JP2010090313A - 近赤外線吸収組成物、及び近赤外線吸収塗布物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記一般式(1)で表される近赤外線吸収化合物と疎水性ポリマーとを少なくとも含有する近赤外線吸収組成物。
(式中、R1a及びR1bは同じであっても異なっても良く、各々独立にアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。R2及びR3は各々独立に水素原子または置換基を表し、少なくとも一方は電子吸引性基であり、R2及びR3は結合して環を形成しても良い。R4は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、置換ホウ素、金属原子を表し、R1a、R1b及び/又はR3と共有結合もしくは配位結合しても良い。)
【選択図】なし
Description
剛直な骨格をもち高堅牢な近赤外吸収色素としては、日本触媒(株)から上市されているバナジルナフタロシアニン色素やBASF(株)から上市されているクオータリレン色素があるが、バナジルフタロシアニンは不可視性が不十分である。また、クオータリレンは溶液など分子分散状態では良好な不可視性を有するものの、濃度を上げると会合により可視域に吸収を生じ、不可視性が失われ、使用形態が限定される。
不可視性に優れ、赤外領域を広くカバーする色素としては、日本化薬(株)等から上市されているジインモニウム色素があるが、還元されやすく、堅牢性は不十分であり、使用形態が限定されてしまう。
このように、現在、不可視性と堅牢性を両立する近赤外色素は上市されておらず、これら性能を両立する近赤外吸収色素の開発が望まれている。
しかし、この使用態様は、有機溶剤を用いるために、環境への影響が大きいという欠点を有していた。また、製造設備も、防爆設備にする必要があり、高額な設備投資を必要とする方式である。
しかし、大量の有機溶剤を用いることなくフィルムに塗布可能な水溶性染料に関しては、耐久性、特に高温高湿度下で、近赤外線吸収能が低下する問題などがあり、改善が求められていた。
本発明の課題は、下記の手段により解決された。
<1>下記一般式(1)で表される近赤外線吸収化合物と疎水性ポリマーとを少なくとも含有する近赤外線吸収組成物。
<3>前記疎水性ポリマーが、有機樹脂の水性分散物を形成してなることを特徴とする<1>または<2>項に記載の近赤外線吸収組成物。
<5>支持体上に、<1>〜<4>のいずれか1項に記載の近赤外線吸収組成物を用いて形成された近赤外線吸収層を有することを特徴とする近赤外線吸収塗布物。
<6>前記近赤外線吸収層を形成する過程において、加熱乾燥を行うことを特徴とする<5>項に記載の近赤外線吸収塗布物。
<7>可視光線の吸収率が30%以下であることを特徴とする<5>又は<6>項に記載の近赤外線吸収塗布物。
また、本発明の近赤外線吸収組成物は、前記近赤外線吸収化合物と前記疎水性ポリマーとの水性分散物を用いることにより、塗設には、有機溶剤系塗布用設備等の煩雑な設備を要しない。加えて、有機溶剤の使用を著しく低減、ないしは、全く使用することなく製造可能であり、有機溶剤系塗布に比べて環境負荷の低減が可能である。
また、本発明の近赤外線吸収塗布物は、高温高湿下で保存後の近赤外線吸収能の低下や光による近赤外線吸収能の低下を抑制することができる。
さらにまた、本発明の近赤外線吸収塗布物は、耐久性にも優れた光学フィルターを低コストで提供することができる。
以下、一般式(1)で表される近赤外線吸収化合物について説明する。
また、R1a、R1bで表されるアリール基としては、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えばフェニル、o−メチルフェニル、p−メチルフェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラニル、フェナントリルなどが挙げられる。
R1a、R1bで表されるヘテロアリール基としては、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロアリール基であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子である。具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、ナフトチアゾリル、ベンズオキサゾリル、m−カルバゾリル、アゼピニルなどが挙げられる。
一般式(1)中のR1a及びR1bは、互いに同一でも異なってもよい。
