JP2010084611A - エンジン制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料供給の再開時に、トルクショックによりドライバが違和感をもつことを防止しつつ、加速レスポンスを向上させることを可能にする手段を提供する。
【解決手段】エンジンEのECU30は、燃料停止条件が成立したときに燃料噴射弁9に燃料噴射を停止させて減速燃料カットを実行し、スロットル弁18を開弁させる。この後、燃料復帰条件が成立したときにスロットル弁18を閉弁させ、このあと所定の遅延時間経過後に燃料噴射弁9に燃料噴射を再開させる。ECU30は、成立した燃料復帰条件がドライバの意思に基づく燃料復帰条件であるか、基づかない燃料復帰条件であるかを識別し、ドライバの意思に基づく燃料復帰条件であるときには、ドライバの意思に基づかない燃料復帰条件であるときに比べて遅延時間を短くする。
【選択図】図1

Description

本発明は、減速燃料カットの実行中にスロットル弁を開弁状態に制御し、燃料復帰条件が成立した後に、スロットル弁を閉弁状態に制御する一方、燃料復帰を行わせるエンジン制御装置に関するものである。
一般に、自動車の走行時において、アクセルが解放されたり、アクセルの踏み込み量が急減されたりして減速状態にあるときには、基本的にはエンジンはトルクを生成する必要はない。そこで、このような減速状態では燃料供給の一時停止すなわち減速燃料カットを行い、不必要な燃料の消費を防止して燃費性を高めるようにしたエンジンが広く用いられている。しかしながら、このような減速燃料カットを行ったときには、スロットル弁が閉じられ又はスロットル開度が非常に小さいので、ポンピング損失が大きくなる。なお、変速機がエンジンと駆動輪とを機械的に連結している状態にあるときには、トルク生成の中断とポンピング損失の増加とにより、エンジンブレーキ力が非常に大きくなる。
そこで、減速燃料カットの実行中にスロットル弁を開いてポンピング損失を低減し、適切なエンジンブレーキ力を生じさせたり、変速機のシフトダウンに伴うトルクショックを低減したりするようにしたエンジン(車載内燃機関)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−2920号公報(段落[0070]、図9、図10)
反面、このような減速燃料カットの実行中にスロットル弁を開くと、その間に吸気通路に燃料燃焼用の空気が大量に供給される。このため、減速燃料カットの終了と同時にスロットル開度を小さくしても、応答遅れにより一時的に燃焼室に供給される空気量ひいてはエンジンの出力トルクが大きくなり、トルクショックが生じてドライバが違和感をもつといった問題がある。そこで、例えば特許文献1に開示されたエンジン(車載内燃機関)では、減速燃料カットの終了時に吸気弁のバルブリフト量を縮小させることにより、吸入空気量を速やかに低減するようにしている。
しかしながら、このように減速燃料カットの終了時に単純に吸入空気量を低減したのでは、この後のエンジンの加速レスポンスが悪くなるといった問題が生じる。本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであって、減速燃料カットの実行中にスロットル弁を開くようにしたエンジンにおいて、減速燃料カットの終了時ないしは燃料復帰時に、トルクショックによりドライバが違和感をもつことを防止しつつ、加速レスポンスを向上させることを可能にする手段を提供することを解決すべき課題とする。
上記課題を解決するためになされた本発明に係るエンジン制御装置は、減速燃料カットの実行中にスロットル弁を開弁状態に制御し、燃料復帰条件が成立(成就)した後に、スロットル弁を閉弁状態に制御する一方、燃料復帰を行わせる。エンジン制御装置は、燃料復帰条件が成立(成就)したときに、成立した燃料復帰条件がドライバの意思又は行為((意思に基づく身体動作)に基づく燃料復帰条件であるか、それともドライバの意思又は行為に基づかない燃料復帰条件であるかを識別する復帰条件識別手段を備えている。エンジン制御装置は、さらに、復帰条件識別手段による識別結果に応じて、復帰条件識別手段が識別を行った時点(燃料復帰条件が成立した時点)から燃料復帰までの遅延時間を設定し、遅延時間だけ燃料復帰を遅延させる遅延時間設定手段を備えている。遅延時間設定手段は、成立した燃料復帰条件がドライバの意思に基づく燃料復帰条件であるときには、ドライバの意思に基づかない燃料復帰条件であるときに比べて遅延時間を短くする。
