JP5261898B2 - 燃料電池用電極 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池用電極に関し、より詳細には酸化剤極(カソード)での発電性能と耐久性(耐腐食性)を両立した燃料電池用電極に関する。
燃料電池は電極反応による生成物が原理的に水であるクリーンな発電システムとして注目され、特に固体高分子型燃料電池は他の燃料電池と比較し低温で作動することから、自動車等の移動体用動力源として期待されている。
しかし、固体高分子型燃料電池はいくつかの技術的課題を有しており、その一つとして酸化剤極電極(触媒層)に含まれる導電性担体であるカーボンの腐食が挙げられる。導電性担体の腐食は電池の起動/停止などの負荷の変動により電圧が急激に変化した際に起こりやすく、これは、電池の電圧が急激に変化することで下記化学式1に示す反応が起こり、水が酸化剤となって導電性担体を形成する導電性物質を酸化するためであると考えられる。下記化学式1では、導電性物質としてカーボンを用いた際のカーボンの酸化(腐食)が例示されている。導電性担体であるカーボンの腐食が進行すると、カーボン担体から剥離した電極触媒同士が凝集(触媒の反応面積=表面積の減少)してしまったり、溶出(触媒量の減少)してしまうなどして電池性能が低下するおそれがある。
そこで従来では、酸化剤極電極(触媒層)の構造を水を除去しやすい構造(上記化学式1のカーボン腐食に関与するHO自身を素早く排除する手法)にしたり、結晶性の高い導電性物質を導電性担体として用いたりして耐腐食性を高めていた。
また、特許文献1では燃料電池が電圧反転状態になった際に発生する燃料極(アノード)電極(触媒層)のカーボン腐食を抑制するために、アノード触媒層内に、水の電気分解を促進する触媒組成物として、ルテニウム、イリジウムの酸化物を添加してなる燃料極が開示されている。
特表2003−508877号公報
しかしながら、酸化剤極電極(触媒層)の構造を水を排出しやすいものにしても水の除去は完全とはならず、残存する水が上記化学式1に示す反応を引き起こす可能性がある。また、結晶性の高い導電性物質を導電性担体として用いた場合には導電性物質の耐腐食性は高まるものの、結晶性の向上に伴い導電性担体の比表面積が低下するため、導電性担体上への触媒粒子の分散性が低下(触媒担持能力が減少)してしまい発電性能が低下するおそれがある。
また、上記特許文献1では電圧反転状態にのみ着目し、燃料極側にのみ水の電気分解を促進する触媒組成物を添加しているので、発電/停止及び負荷変動時におけるセル電圧の大幅な変化時に起こる酸化剤極電極(触媒層)の導電性担体であるカーボン担体の腐食を抑制できず、発電性能の早期低下を引き起こす問題があった。また、特許文献1の電極はアノード用であり、カソードに用いた場合に十分な発電性能が得られなかった。しかしながら、固体高分子形燃料電池を自動車などの移動体用動力源として用いる場合、移動体の運転開始時、発進・加速時/停止・減速時、一時停止の状態(アイドリング状態)などに、固体高分子形燃料電池が電圧の急激な変化にさらされることが多く、セル電圧の大幅な変動にも対応しうる固体高分子形燃料電池の開発が望まれる。
そこで、本発明は上記課題を解決するために、セル電圧が大幅に変化した際に導電性担体を形成する導電性物質の種類に関わらず導電性担体の腐食を抑制することのできる燃料電池用電極を提供することを目的とする。
本発明者らは、燃料電池用電極に、酸素還元活性の高い触媒と、水電解活性の高い触媒を組み合わせることにより、アノードはもとより、カソードでの発電性能と耐久性をも両立させることができ、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、白金(以下、Ptとする。)よりも高い水電解反応活性を有する触媒(以下、水電解触媒とする。)と、
酸素還元活性が単身のPtと同等若しくはより高い高反応活性触媒(以下、高反応活性触媒とする。)と、の異なる機能を持つ触媒を有することを特徴とする燃料電池用電極により達成することができるものである。
本発明の燃料電池用電極は、燃料電池の運転中に触媒層(電極)が高い電位(1.4Vvs.SHE以上)にさらされた際に、水の電気分解(水電解)を優先的に起こすことで導電性担体であるカーボンの腐食を抑えることができる。これにより、アノード及びカソードの両電極で優れた発電性能と耐久性を両立させることができる。
本発明の燃料電池用電極は、Ptよりも高い水電解反応活性を有する触媒(水電解触媒)と、酸素還元活性が単身のPtと同等若しくはより高い高反応活性触媒(高反応活性触媒)と、の異なる機能を持つ触媒を有することを特徴とするものである。
酸化剤極側電極(触媒層)における、水電解触媒の水の電気分解を促進する作用について説明すると、電池の発電/停止及び負荷変動時におけるセル電圧の大幅な変化(上昇)により、水の分解電圧に達すると、酸化剤極側電極(触媒層)に残存している水は、水電解触媒を介して下記化学式2に示す反応により電気分解される。
上述のように電池の負荷変動によるセル電圧変化に伴い水が電気分解されるため、電池の負荷が急激に変動した際に起こる導電性担体の腐食を防止することができる。本発明は、導電性担体の腐食の原因である負荷の変動を逆に利用するものである。
特に、本発明では、上記化学式1のカーボン腐食が生じるセル電圧よりも、上記化学式2の水電解開始電位の方が低くなるような水電解触媒を選択することで、当該水電解触媒がカーボン腐食に必要な水を優先的に分解し、カーボン腐食を大幅に低減させることができるものである。
このように、本発明では、酸素還元活性の高い触媒と、水電解活性の高い触媒を組み合わせる、具体的には、導電性担体上に異なる機能を持つ触媒同士を複合化することなく共担持させるなどして、双方の機能が相互作用的に有効に発現し得る状態に組み合わせるものである。これにより、上記したように水電解触媒がカーボン腐食に必要な水を優先的に分解し、カーボン腐食(酸化劣化)を大幅に低減する機能を有効に発揮させることができる。かかる機能の発現により高反応活性触媒もカーボン腐食による凝集や溶出を受けずに済むので、該高反応活性触媒の持つ高い発電性能(異なる機能)を長期間安定して有効に発現させることができるものである。このように、本発明では、アノード側のカーボン腐食に加え、従来達成が困難であった発電/停止及び負荷変動時におけるセル電圧の大幅な変化時に起こるカソード側のカーボン腐食をも抑制することができる。その結果、発電性能の早期低下を効果的に防止することができ、燃料電池用電極、特にカソードでの発電性能と耐久性を両立させることができるものである。
また、本発明では、酸化剤極側電極(触媒層)に水電解触媒を含むことで、酸化剤極側電極(触媒層)に含まれる導電性担体を結晶性の高い導電性物質に制限しなくても、導電性担体の腐食を防止することができる。したがって、本発明では、導電性担体に用いる材料が何ら制約を受けることなく、使用用途に応じて最適な材料を選択することができる点でも優れている。即ち、耐久性に重点を置くような場合には、導電性担体を結晶性の高い導電性物質を選択しても良いし、発電性能に重点を置くような場合には、結晶性の低い導電性物質を選択すればよいと言える。いずれにせよ、固体高分子型燃料電池の発電性能を低下させることなく酸化剤極側電極(触媒層)に含まれる導電性担体の腐食を防止することができる。
以下、本発明の燃料電池用電極およびこれを用いてなる燃料電池につき、図面を用いて詳しく説明する。
図1は、本発明の燃料電池用電極を適用しうる固体高分子型燃料電池の基本構成(単セル構成)を模式的に表した断面概略図である。本発明はこれに限定されず、本発明を阻害しない範囲で従来公知の固体高分子形燃料電池の積層構造を適宜適用することができる。
図1に示すように、本発明の燃料電池用電極(触媒層)を適用しうる固体高分子型燃料電池の基本構成(単セル構成)10は、電解質膜100の両側(表面及び裏面)に、燃料極(アノード)側触媒層110aと酸化剤極(カソード)側触媒層110bとがそれぞれ対向して配置されている。本発明では、これら燃料極側触媒層110aと酸化剤極側触媒層110bの少なくとも一方に、本発明に係る燃料電池用電極が用いられていることを特徴とするものである。好ましくは酸化剤極側触媒層110bに、より好ましくは燃料極側触媒層110aと酸化剤極側触媒層110bの両方に、本発明に係る燃料電池用電極が用いられているのが望ましい。
さらに燃料極側触媒層110aと酸化剤極側触媒層110bの両側(外側)に、燃料極側ガス拡散層(以下、ガス拡散層をGDLともいう)120aおよび酸化剤極側GDL120bとがそれぞれ対向して配置され、膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly;以下、MEAともいう。)200を構成している。この各GDL120a、120bの両側(外側)に燃料極側及び酸化剤極側パレータ140a、140bが配置されている。該セパレータ140a、140bの内部にはガス流路(ガス供給溝)130a、130bが設けられている。このガス流路(ガス供給溝)130a、130bを通じて、水素含有ガス(例えば、Hガスなど)及び酸素含有ガス(例えば、Airなど)が燃料極側及び酸化剤極側のGDL120a、120bを通して燃料極側及び酸化剤極側の触媒層110a、110bにそれぞれ供給される。さらに、ガスが外部へ漏洩することを防止するために、電解質膜100の外周領域とセパレータ140a、140bとの間にガスケット150がそれぞれ配置されている。
以下、本発明の燃料電池用電極を含む燃料電池につき、構成要件ごとに説明する。なお、本発明でいう燃料電池用電極は、燃料極側触媒層110a及び酸化剤極側触媒層110bのような触媒層をいうものとし、燃料極側ガス拡散層120a及び酸化剤極側ガス拡散層120bのガス拡散層は含めないものとする。
[1]燃料電池用電極(触媒層110a、110b)
図2は、本発明の燃料電池用電極の様子を模式的に表した概略図を示す。
図2に示すように、本発明の燃料電池用電極(触媒層)110は、主として、導電性を有する担持体210に水電解触媒230と高反応活性触媒250とが(共)担持されてなる触媒270と、プロトン導電性を有する電解質290とで構成されている。以下、これらの構成部材ごとに説明する。
(1)触媒270
図2に示すように、本発明に用いられる触媒270は、水電解触媒230と、高反応活性触媒250と、の異なる機能を持つ触媒を有することを特徴とするものである。これらの触媒270は、導電性担体210に担持されていることが好ましい。高反応活性触媒250と共に水電解触媒230を導電性担体210上に分散担持させることで、異なる2つの機能相互作用的に有効に発揮させやすいためである。また電極(触媒層)の作製の容易さが得られ、さらに電子伝導性を阻害しにくいためである。かかる観点から、各触媒層110a、110bに含まれる触媒270の基本構成は、水電解触媒230と高反応活性触媒250とを(共)担持した導電性を有する担持体(単に、導電性担体ともいう。)210からなるものである。そして導電性担体210上に水電解触媒230と高反応活性触媒250とが(ほぼ均一に)分散された状態で担持されている。さらに助触媒(粒子)(図示せず)などが担持されていてもよいし、こうした水電解触媒230及び高反応活性触媒250を粒子形態以外にも被膜として担持している部分があってもよいなど、特に制限されるものではなく、任意の構成、形態を取りえるものである。以下、触媒270の基本構成の要件を説明する。
(i)高反応活性触媒250
本発明の燃料電池用電極(触媒層110a、110b)に用いることのできる高反応活性触媒250は、酸素還元活性が単身のPtと同等若しくはより高い触媒をいい、好ましくは酸素還元活性が単身のPtより高い触媒である。
ここで、酸素還元活性は、例えば、回転電極(RDE)法により測定することができる。
(i−1)高反応活性触媒の比活性
高反応活性触媒の酸素還元反応に対する触媒実面積当りの活性(比活性)は、単身のPtの2倍以上、好ましくはPtの4〜10倍であるものが望ましい。これにより、単身のPtより高活性な触媒を使用することができ、発電性能を向上させることができる。よって、高反応活性触媒の比活性がPtの2倍以上であれば、高反応活性触媒の持つ活性向上効果を有効に発現させることができ、発電性能の向上、ひいては電池出力が同じ場合には電極に含有される触媒量を低減できる点で優れている。ここで、高反応活性触媒の比活性は、回転電極(RDE)法により測定することができる。
(i−2)高反応活性触媒のECA
