基本形態について上述した制御装置、制御方法、および情報記憶装置に対する具体的な実施形態を、以下図面を参照して説明する。
図5は、情報記憶装置の一実施形態であるハードディスク装置(HDD)10を表した図である。
図5に示すHDD10には、可動式のコイルであるボイスコイル(不図示)と、ボイスコイルに一定の磁場を印加する永久磁石(不図示)とを内蔵したボイスコイルモータ4が設けられている。このボイスコイルモータ4では、ボイスコイルに電流が流されることでボイスコイルが移動することができ、このボイスコイルの移動により、軸40を中心とする回転駆動力が発生する。このボイスコイルモータ4の回転駆動力を受けて、アーム3は、軸40の周りを回動する。アーム3の先端には、ジンバルと呼ばれる支持具でスライダ2が取り付けられており、さらに、このスライダ2の先端部には、ヘッド1が取り付けられている。
ヘッド1は、磁気ディスク5からの情報の読み取りや磁気ディスク5への情報の書き込みを行う役割を担っており、磁気ディスク5側を向いた近接面を有している。情報の読み取りや書き込みの際には、アーム3がボイスコイルモータ4により軸40を中心として回転駆動され、この回転駆動により、ヘッド1が、磁気ディスクの半径方向に移動し、磁気ディスクの半径方向について、情報の読み取りや書き込みを行うための目標のヘッド位置(所望のヘッド位置)に位置決めされる。ここで、所望の位置に位置決めされたヘッド1は、近接面を円盤状の磁気ディスク5の表面に向けて、磁気ディスク5の表面から微小な高さだけ浮上した位置に維持される。この図では、ヘッド1の位置を原点とし、磁気ディスク103の中心向き方向をy軸とし、図に垂直な法線方向をz軸として定義されたxyz直交座標系の中で、ヘッド1が表されている。
円盤状の磁気ディスク5の表面には、ディスク中心を周回する帯状のトラックが半径方向に複数並んだ構成が設けられており、図5ではこれら複数のトラックのうちの1つのトラック50が図示されている。
円盤状の磁気ディスク5の表面には、この図に示すように、磁気ディスク5の回転中心側と磁気ディスク5の円周側との間に延びるサーボ領域52が、複数本設けられている。このサーボ領域52は、ヘッド1の位置決め用の情報を記憶する領域であり、半径方向の位置や円周方向の位置を表した位置情報が記録されている。例えば、図5でトラック50とサーボ領域52とが交差する交差部分であるサーボセクタ520には、トラック50がディスク中心側から何番目のトラックであるかや、このサーボセクタ520が、このトラック50における何番目のサーボセクタであるかといった情報を表すアドレス情報が記録されている。また、サーボセクタ520には、磁気ディスク5の半径方向について、このサーボセクタ520の中心位置を基準として測った距離の目盛りの情報に相当する情報(微小位置情報)も記録されており、ヘッド1がサーボセクタ520で情報の読み取りを行った際には、ヘッド1の読取位置が、磁気ディスク5の半径方向についてサーボセクタ520の中心位置からどれだけずれた位置にあるかの情報が把握されるようになっている。これらアドレス情報や微小位置情報は、上述した位置情報に含まれる情報である。ここで、複数本のサーボ領域52の形状は、図5に示すように、いずれも、緩やかな弧を描いて湾曲した形状となっており、この湾曲した形状は、ボイスコイルモータ4の回転駆動によりヘッド1が磁気ディスク5上で移動する際のヘッド1の位置の軌跡に合わせたものである。
また、2つのサーボセクタ520の間の領域には、ユーザによって取り扱われる情報(以下、単に「データ」と呼ぶ)の書き込みおよび読み出しが行われるデータセクタ51が設けられている。ここで、上記のサーボセクタ520やデータセクタ51には、図5のz軸の正方向あるいは負方向を向いた磁化が並んでおり、このような2つの向きにより「0」および「1」の2値が表現されて1ビットの情報が表される。ここで、磁気ディスク5における、各データセクタ51は、データセクタ51に隣接するサーボセクタ520が有する位置情報によって互いに識別される。
ヘッド1は、磁気ディスク5への情報の書き込みを行う記録素子(図5では不図示)と、磁気ディスク5からの情報の読み取りを行う再生素子(図5では不図示)の2つの素子を有している。再生素子は、印加される磁界の向きに応じて電気抵抗の値が変化する磁気抵抗効果膜を備えており、データや位置情報の再生時には、再生素子は、この磁気抵抗効果膜を流れる電流の値が、磁化により発生する磁界の向きに応じて変化することを検出することで、磁化の向きで表された情報を取り出す。この電流の変化を表す信号が、取り出された情報を表す再生信号であり、その再生信号はヘッドアンプ8に出力される。また、記録素子は、電磁石として機能するコイルおよび磁極とを備えており、データの記録の際には、磁気ディスク5に近接したヘッド1中の記録素子に、データをビット値で表した電気的な記録信号がヘッドアンプ8を介して入力され、記録素子は、その記録信号のビット値に応じた向きの電流をコイルに流す。この電流によりコイル中に発生した磁界が磁極を通って、磁気ディスク5上の磁化に印加されてこの記録信号のビット値に応じた向きに磁化の方向が揃えられる。これにより、記録信号に担持されたデータが磁化方向の形式で記録されることとなる。
磁気ディスク5は、スピンドルモータ9の回転駆動力を受けて図5の面内で回転し、ヘッド1は、磁気ディスク5の回転により、円周方向に並んだサーボセクタ520に順次近接して、位置情報の読み取りを実行する。そして、この読取結果に基づいて、ヘッド1が、ボイスコイルモータ4の回転駆動により、磁気ディスク5の半径方向についての所望のデータセクタ51の位置に位置決めされる。ヘッド1の位置決め後、磁気ディスク5の回転により所望のデータセクタ51に近接したときにデータの再生/記録が実行される。
上述した、ボイスコイルモータ4、アーム3、スライダ2、ヘッド1、およびヘッドアンプ8など、情報の記憶再生に直接的に携わる各部は、磁気ディスク5とともに、ベース6に収容されており、図5では、ベース6の内側の様子が表されている。ベース6の裏側には、ボイスコイルモータ4の駆動やヘッド1によるアクセスを制御する制御回路を有する制御基板7が設けられており、図5では、制御基板7は点線で示されている。なお、HDD10では、ベース6の表側の各部と、ベース6の裏側の制御基板7との全体は、この図では不図示の筺体に収容されている。上記の各部は、不図示の機構でこの制御基板7と電気的に導通しており、ヘッド1に入力される上述の記録信号や、ヘッド1で生成された上述の再生信号は、この制御基板7において処理される。
次に、この制御基板7について説明する。
図6は、制御基板7の構成を表した図である。
制御基板7には、ボイスコイルモータ(VCM)ドライバ4aを介したボイスコイルモータ(VCM)4の制御や、ヘッド1内に設けられヘッド1の近接面を磁気ディスク5に向かって熱膨脹させるヒータ1cについての制御を行うMPU(Micro Processing Unit)70が備えられている。このヒータ1cの制御については後で詳しく説明する。また、制御基板7には、図5の磁気ディスク5へのヘッド1によるデータの記録/再生(アクセス)を制御するディスクコントローラ72や、情報を蓄えるメモリ73も設けられている。また、この制御基板7には、ヘッドアンプ8を介して再生素子1aから送られてくる再生信号や、ヘッドアンプ8を介して記録素子1bに送られる記録信号の信号処理を実行するR/Wチャネル71も設けられている。
データの記録が行われる際には、このHDD10に接続されたコンピュータなどの外部機器から、ディスクコントローラ72を介してR/Wチャネル71に記録信号が入力され、R/Wチャネル71で、後述するようにアナログ/デジタル変換などの各種の信号処理が行われる。信号処理が行われた記録信号は、ヘッドアンプ8で増幅された後、ヘッド1内の記録素子1bに入力され、上述したように、磁気ディスク5へのデータの記録が実行される。
データの再生および位置情報の再生が行われる際には、上述したように、ヘッド1の再生素子1aで再生信号が生成され、その再生信号は、ヘッドアンプ8で増幅された後、R/Wチャネル71に入力されて各種の信号処理が施される。ここで、データの再生信号は、R/Wチャネル71での信号処理後にディスクコントローラ72に送られ、さらにディスクコントローラ72から、このHDD10に接続された外部機器(コンピュータなど)に送られる。一方、位置情報の再生信号は、R/Wチャネル71での信号処理後にMPU70に入力される。MPU70は、ディスクコントローラ72からヘッド1の位置決め制御実行の指示を受けて、入力された位置情報の再生信号に基づきボイスコイルモータ(VCM)ドライバ4aを介したボイスコイルモータ(VCM)4の制御を行うことで、ヘッド1の位置決め制御を実行する。
本実施形態のHDD10では、ヘッド1を磁気ディスク5に向かって熱膨張させるヒータ1cの制御を通じて、ヘッド1と磁気ディスク5との間の距離が、高精度のアクセスが可能な一定の距離に維持されている。このHDD10では、ヘッド1と磁気ディスク5との間の距離と、ヒータ1cの発熱量(以下、ヒータ値と略す)との対応関係を求める機能が備えられており、この対応関係は、ユーザによりアクセスが行われる前の段階で求められて、実際に情報記憶装置がユーザに使用されてアクセスが行われる段階では、この対応関係に基づき、ヒータ1cの制御が実行される。ここで、上記の対応関係が求められる際には、まず、ヘッド1が熱膨張して磁気ディスク5と接触(Touch Down)することでヘッド1と磁気ディスク5との間の距離がゼロとみなされるヒータ値(以下、TDヒータ値と呼ぶ)が決定され、次に、このTDヒータ値を基準として、TDヒータ値以下のヒータ値の領域について、ヘッドと磁気ディスクとの間の距離と、ヒータ値との対応関係が求められる。
以下では、本実施形態のHDD10におけるTDヒータ値の決定方法について説明する。このTDヒータ値の決定に際しては、図6のR/Wチャネル71が重要な役割を果たし、R/Wチャネル71の再生信号の処理機能が利用される。そこで、TDヒータ値の決定方法について説明するにあたり、まず、R/Wチャネル71の再生信号の処理機能について詳しく説明する。
図7は、再生信号の信号処理の際のR/Wチャネル571の機能を表した機能ブロック図である。
R/Wチャネル71は、可変利得アンプ部711、可変イコライザ部712、レジスタ部713、AD変換部714、VTM値算出部715、および復調部716を有している。
ヘッド1の読取素子1aによりサーボセクタ520での読み取りで得られた位置情報の再生信号や、ヘッド1の読取素子1aによりデータセクタ51での読み取りで得られたデータの再生信号は、ヘッドアンプ8で増幅された後、読み取られた順に、可変利得アンプ部711に次々と入力され、可変利得アンプ部711で設定されている利得値の下での増幅処理が施される。ここで、後述するようにこの利得値の設定値は可変であり、増幅後の再生信号の信号レベルが所定の信号レベルになるように、入力される再生信号の信号レベルに応じて逐次変更される。可変イコライザ部712は、可変利得アンプ部711による増幅後の再生信号について、高周波のノイズ成分を除去する等の周波数特性の調整を行う。AD変換部714は、可変イコライザ部712で周波数特性の調整が行われた再生信号を、アナログ信号からデジタル信号に変換する。また、AD変換部714は、可変イコライザ部712で周波数特性の調整が行われた再生信号の信号レベルに基づき、可変利得アンプ部711における利得値を、上記の所定の信号レベルまでの増幅処理を行うのに適当な利得値となるようにするための利得値を求める。その利得値はレジスタ部713に渡されて記録される。可変利得アンプ部711は、レジスタ部713に記録されている利得値を読み出して、現在設定されている利得値を、その読み出した利得値に変更する。まとめると、このR/Wチャネル71では、可変利得アンプ部711、可変イコライザ部712、AD変換部714、およびレジスタ部713により、利得値の制御を行うAGC(Automatic Gain Control:自動利得制御)ループが形成されており、このAGCループにより、利得値は、再生信号の信号レベルが所定の信号レベルになるのに適当な利得値に適宜変更される。以下では、AD変換部714で求められた利得値をAGC利得値と呼ぶ。また、AD変換部714は、再生信号が位置情報についての再生信号である場合には、この再生信号から、ヘッド1の読取位置が磁気ディスク5の半径方向についてサーボセクタ520の中心位置からどれだけずれた位置にあるかを表す位置精度の値を取り出してレジスタ部713に渡し、この位置精度の値もレジスタ部713に記録される。ここで、この位置精度は、ヘッド1が図5のサーボセクタ520における上述の微小位置情報を読み取ることで得られるものであり、位置精度の値が大きいほど、ヘッド1の読取位置が、磁気ディスク5の半径方向についてサーボセクタ520の中心位置から大きくずれていることとなる。
