JP2010105472A - 車輪用軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱処理による歪が低減された車輪用軸受装置を提供すること。
【解決手段】車輪用軸受装置は、同軸となるように互いに一体的に連結された内輪としてのフランジシャフト6およびハブシャフトと、複数のボールを介してこれらのシャフトに回転自在に連結された外輪とを備えている。フランジシャフト6は、熱処理による表面硬化処理がなされた環状の軌道面18をその外周面に有し、ハブシャフトは、その一部が貫通孔20に内嵌され、フランジシャフト6に設けられた突き当て部としての筒状端部26がハブシャフトの外周に形成された環状段部に突き当てられている。突き当て部26には、熱処理による表面硬化処理がされており、フランジシャフト6において、突き当て部26の熱処理硬化領域T4と軌道面18の熱処理硬化領域T2とが分離されている。
【選択図】図3
【解決手段】車輪用軸受装置は、同軸となるように互いに一体的に連結された内輪としてのフランジシャフト6およびハブシャフトと、複数のボールを介してこれらのシャフトに回転自在に連結された外輪とを備えている。フランジシャフト6は、熱処理による表面硬化処理がなされた環状の軌道面18をその外周面に有し、ハブシャフトは、その一部が貫通孔20に内嵌され、フランジシャフト6に設けられた突き当て部としての筒状端部26がハブシャフトの外周に形成された環状段部に突き当てられている。突き当て部26には、熱処理による表面硬化処理がされており、フランジシャフト6において、突き当て部26の熱処理硬化領域T4と軌道面18の熱処理硬化領域T2とが分離されている。
【選択図】図3
Description
この発明は、例えばドライブシャフトの先端側に等速ジョイントを介して取り付けられ、車輪を回転可能に保持するための車輪用軸受装置に関する。
自動車等の車両には、車輪を回転可能に保持するための車輪用軸受装置が用いられている。この種の車輪用軸受装置には、例えば、同軸となるように互いに一体的に連結された内輪としての筒状体および軸体と、複数の転動体を介して筒状体および軸体に回転自在に連結された外輪とを備えるものがある(例えば特許文献1参照)。
この特許文献1に係る車輪用軸受装置では、軸体(基部)の一部が筒状体(外筒)に内嵌され、筒状体に設けられた突き当て部としての筒状端部が当該軸体の外周に形成された環状段部に突き当てられている。また、筒状体には、熱処理(浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ)が施されている。筒状体の外周部には、軌道面から突き当て部まで連続して延びる環状の浸炭焼入れ部が形成されている。
特開2001−227549号公報
この特許文献1に係る車輪用軸受装置では、軸体(基部)の一部が筒状体(外筒)に内嵌され、筒状体に設けられた突き当て部としての筒状端部が当該軸体の外周に形成された環状段部に突き当てられている。また、筒状体には、熱処理(浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ)が施されている。筒状体の外周部には、軌道面から突き当て部まで連続して延びる環状の浸炭焼入れ部が形成されている。
前述の特許文献1において、筒状体の軌道面および突き当て部は、それぞれ、転動体および軸体の環状段部と当接する部分である。したがって、これらの部分を焼入れにより硬化させることで、当該部分の摩耗等を抑制することができる。しかしながら、特許文献1では筒状体の全体が加熱されるので、当該筒状体の熱処理歪が大きくなり切削加工等の後加工を熱処理後に行う必要が生じる場合がある。
そこで、この発明の目的は、熱処理による歪が低減された車輪用軸受装置を提供することである。
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、車輪を回転可能に保持する車輪用軸受装置であって、同軸となるように互いに一体的に連結された内輪としての筒状体(13)および軸体(22,23,107)と、複数の転動体(8)を介して前記筒状体および軸体に回転自在に連結された外輪(9)とを含み、前記筒状体は、熱処理による表面硬化処理がなされた環状の軌道面(18)をその外周面に有し、前記軸体は、その一部が前記筒状体に内嵌され、前記筒状体に設けられた突き当て部としての筒状端部(26)が当該軸体の外周に形成された環状段部(25)に突き当てられており、前記突き当て部には、熱処理による表面硬化処理がされており、前記筒状体において、前記突き当て部の熱処理硬化領域(T4)と前記軌道面の熱処理硬化領域(T2)とが分離されていることを特徴とする車輪用軸受装置(1,101)である。
