところで、上記のように処理箱7内においてサンドイッチ構造で蒸発材料vと焼結磁石Sとを上下に積み重ねと、蒸発材料vと焼結磁石Sとの間の間隔が狭くなる。このような状態で蒸発材料vを蒸発させると、蒸発した臭化ジスプロシウムまたは臭化テルビウムの直進性の影響を強く受ける虞がある。つまり、焼結磁石Sのうち、蒸発材料vと対向した面に臭化ジスプロシウムまたは臭化テルビウムが局所的に付着し易くなり、また、焼結磁石Sのスペーサー8との当接面において線材81の影となる部分にDyやTbが供給され難くなる。このため、上記真空蒸気処理を施すと、得られた永久磁石Mには局所的に保磁力の高い部分と低い部分とが存在し、その結果、減磁曲線の角型性が損なわれる。
本実施の形態においては、真空チャンバ3に不活性ガス導入手段を設けた。不活性ガス導入手段は、断面材41で囲繞された空間5に通じるガス導入管10を有し、ガス導入管10が図示省略したマスフローコントローラを介して不活性ガスのガス源に連通している。そして、真空蒸気処理の間において、He、Ar、Ne、Kr等の不活性ガスを一定量で導入するようにした。真空蒸気処理中に不活性ガスの導入量を変化させるようにしてもよい(当初に不活性ガスの導入量を多くし、その後に少なくしたり若しくは当初に不活性ガスの導入量を少なくし、その後に多くしたり、または、これらを繰り返す)。不活性ガスは、例えば、蒸発材料vが蒸発を開始後や設定された加熱温度に達した後に導入され、設定された真空蒸気処理時間の間またはその前後の所定時間だけ導入すればよい。また、不活性ガスを導入したとき、真空チャンバ3内の不活性ガスの分圧が調節できるように、真空排気手段2に通じる排気管に開閉度が調節自在なバルブ11を設けておくことが好ましい。
これにより、空間5に導入された不活性ガスが処理箱7内にも導入され、このとき、臭化ジスプロシウムまたは臭化テルビウムの平均自由行程が短いことから、不活性ガスにより処理箱7内で蒸発した臭化ジスプロシウムまたは臭化テルビウムが拡散され、焼結磁石S表面に直接付着する量が減少すると共に、複数の方向から焼結磁石S表面に供給されるようになる。このため、当該焼結磁石Sと蒸発材料vとの間の間隔が狭い場合(例えば5mm以下)でも、線材81の影となる部分まで蒸発した臭化ジスプロシウムまたは臭化テルビウムが回り込んで付着する。このため、最大エネルギー積及び残留磁束密度を低下させることを防止できる。さらに、局所的に保磁力の高い部分と低い部分とが存在することが抑制でき、減磁曲線の角型性が損なわれることを防止できる。
次に、図4を参照して、蒸発材料vとして臭化テルビウムを用い、昇温工程、蒸気処理工程及びアニール工程の各工程を経て実施される上記真空蒸気処理装置1による真空蒸気処理について説明する。
先ず、上述したように焼結磁石Sと板状の蒸発材料vとをスペーサー8を介して交互に積み重ねて箱部71に両者を先ず設置する(これにより、処理室70内で焼結磁石Sと蒸発材料vとが上下方向で0.3〜10mm、より好ましくは0.3〜2mmの範囲にだけ離間して配置される)。そして、箱部71の開口した上面に蓋部72を装着した後、真空チャンバ3内で加熱手段4によって囲繞された空間5内でテーブル6上に処理箱7を設置し(図2参照)、昇温工程が開始される。
