JP2010105457A - 車両の操舵装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 大幅なコストアップを招くことなく、操舵反力用モータ13を適切に駆動して所望の操舵反力が得られるようにする。
【解決手段】 転舵用モータ駆動回路38の入力部に昇圧回路50を設けて、転舵用モータ24に大電流を流すことができるようにする。昇圧回路50の出力により充電されるキャパシタ70を転舵用モータ駆動回路38と並列に設け、速い操舵操作が検出されたときに、切替スイッチ60を切り替えてキャパシタ70を操舵反力用モータ駆動回路37に接続する。これにより、キャパシタ70に蓄電しておいた電荷を操舵反力用モータ13の駆動電源として利用することができる。従って、速い操舵操作が行われた場合であっても、適切な操舵反力トルクを付与することができ、操舵反力用モータ駆動回路37の前段に昇圧回路を設けなくてすむ。
【選択図】 図2

Description

本発明は、ハンドル操作部と車輪を転舵する転舵部とを機械的に切り離したステアリングバイワイヤ方式の操舵装置に関する。
従来から、この種の車両の操舵装置は、運転者によって操作される操舵ハンドルと、操舵ハンドルの操作に対して操舵反力トルクを付与する反力付与装置と、操舵ハンドルの操作に応じて転舵輪を転舵する転舵輪駆動装置とを備えている。
反力付与装置は、ハンドル操作に対して適度な手応えを与えるために、操舵ハンドルを中立位置に戻す力となるバネ反力トルク成分、ステアリング機構の摩擦抵抗を模擬的に与える摩擦反力トルク成分、操舵ハンドルの回動操作に伴い発生する粘性抵抗を模擬的に与える粘性反力トルク成分などの複数の反力トルク成分を加算して目標操舵反力トルクを算出し、操舵反力用モータを駆動制御して目標操舵反力トルクを操舵ハンドルに付与する。
また、転舵輪駆動装置は、操舵角センサにより検出された操舵角に基づいて目標転舵角を算出し、転舵角センサにより検出される転舵角が目標転舵角となるように転舵用モータを駆動して転舵輪を転舵する。
例えば、特許文献1に提案されたステアリングバイワイヤ方式の操舵装置においては、操舵ハンドルの中立位置近傍における中立剛性を高めるために、操舵反力用モータとは別に、クラッチを介してステアリングシャフトと連結される回生モータを備えている。そして、中立位置近傍となる操舵角範囲においては、操舵反力用モータを停止させるとともに、クラッチをつないでステアリングシャフトからの逆入力により回生モータを回転させて発電機として作動させ、そこで発生した電力を車載バッテリに回生させる構成を採用している。
特開2003−237612号
こうしたステアリングバイワイヤ方式の操舵装置においては、速い操舵操作が行われたときには、転舵用モータと操舵反力用モータとの両方が大きな電力を必要とする。しかし、車載電源から供給される電力が不足する場合には、転舵が追従できなくなるとともに操舵反力が不足して速い操舵操作を制限できなくなる。このため、操舵操作と車輪転舵とにずれが生じ、運転者に違和感を与えてしまう。
上述した特許文献1に提案された装置においては、操舵反力用モータとは別に回生モータを備えているものの、この回生モータは、操舵ハンドルの中立位置付近における剛性を高めるものであって、操舵操作時において操舵反力用モータにて発生させる反力トルクを補うものではない。従って、速い操舵操作が行われたときには、上述した課題が残る。
電動モータを大電力で駆動する場合には、車載電源からモータ駆動回路への電源供給路に昇圧回路を設けるとよい。転舵用モータに関しては、通常の操舵操作時においても大電力を消費するためモータ駆動回路の前段に昇圧回路を設けることは得策であるが、操舵反力用モータに関しては、速い操舵操作が行われたときにのみ大電力を必要とするものであって普段はあまり大電力を必要としない。従って、操舵反力用モータの駆動回路の前段に昇圧回路を設けることは、コスト面から考えた場合好ましくない。
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、大幅なコストアップを招くことなく、操舵反力用モータを適切に駆動して所望の操舵反力が得られるようにすることを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、転舵輪を転舵するための転舵用モータと、車載電源から電源供給されて前記転舵用モータを駆動する転舵用モータ駆動回路と、操舵ハンドルの操舵操作に応じて前記転舵用モータ駆動回路を制御して前記転舵用モータへの通電を制御する転舵制御手段と、操舵ハンドルの操舵操作に対して操舵反力トルクを付与するための操舵反力用モータと、前記車載電源から電源供給されて前記操舵反力用モータを駆動する操舵反力用モータ駆動回路と、前記操舵ハンドルの操舵操作に応じて前記操舵反力用モータ駆動回路を制御して前記操舵反力用モータへの通電を制御する操舵反力制御手段とを備えたステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、前記車載電源から前記転舵用モータ駆動回路への電源供給路に設けられ、前記車載電源の出力電圧を昇圧して前記転舵用モータ駆動回路に電源供給する昇圧回路と、前記昇圧回路から前記転舵用モータ駆動回路への電源供給路に並列に接続され、前記昇圧回路の出力により充電されるキャパシタと、前記キャパシタが前記昇圧回路に接続されて充電可能となる充電可能モードと、前記キャパシタが前記操舵反力用モータ駆動回路に接続されて前記操舵反力用モータ駆動回路に放電可能となる放電可能モードとを切り替える充放電切替回路とを備えたことにある。
本発明においては、車載電源と転舵用モータ駆動回路とのあいだの電源供給路に昇圧回路が設けられ、この昇圧回路により車載電源の出力電圧が昇圧されて転舵用モータ駆動回路に電源供給される。従って、転舵用モータ駆動回路は、昇圧された電源が供給されるため、転舵用モータに大電流を流して転舵輪を良好に転舵することができる。昇圧回路から転舵用モータ駆動回路への電源供給路(昇圧された電源の供給路)にはキャパシタが転舵用モータ駆動回路と並列に接続される。従って、キャパシタは昇圧回路の出力により充電される。一方、操舵反力用モータ駆動回路は、昇圧回路を介することなく車載電源から電源供給される。
充放電切替回路は、充電可能モードと放電可能モードとを切り替えるように構成される。充電可能モードにおいては、キャパシタと昇圧回路の出力部とが接続される。従って、キャパシタは、昇圧回路の出力により良好に充電される。また、放電可能モードにおいては、キャパシタと操舵反力用モータ駆動回路の電源入力部とが接続される。従って、操舵反力用モータ駆動回路は、車載電源とキャパシタとの両方から電源供給される。
この結果、本発明によれば、操舵反力用モータの駆動に大電力を必要としない通常時においては、昇圧回路の出力によりキャパシタを充電しておき、操舵反力用モータで大電力が必要となるときには、充放電切替回路により充電可能モードから放電可能モードに切り替えて、キャパシタに蓄電した電荷を操舵反力用モータ駆動回路に供給することができる。これにより、操舵反力用モータ駆動回路の前段に昇圧回路を設けなくても操舵反力用モータへの通電量不足を抑制することができる。従って、大幅なコストアップを招くことなく適切な操舵反力が得られるようになる。
尚、充放電切替回路は、例えば、昇圧回路から転舵用モータ駆動回路への電源供給路に接続される充電路と、車載電源から操舵反力モータ用駆動回路への電源供給路に接続される放電路と、キャパシタの接続先を充電路と放電路とに選択的に切り替える切替スイッチにて構成することができる。
本発明の他の特徴は、前記操舵ハンドルの操舵速度を検出する操舵速度検出手段と、前記操舵速度検出手段により検出された操舵速度が設定速度を越えたときに、前記充放切替回路を制御して前記充電可能モードから前記放電可能モードに切り替える充放電切替回路制御手段とを備えたことにある。
本発明においては、操舵速度検出手段が操舵ハンドルの操舵速度を検出し、検出された操舵速度が設定速度を越えたときに、充放電切替回路制御手段が充放切替回路を制御して充電可能モードから放電可能モードに切り替える。操舵ハンドルに付加すべき操舵反力は、操舵速度が速くなるにしたがって大きくすることが望ましい。そこで、本発明においては、操舵速度が設定速度より小さい状況であれば、充電可能モードに設定してキャパシタを充電して待機し、操舵速度が設定速度を越えたときに、充放電切替回路を制御して放電可能モードにする。従って、速い操舵操作が行われたときには、キャパシタに蓄電した電荷を操舵反力用モータの駆動電源として利用することができる。このため、速い操舵操作が行われた場合であっても、適切な操舵反力トルクを付与することができ、操舵操作と車輪の転舵とのずれの発生を抑制することができる。
