JP2010129480A - 燃料電池システム - Google Patents
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Abstract
【課題】アノードガスの加湿を行い得る燃料電池システムを提供する。
【解決手段】電解質膜をアノードとカソードとで挟んで構成される単位燃料電池セルを複数積層したセルスタック(2)と、前記アノードから排出される水蒸気の凝縮水をセルスタック(2)の外部で溜める水貯留手段(7)と、この水貯留手段(7)に溜まっている凝縮水の気化を促進する気化促進手段(27)と、を備え、セルスタック内部のアノードガス流路の圧力が加圧される過程と減圧される過程とを繰り返すように前記アノードに燃料ガスを供給する運転を制御回路(51)が行う。
【選択図】図1
【解決手段】電解質膜をアノードとカソードとで挟んで構成される単位燃料電池セルを複数積層したセルスタック(2)と、前記アノードから排出される水蒸気の凝縮水をセルスタック(2)の外部で溜める水貯留手段(7)と、この水貯留手段(7)に溜まっている凝縮水の気化を促進する気化促進手段(27)と、を備え、セルスタック内部のアノードガス流路の圧力が加圧される過程と減圧される過程とを繰り返すように前記アノードに燃料ガスを供給する運転を制御回路(51)が行う。
【選択図】図1
Description
この発明は燃料電池システム、特に反応ガスの加湿方法に関する。
反応ガスの加湿手段として、MEAの反応エリア(アクティブエリア)の外側に触媒層を持たない電解質層のみからなる部位(加湿エリア)を設け、一方のガス流路出口の水を電解質層を介して他方のガス流路入口に移動させることで反応ガスを加湿する、いわゆるセル内部加湿方法を提案するものがある(特許文献1参照)。
特開2008−97891号公報
しかしながら、上記特許文献1の技術によれば、低負荷運転時にカソードガスの出口側の相対湿度が極めて低下しているため、MEAのアクティブエリアの外側に加湿エリアを設けたとしてもセル内部での加湿能力が低下しているので、アノードガスを加湿できない。
そこで本発明は、アノードガスの加湿を行い得る燃料電池システムを提供することを目的とする。
本発明は、セルスタックと、アノードから排出される水蒸気の凝縮水をセルスタックの外部で溜める水貯留手段と、この水貯留手段に溜まっている凝縮水の気化を促進する気化促進手段と、を備え、セルスタック内部のアノードガス流路の圧力が加圧される過程と減圧される過程とを繰り返すように燃料ガスをアノードに供給する運転を行う。
本発明によれば、気化促進手段により水貯留手段に溜まっている凝縮水の気化が促進され、水貯溜手段に存在するアノードガスが高加湿状態となり、減圧過程において、この高加湿状態のアノードガスがセルスタック内部のアノードガス流路へと逆流することから、アノードガスを効率よく加湿することができる。
図1は本発明の第1実施形態の燃料電池システム1の概略構成図である。本実施形態の燃料電池システムでは、比較的小型で発電効率に優れる固体高分子型燃料電池を用いており、車両に搭載されている。
セルスタック2には、電気化学反応に供される反応ガス(燃料ガスと酸化剤ガス)と、セルスタック2を冷却する冷却媒体が供給される。セルスタック2のアノードには、高圧水素を貯蔵した水素タンク3から燃料ガス供給管4(燃料ガス供給流路)を介して水素が供給される。水素タンク3の代わりに、アルコール、炭化水素などを原料とする改質反応によって水素を生成してもよい。燃料ガス供給管4には、水素の供給量を調整するため調圧バルブ5が配置されている。また、セルスタック2には、アノードからの燃料ガスと共に不純物(生成水や窒素等)をセルスタック2の外部へ排出するための排出管6が配置されている。
排出管6には、水セパレータタンク7(水貯留手段)が接続され、この水セパレータタンク7で燃料ガス中の水蒸気を凝縮水として溜めるようにしている。溜めた水を排出するための配管8と、水蒸気が分離された後の燃料ガスに含まれる窒素を排出するための配管9とが水セパレータタンク7の下部と上部に設けられている。各配管8、9にはそれぞれ常閉の排水バルブ10、窒素パージバルブ11が設けられている。