(a)1,3−ジカルボニル核:例えば1,3−インダンジオン核、1,3−シクロヘキサンジオン、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオンなど。
(b)ピラゾリノン核:例えば1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−(2−ベンゾチアゾイル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オンなど。
(c)イソオキサゾリノン核:例えば3−フェニル−2−イソオキサゾリン−5−オン、3−メチル−2−イソオキサゾリン−5−オンなど。
(d)オキシインドール核:例えば1−アルキル−2,3−ジヒドロ−2−オキシインドールなど。
(e)2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核:例えばバルビツル酸または2−チオバルビツル酸およびその誘導体など。誘導体としては例えば1−メチル、1−エチル等の1−アルキル体、1,3−ジメチル、1,3−ジエチル、1,3−ジブチル等の1,3−ジアルキル体、1,3−ジフェニル、1,3−ジ(p−クロロフェニル)、1,3−ジ(p−エトキシカルボニルフェニル)等の1,3−ジアリール体、1−エチル−3−フェニル等の1−アルキル−1−アリール体、1,3−ジ(2−ピリジル)等の1,3位ジヘテロ環置換体等が挙げられる。
(f)2−チオ−2,4−チアゾリジンジオン核:例えばローダニンおよびその誘導体など。誘導体としては例えば3−メチルローダニン、3−エチルローダニン、3−アリルローダニン等の3−アルキルローダニン、3−フェニルローダニン等の3−アリールローダニン、3−(2−ピリジル)ローダニン等の3位ヘテロ環置換ローダニン等が挙げられる。
(g)2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン(2−チオ−2,4−(3H,5H)−オキサゾールジオン核:例えば3−エチル−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオンなど。
(h)チアナフテノン核:例えば3(2H)−チアナフテノン−1,1−ジオキサイドなど。
(i)2−チオ−2,5−チオゾリジンジオン核:例えば3−エチル−2−チオ−2,5−チアゾリジンジオンなど。
(j)2,4−チオゾリジンジオン核:例えば2,4−チアゾリジンジオン、3−エチル−2,4−チアゾリジンジオン、3−フェニル−2,4−チアゾリジンジオンなど。
(k)チアゾリン−4−オン核:例えば4−チアゾリノン、2−エチル−4−チアゾリノンなど。
(l)4−チアゾリジノン核:例えば2−エチルメルカプト−5−チアゾリン−4−オン、2−アルキルフェニルアミノ−5−チアゾリン−4−オンなど。
(m)2,4−イミダゾリジンジオン(ヒダントイン)核:例えば2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2,4−イミダゾリジンジオンなど。
(n)2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン(2−チオヒダントイン)核:例えば2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオンなど。
(o)イミダゾリン−5−オン核:例えば2−プロピルメルカプト−2−イミダゾリン−5−オンなど。
(p)3,5−ピラゾリジンジオン核:例えば1,2−ジフェニル−3,5−ピラゾリジンジオン、1,2−ジメチル−3,5−ピラゾリジンジオンなど。
(q)ベンゾチオフェン−3−オン核:例えばベンゾチオフェン−3−オン、オキソベンゾチオフェンー3−オン、ジオキソベンゾチオフェンー3−オンなど。
(r)インダノン核:例えば1−インダノン、3−フェニル−1−インダノン、3−メチル−1−インダノン、3,3−ジフェニル−1−インダノン、3,3−ジメチル−1−インダノンなど。
一般式(1)中の2つのR2は、互いに同一でも異なってもよく、また、2つのR3は、互いに同一でも異なってもよい。
R4は、R1a、R1b及び/又はR3と共有結合もしくは配位結合しても良い。
一般式(1)中の2つのR4は、互いに同一でも異なってもよい。
前記一般式(2)中、Z1a及びZ1bは各々独立にアリール環もしくはヘテロアリール環を形成する原子団を表す。形成されるアリール環、ヘテロアリール環は、前記一般式(1)におけるR2及びR3の置換基として説明したアリール基、ヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。Z1a及びZ1bは同一であることが好ましい。
