以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1実施形態の燃料電池システム1の概略構成図である。本実施形態の燃料電池システム1では、比較的小型で発電効率に優れる固体高分子型燃料電池を用いており、車両に搭載されている。
燃料電池2には、電気化学反応に供給される反応ガス(燃料ガスと酸化剤ガス)と、燃料電池2を冷却する冷却媒体が供給される。
燃料電池2は、燃料電池単セルを積層させた燃料電池スタックによって構成されている。単セルは、その積層構造の中央に膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly;以
下「MEA」という。)を有している。MEAは、電解質膜の両面に電極触媒層(アノード触媒層とカソード触媒層)、ガス拡散層が順次積層された構造である。電解質膜を境に一方の面側がカソードとして、他方の面側がアノードとして用いられる。MEAの両面には導電性部材であるカーボンや金属で作られたカソード側セパレータとアノード側セパレータとが配置されている。カソード側セパレータがMEAと対向する面には空気(酸化剤ガス)の流路が形成され、反対面には冷却水流路を有している。アノード側セパレータMEAと対向する面には水素(燃料ガス)の流路が形成され、反対面には冷却水流路を有している。このように形成された単セルを複数枚重ねたうえで、各単セルに空気、水素、冷却水を分配するマニホールドを両端に備えている。このマニホールドにより燃料電池2の外部から供給される空気、水素、冷却水を各単セルへと分配している。また、燃料電池2内部の水循環を効率よく行わせるために空気の流路(カソードガス流路)と水素の流路(アノードガス流路)とを対向流としている。
上記アノード触媒層に燃料ガスである水素が、カソード触媒層に酸化ガスである空気が供給されて、以下に示す電気化学反応によって発電が行われる。
アノード(燃料極):H2→2H++2e- …(1)
カソード(酸化極):2H++2e-+(1/2)O2→H2O …(2)
水素が貯蔵されている水素タンク3より水素供給管4に供給される高圧の水素は減圧弁5によって減圧され、水素調圧弁6(圧力調整手段)によって水素の圧力がさらに調整される。水素調圧弁6により調圧された水素は、燃料電池2のアノードガス入口2aから燃料電池2内部のアノード触媒層へと供給される。
発電で使われなかった水素と発電によって生成された水とは燃料電池2のアノードガス出口2bよりアノード排出流路8へと排出された後、水セパレータタンク9に導かれ、この水セパレータタンク9によって生成水が液水として回収される。タンク9の下部には排水管10が連通され、この排水管10に排水弁11を設けている。水セパレータタンク9に回収された液水量が所定量を超えた場合、排水弁11を開けることにより水セパレータタンク9の液水を燃料電池システム1の外に排水する。
水セパレータタンク9下流のアノード排出流路8から分岐して水素供給管4に連通する循環路13が設けられ、循環路が分岐する点よりも上流のアノード排出流路8に水素循環ポンプ14を備える。この水素循環ポンプ14によって燃料電池2のアノードガス出口2bよりアノード排出流路8へと排出される水素が燃料電池2のアノードガス入口2aに循環される。
アノード排出流路8の下流端には、アノード触媒層において反応に使われなかったガスを排出する水素パージ弁16(開閉弁)が設けられている。アノード排出流路8に排出されるガスにはカソードよりアノードへと透過してきた窒素ガスが含まれ、この窒素ガスはアノード触媒層における水素濃度を低下させるので、定期的に水素パージ弁16を開けることにより窒素ガスを燃料電池システム1の外に排出する。
コンプレッサ21により加圧されて空気供給管22に供給される空気は空気加湿器23により加湿され、燃料電池2のカソードガス入口2cから燃料電池2内部のカソード触媒層へと供給される。発電で使われなかった空気および発電により生成される水は燃料電池2のカソードガス出口2dよりカソード排出流路25へと排出された後、再び空気加湿器23を通過する。このとき、空気加湿器23を通過する生成水の一部(水蒸気)がコンプレッサ21より吸入された空気の加湿に使われる。空気加湿器23を通過した排出空気の圧力はカソード排出流路25の下流に設けている空気調圧弁24によって調整される。
燃料電池2の温度が高くなりすぎると、燃料電池2内部のアノード触媒層の乾燥により燃料電池2の電圧が急激に低下することがある。このため、燃料電池2を冷却するための冷却水が使われている。燃料電池2の反応熱を吸収して高温となり燃料電池2の冷却水出口2eから冷却水通路31に排出された冷却水は、熱交換器32に導かれて放熱し、冷却水循環ポンプ33によって再び燃料電池2の冷却水入口2fに送出される。