図2はセルスタック2の概略構成図である。セルスタック2は、単位燃料電池セル(単セル)41を複数枚積層したものから構成されている。単セル41は、その積層構造の中央に膜電極接合体(Memrerane Electrode Assembly;以下「MEA」という。)を有している。MEA42は、電解質膜の両面に電極触媒層、ガス拡散層が順次積層された構造である。電解質膜を境に一方の面側がカソードとして、他方の面側がアノードとして用いられる。MEA42の両面には導電性部材であるカーボンや金属で作られたカソード側セパレータ43とアノード側セパレータ44とが配置されている。カソード側セパレータ43がMEA42と対向する面には空気(酸化剤ガス)の流路45が形成され、反対面には冷却水流路47を有している。アノード側セパレータ44がMEA42と対向する面には水素(燃料ガス)の流路46が形成され、反対面には冷却水流路47を有している。このように形成された単セル41を複数枚重ねたうえで、各単セル41に空気、水素、冷却水を分配するマニホールド49、50を両端に備えており、このマニホールド49、50によりセルスタック2の外部から供給される空気、水素、冷却水を各単セル41へと分配している。また、セルスタック2内部の水循環を効率よく行わせるために空気の流路45と水素の流路46とを対向流としている。
なお、以下ではカソードに供給される空気を「カソードガス」、アノードに供給される水素を「アノードガス」ともいう。また、上記空気の流路45を「カソードガス流路」、水素の流路46を「アノードガス流路」ともいう。
セルスタック2のカソードには、コンプレッサ15から供給管16を介して空気が供給される。コンプレッサに代えて、ブロア等の空気供給手段を用いることができる。セルスタック2のカソードから排出された空気は、排出管17を介して大気中に放出される。排出管17には、背圧(カソードガス流路の圧力)を調整するため調圧バルブ18が配置されている。
セルスタック2には、さらにラジエータ21から配管23を介して冷却水が供給される。冷却水に代えて、エチレングリコール等の不凍液、空気等の冷却媒体を用いることができる。セルスタック2で発生した熱を取り込んで温度上昇した冷却水は、配管22を介してラジエータ21に送られ冷やされた後に再びセルスタック2内部に循環される。配管23には、水循環のための循環ポンプ24が配置されている。
制御回路51は、マイクロコンピュータを中心とした論理回路として構成され、詳しくは、予め設定された制御プログラムに従って所定の演算などを実行するCPU(図示せず)と、CPUで各種演算処理を実行するのに必要な制御プログラムや制御データ等が予め格納されたROM(図示せず)と、同じくCPUで各種演算処理をするのに必要な各種データが一時的に読み書きされるRAM(図示せず)と、各種信号を入出力する入出力ポート(図示せず)等を備えている。制御回路51では、コンプレッサ15、循環ポンプ24を駆動し調圧バルブ5、18を制御してセルスタック2で発電を行わせると共に、セルスタック2内部のアノードに供給する燃料ガスをセルスタック2及び水セパレータタンク7の外部に排出しないアノードデッドエンド運転を行う。アノードデッドエンド運転そのものは公知である(特開2007−149630号公報参照)。
さて、図3はセル内部加湿方法を示す従来技術(特開2008−97891号公報参照)のセルスタック2の概略構成図である。従来技術では、図3に示したように、反応ガスの加湿手段として、MEAのアクティブエリア48の外側に触媒層を持たない電解質層のみからなる部位(加湿エリア49)を設け、一方のガス流路出口の水を電解質層を介して他方のガス流路入口に移動させることで反応ガスを加湿するようにしている。しかしながら、低負荷運転では、カソードガスの出口側の相対湿度は極めて低下しているので、MEAのアクティブエリア48の外側に加湿エリア49を設けたとしてもアノードガスの下流側を加湿できない。これについて説明すると、図4は負荷に対する水収支の特性である。負荷が高い側で水収支が湿潤側(ウェット側)となっているのは、負荷が高い側では、冷却水温度が上がるものの酸化剤ガスの圧力を上げることができるため、水収支を湿潤側に持ってくることができるためである。それに対して、負荷が低い側では水収支が乾燥側(ドライ側)になってしまう。これは、負荷が低い側では、冷却水温度は比較的低いものの酸化剤ガスの圧力を上げることができないためである。酸化剤ガスの圧力を上げることができないのは、酸化剤ガスの圧力を上げるとコンプレッサ15の消費電力が上がり燃費が低下するため、また低負荷側では酸化剤ガスの流量が少ないので、コンプレッサ15の特性上圧力を上げられないためである。