JP3682347B2 - プラズマディスプレー用近赤外線吸収フィルター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディスプレーからでる近赤外線光(800〜1000nm)をカットし、周辺電子機器の誤動作を防止するフィルターに関する。
【0002】
更に詳しくは、近赤外線吸収剤であるポリメチン系化合物を含有し、可視光線透過率が高く、かつ近赤外線光のカット効率の高いプラズマディスプレー用近赤外線吸収フィルターに関する。
【0003】
【従来の技術】
近年、大型の薄型テレビ、薄型ディスプレー用途等に、プラズマディスプレーが注目され、すでに市場に出始めている。しかし、プラズマディスプレーからでる近赤外線光がコードレスホン、近赤外線リモコンを使うビデオデッキ等、周辺にある電子機器に作用し、誤動作を起こす問題を発見した。近赤外線吸収色素を用いて近赤外線吸収フィルターを作製することは知られているが、ディスプレーによる誤動作を防止する具体的な方策については全く知られていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、ディスプレーからでる周辺電子機器の誤動作を引き起こす近赤外線領域である800〜900nm、更に好ましくは800〜1000nmの領域の光をカットするとともに、ディスプレーの鮮明度を阻害しないような可視光線透過率の高い実用的なフィルターを提供することである。
【0005】
ポリメチン系化合物はもともとは写真用増感色素として開発されたものであり、一般的に光安定性が低いためその用途が限定されてきた。近年、エレクトロニクス産業の発展に伴い、用途に応じた機能と物性を持つ材料が要望されており、ポリメチン系化合物についても種々改良がなされ、光ディスク用記録媒体やレーザー感熱用記録媒体、近赤外線吸収フィルター等の用途に活発に検討されている。これらの用途のためには、特に長波長域に吸収を有することが望まれる。そのためには、通常、共役メチン鎖を長くすることが必要であるが、共役メチン鎖の伸長につれて色素の安定性も著しく低下するのが現状であり、構造改変による新しい色素の開発が求められている。
【0006】
現在実用化されているポリメチン系化合物としては、例えば式(A)の化合物がよく知られている。しかしながら、式(A)の化合物は800nm〜1000nmの近赤外域の吸収能に劣り、光安定性が低く、また溶剤に対する溶解性も低いため、実用的なプラズマディスプレー用近赤外線吸収フィルターを作製することはできない。
【0007】
【化2】
【0008】
また、本発明のポリメチン系化合物とは全く構造の異なるものであるが、部分的に類似の置換基を有する化合物として、特開平1−153753号公報の第50頁3行に、両端がビスインドリル基であるポリメチン系化合物(式(B))が開示されている。また、特開平5−112078号公報には、第13〜14頁に具体例(化合物No.10)として末端基がジアルキルアミノフェニル基であるポリメチン系化合物(式(C))が開示されている。
【0009】
【化3】
【0010】
【化4】
【0011】
しかしながら、これらの化合物は可視領域の吸収が高い、あるいは溶剤に対する溶解性が低いためプラズマディスプレー用近赤外線吸収フィルターには不適合である。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、従来のポリメチン系化合物にない高い安定性を示す、ある種のポリメチン系化合物を用いることにより、誤動作が問題となる近赤外線光を効率よくカットし、しかも、ディスプレーの鮮明度を阻害しない高い可視光線透過率を持つ実用的なプラズマディスプレー用近赤外線吸収フィルターができることを見出して、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、
▲1▼基材に一般式(I)で表されるポリメチン系化合物を少なくとも1種含有してなるプラズマディスプレー用近赤外線吸収フィルター、
▲2▼電磁波カット層を設けた前記▲1▼のプラズマディスプレー用近赤外線吸収フィルター、
▲3▼反射防止層を設けた前記▲1▼〜▲2▼のいずれかのプラズマディスプレー用近赤外線吸収フィルター、
▲4▼ぎらつき防止(ノングレア)層を設けた前記▲1▼〜▲3▼のいずれかのプラズマディスプレー用近赤外線吸収フィルター、
▲5▼可視光線透過率が40%以上で、かつ、800〜900nmの平均光線透過率が10%以下である前記▲1▼〜▲4▼のいずれかのプラズマディスプレー用近赤外線吸収フィルター、
▲6▼可視光線透過率が40%以上で、かつ、800〜1000nmの平均透過率が10%以下である前記▲5▼のプラズマディスプレー用近赤外線吸収フィルター、に関するものである。
【0013】
【化5】
