JP2010113985A - 燃料電池およびこれに用いる酸素電極ならびに電子機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】発電特性を向上させることが可能な燃料電池および、これを用いた電子機器を提供する。
【解決手段】酸素電極20と燃料電極10との間に燃料・電解質流路30を備える。酸素電極20を構成する集電体23の表面には接着性フィルム40Aを間にして外装部材24が接着されている。接着性フィルム40Aには溝加工が施され、集電体23と外装部材24との間で空気流路40が設けられている。空気流路40を通じて酸素電極20に空気(酸素)が供給される。空気流路40に対応する集電体23表面には撥水領域60が設けられている。接着性フィルム40Aを用いることにより集電体23との間で強固な接着が行われ、密着性が保持されると共に水の排出能力が向上する。
【選択図】図1
【解決手段】酸素電極20と燃料電極10との間に燃料・電解質流路30を備える。酸素電極20を構成する集電体23の表面には接着性フィルム40Aを間にして外装部材24が接着されている。接着性フィルム40Aには溝加工が施され、集電体23と外装部材24との間で空気流路40が設けられている。空気流路40を通じて酸素電極20に空気(酸素)が供給される。空気流路40に対応する集電体23表面には撥水領域60が設けられている。接着性フィルム40Aを用いることにより集電体23との間で強固な接着が行われ、密着性が保持されると共に水の排出能力が向上する。
【選択図】図1
Description
本発明は、メタノールを直接燃料電極に供給して反応させる直接型メタノール燃料電池(DMFC;Direct Methanol Fuel Cell )などの燃料電池およびこれに用いる酸素電極、ならび燃料電池を備えた電子機器に関する。
近年、モバイル機器は高性能化に伴って消費電力が増加する傾向にあり、リチウムイオン二次電池に代わる電池として、燃料電池が有力視されている。燃料電池は、用いられる電解質によって、アルカリ電解質型燃料電池(AFC;Alkaline Fuel Cell)、リン酸型燃料電池(PAFC;Phosphoric Acid Fuel Cell )、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC;Molten Carbonate Fuel Cell)、固体酸化物型燃料電池(SOFC;Solid Electrolyte Fuel Cell )および固体高分子型燃料電池(PEFC;Polymer Electrolyte Fuel Cell )などに分類される。
燃料電池の燃料としては、水素やメタノールなど、種々の可燃性物質を用いることができる。しかし、水素などの気体燃料は、貯蔵用のボンベなどが必要になるため、小型化には適していない。一方、メタノールなどの液体燃料は、貯蔵しやすい点で有利である。とりわけ、DMFCには、燃料から水素を取り出すための改質器を必要とせず、構成が簡素になり、小型化が容易であるという利点がある。
DMFCの燃料であるメタノールのエネルギー密度は、理論的に4.8kW/Lであり、一般的なリチウムイオン二次電池のエネルギー密度の10倍以上である。すなわち、燃料としてメタノールを用いる燃料電池は、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度を凌ぐ可能性を多いに持っている。以上のことから、DMFCは、種々の燃料電池の中で最も、モバイル機器や電気自動車などのエネルギー源として使用される可能性が高い。
しかしながら、液体電解質および固体電解質を使用するDMFCに共通する問題が存在する。まず、燃料電極での反応で生成する水素イオン(プロトン)は、膜中あるいは電解液中を水と共に酸素電極に向かって移動する現象、すなわち、電気浸透が起こる。また、酸素電極における反応では水が生成するため、水が過剰となり、酸素電極側でフラッディングが起こる。そのため、酸素ガスの供給が阻害され、発電特性が著しく低下するという問題が存在する。
フラッディングを抑制するためには、一般的に、多孔質炭素材料が酸素極側のガス拡散基材として使用される。その材料の撥水性を高めるためにPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)のディスパージョンに浸漬後、引き上げ、乾燥および焼結することでPTFEおよび炭素材料の複合体を作製し、その表面に触媒担持を行う。また、この拡散基材に直接接触させるセパレータ材料も、炭素材料から形成されている場合が多く、撥水性を高めるためにセパレータに形成されている酸化ガス通流溝の内面に撥水処理を施すことがある。
