JP2010110064A - 磁石体とその製造方法 - Google Patents

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Manabu Kurosawa
学 黒沢
Kentaro Asai
健太郎 浅井
Yasuhiro Matsumoto
保浩 松本
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Abstract

【課題】接着剤のはみ出しや偏在を生じることなく磁石体と他部品の接着を確実に行って、モータの組立てやモータ回転の円滑を図る。
【解決手段】熱硬化性樹脂の防錆皮膜で覆った表面を接着剤によって他部材に接合した磁石体であって、上記防錆皮膜中には当該皮膜の基材の硬化温度よりも高い融点を有する樹脂微粒子が混在している。上記防錆皮膜の形成は、熱硬化性樹脂を基材とした溶液中に、当該基材の硬化温度よりも高い融点を有する上記樹脂微粒子のエマルジョンを混合して塗装液とし、当該塗装液を塗布する。
【選択図】 なし

Description

本発明は携帯電話やデジタルカメラ等に多用されるPM型ステッピングモータやDCブラシレスモータ等に好適に使用できる磁石体とその製造方法に関する。
この種の磁石体としては、従来、NdFeB系あるいはSmFeN系等の希土類鉄系の、ボンド磁石、熱間加工磁石、あるいは焼結磁石がその優れた磁気特性によって多用されている。しかし、これらの磁石は原料の合金組成に鉄が含まれるため、高温多湿の環境下では錆びを生じるという欠点がある。このため、磁石の表面を、電着塗装、スプレー塗装あるいは金属めっき等で形成される防錆皮膜で覆っていた。
一方、モータに使用する、特にロータ用の磁石体については、磁石体と他部材としてのカラー部品(バックヨーク)とを確実に接着することが要求されている。この接着には、従来、低粘度のUV硬化型シアノアクリレート系接着剤が多用されている。その理由はこの接着剤が低粘度のため、自動ディスペンサーで定量の接着剤を供給して、自動ラインで連続的にカラー部品と磁石体を嵌合させ組み立てることができるためである。
なお、特許文献1には、塗膜の平滑性、耐薬品性、機械特性を改善するために、アニオン電着塗装液に樹脂微粒子を添加することが示されている。
特開2001−329209
ところで、モータロータの組立ては、図2に示すように、外周に接着剤2を塗布した他部材としてのカラー部品1に対して、防錆皮膜4で表面を覆った大径リング状の磁石体3を嵌装し、自動機でカラー部品1を空転させながら磁石体3と接着剤2をなじませている。しかし、例えばUV硬化型シアノアクリレート系接着剤等は図3に示すように、液滴の状態でカラー部品1の下面に押し出されてしまうことが多く、下方へはみ出した接着剤2がUV硬化炉で硬い接着剤の塊となり、この塊が障害となってモータケースへのロータの組立に問題が生じる。また、接着剤が偏在することによって、カラー部品と磁石体の回転軸がずれて、ロータ回転中に振動を生じるという問題もある。
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、接着剤のはみ出しや偏在を生じることなく磁石体と他部品の接着を確実に行って、モータの組立てやモータ回転の円滑を図ることができる磁石体とその製造方法を提供することを目的とする。
発明者等の知見によれば、磁石体と他部品を接着する接着剤のはみ出しや偏在が生じる原因は以下のようなものである。すなわち、例えばエポキシ樹脂系の防錆塗料は図4(1)に示すように、磁石体3に塗料分子41を例えば電着により塗布した後、加熱硬化されるが、その際に未硬化のエポキシ樹脂が融解して磁石体3表面の塗装皮膜4が平滑となり(図4(2))、その状態で硬化が行われる。このため、硬化後の皮膜表面の仕上がりが光沢面となり、これが他部材1に塗布された接着剤2との濡れ性を低下させて、はみ出しや偏在を生じるのである(図4(3))。
本発明は以上の知見に基づいてなされたもので、本第1発明の磁石体は、熱硬化性樹脂の防錆皮膜で覆った表面を接着剤によって他部材に接合した磁石体において、前記防錆皮膜中には当該皮膜の基材の硬化温度よりも高い融点を有する樹脂微粒子が混在していることを特徴とするものである
本第1発明においては、図1に示すように、磁石体3を覆う塗装皮膜4の表面は、これに混入している固体状態を維持した樹脂微粒子42によって適度な粗さとなっており、これによって他部材1との間に介在する接着剤2と磁石体3の塗装皮膜4との濡れ性が向上して相互の密着性が改善される。この結果、接着剤のはみ出しや偏在が防止されて、磁石体と他部品の接着が確実に行われるから、モータの組立てやモータ回転の円滑を図ることができる。
本第2発明では、前記樹脂微粒子の粒径を10nm〜300nmとする。
本第3発明では、前記樹脂微粒子としてスチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体を使用する。
本第4発明の磁石体の製造方法では、前記熱硬化性樹脂を基材とした溶液中に、当該基材の硬化温度よりも高い融点を有する前記樹脂微粒子のエマルジョンを混合して塗装液とし、当該塗装液にて前記防錆皮膜を形成する。
本第4発明においては、熱硬化性樹脂の硬化温度よりも高い融点の樹脂微粒子のエマルジョンを塗装液中に分散させたから、加熱硬化処理においても上記樹脂微粒子は固体の形状を保ち、これによって塗装皮膜の表面は適度な粗さとなる。すなわち、塗装後の加熱硬化温度にさらしても、塗料の基材樹脂は通常の硬化をするとともに、樹脂微粒子は形状をとどめて基材樹脂の内部に分散状態で維持されるからである。
以上のように、本発明の磁石体とその製造方法によれば、接着剤のはみ出しや偏在を生じることなく磁石体と他部品の接着が確実に行われるから、モータの組立てやモータ回転の円滑を図ることができる。