一方、電圧センサ35および電流センサ36によって検出される燃料電池2の電圧および取り出し電流に基づいて、燃料電池2の電圧および取り出し電流を制御する電力制御装置37を備える。
水素温度センサ41および水素圧力センサ42によって検出される燃料電池2のアノードガス入口2aにおける水素温度および水素圧力と、空気温度センサ43および空気圧力センサ44によって検出される燃料電池2のカソードガス入口2cにおける空気温度および空気圧力とが図2に示したようにコントローラ51に入力されている。コントローラ5
1では、水素圧力センサ42で検出されるアノードガス入口2aの水素圧力に基づき、水素調圧弁6を介してアノードガス入口2aの水素圧力を制御すると共に、空気圧力センサ44で検出されるカソードガス入口2cの空気圧力に基づき、空気調圧弁24を介してカソードガス入口2cの空気圧力を制御する。
ここで、燃料電池2の反応ガス圧力、すなわちアノードガス入口2aの水素圧力およびカソードガス入口2cの空気圧力は可変圧である。すなわち、電力制御装置37の取り出し出力および燃料電池2の温度によって、燃料電池2が安定的に発電できるよう適切な反応ガス圧力を設定している。
また、冷却水温度センサ45、46によって検出される燃料電池2の冷却水入口2fおよび冷却水出口2eにおける各冷却水温度が図2に示したようにコントローラ51に入力されている。コントローラ51では、冷却水温度センサ45、46で検出された冷却水入口2fの冷却水温度及び冷却水出口の冷却水温度2eに基づいて、熱交換器32の冷却ファン32aによる放熱量を制御する。
さて、燃料電池2のアノードガス出口2bよりアノード排出流路8に排出されるガスに含まれる不純物が水素パージ弁16に噛みこまないようにするため、水素パージ弁16上流のアノード排出流路8にフィルタ17(不純物除去手段)を備えている。発電により生成される水は、主に水セパレータタンク9により回収されるとはいえ、生成水はこのフィルタ17をも通過する。燃料電池2の運転停止のため燃料電池2への水素供給を停止したときに、フィルタ17に液水が溜まったままであると、燃料電池2の運転停止中にフィルタ17が凍結し、アノード排出通路8がフィルタ17によって閉塞されてしまうことがある。こうした状態になると、再び燃料電池2を運転した後に、燃料電池2の運転によってアノード排出通路8に溜まる窒素ガスを外部に排出しようと水素パージ弁16を開いても、窒素ガスを外部に排出することができない。従って、燃料電池2の運転中に機会をみてあるいは燃料電池2の運転停止に際して、フィルタ17に滞留している液水を除去し、燃料電池2の運転停止中にフィルタ17に滞留している液水が凍結することがないようにしておく必要がある。
この場合に、水素パージ弁16の凍結防止のため、燃料電池2への水素供給を停止したときに、燃料電池2内部に残った水素を消費させて燃料電池2内部のアノードガス流路を負圧(大気圧より低い圧力)にし、その後に水素パージ弁16を所定時間だけ開放することで、外部よりアノード排出流路8に空気を流入させ、その流入する空気により水素パージ弁16に滞留している液水を吹き飛ばす(除去する)ようにした従来装置の凍結防止方法がある(特開2007−35369号公報)。
しかしながら、従来装置の水素パージ弁16の凍結防止方法をフィルタ17の凍結防止にそのまま適用するのでは、外部からアノード排出流路8へと導入される空気が、そのまま燃料電池2内部のアノードガス流路に入り、MEAを劣化させる恐れがある。
そこで本実施形態では、フィルタ17と水素パージ弁16との間のアノード排出流路8に所定の容積を有する容積部18を配置すると共に、燃料電池2の運転中に機会をみてフィルタ17上流のアノード排出流路8のガス圧力を上昇させる。フィルタ17上流のアノード排出流路8のガス圧力を上昇させることによって、フィルタ17の上下流に圧力差を生じさせ、この圧力差を利用して、発電の終わったガスをフィルタ17に上流側から下流側へと流し、このガス流れでフィルタ17に滞留する液水を吹き飛ばして除去する。
以下、詳述する。図3は通常運転中においてフィルタの液水除去のために水素調圧弁6の開度を増加したときにフィルタ17の上下流圧力がどう変化するのか、図4は同じく水
素調圧弁6の開度を増加したときに(図3と同じ条件で)フィルタ17を上流側より下流側へと流れるガス流速がどう変化するのかをそれぞれ示している。図3、図4において横軸の時間スケールは同じである。