本発明の他の特徴は、前記操舵ハンドルの切り戻し、あるいは、前記転舵輪の切り戻しを検出する切り戻し検出手段を備え、前記充放電切替回路制御手段は、前記切り戻し検出手段により、前記操舵ハンドルの切り戻し、あるいは、前記転舵輪の切り戻しが検出されているときには、前記操舵速度検出手段により検出された操舵速度にかかわらず、前記充電可能モードに維持することにある。
操舵ハンドルの速い切り込み操作、切り返し操作が繰り返されることを想定すると、大容量のキャパシタが必要となってしまう。そこで、本発明においては、セルフアライニングトルクにより転舵用モータが回転して発電する可能性のある場合には、転舵用モータで発生した電力をキャパシタに回生して充電する。
転舵輪が切り戻されているときには、セルフアライニングトルクにより転舵用モータから発電電力が得られる場合が多い。そこで、切り戻し検出手段は、操舵ハンドルの切り戻し、あるいは、転舵輪の切り戻しを検出する。そして、充放電切替回路制御手段は、操舵ハンドルの切り戻し、あるいは、転舵輪の切り戻しが検出されているときには、操舵速度にかかわらず充電可能モードに維持する。従って、キャパシタと転舵用モータ駆動回路とが接続されて、転舵用モータの発電電力をキャパシタに回生して充電することができる。この結果、キャパシタの大容量化を図る必要がなく、低コストにて実施することができる。
本発明の他の特徴は、前記転舵用モータで発生した電力を前記車載電源に回生可能な回生可能モードと、回生不能な回生不能モードとに切り替える回生切替回路と、車速を検出する車速検出手段と、前記車速検出手段により検出された車速が設定車速未満となったときに、前記回生切替回路を制御して前記回生不能モードから前記回生可能モードに切り替える回生切替回路制御手段とを備えたことにある。
本発明においては、回生切替回路と車速検出手段と回生切替回路制御手段とを備え、車速が設定車速未満となったときに、回生切替回路制御手段が回生切替回路を制御して回生不能モードから回生可能モードに切り替える。つまり、車速が設定車速未満であれば回生可能モードに設定し、車速が設定車速を越えていれば回生不能モードに設定する。回生可能モードにおいては、路面からの逆入力により転舵用モータが回転して発電した電力を車載電源に回生することができる。この電力回生にあたっては、車速検出手段により検出された車速が設定車速未満となっているときに行うため、安全に実行することができる。
本発明の他の特徴は、前記操舵ハンドルの切り戻し、あるいは、前記転舵輪の切り戻しを検出する切り戻し検出手段を備え、回生切替回路制御手段は、前記車速検出手段により検出された車速が前記設定車速未満であって、かつ、前記切り戻し検出手段により、前記操舵ハンドルの切り戻し、あるいは、前記転舵輪の切り戻しが検出された場合に、前記回生切替回路を制御して前記回生不能モードから前記回生可能モードに切り替えることにある。
本発明においては、車速が設定車速未満であって、かつ、セルフアライニングトルクにより転舵用モータから発電電力が得られやすい転舵輪の切り戻し時(操舵ハンドルの切り戻し時でもある)に回生可能モードに設定されるため、回生可能モードの期間を一層適切なものにすることができる。
本発明の他の特徴は、前記回生切替回路は、前記転舵用モータ駆動回路の電源入力部に接続される回生路を備え、前記回生可能モードにおいては前記車載電源と前記昇圧回路との接続を遮断するとともに前記車載電源と前記回生路とを接続し、前記回生不能モードにおいては前記車載電源と前記回生路との接続を遮断するとともに前記車載電源と前記昇圧回路とを接続することにある。
転舵用モータで発電した電力は、昇圧回路を介して車載電源に回生することができないため、回生可能モードにおいては、車載電源と転舵用モータ駆動回路の電源入力部とを回生路にて接続する。従って、転舵用モータで発電した電力を回生路を介して車載電源に回生することができる。この回生可能モードにおいては、転舵用モータで電力供給を必要としている場合であっても、車載電源から電源供給可能となる。また、回生不能モードにおいては、車載電源の出力電圧を昇圧して転舵用モータ駆動回路に電源供給するため、切り込み時であっても転舵用モータを適正に駆動することができる。
以下、本発明の実施形態に係る車両の操舵装置について図面を用いて説明する。まず、第1実施形態の車両の操舵装置について説明する。図1は、第1実施形態に係る車両の操舵装置の概略システム構成を表し、図2は、その電源供給系統を表す。
この車両の操舵装置は、運転者によって操舵操作される操舵操作装置10と、転舵輪としての左右前輪FW1,FW2を運転者の操舵操作に応じて転舵する転舵装置20とを機械的に分離して備えたステアバイワイヤ方式を採用している。操舵操作装置10は、運転者によって回動操作される操作部としての操舵ハンドル11を備えている。操舵ハンドル11は操舵入力軸12の上端に固定され、操舵入力軸12の下端には減速機構を内蔵した操舵反力発生用の操舵反力用モータ13が組み付けられている。操舵反力用モータ13としては、例えば、3相ブラシレスモータが使用される。
転舵装置20は、車両の左右方向に延びて配置された転舵軸21を備えている。この転舵軸21の両端部には、タイロッド22a,22bおよびナックルアーム23a,23bを介して、左右前輪FW1,FW2が転舵可能に接続されている。左右前輪FW1,FW2は、転舵軸21の軸線方向の変位により左右に転舵される。転舵軸21の外周上には、図示しないハウジングに組み付けられた転舵用モータ24が設けられている。転舵用モータ24の回転は、それぞれねじ送り機構26により減速されるとともに転舵軸21の軸線方向の変位に変換される。転舵用モータ24も操舵反力用モータ13と同様に、例えば、3相ブラシレスモータが使用される。
次に、操舵反力用モータ13、転舵用モータ24の回転を制御する電気制御装置30について説明する。電気制御装置30は、操舵角センサ31、転舵角センサ32を備えている。操舵角センサ31は、操舵入力軸12に組み付けられて、操舵ハンドル11の基準点からの回転角を検出して操舵角θを表す信号を出力する。以下、この操舵角センサ31により検出される操舵角θを実操舵角θと呼ぶ。実操舵角θは、基準点を中立位置「0」とし、左方向の角度を正の値で表し、右方向の角度を負の値で表す。
転舵角センサ32は、転舵軸21の基準点からの軸線方向の変位量を検出して左右前輪FW1,FW2の転舵角δを表す信号を出力する。この転舵角センサ32としては、転舵用モータ24のロータの基準位置に対する回転角度を検出する回転角度センサが用いられる。転舵用モータ24のロータの回転角度は、転舵軸21の軸線方向の移動量、つまり、転舵角の変化量に対応した値をとる。従って、転舵角センサ32は、転舵用モータ24の基準位置に対する回転角度から転舵角δを検出する。以下、この転舵角センサ32により検出される転舵角δを実転舵角δと呼ぶ。実転舵角δは、基準点を中立位置「0」とし、左右前輪FW1,FW2の左方向の転舵に対応した転舵軸21の変位を正の値で表し、左右前輪FW1,FW2の右方向の転舵に対応した転舵軸21の変位を負の値で表す。
また、電気制御装置30は、相互に通信可能に接続された操舵反力用電子制御ユニット(以下、操舵反力用ECUという)35、転舵用電子制御ユニット(以下、転舵用ECUという)36を備えている。操舵反力用ECU35には、操舵角センサ31が接続されている。また、転舵用ECU36には、操舵角センサ31および転舵角センサ32が接続されている。
この操舵反力用ECU35、転舵用ECU36は、それぞれCPU,ROM,RAMなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品とする。操舵反力用ECU35は、図2に示すように、操舵反力用モータ駆動回路37を介して操舵反力用モータ13を駆動制御する操舵反力制御部35aと、後述する切替スイッチ60の制御によりキャパシタ70の充放電を制御する充放電制御部35bとを備えている。転舵用ECU36は、転舵用モータ駆動回路38を介して転舵用モータ24を駆動制御する。
操舵反力用モータ駆動回路37,転舵用モータ駆動回路38は、それぞれ3相インバータ回路で構成され、操舵反力用ECU35,転舵用ECU36から出力されるPWM制御信号により、内部のアーム回路を構成する複数のスイッチング素子(例えば、MOS−FET)のデューティ比が制御され、デューティ比に応じた通電量で操舵反力用モータ13,転舵用モータ24へ通電する。また、操舵反力用モータ駆動回路37内には操舵反力用モータ13の各相に流れる駆動電流を検出する電流センサ33が設けられ、転舵用モータ駆動回路38内には転舵用モータ24の各相に流れる駆動電流を検出する電流センサ34が設けられている。電流センサ33,34によって検出された駆動電流値信号は操舵反力用ECU35,転舵用ECU36にそれぞれ供給される。