〔式(I)中、R1、R7はアルキル基、アルコキシアルキル基、アラルキル基を示し、R2、R8はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基を示す。R3、R4、R9、R10は水素原子、アルキル基、アルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、シクロアルキル基、アリール基を示し、これらがアルキル基である場合、R3とR4及び/又はR9とR10が連結して、結合する窒素原子とともに複素環を形成してもよい。R5、R6、R11、R12は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を示し、Zは酸性残基を示す。〕
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する一般式(I)で表わされるポリメチン化合物の製造方法は特に限定されるわけではないが、通常、下記一般式(II)で表わされるエチレン化合物の少なくとも1種と、下記式(III)で表わされる1,3−プロペンジアニルの酸性塩とを酸性物質の存在下、脱水性有機酸中にて反応させることで製造することができる。
【0015】
【化6】
〔式(II)中、R1はアルキル基、アルコキシアルキル基、アラルキル基を示し、R2はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基を示し、R3、R4は水素原子、アルキル基、アルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、シクロアルキル基、アリール基を示し、これらがアルキル基である場合、R3とR4が連結して、結合する窒素原子とともに複素環を形成してもよい。R5、R6は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を示す。)
【0016】
【化7】
(式(III)中、Z2は酸性残基を示す。)
【0017】
本発明のディスプレー用フィルターは、基材に一般式(I)で表されるポリメチン系化合物を少なくとも1種含有するものである。本発明で用いる一般式(I)で表されるポリメチン系化合物中、R1〜R12で表される置換基及びZについて、以下に具体的に記載する。
【0018】
R1、R7がアルキル基であるものとしては、炭素数1〜8のアルキル基であるものが好ましく、特に炭素数1〜6の直鎖、分枝のアルキル基が好ましい。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、ドデシル基が挙げられる。アルコキシアルキル基であるものとしては、総炭素数2〜8のアルコキシアルキル基であるもの好ましく、具体例としては、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、メトキシブチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、メトキシエチル基、エトキシプロピル基、エトキシブチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基が挙げられる。アラルキル基であるもののアリール部分としては、置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基が好ましく、これら置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。アラルキル基のアルキレン部分としては炭素数1〜4のアルキレン基であるものが好ましい。アラルキル基としては特にベンジル基が好ましい。
【0019】
R2、R8がアルキル基であるものとしては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、特に炭素数1〜4の直鎖のアルキル基が好ましい。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、ドデシル基が挙げられる。シクロアルキル基であるものとしては、炭素数5〜7のシクロアルキル基が好ましく、特にシクロヘキシル基が好ましい。アリール基であるものとしては、置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基が好ましく、これら置換基としては炭素数1〜4の直鎖のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシが好ましく、特にメチル基、エチル基、塩素原子、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0020】
