JP2010121229A - 茶由来成分を含むレーヨン繊維及びその製造方法 - Google Patents

茶由来成分を含むレーヨン繊維及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ビスコースレーヨン製造工程中にアルカリ及び/又は酸などに曝されても失活及び/又は低下を生じさせずに、アルカリ及び/又は酸に対する耐薬品性の劣る茶由来成分を含有させ、茶由成分により付与される機能性を有し、かつ付与した機能性の耐久性に優れるレーヨン繊維及びその製造方法を提供する。
【解決手段】レーヨン繊維内に脂肪酸及び/又はその塩(以下、脂肪酸という)と茶由来成分とが含まれ、レーヨン繊維内のセルロースと脂肪酸とは非相溶状態であり、かつ脂肪酸は微分散されてセル状領域を形成し、茶由来成分はセル状領域中に含まれている。脂肪酸を含む水溶液に、アルカリ金属の水酸化物、界面活性剤及び茶由来成分を順番に添加・混合して乳化液を調整し、セルロースを含むビスコース原液に、乳化液を添加・混合してビスコース液を調整し、ビスコース液をノズルより押し出して紡糸し、凝固再生することによりレーヨン繊維を製造する。
【選択図】図1

Description

本発明は、再生セルロースを用いた茶由来成分を含むレーヨン繊維及びその製造方法に関する。
近年、人々を取り巻く環境、あるいは生活習慣の変化に伴って、繊維製品に対し様々な機能が要求されており、その要求に答えるべく種々の機能性繊維及び繊維製品が開発されている。また、最近では地球環境保護の観点から、資源の再生産が可能で生分解性のある再生セルロース繊維が注目されており、抗菌性などの機能を付与した再生セルロース繊維も種々提案されている。さらに、人体に対する安全性を考慮して天然物由来の機能性物質を利用した再生セルロース繊維が提案されている。
例えば、特許文献1には、抗菌成分として茶抽出物を含む溶液中に繊維を浸漬し、脱液・乾燥して繊維に抗菌成分を付着せしめる、いわゆる後加工により抗菌性を付与した再生セルロース繊維が開示されている。しかし、後加工により抗菌性を付与された繊維は、洗濯などに対する耐久性が弱いという問題がある。また、耐久性を向上させるべく、例えば樹脂を併用する方法も試みられているが、樹脂の付着によって風合いが硬くなるという問題や、セルロース繊維特有の優れた吸水性が低下してしまうという問題がある。そこで、特許文献2では、再生セルロース繊維の製造プロセスにおいて、セルロースと茶穀粉末とをともに溶解させて溶出成分を溶出させ、繊維素材自体に茶穀溶出物を含ませた再生セルロース繊維を提案している。なお、茶由来成分を含む上記天然物由来の機能性物質の多くは耐薬品性、例えばアルカリ及び/又は酸に対する耐薬品性の劣る機能剤である。
特開2001−329463号公報 特開2007−107127号公報
しかし、再生セルロース繊維であるビスコースレーヨン製造工程においては、熱可塑性繊維の製造工程のような高温の影響を受けることはないが、苛性ソーダなどのアルカリや硫酸などの酸によるpHの真逆の環境に曝される。よって、耐薬品性、特にアルカリ及び/又は酸に対する耐薬品性の劣る機能剤、例えば茶由来成分の場合、ビスコース原液に機能剤を添加してレーヨン繊維を製造することにより、レーヨン繊維に機能剤を練りこんでその機能性を付与することは困難であった。
本発明は、上記従来の問題を解決するため、ビスコースレーヨン製造工程中にアルカリ及び/又は酸などに曝されても機能剤の機能を失活及び/又は低下を生じさせずに、茶由来成分を含有させ、茶由来成分により付与される機能性を有し、かつ付与した機能性の耐久性に優れるレーヨン繊維及びその製造方法を提供する。
本発明のレーヨン繊維は、レーヨン繊維内に脂肪酸及び/又はその塩と茶由来成分とが含まれ、上記レーヨン繊維内のセルロースと脂肪酸及び/又はその塩とは非相溶状態であり、かつ上記脂肪酸及び/又はその塩は微分散されてセル状領域を形成し、上記茶由来成分は、上記脂肪酸及び/又はセル状領域中に含まれていることを特徴とする。
また、本発明のレーヨン繊維の製造方法は、脂肪酸及び/又はその塩と茶由来成分を含むレーヨン繊維の製造方法であって、上記脂肪酸及び/又はその塩を含む水溶液に、アルカリ金属の水酸化物、ノニオン系又はアニオン系界面活性剤及び上記茶由来成分をこの順番に添加・混合して乳化液を調整し、セルロースを含むビスコース原液に、上記乳化液を添加・混合してビスコース液を調整し、上記ビスコース液をノズルより押し出して紡糸し、凝固再生することを特徴とする。
本発明のレーヨン繊維は、脂肪酸及び/又はその塩(以下、単に脂肪酸ともいう)が繊維内のセルロースとは非相溶状態で(相分離して)含まれ、かつ上記脂肪酸及び/又はその塩は微分散されてセル状領域(以下、微小孔ともいう)を形成し、茶由来成分が上記脂肪酸及び/又はその塩が形成したセル状領域中に含まれていることにより、茶由来成分による抗酸化性などの機能を有するとともに、耐洗濯性などの耐久性にも優れる。即ち、本発明によれば、耐薬品性の劣る機能剤、特にアルカリ及び/又は酸条件下で失活する機能剤である茶由来成分を繊維内に含み、茶由来成分による抗酸化性などの機能が付与されたレーヨン繊維を提供できる。また、本発明のレーヨン繊維は、例えば、繊維物性の安定性が良好である。また、本発明のレーヨン繊維は、例えば、繊維内部に形成されたセル状領域により柔軟性にも優れている。