しかしながら、液体電解質および固体電解質を使用する燃料電池の水管理に求められる撥水性レベル、撥水性の構造などは、燃料電池の運転条件等に左右されることから、最適なガス拡散基材および最適な撥水構造は、燃料電池そのものに依存する。
そこで、酸化ガスが流れる酸化ガス通流溝を形成すると共に、この酸化ガス流通溝をガス導入口からガス排出口に向けて漸次深くなるようにし、その傾斜を利用して生じた凝結水等の余剰水を排出するという構造の燃料電池が提案されている(例えば、特許文献1)。
特開平8−138696号公報
しかしながら、生じた水を酸化ガス流通溝の傾斜によって排出させる方法では、凝結水等の余剰水の排出機能は十分とは言えない。その結果、フラッディング状態を十分に改善することができず、酸素電極への酸素ガスの供給が阻害され、そのため発電特性が低下するという問題があった。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、発電特性を向上させることが可能な燃料電池およびこれを用いた電子機器を提供することにある。
本発明の第2の目的は、燃料電池に好適な酸素電極を提供することにある。
本発明による燃料電池は、酸素電極および燃料電極と共に空気流路形成部材を備えている。酸素電極は、互いに対向して第1面および第2面を有すると共に、その第1面側に集電体が配設されている。空気流路形成部材はこの集電体とともに空気流路を形成する。集電体の表面には、この空気流路の少なくとも一部に対応して撥水領域が設けられている。燃料電極は酸素電極の第2面側に設けられる。
本発明による酸素電極は、触媒層上に拡散層を間にして集電体を備えた構造を有する。集電体の表面には空気流路形成部材が設けられ、空気流路が形成される。集電体表面の、この空気流路の少なくとも一部に対応する位置に撥水領域を有している。
本発明による電子機器は、上記本発明の燃料電池を備えたものである。
本発明の燃料電池および電子機器では、酸素電極で発生した水が集電体に設けられた撥水領域により撥水され、効果的に排出される。
本発明の燃料電池および電子機器によれば、酸素電極の集電体に撥水領域を設けるようにしたので、酸素電極で発生する水の排出能力を向上させることができる。また、上記撥水領域を集電体上の空気流路以外の領域に撥水領域を設けないようにしたので、集電体全面に撥水領域(撥水層)を設けた場合と比較して、空気の漏れを防止し、水の排出能力をさらに向上させることができる。従って、酸素電極でのフラッディングを抑制し、発電特性を向上することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[燃料電池の構成例]
図1は本発明の一実施の形態に係る燃料電池110の断面構造を表すものである。この燃料電池110は、いわゆる直接型メタノールフロー型燃料電池(DMFFC;Direct Methanol Flow Based Fuel Cell)であり、燃料電極10と酸素電極20とが対向配置された構成を有している。図2は、図1の拡散層22、集電体23、接着性フィルム40Aおよび撥水領域60を分解して斜視するものである。
図1は本発明の一実施の形態に係る燃料電池110の断面構造を表すものである。この燃料電池110は、いわゆる直接型メタノールフロー型燃料電池(DMFFC;Direct Methanol Flow Based Fuel Cell)であり、燃料電極10と酸素電極20とが対向配置された構成を有している。図2は、図1の拡散層22、集電体23、接着性フィルム40Aおよび撥水領域60を分解して斜視するものである。
酸素電極20の表面(第1面)には空気すなわち酸素を供給するための空気流路40が設けられている。一方、酸素電極20の裏面(第2面)側には、燃料電極10との間に、燃料・電解質混合液を流通させるための燃料・電解質流路30が設けられている。燃料電極10および酸素電極20の外側には、外装部材14,24がそれぞれ設けられている。
燃料電極10は、集電体13上に拡散層12および触媒層11をこの順に積層したものである。酸素電極20も同様に、集電体23上に拡散層22および触媒層21をこの順に積層した構成を有している。これら触媒層11および触媒層21が燃料・電解質流路30に面している。
