JP2010096310A - スイングアーム支点軸受およびスイングアーム支点軸受の製造方法 - Google Patents

スイングアーム支点軸受およびスイングアーム支点軸受の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来から用いられているスイングアーム支点軸受は、製造コストの低減が求められている。
【解決手段】支点軸受ユニット100においては、複数個の転動体109は、内方部材としての軸101側の部材と、たとえば円すい状軌道面153上にて1点で接触する。また、外方部材としてのスリーブ102とは、たとえば円すい状軌道面151および円すい状軌道面152上にて、2点で接触する。そして、円すい状軌道面153の一部分である面粗度向上加工領域のみに対して面粗度Raを向上する(面粗度Raを小さくする)加工を施している。
【選択図】図1

Description

本発明は、スイングアーム支点軸受およびスイングアーム支点軸受の製造方法に関するものであり、より特定的には、製造コストの低減を可能とするスイングアーム支点軸受およびスイングアーム支点軸受の製造方法に関するものである。
コンピュータの外部記憶装置として使用されるハードディスクに用いるスイングアームは、磁性体を塗布したアルミニウム製やガラス製のディスクに、磁気ヘッドを用いて情報を読み書きする。この磁気ヘッドは、スイングアームと呼ばれる駆動体の一方の端部に取り付けられている。そして、ボイスコイルモータによりスイングアームがスイングアーム支点軸受を中心に揺動駆動されることにより、スイングアームの一方の端部に取り付けられた磁気ヘッドをハードディスク上の任意の位置に移動させてハードディスクに情報を読み書きすることを可能としている。
従来より、スイングアームに用いる支点軸受(以下、スイングアーム支点軸受)において、たとえば球体である転動体が転動する軌道面を形成した外輪や内輪を配置せず、軸の外周表面上およびスイングアームのスリーブに直接、軌道面としての軸受溝を形成させた構造を備えるハードディスク用スイングアームが、たとえば実開平7−6969号公報(特許文献1)に開示されている。
一方、スイングアーム支点軸受を薄型化するための対応としては、たとえば特開平10−318255号公報(特許文献2)に開示されているように、内輪の厚みを外輪の厚みに比べて薄くなるように設計し、2台の外輪が互いに接触する構造とすることにより、2台の外輪の間に配置させる間座を廃止する方法がある。このような方法を用いることにより、間座を廃止した分だけ、スイングアーム支点軸受全体の厚みを薄くすることができる。
また、たとえば特開2006−316915号公報(特許文献3)に開示されているスイングアーム支点軸受は、外輪ないし内輪を軸方向、すなわち上下方向に2分割し、分割したそれぞれの外輪ないし内輪を構成する部材と転動体(球体)とを接触させることを可能にしている。このようにして接触点数を増加させることにより、剛性を増加させることを目論んだスイングアーム支点軸受も考案されている。
実開平7−6969号公報 特開平10−318255号公報 特開2006−316915号公報
しかし、近年のハードディスクドライブに対する低コスト化の要求に起因して、スイングアーム支点軸受に対しても低コスト化の要求がある。そして、上記特許文献1〜3に記載のスイングアーム支点軸受を含めて、従来のスイングアーム支点軸受は、この低コスト化の要求に十分対応できているとはいえない。
本発明は上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、低コストなスイングアーム支点軸受およびその製造方法を提供することである。
本発明に係るスイングアーム支点軸受は、外周面に円環状の内側軌道面が形成された内方部材と、内方部材を取り囲むように配置され、内側軌道面に対向する円環状の外側軌道面が形成され、ハードディスクドライブのスイングアームが接続されるべき外方部材と、内側軌道面および外側軌道面に接触して配置された複数の転動体とを備えている。上記転動体は、上記内側軌道面と1点において接触するとともに、上記外側軌道面と2点において接触している。そして、上記内側軌道面および上記外側軌道面においては、上記転動体と接触する第1の領域の面粗度Raが、上記第1の領域に隣接する第2の領域の面粗度Raよりも小さい、スイングアーム支点軸受である。
面粗度Raの大きい場合、油膜パラメータが低下し、軸受の耐久性が低下するおそれがある。そのため、軌道面の全面に対して、砥石などを用いて研削加工を施すことにより、軌道面の面粗度Raを小さくする表面仕上げ加工が実施されるのが一般的である。
しかし、軌道面のうち、実際に転動体が転動(接触)する領域は一部であり、当該領域以外の他の領域においては、転動体は接触しない。そして、本発明者は、軌道面のうち実際に転動体が接触する領域の面粗度Raを当該領域に隣接する他の領域の面粗度Raよりも小さくして、十分な油膜パラメータを確保しておくことにより、スイングアーム支点軸受に十分な耐久性を付与することが可能であることを見出した。
本発明に係るスイングアーム支点軸受においては、軌道面のうち、スイングアーム支点軸受を使用する際に転動体が接触する第1の領域の方が、第1の領域に隣接する、具体的にはスイングアーム支点軸受を使用する際に転動体が接触しない第2の領域よりも、面粗度Raが小さくなっている。その結果、本発明のスイングアーム支点軸受によれば、軌道面の全面に対して面粗度Raを小さくする表面仕上げ加工を行なった従来のスイングアーム支点軸受よりも、当該加工を行なう領域を減少させ、製造コストを低減することが可能となっている。
また、スイングアーム支点軸受の製造プロセスにおいては、内方部材に比べて外方部材の加工量が大きくなる傾向にある。本発明のスイングアーム支点軸受においては、転動体が内側軌道面と1点において接触するとともに、外側軌道面と2点において接触する構成を採用することにより、加工量の多い外方部材の硬度を抑制することを可能としている。そのため、製造コストを低減することが可能となっている。以上のように、本発明のスイングアーム支点軸受によれば、低コストなスイングアーム支点軸受を提供することができる。
本発明に係るスイングアーム支点軸受は、上記内側軌道面の硬度はHRC40以上HRC50以下であり、外側軌道面の硬度はHRC25以上HRC35以下であることが好ましい。
スイングアーム支点軸受が使用される際、たとえば予想外の外力として外部から衝撃荷重がスイングアーム支点軸受に加われば、転動体は、軌道面に対して衝撃荷重を与える。その結果、軌道面に圧痕が発生する可能性がある。このような圧痕の発生を抑制するためには、軌道面の硬度を、当該圧痕が生じない程度に高くすることが好ましい。そして、当該圧痕の発生を十分に抑制するためには、転動体と1点において接触する内側軌道面についてはHRC40以上、2点において接触する外側軌道面についてはHRC25以上の硬度が必要であることが、本発明者の検討により明らかとなった。
一方、上述した内側軌道面および外側軌道面の硬度を高くすれば、加工に要するコストが増大する。このことを抑制するためには、上述したようにたとえば内方部材の内側軌道面の硬度はHRC50以下、外方部材の外側軌道面の硬度はHRC35以下とすることが好ましい。以上より、内側軌道面の硬度はHRC40以上HRC50以下、外側軌道面の硬度はHRC25以上HRC35以下とすることが好ましい。なお、圧痕の発生の抑制と加工コストの低減とのバランスを考慮すると、内側軌道面の硬度はHRC43以上HRC47以下、外側軌道面の硬度はHRC28以上HRC32以下とすることがさらに好ましい。
本発明に係るスイングアーム支点軸受は、内方部材には、内側軌道面の中心軸を含む領域に穴が形成されており、内側軌道面の硬度はHRC40以上となっており、穴の表層部の硬度はHRC25以下となっていることが好ましい。
上述したように、内側軌道面については、たとえば外部からの衝撃荷重により転動体が内側軌道面に対して衝撃力を与え、内側軌道面に圧痕が発生することを抑制するために、硬度を高く(HRC40以上に)することが好ましい。一方、内方部材の中心部分、すなわち内方部材の長軸方向に延在する中心軸を含む領域には、内方部材を他の部材に固定する等の目的で穴が形成される場合がある。この場合、穴の加工コストを抑制するため、穴の表層部の硬度はHRC25以下とすることが好ましい。ここで、穴の表層部とは、たとえば穴の表面から深さ0.1mm以下の領域をいう。そして、当該表層部の硬度は、たとえば内方部材を穴の表面に垂直な断面で切断し、表面から0.1mm以下の領域の硬度を硬度計を用いて測定することにより調査することができる。
