JP2010087144A - 鉛含有圧電膜およびその作製方法、鉛含有圧電膜を用いる圧電素子、ならびにこれを用いる液体吐出装置 - Google Patents

鉛含有圧電膜およびその作製方法、鉛含有圧電膜を用いる圧電素子、ならびにこれを用いる液体吐出装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2010087144A
JP2010087144A JP2008253263A JP2008253263A JP2010087144A JP 2010087144 A JP2010087144 A JP 2010087144A JP 2008253263 A JP2008253263 A JP 2008253263A JP 2008253263 A JP2008253263 A JP 2008253263A JP 2010087144 A JP2010087144 A JP 2010087144A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
lead
piezoelectric
film
piezoelectric film
amount
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2008253263A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4452752B2 (ja
Inventor
Takami Shinkawa
高見 新川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Corp
Original Assignee
Fujifilm Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fujifilm Corp filed Critical Fujifilm Corp
Priority to JP2008253263A priority Critical patent/JP4452752B2/ja
Publication of JP2010087144A publication Critical patent/JP2010087144A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4452752B2 publication Critical patent/JP4452752B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Physical Vapour Deposition (AREA)
  • Semiconductor Memories (AREA)
  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)
  • Compositions Of Oxide Ceramics (AREA)

Abstract

【課題】従来に比してヒステリシスの偏り、非対称性が小さく、圧電定数がプラス方向で大きく良好な特性を持ち、正電圧印加(正電界印加状態)でも大きな変位が得られ、正常に駆動させることができ、汎用の駆動ICを用いることができる鉛含有圧電膜、その作製方法、これを用いる圧電素子およびこれを用いる液体吐出装置を提供する。
【解決手段】鉛を含有する圧電膜であり、その膜厚が、3μm以上であり、d31(+)/d31(−)>0.5であり、d31(+)>100pm/Vであり、好ましくは、圧電膜中の鉛量が1.03以下である。なお、d31(+)およびd31(−)は、それぞれ圧電膜に上部および下部電極を形成して上部電極に正電圧および負電圧を印加した時に測定される圧電膜の圧電定数である。
【選択図】図1