酸素電極20に設けられた機能層51は、燃料・電解液と触媒層21との間のイオンパスを保ちつつ、燃料クロスオーバーによって酸素電極20で起こる過電圧を防ぐ機能(過電圧抑制層)を有するものである。また、酸素電極20のフラッディングを抑制する(フラッディング抑制層)と共に、触媒層21と電解液との直接接触による酸素電極20のヒビや穴などの劣化を抑える劣化防止層でもある。機能層51を設けることにより、酸素電極20の燃料クロスオーバーならびにフラッディング状態を緩和あるいは無効化することができる。
機能層51は、例えば多孔質材料により構成されている。多孔質の有する細孔により、燃料を含む電解液と触媒層21との間のイオンパスを確保することができる。多孔質としては、具体的には、金属,カーボン,ポリイミドなどの樹脂,あるいはセラミックが挙げられ、これらの複数の材料よりなるブレンド層でもよい。樹脂は、撥水性あるいは親水性を問わない。機能層51の厚みは、例えば、約1μm〜100μmであるが、なるべく薄いほうが望ましい。
機能層51の細孔としては、例えばナノメートルからミクロメートルの径を有するものが好ましいが、特に限定されない。
機能層51は、また、プロトン伝導体などのイオン伝導体により構成されていてもよい。プロトン伝導体としては、例えば、ポリパーフルオロアルキルスルホン酸系樹脂(デュポン社製「Nafion(登録商標)」)、ポリスチレンスルホン酸、フラーレンベースの伝導体、固体酸、またはその他のプロトン伝導性を有する樹脂が挙げられる。
拡散層12,22は、例えば、カーボンクロス,カーボンペーパーまたはカーボンシートにより構成されている。これらの拡散層12,22は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などにより撥水化処理が行われていることが望ましい。但し、拡散層12,22は必ずしも設ける必要はなく、触媒層11,21を直接集電体13,23上に形成するようにしてもよい。
触媒層11,21は、触媒として、例えば、パラジウム(Pd),白金(Pt),イリジウム(Ir),ロジウム(Rh)およびルテニウム(Ru)などの金属の単体または合金、有機錯体、酵素などを含んで構成されている。
触媒層11,21には、上記触媒に加えて、プロトン伝導体およびバインダーが含まれていてもよい。プロトン伝導体としては、上述したポリパーフルオロアルキルスルホン酸系樹脂(デュポン社製「Nafion(登録商標)」)または、その他のプロトン伝導性を有する樹脂が挙げられる。バインダーは、触媒層11,21の強度や柔軟性を保つために添加されるものであり、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの樹脂が挙げられる。
集電体13は、例えば、電気伝導性を有するポーラス材料や板状部材、具体的にはチタン(Ti)メッシュやチタン板等により構成されている。
集電体23は、例えば、チタンメッシュやチタン板等にパンチング加工を行った多孔体により構成されている。これは、酸素電極20で起こる反応は、空気(酸素)を必要とし、酸素電極20を透過しなくてはならないためである。従って、酸素電極20を構成する集電体23、拡散層22および触媒層21は、多孔体であることが好ましい。なお、集電体23の材料は、チタンには限られず、他の金属を用いてもよい。
集電体23の空気流路40側において、空気が流れる流路部分は撥水処理され、空気が流れない部分(樹脂フィルム流路と集電体の接触部分=リブ等)は撥水処理されていない。すなわち、集電体23の表面には空気流路40に沿って撥水領域60が形成されている。撥水領域60は、空気流路40に対応する領域すべてに形成されていることが好ましいが、選択的に形成されていてもよい。
外装部材14,24は、例えば、厚みが1mmであり、チタン(Ti)板などの金属板、樹脂板などの一般的に購入可能な材料により構成されているが、材料は特に限定されない。なお、外装部材14,24の厚みは薄ければ薄いほうが望ましい。また、外部材料を集電体13,23に使用してもよい。
