JP6204785B2 - 可視光線硬化型の歯科用硬化性組成物及びその存在識別方法 - Google Patents

可視光線硬化型の歯科用硬化性組成物及びその存在識別方法 Download PDF

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Description

本発明は、歯冠材料、充填材料、補綴材料、接着材料、予防材料等の歯科分野で用いられる歯科用硬化性組成物であり、特に可視光領域の光源を照射することによって蛍光発光することを特徴とする蛍光視認性を有した可視光線硬化型の歯科用硬化性組成物に関する。また本発明は、蛍光視認性を有した歯科用硬化性組成物の存在を確認するために可視光領域の光源から可視光線を照射して、歯科用硬化性組成物の存在を識別する識別方法に関する。
近年、歯科分野においては審美歯科治療が注目されてきており、より天然歯の色調に近似した高い審美性を有した歯科材料を用いた修復処置が行われるようになってきている。その状況の中で重合性単量体、充填材及び重合開始材等から構成されるコンポジットレジンと呼ばれる歯科用硬化性組成物は操作性、機械的特性、そして審美性の観点から歯の欠損部を修復する材料として、臨床の中でもっとも多用されている材料である。この材料の臨床応用は欠損部への充填処置後において天然歯と見分けがつかない程に色調が歯質と近似した審美修復が可能であることから、審美性の観点においては非常に満足のいくものである。その一方で天然歯は紫外線照射によって蛍光を発し、ブラックライト下では青白くなるなどの蛍光特性を有している。しかし、歯科用硬化性組成物は元来、天然歯のように蛍光性を有していないため、紫外線やブラックライトの条件下でその組成物を用いた修復物を見たときに、周りの歯よりも暗く見えるなどの美的品質の低下を引き起こすという課題があった。そのため歯科用硬化性組成物においても、歯質と同じような蛍光特性を発現させる目的で様々な蛍光体を含有する歯科用組成物が提案されている。例えば、特表2012−505889号公報には蛍光有機色素を含む硬化性歯科用組成物、特開2011−184402号公報にはアルミナ微粒子とベンゾフェノン骨格を有する化合物からなる蛍光体を含有する組成物、特開平2−233605号公報には2,5−ジヒドロキシジエチルテレフタレートを含む組成物、特表2009−510120号公報には7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリンを含有する歯科用組成物、特開2005−41825号公報には希土類酸化物を含有した蛍光体ガラスフィラーを含む歯科材料等が開示されている。これらの開示技術によって可視光よりも波長が短い紫外または近紫外領域の光を照射したときにおいて天然歯と同じように見えることが可能になってきた。
また、近年歯科医療においては診査・診断の重要性が求められてきており、歯科材料を適用している部位に関する臨床的な状況や情報を確認することも必要になってきている。特にフィッシャーシーラントを適用した歯質や矯正用ブラケットを除去後に矯正用接着剤が残存している歯面等は歯科用組成物の存在を確認することによって処置状況の把握や次の処置方針を決定するためにそれら組成物の視認性が求められる。前述の様々な蛍光体を含む歯科用組成物の提案は、目視においても、また紫外線やブラックライトの照射下においても歯質と同じ見え方をすることが特徴であり、歯科用組成物の存在を知る上での視認性という観点では不十分な点が認められる。また逆に歯質と蛍光性が全く異なる発色性を有した蛍光材を歯科用組成物に含有させることにより、視認性の向上を図ることは可能であるが、紫外線やブラックライトを診査・診断の状況の中で口腔内に照射することは生体安全性の上で好ましくないことは明らかである。さらに目視での視認性を高める目的で歯科用組成物中に歯質の色調とは全く異なる色調の顔料を含有させることも可能であるものの、目視での審美性が低下する結果となる。
さらに、特開2005−41825号公報に示される発明のように、可視光線の照射により蛍光する蛍光体を歯科用組成物中に含めることによって、可視光線の照射による歯科用組成物の視認を可能にした歯科用組成物も提案されている。特開2005−41825号公報に示された歯科用組成物では、可視光線を照射すると蛍光する希土類酸化物としてEu2Oを含むガラスフィラー(蛍光体)を可視光線硬化型のコンポジットレジンに混合している。しかしながら、この歯科用組成物では、Euの酸化物そのものを少なくとも5重量%含むガラスフィラー(蛍光体)が、コンポジットレジンに対して重量比で3:1となる量混合されており、蛍光体の蛍光を発生させるために希土類酸化物の含有量が非常に多い。そのため、この歯科用組成物では、歯科用組成物中に大量の蛍光体が存在することになるため、歯科用組成物が蛍光体によって着色され、自然光下での審美性が低下する問題がある。また、種類にもよるが蛍光体の含有量が増えると、硬化後の歯科用組成物の曲げ強度を含む機械的強度が低下する問題も生じる。
特表2012−505889号公報 特開2011−184402号公報 特開平2−233605号公報 特表2009−510120号公報 特開2005−41825号公報 [0027]、[0028]、[0033]〜[0035]等
そこで、本発明は目視による観察において一定の審美性と機械的強度を維持した上で、可視光を照射することによって歯質と識別できる蛍光視認性を有した歯科用硬化性組成物を提供することを課題とする。さらに本発明は当該歯科用硬化性組成物の存在を確認するために生体に対して為害作用が少ない可視光を照射することによって歯科用硬化性組成物の存在を識別する方法を提供することも課題とする。
本発明者らは上記課題を達成するために鋭意研究の結果、可視光線を照射すると蛍光する蛍光体を含有する可視光線硬化型の歯科用硬化性組成物において、蛍光体として、A12の一般式で示される化合物にCeが含まれており、ピーク波長が380〜500nmの波長領域にある可視光線を吸収し、かつ、ピーク波長が550〜780nmの波長領域にある蛍光を発生するものを用いることが最適であることを見出した。ただし、A12の一般式において、Aは12面体8配位のY元素であり、Bは8面体6配位のAl元素であり、Cは4面体4配位のAl元素である。この蛍光体は、好ましくは、A12の一般式で示される化合物がガーネット構造を有する化合物であり、この化合物にCeがドープされたものである。