本発明に係るエンジン制御装置は、アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、エンジン回転速度を検出する回転速度検出手段とを備えているのが好ましい。この場合、ドライバの意思に基づく燃料復帰条件は、減速燃料カットの実行中においてエンジン回転速度が予め設定された燃料復帰回転速度に低下する前に、アクセルの踏み込みが検出されることであるのが好ましい。また、ドライバの意思に基づかない燃料復帰条件は、減速燃料カットの実行中にアクセルの踏み込みが検出されることなく、エンジン回転速度が燃料復帰回転速度に低下することであるのが好ましい。
本発明に係るエンジン制御装置において、遅延時間設定手段は、減速燃料カットの実行中にドライバの意思に基づく燃料復帰条件が成立したときのアクセルの踏み込みが大きいほど、遅延時間を短くするのが好ましい。
本発明に係るエンジン制御装置によれば、減速燃料カットの実行中に成立した燃料復帰条件がドライバの意思又は行為に基づく燃料復帰条件であるとき、例えばドライバが加速のためにアクセルを踏み込んだときには、燃料復帰の遅延時間が比較的短いので、迅速にエンジン出力を上昇させることができ、加速レスポンスを向上させることができる。この場合、ドライバは一般に加速に際してトルク変動が生じることを予測しているので、ドライバは多少のトルクショックが生じても違和感をもたない。
他方、成立した燃料復帰条件がドライバの意思又は行為に基づかない燃料復帰条件であるときは、燃料復帰の遅延時間が比較的長いので、吸入空気量を十分に低減させて燃料復帰を行わせることができ、燃料復帰に伴うトルクショックを有効に防止することができる。この場合、ドライバは、とくには加速を意図していないので、エンジントルクをさほど迅速に上昇させる必要はない。つまり、本発明に係るエンジン制御装置によれば、燃料復帰がドライバの意思に基づくときは、ドライバはトルクショックを感じにくいので加速レスポンスを優先させ、ドライバの意思に基づかないときは、ドライバはトルクショックを感じやすいので、吸入空気量を十分に低減させて燃料復帰を行わせトルクショックを防止するようにしている。
本発明に係るエンジン制御装置において、ドライバの意思に基づく燃料復帰条件が、エンジン回転速度が燃料復帰回転速度に低下する前にアクセルの踏み込みが検出されることである場合は、ドライバの加速しようとする意思を正確に検出することができるので、ドライバの意思に従って遅延時間を短く設定して、加速レスポンスを一層向上させることができる。
本発明に係るエンジン制御装置において、ドライバの意思に基づかない燃料復帰条件が、アクセルの踏み込みが検出されることなくエンジン回転速度が燃料復帰回転速度に低下することである場合は、ドライバが加速する意思のないことを正確に検出することができるので、遅延時間を長く設定して、トルクショックを確実に防止することができる。
本発明に係るエンジン制御装置において、ドライバの意思に基づく燃料復帰条件が成立したときのアクセルの踏み込みが大きいほど遅延時間を短くする場合は、ドライバの加速要求度に応じて遅延時間を設定することができ、ドライバの意思に応じた適切な加速レスポンスを得ることができる。
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施の形態(本発明を実施するための最良の形態)を具体的に説明する。この実施の形態に係る自動車用のエンジンでは、後で詳しく説明するように、所定の燃料停止条件が成立したときには燃料噴射弁に燃料噴射を停止させて減速燃料カットを行う一方、減速燃料カットの実行中に所定の燃料復帰条件が成立した後、所定の遅延時間経過後に燃料復帰を行うことにより、不必要な燃料の消費を防止して、エンジンないしは該エンジンを搭載している自動車の燃費性を高めるようにしている。
図1に示すように、自動車用の火花点火式のエンジンEの本体部は、シリンダヘッド1とシリンダブロック2とで構成されている。エンジンEは4気筒4サイクルエンジンであって、4つの気筒3を備えている(図1では1つの気筒のみ図示)。このエンジンEにおいては、各気筒3が所定の位相差をもって膨張、排気、吸気、圧縮の各行程からなるサイクルを繰り返すようになっており、これらのサイクルは、第1気筒、第3気筒、第4気筒、第2気筒の順にクランク角で180°(180°CA)の位相差で繰り返される。