昇温工程(蒸発材料vを蒸発させる工程を含む)においては、真空排気手段2を介して真空チャンバ3を所定圧力(例えば、1×10−4Pa)に達するまで真空排気して減圧し、(処理室70は略半桁高い圧力まで真空排気される)、真空チャンバ3が所定圧力に達すると、加熱手段4を作動させて処理室70を加熱する。この状態では、真空チャンバ3及び処理室70内の圧力は略一定である。また、処理室70内の圧力を真空排気手段2の排気速度を一定に保持する等により0.1Pa以下、好ましくは10−2Pa以下、より好ましくは10−4Pa以下に保持する(図4中のA部参照)。この場合、例えば焼結磁石Sからの放出ガスにより圧力が高くなる場合もあるが、以下のように不活性ガスを導入するまでの時間のうち約7割が上記圧力範囲に含まれればよい。これにより、焼結磁石Sに酸素などの不純物が取り込まれ難くなって、磁化および保磁力が一層向上または回復できる。
処理室70内の温度が所定温度に達すると、処理室70の臭化テルビウムたる蒸発材料vが、処理室70と略同温まで加熱されて蒸発を開始し、処理室70内に蒸気雰囲気が形成されるので、蒸発温度になる前に1〜100kPaの不活性ガスを導入して蒸発材料vの蒸発を抑制する。そして、蒸発開始後、処理室70内の温度が所定温度に達すると、バルブ11の開度を調節して、真空チャンバ3内の不活性ガスの圧力を調節する。このとき、不活性ガスが処理箱7内にも導入され、当該不活性ガスにより処理室70内で蒸発した臭化テルビウムが拡散される。
蒸発材料vが蒸発を開始した場合、焼結磁石Sと蒸発材料vとを相互に接触しないように配置されているため、溶けた臭化テルビウムが、表面Ndリッチ相が溶けた焼結磁石Sに直接付着することはない。そして、略一定な温度で所定時間保持する蒸気処理工程(焼結磁石への拡散させる工程)へと移行する。
蒸蒸気処理工程では、処理箱7内で拡散された蒸気雰囲気中の臭化テルビウムが、直接または衝突を繰返して複数の方向から、蒸発材料vと略同温まで加熱された焼結磁石S表面略全体に向かって供給されて付着し、焼結磁石S内部に取り込まれるようになる。このとき、臭化テルビウムの臭素は、焼結磁石Sのネオジウム及び酸素と反応してネオジウム酸臭化物(Nd−O−Br)となって安定化し、そして、テルビウムが結晶粒界及び/または結晶粒界相に拡散されて高性能の永久磁石Mが得られる
ここで、臭化テルビウムからなる層(薄膜)が形成されるように、蒸気雰囲気中の臭化テルビウムが焼結磁石Sの表面に供給されると、焼結磁石S表面で付着して堆積した臭化テルビウムが再結晶したとき、永久磁石M表面を著しく劣化させ(表面粗さが悪くなる)、また、処理中に略同温まで加熱されている焼結磁石S表面に付着して堆積した臭化テルビウムが溶解して焼結磁石S表面に近い領域における粒界内に過剰に拡散し、磁気特性を効果的に向上または回復させることができない。
つまり、焼結磁石S表面に臭化テルビウムからなる膜が一度形成されると、この膜に隣接した焼結磁石表面Sの平均組成はTbリッチ組成となり、Tbリッチ組成になると、液相温度が下がり、焼結磁石S表面が溶けるようになる(即ち、主相が溶けて液相の量が増加する)。その結果、焼結磁石S表面付近が溶けて崩れ、凹凸が増加することとなる。その上、Tbが多量の液相と共に結晶粒内に過剰に侵入し、磁気特性を示す最大エネルギー積及び残留磁束密度がさらに低下する。
本実施の形態では、蒸発材料vが臭化テルビウムであるとき、蒸発量をコントロールするため、加熱手段4を制御して処理室70内の温度を700℃〜825℃の範囲、好ましくは、800℃前後の温度範囲に設定することとした。
処理室70内の温度(ひいては、焼結磁石S)の加熱温度が700℃より低いと、テルビウムが結晶粒界及び/または結晶粒界層に十分拡散しない。他方、825℃を超えた温度では、蒸発材料Vたる臭化テルビウムが溶解してスペーサや焼結磁石Sと溶着してしまう。
