以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1及び図2には、本発明に係る流体封入式筒形防振装置の第一の実施形態としてのサスペンションブッシュ10が示されている。サスペンションブッシュ10は、インナ軸部材としての内筒金具12と、アウタ筒部材としての外筒金具14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結された構造とされている。そして、内筒金具12が図示しない車両ボデーに取り付けられると共に、外筒金具14が車輪側の部材である図示しないサスペンションアームに取り付けられることによって、車両ボデーとサスペンションアームの間に介装されており、それら車両ボデーとサスペンションアームを相互に防振連結せしめるようになっている。
より詳細には、内筒金具12は、鉄やアルミニウム合金等の金属材で形成されており、全体として小径の略円筒形状を呈している。なお、インナ軸部材(内筒金具12)を合成樹脂材料で形成するようにしても良い。また、本実施形態の内筒金具12は、軸方向中間部分が軸方向両端部分に比して大径とされた拡径部18となっている。更にまた、本実施形態の内筒金具12は、軸方向一方の端部が軸直角方向外側に向かって広がるフランジ状部20とされている。
また、内筒金具12の外周側には、金属スリーブとしての中間スリーブ22が配設されている。この中間スリーブ22は、内筒金具12に比して薄肉大径の略円筒形状を有しており、内筒金具12と同様の金属材で形成されている。また、中間スリーブ22の軸方向中間部分には、径方向一方向で対向するように一対の窓部24a,24bが形成されている。この窓部24は、半周弱の長さで延びるように形成されて、中間スリーブ22を径方向で貫通している。更にまた、中間スリーブ22において一対の窓部24a,24bの周方向間には、一対の溝状部26,26が形成されている。溝状部26は、中間スリーブ22の軸方向中間部分において外周面に開口する溝形状とされており、周方向に延びて各端部が一対の窓部24a,24bにそれぞれ連通されている。
また、内筒金具12と中間スリーブ22は、同一中心軸線上に配置されることで全周に亘って径方向に所定距離を隔てて位置せしめられており、それら内筒金具12と中間スリーブ22の間には、本体ゴム弾性体16が介装されている。本体ゴム弾性体16は、厚肉の略円筒形状を有するゴム弾性体で形成されており、軸方向両端面が径方向中間側に行くに従って軸方向内側に傾斜する凹状面とされている。
そして、本体ゴム弾性体16の内周面が内筒金具12の外周面に重ね合わされて加硫接着されていると共に、外周面が中間スリーブ22の内周面に重ね合わされて加硫接着されている。これにより、内筒金具12と中間スリーブ22が本体ゴム弾性体16で相互に弾性連結されている。即ち、本実施形態では、本体ゴム弾性体16が内筒金具12と中間スリーブ22を備えた一体加硫成形品28として形成されている。また、本実施形態では、本体ゴム弾性体16の加硫成形後に、中間スリーブ22に対して八方絞り等の縮径加工が施されており、本体ゴム弾性体16に対して径方向での予圧縮が及ぼされることで、本体ゴム弾性体16に作用する引張応力が低減されている。なお、中間スリーブ22に形成された溝状部26の溝内面は、本体ゴム弾性体16と一体形成されたゴム層で全面に亘って被覆されている(図2参照)。
また、本体ゴム弾性体16には、径方向一方向で内筒金具12を挟んだ両側に、一対のポケット部30a,30bが形成されている。ポケット部30は、本体ゴム弾性体16の軸方向中間部分において外周面に開口する凹所状とされており、図2に示されているように、中間スリーブ22に形成された窓部24に対応する半周弱の長さで形成されている。そして、ポケット部30の開口部が窓部24と位置合わせされており、ポケット部30が窓部24を通じて中間スリーブ22の外周側に連通せしめられている。また、本実施形態では、ポケット部30の内面のうち軸方向で対向位置する部分には、それぞれ、軸方向内方に突出して周方向に適当な長さで延びる位置決めゴム突起31が設けられている。なお、位置決めゴム突起31は、ポケット部30の周方向の全長に亘って形成されていても良いし、ポケット部30の周方向に並ぶようにして複数形成されていても良い。
このような本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28には、外筒金具14が外嵌固定されている。外筒金具14は、鉄やアルミニウム合金等の金属材で形成されており、全体として薄肉大径の略円筒形状を呈している。
また、外筒金具14の内周面は、略全面に亘ってシールゴム層32で覆われている。シールゴム層32は薄肉のゴム弾性体であって、外筒金具14の内周面に被着形成されている。なお、図面上では明示されていないが、シールゴム層32には、内周側に突出するシール突条が、中間スリーブ22や後述するオリフィス部材38に当接せしめられる部分に突出形成されている。
このような外筒金具14は、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28に対して外嵌固定される。即ち、シールゴム層32が被着形成された外筒金具14を、一体加硫成形品28を構成する中間スリーブ22に対して外挿した後、外筒金具14に対して八方絞り等の縮径加工を施すことにより、外筒金具14が中間スリーブ22の外周面に対してシールゴム層32を介して密着せしめられて固定される。
また、外筒金具14が一体加硫成形品28に対して装着されることにより、中間スリーブ22に形成された一対の窓部24a,24bの開口部が外筒金具14によって覆蓋されている。これにより、窓部24a,24bを通じて開口せしめられているポケット部30a,30bの開口部が外筒金具14で閉塞されており、ポケット部30aを利用して第一の流体室としての液室36aが形成されていると共に、ポケット部30bを利用して第二の流体室としての液室36bが形成されている。液室36は、外筒金具14が中間スリーブ22に対して流体密に重ね合わされることにより外部から密閉されており、その内部には非圧縮性流体が封入されている。また、液室36a,36bは、主たる振動入力方向となる径方向一方向で対向して内筒金具12を挟んだ両側に形成されており、図2に示されているように、一対の液室36a,36bが、それら液室36a,36bの対向方向に対して略直交する径方向に広がる本体ゴム弾性体16の軸方向中間部分によって隔てられている。
