JP2010118298A - 二次電池および負極 - Google Patents

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貴一 廣瀬
Isamu Konishiike
勇 小西池
Kenichi Kawase
賢一 川瀬
Kazunori Noguchi
和則 野口
Noriyuki Fujii
敬之 藤井
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Abstract

【課題】優れたサイクル特性および膨れ特性を得ることが可能な二次電池を提供する。
【解決手段】正極21および負極22と共に電解液を備え、正極21と負極22との間に設けられたセパレータ23に電解液が含浸されている。負極活物質層22Bは、負極集電体22A上に形成されると共に非結晶性の負極活物質を含む非結晶性負極活物質層と、非結晶性負極活物質層上に形成されると共に結晶性の負極活物質を含む結晶性負極活物質層とを有している。負極活物質の物性が経時変化しにくくなると共に、充放電時に負極活物質層が膨張および収縮しにくくなる。また、負極集電体22Aに対する負極活物質層22Bの密着性が向上する。
【選択図】図8

Description

本発明は、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な負極活物質層を負極集電体上に有する負極およびそれを用いた二次電池に関する。
近年、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯電話およびノートパソコンなどのポータブル電子機器が広く普及しており、その小型化、軽量化および長寿命化が強く求められている。これに伴い、電源として、電池、特に小型かつ軽量で高エネルギー密度を得ることが可能な二次電池の開発が進められている。
中でも、充放電反応にリチウムイオンの吸蔵および放出を利用するリチウムイオン二次電池は、鉛電池およびニッケルカドミウム電池よりも高いエネルギー密度が得られるため、広く実用化されている。
リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを吸蔵および放出することが可能な正極活物質を含む正極と、リチウムイオンを吸蔵および放出することが可能な負極活物質を含む負極と、電解質とを備えている。
負極活物質としては、炭素材料が広く用いられている。しかしながら、最近では、ポータブル電子機器の高性能化および多機能化に伴い、電池容量のさらなる向上が求められていることから、炭素材料に代えてケイ素を用いることが検討されている。ケイ素の理論容量(4199mAh/g)は黒鉛の理論容量(372mAh/g)よりも格段に大きいため、電池容量の大幅な向上が期待されるからである。
負極活物質としてケイ素を用いる場合には、負極活物質層の形成方法として、蒸着法などの気相法が用いられている。負極集電体の表面にケイ素が直接堆積されることにより、負極活物質が負極集電体に連結(固定)されるため、充放電時において負極活物質層が膨張および収縮しにくくなるからである。
しかしながら、この場合には、以下の理由により、二次電池の重要な特性であるサイクル特性および膨れ特性の低下が懸念される。
第1に、充放電時においてリチウムイオンを吸蔵した負極活物質が高活性になるため、電解質が分解すると共にリチウムイオンの一部が不活性化しやすくなる。これにより、充放電を繰り返すと、放電容量が低下すると共に電解質の分解により電池内にガスが発生しやすくなる。
第2に、負極活物質が負極集電体に連結されていても、充放電時における負極活物質層の膨張および収縮の程度によっては、負極活物質層が割れると共に負極集電体から脱落する可能性がある。これにより、充放電を繰り返すと、放電容量が低下しやすくなる。また、負極活物質層が激しく膨張および収縮すると、その影響を受けて負極集電体が変形しやすくなる。
第3に、ケイ素の堆積膜が非結晶性(非晶質)になるため、負極活物質が酸化の影響を受けやすくなる。このため、負極活物質の物性が経時変化すると共に負極集電体に対する負極活物質層の密着強度が低下しやすくなる。これにより、充放電を繰り返すと、放電容量が低下しやすくなる。
そこで、リチウムイオン二次電池の諸性能を改善するために、いくつかの技術が提案されている。具体的には、電池容量などを改善するために、三次元網状のプラスチック基体に鍍金処理を施して、そのプラスチック基体の表面部から最奥部に至る三次元網状の全格子表面を覆うように金属層を形成している(例えば、特許文献1参照。)。また、サイクル特性を改善するために、ケイ素層と銀層とを交互に積層させて陰極活物質層を形成している(例えば、特許文献2参照。)。また、電池容量およびサイクル特性などを改善するために、炭素質材料を含む層上に、蒸着法などを用いてリチウムイオン導電性を有する材料(ケイ素など)を含む層を積層させている(例えば、特許文献3〜5参照。)。また、充電容量を改善するために、集電体側の平均空隙率よりも集電体側とは反対側の平均空隙率が大きくなるように負極材料層を形成している(例えば、特許文献6参照。)。また、サイクル特性を改善するために、複数の傾斜柱状粒子を含むと共に集電体側の平均空隙率が集電体側とは反対側の平均空隙率よりも小さくなるように活物質層を形成している(例えば、特許文献7参照。)。さらに、電池出力を改善するために、表面側の空隙率が金属集電体側の空隙率よりも大きくなるように活物質層を形成している(例えば、特許文献8参照。)。
特開平06−349481号公報 特開2002−198037号公報 特開2003−297353号公報 特開2003−303618号公報 特開2004−164921号公報 特開2003−077463号公報 特開2007−194076号公報 特開2007−214038号公報
この他、サイクル特性を改善することを目的とした関連技術も提案されている。具体的には、負極集電体と負極活物質層との間に、超弾性あるいは形状記憶効果を有する材料を含む中間層を形成している(例えば、特許文献9参照。)。また、負極集電体と負極活物質層との間に、導電性粒子および結着材を含む導電性接着層を形成している(例えば、特許文献10参照。)。さらに、気相法を用いて成長させた第1粒子を有する下層と、塗布法を用いて堆積させた第2粒子を有する上層とが積層されるように、負極活物質層を形成している(例えば、特許文献11参照。)。
特開2005−141991号公報 特開2007−123141号公報 特開2007−122915号公報
近年、ポータブル電子機器は益々高性能化および多機能化しており、その消費電力は増大しているため、二次電池の充放電は頻繁に繰り返される傾向にある。そこで、二次電池を高頻度で安全に使用するために、サイクル特性および膨れ特性についてより一層の向上が望まれている。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、優れたサイクル特性および膨れ特性を得ることが可能な負極およびそれを用いた二次電池を提供することにある。
本発明の二次電池は、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な正極と、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な負極と、溶媒および電解質塩を含む電解質とを備え、負極が負極集電体上に負極活物質層を有し、負極活物質層が、負極集電体上に形成されると共に非結晶性の負極活物質を含む非結晶性負極活物質層と、非結晶性負極活物質層上に形成されると共に結晶性の負極活物質を含む結晶性負極活物質層とを含むものである。また、本発明の負極は、負極集電体上に電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な負極活物質層を有し、負極活物質層が、負極集電体上に形成されると共に非結晶性の負極活物質を含む非結晶性負極活物質層と、非結晶性負極活物質層上に形成されると共に結晶性の負極活物質を含む結晶性負極活物質層とを含むものである。
本発明の負極によれば、負極活物質層が、負極集電体上に形成されると共に非結晶性の負極活物質を含む非結晶性負極活物質層と、非結晶性負極活物質層上に形成されると共に結晶性の負極活物質を含む結晶性負極活物質層とを含む。この場合には、負極活物質層が非結晶性負極活物質層だけを有する場合と比較して、負極活物質の物性が経時変化しにくくなると共に、電極反応時に負極活物質層が膨張および収縮しにくくなる。また、負極活物質層が結晶性負極活物質層だけを有する場合と比較して、負極集電体に対する負極活物質層の密着性が向上する。したがって、本発明の負極を用いた二次電池によれば、優れたサイクル特性および膨れ特性を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。

1.負極
2.負極を用いた電気化学デバイス(二次電池)
2−1.第1の二次電池(電池構造:角型)
2−2.第2の二次電池(電池構造:円筒型)
2−3.第3の二次電池(電池構造:ラミネートフィルム型)
<1.負極>
図1は、本発明の一実施の形態に係る負極の断面構成を表している。この負極は、例えば二次電池などの電気化学デバイスに用いられるものであり、一対の面を有する負極集電体1上に負極活物質層2を有している。
[負極集電体]
負極集電体1は、良好な電気化学的安定性、電気伝導性および機械的強度を有する材料により構成されていることが好ましい。このような材料としては、例えば、銅、ニッケルあるいはステンレスなどが挙げられ、中でも、銅が好ましい。高い電気伝導性が得られるからである。
負極集電体1の表面は、粗面化されていることが好ましい。いわゆるアンカー効果により、負極集電体1と負極活物質層2との間の密着性が向上するからである。この場合には、少なくとも負極活物質層2と対向する領域において、負極集電体1の表面が粗面化されていればよい。粗面化の方法としては、例えば、電解処理により微粒子を形成する方法などが挙げられる。この電解処理とは、電解槽中において電解法により負極集電体1の表面に微粒子を形成して凹凸を設ける方法である。電解法により作製された銅箔は、一般に「電解銅箔」と呼ばれている。この他、粗面化の方法としては、例えば、圧延銅箔をサンドブラスト処理する方法なども挙げられる。
負極集電体1の表面の十点平均粗さRzは、特に限定されないが、中でも、1.5μm以上であることが好ましい。この場合には、1.5μm以上30μm以下であることがより好ましく、3μm以上30μm以下であることがさらに好ましい。負極集電体1と負極活物質層2との間の密着性がより高くなるからである。詳細には、1.5μmよりも小さいと、十分な密着性が得られない可能性があり、一方、30μmよりも大きいと、かえって密着性が低下する可能性がある。
[負極活物質層]
負極活物質層2は、例えば、負極集電体1の両面に設けられている。ただし、負極活物質層2は、負極集電体1の片面だけに設けられていてもよい。
この負極活物質層2は、負極活物質として、例えばリチウムイオンなどの電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種あるいは2種以上を含んでいる。なお、負極活物質層2は、必要に応じて、上記した負極活物質の他に、導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。
負極材料としては、ケイ素を構成元素として有する材料が好ましい。電極反応物質を吸蔵および放出する能力が優れているため、高いエネルギー密度が得られるからである。このような材料は、ケイ素の単体、合金あるいは化合物でもよいし、それらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有するものでもよい。中でも、ケイ素の単体、合金および化合物のうちの少なくとも1種が好ましく、ケイ素の単体がより好ましい。
なお、本発明における合金には、2種以上の金属元素を有するものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを有するものも含まれる。もちろん、上記した合金は、非金属元素を有していてもよい。その組織には、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物、あるいはそれらの2種以上の共存などがある。
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の構成元素として、以下の元素のうちの少なくとも1種を有するものなどが挙げられる。スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム(In)、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス(Bi)、アンチモンおよびクロムなどである。
ケイ素の化合物としては、例えば、ケイ素以外の構成元素として、酸素および炭素(C)を有するものなどが挙げられる。なお、ケイ素の化合物は、例えば、ケイ素以外の構成元素として、ケイ素の合金について説明した一連の元素のいずれか1種あるいは2種以上を有していてもよい。
ケイ素の合金あるいは化合物の一例としては、以下のものが挙げられる。SiB4 、SiB6 、Mg2 Si、Ni2 Si、TiSi2 、MoSi2 、CoSi2 、NiSi2 、CaSi2 、CrSi2 、Cu5 Si、FeSi2 、MnSi2 、NbSi2 、あるいはTaSi2 である。また、VSi2 、WSi2 、ZnSi2 、SiC、Si3 4 、Si2 2 O、SiOv (0<v≦2)、SnOw (0<w≦2)、あるいはLiSiOなどである。
負極活物質は、上記したケイ素に加えて、酸素を構成元素として有していることが好ましい。電極反応時に負極活物質層2の膨張および収縮が抑制されるからである。この場合には、少なくとも一部の酸素が一部のケイ素と結合していることが好ましい。その結合の状態は、一酸化ケイ素あるいは二酸化ケイ素でもよいし、他の準安定状態でもよい。
負極活物質中の酸素含有量は、特に限定されないが、中でも、1.5原子数%以上40原子数%以下であることが好ましい。負極活物質層2の膨張および収縮が抑制されるからである。詳細には、1.5原子数%よりも少ないと、負極活物質層2の膨張および収縮が十分に抑制されない可能性があり、一方、40原子数%よりも多いと、抵抗が増大しすぎる可能性がある。なお、電気化学デバイスにおいて負極が電解質と一緒に用いられる場合には、その電解質の分解により形成される被膜などは負極活物質に含めないこととする。すなわち、負極活物質中の酸素含有量を算出する場合には、上記した被膜中の酸素は含めないようにする。
この酸素を有する負極活物質は、例えば、負極材料を堆積させる際に、チャンバ内に連続的に酸素ガスを導入することにより形成される。特に、酸素ガスを導入しただけでは所望の酸素含有量が得られない場合には、チャンバ内に酸素の供給源として液体(例えば水蒸気など)を導入してもよい。
また、負極活物質は、上記したケイ素に加えて、金属元素を構成元素として有していることが好ましい。負極活物質の抵抗が低下すると共に、電極反応時に負極活物質層2の膨張および収縮が抑制されるからである。このような金属元素としては、以下の元素のうちの少なくとも1種が挙げられる。鉄、ニッケル、モリブデン、チタン、クロム、コバルト、銅、マンガン、亜鉛、ゲルマニウム、アルミニウム、ジルコニウム、銀、スズ、アンチモンおよびタングステンである。負極活物質中における金属元素の含有量は、特に限定されない。ただし、負極が二次電池に用いられる場合には、金属元素の含有量が多くなりすぎると、所望の電池容量を得るために負極活物質層2を厚くしなければならないため、その負極活物質層2が割れると共に負極集電体1から剥がれる可能性がある。