このような蛍光体を含有する歯科用硬化性組成物は、ピーク波長が380〜500nmの波長領域にある可視光線を吸収し、かつ、ピーク波長が550〜780nmの波長領域にある蛍光を発生するものであり、ピーク波長が550nm未満の波長領域にある光を遮蔽する光学フィルタを通しても充分にその蛍光が視認できる。言い換えると、照射される可視光線のピーク波長が380〜500nmの波長領域(青色系の波長領域)を有するものであり、蛍光体が発生する蛍光のピーク波長が550〜780nmの波長領域(黄色系〜赤色系の波長領域)に含まれる場合であれば、光学フィルタとしてピーク波長が550nm未満の波長領域(少なくとも青色系を含む波長領域)にある光を遮蔽(またはカット)できる光学フィルタを用いることにより、照射された可視光線(照射された可視光線のうち反射した可視光線)は光学フィルタによって大部分が遮蔽され、蛍光体を含有する歯科用硬化性組成物が発生する蛍光は光学フィルタによっては遮蔽されずに光学フィルタを透過する。なお、使用可能な光学フィルタは、ピーク波長が550nm未満の波長領域にある光を遮蔽(またはカット)するものに限定されない。すなわち、照射する可視光線のピーク波長を遮蔽し、蛍光体から発生する蛍光を透過する光学フィルタを用いることができる。
上記蛍光体を可視光線硬化型の歯科用硬化性組成物に含有させると、組成物の硬化に使用する可視光に対して蛍光特性が極めて高い歯科用硬化性組成物が得られる。その結果、硬化用の可視光を発生する可視光照射器と硬化作業の際に照射状態を視認するために使用する光学フィルタとをそのまま用いて、口腔内における歯科用硬化組成物の存在を容易に視認することができる。そのため、歯科用硬化組成物の存在を確認しながらの歯科用硬化性組成物の硬化作業が容易になる。特に、少量の歯科用硬化性組成物を確認しなければならない環境(例えば、フィッシャーシーラントや矯正用接着剤の用途)でも、歯科用硬化性組成物の存在を確認することができる。具体的には小窩裂溝の封鎖に用いるフィッシャーシーラントの填塞後、剥離などを生じていないか定期健診などで容易に確認することができる。また、矯正用接着剤においては、矯正治療後に矯正用接着剤を取り除く必要があるが、目視により確認できない少量の矯正用接着剤が歯面に残存している場合においても、容易に確認することができる。また、本発明で用いる蛍光体は従来のように含有量を多くしなくても強い蛍光を発生させることができるため、蛍光体の存在が歯科用硬化性組成物の審美性及び機械的強度に影響を与えない。さらに、ガーネット構造を有する化合物にCeがドープされて形成された蛍光体を可視光硬化型の歯科用硬化組成物に含有させることにより、歯科用硬化性組成物の機械的強度を高くすることができる。
具体的には、歯科医療の現場では、歯科硬化性組成物を硬化させる際に、ピーク波長が380〜500nmの波長領域(青色系の波長領域)にある青色LEDが一般に用いられる。ピーク波長が380〜500nmの波長領域(青色系の波長領域)に含まれる光は可視光線の中でも紫外線に近い短波長領域に含まれることから、作業者の目を保護するためにピーク波長が550nm未満の波長領域(少なくとも青色系を含む波長領域)に含まれる光をカットする光学フィルタが用いられている。作業者は、この光学フィルタを通して歯科用硬化性組成物の存在を確認している。これに対して、本発明で用いる蛍光体は、ピーク波長が550〜780nmの波長領域(黄色系〜赤色系の波長領域)に含まれる蛍光を発生させることができる。そのため、青色LEDから照射された可視光線のうち反射した可視光線は、この光学フィルタによって遮蔽され、蛍光体が含まれる歯科用硬化性組成物が発生する蛍光は、光学フィルタによっては遮蔽されない。すなわち、歯科用硬化性組成物から発生する蛍光のみが光学フィルタを透過するため、作業者は青色LEDの照射により歯科用硬化性組成物を硬化しながら、光学フィルタを介して歯科用硬化性組成物から発生する蛍光のみを確認することができる。したがって、本発明の歯科用硬化性組成物を用いれば、既存の設備を用いて口腔内の歯科用硬化性組成物の存在を確実に識別することができる。
なお、口腔内における歯科用硬化性組成物の存在が認識できる限り、歯科用硬化性組成物に対する蛍光体の含有量は任意である。ただし、蛍光体の含有量が5.0重量%を超えると、硬化後の歯科用硬化性組成物が黄色を帯びる傾向が強くなるため、自然光の下での目視による審美性に影響を与えるおそれがある。また、蛍光体の含有量が0.01重量%に満たない場合は、歯科用硬化性組成物中の蛍光源が少なくなるため、当然に歯科用硬化性組成物の蛍光が弱くなる。そのため、自然光下での審美性に影響を与えずに、しかも口腔内における歯科用硬化性組成物の存在を確実に識別するためには、蛍光体の含有量は0.01〜5.0質量%に定めるのが好ましい。
さらに本発明の歯科用硬化性組成物を歯質と識別するために生体に対して為害作用が少ない可視光を照射することによる識別方法、すなわち可視光線を照射すると蛍光する蛍光体を含有する可視光線硬化型の歯科用硬化性組成物の存在を識別する識別方法を提供する。
この歯科用硬化性組成物の存在識別方法では、歯科用硬化性組成物に含有する蛍光体として、上述した本発明の歯科用硬化性組成物に含有された蛍光体(上記一般式で示される化合物にCeが含まれており、ピーク波長が380〜500nmの波長領域にある可視光線を吸収し、かつ、ピーク波長が550〜780nmの波長領域にある蛍光を発生する蛍光体)を用いる。そして、患者の口腔内に可視光線を照射して、光学フィルタを通して蛍光体が発光する蛍光を見ることにより、歯科用硬化性組成物の存在を識別する。なお、蛍光体の構造・性質・含有量、照射する可視光線の属性・種類、光学フィルタの機能等の条件は、本発明の歯科用硬化性組成物で採用した条件を適用することができる。このような歯科用硬化性組成物の存在識別方法を用いることにより、本発明の歯科用硬化性組成物を用いた場合の効果(すなわち、口腔内における歯科用硬化組成物の識別が容易になる等の効果)が得られる。