各気筒3内にはピストン4が嵌挿され、ピストン4の上側に燃焼室5が形成されている。ピストン4はコネクチングロッド6等を備えた連結機構を介してクランクシャフト7に連結されている。各気筒3の燃焼室5の頂部には点火プラグ8が設けられ、プラグ先端部8aは燃焼室5内に臨んでいる。この点火プラグ8は、燃料噴射弁9から噴射された燃料と空気の混合物である混合気を着火・燃焼させる。なお、エンジンEの燃料としては、ガソリン、プロパン、メタノール等を用いることができる。
各気筒3の燃焼室5に対して吸気ポート10及び排気ポート11が開口し、両ポート10、11にそれぞれ吸気弁12及び排気弁13が設けられている。そして、各気筒3の吸気弁12及び排気弁13の開閉タイミングは、各気筒3が所定の位相差で膨張・排気・吸気・圧縮の4行程からなる各サイクルを行うように設定されている。図示していないが、吸気弁12は、吸気弁カムによってクランクシャフト7と同期して所定のタイミングで開閉され、排気弁13は、排気弁カムによってクランクシャフト7と同期して所定のタイミングで開閉される。
吸気ポート10には、前記の燃料噴射弁9が配設されている。燃料噴射弁9は、その燃料噴射口が、吸気ポート10内に臨みかつ燃料室5に吸入される空気(以下「吸入空気」という。)の流れ方向に関して下流側を向くように配置されている。燃料噴射弁9は、詳しくは図示していないが、ニードル弁及びソレノイドを内蔵し、パルス信号が入力され、そのパルス入力時期にパルス幅に対応する時間だけ駆動されて開弁し、その開弁時間に応じた量の燃料を、吸気ポート10内の空気中に噴射する。燃料噴射弁9には、図示していないが、燃料ポンプから燃料供給通路等を介して燃料が供給される。なお、このエンジンEは燃料を吸気ポート10に噴射するポート噴射式エンジンであるが、エンジンは燃料噴射弁から燃焼室5に直接燃料を噴射する直噴式エンジンであってもよい。
エンジンEの各気筒3の燃焼室5に燃料燃焼用の空気(すなわち吸入空気)を供給する吸気装置が設けられ、この吸気装置には、先端部が大気に開口する単一の共通吸気通路15が設けられている。そして、この共通吸気通路15には、吸入空気の流れ方向に関して上流側から順に、吸入空気中のダスト等を除去するエアクリーナ16と、吸入空気の流量を検出するエアフローメータ17と、図示していないアクセルの踏み込み量(すなわちアクセル開度)に応じて該共通吸気通路15を絞るスロットル弁18とが設けられている。スロットル弁18は、電動式のスロットルアクチュエータ19によってアクセル開度に応じて開閉されるエレキスロットル弁である。また、スロットル弁18には、その開度(すなわちスロットル開度)を検出するスロットルセンサ20が付設されている。
吸入空気の流れ方向に関して共通吸気通路15の下流端は、吸入空気の脈動を減衰させてその流れを安定させるサージタンク21に接続されている。サージタンク21には、各気筒の燃焼室5に個別に吸入空気を供給する独立吸気通路22が接続され、その下流端は、対応する気筒3の吸気ポート10に接続されている。
エンジンEの各気筒3の燃焼室5で生成された燃焼ガスないしは排気ガスを大気中に排出する排気装置が設けられ、この排気装置には排気ガスを大気中に排出する排気通路24が設けられている。なお、図示していないが、この排気通路24には、排気ガスを浄化するための三元触媒を用いた排気ガス浄化装置(触媒コンバータ)が設けられている。
また、エンジンEないしは該エンジンEを搭載している自動車には、クランク角ないしはエンジン回転速度を検出するクランクセンサ25(回転速度検出手段)と、車速を検出する車速センサ26と、アクセル開度を検出するアクセルセンサ27(アクセル開度検出手段)とが設けられている。
以下、エンジンEないしは該エンジンEを搭載している自動車の制御システムを説明する。自動車にはエンジンEの種々の制御を行うエンジンコントロールユニット30(以下「ECU30」という。)が設けられている。ECU30は、プログラムに従って演算等の処理を実行する中央処理装置(CPU)、プログラム及びデータを格納するRAMやROMなどのメモリ、該ECU30への電気信号の入出力経路となる入出力バス(I/Oバス)等を有するコンピュータ又はマイクロコンピュータを備えた電子制御装置である。
