JP2006024401A - 燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】
DMFCに用いられる最近のMEA技術の進歩で電池性能が向上してくると、上記に開示されている気液分離機能を持った膜を設置した電池構造では、発電に伴ってアノード側で液体燃料の酸化によって生成する炭酸ガスの排気が十分に進まず、発生した炭酸ガス気泡がアノード表面に付着し、燃料の拡散を妨げて、電池出力を大きく取ることが困難になってきた。
本発明の目的は、電池出力を大きく取ることができる構造の燃料電池を提供することにある。
【解決手段】
液体の燃料を酸化するアノードと、酸素を還元するカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に形成された電解質膜と、前記アノードに供給する液体の燃料を貯蔵する燃料室と、燃料室の内部と外部とを通気し、液体を遮断する機構とを備えた燃料電池であって、燃料室の内部の圧力は、燃料室の外部の圧力よりも高いことを特徴とする燃料電池。
【選択図】図5

Description

本発明は、アノード,電解質膜,カソード,拡散層から構成される膜/電極接合体
(MEA:Membrane Electrode Assembly )のアノードで液体の燃料が酸化され、カソードで酸素が還元される燃料電池に関する。
燃料電池は少なくとも固体又は液体の電解質及び所望の電気化学反応を誘起する2つの電極(アノード及びカソード)から構成され、その燃料が持つ化学エネルギーを直接電気エネルギーに高効率で変換する発電機である。
固体高分子膜電解質型燃料電池発電(PEM−FC:Polymer Electrolyte Membrane
Fuel Cell )システムは一般的に固体高分子電解質膜の両面に多孔質のアノード及びカソードを配した単位電池を直列及び必要に応じて並列に接続した電池,燃料容器,燃料供給装置と空気又は酸素供給装置から構成される。
PEM−FCの中でも、液体燃料を使用する直接型メタノール燃料電池(DMFC:
Direct Methanol Fuel Cell )やメタルハイドライド,ヒドラジン燃料電池は燃料の体積エネルギー密度が高いために小型の可搬型又は携帯型の電源として有効なものとして注目され、中でも取り扱いが容易で、近い将来バイオマスからの生産も期待されるメタノールを燃料とするDMFCは理想的な電源システムといえる。
液体燃料を用いるDMFCのような燃料電池を携帯機器用電源として用いるためには、より出力密度の高い電池を目指して電極触媒の高性能化,電極構造の高性能化,燃料クロスオーバー(浸透)の少ない固体高分子膜の開発などの努力が払われているとともに、燃料ポンプや空気ブロアの小型化の極限技術追求,燃料供給ポンプ,空気供給ブロアなどの補機動力を必要としないシステムも追求されている。
特許文献1に開示されている燃料電池は、補機動力を必要としない燃料電池について開示されており、液体燃料の入った容器の壁面にアノードで生成された二酸化炭素(CO2)を容器の外に排出するために、容器の壁面に気液分離機能を持った膜を設置することにより液体燃料を容器の外にもらさず、生成した二酸化炭素を排出している。
特開2003−100315号公報
しかしながら、DMFCに用いられる最近のMEA技術の進歩で電池性能が向上してくると、上記に開示されている気液分離機能を持った膜を設置した電池構造では、発電に伴ってアノード側で液体燃料の酸化によって生成する炭酸ガスの排気が十分に進まず、発生した炭酸ガス気泡がアノード表面に付着し、燃料の拡散を妨げて、電池出力を大きく取ることが困難になってきた。
本発明の目的は、電池出力を大きく取ることができる構造の燃料電池を提供することにある。
液体の燃料を酸化するアノードと、酸素を還元するカソードと、アノードとカソードとの間に形成された電解質膜と、アノードに供給する液体の燃料を貯蔵する燃料室と、燃料室の内部と外部とを通気し、液体を遮断する機構とを備えた燃料電池であって、燃料室の内部の圧力は、燃料室の外部の圧力よりも高いことを特徴とする燃料電池。
アノード側で生成した二酸化炭素を燃料室から排気しうる燃料電池を得ることができる。
以下に本発明に係る実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
本実施の形態に用いられるメタノールを燃料とする燃料電池では、以下に示す電気化学反応でメタノールの持っている化学エネルギーが直接電気エネルギーに変換される形で発電される。アノード側では供給されたメタノール水溶液が(1)式にしたがって反応して炭酸ガスと水素イオンと電子に解離する(メタノールの酸化反応)。
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e- …(1)
生成された水素イオンは電解質膜中をアノード側からカソード側に移動し、カソード電極上で空気中から拡散してきた酸素ガスと電極上の電子と(2)式に従って反応して水を生成する(酸素の還元反応)。
6H++3/2O2+6e- → 3H2O …(2)
従って発電に伴う全化学反応は(3)式に示すようにメタノールが酸素によって酸化されて炭酸ガスと水とを生成し、化学反応式はメタノールの火炎燃焼と同じになる。
CH3OH+3/2O2 → CO2+3H2O …(3)