R5a及びR5bは各々独立に炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、炭素数1〜20のカルバモイル基、ハロゲン原子、又はシアノ基のいずれか1つを表す。具体例には、前記一般式(1)におけるR2及びR3で説明した例と同義であり、好ましい範囲も同様である。R5a及びR5bは同一であることが好ましい。
R5a又はR5bとZ1a又はZ1bとが結合し縮合環を形成しても良く、該縮合環としてはナフチル環、キノリン環などが挙げられる。
Z1a又はZ1bが形成するアリール環もしくはヘテロアリール環にR5a又はR5bで表される基を導入することで、不可視性を大きく向上することができる。
一般式(3)中、R31a及びR31bは各々独立に炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数3〜20のヘテロアリール基を表し、具体的には、前記一般式(1)におけるR1a及びR1bで説明した例と同義であり、好ましい範囲も同様である。R31a及びR31bは同一であることが好ましい。
R32はシアノ基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜10の含窒素ヘテロアリール基であり、具体的には、前記一般式(1)におけるR2の例と同義であり、好ましい範囲も同様である。
R6及びR7が置換した5員含窒素ヘテロ環を導入し、更にホウ素錯体とすることで、高い堅牢性、高い不可視性を両立する赤外線吸収色素を実現することができる。
Xは酸素原子、イオウ原子、−NR−、−CRR’−を表す。R及びR’は各々独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を表し、好ましくは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基である。
一般式(4)中、R41a及びR41bは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数3〜20のヘテロアリール基を表し、具体的には、前記一般式(1)におけるR1a及びR1bで説明した例と同義であり、好ましい範囲も同様である。ただし、R41a及びR41bは互いに異なる基を表す。
R42はシアノ基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜10の含窒素ヘテロアリール基であり、具体的には、前記一般式(1)におけるR2の例と同義であり、好ましい範囲も同様である。
Z2は−C=N−と共に含窒素ヘテロ5又は6員環を形成する原子団を表し、含窒素ヘテロ環としてはピラゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、これらのベンゾ縮環もしくはナフト縮環、又はこれら縮環の複合体を表す。
R44は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基、金属原子または置換基としてハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、もしくは炭素数4〜20のヘテロアリール基を有する置換ホウ素を表し、Z2が形成する含窒素ヘテロ環と共有結合もしくは配位結合を有しても良い。
互いに異なるR41a及びR41bで表される基を導入し、Z2が−C=N−と共に形成する含窒素ヘテロ5又は6員環を導入することで、高い堅牢性および高い不可視性、優れた分散性、高い有機溶媒溶解性を付与することができる。
前記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物は、該当するジケトピロロピロール化合物に、活性メチレン化合物を縮合させ、場合によっては、さらに、ホウ素や金属を反応させることで合成することができる。ジケトピロロピロール化合物は、「ハイパフォーマンス・ピグメンツ(High Performance Pigments)」,Wiley−VCH,2002年,160〜163ページに記載の方法で合成でき、より具体的な例としては米国特許第5,969,154号明細書や特開平9−323993号公報に記載の方法で合成できる。また、ジケトピロロピロール化合物と活性メチレン化合物との縮合反応やその後のホウ素化については、非特許文献Angewante Chemie International Edition of English,第46巻,第3750〜3753ページ(2007年)に従って合成できる。ホウ素化試薬はJ.Med.Chem.第3巻356〜360頁(1976年)を参考にして合成することができる。また、例えばブロモカテコールボランは東京化成工業社より購入して使用することができる。