この負極活物質は、全体に渡って金属元素を有していてもよいし、一部において金属元素を有していてもよい。この場合における負極活物質の状態は、完全な合金となった状態(合金状態)でもよいし、完全な合金となるまでには至らずにケイ素と金属元素とが混在している状態(化合物状態あるいは相分離状態)でもよい。この負極活物質の状態については、例えば、エネルギー分散型蛍光X線分析(energy dispersive x-ray fluorescence spectroscopy :EDX)により確認できる。
この金属元素を有する負極活物質は、例えば、負極材料を堆積させる際に、合金粒子を形成材料として用いたり、負極材料と一緒に金属材料を堆積させることにより形成される。
また、負極活物質は、その層中(厚さ方向)において、より高い酸素含有量を有する高酸素含有領域と、より低い酸素含有量を有する低酸素含有領域とを含んでいることが好ましい。電極反応時に負極活物質層2の膨張および収縮が抑制されるからである。低酸素含有領域における酸素の含有量は、できるだけ少ないことが好ましい。高酸素含有領域における酸素の含有量は、例えば、上記した負極活物質中の酸素含有量と同様である。
この場合には、低酸素含有領域により高酸素含有領域が挟まれていることが好ましく、低酸素含有領域と高酸素含有領域とが交互に繰り返して積層されていることがより好ましい。負極活物質層2の膨張および収縮がより抑制されるからである。低酸素含有領域と高酸素含有領域とが交互に積層される場合には、負極活物質中において酸素含有量が高低を繰り返しながら分布することになる。
高酸素含有領域および低酸素含有領域を含む負極活物質は、例えば、負極材料を堆積させる際に、チャンバ内に断続的に酸素ガスを導入したり、チャンバ内に導入する酸素ガスの量を変化させることにより形成される。もちろん、酸素ガスを導入しただけでは所望の酸素含有量が得られない場合には、チャンバ内に液体(例えば水蒸気など)を導入してもよい。
なお、高酸素含有領域と低酸素含有領域との間では、酸素含有量が明確に異なっていてもよいし、明確に異なっていなくてもよい。特に、上記した酸素ガスの導入量を連続的に変化させた場合には、酸素含有量も連続的に変化してもよい。高酸素含有領域および低酸素含有領域は、酸素ガスの導入量を断続的に変化させた場合にはいわゆる「層」となり、酸素ガスの導入量を連続的に変化させた場合には「層」というよりもむしろ「層状」となる。この場合には、高酸素含有領域と低酸素含有領域との間において、酸素の含有量が段階的あるいは連続的に変化していることが好ましい。酸素の含有量が急激に変化すると、イオンの拡散性が低下したり、抵抗が増大する可能性があるからである。
この負極活物質は、複数の粒子状であることが好ましい。この場合には、負極活物質は、単一の堆積工程により形成された単層構造を有していてもよいし、複数回の堆積工程により形成された多層構造を有していてもよい。ただし、堆積時に高熱を伴う場合には、負極活物質が多層構造を有していることが好ましい。堆積工程を複数回に分割して行うことにより、その堆積工程を1回で行う場合と比較して、負極集電体1が高熱に晒される時間が短くなるからである。
なお、負極活物質層2は、負極材料としてケイ素を構成元素として有する材料を含んでいれば、他の負極材料を含んでいてもよい。
他の負極材料としては、例えば、電極反応物質を吸蔵よび放出することが可能であると共に金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として有する材料(ケイ素を構成元素として有する材料に該当するものを除く)が挙げられる。高いエネルギー密度が得られるからである。このような材料は、金属元素あるいは半金属元素の単体、合金あるいは化合物でもよいし、それらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有するものでもよい。
上記した金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、電極反応物質と合金を形成することが可能な金属元素あるいは半金属元素が挙げられ、具体的には、以下の元素のうちの少なくとも1種である。マグネシウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、スズおよび鉛(Pb)である。また、ビスマス、カドミウム(Cd)、銀、亜鉛、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)および白金(Pt)である。中でも、スズが好ましい。電極反応物質を吸蔵および放出する能力が優れているため、高いエネルギー密度が得られるからである。スズを有する材料は、スズの単体、合金あるいは化合物でもよいし、それらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有するものでもよい。
スズの合金としては、例えば、スズ以外の構成元素として、ケイ素、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムのうちの少なくとも1種を有するものなどが挙げられる。スズの化合物としては、例えば、スズ以外の構成元素として、酸素あるいは炭素を有するものなどが挙げられる。なお、スズの化合物は、例えば、スズ以外の構成元素として、スズの合金について説明した一連の元素のいずれか1種あるいは2種以上を有していてもよい。スズの合金あるいは化合物の一例としては、SnSiO3 、LiSnO、あるいはMg2 Snなどが挙げられる。
特に、スズを有する材料としては、例えば、スズを第1の構成元素とし、それに加えて第2および第3の構成元素を有するものが好ましい。負極が二次電池に用いられた場合に、サイクル特性が向上するからである。第2の構成元素は、以下の元素のうちの少なくとも1種である。コバルト、鉄、マグネシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウムおよびジルコニウムである。また、ニオブ、モリブデン、銀、インジウム、セリウム(Ce)、ハフニウム、タンタル、タングステン、ビスマスおよびケイ素である。第3の構成元素は、ホウ素、炭素、アルミニウムおよびリンのうちの少なくとも1種である。
中でも、スズ、コバルトおよび炭素を有すると共に、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下、スズおよびコバルトの含有量の割合(Co/(Sn+Co))が30質量%以上70質量%以下であるSnCoC含有材料が好ましい。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られるからである。SnCoC含有材料では、構成元素である炭素のうちの少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素あるいは半金属元素と結合していることが好ましい。スズなどの凝集あるいは結晶化が抑制されるからである。
このSnCoC含有材料は、スズ、コバルトおよび炭素を含む相を有しており、その相は、低結晶性あるいは非晶質の相であることが好ましい。この相は、電極反応物質と反応可能な反応相であり、その反応相の存在により優れた特性が得られるようになっている。この相のX線回折により得られる回折ピークの半値幅は、特定X線としてCuKα線を用いると共に挿引速度を1°/minとした場合に、回折角2θで1°以上であることが好ましい。電極反応物質がより円滑に吸蔵および放出されると共に、電解質などとの反応性がより低減するからである。なお、SnCoC含有材料は、低結晶性あるいは非晶質の相に加えて、各構成元素の単体または一部を含む相を有している場合もある。
なお、SnCoC含有材料は、必要に応じて、さらに他の構成元素を有していてもよい。このような他の構成元素としては、ケイ素、鉄、ニッケル、クロム、インジウム、ニオブ、ゲルマニウム、チタン、モリブデン、アルミニウム、リン、ガリウムあるいはビスマスなどが挙げられ、それらの2種以上でもよい。
このSnCoC含有材料の他、スズ、コバルト、鉄および炭素を有するSnCoFeC含有材料も好ましい。このSnCoFeC含有材料の組成は、任意に設定可能である。例えば、鉄の含有量を少なめに設定する場合の組成は、以下の通りである。炭素の含有量は9.9質量%以上29.7質量%以下、鉄の含有量は0.3質量%以上5.9質量%以下、スズおよびコバルトの含有量の割合(Co/(Sn+Co))は30質量%以上70質量%以下である。また、例えば、鉄の含有量を多めに設定する場合の組成は、以下の通りである。炭素の含有量は11.9質量%以上29.7質量%以下である。また、スズ、コバルトおよび鉄の含有量の割合((Co+Fe)/(Sn+Co+Fe))は26.4質量%以上48.5質量%以下、コバルトおよび鉄の含有量の割合(Co/(Co+Fe))は9.9質量%以上79.5質量%以下である。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られるからである。このSnCoFeC含有材料の物性等は、上記したSnCoC含有材料と同様である。
また、他の負極材料としては、例えば、炭素材料が挙げられる。電極反応物質の吸蔵および放出に伴う結晶構造の変化が非常に少ないと共に、高いエネルギー密度が得られるからである。また、導電剤としても機能するからである。この炭素材料は、例えば、易黒鉛化性炭素、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化性炭素、あるいは(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛などである。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭あるいはカーボンブラック類などがある。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどが含まれる。有機高分子化合物焼成体とは、フェノール樹脂やフラン樹脂などを適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。なお、炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状あるいは鱗片状のいずれでもよい。
さらに、他の負極材料としては、例えば、金属酸化物あるいは高分子化合物が挙げられる。金属酸化物は、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウムあるいは酸化モリブデンなどである。高分子化合物は、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンあるいはポリピロールなどである。
もちろん、負極材料は、上記以外のものでもよい。また、一連の負極活物質は、任意の組み合わせで2種以上混合されてもよい。
負極活物質層2は、負極集電体1上に形成された下層と、その上に形成された上層とを含んでいる。この下層は、非結晶性の負極活物質を含む非結晶性負極活物質層2Xであり、上層は、結晶性の負極活物質を含む結晶性負極活物質層2Yである。
負極活物質層2が非結晶性負極活物質層2Xおよび結晶性負極活物質層2Yを上記した位置関係で有しているのは、以下の理由による。第1に、負極集電体1に対して非結晶性負極活物質層2Xが隣接することにより、結晶性負極活物質層2Yが隣接する場合と比較して、負極集電体1と負極活物質層2との間の密着性が向上するからである。第2に、結晶性負極活物質層2Yにおける結晶性の負極活物質は、非結晶性の負極活物質と比較して酸化しにくいため、その物性が経時変化しにくいからである。第3に、結晶性の負極活物質を含む結晶性負極活物質層2Yは、電極反応時に膨張および収縮しにくいからである。
負極活物質の結晶状態(結晶性あるは非結晶性)については、X線回折により確認できる。具体的には、負極活物質を分析した結果、シャープなピークが検出された場合には結晶性であり、一方、ブロードなピークな検出された場合には非結晶性である。
非結晶性負極活物質層2Xは、例えば、蒸着法、スパッタ法あるいはCVD法などの気相法などにより形成されており、中でも、蒸着法、スパッタ法およびCVD法のうちの少なくとも1種により形成されていることが好ましい。負極活物質が非結晶性になりやすいため、負極集電体1に対する負極活物質層2の密着性が高くなるからである。ただし、非結晶性負極活物質層2Xは、負極活物質が非結晶性になれば、蒸着法等以外の方法により形成されていてもよい。
非結晶性負極活物質層2Xにおける非結晶性の負極活物質は、負極集電体1上に配列されると共にその表面に連結された複数の粒子状であることが好ましい。非結晶性の負極活物質が負極集電体1に連結されていると、非結晶性負極活物質層2Xが負極集電体1に対して物理的に固定されるため、電極反応時に非結晶性負極活物質層2Xが膨張および収縮しにくくなるからである。
上記した「負極活物質が負極集電体1に連結されている」とは、負極材料が負極集電体1の表面上に直接堆積されて非結晶性負極活物質層2Xが形成されていることを意味している。このため、例えば塗布法あるいは焼結法などにより非結晶性負極活物質層2Xが形成されている場合には、負極活物質が負極集電体1に連結されていることにはならない。この場合には、負極活物質が他の材料(例えば結着剤など)を介して負極集電体1に間接的に連結されていたり、単に負極活物質が負極集電体1の表面に隣接しているにすぎない。
なお、非結晶性の負極活物質は、少なくとも一部において負極集電体1に連結されていればよい。一部だけでも負極集電体1に連結されていれば、全く連結されていない場合と比較して、負極集電体1に対する非結晶性負極活物質層2Xの密着強度が向上するからである。
非結晶性の負極活物質が蒸着法などの堆積法により形成される場合には、その非結晶性負極活物質は、単一の堆積工程により形成された単層構造を有していてもよいし、複数回の堆積工程により形成された多層構造を有していてもよい。ただし、堆積時に高熱を伴う場合には、非結晶性の負極活物質は多層構造を有していることが好ましい。負極材料の堆積工程を複数回に分割して行う(負極材料を順次薄く形成して堆積させる)ことにより、その堆積工程を1回で行う場合と比較して、負極集電体1が高熱に晒される時間が短くなるため、熱的ダメージを受けにくくなるからである。
この場合には、非結晶性の負極活物質は、負極集電体1との界面の少なくとも一部において合金化していることが好ましい。詳細には、両者の界面において、負極集電体1の構成元素が負極活物質に拡散していてもよいし、負極活物質の構成元素が負極集電体1に拡散していてもよいし、両者の構成元素が互いに拡散しあっていてもよい。
結晶性負極活物質層2Yは、例えば、溶射法などにより形成されている。負極活物質が結晶性になりやすいため、その負極活物質の物性が経時変化しにくいからである。また、結晶性負極活物質層2Yが電極反応時に膨張および収縮しにくいからである。ただし、結晶性負極活物質層2Yは、負極活物質が結晶性になれば、溶射法以外の方法により形成されていてもよい。
結晶性負極活物質層2Yにおける結晶性の負極活物質は、複数の粒子状であることが好ましい。この場合には、結晶性の負極活物質の形状はどのような形状でもよいが、中でも、負極活物質のうちの少なくとも一部は扁平状であることが好ましい。負極活物質同士が接触しやすくなると共に重なりやすくなるため、負極活物質間の接触点が多くなるからである。これにより、負極活物質層2内の電子伝導性が高くなる。この「扁平状」とは、負極集電体1の表面に沿った方向に延在する形状、すなわち負極集電体1の表面に沿った方向に長軸を有すると共にその表面と交差する方向に短軸を有する略楕円状であることを意味している。この扁平形状は、例えば、溶射法により負極材料が堆積された場合において見られる特徴である。この場合には、負極材料の溶融温度を高くすれば、負極活物質が扁平状になりやすい傾向にある。