それに併せて、バルブ11の開閉度を変化させて、真空チャンバ3内の導入した不活性ガスの分圧が1kPa〜30kPaの範囲となるようにした。1kPaより低いと、蒸発した臭化テルビウムの強い直進性の影響を受けて、臭化テルビウムが局所的に焼結磁石Sに付着し、減磁曲線の角型性が損なわれる。他方、30kPaを超えると、不活性ガスにより臭化テルビウムたる蒸発材料vの蒸発が抑制され、臭化テルビウムが効率よく焼結磁石S表面に供給されず、処理時間が過剰に長くなる。
これにより、Arなどの不活性ガスの分圧を調節して臭化テルビウムの蒸発させながら(通常、蒸発材料vがテルビウムからなる場合、Arなどの不活性ガスを導入すると、テルビウムの蒸発が著しく抑制される)、その蒸発量をコントロールし、当該不活性ガスの導入によって蒸発した臭化テルビウムを処理箱7内で拡散させることで、臭化テルビウムの供給量を抑制しながら焼結磁石S表面全体に亘って付着させることと、焼結磁石Sを所定温度範囲で加熱することによって拡散速度が早くなることとが相俟って、焼結磁石S表面に付着した臭化テルビウムを、焼結磁石S表面で堆積して薄膜を形成する前に、焼結磁石Sに取り込むことができる(図1参照)。
その結果、永久磁石M表面が劣化することが防止され、また、焼結磁石表面に近い領域の粒界内に臭化テルビウムが過剰に拡散することが抑制され、結晶粒界相にTbリッチ相(Tbを5〜80%の範囲で含む相)を有し、さらには結晶粒の表面付近にのみTbが拡散しているため、磁化および保磁力が効果的に向上または回復する。また、処理室70を10−4Paまで真空引きし、昇温工程においても所定圧力に保持し、その後に不活性ガスを導入しつつ真空蒸気処理を施すことで、永久磁石M表面に酸素などの不純物が取り込まれ難くなり、永久磁石Mの酸素含有量は、当該真空蒸気処理前の焼結磁石と略同等であり、その上、仕上げ加工が不要な生産性に優れた永久磁石Mが得られる。
それに加えて、当該処理箱7内で蒸発した臭化テルビウムが拡散されて存在し、焼結磁石Sが、細い線材81を格子状に組付けたスペーサー8に載置され、当該焼結磁石Sと蒸発材料vとの間の間隔が狭い場合でも、線材81の影となる部分まで蒸発した臭化テルビウムが回り込んで付着する。その結果、局所的に保磁力の高い部分と低い部分とが存在することが抑制でき、焼結磁石Sに上記真空蒸気処理を施しても減磁曲線の角型性が損なわれることを防止でき、高い量産性を達成できる。
最後に、上記処理を所定時間(例えば、4〜100時間)だけ実施すると、アニール工程へと移行する。アニール工程においては、加熱手段4の作動を停止させると共に、ガス導入手段による不活性ガスの導入を一旦停止する。引き続き、不活性ガスを再度導入し(100kPa)、蒸発材料vの蒸発を停止させる。これにより、蒸発が止まり、その供給が止まる。なお、不活性ガスの導入を停止せず、その導入量のみを増加させて蒸発を停止させるようにしてもよい。そして、処理室70内の温度を例えば500℃まで一旦下げる。引き続き、加熱手段4を再度作動させ、処理室70内の温度を450℃〜650℃の範囲に設定し、一層保磁力を向上または回復させるために、熱処理を施す。そして、略室温まで急冷し、処理箱7を真空チャンバ3から取り出す。
尚、上記実施の形態では、スペーサー8として、線材を格子状に組付けて構成したものに一体で支持片9を形成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、蒸発した臭化テルビウム等の通過を許容するものであれば、例えば所謂エキスパンドメタルを用いることができる。