上記の本発明により以下の諸効果がもたらされる。
本発明の歯科用硬化性組成物は、目視による観察において審美性及び機械的強度を害することなく、照射器よる強力な可視光を照射することによって歯質と明確に識別することができる。また、本発明の歯科用硬化性組成物の存在の確認は生体に対して為害作用が少ない可視光の照射を用いることによって達成することができる。可視光を照射する機器は特別な機器を必要とすることがなく、一般に歯科用硬化性組成物を硬化させるために用いられている歯科用の光照射器を併用することができる。特にピーク波長が380〜500nmの波長領域にある青色LEDを光源とした光照射器を用いることにより、特別な機器を用いることなく歯科用硬化性組成物の存在を容易に確認することができるため、歯科医にとって有益である。
また、蛍光発色性及び後述する諸特性の観点からも優れている。さらに本発明の歯科用硬化性組成物を硬化させるために可視光を照射させるときにおいて、本発明の歯科用硬化性組成物はガーネット構造を有する化合物に可視光を吸収するCeを含む蛍光体を含むために、組成物内部における重合性単量体の重合が進むために硬化性が向上し、特に硬度や曲げ強度が向上する効果も認められる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の可視光線硬化型の歯科用硬化性組成物には、可視光線を照射すると蛍光する蛍光体が含まれている。そして、蛍光体は、可視光線の照射に対して蛍光を発生する(蛍光特性を示す)ように、A12の一般式で示される化合物にCeが含まれて構成されている。このような蛍光体として本例では、ガーネット構造を有する化合物にCeがドープされて形成された蛍光体が用いられている。また、蛍光体は、ピーク波長が380〜500nmの波長領域にある可視光線を吸収し、かつ、ピーク波長が550〜780nmの波長領域にある蛍光を発生することを特徴とする。
12の一般式中のAは、12面体8配位の元素(カチオン)であり、Y、Sc、In、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選ばれた少なくとも一種の元素を選択することができると考えられる。また、一般式中のBは、8面体6配位の元素(カチオン)であり、Al、Sc、Ga、Cr、In、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選ばれた少なくとも一種の元素を選択することができると考えられる。さらに、一般式中のCは、4面体4配位の元素(カチオン)であり、Al及び/またはGaの元素から選択することができると考えられる。なお、一般式中のOは酸素元素を示す。本例では、ガーネット構造の化合物として、上記一般式中のAがY、B及びCがAlからなる化合物を用いた。その他の好ましいガーネット構造の化合物として、上記一般式中のAがY、BがAl、CがGdからなる化合物や上記一般式中のAがY、BがAl、CがGaからなる化合物を用いても良いと考えられる。
本実施の形態では、審美性、可視光を照射したときの視認性及び歯科医の作業性、並びに蛍光体を添加することにより生じる機械的強度の低下防止を総合的に評価した結果、本例では、ガーネット構造を有する上記の化合物にドープされる元素として、可視光を照射することによって蛍光を発生するCeのみを用いた。Ce以外の希土類元素をドープして蛍光体を用いることも検討したが、他の元素では、審美性、可視光を照射したときの視認性及び歯科医の作業性、並びに蛍光体を添加することにより生じる機械的強度の低下を防止の全てを満たすものは見出すことができなかった。
この蛍光体の粒子径については、歯科用硬化性組成物の材料特性への影響を考慮に入れると、好ましくは平均粒子径が0.01〜100.0μmの範囲であり、より好ましくは平均粒子径が0.01〜10.0μmの範囲である。なお、本願明細書において「平均粒子径」とは、レーザー回折式の粒度分布測定装置により測定した体積基準のメジアン径を意味する。またこの蛍光体を様々な形に加工して用いてもよく、例えば充填材として用いる有機フィラーや有機−無機複合フィラー等の形状と同じ形状にすることができる。また蛍光体を着色剤として用いてもよい。本発明の歯科用硬化性組成物中に含まれるCeをドープしたガーネット構造を有する蛍光体の含有量については、機械的強度を低下させない範囲において、可視光を照射したときに、口腔内における歯科用硬化性組成物の存在が認識できる程度にすればよい。蛍光特性や審美性への影響を考慮に入れると歯科用硬化性組成物全体に対して0.001〜5.0wt%の範囲が好ましく、また歯科用硬化性組成物の高度な識別性をも求める場合は0.01〜5.0wt%の範囲がより好ましく、さらに歯科硬化性組成物の機械的強度の観点も考慮すれば0.01〜1.0wt%の範囲にするのがより好ましい。
本発明の歯科用硬化性組成物に含まれる希土類元素(Ce)をドープしたガーネット構造を有する蛍光体は、可視光線を照射することによって蛍光を発生することが特徴である。ここでいう可視光線とは最大吸収波長が380nm〜780nmの範囲内にあるものをさしており、吸収波長分布(波長領域)の中に前述の波長範囲外である紫外・近紫外・近赤外・赤外等の領域に位置する波長が混ざっていても何等支障はなく、すべての可視光の範疇に含まれるものとする。また、可視光を照射する機器に関しても特に制限はないが、特別な機器を必要としない観点から歯科分野でコンポジットレジン等を硬化するのに一般的に用いられているハロゲン光源・LED光源・プラズマ光源からなる光照射器を使用することが好ましい。その中でもピーク波長が380〜500nmの波長領域に含まれる青色LEDを光源とした光照射器を使用することがより好ましい。
本発明の歯科用硬化性組成物に含まれる重合性単量体は歯科分野で一般に用いられている公知の単官能性及び多官能性の重合性単量体のうちから使用することができる。
一般に好適に使用される代表的なものを例示すれば、アクリロイル基及び/またはメタクリロイル基を有する重合性単量体である。なお、本発明においては(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリロイルをもってアクリロイル基含有重合性単量体とメタクリロイル基含有重合性単量体の両者を包括的に表記する。