高反応活性触媒のECA(Pt重量辺りの電気化学的有効表面積)は、Pt単体で調製した場合に得られる数値の50%以上、好ましくは60〜100%の範囲であるものが望ましい。これにより、高反応活性触媒の持つ活性向上効果が相殺されない表面積の触媒を使用することができ、発電性能を向上させることができる。よって、高反応活性触媒のECAがPt単体で調製した場合に得られる数値の50%以上であれば、高反応活性触媒の持つ活性向上効果を有効に発現させることができ、発電性能の向上、ひいては電池出力が同じ場合には電極に含有される触媒量を低減できる点で優れている。ここで、高反応活性触媒のECAは、サイクリックボルタンメトリーにより測定することができる。
(i−3)高反応活性触媒の組成成分
高反応活性触媒中の主となる貴金属成分は、Ptであるのが望ましい。これは、酸素還元反応はPtベースの触媒で行うことで、発電性能の向上、ひいては電池出力が同じ場合には電極に含有される触媒量を低減できるためである。
また、高反応活性触媒は、主となる貴金属成分と、少なくとも1種類以上の他の貴金属成分もしくは4〜11族遷移金属成分との合金であることが好ましく、より好ましくは、主となるPt成分と、少なくとも1種類以上のPt以外の他の貴金属成分もしくは4〜11族遷移金属成分とのPt合金を使用するのが望ましい。燃料電池用電極、とりわけ酸化剤極電極(触媒層)での酸素還元活性に優れるためである。その結果、発電性能の向上、ひいては電池出力が同じ場合には電極に含有される触媒量を低減できる点で優れている。
上記主となる貴金属成分としては、Ptが好ましいが、酸素還元活性が単身のPtより高い触媒とすることができるものであれば、他の貴金属成分を用いてもよい。
上記少なくとも1種類以上の他の貴金属もしくは4〜11族遷移金属(貴金属成分を除く)としては、特に制限されるものではないが、Fe、Ni、Coなどが特に優れるものである。とりわけ過酸化水素発生の少ないCoを用い、Ptと合金化するのがより好ましいものである。貴金属は、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウムの8つの元素(8〜11族遷移金属でもある)である。このうちルテニウム、ロジウム、パラジウム(これら3つをパラジウム類と言う)、オスミウム、イリジウム、白金(これら3つを白金類と言う)の6つの元素(白金族元素)は、耐腐食性があり、非常に硬く融点も高く、非常に有用な触媒となり得るものである。特に白金類、中でもPtは、密度も非常に高く酸、アルカリなどにも侵されにくい点で優れている。かかる観点からもPtを主となる貴金属成分として用いるのが望ましいと言える。なお、これらの高反応活性触媒は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
なお、Ptと、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)および銀(Ag)よりなる群から選ばれた少なくとも1種(ベース金属)との合金などは、高反応活性触媒として機能するほか、後述する水電解触媒としても有効に寄与するものである。したがって、本発明では、少なくとも上記ベース金属を含有する化合物や複合物(詳しくは、後述する水電解触媒の組成成分の説明を参照のこと。)に関しては、水電解触媒として取り扱うものとする。
(i−4)高反応活性触媒の組成比
単身のPtよりも高い酸素還元活性を有する高反応活性触媒においては、当該高反応活性触媒の組成比(質量比)は、Pt:X=1:1〜15:1、好ましくは3:1〜8:1であるのが望ましい。高反応活性触媒の組成比(質量比)が上記に規定する範囲内であれば、Ptの露出面積も損なうことなく、十分な高活性が得られ、発電性能の向上、ひいては電池出力が同じ場合には電極に含有される触媒量を低減できる点で優れている。言い換えれば、主となる貴金属成分であるPt15質量部に対し、Pt以外の合金成分(X)が1質量部より少ないと、単身のPtよりも高い酸素還元活性を得ることができないおそれがある。一方、Pt1質量部に対し、Pt以外の合金成分(X)が1質量部より多いとPtの露出面積が減少する(高反応活性触媒のECAが低下する)おそれがある。
ここで、Xは、高反応活性触媒であるPt合金のPt以外の組成成分を示す。例えば、上記したような高反応活性触媒であるPt合金のうち、Pt以外の少なくとも1種類以上の他の貴金属もしくは4〜11族遷移金属などの成分をいう。Xが2種以上の組成成分からなる場合には、それらの組成成分の合計質量を用いて上記組成比を求めればよい。
高反応活性触媒の組成成分及び組成比は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光法により測定することができる。
(i−5)高反応活性触媒の形態・形状
高反応活性触媒の形態としては、特に制限されるものではない。具体的には、後述する導電性担体に担持させる場合には、製造条件にもよるが、表面積(=反応活性面積)を高めることができることから、通常、(微)粒子形態である(図2、3参照のこと。)。なかには、導電性担体表面(細孔内表面を含む)の極一部を被覆するような膜形態(例えば、合金粒子が溶融等により広がって膜化した形態等)が含まれていてよい。
高反応活性触媒の上記粒子形状としては、特に制限されるものではなく、球状、断面楕円形状、柱状(棒状)、不定形状などが適宜利用可能であるが、これらに何ら制限されるものではない。
高反応活性触媒の形態・形状は、例えば、SEM(走査型電子顕微鏡)観察、TEM(透過電子顕微鏡)観察などにより特定することができる。
(i−6)高反応活性触媒の平均粒子径
高反応活性触媒の平均粒子径としては、2〜20nmが好ましく、より好ましくは3〜10nmでる。平均粒子径が上記範囲内であると十分な比表面積を確保することができ、少量の高反応活性触媒で十分な効果を得ることができる。
高反応活性触媒の平均粒子径は、例えば、SEM観察、TEM観察などにより測定することができる。なお、高反応活性触媒粒子ないしその断面の中には、球状ないし円形状(断面形状)ではなく、縦横比(アスペクト比)が違う針状ないし棒状の粒子や不定形の粒子が含まれている場合もある。したがって、上記でいう触媒の粒子径は、粒子形状(ないしその断面形状)が一様でないことから、絶対最大長で表すものとする。ここで、絶対最大長とは、粒子(ないしその断面形状)91の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の長さ(L)をとるものとする(図10参照のこと)。
(i−7)高反応活性触媒の担持濃度(担持量)
高反応活性触媒250の導電性担体210への担持濃度は、触媒270全体に対して、5〜80質量%が好ましく、より好ましくは10〜75質量%、特に好ましくは15〜70質量%である。高反応活性触媒の担持濃度が5質量%以上であると高い触媒活性を維持できる点で好ましく、80質量%以下であると高い耐久性を維持できる点で好ましい。
高反応活性触媒の担持濃度は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光法により求めることができる。
(i−8)高反応活性触媒と水電解触媒との配置(組み合わせ)
図3は、導電性担体上に高反応活性触媒と水電解触媒を共担持ないし単独担持した代表的な各触媒の様子を模式的に表した概略図である。このうち、図3Aは、導電性担体上に、高反応活性触媒と複合化されていない単身の水電解触媒とが互いに均一に分散されて非接触な状態(離れた状態)で共担持された触媒の様子を模式的に表した概略図である。図3Bは、導電性担体上に、高反応活性触媒と複合化されていない単身の水電解触媒とが互いに接触した状態で共担持された触媒の様子を模式的に表した概略図である。図3Cは、導電性担体上に、高反応活性触媒と複合化されている水電解触媒が共担持された触媒の様子を模式的に表した概略図である。図3Dは高反応活性触媒と水電解触媒をそれぞれ異なる導電性担体上に(単独)担持された触媒の様子を模式的に表した概略図である。
図2、図3A〜図3Bに示すように、高反応活性触媒250と水電解触媒230とは、後述するように、同じ導電性担体210上に分散、共担持させた触媒270を用いるのが望ましい。共担持の場合、それぞれの異なる機能を有効に発現させることができるように、高反応活性触媒と水電解触媒とが配置されていればよく、図3A、Bに示すように、高反応活性触媒と水電解触媒とが複合化されていない状態で分散担持されているのが望ましい。ただし、これらに何ら制限されるものではなく、図3Cに示すように複合化された状態で分散担持された触媒が含まれていてもよい。あるいは、図3Dに示すように、各触媒230、250ごとに別々の導電性担体210上に均一分散、(単独)担持させた触媒270を作製し、これらを適当な比率、分布となるように調整して用いてもよい。更に、これら単独担持された各触媒と、共担持させた触媒と適当な比率で併用しても良いなど特に制限されるものではない。
高反応活性触媒250と水電解触媒230の大小関係は、製造方法によっても異なるが、それぞれの異なる機能を有効に発現させることができるものであればよく、特に制限されるものではない(図2、図3A〜図3Cは、あくまで1例に過ぎず、かかる配置や大小関係に何ら制限されるものではない)。例えば、共担持させる場合、高反応活性触媒250の平均粒子径(R1)と水電解触媒230の平均粒子径(R2)とは、R1/R2=0.1〜1の範囲、好ましくは0.25〜0.75の範囲になるように調整するのが望ましい。
(ii)水電解触媒
本発明の燃料電池用電極に用いることのできる水電解触媒は、Ptよりも高い水電解反応活性を有する触媒をいう。
ここで、水電解反応活性は、例えば、回転電極(RDE)法により測定することができる。
(ii−1)水電解触媒の水電解開始電位
水電解触媒の水電解開始電位は、標準水素電極(SHE)基準で1.4V以下、好ましくは1.25〜1.40Vである。これは、単身のPtでは1.4V(SHE基準)で十分な水電解反応が起こらないが、Ptよりも高い水電解反応活性を有する水電解触媒では、1.4V(SHE基準)で十分な水電解反応を起こすことができる。これにより、水電解反応を促進し、カーボン材料の腐食を低減することができる。とりわけ、燃料電池の発電/停止及び負荷変動時におけるセル電圧の大幅な変化時にカソード側で生じていた上記反応式1のカーボンの腐食(約1.4V以上で起こる)に対し、上記反応式2の水電解触媒の水電解開始電位をより低い1.4V以下に設定する。これによりセル電圧の大幅な変化時に水電解を優先的に促進することができ、カーボン腐食を大幅に抑制することができ、発電性能の早期低下を効果的に防止することができる。ここでいうカーボン材料には、高反応活性触媒や水電解触媒の導電性担体として用いられるカーボン材料のほか、電極(触媒層)に接するGDL(MILを含む)に用いられるカーボン材料等も含めてもよい。電極(触媒層)に接する界面領域のGDLでは、導電性担体と同様の環境におかれるためである。
水電解触媒の水電解開始電位は、例えば、回転電極(RDE)法により測定することができる。
(ii−2)水電解触媒の組成成分
水電解触媒は、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)および銀(Ag)よりなる群から選ばれた少なくとも1種(以下、ベース金属ともいう)を含有する化合物(以下、ベース金属含有化合物ともいう)もしくはそれらの複合物(ベース金属含有複合物)で構成されることが好ましい。これは、Ir、Ru、Agをベース金属とすると水電解活性が高く、水電解反応を促進し、カーボン材料の腐食を低減することができるためである。なお、これらの水電解触媒は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
上記ベース金属含有化合物としては、Ptよりも高い水電解反応活性を有するものであればよく、特に制限されるものではない。例えば、1種のベース金属で構成される金属元素、2種以上のベース金属からなる合金、1又は2種以上のベース金属からなる金属元素または合金の酸化物、窒化物、炭化物などが挙げられる。具体的には、Ir、Ru、Ag、Ir−Ru、Ir−Ag、Ru−Ag、Ir−Ru−Ag、これら金属元素または合金の酸化物、窒化物、炭化物などが挙げられる。