X線回折により得られる結晶性の負極活物質の(111)結晶面における回折ピークの半値幅(2θ)は、特に限定されないが、中でも、20°以下であることが好ましい。また、同結晶面に起因する結晶子サイズは、特に限定されないが、中でも、100nm以上であることが好ましい。結晶性の負極活物質の物性がより経時変化しにくくなると共に、電極反応物質の拡散性が低下しにくくなるからである。
結晶性負極活物質層2Yは、その内部に、空隙を有していることが好ましい。電極反応時に結晶性負極活物質層2Yが膨張および収縮した場合の逃げ場(緩和スペース)が得られるため、その結晶性負極活物質層2Yが膨張および収縮しにくくなるからである。
非結晶性負極活物質層2Xの厚さをT1、結晶性負極活物質層2Yの厚さをT2としたとき、それらの厚さ比(T1/(T1+T2))は、特に限定されない。上記したように、非結晶性負極活物質層2Xおよび結晶性負極活物質層2Yのそれぞれにより固有の利点が得られるため、いずれか一方だけである場合と比較して、多くの(複合的な)利点が得られるからである。
中でも、厚さ比は、0.5以下であることが好ましく、0.2以下であることがより好ましい。負極全体の性能には、非結晶性負極活物質層2Xにより得られる密着性に関する利点よりも、結晶性負極活物質層2Yにより得られる物性変化および膨張収縮性に関する利点が大きな影響を及ぼすからである。なお、厚さT1,T2の決定方法については、後述する(図2参照)。
ここで、負極の詳細な構成例について説明する。
図2〜図6は、図1に示した負極の一部を拡大して表している。図2〜図6において、(A)は走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope:SEM)写真(二次電子像)であり、(B)は(A)に示したSEM像の模式絵である。
なお、図2〜図5では、負極活物質がケイ素の単体である場合を示しており、図6では、負極活物質がケイ素および金属元素を有する材料である場合を示している。また、図2では、図1に示したように、負極集電体1上に非結晶性負極活物質層2Xおよび結晶性負極活物質層2Yを積層形成した場合を示している。これに対して、図3〜図6では、負極集電体1上に非結晶性負極活物質層2Xあるいは結晶性負極活物質層2Yを単独で形成した場合を示している。図3〜図6において、非結晶性負極活物質層2Xあるいは結晶性負極活物質層2Yを単独で形成した場合を示しているのは、それらの断面構造を見やすくするためである。
負極活物質層2は、例えば、蒸着法などにより負極集電体1の表面に非結晶性負極活物質層2Xが形成されたのち、溶射法などにより非結晶性負極活物質層2X上に結晶性負極活物質層2Yが形成されたものである。この場合には、非結晶性負極活物質層2Xは、非結晶性である複数の粒子状の負極活物質(負極活物質粒子201X)を含んでいると共に、結晶性負極活物質層2Yは、結晶性である複数の粒子状の負極活物質(負極活物質粒子201Y)を含んでいる。
非結晶性負極活物質層2Xにおいて、複数の負極活物質粒子201Xは、負極集電体1の表面に配列されていると共に、その根本において負極集電体1の表面に連結されている。負極集電体1が粗面化された電解銅箔などである場合には、その表面に存在する複数の突起部(例えば微粒子)ごとに負極材料が堆積されるため、その突起部ごとに負極活物質粒子201Xが成長するからである。各負極活物質粒子201X間に隙間202が生じているのは、上記した突起部ごとに負極活物質粒子201Xが成長した証拠である。なお、図2および図3では、負極活物質粒子201Xが多層構造を有している場合を示している。この場合には、負極活物質粒子201Xの内部まで隙間202が生じており、その隙間202により各階層が仕切られている。
結晶性負極活物質層2Yにおいて、複数の負極活物質粒子201Yは、図4および図5に示したように、負極活物質層2の厚さ方向に積み重ねられた多層構造を有していてもよい。あるいは、複数の負極活物質粒子201Yは、図6に示したように、厚さ方向と交差する方向に配列された単層構造を有していてもよい。この結晶性負極活物質層2Yは、その内部に、複数の空隙202Kを有している。
負極活物質粒子201Yのうちの少なくとも一部は、例えば、扁平状である。すなわち、複数の負極活物質粒子201Yは、図5に示したように、扁平粒子201YPを含んでいる。この扁平粒子201YPは、隣り合う負極活物質粒子201Yと重なり合うように接触している。
負極活物質粒子201Yがケイ素および金属元素を有する場合には、例えば、その負極活物質粒子201Yのうちの一部がケイ素および金属元素を有している。この場合における負極活物質粒子201Yの状態は、合金状態(AP)でもよいし、化合物(相分離)状態(SP)でもよい。なお、ケイ素だけを有しており、金属元素を有していない負極活物質粒子201Yの状態は、単体状態(MP)である。
これらの3つの結晶状態(MP,AP,SP)は、図6中に明確に示されている。すなわち、単体状態(MP)の負極活物質粒子201Yは、均一な灰色の領域として観察される。合金状態(AP)の負極活物質粒子201Yは、均一な白色の領域として観察される。相分離状態(SP)の負極活物質粒子201Yは、灰色部分と白色部分とが混在した領域として観察される。
ここで、厚さT1,T2の決定方法は、以下の通りである。まず、SEM(倍率=500倍)を用いて、負極の断面(図2)をランダムに(観察場所を任意に変更しながら)10枚観察する。続いて、SEM像ごとに、非結晶性負極活物質層2X(負極活物質粒子201X)の厚さT1および結晶性負極活物質層2Y(負極活物質粒子201Y)の厚さT2を測定する。この場合には、負極活物質層2の厚さ方向において負極活物質粒子201X,201Yが重なっている箇所に基準線S(負極集電体1の表面に垂直な線)を引いたのち、その基準線Sに沿って厚さT1,T2を測定する。厚さT1は、基準線Sに沿った負極活物質粒子201Xの下端から上端までの距離であり、厚さT2は、基準線Sに沿った負極活物質粒子201Yの下端から上端までの距離である。最後に、SME像ごとに測定した厚さT1,T2の平均値を算出することにより、その平均値を最終的な厚さT1,T2として決定する。
この負極は、例えば、以下の手順により製造される。
最初に、粗面化された電解銅箔などからなる負極集電体1を準備する。続いて、蒸着法などを用いて負極材料を負極集電体1の表面に堆積させて、非結晶性の負極活物質を含む非結晶性負極活物質層2Xを形成する。最後に、溶射法を用いて負極材料を非結晶性負極活物質層2Xの表面に堆積させて、結晶性の負極活物質を含む結晶性負極活物質層2Yを形成する。これにより、非結晶性負極活物質層2Xおよび結晶性負極活物質層2Yがこの順に積層された負極活物質層2が形成されるため、負極が完成する。
負極活物質層2を形成する場合には、例えば、非結晶性負極活物質層2Xおよび結晶性負極活物質層2Yの形成工程において負極材料の堆積時間を調整することにより、厚さ比を変化させることができる。
この負極によれば、負極活物質層2は、負極集電体1上に形成されると共に非結晶性の負極活物質を含む非結晶性負極活物質層2Xと、その非結晶性負極活物質層2X上に形成されると共に結晶性の負極活物質を含む結晶性負極活物質層2Yとを含んでいる。この場合には、負極活物質層2が非結晶性負極活物質層2Xだけを有する場合と比較して、負極活物質の物性が経時変化しにくくなると共に、電極反応時に負極活物質層2が膨張および収縮しにくくなる。また、負極活物質層2が結晶性負極活物質層2Yだけを有する場合と比較して、負極集電体1に対する負極活物質層2の密着性が向上する。したがって、電気化学デバイスの性能向上に寄与することができる。より具体的には、負極が二次電池に用いられる場合には、サイクル特性および膨れ特性の向上に寄与することができる。
特に、結晶性負極活物質層2Yにおいて、X線回折により得られる結晶性の負極活物質の(111)結晶面における回折ピークの半値幅が20°以下であり、あるいは同結晶面に起因する結晶子サイズが100nm以上であれば、より高い効果を得ることができる。
また、非結晶性負極活物質層2Xおよび結晶性負極活物質層2Yの厚さ比が0.5以下、好ましくは0.2以下であれば、より高い効果を得ることができる。
また、負極活物質が酸素を有し、その負極活物質中の酸素含有量が1.5原子数%以上40原子数%以下であり、あるいは負極活物質が鉄などの金属元素を有していれば、より高い効果を得ることができる。同様に、負極活物質が高酸素含有領域および低酸素含有領域を含んでいれば、より高い効果を得ることができる。
また、負極集電体1の表面が粗面化されていれば、負極集電体1と負極活物質層2との間の密着性を高めることができる。この場合には、負極集電体1の表面の十点平均粗さRzが1.5μm以上、好ましくは3μm以上30μm以下であれば、より高い効果を得ることができる。
<2.二次電池>
次に、上記した負極の使用例について説明する。ここで、電気化学デバイスの一例として二次電池を例に挙げると、上記した負極は、以下のようにして用いられる。
<2−1.第1の二次電池>
図7および図8は第1の二次電池の断面構成を表しており、図8では図7に示したVIII−VIII線に沿った断面を示している。ここで説明する二次電池は、例えば、負極22の容量が電極反応物質であるリチウムイオンの吸蔵および放出により表されるリチウムイオン二次電池である。
[二次電池の全体構成]
この二次電池は、主に、電池缶11の内部に、扁平な巻回構造を有する電池素子20が収納されたものである。
電池缶11は、例えば、角型の外装部材である。この角型の外装部材とは、図8に示したように、長手方向における断面が矩形型あるいは略矩形型(一部に曲線を含む)の形状を有するものであり、矩形状だけでなくオーバル形状も含むものである。すなわち、角型の外装部材とは、矩形状あるいは円弧を直線で結んだ略矩形状(長円形状)の開口部を有する有底矩形型あるいは有底長円形状型の器状部材である。なお、図8では、電池缶11が矩形型の断面形状を有する場合を示している。このような電池缶11を含む電池構造は、いわゆる角型と呼ばれている。
この電池缶11は、例えば、鉄、アルミニウムあるいはそれらの合金などにより構成されており、電極端子としての機能を有している場合もある。中でも、充放電時に電池缶11の固さ(変形しにくさ)を利用して二次電池の膨れを抑えるために、アルミニウムよりも固い鉄が好ましい。なお、電池缶11が鉄により構成される場合には、例えば、ニッケルなどの鍍金が施されていてもよい。
また、電池缶11は、一端部が開放されると共に他端部が閉鎖された中空構造を有しており、その開放端部に絶縁板12および電池蓋13が取り付けられることにより密閉されている。絶縁板12は、電池素子20と電池蓋13との間に、その電池素子20の巻回周面に対して垂直に配置されており、例えば、ポリプロピレンなどにより構成されている。電池蓋13は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されており、それと同様に電極端子としての機能を有していてもよい。
電池蓋13の外側には、正極端子となる端子板14が設けられており、その端子板14は、絶縁ケース16を介して電池蓋13から電気的に絶縁されている。この絶縁ケース16は、例えば、ポリブチレンテレフタレートなどにより構成されている。また、電池蓋13のほぼ中央部には貫通孔が設けられており、その貫通孔には、端子板14と電気的に接続されると共にガスケット17を介して電池蓋13から電気的に絶縁されるように正極ピン15が挿入されている。このガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、その表面には、例えば、アスファルトが塗布されている。
電池蓋13の周縁付近には、開裂弁18および注入孔19が設けられている。開裂弁18は、電池蓋13と電気的に接続されており、内部短絡、あるいは外部からの加熱などに起因して電池の内圧が一定以上となった場合に、電池蓋13から切り離されて内圧を開放するようになっている。注入孔19は、例えば、ステンレス鋼球などからなる封止部材19Aにより塞がれている。
電池素子20は、セパレータ23を介して正極21と負極22とが積層および巻回されたものであり、電池缶11の形状に応じて扁平状になっている。正極21の端部(例えば内終端部)にはアルミニウムなどにより構成された正極リード24が取り付けられており、負極22の端部(例えば外終端部)にはニッケルなどにより構成された負極リード25が取り付けられている。正極リード24は、正極ピン15の一端に溶接されることにより端子板14と電気的に接続されており、負極リード25は、電池缶11に溶接されることにより電気的に接続されている。
[正極]
正極21は、例えば、一対の面を有する正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが設けられたものである。ただし、正極活物質層21Bは、正極集電体21Aの片面だけに設けられていてもよい。
正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム、ニッケルあるいはステンレスなどにより構成されている。
正極活物質層21Bは、正極活物質として、リチウムイオンを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種あるいは2種以上を含んでおり、必要に応じて、正極結着剤あるいは正極導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。
正極材料としては、リチウム含有化合物が好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。このリチウム含有化合物としては、例えば、リチウムと遷移金属元素とを構成元素として有する複合酸化物、あるいはリチウムと遷移金属元素とを構成元素として有するリン酸化合物などが挙げられる。中でも、遷移金属元素としてコバルト、ニッケル、マンガンおよび鉄のうちの少なくとも1種を有するものが好ましい。より高い電圧が得られるからである。その化学式は、例えば、Lix M1O2 あるいはLiy M2PO4 で表される。式中、M1およびM2は、1種類以上の遷移金属元素を表す。xおよびyの値は、充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10、0.05≦y≦1.10である。
リチウムと遷移金属元素とを有する複合酸化物としては、例えば、リチウムコバルト複合酸化物(Lix CoO2 )、リチウムニッケル複合酸化物(Lix NiO2 )、あるいは式(12)で表されるリチウムニッケル系複合酸化物などが挙げられる。また、リチウムと遷移金属元素とを有するリン酸化合物としては、例えば、リチウム鉄リン酸化合物(LiFePO4 )あるいはリチウム鉄マンガンリン酸化合物(LiFe1-u Mnu PO4 (u<1))などが挙げられる。高い電池容量が得られると共に、優れたサイクル特性も得られるからである。
LiNi1-x x 2 …(12)
(Mはコバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、バナジウム、スズ、マグネシウム、チタン、ストロンチウム、カルシウム、ジルコニウム、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、タンタル、タングステン、レニウム、イッテルビウム、銅、亜鉛、バリウム、ホウ素、クロム、ケイ素、ガリウム、リン、アンチモンおよびニオブのうちの少なくとも1種である。xは0.005<x<0.5である。)
この他、正極材料としては、例えば、酸化物、二硫化物、カルコゲン化物あるいは導電性高分子などが挙げられる。酸化物は、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムあるいは二酸化マンガンなどである。二硫化物は、例えば、二硫化チタンあるいは硫化モリブデンなどである。カルコゲン化物は、例えば、セレン化ニオブなどである。導電性高分子は、例えば、硫黄、ポリアニリンあるいはポリチオフェンなどである。