図3上段に示したように水素調圧弁6の開度をt0のタイミングで第1開度Aから第2開度Bへとステップ的に増加させると、フィルタ上流圧力は第1圧力P1から第2圧力P2へと上昇する(図3下段の実線参照)。詳細には、フィルタ上流圧力はt0のタイミングより上昇しt2のタイミング以降は一定値に落ち着いている。この場合に、フィルタ17下流には容積部18があるため、フィルタ下流圧力は、図3下段に破線で示したようにフィルタ上流圧力よりも遅れて上昇し、t2のタイミングまではフィルタ上流圧力とフィルタ下流圧力との圧力差が拡大している。そして、t2のタイミングでフィルタ上流圧力の上昇が止まるため、t2のタイミングからはフィルタ上下流圧力差が縮小し、t4のタイミングでフィルタ上下流圧力差がゼロ、つまりフィルタ下流圧力がフィルタ上流圧力と一致している。
このようにt0のタイミングからt4のタイミングにかけてフィルタ上下流圧力差が生じると、この圧力差に起因してフィルタ17を上流側より下流側へと発電の終わったガスが流れる。フィルタ上下流圧力差によって生じるガス流速(フィルタ掃気流速)は、図4に示したように、t0のタイミングよりフィルタ上下流圧力差の拡大に伴って急激に大きくなり、その後緩やかとなりt2のタイミングの手前でほぼ最大となって横這いしている。そして、t2のタイミングからはフィルタ上下流圧力差が縮小するためにガス流速が減少し、フィルタ上下流圧力差がゼロとなるt4のタイミングでゼロに戻っている。
図4より、フィルタ上下流圧力差によって生じるガス流れをフィルタ17の掃気に用いれば、水素パージ弁16を開いて外部から空気をアノード排出流路8へと導入しなくても、フィルタ17に滞留している液水を吹き飛ばすことができそうである。 以下、フィル
タ上下流圧力差によってフィルタ17を上流側より下流側へと流れるガスを「掃気」ともいう。従って、図4の縦軸はフィルタ17の掃気流速を表したものでもある。
さて、どの程度の掃気流速であれば、フィルタ17に滞留している液水を実際に吹き飛ばすことができるのか否かを実験した。すなわち、フィルタ17に滞留している液水を実際に吹き飛ばすことができる掃気流速の最小値を「フィルタ液水除去可能流速」として実験的に求めてみると、図4においては実線の位置にフィルタ液水除去可能流速がくることがわかった。ということは、図4では実際のフィルタ掃気流速がこのフィルタ液水除去可能流速よりも高い状態にある場合にフィルタ17に滞留している液水を吹き飛ばすことが可能であることを表している。
これでフィルタ17から液水を除去する目処が立ったので、次には理論的に考察する。一般的にフィルタ掃気流速はフィルタ17の上流圧力Pupと下流圧力Pdnとの圧力差が大きいほど大きくなる。ここで、任意の時刻をtとし、これより短い時間Δtが経過した時刻をt+Δtとする。時刻t+Δtにおけるフィルタ掃気流速v(t+Δt)を次の(3)式、(4)式、(5)式により考察する。
まず、時刻t+Δtでのフィルタ下流圧力Pdn(t+Δt)は、
Pdn(t+Δt)=Pdn(t)+(R×Tup)/V×n…(3)
ただし、Pdn(t);時刻tでのフィルタ下流圧力、
Tup ;フィルタ17上流温度、
V ;容積部18の容積、
n ;Δt間のフィルタ掃気のモル数、
R ;気体定数、
の式により与えられる。(3)式の右辺第2項は、Δt間にフィルタ17を通過する掃気が全て容積部18に流入することによってフィルタ下流圧力が上昇する圧力上昇分を理想気体の状態方程式から求めたものである。
上記(3)式のΔt間のフィルタ掃気のモル数n、時刻t+Δtでのフィルタ掃気流速v(t+Δt)は、
n=時刻t+Δtでのフィルタ上流圧力Pup(t+Δt)と時刻tでのフィルタ下
流圧力Pdn(t)との圧力差が生じたときにフィルタ17を通過する標準状態
ガスのモル数 …(4)
v(t+Δt)=時刻t+Δtでのフィルタ上流圧力Pup(t+Δt)と時刻t+
Δtでのフィルタ下流圧力Pdn(t+Δt)との圧力差が生じた
ときのフィルタ掃気流速 …(5)
であると考える。
(3)式のΔt間のフィルタ掃気のモル数nを「フィルタ掃気のモル速度」で、(4)式のPup(t+Δt)とPdn(t)との圧力差を単に「フィルタ上下流圧力差」でそれぞれ定義し、フィルタ掃気のモル速度と、フィルタ上下流圧力差の関係を予め実験的に求めると、図5の特性が得られた。すなわち、図5のようにフィルタ掃気のモル速度はフィルタ上下流圧力差に比例している。従って、フィルタ上下流圧力差から図5を参照することによりフィルタ掃気のモル速度を算出することができる。
また、(5)式の時刻t+Δtでのフィルタ掃気流速v(t+Δt)を単に「フィルタ掃気流速」で、(5)式のPup(t+Δt)とPdn(t+Δt)との圧力差を単に「フィルタ上下流圧力差」でそれぞれ定義し、フィルタ掃気流速と、フィルタ上下流圧力差の関係を予め実験的に求めると、図6の特性が得られた。すなわち、図6のようにフィルタ掃気流速はフィルタ上下流圧力差に比例している。従って、フィルタ上下流圧力差から図6を参照することによりフィルタ掃気流速を算出することができる。