上記ベース金属含有複合物としては、Ptよりも高い水電解反応活性を有するものであればよく、特に制限されるものではない。具体的には、例えば、(a)ベース金属と貴金属(但し、ベース金属を除く。)とからなる合金(以下、ベース金属−貴金属合金ともいう)、これらベース金属−貴金属合金の酸化物、窒化物、炭化物;(b)ベース金属と貴金属(但し、ベース金属を除く。)と少なくとも1種の卑金属とからなる合金(以下、ベース金属−貴金属−卑金属合金ともいう)、これらベース金属−貴金属−卑金属合金の酸化物、窒化物、炭化物などが挙げられる。なかでも、Ir、Ir含有合金ないしそれらの酸化物(IrOなど)であることが好ましい。Ir、Ir含有合金(特にPt等の貴金属との合金)は水の電気分解を早い速度で進行させることが可能である上に、酸性雰囲気化下でも安定なためである。かかる観点から、水電解触媒がIrまたはIr合金(特にPt等の貴金属との合金)である場合、高反応活性触媒と水電解触媒との総量に対して、Irが1〜30質量%含まれることが好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。Irの含量が1質量%以上であると水電解性に優れ、30質量%以下であると発電特性に優れる。なお、上記含量は、Ir以外の他のベース金属元素についても同様の範囲が望ましいものといえる。
上記ベース金属−貴金属合金、ベース金属−貴金属−卑金属合金、及びこれら合金の酸化物、窒化物、炭化物等に用いることのできる貴金属(但し、ベース金属を除く。)としては、ベース金属と合金化することにより、Ptよりも高い水電解反応活性を有するものであればよく、特に制限されるものではない。具体的には、Au、Pt、Pd、Rh、Osの5つの元素であるが、好ましくは、Ptである。Ptとの合金化が特に水電解活性が高いためである。かかる観点から、ベース金属−貴金属合金としては、Ir−Pt、Ru−Pt、Ag−Pt、Ir−Ru−Pt、Ir−Ag−Pt、Ru−Ag−Pt、Ir−Ru−Ag−Pt等の合金が好ましく、なかでもPt−Ir、Pr−Ru、Pt−Ir−Ruが望ましい。但し、これらの合金に何ら制限されるものではない。上記貴金属の含有量は、5〜60質量%が好ましい。貴金属の含有量が60質量%以下であれば、合金化させた貴金属量に見合うだけの作用効果を十分に得ることができ、ベース金属(Irなど)も必要量を確保することができ、燃料電池の運転状況に応じて発電性能及び水電解機能を有効に発揮させることができる。貴金属の含有量が5質量%以上であれば、貴金属を合金化させたことによる作用効果を十分に発現させることができる。
また、上記ベース金属−貴金属−卑金属合金、及びこれら合金の酸化物、窒化物、炭化物等に用いることのできる卑金属としては、ベース金属及び貴金属元素(好ましくはPt)と合金化することにより、Ptよりも高い水電解反応活性を有するものであればよく、特に制限されるものではないが、酸素還元活性の観点からCo、Fe、Ni、V、Snなどが好ましい。上記卑金属の含有量は、0〜20質量%、好ましくは3〜15質量%の範囲である。卑金属の含有量が20質量%以下であれば、合金化させた卑金属量に見合うだけの作用効果を十分に得ることができ、ベース金属(Irなど)、更には貴金属(Ptなど)も必要量を確保することができ、燃料電池の運転状況に応じて発電性能及び水電解機能を有効に発揮させることができる。また、卑金属の含有量の下限値は、特に制限されるものではないが、卑金属との合金化による酸素還元活性の観点から、卑金属を用いる場合には3質量%以上を含有させるのが望ましい。
上記貴金属及び卑金属における観点から、上記ベース金属−貴金属(好ましくはPt)−卑金属合金としては、例えば、Ir−Pt−Co、Ru−Pt−Co、Ag−Pt−Co、Ir−Pt−Fe、Ru−Pt−Fe、Ag−Pt−Feなどの合金が挙げられる。なかでもIr−Pr−Coが酸素還元活性の観点から望ましい。少なくともベース金属(なかでもIr)と、貴金属(なかでもPt)とを含む合金(例えば、Ir−Pt合金など)やそれらの酸化物(ベース金属酸化物、ベース金属−貴金属合金酸化物;例えば、IrOなど)等を水電解触媒230として用いることで下記化学式3に示す発電のための酸素還元反応を促進させることができ、水の電気分解の効果と併せて燃料電池の発電の効果も向上させることができる。但し、これらの合金に何ら制限されるものではない。
また、上述したように導電性担体210の腐食反応が進行するのは低負荷から高負荷への移行が瞬時に行われた場合であり、そのような環境下では、Ir等のベース金属は、酸素還元反応ではなく水電解反応を促進させることができる。このため、通常の発電時には化学式3に示す反応が促進され、低負荷から高負荷への移行が瞬時に行われた場合には上記化学式2に示す反応が優先される。
ベース金属−貴金属合金(例えば、Ir−Pt合金)やそれらの酸化物(ベース金属酸化物、ベース金属−貴金属合金酸化物;例えば、IrOなど)において、ベース金属(Ir等)含有量が50質量%以上であると好ましい。ベース金属含有量が50質量%未満であるとベース金属(Ir等)が水電解触媒表面に存在する量が少なくなり、水の電気分解の効果が十分に得られないおそれがある。
(ii−3)好適な水電解触媒
好ましい水電解触媒としては、上記ベース金属−貴金属合金もしくはベース金属の酸化物である。これはベース金属に対し、貴金属、特にPtとの合金化や酸化物が特に水電解活性が高く、水電解反応を促進し、カーボン材料の腐食を大幅に低減することができるためである。
(ii−4)酸化物中の酸素含有量
上記水電解触媒として酸化物(例えば、ベース金属やその合金の酸化物)を用いる場合、当該酸化物中の酸素含有量は、ベース金属の価数にもよるが、モル比で0.5〜3、好ましくは0.75〜2.75である。酸化物中の酸素含有量が、モル比で0.5〜3の範囲内であれば、十分な水電解活性を得ることができ、また水電解触媒の溶出を抑制することができる点で望ましい。一方、酸化物中の酸素含有量が、モル比で0.5〜3の範囲を外れる場合には、十分な水電解活性を得ることが困難となるおそれがあるほか、酸化物の形成が不十分となるおそれがあり、酸化物形成が不十分な水電解触媒(特にベース金属)が溶出しやすくなるおそれがあるため好ましくない。
水電解触媒である酸化物中の酸素含有量は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光法により測定することができる。
(ii−5)水電解触媒の形態・形状
水電解触媒の形態としては、特に制限されるものではない。具体的には、後述する導電性担体に担持させる場合には、製造条件にもよるが、表面積(=反応活性面積)を高めることができることから、通常、(微)粒子形態である。なかには、導電性担体表面(細孔内表面を含む)の極一部を被覆するような膜形態(例えば、合金粒子が溶融等により広がって膜化した形態等)が含まれていてよい。
水電解触媒の粒子形状としては、特に制限されるものではなく、球状、断面楕円形状、柱状(棒状)、不定形状などが適宜利用可能であるが、これらに何ら制限されるものではない。
水電解触媒の形態・形状は、例えば、SEM観察、TEM観察などにより特定することができる。
(ii−6)水電解触媒の平均粒子径
水電解触媒の平均粒子径としては、2〜15nmが好ましく、2〜10nmであり、さらに好ましくは2〜8nmであり、特に好ましくは2〜5nmである。平均粒子径が上記範囲内であると十分な比表面積を確保することができ、少量の水電解触媒で十分な効果を得ることができる。
水電解触媒の平均粒子径は、例えば、SEM観察、TEM観察などにより測定することができる。なお、水電解触媒粒子ないしその断面の中には、球状ないし円形状(断面形状)ではなく、縦横比(アスペクト比)が違う針状ないし棒状の粒子や不定形の粒子が含まれている場合もある。したがって、上記でいう触媒の粒子径は、粒子形状(ないしその断面形状)が一様でないことから、絶対最大長で表すものとする。
(ii−7)水電解触媒の担持濃度(担持量)
水電解触媒230の導電性担体210への担持濃度は、触媒270全体に対して、1〜70質量%が好ましく、より好ましくは5〜60質量%である。水電解触媒の担持濃度が1質量%以上であると水電解性に優れ、燃料電池の運転中に触媒層(電極)が高い電位(1.4Vvs.SHE以上)にさらされた際に、高い水電解反応活性を有効かつ優先的に発現することができる点で好ましく、70質量%以下であると添加量に見合った効果が得られ、併用する高反応活性触媒の担持量を相対的に高めることができるため、高い発電性能と高い耐久性を両立させることができる点で好ましい。
高反応活性触媒及び水電解触媒の担持濃度は、共担持の場合でも、それぞれの触媒を異なる導電性担体21に単独担持させる場合でも同様である。カーボン腐食が促進される高Pt触媒等の高反応活性触媒近傍の水を優先的に分解し、カーボン腐食を抑制することができる点では、共担持さる方が望ましいといえる。
水電解触媒の担持濃度は、ICP発光分光法により求めることができる。
(ii−8)高反応活性触媒と水電解触媒との比率
高反応活性触媒(A)と水電解触媒(B)との比率(質量比)は、これらの異なる機能を有効に発現させることができるものであればよい。具体的には、水電解触媒(B)は電極に含まれる高反応活性触媒(A)に対して質量比で0.01〜1.5倍含まれることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.2倍である。上記範囲を満足する場合には、これらの触媒の持つ異なる2つの機能を共に(相互作用的に)有効に発現させることができ、発電性能と耐久性を両立させることができる。水電解触媒(B)が高反応活性触媒(A)に対して0.01倍以上であると高い酸素還元活性と共に水電解性も運転状況に応じて有効かつ効果的に機能させることができ、1.5倍以下であると、高い酸素還元活性を損なうことなく、添加量に見合った高い水電解反応活性を得ることができる。一方、高反応活性触媒と水電解触媒との比率が上記範囲を外れる場合には、異なる2つの機能バランスがくずれ、いずれか一方の機能を十分に発現させるのが困難となるおそれがある。
また、触媒270の組成は、高反応活性触媒の主成分であるPtと水電解触媒の主成分であるベース金属元素(例えば、Ir等)とが、モル比でPt:ベース金属(Ir等)=1〜15:1、好ましくは3〜8:1の範囲となるように調製しても良い。水電解触媒の主成分であるベース金属元素1質量部に対し、高反応活性触媒の主成分であるPtが1質量部以上であれば、高酸素還元活性である点で優れている。一方、水電解触媒の主成分であるベース金属元素1質量部に対し、高反応活性触媒の主成分であるPtが15質量部以下であれば、高水電解活性である点で優れている。
(iii)導電性担体
本発明の触媒270は、(a)高反応活性触媒250と水電解触媒230とを導電性担体210上に(好ましくは複合化せずに)共担持させることが好ましい(図2、図3A〜B参照のこと)。ただし、(b)高反応活性触媒250と水電解触媒230をそれぞれ異なる導電性担体210a、210b上に(単独)担持させたものを適当な比率で混合して用いてもよい(図3D参照)。(c)さらに、これら(a)(b)の触媒270を組み合わせて用いてもよいなど、特に制限されるものではない。
水電解触媒230と高反応活性触媒250とが同じ導電性担体210に共担持されている場合、電極(触媒層)の作製工程が減るほか、異なる触媒同士が近接していることで、異なる機能を相互作用的に発揮させることができ、カーボン腐食が起こるによる発電性能をより一層低減することができるという利点がある。即ち、セル電圧の大幅な変動時、高反応活性触媒250自身の触媒作用を通じて高反応活性触媒250近傍にある水とカーボン担体とが反応していたが、水電解触媒230の存在により、より低い電位で当該水分を優先的に電解させることができるものである。そのため、高反応活性触媒250の比較的近傍に水電解触媒230が分散担持されている方が、高反応活性触媒250近傍で起こるカーボン腐食反応に供される水分に対して優先的ないし選択的に電解させることができる。即ち、当該カーボン腐食反応に使われる水分の供給を絶つことで、当該腐食反応の進行を阻止することができるものである。
一方、水電解触媒230と高反応活性触媒250とがそれぞれ異なる導電性担体210a、210bに担持されている場合(図3D参照のこと)、いずれか一方の触媒がもう一方の触媒を被覆してしまうリスクを低減できるという利点がある。
これらの高反応活性触媒250と水電解触媒230を単独又は共担持させることのできる導電性担体210は、担持する触媒の種類や担持形態(単独/共担持)に応じて使い分けても良いが、特に使い分けなくてもよい。以下では、いずれにも適用し得る導電性担体全般につき、説明する。