Description

本発明は、鉛含有圧電膜、特に、ジルコンチタン酸鉛(PZT)系のペロブスカイト型酸化物を含む鉛含有圧電膜およびその作製方法、鉛含有圧電膜を用いる圧電素子、ならびにこれを備える液体吐出装置に関するものである。
電界印加強度の増減に伴って伸縮する圧電性を有する圧電体と、圧電体に対して電界を印加する電極とを備えた圧電素子が、インクジェット式記録ヘッドに搭載される圧電アクチュエータ等の用途に使用されている。インクジェット式記録ヘッドにおいて、高精細かつ高速な印刷を実現するためには圧電素子の高密度化が必要である。そのため、圧電素子の薄型化が検討されており、それに使用される圧電体の形態としては、加工精度の関係から、薄膜が好ましい。
また、高精細な印刷には、さらにインクとして高粘度なインクを使用する必要がある。高粘度のインクを吐出可能とするためには、圧電素子には、より高い圧電性能が要求される。したがって、膜厚の薄い圧電体膜を備え、且つ圧電性の良好な圧電素子が求められている。
圧電材料としては、PZT等のペロブスカイト型酸化物が広く用いられている。かかる圧電材料は、電界無印加時において自発分極性を有する強誘電体である。
従来、PZT等の圧電体は、バルクの貼り付けやスクリーン印刷法によって作成されていた。しかしながら、バルクの貼り付けでは圧電体の厚みを20μm以下にすることが難しく、また、スクリーン印刷法では、10μm程度までは薄膜化が可能であるが、充分な圧電性能を得るには、1000℃以上のアニールが必要である。このため、圧電素子の基板としてジルコニア基板を用いることにより、1000℃以上で焼成してジルコニア基板上に対称特性を持つ圧電体を作成することが行なわれている。しかしながら、圧電素子において、基板としては加工性の良好なSi基板が好ましいが、Si基板は、800℃以上の加熱によりPZT中のPbと反応してしまうため、800℃以上の焼成が必要な製法ではSi基板を用いることができないという問題がある。
一方、PZT系の圧電体において、被置換イオンの価数よりも高い価数を有する各種ドナーイオンを添加したPZTでは、真性PZTよりも強誘電性能等の特性が向上することが1960年代より知られている。AサイトのPb2+を置換するドナーイオンとして、Bi3+,およびLa3+等の各種ランタノイドのカチオンが知られている。BサイトのZr4+および/またはTi4+を置換するドナーイオンとして、V5+,Nb5+,Ta5+,Sb5+,Mo6+、およびW6+等が知られている。
強誘電体は、古くは、所望組成の構成元素を含む複数種の酸化物粉末を混合し、得られた混合粉末を成型および焼成する、あるいは、所望組成の構成元素を含む複数種の酸化物粉末を有機バインダに分散させたものを基板に塗布し、焼成するなどの方法により製造されていた。かかる方法では、強誘電体は、600℃以上、通常1000℃以上の焼成工程を経て、製造されていた。かかる方法では、高温の熱平衡状態で製造を行うため、本来価数が合わない添加物を高濃度ドープすることはできなかった。
非特許文献1には、PZTバルクセラミックスに対する各種ドナーイオンの添加についての研究が記載されている。図4に、非特許文献1の図14を示す。この図4は、ドナーイオンの添加量と誘電率との関係を示す図である。この図4には、1.0モル%程度(図4では0.5wt%程度に相当)で最も特性が良くなり、それ以上添加すると特性が低下することが示されている。これは、価数が合わないが故に固溶しないドナーイオンが粒界等に偏析して、特性を低下させるためであると考えられる。
特許文献1には、非特許文献1よりも高濃度のドナーイオンをドープした強誘電体が開示されている。特許文献1に開示された強誘電体膜は、Aサイトに0モル%超100モル%未満のBiをドープし、Bサイトに5モル%以上40モル%以下のNbまたはTaをドープしたPZT系の強誘電体膜である。この強誘電体膜は、ゾルゲル法によって成膜されている。このゾルゲル法で得られる薄膜の場合は、対称な圧電特性を持つ圧電膜とすることができるが、3μm以上の圧電膜は、ゾルゲル法では作れないという問題がある。さらに、ゾルゲル法は、熱平衡プロセスであるので、ドナーイオンの高濃度ドープにはより焼成温度を高くする必要がある。そこで、特許文献1では、結晶化温度を上げずに焼結を促進するために焼結助剤としてSiを添加することが必須となっている(段落[0108]等参照)。
さらに、特許文献2には、圧電特性の電界強度依存性を小さくし、かつ低電界強度における圧電特性を向上させることができる圧電体(圧電体薄膜)として、1/3≦ΔEc(=||Ec+|−|Ec−||/(|Ec+|+|Ec−|)<1(Ec+:圧電材料の正方の抗電界の値、Ec−:負側の抗電界の値))の関係を満たす圧電体が開示されている。
特許文献2に開示の圧電体では、抗電界の偏りΔEcを1/3≦ΔEc<1に制御して、圧電定数などの圧電特性を制御することができるとされている。
特開2006−96647号公報 特開2005−123421号公報 S.Takahashi Ferroelectrics Vol.41 143.(1982)
特許文献1に記載の強誘電体では、結晶化温度を上げずに焼結を促進して熱平衡状態を得るために、焼結助剤としてSi,Geを添加することが必須となっている。特許文献1では、実施例において焼結助剤を添加した系であっても、800℃以上ではないものの750℃程度の加熱を必要としており、そのため基板としては、Pt基板を使用している。したがって、Si基板を用いる場合には、焼結助剤を添加する必要があると考えられる。かかる焼結助剤を添加すると、強誘電特性が低下するため、ドナーイオン添加の効果を充分に引き出すことができないという問題があった。
ところで、PZT系の強誘電体膜においては、PZTのPbが昇華しやすいために、膜表面においてPb欠損を生じやすい。Pbが欠損すると、異相であるパイロクロア相の方が安定になるため、強誘電体性能が低下する傾向にある。このため、Pb欠損は、少ない方が好ましいとされている。
しかし、一方で、過剰なPbを存在させると、J.Am.Ceram.Soc 76[2] (1993)454-458および459-464などに記載されているように、酸化鉛などの不純物相として粒界に析出し、絶縁耐性や駆動耐久性を低下させるため、過剰な鉛の存在がペロブスカイト化合物に対して悪影響であることも、また、周知の事実である。
しかし、スパッタ法においては、PHYSICAL REVIEW B 66, (2002) 064102-1-8や、Integrated Ferroelectrics (2001) Vol.36, p.53-62 において記載されているように、不純物相を含まない状態で、鉛が過剰なペロブスカイト薄膜を作製することができることが知られている。その原因は必ずしも明らかではないが、プラズマのような非平衡な状態の中では、通常ではイオンにならないようなArもArとして存在していることからも想像されるように、Pb4+のような不安定な価数(とはいえ、PbOやPbのように取り得るような準安定価数)も取ることができ、大きさがPb2+よりも小さいゆえに、Bサイトにも入り、鉛過剰の膜として作製できるためと考えられる。
本発明者らは、鋭意検討の結果、このような鉛過剰な条件にすると、600℃以下という低温でも安定にペロブスカイト単相膜を作製できることを見出し、不純物相が全くない膜の作製が可能となったが、その一方で、鉛過剰な膜では、抗電界が正の方向に寄ってしまうという問題がある。このような膜を用いた圧電素子では、マイナス電圧印加時には、すなわち負電界印加状態では正常に動作するが、プラス電圧印加時には、すなわち正電界印加状態では正常に動作しないという問題がある。
圧電素子に負電界を印加するには、上部電極の駆動ドライバICを負電圧用にする必要があるが、負電圧用の駆動ドライバICは、汎用されておらず、ICの開発コストがかかってしまうという問題がある。下部電極をパターニングしてアドレス電極とし、上部電極をグランド電極とすれば、汎用の正電圧用の駆動ドライバICを用いることができるが、製造プロセスが複雑になり、好ましくないという問題がある。
また、上述したように、特許文献1には、圧電体の抗電界の偏りを制御することで、その圧電定数を制御できることが記載されている。しかし、この方法で得られている圧電定数は、高々150pm/V程度であり、また、正電圧・負電圧(正電界・負電界)が区別されていないという問題がある。すなわち、実用となる正電圧(正電界)下で相応の特性が確実に得られているかどうかも不明であり、実用となる正電圧(正電界)下で必要な特性を確実に得ることができるとはいえないという問題あった。
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、不純物相が全くないペロブスカイト単相膜などからなる従来の圧電膜のヒステリシス、したがって、抗電界のプラス(正電界)側への偏りをマイナス(負電界)方向に寄せることができ、従来に比してヒステリシスの偏り、すなわち非対称性が小さく、すなわちプラス方向とマイナス方向の特性の偏りが小さく、より対称性に近付けることができ、さらには抗電界をよりマイナス側に引き寄せることができ、その結果、圧電定数がプラス方向で大きく良好な特性を持ち、すなわち正電圧(正電界)印加時にも高い圧電定数を持ち、したがって、正電圧印加(正電界印加状態)でも大きな変位が得られ、正常に駆動させることができ、その結果、汎用の駆動ICを用いることができる鉛含有圧電膜、およびこのような鉛含有圧電膜を安定的に得ることができる鉛含有圧電膜の作製方法、このような鉛含有圧電膜を用いる圧電素子、ならびにこのような圧電素子を用いる液体吐出装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記目的に加え、さらに、加工が容易な基板、例えばシリコン基板上に薄膜として成膜することができ、正電圧(正電界)印加時にも、高い圧電定数を持ち、大きな変位が得られる高い圧電特性を持ち、ペロブスカイト単相の薄膜からなる鉛含有圧電膜およびその作製方法、鉛含有圧電膜を用いる圧電素子、ならびにこれを用いる液体吐出装置を提供することにある。
上記課題を解決し、上記目的を達成するために、本発明者らは、上記特許文献1および2ならびに非特許文献1を始めとして多くの従来技術を検討し、このような高い圧電特性を持つ薄膜である鉛含有圧電膜について、鋭意研究を重ねた結果、600℃以下という低温でも安定にペロブスカイト単相膜を作製できる鉛過剰な条件を制御し、圧電膜に含有される過剰な鉛量を制御することにより、具体的には、このような鉛過剰な条件として、例えば成膜初期の膜厚10nm以上において鉛過剰な条件で成膜を行うことにより、下地の影響を得ながら成膜を行えるため、その後の条件を変化させて、圧電膜に含有される過剰な鉛量を制御することにより、ペロブスカイト単相の膜が安定的にできること、および、このようにして鉛量を制御した圧電膜においては、強誘電特性は低下するために圧電性が低いと考えられたが、驚くべきことに圧電性は低下せず、なおかつ正方向に特性が良い圧電膜が得られることを知見し、本発明に至ったものである。