また、前記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物は、モル吸光係数εは特に限定されないが、好ましくは50,000〜300,000であり、より好ましくは100,000〜250,000である。
ここで、水性分散微粒子とは、分散媒としての水に分散させた微粒子をいう。
前記近赤外線吸収化合物を水性分散微粒子状態で用いると、微粒子内部にある化合物同士が会合することにより、前記近赤外線吸収層に高い耐光性と耐湿熱性とを付与できる。
本発明において、微粒子の体積平均粒子径の測定装置には、ナノトラックUPA粒度分析計(UPA−EX150、商品名、日機装社製)を用いることができる。その測定は、微粒子分散体3mlを測定セルに入れ、所定の測定方法に従って行う。なお、測定時に入力するパラメーターとしては、粘度にはインク粘度を、分散粒子の密度には微粒子の密度を用いる。
本発明の近赤外線吸収組成物は、前述のとおり、疎水性ポリマーを少なくとも含有することを特徴とする。
本発明の近赤外線吸収組成物に用いる前記疎水性ポリマーは1種類を単独で用いてもよいし、必要に応じて2種類以上を混合して使用してもよい。
本発明に用いる前記疎水性ポリマーは、主成分が水である分散媒(本明細書では溶媒と呼ぶこともある)に疎水性の有機樹脂(ポリマー)が分散された有機樹脂(ポリマー)の水性分散物を形成してなることが好ましい。
前記溶媒中に含まれる水の含量は、30〜100質量%が好ましく、50〜100質量%がより好ましく、70〜100質量%がさらに好ましい。水以外の溶媒としては、メタノールやエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフランやブチルセロソルブなど、水に溶解性を有する溶剤が好ましく用いられる。
本発明の近赤外線吸収組成物において、前記疎水性ポリマーの含有量(好ましくは前記ポリマーの前記水性分散物の含有量)は、0.2〜10g/m2が好ましい。0.2g/m2未満の場合は、後述の近赤外線吸収塗布物を形成する際に近赤外線吸収層の膜強度や支持体との密着が弱くなる場合があり、10g/m2を超えると塗布性やムラ、高温高湿度下でのヘイズ上昇の問題を生じる場合がある。
疎水性の前記有機樹脂(ポリマー)としては、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等の種々のポリマーを使用することができる。但し、水溶性のポリマー(ゼラチン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなど)だけを本発明においてバインダーとして用いることはできない。水溶性のポリマーだけをバインダーとして用いた場合、高温高湿度下での近赤外線吸収化合物が分解する問題がある。近赤外線吸収層に水溶性のポリマーを含有させる場合は、同一層に上記ポリマーの水性分散物が存在する必要があり、好ましくは該水性分散物が固形分として0.2〜10g/m2塗布されていることが好ましく、水溶性のポリマーを添加する場合、その量は0.2g/m2以下であることが好ましい。
後述の近赤外線吸収塗布物を形成する際に、有機樹脂(ポリマー)層の支持体との密着性を良好にする観点から、本発明の近赤外線吸収組成物に硬化剤(例えばカルボジイミド化合物)を含有させ、後述の近赤外線吸収塗布物を形成する際に、前記硬化剤により硬化させてもよい。本発明においては、良好な作業環境の維持、及び大気汚染防止の観点から、前記ポリマーもカルボジイミド化合物などの前記硬化剤も、エマルジョン形態の水性分散物の状態で使用することが好ましい。
また、前記ポリマーは、カルボジイミド化合物などの硬化剤との架橋反応が可能なように、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基のいずれかの架橋性基を含有することが好ましい。なかでも、水酸基及びカルボキシル基がより好ましく、カルボキシル基が特に好ましい。前記ポリマー中の水酸基、カルボキシル基等の前記架橋性基の含有量は、0.0001〜1当量/kgが好ましく、特に0.001〜1当量/kgが好ましい。