(iii−1)導電性担体の材料
高反応活性触媒や電解触媒が担持される導電性担体(高反応活性触媒用担体ともいう)は、電気伝導性を有する材料であれば特に制限されるものでないが、電気伝導性を有する炭素材料もしくは酸化物であるのが望ましい。高反応活性触媒及び水電解触媒の両触媒とも触媒として機能するには電子伝導が確保されている必要があるからである。
ここで、上記導電性担体として用いることのできる電気伝導性を有する炭素材料としては、特に制限されるものではないが、電子伝導性と触媒担持性の観点からは、カーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボンフィブリル、フラーレンおよび活性炭からなる群より選択されてなるカーボン材料が望ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。なお、これらのカーボン材料は、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、実質的に炭素原子からなるとは、2〜3質量%程度以下の添加物(ないし不純物)の含有が許容されることを意味する。本発明では、導電性担体として、上記カーボン材料以外の多孔質の導電性担体を、本発明の作用効果を損なわない範囲内で併用してもよい。
上記導電性担体として用いることのできる電気伝導性を有する酸化物としては、特に制限されるものではなく、例えば、Nb、MnO、ZrO、ReO、SnO、TiO、LiTi、LiV、WO、NiO、V、V、FeO、EuO、PdCoOなどが挙げられるほか、12Ca1−xSrO・7Al(x=0〜1)などのような電気伝導性を示す複合酸化物結晶化合物などであってもよい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
(iii−2)導電性担体の平均粒子径
導電性担体の平均粒子径は、2nm〜1μmが好ましく、より好ましくは5〜200nm、特に好ましくは10〜100nmである。平均粒子径が2nm以上であると有効な導電性ネットワークを形成することができる点から好ましく、1μm以下であると触媒層の厚みを適切な範囲で制御できる点から好ましい。
(iii−3)導電性担体の形状
導電性担体の形状としては、特に制限されるものではない。表面積(=触媒担持面積=担持量)を高めることができることから、通常、多孔質の粒子形態である(図2、3参照のこと。)。上記粒子形状としては、特に制限されるものではなく、球状、断面楕円形状、柱状(棒状)、不定形状などが適宜利用可能であるが、これらに何ら制限されるものではない。
導電性担体の形態・形状は、例えば、SEM(走査型電子顕微鏡)観察、TEM(透過電子顕微鏡)観察などにより特定することができる。
(iii−4)導電性担体の比表面積
導電性担体の比表面積としては、より大きい方が触媒担持面積を持つことができる点では有利であるが、上記したように耐久性の観点からは結晶性を高めた方がよく、使用目的に応じて、耐久性と電池性能とを適当にバランスさせればよい。かかる観点から、導電性担体の比表面積は、5〜2000m/g、好ましくは100〜1000m/gの範囲である。
導電性担体の比表面積は、BET法により測定するものとする。
(iii−5)各触媒(高反応活性触媒及び水電解触媒)の担持状態
本発明では、水電解触媒と電極触媒とは同じ導電性担体に担持されていてもよいし、それぞれ異なる導電性担体に担持されていてもよい。水電解触媒と電極触媒とが同じ導電性担体に担持されている場合、触媒層の作製工程が減るという利点があり、それぞれ異なる導電性担体に担持されている場合、電極触媒が水電解触媒を被覆してしまうリスクを低減できるという利点がある。かかる観点から、高反応活性触媒が担持されたカーボン担体上に、前記高反応活性触媒と複合化されていない単身の水電解触媒が共担持された触媒であることが特に好ましい(図1A参照のこと)。ここで、複合化とは、例えば、カーボン担体11上に、高反応活性触媒13と水電解触媒15とが一体化(合金化)または触媒粒子同士が接触、接合ないし融合)して偏在している状態をいうものとする(図1B、図1C参照のこと)。
本発明では、図3に示すように、高反応活性触媒250が担持された導電性担体、特に炭素材料からなる導電性担体(カーボン担体)210上に、該高反応活性触媒250と複合化されていない単身の水電解触媒230が共担持された触媒270であるのが望ましい。複合化することなく共担持することで、カーボン腐食が促進される高反応活性触媒(とりわけ、Pt触媒など)250近傍の水を、高反応活性触媒250の近傍に水電解触媒230が共担持されていることによって優先的かつ効果的に分解することができるためである。また、複合化することなく共担持することで、カーボン担体210の露出面積も減少し、カーボン腐食を抑制することができるなど、カーボン腐食低減効果が大きいためである。
ここで、高反応活性触媒250と水電解触媒230とが複合化されている状態とは、製造条件にもよるが、例えば、図3Cに示すように、導電性担体210上に、高反応活性触媒250と水電解触媒230とが溶融(合金化)により一体化されていたり、あるいは一方の触媒粒子表面をもう一方の触媒成分で被覆することにより一体化されているような状態のものをいう。特に、後者の場合には、被覆されている触媒粒子の触媒活性機能を有効に発現することが困難であるため好ましくない。但し、それぞれの触媒の機能を有効に発現することができるように複合化されて共担持されている場合には、本発明の燃料電池用電極として有効に利用することができる。
したがって、高反応活性触媒250と水電解触媒230とが複合化されていない状態とは、図3A、Bに示すように、高反応活性触媒250と水電解触媒230とが一体化することなく、個々の粒子形状を保持した状態で接していたり(接触部で一部溶融していても良い。図3B参照)、個々の粒子が離れている(非接触な)状態ものをいう(図3A参照)。なお、製造条件にもよるが、高反応活性触媒250と水電解触媒230とが全て複合化されていない状態が最も望ましいが、本発明の作用効果を損なわない範囲内であれば、高反応活性触媒250と水電解触媒230とが複合化されている状態のものを含んでいても良い。具体的には、高反応活性触媒250と水電解触媒230とが複合化されている状態のものの割合が、全体の30%以下であるのが望ましい。
(iii−6)電極内での触媒270の含有量
触媒270の電極中の含有量は、電極(触媒層)に対し、10〜50質量%、好ましくは15〜40質量%の範囲である。触媒270の含有量が10質量%以上であれば、電極内において触媒270が持つ異なる触媒活性機能を有効かつ効果的に発揮できるだけの触媒量を有するため、高い発電性能と耐久性を両立させることができる。触媒270の含有量が50質量%以下であれば、触媒270の添加に見合うだけの作用効果を有効に享受することができる。また、電極中の電解質290も必要量を確保することができているため、電極内での高いプロトン導電性を保持することもできる。
(iii−7)電極内での高反応活性触媒及び水電解触媒の濃度分布
本発明では、電極中に、高反応活性触媒250と水電解触媒230の濃度(担持量)分布が、(a)いずれも均一になるように分散させてもよいし、あるいは(b)面内方向および/または厚さ方向に濃度勾配を持つように分散させてもよい(機能傾斜化させてもよい)。
上記(b)の濃度分布形態では、高反応活性触媒250と水電解触媒230の濃度(担持量)分布のうち、いずれか一方の触媒のみに面内方向および/または厚さ方向に濃度勾配を持たせ、もう一方の触媒は均一に分散させてもよい。あるいは高反応活性触媒250と水電解触媒230の濃度(担持量)分布につき、いずれも面内方向および/または厚さ方向に濃度勾配を持つように分散させてもよい。
上記(b)の濃度分布形態の中でも、導電性担体210上での高反応活性触媒250に対する水電解触媒230の担持量比が、面内分布を有することが望ましい。劣化が少ない部位では水電解触媒を減らして全体の使用量を低減することができるためである。これにより、水電解触媒を最低限の使用量にすることができ、コストが安く済むほか、高反応活性触媒を相対的に高め、燃料電池の発電性能を向上させることができる。
以下、上記(b)の濃度分布形態例につき、説明する。
(b−1)厚さ方向の濃度分布(濃度勾配)について
図4は、燃料電池用電極(触媒層)において、水電解触媒の担持濃度を厚さ方向に分布(濃度勾配)させた様子を模式的に表した断面概略図である。このうち、図4Aは、触媒層内の水電解触媒の担持濃度を、GDL側よりも電解質膜側に多く配置されるように、厚さ方向に濃度勾配を持たせて(機能傾斜化させて)分布した様子を模式的に表した断面概略図である。図4Bは、触媒層として、電解質膜側に水電解触媒を含む層を、GDL側に水電解触媒を含まない層を積層して、厚さ方向に水電解触媒の濃度分布を形成した様子を模式的に表した断面概略図である。
燃料電池用電極(触媒層)110において、導電性担体210の腐食は電解質膜100に近い方ほど起こりやすいが、これは電解質膜100に近い方が水の生成が多いためであると考えられる。このことから、図4Aに示すように水電解触媒230は、燃料電池用電極(触媒層)110においてGDL120側よりも電解質膜100側に多く配置されていることが好ましい。また、図4Bに示すように燃料電池用電極(触媒層)110を電解質膜100と接する、水電解触媒230を含む層(i)と、GDL120および前記層(i)の間に介在する、水電解触媒230を含まない層(ii)と、から構成することも好ましい。ただし、本発明は図4に限定されない。例えば層(ii)は層(i)よりも少ない量の水電解触媒230を含む層であってもよいし、燃料電池用電極(触媒層)110は3層以上の層からなってもよい。
上記のような濃度分布を実現するには、図3Dに示すような触媒270a、270bを用意し、これらの混合比率を変えた触媒スラリーを多数調製する。次に濃度勾配が形成されるように、水電解触媒230担持触媒270aの含有濃度の異なる触媒スラリーを順次塗布、形成させることにより、図4A、Bに示すような燃料電池用電極(触媒層)110を構成することができる。あるいは、図3A、Bに示すような触媒270であって、高反応活性触媒250の担持濃度は全て同じで、尚且つ水電解触媒230の担持濃度が異なる触媒270を数種類用意し、同様に、これらの混合比率を変えた触媒スラリーを多数調製する。次に、濃度勾配が形成されるように、水電解触媒230の担持濃度の異なる触媒スラリーを順次塗布、形成させることによっても、図4A、Bに示すような燃料電池用電極(触媒層)110を構成することができる。上記の例では、上記水電解触媒230のみ厚さ方向に濃度分布を持たせる例であるが、水電解触媒230及び高反応活性触媒250の双方に濃度分布を持たせてもよいし、高反応活性触媒250のみに濃度分布を持たせるようにしてもよい。なお、触媒スラリーの調製法は、特に制限されるものではなく、従来公知の調製法を利用することができるものである(詳しくは後述する実施例参照のこと。)。
上述のように、燃料電池用電極(触媒層)110において一つの層の中で水電解触媒230が電解質膜100側に多く配置されるように水電解触媒230の濃度勾配をつけたり、燃料電池用電極(触媒層)110を前記層(i)と層(ii)で構成したりすることで、効率よく水の電気分解を促進することができ、より少ない量の水電解触媒230で導電性担体の腐食の防止効果を発揮することができる。
(b−2)面内方向の濃度分布(濃度勾配)について
図5は、燃料電池用電極(特に酸化剤極触媒層)において、水電解触媒の担持濃度を面内方向に分布(濃度勾配)させた様子を模式的に表した、該酸化剤極触媒層、酸化剤極側GDLおよび酸化剤ガス供給溝を備えた酸化剤極側セパレータの分解斜視図である。図6は、触媒層−電解質膜接合体において、酸化剤極触媒層の水電解触媒の担持濃度を面内方向及び厚さ方向に分布(濃度勾配)させた様子を模式的に表した断面概略図である。
面内方向に濃度分布を持たせる例としては、例えば、図5に示すように、水電解触媒230は、酸化剤ガス供給溝130bの、酸化剤ガス入口側130b−1よりも酸化剤ガス出口側130b−2に多く配置してもよいし、酸化剤ガス出口側130b−2よりも酸化剤ガス入口側130b−1に多く配置してもよいし、酸化剤ガス入口側130b−1と酸化剤ガス出口側130b−2とに他の部位(中央部分)よりも多く配置してもよい。
