JP2008181096A - 近赤外線吸収フィルタ、近赤外線吸収フィルタの製造方法及び画像表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】製造時の有機溶剤使用の低減が可能な水系樹脂を用い、ヘイズ値及び特に高温高湿下での耐久性が改良された近赤外線吸収フィルムを提供する。
【解決手段】近赤外線吸収フィルムは、フィルム状の支持体と、前記支持体上に形成され、近赤外線吸収染料及びポリマーの水性分散物を含有する近赤外線吸収層とを有し、ヘイズ値が4%以下である。近赤外線吸収層の近赤外線吸収染料に対するポリマーの重量比は、0.7以上25以下の範囲、好ましくは1.0以上10以下の範囲である。そして、近赤外線吸収染料及びポリマーの水性分散物を含有し、近赤外線吸収染料に対するポリマーの重量比が0.7以上25以下の範囲にある水性組成物を調製し、該水性組成物を支持体に塗布して乾燥して近赤外線吸収層を形成する。
【選択図】なし
【解決手段】近赤外線吸収フィルムは、フィルム状の支持体と、前記支持体上に形成され、近赤外線吸収染料及びポリマーの水性分散物を含有する近赤外線吸収層とを有し、ヘイズ値が4%以下である。近赤外線吸収層の近赤外線吸収染料に対するポリマーの重量比は、0.7以上25以下の範囲、好ましくは1.0以上10以下の範囲である。そして、近赤外線吸収染料及びポリマーの水性分散物を含有し、近赤外線吸収染料に対するポリマーの重量比が0.7以上25以下の範囲にある水性組成物を調製し、該水性組成物を支持体に塗布して乾燥して近赤外線吸収層を形成する。
【選択図】なし
Description
本発明は、近赤外線吸収染料を含有する樹脂組成物からなる近赤外線吸収フィルタ、その製造方法及び近赤外線吸収フィルタを用いた画像表示装置に関し、特に、プラズマディスプレイに好適に用いられる近赤外線吸収フィルタ、その製造方法及び画像表示装置に関する。
近時、近赤外線吸収フィルタについて、様々な使用形態が提案されている。例えばプラズマディスプレイパネル(PDP)は、キセノン等のガスに高電圧をかけ、プラズマ発光させることで画像を表示するが、励起されたキセノン等のガス分子がより安定な状態になる際に近赤外線が放出される。この近赤外線は、リモコン装置の誤動作の原因になる等の弊害の原因になるため、これを吸収除去する等の遮蔽処置をすることが必要である。そこで、PDPを用いたテレビジョン、いわゆるプラズマテレビの前面には、近赤外線吸収フィルタが装着されている。
近赤外線吸収フィルタは、近赤外線吸収層をポリエステル等の支持体上に設けたフィルタであり、これをプラズマテレビの前面に貼ることで放出される近赤外線を吸収する。この方法を用いるとリモコン装置の誤動作を防止することができる。
また、ビル等の建築物の硝子窓にも熱線吸収フィルムを設置し、室内冷房のためのエネルギの節約の効果をあげることが提案されている。また、自動車のウインド硝子に熱線吸収フィルムを貼合わせることも提案されている。
その他、近赤外線吸収組成物やそれを塗設したフィルタには様々な用途で産業上利用されている。
そして、顔料等の樹脂組成物等からなる従来の近赤外線吸収フィルタは、その製造に、有機溶剤が用いられるのが一般的である(例えば特許文献1、2参照)。この従来の方法では、有機溶剤を用いるために、環境への影響が大きい欠点を有していた。また、製造設備も、防爆設備にする必要があり、高額な設備投資を必要とする方式である。
有機溶剤を用いずに近赤外線吸収フィルタを製造する方法として、例えば特許文献3に開示がある。しかし、この特許文献3に記載の近赤外線吸収フィルタは、耐久性が不十分で、特に、高温高湿下の経時で、吸収率や支持体との接着性が低下する等の問題があった。支持体との接着性の不足は、バインダとして選択したゼラチンに問題があると考えられた。支持体との間の接着性に関しては、例えば特許文献4に記載のように、支持体との間に易接着性の下塗り層を別途設ける等、コストアップの要因となる手段を用いる必要があった。
また、特許文献5には、特定の樹脂バインダを用いることによって、ヘイズ値を改良した光学フィルタを開示するが、その製造に有機溶剤を使用している。
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、製造時の有機溶剤使用の低減が可能な水系樹脂を用い、ヘイズ値及び特に高温高湿下での耐久性が改良された近赤外線吸収フィルタを提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、赤外線吸収染料及びポリマーの水性分散物を用いることで、環境負荷をもたらす有機溶剤の使用量を低減することができ、さらにゼラチン等の水溶性ポリマーを用いた場合に比較して特に高温高湿下での耐久性が改善された近赤外線吸収フィルタを製造することができる近赤外線吸収フィルタの製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、高い近赤外線遮蔽能を有しながら高い透明性をも備え、且つ、環境への悪影響が少なく、高い生産性と低コスト性を有すると共に、耐久性、特に、高温高湿度下での耐久性の優れたプラズマディスプレイパネル等の画像表示装置を提供することにある。
上記本発明の課題は以下によって達成された。
[1] 第1の本発明に係る近赤外線吸収フィルタは、フィルム状の支持体と、前記支持体上に、近赤外吸収染料とポリマーの水性分散物を含有する近赤外線吸収組成物を用いて形成された近赤外線吸収層とを有し、ヘイズ値が4%以下であることを特徴とする。
[2] 第1の本発明において、ヘイズ値が2%以下であることを特徴とする。
[3] 第1の本発明において、前記近赤外線吸収層の前記近赤外線吸収染料に対する前記ポリマーの重量比が0.7以上25以下の範囲にあることを特徴とする。
[4] 第1の本発明において、前記近赤外線吸収層の前記近赤外線吸収染料に対する前記ポリマーの重量比が1.0以上10以下の範囲にあることを特徴とする。
[5] 第1の本発明において、前記近赤外線吸収染料がメチン染料であることを特徴とする。
[6] 第1の本発明において、前記ポリマーの水性分散物は、前記ポリマーとしてアクリル樹脂またはウレタン樹脂を含有することを特徴とする。
[7] 第1の本発明において、前記支持体が単層のポリエステル樹脂からなり、前記近赤外線吸収層が前記ポリエステル樹脂面に直接接して形成されていることを特徴とする。
[8] 第1の本発明において、前記近赤外線吸収層がさらに架橋剤を含むことを特徴とする。
[9] 第1の本発明において、前記架橋剤は、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、メラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤のいずれかから選ばれる架橋剤であることを特徴とする。
[10] 第1の本発明において、前記近赤外線吸収染料及び前記ポリマーの水性分散物を含有する水性組成物の溶媒の70%以上が水であることを特徴とする。
[11] 第2の本発明に係る画像表示装置は、上述した第1の本発明に係る近赤外線吸収フィルタを具備したことを特徴とする。
[12] 第2の本発明において、前記画像表示装置がプラズマディスプレイパネルであることを特徴とする。
[13] 第3の本発明に係る近赤外線吸収フィルタの製造方法は、支持体上に、近赤外吸収染料とポリマーを含有する近赤外線吸収層とを有し、ヘイズ値が4%以下である近赤外線吸収フィルタの製造方法であって、前記近赤外線吸収染料及び前記ポリマーの水性分散物を含有し、前記近赤外線吸収染料に対する前記ポリマーの重量比が0.7以上25以下の範囲にある水性組成物を調製する水性組成物調製工程と、前記水性組成物を前記支持体に塗布して乾燥し、前記赤外線吸収層を形成する工程とを有することを特徴とする。
[14] 第3の本発明において、前記近赤外線吸収染料に対する前記ポリマーの重量比が1.0以上10以下の範囲にあることを特徴とする。
[15] 第3の本発明において、前記近赤外線吸収染料がメチン染料であることを特徴とする。
[16] 第3の本発明において、前記ポリマーの水性分散物は、前記ポリマーとしてアクリル樹脂またはウレタン樹脂を含有することを特徴とする。
[17] 第3の本発明において、前記支持体がポリエステル樹脂からなり、前記近赤外線吸収層が前記ポリエステル樹脂面に接して直接形成されていることを特徴とする。
[18] 第3の本発明において、前記近赤外線吸収層がさらに架橋剤を含むことを特徴とする。
[19] 第3の本発明において、前記架橋剤は、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、メラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤のいずれかから選ばれる架橋剤であることを特徴とする。
[20] 第3の本発明において、前記近赤外線吸収染料及び前記ポリマーの水性分散物を含有する水性組成物の溶媒の70%以上が水であることを特徴とする。
[21] 第3の本発明において、前記近赤外線吸収染料及び前記ポリマーの水性分散物を含有する水性組成物の溶媒の90%以上が水であることを特徴とする。
[22] 第3の本発明において、前記近赤外線吸収染料及び前記ポリマーの水性分散物を含有する水性組成物の溶媒がさらに0.05%以上5%以下の水溶性有機溶媒を含むことを特徴とする。
[23] 第3の本発明において、前記水溶性有機溶媒が、N−メチルピロリドン、ブチルセロソルブのいずれかを含むことを特徴とする。
以上説明したように、本発明に係る近赤外線吸収フィルタによれば、製造時の有機溶剤使用の低減が可能な水系樹脂を用い、ヘイズ値及び特に高温高湿下での耐久性が改良された近赤外線吸収フィルタを提供することができる。近赤外線吸収フィルタのヘイズ値を低減することができるため、特に画像表示装置用として好適な近赤外線吸収フィルタを提供することができる。ヘイズ値は、近赤外線吸収染料とポリマーの比率を好適な範囲に規定することで低減可能となる。
また、本発明に係る近赤外線吸収フィルタの製造方法によれば、赤外線吸収染料及びポリマーの水性分散物を用いることで、環境負荷をもたらす有機溶剤の使用量を低減することができ、さらにゼラチン等の水溶性ポリマーを用いた場合に比較して特に高温高湿下での耐久性が改善された近赤外線吸収フィルタを製造することができる。