次に、操舵反力用モータ13,転舵用モータ24を駆動するための電源供給系統について図2を用いて説明する。車両の操舵装置は、車載バッテリ100から電源供給される。車載バッテリ100は、一般的な12Vの蓄電池であって、図示しないオルタネータにより充電される。車載バッテリ100は、操舵装置だけでなく、他の車載電気負荷への電源供給を行うもので、本発明の車載電源に相当する。
車載バッテリ100のプラス端子には主電源供給ライン110が接続される。主電源供給ライン110は、途中で操舵反力用電源供給ライン111と転舵用電源供給ライン112とに分岐する。操舵反力用電源供給ライン111は、操舵反力用モータ駆動回路37の電源入力部に接続される。操舵反力用モータ駆動回路37においては、3相インバータ回路を構成する上アームと下アームとの間からモータ駆動ライン113が引き出される。このモータ駆動ライン113は、操舵反力用モータ13の電源入力端子に接続される。
転舵用電源供給ライン112は、昇圧回路50の入力部に接続される。昇圧回路50は、汎用のDC−DCコンバータで構成され、入力した電源電圧を、例えば、42Vにまで昇圧する。昇圧回路50の出力部には昇圧電源供給ライン114の一端が接続される。昇圧電源供給ライン114の他端は、転舵用モータ駆動回路38の電源入力部に接続される。転舵用モータ駆動回路38においては、3相インバータ回路を構成する上アームと下アームとの間からモータ駆動ライン124が引き出される。このモータ駆動ライン124は、転舵用モータ24の電源入力端子に接続される。
昇圧電源供給ライン114には、その途中で充電ライン115が分岐して設けられる。また、操舵反力用電源供給ライン111には、その途中で放電ライン116が分岐して設けられる。充電ライン115の他端は、切替スイッチ60の選択ポートAに接続され、放電ライン116の他端は、切替スイッチ60の選択ポートBに接続される。切替スイッチ60は、操舵反力用ECUの充放電制御部35bから出力される制御信号により、共通ポートOと選択ポートAとを電気的に接続する状態と、共通ポートOと選択ポートBとを電気的に接続する状態との2つの状態を切り替えるものである。切替スイッチ60としては、電気信号により2位置の切り替え可能なものであれば、半導体素子にて構成してもよいし、機械的な電磁リレーにて構成してもよい。
切替スイッチ60の共通ポートOには、キャパシタ70が接続される。キャパシタ70は、電気二重層キャパシタと呼ばれる急速充放電可能な蓄電ディバイスであり、共通ポートOとグランドとの間に設けられる。
充電ライン115には、ダイオード117が設けられる。このダイオード117は、カソードを切替スイッチ60側に向け、アノードを昇圧電源供給ライン114に向けて設けられる。従って、充電ライン115においては、昇圧電源供給ライン114から切替スイッチ60に向かう方向にのみ通電が許容される。また、放電ライン116にもダイオード118が設けられる。このダイオード118は、カソードを操舵反力用電源供給ライン111側に向け、アノードを切替スイッチ60側に向けて設けられる。従って、放電ライン116においては、切替スイッチ60から操舵反力用電源供給ライン111に向かう方向にのみ通電が許容される。また、操舵反力用電源供給ライン111には、放電ライン116との接続点よりも主電源供給ライン110側にダイオード119が設けられる。このダイオード119は、カソードを操舵反力用モータ駆動回路37側に向け、アノードを主電源供給ライン110側に向けて設けられる。従って、放電ライン116を流れる電流は、主電源供給ライン110に向かわず操舵反力用モータ駆動回路37側に流れるように構成されている。
このように構成された電源供給系統においては、車載バッテリ100から操舵反力用モータ駆動回路37と転舵用モータ駆動回路38とに電源供給される。この場合、転舵用モータ駆動回路38への電源供給路には途中に昇圧回路50が設けられているため、転舵用モータ駆動回路38へ供給される電源電圧は高圧となっている。従って、転舵用モータ駆動回路38は、転舵用モータ24に大電流を流すことができ、左右前輪FW1,FW2を転舵するための大きな転舵トルクを発生させることができる。
切替スイッチ60の共通ポートOと選択ポートAとが接続されている状態においては、充電ライン115とキャパシタ70とが接続される。従って、キャパシタ70は、昇圧回路50に対して転舵用モータ駆動回路38と並列に接続され、昇圧回路70の出力により充電される。この場合、昇圧された電源を使っているためキャパシタ70の充電を良好に行うことができる。また、キャパシタ70は、昇圧回路50の出力電圧と同程度の電圧になるまで充電される。以下、共通ポートOと選択ポートAとが接続されている状態を充電可能モードと呼ぶ。尚、充電可能モードにおいては、路面からの逆入力により転舵用モータ24が回転して発電した場合には、その発電電力がキャパシタ70に回生される。
切替スイッチ60が切り替えられて、共通ポートOと選択ポートBとが接続されている状態においては、キャパシタ70と充電ライン115との接続が絶たれ、キャパシタ70と放電ライン116とが接続される。従って、キャパシタ70は、蓄電した電荷を電源とした補助電源として操舵反力用モータ駆動回路37に接続されることになる。これにより、操舵反力用モータ駆動回路37は、車載バッテリ100とキャパシタ70との2つの電源を備えた状態となる。以下、共通ポートOと選択ポートBとが接続されている状態を放電可能モードと呼ぶ。
キャパシタ70は、満充電時における出力電圧が昇圧回路50の出力電圧と同程度となっているため、放電可能モードに切り替えられたときには、操舵反力用モータ駆動回路37に対して、車載バッテリ100よりも高い電圧の電源を供給する。従って、キャパシタ70から操舵反力用モータ13に大電流を流すことができ、大きな操舵反力トルクを発生させることができる。また、キャパシタ70から放電する電荷は、ダイオード119の働きにより車載バッテリ100に戻されないため、操舵反力用モータ13の駆動用に有効に使用することができる。
尚、この実施形態における切替スイッチ60,充電ライン115,放電ライン116が本発明の充放電切替回路に相当する。
次に、転舵用ECU36により実施される転舵角制御について説明する。図3は、転舵角制御ルーチンを表すフローチャートである。転舵角制御ルーチンは、転舵用ECU36のROM内に制御プログラムとして記憶されており、イグニッションスイッチ(図示しない)の投入により開始され、所定の短い周期で繰り返される。
本制御ルーチンが起動すると、転舵用ECU36は、ステップS11において、操舵角センサ31、転舵角センサ32によって検出された実操舵角θ、実転舵角δを読み込む。続いて、ステップS12において、ROM内に予め記憶された目標転舵角テーブルを参照して、実操舵角θに対応する目標転舵角δ*を計算する。この目標転舵角テーブルは、操舵ハンドル11の操舵角θと目標転舵角δ*との対応関係を設定したもので、図4に示すように、操舵角θの増加に従って増加する目標転舵角δ*を記憶している。
このステップS12においては、実操舵角θを目標転舵角テーブルの操舵角θに代入して、その実操舵角θに対応する目標転舵角δ*を求める。なお、目標転舵角テーブルを用いるのに代えて、操舵角θと目標転舵角δ*との対応関係を予め定めた関数をROM内に記憶しておいて、その関数を用いて実操舵角θに対応する目標転舵角δ*を計算するようにしてもよい。
続いて、転舵用ECU36は、ステップS13において、目標転舵角δ*から実転舵角δを減算した差分値(δ*−δ)に比例した目標駆動電流値を演算し、目標駆動電流値に応じた制御信号(例えば、PWM制御信号)を転舵用モータ駆動回路38に出力することで目標駆動電流を転舵用モータ24に流す。この通電制御は、例えば、電流センサ34によって検出された駆動電流をフィードバックすることにより行う。これにより、転舵用モータ24は、差分値(δ*−δ)が「0」となるように駆動制御され、その回転により、ねじ送り機構26を介して転舵軸21を軸線方向に駆動する。そして、転舵軸21の軸線方向の変位により、左右前輪FW1,FW2が目標転舵角δ*に転舵される。その結果、左右前輪FW1,FW2は、操舵ハンドル11の回動操作に応じて転舵され、車両は左右に旋回される。こうして、転舵用ECU36は、ステップS13の処理を実行すると本転舵角制御ルーチンを一旦終了する。そして、所定の短い周期で本転舵角制御ルーチンを繰り返す。この転舵制御ルーチンを実行する転舵用ECU36が、本発明の転舵制御手段に相当する。