その上、低負荷側では、利用率を高負荷側と同じに高く(例えば酸化剤ガスのストイキ比SR=1.5)すると、セルスタック内部のカソードガスの流速が遅くフラッディングが生じやすくなるため、利用率を下げて(例えばSR=2.0)運転する必要がある。これに伴い水収支はさらに乾燥側になってしまう。図5は再び従来技術のセルスタック2の概略構成図である。低負荷側で利用率が低い場合には、図5においてカソードガス流路の上流側である領域1の電解質膜及び触媒層が乾燥してしまい、発電が行われなくなる。領域1で発電が行われなくなると、領域2〜5で負荷相当分の発電が行われるようになるが、しばらく時間が経過すると、次には領域2が乾燥し領域2で発電が行われなくなる。領域2で発電が行われなくなると、領域3〜5で負荷相当分の発電が行われるようになるが、しばらく時間が経過すると、次には領域3が乾燥し領域3で発電が行われなくなる。このような現象が連鎖的に発生し、条件によっては、最終的に領域5のみが発電するような状態になり、セルスタック全体の電圧が著しく低下する。
さらに詳述する。図6は図5のセルスタックに用いられている単セルのモデル図(図5のA−A線断面図)で、上段に示す図6(A)は水収支が湿潤側(ウェット側)の条件にあるときの、下段に示す図6(B)は水収支が乾燥側(ドライ側)の条件にあるときのものである。図6(A)に示すように、水収支が湿潤側になるような条件で運転した場合、カソードガス流路の下流側では生成水の影響で相対湿度が高くなり、カソードガス流路側とアノードガス流路側の相対湿度差をドライビングフォースとして、MEAの膜中を水がアノードガス流路側に向けて逆拡散し、アノードガス流路の上流側を加湿する。アノードガス流路に出た水蒸気はアノードガス流路の下流側に運ばれてカソードガス流路の上流(図5で領域1)の膜を加湿するので、領域1でMEAの膜が乾燥するという問題が起きない。このように、アノードガス、カソードガスのカウンターフローで互いの極を加湿する技術はかなり以前から公知となっている。しかしながら、図6(B)に示すように水収支が乾燥側の条件(つまり低負荷)の場合には、カソードガス流路の下流側の相対湿度が、水収支が湿潤側の条件の場合よりも低く、アノードガス流路側に水を供給できないため、アノードガス流路の出口側が乾燥したままであり、従って、乾燥したガスしか供給されない領域1のMEAが乾燥し、図5で前述したような問題が低負荷時に発生してしまうのである。
そこで本実施形態では、水セパレータタンク7に溜まっている凝縮水の気化を促進する気化促進手段を備え、セルスタック2内部のアノードガス流路の圧力が加圧される過程と減圧される過程とを繰り返すようにアノードに供給する燃料ガスをセルスタック2及び水セパレータタンク7の外部に排出しないアノードデッドエンド運転を行う。
これについて図7を参照してさらに説明すると、図7は本発明の第1実施形態の一例の低負荷時におけるタイミングチャートである。一定の低負荷条件に保持した場合にアノードガス流路46の圧力と、アノードガス流路46のガス流れ方向とがどのように変化するのかを示している。ここで、アノードガス流路46におけるアノードガスの流れ方向はセルスタック2から水セパレータタンク7に流れる向きを正としている。まず、排水バルブ10は水セパレータタンク7内の凝縮水の液面レベル7cが予め定めている上限レベルを超えないように所定開度(一定開度)まで開いて余分な凝縮水を系外へ排出し、また窒素パージバルブ11もセルスタック2から水セパレータタンク7へと排出される未反応アノードガスに含まれる窒素を系外に排出するため所定開度(一定開度)まで開いている。この状態でアノードデッドエンド運転を行う。水素タンク3から所定開度まで開かれた水素調圧バルブ5によって圧力が調整された水素(アノードガス)がセルスタック2内部のアノードガス流路46に供給される。このため、アノードガス流路46の圧力は上昇し、セルスタック2から水セパレータタンク7に向けてアノードガスの流れ(順流)が発生する。これと共にセルスタック2内部でカソードガス流路45の側からアノードガス流路46の側へ拡散してきた生成水や窒素などの不純物を水セパレータタンク7へ排出する。不純物のうち生成水は水セパレータタンク7内で凝縮して水となり水セパレータタンク7の下部に溜まって液相部7aを形成する。窒素と未反応アノードガスとは水セパレータタンク7の上部に溜まって気相部7bを形成する。水セパレータタンク7は、このような不純物を溜めるために十分な体積を有するものである。また、生成水や窒素の量が増加してきた場合、上記のように排水バルブ10、窒素パージバルブ11を開状態にして、生成水や窒素を系外へ廃棄する。
