JP2010105315A - ガスバリア性シート、ガスバリア性シートの製造方法 - Google Patents

ガスバリア性シート、ガスバリア性シートの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】吸湿性に優れる吸湿層を有するガスバリア性シート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基材2と、基材2の上に設けられた吸湿層3と、を有するガスバリア性シート1Aであって、吸湿層3がアルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物を含有し、ガスバリア性シート1Aの表面の最大高低差(Rmax)を1000nm以下とすることにより上記課題を解決する。吸湿層3は、室温(25℃)よりも低い温度で形成する吸湿層形成工程によって形成される。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガスバリア性シート及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、吸湿性に優れひいてはガスバリア性に優れるガスバリア性シート及びその製造方法に関する。
基材フィルム上に無機物や有機物の薄膜を形成して高いガスバリア性を発現させるガスバリア性シートの研究・開発は従来から行われている。ガスバリア性シートは、様々な用途に用いられるが、こうした用途の1つとして、有機EL(Organic Electro−Luminescence)素子等のディスプレイの封止フィルムが挙げられる。
有機EL素子等のディスプレイの封止フィルムにガスバリア性シートを用いる場合、フレキシブルディスプレイや電子デバイスの実現のため、水蒸気に対して高いガスバリア性能が求められる。また、高いガスバリア性能を実現しても、封止材料や基材からの脱ガス(主に水蒸気)もあり、このガスを吸収する機能を有するガスバリア性シートの開発も求められている。
特許文献1には、ポリアルキレンナフタレート樹脂基材フィルム上に少なくとも一層の無機ガスバリア層を有する水蒸気バリアフィルムにおいて、ポリアルキレンナフタレート樹脂のガラス転移点(Tg)を所定の範囲とし、所定の抵抗を有する導電性層を少なくとも一層有する水蒸気バリアフィルムが記載されている。そして、上記水蒸気バリアフィルムが少なくとも二層の無機ガスバリア層を有し、かつ無機ガスバリア層の間に少なくとも一層の2属金属一酸化物からなる吸湿性層を有する旨が記載されている。
特許文献1によれば、無機ガスバリア層に含まれる成分は、特にSi、Al、Sn、Tiから選ばれる金属酸化物が好ましい、とのことである。また、吸湿性層は、2属金属一酸化物から構成される層を挙げることができ、コスト、高純度材料の入手性、実用性を考慮すると、Mg、Ca、Sr、Baが好適であり、吸湿能や安全性の観点からはCa、Srが好ましく、Srが最も好ましい、とのことである。
特許文献2には、基板と、この基板の一面に形成されたものであって、相互対向した1対の電極と、この1対の電極間に介在し、これら電極から供給された電子及び正孔により発光する有機発光層を少なくとも含む有機層と、を備えた有機電界発光部と、所定の透明な基板からなる密封部材と、上記基板と密封部材間との空間の水分を吸収する所定の多孔性物質層と、を含み、密封部材に向かった電極は透明な導電材からなり、多孔性物質層は有機発光層から放射された光が上記空間でモアレ現象を起こさないように、有機電界発光部から所定距離離隔されてなる有機ELディスプレイが記載されている。
特許文献2によれば、上記の多孔性物質層は透明な物質よりなり、この物質は密封部材の内部空間の水分を吸収する、とのことである。そして、水分を吸収した後にも透明性を維持できるように、多孔性物質層は、複数の吸湿孔を有する多孔性酸化物で形成されてもよい、とのことである。さらに、多孔性物質層を形成する多孔性酸化物の形成材料としては、(i)多孔性シリカ、(ii)水和非晶質アルミナ、(iii)水和非晶質アルミナと多孔性シリカとからなる2成分混合物、(iv)水和非晶質アルミナと、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫酸塩及び金属過塩素酸塩からなる群より選択される1種以上と、の2成分以上の混合物、(v)水和非晶質アルミナと、多孔性シリカと、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫酸塩及び金属過塩素酸塩からなる群より選択される1種以上と、の3成分以上の多成分混合物が例示できる、とのことである。
特開2006−239883号公報(請求項1,7、第0017段落、第0021段落、第0023段落、第0027段落、第0113段落、第0114段落、及び第0131段落) 特許第4001590号公報(請求項1、第0049段落、第0051段落、及び第0058段落)
特許文献1においては、吸湿性層の成膜法については、スパッタリング法が最も望ましいとされ、実施例でもスパッタリング法が用いられている。特許文献2では、多孔性物質層の製造方法として、所定の混合物をコーティングした後、常温で24時間程度又は40〜50℃で5時間程度熟成させ、その後、吸湿孔を形成するために400℃程度のオーブンで約2時間焼成することによって高分子を加熱する、とのことである。
しかしながら、本発明者の検討によれば、上記方法では、必ずしも吸湿性に優れた吸湿層が得られないことが判明した。すなわち、本発明者の検討によれば、真空成膜法をそのまま適用することや、吸湿層形成の際に高温で処理することにより、吸湿層の層構造(例えば密度)が良好とならない結果、膜応力が大きくなり、吸湿層が割れること等により吸湿層ひいてはガスバリア性シートの表面粗さが非常に大きくなることが判明した。そして、こうした層構造を有する吸湿層では、良好な吸湿特性ひいてはガスバリア特性を有するガスバリア性シートが得られないことがわかった。このように、吸湿層の従来の製造方法では、層構造が良好で吸湿特性の良好な吸湿層を得られないという課題があることが判明した。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、吸湿性に優れる吸湿層を有するガスバリア性シート及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、吸湿層の形成方法について鋭意検討した結果、吸湿層の成膜の際に低温の状態を保つこと、より具体的には室温(25℃)よりも低い温度に保つことで、吸湿層がもろくなりにくく、良好な層構造を有し、平坦性の高い吸湿層となることを見出した。そして、これにより、吸湿特性ひいてはガスバリア性に優れるガスバリア性シートが得られることを見出し、本発明を完成させた。