(3)式に示したように、容積部18の容積Vが大きいほど、時刻t+Δtでのフィルタ下流圧力Pdn(t+Δt)が小さくなるため、フィルタ上下流圧力差が大きくなり、フィルタ掃気流速が大きくなる。また、(5)式に示したように、フィルタ上流圧力の増加速度が大きいほど、時刻t+Δtでのフィルタ上流圧力Pup(t+Δt)が大きくなるため、フィルタ上下流圧力差が大きくなり、フィルタ掃気流速が大きくなる。従って、フィルタ掃気流速を大きくする(つまりフィルタ上下流圧力差を大きくする)ためには、フィルタ上流圧力の増加速度を大きくするか、容積部18の容積Vを大きくする必要がある。これで理論的考察を終える。
図7は、横軸にフィルタ掃気時間を、縦軸にフィルタ掃気流速をそれぞれ採ったときに、1回のフィルタ上流圧力の上昇による掃気でフィルタ17に滞留する液水を除去することが可能か否かの境界を予め実験的に求めたものである。境界を表す曲線より上の領域が、1回のフィルタ上流圧力の上昇による掃気でフィルタ17に滞留する液水を除去することが可能な領域(フィルタ液水除去可能域)、境界を表す曲線より下の領域が、1回のフィルタ上流圧力の上昇による掃気でフィルタ17に滞留する液水を除去することが不可能な領域(フィルタ液水除去不可能域)である。ここで、フィルタ液水除去可能域とフィルタ液水除去不可能域の境界は、フィルタ17に滞留している液水量に依存し、液水量が多いほど境界の曲線が上方にずれるものと考えられる。
フィルタ17の掃気に用いられるガス容積は、理論的には、フィルタ掃気流速とフィルタ掃気通過面積とフィルタ掃気時間との積で表される。従って、容積部18は、フィルタ掃気流速と、フィルタ掃気通過面積とフィルタ掃気時間との積に相当する容積を少なくと
も有していることが必要である。この場合、フィルタ掃気通過面積は変化しないので、フィルタ掃気流速とフィルタ掃気時間とで定まる運転点が図7においてフィルタ液水除去可能域にあれば1回のフィルタ上流圧力の上昇による掃気でフィルタ17に滞留する液水を除去することが可能となる。例えば図14に1回のフィルタ上流圧力の上昇による掃気でフィルタ17に滞留する液水を除去できるイメージを示す。なお、1回のフィルタ上流圧力の上昇による掃気でフィルタ17に滞留する液水を除去するには、フィルタ掃気流速の値が小さいほどフィルタ掃気時間が長く必要になる。
一方、フィルタ掃気流速とフィルタ掃気時間とで定まる運転点が図7においてフィルタ液水除去不可能域にあれば1回のフィルタ上流圧力の上昇による掃気でフィルタ17に滞留する液水を除去することが不可能となる。例えば、フィルタ掃気流速のみがフィルタ液水除去可能域にあってもフィルタ掃気時間がフィルタ液水除去可能域域にこなければ、1回のフィルタ上流圧力の上昇による掃気でフィルタ17に滞留する液水を除去できない。その際にはフィルタ上流圧力の上昇を何回か実行し、フィルタ掃気時間がフィルタ液水除去可能域にくるようにする。同様に、フィルタ掃気時間のみがフィルタ液水除去可能域にあってもフィルタ掃気流速がフィルタ液水除去可能域域にこなければ、1回のフィルタ上流圧力の上昇による掃気でフィルタ17に滞留する液水を除去できない。その際にはフィルタ上流圧力の上昇を何回か実行し、フィルタ掃気流速がフィルタ液水除去可能域にくるようにする。例えば図15に3回のフィルタ上流圧力の上昇による掃気でフィルタ17に滞留する液水を除去できるイメージを示す。ここで、2回目の掃気時のほうが1回目の掃気時よりもフィルタ上流圧力を上昇させ、3回目の掃気時のほうが2回目の掃気時よりもフィルタ上流圧力を上昇させている。
結論として、フィルタ掃気流速とフィルタ掃気時間とで定まる運転点が図7においてフィルタ液水除去可能域にくるように、容積部18の容積Vと、1回の水素調圧弁開度の増加量とを設定することで、1回のフィルタ上流圧力の上昇による掃気でフィルタ17に滞留する液水を除去できる。
次に、図7の縦軸のフィルタ掃気流速及び横軸のフィルタ掃気時間と、図4との関係を、図8、図9を参照して整理しておく。なお、図8、図9の特性は図4と同じものである。
まず、図8においてフィルタ17より吹き飛ばすことのできる液水量は、実際のフィルタ掃気流速がフィルタ液水除去可能流速を超えている部分の面積S1に比例する。この面積S1の横の長さと高さが理論的にはフィルタ掃気時間とフィルタ掃気流速となるが、実際には面積S1が長方形でないため近似することとなる。すなわち、図8においては、実際のフィルタ掃気流速がフィルタ液水除去可能流速を横切って大きくなるt1のタイミングより、その後に実際のフィルタ掃気流速がフィルタ液水除去可能流速を横切って小さくなるt3のタイミングまでの時間であるフィルタ掃気時間1と、フィルタ掃気時間1におけるフィルタ掃気流速の平均値(面積S1の平均の高さ)またはフィルタ掃気時間1におけるフィルタ掃気流速最大値との積で近似する。この近似方法では、フィルタ掃気時間1を図7の横軸のフィルタ掃気時間として、フィルタ掃気時間1におけるフィルタ掃気流速の平均値またはフィルタ掃気時間1におけるフィルタ掃気流速最大値を図7の縦軸のフィルタ掃気流速として採用する。