アノードガス流路46の圧力がt1で所定圧力P1に到達すると水素調圧バルブ5を全閉としてセルスタック2へのアノードガスの供給を止める。この後、セルスタック2での発電に伴いアノードガス流路46のアノードガスが消費され、アノードガス流路46の圧力は低下する。これに伴い今度は水セパレータタンク7からセルスタック2に向かってアノードガスの流れ(逆流)が生じる。アノードガス流路46の圧力が所定圧力P2にまで低下するt2になると、再び水素調圧バルブ5を所定開度まで開きセルスタック2へのアノードガス供給を再開する。このアノードガス供給の再開によりアノードガス流路46の圧力が再び上昇し、セルスタック2から水セパレータタンク7に向けてアノードガスの流れ(順流)が発生する。そして、アノードガス流路46の圧力がt3で所定圧力P1に到達すると水素調圧バルブ5を全閉としてセルスタック2へのアノードガスの供給を止める。すると、アノードガス流路46の圧力が低下してゆき、水セパレータタンク7からセルスタック2に向かってアノードガスの流れ(逆流)が生じる。以上のようなプロセス、つまり、セルスタック2内部のアノードガス流路46の圧力が加圧される過程(以下では単に「加圧過程」ともいう。)と減圧される過程(以下では単に「減圧過程」ともいう。)とを繰り返すことにより、セルスタック2及び水セパレータタンク7の外部にアノードガスを排出しないアノードデッドエンド運転が可能となる。
こうした本発明のアノードデッドエンド運転の運転方法は、図7に示した例に限らない。図8に示した他の例のように、加圧過程と減圧過程のそれぞれの間にアノードガス流路46の圧力を一定(所定圧力P1、P2)に維持する過程(以下では単に「圧力維持過程」ともいう。)を設けても良い。ここで、アノードガス流路46の圧力を所定圧力P1に維持させるには、水素調圧バルブ5の開度を減少させてやれば(バルブ5を絞れば)よい(図8最上段のt11〜t12、t15〜t16、t19〜t20参照)。このときの減少スピードは適合により決定する。また、アノードガス流路46の圧力を所定圧力P2に維持させるには、水素調圧バルブ5の開度を増加させてやればよい(図8最上段のt13〜t14、t17〜t18参照)。このときの増加スピードも適合により決定する。
こうしたアノードデッドエンド運転において、水セパレータ7からセルスタック2に向けて水セパレータ7内部の未反応アノードガスがセルスタック2(詳しくはアノードガスの排気マニホールド)へと逆流する減圧過程で、この水セパレータ7内部の気相部7bに存在する未反応アノードガスに水分を含ませることができれば、アノードガス流路46の出口側の加湿を行うことが可能となる。そこで第1実施形態では、水セパレータタンク7に加えて、図1に示したように、水素調圧バルブ5上流の燃料ガス供給管4から、水素調圧バルブ5及びセルスタック2をバイパスして水セパレータタンク7にアノードガスを供給するバイパス流路26を設ける。バイパス流路26の下流端を水セパレータタンク7の下面より凝縮水が貯留されている液相部7aに突出させ、その開口端に金属発泡体などの多孔体からなる気泡発生部27(気化促進手段)を取り付ける。
また、バイパス流路26の途中にオリフィス28を設けて、このオリフィス28によってバイパス流路26を通過するアノードガスの流量を調整する。オリフィス28の径は、発電量が少ない、つまり高負荷に対して低負荷のほうが水収支が厳しいのであるから、アノードガスの消費量が少ない低負荷に合わせたオリフィス径とすることが好ましい。もちろん、径が一定であるオリフィス28に代えて流量可変バルブとすることも可能である。
本実施形態では、このような構成とすることで、気泡発生部27を通して細かな気泡となるアノードガス内に水セパレータタンク7内に溜まっている凝縮水が蒸発する。あるいは、気泡による凝縮水のかき混ぜによって凝縮水が蒸発する。つまり、凝縮水の気化が促進されることとなり、水セパレータタンク7内の気相部7bに残留するアノードガスを高加湿状態とすることができる。この高加湿状態となった水セパレータタンク7内のアノードガスは、水セパレータタンク7からセルスタック2へと逆流する減圧過程でセルスタック2の内部のアノードガス流路46へと供給されるので、低負荷時に乾燥状態になりやすいアノードガス流路46の出口側(水素調圧バルブ5の反対側)を加湿することができ、低負荷時の発電性能の低下を防ぐことができる。