また、本発明に係る画像表示装置によれば、高い近赤外線遮蔽能を有しながら高い透明性をも備え、且つ、環境への悪影響が少なく、高い生産性と低コスト性を有すると共に、耐久性、特に、高温高湿度下での耐久性の優れたものとなる。
以下、本発明に係る近赤外線吸収フィルタ及び画像表示装置の実施の形態例を説明する。
本実施の形態に係る近赤外線吸収フィルタに用いられる近赤外線吸収性組成物は、近赤外線吸収染料と、ポリマーの水性分散物とを含有する。また本実施の形態に係る近赤外線吸収フィルタは、支持体と、支持体上に形成され近赤外吸収染料とポリマーの水性分散物の乾燥物からなるバインダとを含有する近赤外吸収層とを有する。
本実施の形態に係る近赤外線吸収フィルタは、近赤外吸収染料とポリマーの水性分散物を含有する近赤外線吸収組成物を支持体上に塗布することにより作製できる。
近赤外線吸収層の膜厚は、近赤外線遮蔽効果を有効に得るために、0.1μm以上が好ましい。また、成膜時の溶媒が残留しにくい、成膜の操作性が容易である等の点から20μm以下が好ましい。近赤外線吸収層の膜厚は、0.3〜10μmであることが特に好ましい。また、近赤外線吸収層は2層以上設けてもよい。
近赤外線吸収層の塗布方法としては、例えばディップコート法、ローラーコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、ダイコート法等を選択できる。これらのコート法は連続加工を行うことができ、バッチ式の蒸着法等に比べて生産性が優れている。また、薄く均一な塗膜を形成できるスピンコート法も採用し得る。
塗布層を担持した支持体(例えば、後述するが、ポリエステル等のプラスチックフィルタ)は、逐次二軸延伸前、同時二軸延伸前、一軸延伸後で再延伸前、あるいは二軸延伸後のいずれであってもよい。塗布液を塗布するプラスチック支持体の表面は、あらかじめ紫外線照射処理、コロナ放電処理、グロー放電処理等の表面処理を施しておくことが好ましい。
なお、本実施の形態に係る近赤外線吸収フィルタは、近赤外線吸収性(近赤外線遮蔽性)を有する。例えばプラズマディスプレイは強度の近赤外線を発生するので、光学フィルタを用いて、実用上問題ないレベルまで近赤外線をカットする必要がある。具体的には、波長領域800〜1000nmにおける透過率を25%以下とすることが必要であり、透過率を15%以下とすることが好ましく、10%以下とすることがさらに好ましい。
上述したように、有機溶剤を近赤外線吸収性組成物の溶剤として用いて近赤外線吸収層を形成させることは、大気及び作業環境規制と防爆回避、及び環境への影響を最小化する意味で困難ないし設備投資が必要な問題があった。一方、水系溶媒分散可能の染料とゼラチンに代表される水溶性バインダを用いて近赤外線吸収層を形成させる形成させる方法は、上述の問題を回避可能であるが、色素の耐久性に劣る問題があった。つまり、いずれを用いても実用に際して支障があった。しかしながら、ポリマーを水系分散媒に分散させたポリマーの水性分散物は、近赤外線吸収性染料を可溶化ないし分散できて、その組成物から得られる近赤外吸収層は、親水性基を有する染料を用いていても上記の色素の耐久性の欠陥が生じないことを見出した。
さらに、本実施の形態では、ヘイズ値が4%以下であり、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下である。ヘイズは、近赤外線吸収フィルタの裏面から入射させた光をヘイズメータにて測定することにより得られる。ヘイズの値が4%を超えると、透明性が低下し、近赤外線吸収フィルタを組み込んだ画像表示装置の表示品位が低下する。逆に、ヘイズの値が小さいほど、本実施の形態に係る近赤外線吸収フィルタをプラズマディスプレイパネル等の画像表示装置に用いた場合に、コントラスト低下等の画像品質の劣化を生じにくくなり好ましい。
近赤外線吸収層の近赤外線吸収染料に対するポリマーの重量比は、0.7以上25以下の範囲にあることが好ましく、1.0以上10以下の範囲であることがさらに好ましい。この重量比が小さすぎても、大きすぎても、ヘイズ値が大きくなり好ましくないからである。
ここで、本実施の形態に係る近赤外線吸収フィルタに用いられる近赤外線吸収性組成物の各成分、及び近赤外線吸収層並びに近赤外線吸収フィルタの構成要素について説明する。
(1)近赤外線吸収染料
本実施の形態に使用される近赤外線吸収染料は、ポリマーの水性分散物中に安定に溶解ないし分散し得る染料であって少なくとも800〜1200μmに分光吸収域を有する染料であり、この性質を有する染料であればよい。
本実施の形態に使用される近赤外線吸収染料は、ポリマーの水性分散物中に安定に溶解ないし分散し得る染料であって少なくとも800〜1200μmに分光吸収域を有する染料であり、この性質を有する染料であればよい。
近赤外線吸収染料としては、例えば、シアニン染料、オキソノール染料が挙げられる。シアニン染料としては、ペンタメチンシアニン染料、ヘプタメチンシアニン染料、ノナメチンシアニン染料等のメチン染料が好ましい。シアニン染料の環基としてはチアゾール環、インドレニン環又はベンゾインドレニン環を有するものが好ましい。
オキソノール染料としては、バルビツール酸環を有するバルビツール酸オキソノール染料が好ましい。
また、これら染料は、水溶性基を有することが好ましい。水溶性基としては、カルボキシル基及びその塩、スルホ基及びその塩等が挙げられる。
さらに、インドレニンシアニン系染料やバルビツール酸オキソノール系染料に代表される水溶性の染料は、有機溶剤に溶かすことなく水溶液にして塗布できる点で、環境影響の観点と、塗布コスト低減の点から好ましい。
また、これら染料は、会合体として利用することが好ましく、特にJ会合体として利用することが好ましい。J会合体とすることで非会合状態においては可視域に吸収極大を有する染料の吸収波長を所望の近赤外線領域に設定することが容易になる。また、染料の耐熱性や耐湿熱性、耐光性等の耐久性を向上させることができる。
また、これらの染料の水溶性を調節し、難溶性ないし不溶性とすることによって、あるいは換言するとレーキ染料として利用することも好ましい形態である。これにより染料の耐熱性や耐湿熱性、耐光性等の耐久性を向上させることができ、好ましい。
これらの近赤外線吸収染料としては、特開2001-228324号等に記載の染料を利用することができる。
本発明における近赤外線吸収染料としては、ヘプタメチンシアニン染料が最も好ましい。
また、例えばプラズマディスプレイパネルは、パネル表面の温度が高く、環境の温度が高いときは、特に近赤外線吸収フィルタの温度も上がるため、該染料は、例えば80℃で分解等によって顕著に劣化しない耐熱性を有していることが好適である。
また、耐熱性に加えて染料によっては耐光性に乏しいものもある。プラズマディスプレイの発光や外光の紫外線・可視光線による劣化が問題になる場合は、紫外線吸収剤を含む部材や紫外線を透過しない部材を用いたり、紫外線吸収剤を近赤外線吸収染料とともにポリマーの水性分散物に含有させることによって、色素の紫外線による劣化を低減すること、紫外線や可視光線による顕著な劣化がない色素を用いることが肝要である。熱、光に加えて、湿度や、これらの複合した環境においても同様である。劣化すると近赤外線吸収フィルタの透過特性が変わってしまい、色調が変化したり近赤外線カット能が低下してしまう。さらには、媒体又は塗膜中に分散させるために、適宜の溶媒への溶解性や分散性も重要である。
また、本実施の形態においては、異なる吸収波長を有する染料2種類以上を1つの媒体又は塗膜に含有させてもよいし、色素を含有する媒体、塗膜を2つ以上有していてもよい。
本実施の形態に係る近赤外線吸収フィルタには、近赤外吸収染料の劣化等を防ぐ目的で紫外線カット性を付与することが好ましい。該染料を保護するのに必要な紫外線カット能としては、波長380nmより短い紫外線領域の透過率が、20%以下、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。紫外線カット性は、紫外線吸収剤や紫外線を反射又は吸収する無機化合物を含有する層を透明基材上に形成することにより得られる。ポリマーの水性分散物中に含有させることも好ましい。紫外線吸収剤は、ベンゾトリアジン系、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系等、従来公知のものを使用でき、その種類・濃度は、分散又は溶解させる媒体への分散性・溶解性、吸収波長・吸収係数、媒体の厚さ等から決まり、特に限定されるものではない。
なお、紫外線カット性を有する機能性フィルタは、可視光線領域の吸収が少なく、著しく可視光線透過率が低下したり黄色等の色を呈することがないことが好ましい。
本実施の形態で好ましく利用できる紫外線吸収剤としては特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンゾオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
本実施の形態では、該染料の安定性向上のために、酸化防止剤を用いることが好ましく、酸化防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、複素環類等があり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体等がある。より具体的にはリサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
(2)ポリマーの水性分散物
本実施の形態の近赤外線吸収層に使用されるポリマーの水性分散物は、主成分が水である分散媒(本明細書では溶媒と呼ぶこともある)に合成樹脂が分散された分散物である。
本実施の形態の近赤外線吸収層に使用されるポリマーの水性分散物は、主成分が水である分散媒(本明細書では溶媒と呼ぶこともある)に合成樹脂が分散された分散物である。
溶媒中に含まれる水の含量は、30%〜100%が好ましく、50%〜100%がより好ましい。水以外の溶媒としては、メタノールやエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、N−メチルピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン、ブチルセロソルブ等のグリコールエーテル類等、水に溶解性を有する溶剤が好ましく用いられる。また、水性分散物中におけるポリマーの分散安定性、塗布性、乾燥後の皮膜特性向上のために、界面活性剤、アンモニア、トリエチルアミン、N,−Nジメチルエタノールアミン等のアミン類を分散物に対して数%含んでもよい。
