図1は本発明の第1実施形態の燃料電池システム1の概略構成図である。本実施形態の燃料電池システムでは、比較的小型で発電効率に優れる固体高分子型燃料電池を用いており、車両に搭載されている。
セルスタック2には、電気化学反応に供される反応ガス(燃料ガスと酸化剤ガス)と、セルスタック2を冷却する冷却媒体が供給される。セルスタック2のアノードには、高圧水素を貯蔵した水素タンク3から燃料ガス供給管4を介して水素が供給される。水素タンク3の代わりに、アルコール、炭化水素などを原料とする改質反応によって水素を生成してもよい。燃料ガス供給管4には、水素の供給量を調整するため調圧バルブ5が配置されている。また、セルスタック2には、アノードからの燃料ガスと共に不純物(生成水や窒素等)をセルスタック2の外部へ排出するための排出管6の一端が後述するアノードガス排気マニホールドに接続されている。
排出管6の他端には、水セパレータタンク7(水貯留手段)が接続され、この水セパレータタンク7で燃料ガス中の水蒸気を凝縮水として溜めるようにしている。溜めた水を排出するための配管8が水セパレータタンク7の下部に設けられ、配管8に常閉の排水バルブ10が設けられている。なお、従来技術(特開2008−251177号公報参照)では、水セパレータタンク7で水蒸気が分離された後の燃料ガスに含まれる窒素を排出するため、配管9を水セパレータタンク7の上部に設け、この配管9に常閉の窒素パージバルブ11を設けているのであるが、本発明では、配管9及び窒素パージバルブ11を、後述するように、アノードガス排気マニホールド62の他端に設けている。
図2はセルスタック2の概略構成図である。セルスタック2は、単位燃料電池セル(単セル)41を複数枚積層したものから構成されている。単セル41は、その積層構造の中央に膜電極接合体(Memrerane Electrode Assembly;以下「MEA」という。)を有している。MEA42は、電解質膜の両面に電極触媒層、ガス拡散層が順次積層された構造である。電解質膜を境に一方の面側がカソードとして、他方の面側がアノードとして用いられる。MEA42の両面には導電性部材であるカーボンや金属で作られたカソード側セパレータ43とアノード側セパレータ44とが配置されている。カソード側セパレータ43がMEA42と対向する面には空気(酸化剤ガス)の流路45が形成され、反対面には冷却水流路47を有している。アノード側セパレータ44がMEA42と対向する面には水素(燃料ガス)の流路46が形成され、反対面には冷却水流路47を有している。このように形成された単セル41を複数枚重ねたうえで、各単セル41に空気、水素、冷却水を分配するマニホールド49、50を両端に備えており、このマニホールド49、50によりセルスタック2の外部から供給される空気、水素、冷却水を各単セル41へと分配している。また、セルスタック2内部の水循環を効率よく行わせるために空気の流路45と水素の流路46とを対向流としている。
なお、以下ではカソードに供給される空気を「カソードガス」、アノードに供給される水素を「アノードガス」ともいう。また、上記空気の流路45を「カソードガス流路」、水素の流路46を「アノードガス流路」ともいう。
セルスタック2のカソードには、コンプレッサ15から供給管16を介して空気が供給される。コンプレッサに代えて、ブロア等の空気供給手段を用いることができる。セルスタック2のカソードから排出された空気は、排出管17を介して大気中に放出される。排出管17には、背圧(カソードガス流路の圧力)を調整するため調圧バルブ18が配置されている。
セルスタック2には、さらにラジエータ21から配管23を介して冷却水が供給される。冷却水に代えて、エチレングリコール等の不凍液、空気等の冷却媒体を用いることができる。セルスタック2で発生した熱を取り込んで温度上昇した冷却水は、配管22を介してラジエータ21に送られ冷やされた後に再びセルスタック2内部に循環される。配管23には、水循環のための循環ポンプ24が配置されている。また、配管22に三方弁25が設けられている。
制御回路51は、マイクロコンピュータを中心とした論理回路として構成され、詳しくは、予め設定された制御プログラムに従って所定の演算などを実行するCPU(図示せず)と、CPUで各種演算処理を実行するのに必要な制御プログラムや制御データ等が予め格納されたROM(図示せず)と、同じくCPUで各種演算処理をするのに必要な各種データが一時的に読み書きされるRAM(図示せず)と、各種信号を入出力する入出力ポート(図示せず)等を備えている。制御回路51では、コンプレッサ15、循環ポンプ24を駆動し調圧バルブ5、18を制御してセルスタック2で発電を行わせると共に、セルスタック2内部のアノードに供給する燃料ガスをセルスタック2及び水セパレータタンク7の外部に排出しないアノードデッドエンド運転を行う。アノードデッドエンド運転そのものは公知である(特開2007−149630号公報参照)。