このように、本実施形態は、水セパレータタンク7内の液相部7aに気泡発生部27を備えさせ、凝縮水の気化を促進することで水セパレータタンク7内の気相部7bに残留している未反応アノードガスを高加湿状態とすると共に、セルスタック2内部のアノードガス流路46の圧力が加圧過程と減圧過程とを繰り返すようにアノードに供給する燃料ガスをセルスタック2及び水セパレータタンク7の外部に排出しないアノードデッドエンド運転を行うことによって、アノードガス流路46から水セパレータタンク7までの流路に圧力脈動を生じさせ、この圧力脈動を利用して、上記高加湿状態のアノードガスをセルスタック2内部のアノードガス流路46に送り込み、低負荷時に乾燥状態になりやすいアノードガス流路46の出口側を加湿するようにしたものである。本実施形態は、燃料ガスと酸化剤ガスの反応によって生成された水をセルスタック2の外部の水セパレータタンク7で凝縮させて溜めると共に、この溜まっている凝縮水を反応ガスの加湿に再利用するものである。これによって、上記従来技術のようにセルスタック2内部で加湿する必要は無くなり、かつセルスタックの外部に専用の加湿器を別に設ける必要も無いのである。
制御回路51で実行されるこの制御を図9のフローチャートに基づいて詳述する。図9は、水素調圧バルブ5を開閉制御するためのもので、一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。なお、図9は図7に対応する制御を示している。
図9においてステップ1では、水素調圧バルブ5が開いているか否かをみる。ここでは前提として水素調圧バルブ5を所定開度まで開いているものとする。このときにはステップ2に進んでアノードガス流路46の圧力Pと所定圧力P1を比較する。所定圧力P1は図7に示した所定圧力P1であり、予め最適な値を定めておく。アノードガス流路46の圧力Pとしては、排出管6の圧力(あるいはアノードガス流路が集合する部位の圧力)を採用すればよい。本実施形態では、排出管6の圧力を圧力センサ52によりアノードガス流路圧力として検出している(図1参照)。
前提として水素調圧バルブ5を所定開度としているので、アノードガス流路圧力Pが上昇していく。ここではアノードガス流路圧力Pは所定圧力P1より低いとしてステップ3の操作を実行する。ステップ3の操作の繰り返しによりやがてステップ2でアノードガス流路圧力Pが所定圧力P1以上となればステップ4に進み、水素調圧バルブ5を全閉状態とする。
ステップ4での水素調圧バルブ5の全閉によって次回にはステップ1で水素調圧バルブ5は開いていないと判定される。このときにはステップ5に進んで圧力センサ52により検出されるアノードガス流路圧力Pと所定圧力P2を比較する。所定圧力P2は図7に示した所定圧力P2(所定圧力P1よりも小さな値)であり、所定圧力P2も予め最適な値を定めておく。ステップ4で水素調圧バルブ5を全閉としたことによってアノードガス流路圧力Pが所定圧力P1より下降していくが、水素調圧バルブ5を全閉として間もない場合にはアノードガス流路圧力Pは所定圧力P2より高いので、ステップ5よりステップ4に進みステップ4の操作を実行する。ステップ4の操作の繰り返しによりやがてステップ5でアノードガス流路圧力Pが所定圧力P2以下となればステップ6に進み、水素調圧バルブ5を所定開度に戻す。
次回にはステップ1よりステップ2へ進むことになり、上記の操作が繰り返される。つまり、水素調圧バルブ5について所定開度とした状態と全閉状態とを一定の周期で繰り返すことによって、アノードガス流路46の圧力が減圧過程と加圧過程とを繰り返し、これによってアノードガス流路46から水セパレータタンク7までの流路に圧力脈動が生じる。
図9では、圧力センサ52により検出されるアノードガス流路圧力Pをみながら水素調圧バルブ5の開度を所定開度と全閉とに切換えるようにしているが、本発明はこの場合に限定されるものでない。例えば、所定の時間毎に(あるいは一定周期で)所定開度と全閉とを繰り返すように水素調圧バルブ5の開度を制御してもかまわない。
