JP2010119771A - 熱安定性に優れた中空糸膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、保存安定性、輸送時の高温度においても品質の安定性に優れた中空糸膜、特に血液浄化器用に適した選択透過性中空糸膜を提供することにある。
【解決手段】本発明は、内径が100〜300μm、膜厚が10〜60μm、空孔率が50〜90%である中空糸膜であって、該中空糸膜をアルミ袋に密封し80℃で20hr放置した後の透水性の保持率が100±10%以内である熱安定性に優れた中空糸膜である。
【選択図】なし

Description

本発明は、高空孔率、高選択透過性、高透水性の中空糸膜であって、中空糸膜の保存安定性、輸送時の高温度においても品質の安定性に優れた中空糸膜に関するものであり、特に血液浄化器用に適した中空糸膜に関するものである。
中空糸膜は、逆浸透から精密濾過に至る分野において従来より広く使用されている。特に腎不全患者の血液を浄化するために、現在では中空糸膜型血液浄化器がよく使用されている。これは筐体の中に透析膜、例えば、中空糸膜を多数本収納し、その中空部に患者の血液を流し、外部、即ち中空糸膜間隙部に透析液を流して、中空糸膜壁を介して透析することによって、血液中の老廃物を除去したり、電解質濃度を是正するとともに、中空糸膜内外に圧力差を与えて濾過によって血液中の中分子量物質や余剰水分を除去するものである。更に、血液中から血漿のみを分離し、あるいは、その血漿の中から特定成分を除去して自己免疫疾患などを治療するために、中空糸膜が使用されることもある。また、最近、タンパク透過性血液透析やタンパク透過性血液ろ過透析に中空糸膜を用いることによって治療効果が高められることが確認されている。
ところで、近年、透析患者の長期合併症と関連し、透析アミロイドーシスの原因物質と考えられるβ2-ミクログロブリン(β2-MG、分子量:11,800)、掻痒感、高脂血症と関係すると考えられる副甲状腺ホルモン(分子量:約9,500)、貧血に関与する赤芽球抑制因子、関節痛、骨痛に係わると考えられる分子量2〜4万の物質など、比較的中高分子量領域の有害物質の除去の必要性に注目が集まっている。一方、人体にとって有用なアルブミン(分子量:66,000)の損失は極力避けなければならない。すなわち、分子量4〜5万以下の物質の透過性に優れ、分子量6万以上の物質の阻止性のよい、シャープカット性の良好な中空糸膜が望まれている。
このように血液処理用の中空糸膜は、目的に応じて特定の物質を選択的に透過させなければならない。その性能は、中空糸膜の素材、膜構造、ポロシティ(孔の大きさ、数など)、膜厚などによって決定される。
前述の膜性能を得るには、出来るだけ高い透水性(UFR)を有する中空糸膜が必要であり、従来から、ポリスルホンなどの合成高分子では、例えば特許文献1、2に見られるように、比較的前記要求を満たしたものが得られている。しかし、該合成高分子膜はポリビニルピロリドンに代表されるような親水性高分子を使用している為か、膜構造に起因するのかは不明であるが、中空糸膜の寸法安定性が低く、取扱いが大変難しいものであった。また、該親水化剤は親水性であるため、血液中に溶出し、体内に徐々に蓄積される可能性があり、そうすると元々異物である親水化剤が生体に悪影響を及ぼす可能性も懸念される。このような悪影響の懸念を払拭するために、膜の洗浄強化や架橋等の溶出を抑える処理を施す必要があり、取扱いが煩雑で生産が難しいものであった。
また、中空糸膜は内径がおよそ200μm、膜厚が15〜50μm程度という毛髪よりも若干太い程度の極細繊維である。したがって、輸送時に高温下あるいは低温下に晒されると、中空糸膜を構成する材料自体が変性したり変質するとか、形状、微細構造が変形するなどして、性能が変化したり溶出物量が高くなることがある。このため保管条件(温度、湿度)をコントロールするか、もしくは包装形態を工夫するなどして酸化劣化を防止するようにしてきた。特に、夏場においての輸送車の内温は80℃程度まで上昇するため、品質の劣化もしくは、性能の変化が避けられなかった。前述したようなポリスルホン系中空糸膜においてはポリビニルピロリドンが酸化や熱劣化を起こしやすいために、高温下あるいは低温下においても、品質や性能の安定した中空糸膜が求められている。従来、高温下あるいは低温下での品質や性能の安定性について、特に言及されたものは無い。
中空糸膜として利用される素材には、天然素材であるセルロース、またその誘導体であるセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、合成高分子としてはポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルなどが例示される。
上記、小分子量タンパクの効率的な除去を目的として、中空糸膜の空孔部分をより大きくする、すなわち、高空孔率とする検討がなされている。ところが、このような中空糸膜においては、高温下あるいは低温下で保管すると、強度が低下したり、ポリマーが分解したりして所期の品質が確保できない可能性が高い。
このような熱的安定性を向上する方法として、例えば、脱酸素+アルミ包装をしたり、保管温度を低温に設定する。しかし、この方法では、コストが高くなることや、管理が難しいといった問題がある。