単位電池の開路電圧は概ね1.2V で燃料が電解質膜を浸透する影響で実質的には0.85〜1.0Vであり、特に限定されるものではないが実用的な負荷運転の下での電圧は0.2〜0.6V 程度の領域が選ばれる。従って実際に電源として用いる場合には負荷機器の要求にしたがって所定の電圧が得られるように単位電池を直列接続して用いられる。単電池の出力電流密度は電極触媒,電極構造その他の影響で変化するが、実効的に単電池の発電部面積を選択して所定の電流が得られるように設計される。また、適宜、並列に接続することで電池容量を調整することが可能である。本実施の形態では、単位電池の定格電圧を0.3V とした。
以下に本実施の形態にかかる燃料電池の実施例を詳細に説明する。
図1に本実施例にかかる電源システムの構成を示す。電源システムは、燃料電池1,燃料カートリッジタンク2,出力端子3及び排ガス口4から構成されている。燃料カートリッジタンク2は、高圧液化ガス,高圧ガス又はバネなどの圧力によって燃料を送り出す方式のものであり、燃料を図2に開示する燃料室12に供給するとともに、燃料室12内を液体燃料で大気圧よりも高い圧力に維持するシステムになっている。排ガス口4に気液分離材料を配した場合、燃料室12内を大気圧より高く保つことにより、アノードで生成された炭酸ガスを排ガス口4から容易に排出できる。
発電に伴って、燃料室の燃料が消費されると燃料カートリッジタンク2から燃料が補給される。電池出力は直流/直流変換器5を介して負荷機器に電力を供給する方式をとっており、燃料電池1,燃料カートリッジタンク2の燃料残量,直流/直流変換器5などの運転時及び停止時の状況にかかわる信号を得て、直流/直流変換器5を制御し、必要に応じて警告信号を出力するように設定された制御器6をもって電源システムが構成されている。また、制御器6は、必要によっては電池電圧,出力電流,電池温度などの電源の運転状態を負荷機器に表示することができ、燃料カートリッジタンク2の残量が諸定置を下回る状況になった場合、或いは空気拡散量などが所定の範囲から外れた場合には、直流/直流変換器5から負荷への電力供給を停止するとともに音響,音声,パイロットランプ又は文字表示などの異常警報を駆動する。正常運転時においても燃料カートリッジタンク2の燃料残量信号を受けて、負荷機器に燃料残量表示が出来る。
図2に本発明にかかる一実施例による燃料電池の部品構成を示す。燃料電池1は、燃料カートリッジホルダー7を備えた燃料室12の両面に、アノード端板13a,ガスケット14,拡散層付きのMEA(膜/電極接合体)11,ガスケット14,カソード端板13cの順に積層し、該積層体を面内の加圧力が略均一になるようにネジで一体化,固定して、構成される。
図3に積層,固定された燃料室12の両面に発電部を形成した燃料電池1の概観を示す。燃料電池1は、燃料室12の両面には複数の単電池(MEA)が直列接続され、該両面の直列単電池群はさらに接続端子16で直列接続され、出力端子3から電力を取り出す構造になっている。
図3において、燃料は、燃料カートリッジタンク2から高圧液化ガス,高圧ガス又はバネなどによって加圧供給され、アノードで生成した炭酸ガスは、ここには図示されず、図5にその一実施例として示す排ガスモジュール30を介して排ガス口4から排出される。この排ガスモジュール30は、気液分離機能を持ち、排ガスを捕集する機能を持っている。一方、酸化剤である空気は空気拡散スリット22cからの拡散で供給され、カソードで生成した水はこのスリット22cを通して拡散,排気される。電池を一体化するための締め付け方法は本実施例で開示したネジ15による締め付けに限定されることなく、この電池を筐体内に挿入して筐体からの圧縮力によって達成することやその他の方法で達成することが出来る。
図4に本実施例にかかる燃料室12の構造を示す。燃料室12には燃料を分配するための複数のリブ21が設けられ、リブ支持板23の支持を受けて両面貫通のスリット22aを形成しており、リブ支持板23は、燃料室12の厚さよりは十分に薄く、この部分にも燃料分配のための溝部が形成され、且つ、該支持板には、図4に開示する気液分離管31を支持する孔24が設けられている。また、燃料室12には、排ガス口4,電池締め付け用ネジ孔25a,燃料カートリッジ受け口26、及び燃料カートリッジホルダー7が設けられている。燃料室12の材料はMEA装着時に面圧が均一にかかるように平滑であり、面内に設置される複数の電池が相互に短絡しないように絶縁された構造となれば特に限定は無い。高密度塩化ビニル,高密度ポリエチレン,高密度ポリプロピレン,エポキシ樹脂,ポリエーテルエーテルケトン類,ポリエーテルスルフォン類,ポリカーボネート或いはこれらをガラス繊維繊維強化したものを用いると良い。また、炭素板や鋼,ニッケル、その他軽量なアルミニウム,マグネシウムなどの合金材料、或いは、銅−アルミニウムなどに代表される金属間化合物や各種のステンレススチールを用い、表面を不導体化する方法や樹脂を塗布して絶縁化する方法を用いることが出来る。
燃料や酸化剤ガスなど流体を分配するスリット22aは、図3では平行溝構造をとっているが、その他の構造などを選択することも可能で、流体が面内で均一に分配される構造であれば特に限定されるものではない。また、図3では電池構成部材をネジによって均一に締め付けて、電気的接触と液体燃料のシールを図っているが、これも本実施例に限定されることなく、例えば、電池部材をそれぞれ接着性高分子フィルムで張り合わせて、該電池を筐体などで加圧,締め付けする方法などは、電源を軽量,薄型化を図る上で有効な方法である。
