JP2010120864A - 齲蝕検知液 - Google Patents

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Abstract

【課題】 齲蝕感染部を染色し、この部分を削除して窩洞をレジン修復材料で修復した際に、該削除した部分の周辺に染色部が残存していたとしても、修復歯牙の審美性が損なわれることがない齲蝕検知液を開発すること。
【解決手段】 歯牙の齲蝕感染部を識別するために該部位の染色に使用する齲蝕検知液であって、水及び/又は水溶性溶媒、並びに最大吸収波長が350〜800nmであり、増感作用を発揮することにより退色する性状である増感色素、好適にはクマリン系色素を含んでなることを特徴とする齲蝕検知液。
【選択図】 なし

Description

本発明は、歯科診療において、齲蝕した歯牙を治療する際に使用する齲蝕検知液に関する。詳しくは、齲蝕原因菌に感染した歯質を削除するに際して、齲蝕部位を染色でき、その染色の観察により、齲蝕された範囲と他の健全部位とを正確に見分けることができ、感染歯質の取り残し防止や、齲蝕治療のより確実な実施に有益な齲蝕検知液に関する。
臨床現場における歯牙の齲蝕治療においては、齲蝕感染部を削除後、窩洞を半透明性のレジン修復材料により修復する治療が行われている。その際、該レジン修復材料は、歯質との接着力が弱いため、光重合性のボンディング材を塗布・光硬化してから、その硬化面に充填させて使用するのが一般的である。近年の修復材料の進歩により、エッチングやプライミング等の複雑な前処理を施さなくとも歯質に対して強固に接着する光重合性ボンディング材が開発され臨床で広く使用されるに至っている。さらに、最近、上記光重合性ボンディング材の使用を必要としない光重合性の歯質接着性レジン修復材料の提案もなされてきている。
ところで、こうした修復治療の技法の変化により、修復すべき歯牙の範囲を、齲蝕された範囲に絞り込むことが可能になり、歯質削除量は大幅に低減されている。ここで、削除すべき齲蝕とは、齲蝕原因菌に感染した歯質であり、これを正確に見分けることが重要となる。
齲蝕象牙質に関する系統的な研究によって、軟化象牙質(齲蝕象牙質は細菌感染により軟化するため軟化象牙質ともいう)は外層の第一脱灰層(第一層)と内層の第二脱灰層(第二層)との二つの層から構成され、細菌感染が見られるのは著しく軟化した第一層のみであることが明らかにされた。内層の第二層には細菌感染はみられず、処置後の再石灰化が期待されるため、齲蝕治療に際しては、第一層のみを削除し、第二層は積極的に残すべきであると言われている(非特許文献1〜6)。
上記した細菌感染した第一層のみを削除するために、軟化してより染色され易い第一層のみを選択的に染色し、その色相差で削除すべき歯質を視覚的に確認できる齲蝕検知液が開発されてきた。例えば特許文献1には、塩基性フクシンを含有したものが開示され、特許文献2には各種の食用色素の所定量を炭素数2〜10個のモノ、ジまたはトリヒドロキシ化合物、水またはこれらの化合物に溶解させることで調整したものが開示されており、臨床に供されている。なお、軟化していない健全象牙質は、通常、色素ではほとんど染色されない。
しかしながら、これらの齲蝕検知液による染色では、上記第一層だけでなく第二層もかなり染色され、臨床的には染色部位をすべて削除すると、脱灰層はすべて削除されてしまい、第二層を残すことができないということが多くの文献で指摘されている(非特許文献7〜9)。したがって、細菌感染の見られない第二層を残すためには淡い色に染まった部分は削除の対象としないように言われている。第二層への染色を極力減らすため、齲蝕検知液の液粘度を上げることによって、第一層のみを高い選択性で染色させることも提案されている(特許文献3)。
「口腔病学会雑誌」1970年,37巻,p.279−286 「口腔病学会雑誌」1973年,40巻,p.65−74 「口腔病学会雑誌」1973年,40巻,p.306−315 「口腔病学会雑誌」1974年,41巻,p.202−211 「口腔病学会雑誌」1979年,46巻,p.269−292 「口腔病学会雑誌」1981年,48巻,p.104−151 「口腔病学会雑誌」1981年,48巻,p.362−385 「口腔病学会雑誌」1987年,54巻,p.241−270 「歯科医展望」1998年,92巻,p.996−1000 特開昭51−38428号公報 特開昭55−76821号公報 特開2005−263667号公報