この項において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものである。なお、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
この発明によれば、筒状体の全体を加熱するのではなく、その表層部のみを加熱して硬化させるので、熱処理により筒状体に加わる熱量を低減することができる。これにより、熱処理による筒状体の歪を低減することができる。また、筒状体において、突き当て部の熱処理硬化領域と軌道面の熱処理硬化領域とを分離させて、筒状体における熱処理硬化領域を小さくすることにより、熱処理による筒状体の歪をさらに低減することができる。これにより、切削加工等の熱処理後の加工を省略することができる。したがって、車輪用軸受装置の生産効率を高めることができ、車輪用軸受装置の製造コストを低減することができる。
この発明によれば、筒状体の全体を加熱するのではなく、その表層部のみを加熱して硬化させるので、熱処理により筒状体に加わる熱量を低減することができる。これにより、熱処理による筒状体の歪を低減することができる。また、筒状体において、突き当て部の熱処理硬化領域と軌道面の熱処理硬化領域とを分離させて、筒状体における熱処理硬化領域を小さくすることにより、熱処理による筒状体の歪をさらに低減することができる。これにより、切削加工等の熱処理後の加工を省略することができる。したがって、車輪用軸受装置の生産効率を高めることができ、車輪用軸受装置の製造コストを低減することができる。
請求項2記載の発明は、前記突き当て部に対する表面硬化処理は、少なくとも前記突き当て部の端面(26a)全周域に行われていることを特徴とする請求項1記載の車輪用軸受装置である。
この発明によれば、突き当て部の摩耗を確実に抑制することができる。すなわち、突き当て部の端面は、環状段部に当接する部分であり、相対的に摩耗し易い部分である。したがって、少なくとも突き当て部の端面全周域に表面硬化処理を行い、当該端面全周域を硬化させることにより、突き当て部の摩耗を確実に抑制することができる。
この発明によれば、突き当て部の摩耗を確実に抑制することができる。すなわち、突き当て部の端面は、環状段部に当接する部分であり、相対的に摩耗し易い部分である。したがって、少なくとも突き当て部の端面全周域に表面硬化処理を行い、当該端面全周域を硬化させることにより、突き当て部の摩耗を確実に抑制することができる。
請求項3記載の発明は、前記軸体は、駆動源からの駆動力を車輪に伝達するための等速ジョイント(3)の一部(28)と一体形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の車輪用軸受装置である。
この発明によれば、軸体と等速ジョイントの一部とを一体形成することにより、軸体と等速ジョイントの一部を連結するための部材(例えばボルトやナット)を削減することができる。また、車輪用軸受装置が組み付けられる車両全体としての部品点数を削減することもできる。
この発明によれば、軸体と等速ジョイントの一部とを一体形成することにより、軸体と等速ジョイントの一部を連結するための部材(例えばボルトやナット)を削減することができる。また、車輪用軸受装置が組み付けられる車両全体としての部品点数を削減することもできる。
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車輪用軸受装置1が備えられた車両の概略構成を示す模式図である。
図1を参照して、左右一対の車輪用軸受装置1,1は、それぞれ、ドライブシャフト2の先端側に等速ジョイント3を介して取り付けられている。左右の車輪4,4は、それぞれ対応する車輪用軸受装置1によって回転可能に保持されている。エンジン5からの駆動力はドライブシャフト2に与えられ、ドライブシャフト2から等速ジョイント3を介して車輪用軸受装置1に伝達される。そして車輪用軸受装置1に保持された車輪4が回転される。