中空糸膜を製造する方法としては、製膜溶液を芯液とともに二重管紡糸口金から同時に吐出し、空走部(エアギャップ部)を経て凝固浴中に導いて中空糸膜を形成し、巻き取る方法(乾湿式紡糸法)が広く利用されている。この方法において、製膜溶液の組成、芯液の組成、ドラフト比、紡糸口金温度、エアギャップ部分の環境、凝固浴の組成、凝固浴の温度、水洗温度、延伸比、親水化温度などが、得られる膜の特性を規定するパラメータとなる。特に、ドラフト比、水洗槽の温度が使用するポリマーのガラス転移温度以上であること、親水化温度と延伸比により大きく変化する。
特許文献3には、セルロースジアセテートとセルローストリアセテートとを特定の範囲でブレンドすることで、高圧蒸気滅菌後に透水性やミオグロビン(分子量17000)の篩い係数を向上する技術が開示されている。また、特許文献4には、熱に安定なポリマーと不安定なポリマーを組み合わせることで、オートクレーブ可能な膜が開示されているが、長時間の高温保存下での効果については期待できない。
また、特許文献5では、高延伸を熱水中でかけることで強度が増加するとしているが、中空部の芯材は、非凝固系であるために、構造は従来にある均一膜のために、高温度保存性にて、性能変化が予想される。
特許文献6、特許文献7においては、高延伸をすることで血液適合性が向上するといわれているが、構造は一般的な非対称構造である、これも高温保存性にて溶出物が上昇する問題がある。
特公平2−18695号公報 特公平5−54373号公報 特開平7−51553号公報 特開平9−135898号公報 特開昭54−134116号公報 特開2004−305677号公報 特開2004−313359号公報
本発明は、保存安定性、輸送時の高温度においても品質の安定性に優れた中空糸膜、特に血液浄化器用に適した中空糸膜を提供することにある。
本発明は、以下の構成を有する。
(1)内径が100〜300μm、膜厚が10〜60μm、空孔率が50〜90%である中空糸膜であって、該中空糸膜をアルミ袋に密封し80℃で20hr放置した後の透水性の保持率が100±10%以内であることを特徴とする熱安定性に優れた中空糸膜。
(2)該中空糸膜をアルミ袋に密封し80℃で1週間放置した後の降伏強度の保持率が90%以上100%以下であることを特徴とする(1)に記載の熱安定性に優れた中空糸膜。
(3)該中空糸膜をアルミ袋に密封し80℃で1週間放置した後の内径および膜厚の保持率が90%以上100%以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の熱安定性に優れた中空糸膜。
(4)該中空糸膜が少なくとも内表面側にスキン層を有していることを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載の熱安定性に優れた中空糸膜。
(5)セルローストリアセテートまたは/およびセルロースジアセテートからなることを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載の熱安定性に優れた中空糸膜。
本発明の中空糸膜は、保存安定性、輸送時の高温度または低温度においても品質の安定性に優れた中空糸膜であり、特に血液浄化器用に適した中空糸膜として好ましく利用され得る。
従来、中空糸膜の製造においては、膜素材の劣化を抑制する配慮がなされてきている。また、ポリスルホン系樹脂およびポリビニルピロリドン(PVP)を構成材料とする中空糸膜においては、保管中のPVPの酸化劣化を抑制するための配慮がなされている。しかし、保管や輸送時に外気の影響を受けて温度が高温や低温となることで、性能が低下したり溶出物が増大し、本来持っている性能や安全性が損なわれる恐れがある。真夏の輸送時の車の中や倉庫においては60〜80℃に上がることがある。80℃下での放置においても、性能の安定性、溶出物の抑制、強度、膜厚が実質的に変化しないことが求められる。
中空糸膜の性能と強度をバランスさせるためには、紡糸原液中のセルロースアセテート系ポリマー濃度を16質量%以上25質量%以下に設定するのが好ましく、17質量%以上23質量%以下がより好ましい。
血液透析治療は、一般的に3〜5時間を要するが、治療時間にわたって性能が変動することは、臨床上問題となる。総タンパク漏出量(TPL)が初期設定よりも高いと低アルブミン血症となる可能性があり、患者の予後に影響を及ぼす恐れがある。また、β2-ミクログロブリンのクリアランス(CLβ2MG)が初期設定よりも低すぎると、アミロイドーシスの危険性が高まる。一般的にTPLやCLβ2MGはUFRとある程度の相関関係を持っているため、高温下でのUFRの変化をみることにより中空糸膜の耐熱性を図ることが可能である。
出荷当時より強度が低下すると、透析中にリークを起こす危惧が高まる。血液浄化器は、中空糸膜の両端が樹脂により固定されているため、保管期間中や輸送中の高温下での中空糸膜の収縮は致命的なダメージを与えることがある。本発明においては、両端がフリーの状態で中空糸膜をアルミ袋に密封し80℃で1週間放置した後の降伏強度の保持率が90%以上100%以下であるのが好ましい。
出荷当時より肉厚、内径が低下することで、中空糸膜の血液接触側である内表面に皺がよるなどして、臨床使用時に血液の流れが滞り残血が発生する可能性が高まる。このようなことから、中空糸膜をアルミ袋に密封し80℃で1週間放置した後の内径および膜厚の保持率が90%以上100%以下であることが好ましい。