上記したように齲蝕治療において、細菌感染した第一層のみを削除し、細菌感染していない第二層はできるだけ残すことが望ましく、第一層のみを選択的に染色する齲蝕検知液が種々提案されている。しかし、いずれの検知液もその効果は十分なものではなく、細菌感染した第一層を削除した周辺には、淡く染色された第二層が残ることが避けられない。また、場合によっては、細菌感染した第一層において、削除し残した部位が残存することもあり得る。しかして、このような削除周辺染色面の外観は薄ピンク等の淡い色相であることが多いが、それでも該染色部を残したまま、窩洞を半透明性のレジン修復材料により修復すると、該染色部がレジン修復材料を透過することによって、審美不良の深刻な問題を引き起こしていた。
また、前記従来技術として提案されている齲蝕検知液による染色は十分な視認性で齲蝕感染部(第一層)を染色できないものも多く、削除すべき部分を肉眼で判断するには曖昧さが残ったままであり、最終的には術者個人の主観的な判断に任されるという問題も生じていた。そのため、より客観的な判断が可能な齲蝕検知液が求められていた。
以上の背景にあって、本発明の目的は、齲蝕感染部を染色し、この部分を削除して窩洞をレジン修復材料で修復した際に、該削除した部分の周辺に染色部が残存していたとしても、修復歯牙の審美性が損なわれることがない齲蝕検知液を開発することにある。さらに、本発明の他の目的は、上記課題を解決した齲蝕検知液において、染色した齲蝕感染部の視認性がより明瞭なものを開発することにある。
本発明者は、上記技術課題を解決すべく鋭意研究を行ってきた。その結果、最大吸収波長が350〜800nmであり、増感作用を発揮することにより分解して退色する性状である増感色素を含む齲蝕検知液を用いれば、染色した齲蝕感染部を削除した際に、染色部が残存していたとしても、この染色面上で光硬化性ボンディング材または光硬化性レジン修復材料を硬化させれば、その光重合に応じて、該増感色素を退色させることができ、修復歯牙の審美性は損なわれることがないことを見出した。そして、さらに、上記性状を備えた増感色素の中でもクマリン系色素を用いた場合には、染色した齲蝕感染部の視認性が特に優れるものになることも見出した。
すなわち、本発明は、歯牙の齲蝕感染部を識別するために該部位の染色に使用する齲蝕検知液であって、水及び/又は水溶性溶媒、並びに最大吸収波長が350〜800nmであり、増感作用を発揮することにより分解して退色する性状である増感色素を含んでなることを特徴とする齲蝕検知液である。
また、他の発明として、上記齲蝕検知液において、増感色素としてクマリン系色素を用いたものも提供する。
本発明の齲蝕検知液によれば、齲蝕感染部を染色し、この部分を削除して窩洞をレジン修復材料で修復した際に、削除部の周辺に染色部が残存していたとしても、該齲蝕検知液において染色に使用されている色素は増感色素であり、該増感色素は光硬化性ボンディング材や光硬化性レジン修復材料の光重合に応じて退色するため、修復歯牙の審美性が損なわれることがない。そして、さらに、増感色素として、クマリン系色素を用いた場合には、齲蝕感染部の染色の視認性が極めて良好であり、削除すべき部分の認定が特に容易である。
本発明の齲蝕検知液に用いられる増感色素は、最大吸収波長が350〜800nmのものである。吸収波長がこの範囲、好適には380〜700nmにあるため、本発明の齲蝕検知液は、肉眼で識別が容易になり好ましい。
また、本発明において増感色素とは、光硬化性重合性組成物に含有させることにより、光重合開始剤、重合性単量体、または第3物質との間でエネルギー移動あるいは電子移動をおこして、重合に有効な活性種を生成させる増感作用を発揮する化合物を言う。しかして、本発明で使用する上記増感色素は、該増感作用を発揮することにより分解して退色するものである。すなわち、本発明の齲蝕検知液は、このような性状の増感色素を含有しているため、これを適用した歯牙の染色面上で後に光硬化性重合性組成物を硬化させると、その融和部分、或いは接触界面において、光重合に応じて該増感色素の退色が生じ、歯牙の審美性が損なわれる問題が良好に改善される。増感色素が増感作用を発揮して退色するものであるかどうかは、齲蝕検知液を適用した歯牙の染色面上に、使用する光硬化性重合性組成物を積層し、その上方から増感色素の最大吸収波長の光照射を行って光硬化性重合性組成物を硬化させた際に、該光硬化性重合性組成物の硬化体を色差計を使用して白背景で測定したaの値が光硬化性重合性組成物の硬化前に測定した同値よりも小さくなっているかどうかで確認できる。一般には、以下組成
・重合性単量体:トリエチレングリコールジメタクリレート100質量部
・光重合開始剤:染色面上で光硬化させる光硬化性重合性組成物に含有されている光重合開始剤1.0質量部
・増感色素:0.0005質量部
の試験用組成物を1mmの厚みに透明フィルム上に塗布し、その上方から増感色素の最大吸収波長の光を800mW/cmの強度で5mmの間隔をあけて30秒光照射して硬化させた際に、硬化体のaの値が硬化前に測定した同値の1/3以下になっているもの、特に好適には上記硬化体の色相が目視でほぼ無色化するものが良好である。