図5に本実施例にかかる排ガスモジュール30の構造を示す。排ガスモジュール30は複数の撥水性で多孔質な中空糸状又は筒状の気液分離管31がモジュール基板32に開口部をもって密着して接合されている。この気液分離管31の外形は、図3に示した気液分離管31を支持する孔24に挿入可能な大きさが選ばれ、モジュール基板32に接続されていない端は管が閉じられている。気液分離管に用いられる材料は、通気性が高く、撥水性の強いものであれば特に限定はないが、多孔質ポリテトラフルオロエチレン中空糸,ポリテトラフルオロエチレンフィブリルを押し出し成型したチューブ、あるいは、織布や不織布で作られたチューブをポリテトラフルオロエチレン分散液(D−1:ダイキン工業社製)などで撥水化処理したものなどを用いることができる。
図6に本発明による実施例として、図4に示した構造の燃料室12と図5に示した排ガスモジュール30とを組み合わせた燃料室の概観を示す。排ガスモジュール30の各々の気液分離管31は、燃料室12に設けられたリブ支持板23の孔24を通して固定され、モジュール基板32は排ガス口4に接続されて、それぞれの気液分離管に回収されたガスを電池外に排気する機能を持っている。このような構造をとることによって、気液分離管は炭酸ガスが発生するアノードの近傍で対向する2つのアノードとほぼ等距離に設置されることになり、燃料カートリッジを装着すると、燃料室内は所定の圧力で燃料が満たされた状態になり、発電しないときには、気液分離管の撥水性によって、その細孔内に燃料が特定の圧力に達するまでは進入できないために、特定圧以下では燃料の漏洩がなく、燃料内溶存ガスの脱気や発電開始とともに発生する炭酸ガスは気液分離管に補足されて、液体燃料の圧力で電池外へ排気される。したがって、用いられる気液分離管の膜厚,平均細孔経,細孔分布及び開口率は、燃料カートリッジの初期圧及び最終圧と電池の最大出力時の炭酸ガス発生量から選択されて用いられる。
また、排ガスモジュール30の各々の気液分離管31を、燃料室12に設けられたリブ支持板23の孔24を通して固定することにより、気液分離管30同士を等距離に保つことができ、排気の偏りを無くすことができる。
アノード端板13aに設けられたスリット22に関しては、離脱気泡径が最も大きくなる円形の場合について、孔直径D,表面張力T,メタノール水溶液密度ρ,重力加速度g,離脱気泡半径γとすると、
D=2γcosθ
であり、気泡接触角θは、
(πρgD2/24cos2θ)(1−3cos2θ+sin3θ−3sinθ)−2πTcos2θ=0
であらわされる。スリット22は、一般的に集電性及びMEAを固定するための剛性の面から開口率は25〜50%が選ばれ、又、締め付け、固定時のMEAの厚み変形を考慮すると、スリット幅は1〜2mm、ピッチは2〜4mmが選ばれる。従って、2mm直径の円形で、10wt%メタノール水溶液を用いた場合、気泡接触角θは約60°となり、離脱気泡直径2γは、約4mmとなる。従って、気液分離モジュールと対向するアノード端板13aの間隔は、4mm以下に設置することが好ましく、発生,成長した気泡は浮力による離脱が生じる前に気液分離モジュールの表面に接触して気泡が破壊されるため、効果的な気泡除去が行われ、アノードの表面がガスによって閉塞することなく、より安定で高い出力性能を維持することができる。
すなわち、排ガスモジュールは従来の気液分離膜のように燃料室壁面に設置されるのではなく、アノードの表面に近い燃料室内に施設されている。
ここでは、撥水性多孔質中空糸を気液分離管としてモジュールを構成する例を示したが、この方法に限定されること無く、燃料室12内に、アノードの表面に対向して設置される気液分離機能をもった排ガスモジュールであれば如何なる形状でも取ることができる。例えば、図17に示すように、燃料室12をスリット22付部分と溝27付部分とに分割し、気液分離膜33を介して接合した形状とすることによって、溝27と気液分離膜33とが排ガスモジュールとして機能することになる。
また、図17に開示した実施例は、燃料室12の片方の面に燃料電池を実装した電源であるが、図18に示すような断面構造をとることによって燃料室12の両面を発電部とすることも可能である。即ち、通気性と所定の剛性を持った膜支持体34の両面に気液分離膜33を配して、燃料室12の内部で、且つ、燃料電池のアノード端板13aに対向するように設置することが考えられる。
図7に燃料室12に接合されるアノード端板13aの構造を示す。アノード端板13aは、同一面内に6個の単電池を配置し、直列に電気接続するため3種の電子伝導性と耐食性を持ったカレントコレクタ42a,42b,42cと絶縁シート41が一体化,接合され、それぞれのカレントコレクタには、複数のスリット22bが設けられている。絶縁シート41には、電池部品の一体化,締め付けのために、複数のネジ孔25bが設けられている。それぞれのカレントコレクタ42に用いられる材料は特に限定はないが、炭素板やステンレススチール,チタン,タンタルなどの金属系板、或いはこれらの金属系材料と他の金属例えば、炭素鋼,ステンレススチール,銅,ニッケル等のクラッドなどの複合材料などを用いることが出来る。更に、金属系カレントコレクタにおいては、加工されたカレントコレクタの通電接触部に金などの耐食性貴金属をメッキすることや、導電性炭素塗料などを塗布して実装時の接触抵抗を低減することは電池の出力密度向上と長期性能安定性の確保には有効である。