さて、図3はセル内部加湿方法を示す従来技術(特開2008−97891号公報参照)のセルスタック2の概略構成図である。従来技術では、図3に示したように、反応ガスの加湿手段として、MEAのアクティブエリア48の外側に触媒層を持たない電解質層のみからなる部位(加湿エリア49)を設け、一方のガス流路出口の水を電解質層を介して他方のガス流路入口に移動させることで反応ガスを加湿するようにしている。しかしながら、低負荷運転では、カソードガスの出口側の相対湿度は極めて低下しているので、MEAのアクティブエリア48の外側に加湿エリア49を設けたとしてもアノードガスの下流側を加湿できない。これについて説明すると、図4は負荷に対する水収支の特性である。負荷が高い側で水収支が湿潤側(ウェット側)となっているのは、負荷が高い側では、冷却水温度が上がるものの酸化剤ガスの圧力を上げることができるため、水収支を湿潤側に持ってくることができるためである。それに対して、負荷が低い側では水収支が乾燥側(ドライ側)になってしまう。これは、負荷が低い側では、冷却水温度は比較的低いものの酸化剤ガスの圧力を上げることができないためである。酸化剤ガスの圧力を上げることができないのは、酸化剤ガスの圧力を上げるとコンプレッサ15の消費電力が上がり燃費が低下するため、また低負荷側では酸化剤ガスの流量が少ないので、コンプレッサ15の特性上圧力を上げられないためである。その上、低負荷側では、利用率を高負荷側と同じに高く(例えば酸化剤ガスのストイキ比SR=1.5)すると、セルスタック内部のカソードガスの流速が遅くフラッディングが生じやすくなるため、利用率を下げて(例えばSR=2.0)運転する必要がある。これに伴い水収支はさらに乾燥側になってしまう。図5は再び従来技術のセルスタック2の概略構成図である。低負荷側で利用率が低い場合には、図5においてカソードガス流路の上流側である領域1の電解質膜及び触媒層が乾燥してしまい、発電が行われなくなる。領域1で発電が行われなくなると、領域2〜5で負荷相当分の発電が行われるようになるが、しばらく時間が経過すると、次には領域2が乾燥し領域2で発電が行われなくなる。領域2で発電が行われなくなると、領域3〜5で負荷相当分の発電が行われるようになるが、しばらく時間が経過すると、次には領域3が乾燥し領域3で発電が行われなくなる。このような現象が連鎖的に発生し、条件によっては、最終的に領域5のみが発電するような状態になり、セルスタック全体の電圧が著しく低下する。
さらに詳述する。図6は図5のセルスタックに用いられている単セルのモデル図(図5のA−A線断面図)で、上段に示す図6(A)は水収支が湿潤側(ウェット側)の条件にあるときの、下段に示す図6(B)は水収支が乾燥側(ドライ側)の条件にあるときのものである。図6(A)に示すように、水収支がウェット側になるような条件で運転した場合、カソードガス流路の下流側では生成水の影響で相対湿度が高くなり、カソードガス流路側とアノードガス流路側の相対湿度差をドライビングフォースとして、MEAの膜中を水がアノードガス流路側に向けて逆拡散し、アノードガス流路の上流側を加湿する。アノードガス流路に出た水蒸気はアノードガス流路の下流側に運ばれてカソードガス流路の上流(図5で領域1)の膜を加湿するので、領域1でMEAの膜が乾燥するという問題が起きない。このように、アノードガス、カソードガスのカウンターフローで互いの極を加湿する技術はかなり以前から公知となっている。しかしながら、図6(B)に示すように水収支が乾燥側の条件(つまり低負荷)の場合には、カソードガス流路の下流側の相対湿度が、水収支が湿潤側の条件の場合よりも低く、アノードガス流路側に水を供給できないため、アノードガス流路の出口側が乾燥したままであり、従って、乾燥したガスしか供給されない領域1のMEAが乾燥し、図5で前述したような問題が低負荷時に発生してしまうのである。
そこで本実施形態では、セルスタック2内部のアノードガス流路の圧力が加圧される過程と減圧される過程とを繰り返すようにアノードに供給する燃料ガスをセルスタック2及び水セパレータタンクの外部に排出しないアノードデッドエンド運転を行うと共に、アノードガス排気マニホールド出口(アノードガスの排気マニホールドの一端)とは反対側のアノードガス排気マニホールドの他端に窒素パージバルブ11(不純物ガスを排出する排出バルブ)を備えるようにする。
これについて図7を参照して説明する。本発明の第1実施形態では、図1に示したように水セパレータタンクを排出管6を介してアノードガスの排気マニホールド出口と接続することはしないので、第1実施形態の水セパレータタンクの符号を「71」で改めて取り直すと、図7は燃料電池システム1のうちセルスタック2及び水セパレータタンク71の概略構成図である。ここでは、主にアノードガスの流れだけを取り出して示している。セルスタック2は縦置きされている。つまり、図7で上方が鉛直上方、下方が鉛直下方である。図7において左側には、アノードガスの供給マニホールド61がセルスタック2の積層方向(上下方向)に貫通して直管状に、右側にはアノードガスの排気マニホールド62がセルスタック2の積層方向(上下方向)に貫通して直管状に形成されている。このため、左上にあるアノードガス供給マニホールド入口61aから供給されるアノードガスは直管状のアノードガス供給マニホールド61を下方に向けて流れる。アノードガス供給マニホールド61に供給されたアノードガスは左右方向に位置する各アノードガス流路(図2参照)に分配され右方向に向けて流れる。アノードガス流路で反応しなかったアノードガスは、直管状のアノードガス排気マニホールド62で集合された後、下方のアノードガス排気マニホールド62の一端(下端)であるアノードガス排気マニホールド出口62aに向けて流れる。