ここで、本実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態によれば、電解質膜をアノードとカソードとで挟んで構成される単位燃料電池セルを複数積層したセルスタック2と、アノードから排出される水蒸気の凝縮水をセルスタック2の外部で溜める水セパレータタンク7(水貯留手段)と、水セパレータタンク7に溜まっている凝縮水の気化を促進する気泡発生部27(気化促進手段)と、を備え、セルスタック2内部のアノードガス流路46の圧力が加圧される過程と減圧される過程とを繰り返すようにアノードに供給する燃料ガスをセルスタック2及び水セパレータタンク7の外部に排出しないアノードデッドエンド運転を行う(図9参照)。従って、気泡発生部27により水セパレータタンク7に溜まっている凝縮水の気化が促進され、水セパレータタンク7内部に存在するアノードガスが高加湿状態となり、アノードデッドエンド運転における減圧過程において、この高加湿状態のアノードガスがセルスタック2内部のアノードガス流路46へと逆流することから、アノードガス流路46の出口側の電解質膜が湿潤状態になり、発電性能を向上することができる。また、アノードガスが乾燥状態となりやすい低負荷時に電解質膜を十分に加湿することができるので、特に効果がある。
本実施形態によれば、気化促進手段は気泡発生部27(気泡発生手段)であり、燃料ガスをアノードに供給する燃料ガス供給管4(燃料ガス供給流路)の圧力を調圧する水素調圧バルブ5(調圧バルブ)と、気泡発生部27とこの水素調圧バルブ5上流の燃料ガス供給管4とを接続するバイパス流路26と、を備えるので、気泡状のアノードガスによって水セパレータタンク7に溜まっている凝縮水の気化を促進できることから、気泡を発生させるためのガスを別に用意する必要が無い。
また、本実施形態では、セルスタック2内部のアノードガス流路の圧力が加圧される過程と減圧される過程とを繰り返すようにアノードに燃料ガスを供給できればよく、燃料ガスをセルスタック2及び水セパレータタンク7の外部に排出しないアノードデッドエンド運転(システム)に限定されないことはいうまでもない。
また、本実施形態の変形例として、セルスタック2を運転する負荷状態を判定し、アノードデッドエンド運転をアノードガスが乾燥状態となりやすい低負荷時にのみ行うようにしてもよい。このとき、低負荷時に最も乾燥状態になりやすいアノードガス流路46の出口側を加湿することができ、低負荷時の発電性能の低下を防ぐことができる。よって、使用頻度の高い低負荷時の発電性能が改善され燃費が向上する。
図10〜図12は本発明の第2実施形態である。このうち、図10は第2実施形態の燃料電池システム1の概略構成図、図11は第2実施形態の一例のアノードガス流路圧力、アノードガス流路のガス流れ方向の変化を示すタイミングチャート、図12は第2各実施形態の他の例のアノードガス流路圧力、アノードガス流路のガス流れ方向の変化を示すタイミングチャートで、それぞれ第1実施形態の図1、図7、図8と置き換わるものである。図10において第1実施形態の図1と同一部分には同一番号を付している。
第2実施形態は、第1実施形態に対して、図10に示したように水セパレータタンク7に溜まっている凝縮水を加熱するためのヒータ61を液相部7aに追加して配置したものである。すなわち、ヒータ61の一端はバッテリ62に、他端はアースに接続され、ヒータ61と直列に常開のスイッチ63が接続されている。スイッチ63は制御回路51によりON、OFFされる。
第2実施形態では、制御回路51が、図11第4段目に示したようにアノードガス流路圧力が減圧される過程でこのヒータ61をONとし、アノードガス流路圧力が加圧される過程でヒータ61をOFFとする。すなわち、気泡発生部27を通して細かな気泡となるアノードガスによって水セパレータタンク7内の凝縮水の気化が促進される減圧過程では、当該凝縮水の気化潜熱により水セパレータタンク7に溜まっている凝縮水の温度が低下するのであるが、第2実施形態によれば、減圧過程でヒータ61をONして水セパレータタンク7内の凝縮水を加熱するので、こうした水セパレータタンク7内の水が蒸発するときの気化潜熱による水セパレータタンク7内の凝縮水の温度低下を防ぐことができる。
また、水セパレータタンク7からセルスタック2への逆流が生じている減圧過程でのみ、つまり細かな気泡となったアノードガス内に水セパレータタンク7内の凝縮水が蒸発し、高加湿状態となったアノードガスが水セパレータタンク7からセルスタック2へと逆流する場合にのみヒータ61をONとするので、加湿が必要なときに加湿することが可能な効率の良い加熱が可能となり、加圧過程にもヒータ61をONとする場合と比較してバッテリ62を無駄に消費することを避けることができる。