高温下での品質の影響を確認するための手段としては、ダイアライザーをアルミ袋に
入れて密封する。それを80℃の乾燥機に入れる。それらを任意の時間に取り出して品質への影響を確認する。
膜に熱が加わることで、膜構造が変化する。熱によりポリマー間ネットワークの収縮、熱によるポリマーの分解が起こることで、性能が低下したり、逆に増加する。これらを改善するのは、内液凝固系で、ドラフトを1.0〜1.1とすることで、膜構造がネットワークスキン構造が出来る。
更に、ネットワークスキン構造を有する膜を製造時に、Tg以上の温度を5sec以上加える水洗工程と5sec以上加える可塑剤工程がある。膜にかかる熱量がこの特性発現の重要なポイントとなる。各工程においては、0.3〜10%の延伸をすると更に強固な構造が形成される。延伸が少なすぎると強度の効果が薄れ、高すぎると糸切れが発生する。
熱付与開始点は、凝固終了後からで、溶媒、非溶媒を洗浄する工程からである。温度は製造するポリマーにより任意に設定する。この設定はポリマーの持つTg(ガラス転移点)以上にすることであり、好ましくはTg+5℃以上である。高温度にしすぎると素材の熱収縮が起こり、糸切れ、膜構造破壊につながるので、Tg+50℃以下が望ましい。熱を加える時間は、素材により設定する必要があるが、素材が実質設定温度となるための時間が5sec以上必要となる。
また、可塑剤中での熱付加は、製造するポリマーにより任意に設定する。この設定はポリマーの持つTg(ガラス転移点)以上にすることで、好ましくはTg+5℃以上である。高温度にしすぎると素材の熱収縮が起こり、糸切れ、膜構造破壊につながるので、Tg+50℃以下が望ましい。好ましくはTg+30℃以下である。熱を加える時間は、素材により設定する必要があるが、素材が実質設定温度となるための時間が1sec以上必要となる。可塑剤中で実施することで、ポリマー間ネットワークが更に強固な構造になり、糸強度が増加する。本発明において、可塑剤中とは水やグリセリン水溶液などを指す。
本発明の高選択性中空糸膜は、膜構造がネットワークスキン構造をつくることが好ましい。具体的には、電子顕微鏡により1万倍の倍率で中空糸膜の内表面にスキン層、外表面はラフな層となるが、ポリマー部を島、空孔部を海とした場合、ベースが島であり、その島に海が存在した構造をとることが望ましい。
内液凝固系で、ドラフト比を1.1以下とすると、ネットワークスキン構造が出来るのは、相分離をポリマーと溶媒、非溶媒の組成比と内液凝固液の濃度により形成するものである。
ポリマー組成は、内液の組成も遅延型相分離挙動を取る組成にすることが重要である。
溶媒/非溶媒比は8/2以下、好ましくは85/15である。内液の組成比はポリマー組成比と同じとして5%以下である。
加熱温度をTg以上とすると、ポリマー間の緩みが発生して、配向することで熱的耐性が向上する。Tg+5℃以上が必要なのは、走行中のHF全体の緩みが均等に行き渡るためである。Tg+50℃以下とするのは、熱による構造変化、熱劣化が起こるためである。
水洗温度を掛ける時間が5sec以上必要なのは、配向が十分安定化するためである。熱を加える時間は、生産性にて判断すればよい。また、可塑剤での温度も同様である。可塑剤中で延伸、熱付与により構造が安定化する。延伸、温度を上げることで強度が増加する。
延伸が0.3%以上必要なのは、配向させながらポリマーの緩みを解くことで熱に対する構造変化がなくなるからである。最低でも0.3%の延伸を掛けないと、効果が発揮されない。しかし、10%以上引っ張ると糸切れが発生する。
中空糸膜の構造としては、いわゆる均質膜構造、非対称構造、フィンガーボイド構造などがあるが、本願発明においてはいずれの膜構造を有するものでも構わない。均質膜構造を有するものは、そもそもポリマーの絡み合いが比較的剛直であるため、本願発明の効果の程度が小さい傾向にある。比較的空隙率の高い、非対称構造、フィンガーボイド構造を有する中空糸膜において、本願発明の作用効果が顕著に発現し易いので好ましい。
本発明の高選択性中空糸膜の素材は、セルロース、セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロース系高分子、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系高分子、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系高分子、酢酸ビニル、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコール系高分子など、従来から血液浄化膜の素材として使用されている素材が広く利用可能であるが、セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロース誘導体が上記の好ましい特性を得るのに適しており、好ましい。
従来のセルロースアセテート系中空糸膜を得る方法では、紡糸原液の流動性を確保し、所望の性能、品質を得るために、紡糸原液中のポリマー濃度を15%以下とする必要があった。しかしながら、紡糸原液中のポリマー濃度を下げることは、結果的に製膜された中空糸膜中のポリマー密度が低くなるため、中空糸膜強度の低下に繋がる。特に、モジュール作製等で重要となる強度が不足しやすい問題がある。このような強度の低い中空糸膜を使用してモジュールを作製すると、中空糸膜束をモジュールケースに装填する際に中空糸膜が摩擦に耐えられずに切れたり、モジュール端部に樹脂を充填したり中空部の芯液を除去する際に中空糸膜が遠心力に耐えられずに折れたり切れたりするといったモジュール生産性の低下を引き起こす問題が生ずる。