本発明に係るスイングアーム支点軸受においては、内側軌道面を含む領域は高周波焼入れされていることが好ましい。高周波焼入れを用いることにより、上述したように、内方部材の外周部分、すなわち内側軌道面を含む領域の硬度を高くする一方、内方部材の中心部分、すなわち穴の表層部の硬化を抑制する構造を容易に達成することができる。
次に、本発明に係るスイングアーム支点軸受の製造方法は、外周面に円環状の内側軌道面が形成された内方部材と、円環状の外側軌道面が形成され、ハードディスクドライブのスイングアームが接続されるべき外方部材と、複数の転動体とを準備する工程と、上記内側軌道面と上記外側軌道面とが対向し、かつ上記転動体が上記内側軌道面と1点において接触するとともに、上記外側軌道面と2点において接触するように、上記内方部材、上記外方部材および上記転動体を組み立てる工程と、上記外方部材を上記内方部材に対して軸周りに相対的に回転させることにより、上記内側軌道面において上記転動体と接触する領域、および上記外側軌道面において上記転動体と接触する領域の塑性加工を実施する工程とを備えた製造方法である。
本発明に係るスイングアーム支点軸受においては、内方部材、外方部材および転動体を組み立てた後、外方部材を内方部材に対して回転させることにより、内側軌道面において転動体と接触する領域、および外側軌道面において転動体と接触する領域の塑性加工(バニシング)が実施される。上述したように、内側軌道面および外側軌道面のうち、転動体と接触する領域に関して面粗度Raを小さくする加工が実施されれば、十分な耐久性を得ることができる。そして、上述のようなプロセスを採用することにより、スイングアーム支点軸受を構成する内方部材、外方部材、転動体などの部材をスイングアーム支点軸受として組み立てる前に、あらかじめ内側軌道面および外側軌道面の面粗度Raを小さくする研削加工などの加工を行なうことなく、容易に必要な領域の面粗度Raを小さくする塑性加工を行なうことができる。その結果、本発明のスイングアーム支点軸受の製造方法によれば、スイングアーム支点軸受の製造コストを低減することができる。
また、本発明に係るスイングアーム支点軸受の製造方法においては、塑性加工を実施する工程では、外方部材および内方部材を軸周りに回転させることにより、外方部材を内方部材に対して軸周りに相対的に回転させるとともに、内方部材と外方部材との間にアキシャル力およびラジアル力を作用させることが好ましい。
アキシャル力のみを作用させながら外方部材を内方部材に対して回転させると、転動体は内側軌道面に対して内側軌道面に垂直な方向にのみ荷重を加える。その結果、内側軌道面は転動体の表面の形状に沿った形状に塑性変形する。この場合、当該スイングアーム支点軸受が使用されると、転動体が内側軌道面の塑性変形した領域からはみ出し、トルク変動が生じるおそれがある。
これに対し、内方部材と外方部材とに対してアキシャル力およびラジアル力を作用させれば、転動体は内側軌道面に対して、内側軌道面において塑性変形する領域の幅を広げる方向にも荷重を加える。その結果、内側軌道面は転動体の表面の形状(曲率)よりも平面に近い(曲率が小さい)形状となるように塑性変形する。これにより、上記トルク変動を抑制することができる。なお、軌道面の面粗度Raを小さくする塑性加工を効率よく行なうためには、アキシャル力とラジアル力とを同時に作用させることが好ましい。
また、外方部材を内方部材に対して相対的に回転させる際に、たとえば内方部材がその中心軸に対して回転せず静止した状態で、外方部材のみが中心軸に対して回転していれば、内側軌道面のうち外方部材が押し付けられる側においては塑性加工が良好に進行するものの、外方部材が押し付けられる側とは反対側においては塑性加工が十分に進行しない。したがって、軌道面を全周にわたって良好に塑性加工するためには、外方部材および内方部材の両方を軸周りに回転させることが好ましい。
本発明に係るスイングアーム支点軸受の製造方法においては、転動体と接触する領域を塑性加工する工程では、面粗度Ra0.3以下である内側軌道面および外側軌道面が塑性加工されることが好ましい。塑性加工を行なう前の内側軌道面および外側軌道面の面粗度Raが0.3以下であれば、上述した方法を用いて、十分に内側軌道面および外側軌道面の面粗度Raを小さくしたスイングアーム支点軸受を製造することができる。なお、当該面粗度Raは0.14以下であることがさらに好ましい。
本発明によれば、低コストなスイングアーム支点軸受およびその製造方法を提供することができる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明において、同一の機能を果たす部位には同一の参照符号が付されており、その説明は、特に必要がなければ、繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る、スイングアームに組み込まれた支点軸受ユニットの構造を示す断面概略図である。なお、図1において、ハッチングを施した部分は断面を示している。図1に示すスイングアーム1は、一方の端部に磁気ヘッド2が取り付けられており、重心位置にスイングアーム支点軸受としての支点軸受ユニット100が組み込まれている。
支点軸受ユニット100においては、中心部分に第1の内方部材としての軸101を備えている。また、ハードディスクドライブのスイングアーム1に接続され、軸101を取り囲むように配置された、外方部材としてのスリーブ102を備えている。スイングアーム1を回転動作させるための転動体109が、軸101とスリーブ102とに挟まれた領域に、上下方向に2列並んで複数個配置されている。なお、複数個配置された転動体109は、一般には鋼球であるが、転動体の軽量化を目的として、鋼球の代わりにセラミック球を用いてもよい。
支点軸受ユニット100においては、軸101の上部、すなわち上下方向に2列並んだうち上側の転動体109が存在する付近には、軸101に嵌合されるように第2の内方部材としての調整リング123が固着されている。調整リング123と軸101とは、内方部材を構成する。調整リング123は後述するように、支点軸受ユニット100を組み立てる際の便宜上、軸101とは独立した第2の内方部材として備えられている。この調整リング123が、複数個の転動体109のそれぞれと後述するように1点で接触している。また、軸101の下部、すなわち上下方向に2列並んだうち下側の転動体109が存在する付近には、図1に示すように軸101の長軸方向に交差する方向の幅が広くなった領域の外周面上に直接、円すい面形状、すなわちスイングアーム支点軸受の回転軸を含む断面において直線形状を有する円すい状軌道面153が備えられている。この内側軌道面としての円すい状軌道面153が、複数個の転動体109とそれぞれ1点において接触している。また、スリーブ102にも、上下方向に2列並んだうち上側の転動体109が存在する付近には転動体109と接触するための外側軌道面である2つの円すい状軌道面141、142が、そして下側の転動体109が存在する付近には転動体109と接触するための外側軌道面である2つの円すい状軌道面151、152がそれぞれ交差するように備えられている。
図2は、図1中に丸点線で囲んだ「20」の領域の拡大断面図である。また、図3は、図1中に丸点線で囲んだ「30」の領域の拡大断面図である。図1に示す支点軸受ユニット100においては、外方部材としてのスリーブと、複数個の転動体109との接触点は2つ存在する。たとえば、図2に示すように、上側の転動体109は、スリーブ102に形成された第1の接触面である円すい状軌道面141上および、第1の接触面に交差する第2の接触面である円すい状軌道面142上の2か所に接触点を備える。また、下側の転動体109は図3に示すように、スリーブ102に形成された第1の接触面としての円すい状軌道面151および、第1の接触面に交差する第2の接触面である円すい状軌道面152の2か所に接触点を備える。