もちろん、正極材料は、上記以外のものであってもよい。また、上記した一連の正極材料は、任意の組み合わせで2種以上混合されてもよい。
正極結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムあるいはエチレンプロピレンジエンなどの合成ゴム、またはポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
正極導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックあるいはケチェンブラックなどの炭素材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。なお、正極導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子などであってもよい。
[負極]
負極22は、例えば、一対の面を有する負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられたものである。負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bの構成は、それぞれ上記した負極における負極集電体1および負極活物質層2の構成と同様であり、負極活物質層22Bは、非結晶性負極活物質層および結晶性負極活物質層を含んでいる。この負極22において、リチウムイオンを吸蔵および放出することが可能な負極材料における充電可能な容量は、正極21の放電容量よりも大きくなっていることが好ましい。
図9は、図8に示した正極21および負極22の平面構成を表している。なお、図9では、正極21における正極活物質層21Bの形成範囲に網掛けを施しており、負極22における負極活物質層22Bの形成範囲に網掛けを施している。
この二次電池では、例えば、正極活物質層21Bが正極集電体21Aの表面の一部(例えば、長手方向における中央領域)に設けられているのに対して、負極活物質層22Bが負極集電体22Aの表面の全体に設けられている。すなわち、負極活物質層22Bは、負極集電体22A上において、正極活物質層21Bと対向する領域(対向領域R1)および対向しない領域(非対向領域R2)に設けられている。この場合には、負極活物質層22Bのうち、対向領域R1に設けられている部分が充放電反応に寄与し、非対向領域R2に設けられている部分は充放電反応にほとんど寄与しない。
上記したように、負極活物質層22Bは、非結晶性の負極活物質を含む非結晶性負極活物質層と結晶性の負極活物質を含む結晶性負極活物質層とがこの順に積層された構造を有している。しかしながら、充放電時において負極活物質層22Bが膨張および収縮すると、その影響を受けて上記した積層構造が乱される可能性がある。この場合において、非対向領域R2では、充放電反応の影響を受けず、負極活物質層22Bの形成直後の状態がそのまま維持される。よって、負極活物質層22Bが上記した積層構造を有しているどうかを確認する場合には、非対向領域R2における負極活物質層22Bについて調べることが好ましい。充放電の履歴に依存せず、負極活物質層22Bの積層構造を再現性よく調べることができるからである。
[セパレータ]
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触に起因する短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂からなる多孔質膜、またはセラミックからなる多孔質膜などにより構成されている。なお、セパレータ23は、2種以上の多孔質膜が積層されたものであってもよい。
[電解質]
このセパレータ23には、液状の電解質である電解液が含浸されている。この電解液は、溶媒と、それに溶解された電解質塩とを含んでいる。
溶媒は、例えば、有機溶剤などの非水溶媒の1種あるいは2種以上を含んでいる。以下で説明する一連の溶媒は、任意に組み合わされてもよい。
非水溶媒としては、例えば、以下のものが挙げられる。炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、あるいはテトラヒドロフランである。また、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、あるいは1,4−ジオキサンである。また、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル、あるいはトリメチル酢酸エチルである。また、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、あるいはN−メチルオキサゾリジノンである。さらに、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチル、あるいはジメチルスルホキシドである。
中でも、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸エチルメチルのうちの少なくとも1種が好ましい。この場合には、炭酸エチレンあるいは炭酸プロピレンなどの高粘度(高誘電率)溶媒(例えば比誘電率ε≧30)と、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸ジエチルなどの低粘度溶媒(例えば粘度≦1mPa・s)との組み合わせがより好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するからである。
特に、溶媒は、式(1)で表されるハロゲンを構成元素として有する鎖状炭酸エステルおよび式(2)で表されるハロゲンを構成元素として有する環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。充放電時において負極22の表面に安定な保護膜が形成されるため、電解液の分解が抑制されるからである。なお、式(1)中のR11〜R16は、同一でもよいし、異なってもよい。式(2)中のR17〜R20についても、同様である。
Figure 2010118298
(R11〜R16は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)
Figure 2010118298
(R17〜R20は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)
ハロゲンの種類は、特に限定されないが、中でも、フッ素、塩素あるいは臭素が好ましく、フッ素がより好ましい。他のハロゲンと比較して、高い効果が得られるからである。ただし、ハロゲンの数は、1つよりも2つが好ましく、さらに3つ以上でもよい。保護膜を形成する能力が高くなり、より強固で安定な保護膜が形成されるため、電解液の分解反応がより抑制されるからである。
式(1)に示したハロゲンを有する鎖状炭酸エステルとしては、例えば、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)あるいは炭酸ジフルオロメチルメチルなどが挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
式(2)に示したハロゲンを有する環状炭酸エステルとしては、例えば、式(2−1)〜式(2−21)で表される一連の化合物が挙げられる。
これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
Figure 2010118298
Figure 2010118298
中でも、式(2−1)に示した化合物(4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン)あるいは式(2−3)に示した化合物(4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン)が好ましく、後者がより好ましい。特に、式(2−3)に示した化合物としては、シス異性体よりもトランス異性体が好ましい。容易に入手可能であると共に、高い効果が得られるからである。
また、溶媒は、式(3)〜式(5)で表される不飽和炭素結合を有する環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。充放電時において負極22の表面に安定な保護膜が形成されるため、電解液の分解が抑制されるからである。
Figure 2010118298
(R21およびR22は水素基あるいはアルキル基である。)
Figure 2010118298
(R23〜R26は水素基、アルキル基、ビニル基あるいはアリル基であり、それらのうちの少なくとも1つはビニル基あるいはアリル基である。)
Figure 2010118298
(R27はアルキレン基である。)
式(3)に示した不飽和炭素結合を有する環状炭酸エステルは、炭酸ビニレン系化合物である。この炭酸ビニレン系化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。炭酸ビニレン(1,3−ジオキソール−2−オン)、炭酸メチルビニレン(4−メチル−1,3−ジオキソール−2−オン)、あるいは炭酸エチルビニレン(4−エチル−1,3−ジオキソール−2−オン)である。また、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4,5−ジエチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4−フルオロ−1,3−ジオキソール−2−オン、あるいは4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソール−2−オンである。中でも、炭酸ビニレンが好ましい。容易に入手可能であると共に、高い効果が得られるからである。
式(4)に示した不飽和炭素結合を有する環状炭酸エステルは、炭酸ビニルエチレン系化合物である。炭酸ビニルエチレン系化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。炭酸ビニルエチレン(4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン)、4−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、あるいは4−エチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンである。また、4−n−プロピル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、5−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、あるいは4,5−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンである。中でも、炭酸ビニルエチレンが好ましい。容易に入手可能であると共に、高い効果が得られるからである。もちろん、R23〜R26としては、全てがビニル基でもよいし、全てがアリル基でもよいし、ビニル基とアリル基とが混在していてもよい。
式(5)に示した不飽和炭素結合を有する環状炭酸エステルは、炭酸メチレンエチレン系化合物である。炭酸メチレンエチレン系化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。4−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン、あるいは4,4−ジエチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オンである。この炭酸メチレンエチレン系化合物としては、1つのメチレン基を有するもの(式(5)に示した化合物)の他、2つのメチレン基を有するものであってもよい。
なお、不飽和炭素結合を有する環状炭酸エステルとしては、式(3)〜式(5)に示したものの他、ベンゼン環を有する炭酸カテコール(カテコールカーボネート)などであってもよい。
また、溶媒は、スルトン(環状スルホン酸エステル)を含んでいることが好ましい。電解液の化学的安定性がより向上するからである。スルトンとしては、例えば、プロパンスルトンあるいはプロペンスルトンなどが挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。溶媒中におけるスルトンの含有量は、例えば、0.5重量%以上5重量%以下である。
さらに、溶媒は、酸無水物を含んでいることが好ましい。電解液の化学的安定性がより向上するからである。酸無水物としては、例えば、例えば、カルボン酸無水物、ジスルホン酸無水物、あるいはカルボン酸とスルホン酸との無水物などが挙げられる。カルボン酸無水物は、例えば、無水コハク酸、無水グルタル酸あるいは無水マレイン酸などである。ジスルホン酸無水物は、例えば、無水エタンジスルホン酸あるいは無水プロパンジスルホン酸などである。カルボン酸とスルホン酸との無水物は、例えば、無水スルホ安息香酸、無水スルホプロピオン酸あるいは無水スルホ酪酸などである。これらは単独でもよいし、複数種類が混合されてもよい。溶媒中における酸無水物の含有量は、例えば、0.5重量%以上5重量%以下である。
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの軽金属塩のいずれか1種類あるいは2種類以上を含んでいる。以下で説明する一連の電解質塩は、任意に組み合わせてもよい。
リチウム塩としては、例えば、以下のものが挙げられる。六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、あるいは六フッ化ヒ酸リチウムである。また、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C6 5 4 )、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3 SO3 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、あるいはテトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4 )である。さらに、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2 SiF6 )、塩化リチウム(LiCl)、あるいは臭化リチウム(LiBr)である。
中でも、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムおよび六フッ化ヒ酸リチウムのうちの少なくとも1種が好ましく、六フッ化リン酸リチウムがより好ましい。内部抵抗が低下するため、より高い効果が得られるからである。
特に、電解質塩は、式(6)〜式(8)で表される化合物のうちの少なくとも1種を含んでていることが好ましい。より高い効果が得られるからである。なお、式(6)のR31およびR33は、同一でもよいし、異なってもよい。このことは、式(7)中のR41〜R43および式(8)中のR51およびR52についても同様である。
Figure 2010118298
(X31は長周期型周期表における1族元素あるいは2族元素、またはアルミニウムである。M31は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素あるいは15族元素である。R31はハロゲン基である。Y31は−(O=)C−R32−C(=O)−、−(O=)C−C(R33)2 −あるいは−(O=)C−C(=O)−である。ただし、R32はアルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基である。R33はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基あるいはハロゲン化アリール基である。なお、a3は1〜4の整数であり、b3は0、2あるいは4であり、c3、d3、m3およびn3は1〜3の整数である。)