AD変換部714でデジタル信号となった後の位置情報やデータの再生信号は、復調部716に渡されて位置情報やデータの復調が行われ、位置やデータの復調値が生成される。この復調値は、復調部716から、VTM算出部715を介してレジスタ部713に渡され、レジスタ部713に記録される。ここで、VTM算出部715は、再生信号のうちの一部分を解析し、ビタビアルゴリズムに基づきその再生信号の最尤の復調値を求める機能を備えており、求められた最尤の復調値と実際の復調値とのずれの程度を表す値であるVTM(Viterbi Trellis Margin)値を算出することができる。このVTM値の算出は、R/Wチャネル71がVTM値算出モードに設定されているときにデータについての再生信号に対して行われるものであり、R/Wチャネル71の動作モードがVTM値算出モードに設定されているときには、復調部716で得られた復調値と、VTM算出部715で算出されたVTM値との両方がレジスタ部713に渡され、レジスタ部713に記録される。一方、R/Wチャネル71の動作モードがVTM値算出モードに設定されていないときには、復調部716で得られた復調値は、VTM算出部715を素通りしてレジスタ部713に渡されてレジスタ部713に記録される。
後述するように、本実施形態のHDD10では、レジスタ部713に記録される、位置情報およびデータについてのAGC利得値と、位置精度と、VTM値とに基づき、TDヒータ値が決定される。
ここで、図7には、TDヒータ値を決定する際のMPU70の機能を表した機能ブロックも示されており、この図に示すように、MPU70には、ヒータ制御部701、レジスタ値取得部703、および制御/算出部702が備えられている。
ヒータ制御部701は、ヘッドアンプ8を介して、ヘッド1内のヒータ1cに供給される電力の制御を行う。ここで、この電力の値が、上述したヒータ値であり、従ってヒータ制御部701はヒータ値の制御を担当している。レジスタ値取得部703は、R/Wチャネル71のレジスタ部713に記録されている、データおよび位置情報の再生信号のAGC利得値、位置精度、およびVTM値をレジスタ部713から取得してメモリ73に記録する。また、制御/算出部702は、ヒータ制御部701の制御を行う役割や、メモリ73に記録されているAGC利得値、位置精度、およびVTM値について、サーボセクタ520やデータセクタ51についての平均値や標準偏差値を算出してメモリ73に記録する役割を担っている。なお、この図7には不図示であるが、MPU70には、R/Wチャネル71における、データの再生信号の処理タイミングを決めるリードゲート信号や、R/Wチャネル71における、位置情報の再生信号の処理タイミングを決めるサーボゲート信号を生成する機能も備えられている。
ここで、R/Wチャネル71やMPU70を備えている図6の制御基板7が、基本形態について上述した制御装置の一実施形態である。また、図7のヒータ制御部701、レジスタ値取得部703、可変利得アンプ部711、可変利得イコライザ部712を合わせたものが、上述した基本形態における取得部の一例に相当し、AD変換部714、復調部716、レジスタ部713、および、VTM算出部715を合わせたものが、上述した基本形態における算出部の一例に相当する。また、メモリ73と制御/算出部702をあわせたものが、上述した基本形態における接触判定部の一例に相当し、制御/算出部702が、上述した基本形態における対応関係決定部の一例に相当する。
次に、本実施形態のHDD10で実行されるTDヒータ値の決定方法の流れについて詳しく説明する。本実施形態のHDD10では、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の検出が、4種類の検出方法によって実行される。この4種類の検出方法とは、データについてのAGC利得値、位置情報についてのAGC利得値、位置精度、およびVTM値の4種類の値それぞれについて、ヒータ値の増加に対する変化を調べることでヘッド1と磁気ディスク5との接触を検出する方法である。
図8は、本実施形態のTDヒータ値が決定方法の流れを表したフローチャートである。
本実施形態のHDD10では、まず最初に、TDヒータ値の決定に関するヒータ制御の初期設定が行われる(ステップS301)。具体的には、この初期設定では、ヒータ値が、初期値であるゼロに設定されるとともに、後述するようにヒータ値を少しずつ増加させていくときのヒータ値の増加幅やヒータ値の上限値などが決定される。初期設定が行われた後には、磁気ディスク5の所定のトラック50における全データセクタ520それぞれに同一のデータが書き込まれる(ステップS302)。次に、現在のヒータ値が、上述のヒータ値の上限値未満であるか否かが判定される(ステップS303)。上述のヒータ値の上限値は十分に大きく、この段階では、現在のヒータ値はヒータ値の上限値未満であると判定される(ステップS303;Yes)。次に、MPU70によりR/Wチャネル71がVTM値算出モードに設定される(ステップS304)。そして、ヘッド1により、上記の所定のトラック50におけるデータセクタ520やサーボセクタ51からのデータや位置情報の読み取りが開始され、各サーボセクタ520ごとのAGC利得値と位置精度、および、各データセクタ51ごとのAGC利得値とVTM値とが取得される(ステップS305)。ここで、これらの各値が取得される様子について詳しく説明する。
図9は、各サーボセクタ520ごとのAGC利得値と位置精度、および、各データセクタ51ごとのAGC利得値とVTM値とが取得される際の、取得の流れを表すタイミングチャートである。
この図では、MPU70が生成するサーボゲート信号とリードゲート信号とが時間軸を合わせて示されている。このHDD10では、サーボゲート信号のゲートが立ち上がっている期間にサーボセクタ520から得られる位置情報の再生信号の処理が行われ、リードゲート信号のゲートが立ち上がっている期間にデータセクタ51から得られるデータの再生信号の処理が行われる。ここで、図9では、各ゲート信号でゲートが立ち上がっている期間に行われるR/Wチャネル71の具体的な処理内容や、各ゲート信号でゲートが立ち立ち上がる前後で行われるR/Wチャネル71の具体的な動作内容についても示されている。準備期間Iでは、上述したようにR/Wチャネル71の動作モードがVTM値算出モードに設定される。
ここで、上記の所定のトラック50の全サーボセクタ520のうち、所定のサーボセクタ520には、この所定のサーボセクタ520を他のサーボセクタ520と区別するための目印(Index)となる識別データが記録されており、この所定のサーボセクタは、この識別データにより、この所定のトラック50のサーボセクタ520のうちの先頭(0番目)のサーボセクタ520であるとして図7のMPU70に認識される。
図9では、サーボゲート信号における0番目のゲートの立ち上がりの期間である第0サーボゲート立ち上がり部SG0で、0番目のサーボセクタ520についての位置情報の再生信号の処理が行われる。この第0サーボゲート立ち上がり部SG0では、0番目のサーボセクタ520に記録されている位置情報の再生信号について、AGC利得値や位置精度がAD変換部714により取得されて図7のレジスタ部713に記録される。第0サーボゲート立ち上がり部SG0の期間の終了直後には、今度は、リードゲート信号において0番目のゲートが立ち上がる。リードゲート信号における0番目のゲートの立ち上がりの期間である第0リードゲート立ち上がり部RG0で、0番目のデータセクタ51についてのデータの再生信号の処理が行われる。この0番目のデータセクタ51は、上述した0番目のサーボセクタ520に隣接したデータセクタであって、0番目のサーボセクタ520の次にヘッド1が隣接するデータセクタである。この第0リードゲート立ち上がり部RG0では、0番目のデータセクタ51に記録されているデータの再生信号について、AGC利得値やVTM値が図7のAD変換部714により取得されてレジスタ部713に記録される。第0リードゲート立ち上がり部RG0の期間の終了後には、第0中間期間M0において、この時点でレジスタ部713に記録されている、位置情報やデータの再生信号についてのAGC利得値、位置精度、およびVTM値が、図7のMPU70内のレジスタ値取得部703によりメモリ73に記録される。そして、このメモリ73への記録後には、レジスタ部713は初期化されてレジスタ部713に記録されていた各値は消去される。
第0中間期間M0の終了後には、サーボゲート信号における1番目のゲートの立ち上がりの期間である第1サーボゲート立ち上がり部SG1で、1番目のサーボセクタ520についての位置情報の再生信号の処理が行われ、AGC利得値や位置精度が図7のAD変換部714により取得されてレジスタ部713に記録される。第1サーボゲート立ち上がり部SG1の期間の終了直後には、リードゲート信号における1番目のゲートの立ち上がりの期間である第1リードゲート立ち上がり部RG1で、1番目のデータセクタ51についてのデータの再生信号の処理が行われる。この第1リードゲート立ち上がり部RG1では、1番目のデータセクタ51に記録されているデータの再生信号について、AGC利得値やVTM値が図7のAD変換部714により取得されてレジスタ部713に記録される。第1リードゲート立ち上がり部RG1の期間の終了後には、第1中間期間M1において、この時点でレジスタ部713に記録されている、位置情報およびデータの再生信号それぞれのAGC利得値、位置精度、およびVTM値が、図7のMPU70内のレジスタ値取得部703によりメモリ73に記録される。そして、このメモリ73への記録後には、レジスタ部713は初期化されてレジスタ部713に記録されていた各値は消去される。
このようにして、サーボゲート信号やリードゲート信号においてゲートが立ち上がるごとに、メモリ73に位置情報やデータの再生信号についてのAGC利得値、位置精度、およびVTM値の取得とメモリ73への記録とが繰り返される。磁気ディスク5では、1つのトラック50には、サーボセクタ520とデータセクタ51とが、それぞれ、0番目からn番目までの(n+1)個設けられており、最終的に、サーボゲート信号におけるn番目のゲートの立ち上がりの期間である第nサーボゲート立ち上がり部SGnで、n番目のサーボセクタ520について位置情報の再生信号のAGC利得値や位置精度がレジスタ部713に記録され、さらに、リードゲート信号におけるn番目のゲートの立ち上がりの期間である第nリードゲート立ち上がり部RGnで、上記の所定のトラック50における最後のデータセクタ51であるn番目のデータセクタ51についてデータの再生信号のAGC利得値やVTM値がレジスタ部713に記録されて、第n中間期間Mnにおいて、この時点でレジスタ部713に記録されている各値がメモリ73に記録される。
そして、識別データが記録されている上述の所定のサーボセクタが再びヘッド1に近接してその識別データが読み取られることで、1周分の読み取りが終了したことがMPU70に認識されると、MPU70は、図9の終了期間Fにおいて、R/Wチャネル71の動作モードとして設定されていたVTM値算出モードを解除する。
図10は、メモリ73に記録されている、位置情報およびデータの再生信号それぞれのAGC利得値、位置精度、およびVTM値についての格納アドレスの構成例を表した図である。
この図では、0番目からn番目までの全部で(n+1)個のサーボセクタ520それぞれについての再生信号のAGC利得値の格納アドレスが「VGAS」の欄に記載され、(n+1)個のサーボセクタ520それぞれについての位置精度の格納アドレスが「Position」の欄に記載されている。また、この図では、0番目からn番目までの全部で(n+1)個のデータセクタ51それぞれについての再生信号のAGC利得値の格納アドレスが「VGAR」の欄に記載され、(n+1)個のデータセクタ51それぞれについてのVTM値が「VTM」の欄に記載されている。各欄の数値は、16進法で4桁の数値であって、それぞれメモリ73における格納アドレス(格納場所)を表している。なお、各欄の数値の最後に付された「h」は、数値が16進法で表された数値であることを示す記号であり、「Reserve」の欄は、AGC利得値、位置精度、およびVTM値の他に取得すべき値があるときのための予備の欄である。
図8に戻って説明を続ける。
トラック50における1周分(全部で(n+1)個)のサーボセクタ520やデータセクタ51について、AGC利得値、位置精度、およびVTM値が取得されると、図7のMPU70内の制御/算出部702は、(n+1)個のサーボセクタ520それぞれについてのAGC利得値や位置精度に基づき、(n+1)個のサーボセクタ520についての平均値と標準偏差値を算出し、メモリ73に記録する。また、制御/算出部702は、(n+1)個のデータセクタ51それぞれについてのAGC利得値やVTM値に基づき、(n+1)個のデータセクタ520についての平均値と標準偏差値を算出し、メモリ73に記録する(図8のS306)。