図1は、本発明の一実施形態に係る車輪用軸受装置1が備えられた車両の概略構成を示す模式図である。
図1を参照して、左右一対の車輪用軸受装置1,1は、それぞれ、ドライブシャフト2の先端側に等速ジョイント3を介して取り付けられている。左右の車輪4,4は、それぞれ対応する車輪用軸受装置1によって回転可能に保持されている。エンジン5からの駆動力はドライブシャフト2に与えられ、ドライブシャフト2から等速ジョイント3を介して車輪用軸受装置1に伝達される。そして車輪用軸受装置1に保持された車輪4が回転される。
この実施形態は、エンジン5からドライブシャフト2等を介して伝達される駆動力を、車輪4に伝達するための車輪用軸受装置1の改良を内容としている。以下では、本発明の一実施形態に係る車輪用軸受装置1について具体的に説明する。
図2は、車輪用軸受装置1の概略構成を示す図解的な縦断面図である。
図2を参照して、車輪用軸受装置1は、フランジシャフト6およびハブシャフト7と、複数のボール8(転動体)を介してこれらのシャフト6,7に回転自在に連結された外輪9とを備えている。フランジシャフト6およびハブシャフト7は、同軸となるように一体回転可能に連結されている。フランジシャフト6およびハブシャフト7は、車輪用軸受装置1の内輪として機能する。
図2は、車輪用軸受装置1の概略構成を示す図解的な縦断面図である。
図2を参照して、車輪用軸受装置1は、フランジシャフト6およびハブシャフト7と、複数のボール8(転動体)を介してこれらのシャフト6,7に回転自在に連結された外輪9とを備えている。フランジシャフト6およびハブシャフト7は、同軸となるように一体回転可能に連結されている。フランジシャフト6およびハブシャフト7は、車輪用軸受装置1の内輪として機能する。
車輪用軸受装置1は、外輪9に形成されたフランジ9aを介して図示しない懸架装置に固定されている。また、車輪4(図1参照)は、フランジシャフト6に形成されたフランジ12に固定されている。エンジン5からの駆動力は、ハブシャフト7に伝達される。エンジン5からの駆動力がハブシャフト7に伝達されることで、ハブシャフト7およびフランジシャフト6とともに車輪4が一体回転する。
また、車輪用軸受装置1は、例えば複列アンギュラ玉軸受として機能するように構成されている。複数のボール8は、それぞれ環状をなす2つの列を構成している。一方の列を構成する複数のボール8は、フランジシャフト6と外輪9との間で保持されている。また、他方の列を構成する複数のボール8は、ハブシャフト7と外輪9との間で保持されている。車輪用軸受装置1の内部すきまは例えば負すきまとされており、各ボール8には予圧が与えられている。
また、外輪9の内周側には、それぞれ環状をなす一対のシール10,11が配置されている。一方のシール10は、外輪9の一端部(図2では左側の開口端部)とフランジシャフト6との間に配置されている。また、他方のシール11は、外輪9の他端部(図2では右側の開口端部)とハブシャフト7との間に配置されている。これらのシール10,11によって、車輪用軸受装置1の内部(フランジシャフト6およびハブシャフト7と外輪9との間)に異物(例えば水や埃など)が進入することが防止されている。各シール10,11は、外輪9によって保持されており、フランジシャフト6およびハブシャフト7と外輪9とが相対回転すると、フランジシャフト6またはハブシャフト7に摺動するようになっている。
この実施形態に係る車輪用軸受装置1の一つの特徴は、熱処理によるフランジシャフト6の歪が低減されていることにある。以下では、フランジシャフト6およびハブシャフト7の形状等について説明し、次いで、フランジシャフト6の熱処理について説明する。
フランジシャフト6は、円筒状をなしている。フランジシャフト6は、円環状をなす板状のフランジ12と、筒状体としての筒状部13と、円筒状のいんろう部14とを有している。フランジ12、筒状部13およびいんろう部14は、それぞれが同軸となるように一体形成されている。フランジ12は、筒状部13の一端部(図2では左端部)の周囲に配置されている。フランジ12は、筒状部13の外周から径方向外方に延びている。また、いんろう部14は、筒状部13よりも車輪4側(図2では左側)に配置されている。いんろう部14は、筒状部13の一端部から車輪4側に突出している。