酸性基を有しない重合性単量体類として、
単官能性単量体:メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のシラン化合物類、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等の窒素含有化合物、
芳香族系二官能性単量体:2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン等、
脂肪族系二官能性単量体:2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート等、
三官能性単量体:トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等、
四官能性単量体:ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等、
また、ウレタン系重合性単量体として具体的に例示すると;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;3−クロロ−2−ハイドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような水酸基を有する重合性単量体とメチルシクロヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルメチルベンゼン、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物との付加物から誘導される二官能性または三官能性以上のウレタン結合を有するジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記(メタ)アクリレート系重合性単量体以外に歯科用組成物の目的に応じて他の重合性単量体、例えば分子内に少なくとも1個以上の重合性基を有する単量体、オリゴマーまたはポリマーを用いても何等制限はない。また、酸性基やフルオロ基等の置換基を同一分子内に有していてもよい。
本発明において、重合性単量体とは単一成分の場合のみならず、複数の重合性単量体からなる重合性単量体の混合物も含む。また、重合性単量体の粘性が室温で極めて高い場合、または固体である場合は、低粘度の重合性単量体と組み合わせ重合性単量体の混合物として使用するのが好ましい。この組合せは2種類に限らず、3種類以上であってもよい。また、単官能性重合性単量体だけの重合体は架橋構造を有しないので、一般に重合体の機械的強度が劣る傾向にある。そのために、重合性単量体を使用する場合は、多官能性重合性単量体と共に使用するのが好ましい。
本発明の歯科用硬化性組成物に歯質または卑金属接着性を付与する場合は、重合性単量体の一部または全部としてリン酸基、カルボン酸基、スルホン酸基等の酸基を分子内に含有した重合性単量体を用いることが効果的である。また、貴金属接着を向上させるには、硫黄原子を分子内に含有した重合性単量体を使用することも本発明にとって有効である。これら接着能を有する重合性単量体として、具体的に例示すれば次の通りである。
カルボン酸基含有重合性単量体:(メタ)アクリル酸、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルピロメリット酸、6−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸及びその無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリット酸及びその無水物、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレエート、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、p−ビニル安息香酸等が挙げられる。
リン酸基含有単量体:2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート等が挙げられる。
スルホン酸基含有単量体:2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシベンゼンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸等が挙げられる。
硫黄原子を含有する重合性単量体:トリアジンチオール基を有する(メタ)アクリレート、メルカプト基を有する(メタ)アクリレート、ポリスルフィド基を有する(メタ)アクリレート、チオリン酸基を有する(メタ)アクリレート、ジスルフィド環式基を有する(メタ)アクリレート、メルカプトジアチアゾール基を(メタ)アクリレート、チオウラシル基を有する(メタ)アクリレート、チイラン基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。これら重合性単量体は単独または2種以上を混合して使用してもよい。
本発明の歯科用硬化性組成物に含まれている重合性単量体の含有量は使用用途及び目的に応じて用いられる材料よって異なっているために特に限定するものではないが、好ましくはコンポジットレジンであれば歯科用硬化性組成物全体に対して5〜50wt%の範囲、接着材であれば歯科用硬化性組成物全体に対して5〜90wt%の範囲、フィッシャーシーラントであれば歯科用硬化性組成物全体に対して20〜90wt%の範囲等が挙げられる。
本発明の歯科用硬化性組成物に含まれる重合開始剤は特に限定されず、公知のラジカル発生剤が何等制限なく用いられる。
重合開始剤は一般に使用直前に混合することにより重合を開始させるもの(化学重合開始剤)、加熱や加温により重合を開始させるもの(熱重合開始剤)、光照射により重合を開始させるもの(光重合開始剤)に大別される。
化学重合開始剤としては、有機過酸化物/アミン化合物または有機過酸化物/アミン化合物/スルフィン酸塩、有機過酸化物/アミン化合物/ボレート化合物からなるレドックス型の重合開始系、酸素や水と反応して重合を開始する有機金属型の重合開始剤系が挙げられ、さらにはスルフィン酸塩類やボレート化合物類は酸性基を有する重合性単量体との反応により重合を開始させることもできる。