支点軸受ユニット100は、通常の軸受に用いられる内輪と外輪とを備えていない。そして、たとえば調整リング123には、内側軌道面として、転動体と接触する第3の接触面である円すい状軌道面143が直接設けられている。したがって、転動体109は、内方部材(軸101、調整リング123)の内側軌道面と、外方部材(スリーブ102)の外側軌道面とに接触して配置されている。つまり、転動体109は、内側軌道面および外側軌道面と合計3点において接触している。このようにすれば、転動体109の接触角が安定し、転動体荷重の制御が容易になるため、支点軸受ユニット100のトルクの変動を抑制することができる。
また、上述したように通常の軸受に用いられる内輪や外輪を備えない構造とすることにより、外輪や内輪を用いない分だけ、支点軸受ユニット100の上下方向の厚みを薄くすることができる。また、外輪や内輪を設けないため間座を廃止することもできるので、その分だけさらに支点軸受ユニット100の上下方向の厚みを薄くすることができる。
また、図1に示すように、スリーブ102には、軸受内部に封入されるグリスなどの潤滑剤が外部に漏れ出すことを抑制するとともに、外部からの異物の侵入を抑制するため、シール125が設けられている。
上述したように、支点軸受ユニット100においては、複数個の転動体109は、内方部材と1点で接触する。また、外方部材としてのスリーブ102とは、円すい状軌道面141および円すい状軌道面142上にて、2点で接触する。このため、複数個の転動体109は、軌道面と合計3点で接触することになる。具体的には、図2に示すように、上側の転動体109は、軸101に嵌合された調整リング123と、円すい状軌道面143上の1点(接触点146)で接触し、外方部材としてのスリーブ102と、円すい状軌道面141上および円すい状軌道面142上の2点(それぞれ接触点144、接触点145)で接触する。また、図3に示すように、下側の転動体109は、軸101の長軸方向に交差する方向の幅が広くなった領域の外周面上に直接備えられた、円すい面形状を有する円すい状軌道面153上の1点(接触点156)で接触し、外方部材としてのスリーブ102と、円すい状軌道面151および円すい状軌道面152上の2点(接触点154、接触点155)で接触する。なお、複数個の転動体109と軌道面との3つの接触点と、転動体109の中心Oとのなす角は、図2または図3に示すような関係になる。
上記構成により、本実施の形態における支点軸受ユニット100においては、接触角が一意的に決定される。その結果、転動体荷重を安定させ、トルクの変動を抑制することができる。ハードディスクに記録されたトラック上に磁気ヘッド2(図1参照)を正確に位置決めするためには、支点軸受ユニット100はトルクの変動が小さいことが求められる。このため、接触角を安定させることにより転動体荷重を安定させ、トルクの変動を抑制することが可能な支点軸受ユニット100は、スイングアーム用軸受として優れた特性を有している。さらに、円すい面形状の加工は、たとえば軌道面としてのR面の軸受溝、すなわちスイングアーム用軸受の回転軸を含む断面において円弧面形状の加工よりも加工が容易であるため、支点軸受ユニット100によれば、加工のコストを低減できる可能性がある。
また、図2に示す、転動体109との第3の接触面としての円すい状軌道面143上の接触点146と転動体109の中心とを結ぶ直線と、図3に示す、転動体109と接触点156とを結ぶ直線とに着目する。ここで、図2における上記直線を第1の直線、図3における上記直線を第2の直線とする。このとき、第1の直線と第2の直線とは、図2および図3に示すように、接触点146および接触点156から見て径方向外側、すなわちスリーブ102の存在する側において交差していることが好ましい。上述した条件を満足するように内方部材および外方部材のそれぞれに含まれる各接触面を設計することにより、支点軸受ユニット100にモーメント力が作用した場合の剛性が向上する。
図4は、図3における円すい状軌道面153に対して面粗度を小さくする加工を施す領域を表わす概略図である。図4は、内方部材としての軸101の長軸方向に交差する方向の幅が広くなった領域の外周面上に直接形成された、円すい面形状を有する第3の接触面としての円すい状軌道面153の表面の展開図である。円すい状軌道面153の一部分であって、図4中にて2つの点線に挟まれた領域である面粗度向上加工領域153Aのみに対して面粗度Raを向上する(面粗度Raを小さくする)加工を施している。この面粗度向上加工領域153Aが、スイングアーム1(図1参照)の回転動作時に転動体109が接触する第1の領域である。第1の領域である面粗度向上加工領域153Aに隣接する第2の領域については、スイングアーム1(図1参照)の回転動作時に転動体109が接触しないため、面粗度Raを小さくして軌道面の表面の凹凸を少なくする加工を施す必要はない。
スイングアーム1の回転動作時においては、円すい状軌道面153の全面ではなくその中央部分の近傍の領域、すなわち図4に示す面粗度向上加工領域153Aが転動体109と接触する領域となる。転動体109は円すい状軌道面153のうち面粗度向上加工領域153Aと接触しながら転動することになる。したがって、面粗度向上加工領域153Aの表面の凹凸が大きい場合、油膜パラメータが小さくなって軸受の耐久性が低下する可能性がある。このような現象を抑制するために、円すい状軌道面153のうち、面粗度向上加工領域153Aの面粗度Raを小さくする加工を行なう。これにより、支点軸受ユニット100に十分な耐久性を付与することができる。さらに、このとき、図4に示すように、内側軌道面である円すい状軌道面153の全面ではなく、転動体109と接触する面粗度向上加工領域153A(第1の領域)のみにその面粗度Raを小さくする加工を施せば十分である。面粗度Raを小さくする加工を施す領域を面粗度向上加工領域153Aのみに限定することにより、支点軸受ユニット100の製造コストを低減することができる。
また、支点軸受ユニット100を使用する際には、外側軌道面および内側軌道面に転動体109が接触しながら転動体109が転動する。ここでたとえば予想外の外力として外部から衝撃荷重が支点軸受ユニット100に加われば、転動体109は、当該転動体109が接触している軌道面(外側軌道面または内側軌道面)に対して衝撃荷重を与えるため、軌道面に圧痕を発生する可能性がある。使用中にこのような圧痕を生じることを抑制するために、軌道面の硬度を、当該圧痕が生じない程度に高くすることが好ましい。そのためには、上述したようにたとえば内方部材である軸101や調整リング123の内側軌道面の硬度はHRC40以上、外方部材であるスリーブ102の外側軌道面の硬度はHRC25以上とすることが好ましい。上述したように、転動体109と外側軌道面とは2点において接触しており、転動体109と内側軌道面とは1点において接触している。したがって、2点において接触する外側軌道面の方が、1点において接触している内側軌道面よりも、たとえば転動体109から衝撃荷重が負荷された際に受ける応力は小さくなる。したがって、外側軌道面の方が内側軌道面よりも硬度を低くすることができる。
なお、上述した内側軌道面および外側軌道面の硬度を高くすれば、加工が困難になるため加工に要するコストが増大する。このことを抑制するためには、上述したようにたとえば内方部材である軸101や調整リング123の内側軌道面の硬度はHRC50以下、外方部材であるスリーブ102の外側軌道面の硬度はHRC35以下とすることが好ましい。以上より、軸101や調整リング123の内側軌道面(たとえば円すい状軌道面143、円すい状軌道面153)の硬度はHRC40以上HRC50以下、スリーブ102の外側軌道面(たとえば円すい状軌道面141、円すい状軌道面142)の硬度はHRC25以上HRC35以下とすることが好ましい。なお、このなかでも内側軌道面の硬度はHRC43以上HRC47以下、外側軌道面の硬度はHRC28以上HRC32以下とすることがさらに好ましい。このようにすれば、加工コストを増大させることなく、スイングアーム1を使用する際の予想外の衝撃荷重などによる圧痕の発生を抑制することが可能な支点軸受ユニット100を提供することができる。