なお、液室36に封入される非圧縮性流体は、特に限定されるものではないが、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油,或いはそれらの混合液等が好適に採用される。特に、後述する流体の流動作用に基づく防振効果を有効に得るために、封入流体としては、0.1Pa・s以下の低粘性流体を採用することが望ましい。また、非圧縮性流体の液室36への封入は、例えば、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28に対する外筒金具14の組み付けを、非圧縮性流体中で行うこと等によって実現される。
また、液室36a,36bには、オリフィス部材38が配設されている。オリフィス部材38は、外筒金具14の内周面に沿って周方向に延びる略円筒形状の部材であり、ポケット部30a,30bの開口部を周方向で跨ぐように配設されて、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28に対して固定されている。
そこにおいて、本実施形態のオリフィス部材38は、互いに同じ形状とされた一対のオリフィス半体40a,40bによって構成されている。即ち、本実施形態では、一方のオリフィス半体40aによって第一の分割オリフィス体が構成されていると共に、他方のオリフィス半体40bによって第二の分割オリフィス体が構成されている。
オリフィス半体40は、鉄やアルミニウム合金等の金属材や硬質の合成樹脂材等で形成されており、図3乃至5に示されているように、全体として厚肉大径の略半円筒形状を呈している。
そこにおいて、本実施形態では、オリフィス半体40の周方向中央部分において、嵌合凹所42が形成されている。嵌合凹所42は、オリフィス半体40の外周面に開口して、オリフィス半体40の軸方向一方の端面から軸方向他方の側へ延びるように形成されている。特に本実施形態では、嵌合凹所42は、軸方向一方の端面から軸方向他方の端面に亘って形成されている。
また、嵌合凹所42の周方向両側の対向内面44,44は、オリフィス半体40の外周面から径方向内方へ行くに従って次第に対向面間距離が大きくなっている。即ち、嵌合凹所42の周方向両側の対向内面44,44は逆テーパ形状とされている。
さらに、嵌合凹所42の周方向両側の対向内面44,44は、対向面間距離がオリフィス半体40の軸方向一方の側から他方の側に向かって次第に小さくなっている。即ち、嵌合凹所42の周方向両側の対向内面44,44は、それらの延出方向(長手方向)において、一方が他方に対して相対的に傾斜している相対傾斜面とされている。
更にまた、嵌合凹所42の底壁には、底壁を厚さ方向に貫通する透孔46が形成されている。因みに、本実施形態では、丸角四角形状の開口断面を有する透孔46が、仕切片によって四つに仕切られている。
また、嵌合凹所42の底壁に形成された透孔46の開口周縁部には、オリフィス半体40の径方向外方に突出して透孔46の縁に沿って全周に亘って延びる位置決め突部48が形成されている。特に本実施形態では、位置決め突部48においてオリフィス半体40の軸方向で対向位置する部分よりも外側には、オリフィス半体40の周方向に延びる位置決め溝50が形成されている。
更にまた、オリフィス半体40の外周縁部には、嵌合凹所42の形成位置を除いた部分において、外周面に開口して周方向に延びる第一の周溝52と第二の周溝54が、軸方向に所定距離を隔てて形成されている。即ち、第一の周溝52と第二の周溝54は、それぞれ、嵌合凹所42によって周方向で分断されている。
このような構造とされたオリフィス半体40には、嵌合蓋56が組み付けられている。嵌合蓋56は、鉄鋼やアルミニウム合金等の金属材で形成されており、図6乃至9において単体図が示されているように、全体として蒲鉾形状を呈している。即ち、嵌合蓋56は、厚さ方向一方の面(以下、外面と称する)がオリフィス半体40の外周面に対応した湾曲面とされているのである。
また、嵌合蓋56の幅方向、即ち、嵌合蓋56におけるオリフィス半体40の周方向での両端面58,58は、オリフィス半体40に形成された嵌合凹所42における周方向両側の対向内面44,44に対応している。即ち、嵌合蓋56の幅方向の両端面58,58は、厚さ方向(オリフィス半体40の径方向)で逆テーパ形状とされていると共に、それらの延出方向(オリフィス半体40の軸方向)において、一方が他方に対して相対的に傾斜している軸方向相対傾斜面とされている。
さらに、嵌合蓋56には、外面に開口して、幅方向(オリフィス半体40の周方向)に延びる第一の接続溝60と第二の接続溝62が、オリフィス半体40の軸方向に相当する嵌合蓋56の長手方向に並ぶようにして形成されている。
また、嵌合蓋56の厚さ方向他方の面(以下、内面と称する)には、収容凹所64が形成されている。収容凹所64は、角の丸い四角形断面を有する凹所である。更にまた、収容凹所64の中央部分には、変形許容凹所66が形成されている。変形許容凹所66は、底部側(オリフィス半体40の外周側)に行くに従って次第に小径となる円形断面を有するテーパ形状の凹所であって、収容凹所64の底壁面に開口するように形成されている。
さらに、嵌合蓋56には、第二の接続溝62の底壁部分において、連通孔68が形成されている。連通孔68は、第二の接続溝62の底壁部分をオリフィス半体40の径方向に貫通する長円形状の孔であって、一方の端部が第二の接続溝62の溝方向中央部分に開口せしめられていると共に、他方の端部が収容凹所64の底壁部に開口せしめられている。
このような構造とされた嵌合蓋56には、可動部材としての可動ゴム膜70が装着されている。可動ゴム膜70は、図10及び図11に示されているように、収容凹所64の形状に対応する略丸角四角形状のゴム弾性体で形成されている。また、可動ゴム膜70の外周縁部には、厚さ方向の両側に向かって突出する支持部72が一体形成されている。更に、支持部72の幅方向中央部分には、全周に亘ってシールリップ74が一体形成されて、厚さ方向両側に突出せしめられている。更にまた、本実施形態の可動ゴム膜70は中央部分が中心に向かって次第に薄肉となっている。これにより、可動ゴム膜70の中央部分の両面がテーパ状の傾斜面となっている。