フランジシャフト6は、円筒状をなしている。フランジシャフト6は、円環状をなす板状のフランジ12と、筒状体としての筒状部13と、円筒状のいんろう部14とを有している。フランジ12、筒状部13およびいんろう部14は、それぞれが同軸となるように一体形成されている。フランジ12は、筒状部13の一端部(図2では左端部)の周囲に配置されている。フランジ12は、筒状部13の外周から径方向外方に延びている。また、いんろう部14は、筒状部13よりも車輪4側(図2では左側)に配置されている。いんろう部14は、筒状部13の一端部から車輪4側に突出している。
車輪4は、円環状をなす板状のブレーキディスクロータ(図示せず)をフランジ12との間に挟み込んだ状態で当該フランジ12に固定される。フランジ12は、その車輪4側の端面が取付面12aとなっている。取付面12aは、円環状の平坦面となっている。ブレーキディスクロータは、その内周にいんろう部14が嵌合された状態で取付面12aに沿って取り付けられる。ブレーキディスクロータの内周にいんろう部14が嵌合されることで、ブレーキディスクロータがフランジ12に対して位置決めされる。
また、フランジ12の外周部には、複数の固定ボルト15が取り付けられている(図2では、固定ボルト15を1つだけ図示している。)。複数の固定ボルト15は、フランジ12の周方向に間隔を隔てて環状に配置されている。各固定ボルト15の軸部15aは、取付面12aから車輪4側に突出している。ブレーキディスクロータおよび車輪4は、複数の固定ボルト15とこれに対応する複数の固定ナット(図示せず)とによって一体的にフランジ12に固定される。
一方、筒状部13は、その一部がフランジ12よりもドライブシャフト2側(図2では右側)に突出している。筒状部13は、フランジ12よりもドライブシャフト2側に突出する筒状の基部16と、基部16からドライブシャフト2側に延びる筒状の第1軌道形成部17とを有している。シール10は、基部16の周囲に配置されており、基部16の外周面に当接している。基部16の外周面には、フランジシャフト6と外輪9との相対回転に伴ってシール10が摺動する摺動面19が設けられている。また、一方の列を構成する複数のボール8は、第1軌道形成部17の周囲に配置されている。第1軌道形成部17の外周面には、環状の第1軌道面18が設けられている。
筒状部13には、当該筒状部13をフランジシャフト6の軸方向(図2では左右方向)に貫通する貫通孔20が形成されている。筒状部13の内周には、雌スプライン21が形成されている。ハブシャフト7の一部(後述の嵌合部22)は、貫通孔20に嵌合されている。ハブシャフト7は、その一部が貫通孔20に嵌合された状態でフランジシャフト6に連結されている。
ハブシャフト7は、貫通孔20に嵌合された円筒状の嵌合部22(軸体の一部)と、第1軌道形成部17と対をなす円柱状の第2軌道形成部23(軸体の一部)とを有している。嵌合部22の外周には雄スプライン24が形成されており、当該雄スプライン24は、雌スプライン21に噛み合わされている。これにより、フランジシャフト6およびハブシャフト7が一体回転可能に連結されている。
また、嵌合部22の外径は、第2軌道形成部23の外径よりも小さくされている。嵌合部22および第2軌道形成部23は、同軸となるように一体形成されている。嵌合部22と第2軌道形成部23との結合部には、環状段部25が設けられている。嵌合部22が貫通孔20に嵌合した状態で、環状段部25には、第1軌道形成部17の先端部である筒状端部26(以下では、「突き当て部26」という。)が突き当てられている。
さらに、嵌合部22が貫通孔20に嵌合した状態で、嵌合部22の先端部22aは、貫通孔20から車輪4側に突出している。嵌合部22の先端部22aは、その全周にわたって外側に押し広げられるようにかしめられている。筒状部13は、嵌合部22の先端部22a(かしめ部)によってドライブシャフト2側に押し付けられている。これにより、筒状部13が、嵌合部22の先端部22aと環状段部25との間で保持されている。