上述したように、外側軌道面の方が内側軌道面よりも硬度を低くすることができる。逆に言えば、内側軌道面であるたとえば円すい状軌道面153は、外側軌道面であるたとえば円すい状軌道面151、152よりも硬度を高くすることが好ましい。しかし、支点軸受ユニット100は、図1に示すように、内方部材である軸101の長軸方向に延在する中心軸近傍の領域、すなわち軸101の内側軌道面の中心軸を含む領域には、支点軸受ユニット100を他の部材に固定するために用いる穴161やねじ162が形成されている。したがって、内方部材である軸101は、その外周部分には内側軌道面である円すい状軌道面153が存在するために硬度を高くすることが好ましいが(好ましくはHRC40以上)、穴161が存在する中心部分の領域は、穴161を形成する加工を容易に行なうために、円すい状軌道面153などの外周部分よりも硬度を低くすることが好ましい。
すなわち、内側軌道面としての円すい状軌道面153を形成する外周部分の領域のみ硬度を高くしておくことにより、その後の加工コストを低減することができる。具体的には、穴161の表層部の硬度はHRC25以下となっていることが好ましい。穴161の表層部の硬度がHRC25以下となる程度に、軸101の中心部分の硬度を低くしておけば、穴161やねじ162を形成する加工は、当該加工を行なうコストを十分に低減することができる程度に容易となる。
内方部材である軸101の、特に外周部分(内側軌道面である円すい状軌道面153などを含む領域)は、高周波焼入れにより硬度を高くする処理が施されていることが好ましい。高周波焼入れを行なえば、軸101のような部材の外周部分を積極的に加熱して焼入れ硬化し、軸101の中心部分(たとえば穴161が形成された領域)に対しては焼入れ硬化を実施しないことにより、軸101に対して上記所望の硬度分布を容易に付与することができる。
図5は、図1の線分V−Vにおける断面模式図である。すなわち図1に示すように、上側の転動体109の配置されている部分における断面図である。図5に示すように、支点軸受ユニット100は、内側に軸101を備え、軸101には調整リング123が固着されている。調整リング123と、外方部材としてのスリーブ102とに接触しながら、複数個の転動体109が配置されている。これらがどのように接触して配置されているかについては上述したとおりである。
また、転動体109同士が接触しないように保持器を配置してもよいが、隣り合う転動体109同士の間には、図5に示すように、転動体109より数十μm径の小さいスペーサボール149を挟んでもよい。このスペーサボール149は、転動体109同士が接触することを回避することにより、保持器と同様の機能を果たす。
上述した複数個のスペーサボール149は、図5に示すように、転動体109と交互に配置することが好ましい。しかし、支点軸受ユニット100の剛性を上げるために、径の大きい転動体109の個数を多くし、スペーサボール149の個数を少なくしてもよい。
次に、本発明に係るスイングアーム支点軸受(支点軸受ユニット100)の製造方法について説明する。図6は、本発明の実施の形態1に係る、支点軸受ユニットの製造方法を示すフローチャートである。また、図7は、図6のフローチャートの部材を準備する工程(S10)のうち、内方部材の形成に係る詳細な工程を示すフローチャートである。図8は、内方部材(軸101)の製造プロセスを説明するための図である。図8(A)は、内方部材(軸101)を製造する過程の、図7の高周波焼入れする工程(S11)を行なった状態を示す概略断面図である。図8(B)は、内方部材(軸101)を製造する過程の、図7の穴あけ加工する工程(S12)を行なった状態を示す概略断面図である。図8(C)は、内方部材(軸101)を製造する過程の、図7のタッピング加工する工程(S13)を行なった状態を示す概略断面図である。図8(D)は、内方部材(軸101)を製造する過程の、図7の旋削加工する工程(S14)を行なった状態を示す概略断面図である。図8(E)は、内方部材(軸101)を製造する過程の、図7の切断加工する工程(S15)を行なった状態を示す概略断面図である。図8(F)は、内方部材(軸101)の完成した状態を示す概略断面図である。
さらに図9は、内方部材(調整リング123)の製造プロセスを説明するための図である。図9(A)は、内方部材(調整リング123)を製造する過程の、図7の高周波焼入れする工程(S11)を行なった状態を示す概略断面図である。図9(B)は、内方部材(調整リング123)を製造する過程の、図7の穴あけ加工する工程(S12)を行なった状態を示す概略断面図である。図9(C)は、内方部材(調整リング123)を製造する過程の、図7の旋削加工する工程(S14)を行なった状態を示す概略断面図である。図9(D)は、内方部材(調整リング123)の完成した状態を示す概略断面図である。なお、以上に述べた図6〜図9の各図において、ハッチングを施した部分は断面を表している。以下、図6〜図9を用いて、図1に示す支点軸受ユニット100を例に、本発明における支点軸受ユニットの製造方法を説明する。
まず、図6に示す部材を準備する工程(S10)を実施する。具体的には、工程(S10)は、たとえば図1に示す支点軸受ユニット100を構成する、外周面にたとえば円環状の内側軌道面が形成された内方部材としての軸101、円環状の外側軌道面が形成され、ハードディスクドライブのスイングアームが接続されるべき、外方部材としてのスリーブ102、内方部材としての調整リング123などの部材を準備する工程である。
ここで、軸101、スリーブ102、調整リング123の材質としては、熱処理によって高硬度化が可能な材料、たとえばSUS420J2を用いるが、転がり軸受材料として一般的なSUJ2やSUS440Cを用いることもできる。
部材を準備する工程(S10)のうち軸101を準備する工程においては、まず図7に示す高周波焼入れする工程(S11)を行なう。この工程(S11)では、図8(A)に示すように軸101の素材であるSUS420J2、SUJ2、SUS440Cなどからなる棒鋼、鋼線などの鋼材99のうち、外周部分に該当する点線171の上側および点線172の下側の領域について誘導加熱を行ない、その後急冷することにより硬化させる(高周波焼入れ)。なお、この実施例による図8(F)に示される完成品の長さ(図8(F)における左右方向の長さ)は6〜7mmであり、鋼材99の長さは1000〜2000mmである。ここで、点線171の上側および点線172の下側の領域の硬度が、軸101に形成する円すい状軌道面153の好ましい硬度であるHRC40以上HRC50以下となるように高周波焼入れ処理を行なうことが好ましい。なお、HRC43以上HRC47以下とすることがさらに好ましい。このようにすれば、加工コストを増大させることなく、スイングアーム1を使用する際の予想外の衝撃荷重などにより、円すい状軌道面153(図1参照)に圧痕が発生することを抑制できる。
また、部材を準備する工程(S10)のうち調整リング123を準備する工程においても、まず図7に示す高周波焼入れする工程(S11)を行なう。この工程(S11)では、図9(A)に示すように、円すい状軌道面143(図1参照)の硬度をHRC40以上HRC50以下とするために、鋼材99の外周部分すなわち図9(A)における点線171の上側および点線172の下側の領域の硬度がHRC40以上HRC50以下となるように高周波焼入れ処理および焼戻し処理を行なう。
次に、図7における工程(S11)に続く穴あけ加工する工程(S12)においては、図8(B)に示す軸101の中心部分(内側軌道面の中心軸を含む領域)や、図9(B)に示す調整リング123の中心部分(内側軌道面の中心軸を含む領域)に対して、中心軸(長軸方向)に延在する方向に空洞である穴161を形成する。この工程(S12)においては、工程(S11)において高周波焼入れされた鋼材99を、それぞれの長軸方向に延在する中心軸を軸として回転させながら、たとえば中繰りバイトを用いて中心部分の領域に所定直径の穴161を形成する。この工程に要する負荷をより少なくし、容易に加工を行なえるようにして、加工のコストを増大させないようにするためには、穴161が形成される鋼材99の中心部分の硬度はHRC25以下であることが好ましい。