そして、可動ゴム膜70が嵌合蓋56の収容凹所64に嵌め込まれた状態で、図12乃至14に示されているように、嵌合蓋56がオリフィス半体40に組み付けられるようになっている。具体的には、嵌合蓋56が、オリフィス半体40の軸方向一方の側から他方の側へスライド変位せしめられることにより、嵌合凹所42に嵌め入れられて組み付けられるようになっている。これにより、可動ゴム膜70の外周縁部に形成された支持部72が収容凹所64の底壁面と嵌合凹所42の底面の間で挟持されて、可動ゴム膜70が中央部分の弾性変形を許容された状態でオリフィス半体40に装着されている。
なお、このようにして可動ゴム膜70が装着された状態で、支持部72は位置決め突部48の外側に位置せしめられている。特に、支持部72のうち嵌合蓋56のスライド方向で対向位置する部分は、何れも、位置決め溝50内に位置せしめられている。これにより、嵌合蓋56がオリフィス半体40に装着された状態での可動ゴム膜70の位置決めが効果的に為されている。
そして、上述の如く可動ゴム膜70が装着された状態で、可動ゴム膜70は、嵌合蓋56に形成された収容凹所64の底壁面とオリフィス半体40に形成された嵌合凹所42の底面の対向面間、即ち、オリフィス半体40の径方向の重ね合わせ面間に形成された収容スペース76内に収容配置されている。特に本実施形態では、収容凹所64より外周側(外側)に変形許容凹所66が形成されていると共に、可動ゴム膜70が位置決め突部48よりも外周側(外側)に位置せしめられていることから、可動ゴム膜70と収容凹所64の底面や嵌合凹所42の底面との間に隙間が形成されて、可動ゴム膜70の中央部分の弾性変形が有効に許容されるようになっている。なお、このことから明らかなように、本実施形態では、収容凹所64の底壁面によって嵌合蓋56の内面が構成されている。
また、上述の如く可動ゴム膜70が装着された状態で、可動ゴム膜70は、嵌合蓋56に形成された連通孔68の液室36側の開口部を覆うと共に、オリフィス半体40に形成された透孔46の径方向外方の開口部を覆うように配設されている。そこにおいて、本実施形態では、支持部72に一体形成されたシールリップ74が収容凹所64の底面と嵌合凹所42の底面との間で挟圧されていることによって、可動ゴム膜70は、連通孔68の内周側の開口部を含む変形許容凹所66の開口部を流体密に覆うと共に、透孔46の外周側の開口部を流体密に覆うように配設されている。
更にまた、上述の如く嵌合蓋56がオリフィス半体40に組み付けられた状態で、オリフィス半体40の外周縁部には、第一の周溝52と第一の接続溝60が協働することで外周面に開口して周方向に延びる第一の凹溝78と、第二の周溝54と第二の接続溝62が協働することで外周面に開口して周方向に延びる第二の凹溝80が、軸方向に所定距離を隔てて形成されている。そこにおいて、第一の凹溝78は、オリフィス半体40の周方向全長よりも僅かに短い長さで延びており、一方の端部がオリフィス半体40の周方向端部付近において貫通形成された接続孔82を通じてオリフィス半体40の径方向内周側に連通されていると共に、他方の端部がオリフィス半体40の周方向端面に開口している。また、第二の凹溝80は、オリフィス半体40の周方向全長に亘って延びており、両端部がそれぞれオリフィス半体40の周方向端部に開口せしめられている。なお、第二の凹溝80の一方の端部にはスロープ84が形成されており、第二の凹溝80の一方の端部が、周方向外方に行くに従って次第に第一の凹溝78側に向かって傾斜している。
そして、上述の如く嵌合蓋56が組み付けられたオリフィス半体40は、図1及び図2に示されているように、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28に対して装着される。即ち、図2に示されているように、一対のオリフィス半体40a,40bが、一体加硫成形品28に対して、一対のポケット部30a,30bが対向する径方向の両側から嵌め付けられて、オリフィス半体40a,40bの周方向両端部が一対の溝状部26,26に嵌め込まれると共に、オリフィス半体40a,40bの周方向中間部分が、本体ゴム弾性体16に形成された各ポケット部30の開口部を周方向で跨ぐように延びて位置せしめられる。これにより、全体として略円筒形状を有するオリフィス部材38が、嵌合蓋56を組み付けたオリフィス半体40a,40bを組み合わせることで形成されている。
また、このようにしてオリフィス部材38が本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28に装着された状態で、オリフィス半体40の軸方向一方の端面は、ポケット部30の内面に当接せしめられている。これにより、オリフィス半体40に形成された嵌合凹所42に嵌め入れられて組み付けられた嵌合蓋56の軸方向一方(長手方向一方)の端面も、ポケット部30の内面に当接せしめられている。特に本実施形態では、嵌合蓋56の軸方向両端面が、位置決めゴム突起31を介して、ポケット部30の内面に当接せしめられている。換言すれば、オリフィス半体40がポケット部30に嵌め付けられた状態で、嵌合蓋56の軸方向端面とポケット部30の内面との間で位置決めゴム突起31が挟圧せしめられている。これにより、オリフィス半体40の軸方向での位置ずれが防止されている。
さらに、一対のオリフィス半体40a,40bは、上下方向(軸方向)で相互に反転して装着されており、オリフィス半体40a,40bの一体加硫成形品28への装着下において各オリフィス半体40a,40bの各スロープ84が周方向一方の端部で相互に接続されている。これにより、一対のオリフィス半体40a,40bで構成されたオリフィス部材38においては、オリフィス半体40aの凹溝78,80と、オリフィス半体40bの凹溝78,80が直列に接続されて、オリフィス部材38の外周縁部を周方向に連続した螺旋状をもって二周弱の長さで延びる凹溝としての螺旋凹溝86が形成されている。