特に、本発明者らは、このようにして作製した圧電薄膜のうち、鉛量が1.03以下の圧電膜は、ヒステリシスの対称性、すなわちプラス方向とマイナス方向の特性の対称性が高く、あるいは、ヒステリシスの抗電界をよりマイナス側に引き寄せることができ、プラス方向の圧電定数が大きく、特に、鉛量0.98のものは、プラス方向の圧電定数の方が非常に大きい圧電膜が得られ、こうして得られた圧電膜は、シリコン基板上の高特性薄膜として従来になく優良であることを知見し、さらに、PZTからなる圧電体において、Nbがドープ(添加)されていない真性PZTならば圧電特性が対称で、かつ圧電定数d31(+)が150pm/V未満の圧電体を得ることができているが、本来特性の非対称性が強い、Nbが添加されているPZTであっても、上述のようにして作製したPZT膜であれば、圧電特性が対称もしくはプラス側で良好で、かつ、圧電定数d31(+)が100pm/V以上はもちろん、150pm/V、さらには、200pm/Vを超えるような高特性圧電膜を得ることができることを知見し知見し、本発明に至ったものである。
すなわち、本発明の第1の態様は、鉛を含有する圧電膜であって、その膜厚が、3μm以上であり、d31(+)/d31(−)>0.5であり、d31(+)>100pm/Vである(ここで、d31(+)およびd31(−)は、それぞれ前記圧電膜に上部電極および下部電極を形成して前記上部電極に正電圧および負電圧を印加した時に測定される前記圧電膜の圧電定数である。)ことを特徴とする鉛含有圧電膜を提供するものである。
なお、本態様の鉛含有圧電膜は、多数の柱状結晶からなる膜構造を有するものであるのが好ましく、前記下部電極は、前記圧電膜の前記柱状結晶の結晶方向に対して下方の表面に形成され、前記上部電極は、前記下部電極と反対側の表面に形成されたものであるのが好ましい。
ここで、前記圧電膜は、シリコンもしくは酸化シリコンの基板上に成膜されたことが好ましい。
また、前記圧電膜は、そのd31(+)>150pm/Vであることが好ましく、より好ましくは、190pm/V以上、さらに好ましくは、200pm/V以上であるのが良い。
また、前記圧電膜は、(100)および/または(001)配向を主成分とするペロブスカイト型結晶構造を有する鉛含有ペロブスカイト薄膜からなり、前記圧電膜に含有される鉛量が1.03以下であることが好ましい。本発明においては、前記圧電膜に含有される鉛量とは、前記圧電膜に含有されるカチオンのうちの鉛以外のカチオンに対する鉛のモル比を表す。
また、前記圧電膜は、前記(100)および/または(001)配向が90%以上であることが好ましい。
また、前記圧電膜の膜厚は、20μm以下であることが好ましい。
また、前記鉛含有薄膜が、Pb、Zr、TiおよびOを含むことが好ましく、より好ましは全て含むことが良い。
また、前記鉛含有薄膜が、化学式Pb(Zr1−y,Ti1−zNbδで記載される薄膜であり(化学式中、PbはAサイトの元素であり、Zr、TiおよびNbはBサイトの元素であり、xは、前記圧電膜に含有される鉛量であり、前記圧電膜に含有されるカチオンのうちの鉛以外のカチオンに対する鉛のモル比を表す。)、x≦1.03、0≦y≦1、0≦z≦0.25(ここで、δ=3である場合が標準であるが、ペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準値からずれてもよい。)であることが好ましい。
また、前記化学式において、0.4≦y≦0.6、0.1≦z≦0.2であることがより好ましい。
また、上記目的を達成するために、本発明の第2の態様は、上記第1の態様の鉛含有圧電膜を作製するに際し、成膜時の鉛量を制御することを特徴とする鉛含有圧電膜の作製方法を提供するものである。
ここで、前記鉛含有圧電膜の成膜方法が、スパッタ法であることが好ましい。
また、前記鉛量は、成膜時に成膜温度を制御することによって制御されることが好ましい。
また、前記鉛量は、成膜時に成膜基板のプラズマエネルギを制御することによって制御されることが好ましい。
また、前記鉛量は、成膜時の酸素分圧を制御することによって制御されることが好ましい。
また、前記鉛量は、成膜時の投入パワーを制御することによって制御されることが好ましい。
また、前記鉛量は、成膜時に成膜圧力を制御することによって制御されることが好ましい。
また、上記目的を達成するために、本発明の第3の態様は、上記第1の態様の鉛含有圧電膜からなる圧電体と、この圧電体に電圧を印加するために、前記圧電体の両面に形成された下部電極および上部電極を備えることを特徴とする圧電素子を提供するものである。
また、上記目的を達成するために、本発明の第4の態様は、上記第3の態様の圧電素子と、液体が貯留される液体貯留室と、前記圧電素子に電圧を印加することにより、前記液体貯留室から外部に前記液体を吐出させる液体吐出口とを有することを特徴とする液体吐出装置を提供するものである。
本発明の第1の態様によれば、基板上に薄膜、例えば3μm以上の高い圧電特性を持つ薄膜として成膜することができ、圧電定数の比d31(+)/d31(−)が0.5より大きく、プラス(正)電圧印加時、すなわち、正電界印加時の圧電定数d31(+)が100pm/V以上であることにより、正電圧印加においても、大きな変位を得ることができ、正電圧印加(正電界印加状態)でも、高い圧電定数を持つ圧電膜を得ることができ、正電圧印加でも正常に駆動させることができ、その結果、汎用の駆動ICを用いることができ、コスト低減につなげることができる。
また、本発明の第2の態様によれば、成膜時の鉛量を制御することにより、このような鉛含有圧電膜を安定して確実に作製することができる。
また、本発明の第3の態様によれば、高い圧電特性を持ち、より変位が大きく、正電圧駆動が可能な圧電素子を提供することができる。
また、本発明の第4の態様によれば、このような特徴を持つ圧電素子を備える液体吐出装置を提供することができる。
また、本発明の好ましい実施態様によれば、上記効果に加え、さらに、基板上、特に加工性の良い基板、例えば、シリコン基板上に成膜することができ、鉛量が1.03以下であり、圧電定数d31(+)が150pm/Vより大であり、プラス(正電界)方向とマイナス(負電界)方向の特性が対称、もしくはプラス側での特性が良好であり、正電圧(正電界)印加時にも、高い圧電定数を持ち、大きな変位が得られる高い圧電特性を持ち、ペロブスカイト単相の薄膜からなる鉛含有圧電膜を得ることができる。
以下に、本発明に係る鉛含有圧電膜およびその作製方法、鉛含有圧電膜を用いる圧電素子、ならびにこれを用いる液体吐出装置について、添付の図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の第1の態様の鉛含有圧電膜は、鉛を主成分として含有する圧電膜であって、その膜厚が、3μm以上であり、d31(+)/d31(−)>0.5であり、d31(+)>100pm/Vであることを特徴とするものである。
本発明では、3.0μm以上の膜厚を有する鉛含有圧電膜、特に好ましくは、後述する化学式(2)で表される鉛含有ペロブスカイト型酸化物を含む圧電膜(強誘電体膜)を提供することができる。特許文献1に記載のゾルゲル法では、膜厚を厚くすると、クラックが入るため、1μm以下の薄膜しか成膜することができない。圧電素子の用途では、かかる膜厚の圧電膜では充分な変位が得られないことから、圧電膜の膜厚は3.0μm以上であることが好ましい。
すなわち、本発明の鉛含有圧電膜において、3μm以上の膜厚を実現することができるのは、従来の圧電膜のように、応力で膜の分極を制御せず、大きな応力を発生させていないからである。なお、本態様の鉛含有圧電膜において、膜厚の上限は、成膜時間をかければ良いので、特に制限的ではないが、例えば、20μm程度とすれば良い。
また、本発明においては、d31(+)/d31(−)>0.5であり、かつ、d31(+)>100pm/Vである。
ここで、d31(+)およびd31(−)は、それぞれ圧電膜に上部電極および下部電極を形成して上部電極に正電圧および負電圧を印加した時に測定される圧電膜の圧電定数である。なお、本態様の鉛含有圧電膜は、多数の柱状結晶からなる膜構造を有するものであるのが好ましく、下部電極は、圧電膜の柱状結晶の結晶方向に対して下方の表面に形成され、上部電極は、下部電極と反対側の表面に形成されたものであるのが好ましい。(圧電定数d31(+)およびd31(−)の測定方法については、例えば、特開2001−21052号公報に開示の測定方法などの従来公知の測定方法を適用すれば良い。)
本発明において、正電圧/負電圧(正電界/負電界)印加時の圧電定数の比d31(+)/d31(−)を0.5超に限定するのは、ヒステリシス特性の対称性を高くし、抗電界の正電界側への偏りを無くして、あるいはさらに、抗電界を負電界側に引き寄せて、正電圧(正電界)印加時の圧電定数d31(+)を大きな値として、正電圧(正電界)印加状態で、圧電膜の大きな変位を得るためである。なお、この比が0.5以下では、結果的に、正電圧(正電界)印加時の圧電定数d31(+)を十分に大きな値とすることができないからである。
ところで、本発明の鉛含有圧電膜は、600℃以下という低温でも安定に作製でき、不純物相が全くないペロブスカイト単相膜からなるNbドープPZTなどの鉛含有圧電膜であるが、本来、ヒステリシス特性の非対称性が強く、抗電界が正電界側に偏っているものである。しかしながら、本発明においては、後述するように、成膜時の鉛量を制御することにより、圧電膜のヒステリシス特性の対称性を高くし、抗電界の正電界側への偏りを無くして、あるいはさらに、抗電界を負電界側に引き寄せて、正電圧(正電界)印加時の圧電定数d31(+)を大きな値にすることを実現している。
したがって、圧電定数の比の値d31(+)/d31(−)は、0.5超である必要がある。
また、本発明において、正電圧(正電界)印加時の圧電定数d31(+)を100pm/V超に限定するのは、正電圧印加時(正電界印加状態)でも、圧電膜を大きく変位させることができ、正常に圧電膜を動作させることができ、汎用の正電圧用の駆動ドライバICを用いることができ、圧電素子やインクジェットヘッドなどの液体吐出装置の製造コストを低減することができるからである。なお、圧電定数d31(+)が100pm/V以下では、結果的に、圧電膜を大きく変位させることができず、正常に圧電膜を動作させることができないからである。
したがって、圧電定数d31(+)は、100pm/V超である必要があるが、150pm/V以上であるのが好ましく、200pm/V以上であるのがより好ましい。
以下に、本発明の鉛含有圧電膜のヒステリシス特性および本発明における圧電定数d31(+)およびd31(−)の限定理由についてより詳細に説明する。
ところで、本発明者らは、上述したように、PZTのBサイトにのみドナーイオンを添加したPZT膜では、バイポーラ分極一電界曲線(PE曲線)が正電界側に偏った非対称ヒステリシスを示すのに対して、成膜時、特に成膜初期の鉛量を制御して、鉛量xを、x≦1.03とした本発明の鉛含有ペロブスカイト型酸化物を含む強誘電体膜である鉛含有圧電膜では、PE曲線のヒステリシスの非対称性が緩和されて、対称ヒステリシスになること、および、さらに負電界側に引き寄せられたヒステリシスに近くなることを見出している。PEヒステリシスが非対称であることは、負電界側の抗電界Ecの絶対値と正電界側の抗電界Ecとが異なること(|Ec|≠Ec)により定義される。