メモリ73への記録後、これらの平均値と標準偏差値に基づき、後で詳述する4種類の検出方法それぞれについて、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の検出が行われる(ステップS307)。そして、いずれかの検出方法でヘッド1と磁気ディスク5との接触が検出されたか否かが判定される(ステップS308)。ヒータ値が小さい状況では、ヘッド1は磁気ディスク5表面から十分に離れており、いずれの検出方法でもヘッド1と磁気ディスク5との接触の検出されることはなく、最初にステップS307の判定が行われる際には、ステップS308でNoが選択される。
次に、図7の制御/算出部702は、ヒータ制御部701に指示を出してヒータ値を所定量だけ増加させ(ステップS309)、その新たなヒータ値の下で、以上説明した、ステップS303〜ステップS309までの過程が再び行われ、AGC利得値、位置精度、VTM値の平均値と標準偏差値がメモリ73に記録される。ヒータ値が、上述のヒータ値の上限値未満であって(ステップS303;Yes)、かつ、ヘッド1が磁気ディスク5からある程度離れている限り(ステップS308;No)、このように、ステップS303〜ステップS309までの過程が、ヒータ値を所定量ずつ増加させながら繰り返され、それとともにヘッド1の熱膨張でヘッド1と磁気ディスク5との間の距離は次第に短くなっていく。このとき、各ヒータ値ごとに、AGC利得値、位置精度、VTM値の平均値と標準偏差値がメモリ73に記録されていくこととなる。
図11は、メモリ73に記録されている、位置情報およびデータの再生信号それぞれのAGC利得値、位置精度、およびVTM値についての平均値と標準偏差値の格納アドレスの構成例を表した図である。
この図では、ヒータ値をゼロから所定量ずつ増加していったときの、その増加の回数ごとに、位置情報およびデータの再生信号それぞれのAGC利得値、位置精度、およびVTM値のぞれぞれについての平均値および標準偏差値の格納アドレスが示されている。この図では、サーボセクタ520からの位置情報の再生信号のAGC利得値についての平均値および標準偏差値の各格納アドレスが、それぞれ「VGAS平均」および「VGAS偏差」の欄に記載され、位置精度についての平均値および標準偏差値の各格納アドレスが、それぞれ「Pos平均」および「Pos偏差」の欄に記載されている。また、この図では、データセクタ51からのデータの再生信号のAGC利得値についての平均値および標準偏差値の各格納アドレスが、それぞれ「VGAR平均」および「VGAR偏差」の欄に記載され、VTM値についての平均値および標準偏差値の各格納アドレスが、それぞれ「VTM平均」および「VTM偏差」の欄に記載されている。各欄の数値は、16進法で4桁の数値であって、それぞれメモリ73における格納アドレス(格納場所)を表している。なお、各欄の数値の最後に付された「h」は、数値が16進法で表された数値であることを示す記号であり、「Reserve」の欄は、AGC利得値、位置精度、およびVTM値の平均値および標準偏差値の他に算出すべき値があるときのための予備の欄である。
図12は、データの再生信号のAGC利得値の平均値および標準偏差値がヒータ値の増加とともに変化する様子の一例を表した図、図13は、位置情報の再生信号のAGC利得値の平均値および標準偏差値がヒータ値の増加とともに変化する様子の一例を表した図、図14は、VTM値の平均値および標準偏差値がヒータ値の増加とともに変化する様子の一例を表した図、図15は、VTM値の平均値および標準偏差値がヒータ値の増加とともに変化する様子の一例を表した図である。
図12のパート(a)および図13のパート(a)には、データおよび位置情報の再生信号のAGC利得値の平均値の変化の様子がそれぞれ表されている。ヘッド1が磁気ディスク5表面から離れている限り、ヒータ値が増加してヘッド1と磁気ディスク5との間の距離が短くなるほど読取精度が向上して磁気ディスク5からの読み取りで得られる再生信号の信号レベルは大きくなる。このため、ヒータ値が小さくてヘッド1が磁気ディスク5表面から離れている間は、図12のパート(a)や図13のパート(a)に示すように、ヒータ値がゼロから増加していくにつれてAGC利得値の平均値は小さくなっていく。
図12のパート(b)および図13のパート(b)には、データおよび位置情報の再生信号のAGC利得値の標準偏差値の変化の様子がそれぞれ表されている。ヘッド1が磁気ディスク5表面から一定の距離離れている状況では、サーボセクタ520やデータセクタ51での読み取りで得られる個々の再生信号の信号レベルは、これらセクタ間ではそれほど差がなく、従ってAGC利得値の標準偏差値は小さい値となる。このため、ヒータ値が小さくてヘッド1が磁気ディスク5表面から離れている間は、図12のパート(b)や図13のパート(b)に示すように、ヒータ値がゼロから増加していってもAGC利得値の標準偏差値は、ほぼ一定の小さい値に維持される。
図14のパート(a)には、VTM値の平均値が、ヒータ値の増加とともに変化する様子が表されている。ヘッド1が磁気ディスク5表面から離れている限り、ヒータ値が増加してヘッド1から磁気ディスク5までの距離が短くなっていくほど読取精度が向上して読取エラーは少なくなるため、VTM値は減少する。このため、ヒータ値が小さくてヘッド1が磁気ディスク5表面から離れている間は、図14のパート(a)に示すように、ヒータ値がゼロから増加していくと、VTM値が少しずつ減少していく。
図14のパート(b)には、ヒータ値の増加に対するVTM値の標準偏差値の変化の様子が表されている。ヘッド1が磁気ディスク5表面から一定の距離離れている状況では、データセクタ51での読み取りで得られるVTM値は、これらデータセクタ間ではそれほど差がなく、従ってVTM値の標準偏差値は小さい値となる。このため、ヒータ値が小さくてヘッド1が磁気ディスク5表面から離れている間は、図14のパート(b)に示すように、ヒータ値がゼロから増加していってもVTM値の標準偏差値は、それほど大きくは変動せずに小さい値に維持される。
図15のパート(a)には、ヒータ値の増加に対する位置精度の平均値の変化の様子が表されている。本実施形態のHDD10では、ヘッド1が磁気ディスク5表面から離れている限り、ヘッド1は磁気ディスク5の半径方向についての所望の位置にかなり高い精度で位置決めされる。このため、ヒータ値が小さくてヘッド1が磁気ディスク5表面から離れている間は、図14のパート(a)に示すように、ヒータ値がゼロから増加していっても位置精度の平均値は、それほど大きくは変動せずに小さい値に維持される。
図15のパート(b)には、ヒータ値の増加に対する位置精度の標準偏差値の変化の様子が表されている。ヘッド1が磁気ディスク5表面から一定の距離離れている状況では、サーボセクタ520での読み取りで得られる位置精度は、これらサーボセクタ間ではそれほど差がなく、従って位置精度の標準偏差値は小さい値となる。このため、ヒータ値が小さくてヘッド1が磁気ディスク5表面から離れている間は、図15のパート(b)に示すように、ヒータ値がゼロから増加していっても位置精度の標準偏差値は、それほど大きくは変動せずに小さい値に維持される。
以上、ヒータ値が小さくてヘッド1が磁気ディスク5表面から離れているときの、位置情報およびデータそれぞれの再生信号のAGC利得値、位置精度、およびVTM値の4種類の値についての平均値および標準偏差値の振る舞いについて詳しく説明したが、図8のステップS303〜ステップS309までの過程が、ヒータ値を所定量ずつ増加させながら何度も繰り返されるにつれ、やがて、ヘッド1が磁気ディスク5表面に接触し始めるようになる。ヘッド1が磁気ディスク5表面に接触するようになると、上記の4種類についての平均値および標準偏差値は、ヒータ値が小さくてヘッド1が磁気ディスク5表面から離れているときとは異なる振る舞いを示すようになる。
例えば、データや位置情報の再生信号におけるAGC利得値の平均値については、ヘッドが磁気ディスクと接触するようになると、ヒータ値の増加に対して再生信号の信号レベルが変化しない状態、すなわちAGC利得値の平均値が変化しない状態(AGC利得値の平均値の飽和状態)が見られるようになる。また、場合によっては、ヘッドが磁気ディスク表面の凹凸と衝突を繰り返すことで、AGC利得値の平均値の変動が見られることもある。例えば、図13のパート(a)では、ヒータ値が80[mW]付近でAGC利得値の平均値があまり変化しなくなっており、図12のパート(a)では、ヒータ値が80[mW]付近でAGC利得値の平均値が少し増加している。
また、ヘッド1が磁気ディスク5表面の凹凸と衝突するようになることでセクタ間でAGC利得値に差が出やすくなり、AGC利得値の標準偏差値が大きくなることがある。例えば、図12のパート(b)では、75[mW]以上のヒータ値でAGC利得値の標準偏差値が急激に大きくなっており、図13のパート(b)では、80[mW]付近のヒータ値でAGC利得値の標準偏差値が少し大きくなっている。
また、VTM値の平均値については、ヘッド1が磁気ディスク5と接触し始めると、読取エラーが多くなってVTM値の平均値が急増しやすくなる。VTM値の標準偏差値については、ヘッド1が磁気ディスク5表面の凹凸と衝突するようになることでデータセクタ間でVTM値に差が出やすくなり、VTM値の標準偏差値が急激に大きくなることがある。
また、位置精度の平均値については、ヘッド1が磁気ディスク5と接触し始めると、ヘッド1が磁気ディスク5表面の凹凸と衝突するようになることで、ヘッド1の読取位置が、磁気ディスク5の半径方向についてサーボセクタ520の中心位置から大きくずれやすくなり、位置精度の値(すなわち、読取位置と中心位置との距離を表す値)は、大きくなる現象が見られることがある。また、位置精度の標準偏差値については、ヘッド1が磁気ディスク5表面の凹凸と衝突するようになることでサーボセクタ520間で位置精度に差が出やすくなり、位置精度の標準偏差値が急激に大きくなることがある。
ここで、以上説明した特徴的な変化の起こりやすさは、ヘッドと磁気ディスクとの接触の仕方に大きく依存しており、磁気ディスク表面の形状や温度や湿度等といった環境要因に依存して異なるものとなりやすい。このため、変化の検出対象となるのが上記の4種類のいずれであるかによってTDヒータ値が異なることになりやすく、以上説明した特徴的な変化のいずれか1つだけに基づいてTDヒータ値が決定された場合、TDヒータ値が、接触が起きる実際のヒータ値より大きめとなったり、場合によっては、ヘッドは磁気ディスクに接触していないと判定されてしまうことが起こり得る。
例えば、図13のパート(b)や図15のパート(b)では、80[mW]以上のヒータ値で標準偏差値が少し大きくなっているものの、75[mW]以上80[mW]以下のヒータ値では変化が見られず、75[mW]以上のヒータ値で変化が見られる図12のパート(b)と比べると、図13のパート(b)のみに基づくTDヒータ値や、図15のパート(b)のみに基づくTDヒータ値は、実施よりもTDヒータ値が大き目に評価されてしまう可能性がある。また、図14のパート(a)、図14のパート(b)、および図15のパート(a)では、ヒータ値の目立った変化が見られず、図14のパート(a)のみに基づく接触の判定、図14のパート(b)のみに基づく接触の判定、および、図15のパート(a)のみに基づく接触の判定では、ヘッドは磁気ディスクに接触していないと判定されてしまうことが起こり得る。
このように、4種類の値のいずれか一つだけに基づいてヘッドと磁気ディスクとの接触を検出してTDヒータ値を決定する方法では、ヘッドと磁気ディスクとの接触の仕方に応じてTDヒータ値の精度が低く、ヘッドと磁気ディスクとの間の距離と、ヒータ値との対応関係も不正確となる。このため、この方法が採用された場合、アクセス時にヘッドと磁気ディスクが頻繁に接触して磁気ディスクの損傷を招くおそれがある。
本実施形態のHDD10では、ヘッド1と磁気ディスク5の接触の判定方法の内容が、判定対象が上記の4種類の値のいずれであるかの情報や、その判定対象の平均値および標準偏差値のうちのいずれについて接触の判定が行われるかの情報とともに記載されている複数のテーブルが図7のメモリ73に記録されており、そのテーブルの判定方法により、各テーブルに記載された判定対象の平均値あるいは標準偏差値についてヘッド1と磁気ディスク5との接触の際の上述した特徴的な変化の検出が行われる。ここで、上記の4種類の値は、上記の複数のテーブルの少なくとも1つのテーブルで判定対象となっており、従って、上記の4種類の値については全て接触の判定が行われるようになっている。
また、複数のテーブルの中には、同一の判定対象について、平均値についての判定方法を規定したテーブルと、標準偏差値についての判定方法を規定したテーブルとが存在しており、上記の4種類の値のうちの少なくとも1つの判定対象については、平均値に基づく判定と、標準偏差値に基づく判定との両方が行われるようになっている。
また、複数のテーブルの中には、同一の判定対象の平均値について、互いに異なる判定の内容を規定した2つ以上のテーブルも存在しており、上記の4種類の値のうちの少なくとも1つの判定対象については、平均値についての異なる判定方法が適用されるようになっている。