続く、図7に示すタッピング加工する工程(S13)は、図8(C)に示すように、穴161を囲む壁面にねじ162を形成する工程である。具体的には、タッピング加工用の工具を用いて、穴161を囲む壁面を加工することにより、ねじ山(ねじ162)を形成することができる。ねじ山を形成する必要のない調整リング123を準備する工程においては、この工程(S13)は省略される。
なお、この工程に要する負荷をより少なくし、容易に加工を行なえるようにして、加工のコストを増大させないようにするためには、上述したように、特に穴161を囲む壁面の表層部の硬度はHRC25以下であることが好ましい。
そして図7に示す旋削加工する工程(S14)において、図8(D)および図9(C)に示すように、軸101および調整リング123の外形を形成するための旋削加工を行なう。具体的には図8(D)に点線で示す軸101の外形を示す外形線163、および図9(C)に点線で示す調整リング123の外形を示す外形線165に沿って旋削を行ない、当該外形線の外側を除去する加工を行なう。このようにすれば、図8(E)に示すように軸101の円すい状軌道面153を含む外形の形状が形成される。また、図9(C)中の外形線165は、完成した調整リング123の円すい状軌道面143となる。
さらに図7を参照して、軸101を準備する工程においては、切断加工する工程である工程(S15)が実施される。この工程(S15)では、図8(E)における切断線164において鋼材99を切断する。これにより、図8(F)に示すように、円すい状軌道面153が形成された軸101が完成する。また、図7を参照して、調整リング123を準備する工程においても、切断加工する工程である工程(S15)が実施される。この工程(S15)では、図9(C)および(D)を参照して、鋼材99が切断されることにより、図9(D)に示すように、円すい状軌道面143が形成された調整リング123が完成する。以上の手順により、支点軸受ユニット100の内方部材を構成する軸101および調整リング123が準備される。なお、以上の説明では内方部材を構成する軸101および調整リング123を準備する工程について説明したが、外方部材であるスリーブ102についても、上記工程(S11)〜(S12)および(S14)〜(S15)と同様のプロセスを実施することにより、準備することができる。
支点軸受ユニット100を構成する各部材が準備できたところで、図6に示す仮組立する工程(S20)を行なう。具体的には、支点軸受ユニット100に関して先に準備した各部材を、所定の配置に組み立てる工程である。ここで、所定の配置とは、図1に示す支点軸受ユニット100を構成するために、図1に示す配置になるよう各部材を組み合わせることを意味する。
複数個の転動体109を、図1に示す配置になるように軸101とスリーブ102とに挟まれた領域に配置するためには、複数個の転動体109が輪状に配置できる治具を用いることが好ましい。図10は、複数個の転動体を輪状に配置するための治具を示す概略図である。図11は、図10の線分XI−XIにおける断面模式図である。
図10および図11に示す治具210においては、フランジ部203の内部に、真空ポンプに接続される本体部204の中心に対してほぼ一定角度ごと(図11ではほぼ45°ごと)に、パイプ状の空洞部201が形成されている。この空洞部201は本体部204の内部の空洞部202に接続されており、空洞部202は電磁弁を介して真空ポンプに接続されている。この電磁弁が真空ポンプと空洞部202とを連絡させるように作動すると、空洞部202から空気が吸引されることにより、この治具210を用いて、転動体109をフランジ部203の外径面(空洞部201の開口端部)に吸着させることが可能となる。すると、図11に示すように、複数個の転動体109を、支点軸受ユニット100として組み立てるために必要な、ほぼ一定の間隔を隔てて設置された輪状の配置とすることができる。なお、治具210を準備する段階で、フランジ部203のサイズを調整することにより、複数個の転動体109が形成する輪の大きさを組み立てられる系のサイズに適合させることができる。フランジ部203の外径面に存在する全ての空洞部201の開口端部が転動体109で塞がれると、空洞部202内部の真空度が上昇する。この真空度を検出すれば、全ての転動体109が治具210に吸着されたことが確認できる。
なお、図5に示すように、転動体109とスペーサボール149とが混在する場合は、まず転動体109のみを治具210に吸着させ、後述する方法により組み立てられる系に配置し、転動体109を治具210から解放した後でスペーサボール149を治具210に吸着させる方法を用いてもよい。または、転動体109を吸着させる空洞部201とは別の排気系に接続された他の空洞部をフランジ部203に設けた治具を用いて、他の空洞部の開口端部にスペーサボール149を吸着させることにより、転動体109とスペーサボール149との両方を一度に組み立てられるユニットに配置する方法を用いてもよい。
以下の図12(A)〜図12(C)は、部材が組み立てられる系に配置される手順を示す概略図であり、図12(A)は複数個の転動体をスリーブの外側軌道面に接触するように配置した状態を示す概略図である。図12(B)はさらに軸を配置した状態を示す概略図である。図12(C)はさらに調整リングを配置した状態を示す概略図である。なお、図12(B)および図12(C)において、ハッチングを施した部分は断面を表している。
先述した図10および図11に示すように複数個の転動体109を治具210に吸着させた状態で、図12(A)に示すようにスリーブ102の円すい状軌道面141、142、151、152に接触するように、すなわち転動体109がスリーブ102の外側軌道面と2点において接触するように、転動体109を配置するよう運搬する。そして所定の位置に転動体109が配置できたところで治具210に接続された真空ポンプの真空を解除して、転動体109を治具210から解放する。スペーサボール149についても転動体109と同様に所定の位置に配置するが、治具210の構造により、転動体109の配置を行なった後でスペーサボール149の配置を行なってもよいし、転動体109とスペーサボール149とを同時に配置してもよい。また、スリーブ102の上下を反転して、上述した方法と同様に他方の列の転動体109(およびスペーサボール149)を配置する。以上のようにして図12(A)に示す状態とする。
ここで、配置した転動体109およびスペーサボール149がスリーブ102の円すい状軌道面141、142、151、152から離れて落下することを防止するため、スリーブ102の円すい状軌道面141、142、151、152にあらかじめ、たとえば完成時に使用する油やグリスなど、配置した転動体109を仮に固定するためのペーストを塗布しておくことが好ましい。
次に、内方部材としての軸101に、図12(A)のスリーブ102および転動体109(およびスペーサボール149)の系を上方より嵌合することにより、図12(B)に示すようにスリーブ102および転動体109(およびスペーサボール149)の内周側に軸101を配置することができる。また、図12(C)に示すように内側軌道面としての円すい状軌道面143を備えた調整リング123を所定の箇所に、すなわち転動体109が調整リング123の内側軌道面(円すい状軌道面143)と1点において接触するように配置し、図1に示す軸101の接着面124に仮に接着する。また、図1に示すシール125も、スリーブ102の軸101に対向する面上の所定の箇所である、図12(A)または図12(B)に示す切りこみ135に配置し、嵌め込みや接着により固定してもよいが、シール125については、後の本組立する工程(S40)において固定してもよい。
ここで、先の軸101を準備する工程において、接着面124の一部の領域に設けておいた、図12(C)に示す接着剤たまり133を接着剤で充填した上で、調整リング123を所定の箇所に配置し、軸101に仮に接着することが好ましい。また、接着剤たまり133の内部には、支点軸受ユニット100の組立が完了するまで硬化しない接着剤を充填しておくことが好ましく、たとえばエポキシ系の接着剤を用いることが好ましい。さらに、先のスリーブ102を準備する工程において、スリーブ102の、軸101に対向する面上に設けておいた、切り込み135についても、内部に接着剤たまり133に充填した接着剤と同様の接着剤を一部塗布した上で、シール125を仮に配置することが好ましい。