通常、圧電体膜は、下部電極と圧電体膜と上部電極とが順次積み重ねられた圧電素子の形態で使用され、下部電極と上部電極とのうち、一方の電極を印加電圧がOVに固定されるグランド電極とし、他方の電極を印加電圧が変動されるアドレス電極として、駆動される。駆動しやすいことから、通常は下部電極をグランド電極とし、上部電極をアドレス電極として、駆動が行われる。「圧電体膜に負電界が印加されている状態」とは、アドレス電極に負電圧を印加した状態を意味する。同様に、「圧電体膜に正電界が印加されている状態」とは、アドレス電極に正電圧を印加した状態を意味する。
正電界側に偏った非対称PEヒステリシスを有する圧電体膜では、正電界を印加した場合は抗電界Ecが大きいため分極されにくく、負電界を印加した場合は抗電界Ecの絶対値が小さいため分極されやすい。
負電界を印加するには、上部電極の駆動ドライバICを負電圧用にする必要があるが、負電圧用は汎用されておらず、駆動ドライバICの開発コストがかかってしまう。下部電極をパターニングしてアドレス電極とし上部電極をグランド電極とすれば、汎用の正電圧用の駆動ドライバICを用いることができるが、製造プロセスが複雑になり、好ましくない。
また、かかる圧電体膜に逆分極処理を施すことにより、正電界印加により強誘電性などの圧電性を出やすくさせることができるが、逆分極処理を施すと圧電性が低下することが知られており、できるだけ逆分極処理を施さずに駆動できることが好ましい。
本発明の鉛含有圧電膜では、上記したように、PE曲線が対称ヒステリシスに近くなるため、または、さらに負電界側に引き寄せられたヒステリシスになるため、駆動の観点から好ましい圧電膜である。
強誘電性能のひとつである圧電特性は、通常、圧電定数d31で評価することができるが、PEヒステリシスが非対称で正電界側に偏っていると、正電界印加時に分極されにくいため、正電界印加時の圧電定数d31(+)が、負電界印加時の圧電定数d31(−)より小さくなる傾向があり、正電界印加では圧電特性が出にくく、負電界印加で圧電特性が出やすい。
例えば、本出願人は、後述する本発明の比較例から明らかなように、BサイトにNbなどのドナーイオンを添加したPZT膜、すなわちNbドープPZT膜では、PEヒステリシスが正電界側に偏っているため、負電界駆動により得られるd31(−)であるが、250pm/Vを達成している。しかしながら、正電界駆動により得られるd31(+)は100pm/Vを下回る値である(後述する比較例1参照)。
ところで、インクジェット式記録ヘッド等に用いる圧電素子の用途では、高精度にインクを吐出するためには、d31の値は、100pm/Vを上回る値であることが好ましいとされている。したがって、正電界駆動のためには、PEヒステリシスの非対称性を改善して、d31(+)において100pm/Vを上回る値を達成することが好ましい。BサイトにNbをドープしたPZT膜において得られる圧電定数の値を考慮すると、d31(+)/d31(−)>0.5であれば、d31(+)の値が100pm/Vを超える値とすることができる。必要とされる圧電特性は用途に応じて異なるが、逆分極処理を施さずに正電界駆動を行うためには、駆動効率の観点からも、d31(+)/d31(−)>0.5であることが好ましい。
以上から、本発明の鉛含有圧電膜においては、圧電定数の比d31(+)/d31(−)の値を0.5超に限定し、正電界駆動のための正電圧印加時の圧電定数d31(+)の値を100pm/V超に限定しているのである。
なお、本実施形態においては、鉛含有圧電膜は、シリコンもしくは酸化シリコンの基板上に成膜された物であるのが好ましい。その理由は、シリコンもしくは酸化シリコンの基板は、加工性が良いためであり、本発明では、特許文献1に開示の圧電膜のように、750℃以上、あるいは800℃以上の高温で焼成して圧電膜を作製する必要がないため、シリコンもしくは酸化シリコンの基板が使用できるためである。
また、本実施形態においては、鉛含有圧電膜は、(100)および/または(001)配向を主成分とするペロブスカイト型結晶構造を有する鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜(鉛含有ペロブスカイト薄膜)からなるのが好ましく、より好ましくは、(100)および/または(001)配向が90%以上であるのが良い。さらに、この鉛含有圧電膜は、圧電膜に含有される鉛量が1.03以下であるのが好ましく、X線回析のθ/2θ測定において実質的に不純物相を含まないものであるのが好ましい。
また、本実施形態の鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜は、その結晶配向性において、(100)および/または(001)配向を主成分とするものであるが、本発明において、「配向を主成分とする」とは、Lotgerling法により測定される配向率Fが、80%以上であることと定義する。
配向率Fは、下記式(i)で表される。
F=(P−P)/(1−P)×100・・・(1)
上記式(1)中のPは、配向率Fを調べる鉛含有ペロブスカイト薄膜(以下、単に「鉛含有薄膜」ともいう)における配向面からの反射強度の合計と、鉛含有薄膜の全反射強度の合計との比である。
例えば、鉛含有薄膜における(100)配向の配向率Fを求める場合のPは、鉛含有薄膜における(100)面からの反射強度I(100)の合計ΣI(100)と、鉛含有薄膜における各結晶面(hkl)からの反射強度I(hkl)の合計ΣI(hkl)と、の比、すなわち、{ΣI(100)/ΣI(hkl)}である。
さらに具体的には、(100)、(110)および(111)配向の3つが混ざっている場合は、ペロブスカイト結晶構造を有する鉛含有薄膜の(100)配向の配向率Fを求める場合のPは、I(100)/[I(100)+I(101)+I(110)+I(111)]である。
なお、PZT圧電体の場合は、正方晶と菱面体とが存在するが、ここで、(100)という場合、(100)面および(001)面のいずれの配向面も指すものとする。また、(110)面および(101)面の場合も同様である。
他方、Pは、鉛含有薄膜が完全にランダムな配向を有している場合のPの値である。すなわち、鉛含有薄膜が完全にランダムな配向をしている場合、P=Pであり、鉛含有薄膜の配向率Fは、0%ととなる。逆に、鉛含有薄膜が完全に配向を有している場合は、P=1であり、鉛含有薄膜の配向率Fは、100%ととなる。
このような本発明の鉛含有圧電膜は、上述の優れた圧電特性を持つ鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜であり、下記化学式(2)で表されるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)の薄膜であるのが好ましい。
Pb(Zr1−y,Ti1−zNbδ・・・(2)
ここで、化学式(2)中、Pbは、Aサイトの元素であり、Zr、TiおよびNbは、Bサイトの元素である。また、x、yおよびzは、x≦1.03、0≦y≦1、0≦z≦0.25であるのが好ましく、0.4≦y≦0.6、0.1≦z≦0.2であるのが良い。なお、δは、ここでは、δ=3である場合が標準であるが、ペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準値からずれてもよい。
ここで、図1に、本発明の鉛含有圧電膜を含む鉛含有圧電膜におけるヒステリシスの偏りと、鉛含有圧電膜の鉛量(モル比)とを示す。すなわち、鉛量とは、鉛含有圧電膜自身が含有するカチオンのうちの鉛以外のカチオンに対する鉛の割合(モル比)を示す。すなわち、上記化学式(2)において、鉛量は、xで表され、x=Pb/(Zr+Ti+Nb)で表すものである。
したがって、本発明においては、本発明の鉛含有圧電膜の鉛含有量(x)は、1.03以下であるのが好ましい。ここで、xの下限値は、後述する実施例では、0.97であるが、本発明はこれに限定されるわけではなく、ペロブスカイト単相のPZTの薄膜が形成できる範囲であればいくらでも良い。
なお、ヒステリシスの偏り(D%)とは、鉛含有圧電膜のヒステリシス特性における正方向の抗電界の値をEc、負方向の抗電界の値をEcとした際の(Ec+Ec)/(Ec−Ec)に100を掛けた値である。
このため、ヒステリシス特性が対称であれば、ヒステリシスの偏りD=0、すなわち、偏りがなく、正方向の抗電界の値Ecが0であれば、ヒステリシスの偏りD=−100%、すなわち、負方向に偏り、一方、負方向の抗電界の値Ecが0であれば、ヒステリシスの偏りD=+100%、すなわち正方向に偏ることになる。したがって、本発明の鉛含有圧電膜では、そのヒステリシス特性においては、正方向の抗電界の値Ecは0超となり、正であるのが良く、負方向の抗電界の値Ecは0未満となり、負であるのが良いが、正方向の抗電界の値Ecは、0以下、0または負であっても良い。
ここで、本発明においては、ヒステリシス特性が対称でありヒステリシスの偏りDが0である場合から負方向に偏っているのが好ましい。したがって、本発明においては、図1から明らかなように、NbドープPZTなどの鉛含有圧電膜の鉛含有量xは、1.03以下であるのが好ましい。なお、鉛含有圧電膜の鉛含有量xの下限値は、上述したように、特に制限的ではないが、あまり小さいと、Pb抜けが生じ、Pb欠損によるペロブスカイト単相ではなくなり、異相であるパイクロア相が混在したり、さらに少なくなるとパイクロア相となってしまうので、ペロブスカイト単相のPZTの薄膜が形成できる範囲であればいくらでも良い。以上から、本発明においては、鉛含有圧電膜の鉛含有量xは、ペロブスカイト単相のPZTの薄膜が形成できる範囲の下限値≦x≦1.03であるのが好ましい。
本発明では、主に圧電特性の良好なペロブスカイト型酸化物を対象としていることか上記したように、正電界印加時においても良好な圧電特性を有するようにPEヒステリシスは正電界側に偏っていないことが好ましい。正電界印加による駆動を考慮すれば、本発明においては、PEヒステリシスが負電界側に偏った非対称ヒステリシスとなっても良い。
本発明において、圧電特性を低下させずに、PEヒステリシスの対称性の良好とし、さらに負電界側に引き寄せるには、AサイトのPbの含有量xを、x≦1.03とすると共に、化学式(2)中のBサイトのTiとZrの組成を示すyの値を、0≦y≦1とし、また、BサイトのTiおよびZrの合計とNbとの組成を示すZの値を、0≦z≦0.25とするのが良い。
ここで、yの値を、正方晶相と菱面体相との相転移点であるモルフォトロピック相境界(MPB)組成の近傍となる値とすれば、より高い強誘電性能が得られるので、より好ましい。すなわち、yの値は、0≦y≦1であることが好ましく、0.4≦y≦0.6であることがより好ましく、0.47≦y≦0.57であることがさらに好ましい。また、zの値は、0≦z≦0.25であるのが好ましく、0.1≦z≦0.2であるのがより好ましい。