本実施形態のHDD10では、これら複数のテーブルそれぞれに従って、ヒータ値を所定量増加するごとに図7の制御/実行部702により接触の判定が実行され(図8のステップS308)、接触有りの判定が存在する場合は(図8のステップS308;Yes)、その接触有りの判定ごとにTDヒータ値が決定される。なお、後で詳述するようにTDヒータ値の決定の仕方は一般にはテーブルごとに異なっており、このため、接触有りと判定された時点でのヒータ値が同じであっても、TDヒータ値はテーブルごとに異なり得る。
さらに、図7の制御/実行部702は、決定されたTDヒータ値のうち最も低いTDヒータ値を求め、そのTDヒータ値を、ヘッド1と磁気ディスク5との間の距離と、ヒータ値との対応関係を求める際の、ヘッド1と磁気ディスク5との間の距離がゼロとみなされる基準のヒータ値(以下、最終TDヒータ値と呼ぶ)として用いて(図8のステップS310)、その最終TDヒータ値に基づき、上記の対応関係を決定する。
このように、本実施形態では、上記の4種類の値それぞれについてその平均値あるいは標準偏差値に基づいてTDヒータ値が求められ、求められたTDヒータ値のうち最も低いTDヒータ値が最終TDヒータ値として採用されることとなる。このため、本実施形態では、上記の対応関係を求めるための基準のTDヒータ値の精度が、上記の4種類の値のいずれか1つだけに基づいてそのTDヒータ値を決める方法と比べてきわめて高くなっている。この結果、ヘッド1と磁気ディスク5との間の距離と、ヒータ値との対応関係の精度も高く、アクセス時に不必要にヘッド1と磁気ディスク5とが接触して磁気ディスク5が損傷することが回避される。
ここで、本実施形態では、図9の説明で上述したように、上記の4種類の値を取得するのにあたり、ヘッド1が磁気ディスク5に対して相対的にトラック50を1周するだけで、全サーボセクタおよび全データセクタから必要な情報を得ることができるため、4種類のTDヒータ値の決定方法を全部実行するといえども、実行にかかる時間は短く抑えられている。
また、本実施形態のHDD10では、上述したように、上記の4種類の値のうちの少なくとも1つの判定対象については、平均値に基づく判定と、標準偏差値に基づく判定との両方が行われるようになっており、これにより、最終TDヒータ値の精度がさらに向上している。
また、本実施形態のHDD10では、上記の4種類の値のうちの少なくとも1つの判定対象については、平均値についての異なる判定方法が適用されるようになっており、これによっても最終TDヒータ値の精度のさらなる向上が図られている。
また、本実施形態のHDD10では、上記の4種類の値の平均値や標準偏差値の変化を通じてTDヒータ値が少なくとも1つ決定された場合には、図8のステップS308でYesが選択されて、それ以上ヒータ値が所定量増加されることがない。このため、ヘッド1と磁気ディスク5との接触が進むことは、最小限に抑えられることとなる。
以下では、本実施形態のHDD10における、上述したテーブルに基づいて行われる判定方法について詳しく説明する。以下では、例として、判定対象がデータの再生信号のAGC利得値となっている5つのテーブルに基づく、ヘッド1と磁気ディスク5との接触についての5つの判定方法について具体的に説明する。これら5つの判定方法のうち、4つはAGC利得値の平均値の変化に基づくものであり、1つはAGC利得値の標準偏差値の変化に基づくものである。
まず、平均値の変化に基づく4つの判定方法のうちの第1の判定方法について説明する。
図16は、データの再生信号のAGC利得値の平均値の変化に基づく第1の判定方法の説明図である。
図16のパート(a)には、ヒータ値の増加に対するデータの再生信号のAGC利得値の平均値の変化の一例が表されている。なお、この図16のパート(a)には、ヒータ値が0から100までの範囲内で、AGC利得値の平均値が示されているが、これは説明の都合上であり、後述するように、実際にはヘッド1と磁気ディスク5との接触が判定された段階でヒータ値の増加が停止されるため、接触有りと判定された時点のヒータ値よりも大きいヒータ値についてはAGC利得値自体が取得されない。
第1の判定方法では、まず、AGC利得値の平均値それぞれについて、1段階上のヒータ値におけるAGC利得値の平均値との間で差分値が求められる。すなわち、ヒータ値の差が、ヒータ値の増加幅である上述の所定量に1倍になっている2つの平均値の間で差分値が求められる。
図16のパート(b)には、ヒータ値の増加に対するAGC利得値の平均値の差分値の変化の様子が表されている。この図に示すように、差分値は、ヒータ値が小さい時にはそれほど大きくは変動せず、この例では2前後の値となっている。ここで、ヒータ値の増加幅は、図8のステップS309における所定量であり一定の量である。このため、各ヒータ値における差分値は、実質的には、各ヒータ値におけるAGC利得値の傾きと同一である。
次に、あらかじめユーザにより指定されているヒータ値の範囲について、その範囲内のヒータ値における差分値の平均値が求められる。
図16のパート(c)には、あらかじめユーザにより指定されているヒータ値の範囲である指定範囲と、その範囲内のヒータ値における差分値の平均値とが示されている。この図16のパート(c)では、図中の2つの点線丸印のヒータ値の間の領域として指定範囲が図示されており、この図に示すように、指定範囲は、ヒータ値が比較的小さい領域内で指定されている範囲である。このため、この指定範囲内のヒータ値では、ヘッド1が磁気ディスク5から十分に離れた所に位置していると考えられ、この指定範囲内における差分値の平均値は、ヘッド1と磁気ディスク5との接触が起きていない状態でのAGC利得値の平均値の傾きに相当している。
この第1の判定方法では、この差分値の平均値に、この第1の判定方法に対応してあらかじめ決められている所定の基準値をかけたものが、以下に説明するように、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の判定の閾値として用いられる。この所定の基準値は、接触が起きていない状態でのAGC利得値の傾きに対する閾値の比率を決める値である。このように、閾値が直接決められている代わりに、閾値の比率が決められているのは、一般に、同じ機種のHDDであっても、ヘッドや磁気ディスクの特性により、ヒータ値の増加に対するAGC利得値の傾きが異なることがあるためである。
図16のパート(d)には、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の判定に用いられる閾値が示されている。この第1の判定方法では、閾値の比率は1より小さい値に決められており、閾値は、ほとんどの差分値よりも下側に存在する。
この第1の判定方法では、AGC利得値の平均値が求められるごとに、差分値が閾値を2連続で下回っているか否かの判定が行われ、2連続で閾値を下回っている差分値が現れた場合にヘッド1と磁気ディスク5とが接触したと判定される。そして、それ以上のヒータ値の増加が停止される。
図16のパート(e)では、2連続で閾値を下回っている2つの差分値が現れてヒータ値の増加が停止された様子が示されている。図16のパート(d)では、図中の連続した2つの点線丸印の差分値が閾値を下回っており、この段階でヘッド1と磁気ディスク5とが接触したと判定され、それ以上のヒータ値の増加が停止される。図16のパート(e)では、ヒータ値の増加が停止されたことを示すために、2つの点線丸印のうちの右側の点線丸印のヒータ値よりも大きいヒータ値における差分値については図示が省かれている。
ここで、この第1の判定方法では、閾値を下回らなかった最後の差分値のヒータ値がTDヒータ値として決定される。
図16のパート(f)には、閾値を下回らなかった最後の差分値が示されている。この図16のパート(f)では、2連続で閾値を下回っている2つの差分値の左側にある、点線丸印で示す差分値が、閾値を下回らなかった最後の差分値であり、この差分値におけるヒータ値がTDヒータ値として決定される。
ここで、以上説明した第1の判定方法に対応するテーブルには、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の判定対象がデータの再生信号のAGC利得値であってその平均値について判定が行われるという情報とともに、差分値を求める際の差分の相手が1段階上のヒータ値におけるAGC利得値の平均値であるという情報と、上記の所定の基準値についての情報と、連続する2つの差分値が閾値を下回ったときにヘッド1と磁気ディスク5との接触有りと判定されるという情報とが記載されている。
次に、平均値の変化に基づく4つの判定方法のうちの第2の判定方法について説明する。
図17は、データの再生信号のAGC利得値の平均値の変化に基づく第2の判定方法の説明図である。
図17のパート(a)には、ヒータ値の増加に対するデータの再生信号のAGC利得値の平均値の変化の一例が表されている。なお、この図17のパート(a)でも、ヒータ値が0から100までの範囲内で、AGC利得値の平均値が示されているが、これは説明の都合上であり、後述するように、実際にはヘッド1と磁気ディスク5との接触が判定された段階でヒータ値の増加が停止されるため、接触有りと判定された時点のヒータ値よりも大きいヒータ値についてはAGC利得値自体が取得されない。
第2の判定方法でも、まず、AGC利得値の平均値それぞれについて、1段階上のヒータ値におけるAGC利得値の平均値との間で差分値が求められる。すなわち、ヒータ値の差が、ヒータ値の増加幅である上述の所定量に1倍になっている2つの平均値の間で差分値が求められる。
図17のパート(b)には、ヒータ値の増加に対するAGC利得値の平均値の差分値の変化の様子が表されている。この図に示すように、差分値は、ヒータ値が小さい時にはそれほど大きくは変動せず、この例では2前後の値となっている。
次に、あらかじめユーザにより指定されているヒータ値の範囲について、その範囲内のヒータ値における差分値の平均値が求められる。
図17のパート(c)には、あらかじめユーザにより指定されているヒータ値の範囲である指定範囲と、その範囲内のヒータ値における差分値の平均値とが示されている。この図17のパート(c)では、図中の2つの点線丸印のヒータ値の間の領域として指定範囲が図示されており、この図に示すように、指定範囲は、ヒータ値が比較的小さい領域内で指定されている範囲である。このため、この指定範囲内のヒータ値では、ヘッド1が磁気ディスク5から十分に離れた所に位置している。
この第2の判定方法では、この差分値の平均値に、この第2の判定方法に対応してあらかじめ決められている所定の基準値をかけたものが、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の判定の閾値として用いられる。ここで、この第2の判定方法では、所定の基準値は負の値である。
図17のパート(d)には、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の判定に用いられる閾値が示されている。この第2の判定方法では、閾値の比率は1より小さい値に決められており、閾値は、ほとんどの差分値よりも下側に存在する。
この第2の判定方法では、AGC利得値の平均値が求められるごとに、差分値が閾値を下回っているか否かの判定が行われ、閾値を下回っている差分値が1つ現れた場合にヘッド1と磁気ディスク5とが接触したと判定される。そして、それ以上のヒータ値の増加が停止される。
図17のパート(e)では、閾値を下回っている差分値が1つ現れてヒータ値の増加が停止された様子が示されている。図17のパート(d)では、図中の点線丸印の差分値が閾値を下回っており、この段階でヘッド1と磁気ディスク5とが接触したと判定され、それ以上のヒータ値の増加が停止される。図17のパート(e)では、ヒータ値の増加が停止されたことを示すために、点線丸印のヒータ値よりも大きいヒータ値における差分値については図示が省かれている。
ここで、この第2の判定方法では、閾値を下回らなかった最後の差分値のヒータ値がTDヒータ値として決定される。
図17のパート(f)には、閾値を下回らなかった最後の差分値が示されている。この図17のパート(f)では、閾値を下回っている差分値の左側にある、点線丸印で示す差分値が、閾値を下回らなかった最後の差分値であり、この差分値におけるヒータ値がTDヒータ値として決定される。
ここで、以上説明した第2の判定方法に対応するテーブルには、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の判定対象がデータの再生信号のAGC利得値であってその平均値について判定が行われるという情報とともに、差分値を求める際の差分の相手が1段階上のヒータ値におけるAGC利得値の平均値であるという情報と、上記の所定の基準値についての情報と、1つの差分値が閾値を下回ったときにヘッド1と磁気ディスク5との接触有りと判定されるという情報とが記載されている。
