JP2010102909A - 燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池性能を維持しつつ、ガス拡散層とこれに隣接する部材との電気的接触抵抗を低減すること。
【解決手段】固体高分子電解質膜と、前記電解質膜の一方の面に配置された、カソード触媒層およびカソードガス拡散層を含むカソードガス拡散電極と、前記電解質膜の他方の面に配置された、アノード触媒層およびアノードガス拡散層を含むアノードガス拡散電極と、を有する電解質膜−電極接合体ならびに電解質膜−電極接合体の外側に配置されるセパレータを含む燃料電池であって、前記カソードガス拡散層および前記アノードガス拡散層の少なくとも一方のいずれかの表面において、ガス拡散層表面から毛羽立ち状に突出した繊維端部の本数が5000本/cm以下である、燃料電池。
【選択図】なし

Description

本発明は、燃料電池に関するものである。特に本発明は、表面が改良されたガス拡散層を含む燃料電池に関するものである。
近年、エネルギー・環境問題を背景とした社会的要求や動向と呼応して、燃料電池が電気自動車用電源、定置型電源として注目されている。燃料電池は、電解質の種類や電極の種類等により種々のタイプに分類され、代表的なものとしてはアルカリ型、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型、固体高分子形がある。この中でも低温(通常100℃以下)で作動可能な固体高分子形燃料電池が注目を集め、近年自動車用低公害動力源としての開発・実用化が進んでいる。
固体高分子形燃料電池(PEFC)は、一般的には、高分子イオン交換膜(陽イオン交換膜)の両側にそれぞれアノード側電極およびカソード側電極を対設して構成し、さらにその外側を各々ガス拡散層とセパレータで挟持することにより構成されている。通常、この単位燃料電池セルを所定数積層し、0.5〜3.0MPa程度の面圧で加圧挟持することによって燃料電池スタックとして使用する。
燃料電池の発電効率を最大化し、高い性能を発揮するためには、積層される各部品間の電気的接触抵抗を低減することが重要であり、このため接触抵抗低減に対して種々の試みがなされている。例えば特許文献1では、金属製セパレータの表面に存在する不動態皮膜とガス拡散層との接触抵抗を低減することを目的として、ガス拡散層の表面に比抵抗の小さな金属、合金または化合物をコーティングする、燃料電池を開示している。
特開2003−123770号公報
しかしながら、燃料電池の運転環境下では腐食が非常に起きやすいため、上記の燃料電池では、用いる金属によっては電池反応によるイオン溶出などによって、腐食・性能低下が起こる場合がある。また、耐久性・耐溶出性を考慮した場合には、ガス拡散層のコーティングに活性の低いAu、Pt、Agなどの貴金属を用いることが適しているが、コストが非常に高いという問題点があった。
したがって、本発明は、燃料電池性能を維持しつつ、ガス拡散層とこれに隣接する部材との電気的接触抵抗が低減した燃料電池およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行なった結果、ガス拡散層の表面に存在する毛羽立ち状に突出した繊維端部が低減したガス拡散層を含む燃料電池が上記目的を達成することを見出し、本発明を完成させた。
本発明の燃料電池は、ガス拡散層の表面に存在する毛羽立ち状に突出した繊維端部が低減していることにより、ガス拡散層とこれに隣接する部材との接触面積が増大し、電気的接触抵抗が低減する。したがって、本発明の燃料電池は発電性能を向上できる。
本発明は、カソードガス拡散層およびアノードガス拡散層の少なくとも一方のいずれかの表面において、ガス拡散層表面から毛羽立ち状に突出した繊維端部の本数が5000本/cm以下である、燃料電池に関する。
単位燃料電池を構成するガス拡散層の基材として、カーボン繊維および/または金属繊維を、編んでシート状に成型したクロス材、繊維を物理的に絡めてシート状に成型した不織布材、繊維とバインダ(結着材)を抄紙したペーパ材などの多孔質基材を用いるのが一般的である。