特許文献1に記載のゾルゲル法ではPb欠損が起こりやすく、Pb欠損が起こると強誘電体性能が低下する傾向にあるが、本発明においては、成膜時の鉛量を制御してRFスパッタリングなどのスパッタ法によって鉛含有圧電膜を作製しているので、鉛量xが、x≦1.03であっても、ペロブスカイト単相の膜を得ることができ、Pbの欠損のない、または少ない、あるいは、Pbが少しリッチな組成のペロブスカイト型酸化物からなる鉛含有圧電膜を提供することができる。特に、初期の10nm以上において鉛過剰な条件で成膜を行うと、下地の影響を得ながら成膜を行えるため、その後の条件を変化させても、ペロブスカイト単相の圧電膜を安定的に作製できる。
なお、このようにして鉛量を制御した圧電膜、特に、Pbの欠損が多少見られる圧電膜においては、強誘電特性は低下するために圧電性が低いと考えられたが、本実施形態の鉛含有圧電膜は、成膜時の鉛量を制御して作製されているにもかかわらず、驚くべきことに強誘電性などの圧電特性は低下せず、なおかつ正方向にヒステリシス特性が良い圧電膜が得られている。このように、本発明においては、圧電特性に支障のない限り、Pbの欠損があっても良い。
本発明では、多数の柱状結晶からなる膜構造を有する強誘電性を持つ圧電膜を提供することができる。特許文献1に記載のゾルゲル法では、かかる柱状結晶膜構造を得ることはできない。基板面に対して非平行に延びる多数の柱状結晶からなる膜構造では、結晶方位の揃った配向膜が得られる。かかる膜構造では、高い圧電性能が得られ、好ましい。
なお、圧電歪には、
(1)自発分極軸のベクトル成分と電界印加方向とが一致したときに、電界印加強度の増減によって電界印加方向に伸縮する通常の電界誘起圧電歪、
(2)電界印加強度の増減によって分極軸が可逆的に非180。回転することで生じる圧電歪、
(3)電界印加強度の増減によって結晶を相転移させ、相転移による体積変化を利用する圧電歪、
(4)電界印加により相転移する特性を有する材料を用い、自発分極軸方向とは異なる方向に結晶配向性を有する強誘電体相を含む結晶配向構造とすることで、より大きな歪が得られるエンジニアードドメイン効果を利用する圧電歪(エンジニアードドメイン効果を利用する場合には、相転移が起こる条件で駆動してもよいし、相転移が起こらない範囲で駆動してもよい)などが挙げられる。
上記の圧電歪(1)〜(4)を単独でまたは組み合わせて利用することで、所望の圧電歪を得ることができる。また、上記の圧電歪(1)〜(4)は、いずれも、それぞれの歪発生の原理に応じた結晶配向構造とすることで、より大きな圧電歪を得ることができる。したがって、高い圧電を得るには、強誘電体膜は結晶配向性を有することが好ましい。例えば、MPB組成のPZT系強誘電体膜であれば、(100)配向の柱状結晶膜を得ることができる。
柱状結晶の成長方向は基板面に対して非平行であればよく、略垂直方向でも斜め方向でも良い。
また、圧電膜をなす多数の柱状結晶の平均柱径は、特に制限なく、30nm以上1μm以下が好ましい。柱状結晶の平均柱径が過小では、強誘電体として充分な結晶成長が起こらない、所望の強誘電性能(圧電性能)が得られないなどの恐れがある。柱状結晶の平均柱径が過大では、パターニング後の形状精度が低下するなどの恐れがある。
次に、本発明の鉛含有圧電膜を作製する本発明の鉛含有圧電膜の作製方法について説明する。
本発明の鉛含有圧電膜の作製方法については、鉛含有圧電膜の成膜時に含有する鉛量を制御でき、上述した本発明の鉛含有圧電膜を作製することができれば特に限定はないが、非熱平衡プロセスにより成膜するのが好ましく、本発明の好適な成膜方法としては、スパッタ法、プラズマCVD法、焼成急冷クエンチ法、アニールクエンチ法、および溶射急冷法等が挙げられる。本発明の成膜方法としては、RFスパッタ法が特に好ましい。
ここで、本発明の鉛含有圧電膜の作製方法おいて、成膜時に鉛含有圧電膜が含有する鉛量するために、成膜初期には、鉛量が過剰、例えば、鉛量が1.07以上となる初期成膜条件で成膜し、その後、初期成膜条件より鉛量が少ない、例えば、鉛含有圧電膜全体としての鉛量が1.03以下となる基本成膜条件で成膜するのが好ましい。なお、基本成膜条件として、鉛量の下限は、特に制限的ではないが、ペロブスカイト単相のPZTの薄膜が形成できる範囲の下限値とするのが好ましい。その理由は、パイロクロア相が混ざらない基本成膜条件の選択幅が広くなるからである。
本発明において、非熱平衡プロセスにより成膜するのが好ましいのは、ゾルゲル法等の熱平衡プロセスでは、本来価数が合わない添加物を高濃度ドープすることが難しく、焼結助剤あるいはアクセプタイオンを用いるなどの工夫が必要であるが、非熱平衡プロセスではかかる工夫なしに、Nbなどのドナーイオンを高濃度ドープすることができるからである。
また、非熱平衡プロセスでは、SiとPbとが反応する温度以下の比較的低い成膜温度にて成膜することができるため、加工性の良好なシリコン(Si)基板上への本発明の鉛含有圧電膜の成膜が可能となるからである。
なお、スパッタ法、特に、RFスパッタ法において、成膜される膜の特性を左右するファクタとしては、成膜温度、成膜中の基板の表面のプラズマエネルギ、雰囲気ガス中の酸素分圧(酸素量)、成膜中のRF投入電力、成膜圧力、基板の種類、基板に先に成膜された膜があれば下地の組成、基板一ターゲット間距離、プラズマ中の電子温度および電子密度、プラズマ中の活性種密度および活性種の寿命等が考えられる。
これらのファクタの中で、成膜される鉛含有圧電膜の膜質(膜特性)、特に、鉛量を制御するための大きなファクタとしては、成膜温度、基板のプラズマエネルギ、酸素分圧、RF投入電力および成膜圧力を挙げることができる。
したがって、本発明の鉛含有圧電膜中の鉛量を制御する方法としては、特に限定はないが、例えば、上述した成膜初期には、鉛量が過剰となる初期成膜条件で成膜し、その後、基本成膜条件で成膜する方法などの成膜方法に応じて、成膜温度、基板のプラズマエネルギ、酸素分圧、およびRF投入電力などの投入パワーのうちのいずれか、または、これらを組み合わせて制御するのが好ましい。
なお、鉛量の制御は、適用されるスパッタ法などの成膜方法が実施される装置等に応じて、成膜温度、基板のプラズマエネルギ、酸素分圧、およびRF投入電力などの投入パワーなどの成膜条件、例えば、上述した初期成膜条件および基本成膜条件を予め適切に設定しておき、種々の成膜条件(初期成膜条件および基本成膜条件の種々の組み合せ)について、各成膜条件(各組合せ)と鉛量との関係を予め求めておき、圧電膜を成膜する際の成膜条件(初期成膜条件および基本成膜条件)を制御するようにして所望の鉛量を得るようにすれば良い。
また、本発明の鉛含有圧電膜の作製方法においては、成膜速度は限定的ではなく、どのような速度で成膜しても良いが、スループットの観点から、鉛含有圧電膜を、1μm/h以上で形成することが好ましい。
次に、このようにして作製された本発明の鉛含有圧電膜を用いる本発明の圧電素子およびこれを備えた本発明の液体吐出装置について説明する。以下では、液体吐出装置の代表例として、インクジェットヘッドを用いて説明するが、本発明はこれに限定されないのは言うまでもない。
図2は、本発明の圧電素子の一実施形態を用いたインクジェットヘッドの一実施形態の要部断面図(圧電素子の厚み方向の断面図)である。なお、視認しやすくするために、構成要素の縮尺は、実際のものとは適宜異ならせてある。
図2に示すように、本発明のインクジェットヘッド50は、本発明の圧電素子52と、インク貯留吐出部材54と、圧電素子52とインク貯留吐出部材54との間に設けられる振動板56と、ノズル(液体吐出口)70とを有する。
まず、本発明の圧電素子について説明する。
同図に示すように、圧電素子52は、基板58と、基板58上に順次積層された下部電極60、圧電体62および上部電極64とからなる素子であり、本発明のペロブスカイト型酸化膜である鉛含有圧電膜からなる圧電体62に対して、下部電極60と上部電極64とにより厚み方向に電界が印加されるようになっている。
基板58としては、特に制限的ではなく、シリコン、ガラス、ステンレス(SUS)、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)、アルミナ、サファイヤ、シリコンカーバイド等の基板を挙げることができる。なお、基板58として、シリコン基板の表面にSiO酸化膜が形成されたSOI基板等の積層基板を用いてもよい。
また、下部電極60は、基板58の略全面に形成されており、この上に図中手前側から奥側に延びるライン状の凸部62aがストライプ状に配列したパターンの圧電膜62が形成され、各凸部62aの上に上部電極64が形成されている。
圧電体62のパターンは、図示するものに限定されず、適宜設計される。なお、圧電体62は、連続膜でも構わないが、圧電体62を、連続膜ではなく、互いに分離した複数の凸部62aからなるパターンで形成することで、個々の凸部62aの伸縮がスムーズに起こるので、より大きな変位量が得られ、好ましい。
下部電極60の主成分としては、特に制限的ではなく、Au,Pt,Ir,IrO,RuO,LaNiO,およびSrRuO等の金属または金属酸化物、およびこれらの組合せが挙げられる。
上部電極64の主成分としては、特に制限的ではなく、下部電極60で例示した材料、Al,Ta,Cr,およびCu等の一般的に半導体プロセスで用いられている電極材料、およびこれらの組合せが挙げられる。
圧電体62は、上述の本発明の酸化物膜であり、下部電極60界面付近の鉛量が、圧電体62全体の鉛量に対して等しいか多いものである。
下部電極60と上部電極64の厚みは、例えば200nm程度である。圧電体62の膜厚は特に制限なく、通常1μm以上であり、例えば1〜5μmである。
図2に示すインクジェットヘッド50は、上記構成を有する圧電素子52の基板58の下面に、振動板56を介して、インクが貯留されるインク室(インク貯留室)68およびインク室68から外部にインクが吐出されるインク吐出口(ノズル)70を有するインク貯留吐出部材54が取り付けられたものである。インク室68は、圧電膜62の凸部62aの数およびパターンに対応して、複数設けられている。すなわち、インクジェットヘッド50は、複数の吐出部を有し、圧電膜62、上部電極64、インク室68およびインクノズル70は、各吐出部毎に設けられている。一方、下部電極60、基板58および振動板56は、複数の吐出部に共通に設けられているが、これに制限されず、個々に、またはいくつかずつまとめて設けられていても良い。
インクジェットヘッド50では、従来公知の駆動方法により、圧電素子52の凸部62aに印加する電界強度を凸部62a毎に増減させてこれを伸縮させ、これによってインク室68からのインクの吐出や吐出量の制御が行われる。
本発明のインクジェットヘッドは、基本的に以上のように構成されている。
以上、本発明の鉛含有圧電膜およびその作製方法、鉛含有圧電膜を用いる圧電素子、ならびにこれを用いる液体吐出装置について種々の実施形態および実施例を挙げて詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例には限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や設計の変更を行ってもよいのは、勿論である。
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、さらに、添付の図を用いて、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されないのは言うまでもない。