以上の手順により、支点軸受ユニット100の部材を仮組立する工程(S20)が完了する。このとき、図12(C)に示すように、複数個の転動体109が軸101や調整リング123の内側軌道面(円すい状軌道面143、153)と1点で接触し、またスリーブの外側軌道面(円すい状軌道面141、142、151、152)と2点で接触する状態となっている。次に、図6に示すように軌道面を塑性加工する工程(S30)を実施する。具体的には、円すい面形状を有する内側軌道面および外側軌道面に対して、面粗度Raを小さくする塑性加工を施す工程である。
先述したように、たとえば内側軌道面である軸101の円すい状軌道面153や、外側軌道面であるスリーブ102の円すい状軌道面141、142などの全面に対して面粗度Raを小さくし、表面の凹凸を少なくする加工を施す必要はない。先述した図4に示すように、これらの接触面のうち、転動体109が接触する第1の領域(図4における面粗度向上加工領域153A)のみに面粗度Raを小さくする加工を施せばよい。
そのために塑性加工する工程(S30)においては、仮組立する工程(S20)においてすでに外側軌道面および内側軌道面に挟まれるように配置された複数の転動体109を用いて、外側軌道面および内側軌道面のうち当該転動体109が接触する領域を塑性加工する(バニシング加工)。
図13はバニシング加工を用いて、軌道面のうち転動体と接触する領域のみの面粗度Raを小さくした状態を示す図である。図13において、横軸は軌道面の位置座標(バニシング加工が施された領域の延びる方向と交差する方向での位置座標)を示したものであり、縦軸は表面の凹凸高さを示したものである。図13において「バニシ位置」と記載されている位置座標の領域は、バニシング加工が施されており、縦軸の変位が小さくなっている。すなわち、バニシング加工を施された箇所については面粗度Raが小さくなって表面が滑らかになっていることがわかる。実測値としてはたとえば、バニシング前に十点平均粗さRzが1μmであった面が、バニシング加工を施すことによりRzが0.02μmになっている。
図14は本発明の実施の形態1における、バニシング加工を行なう態様を示す概略断面図である。なお、図14において、ハッチングを施した部分は断面を表している。
図14に示すように、仮組立する工程(S20)において仮組立を行なったユニットを、軸端支え131に設置する。そして、押さえ治具132を用いて調整リング123に下向きの荷重を加える。この荷重は、まず支点軸受ユニット100を組み込むために加える予圧荷重の数倍から数十倍の荷重であるF1を加える。そして、図14に示すようにスリーブ102の外周面に接している押さえ盤134は、スリーブ102に対して、スリーブ102から軸101に向かう方向(図14における右から左に向かう方向)に力を加えながらスリーブ102の外周面に沿って、スリーブ102との摩擦力によりスリーブ102を回転させる。以下において、このことをより詳細に説明する。
図14に示す、押さえ治具132に対して上方から下方へ加わる方向の力をアキシャル力、押さえ盤134がスリーブ102に対して与える方向の力をラジアル力と呼ぶことにする。図14に示すように、押さえ盤134は、これと接続されるモータ121により、回転数ω1で回転(自転)しながら、スリーブ102に対してラジアル力を加える。するとスリーブ102は、軸101周りに回転する。これはスリーブ102をはじめ、図14に示すユニットは既に支点軸受ユニット100(図1参照)として仮組立された状態となっているためである。以上のように、外方部材であるスリーブ102を内方部材である軸101周りに相対的に回転させる。このようにして、たとえば円すい状軌道面143が転動体109と接触する領域、および円すい状軌道面141が転動体109と接触する領域に対して力を加えることにより、塑性加工を実施することができる。以上の加工方法が、本発明の実施の形態1に係る、バニシング加工である。
上述したように、バニシング加工は、支点軸受ユニット100(図1参照)として仮組立した状態で加工を行なうことができる。したがって、仮組立する工程(S20)を行なう前にあらかじめ軌道面をたとえば砥石で研削する加工を行なう必要はない。さらに、仮組立がすでにされた状態で、外方部材であるスリーブ102を内方部材である軸101周りに相対的に回転させるだけで、軌道面のうち、転動体109が接触する第1の領域の面粗度Raを、軌道面のうち、第1の領域に隣接する第2の領域の面粗度Raよりも小さくする加工を容易に行なうことができる。このため、バニシング加工を行なうことにより、あらかじめ軌道面をたとえば砥石で(軌道面の全面を)研削する加工を行なう工程を省略することができる。このため、加工に要する労力やコストを大幅に削減することができる。
ここでは上述したように、たとえば押さえ盤134をモータ121で回転させながら押さえ盤134が外方部材であるスリーブ102を回転させる。そのため、スリーブ102の軌道面である円すい状軌道面141,142は、全周にわたって塑性加工される。しかし、内方部材(軸101および調整リング123)が静止している状態では、内方部材の軌道面である円すい状軌道面143,153はその周方向における一部(図14における軸101の回転軸の右側)のみが塑性加工され、全周にわたって十分に加工されないおそれがある。この問題点を解消するためには、バニシング加工を実施する際に、内方部材も軸まわりに回転させることが好ましい。具体的には、図14に示すように、バニシング加工を行なう際には、たとえばモータ122を用いて軸101を回転数ω2で回転(自転)させることが好ましい。
また、上述した回転と同時に、バニシング加工を行なう際に、転動体109が外方部材であるスリーブ102および内方部材である軸101や調整リング123に加える力について考える必要がある。転動体109がスリーブ102の軌道面をバニシングするために加える力については上述したとおりである。以下、転動体が内方部材(調整リング123)の軌道面をバニシングするために加える力について説明する。なお、軸101の軌道面をバニシングするために加える力については、調整リング123の軌道面と同様の考え方を採用することができるため説明を省略する。
図15はアキシャル力のみを加えた状態でバニシング加工を行なった場合における、調整リングの内側軌道面の変形状態を示す概略断面図である。また、図16は、アキシャル力およびラジアル力を加えた状態でバニシング加工を行なった場合における、調整リングの内側軌道面の変形状態を示す概略断面図である。
アキシャル力のみが調整リング123に負荷された状態でバニシング加工を行なえば、たとえば図15の断面図に示すように、円すい状軌道面143は転動体109の表面(転動体表面109A)の形状に沿った形状となるように塑性変形する。この場合、支点軸受ユニット100を運転すると、バニシングにより塑性変形した領域から転動体109が外れ、図15におけるA点に乗り上げる現象が発生する可能性がある。このような現象は、支点軸受ユニット100のトルクの変動の原因となり、スイングアーム1の精密な位置制御の観点から好ましくない。
これに対し、アキシャル力だけでなくラジアル力を負荷した状態でバニシング加工を行なうことにより、図16に示すように、円すい状軌道面143はより平面に近い(円すい状軌道面143の断面に沿った方向に広がって曲率が小さくなった)形状に塑性変形する。これにより、上述のようなトルク変動の問題を抑制することができる。
以上より、バニシング加工を行なう際には、仮組立を行なったユニットに対して、アキシャル力およびラジアル力の両方を加えることが好ましい。なお、これらのアキシャル力とラジアル力とは、同時に加えることがより好ましい。
以上に述べたバニシング加工の際に、仮組立を行なった図14に示すユニットに加えるアキシャル力(F1)やラジアル力(F2)は、転動体109が接触する軌道面に力を加えることにより、当該軌道面の加工を行なうために加える力である。それゆえに、たとえば上述したF1は、以下に述べる本組立する工程(S40)を行なう際に加える予圧Fの3倍から5倍程度である。