しかしながら、これら多孔質基材を含むガス拡散層の表面には、多孔質基材を構成する繊維が毛羽立つことにより形成される、毛羽立ち状に突出した部位が存在する。面圧を掛けてセパレータ、ガス拡散層、固体高分子電解質膜を積層挟持した場合に、これら突出した部位がセパレータと先に接触してガス拡散層表面がセパレータと接触するのを妨げる。このため、ガス拡散層およびこれに隣接する部材(セパレータ、触媒層)間の接触面積が確保できず、電気的接触抵抗が高くなり、その結果として燃料電池の発電効率を損なう虞れがある。本発明のガス拡散層基材では、毛羽立ち状に突出した部位が従来のガス拡散層と比較して少ないため、ガス拡散層とセパレータとの接触面積を最大化することが可能となり、ガス拡散層と隣接する部材(セパレータ、触媒層)間の電気的接触抵抗を低減できる。なお、ここでいう「毛羽立ち」とは、例えばJISP0001(1998) 7020で規定されているように、表面が、摩擦その他の原因で起毛することを指し、換言すれば、表面の水平面から繊維が突出している状態を意味する。
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみには制限されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1は、本発明の燃料電池の一実施形態(第1実施形態とも称する)である固体高分子形燃料電池(PEFC)の基本構成を示す概略図である。なお、図1には燃料電池の単セルが図示されている。図1に示すPEFC10は、電解質膜12と、前記電解質膜12の一方の面には、カソード触媒層15およびカソードガス拡散層16を含むカソードガス拡散電極と、が配置される。また、電解質膜12の他方の面は、アノード触媒層13およびアノードガス拡散層14を含むアノードガス拡散電極と、が配置される。なお、本願において、「電解質膜−電極接合体(MEA)」とは、電解質膜と、前記電解質膜を挟持する1対のガス拡散電極とを有する集合体を意味する。なお、電解質膜−電極接合体を単に、「膜電極接合体」と称することもある。
本発明のPEFC10は、カソード側セパレータ17およびアノード側セパレータ18からなる1対のセパレータにより挟持されている。ここで、カソード側セパレータ17のカソードガス拡散層16側表面には、運転時に酸化剤ガスが流通する酸化剤ガス流路19が設けられており、反対側の表面には、運転時に冷却剤が流通する冷却流路(図示せず)が設けられている。一方、アノード側セパレータ18のアノードガス拡散層14側表面には、運転時に燃料ガスが流通する燃料ガス流路20が設けられており、反対側の表面には、運転時に冷却剤が流通する冷却流路(図示せず)が設けられている。そして、PEFC10の周囲には、1対のガス拡散電極を包囲するように、ガスケット21が配置されてもよい。ガスケット21はシール部材であり、接着層(図示せず)を介して、MEAの電解質膜12の外面に固定される構成を有していてもよい。ガスケットは、セパレータとMEAとのシール性を確保する機能を有している。なお、必要に応じて用いられる接着層は、接着性を確保することを考慮すると、ガスケットの形状に対応し、電解質膜の全周縁部に、額縁状に配置されることが好ましい。
まず、本発明の燃料電池の特徴的部分であるガス拡散層について記載する。
(ガス拡散層)
本発明の燃料電池のガス拡散層の表面は、毛羽立ち状に突出した部位が従来のガス拡散層と比較して少ない。従来のガス拡散層の毛羽立ち状に突出した繊維端部の本数は、単位面積あたり、7500本/cm程度である。これに対し、本発明の燃料電池のガス拡散層のアノードガス拡散層およびカソードガス拡散層の少なくとも一方のいずれかの表面のガス拡散層の毛羽立ち状に突出した繊維端部の本数が5000本/cm以下である。好ましくは、2700本/cm以下であり、より好ましくは2000本/cm以下である。ガス拡散層の毛羽立ち状に突出した部位の数がかような範囲であると、隣接する部材との接触面積が増大するため、隣接する部材との接触抵抗が低減する。なお、ガス拡散層の毛羽立ち状に突出した部位の数の下限は、接触抵抗の点からは、少なければ少ないほどよい。なお、本発明において、単位面積あたりでの上記範囲の毛羽立ち状に突出した繊維端部の本数は、ガス拡散層のアノードガス拡散層およびカソードガス拡散層の少なくとも一方で満たされていればよい。しかしながら、本発明の効果が顕著に得られることから、アノードガス拡散層およびカソードガス拡散層の双方のいずれかの表面が、上記範囲の毛羽立ち状に突出した繊維端部の本数であることが好ましい。
毛羽立ち状に突出した繊維端部の本数とは、観察視野において、繊維が表面から深さ方向に突出し、繊維が途中で断絶しているように観察される繊維本数を意味する。具体的には、毛羽立ち状に突出した繊維端部の本数は、ガス拡散層表面から45°傾斜角度から、ガス拡散層表面を倍率100〜500倍にてSEM観察し、ガス拡散層表面の単位面積あたりの繊維端部の本数を数える操作を3回繰り返し、各操作で測定された繊維端部の本数の平均値とする。