(実施例1)
成膜装置として、RFスパッタ装置(アルバック社製強誘電体成膜スパッタ装置MPS型)を用いた。
ターゲット材には、120mmφのPb1.3(Zr0.52Ti0.48)O組成の焼結体を用いた。
基板には、予め、Siウエハ上に、下部電極として、Ti20nm、(111)配向を主成分とするIr150nmを、順に形成した基板を用いた。
ターゲット材と基板との間の距離は、60mmとした。
基板温度を420℃として、RFスパッタ装置の真空容器内に、Ar+O(2.5%)のガスを導入し、真空容器内の圧力を0.5Paで安定させて、真空容器内へRF投入パワーを500W投入し、成膜温度420℃〜480℃で、4μmの厚さになるまで成膜して、PZT膜(チタン酸ジルコン酸鉛)を得た。なお、成膜温度を、最初の100nmについて420℃とし、その後480℃として、成膜中の圧電膜の鉛量を制御した。
(実施例2)
成膜中の成膜温度を最初の100nmについて420℃とし、その後510℃として、成膜中の圧電膜の鉛量を制御した以外は、実施例1と同様にして、PZT膜を得た。
(比較例1)
成膜中の成膜温度を420℃に一定に維持した以外は、実施例1と全く同様にして、PZT膜を得た。
(比較例2)
成膜中の成膜温度を450℃に一定に維持した以外は、実施例1と全く同様にして、PZT膜を得た。
上記のようにして得られた4種のPZT膜の膜厚を、アルバック社製触針式膜厚計デックタック6M)を用いて測定した。いずれのPZT膜も、その膜厚は、4μmであった。
さらに、リガク社製薄膜評価用X線回折装置 ULTIMAを用いて、θ/2θ測定法によって、これらのPZT膜のX線回析を行った。その結果、これらのPZT膜は、全てθ/2θ法によるX線回折により、XRDペロブスカイト単相であることが確認され、実質的に不純物を含まないPZT膜であることがわかった。
また、PANalytical社製蛍光X線装置アクシオスを用いて、蛍光X線(XRF)測定を行い、PZT膜における鉛量を求めた。その結果を、表1に示す。
Figure 2010087144
次いで、下部電極に形成された各PZT膜上にPt上部電極をスパッタリング法にて100nm厚で形成し、4種の圧電素子を得た。
これらの4種の圧電素子を用いて、東陽テクニカ製強誘電ヒステリシス評価装置FCEを用いて、これらのPZT膜のヒステリシス特性を調べた。その結果を図3に示す。
また、図3に示すヒステリシス特性から求めた各PZT膜のヒステリシスの偏り(%)も、表1に記す。ヒステリシスの偏りの求め方は、上述の通りである。
また、各圧電素子を用い、その上部電極および下部電極間に電圧を印加し、PZT膜の変位をレーザドップラー振動計にて測定し、圧電定数d31(+)およびd31(−)をANSYSにて計算した(共振点から求めたヤング率は、50MPaとした)。ここで、d31(+)は、上部電極に正電圧を印加した際の圧電定数であり、d31(−)は、上部電極に負電圧を印加した際の圧電定数を示している(印加電圧±20V)。なお、圧電定数は、d31(+)の場合は、Voff=10V、Vpp=20V、1kHzとなるSin波を計測した。d31(−)の場合は、Voff=−10Vとした。いずれの計測の場合も、d31(−)を計測した同じ圧電素子でd31(+)を計測すると、正(+)方向に分極が偏ってしまうため、d31(+)が低めに出てしまうというという現象が生じてしまい、過小評価してしまうので、d31(−)とd31(+)は、必ず、電圧を印加していない部分の圧電膜を評価した。
その結果を表1に示す。
表1および図3に示す結果から明らかなように、実施例1および2のPZT膜は、比較例1および2のPZT膜に比べ、鉛量が1.03以下と少なく、2つの抗電界EcおよびEcが、それぞれ正または略0、および負で、ヒステリシスの偏りも負側でかつ小さく、具体的には、共に比較例1より小さく、実施例1は比較例1および2のいずれよりも小さく、圧電定数d31(+)は、190pm/V以上で、圧電定数の比d31(+)/d31(−)は、0.95以上であり、大きな変位を得ることができ、正電界印加時に正常に作動し、正電圧駆動が可能な鉛含有圧電膜であることが分かる。
すなわち、実施例1および2のPZT膜においては、比較例1および2に比べ、ヒステリシスが左方向に偏り、すなわちプラス方向の分極が向きやすくなり、その結果、d31はプラス(+)方向において、好特性が得られた。驚くべき事に、強誘電ヒステリシス特性が非常に低い膜においても、実用できる非常に大きな変位が得られた。
また、実施例2において、鉛量が0.97の場合には、通常条件ではパイロクロア相になる領域である最初の100nmの部分をθ/2θ法によるX線回折によりもう少し詳細に測定した。
その結果、
初期 0nmでは、パイロクロア相 100%
初期 10nmでは、(100)配向 93% パイロクロア相 7%
初期 30nmでは、(100)配向 100%
初期 100nmでは、(100)配向 100%
であった。
この結果から、10nm〜100nmまできちんと(100)配向することが分かる。
次に、上述の実施例1、2および比較例1、2と同様にして、すなわち、成膜中の圧電膜の成膜温度を制御して圧電膜中の鉛量(Pb/(Zr+Ti+Nb))を制御し、鉛量の異なる厚さ4μmの多数のPZT膜を得た。
これらの多数のPZT膜について、同様にして、それぞれヒステリシス特性を求め、各PZT膜の鉛量に対してヒステリシスの偏り(%)を求めた。
多数のPZT膜について、こうして求められた各PZT膜の鉛量に対するヒステリシスの偏り(%)をプロットしたグラフを図1に示す。
図1から明らかなように、本発明の鉛含有圧電膜は、鉛量が1.03以下であり、ヒステリシスの偏りも負側でかつ比較的小さいことがわかる。
また、実施例2、実施例1および比較例2のサンプルに上下電極を設けて圧電素子を作製し、得られた圧電素子の上下電極に電圧(Vpp)を印加して、その変位および消費電力を評価するための誘電損失tanδを調べた。
得られた実施例2、実施例1および比較例2の結果をそれぞれ図4、図5および図6に示す。
図4、図5および図6から明らかなように、各サンプルの変位に関しては、図4に示す実施例2のサンプルでは、本発明の目的とするプラス電圧の印加(プラス駆動)、例えば電圧Vppが0V〜+40Vの範囲では、略比例して増大しており、マイナス(逆)方向の変位は見られなかった。また、図5に示す実施例1のサンプルでは、プラス駆動(0V〜+40V)においても、マイナス電圧の印加(マイナス駆動)、例えば電圧Vppが、0V〜−40Vの範囲においても、同様に、変位は印加電圧に略比例して増大しており、マイナス方向の変位は見られなかった。なお、図6に示す比較例2のサンプルでは、マイナス駆動(0V〜−40V)においては、同様に、変位は印加電圧に略比例して増大しており、マイナス方向の変位は見られなかった。
また、図4に示す実施例2のサンプルにおけるプラス駆動の場合には、図5に示す実施例1のサンプルのプラス駆動および同マイナス駆動の場合、ならびに図6に示す比較例2のサンプルのマイナス駆動の場合と略同様に、例えば、+20V印加においてより大きな変位が得られた。
これに対し、実施例2のサンプルのマイナス駆動および比較例2のサンプルのプラス駆動では、マイナス(逆)方向の変位が見られ、分極の反転が生じており、実施例2のサンプルのプラス駆動や比較例2のサンプルのマイナス駆動に比べて変位が小さく、例えば、±20Vでの変位が殆ど得られず、圧電素子の駆動方式としては、不向きであることがわかった。
一方、各サンプルの誘電損失tanδに関しては、図4に示す実施例2のサンプルのプラス駆動における誘電損失tanδは、図6に示す比較例2のサンプルのマイナス駆動の場合に比べて大きく、したがって消費電力も大であるが、図5に示す実施例1のサンプルのプラス駆動およびマイナス駆動のいずれの場合よりも小さく、消費電力が小さいことがわかった。なお、実施例2のサンプルのマイナス駆動および比較例2のサンプルのプラス駆動では、マイナス(逆)方向の変位が見られ、分極の反転が生じており、誘電損失tanδは、それぞれ、実施例2のサンプルのプラス駆動や比較例2のサンプルのマイナス駆動に比べて大きく、消費電力が高いことがわかった。
その結果、図5に示す実施例1のサンプルは、プラス駆動およびマイナス駆動のいずれの場合も大きな変位を得ることができ、プラス駆動およびマイナス駆動のいずれも可能であるが、0Vでの分極の反転により、プラス駆動およびマイナス駆動のいずれの場合にも他の場合に比べ誘電損失tanδが大で、消費電力も大となるので、いずれの駆動も、圧電素子の駆動方式としては、最適であるとはいえないことがわかった。
すなわち、実施例1のサンプルは、本発明の目的とするプラス駆動は可能であるが、消費電力の点で不利であることが分かった。
これに対し、図6に示す比較例2のサンプルは、マイナス駆動においては、同様に大きな変位を得ることができ、他の場合に比べて、誘電損失tanδが最も小で、消費電力も最も小となり、圧電素子のマイナス駆動の駆動方式としては、最も適しているものの、プラス駆動は、上述したように、圧電素子の駆動方式としては、不向きであることがわかった。
すなわち、比較例2のサンプルは、本発明の目的とするプラス駆動ができないことが分かった。
一方、実施例2のサンプルは、マイナス駆動では、上述したように、圧電素子の駆動方式としては不向きであるが、本発明の目的とするプラス駆動においては、マイナス(逆)方向の変位を生じることがなく、実施例1および比較例2のサンプルの場合と同様に大きな変位、特に±20Vでの大きな変位を得ることができ、誘電損失tanδは、比較例2のサンプルのマイナス駆動の場合に比べれば大きいものの、実施例1のサンプルのプラス駆動およびマイナス駆動のいずれの場合よりも小であり、プラス駆動の圧電素子の駆動方式としては、最も適していることがわかった。
すなわち、実施例2のサンプルは、圧電素子の駆動方式として、本発明の目的とするプラス駆動を行うことができる圧電膜(圧電素子)として最も優れていることが分かる。
以上の各実施例の結果から、本発明の効果は明らかである。
本発明の鉛含有圧電膜は、インクジェット式記録ヘッド,磁気記録再生ヘッド,MEMS(MicroElectro-MechanicalSystems)デバイス,マイクロポンプ,超音波探触子等に搭載される圧電アクチュエータ、および強誘電体メモリ等の強誘電体素子に好ましく利用できる。
本発明の鉛含有圧電膜を含む鉛量が制御された圧電膜のヒステリシスの偏りと鉛量との関係を示すグラフである。 本発明の鉛含有圧電膜を用いるインクジェットヘッドの一実施形態の構造を示す断面図である。 本発明の実施例および比較例のヒステリシス特性を示すグラフである。 本発明の実施例2の変位および誘電損失と電圧との関係を示すグラフである。 実施例1の変位および誘電損失と電圧との関係を示すグラフである。 比較例2の変位および誘電損失と電圧との関係を示すグラフである。 従来技術のドナーイオンの添加量と誘電率との関係を示すグラフである。
符号の説明
50 インクジェットヘッド
52 圧電素子
54 インク貯留吐出部材
56 振動板
58 基板(支持基板)
60、64 電極
62 圧電膜
68 インク室
70 インク吐出口