次に、平均値の変化に基づく4つの判定方法のうちの第3の判定方法について説明する。
図18は、データの再生信号のAGC利得値の平均値の変化に基づく第3の判定方法の説明図である。
図18のパート(a)には、ヒータ値の増加に対するデータの再生信号のAGC利得値の平均値の変化の一例が表されている。なお、この図18のパート(a)でも、ヒータ値が0から100までの範囲内で、AGC利得値の平均値が示されているが、これは説明の都合上であり、後述するように、実際にはヘッド1と磁気ディスク5との接触が判定された段階でヒータ値の増加が停止されるため、接触有りと判定された時点のヒータ値よりも大きいヒータ値についてはAGC利得値自体が取得されない。
第3の判定方法でも、まず、AGC利得値の平均値それぞれについて、1段階上のヒータ値におけるAGC利得値の平均値との間で差分値が求められる。すなわち、ヒータ値の差が、ヒータ値の増加幅である上述の所定量に1倍になっている2つの平均値の間で差分値が求められる。
図18のパート(b)には、ヒータ値の増加に対するAGC利得値の平均値の差分値の変化の様子が表されている。この図に示すように、差分値は、ヒータ値が小さい時にはそれほど大きくは変動せず、この例では2前後の値となっている。
次に、あらかじめユーザにより指定されているヒータ値の範囲について、その範囲内のヒータ値における差分値の平均値が求められる。
図18のパート(c)には、あらかじめユーザにより指定されているヒータ値の範囲である指定範囲と、その範囲内のヒータ値における差分値の平均値とが示されている。この図18のパート(c)では、図中の2つの点線丸印のヒータ値の間の領域として指定範囲が図示されており、この図に示すように、指定範囲は、ヒータ値が比較的小さい領域内で指定されている範囲である。このため、この指定範囲内のヒータ値では、ヘッド1が磁気ディスク5から十分に離れた所に位置している。
この第3の判定方法では、この差分値の平均値に、この第3の判定方法に対応してあらかじめ決められている所定の基準値をかけたものが、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の判定の閾値として用いられる。
図18のパート(d)には、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の判定に用いられる閾値が示されている。この第3の判定方法では、閾値の比率は1より大きい値に決められており、閾値は、ほとんどの差分値よりも上側に存在する。
この第3の判定方法では、AGC利得値の平均値が求められるごとに、差分値が閾値を上回っているか否かの判定が行われ、閾値を上回っている差分値が1つ現れた場合にヘッド1と磁気ディスク5とが接触したと判定される。そして、それ以上のヒータ値の増加が停止される。
図18のパート(e)では、閾値を上回っている差分値が1つ現れてヒータ値の増加が停止された様子が示されている。図18のパート(d)では、図中の点線丸印の差分値が閾値を上回っており、この段階でヘッド1と磁気ディスク5とが接触したと判定され、それ以上のヒータ値の増加が停止される。図18のパート(e)では、ヒータ値の増加が停止されたことを示すために、点線丸印のヒータ値よりも大きいヒータ値における差分値については図示が省かれている。
ここで、この第3の判定方法では、閾値を上回らなかった最後の差分値のヒータ値がTDヒータ値として決定される。
図18のパート(f)には、閾値を上回らなかった最後の差分値が示されている。この図18のパート(f)では、閾値を上回っている差分値の左側にある、点線丸印で示す差分値が、閾値を上回らなかった最後の差分値であり、この差分値におけるヒータ値がTDヒータ値として決定される。
ここで、以上説明した第3の判定方法に対応するテーブルには、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の判定対象がデータの再生信号のAGC利得値であってその平均値について判定が行われるという情報とともに、差分値を求める際の差分の相手が1段階上のヒータ値におけるAGC利得値の平均値という情報と、上記の所定の基準値についての情報と、1つの差分値が閾値を上回ったときにヘッド1と磁気ディスク5との接触有りと判定されるという情報とが記載されている。
次に、平均値の変化に基づく4つの判定方法のうちの第4の判定方法について説明する。
図19は、データの再生信号のAGC利得値の平均値の変化に基づく第4の判定方法の説明図である。
図19のパート(a)には、ヒータ値の増加に対するデータの再生信号のAGC利得値の平均値の変化の一例が表されている。なお、この図19のパート(a)でも、ヒータ値が0から100までの範囲内で、AGC利得値の平均値が示されているが、これは説明の都合上であり、後述するように、実際にはヘッド1と磁気ディスク5との接触が判定された段階でヒータ値の増加が停止されるため、接触有りと判定された時点のヒータ値よりも大きいヒータ値についてはAGC利得値自体が取得されない。
第4の判定方法では、まず、AGC利得値の平均値それぞれについて、2段階上のヒータ値におけるAGC利得値の平均値との間で差分値が求められる。すなわち、ヒータ値の差が、ヒータ値の増加幅である上述の所定量に2倍になっている2つの平均値の間で差分値が求められる。
図19のパート(b)には、ヒータ値の増加に対するAGC利得値の平均値の差分値の変化の様子が表されている。この図に示すように、差分値は、ヒータ値が小さい時にはそれほど大きくは変動せず、この例では4前後の値となっている。
次に、あらかじめユーザにより指定されているヒータ値の範囲について、その範囲内のヒータ値における差分値の平均値が求められる。
図19のパート(c)には、あらかじめユーザにより指定されているヒータ値の範囲である指定範囲と、その範囲内のヒータ値における差分値の平均値とが示されている。この図19のパート(c)では、図中の2つの点線丸印のヒータ値の間の領域として指定範囲が図示されており、この図に示すように、指定範囲は、ヒータ値が比較的小さい領域内で指定されている範囲である。このため、この指定範囲内のヒータ値では、ヘッド1が磁気ディスク5から十分に離れた所に位置している。
この第4の判定方法では、この差分値の平均値に、この第4の判定方法に対応してあらかじめ決められている所定の基準値をかけたものが、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の判定の閾値として用いられる。
図19のパート(d)には、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の判定に用いられる閾値が示されている。この第4の判定方法では、閾値の比率は1より小さい値に決められており、閾値は、ほとんどの差分値よりも下側に存在する。
この第4の判定方法では、AGC利得値の平均値が求められるごとに、差分値が閾値を下回っているか否かの判定が行われ、閾値を下回っている差分値が2連続で現れた場合にヘッド1と磁気ディスク5とが接触したと判定される。そして、それ以上のヒータ値の増加が停止される。
図19のパート(e)では、閾値を下回っている差分値が2連続で現れてヒータ値の増加が停止された様子が示されている。図19のパート(d)では、図中の連続した2つの点線丸印の差分値が閾値を下回っており、この段階でヘッド1と磁気ディスク5とが接触したと判定され、それ以上のヒータ値の増加が停止される。図19のパート(e)では、ヒータ値の増加が停止されたことを示すために、2つの点線丸印のうち右側の点線丸印のヒータ値よりも大きいヒータ値における差分値については図示が省かれている。
ここで、この第4の判定方法では、閾値を下回らなかった最後の差分値のヒータ値がTDヒータ値として決定される。
図19のパート(f)には、閾値を下回らなかった最後の差分値が示されている。この図19のパート(f)では、閾値を下回っている2つの差分値の左側にある、点線丸印で示す差分値が、閾値を下回らなかった最後の差分値であり、この差分値におけるヒータ値がTDヒータ値として決定される。
ここで、以上説明した第4の判定方法に対応するテーブルには、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の判定対象がデータの再生信号のAGC利得値であってその平均値について判定が行われるという情報とともに、差分値を求める際の差分の相手が2段階上のヒータ値におけるAGC利得値の平均値であるという情報と、上記の所定の基準値についての情報と、連続する2つの差分値が閾値を下回ったときにヘッド1と磁気ディスク5との接触有りと判定されるという情報とが記載されている。
次に、AGC利得値の標準偏差値の変化に基づく判定方法について説明する。
図20は、データの再生信号のAGC利得値の標準偏差値の変化に基づく判定方法の説明図である。
図20のパート(a)には、ヒータ値の増加に対するデータの再生信号のAGC利得値の標準偏差値の変化の一例が表されている。なお、この図20のパート(a)でも、ヒータ値が0から100までの範囲内で、AGC利得値の標準偏差値が示されているが、これは説明の都合上であり、後述するように、実際にはヘッド1と磁気ディスク5との接触が判定された段階でヒータ値の増加が停止されるため、接触有りと判定された時点のヒータ値よりも大きいヒータ値についてはAGC利得値自体が取得されない。
標準偏差値の変化に基づく判定方法では、まず、あらかじめユーザにより指定されているヒータ値の範囲について、その範囲内のヒータ値におけるAGC利得値の標準偏差値について、平均値と標準偏差値が求められる。
図20のパート(b)には、あらかじめユーザにより指定されているヒータ値の範囲である指定範囲と、その範囲内のヒータ値における標準偏差値の平均値とが示されている。この図20のパート(b)では、図中の2つの点線丸印のヒータ値の間の領域として指定範囲が図示されており、この図に示すように、指定範囲は、ヒータ値が比較的小さい領域内で指定されている範囲である。このため、この指定範囲内のヒータ値では、ヘッド1が磁気ディスク5から十分に離れた所に位置している。
この標準偏差値の変化に基づく判定方法では、先に求められた、指定範囲におけるAGC利得値の標準偏差値についての標準偏差値に、この判定方法に対応してあらかじめ決められている所定の基準値をかけ、さらに、先に求められた、指定範囲における平均値を加えたものが、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の判定の閾値として用いられる。
図20のパート(c)には、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の判定に用いられる閾値が示されている。
この標準偏差値の変化に基づく判定方法では、AGC利得値の標準偏差値が求められるごとに、AGC利得値の標準偏差値が閾値を上回っているか否かの判定が行われ、閾値を上回っているAGC利得値の標準偏差値が1つ現れた場合にヘッド1と磁気ディスク5とが接触したと判定される。そして、それ以上のヒータ値の増加が停止される。
図20のパート(d)では、閾値を上回っているAGC利得値の標準偏差値が1つ現れてヒータ値の増加が停止された様子が示されている。図20のパート(d)では、図中の点線丸印のAGC利得値の標準偏差値が閾値を上回っており、この段階でヘッド1と磁気ディスク5とが接触したと判定され、それ以上のヒータ値の増加が停止される。図20のパート(d)では、ヒータ値の増加が停止されたことを示すために、点線丸印のヒータ値よりも大きいヒータ値におけるAGC利得値の標準偏差値については図示が省かれている。
ここで、この標準偏差値の変化に基づく判定方法では、閾値を上回らなかった最後のAGC利得値の標準偏差値のヒータ値がTDヒータ値として決定される。
図20のパート(e)には、閾値を上回らなかった最後のAGC利得値の標準偏差値が示されている。この図20のパート(e)では、閾値を上回っているAGC利得値の標準偏差値の左側にある、点線丸印で示すAGC利得値の標準偏差値が、閾値を上回らなかった最後のAGC利得値の標準偏差値であり、このAGC利得値の標準偏差値におけるヒータ値がTDヒータ値として決定される。
ここで、以上説明した標準偏差値の変化に基づく判定方法に対応するテーブルには、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の判定対象がデータの再生信号のAGC利得値であってその標準偏差値について判定が行われるという情報ととともに、差分はとらずにAGC利得値の標準偏差値そのもの値(すなわち生の値)を判定に用いるという情報と、上記の所定の基準値についての情報と、1つのAGC利得値の標準偏差値が閾値を上回ったときにヘッド1と磁気ディスク5との接触有りと判定されるという情報とが記載されている。
以上が、判定対象がデータの再生信号のAGC利得値となっている5つのテーブルに基づく、ヘッド1と磁気ディスク5との接触についての5つの判定方法についての説明である。