毛羽立ち状に突出した繊維端部の本数が5000本/cm以下であるガス拡散層表面は、燃料電池において、少なくともセパレータと接する側に配置されることが好ましい。後述するように、ガス拡散層の触媒層側には、撥水剤を含むカーボン粒子の集合体からなるカーボン粒子層が存在することが多い。この場合、カーボン粒子層には毛羽立ちの問題がないため、触媒層とガス拡散層との接触抵抗が問題となることは少ない。一方、セパレータと接する側は、通常、毛羽立ちが生じる多孔質基材が直接接触するため、接触抵抗低減のために、ガス拡散層の表面の毛羽立ちを低減することが好ましい。このため、毛羽立ちが低減したガス拡散層表面は、燃料電池において、少なくともセパレータと接する側に配置されることが好ましい。
ガス拡散層は、多孔質基材を含むことが好ましい。該多孔質基材としては、クロス、紙状抄紙体、不織布、ペーパ材、フェルト等が挙げられる。これらの中でも、クロス、不織布、ペーパ材であることが好ましい。また、多孔質基材を構成する材料は、導電性を有するようにするために、炭素繊維および/または金属繊維であることが好ましい。金属繊維としては、ステンレス、アルミニウム、チタニウムなどの金属繊維が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。中でも、空隙率が高く、ガス透過性、排水性に優れることから、カーボンクロス、カーボン不織布、カーボンペーパ、カーボンニットが好ましく用いられる。基材の厚さは、得られるガス拡散層の特性を考慮して適宜決定すればよいが、10〜500μm程度とすればよい。基材の厚さがかような範囲内の値であれば、機械的強度とガスおよび水などの拡散性とのバランスが適切に制御されうる。
ガス拡散層は、撥水性をより高めてフラッディング現象などを防止することを目的として、撥水剤を含むことが好ましい。撥水剤としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。
また、撥水性をより向上させるために、ガス拡散層は、撥水剤を含むカーボン粒子の集合体からなるカーボン粒子層(マイクロポーラス層:MPL)を基材の触媒層側に有するものであってもよい。
カーボン粒子層に含まれるカーボン粒子は特に限定されず、カーボンブラック、黒鉛、膨張黒鉛などの従来公知の材料が適宜採用されうる。なかでも、電子伝導性に優れ、比表面積が大きいことから、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが好ましく用いられうる。カーボン粒子の平均粒子径は、10〜100nm程度とするのがよい。これにより、毛細管力による高い排水性が得られるとともに、触媒層との接触性も向上させることが可能となる。
カーボン粒子層に用いられる撥水剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。なかでも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系の高分子材料(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)が好ましく用いられうる。なかでも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系の高分子材料が好ましく用いられうる。
カーボン粒子層におけるカーボン粒子と撥水剤との混合比は、撥水性および電子伝導性のバランスを考慮して、質量比で90:10〜40:60(カーボン粒子:撥水剤)程度とするのがよい。なお、カーボン粒子層の厚さについても特に制限はなく、得られるガス拡散層の撥水性を考慮して適宜決定すればよいが、通常、1〜300μm程度である。
本発明のガス拡散層は、セパレータや触媒層との接触抵抗が低い。このため、特許文献1に記載のような、Au、Pt、Agなどの貴金属のコーティングを特に必要としない。このため、本発明のガス拡散層を有する燃料電池は、その性能を維持しつつ、安価に製造できる。
(ガス拡散層の製造方法)