あるいは、フィルタ掃気時間1におけるフィルタ掃気流速の平均値に代えて、フィルタ掃気時間1におけるフィルタ掃気流速の平均値からフィルタ液水除去可能流速を差し引いた値を用い、またフィルタ掃気時間1におけるフィルタ掃気流速最大値に代えて、フィルタ掃気時間1におけるフィルタ掃気流速最大値からフィルタ液水除去可能流速を差し引いた値を用いることができる。
また、上記の面積S1に代えて、図9に示したように、実際のフィルタ掃気流速が正である部分の面積S2を用いてもかまわない。この面積S2は、t0のタイミングよりt4のタイミングまでの時間であるフィルタ掃気時間2と、フィルタ掃気時間2におけるフィルタ掃気流速の平均値(面積S2の平均の高さ)またはフィルタ掃気時間2におけるフィルタ掃気流速最大値との積で近似する。この近似方法では、フィルタ掃気時間2を図7の横軸のフィルタ掃気時間として、フィルタ掃気時間2におけるフィルタ掃気流速の平均値またはフィルタ掃気時間2におけるフィルタ掃気流速最大値を図7の縦軸のフィルタ掃気流速として採用する。
このように、図7の横軸のフィルタ掃気時間及び縦軸のフィルタ掃気流速として何を採用するかは図8、図9で示したように様々考えられるので、最終的には適合により採用する値を定めればよい。さらに述べると、図7の横軸のフィルタ掃気時間及び縦軸のフィルタ掃気流速として採用する値を定めた後には、1回のフィルタ上流圧力の上昇による掃気でフィルタ17に滞留する液水を除去することが可能か否かの境界(図7の境界)を予め実験的に求めることができる。
次に、コントローラ51により行われるフィルタ液水除去の制御を図10のフローチャートに基づいて説明する。図10のフローは一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。
ステップ1では液水除去経験フラグをみる。この液水除去経験フラグは燃料電池2の運転始動時にゼロに初期設定されている。従って、今は液水除去経験フラグ=0であるとしてステップ2以降に進む。
ステップ2では今回に液水除去許可条件が成立しているか否か、ステップ3では前回に液水除去許可条件が成立していたか否かをみる。液水除去許可条件は予め定めておけばよい。例えば、燃料電池2を一定時間運転すれば、発電による液水がフィルタ17に所定量滞留するとして、一定時間毎に(定期的に)液水除去許可条件が成立するとしてもよいし、所定の低負荷に限って液水除去許可条件が成立するとしてもよい。ステップ2で今回に液水除去許可条件が成立していないときはそのまま処理を終了する。
ステップ2で今回に液水除去許可条件が成立し、かつステップ3で前回に液水除去許可条件が成立していなかった、つまり今回に液水除去許可条件が成立したときには、フィルタ17の上下流に圧力差を生じさせてフィルタ17に上流から下流に向けて、発電後のガス(掃気)を流すため、ステップ4〜11に進む。
まずステップ4ではそのときの水素調圧弁開度θをメモリθ0に移し、ステップ5で水素調圧弁開度θを一定値Δθ1だけ大きくする。これを図3上段と対応付けると、ステップ4は第1開度Aをメモリθ0に格納することである。また、一定値Δθ1は図3上段において第2開度Bから第1開度Aを差し引いた値(つまり水素調圧弁開度の増加量)である。
水素調圧弁開度θを一定値Δθ1だけステップ的に大きくすると、フィルタ17上流のアノード排出流路8のガス圧力(フィルタ上流圧力)が上昇して、フィルタ17の上下流に圧力差が生じ(図3下段参照)、このフィルタ上下流圧力差によりフィルタ17に上流側から下流側へと発電後のガス(掃気)が流れる(図4参照)。このときのフィルタ掃気流速とフィルタ掃気時間とから定まる運転点が、図7においてフィルタ液水除去可能域にくるように、一定値Δθ1と容積部18の容積Vとを定めておく。
ステップ6では、水素調圧弁開度θの増加によって生じるフィルタ上下流圧力差を算出する。水素調圧弁開度を一定値Δθ1だけ増加した場合のフィルタ上下流圧力差は、基本的にこの一定値Δθ1と容積部18の容積Vとから定まり、さらにフィルタ17の上流温度に依存するので、フィルタ上流温度を相違させた場合のフィルタ上下流圧力差を実験により予め求めてテーブルにしておき、温度センサ47により検出されるフィルタ上流温度からこのテーブルを参照してフィルタ上下流圧力差を算出する。
ステップ7では、このようにして求めたフィルタ上下流圧力差から図6を内容とするテーブルを参照することによりフィルタ掃気流速を算出する。