また、オリフィス部材38が装着された状態の一体加硫成形品28に対して、外筒金具14が嵌着固定されることにより、オリフィス部材38の外周面が、外筒金具14の内周面に対して、シールゴム層32を介して流体密に重ね合わされている。これにより、オリフィス部材38に形成された螺旋凹溝86の外周側の開口部が外筒金具14によって流体密に覆蓋されて、かかる螺旋凹溝86を利用して、低周波用オリフィス通路としての第一のオリフィス通路88が形成されている。
第一のオリフィス通路88は、周方向に二周弱の長さで螺旋状に延びるトンネル状の流路であって、一方の端部がオリフィス半体40aの接続孔82を通じて液室36aに連通されていると共に、他方の端部がオリフィス半体40bの接続孔82を通じて液室36bに連通されており、一対の液室36a,36bが第一のオリフィス通路88を通じて相互に連通されている。なお、第一のオリフィス通路88は、液室36の壁ばね剛性を考慮しつつ通路長と通路断面積の比を調節することによって、低周波数域の防振対象振動に対して、流体の流動作用に基づく防振効果が発揮されるようにチューニングされている。
ここにおいて、第一のオリフィス通路88の長さ方向中間部分には、内周側の壁部を貫通する連通孔68,68が形成されており、第一のオリフィス通路88の長さ方向の中間部分が連通孔68,68を通じて液室36a,36bに連通されている。そして、各オリフィス半体40a,40bに形成された連通孔68,68と、それら連通孔68,68の間に位置する第一のオリフィス通路88の一部とを利用して、第一のオリフィス通路88よりも短い通路長さで一対の液室36a,36bを相互に連通する高周波用オリフィス通路としての第二のオリフィス通路90が形成されている。なお、第二のオリフィス通路90は、第一のオリフィス通路88と略等しい通路断面積と第一のオリフィス通路88よりも短い半周程度の通路長をもって形成されており、第一のオリフィス通路88よりも高周波数域の振動に対して流体の共振作用等に基づく防振効果が発揮されるようにチューニングされている。
また、本実施形態では、第二のオリフィス通路90の一対の液室36a,36bへの開口部分、換言すれば、第二のオリフィス通路90の両端部に対して、可動ゴム膜70がそれぞれ配設されており、各オリフィス半体40の連通孔68が可動ゴム膜70で覆われている。これにより、低周波振動の入力に際して、第二のオリフィス通路90を通じての実質的な流体流動が制限されるようになっていると共に、中乃至高周波振動の入力に際して、可動ゴム膜70が液室36a,36bの相対的な圧力変動で弾性変形せしめられることにより、液室36a,36bが第二のオリフィス通路90を通じて実質的に連通されるようになっている。
このような構造とされたサスペンションブッシュ10においては、可動ゴム膜70が収容配置された収容スペース76よりも径方向外方の位置に、第一のオリフィス通路88と第二のオリフィス通路90が形成されていることから、可動ゴム膜70の配設スペースと第一及び第二のオリフィス通路88,90の形成スペースの両方を効率良く確保することが出来る。
また、可動ゴム膜70が収容凹所64に嵌め入れられた嵌合蓋56を、オリフィス半体40の嵌合凹所42に対して軸方向一方の側から他方の側へスライドさせて、オリフィス半体40の嵌合凹所42に嵌め入れて組み付けることにより、可動ゴム膜70を収容スペース76に収容配置するようになっていることから、可動ゴム膜70の組付作業を簡単にすることが出来る。
さらに、嵌合蓋56の周方向両端面58,58が嵌合凹所42における周方向両側の対向内面44,44に対応した径方向逆テーパ形状とされていることから、嵌合凹所42に嵌め入れられた嵌合蓋56が嵌合凹所42から径方向外方や軸方向他方の側へ抜け出してしまうことを回避することが出来る
更にまた、オリフィス半体40が本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28に組み付けられた状態で、オリフィス半体40の軸方向一方の端面が本体ゴム弾性体16に形成されたポケット部30の内面に重ね合わせられていることから、オリフィス半体40に組み付けられた嵌合蓋56が嵌合凹所42から軸方向一方の側へ抜け出してしまうことを回避することが出来る。
従って、上述の如き構造とされたサスペンションブッシュ10においては、嵌合蓋56の嵌合凹所42への組み付けがスライド変位という極めて簡単な方法で実現され得るにも拘わらず、オリフィス半体40を本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28に組み付ける際、更には、オリフィス半体40が本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28に組み付けられた状態における嵌合蓋56の嵌合凹所42からの抜け出しを効果的に防止することが出来る。
また、本実施形態では、嵌合蓋56の外面に形成された第一及び第二の接続溝60,62を利用して第一のオリフィス通路88と第二のオリフィス通路90が形成されていることから、第一のオリフィス通路88と第二のオリフィス通路90の形成スペースを十分に確保しつつ、オリフィス部材38の外周面よりも内側の領域において可動ゴム膜70の収容スペース76を効果的に確保することが出来る。
更にまた、本実施形態では、嵌合蓋56が嵌合凹所42に嵌め入れられて組み付けられた状態で、可動ゴム膜70の支持部72が嵌合蓋56と嵌合凹所42の底面に挟まれて圧縮されていることから、支持部72の圧縮変形に起因する復元力が嵌合蓋56に対してオリフィス半体40の径方向外方に及ぼされることによって、嵌合蓋56の周方向の両端面58,58がオリフィス半体40の径方向で嵌合凹所42における周方向両側の対向内面44,44に押し付けられる。これにより、嵌合蓋56とオリフィス半体40との間で発生する摩擦力、即ち、嵌合蓋56の嵌合凹所42からの抜け出しを阻止する方向に作用する抵抗力を大きくすることが出来る。その結果、オリフィス半体40を本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28に組み付ける際に、嵌合蓋56がオリフィス半体40から外れてしまう不具合を防止することが出来る。