発明者らは、鋭意検討した結果、脂肪酸を所定の条件で混合した脂肪酸の水分散液中に、これまでビスコース生産工程で練り込むことが困難であった茶由来成分、例えばアルカリ及び/又は酸に対する耐薬品性に問題のある茶由来成分を添加・混合して乳化液とし、その後ビスコース原液に上記茶由来成分を含む乳化液を添加し、ホモミキサーで攪拌することで、茶由来成分と脂肪酸とを含むエマルジョンをビスコース液中に形成し、それを紡糸することにより、繊維内部における脂肪酸により形成された微小孔中に上記茶由来成分が保持された状態のレーヨン繊維が得られることを見出して本発明に至った。また、アルカリ及び/又は酸に対する耐薬品性に問題のある茶由来成分がその機能や特性を保持したまま存在していることを見出して本発明に至った。さらには、ビスコース液中において、上記茶由来成分と脂肪酸とを含むエマルジョンは、ノズル孔や各種フィルターに捕捉されることなく、また、ビスコース液(セルロースを含む紡糸液)が凝固再生浴と接触して凝固再生する際には、ビスコースと紡糸浴の界面より凝固再生が開始されるため、始めにセルロース被膜が形成され、そのセルロース被膜により、微分散している上記茶由来成分と脂肪酸とを含むエマルジョンは脱離することなく、エマルジョン状態のままセルロース繊維に取り込まれ、繊維化されることも見出して本発明に至った。
本発明において、脂肪酸に茶由来成分を添加・混合して乳化液にすることで、脂肪酸による保護効果によって、ビスコースを用いたレーヨン繊維の製造工程での茶由来成分の分解や機能の低下などが抑制され、茶由来成分による機能性の付与が効率よくできる。また、繊維内部における脂肪酸により形成された微小孔中に上記茶由来成分が存在するので、多孔性の繊維形状によってより多くの茶由来成分を繊維中に含ませることができる。
本発明において、脂肪酸は、特に限定されず、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。また上記脂肪酸は、茶由来成分が変質しない温度範囲において液状であると、乳化液が固形化することなく紡糸時に容易に添加することができるため好ましい。
上記脂肪酸の炭素数としては、特に限定されないが、常温での流動性及び粘度の点から、例えば、炭素数10〜22であることが好ましい。不飽和脂肪酸の二重結合または三重結合の数としては、例えば、1〜6であることが好ましい。
上記脂肪酸としては、具体的には、デセン酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸(GLA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。上記脂肪酸によれば、例えば、デセン酸は肌荒れ改善、パルミトオレイン酸は皮膚の乾燥、老化防止、オレイン酸は角質層保護、乾燥肌改善、リノール酸は新陳代謝促進、α−リノレン酸はアレルギー抑制、γ−リノレン酸(GLA)は皮膚の細胞機能正常化、エイコサペンタエン酸(EPA)又はドコサヘキサエン酸(DHA)はアレルギー抑制など、それぞれの脂肪酸自体が有する効果も併せて付与されることが期待できる。
本発明に用いられる茶由来成分は、ツバキ科ツバキ属のチャノキ(茶の木、学名Camellia sinensis)から抽出される成分のことを意味する。上記チャノキから抽出される成分としては、例えば、カテキン、カテキンガレート、エピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピカテキン、ガロカテキンガレート、ガロカテキン、テアフラビン、テオフラビン等のポリフェノールまたはポリフェノール系化合物、タンニン、テアニン、カフェイン及びそれらを含む茶の溶媒抽出物が挙げられる。中でも、抗酸化作用及び/又は抗菌作用を有するカテキン、カテキンガレート、エピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピカテキン、ガロカテキンガレート、ガロカテキンなどが好ましい。上記茶の溶媒抽出物としては、特に限定されないが、例えば、茶の葉、茎などを粉末にした後、水や含水アルコールなどの溶媒を用いて抽出する茶の溶媒抽出液やそれを濃縮若しくは乾燥したものが挙げられる。また、上記茶としては、特に限定されないが、緑茶、紅茶、鳥龍茶などが挙げられる。