Claims (17)

  1. 鉛を含有する圧電膜であって、その膜厚が、3μm以上であり、d31(+)/d31(−)>0.5であり、d31(+)>100pm/Vであることを特徴とする鉛含有圧電膜。
    ここで、d31(+)およびd31(−)は、それぞれ前記圧電膜に上部電極および下部電極を形成して前記上部電極に正電圧および負電圧を印加した時に測定される前記圧電膜の圧電定数である。
  2. 前記圧電膜は、シリコンもしくは酸化シリコンの基板上に成膜されたことを特徴とする請求項1に記載の鉛含有圧電膜。
  3. 前記圧電膜は、そのd31(+)>150pm/Vであることを特徴とする請求項1または2に記載の鉛含有圧電膜。
  4. 前記圧電膜は、(100)および/または(001)配向を主成分とするペロブスカイト型結晶構造を有する鉛含有ペロブスカイト薄膜からなり、前記圧電膜に含有される鉛量が1.03以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鉛含有圧電膜。
    ここで、前記鉛量とは、前記圧電膜に含有されるカチオンのうちの鉛以外のカチオンに対する鉛のモル比を表す。
  5. 前記圧電膜は、前記(100)および/または(001)配向が90%以上であることを特徴とする請求項4に記載の鉛含有圧電膜。
  6. 前記鉛含有薄膜が、Pb、Zr、TiおよびOを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の鉛含有圧電膜。
  7. 前記鉛含有薄膜が、化学式Pb(Zr1−y,Ti1−zNbδで記載される薄膜であり、x≦1.03、0≦y≦1、0≦z≦0.25であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の鉛含有圧電膜。
    ここで、上記化学式中、PbはAサイトの元素であり、Zr、TiおよびNbはBサイトの元素であり、xは、前記圧電膜に含有される鉛量であり、前記圧電膜に含有されるカチオンのうちの鉛以外のカチオンに対する鉛のモル比を表し、δ=3である場合が標準であるが、ペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準値からずれてもよい。
  8. 前記化学式において、0.4≦y≦0.6、0.1≦z≦0.2であることを特徴とする請求項7に記載の鉛含有圧電膜。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の鉛含有圧電膜を作製するに際し、成膜時の鉛量を制御することを特徴とする鉛含有圧電膜の作製方法。
    ここで、前記鉛量とは、前記圧電膜に含有されるカチオンのうちの鉛以外のカチオンに対する鉛のモル比を表す。
  10. 前記鉛含有圧電膜の成膜方法が、スパッタ法であることを特徴とする請求項9に記載の鉛含有圧電膜の作製方法。
  11. 前記鉛量は、成膜時に成膜温度を制御することによって制御されることを特徴とする請求項9または10に記載の鉛含有圧電膜の作製方法。
  12. 前記鉛量は、成膜時に成膜基板のプラズマエネルギを制御することによって制御されることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の鉛含有圧電膜の作製方法。
  13. 前記鉛量は、成膜時の酸素分圧を制御することによって制御されることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の鉛含有圧電膜の作製方法。
  14. 前記鉛量は、成膜時の投入パワーを制御することによって制御されることを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項に記載の鉛含有圧電膜の作製方法。
  15. 前記鉛量は、成膜時に成膜圧力を制御することによって制御されることを特徴とする請求項9〜14のいずれか1項に記載の鉛含有圧電膜の作製方法。
  16. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の鉛含有圧電膜からなる圧電体と、
    この圧電体に電圧を印加するために、前記圧電体の両面に形成された下部電極および上部電極を備えることを特徴とする圧電素子。
  17. 請求項16に記載の圧電素子と、
    液体が貯留される液体貯留室と、
    前記圧電素子に電圧を印加することにより、前記液体貯留室から外部に前記液体を吐出させる液体吐出口とを有することを特徴とする液体吐出装置。
JP2008253263A 2008-09-30 2008-09-30 鉛含有圧電膜およびその作製方法、鉛含有圧電膜を用いる圧電素子、ならびにこれを用いる液体吐出装置 Active JP4452752B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008253263A JP4452752B2 (ja) 2008-09-30 2008-09-30 鉛含有圧電膜およびその作製方法、鉛含有圧電膜を用いる圧電素子、ならびにこれを用いる液体吐出装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008253263A JP4452752B2 (ja) 2008-09-30 2008-09-30 鉛含有圧電膜およびその作製方法、鉛含有圧電膜を用いる圧電素子、ならびにこれを用いる液体吐出装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2010087144A true JP2010087144A (ja) 2010-04-15
JP4452752B2 JP4452752B2 (ja) 2010-04-21