本発明のガス拡散層の製造方法は、特に限定されるものではないが、材料となるガス拡散層表面を研磨により加工して得ることが好ましい。上述したように、ガス拡散層は好適には多孔質基材を含むが、多孔質基材は繊維を含み、該繊維が毛羽立ち状となってガス拡散層表面に存在している。この毛羽立ち状の繊維の存在により、隣接する部材との接触面積が減少し、隣接する部材(触媒層、セパレータ)との間の接触抵抗が増大していた。ガス拡散層表面を研磨することにより、この毛羽立ち状の繊維が研磨され、表面から突出した状態の繊維が減少するため、隣接する部材と、ガス拡散層との接触面積が増大し、接触抵抗が低減する。また、研磨という安価な機械加工法を用いるため、コストの低減が実現でき、ガス拡散層の上に別途、蒸着層などの他の層を設ける場合等と比較して、簡便であり、特段大掛かりな設備を必要とするものでもない。さらに、毛羽立ちの低減方法が研磨であることから、簡易な研磨装置や材料を用いて、毛羽立ちの低減に要する研磨条件を簡単かつ詳細に設定することができる。ガス拡散層表面に存在する毛羽立ちは、深さ方向に非常に小さな範囲で存在するため、研磨のように細かく表面を改質できる方法が毛羽立ちの低減方法としては適切である。また、繊維を引き抜いて突出を除去することも考えられるが、繊維を完全に引き抜くことは困難であり、表面に突出した繊維が残りやすいが、これと比較して、研磨の場合にはガス拡散層表面が平滑になりやすい。
研磨の方法は、特に限定されないが、機械研磨であることが好ましい。機械研磨は、種々の組成の溶液に浸漬し化学的に研磨を行う化学研磨や特定溶液中で陽極溶解し電気化学的に研磨を行う電解研磨とは異なり、被研磨物に対して物理的処理により行われる研磨を指す。機械研磨は、研磨剤、研磨砥石、研磨布等を用いて人力で、あるいは機械力で物理的に研磨する方法を全て包含する。機械研磨には、例えば、ベルト研磨、手研磨、バフ研磨、ラップ研磨、ブラスト研磨などの乾式又は湿式の機械研磨が含まれる。上記機械研磨は、1種の研磨方法で研磨を行ってもよいし、2種以上の研磨方法を組み合わせてもよい。中でも、量産性と表面平滑性確保の点から、バフ研磨、ラップ研磨およびこれらの研磨方法の組み合わせであることが好ましい。また、少量であれば#1000〜#2000粒子の耐水ペーパ等を用いて、表面研磨を行ってもよい。
ガス拡散層を研磨する際に、好ましくは、ガス拡散層の表面上に存在する毛羽立ち状に突出した部位を研磨除去するように、研磨条件を適宜選設定することが好ましい。突出した部位を研磨除去するとは、毛羽立ち状に突出した部位を完全に除去するように研磨することに加え、元のガス拡散層から毛羽立ちを低減するように除去することも含む。考慮すべき研磨条件としては、押付け力、研磨材の回転数、研磨材の粒度(粗さ)などが挙げられる。具体的な条件設定は、ガス拡散層の基材の固さ、あるいは用いられる研磨方法によって、適宜設定される。例えば、バフ研磨の場合、研磨の際の押付け力は、0.1〜500g/cmであることが好ましく、1〜10g/cmであることがより好ましい。また、バフ研磨の場合、バフ回転数は、5〜3000rpmであることが好ましく、60〜200rpmであることがより好ましい。
ガス拡散層の研磨量(研磨深さ)は、研磨前のガス拡散層の表面を基準とした場合に、5〜150μmであることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましい。また、研磨前の、ガス拡散層表面から毛羽立ち状に突出した繊維端部の本数を100とした場合に、研磨後の、ガス拡散層表面から毛羽立ち状に突出した繊維端部の本数が、好ましくは70以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは40以下となるように、研磨条件を設定することが好ましい。なおこの場合の下限は、小さければ小さいほど好ましいため、特に制限されるものではないが、製造の容易性から、10以上であることが好ましい。
研磨の際に用いられる砥粒としては、従来公知のものを用いることができる。例えば、バフ研磨に用いられる砥粒としては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、セリア、アルミナ、ジルコニア、マグネシア等の金属酸化物、ダイヤモンド、SiCなどの非酸化物を用いることができる。この際、砥粒の平均粒子径は特に限定されるものではないが、耐水ペーパ相当で#1000〜2000番であることが好ましく、耐水ペーパ#1200〜1500番であることがより好ましい。なお、砥粒の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡像より調べられる触媒成分の粒子径の平均値として測定されうる。また、例えば、ラップ研磨に用いられる砥粒としては、コロイダルシリカ、セリア、アルミナ、ジルコニア等の金属酸化物等を用いることができる。この際、砥粒の平均粒子径は特に限定されるものではないが、耐水ペーパ相当で#1000〜2000番であることが好ましく、耐水ペーパ#相当で1200〜1500番であることがより好ましい。