本発明のレーヨン繊維は、上記脂肪酸をセルロースに対して0.2〜10質量%含むことが好ましい。より好ましくは0.4〜5質量%である。0.2質量%未満では通常のレーヨン繊維の繊維断面に近くなるとともに茶由来成分の存在が確認できない傾向があり、10質量%を超えると製造工程での溶出が多くなり、精練工程で薬液の発泡などが生じて工程内で扱いにくい傾向がある。なお、下記のビスコース原液への脂肪酸の添加量に比べ、得られるレーヨン繊維の脂肪酸の含有量は低下する傾向がある。これは、レーヨン繊維製造中に一部の脂肪酸がレーヨンの繊維外へ脱離するためである。
また、本発明のレーヨン繊維において、上記茶由来成分が脂肪酸に対して1〜100質量%含まれることが好ましい。より好ましくは、20〜60質量%である。1〜100質量%であれば、茶由来成分による抗酸化性などの機能が発揮しやすい。
本発明のレーヨン繊維を繊維断面から見ると、例えば図1に示しているように小さな空隙が見える。また、図示はないが、繊維側面を見ると孔は微細な非連続な状態で存在しており、粒子状のものが点在して見える。この結果から、上記脂肪酸はレーヨン繊維の断面方向及び長さ方向から見て、セルロースと相分離して微分散されてセル状領域を形成していることが理解できる。また、上記セル状領域(微小孔)中には、脂肪酸と茶由来成分とが含まれている。
本発明のレーヨン繊維における上記脂肪酸は有機溶剤などにより除去可能であり、脂肪酸を溶出した後のレーヨン繊維の繊維断面を見たとき、繊維内部において空間からなるセル状領域を多数形成している。このような繊維構造を採ることにより、上記セル状領域に形成される空間は乾燥した環境でも繊維の水素結合による空間の閉塞はない。
上記微小孔の平均断面積は、好ましくは0.01〜0.8μm2であり、より好ましくは、0.02〜0.5μm2である。上記平均断面積が、0.01μm2以上であれば、繊維断面観察において確認しやすく、また、0.8μm2以下であれば、大きすぎず、つぶれにくい。
繊維断面積に対する上記微小孔の合計断面積の割合は、2〜20%であることが好ましい。より好ましくは、4〜15%である。2%未満ではそのセル状領域は単なる鬆(す)である傾向があり、また、20%を超えると、繊維の強度が低下する傾向がある。
また、上記レーヨン繊維は、繊維1本あたりに5〜70個の微小孔を有することが好ましい。より好ましくは、10〜50個である。5個未満では単なる鬆(す)である傾向があり、70個を超えるとその領域が繋がってしまい、大きなセル状領域になる傾向や、空間が裂ける傾向がある。
本発明では、上記脂肪酸と上記茶由来成分とを含む乳化液を紡糸時にビスコース原液中に添加し、微小孔を形成させる。上記脂肪酸の添加量は、セルロースに対して1〜15質量%であることが好ましい。例えば、セルロースに対する脂肪酸の添加量が、1質量%以上3質量%未満までは脂肪酸と茶由来成分を含む混合液のままで、3質量%を超える場合はアルカリ金属の水酸化物と界面活性剤とを併用することにより、脂肪酸と茶由来成分とを含有する多数の微小孔が存在するレーヨン繊維を得ることができる。具体的には、以下に説明する。
脂肪酸をセルロースに対し1〜15質量%添加し、紡糸することにより微小孔を有する繊維が生産できる。しかし、単に脂肪酸をビスコース原液に添加する場合、セルロースに対する脂肪酸の添加率が3質量%程度になると、ビスコース(液)の粘度は非常に高く、実生産に不適な性状になる傾向があった。なお、それ以上の脂肪酸添加では、ビスコース(液)の粘度が紡糸不可能な粘度にまで上昇して実際の紡糸は不可能であった。これは、脂肪酸を単独でビスコースへ添加すると、脂肪酸が脂肪酸ナトリウムに変化し、ビスコース中のナトリウムあるいは一部セルロースと結合したナトリウムまで消費し、そのため粘度の上昇が起こるためであると推定される。
そこで、脂肪酸の中和価に相当するモル数と同モル数又は中和価に相当するモル数より多い量のアルカリ金属の水酸化物で事前に反応部位を閉鎖し、その後ノニオン系界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン−ヤシアミンエーテル)などの界面活性剤を添加し、攪拌した乳化液をビスコース原液に添加することで、粘度上昇の改善された紡糸可能なビスコース液とすることができる。アルカリ金属の水酸化物としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウムなどのアルカリ金属の水酸化物が挙げられ、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)、水酸化カリウム(苛性カリ)を用いることが好ましい。そして、上記乳化液に茶由来成分を混合することにより、茶由来成分を含有する乳化液を得てビスコース原液に添加して紡糸することで、茶由来成分を含むレーヨン繊維を得ることができる。さらに、茶由来成分の抗酸化性により、脂肪酸の酸化影響による繊維強度の低下を抑制することも可能である。
即ち、本発明において、上記レーヨン繊維は、例えば、脂肪酸及び/又はその塩を含む水溶液に、アルカリ金属の水酸化物、ノニオン系又はアニオン系界面活性剤及び茶由来成分をこの順番に添加・混合して乳化液を調整し、セルロースを含むビスコース原液に、上記乳化液を添加・混合してビスコース液を調整し、上記ビスコース液をノズルより押し出して紡糸し、凝固再生することにより製造することができる。