ECU30は、本明細書の課題を解決するための手段の欄に記載された「復帰条件識別手段」及び「遅延時間設定手段」を含むエンジンEないしは自動車の総合的な制御装置である。そして、ECU30には、制御情報として、エアフローメータ17によって検出される吸入空気の流量、スロットルセンサ20によって検出されるスロットル開度、クランクセンサ25によって検出されるクランク角ないしはエンジン回転速度、車速センサ26によって検出される車速、アクセルセンサ27によって検出されるアクセル開度等が入力される。
そして、ECU30は、これらの制御情報に基づいて、点火プラグ8、燃料噴射弁9、スロットルアクチュエータ19等を制御することにより、減速燃料カット制御を含む本発明に係るエンジン制御を行う。なお、ECU30は、このような本発明に係るエンジン制御以外の一般的なエンジン制御も行うようになっているが、このような一般的なエンジン制御は、当業者にはよく知られており、また本願発明の要旨とするところでもないので、その説明は省略する。
まず、ECU30によって実行される減速燃料カット制御を含む本発明に係るエンジン制御(以下、単に「エンジン制御」という。)の概要を説明する。このエンジン制御では、ECU30は、所定の燃料停止条件が成立したときに、燃料噴射弁9に燃料噴射を停止させて減速燃料カットを実行する。そして、減速燃料カットの実行中はスロットル弁18を開弁状態に制御する(開弁させる)。この後、所定の燃料復帰条件が成立したときに、まずスロットル弁18を閉弁状態に制御し(閉弁させ)、さらに所定の遅延時間経過後に燃料復帰を行って、燃料噴射弁9に燃料噴射を再開させる。
そして、ECU30は、燃料復帰条件が成立したときに、成立した燃料復帰条件が自動車のドライバの意思又は行為に基づく燃料復帰条件であるか、それともドライバの意思又は行為に基づかない燃料復帰条件であるかを識別する。ECU30は、さらに、この識別結果に応じて、この識別を行った時点ないしは燃料復帰条件が成立した時点から燃料復帰までの遅延時間を設定し、遅延時間だけ燃料復帰を遅延させ、遅延時間経過後に燃料噴射弁9に燃料噴射を再開させる。ここで、ECU30は、成立した燃料復帰条件がドライバの意思又は行為に基づく燃料復帰条件であるときには、ドライバの意思又は行為に基づかない燃料復帰条件であるときに比べて遅延時間を短くする。なお、この遅延時間は、ドライバの意思に基づく燃料復帰条件が成立したときのアクセルの踏み込みが大きいほど短くする。
このエンジン制御では、ドライバの意思に基づく燃料復帰条件は、減速燃料カットの実行中においてエンジン回転速度が予め設定された燃料復帰回転速度に低下する前に、アクセルの踏み込みが検出されることである。また、ドライバの意思に基づかない燃料復帰条件は、減速燃料カットの実行中にアクセルの踏み込みが検出されることなく、エンジン回転速度が燃料復帰回転速度に低下することである。なお、これらの燃料復帰条件は単なる例示であり、ドライバの意思又は行為の有無を区別することができれば、どのような条件であってもよい。
以下、図2に示すフローチャートを参照しつつ、ECU30よって実行されるエンジン制御の具体的な制御手順を説明する。
図2に示すように、ECU30はエンジン制御を開始すると(スタート)、まずステップS1で車速Svと、アクセル開度θと、エンジン回転速度Neとを制御情報として読み込み、エンジンEないしは該エンジンEを搭載している自動車の運転状態を把握する。
次に、ステップS2〜S4で、燃料停止条件すなわち減速燃料カットを実行するために必要な条件が成立(成就)しているか否かを判定する。具体的には、ステップS2では車速Svが0であるか否かを判定し、ステップS3ではアクセル開度θが0(全閉)であるか否かを判定し、ステップS4ではエンジン回転速度が燃料停止下限回転速度α以上であるか否かを判定する。
このエンジン制御では、次の3つの条件がすべて成立したときに減速燃料カットを開始するようにしている。なお、後で説明するように、減速燃料カットを開始した後は、下記の条件2又は条件3が成立していない場合でも減速燃料カットを続行することがある。
条件1:車速Svが0でない。
条件2:アクセル開度θが0(全閉)である。