合成樹脂(ポリマー)としては、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等の種々のポリマーを使用することができる。合成樹脂(ポリマー)層には支持体との密着性を改良する観点から、硬化剤(例えばカルボジイミド化合物)により硬化させることが好ましい。本発明では、良好な作業環境の維持、及び大気汚染防止の観点から、ポリマーもカルボジイミド化合物等の硬化剤も、エマルジョン形態の水分散状態で使用することが好ましい。また、ポリマーは、カルボジイミド化合物等の硬化剤との架橋反応が可能なように、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基のいずれかの基を有する。水酸基及びカルボキシル基が好ましく、特にカルボキシル基が好ましい。ポリマー中の水酸基又はカルボキシル基の含有量は、0.0001〜1当量/kgが好ましく、特に0.001〜1当量/kgが好ましい。
アクリル樹脂としては、アクリル酸、アクリル酸アルキル等のアクリル酸エステル類、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸アルキル等のメタクリル酸エステル類、メタクリルアミド及びメタクリロニトリルのいずれかのモノマの単独重合体又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体を挙げることができる。これらの中では、アクリル酸アルキル等のアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸アルキル等のメタクリル酸エステル類のいずれかのモノマの単独重合体又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体が好ましい。例えば、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するアクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類のいずれかのモノマーの単独重合体又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体を挙げることができる。上記アクリル樹脂は、上記組成を主成分とし、カルボジイミド化合物との架橋反応が可能なように、例えば、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基のいずれかの基を有するモノマーを一部使用して得られるポリマーである。
前記ビニル樹脂としては、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル、ポリオレフィン、エチレン/ブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びエチレン/酢酸ビニル系共重合体(好ましくはエチレン/酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体)を挙げることができる。これらの中で、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホリマール、ポリオレフィン、エチレン/ブタジエン共重合体及びエチレン/酢酸ビニル系共重合体(好ましくは、エチレン/酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体)が好ましい。上記ビニル樹脂は、カルボジイミド化合物との架橋反応が可能なように、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル及びポリ酢酸ビニルでは、例えば、ビニルアルコール単位をポリマー中に残すことにより水酸基を有するポリマーとし、他のポリマーについては、例えば、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基のいずれかの基を有するモノマーを一部使用することにより架橋可能なポリマーとする。
前記ポリウレタン樹脂としては、ポリヒドロキシ化合物(例、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン)、ポリヒドロキシ化合物と多塩基酸との反応により得られる脂肪族ポリエステル系ポリオール、ポリエーテルポリオール(例、ポリ(オキシプロピレンエーテル)ポリオール、ポリ(オキシエチレン−プロピレンエーテル)ポリオール)、ポリカーボネート系ポリオール、及びポリエチレンテレフタレートポリオールのいずれか一種、あるいはこれらの混合物とポリイソシアネートから誘導されるポリウレタンを挙げることができる。上記ポリウレタン樹脂では、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとの反応後、未反応として残った水酸基をカルボジイミド化合物との架橋反応が可能な官能基として利用することができる。
前記ポリエステル樹脂としては、一般に、ポリヒドロキシ化合物(例、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン)と多塩基酸との反応により得られるポリマーが使用される。上記ポリエステル樹脂では、例えば、ポリオールと多塩基酸との反応終了後、未反応として残った水酸基、カルボキシル基をカルボジイミド化合物との架橋反応が可能な官能基として利用することができる。勿論、水酸基等の官能基を有する第三成分を添加してもよい。
前記ポリマーの中で、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂が好ましく、特にアクリル樹脂が好ましい。
本実施の形態の近赤外線吸収性組成物には、上記成分に以外にも以下の各成分を使用してもよい。
(3)硬化剤又は架橋剤
本発明の近赤外線吸収層には、硬化剤もしくは架橋剤を含有させることが好ましい。架橋剤としては特に制限はなく、エポキシ系、カルボジイミド系、メラミン系、イソシアネート系、シクロカーボネート系、ヒドラジン系等の公知の架橋剤を用いることができる。これらの架橋剤については、例えば文献(「架橋剤ハンドブック」山下晋三ら編集、大成社、昭和56年発行)に記載されている。
本発明の近赤外線吸収層には、硬化剤もしくは架橋剤を含有させることが好ましい。架橋剤としては特に制限はなく、エポキシ系、カルボジイミド系、メラミン系、イソシアネート系、シクロカーボネート系、ヒドラジン系等の公知の架橋剤を用いることができる。これらの架橋剤については、例えば文献(「架橋剤ハンドブック」山下晋三ら編集、大成社、昭和56年発行)に記載されている。
これらの架橋剤のうち、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、メラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤が特に好ましい。
本実施の形態で特に好ましく用いられる硬化剤であるカルボジイミド化合物としては、分子内にカルボジイミド構造を複数有する化合物を使用することが好ましい。
ポリカルボジイミドは、通常、有機ジイソシアネートの縮合反応により合成される。ここで分子内にカルボジイミド構造を複数有する化合物の合成に用いられる有機ジイソシアネートの有機基は特に限定されず、芳香族系、脂肪族系のいずれか、あるいはそれらの混合系も使用可能であるが、反応性の観点から脂肪族系が特に好ましい。
合成原料としては、有機イソシアネート、有機ジイソシアネート、有機トリイソシアネート等が使用される。
有機イソシアネートの例としては、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、及び、それらの混合物が使用可能である。
具体的には、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート等が用いられ、また、有機モノイソシアネートとしては、イソホロンイソシアネート、フェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が使用される。
また、本実施の形態に用いうるカルボジイミド系化合物は、例えば、カルボジライトV−02−L2(商品名:日清紡社製)等の市販品としても入手可能である。
カルボジイミド系化合物はバインダーに対して1〜200質量%、より好ましくは5〜100質量%の範囲で添加することが好ましい。
このほかの硬化剤としては、エポキシ化合物が好ましく利用可能である。
エポキシ化合物としては、1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピルオキシ)ブタン、1,3,5−トリグリシジルイソシアヌレート、1,3−ジクリシジル−5−(γ−アセトキシ−β−オキシプロピル)イソシヌレート、ソルビトールポリグリシジルエーテル類、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル類、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル類、ジグリセロ−ルポリグルシジルエーテル、1,3,5−トリグリシジル(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールポリグリセロールエーテル類及びトリメチロ−ルプロパンポリグリシジルエーテル類等のエポキシ化合物が好ましく、その具体的な市販品としては、例えばデナコールEX−521やEX−614B(ナガセ化成工業製)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明で用いられるイソシアネート系架橋剤とは、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物である。本実施の形態では、これらの化合物は特に制限なく利用できる。イソシアネート系架橋剤の例としては、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1、5−ナフタレンジイソシアネート等がある。さらにイソシアネート化合物の中でイソシアネート基がアルコールやフエノール等でブロックされたいわゆるブロックイソシアネートは水性塗布液で使用したときに、ポツトライフが長く、特に好ましい。ブロックイソシアネートについては上述した文献(「ポリウレタン樹脂ハンドブック」岩田敬治編、日刊工業新聞社、昭和62年発行)に記載されている。市販のブロックイソシアネートは、エラストロンH−3、H−38、C−9(第一工業製薬製)等があり、これらを利用することも可能である。