スーパフレックス830、460、870、420、420NS(第一工業製薬製ポリウレタン)、ボンディック1370NS、1320NS、ハイドランHw140SF、WLS201、WLS202、WLS213(大日本インキ化学工業製ポリウレタン)、オレスターUD350、UD500、UD600(三井化学製ポリウレタン)、ネオレッツR972、R966、R9660(楠本化成製ポリウレタン)、ファインテックスEs650、Es2200(大日本インキ化学工業製ポリエステル)、バイロナールMD1100、MD1400、MD1480(東洋紡製ポリエステル)、ジュリマーET325、ET410、AT−613、SEK301(日本純薬製アクリル)、ボンコートAN117、AN226(大日本インキ化学工業製アクリル)、ラックスターDS616、DS807(大日本インキ化学工業製スチレン−ブタジエンゴム)、ニッポールLX110、LX206、LX426、LX433(日本ゼオン製スチレン−ブタジエンゴム)、ニッポールLX513、LX1551、LX550、LX1571(日本ゼオン製アクリロニトリル−ブタジエンゴム)(いずれも商品名)。
以下、本発明の近赤外線吸収塗布物(以下、近赤外線吸収塗布膜ということもある。)について説明する。
本発明の近赤外線吸収塗布膜は、前記近赤外線吸収化合物と前記ポリマーの前記水性分散物を含有する前記近赤外線吸収組成物を調製し、前記近赤外線吸収組成物を支持体上に塗布してなる近赤外線吸収層を形成することで作製できる。
前記近赤外線吸収層の塗布方法としては、例えばディップコート法、ローラーコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、ダイコート法などを選択できる。これらのコート法は連続加工を行うことができ、バッチ式の蒸着法などに比べて生産性が優れている。また、薄く均一な塗膜を形成できるスピンコート法も採用し得る。
塗布層を担持した支持体(例えば、ポリエステル等のプラスチックフィルム)は、逐次二軸延伸前、同時二軸延伸前、一軸延伸後で再延伸前、あるいは二軸延伸後のいずれであってもよい。塗布液を塗布するプラスチック支持体の表面は、あらかじめ紫外線照射処理、コロナ放電処理、グロー放電処理などの表面処理を施しておくことが好ましい。
なお、前記近赤外線吸収層は2層以上設けてもよい。近赤外線吸収層の膜厚は、1層当たり、近赤外線遮蔽効果を有効に得るために、0.1μm以上が好ましく、成膜時の溶媒が残留しにくい、成膜の操作性が容易であるなどの点から10μm以下が好ましく、特に0.3〜3μmであることが好ましい。
上記プラスチックフィルムおよびプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などを用いることができる。
本発明においては、透明性、耐熱性、取り扱いやすさおよび価格の点から、上記プラスチックフィルムはポリエチレンテレフタレートフィルム又はトリアセチルセルロース(TAC)であることが好ましい。
本発明におけるプラスチックフィルムおよびプラスチック板は、単層で用いることもできるが、2層以上を組み合わせた多層フィルムとして用いることも可能である。
ここで、吸収率とは、λmaxにおける吸光度を100%としたときの、測定波長における吸光度を百分率で表した値をいう。
本発明の近赤外線吸収塗布膜に、必要に応じてさらに別の機能性を付与してもよい。又は近赤外線吸収層とは別に機能性を有する機能層を設けていてもよい。この機能層は、用途ごとに種々の仕様とすることができる。例えば、ディスプレイ用電磁波シールド材用途としては、屈折率や膜厚を調整した反射防止機能を付与した反射防止層や、ノングレアー層またはアンチグレア層(共にぎらつき防止機能を有する)、特定の波長域の可視光を吸収する色調調節機能をもった層、指紋などの汚れを除去しやすい機能を有した防汚層、傷のつき難いハードコート層、衝撃吸収機能を有する層、ガラス破損時のガラス飛散防止機能を有する層などを設けることができる。これらの機能層は、銀塩含有層と支持体とを挟んで反対側の面に設けてもよく、あるいは同一面側に設けてもよい。
透光性電磁波シールド膜には、外光反射を抑制するための反射防止(AR:アンチリフレクション)性、または、鏡像の映り込みを防止する防眩(AG:アンチグレア)性、またはその両特性を備えた反射防止防眩(ARAG)性のいずれかの機能性を付与することが好ましい。
これらの性能により、照明器具等の映り込みによって表示画面が見づらくなってしまうのを防止できる。また、膜表面の可視光線反射率が低くすることにより、映り込み防止だけではなく、コントラスト等を向上させることができる。反射防止性・防眩性を有する機能性フィルムを透光性電磁波シールド膜に貼付した場合の可視光線反射率は、2%以下であることが好ましく、より好ましくは1.3%以下、さらに好ましくは0.8%以下である。