さらに、図12に示したように加圧過程と減圧過程のそれぞれの間に圧力を維持する過程を設けている場合に、第2実施形態では、加圧過程以外(減圧過程と圧力維持過程)でヒータ61をONとし、加圧過程でヒータ61をOFFとする(図12第4段目参照)。加圧過程においてヒータ61をOFFとするのは、加圧過程においてはセルスタック2の圧損に比べてオリフィス28の圧損の方が極めて大きいため、バイパス流路26を通過する、つまり水セパレータタンク7へ導入されるアノードガスがほとんどゼロとなるため、気化潜熱で奪われる熱量もほとんどゼロであり、加熱する必要がないためである。これによってバッテリ62を無駄に消費することを避けることができる。
図13〜図15は本発明の第3実施形態である。このうち、図13は第3実施形態の燃料電池システム1の概略構成図、図14は第3実施形態の一例のアノードガス流路圧力、アノードガス流路のガス流れ方向の変化を示すタイミングチャート、図15は第3実施形態の他の例のアノードガス流路圧力、アノードガス流路のガス流れ方向の変化を示すタイミングチャートで、それぞれ第1実施形態の図1、図7、図8と置き換わるものである。図13において第1実施形態の図1と同一部分には同一番号を付している。
第3実施形態は、第1実施形態に対して、図13に示したようにバイパス流路26に開閉バルブ71を追加して設けたものである。開閉バルブ71は制御回路51により制御される。
第3実施形態では、制御回路51が、図14第4段目に示したようにアノードガス流路圧力が減圧される過程で開閉バルブ71を全開とし、加圧される過程で全閉とする。加圧過程は、セルスタック2に溜まった水や窒素をセルスタック2から水セパレータタンク7へと排出している過程である。この加圧過程でバイパス流路26を通してアノードガスが水セパレータタンク7に供給されると、水や窒素の排出を妨げることになる。第3実施形態によれば、加圧過程で開閉バルブ71を全閉とするので、加圧過程での水や窒素の排出を妨げることを防ぐことができる。
また、減圧過程で開閉バルブ71を開いている。このときには開閉バルブ71がないのと同じであり、第1実施形態と同じ作用効果が得られる。すなわち、気泡発生部27を通して細かな気泡となるアノードガス内に水セパレータタンク7内の凝縮水が蒸発し、水セパレータタンク7内の気相部7bに存在するアノードガスを高加湿状態とすることができる。そして、アノードガス流路圧力の減圧よって水セパレータタンク7からセルスタック2への逆流が生じる減圧過程で、高加湿状態のアノードガスがセルスタック2内部のアノードガス流路46へと供給されることで、低負荷時に乾燥状態になりやすいアノード流路46の出口側を加湿することができ、低負荷時の発電性能低下を防ぐことができる。
さらに、図15に示したように加圧過程と減圧過程のそれぞれの間に圧力を維持する過程を設けている場合に、第3実施形態では、加圧過程において開閉バルブ71を全閉とし、減圧過程と圧力維持過程とで全開としている。これにより、圧力維持過程でもアノードガスを水セパレータタンク7に導入することが可能となり、水セパレータ7内の気相部7bに存在するアノードガスを高加湿状態とすることができ、その後に訪れる減圧過程において、低負荷時に乾燥状態になりやすいアノード流路46の出口側をより効率的に加湿することができる。
図16〜図18は本発明の第4実施形態である。このうち、図16は第4実施形態の燃料電池システム1の概略構成図、図17は第4実施形態の一例のアノードガス流路圧力、アノードガス流路のガス流れ方向の変化を示すタイミングチャート、図18は第4実施形態の他の例のアノードガス流路圧力、アノードガス流路のガス流れ方向の変化を示すタイミングチャートで、それぞれ第1実施形態の図1、図7、図8と置き換わるものである。図16において第2、第3の実施形態の図10、図13と同一部分には同一番号を付している。
第4実施形態は、第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせたものである。すなわち、図16に示したように水セパレータタンク7に溜まっている凝縮水を加熱するためのヒータ61を液相部7aに追加して配置すると共に、バイパス流路26に開閉バルブ71を追加して設けている。