燃料・電解質流路30は、例えば、樹脂シート30Aを加工することにより微細な流路を形成したものであり、酸素電極20と対面する燃料電極10の片側に接着されている。この燃料・電解質流路30には、外装部材14に設けられた燃料・電解質入口14Aおよび燃料・電解質出口14Bから貫通孔50Aおよび貫通孔50Bを介して燃料および電解質を含む流動体、例えば、メタノール硫酸混合液が供給されるようになっている。なお、流路の本数や形状は限定されるものではなく、例えば蛇形、並列型としてもよい。更に、流路の幅、高さおよび長さについても特には限定されないが、小さい方が望ましい。燃料・電解質流路30内では、燃料および電解質を混合させた状態で流通させるようにしてもよく、あるいは燃料と電解液を層分離した状態で流通させてもよい。
空気流路40は、例えば接着性フィルム40A(空気流路形成部材)により形成されている。本実施の形態では、この接着性フィルム40Aを用いることにより集電体23と強固な接着が行われる。空気流路40では、外装部材24に設けられた空気入口24Aおよび空気出口24Bから貫通孔50Cおよび貫通孔50Dを介して、自然換気あるいはファン、ポンプおよびブロワなどの強制的供給法により空気が供給されるようになっている。空気流路40の構造もまた、燃料・電解質流路30と同様に限定されない。
上記燃料電池110は、例えば、次のようにして製造することができる。
[燃料電池の製造方法例]
まず、触媒として、例えば白金(Pt)とルテニウム(Ru)とを所定の比で含む合金と、ポリパーフルオロアルキルスルホン酸系樹脂(デュポン社製「Nafion(登録商標)」)の分散溶液とを所定の比で混合し、燃料電極10の触媒層11を形成する。この触媒層11を、上述した材料よりなる拡散層12に熱圧着する。続いて、上述した材料よりなる集電体13の一面に拡散層12および触媒層11をホットメルト系の接着剤または接着性のある樹脂シートを用いて熱圧着し、燃料電極10を形成する。なお、上述したように拡散層12を形成せずに、集電体13に触媒層11を直接形成するようにしてもよい。
まず、触媒として、例えば白金(Pt)とルテニウム(Ru)とを所定の比で含む合金と、ポリパーフルオロアルキルスルホン酸系樹脂(デュポン社製「Nafion(登録商標)」)の分散溶液とを所定の比で混合し、燃料電極10の触媒層11を形成する。この触媒層11を、上述した材料よりなる拡散層12に熱圧着する。続いて、上述した材料よりなる集電体13の一面に拡散層12および触媒層11をホットメルト系の接着剤または接着性のある樹脂シートを用いて熱圧着し、燃料電極10を形成する。なお、上述したように拡散層12を形成せずに、集電体13に触媒層11を直接形成するようにしてもよい。
また、触媒として白金(Pt)をカーボンに担持させたものと、ポリパーフルオロアルキルスルホン酸系樹脂(デュポン社製「Nafion(登録商標)」)の分散溶液とを所定の比で混合し、酸素電極20の触媒層21を形成する。この触媒層21を、上述した材料よりなる拡散層22に熱圧着する。続いて、触媒層21の拡散層22が形成されていない面に、上述した材料よりなる機能層51を形成する。更に、上述した材料よりなる集電体23を拡散層22に熱圧着すると共に、集電体23の拡散層22とは反対側に、空気が流れる流路状に撥水領域60を形成する。一方、接着性フィルム40Aを用意し、この接着性フィルム40Aに空気流路40を形成したのち、これを集電体23の撥水領域60が形成された面に熱圧着する。
続いて、接着性のある樹脂シート30Aを用意し、この樹脂シートに流路を形成して燃料・電解質流路30を形成し、燃料電極10の酸素電極20に対向する面に熱圧着する。
次いで、上述した材料よりなる外装部材14,24を作製する。外装部材14には、例えば樹脂製の継手よりなる燃料・電解質入口14Aおよび燃料・電解質出口14B並びに貫通孔50A,50Bを設け、外装部材24には、例えば樹脂製の継手よりなる空気入口24Aおよび空気出口24B並びに貫通孔50C,50Dを設ける。
その後、熱圧着した燃料・電解質流路30に、酸素電極20を接着し、外装部材14,24に収納する。これにより図1および図2に示した燃料電池セル110が完成する。
次に、上記燃料電池110の作用・効果について説明する。
この燃料電池110では、燃料・電解質流路30により燃料および電解質が燃料電極10に供給されると、反応によりプロトンと電子とを生成する。プロトンは燃料・電解質流路30を通って酸素電極20に移動し、電子および酸素と反応して水を生成する。燃料電極10、酸素電極20および燃料電池110全体で起こる反応は、式1〜3で表される。これにより、燃料であるメタノールの化学エネルギーの一部が電気エネルギーに変換されて、電力として取り出される。なお、燃料電極10で発生する二酸化炭素および酸素電極20で発生する水は、燃料・電解質流路30に流出して取り除かれる。