また、他の架橋性化合物との併用も可能であり、例えばC.E.K.Mees及びT.H.James著「The Theory of the Photographic Process」第3版(1966年)、米国特許第3316095号、同3232764号、同3288775号、同2732303号、同3635718号、同3232763号、同2732316号、同2586168号、同3103437号、同3017280号、同2983611号、同2725294号、同2725295号、同3100704号、同3091537号、同3321313号、同3543292号及び同3125449号、並びに英国特許994869号及び同1167207号の各明細書等に記載されている硬化剤等があげられる。
代表的な例としては、2個以上(好ましくは3個以上)のメチロール基及びアルコキシメチル基の少なくとも一方を含有するメラミン化合物又はそれらの縮重合体であるメラミン樹脂あるいはメラミン・ユリア樹脂、さらにはムコクロル酸、ムコブロム酸、ムコフェノキシクロル酸、ムコフェノキシプロム酸、ホルムアルデヒド、グリオキザール、モノメチルギリオキザール、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン、2,3−ジヒドロキシ−5−メチル−1,4−ジオキサンサクシンアルデヒド、2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン及びグルタルアルデヒド等のアルデヒド系化合物及びその誘導体;ジビニルスルホン−N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセトアミド)、1,3−ビス(ビニルスルホニル)−2−プロパノール、メチレンビスマレイミド、5−アセチル−1,3−ジアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、1,3,5−トリアクリロイル−ヘサヒドロ−s−トリアジン及び1,3,5−トリビニルスルホニル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン等の活性ビニル系化合物;2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム塩、2,4−ジクロロ−6−(4−スルホアニリノ)−s−トリアジンナトリウム塩、2,4−ジクロロ−6−(2−スルホエチルアミノ)−s−トリアジン及びN,N’−ビス(2−クロロエチルカルバミル)ピペラジン等の活性ハロゲン系化合物;ビス(2,3−エポキシプロピル)メチルプロピルアンモニウム・p−トルエンスルホン酸塩、2,4,6−トリエチレン−s−トリアジン、1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素及びビス−β−エチレンイミノエチルチオエーテル等のエチレンイミン系化合物;1,2−ジ(メタンスルホンオキシ)エタン、1,4−ジ(メタンスルホンオキシ)ブタン及び1,5−ジ(メタンスルホンオキシ)ペンタン等のメタンスルホン酸エステル系化合物;ジシクロヘキシルカルボジイミド及び1−ジシクロヘキシル−3−(3−トリメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等のカルボジイミド化合物;2,5−ジメチルイソオキサゾール等のイソオキサゾール系化合物;クロム明ばん及び酢酸クロム等の無機系化合物;N−カルボエトキシ−2−イソプロポキシ−1,2−ジヒドロキノリン及びN−(1−モルホリノカルボキシ)−4−メチルピリジウムクロリド等の脱水縮合型ペプチド試薬;N,N’−アジポイルジオキシジサクシンイミド及びN,N’−テレフタロイルジオキシジサクシンイミド等の活性エステル系化合物:トルエン−2,4−ジイソシアネート及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート類;及びポリアミド−ポリアミン−エピクロルヒドリン反応物等のエピクロルヒドリン系化合物を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
また、硬膜剤としては、例えば活性ビニル化合物(1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビス(ビニルスルホニルメチル)エーテル、N,N′−メチレンビス−〔β−(ビニルスルホニル)プロピオンアミド〕等)や活性ハロゲン化合物(ムコクロル酸に代表されるムコハロゲン酸類等)、ハロアミジニウム塩類(1−(1−クロロ−1−ピリジノメチレン)ピロリジニウム−2−ナフタレンスルホナート等)を単独又は組合せて用いることができる。また、特開昭53−41220号、同53−57257号、同59−162546号、同60−80846号等の各公報に記載の活性ビニル化合物及び米国特許3,325,287号明細書に記載の活性ハロゲン化合物も好ましい。
本実施の形態に用いられる硬膜剤もしくは架橋剤は、バインダに対して、1〜100質量%、より好ましくは5〜50質量%の範囲で添加することが好ましい。添加量が1質量%より少ないと上層、下層又は支持体との接着性が不十分になる場合があり、100質量%を超えると塗布面状が悪化する場合がある。
(4)近赤外線吸収層のその他の構成要素
本発明の近赤外線吸収層は、上述の近赤外線吸収染料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ポリマーの水性分散物、硬化剤(架橋剤)の他、必要に応じて、界面活性剤、すべり剤、マット剤、帯電防止剤、塗布溶媒および有機溶剤等を含有させてもよい。
本発明の近赤外線吸収層は、上述の近赤外線吸収染料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ポリマーの水性分散物、硬化剤(架橋剤)の他、必要に応じて、界面活性剤、すべり剤、マット剤、帯電防止剤、塗布溶媒および有機溶剤等を含有させてもよい。
界面活性剤としては、公知のアニオン系、ノニオン系、カチオン系の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤については、例えば文献(「界面活性剤便覧」西 一郎、今井 怡知一郎、笠井 正蔵編 産業図書(株) 1960年発行)に記載されている。
すべり剤としては、例えばワックス、低分子量ポリオレフィン、シリコーン、CnH2n+1SO3Na(n=5〜15)等を用いることができる。
マット剤としては、公知の有機又は無機の微粒子を用いることができる。マット剤の具体例として平均粒径が0.2から10μm程度のポリメチルメタクリレートやポリスチレンあるいはシリカの微粒子を挙げることができる。
帯電防止剤としては、ポリアニリン、ポリピロール等の電子伝導系のポリマー、分子鎖中にカルボキシル基やスルホン酸基を有するイオン伝導系ポリマー、導電性微粒子等がある。これらのうち、特に、特開昭61−20033号公報記載の導電性酸化錫微粒子は導電性と透明性の観点から好ましい。
塗布溶媒としては、水、トルエン、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン等、及びこれらの混合系等の水系、有機溶剤系の塗布溶剤を用いることができる。
これらのうちで、最も好ましいものは水を主成分とするものである。具体的には水単独の塗布溶媒でもよいし、水に混和性の有機溶剤、例えばメタノール等のアルコール類、n−ブチルセルソルブ等のグリコールエーテル類、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、アセトニトリル、N−メチルピロリドン等の窒素化合物類、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等を混合した混合溶媒でもよい。混合溶媒の場合、環境や安全性の観点から有機溶剤は全体の30質量%以下にすることが好ましい。本発明では、水単独又は水に対して水混和性の有機溶剤を30質量%以下の割合で添加した溶媒を水性溶媒という。
本実施の形態の近赤外線吸収層の塗布方法に、特に制限はなく、公知のバーコータ塗布、スライドコータ塗布等の方法を用いることができる。
本発明の塗布溶媒として水と併用可能な有機溶媒の中で、ある種の有機溶剤は微量の添加で本発明の近赤外線吸収フィルタのヘイズ値を下げる効果を有しており、好ましく使用可能である。ヘイズ値を下げるのに特に有効な有機溶媒としては、N−メチルピロリドン、シクロヘキサノン、プロピオニトリル等が挙げられる。これら有機溶媒でヘイズ値を低減させる場合は、近赤外線吸収層形成時の水溶媒に対して0.1%〜5%の範囲で含有させることが好ましく、0.1%〜2%がより好ましい。これらの含有量が少なすぎるとヘイズ低減効果が得られず、多すぎると本発明の目的である環境負荷の低減に反してしまうと共に、ヘイズ値の増加をもたらしてまう。これら有機溶媒はポリマーの水分散物に含まれていても良く、別途添加してもよい。
(5)支持体
本実施の形態に用いられる支持体としては、プラスチックフィルム、プラスチック板、及びガラス板等を用いることができる。
本実施の形態に用いられる支持体としては、プラスチックフィルム、プラスチック板、及びガラス板等を用いることができる。
前記プラスチックフィルム及びプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVA等のポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等を用いることができる。
本実施の形態においては、透明性、耐熱性、取り扱いやすさ及び価格の点から、上記プラスチックフィルムはポリエチレンテレフタレートフィルム又はトリアセチルセルロース(TAC)であることが好ましい。中でも、コストの観点からポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