上記のような濃度分布を実現する場合にも、図3Dに示すような触媒270a、270bを用意し、これらの混合比率を変えた触媒スラリーを多数調製する。次に面内方向に濃度勾配が形成されるように、水電解触媒230担持触媒270aの含有濃度の異なる触媒スラリーを面内方向で取り替えながら順次塗布、形成させることにより、図5に示すような燃料電池用電極(触媒層)110を構成することができる。あるいは、図3A、Bに示すような触媒270であって、高反応活性触媒250の担持濃度は全て同じで、尚且つ水電解触媒230の担持濃度が異なる触媒270を数種類用意し、同様に、これらの混合比率を変えた触媒スラリーを多数調製する。次に、面内方向に濃度勾配が形成されるように、水電解触媒230の担持濃度の異なる触媒スラリーを面内方向で取り替えながら順次塗布、形成させることによっても、図5に示すような燃料電池用電極(触媒層)110を構成することができる。上記の例では、酸化剤極側触媒層110bについて、上記水電解触媒230のみ面内方向に濃度分布を持たせた例であるが、水電解触媒230及び高反応活性触媒250の双方面内方向に濃度分布を持たせてもよいし、高反応活性触媒250のみ面内方向に濃度分布を持たせるようにしてもよい。また、燃料極側触媒層110aについても、同様に面内方向に濃度分布を形成するようにしてもよいなど、特に制限されるものではない。
上述のように、酸化剤極側触媒層110bの中でも導電性担体210の腐食は酸化剤ガス供給溝130bの酸化剤ガス入口側130b−1よりも酸化剤ガス出口側130b−2に近い方が起こりやすいが、これは出口側130b−2に近い方が水の生成が多いためであると考えられる。このことから、図5に示すように水電解触媒230を、酸化剤ガス供給溝130bの酸化剤ガス入口側130b−1よりも酸化剤出口側130b−2に多く配置すると、より少ない量の水電解触媒230で効率よく水の電気分解を促進することができるという利点がある。ただし、本発明は、図5に限定されず、例えば、図6に示すように、水電解触媒230の濃度の違う2層以上の層111〜114を、酸化剤ガス入口側130b−1の層111、113よりも酸化剤出口側130b−2に濃度の高い層112、114が配置されるように並べてこれを酸化剤極側触媒層110bとしてもよい。更に、図6に示すように、上述した水電解触媒230を電解質膜100側に多く配置する構造あるいは、水電解触媒230を多くした電解質膜100側の層(i)113、114と水電解触媒230を少なくしたGDL側の層(ii)111、112とで構成する構造と組み合わせてもよい。図6では、濃度の高い順に、層114、112、113、111となっている例である。また、燃料極側触媒層110aには、層113と同じ濃度の単一層(層内での濃度勾配なく、層全体が同じ濃度のもの)を用いた例を示している。
水電解触媒230を酸化剤ガス供給溝130bの酸化剤ガス出口側130b−2よりも酸化剤ガス入口側130b−1に多く配置した場合、起動時の燃料極側のカーボン腐食耐性が向上するという利点がある。水電解触媒230を酸化剤ガス入口側130b−1に多く配置する際には、上述の酸化剤ガス出口側130b−2に多く配置する場合と同様に、一層の触媒層110の中で水電解触媒230の含有量(濃度)に勾配をつけてもよいし、水電解触媒230の含有量(濃度)が異なる二層以上の触媒層110を用いてもよい。
一方、水電解触媒230を酸化剤ガス供給溝130bの酸化剤ガス入口側130b−1と酸化剤ガス出口側130b−2とに他の部位よりも多く配置した場合、起動時および停止時の燃料極側の腐食耐性が向上するという利点がある。水電解触媒230を酸化剤ガス入口側130b−1と酸化剤ガス出口側130b−2とに多く配置する場合も、一層の触媒層110bの中で水電解触媒230の含有量(濃度)に勾配をつけてもよいし、水電解触媒230の含有量(濃度)が異なる二層以上の触媒層110を用いてもよい。
(iii−9)触媒の担持方法
導電性担体210への高反応活性触媒250及び水電解触媒230の担持は公知の方法で行うことができる。
例えば、高反応活性触媒250ないし水電解触媒230のいずれか一方の第1の触媒金属成分を第1の溶媒に溶解して第1の触媒金属水溶液を調製する。次に、カーボン粒子などの導電性担体210、第1の触媒金属水溶液、および還元剤を第2の溶媒に加えた混合液を調製し、第1の触媒金属成分を還元・析出させカーボン粒子などの導電性担体210に担持させることができる。次に、濾過により固形分を分離した後、固形分を乾燥することにより高反応活性触媒250ないし水電解触媒230のいずれか一方を導電性担体210上に分散担持させることができる。
同様にして、高反応活性触媒250ないし水電解触媒230のもう一方の第2の触媒金属成分を第3の溶媒に溶解して第2の触媒金属水溶液を調製する。次に、先に高反応活性触媒250ないし水電解触媒230の一方が担持された導電性担体210、第2の触媒金属水溶液、および還元剤を第4の溶媒に加えた混合液を調製し、第2の触媒金属成分を還元・析出させカーボン粒子などの導電性担体210に共担持させることができる。次に、濾過により固形分を分離した後、固形分を乾燥することにより高反応活性触媒250及び水電解触媒230を導電性担体210上に、複合化させることなく、分散、共担持させることができる。
上記第1ないし第2の触媒金属水溶液として、高反応活性触媒250の触媒金属成分にPtを用いる場合、塩化白金酸溶液またはジニトロジアミン白金錯体溶液などを用いることができる。高反応活性触媒250の触媒金属成分にPt合金、例えば、Pt−Co合金を用いる場合、塩化コバルトなどを用いることができる。水電解触媒230の触媒金属成分にIrやその酸化物(IrO)を用いる場合、塩化イリジウム酸などを用いることができる。還元剤として例えば、炭素数1〜6の有機酸類、アルコール類、炭素数1〜3のアルデヒド類、水酸化ホウ素ナトリウムおよびヒドラジンなどを用いることができる。炭素数1〜6の有機酸類としては特に限定されないが、ギ酸、酢酸、シュウ酸またはクエン酸などが挙げられる。アルコール類としては特に限定されないが、メタノール、エタノール、エチレングリコール、2−プロパノールまたは1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。炭素数1〜3のアルデヒド類としては特に限定されないが、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドまたはアクロレインなどを用いることができる。第1〜第4の溶媒としては、水、低級アルコール、希酸などを用いることができる。
なお、水電解触媒230に金属酸化物を用いる場合には、上記担持方法などによって水電解触媒の金属成分を還元・析出させて、導電性担体210上に担持させる。次に、濾過により固形分を分離した後、固形分を乾燥し、更に熱処理を行うことで、所望の酸化物形態の水電解触媒230を導電性担体210上に分散担持させることができる。上記熱処理条件としては、水電解触媒や高反応活性触媒の種類、導電性担体の材料などによっても異なるが、通常、不活性雰囲気下、300〜1000℃の温度で0.5〜6時間加熱すればよい。
これら水電解触媒230及び高反応活性触媒250の担持方法に関しては、上記方法に何ら制限されるものではなく、特許文献1の段落0048〜0072に記載の担持方法などを利用することもできる。
例えば、1:1の原子比のPt−Ru合金を、カーボン担体(例えば、カーボンブラック)上に担持させるには、担持工程として、まず、脱塩水中でカーボンブラックのスラリーを作製する。次いで、重炭酸ナトリウムを追加して、このスラリーを30間沸騰させる。スラリーが沸騰している間、HPtClおよびRuClを適切な比で含む混合溶液をスラリーに追加する。次いで、このスラリーを冷却して、ホルムアルデヒド溶液を追加して、スラリーを再度沸騰させる。次いで、スラリーを濾過して、標準的な硝酸銀試験によって検出されるような可溶性の塩化物イオンが濾過液から無くなるまで、フィルタ床上の濾滓を脱塩水で洗浄する。次いで、この濾滓を空気中、適当な温度(例えば、105℃)で乾燥して、20wt%Pt−10wt%Ru合金担持カーボンブラックを得ることができる。
また、上記担持工程により調整されたPt−Ru合金担持カーボンブラック上にRuOを担持させには、共担持工程として、Pt−Ru合金担持カーボンブラック含有のスラリーを沸騰した脱塩水中で調製する。次いで、重炭酸カリウムを追加して、沸騰中にRuCl溶液を適切な比で追加する。その後、濾過液から標準的な硝酸銀試験によって検出されるような可溶性塩化物イオンが無くなるまで、上記のように、スラリーに、冷却、濾過および脱塩水での濾滓の洗浄を行う。次いで、質量変化が見られなくなるまで、濾滓を空気中、適当な温度(例えば、105℃)で乾燥する。最後に、窒素雰囲気下、適当な温度(例えば、350℃)で所定時間(例えば、2時間)加熱することで、Pt−Ru合金とRuOを、複合化させることなく、共担持させたカーボンブラックを得ることができる。
上記方法を利用して、Pt−Co合金をカーボン担体(例えば、カーボンブラック)上に担持させるには、担持工程として、まず、脱塩水中でカーボンブラックのスラリーを作製する。次いで、重炭酸ナトリウムを追加して、このスラリーを30間沸騰させる。スラリーが沸騰している間、HPtClおよびCoClを適切な比で含む混合溶液をスラリーに追加する。次いで、このスラリーを冷却して、ホルムアルデヒド溶液を追加して、スラリーを再度沸騰させる。次いで、スラリーを濾過して、標準的な硝酸銀試験によって検出されるような可溶性の塩化物イオンが濾過液から無くなるまで、フィルタ床上の濾滓を脱塩水で洗浄する。次いで、この濾滓を空気中、適当な温度(例えば、105℃)で乾燥して、Pt−Co合金(=高反応活性触媒)担持カーボンブラックを得ることができる。
次に、上記担持工程により調整されたPt−Co合金担持カーボンブラック上にIrOやRuO等の酸化物形態の水電解触媒を担持させには、共担持工程として、Pt−Co合金担持カーボンブラック含有のスラリーを沸騰した脱塩水中で調製する。次いで、重炭酸カリウムを追加して、沸騰中にIrCl溶液やRuCl溶液を適切な比で追加する。その後、濾過液から標準的な硝酸銀試験によって検出されるような可溶性塩化物イオンが無くなるまで、上記のように、スラリーに、冷却、濾過および脱塩水での濾滓の洗浄を行う。次いで、質量変化が見られなくなるまで、濾滓を空気中、適当な温度(例えば、105℃)で乾燥する。最後に、窒素雰囲気下、適当な温度(例えば、350℃)で所定時間(例えば、IrO4時間、RuOで2時間)加熱することで、Pt−Co合金(=高反応活性触媒)とIrOまたはRuO(=水電解触媒)とを複合化させることなく、共担持させたカーボンブラックを得ることができる。複合化させないように共担持さえるには、例えば、上記熱処理時の加熱温度や加熱時間などの条件を適当に調整することなどにより行うことができるが、これらの条件のみに制限されるものではない。
更に、無触媒のカーボン担体(例えば、アセチレンブラック)上に最初にRuO等の水電解触媒を担持させるには、上記共担持工程を最初に行えばよい。
また、RuOとTiOの固溶体(あるいはRuOとIrOの固溶体)を含む触媒をカーボン担体上に担持させるには、担持工程として、沸騰中の脱塩水においてカーボンブラックのスラリーを作製する。次いで、重炭酸ナトリウムを追加し、その後、沸騰中にRuClおよびTiClを適切な比で含む混合溶液(あるいはRuClおよびIrClを適切な比で含む混合溶液)を追加する。次いで、標準的な硝酸銀試験によって検出されるような可溶性の塩化物イオンが濾過液から無くなるまで、上記のように、スラリーに、冷却、濾過および脱塩水での濾滓の洗浄を行う。次いで、質量変化が見られなくなるまで、濾滓を空気中、適当な温度(例えば、105℃)で乾燥する。最後に、窒素雰囲気下、適当な温度(例えば、350℃)で所定時間(例えば、RuOとTiOの固溶体では2時間;RuOとIrOの固溶体では6時間)加熱することで、RuOとTiOの固溶体(あるいはRuOとIrOの固溶体)担持カーボンブラックを得ることができる。
同様に、IrOとTiOの固溶体を含む触媒をカーボン担体上に担持させるには、担持工程として、沸騰中の脱塩水においてカーボンブラックのスラリーを作製する。次いで、重炭酸ナトリウムを追加し、その後、沸騰中に、IrCl溶液、次いでTiCl溶液を適切な比で追加する。スラリーのpHは、重炭酸ナトリウムをさらに追加することによって7〜8の間で維持する。次いで、標準的な硝酸銀試験によって検出されるような可溶性の塩化物イオンが濾過液から無くなるまで、上記のように、スラリーに、冷却、濾過および脱塩水での濾滓の洗浄を行う。次いで、質量変化が見られなくなるまで、濾滓を空気中、適当な温度(例えば、105℃)で乾燥する。最後に、窒素雰囲気下、適当な温度(例えば、350℃)で所定時間(例えば、6時間)加熱することで、IrOとTiOの固溶体担持カーボンブラックを得ることができる。