上記有機過酸化物として具体的に例示すると、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ジハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエード等が挙げられる。
上記アミン化合物としては、アミン基がアリール基に結合した第二級または第三級アミンが好ましく、具体的に例示するとp−N,N−ジメチル−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N−β−ヒドロキシエチル−アニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−アニリン、p−N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−トルイジン、N−メチル−アニリン、p−N−メチル−トルイジン等が挙げられる。
上記スルフィン酸塩類としては具体的に例示すると、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム等が挙げられる。
上記ボレート化合物としては、トリアルキルフェニルホウ素、トリアルキル(p−フルオロフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩などが挙げられる。
また、上記有機金属型の重合開始剤としては、トリフェニルボラン、トリブチルボラン、トリブチルボラン部分酸化物等の有機ホウ素化合物類等が挙げられる。
また加熱や加温による熱重合開始剤としては、上記有機過酸化物の他にアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物類が好適に使用される。
一方、光重合開始剤としては、光増感剤からなるもの、光増感剤/光重合促進剤等が挙げられる。
上記光増感剤として具体的に例示すると、ベンジル、カンファーキノン、α−ナフチル、アセトナフセン、p,p’−ジメトキシベンジル、p,p’−ジクロロベンジルアセチル、ペンタンジオン、1,2−フェナントレンキノン、1,4−フェナントレンキノン、3,4−フェナントレンキノン、9,10−フェナントレンキノン、ナフトキノン等のα−ジケトン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−メトキシチオキサントン、2−ヒドロキシチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、ベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類、2−ベンジル―ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル―ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1等のα−アミノアセトフェノン類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジル(2−メトキシエチルケタール)等のケタール類、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1−ピロリル)フェニル]−チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(ペンタンフルオロフェニル)−チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−ジシロキシフェニル)−チタン等のチタノセン類等が挙げられる。
上記光重合促進剤として具体的に例示すると、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、p−N,N−ジメチル−トルイジン、m−N,N−ジメチル−トルイジン、p−N,N−ジエチル−トルイジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミノエステル、N,N−ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、p−N,N−ジヒドロキシエチル−トルイジン、p−ジメチルアミノフェニルアルコール、p−ジメチルアミノスチレン、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、2,2’−(n−ブチルイミノ)ジエタノール等の第三級アミン類、N−フェニルグリシン等の第二級アミン類、5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸等のバルビツール酸類、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジバーサテート、ジオクチルスズビス(メルカプト酢酸イソオクチルエステル)塩、テトラメチル−1,3−ジアセトキシジスタノキサン等のスズ化合物類、ラウリルアルデヒド、テレフタルアルデヒド等のアルデヒド化合物類、ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾオキサゾール、1−デカンチオール、チオサルチル酸等の含イオウ化合物等が挙げられる。さらに、光重合促進能の向上のために、上記光重合促進剤に加えて、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸、グルコン酸、α−オキシイソ酪酸、2−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、ジメチロールプロピオン酸等のオキシカルボン酸類の添加が効果的である。
これらの重合開始剤は単独または2種以上を混合して用いることができる。また、重合形態や重合開始剤の種類に関係なく、組み合わせて用いることもできる。
重合開始剤の含有量は、使用用途に応じて適宜選択すればよい。一般には、歯科用硬化性組成物全体に対して0.1〜10重量部の範囲から選べばよい。