本発明において、上記増感作用を発揮して退色する要件を通常満足し、好適に使用できる増感色素を具体的に示すと、クマリン系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、チアジン系色素、アジン系色素、アクリジン系色素、キサンテン系色素、スクアリウム系色素、およびピリリニウム塩系色素等が挙げられる。特に好適な増感色素としては、視認性に優れることから蛍光性を有するものであり、この観点から、クマリン系色素が最良である。クマリン系色素は、ラジカル重合における増感作用も高く、すばやく退色可能である点からも優れている。
代表的なクマリン系色素を一般式で例示すれば、下記式(1)
Figure 2010120864
{式中、R、RおよびRはそれぞれ同種あるいは異種の水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、置換もしくは非置換のアルキルアミノ基、または置換もしくは非置換のアルケニルアミノ基であり、ここでR、RおよびRの内何れか2個は互いに連結して縮合環を形成していてもよく、Xは水素原子、シアノ基であり、Yは炭素数5〜9の複素環基または下記基(2)
Figure 2010120864
(但し、Zは炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、アルケニル基または3’−クマリノ基である)である}
で表される化合物が挙げられる。より好適には、上記式中において、R、RおよびRがそれぞれ同種あるいは異種の水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基、または炭素数2〜8のアルケニルアミノ基であり、ここでR、RおよびRの内何れか2個は互いに連結して縮合環を形成していてもよく、Xは水素原子、シアノ基であり、Yは、ベンゾチアゾイル基、ベンズイミダゾイル基、炭素数1〜5のアルキルエステル基、炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基のものである。
好適なクマリン系色素を具体的に例示すれば、
4−トリフロロメチル−7−アミノクマリン(最大吸収波長382nm)、4−トリフロロエチル−7−ジメチルアミノクマリン(最大吸収波長397nm)、3−フェニル−7−アミノクマリン(最大吸収波長380nm)、3−(4’−アセチルアミノフェニル)−7−アセチルアミノクマリン(最大吸収波長364nm)、3−フェニル−7−(2H−ナフト[1,2d]トリアゾール−2’−イル)クマリン(最大吸収波長375nm)、3−エトキシカルボニル−5,6−ベンゾクマリン(最大吸収波長375nm)、4−トリフロロメチルピペリジノ[3,2−g]クマリン(最大吸収波長406nm)、2,3,6,7−テトラヒドロ−11−オキソ−1H,5H,11H,−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−10エチルエステル(最大吸収波長436nm)、10−アセチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン(最大吸収波長452nm)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノ)クマリン(最大吸収波長461nm)、3−(2’−ベンズイミダゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン(最大吸収波長456nm)、3−(2’−ベンズチアゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン(最大吸収波長458nm)、3−(2’−ベンゾチアゾイル)−4−シアノ−7−ジエチルアミノクマリン(最大吸収波長464nm)、2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−10−(ベンゾチアゾイル)−11−オキソ−1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン(最大吸収波長480nm)等を挙げることができる。