なお、以上に述べたバニシング加工を行なった後における、支点軸受ユニット100(図1参照)の各軌道面のうち、転動体109と接触する領域の面粗度は、中心線平均粗さRaにして0.02μm以下であることが好ましい。バニシング加工を行なった後においてRaを0.02μm以下とするためには、軌道面を塑性加工する工程(S30)を行なう前における当該内側軌道面および外側軌道面の面粗度Raは0.3μm以下であることが好ましい。なお、当該工程(S30)を行なう前における当該各軌道面の面粗度RaはRaは0.14μm以下であることがより好ましい。このようにすれば、上述したバニシング加工を行なうことにより、各軌道面のうち、転動体109が接触する領域における面粗度Raを、スイングアーム支点軸受のトルクの変動を抑制するために十分な0.02μm以下とすることが容易となる。
図6を参照して、軌道面を塑性加工する工程(S30)により各軌道面の面粗度Raを小さくした後、本組立する工程(S40)を行なう。具体的には、仮組立する工程(S20)を行なうことにより仮組立されているユニットに対し、各部材の固定を行ない、支点軸受ユニット100を完成させる工程である。本組立する工程(S40)では、上述したように、押さえ治具132による荷重をF1から、支点軸受ユニット100の予圧であるFに低下させる。また、押さえ盤134によるラジアル力をF2から0にする。図14に示すユニットのうち、押さえ盤134およびモータ121を除く全体を炉内に入れ、接着剤の硬化温度まで加熱する。このことにより、先の工程にて接着剤たまり133の内部に充填された接着剤を硬化させ、調整リング123を軸101に対して固定させることができる。また、シール125についても、同様の接着剤を用いて、図12(A)または図12(B)に示す切りこみ135に嵌合させた状態でスリーブ102に接着させる。
なお、調整リング123を高い剛性で固着させるために、調整リング123に対して荷重が偏らないように一様に予圧Fを負荷させるためには、たとえば調心座を介して予圧Fを加えることが好ましい。このように予圧Fを付与することにより、支点軸受ユニット100が運転されている状態において、内方部材(軸101および調整リング123)および外方部材(スリーブ102)と転動体109との接触を確実に維持することが容易になる。その結果、スイングアーム用軸受の剛性が向上し、スイングアーム用軸受の回転精度および位置決め精度が向上する。
(実施の形態2)
図17は、本発明の実施の形態2に係る支点軸受ユニットの構造を示す、断面概略図である。なお、図17において、ハッチングを施した部分は断面を表している。図17における支点軸受ユニット200は、内方部材として、支点軸受ユニット100における調整リング123の代わりに、内輪103を用いている。内輪103には、第3の接触面としての軸受溝110が形成されており、転動体109は軸受溝110の曲面と1点接触する。また、スリーブ102は、支点軸受ユニット100と同様に転動体109と2点接触する。より具体的には、スリーブ102は、円すい面形状を有し、転動体109と接触する第1の接触面(円すい状軌道面141、151)と、第1の接触面に交差する円すい面形状を有し、転動体109と接触する第2の接触面(円すい状軌道面142、152)とを含んでいる。
支点軸受ユニット200のように、スリーブ102が転動体109と2点接触する構造であれば、内側軌道面はR面の軸受溝110であってもよい。転動体109は、スリーブ102とは2つの接触面(円すい状軌道面141、142または円すい状軌道面151、152)にて2点接触、軸受溝110と1点接触することにより合計3点接触する。転動体109とスリーブ102との2つの接触点が決まれば、内側軌道面がR面の軸受溝110であっても、転動体109と軸受溝110との接触点はほぼ1箇所に決まる。本発明の実施の形態2は、以上の各点で、本発明の実施の形態1と異なる。そして、このように転動体109を、内方部材の軸受溝110と1点接触、外方部材であるスリーブ102と2点接触することにより3点接触させた支点軸受ユニット200は、実施の形態1における支点軸受ユニット100と、機能面、効果面において同様である。すなわち、本発明の実施の形態2の説明において、上述しなかった構成や条件、工程や効果などは、全て本発明の実施の形態1に準ずる。
実施例1において、上述した本発明の実施の形態1に係る支点軸受ユニット100の内側軌道面および外側軌道面に必要な硬度の算出を試みた。
ここで図18は、鋼材の硬度に対する、圧痕が発生する際の接触応力を示すグラフである。図18のグラフにおいて、横軸はたとえば支点軸受ユニット100のスリーブ102や軸101の材料として用いる、SUS420J2などの鋼材の硬度を示している。また、図18のグラフにおいて、縦軸は横軸に示した硬度を有する鋼材に対して鋼製の球を接触させて応力を加えた際に、当該鋼材に圧痕が発生する応力を示したものである。たとえば図18に示すように、硬度がHRC60である鋼材の平板は、鋼製の球を4GPaの応力で押し付けることにより圧痕が発生する。
一方、本発明の実施の形態1に係る支点軸受ユニット100の内方部材である軸101と同様の材料であるSUS420J2を用いて、断面が直径5mmの円形をなす硬度HRC30の丸棒を作成した。この丸棒の外周面に対して、上記実施の形態1において支点軸受ユニット100に組み込まれる直径1mmの鋼球を押し付けながら転がした。その結果、丸棒の外周面には、曲率半径0.7mmの溝が形成された。つまりこのような条件でバニシングを行なえば、0.7mmの溝曲率半径の溝が加工されることとなる。
ところで上述したように、支点軸受ユニット100は、スイングアーム支点軸受として使用する際の不測の外力であるたとえば衝撃荷重により、転動体109が接触する軌道面に対して圧痕などを発生することが抑制できる設計となっていることが好ましい。一般には、1000Gの衝撃が加わっても圧痕が発生しない設計とすることが好ましい。
外力である衝撃荷重の大きさは、軌道面に対して衝撃荷重を加える部分、すなわち支点軸受ユニット100およびスイングアーム1の系(図1参照)のうちスイングアーム1とスリーブ102との合計質量に、衝撃力の加速度を乗ずることにより求められる。たとえば、2.5インチハードディスクドライブの場合、上記合計質量は3グラムである。したがって、この場合、1000Gの衝撃に対して、30Nの力が作用する。すなわち、30Nの力が加わったとしても軌道面に圧痕が発生しない設計とすることが好ましい。
支点軸受ユニット100における軌道面の半径や、上述した溝曲率半径、転動体109の半径を用いて、衝撃荷重が作用した際に鋼製の球(転動体109)と軌道面との間の接触応力を計算し、その結果と図18のグラフが示す関係とを用いて算出した結果、軌道面に必要な硬度は次の図19に示すようになった。
図19は、外力の大きさと、外力に対して材料に圧痕を発生させないために必要な硬度との関係を示すグラフである。図19において、横軸は外力、すなわち上述した不測の衝撃荷重をN単位で示したものであり、縦軸は、横軸に示す衝撃荷重が軌道面に発生した場合に、当該軌道面に圧痕を発生させないために、当該軌道面に要求される必要硬度をHRC(ロックウェルCスケール)にて示したものである。また、図19のグラフ中、白丸(○)は1点接触の場合、すなわちたとえば支点軸受ユニット100の場合、軌道面のうち、転動体109と1点で接触する内側軌道面に対応する。同様に図19のグラフ中、黒丸(●)は2点接触の場合、すなわちたとえば支点軸受ユニット100の場合、軌道面のうち、転動体109と2点で接触する外側軌道面に対応する。
図19のグラフより、たとえば上述したように30Nの衝撃荷重が発生した場合においても軌道面に圧痕を発生させないためには、1点接触側すなわち支点軸受ユニット100の内側軌道面(図1における円すい状軌道面143、153)はHRC40、2点接触側すなわち支点軸受ユニット100の外側軌道面(図1における円すい状軌道面141など)にはHRC25以上の硬度が必要であることがわかった。以上より、上述したように、本発明の支点軸受ユニットにおいては、内側軌道面の硬度がHRC40以上、外側軌道面の硬度がHRC25以上であることが好ましいといえる。
実施例2において、鋼材に対して高周波焼入れを行なった場合の硬度分布を調査する実験を行なった。本実施例2においてはまず本発明の実施の形態1に係る支点軸受ユニット100の内方部材である軸101と同様の材料であるSUS420J2を用いて、断面が直径5mmの円形をなす丸棒を作成した。