条件3:エンジン回転速度Neが燃料停止下限回転速度α以上である。
ここで、車速Svが0であるとき、すなわち自動車が走行してないときに減速燃料カットを行わないのは、車速Svが0であるときにはエンジンEは車輪によって逆駆動されないので、エンジンEへの燃料供給を停止するとエンジンEが停止してしまうからである。アクセル開度θが0(全閉)でないときに減速燃料カットを行わないのは、自動車のドライバは加速ないしは定常走行を意図しているので、エンジンEへの燃料供給を停止するとドライバの意思に沿った走行ができなくなるからである。また、エンジン回転速度Neが燃料停止下限回転速度α未満であるときに減速燃料カットを行わないのは、燃料停止下限回転速度α未満で減速燃料カットを開始した場合は、エンジン回転速度Neが、後で説明する燃料復帰回転速度βまで極めて短時間で低下してしまい、減速燃料カットの実効性が希薄となるからである。なお、燃料停止下限回転速度αの値が燃料復帰回転速度βの値より大きいことはいうまでもない(α>β)。
かくして、ステップS2で車速Svが0でないと判定し(NO)、ステップS3でアクセル開度θが0(全閉)であると判定し(YES)、かつステップS4でエンジン回転速度Neが燃料停止下限回転速度α以上であると判定した(YES)場合は、ステップS5〜S7で減速燃料カットを実行する。具体的には、まずステップS5で、ポンピング損失を軽減して燃費を向上させるために、スロットル弁18を開弁させる(略全開)。続いて、ステップS6で燃料カットフラグに「1」をセットした後、ステップS7で燃料噴射弁9に燃料噴射を停止させる。この後、ステップS1に復帰する(リターン)。燃料カットフラグは、減速燃料カットの実行中は「1」がセットされ、燃料噴射弁9の燃料噴射が行われているときには「0」がセットされるフラグである。
ところで、前記のステップS2で車速Svが0であると判定した場合(YES)、すなわち上記条件1が成立しない場合は、前記のとおりエンジンEへの燃料供給を停止するとエンジンEが停止してしまうので、ステップS13で燃料カットフラグに「0」をセットし、続いてステップS14で燃料噴射弁9に燃料噴射を行わせる。
また、前記のステップS4でエンジン回転速度Neが燃料停止下限回転速度α未満であると判定した場合(NO)、又はステップS3でアクセル開度θが0(全閉)でないと判定した場合は(NO)、それぞれ、ステップS8又はステップS15で、燃料カットフラグが1であるか否かを判定する。そして、ステップS8又はステップS15で燃料カットフラグが1でないと判定した場合(NO)、すなわち減速燃料カットの実行中でなくかつ燃料停止条件が成立していない場合は、燃料復帰に係るステップであるステップS9〜S12又はステップS16〜S18をスキップして、ステップS13で燃料カットフラグに「0」をセットし、続いてステップS14で燃料噴射弁9に燃料噴射を続行させる。
他方、ステップS8で、燃料カットフラグが1であると判定した場合(YES)、すなわち減速燃料カットの実行中にエンジン回転速度Neが燃料停止下限回転速度αよりも低くなった場合は、ステップS9で、エンジン回転速度Neが燃料復帰回転速度β以下であるか否かを判定する。ここで、燃料復帰回転速度βは、減速燃料カットの実行中においてエンジン回転速度Neの低下により減速燃料カットを終了すべきか否かを判定するための閾値であり、エンジン回転速度Neがこれ以下になるとエンジンEの回転が不安定となるおそれがある回転速度である。そして、ステップS9でエンジン回転速度Neが燃料復帰回転速度β以下でないと判定した場合は(NO)、ステップS5〜S7を実行し、減速燃料カットを続行する。
他方、ステップS9でエンジン回転速度Neが燃料復帰回転速度β以下であると判定した場合は(YES)、減速燃料カットを終了し、所定の遅延時間経過後に燃料噴射弁9に燃料噴射を再開させる。なお、この燃料復帰は、アクセル開度θが0(全閉)である場合において、エンジン回転速度Neが自然に低下したことに起因して生じた燃料復帰であり、自動車のドライバの意思又は行為に基づかない燃料復帰条件の成立による燃料復帰である。