上記脂肪酸の添加量は、セルロースに対して1〜15質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがさらに好ましい。1質量%未満では上記セル状領域が形成されにくい傾向があり、それゆえ通常のレーヨン繊維の繊維断面に近くなり、15質量%を超えると脂肪酸が繊維外へ溶出されやすくなり、精練工程で発泡などが生じて工程内で扱いにくい。
上記茶由来成分の添加量は、セルロースに対して0.3〜10質量%であることが好ましく、0.5〜9質量%であることがさらに好ましい。上記茶由来成分の添加量が0.3質量%以上であれば茶由来成分の機能、例えば抗酸化性などが発揮されやすく、また、10質量%以下であれば、レーヨン繊維製造工程中における余剰な茶由来成分の失活も少ない。
上記アルカリ金属の水酸化物の添加量は、脂肪酸の中和価に相当するモル数と同モル数又は中和価に相当するモル数よりも15〜30mol%多い量であることが好ましい。上記範囲内であれば、乳化液が扱いやすい粘度となるうえ、ビスコース(液)の粘性が上昇して、一部がゲル化するということもなく、また、乳化液の粘性が出て、乳化液調整時に出来た気泡が消えずにトラブルが生じることもない。
上記界面活性剤の添加量は、脂肪酸に対して20〜40質量%であることが好ましい。20質量%未満の場合は、乳化液の粘度が上昇し、乳化液調整時に出来た気泡が抜けずに紡糸工程においてトラブルが生じやすい傾向があり、乳化液の乳化状態が不安定となる傾向もある。また、40質量%を超えると、精練工程で泡が多く発生し、精練異常の原因となりやすい傾向がある。
上記界面活性剤としては、特に限定されず、例えば、ノニオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤などのいずれの界面活性剤であってもよく、ビスコースとの相溶性の点からノニオン系界面活性剤が好ましい。上記ノニオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アルコール型、アルキルフェノール型、ポリオキシエチレンブロックポリマー型、ポリオキシプロピレンブロックポリマー型、アルキルアミン型などのアルカリ耐性の高い界面活性剤が挙げられる。また、アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。中でも、ノニオン系のポリオキシエチレンブロックポリマー型の界面活性剤はビスコース添加剤として好ましく、ポリオキシエチレンアミンエーテル型の界面活性剤はビスコースとの相溶性の点で好ましい。
なお、本発明では、上記以外に、本発明の目的と効果を阻害しない範囲で他の添加剤をビスコース原液中に添加してもよい。上記他の添加剤としては、例えば、顔料や抗菌剤などが挙げられる。
本発明では、脂肪酸とアルカリ金属の水酸化物の配合比及び界面活性剤の添加量を上記のようにすることによって、ビスコース液(ビスコースを含む紡糸液)の落下球での粘度が調整可能となり、脂肪酸の添加量を、セルロースに対して3〜15質量%と高くしても安定生産ができる。脂肪酸の添加量を高めることにより、より多くの微小孔を内包するレーヨン繊維が得られる。
本発明のレーヨン繊維は、例えば、セルロースを含むビスコース原液を調製し、上記ビスコース原液に、脂肪酸と、アルカリ金属の水酸化物と、ノニオン系又はアニオン系界面活性剤と、茶由来成分とを含む乳化液を添加し、粘度が30〜200secの範囲にあるビスコース液を調整し、ノズルの孔数を3000〜20000ホールとし、凝固再生浴の硫酸濃度を90〜130g/Lとし、硫酸亜鉛濃度を10〜17g/Lとして、上記ビスコース液をノズルより押し出して紡糸し、凝固再生することにより製造することができる。また、繊度については、ステープル繊維では、例えば汎用的な0.9〜3.3dtexとすることにより、上記レーヨン繊維を得ることができる。
セルロースを含むビスコース原液としては、特に限定されないが、例えば、セルロースを6〜11質量%含むことが好ましく、7〜10質量%含むことがさらに好ましい。また、セルロースは、特に限定されないが、例えば、平均重合度が250〜400程度のものが好ましい。
本発明では、上記のようにビスコース(液)の落下球での粘度を調整することによって、脂肪酸の添加率を高くしても安定してレーヨン繊維を生産することができる。ビスコース(液)の粘度は、30〜200secであることが好ましく、特に脂肪酸の添加率が3質量%以上の場合は、40〜90secであることがさらに好ましい。なお、粘度の測定方法は、落球式で測定した。落球式は、粘度管にビスコース(液)を入れ、1/8"鋼球(直径3.17mm、重さ0.15g)が200mm落下する時間(秒)で測定した。この値はハーゲンポアズイユ(Hagen−Poiseuille)の式に代入し、粘度に換算することもできる。このビスコース液を紡糸することで、上記脂肪酸が繊維内のセルロースとは非相溶状態で(相分離して)混合され、かつ上記脂肪酸は微分散されて微小孔を形成し、上記茶由来成分が上記微小孔中に含まれているレーヨン繊維を生産できる。