そして当該丸棒の外周面を囲むように、高周波コイルを配置し、誘導加熱を利用した高周波焼入れを実施した。
図20は、断面が直径5mmの円形をなす丸棒を高周波焼入れを行なった際の硬度分布を示すグラフである。図20において、横軸は丸棒の表面からの深さ、すなわち丸棒の外周面から丸棒の断面の中心へ向かう距離をmm単位で示しており、縦軸は丸棒の表面からの各深さにおける、高周波焼入れを行なった後の硬度をHv単位で示している。
図20に示すように、丸棒は表層部に近い領域が焼入れ硬化されて硬度が高い一方、内部においては硬度が低くなっていた。そして、図20を参照して、表面から1mm以内の領域を高硬度化できることが確認された。このことから、支点軸受ユニット100の製造プロセスにおいて、棒鋼などの鋼材に対して高周波焼入れを実施することにより、たとえば軸101の円すい状軌道面153となるべき領域を十分に硬化する一方、穴161やねじ162を形成すべき領域の硬度上昇を抑制することが可能であることが確認された。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、製造コストの低減が求められるスイングアーム支点軸受およびその製造方法に、特に有利に適用されうる。
本発明の実施の形態1に係る、スイングアームに組み込まれた支点軸受ユニットの構造を示す、断面概略図である。 図1中に丸点線で囲んだ「20」の領域の拡大断面図である。 図1中に丸点線で囲んだ「30」の領域の拡大断面図である。 図3における円すい状軌道面153に対して面粗度を小さくする加工を施す領域を表わす概略図である。 図1の線分V−Vにおける断面模式図である。 本発明の実施の形態1に係る、支点軸受ユニットの製造方法を示すフローチャートである。 図6のフローチャートの部材を準備する工程(S10)のうち、内方部材の形成に係る詳細な工程を示すフローチャートである。 (A)内方部材(軸101)を製造する過程の、図7の高周波焼入れする工程(S11)を行なった状態を示す概略断面図である。(B)内方部材(軸101)を製造する過程の、図7の穴あけ加工する工程(S12)を行なった状態を示す概略断面図である。(C)内方部材(軸101)を製造する過程の、図7のタッピング加工する工程(S13)を行なった状態を示す概略断面図である。(D)内方部材(軸101)を製造する過程の、図7の旋削加工する工程(S14)を行なった状態を示す概略断面図である。(E)内方部材(軸101)を製造する過程の、図7の切断加工する工程(S15)を行なった状態を示す概略断面図である。(F)内方部材(軸101)の完成した状態を示す概略断面図である。 (A)内方部材(調整リング123)を製造する過程の、図7の高周波焼入れする工程(S11)を行なった状態を示す概略断面図である。(B)内方部材(調整リング123)を製造する過程の、図7の穴あけ加工する工程(S12)を行なった状態を示す概略断面図である。(C)内方部材(調整リング123)を製造する過程の、図7の旋削加工する工程(S14)を行なった状態を示す概略断面図である。(D)内方部材(調整リング123)の完成した状態を示す概略断面図である。 複数個の転動体を輪状に配置するための治具を示す概略図である。 図10の線分XI−XIにおける断面模式図である。 (A)複数個の転動体をスリーブの外側軌道面に接触するように配置した状態を示す概略図である。(B)さらに軸を配置した状態を示す概略図である。(C)さらに調整リングを配置した状態を示す概略図である。 バニシング加工を用いて、軌道面のうち転動体と接触する領域のみの面粗度Raを小さくした状態を示す図である。 本発明の実施の形態1における、バニシング加工を行なう態様を示す概略断面図である。 アキシャル力のみを加えた状態でバニシング加工を行なった場合における、調整リングの内側軌道面の変形状態を示す概略断面図である。 アキシャル力およびラジアル力を加えた状態でバニシング加工を行なった場合における、調整リングの内側軌道面の変形状態を示す概略断面図である。 本発明の実施の形態2に係る支点軸受ユニットの構造を示す、断面概略図である。 鋼材の硬度に対する、圧痕が発生する際の接触応力を示すグラフである。 外力の大きさと、外力に対して材料に圧痕を発生させないために必要な硬度との関係を示すグラフである。 断面が直径5mmの円形をなす丸棒を高周波焼入れを行なった際の硬度分布を示すグラフである。
符号の説明
1 スイングアーム、2 磁気ヘッド、99 鋼材、100 支点軸受ユニット、101 軸、102 スリーブ、103 内輪、109 転動体、109A 転動体表面、110 軸受溝、121 モータ、122 モータ、123 調整リング、124 接着面、125 シール、131 軸端支え、132 押さえ治具、133 接着剤たまり、134 押さえ盤、135 切り込み、141 円すい状軌道面、142 円すい状軌道面、143 円すい状軌道面、144 接触点、145 接触点、146 接触点、149 スペーサボール、151 円すい状軌道面、152 円すい状軌道面、153 円すい状軌道面、153A 面粗度向上加工領域、154 接触点、155 接触点、156 接触点、161 穴、162 ねじ、163 外形線、164 切断線、165 外形線、171 点線、172 点線、200 支点軸受ユニット、201 空洞部、202 空洞部、203 フランジ部、204 本体部、210 治具。

Claims (7)

  1. 外周面に円環状の内側軌道面が形成された内方部材と、
    前記内方部材を取り囲むように配置され、前記内側軌道面に対向する円環状の外側軌道面が形成され、ハードディスクドライブのスイングアームが接続されるべき外方部材と、
    前記内側軌道面および前記外側軌道面に接触して配置された複数の転動体とを備え、
    前記転動体は、前記内側軌道面と1点において接触するとともに、前記外側軌道面と2点において接触しており、
    前記内側軌道面および前記外側軌道面においては、前記転動体と接触する第1の領域の面粗度Raが、前記第1の領域に隣接する第2の領域の面粗度Raよりも小さい、スイングアーム支点軸受。
  2. 前記内側軌道面の硬度はHRC40以上HRC50以下であり、
    前記外側軌道面の硬度はHRC25以上HRC35以下である、請求項1に記載のスイングアーム支点軸受。
  3. 前記内方部材には、前記内側軌道面の中心軸を含む領域に穴が形成されており、
    前記内側軌道面の硬度はHRC40以上となっており、
    前記穴の表層部の硬度はHRC25以下となっている、請求項1または2に記載のスイングアーム支点軸受。
  4. 前記内側軌道面を含む領域は高周波焼入れされている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスイングアーム支点軸受。
  5. 外周面に円環状の内側軌道面が形成された内方部材と、円環状の外側軌道面が
    形成され、ハードディスクドライブのスイングアームが接続されるべき外方部材と、複数の転動体とを準備する工程と、
    前記内側軌道面と前記外側軌道面とが対向し、かつ前記転動体が前記内側軌道面と1点において接触するとともに、前記外側軌道面と2点において接触するように、前記内方部材、前記外方部材および前記転動体を組み立てる工程と、
    前記外方部材を前記内方部材に対して軸周りに相対的に回転させることにより、前記内側軌道面において前記転動体と接触する領域、および前記外側軌道面において前記転動体と接触する領域の塑性加工を実施する工程とを備えた、スイングアーム支点軸受の製造方法。
  6. 前記塑性加工を実施する工程では、前記外方部材および前記内方部材を軸周りに回転させることにより、前記外方部材を前記内方部材に対して軸周りに相対的に回転させるとともに、前記内方部材と前記外方部材との間にアキシャル力およびラジアル力を作用させる、請求項5に記載のスイングアーム支点軸受の製造方法。
  7. 前記転動体と接触する領域を塑性加工する工程では、面粗度Ra0.3以下である前記内側軌道面および前記外側軌道面が塑性加工される、請求項5または6に記載のスイングアーム支点軸受の製造方法。
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