本発明の磁石体は例えば希土類鉄系磁石体であり、これにはボンド磁石、熱間加工磁石、焼結磁石がある。希土類鉄系ボンド磁石はNdFeBまたはSmFeN系磁性粉を所定の粒径に粉砕調整し熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂バインダーと混合し圧縮成形または射出成形して得られる。希土類鉄系熱間加工磁石はNdFeBまたはSmFeN系磁性粉を高温で加圧成形しながら結晶粒を配向させて得られる。希土類鉄系焼結磁石はNdFeBまたはSmFeN系合金インゴットを微粉砕し磁場下で結晶粒配向成形したのち焼結して得られる。
磁石体の防錆塗装方法はエマルジョン微粒子が分散されるものであれば特に限定されない。一般的には水分散系のカチオン電着塗装が好ましい。通常、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を基材とした電着液に本発明のエマルジョン系微粒子分散剤を混合して電着塗装することができる。あるいはエポキシエマルジョン系塗料に本発明のエマルジョン系微粒子分散剤を混合して吹付け塗装をしてもよい。
樹脂微粒子エマルジョンとしては、エポキシ系カチオン電着塗料中で十分な親和性をもって分散し、核となる樹脂は例えば電着塗料のエポキシ樹脂の硬化温度でも融解せず、粒子の形態を保つものであれば、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、酢酸ビニル系などが使用できる。例えばスチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体を乳化処理して水分散剤としたものが使用できる。
樹脂微粒子エマルジョンの核となる樹脂の融点は、防錆皮膜の基材となる例えばエポキシ樹脂の硬化温度より高い必要がある。硬化温度以下だと塗料の加熱硬化後に防錆皮膜中で微粒子の形状が変形したり、融着してしまい、皮膜の表面が平滑となってしまう。また微粒子の粒径は10〜300nmの範囲が好ましい。10nm以下だと皮膜が平滑となり好ましくない。一方、300nm以上だと皮膜の形成に問題が出る。
(磁石体の製造)
以下の実施例および比較例で使用した磁石体は以下のようにして製造した。マグネクエンチインターナショナル社製のNdFeB系超急冷磁性粉MQP−Bを平均粒径110μmとなるよう、振動ボールミルにて粉砕し、これをシランカップリング剤にて表面処理した。処理後の磁性粉をクレゾールノボラック型エポキシ樹脂と混合し、圧縮成形して外径10mm、内径8mm,高さ7mmのNdFeB系圧縮ボンド磁石を得た。成形後、150℃で30分間大気下で加熱し硬化させた。
(実施例)
エポキシ当量950で数平均分子量2400のビスフェノールA型エポキシにジエタノールアミンを110℃にて添加反応させ、さらにエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテルでブロックしたジフェニルメタンジイソシアネートを硬化材として加え、この樹脂を脱イオン水で樹脂固形分濃度15%に希釈した。これに昭和高分子株式会社製スチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂微粒子エマルジョンPOL.OLZ−1790を3%添加して電着塗装液とした。
先に製造した磁石体を、先端を針状にした陰極に固定して上記電着塗装液中に設置し、電圧を印加した。印加開始後5秒間で300Vまで昇圧し、そのあと175秒間300Vを維持して電着塗装を行った。塗装後、水洗し、150℃で30分間加熱して塗装皮膜を硬化させ、防錆皮膜を形成した。
防錆皮膜を形成した磁石体と外径8mm、中心孔径3mm、高さ7mmの他部品としてのアルミカラーを、株式会社スリーボンド製、UV硬化型シアノアクリレート系嫌気性接着剤「3062U」で接着した。この結果、得られた接着強度は2110(N)で、接着面には接着剤が偏在することなく全面に均等に塗布され、かつ接着剤のはみ出しもなかった。なお、電着塗装液に添加した上記エマルジョンPOL.OLZ−1790の固形分融解温度は、測定によれば220℃であった。
[比較例]
樹脂微粒子エマルジョンPOL.OLZ−1790を全く添加しない以外は上記実施例と全く同じ方法・組成・条件にて、防錆皮膜を形成した磁石体とアルミカラーを接着した。この結果、得られた接着強度は、上記実施例よりも小さい1050(N)であり、接着面の約半分には接着剤が塗布されていないとともに、接着剤のはみ出しも確認された。
本発明の磁石体の、内周部の拡大断面図である。 従来の磁石体の組立て工程を示す断面図である。 従来の磁石体の断面図である。 従来の磁石体の、防錆皮膜形成過程を示す内周部の拡大断面図である。
符号の説明
1…カラー部品(他部材)、2…接着剤、3…磁石体、4…塗装皮膜、42…樹脂微粒子。

Claims (4)

  1. 熱硬化性樹脂の防錆皮膜で覆われた表面が接着剤によって他部品に接合された磁石体において、前記防錆皮膜中には当該皮膜の基材の硬化温度よりも高い融点を有する樹脂微粒子が混在していることを特徴とする磁石体。
  2. 前記樹脂微粒子の粒径を10nm〜300nmとした請求項1に記載の磁石体。
  3. 前記樹脂微粒子としてスチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体を使用した請求項1又は2に記載の磁石体。
  4. 前記熱硬化性樹脂を基材とした溶液中に、当該基材の硬化温度よりも高い融点を有する前記樹脂微粒子のエマルジョンを混合して塗装液とし、当該塗装液にて前記防錆皮膜を形成した請求項1に記載の磁石体の製造方法。
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