以上の第1の判定方法〜第4の判定方法の各判定方法の説明では、説明の都合上、ヘッド1と磁気ディスク5との接触が判定されるデータとして、各判定方法で接触が検出されるような、互いに異なる、AGC利得値の平均値のデータがそれぞれ用いられたが、第1の判定方法〜第4の判定方法にそれぞれ対応する4つテーブルすべてがHDD10に備えられている場合には、同一のデータに対し、第1の判定方法〜第4の判定方法のすべてが適用されて接触の判定が実行される。
なお、以上説明した5つの判定方法では、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の判定の基準となる、閾値を連続して超えたデータ点(AGC利得値の平均値の差分値やAGC利得値の標準偏差値)の数は、1つあるいは2つとなっており、判定方法の間では、接触の判定の基準となる、閾値を連続して超えた値の数が一般に異なっている。また、差分間隔についても、差分の相手のヒータ値が1段階上のヒータ値である場合と、差分の相手のヒータ値が2段階上のヒータ値である場合と、差分をとらずに生のデータ値(平均値あるいは標準偏差値)がそのまま使われる場合とが存在しており、5つの判定方法の間では一般に異なっている。このような、閾値を連続して超えた値の数や差分間隔の相違のため、接触有りと判定された時点でのヒータ値が同じであっても、TDヒータ値は、一般には判定方法ごとに異なり得る。
以上では、判定対象がデータの再生信号のAGC利得値となっている場合を例にとって説明したが、判定対象が、位置情報の再生信号のAGC利得値や、VTM値や、位置精度を判定対象である場合も同様にして、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の判定が行われる。すなわち、本実施形態のHDD10では、位置情報の再生信号のAGC利得値や、VTM値や、位置精度に対しても、これらをそれぞれ判定対象とするテーブルがそれぞれ用意されており、各テーブルには、以上説明した判定方法のテーブルと同様に、差分の間隔の情報と、閾値を決定する基準値の情報と、接触有りと判定するための判定基準となる閾値を連続して越えるデータ点の数の情報と、それらのデータ点が閾値を上側に越えるか、それとも下側に越えるかについての情報とが記載されている。そして、これらのテーブルに基づき、以上説明した判定方法のいずれかと同様にしてヘッド1と磁気ディスク5との接触の判定やTDヒータ値の決定が行われる。
例えば、位置情報の再生信号のAGC利得値の平均値や標準偏差値については、判定対象が異なることを除き、上述した、判定対象がデータの再生信号のAGC利得値となっている5つのテーブルを用いて、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の判定やTDヒータ値の決定が行われる。
また、VTM値については、例えば、VTM値の平均値に対し上述の第3の判定方法と同様の判定方法を用いて、図4の説明で上述した発散状態を検出することで、へッド1と磁気ディスク5との接触の判定やTDヒータ値の決定が行われる。
また、位置精度については、例えば、位置精度の平均値に対し図18の第3の判定方法と同様の判定方法を用いて、へッド1と磁気ディスク5との接触時における位置精度の悪化(位置精度の値の増加)を検出することで、へッド1と磁気ディスク5との接触の判定やTDヒータ値の決定することが可能である。また、位置精度の標準偏差値に対し図20の標準偏差値の変化に基づく判定方法と同様の判定方法を用いてへッド1と磁気ディスク5との接触時における位置精度の大きな変動を検出することで、へッド1と磁気ディスク5との接触の判定やTDヒータ値の決定することも可能である。
図21は、位置精度の標準偏差値に対し標準偏差値の変化に基づく判定方法を用いてTDヒータ値が決定される一例を表した図である。
この例では、図20の標準偏差値の変化に基づく判定方法と同様にして閾値が決定され、図20ではその閾値が示されている。標準偏差値の値が0.04のラインで示されている。この例では、ヒータ値が48[mW]のときに位置精度の標準偏差値が越えており、その1つ手前のヒータ値である45[mW]がTDヒータ値として決定される。
次に、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の判定に用いられる上述の複数のテーブルについて詳しく説明する。
図22は、複数のテーブルの一例を表した図である。
図22には、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の判定の実行の上で必要な情報が、「指定領域」、「基準値0」〜「基準値11」、および「テーブル0」〜「テーブル11」、の各項目ごとに記載されている。ここで、図22では、「テーブル0」〜「テーブル11」の12個の欄が存在しており、複数のテーブルとして12個のテーブルが存在していることを表している。以下、各項目について説明する。
「指定領域」の「Data」の欄には、上述の5つの判定方法で説明した指定範囲が16進法の2桁の数値を用いて示されており、「指定領域」の「Address」の欄には、その指定範囲の情報(Data)の、図7のメモリ73における格納アドレス(格納場所)が16進法の2桁の数値を用いて示されている。ここで、この例では、指定範囲の始点が、図22の「指定領域」における「Start」についての「Data」の欄の値「01」で表されており、指定範囲の終点が、図22の「指定領域」における「Stop」についての「Data」の欄の値「0A」で表されている。
「基準値0」〜「基準値11」の各「Data」の欄には、上述の5つの判定方法で説明した基準値の内容が16進法の2桁の数値を用いて示されており、「基準値0」〜「基準値11」の各「Address」の欄には、その基準値の情報(Data)の、図7のメモリ73における格納アドレス(格納場所)が16進法の2桁の数値を用いて示されている。ここで、この例では、「基準値0」〜「基準値11」は、全部で12種類の基準値が存在することを表しており、以下で説明するように、複数のテーブルでは、この12種類の基準値のうちのいずれか1つを採用できる。ここで、「基準値0」〜「基準値11」の各欄は「Low」と「High」の2つの欄に区分されており、それぞれ「Data」の欄に数値が記載されている。この「Low」の数値は、基準値の小数点以下の数値を表しており、「High」の数値は、基準値の小数点より大きい数値を表している。例えば、「基準値0」における「Low」についての「Data」の欄には、値「80」が示されており、この数値は、10進法における「0.5」を表している。一方、「基準値0」における「High」についての「Data」の欄には、値「00」が示されており、基準値の小数点より大きい数値が10進法における「0」であることを表している。まとめると、「基準値0」は10進法における「0.5」を表していることとなる。また、「基準値1」における「Low」についての「Data」の欄には、値「00」が示されており、この数値は、10進法における小数点以下の数値が存在せず、基準値が整数であることを表している。一方、「基準値1」における「High」についての「Data」の欄には、値「FE」が示されており、この数値は10進法に数値が「−2」であることを示している。なお、ここでは、16進法で負の符号の数値については、16進法で「100」の数値を、その負の符号の数値を加えて得られる数値で表現する表記法が採用されている。まとめると、「基準値1」は10進法における「−2」を表していることとなる。
「テーブル0」〜「テーブル11」の各「Data」の欄には、12個のテーブルの情報(Data)の内容が16進法の2桁の数値を用いて示されており、「テーブル0」〜「テーブル11」の各「Address」の欄には、その基準値の情報(Data)の、図7のメモリ73における格納アドレス(格納場所)が16進法の2桁の数値を用いて示されている。「テーブル0」〜「テーブル11」の各欄は、「Prm0」〜「Prm3」の4つの欄に区分されており、それぞれ「Data」の欄に16進法で2桁の数値が記載されている。
図23は、テーブルの構成を表した図である。
各テーブルは、「Prm0」〜「Prm3」についての「Data」の欄の16進法で2桁の数値を、2進法で8桁の数値で表現したときの数値によって特徴付けられる。図23では、「Data」の欄が2進法の8桁にそれぞれ対応した「Bit0」〜「Bit8」の8つの欄に区分されており、この図には、2進法の数値によって表される内容も示されている。以下、2進法の数値によって表される内容について説明する。
まず、「Prm0」の欄について説明する。
図23の「Prm0」の欄における2進法の8桁の数値のうち、「Bit4」〜「Bit7」の上位4桁の数値は、判定対象が、データのAGC利得値、位置情報のAGC利得値、VTM値、および位置精度の4種類のうちのいずれかであるかを表すとともに、平均値に基づく判定であるか、それとも標準偏差値に基づく判定であるかも表している。具体的には2進法の4桁の数値との対応関係は下記の通りである。
「0000」 データのAGC利得値の平均値
「0001」 データのAGC利得値の標準偏差値
「0010」 位置情報のAGC利得値の平均値
「0011」 位置情報のAGC利得値の標準偏差値
「0100」 VTM値の平均値
「0101」 VTM値の標準偏差値
「0110」 位置精度の平均値
「0111」 位置精度の標準偏差値
図23の「Prm0」の欄における2進法の8桁の数値のうち「Bit2」および「Bit3」の2桁の数値は、接触の判定の際の差分についての差分間隔を表している。具体的には、「01」が、上述した判定方法1、判定方法2、および判定方法3のように差分の相手のヒータ値が1段階上のヒータ値であり差分間隔が1(すなわち、ヒータ値の差が、ヒータ値の増加幅である上述の所定量の1倍)であることを表しており、「10」が、上述した判定方法4のように差分の相手のヒータ値が2段階上のヒータ値であり差分間隔が2(すなわち、ヒータ値の差が、ヒータ値の増加幅である上述の所定量の2倍)であることを表している。また、「00」が、図20の標準偏差値の変化に基づく判定方法のように差分をとらずに生のデータ値(平均値あるいは標準偏差値)がそのまま使われることを表している。
図23の「Prm0」の欄における2進法の8桁の数値のうち「Bit1」および「Bit0」の下位2桁の数値は、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の判定の基準となる、閾値を連続して超えるデータ点の数(判定対象の平均値の差分値や判定対象の標準偏差値)の数を表している。具体的には、「01」が、上述した判定方法2、判定方法3、および図20の標準偏差値の変化に基づく判定方法のように、閾値を連続して超えるデータ点の数が1個であることを表しており、「10」が、上述した判定方法1および判定方法4のように、閾値を連続して超えるデータ点の数が2個であることを表している。
以上説明した「Prm0」の欄の数値について、図22の「テーブル0」〜「テーブル4」の具体例に則して説明する。これら「テーブル0」〜「テーブル4」は、上述した、第1の判定方法〜第4の判定方法、および図20の標準偏差値の変化に基づく判定方法にそれぞれ対応するテーブルであり、以下では各テーブルの「Prm0」の欄の数値でこの対応が実現されていることを確認する。
「テーブル0」〜「テーブル4」の「Prm0」の欄における16進法の数値は、それぞれ、「06」、「05」、「05」、「0A」、「11」であり、2進法の数値で表現するとこれらの数値は、それぞれ、「00000110」、「00000101」、「00000101」、「00001010」、「00010001」である。
「Prm0」の欄における2進法の8桁の数値のうち、「Bit4」〜「Bit7」の上位4桁の数値については、「テーブル0」〜「テーブル3」では、「Bit4」〜「Bit7」の上位4桁の数値はいずれも「0000」であり、判定対象はデータのAGC利得値であって平均値に基づいて判定が行われることとなる。一方、「テーブル4」では、「Bit4」〜「Bit7」の上位4桁の数値は「0001」であり、判定対象はデータのAGC利得値であって標準偏差値に基づいて判定が行われることとなる。
「Prm0」の欄における2進法の8桁の数値のうち、「Bit2」および「Bit3」の2桁の数値については、「テーブル0」〜「テーブル2」では、「Bit2」および「Bit3」の2桁の数値は「01」であり、差分間隔が1であることを示している。また、「テーブル3」では、「Bit2」および「Bit3」の2桁の数値は「10」であり、差分間隔が2であることを示している。また、「テーブル3」では、「Bit2」および「Bit3」の2桁の数値は「00」であり、差分はとらずに生データが判定に用いられることを示している。