アノードガス排気マニホールド出口62aから排出される気液混合物から液水を分離するために、アノードガス排気マニホールド出口62aを覆い、セルスタック下面2aに隣接して、水セパレータタンク71(水貯溜手段)が設けられている。すなわち、水セパレータタンク71は、上方の円筒部71と下方の円錐部72とから構成され、円錐部72の頂上には下方に垂れ下がる配管8が接続されている。この配管8に排水バルブ10が設けられている。円筒部72は左側がアノードガス排気マニホールド出口62aを覆い、かつセルスタック右端2bよりも右側にはみ出るように設けられ、円筒部72の上面72aはアノードガス排気マニホールド出口62aを除いて閉じている。
運転条件によってアノードガス排気マニホールド出口62aの相対湿度は大きく左右される。生成水量の少ない低電流密度でセルスタック2を運転するときには、アノードガス排気マニホールド出口62aは水蒸気によって飽和されず、一定値以上(例えば0.5A/cm2以上)の電流密度での運転になると、アノードガス排気マニホールド出口62aが水蒸気によって飽和される。アノードガス排気マニホールド出口62aが水蒸気によって飽和していない場合、セパレータタンク71内に溜まっている凝縮水からの蒸発および拡散によってアノードガス排気マニホールド出口62aが加湿される。しかしながら、環境条件の相違で水セパレータタンク71内での凝縮水の蒸発・拡散が十分でなくなった場合に、アノードガス排気マニホールド出口62aを適切に加湿できなくなるので、こうした環境条件では水セパレータタンク71内での凝縮水の蒸発・拡散を積極的に促進する必要がある。水セパレータタンク71内での凝縮水の蒸発・拡散を促すには水セパレータタンク71からセルスタック2内部へのガス流れを生じさせることが好ましい。これは、水セパレータタンク71からセルスタック2内部へのガス流れが生じると、ガス流れの上流側である水セパレータタンク71内の気相部分のガス圧力が低下し、そのガス圧力の低下分だけ凝縮水の気相中への蒸発量・拡散量が増えるためである。
一方、カソードガスとして空気を使用する場合、カソードガスに含まれる窒素がアノードガス流路46に濃度差を駆動力として移動してくる。この移動してくる窒素によってアノードガス流路46の窒素濃度が高くなるとアノードガスのMEAへの拡散が妨げられ、セルスタック2の発電性能の低下を引き起こす。この発電性能の低下を防止するために、アノードガス流路46から一定量のガスを、窒素パージバルブ11を開いて系外に排出することで、アノードガス流路46の窒素濃度を一定値以下に保つ必要がある。
しかしながら、従来技術(特開2008−251177号公報参照)では、水セパレータタンクに配管9を接続しこの配管9に窒素パージバルブ11を設けているので、次のような問題がある。すなわち、アノードガスの供給量がセルスタック2の電気化学反応に必要な分および窒素パージとして排出される分の合計に相当する量だけであった場合、アノードガス排気マニホールド出口62aでアノードガスの流速はちょうどゼロとなる。従って、窒素パージバルブ11を開いて水セパレータタンクから窒素を含んだガスをパージすると、アノードガス排気マニホールド62内のガスはむしろアノードガス排気マニホールド62より水セパレータタンクに向かって流れ、水セパレータタンク内での凝縮水の蒸発・拡散を抑えることになってしまう。水セパレータタンク内での凝縮水の蒸発・拡散を抑えることは、アノードガス排気マニホールド出口62aのアノードガスを加湿したいという観点(要求)からは好ましくないのである。
そこで本実施形態では、図7に示したようにアノードガス排気マニホールド62に対して水セパレータタンク71を接続する側とは反対側、つまりアノードガス排気マニホールド62の他端(上端)62bに配管9を接続し、この配管9に窒素パージバルブ11を設けている。このようにすれば、窒素パージバルブ11を開いてアノードガス排気マニホールド62から窒素を含んだ所定量のガスを系外に排出することで、水セパレータタンク71からセルスタック2内部へのガス流れ(図7の破線矢印参照)を生じさせることが可能となり、水セパレータタンク71内での凝縮水の蒸発・拡散を促進することができる。