また、アノード端板13aを構成する絶縁性シートは、面内に配置されたカレントコレクタ42がそれぞれ一体化接合でき、絶縁性,平面性を確保できる材料であれば特に限定はない。高密度塩化ビニル,高密度ポリエチレン,高密度ポリプロピレン,エポキシ樹脂,ポリエーテルエーテルケトン類,ポリエーテルスルフォン類,ポリカーボネート,ポリイミド系樹脂或いはこれらをガラス繊維繊維強化したものを用いると良い。また、鋼,ニッケル、その他軽量なアルミニウム,マグネシウムなどの合金材料、或いは、銅−アルミニウムなどに代表される金属間化合物や各種のステンレススチールを用い、表面を不導体化する方法や樹脂を塗布して絶縁化する方法を用い、カレントコレクタ42と接合することが出来る。
本実施例の大きな特徴は、燃料室12のリブでMEAを固定する方式であるため、上記アノード端板は、大きな剛性を必要とせずにカレントコレクタ42とMEAの電気的接触が達成できるので、薄型化が可能で、0.05〜1.0の厚みにすることが可能である。その結果、発電に伴ってアノードで発生する炭酸ガスが電極面近傍で大きく成長することなく離脱するために、炭酸ガスの電極面における気泡成長を抑制でき、高い発電性能を維持することができる。
また、アノード端板表面に化学的に親水基を導入したり、酸化チタンに代表されるような親水性物質を分散,担持してアノード端板を親水化したりすると、発電により発生した炭酸ガスがアノード端板に付着,滞留することなく、速やかに移動するために、アノード近傍の炭酸ガス脱気には大きな効果がある。
図8に同一面内に複数の単位電池を直列に配置するカソード端板13cの構造の一例を示す。カソード端板13cは、カソード端板用基板81に複数のカレントコレクタ42を接合するためのザグリ部82a,82b,82c、そのザグリ部82に酸化剤である空気及び生成物である水蒸気を拡散させるためのスリット22cが設けられ、更に、燃料電池部品を一体化,締め付けのためのネジ孔25cが設けられている。カソード端板用基板
81は、面内に配置されたカレントコレクタ42が接合でき、絶縁性,平面性を確保でき、更にMEAと十分に低い接触抵抗となるように面内締め付けが可能な剛性を持った材料であれば特に限定はなく、アノード端板13aと同様の材料を用いることができる。
図9に図8に示したカソード端板用基板81のザグリ部82に、図10に開示されるカレントコレクタを接合したカソード端板13cの概観を示す。カソード端板13cは、同一面内に6個の単電池のカソードと接触,集電する6個のカレントコレクタ42と燃料電池部品を一体化,締め付けするためのネジ孔25cが設けられている。カレントコレクタ42は、カソード端板用基板81のフランジ面と可能な限り、同一面を構成するように、ザグリ部82に嵌め込まれて接着剤で接合されることが望ましい。このときの接着剤には、メタノール水溶液に溶解,膨潤せず、メタノールよりも電気化学的に安定なものであれば良く、エポキシ樹脂系接着剤などは好適なものである。また、接着剤による固定に限定されること無く、例えば、ザグリ部の一部に、カレントコレクタ42に設けられたスリット22bの一部と或いは特別に設けられた嵌め込み孔と嵌合する突起をカソード端板用基板81に設けて固定することも出来る。また、カレントコレクタ42とカソード端板用基板81の一方の面が同一面を形成することも特に限定的なものではなく、この部分に段差が生じるような構造の場合、例えば、カソード端板用基板81にザグリ部82を設けることなくカレントコレクタ42を接合することも可能で、シールのために用いられるガスケットの構造,厚みを変更することで対応できる。
図10に図7と図9に開示したアノード端板13a,カソード端板13cに接合されるカレントコレクタの構造を示す。カレントコレクタ42は、同一面内の単電池を直列に接続するために、42a,42b,42cと3種類の形状のものが用いられる。カレントコレクタ42aは、電池の出力端子3を備え、面内には燃料もしくは酸化剤である空気の拡散のためのスリット22bが設けられている。カレントコレクタ42b及び42cは同一面内の単電池を直列に接続するためのインターコネクタ51b,51cとスリット22bが設けられている。更に、これらのカレントコレクタ42をアノード端板13aに用いるときには、図7に開示した絶縁シート41と一体化,接合するためのフィン52が設けられており、カソード端板13cに用いるときには、このフィン52を持たない構造のものが選択される。
ここで、発電部を構成するアノード触媒としては炭素系粉末担体に白金とルテニウムの混合金属或いは白金/ルテニウム合金の微粒子を分散担持したもの、カソード触媒としては炭素系担体に白金微粒子を分散担持したものは容易に製造,利用できる材料である。触媒の主成分である白金の炭素粉末に対する担持量は一般的には50wt%以下が好ましく、活性の高い触媒或いは炭素担体上への分散の改善によっては30wt%以下でも高い性能の電極を形成することが可能である。電極中の白金量は、アノード電極45では0.5〜5mg/cm2、カソード電極46では0.1〜2mg/cm2が好ましい。
しかしながら本実施例による燃料電池のアノード及びカソードの触媒は通常の直接形メタノール燃料電池に用いられるものであれば特定の触媒組成に制限されるものではなく用いることができ、性能の高い触媒ほど触媒量を削減でき電源システムの低コスト化に有効である。