「Prm0」の欄における2進法の8桁の数値のうち、「Bit0」および「Bit1」の2桁の数値については、「テーブル0」および「テーブル3」では、「Bit0」および「Bit1」の2桁の数値は「10」であり、閾値を連続して超えるデータ点の数が2個であることを示している。一方、「テーブル1」、「テーブル2」、および「テーブル4」では、「Bit0」および「Bit1」の2桁の数値は「01」であり、閾値を連続して超えるデータ点の数が1個であることを示している。
以上により、「テーブル0」〜「テーブル4」の「Prm0」の欄の数値が、上述した、第1の判定方法〜第4の判定方法、および図20の標準偏差値の変化に基づく判定方法にそれぞれ対応していることが確認された。
なお、「テーブル5」〜「テーブル8」については、「Prm0」の欄における2進法の8桁の数値のうち「Bit4」〜「Bit7」の上位4桁の数値は、「テーブル5」〜「テーブル8」では「0010」であり、「テーブル9」では「0011」である。そこで、図22では、「テーブル5」〜「テーブル8」は、位置情報のAGC利得値の平均値に基づく判定のためのテーブルであり、「テーブル9」は位置情報のAGC利得値の標準偏差値に基づく判定のためのテーブルであることが示されていることとなる。
また、「テーブル10」については、「Prm0」の欄における2進法の8桁の数値のうち「Bit4」〜「Bit7」の上位4桁の数値は「0100」であり、「テーブル10」は、VTM値の平均値に基づく判定のためのテーブルであることが示されている。
また、「テーブル11」については、「Prm0」の欄における2進法の8桁の数値のうち「Bit4」〜「Bit7」の上位4桁の数値は「0110」であり、「テーブル10」は、位置精度の平均値に基づく判定のためのテーブルであることが示されている。
以上より、図22の例では、データのAGC利得値、位置情報のAGC利得値、VTM値、および位置精度の4種類のすべてについて判定が行われることとなる。
次に、図23に戻って「Prm1」の欄について説明する。
図23の「Prm1」の欄における2進法の8桁の数値のうち、「Bit4」〜「Bit7」の上位4桁の数値は、平均値に基づく判定の際の平均値用基準値(上述の第1の判定方法〜第4の判定方法参照)を表しており、「Bit0」〜「Bit3」の下位4桁の数値は、標準偏差値に基づく判定の際の標準偏差値用基準値(図20の標準偏差値の変化に基づく判定方法参照)を表している。これら2進法の4桁の数値と基準値との対応関係は以下の通りである。
「0000」〜「0111」の12個の数値(10進法では値「0」から値「11」に対応する12個の数値)は、それぞれ、図22の「基本値0」〜「基本値11」の12個の基本値の「0」〜「11」の番号をそれぞれ指定する数であり、この番号の指定で、「基本値0」〜「基本値11」の「Data」の欄に記載された数値が基本値として指定されることとなる。また、「1000」は、基本値が10進法の値「0」であることを表しており、「1001」〜「1111」の数値はいずれも、基本値が10進法の値「1」であることを表している。
図22および図23のテーブルでは、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の判定の際の閾値(例えば、図16〜図20参照)は、上述の、平均値用基準値と標準偏差値用基準値とを用いて下記の式で決まる。
閾値=(指定範囲での平均値)×(平均値用基準値)
+(指定範囲での標準偏差値)×(標準偏差値用基準値)・・・(1)
ここで、上記の式(1)における「指定範囲での平均値」は、判定対象の平均値あるいは標準偏差値についての指定範囲での平均値を指しており、例えば、図16〜図19では、指定範囲に属する差分値(AGC利得値の平均値の差分値)についての平均値である。また、上記の式(1)における「指定範囲での標準偏差値」は、判定対象の平均値あるいは標準偏差値についての指定範囲での標準偏差値を指しており、例えば、図20では、指定範囲に属する標準偏差値(AGC利得値の標準偏差値)についての標準偏差値である。
以上説明した「Prm1」の欄の数値について、図22のテーブルに則して説明する。
「テーブル0」については、「Prm1」の欄における16進法の数値は「0C」であり、2進法では、上位4桁の数値が「0000」であり、下位4桁の数値が「1000」である。そこで、「テーブル0」では、平均値用基準値は、「基準値0」の値として上述した値「0.5」(10進法で表現した数値)であり、標準偏差値用基準値は、値「0」(10進法で表現した数値)である。以上より「テーブル0」では、式(1)の右辺の第2項はゼロとなり、第1項の「指定範囲での平均値」に値「0.5」をかけることで閾値が決定される。
また、「テーブル1」については、「Prm1」の欄における16進法の数値は「1C」であり、2進法では、上位4桁の数値が「0001」であり、下位4桁の数値が「1000」である。そこで、「テーブル1」では、平均値用基準値は、「基準値1」の値として上述した値「−2」(10進法で表現した数値)であり、標準偏差値用基準値は、値「0」(10進法で表現した数値)である。以上より「テーブル1」では、式(1)の右辺の第2項はゼロとなり、第1項の「指定範囲での平均値」に値「−2」をかけることでが決定される。
また、「テーブル4」については、「Prm1」の欄における16進法の数値は「D4」であり、2進法では、上位4桁の数値が「1101」であり、下位4桁の数値が「0100」である。そこで、「テーブル1」では、平均値用基準値は、値「1」(10進法で表現した数値)であり、標準偏差値用基準値は、「基準値4」の値である値「6」である。以上より「テーブル4」では、式(1)より、閾値は、「指定範囲での標準偏差値」に値「6」をかけて、「指定範囲での平均値」を足すことで決定される。
以上の3つの例のように、図22では、平均値の基づく判定のためのテーブルでは、平均値用基準値が10進法で値「0」〜値「11」の数値であって標準偏差値用基準値が10進法で値「0」となるように各基準値が設定され、標準偏差値の基づく判定のためのテーブルでは、平均値用基準値が10進法で値「1」であって標準偏差値用基準値が10進法で値「0」〜値「11」の数値となるように各基準値が設定されている。
従って、図22では、平均値の基づく判定のためのテーブルでは、閾値は、「指定範囲での平均値」に「平均値用基準値」をかけることで決定されることとなる。実際、上述の、第1の判定方法〜第4の判定方法では、このようにして、閾値が決定されている。また、標準偏差値の基づく判定のためのテーブルでは、閾値は、「指定範囲での標準偏差値」に「標準偏差値用基準値」をかけて「指定範囲での平均値」を足すことで決定されることとなる。実際、上述の図20の標準偏差値の変化に基づく判定方法では、このようにして、閾値が決定されている。
次に、図23に戻って「Prm2」の欄について説明する。
図23の「Prm2」の欄における2進法の8桁の数値のうち、最高位の「Bit7」の数値は、データ点が閾値を上側に越える場合と下側に越える場合とのいずれを、ヘッド1と磁気ディスク5との接触有りという判定に用いるのかを指定する値である。具体的には、2進法の値「0」が、データ点(例えば、図16〜図19の各ヒータ値における差分値や、図20の各ヒータ値における標準偏差値)が閾値を上側に越える場合を接触有りという判定に用いることを示しており、2進法の値「1」が、データ点が閾値を下側に越える場合を接触有りという判定に用いることを示している。
例えば、図22の「テーブル0」、「テーブル1」、および「テーブル3」については、「Prm2」の欄における16進法の数値は「80」であり、2進法で最高位の「Bit7」の数値は、2進法の値「1」である。そこで、「テーブル0」、「テーブル1」、および「テーブル3」に基づく判定では、データ点が閾値を下側に越える場合を接触有りという判定に用いられることとなり、これらは、第1の判定方法、第2の判定方法、および、第4の判定方法で行われた判定の方式に一致している。
また、図22の「テーブル2」および「テーブル4」については、「Prm2」の欄における16進法の数値は「00」であり、2進法で最高位の「Bit7」の数値は、2進法の値「0」である。そこで、「テーブル2」および「テーブル4」に基づく判定では、データ点が閾値を上側に越える場合を接触有りという判定に用いられることとなり、これらは、第3の判定方法、および図20の標準偏差値の変化に基づく判定方法で行われた判定の方式に一致している。
図23の「Prm2」の欄の「Bit0」〜「Bit6」の欄や「Prm3」の欄は、以上説明してきた情報の他に、判定を特徴づける情報があるときにその情報が記載される予備の欄であり、図23では、「Prm2」の欄の「Bit0」〜「Bit6」の欄や「Prm3」の欄には、予備の欄であることを表す「Reserve」が示されている。すなわち、図22の例では、これらの欄に記載される数値は、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の判定には用いられない。
以上が、ヘッド1と磁気ディスク5との接触の判定に用いられる複数のテーブルの具体例についての説明である。
次に、AGC利得値、位置精度、およびVTM値といった複数種類の値の変化に基づき最終的なTDヒータ値(上述の最終TDヒータ値)を決定することの効果について、実験1および実験2の2つの実験結果を用いて説明する。
まず、実験1について説明する。
この実験1では、実施例のHDDとして、データの再生信号のAGC利得値の平均値および標準偏差値、VTM値の平均値、および位置精度の平均値に基づき、図8と同様にして最終ヒータ値を決定するHDDを用意した。すなわち、このHDDには、データの再生信号のAGC利得値の平均値および標準偏差値、VTM値の平均値、および位置精度の標準偏差値に、それぞれ対応した、ヘッドと磁気ディスクの接触を判定するための4つのテーブルが備えられている。このHDDは、第1面および第2面の両面にデータセクタやサーボセクタ(図5の説明参照)が設けられている磁気ディスクを2枚備えており、これら2枚の磁気ディスクの全部で4つの面でそれぞれアクセスを行うために、HD1〜HD4の4つのヘッドを備えており、ヘッドそれぞれについて最終TDヒータ値が決定される。ここで、これら4つのヘッドは、同じ材料でできた同じ構成のヘッドであり、上記の2枚の磁気ディスクは、同じ材料でできた同じ構成の磁気ディスクである。
これら4つのヘッドについて、TDヒータ値を決定する際にデータや位置情報を読み取るトラックの位置を変えながら、各トラックごとに、図8と同様にして最終TDヒータ値を求めた。
また、この実験1では、比較のために、データの再生信号のAGC利得値の平均値に対応するテーブルのみを有する点を除けば実施例のHDDと同じ構成を有するHDDを、比較例1のHDDとして、4つのヘッドそれぞれについて、TDヒータ値を決定する際にデータや位置情報を読み取るトラックの位置を変えながら、各トラックごとにTDヒータ値を求めた。
また、この実験1では、データの再生信号のAGC利得値の標準偏差値に対応するテーブルのみを有する点を除けば実施例のHDDと同じ構成を有するHDDを、比較例2のHDDとして、4つのヘッドそれぞれについて、TDヒータ値を決定する際にデータや位置情報を読み取るトラックの位置を変えながら、各トラックごとにTDヒータ値を求めた。
また、この実験1では、VTM値の標準偏差値に対応するテーブルのみを有する点を除けば実施例のHDDと同じ構成を有するHDDを、比較例3のHDDとして、4つのヘッドそれぞれについて、TDヒータ値を決定する際にデータや位置情報を読み取るトラックの位置を変えながら、各トラックごとにTDヒータ値を求めた。
また、この実験1では、位置精度の平均値に対応するテーブルのみを有する点を除けば実施例のHDDと同じ構成を有するHDDを、比較例4のHDDとして、4つのヘッドそれぞれについて、TDヒータ値を決定する際にデータや位置情報を読み取るトラックの位置を変えながら、各トラックごとにTDヒータ値を求めた。
図24は、比較例1の実験結果を表す図、図25は、比較例2の実験結果を表す図、図26は、比較例3の実験結果を表す図、図27は、比較例4の実験結果を表す図、図28は、実施例の実験結果を表す図である。
図24〜図28では、磁気ディスクの半径方向の距離に対応したゾーン番号によってトラックの位置が表現されており、ゾーン番号を横軸にとったときの、4つのヘッドそれぞれについてのTDヒータ値(図29の実施例では最終ヒータ値)のグラフが示されている。
図24の比較例1や図25の比較例2では、全体的には、ゾーン番号が0〜8程度のゾーン番号が小さい箇所や、ゾーン番号が20以上のゾーン番号が大きい箇所ではTDヒータ値が大きくなっており、特に、比較例1のHD0や比較例2のHD3では、ゾーン番号が小さい箇所でTDヒータ値が大きくなる傾向が強く現れている。
また、図26の比較例3では、ゾーン番号が0〜4程度のゾーン番号が小さい箇所では、極端にTDヒータ値が増加する傾向が見られ、特に、HD0はゾーン番号2の所でTDヒータ値が100[mW]にまで達している。