そこで、人工腎臓用中空糸膜に求められる性能を発現しつつモジュール生産性を確保するために、紡糸原液中のポリマー濃度を15%以上30%未満と比較的高く設定して、得られる中空糸膜の強度を確保した。さらに、透水率(UFR)が200ml/(hr・mmHg・m2)以上で、β2MGのクリアランスが50ml/min.(1.5m2)以上、且つアルブミンなどの有用タンパクの漏れ量が3g/(3L除水時)以下という性能を発現させることについて検討した。
一般的に、ポリマー濃度を高くすると、紡糸原液の粘度が高まり流動性が低下するため、ノズル温度を比較的高く設定し、紡糸原液の流動性を確保する必要がある。特に、セルロースアセテート系ポリマーの場合、ポリスルホン系ポリマーなどに比較すると同じポリマー濃度でも紡糸原液粘度が遥かに高くなる。ポリスルホン系ポリマーを使用した紡糸原液の場合は、比較的紡糸原液粘度が低いため、ポリマー濃度を高めても十分ノズルから吐出することが可能であるが、セルロースアセテート系ポリマーの場合は、高々ポリマー濃度が15%程度でもノズル温度を100℃以上に上げる必要がある。ノズル温度を100℃以上にすること自体は特に困難性はないが、中空糸膜内表面に緻密層を形成するためには芯液として水溶液を用いる必要があり、該水溶液の沸騰を防ぐためにノズル温度を少なくとも90℃以下にする必要がある。
高強度のセルロースアセテート系非対称中空糸膜を得るためには、上記したような技術的課題を解決しなければならない。そこで、本発明者らは、紡糸原液の流動性を確保しつつ、芯液の沸騰を防ぐために鋭意検討を行った結果、紡糸原液と芯液とをノズルより吐出する直前まで別々に温度コントロールする手段を見出した。具体的には後述するような手段を用いることで芯液の沸騰を防ぎながら紡糸原液の流動性を確保することに成功し、ついに本発明を完成した。
例えば、血液浄化用の中空糸膜を製造するためには、一般的にスリット外径300〜1000μm、スリット内径200〜900μm、芯液吐出口径100〜600μmの二重管ノズルをノズルブロックに複数本セットし使用する。このように紡糸原液吐出孔の幅および芯液吐出孔径が数百μmしかないので、紡糸原液と芯液とをノズルから吐出される直前まで精密に温度コントロールしておくことは非常に難しい。本発明者らは、吐出直前まで紡糸原液と芯液とを別々に温度コントロールできるよう、ノズルブロック内を熱媒(冷媒)が循環可能な構造に加工したものを用いることにより、該課題を解決した。1つのノズルブロックには、通常数十〜数百のノズルが組み込まれており、それらを均一に温度コントロールする配慮が必要であり、このような技術的困難性をクリアし本発明に至った。
また、従来セルロースアセテート系ポリマーとしては、ダイセル化学工業社よりL-20、30、40、50、70、LT-35、55、105など酢化度、重合度の異なる種々のセルロースアセテート系ポリマーが市販されており、セルローストリアセテートとしては従来6%粘度が250mPa・s以上300mPa・s以下のものを使用していた。前記ノズルブロックの加工により、このような高粘度のポリマーを用いて、ポリマー濃度15%超でも紡糸が可能となり、中空糸膜強度を確保することは可能となった。しかし、さらなる中空糸膜性能の向上と紡糸安定性、モジュール生産性および特に輸送時の保存安定性の向上とを両立するために、6%粘度が140mPa・s超200mPa・s未満という比較的低粘度のセルロースアセテート系ポリマーを用いることを検討した。そして、ついに該低粘度のポリマーを用い、紡糸原液中のポリマー濃度をさらに高めることにより、中空糸膜強度の確保および膜性能の維持向上、それらのバランスの最適化を図ることが可能となった。
本発明において、セルロースアセテート系ポリマーの酢化度は53〜62であることが好ましい。ここで、酢化度はセルロース中の水酸基の酢酸基置換度を表す。酢化度が低いということは、ポリマー鎖中に水酸基が多いことを示し、ポリマーと血液とが接触した際に補体が活性化しやすくなるなど生体適合性の面で不利になることがある。また、酢化度の理論上限は62.5%であるが、酢化度が高すぎると溶解性や成型性が低下する可能性がある。したがって、セルロースアセテート系ポリマーの酢化度は61.5%以下がより好ましい。
酢化度が低いほどポリマーの溶解性や成形性はよくなるが、水酸基が増えるに従い補体活性に代表される血液適合性は低下する傾向にある。したがって、酢化度は55%以上がより好ましく、58%以上がさらに好ましい。
内表面側に薄い緻密層を有し、外側に向かって細孔径が拡大するような非対称構造の中空糸膜は、薄い緻密層が分画特性(β2ミクログロブリンは透過し、アルブミンは透過しない)に寄与し、緻密層以外の部分(支持層)は細孔径が大きいために物質透過の抵抗にならず、β2ミクログロブリンに代表される低分子量タンパクの除去性を高めることが可能となる。また、支持層は主に膜の強度を保持する役割を担うものである。したがって、支持層の厚みを増すに従い、得られる中空糸膜の強度を高めることができ、耐熱性を高めることができるが、そうすると所期の膜性能を発現できなくなる可能性が高まる。逆に、支持層の厚みを薄くすれば、膜性能は高めることができるが、強度や耐熱性が犠牲になるという二律背反の現象になってしまう。