ステップ8ではフィルタ掃気時間を算出する。このフィルタ掃気時間も、基本的に上記の一定値Δθ1と容積部18の容積Vとから定まり、さらにフィルタ17の上流温度に依存するので、フィルタ上流温度を相違させた場合のフィルタ掃気時間を実験により予め求めてテーブルにしておき、温度センサ47により検出されるフィルタ上流温度からこのテーブルを参照してフィルタ掃気時間を算出する。
ステップ9では、このようにして求めたフィルタ掃気時間と上記のフィルタ掃気流速とから定まる運転点が図7においてフィルタ液水除去可能域にあるか否かをみる。図7の特性はコントローラ51内のメモリに予め記憶させておく。フィルタ掃気流速とフィルタ掃気時間とから定まる運転点が図7においてフィルタ液水除去可能域にあるときには、今回に行う掃気(1回のフィルタ上流圧力の上昇による掃気)でフィルタ17に滞留する液水を除去することが可能であると判断し、ステップ11に進む。
一方、ステップ9でフィルタ掃気流速とフィルタ掃気時間とから定まる運転点が図7においてフィルタ液水除去不可能域にあるときには、今回に行う掃気(1回のフィルタ上流圧力の上昇による掃気)でフィルタ17に滞留する液水を除去することが不可能であると判断し、ステップ10に進んで水素調圧弁開度θをさらに一定値Δθ2だけ大きくした後に、ステップ11に進む。このときには、ステップ5での水素調圧弁開度の増加が加わっているので、フィルタ液水除去許可条件が成立する直前での水素調圧弁開度よりも合計でΔθ1+Δθ2だけ大きくなる。これは、一定値Δθ2の分だけフィルタ上下流圧力差を大きくしてフィルタ掃気流速を大きくし、これによってフィルタ掃気流速とフィルタ掃気時間とから定まる運転点を図7においてフィルタ液水除去可能域に収めるためである。
ステップ11ではタイマを起動する(タイマ値t1をゼロにする)。このタイマは、水素調圧弁開度θを一定値Δθ1だけ(あるいはΔθ1+Δθ2だけ)大きくしてからの経過時間を計測するためのもので、コントローラ51に内蔵されている。
一方、ステップ2で今回に液水除去許可条件が成立し、かつステップ3で前回にも液水除去許可条件が成立していた、つまり続けて液水除去許可条件が成立しているときには、ステップ12に進み、タイマ値t1と所定値を比較する。所定値としては、フィルタ掃気時間またはこれよりも長い時間を予め定めておく。タイマ値t1が所定値未満であるときにはフィルタ17からの液水除去がまだ完了していないので、そのまま今回の処理を終了する。
やがて、ステップ12でタイマ値t1が所定値以上になれば、1回のフィルタ上流圧力の上昇による掃気でフィルタ17に滞留する液水の除去が完了したと判断し、ステップ13、14に進んで液水除去経験フラグ=1とすると共に、メモリθ0の値を水素調圧弁開度θとする。ステップ14は、水素調圧弁開度θをステップ4、5での操作を行う前の開度に戻すものである。
ステップ13での液水除去経験フラグ=1により次回からステップ2よりステップ3以降に進むことができない。
このようにして設定される水素調圧弁開度θは、図示しないフローにおいて出力信号に変換され、変換された出力信号が水素調圧弁6に出力される。
図10は、燃料電池2の運転中に1回だけフィルタ17から液水除去を行う構成となっているが、定期的にフィルタ17から液水除去を行わせたいのであれば、液水除去経験フラグ=1となっている場合に、一定時間が経過したとき液水除去経験フラグ=0としてやればよい。このときには、図10において再びステップ2よりステップ3以降に進むこととなり、2回目のフィルタ17からの液水除去が行われる。
このように、本実施形態によれば、フィルタ17(不純物除去手段)と水素パージ弁16(開閉弁)との間のアノード排出流路8に所定の容積を有する容積部18を配置すると共に、フィルタ17上流のアノード排出流路8のガス圧力を上昇させるので、容量部18内部のガス圧力がフィルタ17上流のガス圧力より遅れて上昇する。このため、フィルタ17の上下流で圧力差が発生しこの圧力差により、フィルタ17を上流側から下流側へと発電を終えた後の反応ガスが流れる。このとき、水素パージ弁16は全閉状態のままである。すなわち、水素パージ弁16を開いて外部から空気をアノード排出流路8へと取り込まなくても、燃料電池2で反応したガスの流れによってフィルタ17に滞留する液水をフィルタ17の下流へと除去することができる。これより、燃料電池2の停止中にフィルタ17が凍結閉塞することを防止できる。
また、本実施形態によれば、容積部18は、フィルタ掃気流速(不純物除去手段を通過するガスの流速)と、フィルタ掃気通過面積(不純物除去手段を通過するガスの面積)と、フィルタ掃気時間(不純物除去手段をガスが通過する時間)との積に相当する容積を少なくとも有するので、フィルタ17上流のアノード排出流路8のガス圧力を上昇させたとき、フィルタ17から液水を除去するに十分なフィルタ上下流圧力差を容易に生じさせることができる。