また、図27の比較例4では、全体的にはTDヒータ値が高くなっており、特に、HD1やHD2では、TDヒータ値が100[mW]にまで達する点が多く現れている。また、HD3ではゾーン番号に応じて大きく変動する傾向が強く現れている。
図28の実施例では、ゾーン番号が0〜8程度のゾーン番号が小さい箇所や、ゾーン番号が20以上のゾーン番号が大きい箇所ではTDヒータ値が大きくなる傾向が多少見られるものの、これらの箇所での最終ヒータ値は、HD0、HD1、HD2、およびHD3のいずれについても、比較例1や比較例2のTDヒータ値より小さいか、同程度の大きさとなっている。また、図28の実施例では、全体的に最終ヒータ値が小さくてゾーン番号に応じた最終ヒータ値の変動が少なく、比較例3や比較例4のTDヒータ値のように100[mW]に達する最終ヒータ値は存在していない。
以上の結果から、実施例のように、AGC利得値、位置精度、およびVTM値といった複数種類の値の変化に基づき最終的なTDヒータ値(上述の最終TDヒータ値)を決定することで、ヘッドや磁気ディスクによらず最終的なTDヒータ値が小さい値に抑えられることがわかる。
次に、実験2について説明する。
この実験2では、図5のHDD10と同じ構成をするが、ヘッドや磁気ディスクの材質が互いに異なる、機種1〜機種5までの5機種のHDDを、それぞれの機種について複数台ずつ用意し、これらすべてのHDDについて最終TDヒータ値を求めた。これらのHDDは、いずれも、図22の12個のテーブルを備えたHDDであり、これらのテーブルに従って、図8と同様にして最終TDヒータ値が求められる。
さらにこの実験2では、最終TDヒータ値を求めたHDDそれぞれについて、ヒータ値を所定量ずつ増加させながら、ヘッドと磁気ディスクとの接触を、AE(Acoustic Emission)法により検出し、接触検出時のヒータ値を求めた。ここで、AE法とは、固体材料中における超音波領域(20kHz〜1000kHz)の弾性波をAEセンサで検出すること通じて、固体材料中における歪みや亀裂などの存在を検出する方法のことである。実験2では、ヘッドが磁気ディスクとの接触したときにヘッドに与えられる衝撃で発生する弾性波をAE法により検出することで、ヘッドと磁気ディスクとの接触が検出される。一般に、AE法による接触検出は、かなり大掛かりであるため、工業的に大量生産される個々のHDDでTDヒータ値を求めるための方法として利用するのは現実的ではないが、AE法による接触検出はきわめて精度が高いことが知られており、AE法で求められた接触検出時のヒータ値は、実際にヘッドが磁気ディスクとの接触したときのヒータ値と考えることができる。そこで、このAE法で求められた接触検出時のヒータ値を、この実験2で求められた上述の最終TDヒータ値と比較することで、最終TDヒータ値の精度を評価することが可能となる。
図29は、実験2の結果を表した図である。
図29では、横軸にAE法で求められた接触(TD)検出時のヒータ値をとり、縦軸に最終TDヒータ値をとったときの、上述した、機種1〜機種5の5機種それぞれの複数台のHDDについての結果が示されている。ここで、同一機種のHDDであっても、一般に、HDDそれぞれのヘッドや磁気ディスクの特性は多少異なることが多く、このため、この実験2では、同一種類の複数台のHDDの間でも、最終TDヒータ値や、AE法で求められた接触検出時のヒータ値は、一般に異なるものとなっている。
この図では、図の斜め上方向に延びる傾きが1の直線が示されており、この直線上の点が、AE法で求められた接触(TD)検出時のヒータ値と、最終TDヒータ値とが一致する点である。この図に示すように、この図中の各点では、最終TDヒータ値は、AE法で求められた接触(TD)検出時のヒータ値よりもやや小さめとなっているが、上記の傾きが1の直線と並んで各点が配置されている。このことから、最終TDヒータ値と、AE法で求められた接触(TD)検出時のヒータ値との間に強い相関があることがわかる。
以上が本実施形態の説明である。
以上の説明では、図8で上述したように、ヘッド1が磁気ディスク5のトラック50を相対的に1周する度にヒータ値が所定量増加されてヘッド1と磁気ディスク5との接触の有無が判定されたが、上述した、制御装置、制御方法、および情報記憶装置の各基本形態では、ヘッド1が磁気ディスク5のトラック50を相対的に複数回周る度にヒータ値が所定量増加されてヘッド1と磁気ディスク5との接触の有無が判定されるものであってもよい。
以下、本件の種々の形態について付記する。
(付記1)
情報を記憶する記憶媒体の表面に近接し該記憶媒体から情報を読み取って読取信号を生成するヘッドを前記記憶媒体の表面に向かって熱膨張させるヒータの制御を行う制御装置において、
前記ヒータの複数の発熱量の下で前記ヘッドから読取信号を取得する取得部と、
前記取得部により取得された読取信号から、該読取信号の特性を表す2種類以上の特性値を、少なくとも一種類のアルゴリズムにより各発熱量ごとに算出する算出部と、
前記算出部により算出された2種類以上の特性値それぞれについて、前記ヒータの発熱量に対する特性値の変化に基づき前記ヘッドと前記記憶媒体との間の接触の有無を判定する接触判定部と、
前記接触判定部でいずれかの特性値について接触有りと判定された時の発熱量を、前記ヘッドと前記記憶媒体とが接触して該ヘッドと該記憶媒体との間の距離がゼロとみなされるときの前記ヒータの発熱量として、前記ヘッドと前記記憶媒体との間の距離と、前記ヒータの発熱量との対応関係を決定する対応関係決定部とを備えたことを特徴とする制御装置。
(付記2)
前記算出部は、前記2種類以上の特性値として、前記記録媒体上のトラックの複数のデータセクタに対応する複数のユーザ信号についての信号レベルの代表値、前記トラックの複数のサーボセクタに対応する複数の位置信号についての信号レベルの代表値、1つのユーザ信号に関する復調値の、ビタビアルゴリズムに基づいて推定される最尤の復調値からのずれ量を、前記複数のユーザ信号について求めたときの複数のずれ量についての代表値、および、1つの位置信号で表される、前記半径方向についての所定位置からのヘッド位置のずれ量を、前記複数の位置信号について求めたときの複数のヘッド位置のずれ量についての代表値、からなる4つの代表値のうちの少なくとも2つ以上の代表値を算出するものであることを特徴とする付記1記載の制御装置。
(付記3)
前記取得部は、前記ヘッドが前記トラック上を前記記憶媒体に対して相対的に1周するごとに前記ヒータの発熱量を増加させるものであることを特徴とする付記2記載の制御装置。
(付記4)
前記算出部は、前記2つ以上の代表値のうちの少なくとも1つの代表値については、前記複数のユーザ信号についての信号レベル、前記複数の位置信号についての信号レベル、前記複数のユーザ信号についての復調値のずれ量、および、前記複数の位置信号についてのヘッド位置のずれ量、のいずれかについての、各発熱量ごとの平均値または各発熱量ごとの標準偏差値を算出するものであることを特徴とする付記2又は3記載の制御装置。
(付記5)
前記算出部は、前記2つ以上の代表値のうちの少なくとも1つの代表値については、前記複数のユーザ信号についての信号レベル、前記複数の位置信号についての信号レベル、前記複数のユーザ信号についての復調値のずれ量、および、前記複数の位置信号についてのヘッド位置のずれ量、のいずれかについての、各発熱量ごとの平均値および各発熱量ごとの平均値標準偏差値の両方を算出するものであり、
前記接触判定部は、前記算出部により算出された平均値および標準偏差値それぞれについて、前記取得部により前記ヒータの発熱量が増加していったときの変化に基づき前記ヘッドと前記記憶媒体との間の接触の有無を判定し、これら平均値および標準偏差値のうち接触有りと判定された値についてその値の変化に基づき前記ヘッドと前記記憶媒体の接触時の発熱量を求めるものであることを特徴とする付記2から4のうちのいずれか1項記載の制御装置。
(付記6)
前記算出部は、前記2つ以上の代表値のうちの少なくとも1つの代表値については、前記複数のユーザ信号についての信号レベル、前記複数の位置信号についての信号レベル、前記複数のユーザ信号についての復調値のずれ量、および、前記複数の位置信号についてのヘッド位置のずれ量、のいずれかについての、各発熱量ごとの平均値を算出するものであり、
前記接触判定部は、1つの発熱量と、該1つの発熱量よりも前記所定量の所定整数倍増加した発熱量における2つの平均値の間の差分値を各発熱量ごとに求め、一連の差分値を発熱量が増加する方向に見たときに、前記ヒータの発熱当初の平均的な差分値の値に所定係数を乗じて得られる閾値を、一方の側から他方の側に跨ぎ、連続する所定個数の差分値が該他方の側にとどまった場合に、前記ヘッドと前記記憶媒体との間に接触が有ると判定し、その閾値を越える直前の差分値における前記ヒータの発熱量を、前記接触時の発熱量として求めるものであることを特徴とする付記2から5のうちのいずれか1項記載の制御装置。
(付記7)
前記接触判定部は、前記所定整数、前記所定係数、前記所定個数、および、前記所定個数の差分値が連続して前記閾値を跨ぐ方向、からなり、これら前記所定整数、前記所定係数、前記所定個数、および、前記所定個数の差分値が連続して前記閾値を跨ぐ方向、のうちの少なくともいずれかが異なる複数組それぞれに基づき、前記ヘッドと前記記憶媒体との間の接触の有無の判定をそれぞれ行うものであることを特徴とする付記6記載の制御装置。
(付記8)
前記算出部は、前記2つ以上の代表値のうちの少なくとも1つの代表値については、前記複数のユーザ信号についての信号レベル、前記複数の位置信号についての信号レベル、前記複数のユーザ信号についての復調値のずれ量、および、前記複数の位置信号についてのヘッド位置のずれ量、のいずれかについての、各発熱量ごとの標準偏差値を算出するものであり、
前記接触判定部は、一連の標準偏差値を発熱量が増加する方向に見たときに、前記ヒータの発熱当初の複数の標準偏差値についての標準偏差値に所定係数を乗じさらに前記複数の標準偏差値についての平均値を加えることで得られる閾値を、一方の側から他方の側に跨ぎ、連続する所定個数の標準偏差値が該他方の側にとどまった場合に、前記ヘッドと前記記憶媒体との間に接触が有ると判定し、その閾値を越える直前の標準偏差値における前記ヒータの発熱量を、前記接触時の発熱量として求めるものであることを特徴とする付記2から7のうちのいずれか1項記載の制御装置。
(付記9)
前記接触判定部は、前記取得部により前記ヒータの発熱量が増加していくのと並行して前記ヘッドと前記記憶媒体との間の接触の有無の判定を行うものであって、
前記取得部は、前記接触判定部による判定で接触有りと判定された場合には、前記ヒータの発熱量の増加を停止することを特徴とする付記1から8のうちのいずれか1項記載の制御装置。
(付記10)
情報を記憶する記憶媒体の表面に近接し該記憶媒体から情報を読み取って読取信号を生成するヘッドを前記記憶媒体の表面に向かって熱膨張させるヒータの制御を行うための制御方法において、
前記ヒータの複数の発熱量の下で前記ヘッドから読取信号を取得する取得過程と、
前記取得過程により取得された読取信号から、該読取信号の特性を表す2種類以上の特性値を、少なくとも一種類のアルゴリズムにより各発熱量ごとに算出する算出過程と、
前記算出過程により算出された2種類以上の特性値それぞれについて、前記ヒータの発熱量に対する特性値の変化に基づき前記ヘッドと前記記憶媒体との間の接触の有無を判定する接触判定過程と、
前記接触判定過程でいずれかの特性値について接触有りと判定された時の発熱量を、前記ヘッドと前記記憶媒体とが接触して該ヘッドと該記憶媒体との間の距離がゼロとみなされるときの前記ヒータの発熱量として、前記ヘッドと前記記憶媒体との間の距離と、前記ヒータの発熱量との対応関係を決定する対応関係決定過程とを備えたことを特徴とする制御方法。
(付記11)
情報を記憶する記憶媒体と、
前記記憶媒体の表面に近接する近接面を有し、該記憶媒体から情報を読み取って読取信号を生成する、前記記憶媒体の表面に向かって前記近接面を熱膨張させるヒータを内蔵したヘッドと、
前記ヒータの制御を行う制御装置とを備え、
前記制御装置が、
前記ヒータの複数の発熱量の下で前記ヘッドから読取信号を取得する取得部と、
前記取得部により取得された読取信号から、該読取信号の特性を表す2種類以上の特性値を、少なくとも一種類のアルゴリズムにより所定の発熱量ごとに算出する算出部と、
前記算出部により算出された2種類以上の特性値それぞれについて、前記ヒータの発熱量に対する特性値の変化に基づき前記ヘッドと前記記憶媒体との間の接触の有無を判定する接触判定部と、
前記接触判定部でいずれかの特性値について接触有りと判定された時の発熱量を、前記ヘッドと前記記憶媒体とが接触して該ヘッドと該記憶媒体との間の距離がゼロとみなされるときの前記ヒータの発熱量として、前記ヘッドと前記記憶媒体との間の距離と、前記ヒータの発熱量との対応関係を決定する対応関係決定部とを備えたことを特徴とする情報記憶装置。