本実施の支持体がポリエステル類である場合には、2軸延伸されていることが好ましい。2軸延伸とは、支持体の幅方向及び長手方向をそれぞれ1軸とみなして、両方向に延伸させることである。2軸延伸されたポリエステルフィルムは、2軸配向ポリエステルフィルムと称され、十分に分子配向が制御されているため、非常に優れた機械強度を有する。なお、延伸倍率は特に制限されるものではないが、一方向に対する延伸倍率が1.5〜7倍であることが好ましく、より好ましくは2〜5倍程度である。特に、1軸方向あたりの延伸倍率を2〜5倍程度として2軸延伸させた支持体は、分子配向がより効果的に制御されているので、非常に優れた機械強度を備えることから支持体として好適である。ただし、支持体の延伸倍率が1.5倍よりも小さいと十分な機械的強度が得られなくなる。一方で、延伸倍率が7倍を超えると均一な厚みを得ることが難しくなり問題である。
支持体の厚みは30μm以上400μm以下であることが好ましく、より好ましくは、35μm以上350μm以下であることが好ましい。厚みが30μm未満の場合には、薄すぎるために取り扱いが難しい。一方で、400μmを超える場合には、プラズマディスプレイパネルの小型化や軽量化を阻害したり、製造コストの増大等を引き起こすため不適である。
支持体への近赤外線吸収性塗布液の塗布は、支持体を一軸方向に延伸した後に行ってもよいし、二軸延伸した後に行ってもよい。しかし、前者の場合は、近赤外線吸収性塗布液を塗布した後で延伸を行うことになり、塗布した近赤外線吸収性塗布液が250℃以上の高温にさらされることになる。このような高温では近赤外線吸収染料が分解する懸念がある。従って、近赤外線吸収性塗布液の塗布は、二軸延伸後に行うことが好ましい。また、製造コストを抑制する観点からは、支持体と近赤外線吸収層との間に別の層を設けず、近赤外線吸収層を支持体上に直接形成することが望ましいが、支持体との接着性改良の観点から易接着性の下塗り層を設けてもよい。易接着性下塗り層を設ける場合、下塗り層のバインダとしてはポリマーの水分散物が好ましく、近赤外線吸収層に好ましく使用できるポリマーとして上述したポリマーをいずれも好ましく使用できる。また、易接着精巣には上述の硬化剤もしくは架橋剤を用いることが好ましい。また、下塗り層は上述の紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、帯電防止剤、すべり剤、マット剤の他、色相補正用の染料・顔料等を好ましく用いることができる。下塗り層の溶媒としては水を主成分とするものが好ましく、上述の有機溶剤を併用することも可能である。
ディスプレイ用の近赤外線吸収フィルタでは透明性が要求されるため、支持体の透明性は高いことが望ましい。この場合におけるプラスチックフィルム又はプラスチック板の全可視光透過率は70〜100%が好ましく、さらに好ましくは85〜100%であり、特に好ましくは90〜100%である。また、本発明では、前記プラスチックフィルム及びプラスチック板として本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。本発明におけるプラスチックフィルム及びプラスチック板は、単層で用いることが好ましいが、2層以上を組み合わせた多層フィルムとして用いることも可能である。
本実施の形態における支持体としてガラス板を用いる場合、その種類は特に限定されないが、ディスプレイ用近赤外線吸収フィルタの用途として用いる場合、表面に強化層を設けた強化ガラスを用いることが好ましい。強化ガラスは、強化処理していないガラスに比べて破損を防止できる可能性が高い。さらに、風冷法により得られる強化ガラスは、万一破損してもその破砕破片が小さく、且つ、端面も鋭利になることはないため、安全上好ましい。
(6)その他の機能層
本実施の形態では、必要に応じて近赤外線吸収性層にさらに別の機能性を付与してもよい。又は該層とは別に機能性を有する機能層を設けていてもよい。この機能層は、用途ごとに種々の仕様とすることができる。例えば、ディスプレイ用近赤外線吸収フィルタ用途としては、屈折率や膜厚を調整した反射防止機能を付与した反射防止層や、ノングレアー層又はアンチグレア層(共にぎらつき防止機能を有する)、特定の波長域の可視光を吸収する色調調節機能をもった層、指紋等の汚れを除去しやすい機能を有した防汚層、傷のつき難いハードコート層、衝撃吸収機能を有する層、ガラス破損時のガラス飛散防止機能を有する層、電磁波シールド層等を設けることができる。これらの機能層は、近赤外線吸収層と支持体とを挟んで反対側の面に設けてもよく、さらに同一面側に設けてもよい。
本実施の形態では、必要に応じて近赤外線吸収性層にさらに別の機能性を付与してもよい。又は該層とは別に機能性を有する機能層を設けていてもよい。この機能層は、用途ごとに種々の仕様とすることができる。例えば、ディスプレイ用近赤外線吸収フィルタ用途としては、屈折率や膜厚を調整した反射防止機能を付与した反射防止層や、ノングレアー層又はアンチグレア層(共にぎらつき防止機能を有する)、特定の波長域の可視光を吸収する色調調節機能をもった層、指紋等の汚れを除去しやすい機能を有した防汚層、傷のつき難いハードコート層、衝撃吸収機能を有する層、ガラス破損時のガラス飛散防止機能を有する層、電磁波シールド層等を設けることができる。これらの機能層は、近赤外線吸収層と支持体とを挟んで反対側の面に設けてもよく、さらに同一面側に設けてもよい。
これらの機能性膜はPDPに直接貼合してもよく、プラズマディスプレイパネル本体とは別に、ガラス板やアクリル樹脂板等の透明基板に貼合してもよい。これらの機能性膜を光学フィルタ(又は単にフィルタ)と呼ぶ。
(反射防止性・防眩性)
近赤外線吸収フィルタには、外光反射を抑制するための反射防止(AR:アンチリフレクション)性、又は、鏡像の映り込みを防止する防眩(AG:アンチグレア)性、又はその両特性を備えた反射防止防眩(ARAG)性のいずれかの機能性を付与することが好ましい。
近赤外線吸収フィルタには、外光反射を抑制するための反射防止(AR:アンチリフレクション)性、又は、鏡像の映り込みを防止する防眩(AG:アンチグレア)性、又はその両特性を備えた反射防止防眩(ARAG)性のいずれかの機能性を付与することが好ましい。
これらの性能により、照明器具等の映り込みによって表示画面が見づらくなってしまうのを防止できる。また、膜表面の可視光線反射率が低くすることにより、映り込み防止だけではなく、コントラスト等を向上させることができる。反射防止性・防眩性を有する機能性フィルムを近赤外線吸収フィルタに貼付した場合の可視光線反射率は、2%以下であることが好ましく、より好ましくは1.3%以下、さらに好ましくは0.8%以下である。
上記のような機能性フィルムは、適当な透明基材上に反射防止性・防眩性を有する機能層を設けることにより形成することができる。
反射防止層としては、例えば、フッ素系透明高分子樹脂やフッ化マグネシウム、シリコン系樹脂や酸化珪素の薄膜等を例えば1/4波長の光学膜厚で単層形成したもの、屈折率の異なる、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、窒化物、硫化物等の無機化合物又はシリコン系樹脂やアクリル樹脂、フッ素系樹脂等の有機化合物の薄膜を2層以上多層積層したもの等で形成することができる。
防眩性層としては、0.1μm〜10μm程度の微少な凹凸の表面状態を有する層から形成することができる。具体的には、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型又は光硬化型樹脂に、シリカ、有機珪素化合物、メラミン、アクリル等の無機化合物又は有機化合物の粒子を分散させインキ化したものを塗布、硬化することにより形成することが可能である。
粒子の平均粒径は、1〜40μm程度が好ましい。
また、防眩性層としては、上記の熱硬化型又は光硬化型樹脂を塗布した後、所望のグロス値又は表面状態を有する型を押しつけ硬化することによっても形成することができる。
(ハードコート性)
近赤外線吸収フィルムに耐擦傷性を付加するために、機能性フィルムがハードコート性を有していることも好適である。ハードコート層としてはアクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型又は光硬化型樹脂等が挙げられるが、その種類も形成方法も特に限定されない。ハードコート層の厚さは、1〜50μm程度であることが好ましい。ハードコート層上に上記の反射防止層及び/又は防眩層を形成すると、耐擦傷性・反射防止性及び/又は防眩性を有する機能性フィルムが得られ好適である。
近赤外線吸収フィルムに耐擦傷性を付加するために、機能性フィルムがハードコート性を有していることも好適である。ハードコート層としてはアクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型又は光硬化型樹脂等が挙げられるが、その種類も形成方法も特に限定されない。ハードコート層の厚さは、1〜50μm程度であることが好ましい。ハードコート層上に上記の反射防止層及び/又は防眩層を形成すると、耐擦傷性・反射防止性及び/又は防眩性を有する機能性フィルムが得られ好適である。
ハードコート性が付与された近赤外線吸収フィルタの表面硬度は、JIS(K―5400)に従った鉛筆硬度が少なくともHであることが好ましく、より好ましくは2H、さらに好ましくは3H以上である。
(帯電防止性)
静電気帯電によるホコリの付着や、人体との接触による静電気放電を防止するため、近赤外線吸収フィルタには、帯電防止性が付与されることが好ましい。
静電気帯電によるホコリの付着や、人体との接触による静電気放電を防止するため、近赤外線吸収フィルタには、帯電防止性が付与されることが好ましい。
帯電防止性を有する機能性フィルムとしては、導電性の高いフィルムを用いることができ、例えば導電性が面抵抗で1011オーム/sq程度以下であればよい。
導電性の高いフィルムは、透明基材上に帯電防止層を設けることにより形成することができる。帯電防止層に用いる帯電防止剤としては、具体的には、商品名ペレスタット(三洋化成社製)、商品名エレクトロスリッパ(花王社製)等が挙げられる。他に、ITOをはじめとする公知の透明導電膜やITO超微粒子や酸化スズ超微粒子をはじめとする導電性超微粒子を分散させた導電膜で帯電防止層を形成してもよい。上述のハードコート層、反射防止層、防眩層等に、導電性微粒子を含有させる等して帯電防止性を付与してもよい。
(防汚性)
近赤外線吸収フィルタが防汚性を有していると、指紋等の汚れ防止や汚れが付いたときに簡単に取り除くことができるので好適である。