Family

ID=42250837

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008253263A Active JP4452752B2 (ja) 2008-09-30 2008-09-30 鉛含有圧電膜およびその作製方法、鉛含有圧電膜を用いる圧電素子、ならびにこれを用いる液体吐出装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4452752B2 (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2372938A2 (en) 2010-04-05 2011-10-05 NTT DoCoMo, Inc. Transmission rate adjustment method and radio communication apparatus
US8672456B2 (en) 2010-06-25 2014-03-18 Fujifilm Corporation Piezoelectric film, piezoelectric device and liquid ejection apparatus
WO2014162999A1 (ja) * 2013-04-01 2014-10-09 富士フイルム株式会社 圧電体膜および圧電体膜の製造方法
JP2014199910A (ja) * 2013-03-14 2014-10-23 株式会社リコー 圧電体薄膜素子及びインクジェット記録ヘッド、並びにインクジェット式画像形成装置
JP2015126059A (ja) * 2013-12-26 2015-07-06 株式会社リコー 圧電アクチュエータ、圧電アクチュエータの製造方法、液滴吐出ヘッド、液体カートリッジ、及び画像形装置
US9960339B2 (en) 2015-02-27 2018-05-01 Fujifilm Corporation Piezoelectric actuator
US10369787B2 (en) 2015-05-25 2019-08-06 Konica Minolta, Inc. Piezoelectric thin film, piezoelectric actuator, inkjet head, inkjet printer, and method for manufacturing piezoelectric actuator

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US10622540B2 (en) 2016-12-12 2020-04-14 Panasonic Intellectual Property Management Co., Ltd. Piezoelectric functional film, actuator, and ink-jet head
JP6402369B1 (ja) 2017-02-16 2018-10-10 パナソニックIpマネジメント株式会社 圧電素子、アクチュエータおよび液滴吐出ヘッド

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001021052A (ja) * 1999-07-09 2001-01-26 Tokyo Electron Ltd ダイヤフラムバルブ
JP2005333105A (ja) * 2004-04-23 2005-12-02 Seiko Epson Corp 強誘電体膜積層体、強誘電体メモリ、圧電素子、液体噴射ヘッドおよびプリンタ
JP2007096248A (ja) * 2005-01-19 2007-04-12 Canon Inc 圧電体素子、液体吐出ヘッド及び液体吐出装置
JP2008218547A (ja) * 2007-03-01 2008-09-18 Fujifilm Corp 圧電体とその駆動方法、圧電素子、及び液体吐出装置
JP2008306164A (ja) * 2007-04-26 2008-12-18 Fujifilm Corp 圧電体、圧電素子、及び液体吐出装置
JP2009065049A (ja) * 2007-09-07 2009-03-26 Fujifilm Corp 圧電素子及びそれを用いる液滴吐出ヘッド並びに圧電素子の製造方法
JP2009071295A (ja) * 2007-08-21 2009-04-02 Fujifilm Corp 圧電素子及びそれを用いた液体吐出装置
JP2009117592A (ja) * 2007-11-06 2009-05-28 Fujifilm Corp ペロブスカイト型酸化物、強誘電体膜、強誘電体素子、及び液体吐出装置

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001021052A (ja) * 1999-07-09 2001-01-26 Tokyo Electron Ltd ダイヤフラムバルブ
JP2005333105A (ja) * 2004-04-23 2005-12-02 Seiko Epson Corp 強誘電体膜積層体、強誘電体メモリ、圧電素子、液体噴射ヘッドおよびプリンタ
JP2007096248A (ja) * 2005-01-19 2007-04-12 Canon Inc 圧電体素子、液体吐出ヘッド及び液体吐出装置
JP2008218547A (ja) * 2007-03-01 2008-09-18 Fujifilm Corp 圧電体とその駆動方法、圧電素子、及び液体吐出装置
JP2008306164A (ja) * 2007-04-26 2008-12-18 Fujifilm Corp 圧電体、圧電素子、及び液体吐出装置
JP2009071295A (ja) * 2007-08-21 2009-04-02 Fujifilm Corp 圧電素子及びそれを用いた液体吐出装置
JP2009065049A (ja) * 2007-09-07 2009-03-26 Fujifilm Corp 圧電素子及びそれを用いる液滴吐出ヘッド並びに圧電素子の製造方法
JP2009117592A (ja) * 2007-11-06 2009-05-28 Fujifilm Corp ペロブスカイト型酸化物、強誘電体膜、強誘電体素子、及び液体吐出装置

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2372938A2 (en) 2010-04-05 2011-10-05 NTT DoCoMo, Inc. Transmission rate adjustment method and radio communication apparatus
US8672456B2 (en) 2010-06-25 2014-03-18 Fujifilm Corporation Piezoelectric film, piezoelectric device and liquid ejection apparatus
JP2014199910A (ja) * 2013-03-14 2014-10-23 株式会社リコー 圧電体薄膜素子及びインクジェット記録ヘッド、並びにインクジェット式画像形成装置
WO2014162999A1 (ja) * 2013-04-01 2014-10-09 富士フイルム株式会社 圧電体膜および圧電体膜の製造方法
JP2014203840A (ja) * 2013-04-01 2014-10-27 富士フイルム株式会社 圧電体膜および圧電体膜の製造方法
US20180130942A1 (en) * 2013-04-01 2018-05-10 Fujifilm Corporation Piezoelectric film and method for manufacturing same
JP2015126059A (ja) * 2013-12-26 2015-07-06 株式会社リコー 圧電アクチュエータ、圧電アクチュエータの製造方法、液滴吐出ヘッド、液体カートリッジ、及び画像形装置
US9960339B2 (en) 2015-02-27 2018-05-01 Fujifilm Corporation Piezoelectric actuator
US10369787B2 (en) 2015-05-25 2019-08-06 Konica Minolta, Inc. Piezoelectric thin film, piezoelectric actuator, inkjet head, inkjet printer, and method for manufacturing piezoelectric actuator

Also Published As

Publication number Publication date
JP4452752B2 (ja) 2010-04-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4452752B2 (ja) 鉛含有圧電膜およびその作製方法、鉛含有圧電膜を用いる圧電素子、ならびにこれを用いる液体吐出装置
JP5280789B2 (ja) 鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜およびその作製方法、鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜を用いる圧電素子、ならびにこれを用いる液体吐出装置
JP5311787B2 (ja) 圧電素子及び液体吐出ヘッド
JP5546105B2 (ja) ペロブスカイト型酸化物とその製造方法、圧電体膜、圧電素子、液体吐出装置
JP5300184B2 (ja) 圧電体、圧電体素子、圧電体素子を用いた液体吐出ヘッド及び液体吐出装置
JP5865410B2 (ja) 圧電素子、圧電アクチュエータおよびインクジェット式記録ヘッド
US8598769B2 (en) Perovskite oxide material, ferroelectric compound, piezoelectric body, piezoelectric device, and liquid discharge device
US8672456B2 (en) Piezoelectric film, piezoelectric device and liquid ejection apparatus
JP7298159B2 (ja) 圧電薄膜、圧電薄膜素子、圧電アクチュエータ、圧電センサ、ヘッドアセンブリ、ヘッドスタックアセンブリ、ハードディスクドライブ、プリンタヘッド、及びインクジェットプリンタ装置
JP2008098627A (ja) 圧電素子、これを用いた液体吐出ヘッド及び超音波モーター
JP5241086B2 (ja) 圧電体、圧電素子、圧電素子を用いた液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置
JP2008266771A (ja) 強誘電体膜とその製造方法、強誘電体素子、及び液体吐出装置
US10217929B2 (en) Piezoelectric film, piezoelectric element, and liquid discharge apparatus
US10103316B2 (en) Piezoelectric film, piezoelectric element including the same, and liquid discharge apparatus
JP2013211539A (ja) 圧電素子、液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置
JP5426861B2 (ja) 強誘電性酸化物とその製造方法、圧電体、圧電素子
JP2009062564A (ja) ペロブスカイト型酸化物、強誘電体膜とその製造方法、強誘電体素子、及び液体吐出装置
JP2009064859A (ja) ペロブスカイト型酸化物、強誘電体膜とその製造方法、強誘電体素子、及び液体吐出装置
JP2004249729A (ja) 圧電体素子
JP2009293130A (ja) ペロブスカイト型酸化物、強誘電体膜、強誘電体素子、及び液体吐出装置
JP2010084160A (ja) 鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法、圧電素子、および液体吐出装置
US10483452B2 (en) Piezoelectric film and piezoelectric element including the same
US20220367787A1 (en) Electromechanical responsive film, stacked arrangement and methods of forming the same
JP4721507B2 (ja) 圧電磁器組成物及びこれを用いたインクジェット記録ヘッド
JP2010024060A (ja) 強誘電性酸化物とその製造方法、圧電体、圧電素子

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100126

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100201

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4452752

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130205

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140205

Year of fee payment: 4

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250