続いて、本発明に係る流体封入式筒形防振装置の第二の実施形態としての自動車用エンジンマウント100について、図15に基づいて、説明する。エンジンマウント100は、インナ軸部材としての第一の取付金具102とアウタ筒部材としての第二の取付金具104が離隔配置されていると共に、それら第一の取付金具102と第二の取付金具104が本体ゴム弾性体106で弾性連結された構造を有しており、第一の取付金具102が自動車のパワーユニットに取り付けられる一方、第二の取付金具104が自動車のボデーに取り付けられることにより、パワーユニットをボデーに対して防振支持せしめるようになっている。なお、本実施形態のエンジンマウント100は、図15中の上下方向が略鉛直上下方向となる状態で装着されることとなり、以下の説明中、上下方向とは、原則として、図15中の上下方向をいうものとする。
より詳細には、第一の取付金具102は、中実小径の円形ロッド形状を有する支持軸部108を備えており、上下方向にストレートに延びた支持軸部108の軸方向上端部に対して、中心軸上で厚肉偏平状に広がる取付固定部110が一体形成されている。なお、支持軸部108の軸方向中間部分には、テーパ部112が設けられており、このテーパ部112を挟んで、支持軸部108の軸方向下部が軸方向上部よりも小径とされている。
また、第一の取付金具102の外周側には、薄肉の大径円筒形状を有する中間スリーブとしての金属スリーブ114が、径方向に所定距離を隔てて略同一中心軸線上に配設されている。この金属スリーブ114は、軸方向中間部分に段差116を有しており、段差116を挟んで軸方向下側部分が軸方向上側部分よりも小径の嵌着部118とされた段付きの円筒形状とされている。また、金属スリーブ114の軸方向中間部分には、径方向一方向で対向位置する部分に一対の窓部120,120が形成されており、周方向に半周弱の長さで開口せしめられている。なお、これら一対の窓部120,120は、段差116を含む軸方向両側に亘って形成されており、隣接する窓部120の周方向端縁部間に跨がって周方向に延びるように段差116が形成されている。
そして、第一の取付金具102が、金属スリーブ114の軸方向上側開口部から差し込まれた状態で配設されており、第一の取付金具102の支持軸部108の全体を径方向に離隔して囲む状態で、金属スリーブ114が位置せしめられている。なお、第一の取付金具102の取付固定部110は、金属スリーブ114から軸方向上方に突出して位置せしめられている一方、支持軸部108の軸方向下端部は、金属スリーブ114の軸方向下端部まで至らない軸方向中間部分に位置せしめられている。
さらに、これら第一の取付金具102の支持軸部108と金属スリーブ114の径方向対向面間には、本体ゴム弾性体106が配設されており、第一の取付金具102と金属スリーブ114が本体ゴム弾性体106によって弾性的に連結されている。かかる本体ゴム弾性体106は、全体として厚肉の円筒形状を有しており、その内周面が第一の取付金具102の支持軸部108の外周面に加硫接着されている一方、その外周面が金属スリーブ114の内周面に加硫接着されている。要するに、本体ゴム弾性体106は、第一の取付金具102と金属スリーブ114を備えた一体加硫成形品として形成されているのである。なお、本体ゴム弾性体106は、金属スリーブ114の窓部120を通じて金属スリーブ114の外周面に延び出されており、周上で窓部120が形成された部分を外れた領域における嵌着部118の上端部には、係合ゴム122が形成されている。
また、本体ゴム弾性体106の軸方向下端部には、下方に向かって開口する大径の円形凹所124が形成されている。この円形凹所124は、逆向きの略すり鉢状乃至は半球形状の凹所であって、本体ゴム弾性体106の下端部における径方向中央部分に開口形成されている。更に、本体ゴム弾性体106には、外周面に開口する一対のポケット部126,126が、第一の取付金具102を径方向一方向で挟んだ両側に形成されている。これら一対のポケット部126,126は、何れも、開口部に近づくに従って軸方向開口幅が次第に大きくなる拡開形状(図15参照)をもって、周方向に半周弱の長さで形成されており、金属スリーブ114に形成された一対の窓部120,120を通じて外周面に開口せしめられている。
一方、第二の取付金具104は、金属スリーブ114よりも大径の円筒形状を有しており、軸方向中間部分において径方向に広がる段差部128が形成されて、かかる段差部128を挟んで軸方向上側が大径筒部130とされると共に、軸方向下側が小径筒部132とされた段付円筒形状とされている。なお、大径筒部130は、金属スリーブ114と略同じ軸方向長さとされている。
また、小径筒部132には、可撓性膜としてのダイヤフラム134が加硫接着されている。ダイヤフラム134は、薄肉のゴム弾性膜によって形成されていると共に、変形が容易に許容されるように中央部分に弛みをもたせた円板形状を有している。そして、ダイヤフラム134の外周縁部が、小径筒部132に対して全周に亘って加硫接着されることにより、第二の取付金具104の軸方向下側の開口部が、ダイヤフラム134によって流体密に覆蓋されている。なお、第二の取付金具104には、ダイヤフラム134と一体成形された薄肉のシールゴム層136が加硫接着されており、大径筒部130および小径筒部132の各内周面が全体に亘ってシールゴム層136によって覆われている。
そして、第二の取付金具104は、本体ゴム弾性体106の一体加硫成形品に対して、第二の取付金具104の大径筒部130が外挿されて八方絞り加工等で縮径されることによって、かかる大径筒部130が金属スリーブ114に外嵌固定されている。これにより、第一の取付金具102の支持軸部108と第二の取付金具104の大径筒部130が、本体ゴム弾性体106によって弾性的に連結されている。なお、金属スリーブ114の軸方向下端面は、第二の取付金具104の段差部128に当接されており、それによって金属スリーブ114が第二の取付金具104に対して軸方向に位置決めされている。また、金属スリーブ114と第二の取付金具104の嵌着面間は、シールゴム層136が挟圧されることによりシールされている。