このうち、歯科用可視光照射器の照射波長域の光照射において最大吸収波長を有し、少量添加で強い蛍光する点から、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノ)クマリン、2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−10−(ベンゾチアゾイル)−11−オキソ1H,5H,11H,−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン、3−(2’−ベンズイミダゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2’−ベンズオキサゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(5’−フェニルチアジアゾイル−2’)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2’−ベンズチアゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(4−シアノ−7−ジエチルアミノ)クマリンが好ましく、とりわけ470nm付近の吸光度の高い2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−10−(ベンゾチアゾイル)−11−オキソ1H,5H,11H,−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジンが最適である。
本発明で好適に使用される他の増感色素の具体例を示せば、シアニン系色素として、3,3’−ジエチル−2,2’−チアシアニンアイオダイド(最大吸収波長375nm)、1,3,3,1’,3’,3’−ヘキサメチル−2,2’−インドシアニンパークロレート(最大吸収波長433nm)、1,3’−ジエチル−2,2’−キノ−チアシアニンアイオダイド(最大吸収波長485nm)、1,3’−ジエチル−2,2’−キノ−セレナシアニンアイオダイド(最大吸収波長491nm)、1,1’−ジエチル−2,2’−キノシアニンアイオダイド(最大吸収波長523nm)、1,1’−ジエチル−2,4’−キノシアニンアイオダイド(最大吸収波長559nm)、1,1’−ジエチル−4,4’−キノシアニンアイオダイド(最大吸収波長590nm)等のモノメチンシアニン色素;3,3’−ジエチル−2,2’−チアゾリノカルボシアニンアイオダイド(最大吸収波長445nm)、3,3’−ジエチル−2,2’−オキサカルボシアニンアイオダイド(最大吸収波長483nm)、3,3’,9−トリエチル−5,5’−ジフェニル−2,2’−オキサカルボシアニンアイオダイド(最大吸収波長502nm)、1,3,3,1’,3’,3’−ヘキサメチル−2,2’−チアカルボシアニンアイオダイド(最大吸収波長545nm)、3,3’−ジエチル−2,2’−チアカルボシアニンアイオダイド(最大吸収波長557nm)、3,3’9−トリエチル−2,2’−(6,7,6’,7’−ジベンゾ)チアカルボシアニンアイオダイド(最大吸収波長578nm)、1,1’−ジエチル−2,4’−キノカルボシアニンアイオダイド(最大吸収波長608nm)等のトリメチンシアニン色素;3,3’−ジエチル−2,2’−オキサジカルボシアニンアイオダイド(最大吸収波長580nm)、3,3’−ジエチル−9,11−ネオペンチレン−2,2’−チアジカルボシアニンアイオダイド(最大吸収波長653nm)、3,3’−ジエチル−2,2’−セレナジカルボシアニンアイオダイド(最大吸収波長662nm)等のペンタメチンシアニン色素等が挙げられる。
メロシアニン系色素の好適な具体例を示せば、3−エチル−5−[2−(3−メチル−2−チアゾリジニリデン)エチリデン]−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン(最大吸収波長453nm)、1,3−ジエチル−5−[2−(3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン)エチリデン]−2−チオヒダントイン(最大吸収波長519nm)、3−カルボキシメチル−5−[2−(3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン)エチリデン]ローダニン(最大吸収波長520nm)、3−エチル−5−[2−(3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン)エチリデン]ローダニン、3−エチル−5−[2−(3−エチル−4−メチル−2−チアゾリニリデン)エチリデンローダニン(最大吸収波長540nm)等を挙げることができる。
また、チアジン系色素を具体的に例示すれば、メチレンブルー(最大吸収波長655nm)、3,7−ジアミノ−1,2ベンゾフェノキサゾニウムパークロレート(最大吸収波長601nm)等が挙げられ、アジン系色素としては、5−アセトキシベンゾフェナジン(最大吸収波長404nm)、1−アミノ−4−ニトロフェナジン(最大吸収波長360nm)等が挙げられる。
さらに、アクリジン系色素を具体的に示せば、1−アミノアクリジン(最大吸収波長480nm)、9−(2’−ヒドロキシスチリル)アクリジン(最大吸収波長410nm)、アクリジンオレンジ(最大吸収波長493nm)等が挙げられる。