上記に述べた重合開始剤の中でも、光照射によりラジカルを発生する光重合開始剤を用いることが好ましい態様であり、空気の混入が少ない状態で歯科用組成物を重合させることができる点で最も好適に使用される。また、光重合開始剤の中でも、α−ジケトンと第三級アミン及びα−ジケトンとスズ化合物類の組み合わせがより好ましく、カンファーキノンとp−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル等のアミノ基がベンゼン環に直結した芳香族アミンまたはN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等の分子内に二重結合を有した脂肪族アミン、カンファーキノンとジブチルスズジラウレート等の組み合わせが最も好ましい。
また、使用用途に応じて他に、クマリン系、シアニン系、チアジン系等の増感色素類、ハロメチル基置換−s−トリアジン誘導体、ジフェニルヨードニウム塩化合物等の光照射によりブレンステッド酸またはルイス酸を生成する光酸発生剤、第四級アンモニウムハライド類、遷移金属化合物類等も適宜使用することができる。
本発明の歯科用硬化性組成物に含まれる充填材は特に限定されず、公知の充填材、例えば無機充填材及び/または有機充填材及び/または有機−無機複合充填材等が何等制限なく用いることができる。これら充填材の形状は球状、針状、板状、破砕状、鱗片状等の任意の粒子形状で良く特に限定されない。また、これら充填材の種類も特に限定されない。
無機充填材として具体的に例示すれば、石英、無定形シリカ、アルミニウムシリケート、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、種々のガラス類(溶融法によるガラス、ゾルーゲル法による合成ガラス、気相反応により生成したガラスなどを含む)、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、クレー、雲母、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、ゼオライト等が挙げられる。これらの中でもナトリウム、ストロンチウム、バリウム、ランタン等の重金属を含むアルミノシリケートガラス、ボロシリケート、アルミノボレート、ボロアルミノシリケートガラス等が好ましい。これら無機充填材の平均粒子径は特に制限はないが、0〜10μmの範囲が好ましく、より好ましくは0〜5μmの範囲である。
また、気相法により生成したアエロジルまたはゾル−ゲル反応等の溶液中から生成したシリカ−ジルコニア酸化物粒子等の超微粒子無機充填材も用いることができる。またはそれらの超微粒子を凝集させた凝集性無機充填材等を用いてもよい。
また、有機充填材として重合性基を有する単量体を重合することによって得ることができ、その種類は特に限定されない。有機充填材を具体的に例示すると、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、ジビニルベンゼン等の不飽和芳香族類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;ブタジエン、イソプレン等の重合性単量体を単独または複数で(共)重合させたものが挙げられる。特に好ましくは、歯科分野で既に公知の前述の重合性単量体を重合させたものである。有機充填材の製造方法においても特に制限はなく、重合性単量体の乳化重合、懸濁重合及び分散重合等のいずれの方法でもよく、また、予め生成した重合体バルクを粉砕する方法でも行うことができる。
また、有機重合体中に無機粒子を含有した有機−無機複合充填材を用いることもできる。有機重合体中に含有させる無機粒子としては、特に制限はなく公知のものが使用でき、例えば上述した無機充填材等が挙げられる。有機−無機複合充填材の製造方法においても、特に制限はなく、いずれの方法も採用することができる。例えば、無機粒子の表面を有機物でのマイクロカプセル化やグラフト化する方法及び無機粒子の表面に重合性官能基や重合性開始基を導入後ラジカル重合させる方法、予め生成した無機粒子を含む重合体バルクを粉砕する方法等が挙げられる。
有機充填材または有機−無機複合充填材の平均粒子径は1〜100μmの範囲が好ましい。より好ましくは3〜50μm、さらに好ましくは5〜30μmである。これらの無機、有機及び有機−無機複合充填材はそれぞれ単独または数種を組み合わせても用いることができる。
無機、有機及び有機−無機複合充填材等の充填材は公知の方法により、その粒子表面を表面処理し、歯科用組成物に用いることができる。例えば界面活性剤、脂肪酸、有機酸、無機酸、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ポリシロキサン等が挙げられる。これらの表面処理法は樹脂成分と充填材表面の濡れ性を向上させ、歯科用組成物に優れた諸特性を付与する点で好ましく、その要求特性に応じて適宜表面処理を選択することができる。また、それら充填材を多機能化する目的で充填材表面を特殊な表面処理剤及び/または特殊な表面処理法により表面処理を行っても何等制限はない。
本発明の歯科用硬化性組成物中に含まれる充填材の含有量は使用用途及び目的に応じて用いられる材料よって異なっているために特に限定するものではないが、好ましくはコンポジットレジンであれば歯科用硬化性組成物全体に対して5〜80wt%の範囲、接着材であれば歯科用硬化性組成物全体に対して1〜50wt%の範囲、フィッシャーシーラントであれば歯科用硬化性組成物全体に対して0.01〜70wt%の範囲等が挙げられる。
また、本発明の歯科用硬化性組成物中には、重合性単量体、重合触媒、充填材以外に2−ヒドロキシ−4−メチルベンゾフェノンのような紫外線吸収剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジターシャリーブチル−4−メチルフェノール等の重合禁止剤、変色防止剤、抗菌材、フッ素徐放性材、イオン徐放性材、着色顔料、その他の従来公知の添加剤等の成分を、必要に応じて任意に添加できる。