上記課題を解決するための本発明のガスバリア性シートは、基材と、該基材の上に設けられた吸湿層と、を有するガスバリア性シートであって、前記吸湿層がアルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物を含有し、前記ガスバリア性シートの表面の最大高低差(Rmax)が1000nm以下であることを特徴とする。
この発明によれば、吸湿層がアルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物を含有し、ガスバリア性シートの表面の最大高低差(Rmax)が1000nm以下であるので、良好な層構造を有する吸湿層となり、その結果、吸湿性に優れる吸湿層を有するガスバリア性シートを提供することができる。
本発明のガスバリア性シートの好ましい態様においては、前記アルカリ土類金属酸化物が、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、及び酸化バリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つである。
この発明によれば、アルカリ土類金属酸化物が、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、及び酸化バリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つであるので、吸湿特性の良好な材料を吸湿層に用いることとなり、その結果、吸湿性をより良好としやすくなる。
本発明のガスバリア性シートの好ましい他の態様においては、前記ガスバリア性シートの表面の算術平均粗さ(Ra)が1nm以上であり、最大高低差(Rmax)が30nm以上である。
この発明によれば、ガスバリア性シートの表面の算術平均粗さ(Ra)が1nm以上であり、最大高低差(Rmax)が30nm以上であるので、適度な表面粗さを有する吸湿層を得ることができ、その結果、吸湿特性をより良好としやすくなる。
本発明のガスバリア性シートの好ましい他の態様においては、前記ガスバリア性シートの全光線透過率が80%以上、黄色度(YI)が5以下である。
この発明によれば、ガスバリア性シートの全光線透過率が80%以上、黄色度(YI)が5以下であるので、透明性の良好なガスバリア性シートとなり、その結果、本発明のガスバリア性シートを有機EL素子等のディスプレイの用途に良好に適用しやすくなる。
本発明のガスバリア性シートの好ましい他の態様においては、前記基材と前記吸湿層との間にガスバリア層を設ける。
この発明によれば、基材と吸湿層との間にガスバリア層を設けるので、ガスバリア性シートにガスバリア性(例えば、水分や酸素の遮断性)をさらに付与することができ、その結果、吸湿性及びガスバリア性に優れるガスバリア性シートがより得やすくなる。
上記課題を解決するための本発明のガスバリア性シートの製造方法は、本発明のガスバリア性シートの製造方法であって、前記吸湿層を室温(25℃)よりも低い温度で形成する吸湿層形成工程を有することを特徴とする。
この発明によれば、吸湿層を室温(25℃)よりも低い温度で形成する吸湿層形成工程を有するので、良好な層構造を有する吸湿層を得ることができ、その結果、吸湿性に優れる吸湿層を有するガスバリア性シートの製造方法を提供することができる。
本発明のガスバリア性シートの製造方法の好ましい態様においては、前記吸湿層を0℃以下の温度で形成する。
この発明によれば、吸湿層を0℃以下の温度で形成するので、吸湿層の層構造をより良好としやすくなり、その結果、吸湿特性がより良好な吸湿層を得やすくなる。
本発明のガスバリア性シートの製造方法の好ましい他の態様においては、前記吸湿層を真空成膜法で形成する。
この発明によれば、吸湿層を真空成膜法で形成するので、高温の粒子が被成膜面に堆積して吸湿層の層構造をもろくしやすい傾向となるので、被成膜面等を冷却して室温(25℃)よりも低い温度で形成することにより吸湿層の層構造を制御する意義が大きくなり、その結果、良好な層構造を有する吸湿層を得やすくなる。
本発明のガスバリア性シートの製造方法の好ましい他の態様においては、前記真空成膜法がイオンプレーティング法又は電子ビーム蒸着法である。
この発明によれば、真空成膜法がイオンプレーティング法又は電子ビーム蒸着法であるので、高エネルギーの粒子が被成膜面に堆積して吸湿層の層構造をよりもろくしやすい傾向となるので、被成膜面等を冷却して室温(25℃)よりも低い温度で形成することにより吸湿層の層構造を制御する意義がより大きくなり、その結果、良好な層構造を有する吸湿層を得やすくなる。
本発明のガスバリア性シートの製造方法の好ましい他の態様においては、前記吸湿層形成工程の後、前記吸湿層の表面を処理する吸湿層表面処理工程を有する。
この発明によれば、吸湿層形成工程の後、吸湿層の表面を処理する吸湿層表面処理工程を有するので、吸湿層の表面粗さを大きくして表面積を大きくすることができるようになり、その結果、吸湿特性がより向上しやすくなる。
本発明のガスバリア性シートの製造方法の好ましい他の態様においては、前記吸湿層表面処理工程における前記吸湿層の表面の処理が、酸素プラズマ法、大気圧プラズマ法、ドライエッチング法、及びグロー放電法のいずれかによって行われる。
この発明によれば、吸湿層表面処理工程における吸湿層の表面の処理が、酸素プラズマ法、大気圧プラズマ法、ドライエッチング法、及びグロー放電法のいずれかによって行われるので、吸湿層の成膜及び表面処理を真空中で一環して行うことができるようになり、その結果、ガスバリア性シートの生産性をより向上させやすくなる。
本発明によれば、吸湿性に優れる吸湿層を有するガスバリア性シートを提供することができる。
本発明によれば、吸湿性に優れる吸湿層を有するガスバリア性シートの製造方法を提供することができる。
次に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[ガスバリア性シート]
図1は、本発明のガスバリア性シートの一例を示す模式的な断面図である。ガスバリア性シート1Aは、基材2と、基材2の上に設けられた吸湿層3と、を有し、吸湿層3がアルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物を含有し、ガスバリア性シート1Aの表面の最大高低差(Rmax)が1000nm以下である。これにより、良好な層構造を有する吸湿層3となり、その結果、吸湿性に優れる吸湿層3を有するガスバリア性シート1Aを提供することができる。なお、ガスバリア性シート1Aにおいては、基材2の上に接して吸湿層3が設けられているが、基材2と吸湿層3との間には適宜他の層が設けられていてもよい。