また、第2軌道形成部23の外径は、第1軌道形成部17の外径とほぼ等しくされている。フランジシャフト6およびハブシャフト7が連結された状態で、第1軌道形成部17の外周面と第2軌道形成部23の外周面とは、ほぼ連なっている。他方の列を構成する複数のボール8は、第2軌道形成部23の周囲に配置されており、第2軌道形成部23の外周面には、環状の第2軌道面27が設けられている。
また、この実施形態では、等速ジョイント3の一部が、嵌合部22および第2軌道形成部23と一体形成されている。等速ジョイント3は、例えばボール型の等速ジョイントであり、ドライブシャフト2(図1参照)と一体回転可能に連結された内輪(図示せず)と、複数のボール(図示せず)を介して内輪に連結されたカップ状の外輪28とを備えている。嵌合部22および第2軌道形成部23には、外輪28が一体形成されている。嵌合部22および第2軌道形成部23と外輪28とを一体形成することにより、嵌合部22および第2軌道形成部23と外輪28を連結するための部材(例えばボルトやナット)を削減することができる。また、車両全体としての部品点数を削減することもできる。
エンジン5からの駆動力はドライブシャフト2に与えられ、等速ジョイント3の内輪および複数のボールを介して、ハブシャフト7に伝達される。これにより、フランジシャフト6およびハブシャフト7が外輪9に対して相対回転し、フランジシャフト6の回転に伴って車輪4が回転する。このようにして、エンジン5からの駆動力が車輪4に伝達される。
図3は、フランジシャフト6の図解的な縦断面図である。この図3において、ハッチングが施された範囲は、熱処理により硬化された領域(熱処理硬化領域)である。
図2および図3を参照して、フランジシャフト6は、例えば炭素鋼などの金属製の部材である。フランジシャフト6の一部には、熱処理による表面硬化処理が施されている。より具体的には、雌スプライン21、第1軌道面18、摺動面19および突き当て部26に焼き入れが行われている。焼き入れとしては、例えば高周波焼き入れが挙げられる。
図2および図3を参照して、フランジシャフト6は、例えば炭素鋼などの金属製の部材である。フランジシャフト6の一部には、熱処理による表面硬化処理が施されている。より具体的には、雌スプライン21、第1軌道面18、摺動面19および突き当て部26に焼き入れが行われている。焼き入れとしては、例えば高周波焼き入れが挙げられる。
雌スプライン21に対する熱処理は、雄スプライン24との噛み合い長に応じた所定の軸方向長さで雌スプライン21の全周にわたって行われている。雌スプライン21には、環状の熱処理硬化領域T1が形成されている。これにより、雌スプライン21において、少なくとも雄スプライン24が当接する範囲が硬化されている。したがって、雄スプライン24と雌スプライン21との摺動により雄スプライン24が摩耗することが抑制されている。雌スプライン21に対する焼入れ深さは、ほぼ一定とされている。
また、第1軌道面18に対する熱処理は、ほぼ一定の焼入れ深さで第1軌道面18の全周にわたって行われている。第1軌道面18には、環状の熱処理硬化領域T2が形成されている。これにより、第1軌道面18において、少なくともボール8が当接する範囲が硬化されている。同様に、摺動面19に対する熱処理は、ほぼ一定の焼入れ深さで摺動面19の全周にわたって行われている。摺動面19には、環状の熱処理硬化領域T3が形成されている。これにより、摺動面19において、少なくともシール10が当接する範囲が硬化されている。したがって、第1軌道面18および摺動面19は、それぞれボール8およびシール10との摺動により摩耗することが抑制されている。第1軌道面18の熱処理硬化領域T2と、摺動面19の熱処理硬化領域T3とは、例えば、フランジシャフト6の表面および内部において繋がっている。
また、突き当て部26に対する熱処理は、当該突き当て部26の全周にわたって行われている。突き当て部26には、環状の熱処理硬化領域T4が形成されている。突き当て部26は、その端面26aの全周域と、外周部の一部と、内周部の一部とを含む範囲が熱処理により硬化されている。突き当て部26の外周部における熱処理硬化領域T4は、端面26aから第1軌道面18の熱処理硬化領域T2に向かって延びており、その近傍にまで達している。しかし、突き当て部26の熱処理硬化領域T4と第1軌道面18の熱処理硬化領域T2とは、フランジシャフト6の表面および内部において繋がることなく、互いに分離されている。すなわち、突き当て部26の熱処理硬化領域T4と第1軌道面18の熱処理硬化領域T2とは、物理的につながらないよう、一定の距離(間隔)をあけて形成されている。突き当て部26の外周部における熱処理硬化領域T4の焼き入れ深さは、第1軌道面18に近づくに連れて減少されている。