また、本実施形態によれば、フィルタ掃気流速とフィルタ掃気時間とをパラメータとして、フィルタ液水除去可能域(不純物除去手段の液水を除去することが可能な領域)の境界を予め定めたマップを備え(図7参照)、フィルタ17上流のアノード排出流路8のガス圧力を上昇させることによって生じるフィルタ17を通過するガスの流速(フィルタ掃気流速)と、このガスがフィルタ17を通過する時間(フィルタ掃気時間)とから定まる運転点がフィルタ液水除去可能域にあるようにするので(図10のステップ4〜10参照)、フィルタ17に滞留する液水を精度良く除去することができる。
また、本実施形態によれば、フィルタ17上流のアノード排出流路8のガス圧力を上昇させることによって生じるフィルタ17を通過するガスの流速(フィルタ掃気流速)と、このガスがフィルタ17を通過する時間(フィルタ掃気時間)とから定まる運転点が図7に示される液水除去可能域に入るように、フィルタ17上流のアノード排出流路8のガス圧力を上昇させている(図10のステップ4〜10参照)。フィルタ17上流のアノード排出流路8のガス圧力を上昇させると、フィルタ掃気流速が大きくなるため、フィルタ掃気流速とフィルタ掃気時間とから定まる運転点を液水除去可能域に収めることができる。
本実施形態では、フィルタ17からの液水除去を行った後にあるいはフィルタ17からの液水除去に続けて、フィルタ17下流の水素パージ弁16を開き、フィルタ17より除去された液水を外部へ放出することが好ましい。これによって、フィルタ17より除去された液水が再びフィルタ17に侵入してフィルタ凍結の原因となることを防止できる。
本実施形態では、フィルタ17上流の水セパレータタンク9によって、発電により生成される水を回収するようにしているので、フィルタ17にまで到達する生成水はわずかである。また、排水弁11を開いて水セパレータタンク9に溜まった液水を外部へ放出するようにしているので、フィルタ17にまで到達する生成水はわずかである。つまり、フィルタ17に滞留する液水量を少なくしているのであり、これによって、フィルタ掃気時間を短縮できる。
本実施形態では、さらに次のバリエーションを考えることができる。すなわち、フィルタ17上流のアノード排出流路8のガス圧力を上昇させた後にはやがてフィルタ上下流圧力差がなくなる。この場合に、フィルタ上下流圧力差がなくなったタイミングで水素パージ弁16を開くようにする。水素パージ弁16を開くと、フィルタ17の下流が大気圧となって再びフィルタ上下流圧力差が生じるため、発電後のガス(掃気)がフィルタ17を上流から下流へと流れる。つまり、このバリエーションによれば、フィルタ掃気時間を長くすることができる。
また、燃料電池2への水素(反応ガス)の供給を停止するときにフィルタ17上流のアノード排出流路8のガス圧力を上昇させた状態で水素パージ弁16を開くバリエーションを考えることができる。水素パージ弁16を開くと、フィルタ17の下流が大気圧となって再びフィルタ上下流圧力差が生じるためガスがフィルタ17を上流から下流へと流れる。つまり、この他のバリエーションによっても、フィルタ掃気時間を長くすることができる。
図11、図12は第2、第3の実施形態の燃料電池システム1の概略構成図である。第1実施形態の図1と同一部分には同一の符号を付している。第3実施形態は、第2実施形態の水セパレータタンク9を削除し、容積部18に水セパレータタンクの機能を追加することによって、燃料電池システム1を簡素化したものである。このため、容積部18の下部に排水管10を連通し、この排水管10に排水弁11を設けている。
第2、第3の実施形態は、アノードデッドエンド運転を行うものに適用するものである。アノードデッドエンド運転を行うものでは、第1実施形態と相違して循環路13及び水素循環ポンプ14が不要となる。
アノード排出流路8に排出されるガスにはアノードでの発電に消費されなかった水素(アノードガス)が含まれるので、水素パージ弁16を開いてこれをそのまま廃棄するのでは、水素が無駄になる。このため、燃料電池2内部のアノードガス流路が昇圧される過程と減圧される過程とからなる圧力脈動の周期を単位周期として、単位周期が繰り返されるようにアノードに水素を供給することにより、アノードに供給する水素を燃料電池2及び水セパレータタンク9の外部に排出しないアノードデッドエンド運転を行う。
アノードデッドエンド運転をさらに説明する。図11、図12において、水素調圧弁6を開いて燃料電池2内部のアノードに水素を供給すると共に、コンプレッサ21を起動し燃料電池2内部のカソードに空気を圧送(供給)してMEAで発電を開始する。MEAが発電を開始すると、発電に伴いカソードに水が生成される。その生成水はカソードからアノードに向けて移動しアノードにも到達する。アノード反応面を通過してきた水(汽水・液水)はいずれアノード中のガス拡散層(gas diffusion layer)も透過し、燃料電池