上記に例示した担持方法は、従来公知の担持方法の1例に過ぎず、本発明は、これらの担持方法に何ら制限されるものではなく、従来公知の他の担持方法を利用して、高反応活性触媒250と水電解触媒230とを複合化させることなく、共担持させるようにすることもできる。
(3)電解質290
燃料電池用電極(触媒層110a、110b)に含まれる電解質290は、プロトン導電性を有するものであればよいが、プロトン導電性を有するバインダ(ないしアイオノマ)として用いられるものである。そのため、電解質290は、上記触媒270(特に高反応活性触媒粒子250及び水電解触媒粒子230)の周囲にプロトン導電性を有するバインダとして機能するように配されている。これにより、導電性担体210上の高反応活性触媒粒子250及び水電解触媒粒子230の近傍部に電池反応に適した三層界面を形成することができ、プロトン伝導性などを向上させ、電極構造を安定して維持することができ、電極性能を高めることができる。
上記電解質290としては、特に制限されるものではなく、例えば、フッ素系樹脂を用いてなるもの、芳香族系炭化水素樹脂を用いてなるもの等が挙げられる。さらに、電解質膜100の項で説明する電解質などを用いることができる。即ち、Nafion溶液などのパーフルオロスルホン酸ポリマー系のプロトン導電体、リン酸などの無機酸を炭化水素系高分子化合物にドープさせたもの、一部がプロトン導電体の官能基で置換された有機−無機ハイブリッドポリマー、高分子マトリックスにリン酸溶液や硫酸溶液を含浸させたプロトン導電体などからなるイオン交換樹脂が挙げられる。パーフルオロスルホン酸ポリマー系のプロトン導電体として、具体的には、炭素原子とフッ素原子のみからなる重合体だけではなく、水素原子が全てフッ素原子と置換されていれば酸素原子等を含有するものなどが挙げられ、CF=CFに基づく重合単位とCF=CF−(OCFCFX)−O−(CF−SOHに基づく重合単位(式中、Xはフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、mは0〜3の整数であり、nは1〜12の整数であり、pは0又は1である。)とを含む共重合体などがある。
上記フッ素系樹脂を用いてなる電解質としては、後述する電解質膜の項で説明するフッ素系樹脂と同様に、イオン交換基を備えた電解質を用いることができる。上記フッ素系樹脂を用いてなる電解質としては、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン‐テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン−g−ポリスチレンスルホン酸系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン−g−ポリスチレンスルホン酸系ポリマーなどが好適な一例として挙げられる。
上記芳香族系炭化水素樹脂を用いてなる電解質としては、後述する電解質膜の項で説明する芳香族系炭化水素樹脂と同様に、イオン交換基を備えた電解質を用いることができる。上記芳香族系炭化水素樹脂を用いてなる電解質としては、具体的には、ポリサルホンスルホン酸系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトンスルホン酸系ポリマー、ポリベンズイミダゾールアルキルスルホン酸系ポリマー、ポリベンズイミダゾールアルキルホスホン酸系ポリマー、架橋ポリスチレンスルホン酸系ポリマー、ポリエーテルサルホンスルホン酸系ポリマー等が好適な一例として挙げられる。
前記イオン交換基としては、特に制限されないが、−SOH、−COOH、−PO(OH)、−POH(OH)、−SONHSO−、−Ph(OH)(Phはフェニル基を表す)等の陽イオン交換基、−NH、−NHR、−NRR’、−NRR’R’’、−NH 等(R、R’、R’’は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基等を表す)等の陰イオン交換基などが挙げられる。
次に、上記電解質と上記導電性担体との質量比は、順に、0.3:1〜1.3:1が好ましく、より好ましくは0.5:1〜1.1:1である。導電性担体質量に対して電解質の質量比が0.3倍以上であると触媒層内の良好なイオン伝導性の点で好ましく、1.3倍以下であると触媒層内のガス拡散及び水の排出の点で好ましい。
(4)その他の添加剤
(i)撥水材
本発明では、燃料電池用電極(触媒層110a、110b)中に撥水材(図示せず)を含むことが望ましい。得られる燃料電池用電極(触媒層110a、110b)の撥水性を高めることができ、発電時に生成した水などを速やかに排出することができるためである。とりわけ、本発明では、水電解触媒230として使用する合金や酸化物は親水性であり、運転条件によってはフラッティングを起こしやすくなるため、水バランスの最適化が必要なためである。これにより、水電解触媒230を添加することによるフラッティングを抑制することができる。上記観点からは、水電解触媒230の濃度分布に応じて、上記撥水材の濃度分布を持たせても良い。具体的には、水電解触媒230が面内分布を有する場合には、上記撥水材も同様の面内分布を有するようにしてもよいといえる。
上記撥水材の燃料電池用電極(触媒層110a、110b)への混合量は、本発明の作用効果に影響を与えない範囲で適宜決定することができる。具体的には、3〜40質量%、好ましくは10〜30質量%の範囲である。3質量%以上であれば、撥水材添加による上記効果を有効に発現することができる。一方、40質量%以下であれば、本発明の作用効果に影響を与えない範囲で有効に撥水材添加による上記効果を奏することができる。
上記撥水材としては、特に制限されるものではなく、例えば、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、または、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレンもしくはこれらのモノマーの共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体など)などのフッ素系の高分子材料などを用いることができる。
上記撥水材は、上記したように主に高分子材料であることから、触媒270の導電性担体210上に配置させる必要はなく、上記電解質と混合して用いればよい。
(ii)その他の添加剤
その他の各種添加剤には、例えば、りん系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤などの酸化防止剤などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
上記酸化防止剤等の各種添加剤の電極への混合量も、本発明の作用効果に影響を与えない範囲で適宜決定することができる。
(5)本発明の電極の適用箇所
本発明の燃料電池用電極は、燃料極及び酸化剤極の双方に適用してもよいし、これらのいずれか一方のみに適用してもよい。好ましくは本発明の燃料電池用電極を少なくとも酸化剤極に用いるのが望ましい。起動停止や局所燃料欠乏で燃料極(アノード)に比べ劣化が起こりやすい酸化剤極(カソード)の劣化を抑制することができ、本発明の作用効果を有効に発現することができるためである。その結果、燃料電池の運転中に電極(触媒層)、特に酸化剤極(カソード)が高い電位(1.4Vvs.SHE以上)にさらされた際に、水の電気分解(水電解)を優先的に起こすことでカーボン等の導電性担体の腐食を抑えることができる。
したがって、本発明では、本発明に係る燃料電池用電極を適用しない電極(通常電極という)を併用する場合もある。かかる通常電極としては、特に制限されるものではなく、従来公知のものを適宜利用することができる。また、燃料極に通常電極を用いるような場合には、先に挙げた特許文献1に記載の燃料極などを採用することもできる。
通常電極は、電極触媒と電解質を含むものである。このうち、電極触媒の基本構成は、カーボンなどの導電性担体上にPtなどの金属触媒(粒子)を担持したものである。導電性担体および金属触媒としては公知のものを適宜用いることができる。例えば、導電性担体を形成する導電性物質として炭素材料(本発明に係る燃料電池用電極で例示した炭素材料と同様のものが利用できる)が好ましく挙げられる。金属触媒としては、発電特性、耐久性、一酸化炭素などに対する耐被毒性および耐熱性などの点から、Pt及びその合金など(本発明に係る燃料電池用電極で例示した高反応活性触媒と同様のものが利用できる)が好ましく挙げられる。また、導電性担体および金属触媒以外にも、電解質、撥水材(例えば、撥水性高分子など)が含まれていてもよい。これら電解質及び撥水材に関しても、本発明に係る燃料電池用電極で例示した電解質及び撥水材と同様のものが利用できる。通常電極(触媒層)の形成方法としては、特に制限されるものではなく、公知の方法を適宜選択することができる(詳しくは、後述する比較例参照のこと。)。
[2]電解質膜100
本発明に用いることのできる電解質膜100は、高いプロトン伝導性を有していればよい。高いプロトン伝導性を有する膜としては、−SOH基などのイオン交換基を有するモノマーの重合体または共重合体;またはイオン交換基を有するモノマーと他のモノマーとの重合体などの公知の材料からなる膜を用いることができる。かかる電解質膜1の材質としては、具体的には、ポリマー骨格の全部又は一部がフッ素化されたフッ素系樹脂であってイオン交換基を備えた電解質、または、ポリマー骨格にフッ素を含まない芳香族系炭化水素樹脂であってイオン交換基を備えた電解質、などが挙げられる。
前記イオン交換基としては、特に制限されないが、−SOH、−COOH、−PO(OH)、−POH(OH)、−SONHSO−、−Ph(OH)(Phはフェニル基を表す)等の陽イオン交換基、−NH、−NHR、−NRR’、−NRR’R’’、−NH 等(R、R’、R’’は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基等を表す)等の陰イオン交換基などが挙げられる。
前記フッ素系樹脂であってイオン交換基を備えた電解質としては、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン‐テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン−g−ポリスチレンスルホン酸系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン−g−ポリスチレンスルホン酸系ポリマーなどが好適な一例として挙げられる。
前記芳香族系炭化水素樹脂であってイオン交換基を備えた電解質としては、具体的には、ポリサルホンスルホン酸系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトンスルホン酸系ポリマー、ポリベンズイミダゾールアルキルスルホン酸系ポリマー、ポリベンズイミダゾールアルキルホスホン酸系ポリマー、架橋ポリスチレンスルホン酸系ポリマー、ポリエーテルサルホンスルホン酸系ポリマー等が好適な一例として挙げられる。
電解質膜100の材質は、高いイオン交換能を有し、化学的耐久性・力学的耐久性、などに優れることから、前記フッ素系ポリマーであってイオン交換基を備えた電解質を用いるのが好ましく、なかでも、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)などがより好ましく利用できる。
電解質膜100の膜厚は、得られる燃料電池の特性を考慮して適宜決定することができるが、5〜300μmが好ましく、より好ましくは10〜200μm、特に好ましくは15〜150μmである。電解質膜の膜厚が5μm以上であると製膜時の強度や燃料電池作動時の耐久性の点から好ましく、300μm以下であると燃料電池作動時の出力特性の点から好ましい。