突き当て部26に熱処理を施して硬化させることにより、当該突き当て部26の強度を向上させることができる。これにより、フランジシャフト6の耐久性を向上させることができる。また、突き当て部26の端面26aの全周域を含む範囲を硬化させることにより、ハブシャフト7との摺動によって突き当て部26が摩耗することを確実に抑制することができる。すなわち、突き当て部26の端面26aは、ハブシャフト7(具体的には、環状段部25)に当接する部分であるので、相対的に摩耗し易い部分である。したがって、突き当て部26の端面26aの全周域を含む範囲を硬化させることにより、突き当て部26の摩耗を確実に抑制することができる。
雌スプライン21、第1軌道面18、摺動面19および突き当て部26に対する熱処理は、同時に行われてもよいし、それぞれ別々に行われてもよい。また、これらの部分のうち複数箇所に対する熱処理のみ同時に行われてもよい。同時に熱処理を行うことにより、フランジシャフト6の生産効率を高めることができる。また、熱処理を別々に行うことにより、フランジシャフト6に加わる熱量の最大値を低減することができる。これにより、熱処理によるフランジシャフト6の歪を低減することができる。フランジシャフト6に対する熱処理の一例としては、第1軌道面18および摺動面19に対する熱処理を同時に行い、雌スプライン21および突き当て部26に対する熱処理をそれぞれ別々に行う方法が挙げられる。
以上のように本実施形態では、フランジシャフト6に熱処理を施して硬化させることにより、フランジシャフト6の強度を向上させることができる。また、フランジシャフト6の全体を加熱するのではなく、その表層部のみを加熱して硬化させるので、熱処理によりフランジシャフト6に加わる熱量を低減することができる。これにより、熱処理によるフランジシャフト6の歪を低減することができる。さらに、突き当て部26の熱処理硬化領域T4と第1軌道面18の熱処理硬化領域T2とを、フランジシャフト6の表面および内部において互いに分離させて、フランジシャフト6における熱処理硬化領域を小さくすることにより、熱処理によるフランジシャフト6の歪をさらに低減することができる。したがって、切削加工等の熱処理後の加工を省略することができる。これにより、車輪用軸受装置1の生産効率を高めることができ、車輪用軸受装置1の製造コストを低減することができる。
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、前述の実施形態では、車輪用軸受装置1が駆動輪用のもの(例えばFF式の自動車であれば前輪用)である場合について説明したが、これに限らず、本発明が適用される車輪用軸受装置は、従動輪用のものであってもよい。
また前述の実施形態では、転動体としてボール8が用いられ、車輪用軸受装置1が複列アンギュラ玉軸受として機能するように構成されている場合について説明したが、転動体としてはボールに限らずころであってもよいし、車輪用軸受装置1は、複列アンギュラ玉軸受以外の軸受として機能するように構成されていてもよい。
また前述の実施形態では、フランジシャフト6の表面および内部において、第1軌道面18の熱処理硬化領域T2と摺動面19の熱処理硬化領域T3とが繋がっている場合について説明したが、これらの熱処理硬化領域T2,T3を、フランジシャフト6の表面および内部において分離させてもよい。この場合、熱処理によるフランジシャフト6の歪を一層低減することができる。
また前述の実施形態では、フランジシャフト6の表面および内部において、第1軌道面18の熱処理硬化領域T2と摺動面19の熱処理硬化領域T3とが繋がっている場合について説明したが、これらの熱処理硬化領域T2,T3を、フランジシャフト6の表面および内部において分離させてもよい。この場合、熱処理によるフランジシャフト6の歪を一層低減することができる。