バフ研磨は、乾式または湿式のどちらでもよい。
研磨後、研磨くずを除くなどの目的で洗浄工程を行うことが好ましい。洗浄の種類としては、超音波洗浄、エアブローなどが挙げられる。
ガス拡散層の研磨を行う際には、少なくともセパレータと接する側のガス拡散層の表面を研磨することが好ましい。ガス拡散層の触媒層側には、上述したように、撥水剤を含むカーボン粒子の集合体からなるカーボン粒子層が存在することが多い。この場合、触媒層とガス拡散層との接触抵抗が問題となることは少ない。一方、セパレータと接する側は、通常、毛羽立ちが生じる多孔質基材であるため、接触抵抗低減のために、ガス拡散層の表面の毛羽立ちを低減することが好ましい。このため、少なくともセパレータと接する側のガス拡散層表面を研磨し、表面の毛羽立ち状部位を除去/低減することが好ましい。
本発明の燃料電池はガス拡散層に特徴を有するため、MEAやPEFCを構成するその他の部材については、燃料電池の分野において従来公知の構成がそのまま、または適宜改良されて採用されうる。以下、PEFCの各構成要素について、順に詳細に説明するが、下記の形態のみに限定されることはない。
[電解質膜]
電解質膜は、イオン交換樹脂から構成され、PEFCの運転時にアノード側触媒層で生成したプロトンを膜厚方向に沿ってカソード側触媒層へと選択的に透過させる機能を有する。本発明の電解質膜は、固体高分子電解質膜であると特に好ましい。また、高分子電解質膜は、アノード側に供給される燃料ガスとカソード側に供給される酸化剤ガスとを混合させないための隔壁としての機能をも有する。
高分子電解質膜の具体的な構成は特に制限されず、燃料電池の分野において従来公知の高分子電解質膜が適宜採用されうる。高分子電解質膜は、構成材料であるイオン交換樹脂の種類によって、フッ素系高分子電解質膜と炭化水素系高分子電解質膜とに大別される。フッ素系高分子電解質膜を構成するイオン交換樹脂としては、例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーなどが挙げられる。耐熱性、化学的安定性などの発電性能上の観点からはこれらのフッ素系高分子電解質膜が好ましく用いられ、特に好ましくはパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーから構成されるフッ素系高分子電解質膜が用いられる。
前記炭化水素系電解質として、具体的には、スルホン化ポリエーテルスルホン(S−PES)、スルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、ホスホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)、スルホン化ポリフェニレン(S−PPP)などが挙げられる。原料が安価で製造工程が簡便であり、かつ材料の選択性が高いといった製造上の観点からは、これらの炭化水素系高分子電解質膜が好ましく用いられる。なお、上述したイオン交換樹脂は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、上述した材料のみに制限されず、その他の材料が用いられてもよいことは勿論である。
高分子電解質膜の厚さは、得られるMEAやPEFCの特性を考慮して適宜決定すればよく、特に制限されない。ただし、高分子電解質膜の厚さは、好ましくは5〜300μmであり、より好ましくは10〜200μmであり、さらに好ましくは15〜150μmである。厚さがかような範囲内の値であると、製膜時の強度や使用時の耐久性、および使用時の出力特性のバランスが適切に制御されうる。
[触媒層]
触媒層は、実際に反応が進行する層である。具体的には、アノード側触媒層では水素の酸化反応が進行し、カソード側触媒層では酸素の還元反応が進行する。触媒層は、触媒成分、触媒成分を担持する導電性担体、およびプロトン伝導性の高分子電解質を含む。