2内部のアノードガス流路上に出てくる。このまま発電を続けていると、燃料電池2内部のアノードガス流路の圧力は水素調圧弁6により決められている上限圧に張り付いたままとなり、タンク3から供給される水素は発電で消費される質量流量のみとなる。
その質量流量だけ流して燃料電池2を運転する場合、燃料電池2内部のアノードガス流路上にある水を水セパレータタンク9まで排水するだけの動圧が得られず、いずれは燃料電池2内部のアノードガス流路上の水が水素の拡散を阻害して水素の供給不足からの電圧低下を引き起こし、やがてMEAが発電不能となってしまう。
この問題を回避するために発電中に水素調圧弁6を一時的に全閉状態にすると、タンク3から燃料電池2への水素の供給は行なわれずに、水素調圧弁6から水素パージ弁16までを流れるアノードガスの流路に残留する水素を用いて発電が継続される。この場合に、最大の容積を有するのは、アノード排出流路8に設けられている水セパレータタンク9(第3実施形態では容積部18)であり、この水セパレータタンク9内に残留する水素が燃料電池2内部のアノードガス流路に向けて流れる。そして、燃料電池2内部のアノードガス流路の容積や水セパレータタンク9中に残留する水素を発電で消費するために燃料電池2内部のアノードガス流路及び水セパレータタンク9内のガス圧力が低下してくる。
ガス圧力が低下したら再び水素調圧弁6を開く。すると、タンク3からの水素が燃料電池2内部のアノード流路に向けて流れ、燃料電池2内部のアノードガス流路の圧力が上昇する。そのとき発生する動圧で燃料電池2内部のアノードガス流路上の水が燃料電池2内部のアノードガス流路の下流側より水セパレータタンク9まで移動し、これによって発電がある程度継続できるようになる。つまり、燃料電池2内部のアノードガス流路を昇圧する過程と減圧する過程とを一定周期で繰り返す。このように、燃料電池2内部のアノードガス流路が昇圧される過程と減圧される過程とからなる圧力脈動の周期を単位周期として、単位周期が繰り返されるようにアノードに水素を供給する運転が、従ってアノードに供給する水素を燃料電池2及び水セパレータタンク9の外部に排出しない運転がアノードデッドエンド運転といわれるものである。このため、アノードデッドエンド運転中にフィルタ上流圧力(燃料電池2内部のアノードガス流路の圧力にほぼ等しい)は図13に示したように昇圧と減圧とを繰り返す。
第2、第3の実施形態では、水素調圧弁6を全閉とすることにより燃料電池2内部のアノードガス流路の圧力を減圧し、水素調圧弁6を所定開度とすることにより燃料電池2内部のアノードガス流路の圧力を昇圧する場合で説明したが、図11、図12に示したように電力制御装置37を備えている場合には、この電力制御装置37により燃料電池2内部のアノードガス流路を減圧することができる。すなわち、電力制御装置37により燃料電池2から出力を取り出す際に燃料電池2内部のアノードガス流路の水素が消費されるため、水素調圧弁は所定開度に保持したままでも燃料電池2内部のアノードガス流路が減圧されることとなる。よって、アノードデッドエンド運転における減圧時には水素調圧弁6は所定開度に保持したまま電力制御装置37により燃料電池2から出力を取り出すようにすればよい。
燃料電池2の運転中には、カソードで生成した水が電解質膜を介してアノードにも供給される。また、電解質膜は高いガス透過性を有する場合が多く、カソードガスに空気を使用した場合にはカソードからアノードへと透過した窒素が燃料電池2内部のアノードガス流路上に堆積する。そのため、アノードデッドエンド運転では圧力上昇中のアノードガスの流れ(順流)を利用してアノードガス流路上に堆積した液水や窒素を除去し、水素パージ弁16及び排水弁11から外部に排出する。
第2、第3の実施形態では、このようにアノードデッドエンド運転を行うものを前提として、第1実施形態と同じに、フィルタ17と水素パージ弁16との間のアノード排出流路8に所定の容積を有する容積部18を配置すると共に、燃料電池2の運転中に機会をみてフィルタ17上流のアノード排出流路8のガス圧力を上昇させる。フィルタ17上流のアノード排出流路8のガス圧力を上昇させることによって、フィルタ17の上下流に圧力
差を生じさせ、この圧力差を利用して、発電の終わったガスをフィルタ17に上流側から下流側へと流し、このガス流れでフィルタ17に滞留する液水を吹き飛ばして除去する。
このフィルタ17上流のアノード排出流路8のガス圧力の上昇のさせ方及び容積部18に関する考え方は第1実施形態と同様であるため、その詳細な説明は省略する。