セルスタック2内部に溜まる生成水や窒素を排出することを目的として、本実施形態ではさらにアノードデッドエンド運転を行う。本実施形態のアノードデッドエンド運転について図8を参照して説明すると、図8は第1実施形態の一例の低負荷時におけるタイミングチャートである。一定の低負荷条件に保持した場合にアノードガス流路46の圧力と、アノードガス流路46のガス流れ方向とがどのように変化するのかを示している。ここで、アノードガス流路46におけるアノードガスの流れ方向はセルスタック2から水セパレータタンク71に流れる向きを正としている。まず、排水バルブ10は水セパレータタンク7内の凝縮水の液面レベル77が予め定めている上限レベルを超えないように所定開度(一定開度)まで開いて余分な凝縮水を系外へ排出し、また窒素パージバルブ11もアノードガス排気マニホールド62内の窒素を含んだガスを系外に排出するため所定開度(一定開度)まで開いている、として説明する。この状態でアノードデッドエンド運転を行う。水素タンク3から所定開度まで開かれた水素調圧バルブ5によって圧力が調整された水素(アノードガス)がセルスタック2内部のアノードガス流路46に供給される。このため、アノードガス流路46の圧力は上昇し、セルスタック2から水セパレータタンク7に向けてアノードガスの流れ(順流)が発生する。これと共にセルスタック2内部でカソードガス流路45の側からアノードガス流路46の側へ拡散してきた生成水や窒素などの不純物を水セパレータタンク7へ排出する。不純物のうち生成水は水セパレータタンク71内で凝縮して水となり水セパレータタンク71の下部に溜まる。窒素と未反応アノードガスとは水セパレータタンク71の上部及びアノードガス排気マニホールド62内に溜まる。水セパレータタンク71は、このような凝縮水を溜めるために十分な体積を有するものである。また、生成水や窒素の量が増加してきた場合、上記のように排水バルブ10、窒素パージバルブ11を開状態にして、生成水や窒素を系外へ廃棄する。
アノードガス流路46の圧力がt1で所定圧力P1に到達すると水素調圧バルブ5を全閉としてセルスタック2へのアノードガスの供給を止める。この後、セルスタック2での発電に伴いアノードガス流路46のアノードガスが消費され、アノードガス流路46の圧力が低下する。これに伴い今度は水セパレータタンク71からセルスタック2に向かってアノードガスの流れ(逆流)が生じる。アノードガス流路46の圧力が所定圧力P2にまで低下するt2になると、再び水素調圧バルブ5を所定開度まで開きセルスタック2へのアノードガスの供給を再開する。このアノードガスの供給の再開によりアノードガス流路46の圧力が再び上昇し、セルスタック2から水セパレータタンク71に向けてアノードガスの流れ(順流)が発生する。そして、アノードガス流路46の圧力がt3で所定圧力P1に到達すると水素調圧バルブ5を全閉としてセルスタック2へのアノードガスの供給を止める。すると、アノードガス流路46の圧力が低下してゆき、水セパレータタンク71からセルスタック2に向かってアノードガスの流れ(逆流)が生じる。以上のようなプロセス、つまり、セルスタック2内部のアノードガス流路46の圧力が加圧される過程(以下では単に「加圧過程」ともいう。)と減圧される過程(以下では単に「減圧過程」ともいう。)とを繰り返すことにより、セルスタック2及び水セパレータタンク71の外部にアノードガスを排出しないアノードデッドエンド運転が可能となる。
こうした本発明のアノードデッドエンド運転の運転方法は、図8に示した例に限らない。図9に示した本実施形態の他の例のように、加圧過程と減圧過程のそれぞれの間にアノードガス流路46の圧力を一定(所定圧力P1、P2)に維持する過程を設けても良い。ここで、アノードガス流路46の圧力を所定圧力P1に維持させるには、水素調圧バルブ5の開度を減少させてやれば(バルブ5を絞れば)よい(図9最上段のt11〜t12、t15〜t16、t19〜t20参照)。このときの減少スピードは適合により決定する。また、アノードガス流路46の圧力を所定圧力P2に維持させるには、水素調圧バルブ5の開度を増加させてやればよい(図9最上段のt13〜t14、t17〜t18参照)。このときの増加スピードも適合により決定する。
さて、従来技術では、窒素パージバルブ11の開度を一定にしていた(図8第3段目の一点鎖線参照)。このため、従来技術をそのまま、水素タンク3からの供給圧力によって運転時のアノードガス流路46の圧力を増加させ、電気化学反応に伴うアノードガスの消費によって運転時のアノードガス流路46の圧力を低下させている、本実施形態のアノードデッドエンド運転に適用した場合、水セパレータタンク71内での凝縮水の蒸発・拡散を促進し、その促進によってアノードガス排気マニホールド出口62aのアノードガスを加湿するという観点からは、不十分な対応となってしまう。すなわち、水セパレータタンク71内での凝縮水の蒸発・拡散を促進し、その促進によってアノードガス排気マニホールド出口62aのアノードガスを加湿するという観点からは、加湿が必要となるアノードデッド運転における減圧過程でだけ窒素パージバルブ11を開けば足りる。アノードガス供給マニホールド61からアノードガス排気マニホールド62へ、さらにアノードガス排気マニホールド62から水セパレータタンク71へと向かうガス流れが支配的であるアノードデッド運転における加圧過程では、窒素パージバルブ11を開くことで水セパレータタンク71からセルスタック2内部へと向かうガス流れを作る必要が無いのである。従って、アノードデッドエンド運転における加圧過程では窒素パージバルブ11を全閉状態としてアノードガス排気マニホールド62内の窒素を含んだガスの排出をやめておき、アノードデッドエンド運転における減圧過程になると、加圧過程で系外に排出する分であったガス量を上乗せして系外に排出することにすれば、水セパレータタンク71内での凝縮水の蒸発・拡散を、その上乗せ分だけさらに促進できることとなる。