アノード側触媒層に用いられる触媒成分は、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。また、カソード側触媒層に用いられる触媒成分もまた、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。具体的には、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、およびそれらの合金等などから選択される。ただし、その他の材料が用いられてもよいことは勿論である。これらのうち、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性などを向上させるために、少なくとも白金を含むものが好ましく用いられる。前記合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、白金が30〜90原子%、合金化する金属が10〜70原子%とするのがよい。カソード側触媒として合金を使用する場合の合金の組成は、合金化する金属の種類などによって異なり、当業者が適宜選択できるが、白金が30〜90原子%、合金化する他の金属が10〜70原子%とすることが好ましい。なお、合金とは、一般に金属元素に1種以上の金属元素または非金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称である。合金の組織には、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物または金属と非金属との化合物を形成しているものなどがあり、本願ではいずれであってもよい。この際、アノード触媒層に用いられる触媒成分およびカソード触媒層に用いられる触媒成分は、上記の中から適宜選択できる。以下の説明では、特記しない限り、アノード触媒層およびカソード触媒層用の触媒成分についての説明は、両者について同様の定義であり、一括して、「触媒成分」と称する。しかしながら、アノード触媒層およびカソード触媒層の触媒成分は同一である必要はなく、上記したような所望の作用を奏するように、適宜選択される。
触媒成分の形状や大きさは、特に制限されず公知の触媒成分と同様の形状および大きさが使用できるが、触媒成分は、粒状であることが好ましい。この際、触媒粒子の平均粒子径は、好ましくは1〜30nm、より好ましくは1.5〜20nm、さらに好ましくは2〜10nm、特に好ましくは2〜5nmである。触媒粒子の平均粒子径がかような範囲内の値であると、電気化学反応が進行する有効電極面積に関連する触媒利用率と担持の簡便さとのバランスが適切に制御されうる。なお、本発明における「触媒粒子の平均粒子径」は、X線回折における触媒成分の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径や、透過型電子顕微鏡像より調べられる触媒成分の粒子径の平均値として測定されうる。
導電性担体は、上述した触媒成分を担持するための担体、および触媒成分との電子の授受に関与する電子伝導パスとして機能する。
導電性担体としては、触媒成分を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、充分な電子伝導性を有しているものであればよく、主成分がカーボンであることが好ましい。具体的には、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛などからなるカーボン粒子が挙げられる。なお、「主成分がカーボンである」とは、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、「実質的に炭素原子からなる」とは、2〜3質量%程度以下の不純物の混入が許容されうることを意味する。
導電性担体のBET比表面積は、触媒成分を高分散担持させるのに充分な比表面積であればよいが、好ましくは20〜1600m/g、より好ましくは80〜1200m/gである。導電性担体の比表面積がかような範囲内の値であると、導電性担体上での触媒成分の分散性と触媒成分の有効利用率とのバランスが適切に制御されうる。
導電性担体のサイズについても特に限定されないが、担持の簡便さ、触媒利用率、電極触媒層の厚みを適切な範囲で制御するなどの観点からは、平均粒子径を5〜200nm、好ましくは10〜100nm程度とするとよい。