中空糸膜の性能と膜の強度をバランスさせ、保存時の熱安定性を高めるためには、紡糸原液中のセルロースアセテート系ポリマー濃度を16質量%以上25質量%以下に設定するのがより好ましく、17質量%以上23質量%以下がさらに好ましい。
また、ノズルより吐出する際の紡糸原液の粘度としては、溶媒としてN-メチルピロリドン(NMP)、非溶媒としてトリエチレングリコール(TEG)を用い、セルロースアセテート系ポリマー/NMP/TEG=16〜25/49〜77/7〜26で測定したときの粘度が50〜9000mPa・s(50℃)であるのが好ましい。
先述したように、中空糸膜の構造は、物質の分離透過特性を支配する極薄緻密層と、機械的強度を保持し、かつ物質の透過には殆んど影響しない支持層からなる2層又は多層構造が好ましい。特に、中空糸膜の中空部に血液を流し、中空糸膜内側から外側に向かって物質を透過させる場合には、少なくとも中空糸膜内表面側に緻密層があるのが望ましい。内表面側に緻密層がないと、その部分に血中タンパクが付着しやすくなったり、細孔中に侵入しやすくなり、物質透過の障害になる懸念がある。
本発明において、血液の流動安定性を確保するためには中空糸膜の内径を150μm以上300μm以下とするのが好ましい。中空糸膜の内径が小さすぎると血流の線速度が高くなるため、血球成分がダメージを受ける可能性がある。中空糸膜の内径が大きすぎると血液の剪断速度や圧力損失が高まらず、中高分子量物質の透過に寄与するろ過の効果が小さくなり、また不足する膜性能を補うためにモジュール(血液浄化器)のサイズを大きくしなければならないなど使用の利便性を損なう可能性がある。したがって、中空糸膜の内径は160μm以上280μm以下がより好ましく、170μm以上260μm以下がさらに好ましい。
本発明において、中空糸膜の膜厚は10μm以上30μm未満が好ましい。中空糸膜の膜厚が薄すぎると、透過性能は高まるが必要な強度を維持することが困難な場合がある。また膜厚が大きすぎると、物質の透過抵抗が大きくなり、除去物質の透過性が不充分となる可能性がある。また、モジュールのサイズを大きくする必要があるなど、使用の利便性を損なう可能性がある。したがって、中空糸膜の膜厚は12μm以上28μm以下がより好ましく、13μm以上26μm以下がさらに好ましい。
本発明において、セルロースアセテート系ポリマーの溶媒としては、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどを使用するのが好ましい。これらの溶媒は水と良好な相溶性を有し、セルロースアセテート系ポリマーに対して凝固性を示す。また、非溶媒としてはエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、アルコール類などがある。
本発明において、芯液としては前記溶媒、非溶媒および水からなる水溶液が一般に使用できるが、その他に膨潤剤、その他の添加物を含む場合もあり得る。膨潤剤としてはホルムアミド、尿素、リン酸トリエチル、グリオキサール、ブタノール、イソプロパノール等がある。
比較的高粘度のセルロースアセテート系ポリマーを原料として使用する場合、前記芯液の水分含量が低すぎると、ポリマーに対する凝固性が低下するため、紡糸原液中のポリマー濃度を高めても分画特性を決定する極薄緻密層の形成やポロシティが不均一になりやすい。したがって、前記芯液中の水分含量は10質量%以上が好ましい。30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上がさらにより好ましく、水単独で用いるのが特に好ましい。一方、該芯液の水分含量が高くなりすぎるとノズルから吐出された紡糸原液の凝固が急激に進行するために曳糸性が低下し、糸切れや中空糸膜の変形が発生するなどの障害が発生しやすくなる。ここで、前述した低粘度セルロースアセテート系ポリマーを使用すると、理由はよくわからないが、該芯液の水分含量を高めても糸切れの発生のない、良好な紡糸安定性を得ることができることがわかった。
特筆すべきは、芯液を水とした場合でも、なんら曳糸性に影響を与えず、良好な生産性が確保されたことである。芯液の水分含量を高くすることができるということは、芯液と紡糸原液との間で溶媒濃度に差を持たせ易いということであり、すなわち中空糸膜内表面の緻密層の厚みや構造を制御できる幅が広がることに繋がる。また、中空糸膜製造後に芯液を洗浄除去しやすくなるため、作業工数の低減や洗浄処理、排水処理にかかるコスト削減といった副次効果もある。
上記したように、紡糸原液と芯液とを別個に温度コントロールすることにより紡糸原液の吐出温度を高めることが可能となり、また比較的低粘度のポリマーを使用することにより紡糸原液中のポリマー濃度を高めることができるようになった効果として、得られる中空糸膜の強度が向上した。また、比較的低粘度のポリマーを使用することによる別の効果として、中空糸膜の単位体積あたりのポリマー密度(パッキング性)が向上し、硬さの指標でもあるヤング率の高い中空糸膜を得ることが可能となった。