燃料電極10:CH3OH+H2O→CO2 +6e−+6H+ …(1)
酸素電極20:(3/2)O2+6e−+6H+→3H2O …(2)
燃料電池110全体:CH3OH+(3/2)O2→CO2 +2H2O …(3)
酸素電極20:(3/2)O2+6e−+6H+→3H2O …(2)
燃料電池110全体:CH3OH+(3/2)O2→CO2 +2H2O …(3)
本実施の形態では、集電体23の空気が流れる面に、空気流路40に沿って撥水処理を施した撥水領域60が設けられていることにより、空気流路40へ透過してきた水が、燃料・電解質流路40へ逆流することなく、排出される。また、撥水処理により、空気流路40へ透過してきた水は、玉状となるため、効率よく燃料電池110の外部へ排出される。
更に、集電体23では、空気流路40に沿った部分のみが撥水処理されていることにより、接着性フィルム40Aを用いて形成された空気流路40は、集電体23と強固に接着される。従って、空気の流れが均一化され、空気漏れのない空気流路40が形成されると共に、酸素極側で発生する水の排出能力がさらに向上する。
以上のように、本実施の形態では、空気流路40側に面した集電体23上に空気流路40に沿って撥水領域60を形成するようにしたので、酸素電極20で発生した水の排出能力を向上させることができる。また、集電体23は、空気流路40に沿った部分のみが撥水処理されるようにしたので、空気流路40との密着性が保持されると共に、酸素電極側で発生する水の排出能力が大幅に向上する。よって、酸素電極20におけるフラッディングを抑制すると共に、発電特性を向上させることが可能となる。
(適用例)
次に、上記燃料電池110の適用例について説明する。
次に、上記燃料電池110の適用例について説明する。
[燃料電池システムの構成例]
図3は本発明の燃料電池110を備えた燃料電池システムを有する電子機器の概略構成を表すものである。この電子機器は、例えば、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant;個人用携帯情報機器)などのモバイル機器、またはノート型PC(Personal Computer )であり、燃料電池システム1と、この燃料電池システム1で発電される電気エネルギーにより駆動される外部回路(負荷)2とを備えている。
図3は本発明の燃料電池110を備えた燃料電池システムを有する電子機器の概略構成を表すものである。この電子機器は、例えば、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant;個人用携帯情報機器)などのモバイル機器、またはノート型PC(Personal Computer )であり、燃料電池システム1と、この燃料電池システム1で発電される電気エネルギーにより駆動される外部回路(負荷)2とを備えている。
燃料電池システム1は、例えば、燃料電池110と、この燃料電池110の運転状態を測定する測定部120と、測定部120による測定結果に基づいて燃料電池110の運転条件を決定する制御部130とを備えている。この燃料電池システム1は、また、燃料電池110に燃料および電解質を含む流動体を供給する燃料・電解質供給部140と、例えばメタノールなどの燃料のみを燃料・電解質貯蔵部141に供給する燃料供給部150とを備えている。なお、燃料電池110における燃料・電解質流路30は、外装部材14に設けられた燃料・電解質入口14Aおよび燃料・電解質出口14Bを介して燃料・電解質供給部140に連結されており、燃料・電解質供給部140から流動体が供給されるようになっている。
測定部120は、燃料電池110の動作電圧および動作電流を測定するものであり、例えば、燃料電池110の動作電圧を測定する電圧測定回路121と、動作電流を測定する電流測定回路122と、得られた測定結果を制御部130に送るための通信ライン123とを有している。