R3、R4、R9、R10がアルキル基であるものとしては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、特に炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基が挙げられる。R3とR4及び/又はR9とR10が連結して、結合する窒素原子とともに複素環を形成したものとしては、ピロリジノ基、ピペラジノ基が挙げられる。アルコキシアルキル基であるものとしては、総炭素数1〜8のアルコキシアルキル基が好ましく、特に総炭素数1〜4のアルコキシアルキル基が好ましい。具体例としては、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、メトキシブチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、メトキシエチル基、エトキシプロピル基、エトキシブチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基が挙げられる。ヒドロキシアルキル基であるものとしては、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基が好ましく、特に総炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基が好ましい。具体例としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基が挙げられる。シクロアルキル基であるものとしては、総炭素数5〜7のシクロアルキル基が好ましく、特にシクロヘキシル基が好ましい。アリール基であるものとしては置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基が好ましく、これら置換基としては炭素数1〜4の直鎖のアルキル基、ハロゲン原子、総炭素数1〜4のアルコキシが好ましく、特にメチル基、エチル基、塩素原子、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0021】
R5、R6、R11、R12がアルキル基であるものとしては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、特に炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、ドデシル基が挙げられる。アルコキシ基であるものとしては、総炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、特に総炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基、エトキシメトキシ基、エトキシエトキシ基が挙げられる。ハロゲン原子であるものとしては、特に臭素原子、塩素原子、フッ素原子が好ましい。
【0022】
酸性残基Zとしては、F-、Cl-、Br-、I-、ClO4 -、BF4 -、PF6 -、SbF6 -、CH3COO-、CH3SO3 -、CF3SO3 -等を例示できるが、好ましくはI-、ClO4 -、BF4 -、PF6 -、SbF6 -、CH3SO3 -である。
【0023】
本発明の一般式(I)で表わされる化合物の具体例を表−1に示す。なお、表−1において、Phはフェニル基を、cycl−C6H11はシクロヘキシル基を示す。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
本発明のプラズマディスプレー用近赤外線吸収フィルターは、前記のポリメチン系化合物を基材に含有してなるもので、本発明でいう基材に含有するとは、基材の内部に含有されることは勿論、基材の表面に塗布した状態、基材と基材の間に挟まれた状態等を意味する。
【0028】
基材としては、透明樹脂板、透明フィルム、透明ガラス等が挙げられる。
【0029】
上記ポリメチン系化合物を用いて、本願のプラズマディスプレー用近赤外線吸収フィルターを作製する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の3つの方法が利用できる。
(1)樹脂にポリメチン系化合物を混練し、加熱成形して樹脂板或いはフィルムを作製する方法、
(2)ポリメチン系化合物を含有する塗料を作製し、透明樹脂板、透明フィルム、或いは透明ガラス板上にコーティングする方法、
(3)ポリメチン系化合物を接着剤に含有させて、合わせ樹脂板、合わせ樹脂フィルム、合わせガラス等を作製する方法、等である。
【0030】
まず、樹脂にポリメチン系化合物を混練し、加熱成形する(1)の方法において、樹脂材料としては、樹脂板または樹脂フィルムにした場合にできるだけ透明性の高いものが好ましく、具体例として、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル等のビニル化合物、及びそれらのビニル化合物の付加重合体、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリシアン化ビニリデン、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、シアン化ビニリデン/酢酸ビニル共重合体等のビニル化合物又はフッ素系化合物の共重合体、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ素を含む樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリペプチド、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等を挙げることが出来るが、これらの樹脂に限定されるものではなく、ガラス代替となるような高硬度、高透明性を有する樹脂、チオウレタン系等の熱硬化樹脂、ARTON(登録商標、日本合成ゴム(株)製)、ZEONEX(登録商標、日本ゼオン(株)製)、OPTOREZ(登録商標、日立化成(株)製)、O−PET(登録商標、鐘紡(株)製)等の光学用樹脂を用いることも好ましい。