そこで本実施形態の一例では、図8第3段目の実線で示したように、アノードデッド運転における加圧過程で窒素パージバルブ11を全閉状態とし、アノードデッド運転における減圧過程でだけ窒素パージバルブ11を開くこととする。また、本実施形態の他の例では、図9第3段目に示したように、アノードデッド運転における加圧過程及び圧力維持過程で窒素パージバルブ11を全閉状態とし、アノードデッド運転における減圧過程でだけ窒素パージバルブ11を開く。
一方、アノードガス排気マニホールド62からの窒素パージとはいっても、アノードガス排気マニホールド62内から窒素だけを選択して排出することはできず、実際には未反応アノードガスをも系外に排出してしまうので、窒素パージバルブ11を開いているときの窒素パージの流量が多すぎると、系外に排出されるアノードガスの量が増加して発電効率の低下につながる。この逆に窒素パージバルブ11を開いているときの窒素パージの流量が少なすぎると、アノードガス流路46の窒素濃度の増大による発電性能の低下につながる。そこで本実施形態の一例及び他の例では、アノードデッドエンド運転中の窒素パージの流量が最適となるように減圧過程での窒素パージバルブ11の開度(図8第3段目、図9第3段目の所定開度)を適合により設定する。
このように、本実施形態によれば、アノードデッドエンド運転時に、アノードガス排気マニホールド出口62aのアノードガスを加湿したいという観点から、アノードデッドエンド運転における減圧過程でのみ窒素パージバルブ11を開いて窒素パージを行うことで、トータルとして窒素パージの流量は従来技術と同じに保ったまま、加湿が必要となるアノードデッド運転における減圧過程で窒素パージの流量を相対的に多くできるため、従来技術よりもセルスタック2の発電性能を向上させることができる。図8においてアノードデッドエンド運転における加圧過程、減圧過程の周期(図8でt1からt3までの時間)は例えば0.5秒から2秒程度まで、ときわめて短時間である。数十秒以上、所定の濃度以上の窒素がアノードガス流路46に滞留したときに初めてセルスタック2の発電性能の低下が生じるのであるから、本発明のアノードデッドエンド運転時に加圧過程で(つまり一時的に)窒素パージバルブ11を閉じて窒素パージを止めることとしても、デメリットは発生しない。
次に、水セパレータタンク71より凝縮水が溢れ出ないように排水を適宜行う必要がある。しかしながら、アノードデッドエンド運転時に、常時排水を行わせるのではアノードガス排気マニホールド出口62aのアノードガスを加湿したいという観点からは好ましくない事態が生じる。すなわち、排水バルブ10を開いて水セパレータタンク71内の凝縮水の一部を系外に排出すると、水セパレータタンク71内の気相部分の容積が増加する。運転負荷が一定の条件でかつ窒素パージバルブ11の開度も一定である場合で考えると、上記気相部分の容積増加分を埋めるためにアノードガス排気マニホールド62から水セパレータタンク71へのガス流れが発生する。この水セパレータタンク71へのガス流れは、水セパレータタンク71内での凝縮水の蒸発・拡散を抑える方向に働く。これは、水セパレータタンク71内での凝縮水の蒸発・拡散を促進して、アノードガス排気マニホールド出口62aのアノードガスを加湿することが必要となる減圧過程では好ましくない現象となる。
そこで本実施形態の一例では、図8第2段目に示したように、アノードデッドエンド運転における減圧過程で排水バルブ10を全閉状態とし、アノードデッド運転における加圧過程でだけ排水バルブ10を開いて排水を行うこととする。また、本実施形態の他の例では、図9第2段目に示したように、アノードデッド運転における減圧過程で排水バルブ10を全閉状態とし、アノードデッド運転における加圧過程及び圧力維持過程でだけ排水バルブ10を開く。
一方、水セパレータタンク71より排水するとしても、排水バルブ10を開いているときの排水の流量が多すぎて水セパレータタンク71から凝縮水が全く無くなってしまったのでは、凝縮水によりアノードガス排気マニホールド出口62aのアノードガスの加湿を行うことができない。この逆に排水バルブ10を開いているときの排水の流量が少なすぎると、水セパレータタンク71より凝縮水が溢れ、溢れた凝縮水がアノードガス排気マニホールド62に侵入してしまうことにもなり得る。そこで、アノードデッドエンド運転中の排水の流量が最適となるように、本実施形態の一例では加圧過程での排水バルブ10の開度(図8第2段目の所定開度)を、また本実施形態の他の例では加圧過程及び圧力維持過程での排水バルブ10の開度(図9第2段目の所定開度)を適合により設定する。