ガスバリア性シート1Aにおいては、吸湿層3にアルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物を用いつつ、ガスバリア性シートの表面の最大高低差(Rmax)を1000nm以下となるように制御する。具体的には、後述するように、吸湿層を成膜する際に室温(25℃)よりも低い温度で形成することで吸湿層の層構造を制御して、上記所定の表面粗さを確保している。成膜の際に室温より低い温度に制御する具体的な方法は、後述する製造方法の説明に譲るとして、低温での成膜によってガスバリア性シート1Aの表面粗さを制御できる点について以下に若干の説明を行う。
吸湿層はアルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物を含有する。こうした吸湿層の成膜のメカニズムについて本発明者が検討したところ、吸湿層は、成膜直後の状態では水分がなるべく含まれないようにすることが好ましいので、水分を飛ばすという観点からは成膜を高温で行うことが好ましい。こうした観点から、従来は、吸湿層の成膜は、スパッタリング法等の真空成膜法や、組成物を塗布・乾燥させた後に、焼成するという手法が採用されていた。しかしながら、本発明者がさらに検討を重ねたところ、高温の成膜により、吸湿層がもろくなる傾向となって、場合によっては吸湿層に割れが発生して吸湿層の表面が粗くなる現象が観察されることがわかった。また、吸湿層の割れが観察されない場合においても、高温での成膜に伴う吸湿層の微視的な割れが原因と思われる、表面粗さの悪化が観察されることがわかった。これらの現象は、吸湿層の膜応力が大きくなるためではないかと推測される。そして、こうした現象が観察される原因については不明ではあるものの、成膜される際の材料の成長方法に原因があるのではないかと推測される。すなわち、吸湿層の材料としてアルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物を用いると、被成膜面(図1では基材2の表面)で、これら材料は島状に成長するという傾向があるようである。島状成長をするのは、被成膜面に対する親和性や材料同士の結合力の強さが影響するからと推測されるが、高温で成膜すると上記材料同士の結合力が強くなって、被成膜面上で成長する島の1つ1つの単独での結合力が強くなる(密度が高くなる傾向となる)ようである。しかしながらその一方で、隣接する島状領域同士の結合力は弱くなる傾向となるようである。したがって、上記隣接する島状領域同士の結合力が弱くなる結果、吸湿層がもろくなる傾向が現れるのではないかと考えられる。
吸湿層3は、上記観点から、成膜直後に水分をなるべく含まないようにすることが好ましい一方で、もろくなることによる表面粗さの悪化を抑制する必要がある。こうした観点から、吸湿層3がもろくなることに伴って発生する割れ又は微視的な割れによるものと推測される表面粗さの悪化を制御する必要がある。このため、吸湿層3ひいてはガスバリア性シート1Aの表面の最大高低差(Rmax)を1000nm以下とするが、好ましくは700nm以下、より好ましくは500nm以下とする。また、同様の観点及び吸湿層3の脆弱性による剥離防止から、ガスバリア性シート1Aの表面の算術平均粗さ(Ra)は、30nm以下とすることが好ましく、20nm以下とすることがより好ましく、15nm以下とすることがさらに好ましい。ガスバリア性シート1A(吸湿層3)の表面粗さについては、後述するように、吸湿層3の表面を表面処理して若干粗くすることが吸湿特性の観点から好ましいが、こうした表面処理をする場合でも、上記表面粗さの範囲内となるように制御する。なお、上述のとおり、本発明では、吸湿層3の層構造を改善してガスバリア性シート1Aの表面粗さを所定の範囲に制御するために吸湿層3の形成を低温で行っている。しかしながら、表面粗さの制御の手段はこれに限られるものではなく、表面粗さ制御につきその他の適当な方法を、吸湿層3を低温で形成するという上記手法に代えて、又は上記手法とともに用いることができる。
吸湿層3の層構造(膜質)と関係する他のパラメータとして、屈折率を挙げることができる。すなわち、上述のとおり、高温で成膜すると、被成膜面上で成長する島の1つ1つの単独での結合力が強くなる(密度が高くなる)傾向が観察されるようである。したがって、高温での成膜を行うと、吸湿層3の密度が高くなって屈折率が大きくなる傾向となる。こうした観点からは、吸湿層3の密度を抑えて屈折率を低くすることが好ましい。具体的には、吸湿層3の屈折率を、1.8以下とすることが好ましく、1.6以下とすることがより好ましく、1.5以下とすることがさらに好ましく、1.45以下とすることが特に好ましく、1.4以下とすることが最も好ましい。一方で、屈折率は、通常1.2以上とするが、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.35以上とする。
吸湿層3における屈折率の測定は、従来公知の方法を用いることができ、例えば、エリプソメーターを用いることができる。本発明においては、屈折率をJOBIN YVON社製のUVISELTMにより測定している。そして、測定は、キセノンランプを光源とし、入射角度を−60°、検出角度を60°、測定範囲を1.5eV〜5.0eVとして行っている。
吸湿層3は、アルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物を含有する。アルカリ金属酸化物としては、特に制限はないが、安定性、吸湿性能等の観点から、酸化ナトリウム、酸化カリウムを用いることが好ましい。また、アルカリ土類金属酸化物は、特に制限はないが、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、及び酸化バリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。これにより、吸湿特性の良好な材料を吸湿層3に用いることとなり、その結果、吸湿性をより良好としやすくなる。吸湿層3はアルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物以外の材料(例えば、添加剤や不純物)を含有していてもよいが、アルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物で形成されることが好ましい。アルカリ土類金属酸化物のうち、吸湿特性をより向上させるという観点から、酸化ストロンチウム又は酸化バリウムを用いることがより好ましく、酸化ストロンチウムを用いることがさらに好ましい。但し、酸化バリウムに用いるBaは劇物なので、取扱いには注意が必要となる。