第4実施形態では、制御回路51が、図17第2段目、第3段目に示したように減圧過程でヒータ61をON、開閉バルブ71を全開とし、加圧過程でヒータ61をOFF、開閉バルブ71を全閉としている。第4実施形態によれば、開閉バルブ71が全開のとき(バイパス流路26から水セパレータタンク7へアノードガスが供給されているとき)のみ、ヒータ61をONにするので、気泡発生部27を通して細かな気泡となったアノードガス内に水セパレータタンク7内の凝縮水が気化しているときの気化潜熱により、水セパレータタンク7内の凝縮水の温度が低下することを防ぐことができる。
1 燃料電池システム
2 セルスタック
4 燃料ガス供給管
5 水素調圧バルブ(調圧バルブ)
6 排出管
7 水セパレータタンク(水貯留手段)
26 バイパス流路
27 気泡発生部(気泡発生手段、気化促進手段)
45 カソードガス通路
46 アノードガス流路
51 制御回路
2 セルスタック
4 燃料ガス供給管
5 水素調圧バルブ(調圧バルブ)
6 排出管
7 水セパレータタンク(水貯留手段)
26 バイパス流路
27 気泡発生部(気泡発生手段、気化促進手段)
45 カソードガス通路
46 アノードガス流路
51 制御回路
Claims (6)
- 電解質膜をアノードとカソードとで挟んで構成される単位燃料電池セルを複数積層したセルスタックと、
前記アノードから排出される水蒸気の凝縮水を前記セルスタックの外部で溜める水貯留手段と、
この水貯留手段に溜まっている凝縮水の気化を促進する気化促進手段と、
を備え、
前記セルスタック内部のアノードガス流路の圧力が加圧される過程と減圧される過程とを繰り返すように前記アノードに燃料ガスを供給する運転を行うことを特徴とする燃料電池システム。 - 前記気化促進手段は気泡発生手段であり、
燃料ガスを前記アノードに供給する燃料ガス供給流路の圧力を調圧する調圧バルブと、
前記気泡発生手段とこの調圧バルブ上流の燃料ガス供給流路とを接続するバイパス流路と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。 - 前記バイパス流路に開閉バルブを備え、
前記アノードガス流路の圧力が加圧される過程でこの開閉バルブを全閉状態とすることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。 - 前記気化促進手段は前記水貯留手段に溜まっている凝縮水を加熱する加熱手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
- 前記アノードガス流路の圧力が減圧される過程で前記加熱手段を作動させることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池システム。
- 前記運転を低負荷時に行うことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2008305503A JP2010129480A (ja) | 2008-11-28 | 2008-11-28 | 燃料電池システム |
Applications Claiming Priority (1)
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Family Applications (1)
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Country | Link |
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JP (1) | JP2010129480A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2012035974A1 (ja) * | 2010-09-17 | 2012-03-22 | 日産自動車株式会社 | 燃料電池システム |
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-
2008
- 2008-11-28 JP JP2008305503A patent/JP2010129480A/ja active Pending
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