Figure 2010118298
(X41は長周期型周期表における1族元素あるいは2族元素である。M41は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素あるいは15族元素である。Y41は−(O=)C−(C(R41)2 b4−C(=O)−、−(R43)2 C−(C(R42)2 c4−C(=O)−、−(R43)2 C−(C(R42)2 c4−C(R43)2 −、−(R43)2 C−(C(R42)2 c4−S(=O)2 −、−(O=)2 S−(C(R42)2 d4−S(=O)2 −あるいは−(O=)C−(C(R42)2 d4−S(=O)2 −である。ただし、R41およびR43は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それぞれのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。R42は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。なお、a4、e4およびn4は1あるいは2であり、b4およびd4は1〜4の整数であり、c4は0〜4の整数であり、f4およびm4は1〜3の整数である。)
Figure 2010118298
(X51は長周期型周期表における1族元素あるいは2族元素である。M51は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素あるいは15族元素である。Rfはフッ素化アルキル基あるいはフッ素化アリール基であり、いずれの炭素数も1〜10である。Y51は−(O=)C−(C(R51)2 d5−C(=O)−、−(R52)2 C−(C(R51)2 d5−C(=O)−、−(R52)2 C−(C(R51)2 d5−C(R52)2 −、−(R52)2 C−(C(R51)2 d5−S(=O)2 −、−(O=)2 S−(C(R51)2 e5−S(=O)2 −あるいは−(O=)C−(C(R51)2 e5−S(=O)2 −である。ただし、R51は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。R52は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基であり、そのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。なお、a5、f5およびn5は1あるいは2であり、b5、c5およびe5は1〜4の整数であり、d5は0〜4の整数であり、g5およびm5は1〜3の整数である。)
なお、1族元素とは、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびフランシウムである。2族元素とは、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびラジウムである。13族元素とは、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムおよびタリウムである。14族元素とは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズおよび鉛である。15族元素とは、窒素、リン、ヒ素、アンチモンおよびビスマスである。
式(6)に示した化合物としては、例えば、式(6−1)〜式(6−6)で表される化合物などが挙げられる。式(7)に示した化合物としては、例えば、式(7−1)〜式(7−8)で表される化合物などが挙げられる。式(8)に示した化合物としては、例えば、式(8−1)で表される化合物などが挙げられる。なお、式(6)〜式(8)に示した構造を有する化合物であれば、上記した化合物に限定されないことは言うまでもない。
Figure 2010118298
Figure 2010118298
Figure 2010118298
また、電解質塩は、式(9)〜式(11)で表される化合物のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。より高い効果が得られるからである。なお、式(9)中のmおよびnは、同一でもよいし、異なってもよい。式(11)中のp、qおよびrについても、同様である。
LiN(Cm 2m+1SO2 )(Cn 2n+1 SO2 )…(9)
(mおよびnは1以上の整数である。)
Figure 2010118298
(R61は炭素数が2以上4以下の直鎖状あるいは分岐状のパーフルオロアルキレン基である。)
LiC(Cp 2p+1SO2 )(Cq 2q+1SO2 )(Cr 2r+1SO2 )…(11)
(p、qおよびrは1以上の整数である。)
式(9)に示した鎖状のイミド化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 2 )、あるいはビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(C2 5 SO2 2 )である。また、(トリフルオロメタンスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )(C2 5 SO2 ))である。また、(トリフルオロメタンスルホニル)(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )(C3 7 SO2 ))である。さらに(トリフルオロメタンスルホニル)(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )(C4 9 SO2 ))である。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
式(10)に示した環状のイミド化合物としては、例えば、下記の式(10−1)〜式(10−4)で表される一連の化合物が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
Figure 2010118298
式(11)に示した鎖状のメチド化合物としては、例えば、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド(LiC(CF3 SO2 3 )などが挙げられる。
電解質塩の含有量は、溶媒に対して0.3mol/kg以上3.0mol/kg以下であることが好ましい。高いイオン伝導性が得られるからである。
[二次電池の動作]
この二次電池では、充電時において、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して負極22に吸蔵される。一方、放電時において、例えば、負極22からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して正極21に吸蔵される。
[二次電池の製造方法]
この二次電池は、例えば、以下の手順により製造される。
まず、正極21を作製する。最初に、正極活物質、正極結着剤および正極導電剤を混合して正極合剤としたのち、有機溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、ドクタブレードあるいはバーコータなどを用いて正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを均一に塗布したのちに乾燥させて、正極活物質層21Bを形成する。最後に、必要に応じて加熱しながら、ロールプレス機などを用いて正極活物質層21Bを圧縮成型する。この場合には、圧縮成型を複数回に渡って繰り返してもよい。
次に、上記した負極の作製手順にしたがって、負極22を作製する。この場合には、負極集電体22Aの両面に非結晶性負極活物質層および結晶性負極活物質層をこの順に形成して、負極活物質層22Bを形成する。
二次電池の組み立ては、以下のようにして行う。最初に、電池缶11の内部に電池素子20を収納したのち、その電池素子20上に絶縁板12を配置する。続いて、正極リード24を正極ピン15に溶接などして接続させると共に、負極リード25を電池缶11に溶接などして接続させたのち、レーザ溶接などにより電池缶11の開放端部に電池蓋13を固定する。最後に、注入孔19から電池缶11の内部に電解液を注入してセパレータ23に含浸させたのち、その注入孔19を封止部材19Aで塞ぐ。これにより、図7および図8に示した二次電池が完成する。
この第1の二次電池によれば、負極22が上記した負極と同様の構成を有しているので、負極活物質の物性が経時変化しにくくなると共に、充放電時に負極活物質層22Bが膨張および収縮しにくくなる。また、負極集電体22Aに対する負極活物質層22Bの密着性が向上する。したがって、優れたサイクル特性および膨れ特性を得ることができる。
特に、電解液の溶媒が、ハロゲンを有する鎖状炭酸エステル、ハロゲンを有する環状炭酸エステル、不飽和炭素結合を有する環状炭酸エステル、スルトン、あるいは酸無水物を含んでいれば、サイクル特性をより向上させることができる。
また、電解液の電解質塩が、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムおよび六フッ化ヒ酸リチウムのうちの少なくとも1種、あるいは式(6)〜式(11)に示した化合物を含んでいれば、サイクル特性をより向上させることができる。
<2−2.第2の二次電池>
図10および図11は、第2の二次電池の断面構成を表しており、図11では図10に示した巻回電極体40の一部を拡大示している。
この二次電池は、上記した第1の二次電池と同様にリチウムイオン二次電池であり、主に、ほぼ中空円柱状の電池缶31の内部に、巻回電極体40と、一対の絶縁板32,33とが収納されたものである。このような電池缶31を用いた電池構造は、円筒型と呼ばれている。
電池缶31は、例えば、第1の二次電池における電池缶11と同様の材料により構成されており、その一端部は開放されていると共に他端部は閉鎖されている。一対の絶縁板32,33は、巻回電極体40を上下から挟み、その巻回周面に対して垂直に延在するように配置されている。
電池缶31の開放端部には、電池蓋34と、その内側に設けられた安全弁機構35および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient:PTC素子)36とが、ガスケット37を介してかしめられて取り付けられている。このかしめ加工により、電池缶31の内部は密閉されている。電池蓋34は、例えば、電池缶31と同様の材料により構成されている。安全弁機構35は、熱感抵抗素子36を介して電池蓋34と電気的に接続されている。この安全弁機構35では、内部短絡、あるいは外部からの加熱などに起因して内圧が一定以上となった場合に、ディスク板35Aが反転して電池蓋34と巻回電極体40との間の電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子36は、温度の上昇に応じて抵抗が増大することにより、電流を制限して大電流に起因する異常な発熱を防止するものである。ガスケット37は、例えば、絶縁材料により構成されており、その表面には、例えば、アスファルトが塗布されている。
巻回電極体40は、セパレータ43を介して正極41と負極42とが積層および巻回されたものである。この巻回電極体40の中心には、例えば、センターピン44が挿入されている。この巻回電極体40では、アルミニウムなどにより構成された正極リード45が正極41に接続されていると共に、ニッケルなどにより構成された負極リード46が負極42に接続されている。正極リード45は、安全弁機構35に溶接などされることにより電池蓋34と電気的に接続されており、負極リード46は、電池缶31に溶接などされることにより電気的に接続されている。
正極41は、例えば、一対の面を有する正極集電体41Aの両面に正極活物質層41Bが設けられたものである。正極集電体41Aおよび正極活物質層41Bの構成は、それぞれ第1の二次電池における正極集電体21Aおよび正極活物質層21Bの構成と同様である。
負極42は、例えば、一対の面を有する負極集電体42Aの両面に負極活物質層42Bが設けられたものである。負極集電体42Aおよび負極活物質層42Bの構成は、それぞれ第1の二次電池における負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bの構成と同様であり、負極活物質層42Bは、非結晶性負極活物質層および結晶性負極活物質層を含んでいる。
なお、セパレータ43の構成および電解液の組成は、それぞれ第1の二次電池におけるセパレータ23の構成および電解液の組成と同様である。
この二次電池では、充電時において、例えば、正極41からリチウムイオンが放出され、電解液を介して負極42に吸蔵される。一方、放電時において、例えば、負極42からリチウムイオンが放出され、電解液を介して正極41に吸蔵される。
この二次電池は、例えば、以下の手順により製造される。
まず、例えば、第1の二次電池における正極21および負極22と同様の手順により、正極集電体41Aの両面に正極活物質層41Bを形成して正極41を作製すると共に、負極集電体42Aの両面に負極活物質層42Bを形成して負極42を作製する。続いて、正極41に正極リード45を溶接などして取り付けると共に、負極42に負極リード46を溶接などして取り付ける。続いて、セパレータ43を介して正極41と負極42とを積層および巻回させて巻回電極体40を作製したのち、その巻回中心にセンターピン44を挿入する。続いて、一対の絶縁板32,33で挟みながら巻回電極体40を電池缶31の内部に収納する。この場合には、正極リード45の先端部を安全弁機構35に溶接すると共に、負極リード46の先端部を電池缶31に溶接する。続いて、電池缶31の内部に電解液を注入してセパレータ43に含浸させる。最後に、電池缶31の開口端部に、ガスケット37を介して電池蓋34、安全弁機構35および熱感抵抗素子36をかしめる。これにより、図10および図11に示した二次電池が完成する。
この第2の二次電池によれば、負極42が第1の二次電池における負極22と同様の構成を有しているので、優れたサイクル特性および膨れ特性を得ることができる。この二次電池に関する他の効果は、第1の二次電池と同様である。
<2−3.第3の二次電池>
図12は第3の二次電池の分解斜視構成を表しており、図13は図12に示したXIII−XIII線に沿った断面を拡大して示している。
この二次電池は、上記した第1の二次電池と同様にリチウムイオン二次電池であり、主に、フィルム状の外装部材60の内部に、正極リード51および負極リード52が取り付けられた巻回電極体50が収納されたものである。このような外装部材60を用いた電池構造は、ラミネートフィルム型と呼ばれている。
正極リード51および負極リード52は、例えば、外装部材60の内部から外部に向かって同一方向に導出されている。ただし、巻回電極体50に対する正極リード51および負極リード52の設置位置や、それらの導出方向などは、特に限定されない。正極リード51は、例えば、アルミニウムなどにより構成されており、負極リード52は、例えば、銅、ニッケルあるいはステンレスなどにより構成されている。これらの材料は、例えば、薄板状あるいは網目状になっている。
外装部材60は、例えば、融着層と、金属層と、表面保護層とがこの順に積層されたラミネートフィルムである。この場合には、例えば、融着層が巻回電極体50と対向するように、2枚のフィルムの融着層における外縁部同士が融着、あるいは接着剤などにより貼り合わされている。融着層としては、例えば、ポリエチレンあるいはポリプロピレンなどのフィルムが挙げられる。金属層としては、例えば、アルミニウム箔などが挙げられる。表面保護層としては、例えば、ナイロンあるいはポリエチレンテレフタレートなどのフィルムが挙げられる。