吸湿層3の厚さは、所定の吸湿性を確保するという観点から、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上とする。また、生産性の確保や層構造の確保等の観点から、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下とする。
吸湿層3ひいてはガスバリア性シート1Aの表面の算術平均粗さ(Ra)が1nm以上であり、最大高低差(Rmax)が30nm以上であることが好ましい。これにより、適度な表面粗さを有する吸湿層を得ることができ、その結果、吸湿特性をより良好としやすくなる。Raは、好ましくは3nm以上、より好ましくは5nm以上、また、Rmaxは、好ましくは40nm以上、より好ましくは50nm以上とする。吸湿層3を低温で成膜することによって層構造を良好にできる結果、吸湿層3ひいてはガスバリア性シート1Aの表面粗さを低くすることができるが、本発明においては、吸湿特性をより向上させるという観点から、吸湿層3を表面処理して表面を若干粗くして上記数値範囲に制御することも好ましい。吸湿層3の表面処理の詳細については後述する。
吸湿層3(ガスバリア性シート1A)の表面のRaやRmaxの測定は、従来公知の方法を適宜用いればよい。本発明においては、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)として、セイコーインスツルメンツ社製のNanopics−1000を用い、JIS B0601に準拠して、10μmの範囲にて、算術平均粗さ(Ra)及び最大突起長(Rmax)を測定している。
吸湿層3の形成方法については、後述する。
ガスバリア性シート1Aに用いる基材2について次に説明する。基材2としては、各種の基材を用いることができ、主にはシート状やフィルム状、巻き取りロール状のものが用いられるが、具体的な用途や目的等に応じて、非フレキシブル基板やフレキシブル基板を用いることができる。例えば、ガラス基板、硬質樹脂基板、ウエハ、プリント基板、様々なカード、樹脂シート等の非フレキシブル基板を用いてもよいし、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、ポリシルセスキオキサン、ポリノルボルネン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、非晶質シクロポリオレフィン、セルローストリアセテート等のフレキシブル基板を用いてもよい。基材2が樹脂製である場合、用いる樹脂としては上記例示した樹脂を適宜混合して用いてもよい。また、基材2が樹脂製である場合、好ましくは100℃以上、特に好ましくは150℃以上の耐熱性を有するものが適当である。
こうした樹脂製の基材2としては、具体的には、非晶質シクロポリオレフィン樹脂フィルム(例えば、日本ゼオン株式会社のゼオネックス(登録商標)やゼオノア(登録商標)、JSR株式会社のARTON等)、ポリカーボネートフィルム(例えば、帝人化成株式会社のピュアエース等)、ポリエチレンテレフタレートフィルム(例えば、帝人化成株式会社製のもの等)、セルローストリアセテートフィルム(例えば、コニカミノルタオプト株式会社のコニカタックKC4UX、KC8UX等)、ポリエチレンナフタレートフィルム(例えば、帝人デュポンフィルム株式会社のテオネックス(登録商標)等)の市販品を挙げることができる。
基材2の厚さは、可撓性及び形態保持性の観点から、通常10μm以上、好ましくは50μm以上、また、通常200μm以下、好ましくは150μm以下とする。
基材2を、透明性が必要とされる有機ELディスプレイ等の発光素子の基板として用いる場合には、基材2は無色透明であることが好ましい。基材2とともに吸湿層3等の他の膜を無色透明とすることにより、ガスバリア性シート1Aを透明とすることが可能となる。より具体的には、例えば400nm〜700nmの範囲内での基材2の平均光透過度が80%以上の透明性を有するように構成することが好ましい。こうした光透過度は基材2の材質と厚さに影響されるので両者を考慮して構成される。
基材2の表面は、平滑であることが好ましい。具体的には、基材2の表面の算術平均粗さ(Ra)は、通常0.3nm以上とする。この範囲とすれば、基材2に適度な表面粗さを付与することができ、基材2を巻き取りロールとした際に互いに接触する基材2同士の接触面に滑りが生じにくくなる。また、基材2の表面の算術平均粗さ(Ra)は、通常100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下とする。この範囲とすれば、基材2の平滑性が向上し、有機ELディスプレイ等の表示素子を作製する際に発生することのある短絡を抑制できる利点が発揮されやすくなる。なお、算術平均粗さ(Ra)は、JIS B 0601−2001(ISO4287−1997準拠)に従って測定すればよい。
基材2は、熱に対して変形しにくいことが好ましい。ガスバリア性シート1Aが有機ELディスプレイに適用される場合には、ヒートサイクル試験のような加熱・冷却のストレスに対してもガスバリア性シート1Aが変形しないことが求められるからである。具体的には、基材2の線膨張係数は、通常5ppm/℃以上、また、通常80ppm/℃以下、好ましくは50ppm/℃以下とする。線膨張係数の測定は、従来公知の方法を用いて行えばよく、例えばTMA法(熱機械分析法)を挙げることができる。TMA法に用いる測定装置としては、例えば、示差膨張方式熱機械分析装置であるリガク 製 CN8098F1を用いることができる。
基材2として樹脂製のものを用いる場合には、その製造方法も従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。また、樹脂製の基材2を用いる場合には、延伸フィルムを用いてもよい。延伸の方法も従来公知の一般的な方法を用いればよい。延伸倍率は、基材2の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍とすることが好ましい。
基材2の表面は、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、加熱処理、薬品処理、UV照射処理、大気圧プラズマ処理、易接着化処理等の表面処理を行ってもよい。こうした表面処理の具体的な方法は従来公知のものを適宜用いることができる。