本発明の歯科用硬化性組成物の包装形態は、特に限定されず、重合開始剤の種類、または使用目的により、1パック包装形態及び2パック包装形態、またはそれ以外の形態のいずれも可能であり、用途に応じて適宜選択することができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に、且つ具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下の実施例において採用した歯科用硬化性組成物の性能評価法は次の通りである。
1.曲げ強度評価
評価目的:歯科用組成物試験体の曲げ強度を評価する。
評価方法:調製した歯科用組成物をステンレス製金型に充填した後、両面にカバーガラスを置きガラス練板で圧接した後、光重合照射器(グリップライトII:松風社製)を用いて表面の5ヶ所30秒間ずつ光照射を行い、硬化させた。硬化後、金型から硬化物を取り出した後、裏面も同様に光照射を行い、それを試験体(25×2×2mm:直方体型)とした。その試験体を37℃、24時間水中に浸漬した後曲げ試験を行った。曲げ試験は、インストロン万能試験機(インストロン5567,インストロン社製)を用い支点間距離20mm,クロスヘッドスピード1mm/minにて行った。なお、試験は試験体数10個で行い、その平均値をもって評価した。
2.可視光照射下における蛍光性評価
評価目的:歯科用組成物試験体を用いた可視光照射下における蛍光性を評価する。
評価方法:調製した歯科用組成物をステンレス製金型に充填した後、両面にカバーガラスを置き、ガラス練板で圧接した後、光重合照射器(グリップライトII:松風社製)を用いて6ヵ所30秒間ずつ光照射を行い、硬化させた。硬化後、金型から硬化物を取り出したものを試験体(15φ×1mm:円盤型)とした。その後、その試験体を用いて青色LED照射器(ブルーショット:松風社製)により可視光を照射したときの蛍光性を目視により評価する。なお、青色LED照射器には、550nm未満の波長領域に含まれる光をカットする光学フィルタが取り付けられており、可視光照射下でこの光学フィルタを透過した蛍光を目視により確認することによって蛍光性を評価している。
3.自然光下における審美性評価
評価目的:歯科用組成物試験体を用いた自然光下での審美性を評価する。
評価方法:上記2で作成した試験体の審美性を自然光下において目視により評価した。
[自然光下における審美性評価基準]
○:色調等の審美性に影響を与えない。日常的な生活(自然光下)において目視により着色を確認できない。
△:色調等の審美性に影響を与えないが、日常的な生活(自然光下)において目視によりわずかに着色を確認できる。
×:色調等の審美性に影響を与える。日常的な生活(自然光下)において目視により着色を確認できる。
[可視光照射下における蛍光性評価基準]
○:蛍光性が認められる。ブルーショット(松風社製)の照射において目視により蛍光の発色を明確に確認できる。
△:蛍光性がわずかに認められる。ブルーショット(松風社製)の照射において目視により蛍光の発色を一応確認できる。
×:蛍光性が認められない。ブルーショット(松風社製)の照射において目視により蛍光の発色を確認できない。
[本発明の実施例に用いる歯科用硬化性組成物中の使用原材料]
Bis−GMA:2,2−ビス(4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン
UDMA:2,2−ビス(4メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
R−972:アエロジルR−972
CQ:カンファーキノン
Tin:ジブチルチンジラウリレート
サンプル1:YAG:Ceドープ蛍光体
サンプル2:YAG:Ce未ドープ体
サンプル3:ジエチル−1,2,5−ジヒドロキシ−テレフタレート蛍光体
ガラスフィラー:以下に製造したもの
[ガラスフィラーの製造]
シリカ43重量部、酸化アルミニウム20重量部、フッ化ナトリウム5重量部、フッ化カルシウム10重量部、リン酸カルシウム5重量部、炭酸ストロンチウム17重量部の割合にてそれぞれの原料を十分混合後、1400℃の高温エレマ炉中にて溶融してガラスを得た。そのガラスをボールミル及び振動ミルにて微粉砕(平均粒子径:3μm)後、3−メタクリロイルオキシプロピルメトキシシランを用いて表面処理したものを本実施例で用いる歯科用硬化性組成物の原材料とした。
[実施例1〜9及び比較例1〜3]
表1及び表2に示す調合割合にて混練した後、脱泡することによりペースト状の歯科用硬化性組成物1〜12(歯科用硬化性組成物1〜9:実施例1〜9、歯科用硬化性組成物9〜12:比較例1〜3)を調製した。
調製した歯科用硬化性組成物1〜12を用いて、上述した評価法に従い曲げ試験、自然光下における視認性、および可視光照射下における視認性(蛍光性)を確認した。それらの試験結果を表1及び表2に示す。
Figure 0006204785
Figure 0006204785
表1及び表2に示すように実施例1〜9は比較例1に比較して曲げ強度が向上していることが認められる。また、自然光下における審美性への影響はなく、可視光照射下における蛍光性も認められ、歯質と識別可能なレベルであった。このうち、実施例1〜4、6及び7(サンプル1の含有量が0.001〜5.0wt%の範囲)では自然光下における審美性が維持されることが認められた。
また、表1に示すように可視光照射下における蛍光性は、実施例1〜6では明確に認められたが、実施例7ではわずかに認められた。すなわち、可視光照射下において高い蛍光性(視認性)が求められる場合は、サンプル1(本発明の蛍光体)の含有量は、歯科用硬化性組成物に対して0.01〜20wt%に定めるのが好ましいことが判った。
さらに、表1に示すように曲げ強度は、実施例1〜5では98MPa以上となったが、実施例6及び7では98MPaを下回った。すなわち、高い機械的強度が求められる場合には、サンプル1(本発明の蛍光体)の含有量は、歯科用硬化性組成物に対して0.1〜20wt%に定めるのが好ましいことが判った。
また、実施例1に対して、比較例2[ガーネット構造を有する化合物ではあるが希土類をドープしないもの(サンプル2)を用いた場合]、比較例3[ガーネット構造を有しない従来の蛍光体(サンプル3)を用いた場合]のいずれも、ブルーショット照射時の蛍光性を示さないことが確認された。