中でも、外装部材60としては、ポリエチレンフィルム、アルミニウム箔およびナイロンフィルムがこの順に積層されたアルミラミネートフィルムが好ましい。ただし、外装部材60は、上記したアルミラミネートフィルムに代えて、他の積層構造を有するラミネートフィルムでもよいし、ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムでもよい。
外装部材60と正極リード51および負極リード52との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム61が挿入されている。この密着フィルム61は、正極リード51および負極リード52に対して密着性を有する材料により構成されている。このような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂が挙げられる。
巻回電極体50は、セパレータ55および電解質層56を介して正極53と負極54とが積層および巻回されたものであり、その最外周部は、保護テープ57により保護されている。
正極53は、例えば、一対の面を有する正極集電体53Aの両面に正極活物質層53Bが設けられたものである。正極集電体53Aおよび正極活物質層53Bの構成は、それぞれ第1の二次電池における正極集電体21Aおよび正極活物質層21Bと同様である。
負極54は、例えば、一対の面を有する負極集電体54Aの両面に負極活物質層54Bが設けられたものである。負極集電体54Aおよび負極活物質層54Bの構成は、それぞれ第1の二次電池における負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bの構成と同様であり、その負極活物質層54Bは、非結晶性負極活物質層および結晶性負極活物質層を含んでいる。
なお、セパレータ55の構成は、第1の二次電池におけるセパレータ23の構成と同様である。
電解質層56は、電解液と、それを保持する高分子化合物とを含んでおり、いわゆるゲル状の電解質である。ゲル状の電解質は、高いイオン伝導率(例えば、室温で1mS/cm以上)が得られると共に電解液の漏液が防止されるので好ましい。
高分子化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、あるいはポリフッ化ビニルである。また、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレン、あるいはポリカーボネートである。また、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体である。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。中でも、ポリフッ化ビニリデン、あるいはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体が好ましい。電気化学的に安定だからである。
電解液の組成は、第1の二次電池における電解液の組成と同様である。ただし、ゲル状の電解質である電解質層56において、電解液の溶媒とは、液状の溶媒だけでなく、電解質塩を解離させることが可能なイオン伝導性を有するものまで含む広い概念である。したがって、イオン伝導性を有する高分子化合物を用いる場合には、その高分子化合物も溶媒に含まれる。
なお、電解液を高分子化合物に保持させたゲル状の電解質層56に代えて、電解液をそのまま用いてもよい。この場合には、電解液がセパレータ55に含浸される。
この二次電池では、充電時において、例えば、正極53からリチウムイオンが放出され、電解質層56を介して負極54に吸蔵される。一方、放電時において、例えば、負極54からリチウムイオンが放出され、電解質層56を介して正極53に吸蔵される。
このゲル状の電解質層56を備えた二次電池は、例えば、以下の3種類の手順により製造される。
第1の製造方法では、最初に、例えば、第1の二次電池における正極21および負極22と同様の作製手順により、正極53および負極54を作製する。具体的には、正極集電体53Aの両面に正極活物質層53Bを形成して正極53を作製すると共に、負極集電体54Aの両面に負極活物質層54Bを形成して負極54を作製する。続いて、電解液と、高分子化合物と、溶剤とを含む前駆溶液を調製して正極53および負極54に塗布したのち、溶剤を揮発させてゲル状の電解質層56を形成する。続いて、正極集電体53Aに正極リード51を溶接などすると共に、負極集電体54Aに負極リード52を溶接などする。続いて、電解質層56が形成された正極53と負極54とをセパレータ55を介して積層および巻回したのち、その最外周部に保護テープ57を接着させて、巻回電極体50を作製する。最後に、例えば、2枚のフィルム状の外装部材60の間に巻回電極体50を挟み込んだのち、その外装部材60の外縁部同士を熱融着などで接着させて、巻回電極体50を封入する。この際、正極リード51および負極リード52と外装部材60との間に、密着フィルム61を挿入する。これにより、図12および図13に示した二次電池が完成する。
第2の製造方法では、最初に、正極53に正極リード51を取り付けると共に、負極54に負極リード52を取り付ける。続いて、セパレータ55を介して正極53と負極54とを積層して巻回させたのち、その最外周部に保護テープ57を接着させて、巻回電極体50の前駆体である巻回体を作製する。続いて、2枚のフィルム状の外装部材60の間に巻回体を挟み込んだのち、一辺の外周縁部を除いた残りの外周縁部を熱融着などで接着させて、袋状の外装部材60の内部に巻回体を収納する。続いて、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を調製し、袋状の外装部材60の内部に注入したのち、その外装部材60の開口部を熱融着などで密封する。最後に、モノマーを熱重合させて高分子化合物とすることにより、ゲル状の電解質層56を形成する。これにより、二次電池が完成する。
第3の製造方法では、最初に、高分子化合物が両面に塗布されたセパレータ55を用いることを除き、上記した第2の製造方法と同様に、巻回体を形成して袋状の外装部材60の内部に収納する。このセパレータ55に塗布する高分子化合物としては、例えば、フッ化ビニリデンを成分とする重合体、すなわち単独重合体、共重合体、あるいは多元共重合体などが挙げられる。具体的には、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンを成分とする二元系共重合体、あるいはフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびクロロトリフルオロエチレンを成分とする三元系共重合体などである。なお、高分子化合物は、上記したフッ化ビニリデンを成分とする重合体と共に、他の1種あるいは2種以上の高分子化合物を含んでいてもよい。続いて、電解液を調製して外装部材60の内部に注入したのち、その外装部材60の開口部を熱融着などで密封する。最後に、外装部材60に加重をかけながら加熱して、高分子化合物を介してセパレータ55を正極53および負極54に密着させる。これにより、電解液が高分子化合物に含浸し、その高分子化合物がゲル化して電解質層56が形成されるため、二次電池が完成する。
この第3の製造方法では、第1の製造方法と比較して、二次電池の膨れが抑制される。また、第3の製造方法では、第2の製造方法と比較して、高分子化合物の原料であるモノマーあるいは溶媒などが電解質層56中にほとんど残らず、しかも高分子化合物の形成工程が良好に制御される。このため、正極53、負極54およびセパレータ55と電解質層56との間において十分な密着性が得られる。
この第3の二次電池によれば、負極54が上記した第1の二次電池における負極22と同様の構成を有しているので、優れたサイクル特性および膨れ特性を得ることができる。この二次電池に関する他の効果は、第1の二次電池と同様である。
本発明の実施例について、詳細に説明する。
(実験例1−1〜1−12)
以下の手順により、図12および図13に示したラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池を作製した。
まず、塗布法を用いて正極集電体53A上に正極活物質層53Bを形成することにより、正極53を作製した。
この場合には、最初に、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とを0.5:1のモル比で混合したのち、空気中で900℃×5時間焼成してリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2 )を得た。続いて、正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物91質量部と、正極導電剤としてグラファイト6質量部と、正極結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して、正極合剤とした。続いて、正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状の正極合剤スラリーとした。続いて、正極集電体53Aの両面に正極合剤スラリーを均一に塗布したのちに乾燥させて、正極活物質層53Bを形成した。この正極集電体53Aとしては、帯状のアルミニウム箔(厚さ=12μm)を用いた。最後に、ロールプレス機を用いて正極活物質層53Bを圧縮成型した。
次に、負極集電体54A上に非結晶性負極活物質層および結晶性負極活物質層を含む負極活物質層54Bを形成することにより、負極54を作製した。
非結晶性負極活物質層を形成する場合には、蒸着法(電子ビーム蒸着法)を用いて負極集電体54Aの両面に負極材料としてケイ素を堆積させた。この負極集電体54Aとしては、粗面化された電解銅箔(厚さ=18μm,十点平均粗さRz=4μm)を用いた。蒸着工程では、偏向式電子ビーム蒸着源として純度99%のケイ素を用いると共に、堆積速度を10nm/秒とした。また、チャンバ内に連続的に酸素ガスおよび必要に応じて水蒸気を導入して、負極活物質中の酸素含有量を5原子数%とした。
結晶性負極活物質層を形成する場合には、溶射法(ガスフレーム溶射法)を用いて負極材料としてケイ素粉末(メジアン径=1μm〜300μm)を溶融状態あるいは半溶融状態で非結晶性負極活物質層の表面に吹き付けた。この際、負極集電体54Aが熱的ダメージを負わないようにするために、炭酸ガスで基盤を冷却しながら吹き付け処理を行った。溶射工程では、吹き付け速度を約45m/秒〜55m/秒とした。また、チャンバ内に連続的に酸素ガスおよび必要に応じて水蒸気を導入して、負極活物質中の酸素含有量を5原子数%とした。
特に、結晶性負極活物質層を形成する場合には、負極材料のメジアン径、投入量および溶融温度、ならびに基盤の冷却温度を調整して、以下の条件を満たすようにした。第1に、複数の粒子状の負極活物質が扁平粒子を含むようにした。第2に、X線回折により得られる結晶性の負極活物質の(111)結晶面における回折ピークの半値幅(2θ)を1°とし、同結晶面に起因する結晶子サイズを400nmとした。この場合には、リガク電機株式会社製のX線回折装置(官球:CuKa)を用いると共に、官電圧を40kV、官電流を40mA、スキャン方法をθ−2θ法、測定範囲を20°≦2θ≦90°とした。なお、上記した条件については、図9を参照して説明した負極活物質層54Bの非対向領域R2において調べた。
また、負極活物質層54Bを形成する場合には、総厚(非結晶性負極活物質層の厚さと結晶性負極活物質層の厚さとの合計)を13μmにすると共に、非結晶性負極活物質層および結晶性負極活物質層の厚さ比を表1に示したように変化させた。なお、厚さ比を算出する手順は、上記した負極について説明した通りである。
次に、溶媒として炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを混合したのち、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )を溶解させて、液状の電解質(電解液)を調製した。この場合には、溶媒の組成(EC:DEC)を重量比で50:50とし、電解質塩の含有量を溶媒に対して1mol/kgとした。
最後に、正極53および負極54と共に電解液を用いて二次電池を組み立てた。最初に、正極集電体53Aの一端にアルミニウム製の正極リード51を溶接すると共に、負極集電体54Aの一端にニッケル製の負極リード52を溶接した。続いて、正極53と、セパレータ55と、負極54と、セパレータ55とをこの順に積層してから長手方向に巻回させたのち、粘着テープからなる保護テープ57で巻き終わり部分を固定して、巻回電極体50の前駆体である巻回体を形成した。このセパレータ55としては、多孔性ポリプロピレンを主成分とするフィルムにより多孔性ポリエチレンを主成分とするフィルムが挟まれた3層構造体(厚さ=23μm)を用いた。続いて、外装部材60の間に巻回体を挟み込んだのち、一辺を除く外縁部同士を熱融着して、袋状の外装部材60の内部に巻回体を収納した。この外装部材60としては、外側から、ナイロンフィルム(厚さ=30μm)と、アルミニウム箔(厚さ=40μm)と、無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ=30μm)とが積層された3層構造のラミネートフィルム(総厚=100μm)を用いた。続いて、外装部材60の開口部から電解液を注入してセパレータ55に含浸させて、巻回電極体50を作製した。最後に、真空雰囲気中で外装部材60の開口部を熱融着して封止することにより、ラミネートフィルム型の二次電池が完成した。この二次電池を作製する場合には、正極活物質層53Bの厚さを調節して、満充電時において負極54にリチウム金属が析出しないようにした。
(実験例1−13〜1−16)
表2に示したように、非結晶性負極活物質層あるいは結晶性負極活物質層のいずれか一方だけを形成したことを除き、実験例1−1〜1−12と同様の手順を経た。この場合には、非結晶性負極活物質層の形成方法として、蒸着法の他に、スパッタ法あるいはCVD法を用いた。
これらの実験例1−1〜1−16の二次電池についてサイクル特性および膨れ特性を調べたところ、表1、表2および図14に示した結果が得られた。
サイクル特性を調べる際には、サイクル試験を行って放電容量維持率を求めた。最初に、電池状態を安定化させるために23℃の雰囲気中で1サイクル充放電させたのち、再び充放電させて2サイクル目の放電容量を測定した。続いて、同雰囲気中で99サイクル充放電させて101サイクル目の放電容量を測定した。最後に、放電容量維持率(%)=(101サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100を算出した。この場合には、3mA/cm2 の定電流密度で電池電圧が4.2Vに到達するまで充電したのち、引き続き4.2Vの定電圧で電流密度が0.3mA/cm2 に到達するまで充電した。また、3mA/cm2 の定電流密度で電池電圧が2.5Vに到達するまで放電した。
膨れ特性を調べる際には、上記したサイクル試験時の膨れ率を求めた。すなわち、2サイクル目および101サイクル目の放電後の厚さを測定したのち、膨れ率(%)=[(101サイクル目の放電後の厚さ−2サイクル目の放電後の厚さ)/2サイクル目の放電後の厚さ]×100を算出した。
なお、サイクル特性および膨れを調べる場合の手順および条件は、以降の一連の実験例においても同様である。
Figure 2010118298
Figure 2010118298