なお、本発明では、燃料電池のアノード及びカソードの両電極間に介在される電解質成分を含有してなる構成部材を、電解質膜と称したが、決してその名称に拘泥されるものではなく、燃料電池に用いられる使用目的からみて、例えば、電解質層や電解質などと称される場合であっても、本発明でいう電解質膜に含まれる場合があることはいうまでもない。他の構成要件についても同様であり、その名称に拘泥されるものではなく、使用目的に照らしてその同一性を判断すればよい。
[3]ガス拡散層120a、120b
ガス拡散層(GDL)120a、120bは、MEA200の構成部材に含めてもよいし、MEA200以外の燃料電池セル10の構成部材としてもよい。
GDL120a、120bとしては、特に限定されないが、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性及び多孔質性を有するシート状材料を基材とする多孔質基材などが挙げられる。また、GDL120a、120bでも触媒層110a、110bと同様に撥水性を高めてフラッディング現象を防ぐために、公知の手段を用いて、前記GDL120a、120bの撥水処理を行ったり、前記GDL120a、120b上に炭素粒子集合体からなる層(MIL層;図示せず)を形成してもよい。
本発明のMEA200の構成を有する固体高分子型燃料電池10において、触媒層110a、110b、GDL120a、120bおよび電解質膜100の厚さは、燃料ガスの拡散性などを向上させるには薄い方が望ましいが、薄すぎると十分な電極出力が得られない。従って、所望の特性を有するMEA200、更には固体高分子型燃料電池が得られるように適宜決定すればよい。
[4]セパレータ140a、140b
燃料極側及び酸化剤極側セパレータ140a、140bとしては、カーボンペーパ、カーボンクロス、緻密カーボングラファイト、炭素板等のカーボン製や、ステンレス等の金属製のものなど、特に制限されるものではなく、従来公知のものを用いることができる。また、図1に示すように、セパレータ140a、140bは、酸素含有ガス(空気)と燃料ガス(H含有ガス)とを分離する機能を有するものであり、それらの流路を確保するために所望の形状に加工された燃料ガス供給溝130a及び酸化剤ガス供給溝130bが形成されているのが望ましく、従来公知の技術を適宜利用することができる。セパレータ140a、140bの厚さや大きさ、ガス供給溝130a、130bの形状などについては、特に限定されず、得られる燃料電池の出力特性などを考慮して適宜決定すればよい。
[5]ガスケット150
ガスケット150は、気体、特に酸素や水素ガスに対して不透過であればよいが、一般的には、ガス不透過材料からなるOリングなどの単一の不透過部により構成されていればよい。さらに、必要に応じて、電解質膜100や燃料極側及び酸化剤極側触媒層110a、110bのエッジとの接着を目的とする接着部を設けてなる、接着剤付きのガスシールテープ等のような複合的な構成としてもよい。Oリングやガスシールテープの不透過部を構成する材料は、設置後に所定の圧力がかかった状態で、酸素や水素ガスに対して不透過性を示すものであれば特に制限されない。
こうした不透過部を構成する材料のうち、Oリングを構成する材料としては、例えば、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリイソブチレンゴム等のゴム材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系の高分子材料、ポリオレフィンやポリエステル等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。
一方、ガスシールテープ等の不透過部を構成する材料としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)などが挙げられる。また、ガスシールテープ等の接着部を構成する材料としては、電解質膜100や燃料極側及び酸化剤極側触媒層110a、110bと、ガスケット150を密接に接着できるものであれば特に制限されないが、ポリオレフィン、ポリプロピレン、熱可塑性エラストマー等のホットメルト系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル、ポリオレフィン等のオレフィン系接着剤などが使用できる。
上記ガスケット150の形成方法は、特に制限されず、公知の方法が使用できる。例えば、電解質膜100上に、あるいは燃料極側及び酸化剤極側触媒層110a、110bのエッジを被覆しながら電解質膜100上に、上記接着剤を、5〜30μmの厚みになるように塗布した後、上記したようなガス不透過材料を10〜200μmの厚みになるように塗布し、これを25〜150℃で、10秒〜10分間加熱することによって硬化させる方法が使用できる。または、予め、ガス不透過材料をシート状に成形した後に、この不透過膜に接着剤を塗布して、ガスケット150を形成した後、これを電解質膜100上に、あるいはガスケット150の一部を被覆しながら電解質膜100上に、貼り合わせてもよい。この際、不透過部の厚みは、特に制限されないが、15〜40μmが好ましい。また、接着部の厚みは、特に制限されないが、10〜25μmが好ましい。
上記ガスケット150については、市販のものを購入して用いてもよい。ここでいう市販のものには、購入者側の仕様(寸法、形状、材料、特性など)に応じてメーカーが製造したような発注品ないし特注品等も含まれるものとする。
上記した構成を有する燃料電池10において、電極(触媒層)110、GDL120および電解質膜100の厚さは、燃料ガスの拡散性などを向上させるには薄い方が望ましいが、薄すぎると十分な電極出力が得られない。従って、所望の特性を有する電極及び燃料電池が得られるように適宜決定すればよい。
上記したように、本発明の固体高分子型燃料電池では、本発明に係る燃料電池用電極(触媒層)を用いることにより、電池性能(発電特性)と耐久性(寿命特性)とを兼ね備えた固体高分子型燃料電池を得ることができる。
本発明の固体高分子型燃料電池の好ましい構成については上述したとおりであるが、本発明はこれらに限定されず、例えば、本発明を阻害しない範囲で図1に示す層に更に撥水層などの他の層を加えることもでき、酸化剤ガス供給溝の形状も図5に示したものに限定されず、従来公知の技術を適宜用いることができる。
また、本発明の燃料電池10は、例えば、上記の電極(触媒層)110を内側、GDL120を外側とし、電解質膜100を用い、該電解質膜100を両側から触媒層110で挟んで、適当にホットプレスすることによりMEA200を作製することができる。
かかるホットプレス条件としては、適当な温度、圧力を設定するのが望ましい。具体的には、130〜200℃、好ましくは140〜160℃に加温し、1MPa〜5MPa、好ましくは2MPa〜4MPaで1〜10分間、好ましくは3〜7分間、ホットプレスするのが望ましい。ホットプレス温度が130℃以上であれば(膜の軟化が見られ、接合が容易である。またホットプレス温度が200℃以下であれば、膜の分解が防げる。また、ホットプレス圧が1MPa以上であれば、接合が容易である。またホットプレス圧が5MPa以下であれば、膜の穴あきなどの不具合が防止できる。更にホットプレス時間が1分間以上であれば、接合が容易である。またホットプレス時間が10分間以下であれば、膜の穴あきなどの不具合が防止できる。また、ホットプレスの際の雰囲気は、MEAに影響を及ぼさない雰囲気で行うのが望ましく、窒素中などの雰囲気で行うのが望ましい。
また、本発明の燃料電池の製造方法としては、特に制限されるものではなく、従来公知の製造技術を用いて組み立てることができる。
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
実施例1
1.触媒インクの調製
触媒インク1を以下のように調製した。
45wt%Pt+12.1wt%IrO共担持カーボンブラック(以下、単に触媒Aともいう)に純水を添加および混合し、この混合物に5wt%Nafion(登録商標)分散液(DuPont社製)を加え、更にイソプロピルアルコールを添加し、ボールミルで粉砕および混合し触媒インク1を調製した。
45wt%Pt+12.1wt%IrO共担持カーボンブラック(触媒A)の組成は、Pt:Irがモル比で約8:1であった。また、カーボンブラック(担体)上に共担持されているPt(高反応活性触媒)及びIrO(水電解触媒)の平均粒子径は、順に4nm及び8nmであった。これらPt及びIrOの平均粒子径は、発明の詳細な説明の項で説明したTEM法により求めた。以下の、実施例、比較例についても、同じ測定法により求めた。
加えた純水の量は、触媒Aの5倍(質量比)であり、Nafion(登録商標)分散液は触媒Aの4.5倍(質量比)、イソプロピルアルコールは触媒Aの3倍(質量比)とした。
また、触媒Aは、Pt粒子が担持されたカーボンブラック(担体)上に、該Pt粒子と複合化されていない単身のIrO粒子が共担持された触媒であることがTEM−EDX(透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析)の観察により確認できた。
触媒Aに担持されているPtの比活性は、Pt単体と同等の1倍であり、該PtのECAは、Pt単体で調製した場合に得られる数値の80%であった。また、触媒Aに担持されているIrOの水電解開始電位は、SHE基準で1.37Vであり、該酸化物(IrO)中の酸素含有量は、モル比で1.9であった。これらの測定は、発明の詳細な説明の項で説明したICP発光分析法により求めた。以下の、実施例、比較例についても、同じ測定法により求めた。
2.触媒層の形成
厚さ80μmのテフロン(登録商標)シート上に上記触媒インク1を塗布および乾燥し、縦50mm×横50mm、厚さ3μmの触媒層Aを形成した。触媒インク1の塗布はスクリーン印刷機を用い、カーボンブラック(担体)上でのPtに対するIrOの担持量比が、面内方向及び厚さ方向で濃度勾配(濃度分布)を有することなく、いずれも均一になるように触媒層Aを形成した。
3.電極(触媒層)−電解質膜接合体(以下の実施例、比較例では、当該構成をMEAとする。)の形成
次に、電解質膜と触媒層Aとが接するように、触媒層A、電解質膜、触媒層Aの順に重ね、2.0MPa、150℃で15分間ホットプレスし、テフロン(登録商標)シートを剥離することでMEAを形成し、評価用単セルとした。電解質膜は、DuPont社製の電解質膜Nafion(縦80mm×横80mm、厚さ25μm)を用いた。
実施例2
実施例1で使用した触媒Aに代えて、41.3wt%Pt−3.9wt%Co−11.3wt%IrO共担持カーボンブラック(触媒B)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で触媒インク1、触媒層A及びMEAを作製し、評価用単セルとした。
41.3wt%Pt−3.9wt%Co−11.3wt%IrO共担持カーボンブラック(触媒B)の組成は、Pt:Coがモル比で約3:1であり、Pt:Irがモル比で約8:1であった。また、PtとCoは合金化されており、カーボンブラック(担体)上に共担持されているPt−Co合金(高反応活性触媒)及びIrO(水電解触媒)の平均粒子径は、順に5nm及び8nmであった。
また、触媒Bは、Pt−Co合金粒子が担持されたカーボンブラック(担体)上に、該Pt−Co合金粒子と複合化されていない単身のIrO粒子が共担持された触媒であることがTEMの観察により確認できた。
触媒Bに担持されているPt−Co合金の比活性は、Ptの3.8倍であり、該Pt−Co合金のECAは、Pt単体で調製した場合に得られる数値の50%であり、該Pt−Co合金の組成比(質量比)は、Pt:Co=3.1:1であった。また、触媒Bに担持されているIrOの水電解開始電位は、SHE基準で1.39Vであり、該酸化物(IrO)中の酸素含有量は、モル比で1.7であった。
実施例2でも、実施例1と同様に、カーボンブラック(担体)上でのPt−Co合金に対するIrOの担持量比が、面内方向及び厚さ方向で濃度勾配(濃度分布)を有することなく、いずれも均一になるように触媒層Aを形成した。
比較例1
実施例1で使用した触媒Aに代えて、46.5wt%Pt担持カーボンブラック(触媒C)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で触媒インク1、触媒層A及びMEAを作製し、評価用単セルとした。
カーボンブラック(担体)上に担持されているPtの平均粒子径は、3nmであった。触媒Cに担持されているPtの比活性は1倍であり、該PtのECAは100%であった。
比較例2