制御部130は、測定部120の測定結果に基づいて、燃料電池110の運転条件として燃料・電解質供給パラメータおよび燃料供給パラメータの制御を行うものであり、例えば、演算部131、記憶(メモリ)部132、通信部133および通信ライン134を有している。ここで、燃料・電解質供給パラメータには、例えば、燃料・電解質を含む流動体の供給流速が含まれる。燃料供給パラメータは、例えば、燃料の供給流速および供給量を含み、必要に応じて供給濃度を含んでいてもよい。制御部130は、例えばマイクロコンピュータにより構成することができる。
演算部131は、測定部120で得られた測定結果から燃料電池110の出力を算出し、燃料・電解質供給パラメータおよび燃料供給パラメータを設定するものである。具体的には、演算部131は、記憶部132に入力された各種測定結果から一定間隔でサンプリングしたアノード電位、カソード電位、出力電圧および出力電流を平均して、平均アノード電位、平均カソード電位、平均出力電圧および平均出力電流を算出し、記憶部132に入力すると共に、記憶部132に保存されている各種平均値を相互比較し、燃料・電解質供給パラメータおよび燃料供給パラメータを判定するようになっている。
記憶部132は、測定部120から送られてきた各種測定値や、演算部131により算出された各種平均値などを記憶するものである。
通信部133は、通信ライン123を介して測定部120から測定結果を受け取り、記憶部132に入力する機能と、通信ライン134を介して燃料・電解質供給部140および燃料供給部150に燃料・電解質供給パラメータおよび燃料供給パラメータを設定する信号をそれぞれ出力する機能とを有している。
燃料・電解質供給部140は、燃料・電解質貯蔵部141と、燃料・電解質供給調整部142と、燃料・電解質供給ライン143とを備えている。燃料・電解質貯蔵部141は、流動体を貯蔵するものであり、例えばタンクまたはカートリッジにより構成されている。燃料・電解質供給調整部142は流動体の供給流速を調整するものである。燃料・電解質供給調整部142は、制御部130からの信号で駆動されうるものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、モータや圧電素子で駆動されるバルブ、または電磁ポンプにより構成されていることが好ましい。
燃料供給部150は、燃料貯蔵部151と、燃料供給調整部152と、燃料供給ライン153とを有する。燃料貯蔵部151は、メタノールなどの燃料のみを貯蔵するものであり、例えばタンクまたはカートリッジにより構成されている。燃料供給調整部152は、燃料の供給流速および供給量を調整するものである。燃料供給調整部152は、制御部130からの信号で駆動されうるものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、モータや圧電素子で駆動されるバルブ、または電磁ポンプにより構成されていることが好ましい。なお、燃料供給部150は、燃料の供給濃度を調整する濃度調整部(図示せず)を備えていてもよい。濃度調整部は、燃料として純(99.9%)メタノールを用いる場合には省略することができ、より小型化することができる。
また、上記燃料電池システム1は、次のようにして製造することができる。
[燃料電池システムの製造方法例]
例えば、上記燃料電池110を、上述した構成を有する測定部120,制御部130,燃料・電解質供給部140および燃料供給部150を有するシステムに組み込み、燃料入口14Aおよび燃料出口14Bと燃料供給部150とを例えばシリコーンチューブよりなる燃料供給ライン153で接続すると共に、燃料・電解質入口14Aおよび燃料・電解質出口14Bと燃料・電解質供給部140とを例えばシリコーンチューブよりなる燃料・電解質供給ライン143で接続する。これにより図3に示した燃料電池システム1が完成する。
例えば、上記燃料電池110を、上述した構成を有する測定部120,制御部130,燃料・電解質供給部140および燃料供給部150を有するシステムに組み込み、燃料入口14Aおよび燃料出口14Bと燃料供給部150とを例えばシリコーンチューブよりなる燃料供給ライン153で接続すると共に、燃料・電解質入口14Aおよび燃料・電解質出口14Bと燃料・電解質供給部140とを例えばシリコーンチューブよりなる燃料・電解質供給ライン143で接続する。これにより図3に示した燃料電池システム1が完成する。