上記ビスコース中における脂肪酸を含むエマルジョン粒子の平均粒子径は、0.3〜10μmであることが好ましい。より好ましい平均粒子径は0.5〜8μmであり、さらにより好ましくは3〜6μmである。平均粒子径が上記範囲内にあると、所定のセル状領域(微小孔)を多数含むレーヨン繊維が得られ、好ましい。上記平均粒子径は、オイル成分(脂肪酸成分)と水の比率、及び攪拌強度をコントロールして調整することができる。平均粒子径を上記範囲内とするには、乳化液の作製において、乳化液中の脂肪酸の濃度を3〜15質量%、より好ましくは9〜14質量%となるように調整し、アルカリ金属の水酸化物と、界面活性剤と、茶由来成分とを上記の範囲となるように調整し、シェアが強くかからない攪拌条件で乳化することが好ましい。また、攪拌は、サタケ式攪拌機(ペラ式攪拌機)や投げ込み式攪拌機で行うことが好ましい。なお、ホモジナイザーや超高圧乳化分散機のようなシェアがかかる乳化では平均粒子径が小さくなり過ぎる傾向がある。なお、平均粒子径は、以下のようにして測定する。
[平均粒子径]
乳化液を添加したビスコースをガラス板上に薄く塗布して光学顕微鏡(320倍、(株)ニコン、“エクリプスE600”)で拡大観察した画像において、任意の100μm角の範囲内にある粒子のうち、粒径の大きい10点を抽出して粒径を測定し、平均した値を平均粒子径とした。
上記ビスコース液の粘度は、30〜200secの範囲にあることが好ましい。30sec未満であると、ビスコース(液)の粘性が落ち、紡糸時にトラブルが多く、安定生産が困難になる傾向がある。また、粘度が200secを超えると、ビスコース液の流動性が悪く、紡糸が困難となる傾向がある。
上記ノズルの孔数が3000ホール未満であると、生産性が悪くなる傾向があり、ノズルの孔数が20000ホールを超えると、ビスコースと酸との接触が、ノズルの内と外で変わるため、均一な繊維が得られにくい傾向がある。
上記硫酸濃度が90g/L未満であると、再生が遅くなりすぎて生産性が悪くなる傾向があり、硫酸濃度が130g/Lを超えると、再生が速くなりすぎて糸切れなど、紡糸性が悪くなる傾向がある。
上記硫酸亜鉛濃度が10g/L未満であると、ビスコースの表面での再生が速くなるために、セル状領域と大きい空隙ができる傾向がある。硫酸亜鉛濃度が17g/Lを超えると、ビスコースの凝固が進み再生が遅くなるため、セル状領域が大きくなって繊維の膨らみが維持できない傾向がある。
本発明では、上記のように脂肪酸と茶由来成分とを混合した乳化液を紡糸時に添加することにより、微小孔を形成することができ、茶由来成分の機能、例えば抗酸化性、抗菌性などの機能を付与したレーヨン繊維を得ることができる。このように脂肪酸と茶由来成分とを含む乳化液を用いると、茶由来成分が脂肪酸に保護された状態となり、製造工程においてアルカリ及び/又は酸との接触による茶由来成分の失活(変性)を抑制することができ、機能性を保持したまま繊維化することができるものと推定される。
本発明において、上記茶由来成分は、脂肪酸が形成した微小孔中に存在する。これは、茶由来成分、例えば水溶性のカテキンを含む本発明のレーヨン繊維が有する耐洗濯性からも明らかである。このような繊維内部での脂肪酸が形成した微小孔中に茶由来成分が存在することについては、詳細は不明であるが、以下のように製造することによるものであると推定される。
1.第一段階で脂肪酸をアルカリ金属の水酸化物で処理することで、脂肪酸の一部がアルカリ金属に置換され、親水性部分と疎水性部分が共存した状態になる。
2.第二段階でノニオン系界面活性剤を使用することで均一な水分散系を形成させる。
3.第三段階で疏水性部分及び親水性部分を含む茶由来成分を混合し、ビスコース原液に添加して乳化液を調整する。なお、上記第三段階までの調整については、攪拌はペラ式の攪拌機のような攪拌強度の比較的弱い攪拌で十分可能である。
4.上記の乳化液をビスコース原液に定量ポンプで添加し、ホモミキサーで攪拌・分散することで、茶由来成分を含む脂肪酸は、ビスコース液中で微小粒子のエマルジョンとして分散する。
5.この状態で茶由来成分の一部はビスコース液中のアルカリ金属の水酸化物に接触することで機能性が低下するが、他の大部分は脂肪酸を含むエマルジョン(粒子)の内部に存在するため、アルカリ環境から守られることとなる。上記のように脂肪酸がアルカリ金属の水酸化物で鹸化されて親水性部分と疎水性部分が共存した状態となるため、エマルジョンにおいて脂肪酸の親水性部分と疎水性部分が共存した界面が存在し、それがビスコース液中のアルカリに接触すると疑似カプセルが形成されることで、脂肪酸内に取り込まれた茶由来成分はアルカリから保護されると推定される。また、この状態では、ビスコース中に微小なエマルジョンの状態で存在し、フィルターなどに捕捉されることもなく、また濾過障害を起こすこともない。