近赤外線吸収フィルタが防汚性を有していると、指紋等の汚れ防止や汚れが付いたときに簡単に取り除くことができるので好適である。
防汚性を有する機能性フィルムは、例えば透明基材上に防汚性を有する化合物を付与することにより得られる。防汚性を有する化合物としては、水及び/又は油脂に対して非濡性を有する化合物であればよく、例えばフッ素化合物やケイ素化合物が挙げられる。フッ素化合物として具体的には商品名オプツール(ダイキン社製)等が挙げられ、ケイ素化合物としては、商品名タカタクォンタム(日本油脂社製)等が挙げられる。
(紫外線カット性)
近赤外線吸収フィルタには、後述する色素や透明基材の劣化等を防ぐ目的で紫外線カット性を付与することが好ましい。紫外線カット性を有する機能性フィルムは、透明基材自体に紫外線吸収剤を含有させる方法や透明基材上に紫外線吸収層を設けることにより形成することができる。
近赤外線吸収フィルタには、後述する色素や透明基材の劣化等を防ぐ目的で紫外線カット性を付与することが好ましい。紫外線カット性を有する機能性フィルムは、透明基材自体に紫外線吸収剤を含有させる方法や透明基材上に紫外線吸収層を設けることにより形成することができる。
色素を保護するのに必要な紫外線カット能としては、波長380nmより短い紫外線領域の透過率が、20%以下、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。紫外線カット性を有する機能性フィルムは、紫外線吸収剤や紫外線を反射又は吸収する無機化合物を含有する層を透明基材上に形成することにより得られる。紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系等、従来公知のものを使用でき、その種類・濃度は、分散又は溶解させる媒体への分散性・溶解性、吸収波長・吸収係数、媒体の厚さ等から決まり、特に限定されるものではない。
なお、紫外線カット性を有する機能性フィルムは、可視光線領域の吸収が少なく、著しく可視光線透過率が低下したり黄色等の色を呈することがないことが好ましい。
また、機能性フィルムに後述する色素を含有する層が形成されている場合は、その層よりも外側に紫外線カット性を有する層が存在することが望ましい。
(ガスバリア性)
近赤外線吸収フィルタを常温常湿よりも高い温度・湿度環境化で使用すると、水分により後述する色素が劣化したり、貼り合せに用いる接着剤中や貼合界面に水分が凝集して曇ったり、水分による影響で接着剤が相分離して析出して曇ったりすることがあるので、近赤外線吸収フィルタはガスバリア性を有していることが好ましい。
近赤外線吸収フィルタを常温常湿よりも高い温度・湿度環境化で使用すると、水分により後述する色素が劣化したり、貼り合せに用いる接着剤中や貼合界面に水分が凝集して曇ったり、水分による影響で接着剤が相分離して析出して曇ったりすることがあるので、近赤外線吸収フィルタはガスバリア性を有していることが好ましい。
このような色素劣化や曇りを防ぐためには、色素を含有する層や接着剤層への水分の侵入を防ぐことが肝要であり、機能性フィルムの水蒸気透過度が10g/m2・day以下、好ましくは5g/m2・day以下であることが好適である。
(その他の光学特性)
また、近赤外線吸収フィルタをプラズマディスプレイに用いる場合、その透過色がニュートラルグレー又はブルーグレーであることが好ましい。これは、プラズマディスプレイの発光特性及びコントラストを維持又は向上させるためであり、また、標準白色より若干高めの色温度の白色が好まれる場合があるからである。
また、近赤外線吸収フィルタをプラズマディスプレイに用いる場合、その透過色がニュートラルグレー又はブルーグレーであることが好ましい。これは、プラズマディスプレイの発光特性及びコントラストを維持又は向上させるためであり、また、標準白色より若干高めの色温度の白色が好まれる場合があるからである。
また、プラズマディスプレイに用いる光学フィルタはその透過色がニュートラルグレー又はブルーグレーであることが要求される。これは、プラズマディスプレイの発光特性及びコントラストを維持又は向上させる必要があったり、標準白色より若干高めの色温度の白色が好まれる場合があるからである。さらにまた、カラープラズマディスプレイはその色再現性が不十分と言われており、その原因である蛍光体又は放電ガスからの不要発光を選択的に低減することが好ましい。特に赤色表示の発光スペクトルは、波長580nmから700nm程度までにわたる数本の発光ピークを示しており、比較的強い短波長側の発光ピークにより赤色発光がオレンジに近い色純度の良くないものとなってしまう問題がある。これら光学特性は、色素を用いることによって制御できる。つまり、近赤外線カットには近赤外線吸収剤を用い、また、不要発光の低減には不要発光を選択的に吸収する色素を用いて、所望の光学特性とすることが出来、また、光学フィルタの色調も可視領域に適当な吸収のある色素を用いて好適なものとすることができる。
色素を含有させる方法としては、(1)色素を少なくとも1種類以上、透明な樹脂に混錬させた高分子フィルム又は樹脂板、(2)色素を少なくとも1種類以上、樹脂又は樹脂モノマー/有機系溶媒の樹脂濃厚液に分散・溶解させ、キャスティング法により作製した高分子フィルム又は樹脂板、(3)色素を少なくとも1種類以上を、樹脂バインダーと有機系溶媒に加え、塗料とし、高分子フィルム又は樹脂板上にコーティングしたもの、(4)色素を少なくとも1種類以上を含有する透明な粘着材、のいずれか一つ以上選択できるが、これらに限定されない。本発明でいう含有とは、基材又は塗膜等の層又は粘着材の内部に含有されることは勿論、基材又は層の表面に塗布した状態を意味する。
上記の色素は可視領域に所望の吸収波長を有する一般の染料又は顔料、であって、その種類は特に限定されるものではないが、例えばアントラキノン系、フタロシアニン系、メチン系、アゾメチン系、オキサジン系、イモニウム系、アゾ系、スチリル系、クマリン系、ポルフィリン系、ジベンゾフラノン系、ジケトピロロピロール系、ローダミン系、キサンテン系、ピロメテン系、ジチオール系化合物、ジイミニウム系化合物等の一般に市販もされている有機色素があげられる。その種類・濃度は、色素の吸収波長・吸収係数、光学フィルタに要求される透過特性・透過率、そして分散させる媒体又は塗膜の種類・厚さから決まり、特に限定されるものではない。
プラズマディスプレイパネルはパネル表面の温度が高く、環境の温度が高いときは特に光学フィルタの温度も上がるため、色素は、例えば80℃で分解等によって顕著に劣化しない耐熱性を有していることが好適である。また、耐熱性に加えて色素によっては耐光性に乏しいものもある。プラズマディスプレイの発光や外光の紫外線・可視光線による劣化が問題になる場合は、紫外線吸収剤を含む部材や紫外線を透過しない部材を用いることによって、色素の紫外線による劣化を低減すること、紫外線や可視光線による顕著な劣化がない色素を用いることが肝要である。熱、光に加えて、湿度や、これらの複合した環境においても同様である。劣化すると光学フィルタの透過特性が変わってしまい、色調が変化したり近赤外線カット能が低下してしまう。さらには、媒体又は塗膜中に分散させるために、適宜の溶媒への溶解性や分散性も重要である。また、本実施の形態においては異なる吸収波長を有する色素2種類以上を1つの媒体又は塗膜に含有させてもよいし、色素を含有する媒体、塗膜を2つ以上有していてもよい。
(電磁波遮蔽性)
本発明の近赤外線吸収フィルムは、電磁波遮蔽層を積層することにより、電磁波遮蔽能を付与してもよい。電磁波遮蔽層としては、透光性であることがディスプレイ用途としては好ましい。
本発明の近赤外線吸収フィルムは、電磁波遮蔽層を積層することにより、電磁波遮蔽能を付与してもよい。電磁波遮蔽層としては、透光性であることがディスプレイ用途としては好ましい。
透光性電磁波遮蔽層としては、導電性金属をメッシュ状に形成したものや、金属及び金属酸化物を多層に積層したものが知られているが、本発明にはこれらのうち導電性金属メッシュからなる透光性電磁波遮蔽層が好ましい。
電磁波遮蔽用の導電性金属メッシュとしては、銅箔等の金属箔をフォトレジスト法によってエッチング処理によってメッシュを形成したもの、銀塩写真法や印刷法によって銀等の金属微粒子をメッシュパターン状に配置した後、これら微粒子上に電気めっきまたは無電解めっき等によってさらに金属を積層し導電性を向上させたもの等が知られており、本発明にいずれも好ましく使用できる。
本発明の近赤外線吸収フィルタとこれら電磁波遮蔽層とを積層する際の順序には特に制限はなく、近赤外線吸収層を形成した後に電磁波遮蔽層を積層しても、電磁波遮蔽層を形成した後に近赤外線吸収層を形成してもよく、また、電磁波遮蔽層形成工程の一部のみを行った後に近赤外線吸収層を形成し、さらに、その後に電磁波吸収層形成工程を継続してもよい。また、近赤外線吸収層及び電磁波遮蔽層は支持体の同一の面に形成しても、別の面に形成してもよい。
本発明に適用する透光性電磁波吸収層としては特に銀塩写真法を用いた金属メッシュからなる透光性電磁波遮蔽層が好ましい。この場合、電磁波遮蔽層形成用の銀塩感光層の露光工程より前に、近赤外線吸収層の形成が完了していることが好ましい。
以上に詳細に説明したように、本実施の形態に係る近赤外線吸収フィルタは、プラズマディスプレイの輝度を著しく損なわずに、その画質を維持又は向上させることができる。また、プラズマディスプレイから発生する健康に害をなす可能性があることを指摘されている電磁波を遮断する電磁波シールド能に優れ、さらに、プラズマディスプレイから放射される800〜1000nm付近の近赤外線線を効率よくカットするため、周辺電子機器のリモコン、伝送系光通信等が使用する波長に悪影響を与えず、それらの誤動作を防ぐことができる。
さらに、本実施の形態に係る近赤外線吸収フィルタは、製造時の有機溶剤使用の低減が可能な水系樹脂を用い、ヘイズ値及び特に高温高湿下での耐久性が改良された近赤外線吸収フィルタを提供することができる。近赤外線吸収フィルタのヘイズ値を低減することができるため、特に画像表示装置用として好適な近赤外線吸収フィルタを提供することができる。ヘイズ値は、近赤外線吸収染料とポリマーの比率を好適な範囲に規定することで低減可能となる。
また、本実施の形態に係る近赤外線吸収フィルタの製造方法によれば、赤外線吸収染料及びポリマーの水性分散物を用いることで、環境負荷をもたらす有機溶剤の使用量を低減することができ、さらにゼラチン等の水溶性ポリマーを用いた場合に比較して特に高温高湿下での耐久性が改善された近赤外線吸収フィルタを製造することができる。