また前述の実施形態では、等速ジョイント3の外輪28と軸体(嵌合部22および第2軌道形成部23)とが一体形成されている場合について説明したが、これに限らない。すなわち、例えば図4に示すように、等速ジョイント3の外輪128とハブシャフト107とが一体形成されていない車輪用軸受装置101に本発明が適用されてもよい。この図4において、前述の図1〜図3に示された各部と同等の構成部分については、図1〜図3と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
この図4に示す車輪用軸受装置101では、等速ジョイント3の外輪128とハブシャフト107とが別の部材とされており、ボルト29およびナット30によって互いに連結されている。また、ハブシャフト107および外輪128の互いに対向する端部には、歯筋が軸方向X1と交差方向に延びる複数の歯からなる歯部31,32がそれぞれ形成されている。ハブシャフト107および外輪128は、互いの歯部31,32が噛み合わされており、動力伝達可能に連結されている。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1・・・車輪用軸受装置、3・・・等速ジョイント、8・・・ボール(転動体)、9・・・外輪、13・・・筒状部(筒状体)、18・・・第1軌道面(軌道面)、22・・・嵌合部(軸体の一部)、23・・・第2軌道形成部(軸体の一部)、26・・・筒状端部(突き当て部)、26a・・・(突き当て部の)端面、25・・・環状段部、28・・・外輪(等速ジョイントの一部)、101・・・車輪用軸受装置、107・・・ハブシャフト(軸体)、T2・・・(軌道面の)熱処理硬化領域、T4・・・(突き当て部の)熱処理硬化領域
Claims (3)
- 車輪を回転可能に保持する車輪用軸受装置であって、
同軸となるように互いに一体的に連結された内輪としての筒状体および軸体と、
複数の転動体を介して前記筒状体および軸体に回転自在に連結された外輪とを含み、
前記筒状体は、熱処理による表面硬化処理がなされた環状の軌道面をその外周面に有し、
前記軸体は、その一部が前記筒状体に内嵌され、前記筒状体に設けられた突き当て部としての筒状端部が当該軸体の外周に形成された環状段部に突き当てられており、
前記突き当て部には、熱処理による表面硬化処理がされており、前記筒状体において、前記突き当て部の熱処理硬化領域と前記軌道面の熱処理硬化領域とが分離されていることを特徴とする車輪用軸受装置。 - 前記突き当て部に対する表面硬化処理は、少なくとも前記突き当て部の端面全周域に行われていることを特徴とする請求項1記載の車輪用軸受装置。
- 前記軸体は、駆動源からの駆動力を車輪に伝達するための等速ジョイントの一部と一体形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の車輪用軸受装置。
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JP2008277845A JP2010105472A (ja) | 2008-10-29 | 2008-10-29 | 車輪用軸受装置 |
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JP2008277845A JP2010105472A (ja) | 2008-10-29 | 2008-10-29 | 車輪用軸受装置 |
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JP2010105472A true JP2010105472A (ja) | 2010-05-13 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012081817A (ja) * | 2010-10-08 | 2012-04-26 | Ntn Corp | 車輪用軸受装置 |
JP2012087820A (ja) * | 2010-10-15 | 2012-05-10 | Ntn Corp | 等速自在継手用連結構造 |
-
2008
- 2008-10-29 JP JP2008277845A patent/JP2010105472A/ja active Pending
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