電解質膜には水素イオン導電性材料を用いると大気中の炭酸ガスの影響を受けることなく安定な燃料電池を実現できる。このような材料としてポリパーフルオロスチレンスルフォン酸,パーフルオロカーボン系スルフォン酸などに代表されるスルフォン酸化したフッ素系ポリマーやポリスチレンスルフォン酸,スルフォン酸化ポリエーテルスルフォン類,スルフォン酸化ポリエーテルエーテルケトン類などの炭化水素系ポリマーをスルフォン化した材料或いは炭化水素系ポリマーをアルキルスルフォン酸化した材料を用いることができる。これらの材料を電解質膜として用いれば一般に燃料電池を80℃以下の温度で作動することができる。また、タングステン酸化物水和物,ジルコニウム酸化物水和物,スズ酸化物水和物などの水素イオン導電性無機物を耐熱性樹脂若しくはスルフォン酸化樹脂にミクロ分散した複合電解質膜等を用いることによって、より高温域まで作動する燃料電池とすることもできる。特にスルフォン酸化されたポリエーテルスルフォン類,ポリエーテルエーテルスルフォン類或いは水素イオン導電性無機物を用いた複合電解質類は、ポリパーフルオロカーボンスルフォン酸類に比較して燃料のメタノール透過性の低い電解質膜として好ましい。いずれにしても水素イオン伝導性が高く、メタノール透過性の低い電解質膜を用いると燃料の発電利用率が高くなるため本実施例の効果であるコンパクト化及び長時間発電をより高いレベルで達成することができる。
図11(a)に実施例に用いるMEA60の構造を示す。電解質膜61にはアルキルスルフォン酸化ポリエーテルスルフォンを用い、アノード電極62aには炭素担体(XC72R:キャボット社製)に白金とルテニウムを1:1の原子比で、白金担持量30wt%のものを、カソード電極62cには炭素担体(XC72R:キャボット社製)に白金を30
wt%担持した触媒を用い、バインダーには、電解質膜のアルキルスルフォン酸化ポリエーテルスルフォンと同じ高分子で電解質膜よりもスルフォン酸化当量重量の小さいものを用いた。このようなバインダーの選択によって、電極触媒に分散される電解質の水及びメタノールのクロスオーバー量を電解質膜よりも大きくとることができ、電極触媒上への燃料拡散が促進されて、電極性能は向上するのが特徴である。
図11(b),図11(c)に実施例に用いられるアノード拡散層70a及びカソード拡散層70cの構成を示す。カソード拡散層70cは、撥水性を強めて、カソード近傍の水蒸気圧を高め、生成水蒸気の拡散排気と水の凝集を防ぐための撥水層72と多孔質炭素基板71cから構成されており、撥水層72がカソード電極62cと接するように積層され、アノード拡散層70aとアノード電極62aの面接触に関しては特に限定は無く、多孔質炭素基板を用いた。カソード拡散層70cの多孔質炭素基板71cには導電性で多孔質な材料が用いられる。一般的には炭素繊維の織布或いは不織布、例えば、炭素繊維織布としてはカーボンクロス(トレカクロス:東レ製)やカーボンペーパー(東レ製:TGP−H−060)などを用い、撥水層72は炭素粉末と撥水性微粒子,撥水性フィブリル又は撥水性繊維、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどを混合して構成される。
より詳細に説明すれば、カーボンペーパー(東レ製:TGP−H−060)を所定の寸法に切り出し、予め吸水量を求めた後、このカーボンペーパーを焼付け後の重量比が20〜60wt%となるように希釈したポリテトラフルオロカーボン/水分散液(D−1:ダイキン工業社製)に漬し、120℃で約1時間乾燥し、更に、空気中、270〜360℃の温度で0.5 〜1時間焼き付け操作をする。次に、炭素粉末(XC−72R:キャボット社製)に対して20〜60wt%となるようにポリテトラフルオロカーボン/水分散液を加えて混練する。ペースト状になった混練物を上記のように撥水化されたカーボンペーパーの一方の面に厚みが10〜30μmとなるように塗布する。これを120℃で約1時間乾燥した後、270〜360℃で0.5 〜1時間、空気中で焼成してカソード拡散層
70cが得られる。カソード拡散層70cの通気性及び透湿性、即ち、供給酸素及び生成水の拡散性は、ポリテトラフルオロエチレンの添加量,分散性,焼き付け温度に大きく依存するので、燃料電池の設計性能,使用環境などを考慮して適正な条件が選定される。
アノード拡散層70aは導電性と多孔質の条件を満たす炭素繊維の織布或いは不織布、例えば、炭素繊維織布としてはカーボンクロス(トレカクロス:東レ製)やカーボンペーパー(東レ製:TGP−H−060)などの材料は好適なものである。アノード拡散層
70aの機能は、水溶液燃料の供給と生成された炭酸ガスの速やかな散逸を促進するものであるため、上記した多孔質炭素基板71aを緩やかな酸化又は紫外線照射などによって表面を親水化する方法や、多孔質炭素基板71aに親水性樹脂を分散する方法,酸化チタンなどに代表される強い親水性を有する物質を分散担持する方法は、アノードで生成した炭酸ガスが多孔質炭素基板71a内で気泡成長するのを抑制し、燃料電池の出力密度を高めるために有効な方法である。また、アノード拡散層70aは、上記した材料に限定されること無く、実質的に電気化学不活性な金属系材料(例えば、ステンレススチール繊維不織布,多孔質体,多孔質なチタン,タンタルなど)の多孔質材料を用いることも出来る。
図12に実施例の燃料電池に用いられるガスケット90の構造を示す。ガスケット90は、複数の実装するMEAに対応した、通電部切り抜き91と締め付けネジを通すための複数の孔25d及びアノード端板13a,カソード端板13cのインターコネクタ51を接続する電導体を貫通させる接続孔92から構成される。ガスケット90は、アノード電極62aに供給される燃料及びカソード電極62cに供給される酸化剤ガスをシールするためのものであり、通常用いられるEPDMなどの合成ゴム,フッ素系のゴム,シリコンゴムなどをガスケット材として使用することが出来る。