図2は、本発明のガスバリア性シートの他の一例を示す模式的な断面図である。ガスバリア性シート1Bでは、基材2と、基材2の上に設けられた吸湿層3との間に、ガスバリア層4を有する。すなわち、ガスバリア性シート1Bは、基材2と吸湿層3との間にガスバリア層4を設けるものである。これにより、ガスバリア性シート1Bにガスバリア性(例えば、水分や酸素の遮断性)をさらに付与することができ、その結果、吸湿性及びガスバリア性に優れるガスバリア性シート1Bがより得やすくなる。すなわち、ガスバリア性シート1Bに基材2を通じて侵入しようとする酸素や水分等を1次的にはガスバリア層4でブロックし、それでも侵入してくる水分を2次的に吸湿層3で捕捉すれば、ガスバリア性シート1Bとしてより高いガスバリア性能を確保しやすくなる。なお、ガスバリア性シート1Bにおいては、基材2の上に接してガスバリア層4が設けられているが、基材2とガスバリア層4との間には適宜他の層が設けられていてもよい。また、ガスバリア性シート1Bにおいては、ガスバリア層4の上に接して吸湿層3が設けられているが、ガスバリア層4と吸湿層3との間には適宜他の層が設けられていてもよい。
ガスバリア性シート1Bに用いる、基材2及び吸湿層3は、図1に示すガスバリア性シート1Aと同様のものを用いればよいので、説明の重複を避けるため、ここでの説明は省略する。
ガスバリア層4は、水分や酸素等を遮断する機能たるガスバリア性を有する。ガスバリア層4に用いる材料としては、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化インジウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム、酸化錫、酸化亜鉛等の酸化物;窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化マグネシウム等の窒化物;炭化珪素等の炭化物、硫化物等を挙げることができる。また、それらから選ばれた二種以上の複合体を用いてもよい。こうした複合体としては、例えば、2種以上の酸化物を用いる複合酸化物、2種以上の酸化物及び窒化物を用いる複合金属酸窒化物、酸素と窒素を含有する無機酸化窒化物、さらに炭素を含有してなる無機酸化炭化物、無機窒化炭化物、無機酸化窒化炭化物等を挙げることができる。より具体的には、無機酸化物(MO)、無機窒化物(MN)、無機炭化物(MC)、無機酸化炭化物(MO)、無機窒化炭化物(MN)、無機酸化窒化物(MO)、無機酸化窒化炭化物(MO)で、好ましいMは、Si、Al、Ti等の金属元素である。なかでも、MをSiとし、酸化珪素からなる膜は、透明性が高くかつガスバリア性も良好となり、一方、窒化珪素はさらに高いガスバリア性を発揮するので好ましく用いられる。特に好ましくは、酸化珪素と窒化珪素の複合体(無機酸化窒化物(SiO))である。酸化珪素の含有量が多いと透明性が向上し、窒化珪素の含有量が多いとガスバリア性が向上する。また、炭素を含有させることで層の柔軟性や接着性を確保しやすくなるので、無機酸化炭化物(SiO)を用いることも好ましい。その他、2種以上の酸化物を用いる複合酸化物として、例えば、MaMbO、MaMbMcO等を挙げることができる。さらに、2種以上の酸化物及び窒化物を用いる複合金属酸窒化物として、例えば、MaMbOや、MaMbMcO等を挙げることができる。ここで、Ma、Mb、及びMcは異なる金属元素を表し、それぞれ、例えば、Sn、Zn、Si、Al、Ti等を挙げることができる。また、ガスバリア層4には、上述の材料の他所定の添加剤や不純物が所定量含有されていてもよい。
ガスバリア層4の厚さは、通常10nm以上、好ましくは30nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは150nm以下とする。ガスバリア層4の厚さを上記範囲とすれば、ガスバリア性を確保しやすくなるとともに生産性も確保しやすくなる。
ガスバリア層4の形成方法については後述する。
以上、ガスバリア性シート1の具体例として、ガスバリア性シート1A,1Bについて説明したが、ガスバリア性シート1の層構成はこれら具体例に限られず、積層に関するバリエーションは、本発明の要旨の範囲内において適宜行うことができる。具体的には、基材2、吸湿層3、及びガスバリア層4の他にも、例えば、電極等として機能する透明導電層、キズ等に対して保護機能を有するハードコート層、放熱性を有する放熱層、反射防止層、帯電防止層、及び防汚層等を挙げることができる。これらのうち、反射防止層、帯電防止層、及び防汚層は、粘着剤を介してガスバリア性シート1と貼り合わせるようにしてもよい。
ガスバリア性シート1においては、その全光線透過率が80%以上、黄色度(YI)が5以下であることが好ましい。これにより、透明性の良好なガスバリア性シート1となり、その結果、ガスバリア性シート1を有機EL素子等のディスプレイの用途に良好に適用しやすくなる。より高い透明性の確保という観点からは、全光線透過率が90%以上となることがより好ましく、YIは2以下であることがより好ましい。
ガスバリア性シート1の全光線透過率とYIは、従来公知の方法を適宜用いて測定することができるが、本発明においては、SMカラーコンピューターSM−C(スガ試験機製)を使用して測定している。測定は、JIS K7105に準拠して実施している。
ガスバリア性シート1は、種々のデバイスに用いることができる。こうしたデバイスの例としては、太陽電池、液晶ディスプレイ、OLED(Organic light-emitting diode 有機発光ダイオード)ディスプレイ、及びOLED照明を挙げることができる。
[ガスバリア性シートの製造方法]
本発明のガスバリア性シートの製造方法は、吸湿層を室温(25℃)よりも低い温度で形成する吸湿層形成工程を有する。これにより、良好な層構造を有する吸湿層を得ることができ、その結果、吸湿性に優れる吸湿層を有するガスバリア性シートの製造方法を提供することができる。
本発明のガスバリア性シートの製造方法は、上述のとおり、吸湿層形成工程を有するが、その他の工程は、製造するガスバリア性シートの層構成に応じて適宜選択して用いればよい。具体的には、図1に示す、基材2/吸湿層3の層構成のガスバリア性シート1Aを製造する場合には、基材準備工程→吸湿層形成工程→(必要に応じて吸湿層表面処理工程を行う)を経ることによって製造が行われ、図2に示す、基材2/ガスバリア層4/吸湿層3の層構成のガスバリア性シート1Bを製造する場合には、基材準備工程→ガスバリア層形成工程→吸湿層形成工程→(必要に応じて吸湿層表面処理工程を行う)を経ることによって製造が行われる。このように用いる工程は適宜選択すればよい。そこで、以下では、各工程について説明する。
(基材準備工程)
基材準備工程は、基材を準備する工程である。基材の製造方法については、図1に示す基材2についての詳細な説明において、樹脂製の基材2を用いる場合を例にとって説明したとおりである。そこで説明の重複を避けるためここでの説明は省略する。
(吸湿層形成工程)