このように第二の取付金具104が金属スリーブ114に外嵌固定されることにより、第二の取付金具104の大径筒部130側の開口部が本体ゴム弾性体106によって流体密に覆蓋されている。これにより、第二の取付金具104の底部分において、非圧縮性流体を封入された流体封入室138が形成されている。なお、封入流体としては、例えば水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油、或いはそれらの混合物などが採用可能であり、特に、後述する第一のオリフィス通路152を通じての流体の共振作用に基づく防振効果を有効に得るために、粘度が0.1Pa・s以下の低粘性流体を採用することが望ましい。
また、流体封入室138には、全体として略円板形状を有する仕切部材140が軸直角方向に広がって配設されている。この仕切部材140は、厚肉円板形状の仕切金具142の上面に、薄肉円板形状の蓋金具144が重ね合わせられることによって形成されており、仕切金具142における上端部の外周縁部と蓋金具144の外周縁部が密接状態で重ね合わせられて、第二の取付金具104の段差部128と本体ゴム弾性体106の軸方向下端面の外周縁部との間で挟持されることによって、第二の取付金具104に対して固定的に組み付けられている。なお、本実施形態では、仕切金具142の外周部分における周上の複数箇所に、上方に向かって突出する突部が形成されていると共に、蓋金具144における該突部と対応する位置に貫通孔が形成されており、該突部を該貫通孔に対して挿通せしめることにより、仕切金具142と蓋金具144が周方向および軸直角方向で相互に位置決めされるようになっている。
かくの如き仕切部材140が流体封入室138内において軸直角方向で広がるように配設されて、第二の取付金具104によって支持されることにより、流体封入室138が仕切部材140によって上下に二分されており、仕切部材140を挟んだ上側に、壁部の一部が本体ゴム弾性体106で構成された主液室としての受圧室146が形成されていると共に、仕切部材140の下側には、壁部の一部がダイヤフラム134で構成された副液室としての平衡室148が形成されている。そして、振動の入力に際して、本体ゴム弾性体106の弾性変形に基づく圧力変動が受圧室146に及ぼされるようになっていると共に、ダイヤフラム134の変形に基づいて平衡室148の容積変化が容易に許容されるようになっており、受圧室146と平衡室148の間で相対的な圧力差が生ぜしめられるようになっている。
更にまた、仕切金具142には、外周面に開口して外周部分を周方向に延びる周方向溝150が一周弱の長さで形成されており、この周方向溝150の開口が第二の取付金具104の小径筒部132で流体密に覆蓋されている。これにより、仕切部材140の外周部分を周方向に延び、周方向一方の端部が上連通孔(図示せず)を通じて受圧室146に接続されると共に、周方向他方の端部が下連通孔(図示せず)を通じて平衡室148に接続された第一のオリフィス通路152が形成されており、かかる第一のオリフィス通路152を通じて、受圧室146と平衡室148の間での流体流動が許容されるようになっている。なお、本実施形態では、第一のオリフィス通路152を流動せしめられる流体の共振作用に基づいてエンジンシェイクに相当する低周波数域で高減衰効果が発揮されるように、第一のオリフィス通路152の長さや断面積等が調節されている。
さらに、仕切金具142の中央部分には、上方に開口する円形の中央凹所154が形成されており、中央凹所154の開口部が蓋金具144で覆蓋されることによって、外部から隔てられた収容領域156が形成されている。また、仕切金具142と蓋金具144において、収容領域156の軸方向両側の壁部を構成する部分には、それぞれ複数の透孔158が形成されており、それら透孔158を通じて収容領域156が受圧室146と平衡室148に連通されている。
更にまた、収容領域156には、可動膜160が収容配置されている。可動膜160は、所定厚さの円板形状を有するゴム弾性体で形成されており、径方向中央部分において小径円柱形状で厚さ方向両側に向かって突出する中央支持部162が一体形成されていると共に、外周縁部において略円環形状で厚さ方向両側に向かって突出する環状支持部164が一体形成されている。また、本実施形態の可動膜160の径方向中間部分には、軸方向両側に突出する緩衝突条が一体形成されており、可動膜160の弾性変形に際して、可動膜160が仕切金具142又は蓋金具144に対して緩衝的に当接されるようになっている。
そして、それら中央支持部162と環状支持部164が仕切金具142と蓋金具144の対向面間で挟持されることにより、仕切金具142および蓋金具144によって弾性的に支持された状態で収容領域156に収容配置されていると共に、それら中央支持部162と環状支持部164の径方向間に位置する部分である可動膜160の径方向中間部分が、仕切金具142と蓋金具144の何れに対しても軸方向で所定距離を隔てて位置せしめられており、可動膜160の径方向中間部分において、所定量の弾性変形が軸方向(厚さ方向)で許容されるようになっている。
なお、可動膜160の両面には、収容領域156の壁部に形成された透孔158を通じて受圧室146の圧力と平衡室148の圧力が及ぼされるようになっており、可動膜160の上下面に及ぼされる受圧室146と平衡室148の圧力差に基づいて可動膜160が弾性変形せしめられることにより、受圧室146と平衡室148の間での流体流動が、可動膜160の弾性変形量に応じて実質的に生ぜしめられて、受圧室146の圧力変動が軽減乃至は吸収されるようになっている。特に本実施形態では、可動膜160の弾性と、可動膜160の径方向中間部分における中央凹所154の内面への当接とによって可動膜160の弾性変形量が制限されることにより、こもり音等の中乃至高周波小振幅振動の入力時には、受圧室146の圧力変動が可動膜160の弾性変形に基づいて有利に吸収乃至は軽減され得る一方、エンジンシェイク等の低周波大振幅振動の入力時には、可動膜160の弾性変形量が制限されることにより、受圧室146に有効な圧力変動が惹起されるようになっている。