6.その後、ノズルから定量押し出され、硫酸酸性下でセルロースが凝固再生されるが、ビスコース液(ビスコースを含む紡糸液)が凝固再生浴と接触して凝固再生する際には、ビスコースと紡糸浴の界面より凝固再生が開始されるため、始めにセルロース被膜が形成され、そのセルロース被膜により、微分散している上記茶由来成分と脂肪酸とを含むエマルジョンは脱離することなく、ビスコース液中で形成したエマルジョンの状態のまま凝固・再生され、即ち上記茶由来成分は脂肪酸が形成した微小孔中に存在する状態で繊維化され、硫酸による酸性条件下でも失活したり、機能が大幅に低下したりしない。
本発明のレーヨン繊維は、茶由来成分を含むことにより、抗酸化性などの機能を有する。また、本発明のレーヨン繊維は、茶由来成分が、脂肪酸が形成した微小孔中に含まれていることにより、優れた耐洗濯性を有する。
以下実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
本発明における各種試験の測定・評価法は次のとおりである。
(1)孔数、単孔平均面積、全孔面積、面積比率
任意の繊維断面を10個サンプリングし、その断面を5500倍に拡大して画像処理により孔を抽出し、孔数及び各孔それぞれの断面積を測定することにより得た。
(2)繊維中の油脂分
試料綿をメタノールに含浸させてプレス式抽出機にて油脂分を抽出し、その抽出分を測定した。
(3)バニリンによる呈色反応
硫酸とバニリン試薬を作製し、原綿に塗布し、15分経過した後、茶褐色に変色したものをA、若干色が変色した状態であればB、まったく色が変わらないものをCとして評価した。
(4)洗濯処理
JIS L0217 103法に準じ、吊り干し10回、負荷布なし、中性洗剤使用の条件下で洗濯処理した。なお、洗濯処理は(財)日本化学繊維検査協会で実施した。
(5)抗酸化性
<ヨウ素還元法>
20℃、65%RH(相対湿度)で24時間放置した試料綿1.5gに、N/50(0.01M)−ヨウ素(I2)溶液5mL及びデンプン指示薬を注加後、N/50−チオ硫酸ナトリウムで滴定する。その滴定値から綿1gで還元されるヨウ素量の換算を行い、ヨウ素還元量(I2(mg)/綿(g))として、抗酸化性の評価指標とした。具体的には、下記式によりヨウ素還元量を算出する。なお、空試験は、試料綿なしによる測定をいう。
ヨウ素還元量(I2(mg)/綿(g))=((空試験滴定量−測定滴定量)/(N/50−ヨウ素溶液ファクター))×(N/50−ヨウ素溶液濃度)/1.5
上記式において、N/50−ヨウ素溶液ファクター=空試験滴定量(mL)/5(mL)であり、N/50−ヨウ素溶液濃度(g/L)=0.01×253.81である。
<DPPH法>
30μM/Lの1,1−diphenyl−2−picrylhydrazyl(DPPH)のエタノール溶液20mlに、試料綿0.5gを投入し、DPPH呈色状態(紫色)を8時間後に確認した。なお、DPPHの呈色が完全に消失したものをA、ほぼ消失したものをB、呈色が薄くなったものをC、変化が認められないものをDとして抗酸化性の指標とした。
(6)抗菌性
試料綿をJIS L0217 103法に準じ、中性洗剤(但しJAFET標準洗剤を使用)使用の条件下で10回洗濯処理を行い、その後JIS L1902 菌液吸収法(供試菌:黄色ぶどう球菌・Staphylococcus aureus ATCC 6538P)に準じて抗菌性の測定を行った。なお、抗菌性は、静菌活性値で示した。
(7)促進試験
試料綿を促進試験1では70℃(定温乾燥機、アズワン(株)、“DO300−FA”)、促進試験2では70℃、70%RH(恒温恒湿器、ヤマト科学(株)、“IG420”)の各環境下で30日間放置した後に繊維強度を測定、処理前後の比較により繊維の経時促進状態の評価を行った。繊維強度測定はJIS L 1015に準じて実施した。
(8)剛軟度
JIS L 1096カンチレバー法に準じて剛軟度の評価を実施した。具体的には、まず、測定試料として、セミランダムカードで作製した試料綿のウェブから水流交絡法により150g/m2の不織布を作製した。次に、上記の不織布から切り出した幅2cm、長さ15cmの不織布試料片を台上で水平に送り出して45°の斜面に達するまでの送り出し長さを測定した。試料片は縦方向(MD)、横方向(CD)で各5枚ずつ採取し、それぞれの測定の平均値をミリ単位で表した。なお、測定数値が大きいほど硬く、小さいほど柔らかいことを示す。
(実施例1、繊維A)
[ビスコース液(ビスコースを含む紡糸液)条件]