導電性担体に触媒成分が担持されてなる複合体(以下、「電極触媒」とも称する)において、触媒成分の担持量は、電極触媒の全量に対して、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%である。触媒成分の担持量がかような範囲内の値であると、導電性担体上での触媒成分の分散度と触媒性能とのバランスが適切に制御されうる。なお、触媒成分の担持量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)によって測定されうる。
また、担体への触媒成分の担持は公知の方法で行うことができる。例えば、含浸法、液相還元担持法、蒸発乾固法、コロイド吸着法、噴霧熱分解法、逆ミセル(マイクロエマルジョン法)などの公知の方法が使用できる。
または、本発明において、電極触媒は市販品を使用してもよい。このような市販品としては、例えば、田中貴金属工業製、エヌ・イー・ケムキャット製、E−TEK製、ジョンソンマッセイ製などの電極触媒が使用できる。これらの電極触媒は、カーボン担体に、白金や白金合金を担持(触媒種の担持濃度、20〜70質量%)したものである。上記において、カーボン担体としては、ケッチェンブラック、バルカン、アセチレンブラック、ブラックパール、予め高温で熱処理した黒鉛化処理カーボン担体(例えば、黒鉛化処理ケッチェンブラック)、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンファイバー、メソポーラスカーボンなどがある。
触媒層には、電極触媒に加えて、イオン伝導性の高分子電解質が含まれる。当該高分子電解質は特に限定されず従来公知の知見が適宜参照されうるが、例えば、上述した高分子電解質膜を構成するイオン交換樹脂が前記高分子電解質として触媒層に添加されうる。触媒層が保水層である場合には、バインダー材料として、上記高分子電解質が用いられる。
[ガスケット]
ガスケットは、1対のガス拡散電極を包囲するようにPEFCの周囲に配置され、触媒層に供給されたガスが外部にリークするのを防止する機能を有する。
ガスケットを構成する材料としては、特に制限はないが、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリイソブチレンゴム等のゴム材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系の高分子材料、ポリオレフィンやポリエステル等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。また、ガスケットの厚さにも特に制限はなく、好ましくは50μm〜2mmであり、より好ましくは100μm〜1mm程度とすればよい。
[セパレータ]
MEAは、セパレータで挟持されてPEFCの単セルを構成する。PEFCは、単セルが複数個直列に接続されてなるスタック構造を有するのが一般的である。この際、セパレータは、各MEAを直列に電気的に接続する機能に加えて、燃料ガスおよび酸化剤ガス並びに冷媒といった異なる流体を流す流路やマニホールドを備え、さらにはスタックの機械的強度を保つといった機能をも有する。
セパレータを構成する材料は特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうるが、例えば、緻密カーボングラファイト、炭素板等のカーボン材料や、ステンレス等の金属材料などが挙げられる。セパレータのサイズや流路の形状などは特に限定されず、PEFCの出力特性などを考慮して適宜決定すればよい。
本発明のPEFCの製造方法は特に制限されず、燃料電池の分野において従来公知の知見を適宜参照することにより製造可能である。
以上、高分子電解質形燃料電池を例に挙げて説明したが、燃料電池としてはこの他にも、アルカリ型燃料電池、ダイレクトメタノール型燃料電池、マイクロ燃料電池などが挙げられ、いずれの電池に適用してもよい。なかでも小型かつ高密度・高出力化が可能であるから、高分子電解質形燃料電池(PEFC)が好ましく挙げられる。本発明の燃料電池は、搭載スペースが限定される車両などの移動体用電源の他、定置用電源などとして有用であるが、特にシステムの起動/停止や出力変動が頻繁に発生する車両、より好ましくは自動車用途で特に好適に使用できる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
ガス拡散層基材として、カーボンペーパであるTORAY TGP−H−060(東レ株式会社製、厚さ0.19mm)を用いた。このガス拡散層基材を、#1000番の耐水ペーパを用いて表面を研磨した。この後、砥粒として粒径φ0.5mmのアルミナ粒子を用い、押付け力1g/cm、バフ回転数60rpmで表面をバフ処理した。この結果、研磨深さは、約20μmであった。バフ処理の後、超音波洗浄を行った。