次に、操舵反力用ECU35の操舵反力制御部35aにより実施される操舵反力制御について説明する。図5は、操舵反力制御ルーチンを表すフローチャートである。操舵反力制御ルーチンは、操舵反力用ECU35のROM内に制御プログラムとして記憶されており、イグニッションスイッチ(図示しない)の投入により開始され、所定の短い周期で繰り返される。
本制御ルーチンが起動すると、操舵反力制御部35aは、まず、ステップS21において、操舵角センサ31により検出されている実操舵角θを読み込む。次に、ステップS22において、バネ反力トルク成分Taを算出する。このバネ反力トルク成分Taは、操舵ハンドル11に付与する操舵反力トルクのうち操舵ハンドル11を中立位置に戻そうとするトルク成分であり、バネ反力トルクテーブルを参照して算出される。このバネ反力トルクテーブルは、図6に示すように、操舵ハンドル11の操舵角θとバネ反力トルク成分Taとの対応関係を操舵反力用ECU35のROM内に記憶したものである。このテーブルから分かるように、バネ反力トルク成分Taは、操舵角θの増加に従って増加するように設定されている。
続いて、操舵反力制御部35aは、ステップS23において、摩擦反力トルク成分Tbを算出する。この摩擦反力トルク成分Tbは、操舵ハンドル11に付与する操舵反力トルクのうち、ステアリング機構の摩擦抵抗を模擬的に与えるトルク成分である。摩擦反力トルク成分Tbは、操舵角θを時間で微分した操舵速度ω(=dθ/dt)の大きさに依存するとともにヒステリシス特性を有して計算されるため、操舵速度ωと摩擦反力トルク成分Tbとの対応関係を記憶した図7に示す摩擦反力トルクテーブルを用いて計算される。この摩擦反力トルクテーブルは、操舵反力用ECU35のROM内に記憶されている。
操舵速度ωは、本制御ルーチンが所定の短い周期で繰り返し実行されることから、操舵角センサ31にて検出された実操舵角θの単位時間当たりの変化量を計算することで求められる。ステップS23においては、この算出した実操舵速度ωを摩擦反力トルクテーブルの操舵速度ωに代入して、その実操舵速度ωに対応する目標摩擦反力トルク成分Tbを求める。
続いて、操舵反力制御部35aは、ステップS24において、粘性反力トルク成分Tcを算出する。この粘性反力トルク成分Tcは、操舵ハンドル11に付与する操舵反力トルクのうち、操舵ハンドル11の回動操作に伴い発生する粘性抵抗を模擬的に与えるトルク成分である。粘性反力トルク成分Tcは、操舵速度ωを時間で微分した操舵加速度dω/dtに比例して計算されるため、操舵加速度dω/dtと粘性反力トルク成分Tcとの対応関係を記憶した図8に示す粘性反力トルクテーブルを用いて計算される。この粘性反力トルクテーブルも、操舵反力用ECU35のROM内に記憶されている。ステップS24においては、実操舵速度ωの単位時間当たりの変化量を計算して求めた実操舵加速度dω/dtを粘性反力トルクテーブルの操舵加速度dω/dtに代入して、その実操舵加速度dω/dtに対応する目標粘性反力トルク成分Tcを求める。
尚、各反力トルク成分Ta,tb,tcを計算するに当たっては、必ずしもテーブルを用いる必要はなく、実操舵角θ等の各パラメータから反力トルク成分導き出す関数をROMに記憶しておいて、その関数を用いて計算するようにしてもよい。
次に、操舵反力制御部35aは、ステップS25において、目標操舵反力トルクT*を算出する。目標操舵反力トルクT*は、ステップS22〜S24にて算出したバネ反力トルク成分Taと摩擦反力トルク成分Tbと粘性反力トルク成分Tcとを合算して求められる。尚、本実施形態においては、この3つのトルク成分Ta,Tb,Tcから目標操舵反力トルクT*を算出するが、他のトルク成分をも加味するようにしてもよいし、逆に、トルク成分の種類を減らしても良い。また、車速に応じて目標操舵反力トルクT*を変化させるようにしてもよい。
こうして目標操舵反力トルクT*が算出されると、操舵反力制御部35aは、ステップS26において、目標操舵反力トルクT*に応じた制御信号(例えば、PWM制御信号)を操舵反力用モータ駆動回路37に出力することで、目標操舵反力トルクT*に応じた駆動電流を操舵反力用モータ13に流す。この通電制御は、例えば、電流センサ33によって検出された駆動電流をフィードバックすることにより行う。そして、この操舵反力制御ルーチンを一旦終了する。
この操舵反力制御ルーチンは所定の短い周期で繰り返されるため、逐次計算した目標操舵反力トルクT*に等しい操舵反力が操舵入力軸12を介して操舵ハンドル11に付与される。これにより、運転者による操舵ハンドル11の回動操作に対して適切な反力トルクが付与され、運転者は、この操舵反力を感じながら操舵ハンドル11を快適に回動操作できる。尚、操舵反力制御ルーチンを実行する操舵反力制御部35aが本発明の操舵反力制御手段に相当する。
このように転舵角制御ルーチンと操舵反力制御ルーチンとを並行して実行することにより、操舵操作装置10と転舵装置20とが機械的に切り離されている構成であっても、運転者の操舵操作に応じた方向に左右前輪FW1,FW2が転舵されるとともに、操舵操作に応じた反力を感じることができる。こうした転舵角制御ルーチンの実行により左右前輪FW1,FW2を目標転舵角δ*に転舵する場合、特に、据え切り操作時においては、転舵用モータ24に大電流を流す必要がある。そこで、本実施形態においては、転舵用モータ駆動回路38の前段に昇圧回路50を設けて、車載電源電圧を昇圧し、この昇圧した電源を転舵用モータ駆動回路38に供給する構成を採用している。このため、転舵用モータ24に大電流を流すことができ、所望の転舵トルクを得ることができる。
一方、操舵反力用モータ13においては、普段は大電流で駆動する必要はないが、速い操舵操作が行われた場合に限って通電量が不足して所定の操舵反力が得られないことがある。この場合、左右前輪FW1,FW2の転舵よりも先行して操舵ハンドル11が回ってしまい運転者に違和感を与えてしまう。操舵反力用電源供給ライン111に新たな昇圧回路を設ければ、操舵反力用モータ13に大電流を流すことができ、こうした問題を解決できるが大幅なコストアップを招いてしまう。そこで、本実施形態においては、普段は昇圧回路50の出力でキャパシタ70を充電し、速い操舵操作が行われたときに、キャパシタ70に蓄電しておいた電荷を放電させて操舵反力用モータ13に大電流を流すようにしてコストアップを抑える。
以下、キャパシタ70の充放電制御について説明する。キャパシタ70の充放電制御は、図9に示す操舵速度フラグ設定ルーチンと図10に示すスイッチ切替制御ルーチンとを並行して実行することにより行われる。操舵速度フラグ設定ルーチンおよびスイッチ切替制御ルーチンは、操舵反力用ECU35のROM内に制御プログラムとして記憶される。操舵反力用ECU35の充放電制御部35bは、イグニッションスイッチ(図示しない)の投入により、この2つのルーチンを開始する。各ルーチンは、タイマ割り込み処理により、所定の短い周期で繰り返される。
操舵速度フラグ設定ルーチンから説明する。操舵速度フラグ設定ルーチンが起動すると、充放電制御部35bは、まず、ステップS31において、操舵角センサ31により検出される実操舵角θに基づいて実操舵速度ωを検出する。この実操舵速度ωは、実操舵角θの単位時間当たりの変化量、つまり、実操舵角θを時間で微分することにより求められる。実操舵速度ωは、左方向に回したときには正の値となり、右方向に回したときには負の値となるが、ここでは操作方向を区別する必要がなく操舵速度の大小を判断するためのパラメータとして用いられる。従って、実操舵速度ωの大きさを判断する場合には、その絶対値|ω|を使う。
続いて、充放電制御部35bは、ステップS32において、実操舵速度|ω|が設定操舵速度ω1より大きいか否かを判断する。このステップS32の処理は、右方向あるいは左方向に速い操舵操作が行われたか否かを判断するものである。この設定操舵速度ω1は、車載バッテリ100だけでは操舵反力用モータ13への通電量が不足するおそれのある状況となる速い操舵速度に設定されている。
操舵速度フラグ設定ルーチンの起動当初においては、まだ速い操舵操作が行われていない。従って、ステップS32の判断は「No」となる。充放電制御部35bは、この判断に基づいて、その処理をステップS35に進め、操舵速度フラグFωが「1」であるか否かを判断する。この操舵速度フラグFωは、後述する処理からわかるように、速い操舵操作が行われている状況か否かを表すデータであり、速い操舵操作が行われている状況をFω=1で表し、速い操舵操作が行われていない状況をFω=0で表す。また、操舵速度フラグ設定ルーチンの起動時においては、Fω=0に設定されている。従って、この場合、ステップS35の判断は「No」となり、操舵速度フラグ設定ルーチンを一旦終了する。