【0031】
作製方法としては、用いるベース樹脂によって、加工温度、フィルム化条件等が多少異なるが、通常、ポリメチン系化合物を、ベース樹脂の粉体或いはペレットに添加し、150〜350℃に加熱、溶解させた後、▲1▼成形して樹脂板を作製する方法、▲2▼押し出し機によりフィルム化する方法、▲3▼押し出し機により原反を作製し、30〜120℃で2〜5倍に、1軸乃至は2軸に延伸して10〜200μm厚のフィルムにする方法、等が挙げられる。なお、混練する際に、紫外線吸収剤、可塑剤等の通常の樹脂成型に用いる添加剤を加えてもよい。ポリメチン系化合物の添加量は、作製する樹脂の厚み、目的の吸収強度、目的の可視光透過率等によって異なるが、通常、1ppm〜20%である。また、ポリメチン系化合物とメタクリル酸メチル等の塊状重合によるキャスティング法を用いた樹脂板、樹脂フィルムを作製することもできる。
【0032】
塗料化してコーティングする(2)の方法としては、本発明のポリメチン系化合物をバインダー樹脂及び有機系溶媒に溶解させて塗料化する方法、ポリメチン系化合物を数μm以下に微粒化してアクリルエマルジョン中に分散して水系塗料とする方法、等がある。前者の方法では、通常、脂肪族エステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、芳香族エステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリオレフィン樹脂、芳香族ポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニル系変性樹脂(PVB、EVA等)或いはそれらの共重合樹脂をバインダー樹脂として用いる。更にARTON(登録商標、日本合成ゴム(株)製)、ZEONEX(登録商標、日本ゼオン(株)製)、OPTOREZ(登録商標、日立化成(株)製)、O−PET(登録商標、鐘紡(株)製)等の光学用樹脂を用いることもできる。
【0033】
溶媒としては、ハロゲン系、アルコール系、ケトン系、エステル系、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、エーテル系溶媒、あるいはそれらの混合物系等を用いる。
【0034】
ポリメチン系化合物の濃度は、コーティングの厚み、目的の吸収強度、目的の可視光透過率等によって異なるが、バインダー樹脂の重量に対して、通常、0.1〜30%である。
【0035】
また、バインダー樹脂濃度は、塗料全体に対して、通常、1〜50%である。
【0036】
アクリルエマルジョン系水系塗料の場合も同様に、未着色のアクリルエマルジョン塗料にポリメチン系化合物を微粉砕(50〜500nm)したものを分散させて得られる。塗料中には、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の通常塗料に用いるような添加物を加えてもよい。
【0037】
上記の方法で作製した塗料は、透明樹脂フィルム、透明樹脂、透明ガラス等の上にバーコーダー、ブレードコーター、スピンコーター、リバースコーター、ダイコーター、或いはスプレー等でコーティングして、本発明のプラズマディスプレー用近赤外線吸収フィルターを作製する。
【0038】
コーティング面を保護するために保護層を設けたり、透明樹脂板、透明樹脂フィルム等をコーティング面に貼り合わせることもできる。また、キャストフィルムも本方法に含まれる。
【0039】
ポリメチン系化合物を接着剤に含有させて、合わせ樹脂板、合わせ樹脂フィルム、合わせガラス等を作製する(3)の方法においては、接着剤として、一般的なシリコン系、ウレタン系、アクリル系等の樹脂用、或いは合わせガラス用のポリビニルブチラール接着剤(PVB)、エチレン−酢酸ビニル系接着剤(EVA)等の合わせガラス用の公知の透明接着剤が使用できる。
【0040】
ポリメチン系化合物を0.1〜30%添加した接着剤を用いて透明な樹脂板同士、樹脂板と樹脂フィルム、樹脂板とガラス、樹脂フィルム同士、樹脂フィルムとガラス、ガラス同士を接着してフィルターを作製する。また、熱圧着する方法もある。更に上記の方法で作製したフィルムあるいは板を、必要に応じて、ガラス板や、樹脂板上に貼り付けることもできる。フィルターの厚みは作製するプラズマディスプレーの仕様によって異なるが、通常0.1〜10mm程度である。また、フィルターの耐光性を上げるためにUV吸収剤を含有した透明フィルム(UVカットフィルム)を外側に貼り付けることもできる。
【0041】
プラズマディスプレー用の誤動作防止フィルターとして、ディスプレーから放射される近赤外線光をカットするべくディスプレーの前面に設置するため、可視光線の透過率が低いと、画像の鮮明さが低下することから、フィルターの可視光線の透過率は高い程良く、少なくとも40%以上、好ましくは50%以上必要である。