負極活物質層54Bが非結晶性負極活物質層および結晶性負極活物質層を含む実験例1−1〜1−12では、いずれか一方だけである実験例1−13〜1−16と比較して、放電容量維持率が約75%以上まで高くなると共に膨れ率が約3%以下まで小さくなった。特に、非結晶性負極活物質層および結晶性負極活物質層を含む場合には、厚さ比が小さくなるにしたがって、放電容量維持率が増加すると共に膨れ率が減少する傾向を示した。この場合には、厚さ比が0.5以下、さらに0.2以下であると、放電容量維持率がより高くなると共に膨れ率がより小さくなった。これらのことから、本発明の二次電池では、負極活物質層54Bが非結晶性負極活物質層および結晶性負極活物質層がこの順に積層された構造を有することにより、優れたサイクル特性および膨れ率が得られる。この場合には、厚さ比が0.5以下、好ましくは0.2以下であれば、両特性がより向上する。
(実験例2−1〜2−4)
非結晶性負極活物質層の形成方法としてスパッタ法あるいはCVD法を用いたことを除き、実験例1−2,1−8と同様の手順を経た。これらの実験例2−1〜2−4の二次電池についてサイクル特性および膨れ特性を調べたところ、表3に示した結果が得られた。
Figure 2010118298
非結晶性負極活物質層の形成方法を変更した場合においても、表1および表2と同様の結果が得られた。すなわち、負極活物質層54Bが非結晶性負極活物質層および結晶性負極活物質層を含む実験例2−1〜2−4では、いずれか一方だけである実験例1−13〜1−16と比較して、約75%以上の放電容量維持率および約3%以下の膨れ率が得られた。特に、非結晶性負極活物質層の形成方法が異なる実験例1−2,1−8,2−1〜2−4では、厚さ比ごとに比較して、放電容量維持率および膨れ率がほぼ同等であった。これらのことから、本発明の二次電池では、負極活物質が非結晶性になれば、非結晶性負極活物質層の形成方法としてスパッタ法あるいはCVD法を用いても、優れたサイクル特性および膨れ特性が得られる。
(実験例3−1〜3−5)
負極活物質層54Bの総厚を10μmに変更したことを除き、実験例1−1,1−4,1−7,1−8,1−13と同様の手順を経た。これらの実験例3−1〜3−5の二次電池についてサイクル特性および膨れ特性を調べたところ、表4に示した結果が得られた。
Figure 2010118298
負極活物質層54Bの総厚を変更した場合においても、表1および表2と同様の結果が得られた。すなわち、負極活物質層54Bが非結晶性負極活物質層および結晶性負極活物質層を含む実験例3−1〜3−4では、いずれか一方だけである実験例3−5と比較して、約75%以上の放電容量維持率および約3%以下の膨れ率が得られた。また、厚さ比が0.5以下、さらに0.2以下であると、放電容量維持率がより高くなると共に、膨れ率がより小さくなった。これらのことから、本発明の二次電池では、負極活物質層54Bが非結晶性負極活物質層および結晶性負極活物質層を含んでいると、その総厚に依存せずに、サイクル特性および膨れ特性が向上する。
(実験例4−1〜4−5)
結晶性負極活物質層について半値幅および結晶子サイズを表5に示したように変更したことを除き、実験例1−8と同様の手順を経た。これらの実験例4−1〜4−5の二次電池についてサイクル特性および膨れ特性を調べたところ、表5および図15に示した結果が得られた。
Figure 2010118298
半値幅および結晶性サイズを変更した場合においても、表1および表2と同様の結果が得られた。すなわち、負極活物質層54Bが非結晶性負極活物質層および結晶性負極活物質層を含む実験例4−1〜4−5では、いずれか一方だけである実験例1−13〜1−16と比較して、約75%以上の放電容量維持率および約3%以下の膨れ率が得られた。特に、半値幅が大きくなると共に結晶子サイズが小さくなると、膨れ率は一定であったが、放電容量維持率は減少する傾向を示した。この場合には、半値幅が20°以下であると共に結晶子サイズが100nm以上であると、放電容量維持率がより高くなった。これらのことから、本発明の二次電池では、非結晶性負極活物質層において結晶性の負極活物質の(111)結晶面における回折ピークの半値幅(2θ)が20°以下であると共に結晶子サイズが100nm以上であれば、サイクル特性がより向上する。
(実験例5−1〜5−3)
結晶性負極活物質層において複数の粒子状の負極活物質が扁平粒子を含まないようにしたことを除き、実験例1−1,1−8,1−9と同様の手順を経た。これらの実験例5−1〜5−3の二次電池についてサイクル特性および膨れ特性を調べたところ、表6に示した結果が得られた。
Figure 2010118298
結晶性負極活物質層において扁平粒子を含まない場合においても、表1および表2と同様の結果が得られた。すなわち、負極活物質層54Bが非結晶性負極活物質層および結晶性負極活物質層を含む実験例5−1〜5−3では、いずれか一方だけである実験例1−13〜1−16と比較して、約75%以上の放電容量維持率および約3%以下の膨れ率が得られた。特に、扁平粒子を含む実験例1−1,1−8,1−9では、それを含まない実験例5−1〜5−3と比較して、放電容量維持率が高くなると共に膨れ率が小さくなった。これらのことから、本発明の二次電池では、結晶性負極活物質層において複数の粒子状の負極活物質が扁平粒子を含むようにすれば、サイクル特性および膨れ特性がより向上する。
(実験例6−1〜6−9)
非結晶性負極活物質層および結晶性負極活物質層において負極活物質中の酸素含有量を表7に示したように変更したことを除き、実験例1−8と同様の手順を経た。これらの実験例6−1〜6−9の二次電池についてサイクル特性および膨れ特性を調べたところ、表7および図16に示した結果が得られた。
Figure 2010118298
非結晶性負極活物質層および結晶性負極活物質層において酸素含有量を変更した場合においても、表1および表2と同様の結果が得られた。すなわち、負極活物質層54Bが非結晶性負極活物質層および結晶性負極活物質層を含む実験例6−1〜6−9では、いずれか一方だけである実験例1−13〜1−16と比較して、約75%以上の放電容量維持率および約3%以下の膨れ率が得られた。特に、非結晶性負極活物質層および結晶性負極活物質層を含む場合には、酸素含有量が大きくなるにしたがって、膨れ率は一定であったが、放電容量維持率は増加する傾向を示した。この場合には、酸素含有量が1.5原子数%以上40原子数%以下であると、放電容量維持率がより高くなると共に膨れ率がより小さくなり、十分な電池容量も得られた。これらのことから、本発明の二次電池では、非結晶性負極活物質層および結晶性負極活物質層における負極活物質中の酸素含有量が1.5原子数%以上40原子数%以下であれば、両特性がより向上する。
(実験例7−1〜7−16)
結晶性負極活物質層において、負極活物質が表8および表9に示した金属元素を有するようにしたことを除き、実験例1−8と同様の手順を経た。この場合には、負極活物質層54Bを形成する際に、ケイ素と一緒に各金属を堆積させることにより、負極活物質中における金属元素の含有量を5原子数%とした。
(実験例8−1〜8−3)
非結晶性負極活物質層において、負極活物質が表10に示した金属元素を有するようにしたことを除き、実験例1−8と同様の手順を経た。
(実験例9−1〜9−3)
非結晶性負極活物質層および結晶性負極活物質層において、負極活物質が表11に示した金属元素を有するようにしたことを除き、実験例1−8と同様の手順を経た。
これらの実験例7−1〜7−16,8−1〜8−3,9−1〜9−3の二次電池についてサイクル特性および膨れ特性を調べたところ、表8〜表11に示した結果が得られた。
Figure 2010118298
Figure 2010118298
Figure 2010118298
Figure 2010118298
負極活物質が金属元素を有する実験例7−1〜7−16,8−1〜8−3,9−1〜9−3では、それを有しない実験例1−8と比較して、膨れ率は同等であったが、放電容量維持率はほぼ同等以上になった。これらのことから、本発明の二次電池では、非結晶性負極活物質層および結晶性負極活物質層のうちの少なくとも一方において負極活物質が金属元素を有すれば、サイクル特性がより向上する。
(実験例10−1〜10−3)
低酸素含有量領域により高酸素含有領域が挟まれると共にそれらが交互に積層されるように負極活物質層54Bを形成したことを除き、実験例1−8と同様の手順を経た。この場合には、高酸素含有領域の数を表12に示したように設定した。これらの実験例10−1〜10−3の二次電池についてサイクル特性および膨れ特性を調べたところ、表12および図17に示した結果が得られた。
Figure 2010118298
負極活物質層54Bが高酸素含有領域および低酸素含有領域を有している実験例10−1〜10−3では、それらを有していない実験例1−8と比較して、放電容量維持率が高くなると共に、膨れ率が小さくなった。特に、高酸素含有領域の数が多くなるにしたがって、放電容量維持率がより高くなると共に、膨れ率がより小さくなった。これらのことから、本発明の二次電池では、負極活物質層54Bが高酸素含有領域および低酸素含有領域を有すれば、サイクル特性および膨れ特性がより向上する。
(実験例11−1〜11−13)
負極集電体54Aの表面の十点平均粗さRzを表13に示したように変更したことを除き、実験例1−8と同様の手順を経た。これらの実験例11−1〜11−13の二次電池についてサイクル特性および膨れ特性を調べたところ、表13および図18に示した結果が得られた。
Figure 2010118298
十点平均粗さRzを変更した場合においても、表1および表2と同様の結果が得られた。すなわち、負極活物質層54Bが非結晶性負極活物質層および結晶性負極活物質層を含む実験例11−1〜11−13では、いずれか一方だけである実験例1−13〜1−16と比較して、約75%以上の放電容量維持率および約3%以下の膨れ率が得られた。特に、非結晶性負極活物質層および結晶性負極活物質層を含む場合には、十点平均粗さRzが大きくなるにしたがって、膨れ率は一定であったが、放電容量維持率は増加したのちに減少する傾向を示した。この場合には、十点平均粗さRzが1.5μm以上、さらに3μm以上30μm以下であると、放電容量維持率がより高くなると共に、十分な電池容量も得られた。これらのことから、本発明の二次電池では、負極集電体54Aの表面の十点平均粗さRzが1.5μm以上、好ましくは3μm以上30μm以下であれば、サイクル特性がより向上する。
(実験例12−1〜12−8)
電解液の組成を表14および表15に示したように変更したことを除き、実験例1−8と同様の手順を経た。この場合には、溶媒として、式(2)に示したハロゲンを有する環状炭酸エステルである4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)、あるいは4,5−ジフルオロ−1、3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)を用いた。また、他の溶媒として、式(3)に示した不飽和炭素結合を有する環状炭酸エステルである炭酸ビニレン(VC)、あるいは式(4)に示した不飽和炭素結合を有する環状炭酸エステルである炭酸ビニルエチレン(VEC)を用いた。さらに、電解質塩として、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )を用いた。この他、他の溶媒として、スルトンであるプロペンスルトン(PRS)を用いた。また、酸無水物である無水スルホ安息香酸(SBAH)、あるいは無水スルホプロピオン酸(SPAH)を用いた。この場合には、溶媒中における他の溶媒の含有量を1重量%とした。これらの実験例11−1〜11−8の二次電池についてサイクル特性および膨れ特性を調べたところ、表14および表15に示した結果が得られた。
Figure 2010118298
Figure 2010118298
溶媒および他の溶媒としてFEC等を加えると共に電解質塩としてLiBF4 を加えた実験例12−1〜12−8では、それらを加えなかった実験例1−8と比較して、膨れ率は同等であったが、放電容量維持率は高くなった。また、PRS等を加えた実験例12−6〜12−8では、それらを加えなかった実験例1−8と比較して、膨れ率が小さくなった。これらのことから、本発明の二次電池では、溶媒として、ハロゲンを有する鎖状炭酸エステルあるいは環状炭酸エステル、不飽和炭素結合を有する環状炭酸エステル、スルトン、または酸無水物を用いれば、サイクル特性が向上する。また、電解質塩として四フッ化ホウ酸リチウムを用いれば、サイクル特性がより向上する。さらに、溶媒としてスルトンあるいは酸無水物を用いれば、膨れ特性が向上する。
(実験例13−1〜13−4)
正極活物質として表16に示したリチウムニッケル系複合酸化物を用いたことを除き、実験例1−8と同様の手順を経た。この場合には、リチウムニッケル系複合酸化物として、LiNi0.70Co0.25Al0.052 、LiNi0.79Co0.14Al0.072 、LiNi0.70Co0.25Mg0.052 、あるいはLiNi0.70Co0.25Fe0.052 を用いた。これらの実験例13−1〜13−4の二次電池についてサイクル特性および膨れ特性を調べたところ、表16に示した結果が得られた。
Figure 2010118298
正極活物質としてリチウムニッケルコバルト系複合酸化物を用いた実験例13−1〜13−4では、リチウムコバルト複合酸化物を用いた実験例1−8と比較して、膨れ率は同等であったが、放電容量維持率は高くなった。これらのことから、本発明の二次電池では、正極活物質としてリチウムニッケルコバルト系複合酸化物を用いれば、サイクル特性がより向上する。
(実験例14−1,14−2)
角型の二次電池を作製したことを除き、実験例1−8と同様の手順を経た。この二次電池を作製する場合には、最初に、正極21および負極22を作製したのち、正極集電体21Aにアルミニウム製の正極リード24を溶接すると共に、負極集電体22Aにニッケル製の負極リード25を溶接した。続いて、正極21と、セパレータ23と、負極22とをこの順に積層してから長手方向において巻回させたのち、扁平状に成形して電池素子20を作製した。続いて、表17に示した材質からなる電池缶11の内部に電池素子20を収納したのち、その電池素子20上に絶縁板12を配置した。続いて、正極リード24を正極ピン15を溶接すると共に、負極リード25を電池缶11に溶接したのち、電池缶11の開放端部に電池蓋13をレーザ溶接した。最後に、注入孔19を通じて電池缶11の内部に電解液を注入したのち、その注入孔19を封止部材19Aで塞ぐことにより、角型電池が完成した。これらの実験例14−1,14−2の二次電池についてサイクル特性および膨れ特性を調べたところ、表17に示した結果が得られた。
Figure 2010118298
電池構造が角型である実験例14−1,14−2では、ラミネートフィルム型である実験例1−8と比較して、放電容量維持率が高くなると共に、膨れ率が小さくなった。また、角型の場合には、電池缶11の材質が鉄であると、放電容量維持率がより高くなると共に、膨れ率がより小さくなった。これらのことから、本発明の二次電池では、電池構造が角型であれば、サイクル特性および膨れ特性がより向上する。
上記した表1〜表17および図14〜図18の結果から、本発明の二次電池において、負極は、負極集電体上に負極活物質層を有している。この負極活物質層は、負極集電体上に形成されると共に非結晶性の負極活物質を含む非結晶性負極活物質層と、非結晶性負極活物質層上に形成されると共に結晶性の負極活物質を含む結晶性負極活物質層とを有している。これにより、負極活物質中の酸素含有量、負極活物質中における金属元素の有無、電解液の組成、あるいは電池構造などに依存せずに、優れたサイクル特性および膨れ特性が得られる。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記した実施の形態および実施例において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本発明の負極の使用用途は、必ずしも二次電池に限らず、二次電池以外の他の電気化学デバイスであってもよい。他の用途としては、例えば、キャパシタなどが挙げられる。