このような燃料電池システム1では、燃料・電解質供給部140から燃料電池110に燃料および電解質を含む流動体が供給されると、燃料電池110から電力が取り出され、外部回路2が駆動する。燃料電池110の運転中には、測定部120により燃料電池110の動作電圧および動作電流が測定され、その測定結果に基づいて、制御部130により、燃料電池110の運転条件として上述した燃料・電解液供給パラメータおよび燃料供給パラメータの制御が行われる。測定部120による測定および制御部130によるパラメータ制御は頻繁に繰り返され、燃料電池110の特性変動に追従して流動体および燃料の供給状態が最適化される。
(実施例)
次に、上記燃料電池110およびこれを備えた燃料電池システム1の効果を示す実施例について説明する。
次に、上記燃料電池110およびこれを備えた燃料電池システム1の効果を示す実施例について説明する。
上記実施の形態と同様にして、図1に示した燃料電池110を作製した。まず、触媒として白金(Pt)とルテニウム(Ru)とを所定の比で含む合金と、ポリパーフルオロアルキルスルホン酸系樹脂(デュポン社製「Nafion(登録商標)」)の分散溶液とを所定の比で混合し、燃料電極10の触媒層11を形成した。この触媒層11を、上述した材料よりなる拡散層12(E−TEK社製;HT−2500)に対して、温度150℃、圧力249kPaの条件下で10分間熱圧着した。更に、上述した材料よりなる集電体13を、ホットメルト系の接着剤または接着性のある樹脂シートを用いて熱圧着し、燃料電極10を形成した。
また、触媒として白金(Pt)をカーボンに担持させたものと、ポリパーフルオロアルキルスルホン酸系樹脂(デュポン社製「Nafion(登録商標)」)の分散溶液とを所定の比で混合し、酸素電極20の触媒層21を形成した。この触媒層21を、上述した材料よりなる拡散層22(E−TEK社製;HT−2500)に対して、燃料電極10の触媒層11と同様にして熱圧着した。更に、上述した材料よりなる集電体23を、燃料電極10の集電体13と同様にして熱圧着し、酸素電極20を形成した。
集電体23には、厚み200μmのチタンメッシュ(SW=0.5、LW=1.0)を使用し、酸素電極20を作製する前に撥水領域60を片面に形成した。すなわち、PTFEディスパージョンソリューション(旭硝子株式会社、AD938L)を任意のパターニングでチタンメッシュの空気と接する面に吹き付けた。その後、室温で乾燥し、370℃、2時間の条件で焼成することにより、空気と接するチタンメッシュの片面に撥水領域60を形成した。
酸素電極20の空気と触れる面に、任意の形状(撥水領域60に対応する形状)に加工した接着性樹脂フィルムを貼り付け、空気流路40を形成した。接着性樹脂フィルムには、Pylarux(Dupont社製)を用い、150℃、3分、0.25kNで熱圧着を行った。
次いで、接着性のある樹脂シートを用意し、この樹脂シートに流路を形成して燃料・電解質流路を燃料電極10と空気電極20との間に熱圧着した。
続いて、上述した材料よりなる外装部材14,24を作製し、外装部材14には、例えば、樹脂製の継手よりなる空気入口14Aおよび空気出口14Bを設けた。外装部材24には、例えば樹脂製の継手よりなる燃料・電解液入口24Aおよび燃料・電解液出口24Bを設けた。次に、燃料電極10と酸素電極20とを、燃料・電解液流路30を両者の間に配置し、外装部材14,24に収納した。
この燃料電池110を、上述した構成を有する測定部120,制御部130,電解液供給部140および燃料供給部150を有するシステムに組み込み、図3に示した燃料電池システム1を構成した。その際、燃料・電解液供給調整部142および燃料供給調整部152をダイアフラム式定量ポンプ(株式会社KNF社製)により構成し、それぞれのポンプからシリコーンチューブよりなる燃料・電解液供給ライン143を電解液入口24Aに直接接続し、燃料供給ライン153は、燃料・電解質貯蔵部に直接接続され、燃料・電解質貯蔵部内のメタノール濃度が常に1Mになるように、任意のメタノール量が供給された。流体の電解質には、1Mメタノールと1 M硫酸の混合液を用い、燃料電池には、1.0ml/minの流速で供給した。
[評価]
図4は、撥水領域60を設けた燃料電池110の電流に対する電圧および電力の特性を示している。
図4は、撥水領域60を設けた燃料電池110の電流に対する電圧および電力の特性を示している。
空気出口24Bに圧力計を設けることで圧力を測定しているが、測定時の圧力損失は、撥水領域60を設けることで従来の撥水領域を持たない燃料電池と比較して、10〜20%低下し、改善していることがわかった。このことは、従来の燃料電池より水の排出が効率よく行われているためと考えられる。