図19に本実施例による燃料電池発電システムに用いた燃料カートリッジの断面構造を示す。燃料カートリッジタンク2は二重管構造をとっており、液体燃料116が加圧押し出し用の液体燃料供給用ピストン112と通気孔113を備えた液体燃料111の内部に充填され、外筒と液体燃料111間には液体燃料供給用ピストン112を駆動するための高圧ガス117が充填されている。
液体燃料111の先端には、開閉機構114を介して燃料供給管115が設けられている。この燃料カートリッジタンク2に用いられた開閉機構114及びカートリッジ受け口26の断面構造は、取り付け前の状態を図20(A)に取り付け後の状態を図20(B)に示す。カートリッジ開閉機構114は、通液孔123を有する中空の燃料供給管115,開閉弁121及び使用停止時に通液孔123を開閉弁121で閉じるために、燃料供給管115を押すためのバネ122から構成されている。一方、カートリッジ受け口26は、通液孔123を有する受け口弁131が運転停止時にはシールリング132で通液孔
123を塞ぐようにバネ122で固定されている。この燃料カートリッジタンク2がカートリッジ受け口26に固定された場合には、図20(B)に示すように各々の弁が開いて燃料カートリッジタンク2内の高圧ガス117によって液体燃料供給用ピストン112が押されて、液体燃料111がカートリッジ受け口26を通して燃料電池に送られる。
燃料カートリッジタンク2,開閉機構114,液体燃料111及びカートリッジ受け口26に用いられる材料は液体燃料に対して耐久性を持った材料であれば特に限定は無く、高密度塩化ビニル,高密度ポリエチレン,高密度ポリプロピレン,エポキシ樹脂,ポリエーテルエーテルケトン類,ポリエーテルスルフォン類,ポリカーボネート,ポリイミド系樹脂あるいはエチレン・プロピレンゴムなどから剛性,柔軟性など部品に必要な構成に合わせて選択,使用される。カートリッジ内に充填される高圧ガスとしては、炭酸ガス,窒素,アルゴン,空気などの加圧ガス及びブタン,フロンなどの加圧液化ガスから選択される1種以上を選択して使用される。また、高圧ガスの充填圧は、液体燃料111の容積と高圧ガス充填部の容積比及び液体燃料供給用ピストン112が受ける摺動抵抗によって変わるが、高圧であるほど容易に駆動することができる。
しかしながら、燃料電池のシール耐圧性やカートリッジ取り扱いの安全性を考慮すると、初期圧は0.3MPa 以下(ゲージ圧)が好ましい。ここでは、燃料カートリッジから燃料電池への液体燃料電池輸送力として高圧ガスを用いる方法を開示したが、特にこれに限定されること無く、ピストンをバネなどの力を利用して駆動する方法なども有効な方法である。
(実施例1)
以下に携帯情報端末用DMFCの一実施例を説明する。図13に本発明によるDMFCの概観を示す。この燃料電池1は燃料室12、図には示されていないスルフォメチル化ポリエーテルスルフォンを電解質膜として用いたMEA,ガスケットを挟んだカソード端板13cとアノード端板13aとを有し、発電部は、燃料室12の片方の面にのみ実装されている。この燃料室12の外周には、燃料注入管28と排ガス口4が設けられている。また、アノード端板13a及びカソード端板13cの外周部には一対の出力端子3が設けられている。電池の組み立て構成は、図2に示した部品構成と同じで、燃料室12の片面にのみ発電部を実装することと燃料カートリッジホルダーが一体化していない点が異なる。材料は、燃料室12には高圧塩化ビニル、アノード端板13aにはポリイミド樹脂フィルム、カソード端板13cにはガラス繊維強化エポキシ樹脂を用いた。
図14に、MEAの実装レイアウトとその断面構造を示す。このDMFCには、燃料室12と一体化されたアノード端板13aの表面スリット部に発電部サイズが、16mm×
18mmで大きさ22mm×24mmのMEAを12枚が実装される。燃料室内部には、図14A−A断面図に示すように、気液分離管31を組み合わせた気液分離モジュールが、燃料室12内に設けられた燃料分配溝27の中に挿入されている。気液分離モジュールの一方の端部は排ガス口4に接続されている。又、燃料分配溝27の一方は、燃料室12の外周部に位置する燃料注入管28と接続されている。図14には図示されていないカレントコレクタは、アノード端板13a外表面に、アノード端板表面と同一平面となるように接着され、単電池をそれぞれ直列接続するためのインターコネクタ51及び出力端子3が設けられている。
カレントコレクタ材料は0.3mm 厚みのチタン板を用い、電極と接触する面は、予め表面を洗浄したあと約0.1μm 程度の金蒸着した。図15には、MEAを固定し、それぞれの電池を直列接続するためのカソード端板13cの構造を示す。カソード端板13cにはガラス繊維強化エポキシ樹脂板2.5mm をカソード端板用基板81として用いた。この板の表面には、上記と同じように金蒸着した、厚さ0.3mm のチタン製カレントコレクタ42a,42b,42cをエポキシ樹脂で接着した。カソード端板用基板81とカレントコレクタ40には、予め空気拡散のためのスリット22が設けられており、それぞれ連通するように接着した。
こうして作成した電源のサイズは、115mm×90mm×9mmである。作成した燃料電池の燃料室12に30wt%メタノール水溶液を注入し、室温で発電試験を実施したところ、出力は、4.2V,1.2Wであった。