他に、キサンテン系色素を具体的に例示すれば、ローダミン110(最大吸収波長510nm)、ローダミン6G(最大吸収波長500nm)、テトラメチルローダミンパークロレート(最大吸収波長548nm)等が挙げられ、スクアリウム系色素を具体的に例示すれば、2−[[3−[(1,3−ジヒドロ−1−エチル−3,3,5−トリメチル−2H−インドール−2−イリデン)メチル]−2−ヒドロキシ−4−オキソ−2−シクロブテン−1−イリデン]メチル]−1−エチル−3,3,5−トリメチル−3H−インドリウム,内部塩(最大吸収波長643nm)、{4−[3−[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシ−4−オキソ−2−シクロブテン−1−イリデン]−3−ヒドロキシ−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン}−N−エチル−N−オクタデシルアンモニウムハイドロオキサイド,内部塩(最大吸収波長626nm)等が挙げられる。
さらに、ピリリニウム塩系色素の好適な具体例としては、2,6−ジフェニル−4−(4−メチルフェニル)チオピリリウムパークロレート(最大吸収波長404nm)、2,6−ビス(4−メチルフェニル)−4−(4−フェニルチオピリリウムパークロレート(最大吸収波長436nm)、2,4,6−トリフェニルチオピリリウムパークロレート(最大吸収波長415nm)等が挙げられる。
これら増感色素は単独で用いても良いし、複数を組み合わせて用いても良い。また、配合量にも特に制限はないが、齲蝕部分を短時間で十分に染色し、かつ水洗による除去性を考慮して、齲蝕検知液の100質量部に対して0.0005〜5質量部、より好ましくは、0.001〜3質量部が好ましい。
本発明の齲蝕検知液には、上記増感色素に加えて、視認性を向上させる目的で、他の色素を加えて使用してもよい。他の色素を具体的に例示すれば、アマランス、エリスロシン、アルラレッドAC、ニューコクシン、フロキシン、ローズベンガル、アシッドレッド、エオシン、酸性フクシン、塩基性フクシン、サフラニン、ローダミンBなどが挙げられる。これら他の色素の添加量は特に制限はないが、通常、齲蝕検知液の100質量部に対して0.5質量部以下で用いるのが一般的である。
本発明の齲蝕検知液に使用する溶媒には、水及び/または水溶性溶媒が用いられる。該溶媒は増感色素を溶かすのみならず、検知液の粘度を低減して液の歯質への浸透性を容易にする作用があるものを選択して用いることが必要である。ここで言う水溶性とは、20℃での水への溶解度が20g/100ml以上であることを言う。このような水溶性溶媒として具体的に例示すると、エタノール、エチレングリコール、n−プロパノール、イソプロパノール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、イソグチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリグリセリン等のヒドロキシ化合物が挙げられる。
また、ヒドロキシ化合物以外の水溶性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、アセトン、ジメトキシエタン、メチルエチルケトンなどを挙げることができる。これら水溶性溶媒は必要に応じ複数を混合して用いることも可能である。中でも、生体に対する為害性および得られる齲蝕検知液の取扱やすい粘度を考慮すると、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、平均分子量300〜400の、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールが好ましい水溶性溶媒として挙げられる。
本発明の齲蝕検知液は取扱やすさの点でその粘度が23℃において20〜500cpsの範囲に調製するのが好ましく、このような粘度への調整は、その他成分として、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどの高分子化合物やシリカ、チタニア、アルミナなどの無機粉体を増粘剤として添加することによって行うのが好ましい。
さらに他の添加剤として、トリクロサン、イルガサン、クロルヘキシジン、セチルピリジニウム塩酸塩等の抗菌剤や、メタクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、メタクリロイルオキシブチルピリジニウムクロライドのような重合性の抗菌成分などを添加してもよい。
本発明の齲蝕検知液の調製は、特に制限されるものはなく、必要量の増感色素を前記溶媒成分に加え、室温、または適宜加熱して攪拌溶解させてもよいし、予め必要量よりも高濃度の増感色素を含有する溶液を同様の方法で調整しておき、これを希釈しても問題ない。