具体的には、まずステップS10で、スロットル弁18を閉弁して吸入空気量を低減する。次に、ステップS11で、エンジン回転速度Neが燃料復帰回転速度β以下となった時点からの経過時間である遅延時間をカウントする。続いて、ステップS12で、遅延時間カウンタのカウント値tが、予め設定された第1設定値t1(閾値)以上であるか否かを判定する。ここで、遅延時間カウンタのカウント値tが第1設定値t1未満であると判定した場合は(NO)、ステップS6〜S7を実行し、燃料噴射弁9に燃料噴射の停止を続行させる。他方、遅延時間カウンタのカウント値tが第1設定値t1以上であると判定した場合は(YES)、ステップS13〜S14を実行し、燃料噴射弁9に燃料噴射を再開させる。なお、第1設定値t1は、遅延時間が比較的長くなってスロットル弁18の閉弁により吸入空気量が十分に低減されるよう、比較的大きい値に設定される。
図3に、このようにドライバの意思又は行為に基づかない燃料復帰条件の成立により減速燃料カットを終了して燃料復帰を行う際における、アクセル開度(グラフG1)、スロットル開度(グラフG2)、ブーストないしは空気量(グラフG3)、燃料噴射量(グラフG4)、エンジンEの出力トルク(グラフG5)及びエンジン回転速度(グラフG6)の時間に対する変化特性を示す。なお、この例では、時刻Tに燃料復帰条件が成立し、時刻Tで燃料噴射弁9の燃料噴射が再開されている。
図3に示すように、ドライバの意思又は行為に基づかない燃料復帰条件の成立により減速燃料カットを終了して燃料復帰を行う際には、燃料復帰条件が成立したときに直ちにスロットル弁18を閉弁する一方、第1設定値t1に相当する比較的長い遅延時間が経過して吸入空気量が十分に低減されたときに、燃料噴射弁9に燃料噴射を再開させ、燃料復帰時におけるトルクショックを緩和するようにしている。この場合、燃料復帰はドライバの意思に基づくものではないので、ドライバはトルクショックを感じやすい。そこで、吸入空気量を十分に低減させてから燃料復帰を行い、トルクショックを防止するようにしている。なお、この場合、ドライバは加速を意図していないので、エンジントルクをさほど迅速に上昇させる必要はない。
ところで、前記のステップS15で、燃料カットフラグが1であると判定した場合(YES)、すなわち減速燃料カットの実行中にアクセル開度θが0(全閉)より大きくなった場合、換言すればドライバがアクセルを踏み込んだ場合は、減速燃料カットを終了し、所定の遅延時間経過後に燃料噴射弁9に燃料噴射を再開させる。なお、この燃料復帰は、ドライバがアクセルを踏み込んだことに起因して生じた燃料復帰であり、ドライバの意思又は行為に基づく燃料復帰条件の成立による燃料復帰である。
具体的には、まずステップS16で、スロットル弁18を閉弁して吸入空気量を低減する。次に、ステップS17で、アクセル開度θが0より大きくなった時点からの経過時間である遅延時間をカウントする。続いて、ステップS18で、遅延時間カウンタのカウント値tが、予め設定された第2設定値t2(閾値)以上であるか否かを判定する。ここで、遅延時間カウンタのカウント値tが第2設定値t2未満であると判定した場合は(NO)、ステップS6〜S7を実行し、燃料噴射弁9に燃料噴射の停止を続行させる。他方、遅延時間カウンタのカウント値tが第2設定値t2以上であると判定した場合は(YES)、ステップS13〜S14を実行し、燃料噴射弁9に燃料噴射を再開させる。
図4に、このようにドライバの意思又は行為に基づく燃料復帰条件の成立により減速燃料カットを終了して燃料復帰を行う際における、アクセル開度(グラフG11)、スロットル開度(グラフG12)、ブーストないしは空気量(グラフG13)、燃料噴射量(グラフG14)、エンジンEの出力トルク(グラフG15)及びエンジン回転速度(グラフG16)の時間に対する変化特性を示す。なお、この例では、時刻T11に燃料復帰条件が成立し、時刻T12で燃料噴射弁9の燃料噴射が再開されている。
図4に示すように、ドライバの意思又は行為に基づく燃料復帰条件の成立により減速燃料カットを終了して燃料復帰を行う際には、燃料復帰条件が成立したときに直ちにスロットル弁18を閉弁する一方、第2設定値t2に相当する遅延時間が経過したときに燃料噴射弁9に燃料噴射を再開させるようにしている。ここで、第2設定値t2は第1設定値t1より小さい値に設定しているので(t1>t2)、燃料噴射弁9の燃料噴射の再開の遅延時間は比較的短い。このため、迅速にエンジン出力を上昇させることができ、加速レスポンスを向上させることができる。この場合、ドライバは、アクセルを踏み込んでいるので、エンジンEないしは自動車を加速させることを意図している。したがって、ドライバは加速に際してトルク変動が生じることを予測しているので、ドライバは多少のトルクショックが生じても違和感をもたない。