このようにして得られたガス拡散層(実施例1)と、未処理ガス拡散層(比較例1)の表面SEM観察写真(ガス拡散層表面から45°傾斜から観察)を、図2に示す。図からわかるように、実施例1のガス拡散層表面の写真は、比較例1と比較して、表面の毛羽立ち状に突出した部分が減少していることが分かる。SEMの観察写真から、ガス拡散層表面から毛羽立ち状に突出した繊維端部の本数を測定したところ、実施例1は2700本/cmであり、比較例1は、7500本/cmであった。
実施例1および比較例1のガス拡散層の電気的接触抵抗を求めるために、絶縁部材(厚さ2mmのアクリル板)に幅2mmの金箔(厚さ0.1mm)を、2mmピッチで3本貼り付けた抵抗測定装置を作製した。計測装置の概略図を図3に示す。その上にガス拡散層を置いて1.0MPaの面圧を付与し、電気化学診断装置で端子間距離2mm、6mmの2条件にて電気抵抗を測定し、接触抵抗を求めた。電気抵抗測定結果を図4に示す。測定の結果、実施例1のガス拡散層の接触抵抗は、比較例1よりも10%程度低下していることが確認された。
以上のように、ガス拡散層表面の毛羽立ち状に突出した部位が低減することによって、ガス拡散層表面とセパレータとの接触面積が拡大し、電気的接触抵抗の低減を図ることができる。
本発明のPEFCの一実施形態の模式断面図を示す。 実施例および比較例のガス拡散層の表面のSEM観察写真である。 実施例および比較例の抵抗を測定する際に用いた抵抗測定装置の概略図である。 実施例および比較例の電気抵抗測定結果を示す図である。
符号の説明
10 固体高分子形燃料電池、
12 電解質膜、
13 アノード触媒層、
14 アノードガス拡散層、
15 カソード触媒層、
16 カソードガス拡散層、
17 カソード側セパレータ、
18 アノード側セパレータ、
19 酸化剤ガス流路、
20 燃料ガス流路、
21 ガスケット。

Claims (8)

  1. 電解質膜と、前記電解質膜の一方の面に配置された、カソード触媒層およびカソードガス拡散層を含むカソードガス拡散電極と、前記電解質膜の他方の面に配置された、アノード触媒層およびアノードガス拡散層を含むアノードガス拡散電極と、を有する電解質膜−電極接合体ならびに電解質膜−電極接合体の外側に配置されるセパレータを含む燃料電池であって、
    前記カソードガス拡散層および前記アノードガス拡散層の少なくとも一方のいずれかの表面において、ガス拡散層表面から毛羽立ち状に突出した繊維端部の本数が5000本/cm以下である、燃料電池。
  2. 前記ガス拡散層が多孔質基材を含み、前記多孔質基材が、カーボン繊維もしくは金属繊維を含むクロス、不織布またはペーパ材である、請求項1に記載の燃料電池。
  3. 毛羽立ち状に突出した繊維端部の本数が5000本/cm以下であるガス拡散層表面が、前記セパレータと接している、請求項1または2に記載の燃料電池。
  4. 電解質膜と、前記電解質膜の一方の面に配置された、カソード触媒層およびカソードガス拡散層を含むカソードガス拡散電極と、前記電解質膜の他方の面に配置された、アノード触媒層およびアノードガス拡散層を含むアノードガス拡散電極と、を有する電解質膜−電極接合体ならびに電解質膜−電極接合体の外側に配置されるセパレータを含む燃料電池の製造方法であって、
    前記カソードガス拡散層および前記アノードガス拡散層の少なくとも一方のいずれかの表面を研磨する工程を含む、燃料電池の製造方法。
  5. 前記ガス拡散層が、多孔質基材を含み、前記多孔質基材が、カーボン繊維もしくは金属繊維から成るクロス、不織布またはペーパ材である、請求項4に記載の燃料電池の製造方法。
  6. 研磨するガス拡散層の面がセパレータと接する面である、請求項4または5に記載の燃料電池の製造方法。
  7. ガス拡散層の表面を研磨する際に、ガス拡散層の表面上に存在する毛羽立ち状に突出した部位を研磨除去する、請求項4〜6のいずれか1項に記載の燃料電池の製造方法。
  8. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池、または請求項4〜7のいずれか1項に記載の燃料電池の製造方法により得られる燃料電池をモータ駆動用電源として搭載した車両。
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