従って、本実施の形態に係る画像表示装置によれば、高い近赤外線遮蔽能を有しながら高い透明性をも備え、且つ、環境への悪影響が少なく、高い生産性と低コスト性を有すると共に、耐久性、特に、高温高湿度下での耐久性の優れたものとなる。
以下、実施例及び比較例により、本発明の内容をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。なお、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるものではない。
この実施例では、実施例1〜9、比較例1〜3について、近赤外線吸収能の評価、その耐湿熱性の評価、ヘイズの評価、有機溶剤の含有量の評価を調べた。
実施例1〜9、比較例1〜3の内訳(ポリマーの種類、ポリマーの量、近赤外線吸収染料の量、近赤外線吸収染料に対するポリマーの重量比)、並びに実施例1〜9、比較例1〜3のヘイズ値、近赤外線吸収能の評価、その耐湿熱性の評価、有機溶剤の含有量の評価を表1に示し、ポリマーの種類の内訳を表2に示す。
[実施例1]
(近赤外線吸収性塗布液の調製)
以下に示す近赤外線吸収染料、バインダ、架橋剤、界面活性剤、マット剤及び水を混合して近赤外線吸収性組成物を調製した。
(近赤外線吸収性塗布液の調製)
以下に示す近赤外線吸収染料、バインダ、架橋剤、界面活性剤、マット剤及び水を混合して近赤外線吸収性組成物を調製した。
近赤外線吸収染料:下記ヘプタメチン染料(I−1)、(I−2)及びオキソノール染料(I−3)の混合比(モル比)1:8:1の混合物
2質量部
ヘプタメチン染料(I−1)
2質量部
ヘプタメチン染料(I−1)
ヘプタメチン染料(I−2)
オキソノール染料(I−3)
バインダー:ジュリマーET410 (固形分30%) 100質量部
日本純薬(株)製アクリルポリマーの水性分散物
架橋剤:デイナコールEx614B 3.2質量部
ナガセケムテック製エポキシ系架橋剤
界面活性剤:サンデット BL (固形分45%) 0.8質量部
三洋化成(株)製アニオン系界面活性剤
マット剤:平均粒径0.8μmシリカ微粒子 0.2質量部
水 全量が200質量部になるよう添加
日本純薬(株)製アクリルポリマーの水性分散物
架橋剤:デイナコールEx614B 3.2質量部
ナガセケムテック製エポキシ系架橋剤
界面活性剤:サンデット BL (固形分45%) 0.8質量部
三洋化成(株)製アニオン系界面活性剤
マット剤:平均粒径0.8μmシリカ微粒子 0.2質量部
水 全量が200質量部になるよう添加
(近赤外線吸収フィルタの作製)
厚み100μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートの支持体を、70m/分の速度で搬送しながら、その表面に対して730J/m2の条件でコロナ放電処理を施した。その後、上記塗布液を近赤外線吸収染料の塗布量が0.2g/m2となるように支持体上に塗布して130℃で5分間乾燥して近赤外線吸収層を積層した。このようにして実施例1に係る近赤外線吸収フィルタを得た。
厚み100μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートの支持体を、70m/分の速度で搬送しながら、その表面に対して730J/m2の条件でコロナ放電処理を施した。その後、上記塗布液を近赤外線吸収染料の塗布量が0.2g/m2となるように支持体上に塗布して130℃で5分間乾燥して近赤外線吸収層を積層した。このようにして実施例1に係る近赤外線吸収フィルタを得た。
[実施例2〜9、比較例1〜3]
ポリマーの種類、ポリマーの含有量を、表1のように変更したこと以外は、上述した実施例1と同様にして、実施例2〜9、比較例1〜3に係る近赤外線吸収フィルタを得た。ただし、上記架橋剤の量はポリマーの量に対して一定の比率となるように変更した。また、塗布液の塗布量が一定となるように、塗布液に添加する水の量を調節した。
ポリマーの種類、ポリマーの含有量を、表1のように変更したこと以外は、上述した実施例1と同様にして、実施例2〜9、比較例1〜3に係る近赤外線吸収フィルタを得た。ただし、上記架橋剤の量はポリマーの量に対して一定の比率となるように変更した。また、塗布液の塗布量が一定となるように、塗布液に添加する水の量を調節した。
(揮発性有機溶剤の含有量の評価)
塗布液の溶媒の有機溶剤比率を下記の基準で評価して、表1に記した。実施例1〜9、比較例1〜3共に有機溶剤を殆どもしくは全く使用せずに、塗布液を作製することができた。
塗布液の溶媒の有機溶剤比率を下記の基準で評価して、表1に記した。実施例1〜9、比較例1〜3共に有機溶剤を殆どもしくは全く使用せずに、塗布液を作製することができた。
◎:100%水溶媒
○:95%以上水溶媒
△:70%以上95%未満水溶媒
○:95%以上水溶媒
△:70%以上95%未満水溶媒
(近赤外線吸収能の評価)
日立製作所製の分光器U−3500を用いて波長900nmの透過率を測定することにより、近赤外線吸収能を以下の基準で評価した。近赤外線吸収能の好ましい範囲は透過率が10%以下の範囲である。
日立製作所製の分光器U−3500を用いて波長900nmの透過率を測定することにより、近赤外線吸収能を以下の基準で評価した。近赤外線吸収能の好ましい範囲は透過率が10%以下の範囲である。
◎:透過率10%以下
○:透過率10%以上〜50%未満
×:透過率50%以上
○:透過率10%以上〜50%未満
×:透過率50%以上
(耐湿熱性の評価)
実施例1〜9、比較例1〜3を80℃/相対湿度90%RHにて4日間保存した後、上記の方法で900nmの吸光度を測定した。
実施例1〜9、比較例1〜3を80℃/相対湿度90%RHにて4日間保存した後、上記の方法で900nmの吸光度を測定した。
(ヘイズの評価)
実施例1〜9、比較例1〜3のヘイズ値を、日本電色工業製の濁度計NDH2000を用いて、JIS K 7136に準じて測定した。
実施例1〜9、比較例1〜3のヘイズ値を、日本電色工業製の濁度計NDH2000を用いて、JIS K 7136に準じて測定した。
[評価結果]
表1から、近赤外線吸収染料に対するポリマーの重量比の変更により、ヘイズ値が変わり、ある特定の範囲において、ヘイズ値を4%以下にすることができることがわかる。
表1から、近赤外線吸収染料に対するポリマーの重量比の変更により、ヘイズ値が変わり、ある特定の範囲において、ヘイズ値を4%以下にすることができることがわかる。
プラズマディスプレイに上述した近赤外線吸収フィルタを設置して、プラズマディスプレイのコントラストをみたところ、ヘイズ値が低い近赤外線吸収フィルタほどコントラストの低下が生じにくいことが確認された。前面板をはずしたプラズマディスプレイの前面に近赤外線吸収フィルタを貼合して、プラズマディスプレイのコントラストを目視にて確認した。
また、バインダとして水溶性ポリマーであるゼラチンを用いた場合に比べ、ポリマーの水性分散物を用いた実施例1〜9に係る近赤外線吸収フィルタ共に、耐湿熱性がいずれも改善しており、高温高湿下での耐久性にも有効であることが明らかとなった。
[実施例10〜13の作製及び評価]
上記実施例2の作成方法に対して、塗布液にN−メチルピロリドン(NMP)を表3に示す如く添加したことのみ異なる方法によって、本発明の近赤外線吸収フィルムである実施例10〜実施例13を作成し、上記と同様の評価を行った。ここで塗布液の塗布量が一定となるように、塗布液に添加する水の量を調節した。
上記実施例2の作成方法に対して、塗布液にN−メチルピロリドン(NMP)を表3に示す如く添加したことのみ異なる方法によって、本発明の近赤外線吸収フィルムである実施例10〜実施例13を作成し、上記と同様の評価を行った。ここで塗布液の塗布量が一定となるように、塗布液に添加する水の量を調節した。
本発明の近赤外線吸収フィルムは、微量の有機溶剤の併用によってヘイズ値が低減し得ることが表3に示されている。
(近赤外線吸収層の接着性の評価)
上述の試料の一部及び後述の試料に関して、下記方法によって近赤外線吸収層の支持体に対する接着性の評価を行った。試料内容及び評価結果は表4に示した。
上述の試料の一部及び後述の試料に関して、下記方法によって近赤外線吸収層の支持体に対する接着性の評価を行った。試料内容及び評価結果は表4に示した。
(評価方法)
近赤外線吸収層の表面にカミソリで縦横6本ずつのキズをつけて25個の桝目を作った。この上に幅24mmのセロハンテープを貼り付けて、その上から消しゴムで擦って完全に付着させた後、180度の角度でテープを剥離し、近赤外線吸収層が剥離した枡目の数を数えることにより下記ランク付けを行った。このとき剥離は、セロハンテープ貼合後、25℃/相対湿度60%RHおよび80℃/相対湿度90%RHにて放置した各試料に対して行った。剥離した升目の数が少ないほど近赤外線吸収層と支持体(もしくは下塗り層)との接着性が良好であり、Cランク以上は実用上問題ないレベルである。
近赤外線吸収層の表面にカミソリで縦横6本ずつのキズをつけて25個の桝目を作った。この上に幅24mmのセロハンテープを貼り付けて、その上から消しゴムで擦って完全に付着させた後、180度の角度でテープを剥離し、近赤外線吸収層が剥離した枡目の数を数えることにより下記ランク付けを行った。このとき剥離は、セロハンテープ貼合後、25℃/相対湿度60%RHおよび80℃/相対湿度90%RHにて放置した各試料に対して行った。剥離した升目の数が少ないほど近赤外線吸収層と支持体(もしくは下塗り層)との接着性が良好であり、Cランク以上は実用上問題ないレベルである。
Aランク:剥離した升目がない場合
Bランク:剥離した升目数が1乃至2の場合
Cランク:剥離した升目数が3乃至5の場合
Dランク:剥離した升目数が6乃至20未満の場合
Eランク:剥離した升目数が20以上の場合
Bランク:剥離した升目数が1乃至2の場合
Cランク:剥離した升目数が3乃至5の場合
Dランク:剥離した升目数が6乃至20未満の場合
Eランク:剥離した升目数が20以上の場合
[実施例14]
近赤外線吸収層に架橋剤を添加しなかったことのみ実施例4と異なる方法によって近赤外線吸収フィルムを作成し、実施例14の試料とした。
近赤外線吸収層に架橋剤を添加しなかったことのみ実施例4と異なる方法によって近赤外線吸収フィルムを作成し、実施例14の試料とした。
[実施例15]