前記のとおり、本発明に係るエンジン制御では、アクセルが全閉状態のときに減速燃料カットから燃料復帰を行う場合と、アクセルの踏み込みに伴って燃料復帰を行う場合とで、遅延時間を変更するようにしている。前者の場合は、アクセルの踏み込み操作を伴わないため、ドライバはショックを感じやすく、比較的長い遅延時間を設定して吸気通路内のブーストが十分に低下するための時間を確保するようにしている。後者の場合は、ドライバの加速意思を損なわないようにレスポンスを優先し、比較的短い遅延時間を設定している。なお、後者の場合、遅延時間は0でもよい。
前記のとおり、この実施の形態に係るエンジン制御では、減速燃料カットからの燃料復帰を行う際に、吸気通路内のブーストを低下させるための遅延時間を設けている。しかしながら、燃料復帰回転速度に到達するよりも早めにスロットル弁18を閉じることにより、遅延時間をより短くしたり、さらには遅延時間をなくしたりすることも可能である。例えば、燃料復帰回転速度よりも若干高い回転速度閾値を設定し、そのタイミングでスロットル弁18を閉弁するようにしてもよい。
本発明に係るエンジン制御装置を備えたエンジンのシステム構成を示す模式図である。 図1に示すエンジンにおけるエンジン制御の制御手順を示すフローチャートである。 本発明に係るエンジン制御を行ったときの、エンジンの運転状態の経時変化を示す図である。 本発明に係るエンジン制御を行ったときの、エンジンの運転状態の経時変化を示す図である。
符号の説明
E エンジン、1 シリンダヘッド、2 シリンダブロック、3 気筒、4 ピストン、5 燃焼室、6 コネクチングロッド、7 クランクシャフト、8 点火プラグ、9 燃料噴射弁、10 吸気ポート、11 排気ポート、12 吸気弁、13 排気弁、15 共通吸気通路、16 エアクリーナ、17 エアフローメータ、18 スロットル弁、19 スロットルアクチュエータ、20スロットルセンサ、21 サージタンク、22 独立吸気通路、24 排気通路、25 クランクセンサ、26 車速センサ、27 アクセルセンサ、30 エンジンコントロールユニット(ECU)。

Claims (4)

  1. 減速燃料カットの実行中にスロットル弁を開弁状態に制御し、燃料復帰条件が成立した後に、上記スロットル弁を閉弁状態に制御する一方、燃料復帰を行わせるエンジン制御装置であって、
    燃料復帰条件が成立したときに、成立した燃料復帰条件がドライバの意思に基づく燃料復帰条件であるか、それともドライバの意思に基づかない燃料復帰条件であるかを識別する復帰条件識別手段と、
    上記復帰条件識別手段による識別結果に応じて、上記復帰条件識別手段が識別を行った時点から燃料復帰までの遅延時間を設定し、上記遅延時間だけ燃料復帰を遅延させる遅延時間設定手段とを備えていて、
    上記遅延時間設定手段は、成立した燃料復帰条件がドライバの意思に基づく燃料復帰条件であるときには、ドライバの意思に基づかない燃料復帰条件であるときに比べて上記遅延時間を短くすることを特徴とするエンジン制御装置。
  2. アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、エンジン回転速度を検出する回転速度検出手段とを備えていて、
    上記ドライバの意思に基づく燃料復帰条件は、減速燃料カットの実行中においてエンジン回転速度が予め設定された燃料復帰回転速度に低下する前に、アクセルの踏み込みが検出されることであることを特徴とする、請求項1に記載のエンジン制御装置。
  3. 上記ドライバの意思に基づかない燃料復帰条件は、減速燃料カットの実行中にアクセルの踏み込みが検出されることなく、エンジン回転速度が上記燃料復帰回転速度に低下することであることを特徴とする、請求項2に記載のエンジン制御装置。
  4. 上記遅延時間設定手段は、減速燃料カットの実行中に上記ドライバの意思に基づく燃料復帰条件が成立したときのアクセルの踏み込みが大きいほど、上記遅延時間を短くすることを特徴とする、請求項2又は3に記載のエンジン制御装置。
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