吸湿層形成工程は、室温(25℃)よりも低い温度で吸湿層を形成する工程である。低温で吸湿層の形成を行うことにより、良好な層構造となりその結果所定の表面粗さを有する吸湿層(ガスバリア性シート)を得ることができる点については、上述のとおりである。すなわち、低温で成膜することにより、膜応力を抑えて吸湿層が割れるのを抑制しやすくなる。そして、薄膜の島状成長を促進しつつ、成膜速度(生産性)を向上させやすくなるという効果も奏される。
吸湿層形成工程においては、吸湿層を、好ましくは10℃以下、より好ましくは5℃以下、さらに好ましくは0℃以下、特に好ましくは−5℃以下の温度で形成する。これにより、吸湿層の層構造をより良好としやすくなり、その結果、吸湿特性がより良好な吸湿層を得やすくなる。吸湿層の形成温度は低ければ低い方がよいが、実使用を考慮すると、吸湿層形成の際の温度は、通常−30℃以上となる。
吸湿層形成工程における冷却方法は、特に制限されず、例えば、基材の裏面に金属板を設置して、金属板内部に冷媒を流す、金属板を冷風で冷却することで吸湿層形成の際の温度制御を行えばよい。吸湿層を形成する際は、基材の温度等を常にモニターして吸湿層の成膜が一定温度下で安定して行われるように制御することが好ましい。
吸湿層形成工程では、吸湿層を真空成膜法で形成することが好ましい。これにより、高温の粒子が被成膜面に堆積して吸湿層の層構造をもろくしやすい傾向となるので、被成膜面等を冷却して室温(25℃)よりも低い温度で形成することにより吸湿層の層構造を制御する意義が大きくなり、その結果、良好な層構造を有する吸湿層を得やすくなる。より具体的に説明すれば、図1に示すガスバリア性シート1Aの製造をする際には、基材2上に直接吸湿層3を設けることになるが、真空成膜法を用いると吸湿層3を構成する粒子が高温のまま被成膜面たる基材2表面に堆積することになるので、基材2の冷却を行うことによって、吸湿層3を構成する粒子が、堆積する際に急冷されて吸湿層3がもろくなることを抑制する。また、図2に示すガスバリア性シート1Bの製造をする際には、ガスバリア層4上に直接吸湿層3を設けることになるが、ガスバリア性シート1Aの製造と同様にして、基材2とガスバリア層4との積層体の冷却を行って吸湿層3の層構造の制御を行うこととなる。
吸湿層形成工程において、吸湿層を真空成膜法で成膜する場合には、この真空成膜法がイオンプレーティング法又は電子ビーム蒸着法であることが好ましい。これにより、高エネルギーの粒子が被成膜面に堆積して吸湿層の層構造をよりもろくしやすい傾向となるので、被成膜面等を冷却して室温(25℃)よりも低い温度で形成することにより吸湿層の層構造を制御する意義がより大きくなり、その結果、良好な層構造を有する吸湿層を得やすくなる。
イオンプレーティング法とは、真空蒸着とプラズマの複合技術であり、原則としてガスプラズマを利用して、蒸発粒子の一部をイオンもしくは励起粒子とし、活性化して薄膜を形成する方法である。イオンプレーティング法においては、反応ガスのプラズマを利用して蒸発粒子と結合させ、化合物膜を合成させる反応性イオンプレーティングが有効である。プラズマ中の操作であるため、安定なプラズマを得るのが第1条件であり、低ガス圧の領域での弱電離プラズマによる低温プラズマを用いる場合が多い。このため、混合物や複合酸化物を形成する場合に好ましく用いられる。放電を起こす手段から、直流励起型と高周波励起型に大別されるが、ほかに蒸発機構にホローカソード、イオンビームを用いる場合もある。このように、イオンプレーティング法では、プラズマを蒸着粒子(吸湿層を構成する粒子)に照射して蒸着粒子が高エネルギーとなりやすいので蒸着粒子中の水分を良好に除去しやすくなる一方で、高温での成膜となって吸湿層の層構造がもろくなりやすい。このため、吸湿層形成の際の冷却の効果がより顕著に発揮されやすくなる。
電子ビーム蒸着法は、電子ビームを蒸着粒子に照射してこれを蒸発させて、被成膜面に固体の薄膜を形成する方法である。電子ビーム蒸着法は、従来公知の方法を用いることができる。電子ビーム蒸着法でも、電子ビームを蒸着粒子(吸湿層を構成する粒子)に照射して蒸着粒子が高エネルギーとなりやすいので蒸着粒子中の水分を良好に除去しやすくなる一方で、高温での成膜となって吸湿層の層構造がもろくなりやすい。このため、吸湿層形成の際の冷却の効果がより顕著に発揮されやすくなる。
吸湿層形成工程において、真空成膜法を用いて吸湿層の形成を行った場合には、最終的に真空を解放して大気圧に戻す必要がある。この場合において、吸湿層の吸湿特性を維持・確保するという観点から、不活性ガス(例えば、窒素やアルゴン)で置換しながら大気圧に戻すという方法を採用することが好ましい。これにより、大気圧に戻す際に吸湿層が空気中の水分を吸収することを抑制しやすくなる。
(吸湿層表面処理工程)
本発明のガスバリア性シートの製造方法においては、吸湿層形成工程の後、吸湿層の表面を処理する吸湿層表面処理工程を有するようにすることが好ましい。これにより、吸湿層の表面粗さを大きくして表面積を大きくすることができるようになり、その結果、吸湿特性がより向上しやすくなる。より具体的には、表面積を大きくすることにより、見かけの吸着量を増やすことができる。また、表面処理をすることにより、水分の吸湿速度を速くできる傾向となる。
吸湿層表面処理工程における吸湿層の表面の処理は特に制限されないが、酸素プラズマ法、大気圧プラズマ法、ドライエッチング法、及びグロー放電法のいずれかによって行われることが好ましい。これにより、吸湿層の成膜及び表面処理を真空中で一環して行うことができるようになり、その結果、ガスバリア性シートの生産性をより向上させやすくなる。酸素プラズマ法、大気圧プラズマ法、ドライエッチング法、及びグロー放電法は、吸湿層の膜質に応じて適宜その条件を制御すればよい。具体的には、吸湿層は層構造がもろくなりやすいので、電力を弱くする、圧力を高くする、アルゴンの流量を少なくする、処理時間を調節する等、表面処理の条件を弱く設定して行うことが好ましい。こうした条件以外は、従来公知の方法を適宜採用することができる。
(ガスバリア層形成工程)
ガスバリア層形成工程においては、ガスバリア層が形成される。ガスバリア層の形成は、特に制限はないが、通常、真空成膜法が用いられる。こうした真空成膜法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、Cat−CVD法、プラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法等を用いればよい。こうした形成方法は、成膜材料の種類、成膜のしやすさ、工程効率等を考慮して選択すればよい。こうした形成方法のいくつかにつき以下説明する。