また、蒸発材料vとして板状に形成したものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、スペーサー上に載置された焼結磁石S上面に、他のスペーサーを載置し、このスペーサー上に粒状の蒸発材料vを敷きつめるようにしてもよく、更に、板状の蒸発材料v上に、線材を格子状に組付けて構成したスペーサー8を設置した後、スペーサー8に複数個の焼結磁石Sを並置し、その上に、同一構成を有する他のスペーサー8を設置し、さらにその上に板状の蒸発材料vを設置する。そして、このようにして、処理箱7の上端部まで積み重ねていく。これにより、処理箱7への焼結磁石Sの積載量をさらに多くできる。このとき、Mo製の円筒形状の高さ調節用の治具(図示せず)を蒸発材料vとスペーサー8との間に立設し、板状の蒸発材料vと焼結磁石S上面との間の間隔を調節する構成を採用してもよい。
また、本実施の形態では、蒸発材料として臭化テルビウムを用いるものを例として説明したが、最適な拡散速度が得られる焼結磁石Sの加熱温度範囲で、蒸発量をコントロールして蒸発させることができる臭化ジスプロシウムを用いることができる。この場合、処理室70を700℃〜825℃の範囲で加熱すればよい。処理室70内の温度(ひいては、焼結磁石S)の加熱温度が700℃より低いと、ジスプロシウムが結晶粒界及び/または結晶粒界層に十分拡散しない。他方、825℃を超えた温度では、臭化ジスプロシウムが溶解してスペーサや焼結磁石Sと溶着してしまう。
更に、DyやTbを結晶粒界及び/または結晶粒界相に拡散させる前に焼結磁石S表面に吸着した汚れ、ガスや水分を除去するために、真空排気手段11を介して真空チャンバ12を所定圧力(例えば、1×10−5Pa)まで減圧し、処理室20が真空チャンバ12より略半桁高い圧力(例えば、5×10−4Pa)まで減圧した後、所定時間保持するようにしてもよい。その際、加熱手段4を作動させて処理室70内を例えば300℃に加熱し、所定時間保持するようにしてもよい。
また、上記実施の形態では、箱部71の上面に蓋部72を装着して処理箱7を構成するものについて説明したが、真空チャンバ3と隔絶されかつ真空チャンバ3を減圧するのに伴って処理室70が減圧されるものであれば、これに限定されるものではなく、例えば、箱部71に蒸発材料vと焼結磁石Sを収納した後、その上面開口を例えばMo製の薄で覆うようにしてもよい。他方、例えば、真空チャンバ3内で処理室70を密閉できるようにし、真空チャンバ3とは独立して所定圧力に保持できるように構成してもよい。
更に、上記実施の形態では、焼結磁石Sと蒸発材料vとを処理箱7に収納したものを例に説明したが、焼結磁石Sと蒸発材料vとを異なる温度で加熱できるように、例えば、真空チャンバ3内に、処理室とは別個に蒸発室(他の処理室:図示せず)を設けると共に蒸発室を加熱する他の加熱手段を設け、蒸発室で蒸発材料を蒸発させた後、処理室と蒸発室とを連通する連通路を介して、処理室内の焼結磁石に、蒸気雰囲気中の臭化テルビウムや臭化ジスプロシウムが供給されるようにしてもよい。この場合、蒸発材料vが蒸発している間において焼結磁石Sが配置された処理室内に不活性ガスが導入されるようにしておけばよい。
実施例1では、図2に示す真空蒸気処理装置1を用い、次の焼結磁石Sに真空蒸気処理を施して永久磁石Mを得た。焼結磁石Sとしては、工業用純鉄、金属ネオジウム、低炭素フェロボロン等を原料として、配合組成(重量%)が、27Nd−3Dy−1B−0.05Cu−0.1Al−0.05Nb−Bal.Feとなるように真空誘導溶解を行い、ストリップキャスティング法で厚さ約0.3mmの薄片状インゴットを得た。次に、水素粉砕工程により一旦粗粉砕し、引き続き、例えばジェットミル微粉砕工程により微粉砕して、合金原料粉末を得た。