低粘度セルロースアセテート系ポリマーからなる紡糸原液を用いることにより、さらなる効果が確認できた。紡糸原液の流動性が向上したことにより、中空糸膜の性能調整手段の1つであるノズル温度の設定範囲の幅が広がり、紡糸原液の凝固と相分離のバランスを制御し易くなった。凝固と相分離のバランスを制御するとは、すなわち中空糸膜の緻密層の孔径と厚み、および支持層のポロシティとのバランスをとることであり、具体的にはβ2ミクログロブリンの除去性を高めながらアルブミンに代表される有用タンパクの漏洩を極力抑えるということに繋がる。また、後述する中空糸膜製造における溶媒、非溶媒の洗浄除去性の向上やモジュール組立性に寄与する中空糸膜の強度確保にも繋がる。従来の高粘度ポリマーからなる紡糸原液ではノズル温度を後述の工夫を施しても100℃付近までしか下げることができなかったが、低粘度ポリマーを使用することにより、ノズル温度を40℃程度に下げても紡糸原液を均一に安定して吐出することが可能となった。
本発明において、中空糸膜の外表面開孔率は15%以上30%以下が好ましい。また、中空糸膜外表面の孔1個あたりの平均孔面積は0.01μm2以上0.05μm2以下であることが好ましい。外表面開孔率や平均孔面積が大きすぎると、総じて支持層全体の空隙率が高くなるため、中空糸膜に必要な強度を確保できないとか、膜孔保持剤の保持性が低下する可能性がある。一方、中空糸膜の外表面開孔率や平均孔面積が小さすぎると、細孔の非対称性が失われ均質構造に近づいていくことになるので、物質の透過性やろ過安定性が低下することがある。また、中空糸膜の透過拡散特性が低下するためオンラインでの洗浄効率が低下することがある。したがって、中空糸膜の外表面開孔率は16%以上28%以下がより好ましく、17%以上26%以下がさらに好ましい。また、平均孔面積は0.01μm2以上0.04μm2以下がより好ましく、0.02μm2以上0.04μm2以下がさらに好ましい。
ここで、膜孔保持剤とは、中空糸膜の乾燥時に細孔の収縮を防ぐとか、血液浄化器等のモジュールの完全性を試験するためにエアリークテストを実施する際、一時的に細孔を塞いでおく役割を担うものである。膜孔保持剤の具体例としては、グリセリンやグリセリン誘導体やポリエチレングリコールなどが挙げられ、本発明においてはグリセリンを用いるのが好ましい。
従来、均一構造を有する中空糸膜においては、細孔の収縮を防ぐために細孔内に膜孔保持剤を充填しているものがあった。しかし、いわゆる非対称構造を有する中空糸膜においては、細孔径や空隙率が高すぎるために膜孔保持剤が細孔から漏出してしまう問題があり、膜孔保持剤を使用することができなかった。特に、セルロースアセテート系ポリマーからなる中空糸膜は乾燥時や保管時の熱により収縮が起こりやすく、予め収縮を想定した膜設計が必要であった。本願発明の中空糸膜においては、比較的低粘度のポリマーを用いて比較的高濃度の紡糸原液を調製することにより、従来膜に比較して高強度の中空糸膜を得ることができるので、収縮による膜孔保持剤の細孔からの漏出を抑制している。また、開孔率、平均孔面積を小さくすると物質の透過抵抗が大きくなるため、特に低分子タンパク領域の物質の透過性が低下するが、本発明の中空糸膜は膜厚を薄くすることができるので、その分透過性能を向上させることが可能である。
外表面開孔率や平均孔面積を本発明の範囲にするためには、紡糸原液中のポリマー濃度やノズル温度などが影響するが、加えてノズルから吐出された紡糸原液が凝固浴に浸漬されるまでの間の空中走行部の長さを10mm以上600mm以下とするのが好ましい。また、空中走行部を外気と遮断し、内部を0℃以上50℃以下に設定することが好ましい。空中走行部の長さと温度を前記範囲とすることにより、ノズルから吐出された紡糸原液の外表面側のポリマー核の成長を促進することができる。一方、紡糸原液の内表面側では外表面側からの脱溶媒の影響を受けるより前に、芯液によるポリマーの凝固を完了させ緻密層を形成させることが可能となる。
紡糸製膜の安定性を高めるためには空中走行部の長さは10mm以上300mm以下がより好ましく、紡糸口金からの紡糸原液の吐出斑の影響を相殺するには10mm以上150mm以下がさらに好ましい。空中走行部の温度はコントロールが容易な点で3℃以上45℃以下が好ましく、性能面で有用タンパクの漏れ量を抑制するには5℃以上40℃以下がより好ましい。
空中走行部の長さと温度は、ノズルドラフトや紡糸速度により適正範囲が変わるものであって、本発明の範囲はノズルドラフトが1〜5程度、紡糸速度が30〜90m/min.の場合を想定している。
本発明において、適正な中空糸膜外表面を得るためには凝固浴の条件を適正化することも重要な要件の1つである。外表面の開孔率を高めるためには凝固浴中の溶媒濃度を高め、温度を高めることが有効である。溶媒濃度や温度を高めることにより空中走行部で生成したポリマー核を成長させることができ、開孔率、開孔径を拡大することが可能となる。開孔率を15%以上30%以下とするためには、凝固浴中の溶媒濃度が50重量%以上80重量%以下、凝固浴温度が20℃以上70℃以下が好ましい。凝固浴からの中空糸膜の曳きだし性および空中走行部の温度コントロールの容易性を確保する面から、溶媒濃度は55重量%以上77重量%以下、凝固浴温度は30℃以上50℃以下がより好ましく、溶媒濃度が60重量%以上75重量%以下、凝固浴温度が35℃以上45℃以下がさらに好ましい。
以下、本発明の有効性を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(ポリマー粘度の測定)