真空蒸着法とは、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子線やイオンビーム等のビーム加熱等により、るつぼに入った材料を加熱、蒸発させて基材等に付着させ、ガスバリア層を得る方法である。その際、ガスバリア層の組成等により加熱温度、加熱方法を変化させることができ、成膜時に酸化反応等を起こさせる反応性蒸着法も使用できる。
スパッタリング法とは、真空チャンバー内にターゲットを設置し、高電圧をかけてイオン化した希ガス元素(通常はアルゴン)をターゲットに衝突させて、ターゲット表面の原子をはじき出し、基材等に付着させ、ガスバリア層を得る方法である。このとき、チャンバー内に窒素ガスや酸素ガスを流すことにより、ターゲットからはじき出された元素と、窒素や酸素とを反応させてガスバリア層を形成する、反応性スパッタリング法を用いてもよい。スパッタリング法としては、例えば、DC2極スパッタリング、RF2極スパッタリング、3極・4極スパッタリング、ECRスパッタリング、イオンビームスパッタリング、及びマグネトロンスパッタリング等を挙げることができるが、工業的にはマグネトロンスパッタリングを用いることが好ましい。
イオンプレーティング法の一般的な説明については、上記吸湿層形成工程で説明したとおりである。
プラズマCVD法とは、化学気相成長法の一種である。プラズマCVD法においては、プラズマ放電中に原料を気化して供給し、系内のガスを衝突により相互に活性化してラジカル化するため、熱的励起のみによっては不可能な低温下での反応が可能となる。基材等は、背後からヒータによって加熱され、電極間の放電中での反応により膜が形成される。プラズマの発生に用いる周波数により、HF(数十〜数百kHz)、RF(13.56MHz)、及びマイクロ波(2.45GHz)に分類される。マイクロ波を用いる場合は、反応ガスを励起し、アフターグロー中で成膜する方法と、ECR条件を満たす磁場(875Gauss)中にマイクロ波導入するECRプラズマCVDに大別される。また、プラズマ発生方法で分類すると、容量結合方式(平行平板型)と誘導結合方式(コイル方式)に分類される。
ガスバリア層の組成の制御は、上記紹介した製造方法を適宜用いつつ、製造条件を適宜変化させることにより行うことができる。
(その他の工程)
本発明のガスバリア性シートの製造方法においては、上記説明した基板準備工程、吸湿層形成工程、吸湿層表面処理工程、ガスバリア層形成工程以外にも、ガスバリア性シートに採用する積層構造よって、適宜その他の工程を用いることができる。例えば、透明導電層を設ける場合には透明導電層形成工程をさらに行えばよい。
以上説明したように、本発明によれば、吸湿性に優れる吸湿層を有するガスバリア性シートの製造方法を提供することができる。
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
[実施例1]
(ガスバリア性シートの製造)
<基材準備工程>
基材として、厚さ100μmのポリエチレンナフタレートフィルム(テオネックス(登録商標)Q65F、帝人デュポンフィルム株式会社製)を用いた。
<吸湿層形成工程>
上記基材を金属板の上に設置し、金属板を冷却しながら下記成膜条件のイオンプレーティング法にて、厚さ70nmの吸湿層(酸化ストロンチウム)を形成した。このときに、基材の表面温度が−10℃となるように制御した。
原料:酸化ストロンチウム
反応ガス:Ar 30sccm、酸素 50sccm
電力:300W
圧力:0.1Pa
<吸湿層表面処理工程>
次いで、下記条件にて、吸湿層の表面を酸素プラズマにて処理した。
RF電源:1kW
酸素流量:5sccm
アルゴン流量:10sccm
圧力:約10Pa
処理時間:1分
(吸湿層の屈折率測定)
こうして得たガスバリア性シートにつき、吸湿層の屈折率の測定を行った。屈折率の測定はエリプソメーターを用いて行った。具体的には、屈折率をJOBIN YVON社製のUVISELTMにより測定した。そして、測定は、キセノンランプを光源とし、入射角度を−60°、検出角度を60°、測定範囲を1.5eV〜5.0eVとして行った。その結果、吸湿層の屈折率は1.35であった。
(吸湿層の表面粗さの測定)
吸湿層の表面粗さにつき、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)として、セイコーインスツルメンツ社製のNanopics−1000を用い、JIS B0601に準拠して、10μmの範囲にて、算術平均粗さ(Ra)及び最大突起長(Rmax)を測定した。その結果、Raは8nm、Rmaxは342nmであった。
(水蒸気透過率の測定)
水蒸気透過率は、測定温度37.8℃、湿度100%Rhの条件下で、水蒸気透過率測定装置(米国MOCON社製、PERMATRAN−W 3/31:商品名)を用いて測定した。なお、測定に用いた水蒸気透過率測定装置の検出限界は、0.05g/m・dayであるが、水蒸気透過率の測定を行ったところ、0.05g/m・dayで検出限界以下であった。なお、水蒸気透過率は、製造直後のガスバリア性シートをデシケーター内に1日保持した後に測定した。
(酸素透過率の測定)
酸素透過率は、測定温度23℃、湿度90%Rhの条件下で、酸素ガス透過率測定装置(米国MOCON社製、OX−TRAN 2/20:商品名)を用いて測定した。なお、測定に用いた酸素ガス透過率測定装置の検出限界は、0.05cc/m・day・atmであるが、酸素透過率を測定したところ、0.05cc/m・day・atmで検出限界以下であった。なお、酸素透過率も、製造直後のガスバリア性シートをデシケーター内に1日保持した後に測定した。
(全光線透過率と色味(YI)の測定)
ガスバリア性シートの全光線透過率とYIは、SMカラーコンピューターSM−C(スガ試験機製)を使用して測定した。測定は、JIS K7105に準拠して実施した。その結果、全光線透過率は85.3%、YIは0.7であった。
[実施例2]
吸湿層形成工程において、基材表面の温度を0℃となるように制御したこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性シートを製造した。そして、実施例1と同様にして各種特性の測定を行った。結果を以下に示す。
吸湿層の屈折率:1.38
吸湿層の表面粗さ:Raは7nm、Rmaxは315nm
水蒸気透過率:0.05g/m・dayで検出限界以下
酸素透過率:0.05cc/m・day・atmで検出限界以下
全光線透過率:83.5%
Y1:0.5
[比較例1]
吸湿層形成工程において、基材表面の温度を25℃となるように制御したこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性シートを製造した。成膜後の吸湿層を観察したところ、表面に割れが観察された。製造したガスバリア性シートにつき、実施例1と同様にして各種特性の測定を行った。結果を以下に示す。