反射防止層としては、例えば、フッ素系透明高分子樹脂やフッ化マグネシウム、シリコン系樹脂や酸化珪素の薄膜等を例えば1/4波長の光学膜厚で単層形成したもの、屈折率の異なる、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、窒化物、硫化物等の無機化合物またはシリコン系樹脂やアクリル樹脂、フッ素系樹脂等の有機化合物の薄膜を2層以上多層積層したもの等で形成することができる。
粒子の平均粒径は、1〜40μm程度が好ましい。
また、防眩性層としては、上記の熱硬化型または光硬化型樹脂を塗布した後、所望のグロス値または表面状態を有する型を押しつけ硬化することによっても形成することができる。
防眩性層を設けた場合の透光性電磁波シールド膜のヘイズは0.5%以上20%以下であることが好ましく、より好ましくは1%以上10%以下である。ヘイズが小さすぎると防眩性が不十分であり、ヘイズが大きすぎると透過像鮮明度が低くなる傾向がある。
近赤外線吸収フィルターに耐擦傷性を付加するために、機能性フィルムがハードコート性を有していることも好適である。ハードコート層としてはアクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型または光硬化型樹脂等が挙げられるが、その種類も形成方法も特に限定されない。ハードコート層の厚さは、1〜50μm程度であることが好ましい。ハードコート層上に上記の反射防止層および/または防眩層を形成すると、耐擦傷性・反射防止性および/または防眩性を有する機能性フィルムが得られ好適である。
ハードコート性が付与された透光性電磁波シールド膜の表面硬度は、JIS(K―5400)に従った鉛筆硬度が少なくともHであることが好ましく、より好ましくは2H、さらに好ましくは3H以上である。
本発明において、透明支持体を挟んで近赤外線吸収層の反対側に、電磁波シールド層、ハードコート層、反射防止層および防眩性層の少なくとも1つを有することが好ましい。すなわち、透明支持体の一方の面に、近赤外線吸収層を先ず形成する。その後、透明支持体の他方の面に、電磁波シールド層、ハードコート層、反射防止層および防眩性層の少なくとも1つを形成する。なお、これらの全ての層を形成することが好ましい。
近赤外線吸収フィルターが防汚性を有していると、指紋等の汚れ防止や汚れが付いたときに簡単に取り除くことができるので好適である。
防汚性を有する機能性フィルムは、例えば透明基材上に防汚性を有する化合物を付与することにより得られる。防汚性を有する化合物としては、水および/または油脂に対して非濡性を有する化合物であればよく、例えばフッ素化合物やケイ素化合物が挙げられる。フッ素化合物として具体的には商品名オプツール(ダイキン社製)等が挙げられ、ケイ素化合物としては、商品名タカタクォンタム(日本油脂社製)等が挙げられる。
近赤外線吸収フィルターには、後述する色素や透明基材の劣化等を防ぐ目的で紫外線カット性を付与することが好ましい。紫外線カット性を有する機能性フィルムは、透明基材自体に紫外線吸収剤を含有させる方法や透明基材上に紫外線吸収層を設けることにより形成することができる。
色素を保護するのに必要な紫外線カット能としては、波長380nmより短い紫外線領域の透過率が、20%以下、好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下である。紫外線カット性を有する機能性フィルムは、紫外線吸収剤や紫外線を反射または吸収する無機化合物を含有する層を透明基材上に形成することにより得られる。紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系等、従来公知のものを使用でき、その種類・濃度は、分散または溶解させる媒体への分散性・溶解性、吸収波長・吸収係数、媒体の厚さ等から決まり、特に限定されるものではない。
また、機能性フィルムに後述する色素を含有する層が形成されている場合は、その層よりも外側に紫外線カット性を有する層が存在することが好ましい。
[例示化合物(D−17)の調製]
下記スキームに従って、例示化合物(D−17)を調製した。
1H−NMR(CDCl3):δ0.9−1.0(m,12H),1.35−1.6(m,16H),1.8(m,2H),3.95(d,4H),7.1(d,4H),7.4−7.5(m,4H),7.7(d,4H),7.75(d,2H),8.0(d,2H)
[例示化合物(D−10)の調製]
前記スキームに従い例示化合物(D−10)を調製した。
ジフェニルボリン酸2−アミノメチルエステル(1.4g、3モル当量)のトルエン溶液(1.2M)に塩化チタン(0.9mL、3モル当量)を添加し、30分間、外接温度100℃で攪拌した。次に、例示化合物(D−17)(2.3g)のトルエン混合液(0.2M)を添加し、さらに2時間加熱還流条件で攪拌した。室温まで冷やし、メタノールを加えたところ、結晶が析出したため、これをろ別し、クロロホルム/メタノールで再結晶を行い、例示化合物(D−10)を3.0g、収率93%で得た。