オレイン酸9質量%、カテキン9質量%、水酸化ナトリウム1.47質量%、ノニオン系界面活性剤(ベロール社“ビスコ32)3.5質量%を含む混合液をサタケ式攪拌機(阪和化工機(株)製“KP4001B−3”、回転速度300rpm)で簡易に攪拌して乳化液を調製した。その乳化液を、オレイン酸添加量がセルロースに対して1質量%、カテキン添加量がセルロースに対して1質量%となるように、原料ビスコースに添加し、混合機にて攪拌混合を行い、ビスコース液とした。原料ビスコースはセルロース8.5質量%、水酸化ナトリウム5.7質量%、二硫化炭素2.7質量%を含むものを用いた。
[紡糸条件]
上記において得られたビスコース液を、2浴緊張紡糸法により、紡糸速度60m/分、延伸率50%で紡糸し、繊度1.4dtexの繊維を得た。第1浴(凝固再生浴)として、硫酸を100g/L、硫酸亜鉛を15g/L、硫酸ナトリウムを350g/L含むミューラー浴(50℃)を用いた。また、ビスコースを吐出する紡糸口金には、孔径0.06mmのホールを4000個有するノズルを用いた。紡糸中、単糸切れなどの不都合は生じず、混合ビスコースの紡糸性は良好であった。
[精練条件]
このようにして得られたビスコースレーヨンの糸条を、51mmにカットし、精練処理を行った。精練工程は、熱水処理後に水洗を行い、その後圧縮ローラーで余分な水分を繊維から落とした後、乾燥処理(60℃、7時間)を施すことにより行い、繊維Aを得た。なお、実施例1〜4及び比較例3のカテキンは、(株)伊藤園製「テアフラン30A」を使用した。
(実施例2、繊維B)
添加液として、オレイン酸9質量%、カテキン4.5質量%、水酸化ナトリウム1.43質量%、ノニオン系界面活性剤2.6質量%を含む乳化液を用い、オレイン酸含有量がセルロースに対して1質量%、カテキン含有量がセルロースに対して0.5質量%となるように、原料ビスコースに添加したこと以外は繊維Aと同様にして繊維Bを得た。
(実施例3、繊維C)
オレイン酸含有量がセルロースに対して3質量%、カテキン含有量がセルロースに対して3質量%となるように添加したこと、精練工程として熱水処理後に、過酸化水素晒による漂白処理を実施して水洗した以外は繊維Aと同様にして繊維Cを得た。
(実施例4、繊維D)
添加液として、リノール酸9質量%、カテキン4.5質量%、水酸化ナトリウム1.48質量%、ノニオン系界面活性剤2.6質量%とを含む乳化液を使用し、リノール酸添加量がセルロースに対して2質量%、カテキン添加量がセルロースに対して1質量%となるように添加したこと以外は繊維Aと同様にして繊維Dを得た。
(比較例1、繊維E)
添加液として、オレイン酸9質量%、水酸化ナトリウム1.47質量%、ノニオン系界面活性剤2.7質量%を含む水溶液を使用し、オレイン酸含有量がセルロースに対して3質量%となるように添加したこと以外は繊維Aと同様にして繊維Eを得た。
(比較例2、繊維F)
添加液として、リノール酸9質量%、水酸化ナトリウム1.47質量%、ノニオン系界面活性剤2.7質量%を含む水溶液を使用し、リノール酸含有量がセルロースに対して10質量%となるように添加したこと、精練工程を熱水処理、水硫化処理、漂白、酸洗いの順で実施したこと以外は繊維Aと同様にして繊維Fを得た。漂白は、次亜塩素酸ソーダ水溶液(0.03質量%)を用いて実施した。
(比較例3、繊維G)
添加液として、カテキン10質量%を含む水溶液を使用し、カテキン含有量がセルロースに対して3質量%となるように添加したこと、精練工程を熱水処理、水硫化処理、漂白、酸洗いの順で実施したこと以外は繊維Aと同様にして繊維Gを得た。漂白は次亜塩素酸ソーダ水溶液(0.03質量%)を用いて実施した。
(比較例4、繊維H)
添加液を添加せず、原料ビスコースを用いて繊維Fと同様の処理を行い、繊維Hを得た。
実施例1〜4及び比較例1〜4のレーヨン繊維の繊維形状及び機能を上記のとおり測定・評価し、その結果を下記表1に示した。また、本発明の実施例3の繊維Cの断面を顕微鏡(3000倍、(株)キーエンス、“VHX−100”)で観察した写真を図1に示した。また、実施例1〜4及び比較例1〜4のレーヨン繊維における、脂肪酸及びその添加量、茶由来成分及びその添加量、水酸化ナトリウム添加量、界面活性剤の添加量、ビスコース中におけるエマルジョン(粒子)の平均粒子径(μm)、ビスコース粘度、精練漂白処理の条件をも下記表1に示した。なお、上記において、いずれの添加量もセルロースに対する質量%で示した。
Figure 2010121229
表1により、以下の結果が確認された。
1.繊維A〜Fの繊維断面の結果から、脂肪酸又は脂肪酸と茶由来成分との混合物をビスコース原液中に添加することによって、微小孔を内在する繊維が生産可能であることが確認できた。
2.バニリンによる呈色反応の結果から、繊維A〜Dは高い含有量のカテキンを含んでいることが分かった。また、洗濯後のバニリンによる呈色反応の結果から、繊維A〜Dにおいて、カテキンは耐洗濯性を有することが分かった。一方、脂肪酸を含まない繊維Gは、ある程度のカテキンを含んでいるが、耐洗濯性が低いことが分かった。これは、本発明のレーヨン繊維において、茶由来成分(カテキン)は脂肪酸が形成した微小孔中に含まれているためであると推定される。