次に、本発明の齲蝕検知液は、染色面上で後に光硬化性重合性組成物が硬化されることにより、該染色部が退色する効果が発揮されるものであるが、その光硬化性重合性組成物を硬化させる歯牙の染色面は、齲蝕治療において、歯牙の齲蝕感染部を齲蝕検知液により染色し、次いで該染色された齲蝕感染部の少なくとも一部を削除した際の、該削除された齲蝕感染部に隣接して存在する削除周辺染色面であるのが好ましい。この場合、上記削除された齲蝕感染部に隣接して存在する削除周辺染色面は、通常、齲蝕象牙質における第二脱灰層になる。なお、染色された第一脱灰層において、一部しか削除できずに取り残し部分がある場合は、この染色された取り残しの第一脱灰層も削除周辺染色面になり得る。
これらの削除周辺染色面上で後に硬化させる光硬化性重合性組成物は、通常は、光硬化性ボンディング材であり、この光硬化性ボンディング材の硬化層の上にレジン修復材料が充填され、これが硬化されて、齲蝕歯牙は修復される。レジン修復材料として、光重合性の歯質接着性のものを用いた場合には、上記光硬化性ボンディング材は使用を省略することが可能であり、このときには、上記削除周辺染色面上で硬化させる光硬化性重合性組成物は、該歯質接着性レジン修復材料になる。
これらの光硬化性重合性組成物において、齲蝕検知液に含まれる増感色素が増感作用を発揮する対象は、通常は重合開始剤である。これらの重合開始剤の具体例は、カンファーキノンに代表されるα−ジケトン類とp−ジメチルアミノ安息香酸エチル等の第3級アミン化合物との組み合わせ、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドやビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドに代表されるアシルホスフィンオキサイド化合物、ナトリウムテトラフェニルボレートに代表されるボレート化合物などが挙げられる。これらのいずれが含有された光硬化性重合性組成物を光重合させても、増感色素は増感作用の発揮によって退色される。
なお、本発明の齲蝕検知液を用いての歯牙の染色方法は、細長いノズルのついた容器に該齲蝕検知液を収容し、患者の窩洞に対して、ノズルの先端より少量を滴下し、1〜10秒後に窩洞内を水洗することによって行われる。通常は、このような簡単な操作によって、軟化象牙質の第一脱灰層(第一層)が鮮明に染色され、第二脱灰層(第二層)は淡く染色され、肉眼でも色相差で、齲蝕感染部である上記第一層を容易に識別が可能である。なお、この染色部の確認は、歯科用光照射器を用いた光照射によって実施しても良い。例えば、齲蝕検知液に含有される増感色素がクマリン系色素である場合には、400〜500nmの波長域を有する歯科用照射器の光照射によって、その波長域に吸収を有するクマリン系色素が強い蛍光を発するため、これを確認することによって、削除すべき齲蝕感染部を確実に視認することができる。特に、光照射器によって光照射しながら、照射器付属のオレンジ色の遮光板を通して観察する方法は、蛍光性がより強く確認できるため有効な方法である。このような際に用いる光照射器としては、ハロゲンライト、LEDライトおよびキセノンライト等、公知のものが制限なく使用できる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。尚、実施例中に示した増感色素の略称、略号については以下のとおりである。
・クマリン系色素
CM1(最大吸収波長480nm)
Figure 2010120864
CM2(最大吸収波長459nm)
Figure 2010120864
CM3(最大吸収波長464nm)
Figure 2010120864
CM6(最大吸収波長436nm)
Figure 2010120864
・シアニン系色素
CY1(最大吸収波長483nm)
Figure 2010120864
・キサンテン系色素
XA1(最大吸収波長530nm)
Figure 2010120864
・アジン系色素
AN1(最大吸収波長360nm)
Figure 2010120864
・スクアリウム系色素
SQ1(最大吸収波長647nm)
Figure 2010120864
・チアジン系色素
TA1(最大吸収波長430nm)
Figure 2010120864
・ピリリウム系色素
PY1(最大吸収波長415nm)
Figure 2010120864
実施例1〜20,比較例1〜4
齲蝕検知液の調製
表1および表2に示す各種増感色素、および水溶性溶媒を室温で攪拌混合して、齲蝕検知液を調製した。
(2)染色視認性の評価
抜去した齲蝕を有するヒト第3大臼歯を用いて、注水下、#600のエメリーペーパーで歯軸に対して垂直になるように研磨し、表1および表2のように調製した齲蝕検知液を塗布し、約5秒後に水洗した。増感色素によって染まらない健全象牙質部分と色素によって染まった齲蝕部分との判別を、肉眼、および歯科用可視光線照射器(トクソーパワーライト、株式会社トクヤマ製)により照射し、その蛍光の発光状態を観察する方法で下記の基準で評価した。結果を表1および表2に示した。