このように、本実施形態は、アノードガス排気マニホールドの一端であるアノードガス排気マニホールド出口52aとは反対側のアノードガス排気マニホールドの他端52bに窒素パージバルブ11を備えさせ、セルスタック2内部のアノードガス流路46の圧力が加圧過程と減圧過程とを繰り返すようにアノードに供給する燃料ガスをセルスタック2及び水セパレータタンク71の外部に排出しないアノードデッドエンド運転を行うことによって、アノードガス流路46から水セパレータタンク71までの流路に圧力脈動を生じさせ、この圧力脈動を利用し、減圧過程で水セパレータタンク71よりアノードガス排気マニホールド62へのガス流れを生じさせると共に、窒素パージバルブ11を開いてこのガス流れをさらに助長し、このようにして生じさせたガス流れにより水セパレータタンク71内での凝縮水の蒸発・拡散を促して水セパレータタンク71内のアノードガスを加湿し、この加湿したアノードガスをセルスタック2内部のアノードガス流路46へと送り込み、低負荷時に乾燥状態になりやすいアノードガス流路46の出口側を加湿するようにしたものである。本実施形態は、燃料ガスと酸化剤ガスの反応によって生成された凝縮水を反応ガスの加湿に再利用するものである。これによって、上記従来技術(特開2008−97891号公報参照)のようにセルスタック2内部で加湿する必要は無くなり、かつセルスタック2の外部に専用の加湿器を別に設ける必要も無いのである。
制御回路51で実行されるこの制御を図10のフローチャートに基づいて詳述する。図10は、水素調圧バルブ5、窒素パージバルブ11及び排水バルブ10の3つのバルブを開閉制御するためのもので、一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。なお、図10は図8に対応する制御を示している。
図10においてステップ1では、水素調圧バルブ5が開いているか否かをみる。ここではアノードデッドエンド運転を開始する場合に前提として水素調圧バルブ5を所定開度まで開いているものとする。このときにはステップ7→2に進んでアノードガス流路46の圧力Pと所定圧力P1を比較する。所定圧力P1は図8に示した所定圧力P1であり、予め最適な値を定めておく。アノードガス流路46の圧力Pとしては、アノードガス排気マニホールド62の圧力を採用すればよい。本実施形態では、アノードガス排気マニホールド62の圧力を圧力センサ52によりアノードガス流路圧力として検出している(図1参照)。
前提として水素調圧バルブ5を所定開度としているので、アノードガス流路圧力Pが上昇していく。ここではアノードガス流路圧力Pは所定圧力P1より低いとしてステップ3、4、5に進む。ステップ3では、水素調圧バルブ5を所定開度に設定する。ステップ4、5では、窒素パージバルブ11を全閉状態とし、排水バルブ10を所定開度に設定する。所定開度はアノードデッドエンド運転中に適量の凝縮水が水セパレータタンク71内に維持されるように、つまり水セパレータタンク71内の凝縮水の液面レベル77が高過ぎもせず低過ぎもしない所定の位置に保たれるように適合により設定しておく。
ステップ3の操作の繰り返しによりやがてステップ2でアノードガス流路圧力Pが所定圧力P1以上となればステップ6に進み、水素調圧バルブ5を全閉状態とする。
ステップ7、8では、窒素パージバルブ11を所定開度に設定し、排水バルブ10を全閉状態とする。所定開度は、窒素パージの流量が多すぎて系外に排出されるアノードガスの量が増加しセルスタック2の発電効率が低下することがないように、かつ窒素パージの流量が少なすぎてアノードガス流路46の窒素濃度が増大し、これによってセルスタック2の発電性能が低下することがないように、適合により設定しておく。
ステップ6での水素調圧バルブ5の全閉によって次回にはステップ1で水素調圧バルブ5は開いていないと判定される。このときにはステップ9に進んで圧力センサ52により検出されるアノードガス流路圧力Pと所定圧力P2を比較する。所定圧力P2は図8に示した所定圧力P2(所定圧力P1よりも小さな値)であり、所定圧力P2も予め最適な値を定めておく。ステップ6で水素調圧バルブ5を全閉としたことによってアノードガス流路圧力Pが所定圧力P1より下降していくが、水素調圧バルブ5を全閉として間もない場合にはアノードガス流路圧力Pは所定圧力P2より高いのでステップ6、7、8の操作を実行する。ステップ6の操作の繰り返しによりやがてステップ9でアノードガス流路圧力Pが所定圧力P2以下となればステップ10に進み、水素調圧バルブ5を所定開度に戻す。ステップ11、12では、窒素パージバルブ11を全閉状態に戻し、排水バルブ10を所定開度に戻す。