図5は、撥水領域60の有無による燃料電池110の長期特性を示している。集電体23上に撥水領域60があることで、発電時間と共に、発電特性が非常に安定していることがわかる。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は、上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形することができる。例えば、上記実施の形態等では、機能層51を設けたが、なくてもよい。
また、上記実施の形態等では、燃料電極10,酸素電極20,燃料・電解質流路30および空気流路40の構成について具体的に説明したが、他の構造あるいは他の材料により構成するようにしてもよい。例えば、燃料・電解質流路30は、上記実施の形態で説明したような樹脂シートを加工して流路を形成したもののほか、多孔質などのシートにより構成してもよい。又、燃料・電解質流路30の替わりに電解質膜を配置しても良い。
更に、燃料および電解液を含む流動体は、プロトン(H+ )伝導性を有するもの、例えば、硫酸のほか、リン酸またはイオン性液体のみに限定されず、アルカリ系電解液でもよい。さらに、上記一実施の形態で説明した燃料は、メタノールのほか、エタノールやジメチルエーテルなどの他のアルコール、もしくは砂糖燃料でもよい。
また、上記実施の形態等では、酸素電極20へ空気を供給する場合について説明したが、空気に代えて酸素または酸素を含むガスを供給するようにしてもよい。更に、電子機器に用いられる燃料電池システム1において、燃料電池110一つを備えた構成を例に挙げて説明したが、燃料電池110を複数備えるようにしてもよい。これにより、より高出力となり、消費電力の大きな電子機器にも好適に用いることができる。また、各構成要素の材料および厚み、または燃料電池ユニット110の運転条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の運転条件としてもよい。
また、上記実施の形態等では、燃料電池として直接型メタノール燃料電池を例に挙げて説明したが、これに限らず、水素など液体燃料以外の物質を燃料として用いる燃料電池、例えばPEFC(Polymer Electrolyte Fuel Cell :固体高分子型燃料電池)、アルカリ型燃料電池、あるいはグルコースなどの砂糖燃料を利用した酵素電池などにも適用可能である。
1…燃料電池システム、2…外部回路(負荷)、10…燃料電極、11,21…集電体、11A,11B,21A,21B…集電端子、12,22…拡散層、13,23…触媒層、20…酸素電極、14,24…外装部材、30…燃料・電解液流路、40…空気流路、40A…接着フィルム、60…撥水領域、110…燃料電池、112…燃料電池スタック、120…測定部、130…制御部、140…燃料・電解液供給部、150…燃料供給部。
Claims (6)
- 互いに対向して第1面および第2面を有すると共に、前記第1面側に集電体を有する酸素電極と、
前記集電体とともに空気流路を形成する空気流路形成部材と、
前記空気流路の少なくとも一部に対応して前記集電体に形成された撥水領域と、
前記酸素電極の第2面側に配設された燃料電極と
を備えた燃料電池。 - 前記空気流路形成部材は空気流路用の溝を有する接着性フィルムであり、前記集電体に接着されている
請求項1に記載の燃料電池。 - 前記撥水領域は、前記空気流路に沿った全領域に形成されている
請求項1に記載の燃料電池。 - 前記酸素電極の集電体は、金属材料からなる多孔体である
請求項1に記載の燃料電池。 - 触媒層上に拡散層を間にして集電体を備え、
前記集電体側に前記集電体とともに空気流路を形成する空気流路形成部材が設けられると共に、前記集電体表面の前記空気流路の少なくとも一部に対応する位置に撥水領域を有し、
前記触媒層側に配置される燃料電極とともに燃料電池を構成する酸素電極。 - 燃料電池を備え、前記燃料電池は、
互いに対向して第1面および第2面を有すると共に、前記第1面に集電体を有する酸素電極と、
前記集電体とともに空気流路を形成する空気流路形成部材と、
前記空気流路の少なくとも一部に対応して前記集電体表面に形成された撥水領域と、
前記酸素電極の第2面側に配設された燃料電極と
を備えた電子機器。
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