次に、公知の構造を有する横磁場圧縮成形装置を用いて、成形体を得て、次いで真空焼結炉にて 1050℃の温度下で4時間焼結させて焼結磁石Sを得た。そして、ワイヤカットにより焼結磁石を50×10×5(厚さ:配向方向)mmの形状に加工した後、表面粗さが10μm以下となるように仕上げ加工した後、希硝酸によって表面をエッチングした。
真空蒸気処理の条件として、臭化テルビウムの粉末をプレス成形により1mmの厚さ成形した蒸発材料vを用い、当該蒸発材料vと焼結磁石SとをW製の処理箱7に収納することとした。また、真空チャンバ3内の圧力が10−4Paに達した後、加熱手段4を作動させ、処理室70内の温度を800℃、処理時間を5時間に設定した。更に、処理室70の温度が800℃に達すると、処理室内にArガスを導入し、バルブ11の開閉度を変化させて、真空チャンバ3内の導入したArガスの分圧を20Paとした。最後にアニール工程として510℃で3時間熱処理を施した。
比較例として、塩化テルビウム、フッ化テルビウムの粉末をプレス成形により1mmの厚さ成形した蒸発材料vを用い(比較例1:フッ化テルビウム、比較例2:塩化テルビウム)、実施例1と同条件で真空蒸気処理を施した。
図5は、各蒸発材料を用いて真空蒸気処理を施して得た永久磁石の磁気特性(BHカーブトレーサーにより測定)を示す表である。ここで、表中の角型比(%)は、角型減磁曲線の第二象限において、磁化の値が一定の比率まで減少するまでに必要な減磁界の大きさであって、本実施例では10%減少した場合の磁界の大きさをHkとし、Hk/iHcを100分率で表したものである。また、図5中には、真空蒸気処理前の焼結磁石の磁気特性、及び、蒸発材料としてTbを用い、実施例1と同条件で真空蒸気処理を施した場合の磁気特性も併せて示している。
これによれば、比較例2では、塩化テルビウムが溶解して焼結磁石表面に付着し、磁気特性を測定できなかった。また、比較例1では、保磁力を向上できていないことが判る。これは、塩化テルビウムの蒸発量が十分でないためと考えられる。また、蒸発材料がTbであるとき、処理温度が800℃では、Tbを蒸発させることができないことが確認できた。
それに対して、実施例1では、800℃と低い温度にもかかわらず、蒸発材料を蒸発させることができ、それに加えて、保磁力を24.9kOeまで向上でき、高磁気特性の永久磁石が得られることが判る。
実施例2では、実施例1と同様、図2に示す真空蒸気処理装置1を用い、次の焼結磁石Sに真空蒸気処理を施して永久磁石Mを得た。焼結磁石Sとしては、実施例1と同様のものを用い、また、真空蒸気処理の条件としては、臭化ジスプロシウムの粉末をプレス成形により1mmの厚さ成形した蒸発材料vを用い、また、処理室70内の温度を700℃、処理時間を4時間に設定した以外は、実施例1と同じ条件に設定した。
比較例として、塩化ジスプロシウム、フッ化ジスプロシウムの粉末をプレス成形により1mmの厚さ成形した蒸発材料vを用い(比較例3:フッ化ジスプロシウム、比較例4:塩化ジスプロシウム)、実施例2と同条件で真空蒸気処理を施した。
図6は、各蒸発材料を用いて真空蒸気処理を施して得た永久磁石の磁気特性(BHカーブトレーサーにより測定)を示す表である。ここで、表中の角型比(%)については上記と同様である。また、図6中には、真空蒸気処理前の焼結磁石の磁気特性、及び、蒸発材料としてDyを用い、実施例2と同条件で真空蒸気処理を施した場合の磁気特性も併せて示している。
これによれば、比較例4では、塩化ジスプロシウムが溶解して焼結磁石表面に付着し、磁気特性を測定できなかった。また、比較例3では、保磁力を向上できていないことが判る。これは、塩化ジスプロシウムの蒸発量が十分でないためと考えられる。また、蒸発材料がDyであるときも、Dyの蒸発量が十分でないため、保磁力を向上させることができなかった。