それぞれの所望の紡糸原液を窒素雰囲気下、180℃にて4時間溶解し、目視で均一溶解していることを確認したのち、サンプルを採取し、B型粘度計(B-8H-HH)[東京計器製]にて温度50℃での粘度を測定する。
(中空糸膜外表面の開孔率)
中空糸膜外表面を10,000倍の電子顕微鏡で観察し、写真(SEM写真)を撮影する。その画像を画像解析ソフトで処理して、中空糸膜外表面の開孔率を求める。画像解析ソフトは、例えばImage Pro Plus(Media Cybernetics,Inc.)を使用して測定する。取り込んだ画像を孔部と閉塞部が識別されるように強調・フィルタ操作を実施する。その後、孔部をカウントし、孔内部に下層のポリマー鎖が見て取れる場合には、孔を結合して一孔とみなしてカウントする。測定範囲の面積(A)、および測定範囲内の孔の面積の累計(B)を求めて開孔率(%)=B/A×100を求める。これを10視野実施してその平均を求める。初期操作としてスケール設定を実施するものとし、また、カウント時には測定範囲境界上の孔は除外しないものとする。
(中空糸膜外表面の開孔部の平均孔面積)
前項と同様にカウントし、各孔の面積を求める。また、カウント時には測定範囲境界上の孔は除外する。これを10視野実施してすべての孔面積の平均を求める。
(透水性)
透析器の血液出口部回路(圧力測定点よりも出口側)を鉗子で挟んで封止した。37℃に保温した純水を加圧タンクに入れ、レギュレーターにより圧力を制御しながら、37℃恒温槽で保温した透析器の血液流路側へ純水を送り、透析液側から流出した濾液量を測定した。膜間圧力差(TMP)は
TMP=(Pi+Po)/2
とする。ここでPiは透析器入り口側圧力、Poは透析器出口側圧力である。TMPを4点変化させ濾過流量を測定し、それらの関係の傾きから透水性(mL/hr/mmHg)を算出した。このときTMPと濾過流量の相関係数は0.999以上でなくてはならない。また回路による圧力損失誤差を少なくするために、TMPは100mmHg以下の範囲で測定する。中空糸膜の透水性は膜面積と透析器の透水性から算出する。
UFR(H)=UFR(D)/A
ここでUFR(H)は中空糸膜の透水性(mL/m2/hr/mmHg)、UFR(D)は透析器の透水性(mL/hr/mmHg)、Aは透析器の膜面積(m2)である。
(降伏強力)
東洋ボールドウイン社製テンシロンUTMIIを用いて、引っ張り速度100mm/min、チャック間距離100mmで測定した。
(中空糸膜の内径、外径、膜厚の測定)
中空糸膜断面のサンプルは以下のようにして得ることができる。測定には中空形成材を洗浄、除去した後、中空糸膜を乾燥させた形態で観察することが好ましい。乾燥方法は問わないが、乾燥により著しく形態が変化する場合には中空形成材を洗浄、除去したのち、純水で完全に置換した後、湿潤状態で形態を観察することが好ましい。中空糸膜の内径、外径および膜厚は、中空糸膜をスライドグラスの中央に開けられたφ3mmの孔に中空糸膜が抜け落ちない程度に適当本数通し、スライドグラスの上下面でカミソリによりカットし、中空糸膜断面サンプルを得た後、投影機Nikon-V-12Aを用いて中空糸膜断面の短径、長径を測定することにより得られる。中空糸膜断面1個につき2方向の短径、長径を測定し、それぞれの算術平均値を中空糸膜断面1個の内径および外径とし、膜厚は(外径−内径)/2で算出した。5断面について同様に測定を行い、平均値を内径、膜厚とした。
(UV)
透析型人工腎臓装置製造承認基準にしたがい、中空糸膜1gに対して水100mlを加える。70℃の温浴に1hr加熱する。その後サンプル液のUV(220〜360nm)の最大の吸収ピーク値をUV値とする。
(H
中空糸膜1gに対して水100mlを加える。70℃の温浴に1時間加熱する。その後サンプル液中の過酸化水素濃度を計測して、中空糸膜重量に対する量を算出する。
(実施例1)
セルローストリアセテート(6%粘度=162mPa・s、ダイセル化学工業社)19.0質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学社)およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社)を85対15の割合で均一に溶解し、ついで製膜溶液の脱泡を行った。得られた製膜溶液を10μm、5μmの2段の焼結フィルターに順に通した後、85℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成剤として予め脱気処理した水とともに同時に吐出した。その際、中空形成剤はノズルブロック中に5℃の冷媒を流し保冷した。また、紡糸原液はブロック中で80℃の熱媒を循環し保温した。紡糸管により外気と遮断された、乾式部を通過後、44℃の70質量%NMP/TEG(85/15)水溶液中で凝固させた。凝固槽より引き出した中空糸膜は、90℃×延伸0.3%の洗浄槽を10sec経た後、引き続き85℃×88質量%×延伸1.0%のグリセリン浴を3sec通過させ、ドライヤーで乾燥し、紡糸速度60m/minで巻き上げた。