λmaxはクロロホルム中で779nmであった。モル吸収係数は、クロロホルム中、2.06×105dm3/mol・cmであった。
1H−NMR(CDCl3):δ0.9−1.0(m,12H),1.35−1.6(m,16H),1.8(m,2H),3.85(d,4H),6.45(s,8H),7.0(d,4H),7.15(m12H),7.2(m,2H),7.25(m,4H+4H),7.5(m,2H)
[例示化合物(D−28)の調製]
例示化合物(D−28)を、原料を代えたこと以外は前記と同様にして調製した。構造同定した1H−NMRを示す。
例示化合物(D−28)
1H−NMR(CDCl3):1.9(s,6H),6.65(d,2H),6.7−6.8(m,6H),6.95(m,8H),7.0−7.1(m,4H),7.25−7.35(m,12H),7.5(m,2H),7.85(d,2H)
λmaxはクロロホルム中で752nmであった。モル吸収係数は、クロロホルム中、1.53×105dm3/mol・cmであった。
なお、例示化合物(D−10)、(D−17)の溶液吸収スペクトルを図1に示す。
例示化合物(D−10)、(D−17)及び(D−28)はいずれも近赤外光の吸収性に優れ、400〜500nmの吸収が小さく、不可視性が更に優れることがわかった。
(近赤外線吸収化合物の水性分散微粒子の製造)
下記表1に示す種類及び質量部の、近赤外線吸収化合物と分散剤とに、水を加え500質量部とした。これにさらに0.1mmφのジルコニアビーズを500質量部添加し、遊星型ボールミルにて300rpmで5時間処理を行い、微細粒子からなる水性分散液を作製した。
その後、前記水性分散液からビーズを濾過で分離し、水性分散液A−1〜A−5を得た。ナノトラックUPA粒度分析計(UPA−EX150、商品名、日機装社製)によって水性分散液A中の微細粒子の粒径を測定した。平均粒径を下記表1に示す。
水性分散液A−1〜A−5に、下記表2に示す種類のポリマーを添加して、全体を100質量部とした塗布原液に純水を加えて濃度を調整し、ポリエチレンテレフタレート(PET)板に塗布した。さらに、下記表2に示す乾燥方法にて塗布膜を乾燥し、近赤外線吸収膜B−1〜B−17を作製した。なお、塗布液濃度は、得られた膜の吸収スペクトルを測定し、近赤外線吸収化合物のλmaxにおける光学濃度が1.5となるよう調整した。
図2に、近赤外線吸収膜B−4の吸収スペクトルを示す。
図2から明らかなように、λmaxは848nmであり、良好な赤外光吸収性が得られた。また、400〜700nmにほとんど吸収を有せず、優れた不可視性を有することがわかる。
得られた近赤外線吸収膜B−1〜B−17を、それぞれ22万ルクスのキセノンランプにて72時間照射した。近赤外線吸収膜B−1〜B−17の分光極大吸収波長における吸光度を測定し、光照射前のそれに対する残存比を求め、耐光性を評価した。結果を下記表2に示す。
得られた各近赤外線吸収膜B−1〜B−17を、60℃90%RTの湿熱試験機内に120時間、設置した。各近赤外線吸収膜B−1〜B−17の分光極大吸収波長における吸光度を測定し、湿熱試験前のそれに対する残存比を求め、耐湿熱性を評価した。結果を下記表2に示す。
Claims (7)
- 前記近赤外線吸収化合物が、水性分散微粒子状態で存在することを特徴とする請求項1に記載の近赤外線吸収組成物。
- 前記疎水性ポリマーが、有機樹脂の水性分散物を形成してなることを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外線吸収組成物。
- 前記疎水性ポリマーが、アクリル樹脂またはウレタン樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の近赤外線吸収組成物。
- 支持体上に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の近赤外線吸収組成物を用いて形成された近赤外線吸収層を有することを特徴とする近赤外線吸収塗布物。
- 前記近赤外線吸収層を形成する過程において、加熱乾燥を行うことを特徴とする請求項5に記載の近赤外線吸収塗布物。
- 可視光線の吸収率が30%以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の近赤外線吸収塗布物。
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