操舵速度フラグ設定ルーチンは、所定の短い周期で繰り返される。従って、速い操舵操作が行われないあいだは、上述した処理が繰り返される。そして、速い操舵操作が行われて実操舵速度|ω|が設定操舵速度ω1を越えると(S32:Yes)、充放電制御部35bは、その処理をステップS33に進め、操舵速度フラグFωが「0」であるか否かについて判断する。操舵速度フラグFωは、この時点では「0」に設定されているため、ステップS33の判断は「Yes」となる。この場合、充放電制御部35bは、ステップS34において、操舵速度フラグFωを「1」に設定して、操舵速度フラグ設定ルーチンを一旦終了する。
操舵速度フラグ設定ルーチンは、所定の短い周期で繰り返されるが、実操舵速度|ω|が設定操舵速度ω1を越えているあいだは(S32:Yes)、ステップS33において、操舵速度フラグFωの状態が確認される。この場合、操舵速度フラグFωは、既に「1」に設定されているため、充放電制御部35bは、フラグ設定を行うことなく、そのまま操舵速度フラグ設定ルーチンを一旦終了する。
こうした処理が繰り返され、実操舵速度|ω|が設定操舵速度ω1以下にまで低下すると、ステップS32の判断は「No」となる。この場合、充放電制御部35bは、ステップS35において、操舵速度フラグFωが「1」であるか否かについて判断する。操舵速度フラグFωは「1」に設定されているため、ステップS35の判断は「Yes」となり、その処理がステップS36に進められる。充放電制御部35bは、ステップS36において、実操舵速度|ω|が設定操舵速度ω2を下回ったか否かについて判断する。この設定操舵速度ω2は、設定操舵速度ω1よりも小さな値に設定され、速い操舵操作が終了したか否かを判定するための閾値である。従って、操舵操作の速さを判定する不感帯(ω2〜ω1)が設けられるため、判定結果が頻繁に反転してしまうことがない。
充放電制御部35bは、実操舵速度|ω|が設定操舵速度ω2を下回っていなければ(S36:No)、そのまま操舵速度フラグ設定ルーチンを終了する。従って、操舵速度フラグFωは、「1」に維持される。そして、実操舵速度|ω|が更に低下して設定操舵速度ω2を下回ると(S36:Yes)、充放電制御部35bは、ステップS37において操舵速度フラグFωを「0」に設定して操舵速度フラグ設定ルーチンを終了する。
充放電制御部35bは、このように設定した操舵速度フラグFωに基づいて、図10に示すスイッチ切替制御ルーチンを実行することにより、切替スイッチ60を切り替えてキャパシタ70の充放電を制御する。
このスイッチ切替制御ルーチンにおいて、充放電制御部35bは、ステップS41で、操舵速度フラグFωが「1」であるか否か、つまり、速い操舵操作が行われている状況か否かについて判断する。この判断は、上述した操舵速度フラグ設定ルーチンで設定されている操舵速度フラグFωを読み込んで行われる。充放電制御部35bは、操舵速度フラグFωが「0」であれば(S41:No)、ステップS42において、切替スイッチ60の共通ポートOと選択ポートAとを接続する状態にして、充電可能モードに設定する。一方、操舵速度フラグFωが「1」であれば(S41:Yes)、ステップS43において、切替スイッチ60の共通ポートOと選択ポートBとを接続する状態にして、放電可能モードに設定する。
充放電制御部35bは、例えば、ステップS42において切替スイッチ60に信号Aを出力し、ステップS43において切替スイッチ60に信号Bを出力する。そして、切替スイッチ60は、信号Aを入力したときに、共通ポートOと選択ポートAとが接続状態であればその状態を維持し、そうでない場合には、共通ポートOと選択ポートAとを接続する。また、信号Bを入力したときに、共通ポートOと選択ポートBとが接続状態であればその状態を維持し、そうでない場合には、共通ポートOと選択ポートBとを接続する。
スイッチ切替制御ルーチンは、所定の短い周期で繰り返される。従って、速い操舵操作が行われないあいだは、充電可能モードが設定されて、キャパシタ70が昇圧回路50の出力により充電される。そして、速い操舵操作が行われると、放電可能モードに切り替わり、キャパシタ70と充電ライン115との接続が絶たれ、キャパシタ70と放電ライン116とが接続される。従って、キャパシタ70は、補助電源として操舵反力用モータ駆動回路37に接続されることになる。キャパシタの出力電圧は、満充電時においては、昇圧回路50の出力電圧と同じ高電圧となっている。従って、キャパシタ70からの放電により操舵反力用モータ13に大電流を流すことができ、操舵ハンドル11に大きな反力トルクを付与することができる。
この結果、速い操舵操作が行われた場合であっても、操舵ハンドル11の操舵速度の増大を制限して、操舵操作と左右前輪FW1,FW2の転舵とのずれの発生を抑制することができる。また、操舵反力用モータ駆動回路37の前段に昇圧回路を設けなくても操舵反力用モータ13への通電量不足を抑制することができるため、低コストにて実施することができる。また、操舵操作の速さを判定するにあたり、判定閾値に不感帯(ω2〜ω1)を設けているため、その判定結果が頻繁に反転してしまうことがなく、切替スイッチ60の切替制御を安定して行うことができる。尚、操舵速度フラグ設定ルーチンを実行する充放電制御部35bの機能部が本発明の操舵速度検出手段に相当し、スイッチ切替制御ルーチンを実行する充放電制御部35bの機能部が本発明の充放電切替回路制御手段に相当する。
次に、第2実施形態に係る車両の操舵装置について説明する。第2実施形態の車両の操舵装置は、第1実施形態の操舵装置に対してキャパシタ70の充放電制御のみが相違する。従って、ここでは、キャパシタ70の充放電制御について説明する。尚、キャパシタ70の充放電制御を行うにあたっては、図1,図2に破線にて示すように、転舵角センサ32の検出信号が操舵反力用ECU35にも入力されるように構成されている。
キャパシタ70の充放電制御は、図9に示す操舵速度フラグ設定ルーチンと、図11に示す切り戻しフラグ設定ルーチンと、図12に示すスイッチ切替制御ルーチンとを並行して実行することにより行われる。各ルーチンは、操舵反力用ECU35のROM内に制御プログラムとして記憶される。操舵反力用ECU35の充放電制御部35bは、イグニッションスイッチ(図示しない)の投入により、この3つのルーチンを開始する。各ルーチンは、タイマ割り込み処理により、所定の短い周期で繰り返される。尚、操舵速度フラグ設定ルーチンについては、第1実施形態と同一であるため説明を省略する。
操舵ハンドル11の速い切り込み操作、切り返し操作が繰り返されることを想定すると、キャパシタ70の容量を大きくする必要があるがコスト面から好ましくない。そこで、第2実施形態においては、セルフアライニングトルクにより転舵用モータ24が回転して発電する可能性のある場合には、操舵速度よりも優先して充電可能モードを維持し、転舵用モータ24で発生した電力をキャパシタ70に回生して充電する。
セルフアライニングトルクは、左右前輪FW1,FW2が切り戻されているときに発生する。従って、図11に示す切り戻しフラグ設定ルーチンにおいては、セルフアライニングトルクが発生している状況を実転舵角δの変化から推定し、その推定に基づいてスイッチ切替制御に使用するフラグ(切り戻しフラグ)を設定する。以下、切り戻しフラグ設定ルーチンについて説明する。
切り戻しフラグ設定ルーチンが起動すると、充放電制御部35bは、まず、ステップS51において、転舵角センサ32から出力される検出信号を読み込んで実転舵角δを検出する。続いて、ステップS52において、実転舵角δの変化量から左右前輪FW1,FW2が切り戻されているのか否かについて判断する。実転舵角δの変化量は、今回のステップS51にて検出した実転舵角δをδnとし、直前回(1制御周期前)に検出した実転舵角δをδn-1とすると、(|δn|−|δn-1|)として表すことができる。左右前輪FW1,FW2が中立位置側に切り戻されている場合には、実転舵角δの大きさ(絶対値)が減少するため、実転舵角δの変化量は負の値をとる。従って、ステップS52においては、実転舵角変化量(|δn|−|δn-1|)が設定値−Δδよりも小さいか否かを判断する。この設定値−Δδは予め設定した負の値である。実転舵角変化量(|δn|−|δn-1|)が設定値−Δδよりも小さければ左右前輪FW1,FW2が切り戻されていると判断する。尚、切り戻しフラグ設定ルーチンの起動直後においては、δn-1は検出できないので、δn-1=δnとして処理される。