近赤外線吸収層の架橋剤をカルボジライトV−02−L2(商品名:日清紡社製)に変更したことのみ実施例4と異なる方法によって近赤外線吸収フィルムを作成し、実施例15の試料とした。ここで架橋剤はバインダーに対して5%(固形分重量比)添加した。
近赤外線吸収層の架橋剤をカルボジライトV−02−L2(商品名:日清紡社製)に変更したことのみ実施例4と異なる方法によって近赤外線吸収フィルムを作成し、実施例15の試料とした。ここで架橋剤はバインダーに対して5%(固形分重量比)添加した。
[実施例16]
特開2001−228324号公報の実施例1に記載のように、スチレンブタジエンコポリマーからなる易接着性の下塗り層を、近赤外線吸収層と支持体との間に塗布したこと以外は実施例14の試料と同様の方法によって近赤外線吸収フィルムを作成し、実施例16の試料とした。
特開2001−228324号公報の実施例1に記載のように、スチレンブタジエンコポリマーからなる易接着性の下塗り層を、近赤外線吸収層と支持体との間に塗布したこと以外は実施例14の試料と同様の方法によって近赤外線吸収フィルムを作成し、実施例16の試料とした。
[比較例4]
近赤外線吸収層に架橋剤を添加しなかったことのみ比較例1と異なる方法によって近赤外線吸収フィルムを作成し、比較例4の試料とした。
近赤外線吸収層に架橋剤を添加しなかったことのみ比較例1と異なる方法によって近赤外線吸収フィルムを作成し、比較例4の試料とした。
[比較例5]
特開2001−228324号公報の実施例1に記載のように、スチレンブタジエンコポリマーからなる易接着性の下塗り層を、近赤外線吸収層と支持体との間に塗布したこと以外は比較例3の試料と同様の方法によって近赤外線吸収フィルムを作成し、比較例5の試料とした。
特開2001−228324号公報の実施例1に記載のように、スチレンブタジエンコポリマーからなる易接着性の下塗り層を、近赤外線吸収層と支持体との間に塗布したこと以外は比較例3の試料と同様の方法によって近赤外線吸収フィルムを作成し、比較例5の試料とした。
(結果)
表4からは以下のことが伺える。すなわち、架橋剤を添加しなかった実施例15は高温高湿度で保存した後の接着性が、架橋剤を添加した実施例4及び実施例15に対して悪化しており、本発明の近赤外線吸収フィルムにおいて架橋剤が支持体との接着性を改善し得ることが示されている。
表4からは以下のことが伺える。すなわち、架橋剤を添加しなかった実施例15は高温高湿度で保存した後の接着性が、架橋剤を添加した実施例4及び実施例15に対して悪化しており、本発明の近赤外線吸収フィルムにおいて架橋剤が支持体との接着性を改善し得ることが示されている。
一方、染料とバインダの比率が本発明の範囲ではない比較例1及びそれに対して架橋剤を除いた比較例4を比較すると、架橋剤による接着性の改良は僅かであり、架橋剤が無い比較例4においても接着性は良好なレベルにあることが分かる。
すなわち、良好なヘイズ値を得るための本発明の染料とバインダー比の規定は、近赤外線吸収層と支持体との接着性を低下をもたらすが、この問題に対して架橋剤の利用が有効であることが表4に示されている。この接着性の問題に対してはまた、易接着性の下塗り層を設けることも有効であることが実施例17の評価結果に示されている。架橋剤の利用はこのような別層の形成を必要とせずに接着性を改良し得る点で。製造コストを抑制でき有用である。ただし、比較例3の評価結果から、架橋剤による接着性の改良はバインダとしてゼラチンを用いた場合には不十分であり、本発明のバインダであるポリマーの水分散物は、接着性改良効果があることが実施例4及び比較例3の比較から伺える。
[参考例]
特開2006−332459号公報の実施例1記載の試料番号1−5の作製方法に対し、バック面の下塗り層を本発明の実施例3の近赤外線吸収層に変更したことのみ異なる方法によって、銀塩写真法を用いた導電性メッシュからなる透光性電磁波遮蔽フィルムに近赤外線吸収能を付与した複合フィルムを容易に形成できることを確認した。
特開2006−332459号公報の実施例1記載の試料番号1−5の作製方法に対し、バック面の下塗り層を本発明の実施例3の近赤外線吸収層に変更したことのみ異なる方法によって、銀塩写真法を用いた導電性メッシュからなる透光性電磁波遮蔽フィルムに近赤外線吸収能を付与した複合フィルムを容易に形成できることを確認した。
なお、本発明に係る近赤外線吸収フィルム、近赤外線吸収フィルムの製造方法及び画像表示装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
Claims (23)
- フィルム状の支持体と、
前記支持体上に、近赤外吸収染料とポリマーの水性分散物を含有する近赤外線吸収組成物を用いて形成された近赤外線吸収層とを有し、
ヘイズ値が4%以下であることを特徴とする近赤外線吸収フィルタ。 - 請求項1記載の近赤外線吸収フィルタにおいて、
ヘイズ値が2%以下であることを特徴とする近赤外線吸収フィルタ。 - 請求項1又は2記載の近赤外線吸収フィルタにおいて、
前記近赤外線吸収層の前記近赤外線吸収染料に対する前記ポリマーの重量比が0.7以上25以下の範囲にあることを特徴とする近赤外線吸収フィルタ。 - 請求項1又は2記載の近赤外線吸収フィルタにおいて、
前記近赤外線吸収層の前記近赤外線吸収染料に対する前記ポリマーの重量比が1.0以上10以下の範囲にあることを特徴とする近赤外線吸収フィルタ。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の近赤外線吸収フィルタにおいて、
前記近赤外線吸収染料がメチン染料であることを特徴とする近赤外線吸収フィルタ。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の近赤外線吸収フィルタにおいて、
前記ポリマーの水性分散物は、前記ポリマーとしてアクリル樹脂またはウレタン樹脂を含有することを特徴とする近赤外線吸収フィルタ。 - 請求項1〜6のいずれか1項に記載の近赤外線吸収フィルタにおいて、
前記支持体が単層のポリエステル樹脂からなり、前記近赤外線吸収層が前記ポリエステル樹脂面に直接接して形成されていることを特徴とする近赤外線吸収フィルタ。 - 請求項1〜7のいずれか1項に記載の近赤外線吸収フィルタにおいて、
前記近赤外線吸収層がさらに架橋剤を含むことを特徴とする近赤外線吸収フィルタ。 - 請求項8に記載の近赤外線吸収フィルタにおいて、
前記架橋剤は、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、メラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤のいずれかから選ばれる架橋剤であることを特徴とする近赤外線吸収フィルタ。 - 請求項1〜9のいずれか1項に記載の近赤外線吸収フィルタにおいて、
前記近赤外線吸収染料及び前記ポリマーの水性分散物を含有する水性組成物の溶媒の70%以上が水であることを特徴とする近赤外線吸収フィルタ。 - 請求項1〜9のいずれか1項に記載の近赤外線吸収フィルタを具備した画像表示装置。
- 請求項11記載の画像表示装置において、
前記画像表示装置がプラズマディスプレイパネルであることを特徴とする画像表示装置。 - 支持体上に、近赤外吸収染料とポリマーを含有する近赤外線吸収層とを有し、ヘイズ値が4%以下である近赤外線吸収フィルタの製造方法であって、
前記近赤外線吸収染料及び前記ポリマーの水性分散物を含有し、前記近赤外線吸収染料に対する前記ポリマーの重量比が0.7以上25以下の範囲にある水性組成物を調製する水性組成物調製工程と、
前記水性組成物を前記支持体に塗布して乾燥し、前記赤外線吸収層を形成する工程と
を有する近赤外線吸収フィルタの製造方法。 - 請求項13記載の近赤外線吸収フィルタの製造方法において、
前記近赤外線吸収染料に対する前記ポリマーの重量比が1.0以上10以下の範囲にあることを特徴とする近赤外線吸収フィルタの製造方法。 - 請求項13又は14記載の近赤外線吸収フィルタの製造方法において、
前記近赤外線吸収染料がメチン染料であることを特徴とする近赤外線吸収フィルタの製造方法。 - 請求項13〜15のいずれか1項に記載の近赤外線吸収フィルタの製造方法において、
前記ポリマーの水性分散物は、前記ポリマーとしてアクリル樹脂またはウレタン樹脂を含有することを特徴とする近赤外線吸収フィルタの製造方法。 - 請求項13〜16のいずれか1項に記載の近赤外線吸収フィルタの製造方法において、
前記支持体がポリエステル樹脂からなり、前記近赤外線吸収層が前記ポリエステル樹脂面に接して直接形成されていることを特徴とする近赤外線吸収フィルタの製造方法。 - 請求項13〜17のいずれか1項に記載の近赤外線吸収フィルタの製造方法において、
前記近赤外線吸収層がさらに架橋剤を含むことを特徴とする近赤外線吸収フィルタの製造方法。 - 請求項18記載の近赤外線吸収フィルタの製造方法において、
前記架橋剤は、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、メラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤のいずれかから選ばれる架橋剤であることを特徴とする近赤外線吸収フィルタの製造方法。 - 請求項13〜19のいずれか1項に記載の近赤外線吸収フィルタの製造方法において、
前記近赤外線吸収染料及び前記ポリマーの水性分散物を含有する水性組成物の溶媒の70%以上が水であることを特徴とする近赤外線吸収フィルタの製造方法。 - 請求項20に記載の近赤外線吸収フィルタの製造方法において、
前記近赤外線吸収染料及び前記ポリマーの水性分散物を含有する水性組成物の溶媒の90%以上が水であることを特徴とする近赤外線吸収フィルタの製造方法。 - 請求項20又は21記載の近赤外線吸収フィルタの製造方法において、
前記近赤外線吸収染料及び前記ポリマーの水性分散物を含有する水性組成物の溶媒がさらに0.05%以上5%以下の水溶性有機溶媒を含むことを特徴とする近赤外線吸収フィルタの製造方法。 - 請求項22記載の近赤外線吸収フィルタの製造方法において、
前記水溶性有機溶媒が、N−メチルピロリドン、ブチルセロソルブのいずれかを含むことを特徴とする近赤外線吸収フィルタの製造方法。
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2007
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