次回にはステップ1よりステップ2へ進むことになり、上記の操作が繰り返される。つまり、水素調圧バルブ5について所定開度とした状態と全閉状態とを一定の周期で繰り返すことによって、アノードガス流路46の圧力が減圧過程と加圧過程とを繰り返し、これによってアノードガス流路46から水セパレータタンク7までの流路に圧力脈動が生じる。減圧過程では、水セパレータタンク71よりアノードガス排気マニホールド62へのガス流れが生じるが、減圧過程でのみ開かれる窒素パージバルブ11により、このガス流れが助長され、かつ窒素パージが行われる。さらに、排水バルブ10は減圧過程で全閉状態とされ、加圧過程でのみ開かれることで、減圧過程で生じる水セパレータタンク71よりアノードガス排気マニホールド62へのガス流れを阻害することなく水セパレータタンク71からの排水が行われる。
図10では、圧力センサ52により検出されるアノードガス流路圧力Pをみながら水素調圧バルブ5の開度を所定開度と全閉とに切換えると共に、この水素調圧バルブ5の切換に対応させて窒素パージバルブ及び排水バルブを開閉するようにしているが、本発明はこの場合に限定されるものでない。例えば、所定の時間毎に(あるいは一定の周期で)所定開度と全閉とを繰り返すように水素調圧バルブ5の開度を制御し、これに合わせて窒素パージバルブ11及び排水バルブ10を制御してもかまわない。
ここで、本実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態によれば、電解質膜をアノードとカソードとで挟んで構成される単位燃料電池セルを複数積層したセルスタック2と、セルスタック2の積層方向に貫通し、アノードから排出されるアノードガスを集合させるアノードガス排気マニホールド62と、アノードガス排気マニホールド出口62a(アノードガス排気マニホールドの一端)に接続され、アノードガス排気マニホールド62より排出されるガスに含まれる水蒸気の凝縮水をセルスタック2の外部で溜める水セパレータタンク71(水貯留手段)と、アノードガス排気マニホールドの他端62bに接続され、窒素(不純物ガス)を排出する窒素パージバルブ11(ガス排出バルブ)と、を備え、セルスタック2内部のアノードガス流路46の圧力が加圧される過程と減圧される過程とを繰り返すようにアノードに供給する燃料ガスをセルスタック2及び水セパレータタンク71の外部に排出しないアノードデッドエンド運転を行う(図10のステップ1〜3、6〜8、11、12参照)。従って、窒素パージバルブ11を開いてアノードガス排気マニホールドの他端62bより窒素を排出するときに、水セパレータタンク71よりアノードガス排気マニホールド62へのガス流れが発生することから、水セパレータタンク71の内部での凝縮水の蒸発・拡散が促進され、水セパレータタンク71よりアノードガス排気マニホールド62へと流れるガスが加湿される。特にアノードガス流路46の出口側の電解質膜が乾燥しがちになる低負荷時に、このガスの加湿によりアノードガス流路46の出口側の電解質膜が湿潤状態になり、セルスタック2の発電性能を向上することができる。
アノードデッドエンド運転における減圧過程では、水セパレータタンク71からアノードガス排気マニホールド62へのガス流れが生じるため、水セパレータタンク71内部での凝縮水の蒸発・拡散が促進されるのであるが、本実施形態によれば、アノードデッドエンド運転における減圧過程(の全部)で窒素パージバルブ11を開くので、水セパレータタンク71からアノードガス排気マニホールド62へのガス流れが助長される。これによって、水セパレータタンク71内部での凝縮水の蒸発・拡散がさらに促進される。すなわち、水セパレータタンク71からアノードガス排気マニホールド62へと流れるガス流量が増え、アノードガス流路46の出口側の加湿量を増加させることができる。
排水バルブ10を開いて水セパレータタンク71内の凝縮水を系外へ排出すると、水セパレータタンク71内の気相部分の容積が増加する。この気相部分の容積増加分を埋めるためにアノードガス排気マニホールド62から水セパレータタンク71へのガス流れが生じる。このガス流れは、水セパレータタンク71内部での凝縮水の蒸発・拡散を抑える方向に働いてしまう。これに対して、本実施形態によれば、アノードデッドエンド運転における減圧過程(の全部)で窒素パージバルブ11を開くときにこの排水バルブ10を全閉状態とし、アノードデッドエンド運転における加圧過程で窒素パージバルブ11を全閉状態とするときにこの排水バルブ10を開くので、アノードデッドエンド運転における減圧過程での水セパレータタンク71からアノードガス排気マニホールド62ヘのガス流れを妨げることがなくなり、アノードガス流路46の出口側の加湿効果を最大限に活かしつつ、水セパレータタンク71内部の凝縮水の排出を行うことができる。
また、本実施形態では、セルスタック2内部のアノードガス流路の圧力が加圧される過程と減圧される過程とを繰り返すようにアノードに燃料ガスを供給できればよく、燃料ガスをセルスタック2及び水セパレータタンク7の外部に排出しないアノードデッドエンド運転(システム)に限定されないことはいうまでもない。