一方、第二の取付金具104が金属スリーブ114に外嵌固定されることにより、金属スリーブ114の窓部120,120が第二の取付金具104によって流体密に覆蓋されている。これにより、一対のポケット部126,126の開口が覆蓋されて、それぞれ非圧縮性流体が封入された一対の作用液室166,166が形成されている。即ち、本実施形態では、一方の作用液室166によって第一の流体室が構成されていると共に、他方の作用液室166によって第二の流体室が構成されている。そして、これら一対の作用液室166,166には、何れも、流体封入室138と同様な非圧縮性流体が封入されている。
なお、図中では必ずしも明らかではないが、一対の作用液室166,166は、径方向一方向で第一の取付金具102の支持軸部108を挟んで対向位置せしめられており、本体ゴム弾性体106によって相互に隔てられている。これにより、振動の入力によって本体ゴム弾性体106が弾性変形せしめられると、一対の作用液室166,166に対して互いに正負が反対となる圧力変動が積極的に生ぜしめられるようになっている。このことからも明らかなように、一対の作用液室166,166は、何れも、壁部の一部が本体ゴム弾性体106で構成されて、振動入力によって圧力変動が及ぼされる所謂受圧室とされている。
また、作用液室166には、図16及び図17に示されたオリフィス部材168が収容状態で配設されている。このオリフィス部材168は、合成樹脂材や金属材等の硬質材で形成されており、軸方向から見ると略C字形状を呈する開口筒体形状を有している。また、オリフィス部材168の上端縁部には、周上の複数箇所において径方向に延びる切欠部170が形成されて、上方に向かって開口せしめられている。なお、図16及び図17においては、分かり易くするために、部材の構造線以外の線(例えば、湾曲を示す線等)が、細線によって示されている。
さらに、オリフィス部材168の外周面には、凹溝172が開口せしめられている。凹溝172は、周方向に延びる溝形状を有しており、折り返して一周半程度の所定長さで延びている。また、凹溝172の一方の端部には、オリフィス部材168を径方向に貫通する第一の接続孔174が形成されていると共に、凹溝172の他方の端部には、オリフィス部材168を径方向に貫通する第二の接続孔176が形成されており、オリフィス部材168の外周縁部に形成された凹溝172の長さ方向両端部が、第一及び第二の接続孔174,176を通じてオリフィス部材168の内周側の領域に連通せしめられている。
更にまた、オリフィス部材168には、可動部材としての可動ゴム膜70が組み付けられている。即ち、本実施形態においても、オリフィス部材168の外周面に開口するように形成された嵌合凹所42に嵌め入れられて組み付けられる嵌合蓋56と嵌合凹所42の径方向の重ね合わせ面間に形成された収容スペース76に可動ゴム膜70が収容配置されているのである。なお、以下の説明において、第一の実施形態と同様な構造とされた部材及び部位については、第一の実施形態と同一の符号を付すことにより、それらの詳細な説明を省略する。
かくの如き構造とされたオリフィス部材168は、本体ゴム弾性体106の外周面に加硫接着された金属スリーブ114の嵌着部118に対して軸方向下方から外挿されると共に、第二の取付金具104の大径筒部130の内周側に位置せしめられて、第二の取付金具104に対して縮径加工が施されることにより、金属スリーブ114と第二の取付金具104の対向面間で挟み込まれて固定されるようになっている。このようなオリフィス部材168の配設下、オリフィス部材168は、一方のポケット部126の開口部を周方向に跨ぐようにして、第二の取付金具104の内周面に沿って配設されていると共に、周方向両端部が何れも他方のポケット部126の開口部上に位置せしめられている。なお、オリフィス部材168を本体ゴム弾性体106の一体加硫成形品に対して組み付ける際に、金属スリーブ114における嵌着部118の外周面の上端部に固着された係合ゴム122が、オリフィス部材168の上端部に形成された切欠部170に対して嵌め込まれることにより、オリフィス部材168が本体ゴム弾性体106の一体加硫成形品に対して周方向で位置決めされるようになっている。
また、オリフィス部材168の組付状態下において、オリフィス部材168の外周面が第二の取付金具104の内周面に対してシールゴム層136を介して密着せしめられており、オリフィス部材168の外周面に開口せしめられた凹溝172の開口部が、第二の取付金具104によって流体密に覆われている。更に、凹溝172の一方の端部が、第一の接続孔174を通じて一方の作用液室166に連通せしめられていると共に、凹溝172の他方の端部が、第二の接続孔176を通じて他方の作用液室166に連通せしめられている。これらによって、オリフィス部材168と第二の取付金具104の間には、周方向に所定長さで延びて、一対の作用液室166,166を相互に連通せしめる低周波用オリフィス通路としての第二のオリフィス通路178が、凹溝172を利用して形成されている。なお、本実施形態において、第二のオリフィス通路178は、低周波数域の振動入力に際して高減衰効果が発揮されるようにチューニングされている。
さらに、凹溝172の底壁に形成された連通孔68は、一方の作用液室166の径方向外方に位置せしめられている。これにより、可動ゴム膜70の一方の面に対して嵌合凹所42の底壁に形成された透孔46を通じて一方の作用液室166の圧力が及ぼされるようになっていると共に、可動ゴム膜70の他方の面に対して連通孔68を通じて他方の作用液室166の圧力が及ぼされるようになっている。即ち、高周波用オリフィス通路としての第三のオリフィス通路180が、第二のオリフィス通路178の一部を利用して形成されている。なお、本実施形態では、第三のオリフィス通路180の通路長さと通路長の比を適当に調節することにより、高周波数域の振動入力に際して、第三のオリフィス通路180を通じて流動せしめられる流体の共振作用に基づいた防振効果(低動ばね効果)が発揮されるようになっている。
上述の如き構造とされた自動車用エンジンマウント100においても、嵌合蓋56が嵌合凹所42に対して軸方向一方の側から他方の側へスライド変位せしめられることにより、嵌合蓋56が嵌合凹所42に嵌め入れられて組み付けられるようになっていると共に、嵌合蓋56と嵌合凹所42の径方向での重ね合わせ面間に配設された可動ゴム膜70よりも径方向外方の位置に第二のオリフィス通路178と第三のオリフィス通路180が形成されていることから、第一の実施形態と同様な効果を得ることが出来る。