また、上記した実施の形態および実施例では、二次電池の種類として、負極の容量がリチウムイオンの吸蔵および放出により表されるリチウムイオン二次電池について説明したが、必ずしもこれに限られない。本発明の二次電池は、負極の容量がリチウムイオンの吸蔵および放出による容量とリチウム金属の析出および溶解による容量とを含み、かつ、それらの容量の和により表される二次電池についても、同様に適用可能である。この場合には、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵および放出することが可能な材料が用いられると共に、その材料における充電可能な容量が正極の放電容量よりも小さくなるように設定される。
また、上記した実施の形態および実施例では、電池構造が角型、円筒型あるいはラミネートフィルム型である場合、ならびに電池素子が巻回構造を有する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明の二次電池は、コイン型あるいはボタン型などの他の電池構造を有する場合や、電池素子が積層構造などの他の構造を有する場合についても同様に適用可能である。
また、上記した実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明したが、必ずしもこれに限られない。電極反応物質は、例えば、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの他の1族元素や、マグネシウムあるいはカルシウムなどの2族元素や、アルミニウムなどの他の軽金属でもよい。本発明の効果は、電極反応物質の種類に依存せずに得られるはずであるため、その電極反応物質の種類を変更しても、同様の効果を得ることができる。
また、上記した実施の形態および実施例では、本発明の二次電池に関する非結晶性負極活物質層および結晶性負極活物質層の厚さ比について、実施例の結果から導き出された適正範囲を説明している。しかしながら、その説明は、厚さ比が上記した範囲外となる可能性を完全に否定するものではない。すなわち、上記した適正範囲は、あくまで本発明の効果を得る上で特に好ましい範囲であり、本発明の効果が得られるのであれば、厚さ比が上記した範囲から多少外れてもよい。このことは、負極活物質の半値幅および結晶子サイズ、負極活物質中の酸素含有量、あるいは負極集電体の表面の十点平均粗さRzについても、同様である。
本発明の一実施の形態に係る負極の構成を表す断面図である。 図1に示した負極の断面構造を表すSEM写真およびその模式図である。 図1に示した負極の他の断面構造を表すSEM写真およびその模式図である。 図1に示した負極のさらに他の断面構造を表すSEM写真およびその模式図である。 図1に示した負極のさらに他の断面構造を表すSEM写真およびその模式図である。 図1に示した負極のさらに他の断面構造を表すSEM写真およびその模式図である。 本発明の一実施の形態に係る負極を備えた第1の二次電池の構成を表す断面図である。 図7に示した第1の二次電池のVIII−VIII線に沿った断面図である。 図8に示した正極および負極の構成を表す平面図である。 本発明の一実施の形態に係る負極を備えた第2の二次電池の構成を表す断面図である。 図10に示した巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。 本発明の一実施の形態に係る負極を備えた第3の二次電池の構成を表す断面図である。 図12に示した巻回電極体のXIII−XIII線に沿った断面図である。 厚さ比と放電容量維持率および膨れ率との間の相関を表す図である。 半値幅と放電容量維持率および膨れ率との間の相関を表す図である。 酸素含有量と放電容量維持率および膨れ率との間の相関を表す図である。 高酸素含有領域の数と放電容量維持率および膨れ率との間の相関を表す図である。 十点平均粗さRzと放電容量維持率および膨れ率との間の相関を表す図である。
符号の説明
1,22A,42A,54A…負極集電体、2,22B,42B,54B…負極活物質層、2K…空隙、2X…非結晶性負極活物質層、2Y…結晶性負極活物質層、11,31…電池缶、12,32,33…絶縁板、13,34…電池蓋、14…端子板、15…正極ピン、16…絶縁ケース、17,37…ガスケット、18…開裂弁、19…注入孔、19A…封止部材、20…電池素子、21,41,53…正極、21A,41A,53A…正極集電体、21B,41B,53B…正極活物質層、22,42,54…負極、23,43,55…セパレータ、24,45,51…正極リード、25,46,52…負極リード、35…安全弁機構、35A…ディスク板、36…熱感抵抗素子、40,50…巻回電極体、44…センターピン、56…電解質、57…保護テープ、61…密着フィルム、60…外装部材、201,201X,201Y…負極活物質粒子、201P…扁平粒子、P1…接触部分、P2…非接触部分。

Claims (20)

  1. 電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な正極と、前記電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な負極と、溶媒および電解質塩を含む電解質とを備え、
    前記負極は、負極集電体上に負極活物質層を有し、
    前記負極活物質層は、前記負極集電体上に形成されると共に非結晶性の負極活物質を含む非結晶性負極活物質層と、前記非結晶性負極活物質層上に形成されると共に結晶性の負極活物質を含む結晶性負極活物質層とを含む
    二次電池。
  2. 前記結晶性の負極活物質は、複数の粒子状であり、その粒子のうちの少なくとも一部は、前記負極集電体の表面に沿った方向に延在する扁平状である請求項1記載の二次電池。
  3. 前記非結晶性の負極活物質は、前記負極集電体上に配列されると共にその表面に連結された複数の粒子状である請求項1記載の二次電池。
  4. 前記非結晶性の負極活物質は、前記負極集電体との界面の少なくとも一部において合金化している請求項1記載の二次電池。
  5. X線回折により得られる前記結晶性の負極活物質の(111)結晶面における回折ピークの半値幅(2θ)は、20°以下である請求項1記載の二次電池。
  6. X線回折により得られる前記結晶性の負極活物質の(111)結晶面に起因する結晶子サイズは、100nm以上である請求項1記載の二次電池。
  7. 前記非結晶性負極活物質層の厚さをT1、前記結晶性負極活物質層の厚さをT2としたとき、それらの厚さ比(T1/(T1+T2))は、0.5以下である請求項1記載の二次電池。
  8. 前記厚さ比は、0.2以下である請求項7記載の二次電池。
  9. 前記非結晶性負極活物質層は、蒸着法、スパッタ法あるいは熱化学気相成長(chemical vapor deposition :CVD)法により形成されており、前記結晶性負極活物質層は、溶射法により形成されている請求項1記載の二次電池。
  10. 前記負極活物質は、ケイ素(Si)の単体、合金および化合物のうちの少なくとも1種である請求項1記載の二次電池。
  11. 前記負極活物質は、酸素(O)を構成元素として有し、前記負極活物質中の酸素含有量は、1.5原子数%以上40原子数%以下である請求項1記載の二次電池。
  12. 前記負極活物質は、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ゲルマニウム(Ge)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、銀(Ag)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)およびタングステン(W)のうちの少なくとも1種の金属元素を構成元素として有する請求項1記載の二次電池。
  13. 前記負極活物質は、その厚さ方向において、より高い酸素含有量を有する高酸素含有領域と、より低い酸素含有量を有する低酸素含有領域とを含む請求項1記載の二次電池。
  14. 前記負極集電体の表面の十点平均粗さRzは、1.5μm以上である請求項1記載の二次電池。
  15. 前記十点平均粗さRzは、3μm以上30μm以下である請求項14記載の二次電池。
  16. 前記溶媒は、式(1)で表されるハロゲンを構成元素として有する鎖状炭酸エステル、式(2)で表されるハロゲンを構成元素として有する環状炭酸エステル、式(3)〜式(5)で表される不飽和炭素結合を有する環状炭酸エステル、スルトン、および酸無水物のうちの少なくとも1種を含む請求項1記載の二次電池。
    Figure 2010118298
    (R11〜R16は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)
    Figure 2010118298
    (R17〜R20は水素基、ハロゲン基、アルキル基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。)
    Figure 2010118298
    (R21およびR22は水素基あるいはアルキル基である。)
    Figure 2010118298
    (R23〜R26は水素基、アルキル基、ビニル基あるいはアリル基であり、それらのうちの少なくとも1つはビニル基あるいはアリル基である。)
    Figure 2010118298
    (R27はアルキレン基である。)
  17. 前記電解質塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、過塩素酸リチウム(LiClO4 )、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 )、および式(6)〜式(11)で表される化合物のうちの少なくとも1種を含む請求項1記載の二次電池。
    Figure 2010118298
    (X31は長周期型周期表における1族元素あるいは2族元素、またはアルミニウムである。M31は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素あるいは15族元素である。R31はハロゲン基である。Y31は−(O=)C−R32−C(=O)−、−(O=)C−C(R33)2 −あるいは−(O=)C−C(=O)−である。ただし、R32はアルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基あるいはハロゲン化アリーレン基である。R33はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基あるいはハロゲン化アリール基である。なお、a3は1〜4の整数であり、b3は0、2あるいは4であり、c3、d3、m3およびn3は1〜3の整数である。)
    Figure 2010118298
    (X41は長周期型周期表における1族元素あるいは2族元素である。M41は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素あるいは15族元素である。Y41は−(O=)C−(C(R41)2 b4−C(=O)−、−(R43)2 C−(C(R42)2 c4−C(=O)−、−(R43)2 C−(C(R42)2 c4−C(R43)2 −、−(R43)2 C−(C(R42)2 c4−S(=O)2 −、−(O=)2 S−(C(R42)2 d4−S(=O)2 −あるいは−(O=)C−(C(R42)2 d4−S(=O)2 −である。ただし、R41およびR43は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基であり、それぞれのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。R42は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。なお、a4、e4およびn4は1あるいは2であり、b4およびd4は1〜4の整数であり、c4は0〜4の整数であり、f4およびm4は1〜3の整数である。)
    Figure 2010118298
    (X51は長周期型周期表における1族元素あるいは2族元素である。M51は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素あるいは15族元素である。Rfはフッ素化アルキル基あるいはフッ素化アリール基であり、いずれの炭素数も1〜10である。Y51は−(O=)C−(C(R51)2 d5−C(=O)−、−(R52)2 C−(C(R51)2 d5−C(=O)−、−(R52)2 C−(C(R51)2 d5−C(R52)2 −、−(R52)2 C−(C(R51)2 d5−S(=O)2 −、−(O=)2 S−(C(R51)2 e5−S(=O)2 −あるいは−(O=)C−(C(R51)2 e5−S(=O)2 −である。ただし、R51は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。R52は水素基、アルキル基、ハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基であり、そのうちの少なくとも1つはハロゲン基あるいはハロゲン化アルキル基である。なお、a5、f5およびn5は1あるいは2であり、b5、c5およびe5は1〜4の整数であり、d5は0〜4の整数であり、g5およびm5は1〜3の整数である。)
    LiN(Cm 2m+1SO2 )(Cn 2n+1 SO2 )…(9)
    (mおよびnは1以上の整数である。)
    Figure 2010118298
    (R61は炭素数2以上4以下の直鎖状あるいは分岐状のパーフルオロアルキレン基である。)
    LiC(Cp 2p+1SO2 )(Cq 2q+1SO2 )(Cr 2r+1SO2 )…(11)
    (p、qおよびrは1以上の整数である。)
  18. 前記正極は、正極活物質として、式(12)で表される複合酸化物を含む請求項1記載の二次電池。
    LiNi1-x x 2 …(12)
    (Mはコバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、バナジウム(V)、スズ、マグネシウム(Mg)、チタン、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、ジルコニウム、モリブデン、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)、タングステン、レニウム(Re)、イッテルビウム(Yb)、銅、亜鉛、バリウム(Ba)、ホウ素(B)、クロム、ケイ素、ガリウム(Ga)、リン(P)、アンチモンおよびニオブ(Nb)のうちの少なくとも1種である。xは0.005<x<0.5である。)
  19. 前記電極反応物質は、リチウムイオンである請求項1記載の二次電池。
  20. 負極集電体上に、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な負極活物質層を有し、
    前記負極活物質層は、前記負極集電体上に形成されると共に非結晶性の負極活物質を含む非結晶性負極活物質層と、前記非結晶性負極活物質層上に形成されると共に結晶性の負極活物質を含む結晶性負極活物質層とを含む
    負極。
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