本実施形態の変形例として、セルスタック2を運転する負荷状態を判定し、アノードデッドエンド運転をアノードガスが乾燥状態となりやすい低負荷時にのみ行うようにしてもよい。このとき、低負荷時に最も乾燥状態になりやすいアノードガス流路46の出口側を加湿することができ、低負荷時の発電性能の低下を防ぐことができる。よって、使用頻度の高い低負荷時の発電性能が改善され燃費が向上する。
図11は本発明の第2実施形態のセルスタック2及び水セパレータタンク71の概略構成図で、第1実施形態の図7と置き換わるものである。図11において図7と同一部分には同一番号を付している。第2実施形態でも、主にアノードガスの流れだけを取り出して示している。
第1実施形態ではセルスタック2が縦置きであることを前提としていたのに対して、第2実施形態は、セルスタック2が横置きであることを前提とするものである。つまり、図11で上方が鉛直上方、下方が鉛直下方である。図11において、左側にはアノードガスの供給マニホールド61とカソードガスの排気マニホールド63とがセルスタック2の積層方向(図で斜め方向)に貫通して直管状にかつ上下に並んで、右側にはカソードガスの供給マニホールド64とアノードガスの排気マニホールド62とがセルスタック2の積層方向(図で斜め方向)に貫通して直管状にかつ上下に並んで形成されている。このため、図面左上にあるアノードガス供給マニホールド入口61aから供給されるアノードガスは直管状のアノードガス供給マニホールド61を左下方に向けて流れる。アノードガス供給マニホールド61に供給されたアノードガスは左右方向に位置する各アノードガス流路(図2参照)に分配され右方向に向けて流れる。アノードガス流路で反応しなかったアノードガスは、直管状のアノードガス排気マニホールド62で集合された後、右下に位置するアノードガス排気マニホールド62の一端(手前端)であるアノードガス排気マニホールド出口62aに向けて流れる。
アノードガス排気マニホールド出口62aに隣接して、水セパレータタンク81(水貯溜手段)が設けられている。水セパレータタンク81は全体が箱状に形成され、この箱状の水セパレータタンク81の裏面81bにアノードガス排気マニホールド出口62aが開口している。水セパレータタンク81の底面81aには、下方に垂れ下がる配管8が接続されている。この配管8に排水バルブ10が設けられている。
また、アノードガス排気マニホールド62の他端62b(右上方)には、配管9を接続し、この配管9に窒素パージバルブ11を設けている。このようにすれば、窒素パージバルブ11を開いてアノードガス排気マニホールド62から窒素を含んだ所定量のガスを系外に排出することで、水セパレータタンク71からセルスタック2内部へのガス流れ(図11の破線矢印参照)を生じさせることが可能となり、水セパレータタンク81内での凝縮水の蒸発・拡散を促進することができる。
第2実施形態によれば、セルスタック2が横置きの場合であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。すなわち、窒素パージバルブ11を開いてアノードガス排気マニホールドの他端62bより窒素を排出するときに、水セパレータタンク81よりアノードガス排気マニホールド62へのガス流れが発生することから、水セパレータタンク81の内部での凝縮水の蒸発・拡散が促進され、水セパレータタンク81よりアノードガス排気マニホールド62へと流れるガスが加湿される。特にアノードガス流路の出口側の電解質膜が乾燥しがちになる低負荷時に、このガスの加湿によりアノードガス流路の出口側の電解質膜が湿潤状態になり、セルスタック2の発電性能を向上することができる。
なお、アノードデッドエンド運転における減圧過程では、水セパレータタンク81からアノードガス排気マニホールド62へのガス流れが生じるため、水セパレータタンク81内部での凝縮水の蒸発・拡散が促進されるのであるが、第2実施形態によっても、アノードデッドエンド運転における減圧過程(の全部)で窒素パージバルブ11を開くので、水セパレータタンク81からアノードガス排気マニホールド62へのガス流れが助長される。これによって、水セパレータタンク81内部での凝縮水の蒸発・拡散がさらに促進される。すなわち、水セパレータタンク81からアノードガス排気マニホールド62へと流れるガス流量が増え、アノードガス流路46の出口側の加湿量を増加させることができる。
実施形態では、アノードデッドエンド運転における減圧過程(アノードガス流路の圧力が減圧される過程)の全部で窒素パージバルブ11(ガス排出バルブ)を開き、アノードデッドエンド運転における加圧過程(アノードガス流路の圧力が加圧される過程)で窒素パージバルブ11を全閉状態とする場合で説明したが、アノードデッドエンド運転における減圧過程の一部または全部で窒素パージバルブ11の開度を、アノードデッドエンド運転における加圧過程での窒素パージバルブ11の開度より大きくするようにしてもかまわない。
この場合、アノードデッドエンド運転における減圧過程の一部または全部での窒素パージバルブ11の開度に最大の開度(全開状態の開度)を含み、アノードデッドエンド運転における加圧過程での窒素パージバルブ11の開度に最小の開度(全閉状態の開度)を含むものである。