○:目視で染色部と非染色部の区別ができることに加えて、さらに歯科用照射器付属のオレンジ色の遮光板越しに見ることで、蛍光により染色部と非染色部がはっきりとに区別できるもの。
△:目視で染色部と非染色部の区別ができるもの。
×:目視によって染色部と非染色部の区別ができないもの
(3)細菌観察
咬合面裂溝齲蝕を有するヒト抜去歯を用いて、染色視認性の評価と同様な方法で本発明の齲蝕検知液を適用しながら、スプーンエキスカまたは球形のスチールバーを用いて、淡く染色される部分を残すように、濃く染色された部分のみを削除した。その後、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)により歯牙を脱灰し、脱水、パラフィン包埋し、齲窩の最深部を通り歯軸と平行方向の薄切片を作製しグラム染色した後、顕微鏡下にて細菌の有無を確認した。結果を表1および表2に示した。
(4)審美性への影響
抜去した齲蝕を有するヒト第3大臼歯を用いて、注水下、#600のエメリーペーパーで歯軸に対して垂直になるように齲蝕部分を残こすように象牙質平面を削り出した。表1および表2に示す組成に調製した本発明の齲蝕検知液を塗布し、約5秒後に水洗し、エアーブローによって乾燥させた。色素によって染まっている象牙質平面に対して、直径8mmの穴を有する両面テープを貼り付け、さらに厚さ0.5mmおよび直径8mmの穴を有するパラフィンワックスを両面テープの穴と一致させるように固定することで模擬窩洞を形成した。この模擬窩洞に、光重合開始剤を含有する光重合性ボンディング材(商品名「ボンドフォース」、トクヤマデンタル製)を塗布し、20秒間放置後、エアーブローを行った。その後、可視光線照射器(トクソーパワーライト、株式会社トクヤマ製)を10秒間照射し、硬化させた。更にその上に、光重合性レジン修復材料(商品名「エステライトプロ LVスーパークリア」、トクヤマデンタル製)を充填し、可視光線を30秒間照射して、試験片を作製した。試験片を、光重合性レジン修復材料の充填硬化面上から目視観察し、齲蝕検知液の染色が審美性に及ぼす影響は下記の基準で評価した。結果を表1および表2に示した。
◎:ボンディング材の硬化時にすでに色素の色が脱色し、まったく観察されない。
○:ボンディング材の硬化時には色素の色は完全には脱色しないが、光重合性レジン修復材料を充填、硬化させた後は色素の色が脱色し、まったく観察されない。
△:光重合性レジン修復材料を充填、硬化させた後、わずかに色素の色が観察される。
×:光重合性レジン修復材を充填、硬化させた後、明らかに色素の色が観察される。





















Figure 2010120864
Figure 2010120864
実施例1〜20は本発明の齲蝕検知液を用いた結果を示すが、いずれも場合も比較例と比較して、優れた視認性を有することが明らかである。さらにクマリン系色素を用いた実施例1〜4および12〜20は、目視による染色部と非染色部の区別に加えて、歯科用照射器付属のオレンジ色の遮光板越しに見ることで、蛍光により染色部と非染色部がはっきりとに区別できた。
また、全ての実施例において染色部を削除したものに、細菌が認められず、さらに後のレジン充填、光硬化によって染色部の退色が認められ、審美性においても、まったく問題にならないことが確認できた。

Claims (6)

  1. 歯牙の齲蝕感染部を識別するために該部位の染色に使用する齲蝕検知液であって、水及び/又は水溶性溶媒、並びに最大吸収波長が350〜800nmであり、増感作用を発揮することにより退色する性状である増感色素を含んでなることを特徴とする齲蝕検知液。
  2. 増感色素が、クマリン系色素である請求項1記載の齲蝕検知液。
  3. 歯牙の染色面上で後に光硬化性重合性組成物が硬化される態様にある請求項1または請求項2記載の齲蝕検知液。
  4. 光硬化性重合性組成物を硬化させる歯牙の染色面が、齲蝕治療において、歯牙の齲蝕感染部を齲蝕検知液により染色し、次いで染色された齲蝕感染部の少なくとも一部を削除した際に、この削除された齲蝕感染部に隣接して存在する削除周辺染色面である請求項3記載の齲蝕検知液。
  5. 削除された齲蝕感染部に隣接して存在する削除周辺染色面が、齲蝕象牙質における第二脱灰層である請求項4記載の齲蝕検知液。
  6. 齲蝕検知液による染色面上で後に硬化させる光硬化性重合性組成物が、光硬化性ボンディング材または光硬化性レジン修復材料である請求項3〜請求項5のいずれか一項に記載の齲蝕検知液。
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