3.ヨウ素還元法による測定結果及びDPPH法による測定結果から、繊維A〜Dは、優れた抗酸化性を有することが分かった。また、洗濯後のDPPH法による測定結果から、繊維A〜Dが有する抗酸化性が洗濯に対して耐久性を有することが分かった。一方、カテキンのみを添加した繊維Gは、ある程度の抗酸化性を有するが、洗濯に対する耐久性がないことが分かった。これは、上記と同様、本発明のレーヨン繊維において、茶由来成分(カテキン)は脂肪酸が形成した微小孔中に含まれているためであると推定される。
4.JIS L1902 菌液吸収法で測定した静菌活性値の値から、繊維A、Bが抗菌性を示していることが確認できた。一方、カテキンのみを添加した繊維Gではある程度の抗菌性を示すものの、静菌活性値の値が繊維A、Bよりも小さいことから、単にビスコース液にカテキンを添加するだけでは洗濯をはじめとする水洗処理に対する耐久性がないことが分かった。これらの結果から、本発明のレーヨン繊維では、茶由来成分(カテキン)は脂肪酸が形成した微小孔中に含まれることで上記水洗処理(例えば洗濯)に対する耐久性が高められていると推定できる。
5.繊維A〜Dにおいて、繊維強度は、促進試験などにおいてもあまり低下せず、繊維物性が安定していることが分かった。また、繊維E及びFと繊維A〜Dの比較から、脂肪酸とカテキンの併用により、脂肪酸のみを添加した場合に生じる促進試験における繊維強度の低下が抑制されることが分かった。
6.繊維A〜Dの剛軟度は、カテキンのみを含む繊維G、並びに脂肪酸及びカテキンの何も添加していない繊維H(通常セルロース繊維)の剛軟度と比較して低く、通常のセルロース繊維より柔らかいことが分かった。なお、脂肪酸を含む繊維E及びFの剛軟度も繊維Hの剛軟度と比較して低く、通常のセルロース繊維より柔らかいことが分かった。
図1は本発明の実施例における繊維Cの断面を顕微鏡(3000倍、(株)キーエンス、“VHX−100”)で観察した写真である。

Claims (10)

  1. レーヨン繊維内に脂肪酸及び/又はその塩と茶由来成分とが含まれ、
    前記レーヨン繊維内のセルロースと脂肪酸及び/又はその塩とは非相溶状態であり、かつ前記脂肪酸及び/又はその塩は微分散されてセル状領域を形成し、
    前記茶由来成分は、前記脂肪酸及び/又はその塩が微分散されて形成したセル状領域中に含まれていることを特徴とするレーヨン繊維。
  2. 前記茶由来成分は、カテキン、カテキンガレート、エピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピカテキン、ガロカテキンガレート、ガロカテキン、テアフラビン、テオフラビン、ポリフェノール、タンニン、テアニン、カフェイン及びそれらを含む茶の溶媒抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1に記載のレーヨン繊維。
  3. 前記脂肪酸及び/又はその塩は、炭素数10〜22の脂肪酸及び/又はその塩である請求項1又は2に記載のレーヨン繊維。
  4. 前記レーヨン繊維は、脂肪酸及び/又はその塩をセルロースに対して0.2〜10質量%含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーヨン繊維。
  5. 前記セル状領域の平均断面積は0.01〜0.8μm2であり、繊維断面積に対するセル状領域の合計断面積の割合は2〜20%である請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーヨン繊維。
  6. 脂肪酸及び/又はその塩と茶由来成分を含むレーヨン繊維の製造方法であって、
    前記脂肪酸及び/又はその塩を含む水溶液に、アルカリ金属の水酸化物、ノニオン系又はアニオン系界面活性剤及び前記茶由来成分をこの順番に添加・混合して乳化液を調整し、
    セルロースを含むビスコース原液に、前記乳化液を添加・混合してビスコース液を調整し、
    前記ビスコース液をノズルより押し出して紡糸し、凝固再生することを特徴とするレーヨン繊維の製造方法。
  7. 前記セルロースに対して、前記脂肪酸及び/又はその塩の添加量が1〜15質量%である請求項6に記載のレーヨン繊維の製造方法。
  8. 前記セルロースに対して、前記茶由来成分の添加量が0.3〜10質量%である請求項6又は7に記載のレーヨン繊維の製造方法。
  9. 前記アルカリ金属の水酸化物は、脂肪酸及び/又はその塩の中和価に相当するモル数と同モル数又は中和価に相当するモル数よりも15〜30mol%多い量で添加される請求項6〜8のいずれか1項に記載のレーヨン繊維の製造方法。
  10. 前記ノニオン系界面活性剤は、ポリオキシエチレン系界面活性剤であり、脂肪酸及び/又はその塩に対して20〜40質量%添加される請求項6〜9のいずれか1項に記載のレーヨン繊維の製造方法。
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