【0042】
また、近赤外線光のカット領域は特に問題になる波長としてリモコンや伝送系光通信に使用されている800〜900nm、好ましくは、800〜1000nmであり、その領域の平均光線透過率が10%以下になるように設計する。このために必要で有れば、上記の一般式(I)で表されるポリメチン系化合物を2種類以上組み合わせることもできるし、他の近赤外線吸収色素と組み合わせて使うこともできる。また、スパッタリング等の電磁波カット層を設けた場合、900〜1000付近の近赤外線領域を反射するため、該ポリメチン系化合物の使用量を減らすこともできる。
【0043】
また、フィルターの色調を変えるために、可視領域に吸収を持つ他の色素を加えることも好ましい。また、調色用色素のみを含有するフィルターを作製し、後で貼り合わせることもできる。特に、スパッタリング等の電磁波カット層を設けた場合、元のフィルター色に比べて色合いが大きく異なる場合があるため、調色は重要である。
【0044】
上記の方法で得たフィルターを更に実用的にするためには、プラズマディスプレーから出る電磁波を遮断する電磁波カット層、反射防止(AR)層、ノングレア(AG)層を設けることもできる。それらの作製方法は特に制限を受けない。
【0045】
例えば、電磁波カット層は、金属酸化物等のスパッタリング方法等が利用できるが、通常はSnを添加したIn2O3(ITO)が一般的であるが、誘電体層と金属層を基材上に交互にスパッタリング等で積層させることで、近赤外線、遠赤外線から電磁波まで1000nm以上の光をカットすることもできる。誘電体層としては酸化インジウム、酸化亜鉛等の透明な金属酸化物等であり、金属層としては銀あるいは銀−パラジウム合金が一般的であり、通常、誘電体層よりはじまり3層、5層、7層あるいは11層程度積層する。この場合、ディスプレーより出る熱も同時にカットできる。基材としては、ポリメチン系化合物を含有するフィルターをそのまま利用しても良いし、樹脂フィルムあるいはガラス上にスパッタリングした後にポリメチン系化合物を含有するフィルターと貼り合わせても良い。また、電磁波カットを実際に行う場合はアース用の電極を設置する必要がある。
【0046】
反射防止層は、表面の反射を抑えてフィルターの透過率を向上させるために、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機物を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法等で単層あるいは多層に積層させる方法、アクリル樹脂、フッ素樹脂等の屈折率の異なる樹脂を単層あるいは多層に積層させる方法等がある。また、反射防止処理を施したフィルムを該フィルター上に貼り付けることもできる。
【0047】
また必要であればノングレアー(AG)層を設けることもできる。ノングレアー(AG)層は、フィルターの視野角を広げる目的で、透過光を散乱させるために、シリカ、メラミン、アクリル等の微粉体をインキ化して、表面にコーティングする方法等を用いることができる。インキの硬化は熱硬化あるいは光硬化等を用いることができる。また、ノングレア処理をしたフィルムを該フィルター上に貼り付けることもできる。更に必要で有ればハードコート層を設けることもできる。
【0048】
プラズマディスプレー用近赤外線吸収フィルターの構成は、必要に応じて変えることができるが、通常、ポリメチン系化合物を含有する基材上に電磁波カット層を設け、更にその上に反射防止層を設ける。更に必要であれば反射防止層の反対側にノングレアー層を設けることができる。
【0049】
本発明のプラズマディスプレー用近赤外線吸収フィルターは可視光線透過率が高いためディスプレーの鮮明度が損なわれず、ディスプレーから放射される800〜1000nm付近の近赤外線光を効率よくカットできるため、周辺電子機器のリモコン、伝送系光通信等が使用する波長に悪影響を与えず、それらの誤動作を防ぐことができる。
【0050】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、更に詳細に説明する。本発明はこれによりなんら制限されるものではない。
【0051】
実施例1
表−1の化合物(1)で示されるポリメチン系化合物1.0gおよびポリメタクリル酸メチル(PMMA)〔「デルペット80N」、商品名、旭化成工業(株)製〕10kgを280℃で溶融混練して、押し出し成型機を用いて、厚み2mmのフィルターを作製した。該フィルターについて、(株)島津製作所製分光光度計UV−3100にて透過率を測定した。可視光線透過率(Tv)は75.5%(JIS−R−3106に従って計算した)、800〜900nmの平均光線透過率は3.1%であった。
【0052】
実施例2
実施例1において、表−1の化合物(1)の代わりに、表−1の化合物(2)を1.0gを用いた以外は、実施例1とまったく同様にしてフィルターを作製した。
【0053】