切り戻しフラグ設定ルーチンの起動当初においては、まだ左右前輪FW1,FW2は切り戻されていない。従って、ステップS52判断は「No」となる。充放電制御部35bは、この判断に基づいて、その処理をステップS56に進め、切り戻しフラグFδが「1」であるか否かを判断する。この切り戻しフラグFδは、後述する処理からわかるように、左右前輪FW1,FW2が切り戻されている状況か否かを表すデータであり、切り戻されている状況をFδ=1で表し、切り戻されていない状況をFδ=0で表す。また、切り戻しフラグ設定ルーチンの起動時においては、Fδ=0に設定されている。従って、この場合、ステップS56の判断は「No」となる。充放電制御部35bは、この判断に基づいて、その処理をステップS55に進め、実転舵角δnを直前回の実転舵角δn-1としてRAMに記憶して、切り戻しフラグ設定ルーチンを一旦終了する。
切り戻しフラグ設定ルーチンは、所定の短い周期で繰り返される。従って、ステップS55において記憶したδn-1が、次の制御周期におけるステップS52における計算に使用される。左右前輪FW1,FW2が切り戻されないあいだは上述した処理が繰り返される。そして、左右前輪FW1,FW2が切り戻されて、実転舵角変化量(|δn|−|δn-1|)が設定値−Δδより小さくなると(S52:Yes)、充放電制御部35bは、その処理をステップS53に進め、切り戻しフラグFδが「0」であるか否かについて判断する。切り戻しフラグFδは、この時点では「0」に設定されているため、ステップS53の判断は「Yes」となる。この場合、充放電制御部35bは、ステップS54において、切り戻しフラグFδを「1」に設定して、ステップS55の処理を経て、切り戻しフラグ設定ルーチンを一旦終了する。
切り戻しフラグ設定ルーチンは、所定の短い周期で繰り返されるが、実転舵角変化量(|δn|−|δn-1|)が設定値−Δδより小さいあいだは(S52:Yes)、ステップS53において、切り戻しフラグFδの状態が確認される。この場合、切り戻しフラグFδは、既に「1」に設定されているため、充放電制御部35bは、フラグ設定を行うことなく、ステップS55の処理を経て、切り戻しフラグ設定ルーチンを一旦終了する。
こうした処理が繰り返され、左右前輪FW1,FW2の切り戻し度合いが減少して、実転舵角変化量(|δn|−|δn-1|)が設定値−Δδ以上となるまで増加すると、ステップS52の判断は「No」となる。この場合、充放電制御部35bは、ステップS56において、切り戻しフラグFδが「1」であるか否かについて判断する。切り戻しフラグFδは「1」に設定されているため、ステップS56の判断は「Yes」となり、その処理がステップS57に進められる。充放電制御部35bは、ステップS57において、実転舵角変化量(|δn|−|δn-1|)が設定値0(ゼロ)を上回ったか否かについて判断する。このステップS57は、左右前輪FW1,FW2の切り戻しの終了を判断する処理である。従って、実転舵角変化量(|δn|−|δn-1|と比較する設定値は、−Δδより大きな値であれば任意の値を設定することができる。また、設定値−Δδ〜0の間が、切り戻し判定処理の不感帯となっている。
充放電制御部35bは、実転舵角変化量(|δn|−|δn-1|)が0を上回っていなければ(S57:No)、ステップS55の処理を経て、切り戻しフラグ設定ルーチンを一旦終了する。従って、切り戻しフラグFδは、そのまま「1」に維持される。そして、実転舵角変化量(|δn|−|δn-1|が更に増加して0を上回ると(S57:Yes)、充放電制御部35bは、ステップS58において切り戻しフラグFδを「0」に設定しステップS55の処理を経て、切り戻しフラグ設定ルーチンを一旦終了する。
充放電制御部35bは、このように設定した切り戻しフラグFδと、第1実施形態で説明した操舵速度フラグFωとに基づいて、図12に示すスイッチ切替制御ルーチンを実行することにより、切替スイッチ60を切り替えてキャパシタ70の充放電を制御する。
このスイッチ切替制御ルーチンにおいて、充放電制御部35bは、ステップS61で、切り戻しフラグFδが「1」であるか否か、つまり、左右前輪FW1,FW2が切り戻されている状況か否かについて判断する。この判断は、上述した切り戻しフラグ設定ルーチンで設定されている切り戻しフラグFδを読み込んで行われる。充放電制御部35bは、切り戻しフラグFδが「1」であれば(S61:Yes)、ステップS62において、切替スイッチ60の共通ポートOと選択ポートAとを接続する状態にして充電可能モードに設定する。
一方、切り戻しフラグFδが「0」であれば(S61:No)、ステップS63において、操舵速度フラグFωが「1」であるか否かを判断する。この判断は、上述した操舵速度フラグ設定ルーチンで設定されている操舵速度フラグFωを読み込んで行われる。充放電制御部35bは、操舵速度フラグFωが「0」であれば(S63:No)、上述したステップS62より切替スイッチ60の共通ポートOと選択ポートAとを接続する状態にして充電可能モードに設定し、操舵速度フラグFωが「1」であれば(S63:Yes)、ステップS64において、切替スイッチ60の共通ポートOと選択ポートBとを接続する状態にして放電可能モードに設定する。
スイッチ切替制御ルーチンは、所定の短い周期で繰り返される。従って、左右前輪FW1,FW2が切り戻されている状況であれば、優先して充電モードが設定される。左右前輪FW1,FW2が切り戻されているときには、セルフアライニングトルクにより転舵用モータ24から発電電力が得られる場合が多い。このため、転舵用モータ24の発電電力をキャパシタ70に回生して充電することができる。
また、左右前輪FW1,FW2が切り戻されていない状況であれば、操舵操作の速さに応じて切替スイッチ60を切り替える。速い操舵操作が行われないあいだは、充電可能モードが設定されて、キャパシタ70が昇圧回路50の出力により充電される。そして、速い操舵操作(切り込み操作)が行われると放電可能モードに切り替わり、キャパシタ70が補助電源として操舵反力用モータ駆動回路37に接続される。従って、キャパシタ70からの放電により操舵反力用モータ13に大電流を流すことができ、操舵ハンドル11に大きな反力トルクを付与することができる。尚、切り戻し操作時においては放電可能モードに設定されないが、切り戻し操作時における目標操舵反力は切り込み操作時に比べて小さくてすむため問題ない。
この結果、第2実施形態の操舵装置によれば、第1実施形態に効果に加えて、キャパシタ70の充電を一層効果的に行うことができ、キャパシタ70の大容量化を図る必要がなく、低コストにて実施することができる。尚、切り戻しフラグ設定ルーチンを実行する充放電制御部35bの機能部が本発明の切り戻し検出手段に相当し、スイッチ切替制御ルーチンを実行する充放電制御部35bの機能部が本発明の充放電切替回路制御手段に相当する。
尚、第2実施形態においては、切り戻し検出手段として、転舵角δの変化により左右前輪FW1,FW2が切り戻される状態を検出したが、転舵角δと操舵角θとは上述した転舵制御ルーチンの実行により一対一の関係にあるため、転舵角δに代えて操舵角θを使って操舵ハンドル11の切り戻し状態を検出するようにしてもよい。この場合、切り戻しフラグ設定ルーチンは、図16に示すようになる。
ここで、ステップS52’は、実操舵角変化量|θn|−|θn-1|が設定値−Δθ(負の値)より小さいか否かに基づいて切り戻し操作されているか否かを判断する処理であり、ステップS57’は、実操舵角変化量|θn|−|θn-1|が設定値0を上回るまで上昇したか否か基づいて切り戻し操作が終了したか否かを判断する処理である。
次に、第3実施形態に係る車両の操舵装置について説明する。この第3実施形態は、車速が設定車速未満になっているときに、セルフアライニングトルクにより転舵用モータ24で発生した電力を車載バッテリ100に回生できるようにしたものである。第3実施形態の車両の操舵装置は、図13に示すように、転舵用電源供給ライン112の途中に切替スイッチ62を備えている。以下、第1,第2実施形態で用いた切替スイッチ60を第1切替スイッチ60と呼び、切替スイッチ62を第2切替スイッチ62と呼ぶ。
第2切替スイッチ62は、共通ポートO、選択ポートC、選択ポートDを備える。共通ポートOは転舵用電源供給ライン112の車載バッテリ100側に接続され、選択ポートCは転舵用電源供給ライン112の昇圧回路50側に接続される。充電ライン115には、ダイオード117のアノード側において車載バッテリ回生ライン120が分岐して設けられる。車載バッテリ回生ライン120の終端は、第2切替スイッチ62の選択ポートDに接続される。