吸湿層の屈折率:1.42
吸湿層の表面粗さ:Raは31nm、Rmaxは1100nm
水蒸気透過率:1.5g/m・day
酸素透過率:0.5cc/m・day・atm
全光線透過率:84.1%
Y1:0.8
[比較例2]
吸湿層形成工程において、基材表面の温度を80℃となるように制御したこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性シートを製造した。成膜後の吸湿層を観察したところ、表面に割れが観察され、着色も観察された。製造したガスバリア性シートにつき、実施例1と同様にして各種特性の測定を行った。結果を以下に示す。
吸湿層の屈折率:1.45
吸湿層の表面粗さ:Raは35nm、Rmaxは1500nm
水蒸気透過率:3.5g/m・day
酸素透過率:3.2cc/m・day・atm
全光線透過率:83.0%
Y1:1.0
[実施例3]
吸湿層表面処理工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性シートを製造した。そして、実施例1と同様にして各種特性の測定を行った。結果を以下に示す。
吸湿層の屈折率:1.40
吸湿層の表面粗さ:Raは5nm、Rmaxは50nm
水蒸気透過率:0.08g/m・day
酸素透過率:0.07cc/m・day・atm
全光線透過率:85.1%
Y1:0.2
[実施例4]
(ガスバリア性シートの製造)
<基材準備工程>
実施例1と同様にした。
<吸湿層形成工程>
基材を金属板の上に設置し、金属板を冷却しながら下記成膜条件のイオンプレーティング法にて、厚さ15nmの吸湿層(酸化バリウム)を形成した。このときに、基材の表面温度が−10℃となるように制御した。
原料:酸化バリウム
反応ガス:Ar 10sccm、酸素 30sccm
電力:300W
圧力:0.1Pa
<吸湿層表面処理工程>
次いで、下記条件にて、吸湿層の表面を大気圧プラズマにて処理した。
RF電源:0.5kW
酸素流量:5sccm
アルゴン流量:10sccm
圧力:1atm
処理時間:5分
こうして得たガスバリア性シートにつき、実施例1と同様にして各種特性の測定を行った。結果を以下に示す。
吸湿層の屈折率:1.42
吸湿層の表面粗さ:Raは12nm、Rmaxは65nm
水蒸気透過率:0.05g/m・dayで検出限界以下
酸素透過率:0.05cc/m・day・atmで検出限界以下
全光線透過率:84.5%
Y1:0.5
[実施例5]
(ガスバリア性シートの製造)
<基材準備工程>
実施例1と同様にした。
<ガスバリア層形成工程>
基材上に、下記成膜条件のプラズマCVD法で、厚さ80nmのガスバリア層(SiOC)を形成した。
原料:HMDSO(ヘキサメチレンシロキサン) 1slm
反応ガス:Ar 1slm、アンモニア 0.5slm
電力:1kW
圧力:10Pa
<吸湿層形成工程>
次いで、基材/ガスバリア層の積層体を金属板の上に設置し、金属板を冷却しながら下記成膜条件のイオンプレーティング法にて、厚さ50nmの吸湿層(酸化マグネシウム)を形成した。このときに、基材の表面温度が−10℃となるように制御した。
原料:酸化マグネシウム
反応ガス:Ar 30sccm、酸素 0.5slm
電力:250W
圧力:0.15Pa
<吸湿層表面処理工程>
次いで、下記条件にて、吸湿層の表面をドライエッチングにて処理した。
RF電源:3kW
アルゴン流量:20sccm
圧力:10Pa
処理時間:3分
こうして得たガスバリア性シートにつき、実施例1と同様にして各種特性の測定を行った。結果を以下に示す。
吸湿層の屈折率:1.44
吸湿層の表面粗さ:Raは10nm、Rmaxは125nm
水蒸気透過率:0.1g/m・day
酸素透過率:0.1cc/m・day・atm
全光線透過率:80.1%
Y1:0.8
本発明のガスバリア性シートの一例を示す模式的な断面図である。 本発明のガスバリア性シートの他の一例を示す模式的な断面図である。
符号の説明
1,1A,1B ガスバリア性シート
2 基材
3 吸湿層
4 ガスバリア層

Claims (11)

  1. 基材と、該基材の上に設けられた吸湿層と、を有するガスバリア性シートであって、
    前記吸湿層がアルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物を含有し、前記ガスバリア性シートの表面の最大高低差(Rmax)が1000nm以下であることを特徴とするガスバリア性シート。
  2. 前記アルカリ土類金属酸化物が、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、及び酸化バリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載のガスバリア性シート。
  3. 前記ガスバリア性シートの表面の算術平均粗さ(Ra)が1nm以上であり、最大高低差(Rmax)が30nm以上である、請求項1又は2に記載のガスバリア性シート。
  4. 前記ガスバリア性シートの全光線透過率が80%以上、黄色度(YI)が5以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア性シート。
  5. 前記基材と前記吸湿層との間にガスバリア層を設ける、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスバリア性シート。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスバリア性シートの製造方法であって、
    前記吸湿層を室温(25℃)よりも低い温度で形成する吸湿層形成工程を有することを特徴とするガスバリア性シートの製造方法。
  7. 前記吸湿層を0℃以下の温度で形成する、請求項6に記載のガスバリア性シートの製造方法。
  8. 前記吸湿層を真空成膜法で形成する、請求項6又は7に記載のガスバリア性シートの製造方法。
  9. 前記真空成膜法がイオンプレーティング法又は電子ビーム蒸着法である、請求項8に記載のガスバリア性シートの製造方法。
  10. 前記吸湿層形成工程の後、前記吸湿層の表面を処理する吸湿層表面処理工程を有する、請求項6〜9のいずれか1項に記載のガスバリア性シートの製造方法。
  11. 前記吸湿層表面処理工程における前記吸湿層の表面の処理が、酸素プラズマ法、大気圧プラズマ法、ドライエッチング法、及びグロー放電法のいずれかによって行われる、請求項10に記載のガスバリア性シートの製造方法。
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