このフィルターについて、同様に透過率を測定したところ、Tv=75.5%、800〜900nmの平均光線透過率は3.5%であった。
【0054】
実施例3
実施例1において、表−1の化合物(1)を単独に用いる代わりに、化合物(1)を1.5gと化合物(3)を0.5gの混合物を用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルターを作製した。
【0055】
このフィルターについて、同様に透過率を測定したところ、Tv=62.5%、800〜1000nmの平均光線透過率は8.0%であった。
【0056】
該フィルターをプラズマディスプレーの画面に設置して、リモコンを使用する電子機器をディスプレーから3m離して誤動作を確認したところ、フィルターがない場合は誤動作を起こしたが、フィルターを設置した場合は誤動作が起こらなかった。
【0057】
実施例4
三井東圧化学(株)社製「ユーバンSE−60」(登録商標)と、同社製「アルマテクス748−5M」(登録商標)を3:7で混合させた液体(100g)と、実施例3の化合物(1)(2g)、化合物(3)(1g)およびトルエン(48g)を混合させ、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにコーティングし、130℃で15分間乾燥させてフィルターを作製した。
【0058】
このフィルターについて、同様に透過率を測定したところ、Tv=61.2%であり、800〜1000nmの平均光線透過率は9.0%であった。
【0059】
該フィルターを実施例3と同様にプラズマディスプレーの画面に設置して、リモコンを使用する電子機器の誤動作を確認したところ誤動作は起こらなかった。また更に実施例1と同様に耐久性試験を行ったがフィルターの劣化は見られず、試験後も誤動作は起こらなかった。
【0060】
実施例5
実施例4で作製したポリエチレンテレフタレートフィルターの片面にターゲットにインジウムを、スパッタガスにアルゴン・酸素混合ガス(全圧266mPa:酸素分圧80mPa)を用いて、酸化インジウム薄膜を、ターゲットに銀を、スパッタガスにアルゴンガス(全圧266mPa)を用いて銀薄膜を、マグネトロンDCスパッタリング法により、酸化インジウム薄膜40nm、銀薄膜10nm、酸化インジウム薄膜70nm、銀薄膜10nm、酸化インジウム薄膜70nm、銀薄膜10nm、酸化インジウム薄膜70nm、銀薄膜10nm、酸化インジウム薄膜30nmの順に積層し、電磁波カット層を作製した。更に、該フィルター(472mm×350mm)の薄膜形成面に銀ペースト(三井東圧化学(株)製)をスクリーン印刷し、乾燥させて厚さ20ミクロン、幅10mmの金属電極を形成した。
【0061】
更に片面にノングレア層を有する厚さ2mmのPMMA板(三菱レーヨン(株)製アクリルフィルターMR−NG)のノングレア層の形成されていない面と上記フィルターの導電面側とを貼り合わせて、ディスプレー用フィルターを作製した。
【0062】
実施例3と同様に誤動作試験を行ったところ該フィルターを設置した場合誤動作は起こらなかった。
【0063】
実施例6
ポリメチン系化合物に加えて、赤色系色素(三井東圧染料(株)製、PSバイオレットRC)2gを添加して調色した以外は実施例4と全く同様にしてフィルターを作製した。そのフィルム上に実施例5と同様の電磁波カット層および電極をを形成した後、厚さ3ミリの強化ガラス板に貼り付けた。更にその両側に、反射防止フィルム(日本油脂(株)製、「リアルックフィルム」、(商品名))を貼り付けてニュートラル色のプラズマディスプレー用近赤外線吸収フィルターを作製した。実施例3と同様に誤動作試験を行ったところ該フィルターを設置した場合誤動作は起こらなかった。
【0064】
【発明の効果】
本願発明のフィルターは、可視光線透過率が高いためディスプレーの鮮明度を阻害せず、ディスプレーからでる800〜1000nm付近の近赤外線光を効率よくカットするため、周辺電子機器の誤動作を抑制する優れた性能を有する。
Claims (6)
- 基材に一般式(I)で表されるポリメチン系化合物を少なくとも1種含有してなるプラズマディスプレー用近赤外線吸収フィルター。
- 電磁波カット層を設けた請求項1に記載のプラズマディスプレー用近赤外線吸収フィルター。
- 反射防止層を設けた請求項1〜2のいずれかに記載のプラズマディスプレー用近赤外線吸収フィルター。
- ぎらつき防止(ノングレア)層を設けた請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマディスプレー用近赤外線吸収フィルター。
- 可視光線透過率が40%以上で、かつ、800〜900nmの平均透過率が10%以下である請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマディスプレー用近赤外線吸収フィルター。
- 可視光線透過率が40%以上で、かつ、800〜1000nmの平均透過率が10%以下である請求項5に記載のプラズマディスプレー用近赤外線吸収フィルター。
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