本実施例の特徴は、燃料を酸化するアノードと酸素を還元するカソードが電解質膜を介して接合され、液体を燃料とする燃料電池発電装置において、複数の溝構造をもった電気的絶縁性の燃料室であり、該溝部に撥水性多孔質中空糸を複数組み合わせた排気モジュールをアノード面に対向して設置し、気体を排出する機能を持たせた燃料室の外表面に複数の燃料電池を電気的に接続することである。燃料室の外表面に複数の燃料電池を配して電気的に接続する構造の燃料電池発電装置は、負荷電流が比較的小さく、燃料電池の単セル電圧に比較して高い電圧を必要とする携帯機器用電源として適しており、コンパクトな電源とできる。アノード面近傍で発生するメタノール酸化に伴う炭酸ガス気泡の成長を抑制し、排気能を高めることができ、燃料室溝部に撥水性多孔質中空糸を複数組み合わせた排気モジュールを配して燃料室内の流体圧で気体を排出する機能を持たせることで、燃料電池の如何なる姿勢での発電を可能とするとともに炭酸ガス排気能を更に高めることができる。また、燃料室内に気液分離機構を組み込むことで、気液分離材料の面積を大きく取ることができるため、より細孔径の小さい分離材料を採用でき、高濃度のメタノール水溶液でも気液分離が可能となる。更に、本実施例による燃料室に排気モジュールを設けることにより、特に、燃料室の両面に発電モジュールを設置する場合には、対向する発電モジュール間に発生する電解質の性格を持った不純物による液短絡を防止する上でも効果的方法であるといえる。
(実施例2)
メタノール燃料を供給する圧入式の燃料カートリッジタンク2として、図19に示した構造の液体燃料容量10mlで、初期0.3MPa,使用後0.2MPaとなるように設計されたものを用いた。カートリッジ構造材料にはポリカーボネートを用いた。また、燃料には10wt%メタノール水溶液を用いた。燃料電池には、実施例1で作成したDMFCを上記燃料カートリッジと組み合わせて電源システムを構成した。この燃料カートリッジ付電源システムを定格負荷4.2V,1.2Wで1時間、0.5 時間の無負荷待機を周期として繰り返し運転を実施した。負荷時の燃料室内は、対大気圧で約0.01 MPaの正圧状態で運転され、漏液も無く安定した性能を示した。出力1.2W で約15時間の累積運転時間が得られた。
本実施例では、燃料を酸化するアノードと酸素を還元するカソードが電解質膜を介して接合され、液体を燃料とする燃料電池発電装置において、複数の溝構造をもった電気的絶縁性の燃料室に、液化高圧ガス,高圧ガスあるいはバネの反力で液体燃料を押し出す方式の燃料カートリッジが接続され、燃料室の圧力が大気圧よりも高い状態で供給されることを特徴の一つとする。アノード室外表面に複数の燃料電池を配して電気的に接続する構造の燃料電池発電装置は、負荷電流が比較的小さく、燃料電池の単セル電圧に比較して高い電圧を必要とする携帯機器用電源として適しており、コンパクトな電源とできる。
また、燃料室溝部に撥水性多孔質中空糸などを複数組み合わせた排気モジュールを配し、発電に伴ってアノード面から発生する炭酸ガスを燃料室内の流体圧で排出することができ、更に、燃料電池が如何なる姿勢で運転されても、液体燃料が漏洩することなく炭酸ガスを排気することができる。また、燃料カートリッジ補給方式を採用することによって、容易に燃料補給が可能であり、二次電池のように充電時間を必要としない携帯機器用には最適な電源を実現できる。
燃料室内を正圧(大気圧よりも高い圧力)にしない場合、アノードで発生した炭酸ガスはアノード室内にたまり気液分離モジュールの気体透過速度との関係で、所定圧(例えば0.05 気圧)になると膜を介して大気中に排気される。そのため炭酸ガス溜り空間が発生する。しかしながら、燃料室内を正圧に保つことにより、液体燃料に圧力がかかっているので、例えば0.05 気圧かかっていれば、発生した炭酸ガスは全て大気中に排気され、原理的にアノード室中に炭酸ガス溜り空間を必要としない。そのためアノードとの接触効率は高く、電池のコンパクト化に有効である。
(実施例3)
実施例1で作成したDMFCを最大出力3W,平均出力約2Wの携帯用情報端末に実装した例を図16に示す。この携帯用情報端末は、タッチパネル式入力装置が一体化された表示装置101とアンテナ103を内蔵した部分と燃料電池1,プロセッサ,揮発及び不揮発メモリ,電力制御部,燃料電池及び二次電池ハイブリッド制御,燃料モニタなどの電子機器及び電子回路などを実装したメインボード102,リチウムイオン二次電池106を搭載する部分が燃料カートリッジタンク2のホルダーをかねたヒンジ104で連結された折たたみ式の構造をとっている。
電源実装部は、隔壁105によって区分され、下部にメインボード102及びリチウムイオン二次電池106が収納されて、上部に燃料電池1が配置される。筐体の上及び側壁部には空気及び電池排ガス拡散のためのスリット22cが設けられ、筐体内のスリット部22cの表面には空気フィルタ107が、隔壁面には吸水性速乾材料108が設けられている。空気フィルタは気体の拡散性が高く、粉塵などの進入を防ぐ材料であれば特に限定は無いが、合成樹脂の単糸をメッシュ状、または、織布のものは目詰まりを起こすことなく好適である。本実施例においては、撥水生の高いポリテトラフルオロエチレン単糸メッシュを用いた。