なお、実施例1と実施例2を比較すると、重合性単量体の種類を変更しても、曲げ強度、自然光下における審美性、及び可視光線照射下における蛍光性は、いずれも維持されることが判った。実施例1と実施例8、9とを比較すると、サンプル1の存在下では、他のサンプル[希土類をドープしないガーネット構造を有する化合物(サンプル2)、ガーネット構造を有しない従来の蛍光材(サンプル3)]を混合しても、曲げ強度、審美性,及び蛍光性は維持されることが判った。これらの結果は、本発明の歯科用硬化性組成物中に、本発明で用いる成分以外の成分(不純物等)が混ざっていても、機械的強度、審美性および蛍光特性は影響を受け難いことを示している。
[対象例]
既に市販されているクラレノリタケデンタル社製の「ティースメイト」を対象として上述した評価法に従い曲げ試験、自然光下における審美性、及び可視光照射下における視認性(蛍光性)を確認した。それらの試験結果を表2に示す。表1及び表2に示すように実施例1〜9に比較して、対象例の曲げ強度は低く、また可視光照射下における蛍光性も認められなかった。
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態および実験例に限定されるものではない。すなわち、上述の実施の形態および実施例に記載されている、成分、添加量等の条件は、特に記載がない限り、本発明の技術的思想に基づく変更が可能である。
本発明の歯科用硬化性組成物は目視において歯質と類似の色調を有しているものの、可視光を照射することによって歯質と明確に識別することができる。また、本発明の歯科用硬化性組成物の存在の確認は生体に対して為害作用が少ない可視光の照射を用いることによって達成することができる。可視光を照射する機器は歯科用硬化性組成物を一般に硬化させるときに用いるものを併用できるため、特別な機器を必要とすることがなく利便性に優れている。さらに本発明の歯科用硬化性組成物を硬化させるために可視光を照射させるときにおいて、本発明の歯科用硬化性組成物は可視光を吸収する蛍光体を含むために組成物内部における重合性単量体の重合が進むために硬化性が向上し、特に硬度や曲げ強度が向上する効果も認められる。
このように、本例で用いた歯科用硬化性組成物は、少量の蛍光体を用いることにより極めて高い蛍光性を発生させることができる従来にない歯科用硬化性組成物である。したがって、本発明の歯科用硬化性組成物を、例えばフィッシャーシーラントに用いる場合には、小窩裂溝等のわずかな空間における填塞状況(例えば、填塞後に、剥離したり、欠けたりしていないか)を目視により容易に確認することが可能となる。また、例えば、歯科矯正用接着剤として用いる場合は、矯正治療後に歯面にわずかに残存した接着剤でも目視により容易に確認することが可能となる。

Claims (7)

  1. 可視光線を照射すると蛍光する蛍光体を含有する可視光線硬化型の歯科用硬化性組成物であって、
    前記蛍光体は、下記一般式(1)で示される化合物にCeが含まれてなり、ピーク波長が380〜500nmの波長領域にある可視光線を吸収し、かつ、ピーク波長が550〜780nmの波長領域にある蛍光を発生するものであり、
    32312 ・・・(1)
    (ただし、一般式(1)において、Aは12面体8配位のY元素であり、Bは8面体6配位のAl元素であり、Cは4面体4配位のAl元素である)
    前記一般式(1)で示される化合物は、ガーネット構造を有する化合物であり、
    前記蛍光体は、前記化合物にCeがドープされてなるものであり、
    前記蛍光体の含有量が0.01〜5.0重量%であることを特徴とする可視光線硬化型の歯科用硬化性組成物。
  2. 前記蛍光体を含有する歯科用硬化性組成物は、ピーク波長が380〜500nmの波長領域にある可視光線を吸収し、かつ、ピーク波長が550〜780nmの波長領域にある蛍光を発生するものであり、ピーク波長が550nm未満の波長領域にある光を遮蔽する光学フィルタを通して前記蛍光が視認できる請求項1に記載の可視光線硬化型の歯科用硬化性組成物。
  3. 前記可視光線が青色LEDから照射される可視光線である請求項2に記載の可視光線硬化型の歯科用硬化性組成物。
  4. 重合性単量体を前記歯科用硬化性組成物全体に対して5〜90wt%含んでいることを特徴とする請求項1に記載の可視光線硬化型の歯科用硬化性組成物。
  5. 重合開始剤を前記歯科用硬化性組成物全体に対して0.1〜10wt%含んでおり、
    充填剤を前記歯科用硬化性組成物全体に対して0.01〜80wt%含んでいることを特徴とする請求項1または4に記載の可視光線硬化型の歯科用硬化性組成物。
  6. 前記歯科用硬化性組成物が、フィッシャーシーラントまたは矯正用接着剤に用いられることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の可視光線硬化型の歯科用硬化性組成物。
  7. 可視光線を照射すると蛍光する蛍光体を含有する可視光線硬化型の歯科用硬化性組成物の存在を識別する識別方法であって、
    前記歯科用硬化性組成物に含まれる蛍光体が、下記一般式(1)で示される化合物にCeが含まれてなり、ピーク波長が380〜500nmの波長領域にある可視光線を吸収し、かつ、ピーク波長が550〜780nmの波長領域にある蛍光を発生するものであり、
    32312 ・・・(1)
    (ただし、一般式(1)において、Aは12面体8配位のY元素であり、Bは8面体6配位のAl元素であり、Cは4面体4配位のAl元素である)
    前記一般式(1)で示される化合物は、ガーネット構造を有する化合物であり、
    前記蛍光体は、前記化合物にCeがドープされてなるものであり、
    前記蛍光体の含有量が0.01〜5.0重量%であり、
    患者の口腔内に前記可視光線を照射して、前記光学フィルタを通して前記蛍光体が発光する蛍光を見ることにより、前記歯科用硬化性組成物の存在を識別することを特徴とする可視光線硬化型の歯科用硬化性組成物の存在識別方法。
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