実施例1で使用した触媒Aに代えて、46.1wt%Pt−4.3wt%Co担持カーボンブラック(触媒D)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で触媒インク1、触媒層A及びMEAを作製し、評価用単セルとした。
46.1wt%Pt−4.3wt%Co担持カーボンブラック(触媒D)の組成は、Pt:Coがモル比で約3:1であった。また、PtとCoは合金化されており、カーボンブラック(担体)上に担持されているPt−Co合金の平均粒子径は、5nmであった。
触媒Dに担持されているPt−Co合金の比活性は、Ptの4.1倍であり、該Pt−Co合金のECAは、60%であった。また該Pt−Co合金の組成比(質量比)は、Pt:Co=3.3:1であった。
実施例1〜2、比較例1〜2についてまとめたものを下記表1に示す。
(カーボン腐食試験)
実施例1〜2および比較例1〜2で作製した各評価用単セルの酸化剤極側に露点70℃の水素ガスを500cc/分で、燃料極側に露点70℃の窒素ガスを500cc/分で供給し、酸化剤極側を参照極とし、燃料極側を作用極として、ポテンシオスタット及びファンクションジェネレータを接続して図7に示すような電位を酸化剤極(カソード)に印加し、各評価用単セルの酸化剤極(カソード)内の触媒A〜Dのカーボン腐食によるCO発生量を測定した。
水電解触媒の水電解効果を示す酸素発生量を図8に示す。図8A〜Dは、実施例1〜2および比較例1〜2の各評価用単セルを用いた試験結果を示す。図からわかるように、実施例1(図8A)及び実施例2(図8B)は、水電解触媒を用いていない比較例1(図8C)及び比較例2(図8D)よりも、水電解触媒であるIrOを共担持させることにより、セル電圧の大幅な変化があった際に、カーボン酸化(腐食)よりも水電解を優先的に促進し、CO発生を抑制しているのがわかった。
実施例1〜2および比較例1〜2の評価用単セルを用いた際のCO発生量を図9に示す。図9から水電解触媒としてIrOを共担持させた触媒A、Bを含有する実施例1、2の評価用単セルでは、CO発生量が大幅に低下しており、水電解触媒によるカーボン腐食抑制効果が確認できた。また、実施例1と実施例2では、実施例1のPt触媒よりも高い酸素還元活性を有するPt−Co合金触媒(高反応活性触媒)と水電解触媒を組み合わせたものが、よりカーボン腐食抑制効果が高いことが確認できた。このことから、高反応活性触媒も、セル電圧の大幅な変化の際に、水電解触媒による水電解に相互作用的に寄与しており、Pt単身よりも高い酸素還元活性を有する触媒の方が、より相互作用力(寄与度)が大きいことがわかった。
(耐久性試験)
実施例1〜2および比較例1〜2で作製したMEA(評価用単セル)を用いて耐久性試験を実施した結果を表2に示す。耐久性試験は、2分間の発電と2分間の停止を1サイクルとして、初期のセル電圧から電圧が10%低下するまでのサイクル数を測定した。発電条件は、セル温度:70℃、燃料極には水素(SR1.5、60%RH)、酸化剤極には空気(SR2.5、50%RH)を供給した。また、停止時には、燃料極内を乾燥空気100cc/minの流量でパージして、酸化剤極側はパージを行わなかった。
表2より、同じPt触媒を用いた実施例1の評価用単セル(MEA)は、比較例1に示す従来の評価用単セル(MEA)とほぼ同じレベルの初期セル電圧を示し、また同じPt−Co合金触媒を用いた実施例2の評価用単セル(MEA)は、比較例2に示す従来の評価用単セル(MEA)とほぼ同じレベルの初期セル電圧を示すことが確認できた。また、実施例1、2から、Pt単身よりも高い酸素還元活性を有するPt−Co合金触媒の方が、より高いレベルの初期セル電圧を示すことが確認できた。
更に、水電解触媒としてIrOを共担持させた触媒A、Bを含有する実施例1、2の評価用単セルでは、水電解触媒を用いていない比較例1、2の評価用単セルよりもサイクル数が2倍程度に大幅に向上しており、非常に高い耐久性(長寿命化)を示すことが確認できた。以上の結果からも、酸素還元活性の高い触媒と、水電解活性の高い触媒を組み合わせることで、カソードでの発電性能と耐久性を両立させることができることが確認された。特に、酸素還元活性が単身のPtより高い高反応活性触媒が発電性能を向上し、水電解触媒がカーボン腐食に必要な水を分解し、カーボン腐食を大幅に低減することができ、燃料電池の運転中に触媒層(電極)が高い電位(1.4Vvs.SHE以上)にさらされた際に、水の電気分解(水電解)を優先的に起こすことで導電性担体(カーボン)の腐食を効果的に抑えることができることが確認できた。
本発明の燃料電池用電極を適用しうる固体高分子型燃料電池の基本構成(単セル構成)を模式的に表した断面概略図である。 本発明の燃料電池用電極の基本構成の様子を模式的に表した概略図である。 導電性担体上に高反応活性触媒と水電解触媒を共担持した触媒の概略図であって、導電性担体上に、高反応活性触媒と複合化されていない単身の水電解触媒とが互いに均一に分散されて非接触な状態(離れた状態)で共担持された触媒の様子を模式的に表した概略図である。 導電性担体上に高反応活性触媒と水電解触媒を共担持した触媒の概略図であって、導電性担体上に、高反応活性触媒と複合化されていない単身の水電解触媒とが互いに接触した状態で共担持された触媒の様子を模式的に表した概略図である。 導電性担体上に高反応活性触媒と水電解触媒を共担持した触媒の概略図であって、導電性担体上に、高反応活性触媒と複合化されている水電解触媒が共担持された触媒の様子を模式的に表した概略図である。 導電性担体上に高反応活性触媒と水電解触媒を共担持した触媒の概略図であって、高反応活性触媒と水電解触媒をそれぞれ異なる導電性担体上に(単独)担持された触媒の様子を模式的に表した概略図である。 燃料電池用電極(触媒層)において、水電解触媒の担持濃度を厚さ方向に分布(濃度勾配)させた様子を模式的に表した断面概略図である。図4Aは、触媒層内の水電解触媒の担持濃度を、GDL側よりも電解質膜側に多く配置されるように、厚さ方向に濃度勾配を持たせて分布した様子を模式的に表した断面概略図である。図4Bは、触媒層として、電解質膜側に水電解触媒を含む層を、GDL側に水電解触媒を含まない層を積層して、厚さ方向に水電解触媒の濃度分布を形成した様子を模式的に表した断面概略図である。 燃料電池用電極(特に酸化剤極触媒層)において、水電解触媒の担持濃度を面内方向に分布(濃度勾配)させた様子を模式的に表した、該酸化剤極触媒層、酸化剤極側GDLおよび酸化剤ガス供給溝を備えた酸化剤極側セパレータの分解斜視図である。 触媒層−電解質膜接合体において、酸化剤極触媒層の水電解触媒の担持濃度を面内方向及び厚さ方向に分布(濃度勾配)させた様子を模式的に表した断面概略図である。 カーボン腐食試験の際の印加電圧を示すグラフである。 実施例1の評価用単セルのCOおよびO発生量を示すグラフである。 実施例2の評価用単セルのCOおよびO発生量を示すグラフである。 比較例1の評価用単セルのCOおよびO発生量を示すグラフである。 比較例2の評価用単セルのCOおよびO発生量を示すグラフである。 実施例1〜2及び比較例1〜2のCO発生量を示すグラフである。 粒子の粒径を測定する際に用いる絶対最大長を説明した解説図である。
符号の説明
10 固体高分子型燃料電池の基本構成(単セル構成)、
100 電解質膜、
110a 燃料極(アノード)側触媒層、
110b 酸化剤極(カソード)側触媒層、
110(i) 電解質膜と接し水電解触媒を含む層、
110(ii) 酸化剤極側GDLおよび層110(i)の間に介在する水電解触媒を含まない層、
111〜114 水電解触媒の含有濃度の異なる触媒層、
120a 燃料極側GDL、
120b 酸化剤極側GDL、
130a 燃料ガス供給溝、
130b 酸化剤ガス供給溝、
130b−1 酸化剤ガス入口側、
130b−2 酸化剤ガス出口側、
140a 燃料極側セパレータ、
140b 酸化剤極側セパレータ、
150 ガスケット、
200 MEA、
210、210a、210b 導電性を有する担持体(導電性担体)、
230 水電解触媒、
250 高反応活性触媒、
270、270a、270b 触媒、
900 粒子(不定形粒子を含む)、
L 最大の長さ。

Claims (15)

  1. 白金(以下、Ptとする。)よりも高い水電解反応活性を有する触媒(以下、水電解触媒とする。)と、Ptよりも高い酸素還元活性を有する触媒(以下、高反応活性触媒とする。)と、の異なる機能を持つ触媒を有し、
    前記水電解触媒と前記高反応活性触媒とが、それぞれ導電性担体上または異なる機能を持つ触媒上に担持されてなり、
    前記水電解触媒が、Ir、Ir含有合金ないしそれらの酸化物であることを特徴とする固体高分子型燃料電池用電極。
  2. 前記電極を酸化剤極に用いたことを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用電極。
  3. 前記高反応活性触媒の酸素還元反応に対する触媒実面積当りの活性(比活性)が、Ptの2倍以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の固体高分子型燃料電池用電極。
  4. 前記高反応活性触媒のECA(Pt重量辺りの電気化学的有効表面積)が、Pt単体で調製した場合に得られる数値の50%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体高分子型燃料電池用電極。
  5. 前記高反応活性触媒中の主となる貴金属成分が、Ptであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体高分子型燃料電池用電極。
  6. 前記燃料電池用酸化剤極電極での酸素還元活性に優れる高反応活性触媒が、貴金属と少なくとも1種類以上の他の貴金属もしくは4〜11族遷移金属との合金であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体高分子型燃料電池用電極。
  7. 前記高反応活性触媒の組成比(質量比)が、Pt:X(ここで、Xは、Pt以外の高反応活性触媒の組成成分を示す。)=1:1〜15:1であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体高分子型燃料電池用電極。
  8. 前記水電解触媒の水電解開始電位が、SHE基準で1.4V以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体高分子型燃料電池用電極。
  9. 前記IrないしIr含有合金の酸化物中の酸素含有量が、モル比で0.5〜3であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の固体高分子型燃料電池用電極。
  10. 前記高反応活性触媒が担持される担持体が、電気伝導性を有する炭素材料もしくは酸化物であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の固体高分子型燃料電池用電極。
  11. 前記炭素材料が、カーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボンフィブリル、フラーレンおよび活性炭からなる群より選択されるものであることを特徴とする請求項10に記載の固体高分子型燃料電池用電極。
  12. 前記高反応活性触媒が担持されたカーボン担体上に、前記高反応活性触媒と複合化されていない単身の水電解触媒が共担持された触媒であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の固体高分子型燃料電池用電極。
  13. 触媒担持体上での高反応活性触媒に対する水電解触媒の担持量比が、面内分布を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の固体高分子型燃料電池用電極。
  14. 電極中に撥水材を含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の固体高分子型燃料電池用電極。
  15. 請求項1〜14のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池用電極を用いて構成されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
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