(実施例2)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)19.0質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびトリエチレングリコール(TEG)を85対15の割合で均一に溶解し、ついで製膜溶液の脱泡を行った。得られた製膜溶液を10μm、5μmの2段の焼結フィルターに順に通した後、85℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成剤として予め脱気処理した水とともに同時に吐出し、紡糸管により外気と遮断された、乾式部を通過後、44℃の70質量%NMP/TEG(85/15)水溶液中で凝固させ、95℃×延伸0.3%の洗浄槽を10sec経た後、90℃×88質量%×延伸1.0%のグリセリン浴を3sec通過させ、ドライヤーで乾燥し、紡糸速度60m/minで巻き上げた。
(実施例3)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)19.0質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびトリエチレングリコール(TEG)を85対15の割合で均一に溶解し、ついで製膜溶液の脱泡を行った。得られた製膜溶液を10μm、5μmの2段の焼結フィルターに順に通した後、85℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成剤として予め脱気処理した水とともに同時に吐出し、紡糸管により外気と遮断された、乾式部を通過後、44℃の70質量%NMP/TEG(85/15)水溶液中で凝固させ、95℃×延伸5%の洗浄槽を10sec経た後、95℃×88質量%×延伸3.0%のグリセリン浴に3sec通過させ、ドライヤーで乾燥し、紡糸速度60m/minで巻き上げた。
(比較例1)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)19.0質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびトリエチレングリコール(TEG)を85対15の割合で均一に溶解し、ついで製膜溶液の脱泡を行った。得られた製膜溶液を10μm、5μmの2段の焼結フィルターに順に通した後、85℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成剤として予め脱気処理した水とともに同時に吐出し、紡糸管により外気と遮断された、乾式部を通過後、44℃の70質量%NMP/TEG(85/15)水溶液中で凝固させ、55℃×延伸0.3%の洗浄槽を10sec経た後、65℃×88質量%×延伸1.0%のグリセリン浴に3sec通過させ、ドライヤーで乾燥し、紡糸速度60m/minで巻き上げた。
(比較例2)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)19.0質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびトリエチレングリコール(TEG)を85対15の割合で均一に溶解し、ついで製膜溶液の脱泡を行った。得られた製膜溶液を10μm、5μmの2段の焼結フィルターに順に通した後、85℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成剤として予め脱気処理した水とともに同時に吐出し、紡糸管により外気と遮断された、乾式部を通過後、44℃の70質量%NMP/TEG(85/15)水溶液中で凝固させ、55℃×延伸0.3%の洗浄槽を10sec経た後、65℃×88質量%×延伸0.0%のグリセリン浴に3sec通過させ、ドライヤーで乾燥し、紡糸速度60m/minで巻き上げた。
Figure 2010119771
本発明の中空糸膜は、保管時や輸送時の高温度に晒されても品質の安定性に優れるので、臨床使用においても所期性能の発現性に優れる。よって、産業の発展に寄与することが大である。

Claims (5)

  1. 内径が100〜300μm、膜厚が10〜60μm、空孔率が50〜90%である中空糸膜であって、該中空糸膜をアルミ袋に密封し80℃で20hr放置した後の透水性の保持率が100±10%以内であることを特徴とする熱安定性に優れた中空糸膜。
  2. 該中空糸膜をアルミ袋に密封し80℃で1週間放置した後の降伏強度の保持率が90%以上100%以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱安定性に優れた中空糸膜。
  3. 該中空糸膜をアルミ袋に密封し80℃で1週間放置した後の内径および膜厚の保持率が90%以上100%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱安定性に優れた中空糸膜。
  4. 該中空糸膜が少なくとも内表面側にスキン層を有していることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の熱安定性に優れた中空糸膜。
  5. セルローストリアセテートまたは/およびセルロースジアセテートからなることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の熱安定性に優れた中空糸膜。
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