燃料を酸化するアノードと酸素を還元するカソードが電解質膜を介して接合され、液体を燃料とする燃料電池発電装置において、複数の溝構造をもった電気的絶縁性の燃料室であり、該溝部に撥水性多孔質中空糸を複数組み合わせた排気モジュールをアノード面に対向して設置し、気体を排出する機能を持たせた燃料室の外表面に複数の燃料電池を電気的に接続することを特徴としている。また、燃料室には、液化高圧ガス,高圧ガスあるいはバネの反力で液体燃料を押し出す方式の燃料カートリッジが接続され、燃料室の圧力が大気圧よりも高い状態で供給される方式を含む。
アノード室外表面に複数の燃料電池を配して電気的に接続する構造の燃料電池発電装置は、負荷電流が比較的小さく、燃料電池の単セル電圧に比較して高い電圧を必要とする携帯機器用電源として適しており、コンパクトな電源とできる。また、燃料室内に複数の溝構造をもたせることで、電池を締め付けるためのアノード側端板を省くこと、または、薄くすることが可能になり、アノード面近傍で発生するメタノール酸化に伴う炭酸ガス気泡の成長を抑制し、排気能を高めることができ、燃料室溝部に撥水性多孔質中空糸を複数組み合わせた排気モジュールを配して燃料室内の流体圧で気体を排出する機能を持たせることで、燃料電池の如何なる姿勢での発電を可能とするとともに炭酸ガス排気能を更に高めることができる。
更には、液化高圧ガス,高圧ガスあるいはバネの反力で液体燃料を押し出す方式の燃料カートリッジを用いることによって燃料供給動力を必要としない電源が実現される。
また、液体燃料は体積エネルギー密度が高く、燃料カートリッジによって容易に燃料補給が可能であり、二次電池のように充電時間を必要としない携帯機器用には最適な電源を実現できる。
本発明による燃料電池電源システムの一実施例を示す。 本発明の燃料電池構成の一実施例を示す。 本発明によるカートリッジホルダー付燃料電池電源の概観を示す。 本発明による燃料室構造の一実施例を示す。 本発明による排ガスモジュールの一実施例を示す。 本発明による燃料室/排ガスモジュール一体化構造の一実施例を示す。 本発明によるアノード端板構造の一実施例を示す。 本発明によるカソード端板構造の一実施例を示す。 本発明のカレントコレクタ/カソード端板一体化構造の一実施例を示す。 本発明によるアノードカレントコレクタ構造の一実施例を示す。 本発明によるMEA及び拡散層の構造の一実施例を示す。 本発明によるガスケット構造の一実施例を示す。 本発明による燃料電池概観の一実施例を示す。 本発明による燃料室/アノード端板一体化したものにMEAを配置した構造の一実施例を示す。 本発明によるカレントコレクタ付カソード端板構造の一実施例を示す。 本発明の燃料電池を搭載した携帯情報端末の構造の一実施例を示す。 本発明による燃料室断面構造のもう一つの実施例を示す。 本発明による燃料室断面構造の他の実施例を示す。 本発明の燃料電池に用いた燃料カートリッジの断面構造の一実施例を示す。 (A)本発明の燃料電池に用いた燃料カートリッジの開閉機構断面構造とその受け口断面構造の一例で、取り付け前の状態を示す。(B)本発明の燃料電池に用いた燃料カートリッジの開閉機構断面構造とその受け口断面構造の一例で、取り付け後の状態を示す。
符号の説明
1…燃料電池、2…燃料カートリッジタンク、3…出力端子、4…排ガス口、5…直流/直流変換器、6…制御器、7…カートリッジホルダ、11…ガス拡散層付MEA、12…燃料室、13a…アノード端板、13c…カソード端板、14…ガスケット、15…ネジ、16…接続端子、21…リブ、22,22a,22b,22c…スリット、23…リブ支持板、24…支持孔、25,25a,25b,25c,25d,25e,25f…ネジ孔、26…カートリッジ受け口、27…燃料分配溝、28…燃料注入管、30…排ガスモジュール、31…気液分離管、32…モジュール基板、33…気液分離膜、34…膜支持体、41…絶縁シート、42,42a,42b,42c…カレントコレクタ、51b,51c…インターコネクタ、52a,52b,52c…フィン、60…MEA、61…電解質膜、62…電極、62a…アノード電極、62c…カソード電極、70a…アノード拡散層、70c…カソード拡散層、71a,71c…多孔質炭素基板、72…撥水層、81…カソード端板用基板、82a,82b,82c…ザグリ部、90…ガスケット、91…通電部切り抜き、92…接続孔、101…表示装置、102…メインボード、103…アンテナ、104…カートリッジホルダ付ヒンジ、105…隔壁、106…二次電池、107…空気フィルタ、108…吸水性速乾材料、111,116…液体燃料、112…液体燃料供給用ピストン、113…通気孔、114…開閉機構、115…燃料供給管、117…高圧ガス、121…開閉弁、122…バネ、123…通液孔、131…受け口弁、132…シールリング。

Claims (4)

  1. 液体の燃料を酸化するアノードと、酸素を還元するカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に形成された電解質膜と、前記アノードに供給する液体の燃料を保持し、内部の圧力が外部の圧力よりも高い燃料室とを備えた燃料電池。
  2. 前記燃料室内部の圧力が、前記燃料室に前記液体の燃料を供給するカートリッジの内部圧力により生じている事を特徴とする燃料電池。
  3. 請求項1記載の燃料電池は、前記燃料室の内部と外部とを通気し、液体を遮断する機構を備えたことを特徴とする燃料電池。
  4. 前記燃料室の内部と外部とを通気し、液体を遮断する機構が排ガスモジュールであることを特徴とする請求項3記載の燃料電池。
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