第2切替スイッチ62は、共通ポートOと選択ポートCとが接続されている状態と、共通ポートOと選択ポートDとが接続されている状態とに切り替え可能に構成され、操舵反力用ECU35の充放電制御部35bからの信号により切替制御される。共通ポートOと選択ポートCとが接続されている状態においては、車載バッテリ100から昇圧回路50を介して転舵用モータ駆動回路38に電源供給される。つまり、第1,第2実施形態と同様の回路構成となる。
一方、第2切替スイッチ62が切り替えられて、共通ポートOと選択ポートDとが接続されている状態では、車載バッテリ100と転舵用モータ駆動回路38とが昇圧回路50を介さずに直接接続される。この状態では、車載バッテリ100から転舵用モータ駆動回路38への電源供給が可能であり、かつ、逆入力により転舵用モータ24が発電した場合には、その発電電力を車載バッテリ100に回生できる。
尚、昇圧回路50は、逆方向に電流を流すことができないため、転舵用モータ24が発電状態となった場合でも、その電力を昇圧回路50を経由して車載バッテリ100に回生することはできない。従って、以下、第2切替スイッチ62により共通ポートOと選択ポートCとが接続されている状態を回生不能モードと呼び、共通ポートOと選択ポートDとが接続されている状態を回生可能モードと呼ぶ。この第2切替スイッチ62および車載バッテリ回生ライン120が本発明の回生切替回路に相当する。
第3実施形態の操舵装置は、図1に破線にて示すように、車速センサ39を備える。車速センサ39は、車速Vを表す検出信号を操舵反力用ECU35に出力する。操舵反力用ECU35の充放電制御部35bは、図9に示す操舵速度フラグ設定ルーチンと、図11に示す切り戻しフラグ設定ルーチンと、図14に示す車速フラグ設定ルーチンと、図15に示すスイッチ切替制御ルーチンとを並行して実行することにより、キャパシタ70の充放電制御と車載バッテリ100の回生制御とを行う。尚、他の構成については、第1,第2実施形態と同様であるため、以下、相違する構成について説明する。
操舵速度フラグ設定ルーチンおよび切り戻しフラグ設定ルーチンについては、第2実施形態と同一であるため説明を省略し、図14に示す車速フラグ設定ルーチンから説明する。車速フラグ設定ルーチンも、他のルーチンと同様に、イグニッションスイッチ(図示しない)の投入により開始され、タイマ割り込み処理により所定の短い周期で繰り返される。
車速フラグ設定ルーチンが起動すると、充放電制御部35bは、まず、ステップS71において、車速センサ39の検出信号を読み込んで車速Vを検出する。続いて、充放電制御部35bは、ステップS72において、車速Vが設定車速V1より大きい否かを判断する。車速フラグ設定ルーチンの起動当初においては、まだ車速が設定車速V1以下となっている。従って、ステップS72の判断は「No」となる。充放電制御部35bは、この判断に基づいて、その処理をステップS75に進め、車速フラグFvが「1」であるか否かを判断する。この車速フラグFvは、後述する処理からわかるように、車両が設定車速V1を上回る速度で走行している状況か否かを表すデータであり、設定車速V1を上回る速度で走行している状況をFv=1で表し、停車中あるいは設定車速V1以下で走行している状況をFv=0で表す。この車速フラグFvは、車速フラグ設定ルーチンの起動時においては、Fv=0に設定されている。従って、この場合、ステップS75の判断は「No」となり、車速フラグ設定ルーチンを一旦終了する。
車速フラグ設定ルーチンは、所定の短い周期で繰り返される。従って、車速Vが設定車速V1を上回らないあいだは、上述した処理が繰り返される。そして、車速Vが設定車速V1を越えると(S72:Yes)、充放電制御部35bは、その処理をステップS73に進め、車速フラグFvが「0」であるか否かについて判断する。車速フラグFvは、この時点では「0」に設定されているため、ステップS73の判断は「Yes」となる。この場合、充放電制御部35bは、ステップS74において、車速フラグFvを「1」に設定して、車速フラグ設定ルーチンを一旦終了する。
車速フラグ設定ルーチンは、所定の短い周期で繰り返されるが、車速Vが設定車速V1を越えているあいだは(S72:Yes)、ステップS73において、車速フラグFvの状態が確認される。この場合、車速フラグFvは、既に「1」に設定されているため、充放電制御部35bは、フラグ設定を行うことなく、そのまま車速設定フラグ設定ルーチンを一旦終了する。
こうした処理が繰り返され、車速Vが設定車速V1以下にまで低下すると、ステップS72の判断は「No」となる。この場合、充放電制御部35bは、ステップS75において、車速フラグFvが「1」であるか否かについて判断する。車速フラグFvは「1」に設定されているため、ステップS75の判断は「Yes」となり、その処理がステップS76に進められる。充放電制御部35bは、ステップS76において、車速Vが設定車速V2を下回ったか否かについて判断する。この設定車速V2は、設定車速V1よりも小さな値に設定され、車速を判定する不感帯(V2〜V1)を設けたものである。
充放電制御部35bは、車速Vが設定車速V2を下回っていなければ(S76:No)、そのまま車速フラグ設定ルーチンを終了する。従って、車速フラグFvは、そのまま「1」に維持される。そして、車速Vが更に低下して設定車速V2を下回ると(S76:Yes)、充放電制御部35bは、ステップS77において車速フラグFvを「1」に設定して操舵速度フラグ設定ルーチンを終了する。
充放電制御部35bは、このように設定した車速フラグFv、および、上述した操舵速度フラグFω、切り戻しフラグFδに基づいて、図15に示すスイッチ切替制御ルーチンを実行することにより、第1切替スイッチ60と第2切替スイッチ62とを切り替えて、キャパシタ70の充放電と車載バッテリ100への回生とを制御する。
このスイッチ切替制御ルーチンにおいて、充放電制御部35bは、ステップS81で、車速フラグFvが「1」であるか否かについて判断する。この判断は、上述した車速フラグ設定ルーチンで設定されている車速フラグFvを読み込んで行われる。充放電制御部35bは、車速フラグFvが「0」であれば(S81:No)、ステップS82において、切り戻しフラグFδが「1」であるか否かについて判断する。この判断は、上述した切り戻しフラグ設定ルーチンで設定されている切り戻しフラグFδを読み込んで行われる。
充放電制御部35bは、切り戻しフラグFδが「1」であれば(S82:Yes)、ステップS83において、第1切替スイッチ60の共通ポートOと選択ポートAとを接続する状態にして充電可能モードに設定し、第2切替スイッチ62の共通ポートOと選択ポートDとを接続して回生可能モードに設定する。一方、切り戻しフラグFδが「0」であれば(S82:No)、ステップS84において、第1切替スイッチ60の共通ポートOと選択ポートAとを接続する状態にして充電可能モードに設定し、第2切替スイッチ62の共通ポートOと選択ポートCとを接続して回生不能モードに設定する。
また、車速フラグFvが「1」である場合には(S81:Yes)、充放電制御部35bは、ステップS85において、切り戻しフラグFδが「1」であるか否かについて判断する。充放電制御部35bは、切り戻しフラグFδが「1」であれば(S85:Yes)、ステップS84において、第1切替スイッチ60の共通ポートOと選択ポートAとを接続する状態にして充電可能モードに設定し、第2切替スイッチ62の共通ポートOと選択ポートCとを接続して回生不能モードに設定する。
一方、切り戻しフラグFδが「0」であれば(S85:No)、充放電制御部35bは、ステップS86において、操舵速度フラグFωが「1」であるか否かについて判断する。充放電制御部35bは、操舵速度フラグFωが「0」であれば(S86:No)、ステップS84において、第1切替スイッチ60の共通ポートOと選択ポートAとを接続する状態にして充電可能モードに設定し、第2切替スイッチ62の共通ポートOと選択ポートCとを接続して回生不能モードに設定する。また、操舵速度フラグFωが「1」であれば(S86:Yes)、ステップS87において、第1切替スイッチ60の共通ポートOと選択ポートBとを接続する状態にして放電可能モードに設定し、第2切替スイッチ62の共通ポートOと選択ポートCとを接続して回生不能モードに設定する。