以上、本発明の幾つかの実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、前記第一の実施形態では、第二のオリフィス通路90の両端部分のそれぞれに可動ゴム膜70が配設されている構造のサスペンションブッシュ10について説明したが、図18に示されているように、第二のオリフィス通路90の一方の端部だけに可動ゴム膜70が配設されているサスペンションブッシュ190に対して、本発明を適用することも、勿論、可能である。
この場合、オリフィス半体40bの代わりに、オリフィス半体192が採用される。オリフィス半体192は、オリフィス半体40と同様な材料によって形成されており、図19に示されているように、外周面に開口して周方向に延びる第一の凹溝78と第二の凹溝80が形成された構造とされている。
そして、オリフィス半体40aとオリフィス半体192が組み付けられた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28に対して外筒金具14が外嵌固定されることにより、第一の実施形態と同じ通路長さを有する第一のオリフィス通路88が形成されるようになっている。なお、第二のオリフィス通路90は、オリフィス半体192の接続孔82から液室36bに接続されており、それによって、第一の実施形態よりも通路長さが長くなっている。
また、前記第一の実施形態では、一対の液室36a,36bのそれぞれが受圧室とされている構造のサスペンションブッシュ10について説明したが、図20に示されているように、一方の液室36bが、変形容易なゴム膜194で形成されて、容積変化が容易に許容される所謂平衡室とされている筒形マウント196に対して、本発明を適用することも、勿論、可能である。
この場合、半円筒形状を呈するオリフィス部材198が本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28に組み付けられることになる。そこにおいて、オリフィス部材198は、図21に示されているように、外周面に開口して周方向に延びる第一の凹溝78と第二の凹溝80が、第一の実施形態のオリフィス半体(40)と同様に形成されているが、第一の実施形態のオリフィス半体(40)に比して、第二の凹溝80の他方の端部がオリフィス部材198の周方向他端面に開口しておらず、オリフィス部材198に組み付けられる嵌合蓋56に形成された連通孔68の付近で第二の凹溝80が行き止まりになる構造とされている。換言すれば、オリフィス部材198は、オリフィス半体(40)において、第二の周溝54の周方向一方の側が埋め立てられて存在しないような構造とされている。
このような構造とされたオリフィス部材198が本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品28に組み付けられた状態で外筒金具14が外嵌固定されると、第一の凹溝78を利用して低周波用オリフィス通路(図示せず)が形成されると共に、第二の凹溝80を利用して高周波用オリフィス通路(図示せず)が形成されるようになっている。即ち、低周波用オリフィス通路は、オリフィス部材198に形成された接続孔82を通じて一方の液室36aに接続されていると共に、オリフィス部材198の周方向他端の開口を通じて他方の液室36bに接続されている。また、高周波用オリフィス通路は、オリフィス部材198の周方向一端の開口を通じて他方の液室36bに接続されていると共に、周方向他端部分に可動ゴム膜70が配設されており、可動ゴム膜70を介して一方の液室36aに接続されている。
更にまた、図22に示されているように、可動ゴム膜70が嵌め入れられる収容凹所64は、オリフィス半体40に形成されていても良い。
なお、図18乃至22において、第一の実施形態と同様な構造とされた部材及び部位については、理解を容易にするために、第一の実施形態と同一の符号を付してある。
また、本発明においては、可動部材として、収容スペース内で板厚方向に微小変位可能に収容配置されて、微小変位による液圧吸収作用が発揮されるようになっていると共に、最大変位状態で可動部材を挟んだ両側での流体の流動を阻止するようにされた可動板を採用することも可能である。可動部材として可動板を採用する場合、可動板は、ゴム弾性体の他、合成樹脂等の硬質板でも形成可能である。合成樹脂等の硬質板で可動板を形成する場合には、可動板と収容スペースの内面との当接面においてゴム等の緩衝突起を形成することが望ましい。これにより、当接時の打音を抑えることが出来る。
さらに、本発明において、中央部分が弾性変形可能な状態で外周縁部が支持される可動膜を可動部材として採用する場合には、可動膜の外周縁部をオリフィス部材や嵌合蓋に対して加硫接着しておいても良い。具体的には、第一の実施形態において、可動ゴム膜70の支持部72を嵌合蓋56の収容凹所64の内面に加硫接着しておいても良い。
また、嵌合凹所42の底壁に形成されている透孔46は、仕切片によって四つに仕切られているが、特性のチューニング等により、その仕切数については、これに限定されない。場合によっては、仕切片はなくても良い。
更にまた、本発明において、インナ軸部材とアウタ筒部材は、特開平5−141473号公報に記載されているように、偏心して配設されていても良い。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
10:サスペンションブッシュ,12:内筒金具,14:外筒金具,16:本体ゴム弾性体,22:中間スリーブ,24:窓部,30a;ポケット部,36a:液室,36b:液室,38:オリフィス部材,42:嵌合凹所,44:対向内面,56:嵌合蓋,58:端面,68:連通孔,70:可動ゴム膜,76:収容スペース,88:第一のオリフィス通路,90:第二のオリフィス通路,100:エンジンマウント,102:第一の取付金具,104:第二の取付金具,106:本体ゴム弾性体,114:金属スリーブ,120:窓部,126:ポケット部,166:作用液室,168:オリフィス部材,178:第二のオリフィス通路,180:第三のオリフィス通路,190:サスペンションブッシュ,192:オリフィス半体,196:筒形マウント,198:オリフィス部材