それに対して、実施例2では、700℃と低い温度にもかかわらず、蒸発材料を蒸発させることができ、それに加えて、保磁力を21.9kOeまで向上でき、高磁気特性の永久磁石が得られることが判る。
実施例3では、図2に示す真空蒸気処理装置1を用い、次の焼結磁石Sに真空蒸気処理を施して永久磁石Mを得た。焼結磁石Sとしては、工業用純鉄、金属ネオジウム、低炭素フェロボロン等を原料として配合組成(重量%)が32Nd−1.1B−0.05Cu−0.03V−0.02Nb−Bal. Feとなるように、上記実施例1と同様の手順で作製したものを用いた。
また、真空蒸気処理の条件としては、真空蒸気処理時の処理室70内の温度を600℃〜850℃、の範囲で変化させた以外は、実施例1と同じ条件に設定した。
図7は、処理温度を変化させて永久磁石を得たときの磁気特性を示す表である。これによれば、700℃より低い温度では磁気特性を向上させることができないことが判る。これは、Nd−rich相の融点以下のため、Tbが焼結磁石表面には供給されるものの、結晶粒界には拡散しないものと考えられる。また、850℃では、蒸発材料が溶解して磁石と溶着し、磁気特性を測定できなかった。
それに対して、700℃〜825℃の範囲の温度では、処理温度が高くなるのに従い、効率よく保磁力を向上でき、また、角型比も99%であることが判る。
本発明で作製した永久磁石の断面を模式的に説明する断面図。 本発明の処理を実施する真空処理装置を概略的に示す断面図。 処理箱への焼結磁石と蒸発材料との積載を模式的に説明する斜視図。 真空蒸気処理の際の不活性ガスの導入と処理室内の加熱温度との関係を説明する図。 実施例1で作製した永久磁石の磁気特性を示す表。 実施例2で作製した永久磁石の磁気特性を示す表。 実施例3で作製した永久磁石の磁気特性を示す表。
符号の説明
1 真空蒸気処理装置
2 真空排気手段
3 真空チャンバ
4 加熱手段
7 処理箱
70 処理室
71 箱部
72 蓋部
10 ガス導入管(ガス導入手段)
11 バルブ
S 焼結磁石
M 永久磁石
v 蒸発材料

Claims (5)

  1. 処理室内に鉄−ホウ素−希土類系の焼結磁石を配置して所定温度に加熱し、蒸発材料として臭化テルビウムまたは臭化ジスプロシウムを用い、この蒸発材料を同一または他の処理室内に配置して蒸発させる工程と、この蒸発した臭化テルビウムまたは臭化ジスプロシウムを焼結磁石表面への供給量を調節して付着させ、焼結磁石の結晶粒界及び/または結晶粒界相に拡散させる工程とを含むことを特徴とする永久磁石の製造方法。
  2. 前記蒸発材料が蒸発している間で焼結磁石が配置された処理室内に不活性ガスを導入することを特徴とする請求項1記載の永久磁石の製造方法。
  3. 前記処理室内の不活性ガスの分圧を1kPa〜30kPaの範囲で変化させ、蒸発した臭化テルビウムまたは臭化ジスプロシウムの焼結磁石表面への供給量を調節することを特徴とする請求項2記載の永久磁石の製造方法。
  4. 前記焼結磁石と蒸発材料とを同一の処理室内に配置する場合、焼結磁石及び蒸発材料を相互に接触しないように配置することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の永久磁石の製造方法。
  5. 前記結晶粒界及び/または結晶粒界相に拡散させる工程後に、前記温度より低い所定温度で熱処理を施すことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の永久磁石の製造方法。

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