スイッチ切替制御ルーチンは、所定の短い周期で繰り返される。これにより、車速Vが設定車速(V1又はV2)よりも速いときには(S81:Yes)、常に、第2切替スイッチ62により回生不能モードが設定される。従って、昇圧回路50から転舵用モータ駆動回路36に電源供給するため、転舵用モータ24の駆動に必要な電力を確実に供給することができる。また、車速Vが設定車速(V1またはV2)よりも低下しているときには(S81:No)、左右前輪FW1,FW2が切り戻されている場合にのみ(S82:Yes)回生可能モードに設定される。従って、セルフアライニングトルクにより転舵用モータ24にて発生した電力を車載バッテリ100に回生することができるようになる。これにより、車載バッテリ100の消耗を抑制することができる。また、左右前輪FW1,FW2の切り戻し時においては、仮に回生状態とならなくても、転舵用モータ24の駆動に必要な電力が少なくてすむため、昇圧回路50を介さなくても車載バッテリ100から十分な電力を供給することができる。
また、左右前輪FW1,FW2が切り戻されている状態であれば、第1切替スイッチ60により充電可能モードに設定され、左右前輪FW1,FW2が切り戻されてない状態であって、かつ、速い操舵操作(切り込み操作)が行われているときにのみ(S86:Yes)放電可能モードに設定される。従って、操舵反力用モータ13に大電流を流す必要が生じていないときには、キャパシタ70を昇圧回路50の出力にて充電し、操舵反力用モータ13に大電流を流す必要が生じる速い切り込み操作が行われたときには、キャパシタ70から操舵反力用モータ駆動回路37に電源供給できるため、操舵ハンドル11に大きな反力トルクを付与することができる。
この結果、第3実施形態の操舵装置によれば、第2実施形態に効果に加えて、車載バッテリ100の消耗を抑制することができる。しかも、車速が設定車速を下回っているときに回生可能モードに設定するため安全性が高い。
尚、第3実施形態における車速センサ39および車速フラグ設定ルーチンを実行する充放電制御部35bの機能部が本発明の車速検出手段に相当し、スイッチ切替制御ルーチンを実行する充放電制御部35bの機能部が本発明の回生切替回路制御手段に相当する。
また、この第3実施形態の変形例として、ステップS82の処理を省略して、車速フラグFvが「0」である場合には(S81:No)、常に、ステップS83の処理を行うようにしてもよい。これによれば、車速が設定車速を下回ったときには、切り戻しの有無に関係なく第2切替スイッチ62により回生不能モードから回生可能モードに切り替えられる。
以上、本実施形態の車両の操舵装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態においては、設定操舵速度、切り戻しの判定用設定値、設定車速において不感帯を設けているが、必ずしも不感帯を設ける必要はない。また、本実施形態においては、切替スイッチ60,62を制御する充放電制御部35bを操舵反力用ECU35内に設けたが、転舵用ECU36内に設けてよいし、また、これらのECU35,36とは別に単独して設けても良い。
本発明の実施形態に係る車両の操舵装置の全体システム構成図である。 第1〜第2実施形態に係る電源供給系統図である。 実施形態に係る転舵角制御ルーチンを表すフローチャートである。 実施形態に係る目標転舵角テーブルを表すグラフである。 実施形態に係る操舵反力用ECUによって実行される操舵反力制御ルーチンを表すフローチャートである。 実施形態に係るバネ反力トルクテーブルを表すグラフである。 実施形態に係る摩擦反力トルクテーブルを表すグラフである。 実施形態に係る粘性反力トルクテーブルを表すグラフである。 第1〜第3実施形態に係る操舵速度フラグ設定ルーチンを表すフローチャートである。 第1実施形態に係るスイッチ切替制御ルーチンを表すフローチャートである。 第2〜第3実施形態に係る切り戻しフラグ設定ルーチンを表すフローチャートである。 第2実施形態に係るスイッチ切替制御ルーチンを表すフローチャートである。 第3実施形態に係る電源供給系統図である。 第3実施形態に係る車速フラグ設定ルーチンを表すフローチャートである。 第3実施形態に係るスイッチ切替制御ルーチンを表すフローチャートである。 変形例に係る切り戻しフラグ設定ルーチンを表すフローチャートである。
符号の説明
10…操舵操作装置、11…操舵ハンドル、12…操舵入力軸、13…操舵反力用モータ、20…転舵装置、21…転舵軸、24…転舵用モータ、30…電気制御装置、31…操舵角センサ、32…転舵角センサ、33、34…電流センサ、35…操舵反力用ECU、36…転舵用ECU、37…操舵反力用モータ駆動回路、38…転舵用モータ駆動回路、50…昇圧回路、60…切替スイッチ(第1切替スイッチ)、62…第2切替スイッチ、70…キャパシタ、100…車載バッテリ、115…充電ライン、116…放電ライン、120…車載バッテリ回生ライン。

Claims (6)

  1. 転舵輪を転舵するための転舵用モータと、
    車載電源から電源供給されて前記転舵用モータを駆動する転舵用モータ駆動回路と、
    操舵ハンドルの操舵操作に応じて前記転舵用モータ駆動回路を制御して前記転舵用モータへの通電を制御する転舵制御手段と、
    操舵ハンドルの操舵操作に対して操舵反力トルクを付与するための操舵反力用モータと、
    前記車載電源から電源供給されて前記操舵反力用モータを駆動する操舵反力用モータ駆動回路と、
    前記操舵ハンドルの操舵操作に応じて前記操舵反力用モータ駆動回路を制御して前記操舵反力用モータへの通電を制御する操舵反力制御手段と
    を備えたステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、
    前記車載電源から前記転舵用モータ駆動回路への電源供給路に設けられ、前記車載電源の出力電圧を昇圧して前記転舵用モータ駆動回路に電源供給する昇圧回路と、
    前記昇圧回路から前記転舵用モータ駆動回路への電源供給路に並列に接続され、前記昇圧回路の出力により充電されるキャパシタと、
    前記キャパシタが前記昇圧回路に接続されて充電可能となる充電可能モードと、前記キャパシタが前記操舵反力用モータ駆動回路に接続されて前記操舵反力用モータ駆動回路に放電可能となる放電可能モードとを切り替える充放電切替回路と
    を備えたことを特徴とする車両の操舵装置。
  2. 前記操舵ハンドルの操舵速度を検出する操舵速度検出手段と、
    前記操舵速度検出手段により検出された操舵速度が設定速度を越えたときに、前記充放切替回路を制御して前記充電可能モードから前記放電可能モードに切り替える充放電切替回路制御手段と
    を備えたことを特徴とする請求項1記載の車両の操舵装置。
  3. 前記操舵ハンドルの切り戻し、あるいは、前記転舵輪の切り戻しを検出する切り戻し検出手段を備え、
    前記充放電切替回路制御手段は、
    前記切り戻し検出手段により、前記操舵ハンドルの切り戻し、あるいは、前記転舵輪の切り戻しが検出されているときには、前記操舵速度検出手段により検出された操舵速度にかかわらず、前記充電可能モードに維持することを特徴とする請求項2記載の車両の操舵装置。
  4. 前記転舵用モータで発生した電力を前記車載電源に回生可能な回生可能モードと、回生不能な回生不能モードとに切り替える回生切替回路と、
    車速を検出する車速検出手段と、
    前記車速検出手段により検出された車速が設定車速未満となったときに、前記回生切替回路を制御して前記回生不能モードから前記回生可能モードに切り替える回生切替回路制御手段と
    を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか一項記載の車両の操舵装置。
  5. 前記操舵ハンドルの切り戻し、あるいは、前記転舵輪の切り戻しを検出する切り戻し検出手段を備え、
    回生切替回路制御手段は、
    前記車速検出手段により検出された車速が前記設定車速未満であって、かつ、前記切り戻し検出手段により、前記操舵ハンドルの切り戻し、あるいは、前記転舵輪の切り戻しが検出された場合に、前記回生切替回路を制御して前記回生不能モードから前記回生可能モードに切り替えることを特徴とする請求項4記載の車両の操舵装置。
  6. 前記回生切替回路は、
    前記転舵用モータ駆動回路の電源入力部に接続される回生路を備え、
    前記回生可能モードにおいては前記車載電源と前記昇圧回路との接続を遮断するとともに前記車載電源と前記回生路とを接続し、
    前記回生不能モードにおいては前記車載電源と前記回生路との接続を遮断するとともに前記車載電源と前記昇圧回路とを接続することを特徴とする請求項4または5記載の車両の操舵装置。
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